JP2013134485A - 電子写真用トナー - Google Patents
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Abstract
【解決手段】トナー用ポリエステル樹脂の水系分散体を凝集させて得られた凝集粒子を融着させた粒子を含む電子写真用トナーであって、該水系分散体中に分散している樹脂粒子の体積中位粒径(D50)が0.07〜0.50μmであり、該水系分散体を特定の遠心分離条件にて遠心分離させた際に沈殿する樹脂粒子(沈殿成分)と沈殿しない樹脂粒子(非沈殿成分)との重量比が、沈殿成分/非沈殿成分として55/45〜97/3であり、かつ該非沈殿成分の体積中位粒径(D50)が0.01〜0.05μmである、電子写真用トナー。
【選択図】なし
Description
乳化凝集法によるトナー作成時には、まず樹脂を乳化し水系の分散体を作成し、その後に凝集する工程が取られる。この凝集工程においては、トナーの粒子径を均一化させるために、緩慢凝集(急な凝集でなく、ゆっくりと凝集すること)させることが重要である。しかし、ポリエステルからなる水系分散体の課題として、凝集剤に対する安定性が非常に低く、緩慢凝集が困難であることが知られている。これにより、トナーの最低定着温度の上昇、保存性の悪化、印刷物の光沢度が低下する等の課題が発生している。
しかし、これらの方法では、トナー形成後、残留界面活性剤が保存性や帯電性を低下させ、また、界面活性剤を除去する場合には、洗浄負荷や排水負荷が甚大となるため、トナー物性、環境への影響の観点から好ましい方法とは言えない。
トナー用ポリエステル樹脂の水系分散体を凝集させて得られた凝集粒子を融着させた粒子を含む電子写真用トナーであって、該水系分散体中に分散している樹脂粒子の体積中位粒径(D50)が0.07〜0.50μmであり、該水系分散体を下記遠心分離条件にて遠心分離させた際に沈殿する樹脂粒子(沈殿成分)と沈殿しない樹脂粒子(非沈殿成分)との重量比が、沈殿成分/非沈殿成分として55/45〜97/3であり、かつ該非沈殿成分の体積中位粒径(D50)が0.01〜0.05μmである、電子写真用トナー。
遠心分離条件:該水系分散体中の分散樹脂粒子を20重量%水分散液とした後、遠心分離機にて、25℃雰囲気下、3.5×104Gの相対遠心加速度で5時間遠心分離を行う。
遠心分離条件:該水系分散体中の分散樹脂粒子を20重量%水分散液とした後、遠心分離機にて、25℃雰囲気下、3.5×104Gの相対遠心加速度で5時間遠心分離を行う。
トナー粒子の定着温度は、基本的には結着樹脂の軟化点及び融点に依存すると考えられるが、トナー粒子の粒子径にばらつきがある場合、粒子の大小により粒子内部への温度伝播速度が異なり定着ムラが起こりやすく、完全に定着するためには粗大な粒子を融解又は軟化させる必要があり、定着温度が樹脂の持つ軟化点や融点からみて高くなるものと考えられる。したがって、粒子径が小さく均一なものほど、樹脂の持つ軟化点や融点に近い温度で定着できるものと考えられる。
一方、トナー粒子の粒子径が小さい場合には、低温定着を向上するために低い軟化点や融点を設定した場合、保存時におけるトナー同士の融着が起こりやすく保存安定性が悪くなる。また、トナー粒子の粒子径が大きい場合には、トナー定着後、不十分に融着したトナー粒子が画像面に残るために画像表面に凹凸が生じ、光沢性を悪化させる。現在のトナー製造において、結着樹脂の水系分散体を凝集させて得られた凝集粒子を融着させて作ることが主流となりつつあるが、従来、結着樹脂の水系分散体中の樹脂粒径や粒径分布とこれらトナー物性との因果関係は充分わからなかった。
本発明においては、樹脂粒子が特定の粒子径、沈殿成分/非沈殿成分比を有する粒子群を凝集させた時に、比較的小さく均一な粒子に凝集することができ、その結果、低温定着が可能となり、光沢性が向上したものと推定できる。また、凝集粒子に、低温で融着しやすい極小粒子径のトナーが混じらないためトナー同士が融着しにくく、保存安定性を向上することができるものと推定できる。すなわち、結着樹脂の水系分散体を凝集させるトナー粒子の製造において、トナーの低温定着性、耐熱保存性及び印刷物の光沢性にとって理想的なトナー粒子の状態をつくるためには、本発明に開示する水系分散体の樹脂粒子の体積中位粒径(D50)と、特定条件で遠心分離を行って得られる沈殿成分/非沈殿成分比で規定される粒度分布と、このときの非沈殿成分の体積中位粒径(D50)とのすべての条件がそろったときに達成できるものである。
なお、本発明の効果発現の作用機構は以上の推定機構のみに限定されるわけではない。
以下、本発明に用いられる各成分について説明する。
本発明に用いられるポリエステル系樹脂は、一般的にトナー用として用いられる物性等を有するトナー用ポリエステル樹脂であれば特に限定されるものではないが、アルコール成分とカルボン酸成分とを縮重合して得られる。以下、本発明に用いられるトナー用ポリエステル樹脂の代表的な態様について説明する。
本発明に用いられるポリエステル系樹脂は、非晶質樹脂であっても結晶性ポリエステルであってもよい。ここで、ポリエステル等の樹脂の結晶性は、軟化点と示差走査熱量計(DSC)による吸熱の最大ピーク温度との比、即ち、「軟化点/吸熱の最大ピーク温度」で定義される結晶性指数によって表される。一般に、この結晶性指数が1.4を超えると樹脂は非晶質であり、0.6未満では結晶性が低く非晶質部分が多い。本発明において、「結晶性ポリエステル」とは、結晶性指数が0.6〜1.4、好ましくは0.8〜1.2、更に好ましくは0.9〜1.1であるポリエステルをいい、「非晶質樹脂」とは、結晶性指数が1.4を超えるか、0.6未満の樹脂をいう。
上記の「吸熱の最大ピーク温度」とは、実施例に記載する測定方法の条件下で観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピークの温度のことを指す。最大ピーク温度が軟化点と20℃以内の差であれば、最大ピーク温度を結晶性樹脂(結晶性ポリエステル)の融点とし、軟化点との差が20℃を超えるピークは非晶質樹脂のガラス転移に起因するピークとする。
本発明のポリエステル系樹脂の結晶性は、原料モノマーの種類とその比率、及び製造条件(例えば、反応温度、反応時間、冷却速度)等により調整することができる。
本発明に用いられるポリエステル系樹脂が非晶質樹脂である場合、ポリエステル系樹脂の原料モノマーであるアルコール成分は、樹脂を非晶質とする観点から、下記式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を含有することが好ましい。
前記式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物は、樹脂を非晶質とする観点から、アルコール成分中、好ましくは70〜100モル%、より好ましくは80〜100モル%、更に好ましくは90〜100モル%含有される。
炭素数2〜14の脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール及び1,4−ブテンジオール等が挙げられる。これらの中でも、トナーの低温定着性、耐熱保存性、かつ印刷物の光沢性等を高める観点から、炭素数4〜8の脂肪族ジオールが好ましく、炭素数4〜6の脂肪族ジオールがより好ましく、また、結晶性を高める観点からは、炭素数2〜14、好ましくは炭素数4〜8、より好ましくは炭素数4〜6のα,ω−直鎖アルカンジオールが好ましい。具体的には、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオールが好ましく、トナーの低温定着性、耐熱保存性、かつ印刷物の光沢性等を高める観点から、1,6−ヘキサンジオールが更に好ましい。
本発明に用いられるポリエステル系樹脂が結晶性ポリエステルである場合、トナーの低温定着性、耐熱保存性及び印刷物の光沢性を高める観点から、炭素数2〜14の脂肪族ジオールは、アルコール成分中、好ましくは70〜100モル%、より好ましくは80〜100モル%、更に好ましくは90〜100モル%含有される。
なお、非晶質樹脂に、炭素数2〜14の脂肪族ジオールを用いてもよく、結晶性ポリエステルに、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を用いることもできる。
3価以上のアルコールとして、具体的には、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等が挙げられ、反応性及び分子量調整の観点から、グリセリンが好ましい。
3価以上のアルコールの含有量は、トナーの低温定着性、耐熱保存性及び印刷物の光沢性を高める観点から、ポリエステル系樹脂のアルコール成分中、0.1〜30モル%が好ましく、1〜30モル%がより好ましく、5〜30モル%が更に好ましい。
カルボン酸成分としては、脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、3価以上の多価カルボン酸、並びにそれらの酸無水物及びそれらのアルキル(炭素数1〜3)エステル等が挙げられる。これらのカルボン酸成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
脂肪族ジカルボン酸の具体例としては、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,10−デカンジカルボン酸が挙げられる。また、脂肪族ジカルボン酸の例には、ドデシルコハク酸、ドデセニルコハク酸、オクテニルコハク酸等の炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数2〜20のアルケニル基で置換されたコハク酸も含まれる。これらの中でもトナーの低温定着性、耐熱保存性及び印刷物の光沢性を高める観点から、フマル酸、セバシン酸が好ましい。
芳香族ジカルボン酸の具体例としては、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸が挙げられる。これらの中でもトナーの低温定着性、耐熱保存性及び印刷物の光沢性を高める観点から、テレフタル酸が好ましい。
3価以上の多価カルボン酸の具体例としては、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸(ピロメリット酸)が挙げられる。
3価以上の多価カルボン酸の含有量は、トナーの低温定着性、耐熱保存性及び印刷物の光沢性を高める観点から、ポリエステル系樹脂のカルボン酸成分中、0.1〜30モル%が好ましく、1〜30モル%がより好ましく、5〜30モル%が更に好ましい。
縮重合反応の原料モノマーであるアルコール成分とカルボン酸成分とのモル比(カルボン酸成分/アルコール成分)は、反応性、分子量調整及び物性調整の観点から、好ましくは0.50〜1.50であり、より好ましくは0.7〜1.3であり、更に好ましくは0.85〜1.15である。
本発明に用いられるポリエステル系樹脂は、(i)ビニル系樹脂の原料モノマー、及び(ii)該ビニル系樹脂の原料モノマーと前記アルコール成分のいずれとも反応し得る両反応性モノマーを用いて縮重合反応に加えて付加重合反応に付すことにより、ポリエステル系樹脂を複合樹脂とすることもできる。
ビニル系樹脂成分の原料モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン化合物;エチレン、プロピレン等のエチレン性不飽和モノオレフィン類;ブタジエン等のジオレフィン類;塩化ビニル等のハロビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;(メタ)アクリル酸のアルキル(炭素数1〜18)エステル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル等のエチレン性モノカルボン酸のエステル;ビニルメチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニリデンクロリド等のビニリデンハロゲン化物;N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物類等が挙げられる。反応性等の観点から、スチレン化合物及び(メタ)アクリル酸のアルキル(炭素数1〜18)エステルが好ましく、スチレン、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、及びメタクリル酸メチルがより好ましく、スチレン及びアクリル酸2−エチルヘキシルが更に好ましい。スチレン及び/又は(メタ)アクリル酸のアルキルエステルが、ビニル系樹脂成分中、50重量%以上含有されていることが好ましく、より好ましくは80〜100重量%である。
ビニル系樹脂成分の原料モノマーの使用量は、トナーの低温定着性、耐熱保存性及び印刷物の光沢性を高める観点から、前記ポリエステル成分とビニル系樹脂成分との重量比率(前記ポリエステル成分の重量/ビニル系樹脂成分の重量)としては、50/50〜95/5が好ましく、65/45〜90/10がより好ましく、70/30〜85/15が好ましい。
両反応性モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸及び無水マレイン酸等が挙げられる。縮重合反応及び付加重合反応の反応性の観点から、アクリル酸及びメタクリル酸が好ましい。なお、フマル酸も両反応性モノマーとして機能し得る化合物の一種であり、好ましい化合物であるが、複合樹脂の縮重合反応のカルボン酸原料として用いる場合は、両反応性モノマーからフマル酸を除く。
両反応性モノマーの使用量は、トナーの低温定着性、耐熱保存性及び印刷物の光沢性を高める観点から、前記アルコール成分100モルに対して、2〜25モルが好ましく、3〜20モルがより好ましく、5〜18モルが更に好ましく、6〜15モルがより更に好ましい。
また、本発明に用いられるポリエステル系樹脂の軟化点は、トナーの低温定着性及び耐熱保存性の観点から、60〜160℃が好ましく、60〜140℃がより好ましく、65〜130℃が更に好ましく、65〜120℃がより更に好ましく、70〜115℃がより更に好ましい。また、本発明のポリエステル系樹脂のガラス転移温度は、トナーの低温定着性及び耐熱保存性の観点から、45〜85℃が好ましく、50〜80℃がより好ましい。なお、ガラス転移温度は非晶質樹脂に特有の物性であり、融解熱の最大ピーク温度とは区別される。
ポリエステル系樹脂の水酸基価は、上記と同様の観点から、1〜70mgKOH/gが好ましく、2〜60mgKOH/gがより好ましく、3〜50mgKOH/gが更に好ましい。
なお、軟化点、ガラス転移温度、数平均分子量、重量平均分子量、酸価及び水酸基価は、原料モノマー組成、分子量、触媒量等の調整又は反応条件の選択により容易に調整することができる。
ポリエステル系樹脂は、アルコール成分とカルボン酸成分との縮重合反応により得られる。該縮重合反応はエステル化触媒の存在下で行うことが好ましく、反応性、分子量調整及び樹脂の物性調整の観点から、エステル化触媒とピロガロール化合物の共存在下で行うことがより好ましい。
上記縮重合に好適に用いられるエステル化触媒としては、チタン化合物及びSn−C結合を有していない錫(II)化合物が挙げられ、これらは1種又は2種以上を併せて使用することができる。
ピロガロール化合物は、互いに隣接する3個の水素原子が水酸基で置換されたベンゼン環を有するものであり、ピロガロール、没食子酸、没食子酸エステル、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,3,4−テトラヒドロキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体、エピガロカテキン、エピガロカテキンガレート等のカテキン誘導体等が挙げられ、反応性の観点から、没食子酸が好ましい。
縮重合反応におけるピロガロール化合物の存在量は、反応性の観点から、縮重合反応に供されるアルコール成分とカルボン酸成分との総量100重量部に対して、0.001〜1重量部が好ましく、0.005〜0.4重量部がより好ましく、0.01〜0.2重量部が更に好ましい。ここで、ピロガロール化合物の存在量とは、縮重合反応に供したピロガロール化合物の全配合量を意味する。
ピロガロール化合物とエステル化触媒との重量比(ピロガロール化合物/エステル化触媒)は、反応性の観点から、0.01〜0.5が好ましく、0.02〜0.3がより好ましく、0.03〜0.2が更に好ましい。
また、例えば樹脂の強度を上げるために全モノマーを一括で仕込んだり、低分子量成分を少なくするために2価のモノマーを先ず反応させた後、3価以上のモノマーを添加して反応させる等の方法を用いてもよい。また、重合の後半に反応系を減圧することにより、反応を促進させてもよい。
複合樹脂は、以下の(1)〜(3)のいずれかの方法により製造することが好ましい。なお、両反応性モノマーは、反応性の観点から、ビニル系樹脂成分の原料モノマーと共に反応系に供給されることが好ましい。
(1)アルコール成分及びカルボン酸成分による縮重合反応の工程(A)の後に、ビニル系樹脂成分の原料モノマー及び両反応性モノマーによる付加重合反応の工程(B)を行う方法。
工程(B)の後に、再度反応温度を上昇させ、必要に応じて、縮重合系樹脂成分の3価以上の原料モノマー等を架橋剤として重合系に添加し、工程(A)の縮重合反応や両反応性モノマーとの反応を更に進めることもできる。
アルコール成分及びカルボン酸成分については、付加重合反応時に反応系内に存在させておき、縮重合反応に適した温度でエステル化触媒を添加させることにより縮重合反応を開始することもできるし、縮重合反応に適した温度条件下で反応系内に後から添加することにより縮重合反応を開始することもできる。前者の場合は、縮重合反応に適した温度でエステル化触媒を添加することで分子量及び分子量分布が調節できる。
この方法では、付加重合反応に適した反応温度条件下で工程(A)と工程(B)とを行い、反応温度を上昇させ、縮重合反応に適した温度条件下で、必要に応じて、縮重合系樹脂成分の3価以上の原料モノマー等を架橋剤として重合系に添加し、更に工程(A)の縮重合反応を行うことが好ましい。その際、縮重合反応に適した温度条件下では、ラジカル重合禁止剤を添加して縮重合反応だけを進めることもできる。両反応性モノマーは付加重合反応と共に縮重合反応にも関与する。
以上の中でも、方法(1)が、縮重合反応の反応温度の自由度が高いという点から好ましい。
付加重合反応に適した温度は、120℃以上180℃未満が好ましく、155℃以上175℃未満がより好ましい。なお、後述の通り、縮重合反応に適した温度は、180〜250℃が好ましく、180〜240℃が好ましい。
上記(1)〜(3)の方法は、同一容器内で行うことが好ましい。
本発明に用いられるポリエステル系樹脂の水系分散体は、前記ポリエステル系樹脂、有機溶剤、界面活性剤及び水、更に必要に応じて中和剤を混合した後、有機溶剤を除去することにより調製することができる。
有機溶剤としては、ポリエステル系樹脂の分散性を向上する観点から、溶解性パラメータ(SP値:POLYMER HANDBOOK THIRD EDITION 1989 by John Wiley & Sons,Inc)で表したとき、15.0〜26.0MPa1/2であるものが好ましく、16.0〜24.0MPa1/2であるものがより好ましく、17.0〜22.0MPa1/2であるものが更に好ましい。
具体例としては、エタノール(26.0)、イソプロパノール(23.5)、及びイソブタノール(21.5)等のアルコール系溶媒;アセトン(20.3)、メチルエチルケトン(19.0)、メチルイソブチルケトン(17.2)、及びジエチルケトン(18.0)等のケトン系溶媒;ジブチルエーテル(16.5)、テトラヒドロフラン(18.6)、及びジオキサン(20.5)等のエーテル系溶媒;酢酸エチル(18.6)、酢酸イソプロピル(17.4)等の酢酸エステル系溶媒が挙げられる。カッコ内は、SP値を示す。これらの中では、トナーの低温定着性、耐熱保存性、印刷物の光沢性を高める観点から、メチルエチルケトン、酢酸エチルが好ましく、メチルエチルケトンがより好ましい。
界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤が挙げられ、ポリエステル系樹脂の分散性の観点から、なかでもアニオン性界面活性剤が好ましい。
アニオン性界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキル硫酸ナトリウム、アルキルエーテル硫酸ナトリウム等が挙げられ、これらの中でも樹脂の乳化安定性の観点から、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルエーテル硫酸ナトリウムが好ましく、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムがより好ましい。
カチオン性界面活性剤としては、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、ジアルキルジメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
中和剤としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、及び水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;アンモニア、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、及びトリブチルアミン等の有機塩基が挙げられる。
ポリエステル系樹脂の中和剤による中和度は、ポリエステル系樹脂の分散性、トナーの低温定着性、耐熱保存性及び印刷物の光沢性を高める観点から、20〜100モル%であることが好ましく、25〜90モル%がより好ましく、30〜80モル%が更に好ましく、30〜70モル%がより更に好ましい。
中和度={[中和剤の重量(g)/中和剤の当量]/〔[樹脂の酸価(KOHmg/g)×樹脂の重量(g)]/(56×1000)〕}×100
本発明のポリエステル系樹脂の水系分散体は、ポリエステル系樹脂、有機溶剤、界面活性剤、中和剤等を水に添加し乳化機を用いて分散することによって得られる。
ポリエステル系樹脂の水系分散体の製造において、各原料の添加順序に限定はないが、好ましくはポリエステル系樹脂、有機溶剤、界面活性剤を混合した後、水、中和剤を混合してポリエステル系樹脂の分散液を得ることが好ましい。
水の使用量は、トナーの低温定着性、耐熱保存性及び印刷物の光沢性を高める観点から、有機溶剤100重量部に対して、好ましくは100〜1000重量部、より好ましくは200〜900重量部、更に好ましくは400〜700重量部である。
ポリエステル系樹脂、有機溶剤、界面活性剤等を混合し、乳化機で分散する際の温度は、分散性を向上する観点から、20〜40℃が好ましく、20〜30℃が好ましい。乳化機としては、特に限定されないが、ホモジナイザー、超音波分散機等を用いることができる。分散処理後、減圧下、40〜80℃、好ましくは40〜60℃にて、有機溶媒を除去する。
水系分散体の固形分濃度は、トナーの低温定着性、耐熱保存性及び印刷物の光沢性を高める観点から、適宜水を加えることにより、好ましくは3〜50重量%、より好ましくは5〜40重量%に調整される。なお、固形分とは、樹脂、界面活性剤等の不揮発性成分の総量である。
ポリエステル系樹脂の水系分散体における、水系分散体を遠心分離させた際に沈殿する比較的大きな粒子の含有量と沈殿しない程度の小粒径粒子の含有量とのバランスを制御する観点から、2種以上の体積中位粒径(D50)の異なる水系分散体(乳化液)を調製してから、それらを混合してポリエステル系樹脂の水系分散体を製造することが好ましい。
なお、水系分散体粒子の粒径は、乳化機の撹拌力、水系分散体を調整する際の温度、界面活性剤や有機溶剤の種類、添加率等を任意に設定することによって適宜調整することができるが、乳化機の撹拌力で粒径を制御するのが好ましい。
ポリエステル系樹脂の水系分散体中の樹脂粒子の体積中位粒径(D50)の測定には、動的光散乱式、レーザー回折式、超音波減衰分光法式などの粒径測定器を用いることができる。0.1μm以下の粒子を定量的に測定する観点から、動的光散乱式粒径測定器で測定することが好ましい。なお、本発明において体積中位粒径(D50)とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になる粒径を意味する。
本発明のポリエステル系樹脂の水系分散体中の樹脂粒子は、本発明に以下規定する遠心分離条件によって、遠心分離させた際に沈殿する樹脂粒子(沈殿成分)と沈殿しない樹脂粒子(非沈殿成分)が存在する。
本発明において、沈殿する樹脂粒子(沈殿成分)と沈殿しない樹脂粒子(非沈殿成分)とは、以下に規定する遠心分離条件にて遠心分離することによって分離し、それぞれの重量を測定することによって特定することができる。
本発明における遠心分離条件は、水系分散体中の分散樹脂粒子を20重量%水分散液とした後、遠心分離機にて、25℃雰囲気下、3.5×104Gの相対遠心加速度で5時間遠心分離操作を行う。
水系分散体中には、有機溶媒を含有することがあるため、例えば、減圧留去や窒素還流等により除去した後、イオン交換水等の水にて20重量%となるように調製し、試料とする。
相対遠心加速度は、3.5×104Gである。本発明の特定のため、遠心分離時の相対遠心加速度の設定をより正確に行うべきであるが、測定精度と作業性とを考慮して、10%程度の増減は許容できる。すなわち、(3.5±0.35)×104Gの機械精度であれば、本発明における沈殿成分と非沈殿成分との特定は可能である。
遠心分離時間は、5時間である。本発明の特定のため、より正確に時間設定を行うべきであるが、測定精度と作業性とを考慮して、4〜6時間の範囲であれば許容できる。
遠心分離操作時の温度は25℃である。本発明の特定のため、より正確に温度設定を行うべきであるが、測定精度と作業性とを考慮して、20〜30℃の範囲であれば許容できる。
以上の遠心分離操作を行った後、速やかに半透明の上澄みの全量をスポイト等で採取し、これを「遠心分離により沈殿しない樹脂粒子(非沈殿成分)」として採取し、乾燥重量法等により、非沈殿成分の重量を決定する。また、残渣を「遠心分離により沈殿する粒子(沈殿成分)」として採取し、乾燥重量法等により、非沈殿成分の重量を決定する。
ポリエステル系樹脂の水系分散体を遠心分離させた際に沈殿する樹脂粒子(沈殿成分)と沈殿しない樹脂粒子(非沈殿成分)との重量比は、トナーの低温定着性、耐熱保存性及び印刷物の光沢性を高める観点から、沈殿成分/非沈殿成分として55/45〜97/3であり、好ましくは60/40〜97/3、より好ましくは80/20〜97/3、更に好ましくは85/15〜97/3、より更に好ましくは85/15〜95/5、より更に好ましくは90/10〜95/5、より更に好ましくは92/8〜95/5である。
沈殿しない樹脂粒子(非沈殿成分)の体積中位粒径(D50)はポリエステル系樹脂の水系分散体中の樹脂粒子の体積中位粒径(D50)と同様の方法で測定することができる。ポリエステル系樹脂の水系分散体を遠心分離させた際に沈殿しない樹脂粒子(非沈殿成分の樹脂粒子)の体積中位粒径(D50)は、トナーの低温定着性、耐熱保存性及び印刷物の光沢性を高める観点から、0.01〜0.05μmであり、好ましくは0.02〜0.04μmである。
本発明の電子写真用トナーは、前記のトナー用ポリエステル樹脂の水系分散体を凝集させて得られた凝集粒子を融着させた粒子を含む。その製造方法は特に限定されないが、前記のポリエステル樹脂の水系分散体を凝集工程に付して凝集粒子を得る工程、並びに得られた凝集粒子を合一工程に付して合一粒子(融着粒子)を得る工程を含む製造方法が好ましい。
凝集工程では、前記のポリエステル系樹脂の水系分散体中の樹脂粒子を凝集させて、凝集粒子の分散液を得る。
無機金属塩としては、例えば、硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウム等が挙げられ、トナーの低温定着性、耐熱保存性及び印刷物の光沢性を高める観点から、塩化ナトリウム及び塩化カルシウムが好ましく、更に印刷物の光沢性を高める観点から、塩化カルシウムが好ましい。無機金属塩の中心金属の価数は、印刷物の光沢性を高める観点から、2価以上であることが好ましい。
凝集剤を添加する場合、その添加量は、トナーの低温定着性、耐熱保存性及び印刷物の光沢性を高める観点から、ポリエステル系樹脂100重量部に対して0.001〜10重量部が好ましく、0.001〜10重量部が好ましく、0.005〜7重量部がより好ましく、0.005〜5重量部が更に好ましく、0.01〜1重量部が更により好ましい。
凝集剤は、水系媒体に溶解させて添加することが好ましく、凝集剤の添加時及び添加終了後は十分撹拌することが好ましい。
凝集工程において、系内の固形分濃度は、均一な凝集を起こさせるために、5〜50重量%が好ましく、5〜40重量%がより好ましく、5〜30重量%が更に好ましい。
凝集工程において、凝集剤を均一に分散し、均一な凝集を起こさせる観点から、凝集剤の添加は、20〜40℃にて行うことが好ましく、凝集剤を添加した後、所定の粒径になるまで40〜60℃に保持することが好ましい。
離型剤を添加する場合、その添加量は、トナーの低温定着性、耐熱保存性及び印刷物の光沢性を高める観点から、トナー中、2〜25重量%が好ましく、5〜20重量%がより好ましく、8〜12重量%が更に好ましい。
樹脂粒子を調製する際にポリエステル系樹脂に添加剤を予め混合する場合には、予めポリエステル系樹脂と添加剤とを溶融混練することが好ましい。
溶融混練には、オープンロール型二軸混練機を使用することが好ましい。オープンロール型二軸混練機は、2本のロールが平行に近接して配設された混練機であり、各ロールに熱媒体を通すことにより、加熱機能又は冷却機能を付与することができる。したがって、オープンロール型二軸混練機は、溶融混練する部分がオープン型であり、また加熱ロールと冷却ロールを備えていることから、通常の二軸押出機と異なり、溶融混練の際に発生する混練熱を容易に放熱することができる。
また、各添加剤の水系分散体は、各添加剤、界面活性剤及び水を混合し、分散機で分散処理することによって得られる。
合一工程では、凝集工程で得られた凝集粒子の水系分散体に必要に応じて凝集停止剤を加えた後、必要に応じて、加熱することにより合一粒子を得る。
合一工程における系内の温度は、目的とするトナーの粒径、粒度分布、形状制御及び粒子の融着性の観点、トナーの低温定着性、耐熱保存性及び印刷物の光沢性を高める観点から、結着樹脂の軟化点−40℃〜+10℃が好ましく、−35℃〜+10℃がより好ましく、−25℃〜+10℃が更に好ましい。また、撹拌速度は、凝集粒子が沈降しない速度が好ましい。
なお、凝集停止剤を用いる場合、凝集停止剤として界面活性剤を用いることが好ましく、アニオン性界面活性剤を用いることがより好ましい。アニオン性界面活性剤のうち、アルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩、及び直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩からなる群から選ばれる少なくとも1種を用いることがより好ましく、アルキルエーテル硫酸塩を用いることが更に好ましい。
合一工程により得られた合一粒子を、適宜、ろ過等の固液分離工程、洗浄工程、乾燥工程に供することにより、本発明の電子写真用トナー(単にトナーと称することがある)を得ることができる。
トナーとして十分な帯電特性及び信頼性を確保する目的から、トナー表面の金属イオンを除去するため、酸を用いることが好ましい。また、添加した非イオン性界面活性剤も洗浄により完全に除去することが好ましく、非イオン性界面活性剤の曇点以下での水系溶液での洗浄が好ましい。洗浄は複数回行うことが好ましい。
また、乾燥工程では、振動型流動乾燥法、スプレードライ法、冷凍乾燥法、フラッシュジェット法等、任意の方法を採用することができる。トナーの乾燥後の水分含量は、帯電性の観点から、好ましくは1.5重量%以下、更には1.0重量%以下に調整することが好ましい。
外添剤を用いてトナー粒子の表面処理を行う場合、外添剤の添加量は、トナーの保存安定性を向上する観点から、外添剤による処理前のトナー粒子100重量部に対して、好ましくは1〜5重量部、より好ましくは1〜3.5重量部、更に好ましくは1〜3重量部である。
画像品質を向上する観点及び生産性を向上する観点から、トナーの体積中位粒径(D50)は、好ましくは1〜10μm、より好ましくは2〜8μm、更に好ましくは3〜7μm、更に好ましくは4〜6μmである。
トナーのCV値は、画像品質を向上する観点及び生産性を向上する観点から、好ましくは30%以下、より好ましくは27%以下、更に好ましくは25%以下、更に好ましくは22%以下である。なお、CV値は以下の式で計算できる。
CV値(%)=(粒径分布の標準偏差/体積中位粒径(D50))×100
本発明の電子写真用トナーは、一成分系現像剤として、又はキャリアと混合して二成分系現像剤として使用することができる。
(樹脂の軟化点)
フローテスター((株)島津製作所製、商品名:「CFT−500D」)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/minで加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出した。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とした。
示差走査熱量計(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製、商品名:「Q−100」)を用いて、20℃から降温速度10℃/分で0℃まで冷却した試料をそのまま1分間静止させ、その後、昇温速度10℃/分で180℃まで昇温しながら測定した。観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピークの温度を吸熱の最大ピーク温度(吸熱の最大ピーク温度)とし、最大ピーク温度が軟化点と20℃以内の差であれば結晶性樹脂とし、その融点とした。
(樹脂のガラス転移温度)
示差走査熱量計(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製、商品名:「Q−100」)を用いて、試料を0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/minで0℃まで冷却したサンプルを昇温速度10℃/minで昇温し、吸熱の最大ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移温度とした。
樹脂の酸価は、JIS K 0070の方法に基づき測定した。ただし、測定溶媒のみJIS K 0070の規定のエタノールとエーテルの混合溶媒から、アセトンとトルエンの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))に変更した。
(水系分散体中の樹脂粒子、着色剤微粒子、離型剤微粒子及び荷電制御剤微粒子及び凝集粒子の体積中位粒径(D50)及び分散度(CV))
動的光散乱型粒径測定機(マルバーン社製、商品名:「ZETASIZER NANO ZS」)を用いて、以下の条件で体積中位粒径(D50)及び分散度(CV)を測定した。
固形分濃度:0.1重量%
測定温度:25℃
媒質:水
測定用セル:Glass Cuvette
レーザー仕様:He−Ne、4mW,633nm
検出光学系:NIBS、173℃
測定回数:10回
等温化時間:5分
解析ソフト:Zeta Sizer Software 6.2
解析方法:General Purpose Mode(キュムラント法)
赤外線水分計((株)ケツト科学研究所製、商品名:FD−230)を用いて、水系分散体5gを乾燥温度150℃、測定モード96(監視時間2.5分/変動幅0.05%)の条件にて乾燥させ、水系分散体中の水分(重量%)を測定した。固形分は下記式に従って算出した。
固形分濃度(重量%)=100−M1
M1:水系分散体の水分(重量%)=[(W−W0)/W]×100
W:測定前の試料重量(初期試料重量)
W0:測定後の試料重量(絶対乾燥重量)
高速遠心分離機(ドイツ、SIGMA社製、商品名:「3K30C」)を用い、以下の条件にてポリエステル系樹脂の水系分散体における樹脂粒子の沈殿成分と非沈殿成分との分離を行った。
温度:25℃
サンプルの重量:20g
ローター:12158−H
サンプルセル:Nalgene社Centrifuge ware3119−0030
サンプル量:20g
回転数:20000rpm
RCF(相対遠心加速度):3.5×104G
時間:5時間
遠心分離操作停止直後、パスツールピペットにて上澄み液(透明部分)を速やかに全量採取し、水系分散体中の樹脂粒子の体積中位粒径(D50)と同様の方法によって測定し、上澄み液中の樹脂粒子の体積中位粒径(D50)の値を得た。
遠心分離操作停止直後、パスツールピペットにて上澄み液(透明部分)を速やかに全量採取した。上澄み液の全重量を測定し、上記水分計を用いて固形分濃度を測定した。上澄み中の樹脂固形分量は、以下式に従って算出した。
樹脂固形分量(重量%)=W1×(M2/100)×(1/W2)
W1:上澄み液の重量(g)
M2:上澄みの固形分濃度(重量%)
W2:遠心前の水系分散体の固形分重量(g)
(トナーの耐熱保存性)
25mL容の容器(直径約3cm)にトナー5gを入れ、温度55℃、湿度70%の環境下で72時間放置した。放置後、トナー凝集の発生程度を目視にて観察し、以下の評価基準に従って、保存性を評価した。評価点B以上が好ましい。
A:48時間後及び72時間後も凝集は全く認められない。
B:48時間後で凝集は認められないが72時間後ではわずかに凝集が認められる。
C:48時間後で凝集は認められないが72時間後では明らかに凝集が認められる。
D:48時間以内で凝集が認められる。
複写機(シャープ(株)製、商品名:「AR−505」)の定着機を装置外での定着が可能なように改良した装置にトナーを実装し、未定着の状態の印刷物を得た(印字面積:2cm×12cm、付着量:0.5mg/cm2)。その後、前記複写機の定着機にて、160℃、400mm/secの条件で用紙に定着させた。なお、印字媒体にJ紙(商品名、富士ゼロックス(株)製)を用いた。
該画像の下に厚紙を敷き、光沢度計((株)堀場製作所製、商品名:「IG−330」)を用いて入射角度60°の光射条件にて印刷物の光沢度を測定した。得られた値が高いほど光沢度が高く、評価値20以上が好ましい。
複写機(シャープ(株)製、商品名:「AR−505」)の定着機を装置外での定着が可能なように改良した装置にトナーを実装し、未定着の状態で画像を得た(印字面積:2cm×12cm、付着量:0.5mg/cm2)。総定着圧が40kgfになるように調整した定着機(定着速度390mm/sec)を用い、定着ロールの温度を100℃から240℃へと10℃ずつ順次上昇させながら、各温度で未定着画像の定着試験を行った。定着画像にセロハン粘着テープ(三菱鉛筆(株)製、商品名:「ユニセフセロハン」、幅:18mm、JIS Z1522)を貼り付け、30℃に設定した定着ローラーに通過させた後、テープを剥がした。テープを貼る前と剥がした後の光学反射密度を反射濃度計(グレタグマクベス社製、商品名:「RD−915」)を用いて測定し、両者の比率(剥離後/貼付前×100)が最初に90%を越える定着ローラーの温度を最低定着温度とした。最低定着温度が低いほど、低温定着性に優れることを示す。
製造例1
(結着樹脂A)
表1に示す、原料モノマー、4−t−ブチルカテコール、ピロガロール化合物、及びエステル化触媒を、温度計、ステンレス製撹拌棒、流下式コンデンサー及び窒素導入管を装備した10リットルの四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、180℃まで昇温した後、210℃まで5時間かけて昇温を行った。その後、軟化点100℃に達するまで反応を行って結着樹脂Aを得た。
(結着樹脂B)
表1に示す無水トリメリット酸以外のポリエステルの原料モノマー、ピロガロール化合物、及びエステル化触媒を、温度計、ステンレス製撹拌棒、流下式コンデンサー及び窒素導入管を装備した10リットルの四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、180℃まで昇温した後、235℃まで10時間かけて昇温を行った。その後、235℃にて反応率が95%以上に到達したのを確認し、160℃まで冷却し、表1に示すビニル系樹脂の原料モノマー、両反応性モノマー及び重合開始剤の混合溶液を1時間かけて滴下した。その後、30分間160℃に保持したのち、200℃まで昇温し、更に8kPaの減圧下で1時間反応させた後、無水トリメリット酸を加え、210℃まで昇温し、その後、軟化点が99℃に達するまで反応を行って結着樹脂Bを得た。
(結着樹脂C)
表1に示すポリエステルの原料モノマー、ピロガロール化合物、及びエステル化触媒を、温度計、ステンレス製撹拌棒、流下式コンデンサー及び窒素導入管を装備した10リットルの四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、180℃まで昇温した後、235℃まで10時間かけて昇温を行った。その後、融点70℃に達するまで反応を行って結着樹脂Cを得た。
(結着樹脂D)
表1に示す、無水トリメリット酸以外の原料モノマー、ピロガロール化合物、及びエステル化触媒を、温度計、ステンレス製撹拌棒、流下式コンデンサー及び窒素導入管を装備した10リットルの四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、235℃で反応させた。その後、反応率が95%以上になったのを確認した後、更に8kPaの減圧下で1時間反応させた後、無水トリメリット酸を加え、210℃まで昇温し、その後、軟化点111℃に達するまで反応を行って結着樹脂Dを得た。
製造例5〜17
表2に示す種類の結着樹脂100g、メチルエチルケトン100g、アニオン性界面活性剤(花王(株)製、商品名:「ネオペレックスG−15」)を固形分として5gを25℃にて溶解させ、その後、イオン交換水600gを混合し、超音波ホモジナイザーを用いて分散処理した。その後50℃に昇温した後、メチルエチルケトンを減圧留去した。その後、イオン交換水にて固形分20重量%に調整し、結着樹脂分散体を得た。ホモジナイザーの運転条件を変更することで、表2に示す樹脂の種類及び/又は体積中位粒径(D50)の異なる水系分散体(乳化液)を得た。
表3に示す比率に従い、25℃にて各乳化液を混合し、混合水系分散体をそれぞれ得た。
(着色剤分散液の調製)
銅フタロシアニン(大日精化工業(株)製、型番:「ECB−301」)50g、非イオン性界面活性剤(花王(株)製、商品名:「エマルゲン150」)5g及びイオン交換水200gを混合し、ホモジナイザーを用いて10分間分散させて、着色剤微粒子を含有する着色剤分散液を得た。体積中位粒径(D50)は120nmであった。
パラフィンワックス(日本精蝋(株)製、商品名:「HNP9」、融点:85℃)50g、カチオン性界面活性剤(花王(株)製、商品名:「サニゾールB50」)5g及びイオン交換水200gを95℃に加熱して、ホモジナイザーを用いて、パラフィンワックスを分散させた後、圧力吐出型ホモジナイザーで分散処理し、離型剤微粒子を含有する離型剤分散液を得た。パラフィンワックスの体積中位粒径(D50)は500nmであった。
荷電制御剤(オリエント化学工業(株)製、商品名:「ボントロンE−84」)50g、非イオン性界面活性剤(花王(株)製、商品名:「エマルゲン150」)5g及びイオン交換水200gを混合し、ガラスビーズを使用し、サンドグラインダーを用いて10分間分散させて、荷電制御剤微粒子を含有する荷電制御剤分散液を得た。荷電制御剤の体積中位粒径(D50)は500nmであった。
実施例1〜6及び8並びに比較例1〜6
上記で調製した結着樹脂の水系分散体(混合水系分散体)を300g、着色剤分散液8g、離型剤分散液30g、荷電制御剤分散液2g及び脱イオン水52gを2L容の容器に入れ、カイ型の撹拌機で100r/min(周速31m/min)の撹拌下、25℃で0.1重量%塩化カルシウム水溶液150gを30分かけて滴下した。その後、撹拌しながら昇温し、50℃になった時点で温度保持した。3時間たった時点で平均粒子径が5μmに達した。その後、凝集停止剤としてアニオン性界面活性剤(花王(株)製、商品名:「エマールE27C」、固形分28重量%)4.2gを脱イオン水37gで希釈した希釈液を添加した。次いで80℃まで昇温し、80℃になった時点から1時間80℃を保持した後、加熱を終了した。これにより合一粒子を形成させた後、25℃まで徐冷し、150メッシュ(目開き150マイクロメートル)の金網でろ過した後、吸引ろ過を行い、洗浄、乾燥工程を経てトナー粒子をそれぞれ得た。
上記トナー粒子100重量部に対して、疎水性シリカ(日本アエロジル(株)製、商品名:「NAX−50」、個数平均粒子径40nm)1.0重量部、疎水性シリカ(日本アエロジル(株)製、商品名:「R972」、個数平均粒子径16nm)0.6重量部、酸化チタン(テイカ(株)製、商品名:「JMT−150IB」、個数平均粒子径15nm)0.5重量部を、ST、A0撹拌羽根を装着した10Lヘンシェルミキサー(三井鉱山(株)製)に投入し、3000rpmにて2分間撹拌して、トナーをそれぞれ得た。トナー評価結果を表3に示す。
結着樹脂の水系分散体として、乳化液C−1/乳化液C−2の混合水系分散体150g及び乳化液A−1/乳化液A−2の混合水系分散体150gを使ったこと以外は実施例1と同様にしてトナーを得た。トナー評価結果を表3に示す。
離型剤分散液の使用量を、表3に示す量に変更したこと以外は実施例1と同様にしてトナーを得た。トナー評価結果を表3に示す。
凝集剤として、0.1重量%塩化カルシウム水溶液150gの代わりに、7重量%塩化ナトリウム水溶液150gを使用したこと以外は実施例1と同様にしてトナーを得た。トナー評価結果を表3に示す。
すなわち、結着樹脂の水系分散体を遠心分離させた際に沈殿しない樹脂粒子の量(遠心分離後の上澄み液中の凝集粒子の量)が該水系分散体100重量%に対して3〜45重量%の範囲外である比較例1及び2、上澄み液中の樹脂粒子の体積中位粒径(D50)が0.01〜0.05μmの範囲外である比較例3及び4、並びに水系分散体中の凝集粒子の体積中位粒径(D50)が0.07〜0.50μmの範囲外である比較例5及び6で得られたトナーは、いずれもトナーの低温定着性及び耐熱保存性、並びに印刷物の光沢性を同時に満足しないことがわかる。
Claims (5)
- トナー用ポリエステル樹脂の水系分散体を凝集させて得られた凝集粒子を融着させた粒子を含む電子写真用トナーであって、該水系分散体中に分散している樹脂粒子の体積中位粒径(D50)が0.07〜0.50μmであり、該水系分散体を下記遠心分離条件にて遠心分離させた際に沈殿する樹脂粒子(沈殿成分)と沈殿しない樹脂粒子(非沈殿成分)との重量比が、沈殿成分/非沈殿成分として55/45〜97/3であり、かつ該非沈殿成分の体積中位粒径(D50)が0.01〜0.05μmである、電子写真用トナー。
遠心分離条件:該水系分散体中の分散樹脂粒子を20重量%水分散液とした後、遠心分離機にて、25℃雰囲気下、3.5×104Gの相対遠心加速度で5時間遠心分離を行う。 - 前記の沈殿成分と非沈殿成分との重量比が、沈殿成分/非沈殿成分として80/20〜97/3である、請求項1に記載の電子写真用トナー。
- 前記の沈殿成分と非沈殿成分との重量比が、沈殿成分/非沈殿成分として90/10〜97/3である、請求項1又は2に記載の電子写真用トナー。
- トナー中にワックス5〜20重量%を含有する、請求項1〜3のいずれかに記載の電子写真用トナー。
- 前記水系分散体を凝集する際に使用される凝集剤の価数が2価以上である、請求項1〜4のいずれかに記載の電子写真用トナー。
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