JP2013138611A - ロータに用いる固定用樹脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】機械的強度に優れるロータを提供する。
【解決手段】固定用樹脂組成物は、複数の穴部150が設けられているローターコア110と、穴部150に挿入された磁石120と、穴部150と磁石130との離間部に設けられた固定部材130と、を備えるロータ100のうち固定部材130の形成に用いられる。固定用樹脂組成物は、エポキシ樹脂を含む熱硬化性樹脂(A)と、硬化剤(B)と、無機充填剤(C)と、を含む。無機充填剤(C)の含有量は、固定用樹脂組成物の合計値100質量%に対して、50質量%以上である。
【選択図】図1

Description

本発明は、ロータに用いる固定用樹脂組成物に関する。
近年、ロータの技術分野においては、ローターコアに設けられた穴部に永久磁石を挿入し、穴部と永久磁石との間に液状樹脂を充填することにより、永久磁石をローターコアに固定する技術が用いられている。この技術分野においては、通常、液状樹脂として、ウレタン樹脂やエポキシ樹脂等が用いられている。このような技術は、例えば、特許文献1に記載されている。
また、特許文献2には、モータを封止するために用いる、モータ封止用エポキシ樹脂および、これを硬化してなる成形品が記載されている。この成形品においては、作業環境性、生産性、耐熱性、熱伝導性、耐溶剤性、高湿耐水性および低い線膨張係数が得られると記載されている。このため、特許文献2に記載の成形品は、モータのハウジングに用いられると考えられる。
また、特許文献3に記載のロータは、永久磁石を収容する第1穴部の側面に、第1穴部と連通しかつロータの回転方向に沿う第2穴部が形成された構造を有する。この第2穴部に樹脂が充填されること又はバネが配置されることにより、ロータの回転方向において永久磁石が第1穴部の側壁から受ける応力が緩和される。これにより、永久磁石の割れを防止できると記載されている。同文献には、樹脂として、シリカを充填したエポキシ樹脂を採用できると記載されているが、具体的なシリカの充填量はまったく記載されていない。また、同文献には、樹脂を穴部に充填する手法は記載されていない。
また、ローターコアの穴部と磁石との間に液状樹脂を充填する手法として、先入れ手法と塗りつけ手法の2つが存在する。先入れ手法は、次の工程を有する。まず、ローターコアの穴部に液状樹脂をディスペンサにより充填する。この後、液状樹脂が充填された穴部に磁石を挿入する。先入れ手法は特許文献4及び5に記載されている。一方、塗りつけ手法は、次の工程を有する。まず、磁石に液状樹脂をハケで塗布する。液状樹脂が塗布された磁石を、ローターコアの穴部に挿入する。塗りつけ手法は特許文献6に記載されている。
特開2007−236020号公報 特開2009−13213号公報 特開2002−359942号公報 特開2005−304247号公報 特開平11−98735号公報 特開2003−199303号公報
しかしながら、上述の技術においては、液状樹脂を用いているため、永久磁石を固定する樹脂は機械的強度に改善の余地を有していた。また、特許文献2に記載のエポキシ樹脂は、モータ全体を覆うことを目的としている。このため、特許文献2に記載の樹脂を、永久磁石を固定する目的で用いることは難しい。
また、特許文献3には、ローターコアの穴部と磁石との間に樹脂を充填する手法が明確に記載されていない。しかし、特許文献3の出願当時の技術常識、及び特許文献4〜6に記載の充填手法を踏まえると、特許文献3に記載の充填方法には、液状の樹脂を充填する手法が採用されると言える。なお、特許文献3には、固形の樹脂を充填するための治具や治具を用いた充填方法は記載されていない上に、液状の樹脂を採用する事の課題も記載されていない。
ここで、特許文献3に記載の樹脂の充填方法に、特許文献4〜6に記載のいずれの液状の樹脂の充填方法を用いても、液状樹脂に50質量%ものシリカを添加された場合には、シリカが過剰に添加された液状樹脂をうまく充填することができないという考えに至るのが通常である。
したがって、シリカを添加したとしても、シリカの添加量は、液状樹脂全体に対して多くとも10質量%以下としようとするのが通常の考え方である。
そこで、本発明者が検討した結果、インサート成形などの成形方法を適切に選択することにより、無機充填剤の含有量を樹脂全体の50質量%以上にまで高めつつも、無機充填剤を含有する樹脂の充填性の低下を抑制できることを見出した。
本発明は、以下のとおりである。
[1]
回転シャフトに固設され、前記回転シャフトの周縁部に沿って配置されている複数の穴部が設けられている、ローターコアと、
前記穴部に挿入された磁石と、
前記穴部と前記磁石との離間部であって、前記磁石の側壁のうちの少なくとも前記ローターコアの内周縁側に位置する側壁上に設けられて前記磁石を固定する固定部材と、を備えるロータのうち前記固定部材の形成に用いる固定用樹脂組成物であって、
エポキシ樹脂を含む熱硬化性樹脂(A)と、
硬化剤(B)と、
無機充填剤(C)と、を含み、
前記無機充填剤(C)の含有量が、前記固定用樹脂組成物の合計値100質量%に対して、50質量%以上である、固形の固定用樹脂組成物。
[2]
[1]に記載の固定用樹脂組成物において、
粉末状、顆粒状、又はタブレット状である、固定用樹脂組成物。
本発明によれば、機械的強度に優れるロータが提供される。
上述した目的、およびその他の目的、特徴および利点は、以下に述べる好適な実施の形態、およびそれに付随する以下の図面によってさらに明らかになる。
本発明の実施の形態におけるロータを模式的に示す上面図である。 本発明の実施の形態におけるインサート成形用金型を模式的に示す上面図である。 本発明の実施の形態におけるロータの一部を模式的に示す拡大図である。 本発明の実施の形態におけるロータの一部を模式的に示す断面図である。 本発明の実施の形態におけるロータを模式的に示す断面図である。 本発明の実施の形態におけるロータを模式的に示す断面図である。 変形例におけるロータを模式的に示す上面図である。 変形例におけるロータを模式的に示す上面図である。 変形例におけるロータを模式的に示す上面図である。
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
図1は、本発明の実施の形態におけるロータの上面図である。図3は、本発明の実施の形態におけるロータの一部の拡大図である。図4は、本発明の実施の形態におけるロータの一部の断面図である。図5は、ロータの構成を示す断面図である。
本実施の形態のロータ100は、回転シャフト(シャフト170)に固設され、回転シャフトの周縁部に沿って配置されている複数の穴部150が設けられている、ローターコア110と、穴部150に挿入された磁石120と、穴部150と磁石120との離間部に充填された、固定用樹脂組成物を硬化してなる固定部材130と、を備える。
ローターコア110は、薄板状の磁性体である電磁鋼板(鋼板112)を複数積層することにより構成される。ローターコア110は、シャフト170を挿入するための貫通孔が設けられている。このローターコア110は、例えば、筒状とすることができる。ロータ−コア110の上面視における形状は、特に限定されないが、例えば、円形、多角形などでもよい。また、複数の電磁鋼板は、互いに、カシメ部160で結合している。また、電磁鋼板は、例えば、鉄や鉄合金等で構成される。また、ロータ−コア110の軸方向の端部にはエンドプレート114が設けられている。なお、エンドプレート114には、カシメ部160及び充填部140の開口部との干渉を避けるための溝部116が設けられてもよい。
複数の穴部150(又は複数の穴部から構成された穴部群)は、回転シャフトの軸心を中心として、点対称となるようにローターコア110に配置されている。穴部150の個数は、特に限定されないが、例えば、2又は3個(nは、自然数であって、例えば、2〜5とする)。それぞれの穴部150中には、磁石120が挿入されている。穴部150は、磁石120の形状に沿うように構成されていればよく、例えば、磁石120の角部周りに、マージン(間隙部)を有してもよい。
穴部150の配置レイアウトは、図1に示す態様に限定されず、たとえば、図7〜9に示す各種の配置レイアウトを採用してもよい。2個又は3個の穴部150で一組の穴部群が、回転シャフトの周縁部に沿って配置されてもよい。各穴部群は、互いに離間しており、Vの字状に配置された2個の穴部(穴部150又は、穴部154a,154b)により構成されてもよい。また、図9に示すように、穴部群は、穴部154a,154bと、これらの穴部154a,154bの間に形成された穴部156により構成されていてもよい。また、図8に示すように、Vの字状に配置された穴部は連通して1つの穴部152を構成してもよい。なお、図7に示すように、穴部150の配置レイアウトは、穴部150がシャフトの面直方向に対して直交する位置に、互いに離間して配置されてもよい。
磁石120は、ローターコア110の外周円側の穴部150の側壁151に固定されている。すなわち、ローターコア110の内周円側の穴部150の側壁151以外の側壁と磁石120との離間部(充填部140)に、本発明に係る固定用樹脂組成物が充填され、この固定用樹脂組成物が硬化して、固定部材130が形成されている。固定部材130は、穴部150の角部と磁石120との間に設けられていてもよい。ここで、磁石120としては、例えば、ネオジム磁石等の永久磁石を用いることができる。
図5に示すように、エンドプレート114は、シャフト170に固定され、ロータ−コア110を軸方向に挟持する。エンドプレート114は、カシメ部160によりシャフト170に固定される。このような態様に限定されず、図6に示すように、エンドプレート118a,118bは、シャフト170に溶接などにより固定されていてもよい。また、穴部150内において、磁石120の外周縁側の側壁上に固定部材130が形成されていなくてもよいが、図6に示すように、磁石120の外周縁側及び内周縁側の両側壁上に固定部材130が形成されていてもよい。
以下、本発明のロータ100を構成する固定用樹脂組成物の各成分について説明する。
本発明に係る固定用樹脂組成物は、固形であり、ロータの形成及びロータを備える車両の形成に使用される。すなわち、固定用樹脂組成物は、電磁鋼板で構成されたローターコア内に形成された穴部に配置された磁石を固定するために用いられるものである。
(固定用樹脂組成物)
本発明に係る固定用樹脂組成物は、エポキシ樹脂を含む熱硬化性樹脂(A)と、硬化剤(B)と、無機充填剤(C)と、を含む。
[熱硬化性樹脂(A)]
まず、熱硬化性樹脂(A)について説明する。
熱硬化性樹脂(A)としては、特に制限されるものではないが、エポキシ樹脂(A1)、フェノール樹脂、オキセタン樹脂、(メタ)アクリレート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、マレイミド樹脂等が用いられる。中でも、硬化性と保存性、硬化物の耐熱性、耐湿性、耐薬品性に優れるエポキシ樹脂(A1)が好適に用いられる。
本発明に係る熱硬化性樹脂(A)は、好ましくはエポキシ樹脂(A1)を含む。このエポキシ樹脂(A1)としては、一分子中にエポキシ基を2個以上有するものであれば特に分子量や構造は限定されるものではない。例えばフェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂等のフェノール樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、N,N−ジグリシジルアニリン、N,N−ジグリシジルトルイジン、ジアミノジフェニルメタン型グリシジルアミン、アミノフェノール型グリシジルアミンのような芳香族グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリフェノールプロパン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリアジン核含有エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェニレンおよび/またはビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、フェニレンおよび/またはビフェニレン骨格を有するナフトールアラルキル型エポキシ樹脂等のアラルキル型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂、ビニルシクロヘキセンジオキシド、ジシクロペンタジエンオキシド、アリサイクリックジエポキシ−アジペイド等の脂環式エポキシ等の脂肪族エポキシ樹脂が挙げられる。これらは単独でも2種以上混合して使用しても良い。
この場合、芳香族環にグリシジルエーテル構造あるいはグリシジルアミン構造が結合した構造を含むものが耐熱性、機械特性、耐湿性という観点から好ましい。
本発明に係る熱硬化性樹脂(A)の含有量は、固定用樹脂組成物の合計値100質量%に対して、とくに限定されないが、好ましくは5質量%以上40質量%以下、より好ましくは10質量%以上20質量%以下である。
本発明に係るエポキシ樹脂(A1)を含む好ましい態様において該エポキシ樹脂の含有量の下限値は、とくに限定されないが、熱硬化性樹脂(A)100質量%に対して、好ましくは70質量%以上100質量%以下、より好ましくは80質量%以上100質量%以下である。
[硬化剤(B)]
次に、硬化剤(B)について説明する。硬化剤(B)は、熱硬化性樹脂(A)に好ましい態様として含まれるエポキシ樹脂(A1)を三次元架橋させるために用いられるものであり、特に限定されないが、たとえばフェノール樹脂とすることができる。このようなフェノール樹脂系硬化剤は、一分子内にフェノール性水酸基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般であり、その分子量、分子構造を特に限定するものではないが、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂等のノボラック型樹脂;トリフェノールメタン型フェノール樹脂等の多官能型フェノール樹脂;テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂等の変性フェノール樹脂;フェニレン骨格及び/又はビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂、フェニレン及び/又はビフェニレン骨格を有するナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノール化合物等が挙げられる。これらは、1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。このようなフェノール樹脂系硬化剤により、耐燃性、耐湿性、電気特性、硬化性、保存安定性等のバランスが良好となる。特に、硬化性の点から、たとえばフェノール樹脂系硬化剤の水酸基当量は、90g/eq以上、250g/eq以下とすることができる。
本実施の形態では、耐燃性の測定方法は、以下の通りである。成形機(コータキ精機株式会社製、KTS−30)を用いて、金型温度175℃、注入圧力9.8MPa、注入時間15秒、硬化時間120秒の条件で、固定用樹脂組成物を注入成形して127mm×12.7mm×3.2mm厚の耐燃試験片を作製する。それら試験片を用いて、UL94垂直法の規格に則り耐燃試験を行い、耐燃性を判断する。
通常、車両のロータには、耐燃ランクが全焼を示す固定用樹脂組成物を使用することができる。車両の使用環境に応じて、車両のロータには、耐燃ランクがV−0を示す固定用樹脂組成物を使用してもよい。
さらに、併用できる硬化剤としては、例えば重付加型の硬化剤、触媒型の硬化剤、縮合型の硬化剤等を挙げることができる。
重付加型の硬化剤としては、例えば、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、メタキシレンジアミン(MXDA)などの脂肪族ポリアミン、ジアミノジフェニルメタン(DDM)、m−フェニレンジアミン(MPDA)、ジアミノジフェニルスルホン(DDS)などの芳香族ポリアミンのほか、ジシアンジアミド(DICY)、有機酸ジヒドララジドなどを含むポリアミン化合物;ヘキサヒドロ無水フタル酸(HHPA)、メチルテトラヒドロ無水フタル酸(MTHPA)などの脂環族酸無水物、無水トリメリット酸(TMA)、無水ピロメリット酸(PMDA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸(BTDA)などの芳香族酸無水物などを含む酸無水物;ノボラック型フェノール樹脂、フェノールポリマーなどのポリフェノール化合物;ポリサルファイド、チオエステル、チオエーテルなどのポリメルカプタン化合物;イソシアネートプレポリマー、ブロック化イソシアネートなどのイソシアネート化合物;カルボン酸含有ポリエステル樹脂などの有機酸類などが挙げられる。
触媒型の硬化剤としては、例えば、ベンジルジメチルアミン(BDMA)、2,4,6−トリスジメチルアミノメチルフェノール(DMP−30)などの3級アミン化合物;2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール(EMI24)などのイミダゾール化合物;BF3錯体などのルイス酸などが挙げられる。
縮合型の硬化剤としては、例えば、レゾール樹脂、メチロール基含有尿素樹脂のような尿素樹脂;メチロール基含有メラミン樹脂のようなメラミン樹脂などが挙げられる。
このような他の硬化剤を併用する場合において、フェノール樹脂系硬化剤の含有量の下限値としては、全硬化剤(B)に対して、20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることが特に好ましい。配合割合が上記範囲内であると、耐燃性を保持しつつ、良好な流動性を発現させることができる。また、フェノール樹脂系硬化剤の含有量の上限値としては、特に限定されないが、全硬化剤(B)に対して、100質量%以下であることが好ましい。
本発明に係る固定用樹脂組成物に対する硬化剤(B)の含有量の合計値の下限値については、特に限定されるものではないが、固定用樹脂組成物の合計値100質量%に対して、0.8質量%以上であることが好ましく、1.5質量%以上であることがより好ましい。配合割合の下限値が上記範囲内であると、良好な硬化性を得ることができる。また、本発明に係る固定用樹脂組成物に対する硬化剤(B)の含有量の合計値の上限値についても、特に限定されるものではないが、全固定用樹脂組成物の合計値100質量%に対して、12質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。
なお、硬化剤(B)としてのフェノール樹脂と、エポキシ樹脂とは、全熱硬化性樹脂(A)中のエポキシ基数(EP)と、全フェノール樹脂のフェノール性水酸基数(OH)との当量比(EP)/(OH)が、0.8以上、1.3以下となるように配合することが好ましい。当量比が上記範囲内であると、得られる固定用樹脂組成物を成形する際、十分な硬化特性を得ることができる。ただし、エポキシ樹脂と反応し得るフェノール樹脂以外の樹脂を併用する場合は、適宜当量比を調整すればよい。
[無機充填剤(C)]
本発明に係る固定用樹脂組成物に用いられる無機充填剤(C)としては、固定用樹脂組成物の技術分野で一般的に用いられる無機充填剤を使用することができる。例えば、溶融破砕シリカ及び溶融球状シリカ等の溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、カオリン、タルク、クレイ、マイカ、ロックウール、ウォラストナイト、ガラスパウダー、ガラスフレーク、ガラスビーズ、ガラスファイバー、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化アルミ、カーボンブラック、グラファイト、二酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、セルロース、アラミド、木材、フェノール樹脂成形材料やエポキシ樹脂成形材料の硬化物を粉砕した粉砕粉等が挙げられる。この中でも、好ましくは、溶融破砕シリカ、溶融球状シリカ、結晶シリカ等のシリカであり、より好ましくは溶融球状シリカを使用することができる。また、この中でも、炭酸カルシウムがコストの面で好ましい。無機充填剤(C)としては、一種で使用しても良いし、または二種以上を併用してもよい。
無機充填剤(C)の平均粒径D50は、好ましくは0.01μm以上、75μm以下であり、より好ましくは0.05μm以上、50μm以下である。無機充填剤(C)の平均粒径を上記範囲内にすることにより、穴部と磁石との離間部(充填部)への充填性が向上する。また、無機充填剤(C)の平均粒径の上限値を75μm以下とすることにより、さらに充填性が向上する。
平均粒径D50は、レーザー回折型測定装置RODOS SR型(SYMPATEC HEROS&RODOS)での体積換算平均粒径とした。
また、本発明に係る固定用樹脂組成物においては、無機充填剤(C)は、平均粒径D50が異なる2以上の球状シリカを含むことができる。これにより、流動性及び充填性の向上とバリ抑制の両立が可能となる。
無機充填剤(C)の含有量は、固定用樹脂組成物の合計値100質量%に対して、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上であり、さらに好ましくは65質量%以上であり、特に好ましくは75質量%以上である。下限値が上記範囲内であると、得られる固定用樹脂組成物の硬化に伴う吸湿量の増加や、強度の低下が低減できる。また、無機充填剤(C)の量は、固定用樹脂組成物の合計値100質量%に対して、好ましくは93質量%以下であり、より好ましくは91質量%以下であり、さらに好ましくは90質量%以下である。上限値が上記範囲内であると、得られる固定用樹脂組成物は良好な流動性を有するとともに、良好な成形性を備える。したがって、ロータの製造安定性が高まり、歩留まり及び耐久性のバランスに優れたロータが得られる。
また、本発明者が検討した結果、無機充填剤(C)の含有量を50質量%以上とすることにより、固定部材と電磁鋼板と線膨張率の差を小さくし、温度変化に応じて電磁鋼板が変形し、ロータの回転特性が低下することを抑制することができることが判明した。これにより、耐久性の中でも、とくに回転特性の持続性に優れたロータが実現される。
また、無機充填剤(C)として、溶融破砕シリカ、溶融球状シリカ、結晶シリカ等のシリカを用いる場合、シリカの含有量が、固定用樹脂組成物の合計値100質量%に対して、40質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましい。下限値が上記範囲内であると、流動性と熱膨張率のバランスが良好となる。
また、無機充填剤(C)と、後述するような水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物や、硼酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛、三酸化アンチモン等の無機系難燃剤とを併用する場合には、これらの無機系難燃剤と上記無機充填剤の合計量は、上記無機充填剤(C)の含有量の範囲内とすることが望ましい。
[その他の成分]
本発明に係る固定用樹脂組成物は、硬化促進剤(D)を含んでもよい。硬化促進剤(D)は、エポキシ樹脂のエポキシ基とフェノール樹脂系硬化剤(B)の水酸基との反応を促進するものであればよく、一般に使用される硬化促進剤(D)を用いることができる。
硬化促進剤(D)の具体例としては、有機ホスフィン、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物等のリン原子含有化合物;1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、イミダゾールなどのアミジン系化合物、ベンジルジメチルアミンなどの3級アミンや前記化合物の4級オニウム塩であるアミジニウム塩、アンモニウム塩などに代表される窒素原子含有化合物が挙げられる。これらのうち、硬化性の観点からはリン原子含有化合物が好ましく、流動性と硬化性のバランスの観点からは、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物等の潜伏性を有する硬化促進剤がより好ましい。流動性という点を考慮するとテトラ置換ホスホニウム化合物が特に好ましく、また耐半田性の観点では、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物が特に好ましく、また潜伏的硬化性という点を考慮すると、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物が特に好ましい。また、連続成形性の観点では、テトラ置換ホスホニウム化合物が好ましい。また、コスト面を考えると、有機ホスフィン、窒素原子含有化合物も好適に用いられる。
本発明に係る固定用樹脂組成物で用いることができる有機ホスフィンとしては、例えばエチルホスフィン、フェニルホスフィン等の第1ホスフィン;ジメチルホスフィン、ジフェニルホスフィン等の第2ホスフィン;トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等の第3ホスフィンが挙げられる。
本発明に係る固定用樹脂組成物で用いることができるテトラ置換ホスホニウム化合物としては、例えば下記一般式(1)で表される化合物等が挙げられる。
Figure 2013138611
一般式(1)において、Pはリン原子を表し、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立して芳香族基又はアルキル基を表し、Aはヒドロキシル基、カルボキシル基、チオール基から選ばれる官能基のいずれかを芳香環に少なくとも1つ有する芳香族有機酸のアニオンを表し、AHはヒドロキシル基、カルボキシル基、チオール基から選ばれる官能基のいずれかを芳香環に少なくとも1つ有する芳香族有機酸を表し、x及びyは1〜3の整数であり、zは0〜3の整数であり、かつx=yである。
一般式(1)で表される化合物は、例えば以下のようにして得られるが、これに限定されるものではない。まず、テトラ置換ホスホニウムハライドと芳香族有機酸と塩基を有機溶剤に混ぜ均一に混合し、その溶液系内に芳香族有機酸アニオンを発生させる。次いで、水を加えると、一般式(1)で表される化合物を沈殿させることができる。一般式(1)で表される化合物において、合成時の収得率と硬化促進効果のバランスに優れるという観点では、リン原子に結合するR1、R2、R3及びR4がフェニル基であり、かつAHはヒドロキシル基を芳香環に有する化合物、すなわちフェノール化合物であり、かつAは該フェノール化合物のアニオンであるのが好ましい。なお、フェノール化合物とは、単環のフェノール、クレゾール、カテコール、レゾルシンや縮合多環式のナフトール、ジヒドロキシナフタレン、複数の芳香環を備える(多環式の)ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビフェノール、フェニルフェノール、フェノールノボラックなどを概念に含むものであり、中でも水酸基を2個有するフェノール化合物が好ましく用いられる。
本発明に係る固定用樹脂組成物で用いることができるホスホベタイン化合物としては、例えば下記一般式(2)で表される化合物等が挙げられる。
Figure 2013138611
一般式(2)において、X1は炭素数1〜3のアルキル基を表し、Y1はヒドロキシル基を表し、aは0〜5の整数であり、bは0〜4の整数である。
一般式(2)で表される化合物は、例えば以下のようにして得られる。まず、第三ホスフィンであるトリ芳香族置換ホスフィンとジアゾニウム塩とを接触させ、トリ芳香族置換ホスフィンとジアゾニウム塩が有するジアゾニウム基とを置換させる工程を経て得られる。しかしこれに限定されるものではない。
本発明に係る固定用樹脂組成物で用いることができるホスフィン化合物とキノン化合物との付加物としては、例えば下記一般式(3)で表される化合物等が挙げられる。
Figure 2013138611
一般式(3)において、Pはリン原子を表し、R5、R6及びR7は、互いに独立して、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数6〜12のアリール基を表し、R8、R9及びR10は、互いに独立して、水素原子又は炭素数1〜12の炭化水素基を表し、R8とR9は互いに結合して環を形成していてもよい。
ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物に用いるホスフィン化合物としては、例えばトリフェニルホスフィン、トリス(アルキルフェニル)ホスフィン、トリス(アルコキシフェニル)ホスフィン、トリナフチルホスフィン、トリス(ベンジル)ホスフィン等の芳香環に無置換又はアルキル基、アルコキシル基等の置換基が存在するものが好ましく、アルキル基、アルコキシル基等の置換基としては1〜6の炭素数を有するものが挙げられる。入手しやすさの観点からはトリフェニルホスフィンが好ましい。
またホスフィン化合物とキノン化合物との付加物に用いるキノン化合物としては、o−ベンゾキノン、p−ベンゾキノン、アントラキノン類が挙げられ、中でもp−ベンゾキノンが保存安定性の点から好ましい。
ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物の製造方法としては、有機第三ホスフィンとベンゾキノン類の両者が溶解することができる溶媒中で接触、混合させることにより付加物を得ることができる。溶媒としてはアセトンやメチルエチルケトン等のケトン類で付加物への溶解性が低いものがよい。しかしこれに限定されるものではない。
一般式(3)で表される化合物において、リン原子に結合するR5、R6及びR7がフェニル基であり、かつR8、R9及びR10が水素原子である化合物、すなわち1,4−ベンゾキノンとトリフェニルホスフィンを付加させた化合物が固定用樹脂組成物の硬化物の熱時弾性率を低下させる点で好ましい。
本発明に係る固定用樹脂組成物で用いることができるホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物としては、例えば下記一般式(4)で表される化合物等が挙げられる。
Figure 2013138611
一般式(4)において、Pはリン原子を表し、Siは珪素原子を表す。R11、R12、R13及びR14は、互いに独立して、芳香環又は複素環を有する有機基、あるいは脂肪族基を表し、X2は、基Y2及びY3と結合する有機基である。X3は、基Y4及びY5と結合する有機基である。Y2及びY3は、プロトン供与性基がプロトンを放出してなる基を表し、同一分子内の基Y2及びY3が珪素原子と結合してキレート構造を形成するものである。Y4及びY5はプロトン供与性基がプロトンを放出してなる基を表し、同一分子内の基Y4及びY5が珪素原子と結合してキレート構造を形成するものである。X2、及びX3は互いに同一であっても異なっていてもよく、Y2、Y3、Y4、及びY5は互いに同一であっても異なっていてもよい。Z1は芳香環又は複素環を有する有機基、あるいは脂肪族基である。
一般式(4)において、R11、R12、R13及びR14としては、例えば、フェニル基、メチルフェニル基、メトキシフェニル基、ヒドロキシフェニル基、ナフチル基、ヒドロキシナフチル基、ベンジル基、メチル基、エチル基、n−ブチル基、n−オクチル基及びシクロヘキシル基等が挙げられ、これらの中でも、フェニル基、メチルフェニル基、メトキシフェニル基、ヒドロキシフェニル基、ヒドロキシナフチル基等の置換基を有する芳香族基もしくは無置換の芳香族基がより好ましい。
また、一般式(4)において、X2は、Y2及びY3と結合する有機基である。同様に、X3は、基Y4及びY5と結合する有機基である。Y2及びY3はプロトン供与性基がプロトンを放出してなる基であり、同一分子内の基Y2及びY3が珪素原子と結合してキレート構造を形成するものである。同様にY4及びY5はプロトン供与性基がプロトンを放出してなる基であり、同一分子内の基Y4及びY5が珪素原子と結合してキレート構造を形成するものである。基X2及びX3は互いに同一であっても異なっていてもよく、基Y2、Y3、Y4、及びY5は互いに同一であっても異なっていてもよい。このような一般式(4)中の−Y2−X2−Y3−、及び−Y4−X3−Y5−で表される基は、プロトン供与体が、プロトンを2個放出してなる基で構成されるものであり、プロトン供与体としては、好ましくは分子内にカルボキシル基または水酸基を少なくとも2個有する有機酸が好ましく、さらに芳香環を構成する炭素上にカルボキシル基または水酸基を少なくとも2個有する芳香族化合物が好ましく、さらには芳香環を構成する隣接する炭素上に水酸基を少なくとも2個有する芳香族化合物がより好ましい。例えば、カテコール、ピロガロール、1,2−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、2,2'−ビフェノール、1,1'−ビ−2−ナフトール、サリチル酸、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、クロラニル酸、タンニン酸、2−ヒドロキシベンジルアルコール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,2−プロパンジオール及びグリセリン等が挙げられる。これらの中でも、原料入手の容易さと硬化促進効果のバランスという観点では、カテコール、1,2−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレンがより好ましい。
また、一般式(4)中のZ1は、芳香環又は複素環を有する有機基又は脂肪族基を表し、これらの具体的な例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基及びオクチル基等の脂肪族炭化水素基や、フェニル基、ベンジル基、ナフチル基及びビフェニル基等の芳香族炭化水素基、グリシジルオキシプロピル基、メルカプトプロピル基、アミノプロピル基及びビニル基等の反応性置換基などが挙げられるが、これらの中でも、メチル基、エチル基、フェニル基、ナフチル基及びビフェニル基が熱安定性の面から、より好ましい。
ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物の製造方法としては、メタノールを入れたフラスコに、フェニルトリメトキシシラン等のシラン化合物、2,3−ジヒドロキシナフタレン等のプロトン供与体を加えて溶かし、次に室温攪拌下ナトリウムメトキシド−メタノール溶液を滴下する。さらにそこへ予め用意したテトラフェニルホスホニウムブロマイド等のテトラ置換ホスホニウムハライドをメタノールに溶かした溶液を室温攪拌下滴下すると結晶が析出する。析出した結晶を濾過、水洗、真空乾燥すると、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物が得られる。しかし、これに限定されるものではない。
本発明に係る固定用樹脂組成物に用いることができる硬化促進剤(D)の含有量の下限値は、全固定用樹脂組成物の合計値100質量%に対して、0.1質量%以上であることが好ましい。硬化促進剤(D)の含有量の下限値が、上記範囲内であると、充分な硬化性を得ることができる。また、硬化促進剤(D)の含有量の上限値は、全固定用樹脂組成物の合計値100質量%に対して、好ましくは3質量%以下、より好ましくは1質量%以下である。硬化促進剤(D)の含有量の上限値が上記範囲内であると、充分な流動性を得ることができる。
本発明の固定用樹脂組成物には、さらに芳香環を構成する2個以上の隣接する炭素原子にそれぞれ水酸基が結合した化合物(E)(以下、単に「化合物(E)」と称することもある)が含まれていてもよい。芳香環を構成する2個以上の隣接する炭素原子にそれぞれ水酸基が結合した化合物(E)は、これを用いることにより、エポキシ樹脂(A1)とフェノール樹脂系硬化剤(B)との架橋反応を促進させる硬化促進剤(D)として、潜伏性を有しないリン原子含有硬化促進剤を用いた場合であっても、固定用樹脂組成物の溶融混練中での反応を抑えることができ、安定して固定用樹脂組成物を得ることができる。また、化合物(E)は、固定用樹脂組成物の溶融粘度を下げ、流動性を向上させる効果も有するものである。化合物(E)としては、下記一般式(5)で表される単環式化合物、又は下記一般式(6)で表される多環式化合物等を用いることができ、これらの化合物は水酸基以外の置換基を有していてもよい。
Figure 2013138611
一般式(5)において、R15及びR19のいずれか一方が水酸基であり、一方が水酸基の場合、他方は水素原子、水酸基又は水酸基以外の置換基であり、R16、R17及びR18は、水素原子、水酸基又は水酸基以外の置換基である。
Figure 2013138611
一般式(6)において、R20及びR26のいずれか一方が水酸基であり、一方が水酸基の場合、他方は水素原子、水酸基又は水酸基以外の置換基であり、R21、R22、R23、R24及びR25は、水素原子、水酸基又は水酸基以外の置換基である。
一般式(5)で表される単環式化合物の具体例としては、例えば、カテコール、ピロガロール、没食子酸、没食子酸エステル又はこれらの誘導体が挙げられる。また、一般式(6)で表される多環式化合物の具体例としては、例えば、1,2−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン及びこれらの誘導体が挙げられる。これらのうち、流動性と硬化性の制御のしやすさから、芳香環を構成する2個の隣接する炭素原子にそれぞれ水酸基が結合した化合物が好ましい。また、混練工程での揮発を考慮した場合、母核は低揮発性で秤量安定性の高いナフタレン環である化合物とすることがより好ましい。この場合、化合物(E)を、具体的には、例えば、1,2−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン及びその誘導体等のナフタレン環を有する化合物とすることができる。これらの化合物(E)は1種類を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
化合物(E)の含有量の下限値は、全固定用樹脂組成物の合計値100質量%に対して、0.01質量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.03質量%以上、特に好ましくは0.05質量%以上である。化合物(E)の含有量の下限値が上記範囲内であると、固定用樹脂組成物の充分な低粘度化と流動性向上効果を得ることができる。また、化合物(E)の含有量の上限値は、全固定用樹脂組成物の合計値100質量%に対して、2質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.8質量%以下、特に好ましくは0.5質量%以下である。化合物(E)の含有量の上限値が上記範囲内であると、固定用樹脂組成物の硬化性の低下や硬化物の物性の低下を引き起こす恐れが少ない。
本発明に係る固定用樹脂組成物においては、エポキシ樹脂(A1)と無機充填剤(C)との密着性を向上させるため、シランカップリング剤等のカップリング剤(F)を添加することができる。カップリング剤(F)としては、エポキシ樹脂(A1)と無機充填剤(C)との間で反応し、エポキシ樹脂(A1)と無機充填剤(C)の界面強度を向上させるものであればよく、特に限定されるものではないが、例えばエポキシシラン、アミノシラン、ウレイドシラン、メルカプトシラン等が挙げられる。また、カップリング剤(F)は、前述の化合物(E)と併用することで、固定用樹脂組成物の溶融粘度を下げ、流動性を向上させるという化合物(E)の効果を高めることもできるものである。
エポキシシランとしては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が挙げられる。また、アミノシランとしては、例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−フェニルγ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニルγ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−6−(アミノヘキシル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(3−(トリメトキシシリルプロピル)−1,3−ベンゼンジメタナン等が挙げられる。また、ウレイドシランとしては、例えば、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン等が挙げられる。アミノシランの1級アミノ部位をケトン又はアルデヒドを反応させて保護した潜在性アミノシランカップリング剤として用いてもよい。また、アミノシランとしては、2級アミノ基を有してもよい。また、メルカプトシランとしては、例えば、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシランのほか、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドのような熱分解することによってメルカプトシランカップリング剤と同様の機能を発現するシランカップリング剤など、が挙げられる。またこれらのシランカップリング剤は予め加水分解反応させたものを配合してもよい。これらのシランカップリング剤は1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
連続成形性という観点では、メルカプトシランが好ましく、流動性の観点では、アミノシランが好ましく、密着性という観点ではエポキシシランが好ましい。
本発明に係る固定用樹脂組成物に用いることができるシランカップリング剤等のカップリング剤(F)の含有量の下限値としては、全固定用樹脂組成物の合計値100質量%に対して、0.01質量%以上が好ましく、より好ましくは0.05質量%以上、特に好ましくは0.1質量%以上である。シランカップリング剤等のカップリング剤(F)の含有量の下限値が上記範囲内であれば、エポキシ樹脂(A1)と無機充填剤(C)との界面強度が低下することがなく、良好な耐振動性を得ることができる。また、シランカップリング剤等のカップリング剤(F)の含有量の上限値としては、全固定用樹脂組成物の合計値100質量%に対して、1質量%以下が好ましく、より好ましくは0.8質量%以下、特に好ましくは0.6質量%以下である。シランカップリング剤等のカップリング剤(F)の含有量の上限値が上記範囲内であれば、エポキシ樹脂(A1)と無機充填剤(C)との界面強度が低下することがなく、良好な耐振動性を得ることができる。また、シランカップリング剤等のカップリング剤(F)の含有量が上記範囲内であれば、固定用樹脂組成物の硬化物の吸水性が増大することがなく、良好な防錆性を得ることができる。
本発明に係る固定用樹脂組成物においては、難燃性を向上させるために無機難燃剤(G)を添加することができる。なかでも燃焼時に脱水、吸熱することによって燃焼反応を阻害する金属水酸化物、又は複合金属水酸化物が燃焼時間を短縮することができる点で好ましい。金属水酸化物としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化ジルコニアを挙げることができる。複合金属水酸化物としては、2種以上の金属元素を含むハイドロタルサイト化合物であって、少なくとも一つの金属元素がマグネシウムであり、かつ、その他の金属元素がカルシウム、アルミニウム、スズ、チタン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、又は亜鉛から選ばれる金属元素であればよく、そのような複合金属水酸化物としては、水酸化マグネシウム・亜鉛固溶体が市販品で入手が容易である。なかでも、連続成形性の観点からは水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム・亜鉛固溶体が好ましい。無機難燃剤(G)は、単独で用いても、2種以上用いてもよい。また、連続成形性への影響を低減する目的から、シランカップリング剤などの珪素化合物やワックスなどの脂肪族系化合物などで表面処理を行って用いてもよい。
本発明に係る無機難燃剤(G)の含有量は、本発明に係る固定用樹脂組成物の合計値100質量%に対して、好ましくは1質量%以上、20質量%以下であり、より好ましくは3質量%以上、10質量%以下である。
本発明に係る固定用樹脂組成物においては、イオン性不純物の濃度の上限値は、固定用樹脂組成物に対して、好ましくは500ppm以下であり、より好ましくは300ppm以下であり、さらに好ましくは200ppm以下である。イオン性不純物の濃度の下限値は、特に限定されないが、例えば、本発明に係る固定用樹脂組成物に対して、0ppb以上であり、より好ましくは10ppb以上であり、より好ましくは100ppb以上である。これにより、本発明に係る固定用樹脂組成物の硬化物を固定部材に用いた際、高温、多湿下で処理しても高い防錆性を保持することができる。
本発明に係るイオン性不純物としては、特に限定されるものではないが、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、ハロゲンイオン等、より具体的にはナトリウムイオン、塩素イオン等が挙げられる。ナトリウムイオンの濃度の上限値は、本発明に係る固定用樹脂組成物に対して、好ましくは100ppm以下であり、より好ましくは70ppm以下であり、さらに好ましくは50ppm以下である。また、塩素イオンの濃度の上限値は、本発明に係る固定用樹脂組成物に対して、好ましくは100ppm以下であり、より好ましくは50ppm以下であり、さらに好ましくは30ppm以下である。上記の範囲とすることにより、電磁鋼板や磁石の腐食を抑制することができる。
本実施の形態においては、例えば、純度の高いエポキシ樹脂を使用することにより、イオン性不純物を低減することができる。以上により、耐久性に優れたロータが得られる。
イオン性不純物の濃度は、下記のようにして求めることができる。まず、本発明に係る固定用樹脂組成物を175℃180秒で成形硬化後、粉砕機で粉砕し硬化物の粉末を得る。得られた硬化物粉末を純水中で120℃、24時間処理し、純水中にイオンを抽出した後、ICP−MS(誘導結合プラズマイオン源質量分析装置)を用い測定できる。
本発明に係る固定用樹脂組成物においては、アルミナの含有量の上限値は、固定用樹脂組成物の合計値100質量%に対して、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは7質量%以下であり、より好ましくは5質量%以下である。アルミナの含有量の下限値は、特に限定されないが、例えば、本発明に係る固定用樹脂組成物の合計値100質量%に対して、好ましくは0質量%以上であり、より好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.1質量%以上である。アルミナの含有量を上記上限値以下とすることにより、本発明に係る固定用樹脂組成物の流動性を向上させること、および軽量化を図ることができる。なお、本実施の形態において、0質量%は検出限界の値を許容する。
本発明に係る固定用樹脂組成物では、前述した成分以外に、ハイドロタルサイト類またはマグネシウム、アルミニウム、ビスマス、チタン、ジルコニウムから選ばれる元素の含水酸化物等のイオン捕捉剤;カーボンブラック、ベンガラ、酸化チタン等の着色剤;カルナバワックス等の天然ワックス;ポリエチレンワックス等の合成ワックス;ステアリン酸やステアリン酸亜鉛等の高級脂肪酸及びその金属塩類若しくはパラフィン等の離型剤;ポリブタジエン化合物、アクリロニトリルブタジエン共重合化合物、シリコーンオイル、シリコーンゴム等のシリコーン化合物等の低応力剤を適宜配合してもよい。
本発明に係る着色剤の含有量は、本発明に係る固定用樹脂組成物の合計値100質量%に対して、好ましくは0.01質量%以上、1質量%以下であり、より好ましくは0.05質量%以上、0.8質量%以下である。着色剤の含有量を上記範囲内とすることにより、色が付いた不純物を除去する工程が不要となり、作業性が向上する。したがって、歩留まりに優れたロータが実現される。
本発明に係る離型剤の含有量は、本発明に係る固定用樹脂組成物の合計値100質量%に対して、下限値は、特に限定されないが、例えば好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.05質量%以上であり、一方、上限値は、例えば好ましくは1質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以下であり、さらに好ましくは0.2質量%以下であり、特に好ましくは0.1質量%以下である。通常、半導体チップをトランスファー形成する際には、固定部材が金型から離間する離型性を確保するために、離型剤を一定量添加することが知られている。しかしながら、離型剤の添加量が高すぎると、固定部材と電磁鋼板との密着性が低下するおそれがある。このため、本発明においては、離型剤の含有量は少ない方が好ましく、とくに0.2質量%以下が好ましい。これにより、固定部材と電磁鋼板との密着性を高めることができるので、耐久性に優れたロータが実現される。
本発明に係る低応力剤の含有量は、本発明に係る固定用樹脂組成物の合計値100質量%に対して、好ましくは0.01質量%以上、3質量%以下であり、より好ましくは0.05質量%以上、2質量%以下である。
本発明に係る固定用樹脂組成物は、金型温度175℃、成形圧力6.9MPa、注入時間20秒、硬化時間90秒の条件で、幅3mm、厚さ80μmの断面形状を有する流路に固定用樹脂組成物を注入した際のスリット流動長が30mm以上であることが好ましく、50mm以上であることがより好ましい。上記下限値以上であれば、ロータの穴部と磁石との離間部(充填部)への充填性、特に横方向への充填性を良好なものとすることができる。上記スリット流動長の上限値としては、とくに限定されないが150mm以下が好ましく、100mm以下がより好ましい。これにより、製造安定性に優れたロータが実現される。
また、本実施の形態においては、例えば、充填剤の粒径を細かくする、エポキシ樹脂、硬化剤の軟化点を下げる、硬化促進剤の量を減らすなどにより、上記スリット流動長を増加することができる。
本発明に係る固定用樹脂組成物の、高化式粘度測定装置を用いて測定温度175℃、荷重10kgで測定した際の高化式粘度が、6Pa・s以上、50Pa・s以下であることが好ましく、10Pa・s以上、30Pa・s以下であることがより好ましい。上記下限値以上であれば、成形時の巻き込みなどによるボイドの発生を抑制することができる。上記上限値以下であれば、良好な充填性を得ることができる。これにより、製造安定性に優れたロータが実現される。
また、本実施の形態においては、例えば、エポキシ樹脂、硬化剤の軟化点を下げる、潜伏性の硬化促進剤を用いる、充填剤として溶融球状シリカを用いるなどにより、上記高化式粘度を低減することができる。
本発明に係る固定用樹脂組成物の175℃におけるゲルタイムが、10秒以上40秒以下であることが好ましく、15秒以上、30秒以下であることがより好ましい。上記下限値以上であれば、充填性を向上させることができる。上記上限値以下であれば、成形サイクルを早くすることができる。
また、本実施の形態においては、例えば、硬化促進剤の量を増やすことにより、上記ゲルタイムを低減することができる。これにより、製造安定性に優れたロータが実現される。
本発明に係る固定用樹脂組成物のスパイラルフローが、50cm以上であることが好ましく、60cm以上であることがより好ましい。上記下限値以上であれば、充填性、特に垂直方向への充填性を向上させることができる。上記スパイラルフローの上限値としては、とくに限定されないが200cm以下が好ましく、150cm以下がより好ましい。これにより、製造安定性に優れたロータが実現される。
また、本実施の形態においては、例えば、充填剤として溶融球状シリカを用いる、エポキシ樹脂、硬化剤の軟化点を下げる、硬化促進剤の量を減らすなどにより、上記スパイラルフローを増加することができる。
本発明に係る固定用樹脂組成物の、キュラストメーターを用いて測定温度175℃で硬化トルクを経時的に測定した際の、測定開始60秒後の硬化トルク値をT60、測定開始300秒後までの最大硬化トルク値をTmaxとしたとき、測定開始300秒後までの最大硬化トルク値に対する測定開始60秒後の硬化トルク値の比T60/Tmax(%)が、40%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましい。上記硬化トルク値の比の上限値としては、とくに限定されないが100%以下が好ましく、95%以下がより好ましい。上記下限値以上であれば、生産性向上が期待できる。
また、本実施の形態においては、例えば、硬化促進剤の量を増やすことにより、上記硬化トルク値の比を増加することができる。これにより、製造安定性に優れたロータが実現される。
本発明に係る固定用樹脂組成物は、例えば、ミキサー等を用いて常温で均一に混合し、その後、必要に応じて、加熱ロール、ニーダー又は押出機等の混練機を用いて溶融混練し、続いて必要に応じて冷却、粉砕することにより、所望の分散度や流動性等に調整することができる。
本発明に係る固定用樹脂組成物の製造方法に特に制限は無いが、熱硬化性樹脂(A)、フェノール樹脂系硬化剤(B)及び無機充填剤(C)、ならびに好ましくはその他の添加剤等を、所定量配合する。配合したものを、たとえばミキサー、ジェットミル、ボールミル等を用いて常温で均一に粉砕、混合した後、加熱ロール、ニーダー又は押出機等の混練機を用いて90〜120℃程度まで固定用樹脂組成物を加温しながら溶融し混練を行い、混練後の固定用樹脂組成物を冷却、粉砕し、顆粒又は粉末状の固形の固定用樹脂組成物を得ることができる。本発明に係る固定用樹脂組成物の粉末又は顆粒の粒度は、例えば5mm以下が好ましい。5mm以下とすることにより、打錠時に充填不良をおこし、タブレットの質量のバラツキが大きくなることを抑制することができる。
さらに、得られた固定用樹脂組成物の粉末又は顆粒を打錠成型することによりタブレットを得ることができる。打錠成型に用いる装置としては、単発式、又は多連ロータリー式の打錠機を用いることができる。タブレットの形状は特に限定はないが、円柱状が好ましい。打錠機のオス型、メス型及び環境の温度に特に制限はないが、35℃以下が好ましい。35℃を超えると固定用樹脂組成物が反応により粘度上昇し、流動性が損なわれる恐れがある。打錠圧力は400×10Pa以上3000×10Pa以下の範囲が好ましい。打錠圧力を上記上限値以下とすることにより、タブレット打錠直後に破壊が生じることを抑制できる。一方、打錠圧力を上記下限値以上とすることにより、十分な凝集力が得られないために、輸送中にタブレットの破壊が生じることを抑制することができる。打錠機のオス型、メス型の金型の材質、表面処理に特に限定はなく、公知の材質のものを使用することができ、表面処理の例としては、たとえば放電加工、離型剤のコーティング、メッキ処理、研磨などを挙げることができる。
また、本発明に係る固定部材のガラス転移温度(Tg)が、150℃以上であることが好ましく、155℃以上であることがより好ましい。上記下限値以上であれば、信頼性向上が期待できる。上記ガラス転移温度(Tg)の上限値としては、とくに限定されないが200℃以下が好ましく、190℃以下がより好ましい。これにより、耐久性に優れたロータが実現される。
また、本実施の形態においては、例えば、エポキシ樹脂、硬化剤の軟化点を上げることにより、上記ガラス転移温度(Tg)を増加することができる。
本発明に係る固定部材の150℃における曲げ強度が、70MPa以上であることが好ましく、100MPa以上であることがより好ましい。上記下限値以上であれば、クラックなどが発生しにくく信頼性向上が期待できる。上記曲げ強度の上限値としては、とくに限定されないが300MPa以下が好ましく、250MPa以下がより好ましい。これにより、耐久性に優れたロータが実現される。
また、本実施の形態においては、例えば、充填剤の表面にカップリング剤を処理することにより、上記曲げ強度を増加することができる。
本発明に係る固定部材の150℃における曲げ弾性率の上限値が、1.6×10MPa以下であることが好ましく、1.3×10MPa以下であることがより好ましい。上記上限値以下であれば、応力緩和による信頼性向上が期待できる。上記曲げ弾性率の下限値としては、とくに限定されないが5000MPa以上が好ましく、7000MPa以上がより好ましい。これにより、耐久性に優れたロータが実現される。
また、本実施の形態においては、例えば、低応力剤の添加量を増やす、充填剤の配合量を減らすなどにより、上記曲げ弾性率を低減することができる。
本発明に係る固定部材の、25℃以上ガラス転移温度(Tg)以下の領域における線膨張係数(α1)が、10ppm/℃以上、25ppm/℃以下であることが好ましく、15ppm/℃以上、20ppm/℃以下であることがより好ましい。上記範囲内であれば、電磁鋼板との熱膨張差が小さくかつマグネットの抜け落ちが防止できる。これにより、耐久性に優れたロータが実現される。
また、本実施の形態においては、例えば、充填剤の配合量を増やすことにより、上記線膨張係数(α1)を低減することができる。
本発明に係る固定部材の、25℃以上ガラス転移温度(Tg)以下の領域における線膨張係数(α2)が、10ppm/℃以上、100ppm/℃以下であることが好ましく、20ppm/℃以上、80ppm/℃以下であることがより好ましい。上記範囲内であれば、電磁鋼板との熱膨張差が小さくかつマグネットの抜け落ちが防止できる。これにより、耐久性に優れたロータが実現される。
また、本実施の形態においては、例えば、充填剤の配合量を増やすことにより、上記線膨張係数(α2)を低減することができる。
(ロータの製造方法)
本実施の形態に係るロータ100の製造方法は、回転シャフト(シャフト170)が貫通する貫通孔の周縁部に沿って配置されている複数の穴部150が設けられている、ローターコア110を準備する工程と、穴部150に磁石120を挿入する工程と、穴部150と磁石120との離間部に固定用樹脂組成物を充填する工程と、樹脂組成物を硬化して、固定部材130を得る工程と、ローターコア110の前記貫通孔にシャフト170を挿入するとともに、ローターコアにシャフト170を固設する工程と、を有する。
本実施の形態では、固定用樹脂組成物を充填する手法として、インサート成形を用いることが好ましい。以下、詳述する。
まず、インサート成型装置について説明する。
図2は、インサート成形に用いるインサート成形装置の上型200の断面図である。
固定部材130の形成方法の一例としては、タブレット状の固定用樹脂組成物を用い、インサート成形を行う方法を用いることができる。このインサート成形には、インサート成形装置を用いる。この成形装置は、タブレット状の固定用樹脂組成物が供給されるポット210と溶融状態の固定用樹脂組成物を移動させる流路220とを有する上型200と、下型と、これらの上型及び下型を加熱する加熱手段と、溶融状態の固定用樹脂組成物を押し出す押出機構と、を備える。インサート成形装置は、例えば、ローターコアなどを搬送する搬送機能を備えてもよい。
本実施の形態において、上型200及び下型は、ローターコア110の上面及び下面(すなわち、ローターコア110を構成する電磁鋼板の一面)と密着することが好ましく、例えば、板状であることが好ましい。本実施の形態の上型200及び下型は、ローターコア110の全体を覆わない、例えば、側面の一部を覆わない点で、半導体装置の製造方法に用いる通常のトランスファー形成の金型とは異なる。トランスファー形成の金型は、上型及び下型で構成されるキャビティ内に半導体チップ全体が配置されるように構成される。
また、ポット210は、2つの別々の流路220を有してもよく、Y字状の流路220を有してもよい。これにより、1つのポット210から、2つの穴部に、本発明に係る固定用樹脂組成物を充填できる。なお、1つのポットは、1つの穴部に固定用樹脂組成物を充填する1個の流路を有してもよいが、3以上の穴部に固定用樹脂組成物を充填する3個の流路を有してもよい。ただし、複数の流路は互いに独立してもよいが、連続していてもよい。
続いて、本実施の形態に係るインサート成形について説明する。
まず、ローターコアをオーブン又は熱盤上などで予熱後、不図示の成形装置の下型に固定する。続いて、ローターコアの穴部中に、磁石を挿入する。続いて、下型を上昇させ、ローターコアの上面に上型200を押しつける。これにより、上型200と下型とで、ローターコア110の上面及び下面を挟み込む。このとき、上型200中の流路220の先端部が、穴部と磁石との離間部上に配置される。また、ローターコアは、成形装置の下型と上型200からの熱伝導により加熱されることとなる。成形装置の下型及び上型200は、ローターコアが固定用樹脂組成物の成形、硬化に適した温度となるよう、例えば、150℃〜200℃程度に温調されている。この状態でタブレット状の固定用樹脂組成物を上型200のポット210内に供給する。上型200のポット210内に供給されたタブレット状の固定用樹脂組成物は、ポット210内で加熱され溶融状態となる。
続いて、プランジャ(押出機構)により、溶融状態の固定用樹脂組成物をポット210から押し出す。そして、固定用樹脂組成物は、流路220を移動して、穴部と磁石との離間部に充填される。この間、ローターコアは金型(下型と上型200)からの熱伝導により加熱され、それにより充填された固定用樹脂組成物を硬化させて、固定部材を形成する。このとき、温度条件としては、例えば、150℃〜200℃とすることができる。また、硬化時間としては、例えば、30秒〜180秒とすることができる。これにより、穴部150の内部に挿入された磁石120が固定部材130により固定される。この後、ローターコアの上面から上型200を離間する。次いで、ローターコア110の貫通孔にシャフト170を挿入するとともに、ローターコアにシャフト170を固設する。
以上により、本実施の形態のロータが得られる。
ここで、本実施の形態のインサート成形方法は、脱型する必要がない点で、半導体装置の製造に用いるトランスファー成形方法と異なる。
インサート成形方法では、ローターコア110の上面と上型200とが密着された状態で、上型200の流路を通って、ロータ−コア110の穴部に樹脂が充填される。このため、ローターコア110の上面と上型200との間にされず、上型200と上面との着脱が容易となる。
一方、トランスファー成形方法では、半導体チップと金型との間のキャビティに樹脂が充填されるので、成形品から金型をうまく脱型する必要がある。このため、半導体チップを封止する樹脂には、金型と成形品との離型性が特に要求されることになる。
本実施の形態のロータ100は、ハイブリッド車、燃料電池車および電気自動車等の電動車両、列車ならびに船舶等の、乗り物に搭載することができる。
また、本発明は、以下のものを含む。
[1]
回転シャフトに固設され、前記回転シャフトの周縁部に沿って配置されている複数の穴部が設けられている、ローターコアと、
前記穴部に挿入された磁石と、
前記穴部と前記磁石との離間部に充填された、固定用樹脂組成物を硬化してなる固定部材と、を備え、
前記固定用樹脂組成物は、
エポキシ樹脂を含む熱硬化性樹脂(A)と、
硬化剤(B)と、
無機充填剤(C)と、を含み、
前記無機充填剤(C)の含有量が、前記固定用樹脂組成物の合計値100質量%に対して、50質量%以上である、ロータ。
[2]
前記無機充填剤(C)がシリカを含む、[1]に記載のロータ。
[3]
前記シリカの含有量が、前記固定用樹脂組成物の合計値100質量%に対して、40質量%以上である、[2]に記載のロータ。
[4]
前記固定用樹脂組成物において、アルミナの含有量が、前記固定用樹脂組成物の合計値100質量%に対して、10質量%以下である、[1]から[3]のいずれか1項に記載のロータ。
[5]
前記無機充填剤(C)は、平均粒径D50が異なる2以上の球状シリカを含む、[1]から[4]のいずれか1項に記載のロータ。
[6]
前記平均粒径D50が、75μm以下である、[5]に記載のロータ。
[7]
前記硬化剤(B)が、フェノール樹脂を含む、[1]から[6]のいずれか1項に記載のロータ。
[8]
前記固定用樹脂組成物が、硬化促進剤(D)をさらに含む、[1]から[7]のいずれか1項に記載のロータ。
[9]
前記硬化促進剤(D)が、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物からなる群から選択される少なくとも1種を含む、[8]に記載のロータ。
[10]
前記固定用樹脂組成物が、無機難燃剤(G)をさらに含む、[1]から[9]のいずれか1項に記載のロータ。
[11]
前記無機難燃剤(G)が、金属水酸化物、または複合金属水酸化物を含む、[10]に記載のロータ。
[12]
前記固定用樹脂組成物に対して、イオン性不純物の濃度が500ppm以下であり、
前記イオン性不純物は、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン及びハロゲンイオンより選ばれる少なくとも1種以上である、[1]から[11]のいずれか1項に記載のロータ。
[13]
前記固定用樹脂組成物に対して、ナトリウムイオンの濃度が100ppm以下である、[1]から[12]のいずれか1項に記載のロータ。
[14]
前記固定用樹脂組成物に対して、塩素イオンの濃度が100ppm以下である、[1]から[13]のいずれか1項に記載のロータ。
[15]
前記固定用樹脂組成物が、イオン捕捉剤をさらに含み、
前記イオン捕捉剤が、ハイドロタルサイト類またはマグネシウム、アルミニウム、ビスマス、チタン、ジルコニウムから選ばれる元素の含水酸化物を含む、[1]から[14]のいずれか1項に記載のロータ。
[16]
前記固定用樹脂組成物が、低応力剤をさらに含み、
前記低応力剤が、ポリブタジエン化合物、アクリロニトリルブタジエン共重合化合物またはシリコーン化合物を含む、[1]から[15]のいずれか1項に記載のロータ。
[17]
前記磁石が、ネオジム磁石で構成される、[1]から[16]のいずれか1項に記載のロータ。
[18]
前記固定部材は、タブレット状の前記固定用樹脂組成物を用い、インサート成形で形成される、[1]から[17]のいずれか1項に記載のロータ。
[19]
前記固定用樹脂組成物が、金型温度175℃、成形圧力6.9MPaの条件で、幅3mm、厚さ80μmの断面形状を有する流路に前記固定用樹脂組成物を注入した際のスリット流動長が30mm以上である、[1]から[18]のいずれか1項に記載のロータ。
[20]
前記固定部材のガラス転移温度(Tg)が、150℃以上である、[1]から[19]のいずれか1項に記載のロータ。
[21]
150℃における、前記固定部材の曲げ強度が、70MPa以上である、[1]から[20]のいずれか1項に記載のロータ。
[22]
150℃における、前記固定部材の曲げ弾性率が、1.6×10MPa以下である、[1]から[21]のいずれか1項に記載のロータ。
[23]
25℃以上、ガラス転移温度(Tg)以下の領域における、前記固定部材の線膨張係数(α1)が、10ppm/℃以上、25ppm/℃以下である、[1]から[22]のいずれか1項に記載のロータ。
[24]
高化式粘度測定装置を用いて、測定温度175℃、荷重10kgで測定した際の、前記固定用樹脂組成物の高化式粘度が、6Pa・s以上50Pa・s以下である、[1]から[23]のいずれか1項に記載のロータ。
[25]
前記固定用樹脂組成物の175℃におけるゲルタイムが、10秒以上、40秒以下である、[1]から[24]のいずれか1項に記載のロータ。
[26]
前記固定用樹脂組成物のスパイラルフローが、50cm以上である、[1]から[25]のいずれか1項に記載のロータ。
[27]
キュラストメーターを用いて、測定温度175℃で前記固定用樹脂組成物の硬化トルクを経時的に測定した際の、測定開始60秒後の硬化トルク値をT60、測定開始300秒後までの最大硬化トルク値をTmaxとしたとき、測定開始300秒後までの最大硬化トルク値に対する測定開始60秒後の硬化トルク値の比T60/Tmax(%)が、40%以上である、[1]から[26]のいずれか1項に記載のロータ。
[28]
[1]から[27]のいずれか1項に記載のロータを備える、自動車。
[29]
回転シャフトが貫通する貫通孔の周縁部に沿って配置されている複数の穴部が設けられている、ローターコアを準備する工程と、
前記穴部に磁石を挿入する工程と、
前記穴部と前記磁石との離間部に固定用樹脂組成物を充填する工程と、
前記樹脂組成物を硬化して、固定部材を得る工程と、
前記ローターコアの前記貫通孔に前記回転シャフトを挿入するとともに、前記ローターコアに前記回転シャフトを固設する工程と、を有し、
前記固定用樹脂組成物は、
エポキシ樹脂を含む熱硬化性樹脂(A)と、
硬化剤(B)と、
無機充填剤(C)と、を含み、
前記無機充填剤(C)の含有量が、前記固定用樹脂組成物の合計値100質量%に対して、50質量%以上である、ロータの製造方法。
以下、本発明を実施例を参照して詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。特に記載しない限り、以下に記載の「部」は「質量部」、「%」は「質量%」を示す。
各実施例及び各比較例で用いた原料成分を下記に示した。
(熱硬化性樹脂(A))
エポキシ樹脂1:オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(DIC(株)製、EPICLON N−665、エポキシ当量198g/eq、軟化点62℃)
エポキシ樹脂2:オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(DIC(株)製、EPICLON N−670、エポキシ当量199g/eq、軟化点65℃)
エポキシ樹脂3:オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(DIC(株)製、EPICLON N−690、エポキシ当量200g/eq、軟化点92℃)
エポキシ樹脂4:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製、jER1001、エポキシ当量475g/eq、軟化点64℃)
(硬化剤(B))
フェノール樹脂系硬化剤1:ノボラック型フェノール樹脂(住友ベークライト(株)製、PR−51714、水酸基当量104g/eq、軟化点92℃)
フェノール樹脂系硬化剤2:ノボラック型フェノール樹脂(住友ベークライト(株)製、PR−51470、水酸基当量104g/eq、軟化点110℃)
(無機充填剤(C))
溶融球状シリカ1(電気化学工業(株)製、FB−950、平均粒径D5038μm)
溶融球状シリカ2(電気化学工業(株)製、FB−35、平均粒径D5015μm)
アルミナ(日本軽金属(株)製、A13、平均粒径D5050μm)
(硬化促進剤(D))
硬化促進剤1:トリフェニルホスフィン
硬化促進剤2:下記式(7)で表される硬化促進剤
Figure 2013138611
硬化促進剤3:下記式(8)で表される硬化促進剤
Figure 2013138611
硬化促進剤4:下記式(9)で表される硬化促進剤
Figure 2013138611
硬化促進剤5:下記式(10)で表される硬化促進剤
Figure 2013138611
硬化促進剤6:下記式(11)で表される硬化促進剤
Figure 2013138611
(カップリング剤(F))
シランカップリング剤1:フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング(株)製、CF4083)
シランカップリング剤2:γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、KBM−403)
(無機難燃剤(G))
水酸化アルミニウム(住友化学(株)製、CL−303)
(その他の添加剤)
イオン捕捉剤:ハイドロタルサイト(協和化学工業(株)製、商品名DHT−4H)
着色剤:カーボンブラック(三菱化学(株)製、MA600)
離型剤:モンタン酸エステルワックス(ヘキスト製ヘキストワックスE))
低応力剤1:シリコーンレジン(日興ファインプロダクツ(株)製、MSP−150)
低応力剤2:シリコーンオイル(日本ユニカー(株)製、FZ−3730)
(実施例)
実施例について、表1〜表3に示す配合量に従い各成分をミキサーを用いて、常温で混合し、粉末状中間体を得た。得られた粉末状中間体を自動供給装置(ホッパー)に装填して、80℃〜100℃の加熱ロールへ定量供給し、溶融混練を行った。その後冷却し、次いで粉砕して、固定用樹脂組成物を得た。成形装置を用いて、得られた固定用樹脂組成物を打錠成型することによりタブレットを得た。
一方、図2に示す上型200を備えるインサート成形装置を用いて、下記要領でロータを作製した。まず、ローターコアを成形装置の下型に固定し、続いて、ローターコアの穴部中に、ネオジム磁石を挿入した後、下型を上昇させてローターコアの上面に上型200を押しつけた。続いて、タブレット状の固定用樹脂組成物を上型200のポット210に供給した後、プランジャにより、溶融状態の固定用樹脂組成物をポット210から押し出し、固定用樹脂組成物を、穴部とネオジム磁石との離間部に充填し、加熱硬化させて固定部材を形成し、ロータを得た。この時の成形条件は、ローターコア温度:160℃、硬化時間:120秒とした。
得られた固定用樹脂組成物及びロータについて、下記に示す測定及び評価を行った。その結果を表1〜表3に示す。実施例のロータは強度に優れていた。
(評価項目)
イオン性不純物濃度:固定用樹脂組成物を175℃、180秒の条件で成形硬化後、粉砕機で粉砕し硬化物の粉末を得た後、その硬化物を純水中で120℃、24時間処理し、純水中に金属イオンを抽出した。その後、ICP−MS(誘導結合プラズマイオン源質量分析装置)を用いて濃度を測定した。単位はppm。表には、トータルのイオン性不純物濃度、ならびに、ナトリウムイオン濃度及び塩素イオン濃度を示した。
スパイラルフロー:成形機(コータキ精機(株)製、KTS−15)を用いて、ANSI/ASTM D 3123−72に準じたスパイラルフロー測定用金型に、175℃、注入圧力6.9MPa、保圧時間120秒の条件で固定用樹脂組成物を注入し、流動長を測定した。スパイラルフローは、流動性のパラメータであり、数値が大きい方が、流動性が良好である。単位はcm。
ゲルタイム:175℃に制御された熱板上に、固定用樹脂組成物を載せ、スパチュラで約1回/sec.のストロークで練る。固定用樹脂組成物が熱により溶解してから硬化するまでの時間を測定し、ゲルタイムとした。単位は秒。
高化式粘度:約2.5gの固定用樹脂組成物を、タブレット状(直径11mm、高さ約15mm)としたのち、高化式粘度測定装置(島津製作所(株)製、CFT−500D)を用いて測定温度175℃、荷重10kgの条件で、直径0.5mm、長さ1.0mmのノズル(ダイス)を使用して測定した。単位はPa・s。
キュラストトルク比:キュラストメーター((株)オリエンテック製、JSRキュラストメーターIVPS型)を用いて、測定温度175℃で固定用樹脂組成物の硬化トルクを経時的に測定した際の、測定開始60秒後の硬化トルク値をT60、測定開始300秒後までの最大硬化トルク値をTmaxとしたとき、測定開始300秒後までの最大硬化トルク値に対する測定開始60秒後の硬化トルク値の比T60/Tmax(%)をキュラストトルク比として求めた。キュラストメーターにおけるトルクは熱剛性のパラメータであり、キュラストトルク比の大きい方が硬化性が良好である。
スリット流動長:金型温度175℃、成形圧力6.9MPa、注入時間20秒、硬化時間90秒の条件で、先端が開放された特定厚みの溝(スリット)を放射状に設けた金型に、固定用樹脂組成物を注入成形し、幅3mm、厚さ80μmのスリットに流れ出た樹脂の長さをノギスで測定した。単位はmm。
ロータ成形性:電磁鋼板に見立てた金型(穴部の幅が30mm、厚みが4mm、深さが75mm)にマグネットに見立てた金属片(幅28mm、厚み3.5mm、長さ74mm)を挿入したものを成形機にセットした後、金型上面に上型を押しつけた。金型が170℃に達したところで固定用樹脂組成物を注入成形し、硬化時間120秒後に金型を成形機から取り出した。成形品の外観を肉眼で観察しボイドなどの異常がないか確認し、ボイドなどの異常がなかったものを○、ボイドなどの異常があったものを×とした。
ガラス転移温度及び線膨張係数(α1、α2):成形機(コータキ精機株式会社製、KTS−30)を用いて、金型温度175℃、注入圧力9.8MPa、硬化時間2分の条件で、固定用樹脂組成物を注入成形し、4mm×4mm×15mmの試験片を得た。得られた試験片を、175℃、4時間で後硬化した後、熱機械分析装置(セイコー電子工業(株)製、TMA100)を用いて、測定温度範囲0℃から320℃までの温度域で、昇温速度5℃/分で測定した時のチャートより、ガラス転移温度以下の領域での線膨張係数(α1)とゴム状相当領域の線膨張係数(α2)とを決定した。また、決定したα1及びα2の延長線の交点をガラス転移温度とした。ガラス転移温度の単位は℃、線膨張係数(α1、α2)の単位はppm/℃。
曲げ強度及び曲げ弾性率(150℃):成形機(コータキ精機株式会社製、KTS−30)を用いて、金型温度175℃、注入圧力9.8MPa、硬化時間120秒の条件で、固定用樹脂組成物を注入成形し、長さ80mm、幅10mm、厚さ4mmの成形品を得た。得られた成形品を、後硬化として175℃、8時間加熱処理したものを試験片とし、曲げ強度及び曲げ弾性率をJIS K 6911に準じて、150℃雰囲気下で測定した。単位はMPa。
耐オイル性:上記曲げ強度及び曲げ弾性率の測定用で得た試験片(成形品)を耐圧容器に入れ、耐圧容器にATFオイル(ニッサンマチックフルード D)を充填させた状態で150℃の温度で1000時間浸漬した後、上記と同様の方法にて曲げ強度及び弾性率を測定した。ATFオイル浸漬前の初期値に対し、変化率が10%以内のものを○、10%を上回るものを×とした。
Figure 2013138611
Figure 2013138611
Figure 2013138611
実施列1〜21から、ロータ成形性等の機械的強度に優れたロータが得られることが分かった。また、このような本実施例と比較して、特許文献2に記載の実施例1および実施例3のエポキシ樹脂成形材料はロータ成形性および流動硬化特性に劣っていた。
なお、当然ながら、上述した実施の形態および複数の変形例は、その内容が相反しない範囲で組み合わせることができる。また、上述した実施の形態および変形例では、各部の構造などを具体的に説明したが、その構造などは本願発明を満足する範囲で各種に変更することができる。
100 ロータ
110 ロータコア
112 鋼板
114、118a、118b エンドプレート
116 溝部
120 磁石
130 封止部材
140 充填部
150、152、154a、154b、156 穴部
151 側壁
160 カシメ部
170 シャフト
200 上型
210 ポッド
220 流路

Claims (1)

  1. 回転シャフトに固設され、前記回転シャフトの周縁部に沿って配置されている複数の穴部が設けられている、ローターコアと、
    前記穴部に挿入された磁石と、
    前記穴部と前記磁石との離間部であって、前記磁石の側壁のうちの少なくとも前記ローターコアの内周縁側に位置する側壁上に設けられて前記磁石を固定する固定部材と、を備えるロータのうち前記固定部材の形成に用いる固定用樹脂組成物であって、
    エポキシ樹脂を含む熱硬化性樹脂(A)と、
    硬化剤(B)と、
    無機充填剤(C)と、を含み、
    前記無機充填剤(C)の含有量が、前記固定用樹脂組成物の合計値100質量%に対して、50質量%以上である、固形の固定用樹脂組成物。
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