JP2013139059A - 1枚刃ガンドリル - Google Patents

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Abstract

【課題】先端部の強度を低下させることなく、クーラントの噴射量を増大させて切りくずの排出能力を向上させ、尚且つ切刃の冷却能力も向上させた1枚刃ガンドリルを提供すること。
【解決手段】内部にクーラントが流通するシャンク部流通路4aとチップ部流通路4bとが形成された略棒状の工具本体1の先端部に、すくい面5と、第1逃げ面6aと、第2逃げ面6bと、切刃7と、第1クリアランス面8aと、第2クリアランス面8bと、が形成され、クーラントの噴射口である略円形状の第1開口部が第1逃げ面6a内にのみ形成され、クーラントの別の開口部である略U字状の第2開口部6bが第1クリアランス面8aと、第2クリアランス面8bとにまたがって形成されている1枚刃ガンドリルD。
【選択図】図1

Description

本発明は工具本体内部にクーラントの流通路が形成された1枚刃ガンドリルに関する。
小径の深穴加工を行う場合、一般的にガンドリルが使用され、ガンドリルの中でも特に1枚刃のガンドリルが多用される。1枚刃ガンドリルには、その後端部から供給されたクーラント(切削油)が先端部から噴射されるようにするために、内部に流通路が形成されているものも存在する(特許文献1参照)。クーラントがガンドリルの先端から噴射されると、切刃と穴底との間で生じる摩擦力が低減し、切刃も冷却される。またクーラントには生成された切りくずを加工穴の外へと排出する機能もある。
特開2003−165010
上述したようなクーラントの効果のうち、切りくずの排出効果はガンドリルの側部に形成された切りくず排出溝を通過するクーラントの流量によって左右され、この流量が多いほど排出効果は高くなる。
しかしながら、加工穴の内壁と切りくず排出溝との間に形成される空間は非常に狭く且つ長さが長いため、そこに生じる圧損は大きい。従って、現行のガンドリルは深穴加工に求められる切りくず排出能力を十分に満たしているとは決していえない状態にある。
この問題の一解決策として、クーラントの噴射口の面積を大きくするという方法が試みられているが、噴射口の面積を増大させることはガンドリルの先端部の強度低下につながるため、この方法は十分に有効なものとはなっていない。
またガンドリルには別の問題も存在している。それは、クーラントによる切刃の冷却効果に関してである。現行のガンドリルでは、深穴加工の際に求められている冷却機能を十分に発揮できないでいる。
そこで本発明は上述した問題を鑑みて開発されたものである。すなわち、先端部の強度を低下させることなく、切りくず排出溝内を流れるクーラントの流量を増大させて切りくずの排出能力を向上させ、尚且つ切刃の冷却能力も向上させた1枚刃ガンドリルを提供することを目的とする。
本発明の1枚刃ガンドリルは上記課題を解決するために、先端部に略円形の第1開口部(第1噴射口)と略U字状の第2開口部(第2噴射口)とが形成され、第1開口部は中心刃の逃げ面である第1逃げ面に形成され、第2開口部は第1逃げ面に交差する第1クリアランス面と、この第1クリアランス面に交差する第2クリアランス面と、にまたがって形成されている。
すなわち、本発明の1枚刃ガンドリルは略棒状の工具本体を備え、この工具本体の側面には切りくずを排出するための切りくず排出溝が形成され、前記工具本体の内部にはクーラントが流通するための流通路が形成され、前記工具本体の一方の先端部には切刃と、逃げ面と、すくい面と、第1クリアランス面と第2クリアランス面と、が形成され、前記第1クリアランス面と前記逃げ面とは、前記すくい面に直交し且つ前記工具本体の中心軸線を含む仮想的な平面上で交差し、前記第2クリアランス面は前記第1クリアランス面と交差し、且つ前記切りくず排出溝の壁面のうち前記すくい面として機能しない方の壁面とも交差し、前記流通路の噴射用の開口部は第1開口部と、略U字状の第2開口部と、の二つからなり、前記第1開口部は、前記逃げ面にのみ形成され、前記第2開口部は前記第1クリアランス面と前記第2クリアランス面とにまたがって形成され、且つ第2開口部のいずれの部分も前記第1クリアランス面および前記第2クリアランス面にのみ形成されている。
より好適には、上述した1枚刃ガンドリルであって、さらにその切刃が中心刃と外周刃とからなり、前記中心刃と前記外周刃とは180°よりも小さい角度で交差し、且つその交点が前記工具本体の中心軸線から外れた場所に位置し、前記中心刃に対して平行に見たときに、前記第2クリアランス面は前記すくい面に直交する面に対して30°〜45°の範囲で交差するように形成された1枚刃ガンドリルである。
別の好適な発明としては、上述した1枚刃ガンドリルであって、さらに前記流通路が供給側の開口部とつながるシャンク部流通路と、該シャンク部流通路に連続して形成され且つ噴射用の開口部とつながるチップ部流通路と、からなり、前記シャンク部流通路が前記工具本体の断面のほぼ全体に亘って形成され、前記チップ部流通路が前記第1開口部につながる第1チップ部流通路と、前記第2開口部につながる第2チップ部流通路と、からり、前記第1チップ部流通路と前記第2チップ部流通路とが互いに交わらないように形成された1枚刃ガンドリルである。
別の好適な発明としては、上述した1枚刃ガンドリルであって、さらに前記第1チップ部流通路の開口部のうち前記シャンク部流通路につながる方の開口部が、前記シャンク部流通路の開口部の内側に形成され、前記第2チップ部流通路の開口部のうち前記シャンク部流通路につながる方の開口部が、前記シャンク部流通路の開口部の内側に形成された1枚刃ガンドリルである。
本発明の1枚刃ガンドリルによれば、従来の1枚刃ガンドリルと比べて切りくず排出溝を通過するクーラントの流量が大きいので、切りくず排出能力が高い。切りくずが加工穴外へスムーズに排出されることで、ドリルが切りくずを噛み込んだり、切りくずが加工穴の内壁を傷つけたりすることが少なくなる。
また、本発明の1枚刃ガンドリルによれば、従来のガンドリルよりも切刃に対してクーラントが効率よく噴射されるので、切刃の冷却能力が高くなっている。、
本発明の1枚刃ガンドリルは切りくずの排出能力および切刃の冷却能力が、従来よりも向上しているにもかかわらず、先端部の強度の低下が最小限に抑えられており、一般的な穴加工に十分対応できるものとなっている。
図1は本実施形態の1枚刃ガンドリルの正面図および断面図である。 図2は本実施形態の1枚刃ガンドリルの先端部を示す側面図である。 図3は図1のC−C断面図である。 図4はクリアランス面の傾斜角度を説明するための説明図である。 図5は別の実施形態における第1開口部の形状を示す説明図である。 図6は別の実施形態におけるシャンク部流通路とチップ部流通路との接続の状態を示す図である。 図7Aは実施例1の正面図と先端の形状を示す左側面図である。 図7Bは実施例2の正面図と先端の形状を示す左側面図である。 図7Cは比較例1の正面図と先端の形状を示す左側面図である。 図7Dは比較例2の正面図と先端の形状を示す左側面図である。 図7Eは比較例3の正面図と先端の形状を示す左側面図である。
図1は本実施形態の1枚刃ガンドリルの正面図および断面図である。
図2は本実施形態の1枚刃ガンドリルの先端部を示す側面図である。
図3は図1のC−C断面図である。
[構造]
図1〜図3に示すように、本実施形態の1枚刃ガンドリルDは工具本体1と、ドライバ2とを備え、ドライバ2は工具本体1の一方の端部に取り付けられる。ドライバ2はガンドリルDを工作機械に取り付ける際の把持部として機能する。
工具本体1は略棒状であり、その側面にはV字状の切りくず排出溝3が1条形成されている。切りくず排出溝3は工具本体1の先端から後端にかけて直線的に形成される。生成された切りくずは切りくず排出溝3内を流れるクーラントによって押し流され、加工穴外へと排出される。
図1の断面図が示すように、工具本体1の内部にはクーラントが流通するための流通路が形成されており、その流通路はシャンク部流通路4aとチップ部流通路4bとの二つの部分で構成されている。
シャンク部流通路4aは工具本体1のドライバ2が設けられた側の端部に形成されたクーラントの供給口(供給側開口部)とつながる流通路であって、流通路全体の半分以上を占める。図1においては、S1で示された箇所がシャンク部流通路4aが形成された部分である。シャンク部流通路4aは図1に示すように、工具本体1の断面形状に沿ってほぼ全体に亘って形成されている。クーラントの流量を増加させるためには、工具本体1のねじり剛性が過度に損なわれない範囲で、限界まで大きくシャンク部流通路4aを形成することが好ましい。
チップ部流通路4bはシャンク部流通路4aに連続して形成され、工具本体1の先端部に形成されたクーラントの噴射口(噴射側開口部)につながっている。図1においては、S2で示された箇所にチップ部流通路4bが形成されている。
チップ部流通路4bは略円形状の第1開口部につながる第1チップ部流通路4b1と、略U字状の第2開口部につながる第2チップ部流通路4b2と、からなる。第1チップ部流通路4b1と第2チップ部流通路4b2とは互いに交差することなく、工具本体1の中心軸線に沿ってほぼ平行に延びて形成されている。
図2に示すように、工具本体1の先端には、すくい面5と、逃げ面6と、切刃7と、クリアランス面8と、が形成されている。
本実施形態の1枚刃ガンドリルDにおいては、切りくず排出溝3の一方の溝壁の端部がすくい面5として機能し、生成された切りくずはすくい面5によって丸められ、適当な長さで切断される。
逃げ面6は第1逃げ面6aと第2逃げ面6bとからなり、両逃げ面とすくい面5との交差稜線部には切刃7が形成される。特に、第1逃げ面6aとすくい面5との交差稜線部に形成される切刃は、加工穴の中心部を切削する中心刃7aとして機能し、第2逃げ面6bとすくい面5との交差稜線部に形成される切刃は、加工穴の外周部分を切削する外周刃7bとして機能する。
図1に示すように、第1逃げ面6aは第2逃げ面6bと鋭角に交差し、その交差部が工具本体1の最も先端になるように、工具本体1のもう一方の端部側に向かって傾斜して形成されている。すなわち、このことを図2を用いて説明すると、第1逃げ面6aは第2逃げ面6bとの交差部を基点に紙面奥側に向かって傾斜している。第1逃げ面6aがこのように形成されることで、加工穴底と第1逃げ面6aとの間で空間が確保される。
第1逃げ面6aと同様に、第2逃げ面6bも第1逃げ面6aとの交差部を基点に紙面奥側に向かって傾斜して形成されている。
クリアランス面8は第1クリアランス面8aと第2クリアランス面8bとからなる。
第1クリアランス面8aと第1逃げ面6aとは、すくい面5に直交し且つ工具本体の中心軸線CLを含む仮想平面F上で、180°で交差している。すなわち、第1クリアランス面8aは第1逃げ面6aの延長面上に形成され、この二つの面は同一平面上に乗っている。
第2クリアランス面8bは第1クリアランス面8aと鈍角に交差する平面であって、切りくず排出溝3の壁面のうちすくい面として機能しない方の壁面とも交差している。また別の言い方をすると、第2クリアランス面8bは第1クリアランス面8aとの交差部からヒール側に向かって傾斜して形成された平面である。
工具本体1の先端の縁の部分には面取り加工が施されている。縁に面取り加工が施されることで、その部分が欠け難くなる。
本実施形態1枚刃ガンドリルDにおいては、クーラントの噴射口である第1開口部および第2開口部の形状と形成箇所とが発明の本質的な要素となっている。
すなわち図2に示すように、1枚刃ガンドリルDにおいて、第1開口部9aは略円形に形成され、且つ第1逃げ面6aの内側にのみに形成される。別の表現を用いれば、略円形状の第1開口部9aは、第1逃げ面6aに隣接する第1クリアランス面8a側にはみ出すことなく、全ての部分が第1逃げ面6a内に収まるように形成される、ということである。
第2開口部9bは楕円の中央部分の片側だけが中心に向かって凹んだような略U字状の形状になっている。そして、第2開口部9bは第1クリアランス面8aおよび第2クリアランス面8bにまたがって、且つ第2開口部9bの一方端部は第1逃げ面6aへはみ出さないように形成されている。
図3は図1のC−C断面図である。図3に示すように、本実施形態のガンドリルDにおいては、シャンク部流通路4aとチップ部流通路4bとは、チップ部流通路4bの供給口側の開口部がシャンク部流通路4aの噴射口側の開口部の内側に含まれるように接続している。このような位置関係でシャンク部流通路4aとチップ部流通路4bとが設計されると、クーラントがシャンク部流通路4aからチップ部流通路4bへと移動するときに生じる圧損が最小限に抑えられる。
本実施形態の1枚刃ガンドリルDでは、第2開口部9bの一部が第2クリアランス面8bへ伸びて形成されているため、切りくず排出溝3を流れるクーラントのエネルギーの損失が最小限になる。
すなわち、従来のガンドリルでは噴射口から噴射されたクーラントは一度、加工穴の穴底へ衝突してから切りくず排出溝へと流入していた。そのため、クーラントが加工穴の底に衝突した際に、クーラントが持っていたエネルギーの一部が失われ、結果として切りくず排出溝内を通過するクーラントの流量が低下していた。
しかしながら、本実施形態の1枚刃ガンドリルDにおいては、クリアランス面8にも開口部(噴射口)が形成されているため、そこから噴射されたクーラントは加工穴底に衝突することなく、直接切りくず排出溝3に流入する。そのため、衝突によるエネルギーの損失が抑制され、従来よりも大きい流量でクーラントは切りくず排出溝3を流れる。
さらに、第2クリアランス面8bに第2開口部9bの一部を伸ばして形成することにより、クーラントの冷却効果が高まる。すなわち、従来の噴射方法の場合、クーラントが一旦加工穴底に衝突するため、衝突の際にクーラントが高温になった加工穴底から熱を受け取り、切刃を冷却する以前にすでにクーラントの温度が上昇してしまう。
しかしながら、本実施形態の1枚刃ガンドリルDにおいては、第2クリアランス面8bに形成された第2開口部9bから噴射されたクーラントが、切刃7に対して切りくず排出溝3側から直接的に付与されるので、クーラントの温度上昇が抑制され、クーラントの冷却効果が高くなる。
また、第1開口部9aが第1逃げ面6aに形成されることで、ここから噴射されたクーラントは、切刃7を挟んで第2開口部9bとは反対側から切刃7に対して直接付与される。
このように、クーラントが切刃7に対して異なる二つの方向から直接付与されることで、本実施形態の1枚刃ガンドリルDの切刃7は従来のガンドリルよりも温度が上昇しにくくなる。
第2開口部9bの形成箇所を第1クリアランス面8aおよび第2クリアランス面8bにのみ形成し、且つ第1開口部9aの形成箇所を第1逃げ面6a内のみとすることで、第2開口部9bの端部であって第1逃げ面6aに近い方の端部と、第1開口部9aと、の間に肉厚が確保される。このことにより、1枚刃ガンドリルDは通常の切削条件での切削に適用可能な程度の剛性を持つことができる。
図4はクリアランス面の傾斜角度を説明するための説明図である。図4に示すように、中心刃7aに平行に、すなわち中心刃7aなりに第2クリアランス面8bを見たときに、すくい面5に直交する面に対して30°〜45°の範囲で交差するように形成されることが好ましい。すなわち、図4のθの角度が30°〜45°であると、クーラントがより効果的に切りくず排出溝3へと噴射される。
本発明の1枚刃ガンドリルは上述した実施形態だけでなく、他にも様々なものがある。
例えば、図5に示すように、第1開口部の形状が三角形((a)参照)、角が丸まった略三角形((b)参照)、半円((c)参照)、弓形((d)参照)等の形状が可能である。すなわち、第1逃げ面内にのみ形成される限り、第1開口部はどのような形状であっても構わない。また当然、第1開口部の面積が大きいほどクーラントの流量は増加する。
また別の実施形態として、チップ部流通路4bの一部がシャンク部流通路4aの外側へはみ出して形成されたものも可能である。すなわち、図6に示すように、チップ部流通路4b1、4b2の開口部の一部が、シャンク部流通路4aの開口部の外側へはみ出るように、互いを接続させることも可能である。この場合当然、開口部9a、9bの一部もシャンク部流通路4aの延長線からはみ出して形成されることになる。
ただしこの場合、従来の1枚刃ガンドリルよりはクーラントの流量は増加するが、上述した実施形態よりはクーラントの流量は低下する。
また、本実施形態では第1逃げ面6aと第1クリアランス面8aとは180°で交差しているが、これら二つの面は180°よりも小さい角度で交差するように形成されてもよい。すなわち、第1クリアランス面8aを第1逃げ面6aと鈍角に交差させ、第1クリアランス面8aと加工穴底との間の空間をより大きく確保するようにしても良い。
[実施例]
次に、本発明の実施例のガンドリルと、比較例のガンドリルとを比較実験した結果を以下に示す。なお、実施例および比較例の形状を図7A〜図7Eに示す。
なお、実施例2ではチップ部流通路の縁の部分がシャンク部流通路の外側にはみ出して形成されている。
また、比較例1では第1クリアランス面と第2クリアランス面とにまたがって形成された開口部が、実施例1のような略U字状ではなく、円形に形成されている。
また、比較例2では実施例1の第2開口部と同じ形状の開口部が、第1逃げ面と第1クリアランス面とにまたがって形成されている。
また、比較例3では実施例1と同じ形状の第2開口部が実施例1と同じ箇所に形成されているが、実施例1の第1開口部と同じ形状の円形の開口部が第1逃げ面と第1クリアンス面とにまたがって形成されている。
以下に実施例1〜比較例3までの緒元を示す。
(緒元)
実施例1(図7A参照):直径 6mm
クーラントの供給圧力 5MPa
第1開口部の面積 0.665mm2
第2開口部の面積 2.015mm2
先端から後端までの長さ 200mm
材質 超硬合金

実施例2(図7B参照):直径 6mm
クーラントの供給圧力 5MPa
第1開口部の面積 0.665mm2
第2開口部の面積 2.015mm2
先端から後端までの長さ 200mm
材質 超硬合金

比較例1(図7C参照):直径 6mm
クーラントの供給圧力 5MPa
開口部の総面積(二つの合計)2.27mm2
先端から後端までの長さ 200mm
材質 超硬合金

比較例2(図7D参照):直径 6mm
クーラントの供給圧 5MPa
開口部の面積 2.934mm2
先端から後端までの長さ 200mm
材質 超硬合金

比較例3(図7E参照):直径 6mm
クーラントの供給圧 5MPa
略円形開口部の面積 0.665mm2
略U字状開口部の面積 2.015mm2
先端から後端までの長さ 200mm
材質 超硬合金
(流量に関する実験)
穴径6.05mm、深さ100mmの鉛直上向きに開口した穴に各ガンドリルを挿入し、その後それぞれの1枚刃ガンドリルにクーラントを供給する。5分間クーラントを供給し、その間に穴から溢れ出たクーラントの量を測定する。測定したクーラントの量をクーラントの供給時間で除して流量を算出する。この実験を5回繰り返し、その平均の値を表1に載せた。
(ねじり剛性に関する実験)
各ガンドリルの先端から30mmの位置を固定して1N/mのトルクを加えたときに発生する最大主応力の値をコンピュータ解析で算出した。
算出された最大主応力から、実施例1のねじり剛性に対する他の1枚刃ガンドリルのねじり剛性の比を算出するために、実施例1の最大主応力を実施例2および比較例の最大主応力で除し、その結果を表1に載せた。
(切刃部の温度に関する実験)
各1枚刃ガンドリルを用いて、S45Cの立方体ブロックに深さ100mmの穴を切削速度120m/分で加工し、加工終了後の切刃の温度を測定する。この実験を5回行い、その平均値を表1に載せた。
Figure 2013139059
表1に示すように、実施例1と比較例1とを比べた場合、比較例1の開口部の面積は実施例1の85%であるのに対して、流量は実施例1の79%となっている。このことは、実施例1のクーラントの噴射性能が単純な開口面積の増加による流量増加の程度を超えて向上していることを示している。
また、実施例1と比較例2とを比べた場合、比較例1は実施例1よりも開口部の面積が約9%程大きいにもかかわらず、その流量は実施例1の84%に留まっている。このことは、実施例1のように略U字形状の第2開口部の一部がクリアランス面に形成されること、および第1逃げ面に第1開口部が形成されることが、相乗効果を生み出して噴射性能を向上させることを示している。
各1枚刃ガンドリル切刃温度に関しても、表1に示すように実施例1の切刃の温度が最も低くなっており、実施例1の冷却性能の高さが示された。
実施例1のねじれ剛性は比較例1よりも僅かに大きく、比較例2よりも小さいが、実用上問題ない大きさのねじれ剛性を有する比較例1よりも大きいことから、実施例1のねじれ剛性は十分な大きさを有しているということが示された。
本発明の1枚刃ガンドリルは従来の1枚刃ガンドリルよりも切りくず排出能力が高いので、加工中に切りくずが詰まったり切りくずによって加工穴の内壁が傷付いたりすることが防止される。
D…一枚刃ガンドリル
1…工具本体
2…ドライバ
3…切りくず排出溝
4a…シャンク部流通路
4b…チップ部流通路
4b1…第1チップ部流通路
4b2…第2チップ部流通路
5…すくい面
6…逃げ面
6a…第1逃げ面
6b…第2逃げ面
7…切刃
7a…中心刃
7b…外周刃
8…クリアランス面
8a…第1クリアランス面
8b…第2クリアランス面
9a…第1開口部
9b…第2開口部

Claims (4)

  1. 以下の構成要件を備える1枚刃ガンドリルである。
    1)略棒状の工具本体を備える。
    2)前記工具本体の側面には切りくずを排出するための切りくず排出溝が形成されている。
    3)前記工具本体の内部にはクーラントが流通するための流通路が形成されている
    4)前記工具本体の一方の先端部には切刃と、逃げ面と、すくい面と、第1クリアランス面と第2クリアランス面と、が形成されている。
    5)前記第1クリアランス面と前記逃げ面とは、前記すくい面に直交し且つ前記工具本体の中心軸線を含む仮想的な平面上で交差している。
    6)前記第2クリアランス面は前記第1クリアランス面と交差し、且つ前記切りくず排出溝の壁面のうち前記すくい面として機能しない方の壁面とも交差している。
    7)前記流通路の噴射側の開口部は第1開口部と、略U字状の第2開口部と、の二つからなる。
    8)前記第1開口部は、前記逃げ面にのみ形成されている。
    9)前記第2開口部は前記第1クリアランス面と前記第2クリアランス面とにまたがって形成され、且つ第2開口部のいずれの部分も前記第1クリアランス面および前記第2クリアランス面にのみ形成されている。
  2. 以下の構成要件をさらに備える請求項1に記載の1枚刃ガンドリル
    1)前記切刃は中心刃と外周刃とからなる。
    2)前記中心刃と前記外周刃とは180°よりも小さい角度で交差し、且つその交点は前記工具本体の中心軸線から外れた場所に位置する。
    3)前記中心刃に対して平行に見たときに、前記第2クリアランス面は前記すくい面に直交する面に対して30°〜45°の範囲で交差するように形成されている。
  3. 以下の構成要件をさらに備える請求項1に記載の1枚刃ガンドリル
    1)前記流通路は、供給側の開口部とつながるシャンク部流通路と、該シャンク部流通路に連続して形成され且つ噴射側の開口部とつながるチップ部流通路と、からなる。
    2)前記シャンク部流通路は前記工具本体の断面のほぼ全体に亘って形成されている。
    3)前記チップ部流通路は前記第1開口部につながる第1チップ部流通路と、前記第2開口部につながる第2チップ部流通路と、からなる。
    4)前記第1チップ部流通路と前記第2チップ部流通路とは互いに交わらないように形成されている。
  4. 以下の構成要件をさらに備える請求項3に記載の1枚刃ガンドリル。
    1)前記第1チップ部流通路の開口部のうち前記シャンク部流通路につながる方の開口部は、前記シャンク部流通路の開口部の内側に形成されている。
    2)前記第2チップ部流通路の開口部のうち前記シャンク部流通路につながる方の開口部は、前記シャンク部流通路の開口部の内側に形成されている。
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