JP2013141850A - 自動車の車体フレーム構造 - Google Patents

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朋也 彌武
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Abstract

【課題】 車体前部の大型化を回避しながら、前面衝突およびナローオフセット前面衝突の何れの場合にも衝突荷重を効果的に吸収する。
【解決手段】 フロントサイドフレーム24の前端から前方に延びる繊維強化樹脂製のバンパービームイクステンション25に、車幅方向に延びる繊維強化樹脂製のバンパービーム29と、アッパーメンバ20の前端から前方に延びる繊維強化樹脂製のロアメンバ27とを接続し、左右一対のロアメンバ27の車幅方向外面および前面と、左右一対のバンパービームイクステンション25の前端面と、バンパービーム29の前面とを平面視で車体前方に向かってU字状に湾曲させたので、衝突荷重がバンパービーム29に入力してもロアメンバ27の前部に入力しても、その衝突荷重をバンパービームイクステンション25に伝達して吸収することができ、しかもバンパービーム29がロアメンバ27から車体前方に突出しないので車体前部を小型化することができる。
【選択図】 図2

Description

本発明は、左右一対のフロントサイドフレーム、左右一対のバンパービームイクステンション、バンパービーム、左右一対のアッパーメンバおよび左右一対のロアメンバを備える自動車の車体フレーム構造に関する。
ダッシュボードの前方に金属製フレームモジュールを配置し、金属製フレームモジュールの前方にFRP製のクラッシュレールを配置し、車両の前面衝突時に衝突荷重によってクラッシュレールの繊維から樹脂を分離することで衝突エネルギーを吸収するものが、下記特許文献1により公知である。
またFRP製のクラッシュレールを、閉断面を有して前端から後端に向けて次第に断面積が増加する角錐形状に構成し、衝突荷重の入力時にクラッシュレールを先端側から順次圧壊させて衝突エネルギーを吸収するものが、下記特許文献2により公知である。
英国特許第2367270号明細書 米国特許第6406088号明細書
ところで、車両が前面衝突してバンパービームに衝突荷重が入力した場合には、その衝突荷重をバンパービームからクラッシュレール(バンパービームイクステンション)に伝達して吸収することが可能であるが、車両がナローオフセット前面衝突して衝突荷重がバンパービームイクステンションよりも車幅方向外側に入力した場合には、その衝突荷重をバンパービームイクステンションに効率的に伝達できなくなる可能性がある。この問題を解決するには、バンパービームを左右一対のバンパービームイクステンションの前端からの車幅方向外側に突出させれば良いが、このようにすると、バンパービームが前方および車幅方向外側に張り出して車体前部が大型化してしまう問題がある。
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、車体前部の大型化を回避しながら、前面衝突およびナローオフセット前面衝突の何れの場合にも衝突荷重を効果的に吸収することを目的とする。
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、キャビンのフロント壁部の下部から車体前方に延びる左右一対のフロントサイドフレームと、前記フロントサイドフレームの前端から車体前方に延びる繊維強化樹脂製の左右一対のバンパービームイクステンションと、車幅方向に延びて前記左右一対のバンパービームイクステンションの前端の車幅方向内壁に接続される繊維強化樹脂製のバンパービームと、前記キャビンのフロント壁部の車幅方向外端上部から車体前方に延びる左右一対のアッパーメンバと、前記左右一対のアッパーメンバの前端から屈曲しながら前下方、前方および車幅方向内方に延び、前記左右一対のバンパービームイクステンションの前端の車幅方向外壁に接続される繊維強化樹脂製の左右一対のロアメンバとを備え、前記左右一対のロアメンバの車幅方向外面および前面と、前記左右一対のバンパービームイクステンションの前端面と、前記バンパービームの前面とは、平面視で車体前方に向かってU字状に湾曲することを特徴とする自動車の車体フレーム構造が提案される。
また請求項2に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、前記バンパービームイクステンションの前端部の車幅方向内面に、前記バンパービームの車幅方向外端を支持するバンパービーム支持部を備えるとともに、前記バンパービームイクステンションの前端部の車幅方向外面に、前記ロアメンバの車幅方向内向きに屈曲した前端を支持するロアメンバ支持部を備えることを特徴とする自動車の車体フレーム構造が提案される。
また請求項3に記載された発明によれば、請求項1または請求項2の構成に加えて、前記バンパービームイクステンションの前端部に脆弱部を備えることを特徴とする自動車の車体フレーム構造が提案される。
また請求項4に記載された発明によれば、請求項1〜請求項3の何れか1項の構成に加えて、前記バンパービーム、前記ロアメンバおよび前記バンパービームイクステンションは、開放断面を有する本体部と、前記本体部の内面を接続するリブとを備え、前記本体部は連続繊維を樹脂で固めて構成され、前記リブは不連続繊維を樹脂で固めて構成されることを特徴とする自動車の車体フレーム構造が提案される。
また請求項5に記載された発明によれば、請求項4の構成に加えて、前記バンパービームおよび前記ロアメンバは、コ字状断面を有する本体部の内部に複数の縦リブを有することを特徴とする自動車の車体フレーム構造が提案される。
また請求項6に記載された発明によれば、請求項4の構成に加えて、前記バンパービームイクステンションは、S字状断面を有する本体部の内部に複数のX字状のリブを有することを特徴とする自動車の車体フレーム構造が提案される。
また請求項7に記載された発明によれば、請求項1〜請求項6の何れか1項の構成に加えて、前記バンパービームの上下方向幅は、車幅方向中央部において車幅方向端部よりも大きいことを特徴とする自動車の車体フレーム構造が提案される。
尚、実施の形態のフロントサイドフレーム基部23およびフロントサイドフレーム先端部24は本発明のフロントサイドフレームに対応し、実施の形態の第1底壁31d、第2補強フランジ31gおよび第1連結部31jは本発明のバンパービーム支持部に対応し、実施の形態の第1補強フランジ31f、第4連結部31nおよび第5連結部31oは本発明のロアメンバ支持部に対応し、実施の形態の第1リブ32 第2リブ33、横リブ38、縦リブ39、横リブ41および縦リブ42は本発明のリブに対応する。
請求項1の構成によれば、左右一対のフロントサイドフレームの前端から車体前方に延びる繊維強化樹脂製の左右一対のバンパービームイクステンションの前端の車幅方向内壁および車幅方向外壁に、車幅方向に延びる繊維強化樹脂製のバンパービームと、左右一対のアッパーメンバの前端から屈曲しながら前下方、前方および車幅方向内方に延びる繊維強化樹脂製の左右一対のロアメンバとを接続し、左右一対のロアメンバの車幅方向外面および前面と、左右一対のバンパービームイクステンションの前端面と、バンパービームの前面とを平面視で車体前方に向かってU字状に湾曲させたので、自動車の前部の車体フレームを軽量化することができるだけでなく、衝突荷重がバンパービームに入力してもロアメンバの前部に入力しても、その衝突荷重をバンパービームイクステンションに伝達して吸収することができ、しかもバンパービームがロアメンバから車体前方に突出しないので車体前部を小型化することができる。
また請求項2の構成によれば、バンパービームイクステンションの前端部の車幅方向内面に、バンパービームの車幅方向内端を支持するバンパービーム支持部を備えるので、前面衝突時にバンパービームに入力した衝突荷重をバンパービーム支持部からバンパービームイクステンションに伝達して効率的に吸収することができ、またバンパービームイクステンションの前端部の車幅方向外面に、ロアメンバの車幅方向内向きに屈曲した前端を支持するロアメンバ支持部を備えるので、ナローオフセット前面衝突時にロアメンバの前部に入力した衝突荷重をロアメンバ支持部からバンパービームイクステンションに伝達して効率的に吸収することができる。
また請求項3の構成によれば、バンパービームイクステンションの前端部に脆弱部を備えるので、衝突初期に脆弱部が圧壊することでピーク荷重を低減することができる。
また請求項4の構成によれば、バンパービーム、ロアメンバおよびバンパービームイクステンションは、連続繊維で樹脂で固めて構成されて開放断面を有する本体部と、不連続繊維を樹脂で固めて構成されて本体部の内面を接続するリブとを備えるので、比較的に単純な形状の本体部は強度の高い連続繊維で補強し、比較的に複雑な形状の本体部は成形性の高い不連続繊維で補強することで、強度および成形性を両立することができる。その結果、開放断面の本体部の口開きをリブによって阻止し、軽量な構造で高い強度を得ることができる。
また請求項5の構成によれば、バンパービームおよびロアメンバは、コ字状断面を有する本体部の内部に複数の縦リブを有するので、本体部の捩じれや曲げに対する強度をリブによって高め、衝突荷重で本体部およびリブを端部側から順次圧壊して衝突エネルギーを効率的に吸収することができる。
また請求項6の構成によれば、バンパービームイクステンションは、S字状断面を有する本体部の内部に複数のX字状のリブを有するので、本体部の捩じれや曲げに対する強度をリブによって高め、衝突荷重で本体部およびリブを端部側から順次圧壊して衝突エネルギーを効率的に吸収することができる。
また請求項7の構成によれば、バンパービームの上下方向幅は、車幅方向中央部において車幅方向端部よりも大きいので、バンパービームの高さと衝突の相手部材の高さとが異なっていても、衝突荷重をバンパービームで受け止めて衝撃吸収することができる確率が増加する。
繊維強化樹脂を主体とする自動車の骨格の斜視図。 図1の2部拡大図。 図2の3方向矢視図。 バンパービームイクステンションの斜視図。 ロアメンバの斜視図。 バンパービームの斜視図。 図2の7A−7A線、7B−7B線および7C−7C線断面図。 図7の8A方向および8B方向拡大矢視図。 成形型の構造および作用の説明図。 自動車の前面衝突時の作用の説明図。 バンパービームイクステンションによる衝撃吸収の作用説明図。
以下、図1〜図11に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
図1〜図3に示すように、カーボン繊維強化樹脂(CFRP)製のキャビン11は、フロントフロアパネル12と、フロントフロアパネル12の後端にキックアップ部13を介して接続されたリヤフロアパネル14と、フロントフロアパネル12およびリヤフロアパネル14の車幅方向両側縁に沿って前後方向に延びる左右のサイドシル部15,15と、フロントフロアパネル12および左右のサイドシル部15,15の前端から起立するフロント壁部16と、リヤフロアパネル14および左右のサイドシル部15,15の後端から起立するリヤ壁部17とを備えてバスタブ状に形成される。左右のサイドシル部15,15の上面に、逆U字状のロールバー18と、このロールバー18を補強する左右のステー19,19とが固定される。
キャビン11のフロント壁部16の前面の車幅方向両端部には、金属製の連結モジュール20,20が図示せぬボルトで締結される。各々の連結モジュール20は、ダンパーハウジング21と、アッパーメンバ22と、フロントサイドフレーム基部23とが一体に形成されており、フロントサイドフレーム基部23の前端には別部材である金属製のフロントサイドフレーム先端部24の後端が直列に連結される。アッパーメンバ22は、キャビン11のフロント壁部16に形成したホイールハウス16a(図1参照)の上方に配置される部材である。
左右のフロントサイドフレーム先端部24,24の前端には、CFRP製の左右のバンパービームイクステンション25,25の後端がボルト26…で締結され、左右の連結モジュール20,20のアッパーメンバ22,22の前端には、CFRP製の左右のロアメンバ27,27の後端がボルト28…で締結される。左右のバンパービームイクステンション25,25の前端の車幅方向内面にCFRP製のバンパービーム29の車幅方向両端部が接続され、また車幅方向外面に左右のロアメンバ27,27の前端の車幅方向内面が接続される。そして左右のバンパービームイクステンション25,25の車幅方向内面にCFRP製のアッパ部材30a、ロア部材30bおよび左右のサイド部材30c,30cを四角枠状に結合したフロントバルクヘッド30が接続される。
次に、図2〜図4に基づいてバンパービームイクステンション25,25の構造を説明する。左右のバンパービームイクステンション25,25は鏡面対称な部材であるため、代表として左側のバンパービームイクステンション25の構造を説明する。
CFRP製のバンパービームイクステンション25は前後方向に直線状に延びる本体部31を備える部材であって、その本体部31は、相互に略平行に配置された上側の第1側壁31aと、中央の第2側壁31bと、下側の第3側壁31cと、第1側壁31aおよび第2側壁31bの車幅方向内端間を接続する第1底壁31dと、第3側壁31cおよび第2側壁31bの車幅方向外端間を接続する第2底壁31eとを備えて横断面S字状に形成される。第1側壁31aの車幅方向外端からは第1補強フランジ31fが上向きに突出し、第3側壁31cの車幅方向内端からは第2補強フランジ31gが下向きに突出する。第1側壁31aの後端からは、フロントサイドフレーム先端部24の前端にボルト26,26で固定される第1取付フランジ31hが上向きに突出し、第3側壁31cの後端からは、フロントサイドフレーム先端部24の前端にボルト26,26で固定される第2取付フランジ31iが下向きに突出する。
また第1底壁31dの車幅方向内面には三角形状の第1連結部31jおよび第2連結部31kが突設され、第2補強フランジ31gの車幅方向内面には三角形状の第3連結部31mが突設され、第2底壁31eの車幅方向外面には三角形状の第4連結部31nが突設され、第2底壁31eの下端から板状の第5連結部31oが車幅方向外向きに突設される。第1側壁31aおよび第3側壁31cは正面視で水平に延びているが、第2側壁31bは成形型からの型抜きを容易にするために、水平に対して傾斜する抜き勾配を有している(図4参照)。
第1側壁31a、第1底壁31dおよび第2側壁31bに囲まれて車幅方向外側に開放する空間に、X状に形成された第1リブ32…が前後方向に3個連続して形成される。同様に、第3側壁31c、第2底壁31eおよび第2側壁31bに囲まれて車幅方向内側に開放する空間に、X状に形成された第2リブ33…が前後方向に3個連続して形成される。X状の第1リブ32…の3個の交点の位置と、X状の第2リブ33…の3個の交点の位置とは、車体前後方向に整列している。言い換えると、上側の第1リブ32…の3個の交点の下方に、下側の第2リブ33…の3個の交点が位置している(図4参照)。また第1リブ32…および第2リブ33…の前端は、本体部31の前端から長さaの脆弱部31pを挟んで後方に位置している(図4参照)。
次に、図2、図3および図5に基づいてロアメンバ27,27の構造を説明する。左右のロアメンバ27,27は鏡面対称な部材であるため、代表として左側のロアメンバ27の構造を説明する。
CFRP製のロアメンバ27の本体部34は、アッパーメンバ22の前端から前下方に延びる第1部分34aと、該1部分34aの前端から第1屈曲部34dを介して上向きに屈曲して前方に略水平に延びる第2部分34bと、第2部分34bの前端から第2屈曲部34eを介して車幅方向内側に屈曲して車幅方向内側に略水平に延びる第3部分34cとを備える。本体部34は、車幅方向内面および後面を構成する底壁35と、底壁35の上縁から車幅方向外側および前方に延びる第1側壁36と、底壁35の下縁から車幅方向外側および前方に延びる第2側壁37とを備えて断面コ字状に形成される。
第1部分34aの後端には、アッパーメンバ22の前端にボルト28…で結合される第1取付フランジ34f…が設けられ、第3部分34cの車幅方向内端には、バンパービームイクステンション25に接続される第2取付フランジ34gが設けられる。
本体部34の内部には、底壁35から車幅方向外側および前側に向けて第1、第2側壁36,37と平行に張り出す1枚の横リブ38と、この横リブ38に交差して底壁35および第1、第2側壁36,37に接続される複数の縦リブ39…とが、格子状に形成される。複数の縦リブ39…のうちの1枚39(1)は、ロアメンバ27の第1屈曲部34dの位置に配置されている(図5(A)参照)。
次に、図2、図3および図6に基づいてバンパービーム29の構造を説明する。
バンパービーム29の本体部40は底壁40aおよび上下の側壁40b,40cを有して前面が開放するコ字状断面の部材であって、上下の側壁40b,40cの前縁からはフランジ40d,40eが上下方向に突出する。本体部40の内面に車幅方向に延びる1本の横リブ41と、横リブ41に直交して上下方向に延びる複数の縦リブ42…とが格子状に形成されており、横リブ41の後縁は底壁40aに接続され、縦リブ42…の後縁および上下縁は底壁40aおよび側壁40b,40cに接続される。本体部40の車幅方向両端には左右一対の繊維強化樹脂製の板状の端部ブラケット43,43が設けられる。
バンパービーム29の上下の側壁40b,40c間の距離は、バンパービーム29の車幅方向中央部でH1であり、車幅方向両端部で前記H1よりも小さいH2である。つまり、バンパービーム29の上下方向の幅は、車幅方向中間部で車幅方向両端部よりも大きくなっている(図6参照)。従って、バンパービーム29の高さと衝突の相手部材の高さとが異なっていても、衝突荷重をバンパービーム29で受け止めて衝撃吸収することができる確率が増加する。
図7(A)に示すように、バンパービームイクステンション25の本体部31の第1側壁31a、第2側壁31b、第3側壁31c、第1底壁31dおよび第2底壁31eは、カーボンファイバーの連続繊維44A…,44B…を平織した織布を樹脂で固めたもので構成されるが(図8(A)参照)、それ以外の第1リブ32…および第2リブ33…を含む他の部分は、ランダムに絡み合ったカーボンファイバーの不連続繊維45…を樹脂で固めたもので構成される(図8(B)参照)。また第1側壁31a、第2側壁31bおよび第1底壁31dの内面と、第3側壁31c、第2側壁31bおよび第2底壁31eの内面とは、カーボンファイバーの不連続繊維45…を樹脂で固めた薄膜で被覆される。
図7(B)に示すように、ロアメンバ27の本体部34の底壁35は、カーボンファイバーの連続繊維44A…,44B…を平織した織布を樹脂で固めたもので構成されるが、それ以外の第1側壁36、第2側壁37、横リブ38、縦リブ39…等は、ランダムに絡み合ったカーボンファイバーの不連続繊維45…を樹脂で固めたもので構成される。また底壁35の内面は、カーボンファイバーの不連続繊維45…を樹脂で固めた薄膜で被覆される。
図7(C)に示すように、バンパービーム29の本体部40の底壁40a、上下の側壁40b,40cおよび上下のフランジ40d,40eは、カーボンファイバーの連続繊維44A…,44B…を平織した織布を樹脂で固めたもので構成されるが、それ以外の横リブ41、縦リブ42…、端部ブラケット43,43等は、ランダムに絡み合ったカーボンファイバーの不連続繊維45…を樹脂で固めたもので構成される。また本体部40の内面は、カーボンファイバーの不連続繊維45…を樹脂で固めた薄膜で被覆される。
次に、図9に基づいて、バンパービーム29をプレス成形する成形型46の構造を説明する。
図9(A)に示すように、バンパービーム29をプレス成形する成形型46は、本体部40の外表面を成形する凹状のキャビティ47aを有する雌型47と、本体部40の内表面を成形する凸状のコア48aを有する雄型48とからなり、コア48aには横リブ41を成形する横溝48bおよび縦リブ42…を成形する縦溝48c…が形成される。成形型46を型開きした状態で、雌型47のキャビティ47aの上部に連続繊維の第1プリプレグ49と、不連続繊維の第2プリプレグ50とが予備加熱した状態で配置される。本実施の形態では、第2プリプレグ50の不連続繊維の長さは、0.9mm〜4.4mmに設定される。
プリプレグは、カーボンファイバー、グラスファイバー、アラミドファイバー等の連続繊維よりなる織布やUD(連続繊維を一方向に引き揃えたシート)、あるいは不連続繊維のマットを補強材とし、それに半硬化の熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂やポリエステル樹脂等)、あるいは熱可塑性樹脂(ナイロン6やポリプロピレン等)を含浸させたもので、成形型の形状になじむ柔軟性を有している。熱硬化性樹脂の場合、複数枚のプリプレグを積層状態で成形型内に挿入して圧力を加えながら例えば130°C程度に加熱すると、熱硬化性樹脂が硬化して繊維強化樹脂製品が得られる。熱可塑性樹脂の場合、予備加熱した複数枚のプリプレグを積層状態で成形型内に挿入して加圧成形し、その後冷却すると繊維強化樹脂製品が得られる。
続いて、図9(B)に示すように、雌型47に対して雄型48を下降させると、第1プリプレグ49が雌型47のキャビティ47aと雄型48のコア48aとによってプレスされ、コ字状断面を有するバンパービーム29の本体部40が成形される。このとき、不連続繊維を補強材とする第2プリプレグ50は容易に変形可能であるため、第1プリプレグ49と雄型48のコア48aとによって挟まれた第2プリプレグ50はコア48aの横溝48bおよび縦溝48c…内に流入し、バンパービーム29の横リブ41、縦リブ42…および端部ブラケット43,43を同時に成形する。また第2プリプレグ50の一部は本体部40の内表面に沿って薄い膜状に積層される。
続いて、図9(C)に示すように、成形型46から取り出したバンパービーム29の本体部40のフランジ40d,40eの余剰部分を切断することで、バンパービーム29を完成する。
以上のように、単純なコ字状断面を有するバンパービーム29の本体部40の繊維強化樹脂を強度の高い平織にした連続繊維44A…,44B…で補強し、複雑な形状を有するために平織した連続繊維で補強することが困難な横リブ41、縦リブ42…および端部ブラケット43,43の繊維強化樹脂を、成形の自由度が高い不連続繊維45…で補強したので、バンパービーム29の強度および成形性を両立させることができる。しかも連続繊維を含む第1プリプレグ49および不連続繊維を含む第2プリプレグ50を同一の成形型46内に配置して1工程でバンパービーム29を成形するため、それらを別個に成形して接着や溶着で一体化する場合に比べて製造コストを削減することができる。
以上、バンパービーム29をプレス成形する成形型46について説明したが、バンパービームイクステンション25,25およびロアメンバ27,27も同様の構造の成形型を用いてプレス成形することができる。このように、バンパービーム16、バンパービームイクステンション25,25およびロアメンバ27,27は何れも開断面であるため、軽量であるだけでなく成形型による成形も容易である。
次に、バンパービームイクステンション25に対するバンパービーム29およびロアメンバ27の結合構造を説明する。
図2〜図5に示すように、前後方向に延びるバンパービームイクステンション25の前端の車幅方向内面に、車幅方向に延びるバンパービーム29の車幅方向外端が結合される。このとき、バンパービーム29の端部ブラケット43に、バンパービームイクステンション25の本体部31の第1底壁31dの前部と第2補強フランジ31gの前部とが溶着され、かつバンパービーム29の本体部40の底壁40aに、バンパービームイクステンション25の第1底壁31dに設けた第1連結部31jが溶着される。バンパービームイクステンション25の第1底壁31d、第2補強フランジ31gおよび第1連結部31jはバンパービーム支持部を構成する。
またロアメンバ27の先端の第2取付フランジ34gがバンパービームイクステンション25の第1補強フランジ31fに溶着され、ロアメンバ27の第2側壁37の先端部下面がバンパービームイクステンション25の第2底壁31eから張り出す第5連結部31oの上面に溶着され、かつロアメンバ27の底壁35の先端部がバンパービームイクステンション25の第2底壁31eに設けた第4連結部31nに溶着される。バンパービームイクステンション25の第1補強フランジ31f、第5連結部31oおよび第4連結部31nはロアメンバ支持部を構成する。
尚、ロアメンバ27の本体部31の第2連結部31kおよび第3連結部31mには、フロントバルクヘッド30のサイド部材30cが溶着される。
次に、上記構成を備えた本発明の実施の形態の作用を説明する。
図10に示すように、左右一対のフロントサイドフレーム先端部24,24から車体前方に延びるCFRP製の左右一対のバンパービームイクステンション25,25の前端の車幅方向内面および車幅方向外面に、車幅方向に延びるCFRP製のバンパービーム29と、左右一対のアッパーメンバ22,22の前端から屈曲しながら前下方、前方および車幅方向内方に延びるCFRP製の左右一対のロアメンバ27,27とを接続したので、この状態で左右一対のロアメンバ27,27の車幅方向外面および前面と、左右一対のバンパービームイクステンション25,25の前端面と、バンパービーム29の前面とが平面視で車体前方に向かってU字状に湾曲する形状となる。
このように、CFRPを可能な限り使用することで自動車の前部の車体フレームを軽量化することができるだけでなく、前面衝突の荷重がバンパービーム29に入力してもロアメンバ27,27の前部に入力しても、その衝突荷重をバンパービームイクステンション25,25に伝達して吸収することができ、しかもバンパービーム29がロアメンバ27,27から車体前方に突出しないので車体前部を小型化することができる。
即ち、図10において、前面衝突時の衝突荷重F1がバンパービーム29に入力すると、その衝突荷重F1はバンパービーム29から左右のバンパービームイクステンション25,25に伝達され、衝撃吸収部材であるバンパービームイクステンション25,25の圧壊により効率的に吸収される。またナローオフセット前面衝突時の衝突荷重F2が左右一方のロアメンバ27の前部に入力すると、その衝突荷重F2はロアメンバ27から左右一方のバンパービームイクステンション25に伝達され、衝撃吸収部材であるバンパービームイクステンション25の圧壊により効率的に吸収される。またオフセット前面衝突時の衝突荷重F3が左右一方のロアメンバ27の前部に直接入力すると、その衝突荷重F3は衝撃吸収部材であるバンパービームイクステンション25の圧壊により効率的に吸収される。
図11に示すように、バンパービームイクステンション25が前方からの衝突荷重で圧壊するとき、その本体部31の先端の長さaの範囲の脆弱部31pには第1、第2リブ32…,33…が設けられていないため、その脆弱部31pが容易に座屈することで衝突初期のピーク荷重を低減することができる。
またバンパービーム29、ロアメンバ27およびバンパービームイクステンション25は、連続繊維44A…,44B…で樹脂で固めて構成されて開放断面を有する本体部40,34,31と、不連続繊維45…を樹脂で固めて構成されて本体部40,34,31の内面を接続するリブ41,42…,38,39…,32…,33…とを備えるので、比較的に単純な形状の本体部40,34,31は強度の高い連続繊維44A…,44B…で補強し、比較的に複雑な形状のリブ41,42…,38,39…,32…,33…は成形性の高い不連続繊維45…で補強することで、強度および成形性を両立することができる。その結果、開放断面の本体部40,34,31の口開きをリブ41,42…,38,39…,32…,33…によって阻止し、軽量な構造で高い強度を得ることができる。
特に、バンパービーム29およびロアメンバ27は、コ字状断面を有する本体部40,34の内部に複数の縦リブ42…,39…を有するので、本体部40,34の捩じれや曲げに対する強度を縦リブ42…,39…によって高め、衝突荷重で本体部40,34および縦リブ42…,39…を端部側から順次圧壊して衝突エネルギーを効率的に吸収することができる。
またバンパービームイクステンション25は、S字状断面を有する本体部31の内部に第1、第2リブ32…,33…を車体前後方向に沿って複数設けたので、ピーク荷重を低く抑えながら衝突初期から衝突末期までの長い期間に亙って安定した荷重で衝突エネルギーを吸収することができ、しかも第1リブ32…のX字状の交点の車体前後方向位置と、第2リブ33…のX字状の交点の車体前後方向位置とを一致させたので、第1、第2リブ32…,33…によって衝撃吸収部材の本体部31の口開き一層確実に防止しながら、衝撃吸収部材を先端側から段階的に圧壊することができる。
またバンパービームイクステンション25の本体部31の第2側壁31bが車幅方向の抜き勾配を有するので、バンパービームイクステンション25を成形型から容易に型抜きすることができる。
ところで、各々のロアメンバ27は、アッパーメンバ22の前端から前下方に延びる第1部分34aと、第1部分34aの前端の第1屈曲部34dで屈曲して水平方向前方に延びる第2部分34bと、第2部分34bの前端の第2屈曲部34eで車幅方向内側に屈曲してバンパービームイクステンション25の前端に接続される第3部分34cと備えるので、ナローオフセット前面衝突によりロアメンバ27の前端に前後方向の衝突荷重が入力すると、ロアメンバ27が第1、第2屈曲部34d,34eで折れ曲がって衝突荷重を効果的に吸収できなくなる可能性がある。
しかしながら、各々のロアメンバ27は、底壁35および第1、第2側壁36,37を有して車幅方向外向きに開口するコ字状断面の本体部34と、底壁35および第1、第2側壁36,37を接続する横リブ38および縦リブ39…とを備え、底壁35は連続繊維44A…,44B…を樹脂で固めた連続繊維強化樹脂で構成され、第1、第2側壁36,37、横リブ38および縦リブ39…は不連続繊維45…を樹脂で固めた不連続繊維強化樹脂で構成されるので、衝突荷重が上下方向に屈曲する第1屈曲部34dを折り曲げるように作用しても底壁35の連続繊維強化樹脂が抵抗し、かつ第1、第2側壁36,37、横リブ38および縦リブ39…が抵抗して第1屈曲部34dの破断を阻止することできる。また衝突荷重が左右方向に屈曲する第2屈曲部34eを折り曲げるように作用しても第1、第2側壁36,37、横リブ38および縦リブ39…が抵抗して第2屈曲部34eの破断を阻止することができる。
これにより、前面衝突の荷重でロアメンバ27を前部側から後部側に向けて順次圧壊して衝突荷重を効果的に吸収することができる。しかもロアメンバ27の底壁は35第2屈曲部34eにおいて湾曲するだけなので、ロアメンバ27を成形型でプレス成形することができる。
各々のロアメンバ27のリブを、ロアメンバ27の長手方向に沿って延びる横リブ38と、横リブ38に交差する複数の縦リブ39…とで格子状に形成したので、横リブ38および縦リブ39…の肉厚を薄くして軽量化を図りながらロアメンバ27の本体部34を効果的に補強し、衝突荷重で本体部34、横リブ38および縦リブ39…を圧壊して衝突エネルギーを吸収することができる。
また複数の縦リブ39…の一つを第1屈曲部34dに配置して補強したので、オフセット前面衝突の荷重で第1屈曲部34dに大きな曲げモーメントが作用したとき、ロアメンバ27が第1屈曲部34dで破断するのを防止して衝撃吸収性能を確保することができる。しかも横リブ38は底壁35に接続されてロアメンバ27の前端から後方に延びるので、連続繊維44A…,44B…で補強された高強度の底壁35を横リブ38で更に補強することで、オフセット前面衝突の荷重がロアメンバ27の前端に入力したとき、ロアメンバ27が第1屈曲部34dや第2屈曲部34eで破断するのを防止して衝撃吸収性能を確保することができる。
またロアメンバ27の前端に第2取付フランジ34gを設けたので、ロアメンバ27の前端をバンパービームイクステンション25の前端に容易に接続することができる。しかも第2取付フランジ34gは不連続繊維45…を樹脂で固めた不連続繊維強化樹脂で構成されるので、ロアメンバ27の本体部34および第2取付フランジ34gを一度に成形して加工工数を削減することができる。
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
例えば、本発明の繊維強化樹脂はCFRPに限定されるものではなく、任意の繊維で補強したFRPを採用することができる。
また実施の形態ではバンパービームイクステンション25の前端にバンパービーム29およびロアメンバ27が接続されているが、ロアメンバ27は必ずしもバンパービームイクステンション25に接続されている必要はない。
11 キャビン
16 フロント壁部
22 アッパーメンバ
23 フロントサイドフレーム基部(フロントサイドフレーム)
24 フロントサイドフレーム先端部(フロントサイドフレーム)
25 バンパービームイクステンション
27 ロアメンバ
29 バンパービーム
31 本体部
31d 第1底壁(バンパービーム支持部)
31f 第1補強フランジ(ロアメンバ支持部)
31g 第2補強フランジ(バンパービーム支持部)
31j 第1連結部(バンパービーム支持部)
31n 第4連結部(ロアメンバ支持部)
31o 第5連結部(ロアメンバ支持部)
31p 脆弱部
32 第1リブ(リブ)
33 第2リブ(リブ)
34 本体部
38 横リブ(リブ)
39 縦リブ(リブ)
40 本体部
41 横リブ(リブ)
42 縦リブ(リブ)
44A 連続繊維
44B 連続繊維
45 不連続繊維

Claims (7)

  1. キャビン(11)のフロント壁部(16)の下部から車体前方に延びる左右一対のフロントサイドフレーム(23,24)と、前記フロントサイドフレーム(23,24)の前端から車体前方に延びる繊維強化樹脂製の左右一対のバンパービームイクステンション(25)と、車幅方向に延びて前記左右一対のバンパービームイクステンション(25)の前端の車幅方向内壁に接続される繊維強化樹脂製のバンパービーム(29)と、前記キャビン(11)のフロント壁部(16)の車幅方向外端上部から車体前方に延びる左右一対のアッパーメンバ(22)と、前記左右一対のアッパーメンバ(22)の前端から屈曲しながら前下方、前方および車幅方向内方に延び、前記左右一対のバンパービームイクステンション(25)の前端の車幅方向外壁に接続される繊維強化樹脂製の左右一対のロアメンバ(27)とを備え、
    前記左右一対のロアメンバ(27)の車幅方向外面および前面と、前記左右一対のバンパービームイクステンション(25)の前端面と、前記バンパービーム(29)の前面とは、平面視で車体前方に向かってU字状に湾曲することを特徴とする自動車の車体フレーム構造。
  2. 前記バンパービームイクステンション(25)の前端部の車幅方向内面に、前記バンパービーム(29)の車幅方向外端を支持するバンパービーム支持部(31d,31g,31j)を備えるとともに、前記バンパービームイクステンション(25)の前端部の車幅方向外面に、前記ロアメンバ(27)の車幅方向内向きに屈曲した前端を支持するロアメンバ支持部(31f,31n,31o)を備えることを特徴とする、請求項1に記載の自動車の車体フレーム構造。
  3. 前記バンパービームイクステンション(25)の前端部に脆弱部(31p)を備えることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の自動車の車体フレーム構造。
  4. 前記バンパービーム(29)、前記ロアメンバ(27)および前記バンパービームイクステンション(25)は、開放断面を有する本体部(40,34,31)と、前記本体部(40,34,31)の内面を接続するリブ(41,42,38,39,32,33)とを備え、前記本体部(40,34,31)は連続繊維(44A,44B)を樹脂で固めて構成され、前記リブ(41,42,38,39,32,33)は不連続繊維(45)を樹脂で固めて構成されることを特徴とする、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の自動車の車体フレーム構造。
  5. 前記バンパービーム(29)および前記ロアメンバ(27)は、コ字状断面を有する本体部(40,34)の内部に複数の縦リブ(42,39)を有することを特徴とする、請求項4に記載の自動車の車体フレーム構造。
  6. 前記バンパービームイクステンション(25)は、S字状断面を有する本体部(31)の内部に複数のX字状のリブ(32,33)を有することを特徴とする、請求項4に記載の自動車の車体フレーム構造。
  7. 前記バンパービーム(29)の上下方向幅は、車幅方向中央部において車幅方向端部よりも大きいことを特徴とする、請求項1〜請求項6の何れか1項に記載の自動車の車体フレーム構造。
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