JP6423698B2 - 静電荷像現像用トナー - Google Patents
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Description
トナーには、耐熱保存性及び低温定着性という相反する性能が要求される。この相反する性能を両立させるために、トナーの構造を、コア部と当該コア部を被覆するシェル部とを有するコアシェル構造にすることが提案されている。
本発明の課題は、低温定着性と耐熱保存性とを両立し、印刷物の光沢性及びスメア性に優れる静電荷像現像用トナー及びその製造方法を提供することにある。
[1]コアシェル粒子を結着樹脂として含む静電荷像現像用トナーであって、コア部が、カルボン酸成分(L−ac)とアルコール成分(L−al)とを重縮合して得られるポリエステル(L)と、ワックスとを含有し、シェル部が、カルボン酸成分(H−ac)とアルコール成分(H−ac)とを重縮合して得られるポリエステル(H)を含有し、カルボン酸成分(L−ac)が、下記一般式(1)で表されるアルケニルコハク酸及び下記一般式(2)で表されるアルキルコハク酸から選ばれる1種以上を含有し、カルボン酸成分(L−ac)中の前記アルケニルコハク酸及び前記アルキルコハク酸から選ばれる1種以上の合計含有量が3モル%以上であり、カルボン酸成分(H−ac)中の、前記アルケニルコハク酸及び前記アルキルコハク酸から選ばれる1種以上の含有量が、3モル%未満である、静電荷像現像用トナー。
工程1:ポリエステル(L)を含有する樹脂粒子(X)と、ワックスを含有する離型剤粒子とを、水系媒体中で凝集させて、凝集粒子(1)を得る工程
工程2:工程1で得られた凝集粒子(1)に、ポリエステル(H)を含有する樹脂粒子(Y)を凝集させて、凝集粒子(2)を得る工程
工程3:工程2で得られた凝集粒子(2)を融着させて、コアシェル粒子を得る工程
本発明の静電荷像現像用トナー(以下、「トナー」ともいう)は、コアシェル粒子を結着樹脂として含む静電荷像現像用トナーであって、コア部が、カルボン酸成分(L−ac)とアルコール成分(L−al)とを重縮合して得られるポリエステル(L)と、ワックスとを含有し、シェル部が、カルボン酸成分(H−ac)とアルコール成分(H−ac)とを重縮合して得られるポリエステル(H)を含有し、カルボン酸成分(L−ac)が、前記一般式(1)で表されるアルケニルコハク酸(以下、「分岐アルケニルコハク酸」ともいう)及び前記一般式(2)で表されるアルキルコハク酸(以下、「分岐アルキルコハク酸」ともいう)から選ばれる1種以上を含有し、カルボン酸成分(L−ac)中の前記アルケニルコハク酸及び前記アルキルコハク酸から選ばれる1種以上の合計含有量が3モル%以上であり、カルボン酸成分(H−ac)中の、前記アルケニルコハク酸及び前記アルキルコハク酸から選ばれる1種以上の含有量が、3モル%未満であることを特徴とする。
本発明のトナーは、コアシェル粒子を結着樹脂として含んでおり、コア部は、特定の分岐アルケニルコハク酸及び分岐アルキルコハク酸から選ばれる1種以上に由来する部分を有するポリエステル(L)と、ワックスとを含有する。
本発明に用いられる分岐アルケニルコハク酸は、R1R2CH−で表される分岐アルケニル基を有し、本発明に用いられる分岐アルキルコハク酸は、R3R4CH−で表される分岐アルキル基を有する。
分岐アルケニルコハク酸における分岐アルケニル基及び分岐アルキルコハク酸における分岐アルキル基は、分岐部分を1つ有する。すなわち、分岐アルケニルコハク酸は、炭素数が2以上の直鎖アルケニル基と炭素数が2以上の直鎖アルキル基とが二股状の形態を形成しており、分岐アルキルコハク酸は、炭素数が2以上の2つの直鎖アルキル基が二股状の形態を形成している。
このように1分子に2ヶ所の炭素数が2以上の直鎖アルケニル基又は炭素数が2以上の直鎖アルキル基を有する構造が、疎水的な炭化水素部分を有するワックスと強く相互作用することにより、ワックスのコア部への分散性が向上すると考えられる。これにより、低温でワックスが融解し易くなり、低温定着時にワックスとコア部内のポリエステル(L)とが溶融することで、低温定着性と印刷物の光沢性が向上すると考えられる。
更には、一度取り込んだワックスをコア部中にかかえるように保持することが可能であるため、耐熱保存性にも優れると考えられる。また、定着時においても、ワックスがトナーから脱離して定着ローラー等へ付着することが抑えられるため、得られた印刷物はスメア性にも優れるものと考えられる。
本発明に用いるコアシェル粒子のコア部は、カルボン酸成分(L−ac)とアルコール成分(L−al)とを重縮合して得られるポリエステル(L)と、ワックスとを含有する。
ポリエステル(L)は、カルボン酸成分(L−ac)とアルコール成分(L−al)とを重縮合することにより得られる。
カルボン酸成分(L−ac)としては、下記一般式(1)で表されるアルケニルコハク酸及び下記一般式(2)で表されるアルキルコハク酸から選ばれる1種以上を含有する。これらの中でも、トナーの低温定着性を向上させる観点から、下記一般式(1)で表されるアルケニルコハク酸が好ましい。これらの分岐アルケニルコハク酸及び分岐アルキルコハク酸は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
R1R2CH−で表される分岐アルケニル基及びR3R4CH−で表される分岐アルキル基の総炭素数は、それぞれ独立して9以上24以下である。トナーの低温定着性及び耐熱保存性と、印刷物の光沢性及びスメア性とを向上させる観点から、分岐アルキル基又は分岐アルケニル基の総炭素数は、9以上であり、好ましくは12以上、より好ましくは15以上、更に好ましくは18以上であり、そして、24以下であり、好ましくは22以下、より好ましくは20以下である。
X及びYは、それぞれ独立に水酸基若しくは炭素数1以上3以下のアルコキシ基を示すか、又は酸素原子を介して互いに結合して酸無水物を形成する基を示す。
分岐アルキルコハク酸は、分岐アルケニルコハク酸を水素添加して得たものであることが好ましい。
第一級脂肪族アルコールは、石油由来のアルコール、及び天然原料由来のアルコールのいずれでもよい。
天然由来の第一級脂肪族アルコールとしては、ヤシ油、パーム油、パーム核油、大豆油、なたね油、牛脂、豚脂、トール油、及び魚油等を原料としたものが挙げられる。
前記天然由来の第一級脂肪族アルコールとしては、例えば、1−ノナノール、1−デカノール、1−ドデカノール、1−テトラデカノール、1−ヘキサデカノール、1−オクタデカノール、1−エイコサノール、1−ドコサノール、1−テトラコサノール等が挙げられる。
固体触媒としては、脱水反応の反応速度を高める観点から、固体酸触媒が好ましい。
固体酸触媒としては、同様の観点から、アルミニウム、鉄、及びガリウムから選ばれる1種以上の元素を含むことが好ましく、アルミニウムを含むことがより好ましい。具体的な固体酸触媒としては、γ−アルミナ及びリン酸アルミニウムが好ましい。
脱水反応の方法としては、特に制限はなく、公知の方法を使用できる。
内部オレフィンは、前記した脱水反応により二重結合部位に分布を有する混合物として得られる。
内部オレフィンにおける、二重結合が2位に存在するオレフィンの含有量は、トナーの低温定着性及び耐熱保存性と、印刷物の光沢性及びスメア性とを向上させる観点から、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下、更に好ましくは30質量%以下、より更に好ましくは20質量%以下である。前記含有量の下限値はできるだけ少ない方が好ましいが、製造の容易性の観点から、好ましくは0質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上である。
内部オレフィンの仕込みモル数と、マレイン酸、無水マレイン酸及びフマル酸から選ばれる1種以上の仕込みモル数との比率(内部オレフィン/マレイン酸、無水マレイン酸及びフマル酸から選ばれる1種以上)は、好ましくは0.8以上、より好ましくは0.9以上、更に好ましくは0.95以上であり、そして、好ましくは3以下、より好ましくは2以下、更に好ましくは1.5以下である。
一般式(2)で表されるアルキルコハク酸は、好ましくは一般式(1)で表されるアルケニルコハク酸を水素添加することにより得ることができ、より好ましくは前記アルケニルコハク酸混合物を水素添加して得たアルキルコハク酸混合物中に含有される。水素添加の方法としては、特に制限はなく、公知の方法を使用できる。
一般式(2)で表されるアルキルコハク酸の含有量は、アルキルコハク酸混合物中、好ましくは98質量%以上、より好ましくは98.5質量%以上、更に好ましくは99質量%以上である。
一般式(1)におけるR1R2CH−で表される分岐アルケニル基の総炭素数が14以上24以下であって、R1の直鎖アルケニル基の炭素数又はR2の直鎖アルキル基の炭素数が6以上であるアルケニルコハク酸及び一般式(2)におけるR3R4CH−で表される分岐アルキル基の総炭素数が14以上24以下であってR3又はR4の直鎖アルキル基の炭素数が6以上であるアルキルコハク酸の合計含有量は、トナーの低温定着性及び耐熱保存性と、印刷物のスメア性及び光沢性とを向上させる観点から、一般式(1)で表されるアルケニルコハク酸及び一般式(2)で表されるアルキルコハク酸の合計量に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは20質量%以上、より更に好ましくは30質量%以上であり、そして、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは50質量%以下である。
一般式(1)におけるR1の直鎖アルケニル基の炭素数又はR2のアルキル基の炭素数が2以下であるアルケニルコハク酸及び一般式(2)におけるR3又はR4の直鎖アルキル基の炭素数が2以下であるアルキルコハク酸の合計含有量は、トナーの低温定着性及び耐熱保存性と、印刷物のスメア性及び光沢性とを向上させる観点から、できるだけ少ない方が好ましく、一般式(1)で表されるアルケニルコハク酸及び一般式(2)で表されるアルキルコハク酸の合計量に対して、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは45質量%以下、より更に好ましくは40質量%以下、より更に好ましくは30質量%以下、より更に好ましくは実質的に0質量%、より更に好ましくは0質量%である。
カルボン酸成分(L−ac)には、ジカルボン酸及び3価以上の多価カルボン酸だけでなく、それらの無水物、及びそれらの炭素数1以上3以下のアルキルエステルも含まれる。
脂肪族カルボン酸としては、トナーの低温定着性及び耐熱保存性を向上させる観点から、炭素数2以上18以下の脂肪族カルボン酸が好ましい。脂肪族ジカルボン酸の炭素数は、同様の観点から、好ましくは2以上、より好ましくは3以上であり、そして、好ましくは18以下、より好ましくは6以下である。
炭素数2以上18以下の脂肪族カルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、アゼライン酸等が挙げられる。これらの中でも、トナーの低温定着性及び耐熱保存性を向上させる観点から、フマル酸、コハク酸が好ましく、コハク酸がより好ましい。
芳香族ジカルボン酸としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等が挙げられ、トナーの耐熱保存性を向上させる観点から、イソフタル酸、テレフタル酸が好ましく、テレフタル酸がより好ましい。
カルボン酸成分(L−ac)中、芳香族ジカルボン酸の含有量は、トナーの低温定着性及び耐熱保存性と、印刷物の光沢性及びスメア性とを向上させる観点から、好ましくは40モル%以上、より好ましくは45モル%以上、更に好ましくは50モル%以上であり、そして、好ましくは90モル%以下、より好ましくは80モル%以下、更に好ましくは70モル%以下である。
3価以上の芳香族カルボン酸としては、トリメリット酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、ピロメリット酸等が挙げられる。これらの中でも、トナーの耐熱保存性を向上させる観点から、トリメリット酸が好ましい。
アルコール成分(L−al)としては、脂肪族ジオール、芳香族ジオール、3価以上の多価アルコール等が挙げられる。これらのアルコール成分(L−al)は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
これらの中でも、トナーの低温定着性を向上させる観点から、炭素数2以上6以下の脂肪族ジオールが好ましく、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、及び1,6−ヘキサンジオールから選ばれる1種以上がより好ましく、1,2−プロパンジオールが更に好ましい。
トナーの低温定着性及び耐熱保存性と、印刷物の光沢性及びスメア性とを向上させる観点から、アルコール成分(L−al)中、脂肪族ジオール、好ましくは炭素数2以上6以下の脂肪族ジオールの含有量は、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、更に好ましくは95モル%以上であり、そして、好ましくは100モル%以下、より好ましくは100モル%である。
3価以上のアルコールとしては、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等が挙げられ、反応性及び分子量調整の観点から、グリセリンが好ましい。
なお、分子量の調整及び物性調整の観点から、アルコール成分(L−al)には1価のアルコールが適宜含有されていてもよく、カルボン酸成分(L−ac)には1価のカルボン酸化合物が適宜含有されていてもよい。
重縮合反応におけるアルコール成分(L−al)とカルボン酸成分(L−ac)とのモル比(カルボン酸成分(L−ac)/アルコール成分(L−al))は、反応性、分子量調整及び物性調整の観点から、好ましくは0.5以上、より好ましくは0.7以上、更に好ましくは0.85以上であり、そして、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.3以下、更に好ましくは1.15以下である。
ポリエステル(L)のガラス転移温度は、トナーの低温定着性及び耐熱保存性と、印刷物の光沢性及びスメア性とを向上させる観点から、好ましくは25℃以上、より好ましくは30℃以上、更に好ましくは33℃以上であり、そして、好ましくは60℃以下、より好ましくは50℃以下、更に好ましくは40℃以下である。
ポリエステル(L)の軟化点は、トナーの低温定着性の観点から、好ましくは75℃以上、より好ましくは80℃以上、更に好ましくは85℃以上であり、そして、好ましくは105℃以下、より好ましくは103℃以下、更に好ましくは100℃以下である。
なお、ポリエステル(L)を2種以上混合して使用する場合は、そのガラス転移温度及び軟化点は、各々2種以上のポリエステル(L)の混合物として、実施例に記載の方法によって得られた値である。
ポリエステル(L)の酸価は、トナーの低温定着性及び耐熱保存性と、印刷物の光沢性及びスメア性とを向上させる観点から、好ましくは5mgKOH/g以上、より好ましくは10mgKOH/g以上、更に好ましくは15mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは35mgKOH/g以下、より好ましくは30mgKOH/g以下、更に好ましくは25mgKOH/g以下である。
また、ポリエステル(L)の重量平均分子量は、トナーの耐熱保存性の観点から、好ましくは6,000以上、より好ましくは8,000以上、更に好ましくは9,000以上であり、そして、好ましくは100,000以下、より好ましくは50,000以下、更に好ましくは30,000以下、より更に好ましくは15,000以下である。
ポリエステル(L)は、アルコール成分(L−al)とカルボン酸成分(L−ac)との重縮合反応により得られる。該重縮合反応はエステル化触媒の存在下で行うことが好ましく、反応性、分子量調整及びポリエステルの物性調整の観点から、エステル化触媒とピロガロール化合物の共存在下で行うことがより好ましい。
上記重縮合に好適に用いられるエステル化触媒としては、チタン化合物及びSn−C結合を有していない錫(II)化合物が挙げられる。これらのエステル化触媒は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
チタン化合物としては、Ti−O結合を有するチタン化合物が好ましく、総炭素数1以上28以下のアルコキシ基、アルケニルオキシ基又はアシルオキシ基を有する化合物がより好ましい。
Sn−C結合を有していない錫(II)化合物としては、Sn−O結合を有する錫(II)化合物、Sn−X(Xはハロゲン原子を示す)結合を有する錫(II)化合物等が好ましく挙げられ、Sn−O結合を有する錫(II)化合物がより好ましく、中でも、反応性、分子量調整及びポリエステルの物性調整の観点から、ジ(2−エチルヘキサン酸)錫(II)又はジオクチル酸錫(II)塩が更に好ましく、ジオクチル酸錫(II)塩がより更に好ましい。
上記エステル化触媒の使用量は、反応性、分子量調整及びポリエステルの物性調整の観点から、アルコール成分(L−al)とカルボン酸成分(L−ac)との総量100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上であり、そして、好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.6質量部以下である。
ピロガロール化合物は、互いに隣接する3個の水素原子が水酸基で置換されたベンゼン環を有するものであり、ピロガロール、没食子酸、没食子酸エステル、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,3,4−テトラヒドロキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体、エピガロカテキン、エピガロカテキンガレート等のカテキン誘導体等が挙げられ、反応性の観点から、没食子酸が好ましい。
重縮合反応におけるピロガロール化合物の使用量は、反応性の観点から、重縮合反応に供されるアルコール成分(L−al)とカルボン酸成分(L−ac)との総量100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.005質量部以上、更に好ましくは0.01質量部以上であり、そして、好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.4質量部以下、更に好ましくは0.2質量部以下である。
ピロガロール化合物とエステル化触媒との質量比(ピロガロール化合物/エステル化触媒)は、反応性の観点から、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.03以上、更に好ましくは0.05以上であり、そして、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.3以下、更に好ましくは0.15以下である。
重縮合反応の温度は、好ましくは120℃以上、より好ましくは150℃以上、更に好ましくは180℃以上であり、そして、好ましくは250℃以下、より好ましくは240℃以下、更に好ましくは235℃以下である。
また、例えば樹脂の強度を上げるためには反応系に全モノマーを一括仕込みすることが好ましく、低分子量成分を少なくするためには2価のモノマーを先ず反応させた後、3価以上のモノマーを添加して反応させることが好ましい。また、重合の後半に反応系を減圧することにより、反応を促進させることが好ましい。
本発明のトナーを構成するコア部は、本発明の効果を損なわない範囲で、トナーに用いられる公知の樹脂、例えば、スチレン−アクリル共重合体、エポキシ、ポリカーボネート、ポリウレタン等を含有していてもよい。
コア部に含まれる結着樹脂中、ポリエステル(L)の含有量は、好ましくは90質量%以上、より好ましくは93質量%以上、更に好ましくは95質量%以上であり、そして、好ましくは100質量%以下、より好ましくは実質的に100質量%、更に好ましくは100質量%である。
本発明に用いるコアシェル粒子のコア部は、ワックスを含有する。
本発明に用いられるワックスとしては、ライスワックス、キャンデリラワックス、木ロウ、及びホホバ油等の植物系ワックス;ミツロウ等の動物系ワックス;モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、及びフィッシャートロプシュワックス等の鉱物・石油系ワックス等のワックス;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等のポリオレフィンワックス、パラフィンワックス、シリコーンワックス類;カルナウバワックス、合成エステルワックス、ポリエステルワックス等のエステルワックス;オレイン酸アミド、エチレン・ビスステアリン酸アミド等のアミドワックス等が挙げられる。これらの中でも、パラフィンワックス、エステルワックス、アミドワックスが好ましく、パラフィンワックスがより好ましい。これらのワックスは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
ワックスの融点は、トナーの低温定着性及び耐熱保存性と、印刷物の光沢性及びスメア性とを向上させる観点から、好ましくは70℃以上、より好ましくは75℃以上、更に好ましくは80℃以上であり、そして、好ましくは110℃以下、より好ましくは105℃以下、更に好ましくは100℃以下である。
コア中のワックスの含有量は、トナーの低温定着性及び耐熱保存性と、印刷物の光沢性及びスメア性とを向上させる観点、並びにワックスのポリエステル(L)中への分散性を向上させる観点から、ポリエステル(L)100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、更に好ましくは3質量部以上であり、そして、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下、更に好ましくは6質量部以下である。
本発明の製造方法により得られるトナー中のワックスの含有量は、トナーの低温定着性及び耐熱保存性と、印刷物の光沢性及びスメア性とを向上させる観点から、トナー中のポリエステルの総量100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、更に好ましくは3質量部以上であり、そして、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下、更に好ましくは6質量部以下である。
本発明に用いるコアシェル粒子のシェル部は、カルボン酸成分(H−ac)とアルコール成分(H−ac)とを重縮合して得られるポリエステル(H)を含有する。
ポリエステル(H)は、カルボン酸成分(H−ac)とアルコール成分(H−al)とを重縮合することにより得られる。
カルボン酸成分(H−ac)中の、前記一般式(1)で表されるアルケニルコハク酸及び前記一般式(2)で表されるアルキルコハク酸から選ばれる1種以上の合計含有量は、トナーの低温定着性及び耐熱保存性と、印刷物の光沢性及びスメア性とを向上させる観点から、3モル%未満であり、好ましくは2モル%以下、より好ましくは1モル%以下であり、カルボン酸成分(H−ac)が、前記一般式(1)で表されるアルケニルコハク酸及び前記一般式(2)で表されるアルキルコハク酸を含有しないことが更に好ましい。
コア部に含まれるポリエステル(L)の原料モノマーであるカルボン酸成分(L−ac)中、前記一般式(1)で表されるアルケニルコハク酸及び前記一般式(2)で表されるアルキルコハク酸から選ばれる1種以上の合計含有量と、シェル部に含まれるポリエステル(H)の原料モノマーであるカルボン酸成分(H−ac)中、前記一般式(1)で表されるアルケニルコハク酸及び前記一般式(2)で表されるアルキルコハク酸から選ばれる1種以上の合計含有量との差(コア部含有モル数−シェル部含有モル数)は、トナーの低温定着性及び耐熱保存性と、印刷物の光沢性及びスメア性とを向上させる観点から、好ましくは5モル%以上、より好ましくは10モル%以上、更に好ましくは20モル%以上であり、そして、好ましくは50モル%以下、より好ましくは45モル%以下、更に好ましくは35モル%以下である。
カルボン酸成分(H−ac)には、ジカルボン酸及び3価以上の多価カルボン酸だけでなく、それらの無水物、及びそれらの炭素数1以上3以下のアルキルエステルも含まれる。
脂肪族カルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、アゼライン酸、前記一般式(1)で表されるアルケニルコハク酸、前記一般式(2)で表されるアルキルコハク酸等が挙げられる。
芳香族ジカルボン酸としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等が挙げられ、トナーの耐熱保存性を向上させる観点から、イソフタル酸、テレフタル酸が好ましく、テレフタル酸がより好ましい。
カルボン酸成分(H−ac)中、芳香族ジカルボン酸の含有量は、トナーの低温定着性及び耐熱保存性と、印刷物の光沢性及びスメア性とを向上させる観点から、好ましくは60モル%以上、より好ましくは70モル%以上、更に好ましくは86モル%以上であり、そして、好ましくは98モル%以下、より好ましくは95モル%以下、更に好ましくは90モル%以下である。
3価以上の芳香族カルボン酸としては、トリメリット酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、ピロメリット酸等が挙げられる。これらの中でも、トナーの低温定着性及び耐熱保存性と、印刷物の光沢性及びスメア性とを向上させる観点から、トリメリット酸が好ましい。
アルコール成分(H−al)としては、脂肪族ジオール、芳香族ジオール、3価以上の多価アルコール等が挙げられる。これらのアルコール成分(H−al)は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
アルコール成分(H−al)中、脂肪族ジオール、好ましくは炭素数2以上6以下の脂肪族ジオールの含有量は、トナーの低温定着性及び耐熱保存性と、印刷物の光沢性及びスメア性とを向上させる観点から、好ましくは60モル%以上、より好ましくは70モル%以上、更に好ましくは80モル%以上、より更に好ましくは90モル%以上であり、そして、好ましくは100モル%以下、より好ましくは100モル%である。
前記式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのポリオキシプロピレン付加物、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのポリオキシエチレン付加物等が挙げられる。
3価以上のアルコールとしては、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等が挙げられ、反応性及び分子量調整の観点から、グリセリンが好ましい。
なお、分子量の調整及び物性調整の観点から、アルコール成分(H−al)には1価のアルコールが適宜含有されていてもよく、カルボン酸成分(H−ac)には1価のカルボン酸化合物が適宜含有されていてもよい。
重縮合反応におけるアルコール成分(H−al)とカルボン酸成分(H−ac)とのモル比(カルボン酸成分(H−ac)/アルコール成分(H−al))は、反応性、分子量調整及び物性調整の観点から、好ましくは0.5以上、より好ましくは0.7以上、更に好ましくは0.8以上であり、そして、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.3以下、更に好ましくは1.15以下である。
ポリエステル(H)のガラス転移温度は、トナーの低温定着性及び耐熱保存性と、印刷物の光沢性及びスメア性とを向上させる観点から、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上、更に好ましくは55℃以上であり、そして、好ましくは90℃以下、より好ましくは80℃以下、更に好ましくは70℃以下である。
ポリエステル(H)の軟化点は、トナーの耐熱保存性の観点から、好ましくは105℃超、より好ましくは110℃以上、更に好ましくは115℃以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは170℃以下、より好ましくは160℃以下、更に好ましくは150℃以下、より更に好ましくは140℃以下である。
ポリエステル(L)とポリエステル(H)との軟化点の差(ポリエステル(H)−ポリエステル(L))は、トナーの低温定着性と耐熱保存性とを両立する観点から、好ましくは10℃以上、より好ましくは20℃以上、更に好ましくは25℃以上であり、そして、好ましくは40℃以下である。
なお、ポリエステル(H)を2種以上混合して使用する場合は、そのガラス転移温度及び軟化点は、各々2種以上のポリエステル(H)の混合物として、実施例に記載の方法によって得られた値である。
ポリエステル(H)の酸価は、トナーの低温定着性及び耐熱保存性と、印刷物の光沢性及びスメア性とを向上させる観点から、好ましくは5mgKOH/g以上、より好ましくは10mgKOH/g以上、更に好ましくは15mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは35mgKOH/g以下、より好ましくは30mgKOH/g以下、更に好ましくは25mgKOH/g以下である。
また、ポリエステル(H)の重量平均分子量は、トナーの耐熱保存性の観点から、好ましくは6,000以上、より好ましくは8,000以上、更に好ましくは10,000以上であり、そして、好ましくは1,000,000以下、より好ましくは700,000以下、更に好ましくは500,000以下、より更に好ましくは100,000以下である。
なお、数平均分子量及び重量平均分子量は、いずれもテトラヒドロフラン可溶分を測定した値をいう。
ポリエステル(H)は、アルコール成分(H−al)とカルボン酸成分(H−ac)との重縮合反応により得られる。該重縮合反応はエステル化触媒の存在下で行うことが好ましく、反応性、分子量調整及びポリエステルの物性調整の観点から、エステル化触媒とピロガロール化合物の共存在下で行うことがより好ましい。
上記重縮合に好適に用いられるエステル化触媒及びピロガロール化合物としては、ポリエステル(L)の重縮合反応に用いられるエステル化触媒及びピロガロール化合物と同様であり、好ましい態様も同様である。
上記エステル化触媒の使用量は、反応性、分子量調整及びポリエステルの物性調整の観点から、アルコール成分(H−al)とカルボン酸成分(H−ac)との総量100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上であり、そして、好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.6質量部以下である。
重縮合反応におけるピロガロール化合物の使用量は、反応性の観点から、重縮合反応に供されるアルコール成分(H−al)とカルボン酸成分(H−ac)との総量100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.005質量部以上、更に好ましくは0.01質量部以上であり、そして、好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.4質量部以下、更に好ましくは0.2質量部以下である。
ピロガロール化合物とエステル化触媒との質量比(ピロガロール化合物/エステル化触媒)は、反応性の観点から、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.03以上、更に好ましくは0.05以上であり、そして、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.3以下、更に好ましくは0.15以下である。
重縮合反応の温度は、好ましくは120℃以上、より好ましくは150℃以上、更に好ましくは180℃以上であり、そして、好ましくは250℃以下、より好ましくは240℃以下、更に好ましくは235℃以下である。
また、例えば樹脂の強度を上げるためには反応系に全モノマーを一括仕込みすることが好ましく、低分子量成分を少なくするためには2価のモノマーを先ず反応させた後、3価以上のモノマーを添加して反応させることが好ましい。また、重合の後半に反応系を減圧することにより、反応を促進させることが好ましい。
本発明のトナーを構成するシェル部は、本発明の効果を損なわない範囲で、トナーに用いられる公知の樹脂、例えば、スチレン−アクリル共重合体、エポキシ、ポリカーボネート、ポリウレタン等を含有していてもよい。
シェル部に含まれる結着樹脂中、ポリエステル(H)の含有量は、好ましくは90質量%以上、より好ましくは93質量%以上、更に好ましくは95質量%以上であり、そして、好ましくは100質量%以下、より好ましくは実質的に100質量%、更に好ましくは100質量%である。
本発明のトナーを構成するシェル部は、更に、着色剤、離型剤、荷電制御剤、磁性粉、流動性向上剤、導電性調整剤、体質顔料、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、老化防止剤、クリーニング性向上剤等の添加剤が適宜含有されていてもよい。
本発明のトナーの体積中位粒径(D50)は、トナーの低温定着性及び耐熱保存性と、印刷物の光沢性及びスメア性とを向上させる観点から、好ましく3.0μm以上、より好ましくは3.5μm以上、更に好ましくは4.0μm以上、より更に好ましくは4.5μm以上であり、そして、好ましくは8.5μm以下、より好ましくは8.0μm以下、更に好ましくは7.5μm以下、より更に好ましくは7.0μm以下、より更に好ましくは5.5μm以下である。
また、トナーの粒径分布の変動係数(CV値)(%)は、同様の観点から、好ましくは40%以下、より好ましくは35%以下、更に好ましくは30%以下であり、そして、トナーの生産性を向上させる観点から、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上、更に好ましくは15%以上である。なお、CV値は、下記式で表される値であり、実施例に記載の方法で求められる。
CV値(%)=[粒径分布の標準偏差(μm)/体積中位粒径(μm)]×100
本発明の静電荷像現像用トナーの製造方法は、下記工程1〜3を有する。
工程1:ポリエステル(L)を含有する樹脂粒子(X)と、ワックスを含有する離型剤粒子とを、水系媒体中で凝集させて、凝集粒子(1)を得る工程
工程2:工程1で得られた凝集粒子(1)に、ポリエステル(H)を含有する樹脂粒子(Y)を凝集させて、凝集粒子(2)を得る工程
工程3:工程2で得られた凝集粒子(2)を融着させて、コアシェル粒子を得る工程
工程1は、ポリエステル(L)を含有する樹脂粒子(X)と、ワックスを含有する離型剤粒子とを、水系媒体中で凝集させて、凝集粒子(1)を得る工程である。
工程1では、前記ポリエステル(L)を含有する樹脂粒子(X)の供給源として、ポリエステル(L)を含有する樹脂粒子(X)を水系媒体中に分散させてなる水系分散体(以下、「樹脂粒子(X)の水系分散体」ともいう)を使用することが好ましい。
また、凝集を効率的に行うために凝集剤を添加することが好ましく、着色剤、荷電制御剤、離型剤、導電性調整剤、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、及び老化防止剤等の添加剤を添加してから凝集させてもよい。該添加剤は、水系分散体としてから使用することもできる。
次に、水系分散体及び添加剤について説明する。
また、この水系分散体は、ポリエステル(L)及び有機溶媒を混合して混合物を得る工程(工程1−1)、この混合物に水系媒体を添加し、転相乳化して樹脂粒子(X)の前駆体の分散体を得る工程(工程1−2)、この樹脂粒子(X)の前駆体の分散体から有機溶媒を留去して樹脂粒子(X)の水系分散体を得る工程(工程1−3)、及び得られた水系分散体に界面活性剤を混合する工程(工程1−4)を経ることにより、好適に製造することができる。ただし、工程1−4を省略してもよく、工程1−1の有機溶媒を用いず、工程1−3を省略してもよい。
工程1−1では、ポリエステル(L)及び有機溶媒を混合して混合物を得る。
有機溶媒としてはポリエステル(L)の分散性を向上する観点から、溶解性パラメータ(SP値:POLYMER HANDBOOK THIRD EDITION 1989 by John Wiley & Sons,Inc)で表したとき、好ましくは15.0MPa1/2以上、より好ましくは16.0MPa1/2以上、更に好ましくは17.0MPa1/2以上であり、そして、好ましくは26.0MPa1/2以下、より好ましくは24.0MPa1/2以下、更に好ましくは22.0MPa1/2以下である。
具体例としては、次の有機溶媒が挙げられる。なお、次の有機溶媒の名称の右側のカッコ内に示す数値はSP値であり、単位はMPa1/2である。すなわち、具体例としては、エタノール(26.0)、イソプロパノール(23.5)、及びイソブタノール(21.5)等のアルコール系溶媒;アセトン(20.3)、メチルエチルケトン(19.0)、メチルイソブチルケトン(17.2)、及びジエチルケトン(18.0)等のケトン系溶媒;ジブチルエーテル(16.5)、テトラヒドロフラン(18.6)、及びジオキサン(20.5)等のエーテル系溶媒;酢酸エチル(18.6)、酢酸イソプロピル(17.4)等の酢酸エステル系溶媒が挙げられる。これらの中でも、ポリエステル(L)の分散性を向上する観点から、好ましくはケトン系溶媒及び酢酸エステル系溶媒から選ばれる1種以上、より好ましくはメチルエチルケトン、酢酸エチル及び酢酸イソプロピルから選ばれる1種以上、より更に好ましくはメチルエチルケトンである。
有機溶媒とポリエステル(L)との質量比(有機溶媒/ポリエステル(L))は、ポリエステル(L)の分散性を向上する観点から、好ましくは0.5以上、より好ましくは1以上、更に好ましくは2以上であり、そして、好ましくは7以下、より好ましくは6以下、更に好ましくは5以下である。
ポリエステル(L)の中和剤による中和度は、同様の観点から、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、更に好ましくは90モル%以上であり、そして、好ましくは150モル%以下、より好ましくは120モル%以下、更に好ましくは110モル%以下である。
なお、樹脂の中和度(モル%)は、下記式によって求めることができる。
中和度={[中和剤の質量(g)/中和剤の当量]/〔[樹脂の酸価(mgKOH/g)×樹脂の質量(g)]/(56×1000)〕}×100
混合物は、上述したポリエステル(L)、有機溶媒、及び必要に応じて中和剤を混合することにより得ることができる。
混合物の製造方法において、各原料の添加順序に限定はないが、ポリエステル(L)及び有機溶媒を混合した後、中和剤を混合することが好ましい。
混合の際は、アンカー翼等の一般的に用いられる混合撹拌装置、外部循環撹拌装置等で撹拌することが好ましい。
混合時の温度は、工程温度の安定化、工程時間の短縮、溶液の低粘度化等の観点から、好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上、更に好ましくは20℃以上であり、そして、好ましくは85℃以下、より好ましくは80℃以下、更に好ましくは75℃以下である。また、撹拌は、著しい分相や不溶物の存在等が無い状態となるまで行うのが好ましく、撹拌時間は、撹拌速度及び温度条件にもよるが、好ましくは0.5時間以上、より好ましくは1時間以上であり、そして、好ましくは5時間以下、より好ましくは3時間以下である。
工程1−2は、工程1−1で得られた混合物に水系媒体及び必要に応じて界面活性剤を添加し、転相乳化して樹脂粒子(X)の前駆体の分散体を得る工程である。
水以外の成分としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等の炭素数1以上5以下の脂肪族アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等の炭素数3以上7以下のジアルキルケトン;テトラヒドロフラン等の環状エーテル等の水に溶解する有機溶媒が挙げられる。これらの中でも、トナーへの混入を防止する観点から、樹脂を溶解しない有機溶媒が好ましい。これらの中でも、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール系有機溶媒が好適に使用できる。
水系媒体中の水の含有量は、樹脂の乳化安定性を向上させる観点から、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上であり、そして、好ましくは100質量%以下、より好ましくは100質量%である。水は、脱イオン水又は蒸留水が好ましい。
水系媒体の添加速度は、小粒径の樹脂粒子を得る観点から、転相が終了するまでは、ポリエステル(L)100質量部に対して、好ましくは1質量部/分以上、より好ましくは3質量部/分以上、更に好ましくは5質量部/分以上であり、そして、好ましくは30質量部/分以下、より好ましくは20質量部/分以下、更に好ましくは10質量部/分以下である。転相後の水系媒体の添加速度には制限はない。
水系媒体の使用量は、後の凝集工程で均一な凝集粒子を得る観点から、ポリエステル(L)100質量部に対して、好ましくは100質量部以上、より好ましくは300質量部以上、更に好ましくは400質量部以上であり、そして、好ましくは3000質量部以下、より好ましくは2000質量部以下、更に好ましくは1000質量部以下である。
また、水系媒体の使用量は、後の凝集工程で均一な凝集粒子を得る観点から、水系媒体と前記有機溶媒との質量比(水系媒体/有機溶媒)が、好ましくは10/90以上、より好ましくは20/80以上、更に好ましくは30/70以上であり、そして、好ましくは90/10以下、より好ましくは80/20以下、更に好ましくは70/30以下となる量である。
非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類あるいはポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールモノオレエート等のポリオキシエチレン脂肪酸エステル類、オキシエチレン/オキシプロピレンブロックコポリマー等が挙げられ、これらの中でも、樹脂の乳化安定性の観点から、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類が好ましい。
アニオン性界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩等が挙げられ、これらの中でも、樹脂の乳化安定性の観点から、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩が好ましく、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩がより好ましい。
カチオン性界面活性剤としては、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、ジアルキルジメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
これらの中でも、ポリエステル(L)の分散性と樹脂の乳化安定性の観点から、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類及びポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩が好ましく、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩がより好ましい。
工程1−3は、工程1−2で得られた分散体から有機溶媒を留去して樹脂粒子(X)の水系分散体を得る工程である。
有機溶媒の除去方法は、特に限定されず、任意の方法を用いることができるが、水と溶解しているため蒸留するのが好ましい。また、有機溶媒は、完全に除去されず水系分散体中に残留していてもよい。この場合、有機溶媒の残存量は、水系分散体中、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、更に好ましくは実質的に0質量%である。
蒸留によって有機溶媒の除去を行う場合、撹拌を行いながら、使用する有機溶媒の沸点以上の温度に昇温して留去するのが好ましい。また、ポリエステル(L)の分散安定性を維持する観点から、減圧下で、使用する有機溶媒のその圧力における沸点以上の温度に昇温して留去するのがより好ましい。なお、減圧した後昇温しても、昇温した後減圧してもよい。ポリエステル(L)の分散安定性を維持する観点から、温度及び圧力を一定にして留去するのが好ましい。
工程1−4は、得られた水系分散体に界面活性剤を混合する工程である。
工程1−4において添加する界面活性剤の具体例及び好適例としては、工程1−2で挙げたものと同じものが挙げられる。
離型剤粒子は、離型剤を水性媒体に分散して離型剤粒子の分散液として得ることが好ましい。
離型剤粒子の分散液は、離型剤と水性媒体とを、界面活性剤の存在下、離型剤の融点以上の温度で、分散機を用いて分散することによって得ることが好ましい。用いる分散機としては、トナーの低温定着性及び耐熱保存性を向上させる観点から、ホモジナイザー、超音波分散機等が好ましい。
また、前記分散機を使用する前に、離型剤、任意で界面活性剤、及び水性媒体を、あらかじめホモミキサー、ボールミル等の混合機で予備分散させておくことが好ましい。
水性媒体は、前記樹脂粒子(X)を得る際に用いられるものが好ましく用いられる。
界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤等が挙げられ、樹脂粒子(X)の製造に用いるものと同様のものを用いることができるが、離型剤粒子と樹脂粒子(X)の凝集性を向上させる観点から、カチオン性界面活性剤が好ましい。
離型剤分散液中の界面活性剤の含有量は、離型剤粒子の分散安定性を向上させる観点、及びトナー作製時の離型剤粒子の凝集性を向上させ、遊離を防止する観点から、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.4質量%以上であり、そして、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは2質量%以下である。
離型剤粒子の体積中位粒径は、後の凝集工程で均一な凝集粒子を得る観点、並びにトナーの低温定着性及び耐熱保存性と、印刷物の光沢性及びスメア性とを向上させる観点から、好ましくは100nm以上、より好ましくは200nm以上、更に好ましくは300nm以上であり、そして、好ましくは1000nm以下、より好ましくは800nm以下、更に好ましくは600nm以下である。
凝集剤は、第四級塩のカチオン性界面活性剤、ポリエチレンイミン等の有機系凝集剤;無機金属塩、無機アンモニウム塩等の無機系凝集剤が用いられる。トナーの粒径分布、耐熱保存性、及び印刷物の光沢性の観点から、無機系凝集剤が好ましく、塩化カルシウムがより好ましい。
凝集剤を添加する場合、その添加量は、トナーの低温定着性及び耐熱保存性と、印刷物の光沢性及びスメア性とを向上させる観点から、樹脂粒子(X)100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、更に好ましくは0.2質量部以上であり、そして、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは1質量部以下である。
凝集剤は、水系媒体に溶解させて添加することが好ましく、凝集剤の添加時及び添加終了後は十分撹拌することが好ましい。
凝集剤を添加した後の保持温度は、好ましくは35℃以上、より好ましくは40℃以上、更に好ましくは45℃以上であり、そして、好ましくは65℃以下、より好ましくは60℃以下、更に好ましくは55℃以下である。
着色剤としては、特に制限はなく公知の着色剤が挙げられ、目的に応じて適宜選択することができる。具体的には、カーボンブラック、無機系複合酸化物、クロムイエロー、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、スレンイエロー、キノリンイエロー、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、ウオッチヤングレッド、パーマネントレッド、ブリリアンカーミン3B、ブリリアンカーミン6B、デュポンオイルレッド、ピラゾロンレッド、リソールレッド、ローダミンBレーキ、レーキレッドC、ベンガル、アニリンブルー、ウルトラマリンブルー、カルコオイルブルー、メチレンブルークロライド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、及びマラカイトグリーンオクサレート等の種々の顔料;アクリジン系、キサンテン系、アゾ系、ベンゾキノン系、アジン系、アントラキノン系、インジコ系、チオインジコ系、フタロシアニン系、アニリンブラック系、ポリメチン系、トリフェニルメタン系、ジフェニルメタン系、チアジン系、及びチアゾール系等の各種染料が挙げられる。これらの着色剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
着色剤の添加量は、画像品質を向上する観点から、樹脂粒子(X)100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは1質量部以上、更に好ましくは2質量部以上、より更に好ましくは2.5質量部以上であり、そして、好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下、更に好ましくは8質量部以下、より更に好ましくは4質量部以下である。
着色剤は、着色剤微粒子を含有する着色剤分散液として添加してもよい。この着色剤微粒子の体積中位粒径(D50)は、好ましくは50nm以上、より好ましくは100nm以上であり、そして、好ましくは200nm以下、より好ましくは150nm以下である。
荷電制御剤としては、クロム系アゾ染料、鉄系アゾ染料、アルミニウム系アゾ染料、及びサリチル酸金属錯体等が挙げられる。これらの各種荷電制御剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
荷電制御剤を添加する場合、その添加量は、画像品質を向上する観点から、樹脂粒子(X)100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.4質量部以上、更に好ましくは0.6質量部以上であり、そして、好ましくは8質量部以下、より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは2質量部以下である。
この荷電制御剤は、荷電制御剤微粒子を含有する荷電制御剤分散液として添加してもよい。この荷電制御剤微粒子の体積中位粒径(D50)は、好ましくは100nm以上、より好ましくは200nm以上、更に好ましくは300nm以上であり、そして、好ましくは800nm以下、より好ましくは700nm以下、更に好ましくは600nm以下である。
得られる凝集粒子(1)の体積中位粒径(D50)は、トナーの低温定着性及び耐熱保存性と、印刷物の光沢性及びスメア性とを向上させる観点から、好ましくは2μm以上、より好ましくは3μm以上、更に好ましくは4μm以上であり、そして、好ましくは10μm以下、より好ましくは8μm以下、更に好ましくは6μm以下である。
工程2は、工程1で得られた凝集粒子(1)に、前記ポリエステル(H)を含有する樹脂粒子(Y)を凝集させて、凝集粒子(2)を得る工程である。
樹脂粒子(Y)の水系分散体の製造方法は、樹脂粒子(X)の水系分散体の製造方法と同様であり、好ましい態様も同様である。
樹脂粒子(Y)の水系分散体を添加する時の温度は、好ましくは35℃以上、より好ましくは40℃以上、更に好ましくは45℃以上であり、そして、好ましくは65℃以下、より好ましくは60℃以下、更に好ましくは55℃以下である。
樹脂粒子(Y)の全量を添加し、トナーとして適度な粒径に成長したところで凝集を停止させてもよい。
凝集を停止させる方法としては、分散液を冷却する方法、凝集停止剤を添加する方法、分散液を希釈する方法等が挙げられる。不必要な凝集を確実に防止する観点からは、凝集停止剤を添加して凝集を停止させる方法が好ましい。
凝集停止剤の添加量は、不必要な凝集を確実に防止する観点から、樹脂粒子(X)及び樹脂粒子(Y)の総量100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは1質量部以上であり、そして、トナーへの残留を低減する観点から、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは2質量部以下である。凝集停止剤は、トナーの生産性を向上させる観点から、水溶液で添加することが好ましい。
樹脂粒子(Y)の添加量は、樹脂粒子(Y)と樹脂粒子(X)との質量比(樹脂粒子(Y)/樹脂粒子(X))が、トナーの耐熱保存性の観点から、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.07以上、更に好ましくは0.05以上、より更に好ましくは0.1以上であり、そして、トナーの低温定着性と、印刷物の光沢性及びスメア性とを向上させる観点から、好ましくは0.6以下、より好ましくは0.4以下、更に好ましくは0.3以下、より更に好ましくは0.2以下となる量である。
得られる凝集粒子(2)の体積中位粒径(D50)は、トナーの低温定着性及び耐熱保存性と、印刷物の光沢性及びスメア性とを向上させる観点から、好ましくは2μm以上、より好ましくは3μm以上、更に好ましくは4μm以上であり、そして、好ましくは10μm以下、より好ましくは8μm以下、更に好ましくは6μm以下である。
工程3は、工程2で得られた凝集粒子(2)を融着させて、コアシェル粒子を得る工程である。
凝集粒子(2)中の、主として物理的にお互いに付着している状態であった各粒子が融着されて一体となり、コアシェル粒子が形成される。
工程3における系内の温度は、目的とするトナーの粒径、粒度分布、形状制御、及び粒子の融着性の観点、並びにトナーの低温定着性及び耐熱保存性と、印刷物の光沢性及びスメア性とを向上させる観点から、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上、更に好ましくは70℃以上であり、そして、好ましくは100℃以下、より好ましくは90℃以下、更に好ましくは85℃以下である。
上記温度で保持する時間は、トナーの低温定着性及び耐熱保存性と、印刷物の光沢性及びスメア性とを向上させる観点から、好ましくは1分以上、より好ましくは10分以上、更に好ましくは30分以上であり、そして、好ましくは240分以下、より好ましくは180分以下、更に好ましくは120分以下である。
なお、工程3で得られるコアシェル粒子の体積中位粒径は、凝集粒子(2)の体積中位粒径以下であることが好ましい。すなわち、工程3において、凝集粒子(2)同士の凝集、融着等が生じないことが好ましい。
洗浄工程では、添加した非イオン性界面活性剤も洗浄により完全に除去することが好ましく、非イオン性界面活性剤の曇点以下での水系溶液での洗浄が好ましい。洗浄は複数回行うことが好ましい。
また、乾燥工程では、振動型流動乾燥法、スプレードライ法、冷凍乾燥法、フラッシュジェット法等、任意の方法を採用することができる。トナーの乾燥後の水分含有量は、帯電性の観点から、好ましくは1.5質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下である。
外添剤の個数平均粒子径は、トナーの流動性の観点から、好ましくは4nm以上、より好ましくは6nm以上、更に好ましくは8nm以上であり、そして、好ましくは200nm以下、より好ましくは50nm以下、更に好ましくは30nm以下である。
外添剤を添加する場合、その添加量は、トナーの流動性、帯電度の環境安定性、及び保存安定性の観点から、外添剤による処理前のトナー100質量部に対して、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、更に好ましくは0.2質量部以上であり、そして、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下、更に好ましくは1質量部以下である。
樹脂の酸価は、JIS K 0070の方法に基づき測定した。ただし、測定溶媒のみJIS K 0070に規定のエタノールとエーテルの混合溶媒から、アセトンとトルエンの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))に変更した。
(1)軟化点
フローテスター「CFT−500D」(株式会社島津製作所製)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出した。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とした。
(2)吸熱ピークの最高温度
示差走査熱量計「Q−100」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製)を用いて、室温(20℃)から降温速度10℃/分で0℃まで冷却した試料をそのまま1分間静止させ、その後、昇温速度10℃/分で180℃まで昇温しながら測定した。観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピークの温度を吸熱ピークの最高温度とした。
(3)ガラス転移温度
示差走査熱量計「Q−100」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製)を用いて、試料0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/分で0℃まで冷却した。次に昇温速度10℃/分で150℃まで昇温しながら測定した。吸熱ピークの最高温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移温度とした。
以下の方法により、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により分子量分布を測定し、樹脂の数平均分子量Mn及び重量平均分子量Mwを求めた。
(1)試料溶液の調製
濃度が0.5g/100mLになるように、樹脂をクロロホルムに溶解させた。ついで、この溶液をポアサイズ2μmのフッ素樹脂フィルター(住友電気工業株式会社製、商品名:FP−200)を用いて濾過して不溶成分を除き、試料溶液とした。
(2)分子量測定
下記装置を用いて、溶離液としてクロロホルムを、毎分1mlの流速で流し、40℃の恒温槽中でカラムを安定化させた。そこに試料溶液100μlを注入して測定を行った。試料の分子量は、あらかじめ作製した検量線に基づき算出した。このときの検量線には、数種類の分子量が既知の単分散ポリスチレン(東ソー株式会社製;2.63×103、2.06×104、1.02×105、ジーエルサイエンス株式会社製;2.10×103、7.00×103、5.04×104:数値は分子量)を標準試料として作成したものを用いた。
測定装置:CO−8010(商品名、東ソー株式会社製)
分析カラム:GMHXL+G3000HXL(いずれも商品名、東ソー株式会社製)
凝集粒子(1)、トナー粒子、及びトナーの体積中位粒径は以下の通り測定した。
・測定機:コールターマルチサイザーIII(商品名、ベックマンコールター社製)
・アパチャー径:50μm
・解析ソフト:マルチサイザーIII バージョン3.51(商品名、ベックマンコールター社製)
・電解液:アイソトンII(商品名、ベックマンコールター社製)
・分散液:ポリオキシエチレンラウリルエーテル(花王株式会社製、商品名:エマルゲン109P、HLB:13.6)を前記電解液に溶解させ、濃度5質量%の分散液を得た。
・分散条件:前記分散液5mLにトナー測定試料10mgを添加し、超音波分散機にて1分間分散させ、その後、電解液25mLを添加し、更に、超音波分散機にて1分間分散させて、試料分散液を作製した。
・測定条件:前記試料分散液を前記電解液100mLに加えることにより、3万個の粒子の粒径を20秒で測定できる濃度に調整した後、3万個の粒子を測定し、その粒度分布から体積中位粒径(D50)を求めた。
また、体積中位粒径と同様にして体積平均粒径を求め、CV値(%)を下記の式に従って算出した。
CV値(%)=(粒径分布の標準偏差/体積平均粒径)×100
(1)測定装置:レーザー回折型粒径測定機「LA−920」(株式会社堀場製作所製)
(2)測定条件:測定用セルに蒸留水を加え、吸光度が適正範囲になる濃度で体積中位粒径(D50)を測定した。
赤外線水分計「FD−230」(株式会社ケツト科学研究所製)を用いて、試料5gを乾燥温度150℃、測定モード96(監視時間2.5分/変動幅0.05%)の条件にて乾燥させ、試料の水分(質量%)を測定した。固形分は下記式に従って算出した。
固形分濃度(質量%)=100−試料の水分(質量%)
複写機「AR−505」(シャープ株式会社製)の定着機を装置外での定着が可能なように改良した装置にトナーを実装し、未定着の状態で印刷物を得た(印字面積:2cm×12cm、付着量:0.5mg/cm2)。その後、総定着圧が40kgfになるように調整した定着機(定着速度300mm/sec)を用い、定着ロールの温度を100℃から240℃へと5℃ずつ順次上昇させながら、各温度で未定着状態の印刷物の定着試験を行った。得られた印刷物の画像部分にセロハン粘着テープ「ユニセフセロハン」(三菱鉛筆株式会社製、幅:18mm、JIS Z1522)を貼り付け、定着機の定着ロールとは別の、30℃に設定した定着ローラーに通過させた後、テープを剥がした。テープを貼る前と剥がした後の光学反射密度を反射濃度計「RD−915」(グレタグマクベス社製)を用いて測定し、両者の比率(剥離後/貼付前×100)が最初に90%を越える定着ロールの温度を最低定着温度とした。最低定着温度が低いほど、低温定着性が優れる。なお、定着紙には、「CopyBond SF-70NA」(シャープ株式会社製、75g/m2)を使用した。
トナー10gを50ml容のポリカップに入れて、55℃、60%RHの環境下で24時間保持した。その後、パウダーテスター(ホソカワミクロン株式会社製)に、上から順に、篩いA(目開き250μm)、篩いB(目開き150μm)、篩いC(目開き75μm)の3つの篩を重ね合わせて設置し、篩いA上にトナー10gを乗せて60秒間振動を与えた。次いで、下式から求められるαを算出して、流動性を評価した。αの値が大きいほど耐熱性保存に優れる。
複写機「AR−505」(商品名、シャープ株式会社製)にトナーを実装し、定着機を通過する前にベタ画像を取り出して未定着の状態で印刷物を得た(印字面積:2cm×12cm、付着量:0.5mg/cm2)。更に、同じ紙に対して2度未定着画像を印刷し、層厚を1.5mg/cm2とした。このようにして得られた未定着画像を180℃、300mm/secで定着して印刷物を得た。
得られた印刷物に、縦×横×高さ=3cm×3cm×6.5cm、重さ500gのステンレス製の重りをのせて、速度0.5m/sで印字上を往復させた。1往復を1回とし、50回を上限とした。黒い帯状のトナーの付着物が非印字部に現れた回数を目視で確認しスメア性を評価した。回数が多いほどスメア性が良好であることを示す。
複写機「AR−505」(商品名、シャープ株式会社製)にトナーを実装し、定着機を通過する前にベタ画像を取り出して未定着の状態で印刷物を得た(印字面積:2cm×12cm、付着量:0.5mg/cm2)。次いで、前記複写機の定着機をオフラインで、180℃、300mm/secで定着して印刷物を得た。なお、印字媒体にはJ紙(富士ゼロックス株式会社製)を使用した。
得られた印字物を光沢度計(株式会社堀場製作所製、商品名:IG−330)を用いて、該画像の下に厚紙を敷き、光射条件を60°として光沢度を測定した。得られた値が高い程、光沢性が高いことを示す。
内部オレフィンの二重結合位置は、ガスクロマトグラフィー(以下、「GC」ともいう)により測定した。具体的には、内部オレフィンに対しジメチルジスルフィドを反応させることでジチオ化誘導体とした後、各成分をGCで分離した。それぞれのピーク面積より内部オレフィンの二重結合位置を求めた。
なお、測定に使用した装置及び分析条件は次の通りである。
・GC装置(HEWLETT PACKARD社製、商品名:HP6890)
・カラム(フロンティア・ラボ株式会社製、商品名:Ultra−Alloy−1HTキャピラリーカラム30m×250μm×0.15μm)
・検出器(水素炎イオン検出器(FID))
・インジェクション温度300℃
・ディテクター温度350℃
・ヘリウム流量4.6mL/min
アルキレン化合物(6)の分布は、特開2013−222001号公報 明細書段落〔0092〕〜〔0103〕の〔アルキレン化合物Aの質量分析ガスクロマトグラフィーによる分析〕に記載された方法によって求めた。
製造例1
(アルケニル無水コハク酸(a)の製造)
撹拌装置付きフラスコに1−オクタデカノール(花王株式会社製、製品名:カルコール8098、)7000g(25.9モル)、固体酸触媒としてγ―アルミナ(STREM Chemicals,Inc社)1050g(原料アルコールに対して15質量%)を仕込み、撹拌下、285℃にて系内に窒素(7000mL/min.)を流通させながら13時間、反応を行った。反応終了後のアルコール転化率は100%、C18内部オレフィン純度は98.5%であった。得られた粗内部オレフィンを蒸留用フラスコに移し、148−158℃/0.5mmHgで蒸留することでオレフィン純度100%の炭素数18の内部オレフィン(1)を得た。得られた内部オレフィン(1)の二重結合分布は、C1位0.7質量%、C2位16.9質量%、C3位15.9質量%、C4位16.0質量%、C5位14.5質量%、C6位11.2質量%、C7位10.2質量%、C8、9位の合計が14.6質量%であった。
次に、1Lの日東高圧株式会社製オートクレーブに内部オレフィン(1)542.4g、無水マレイン酸157.2g、抗酸化剤チェレックス−O(SC有機化学株式会社製、Triisooctyl phosphite)0.4g、重合禁止剤としてブチルハイドロキノン0.1gを仕込み、加圧窒素置換(0.2MPaG)を3回繰り返した。60℃で撹拌開始後、230℃まで1時間かけて昇温して6時間反応を行った。反応温度到達時の圧力は、0.3MPaGであった。反応終了後、80℃まで冷却し、常圧(101.3kPa)に戻して1Lの4つ口フラスコに移しかえた。180℃まで撹拌しながら昇温し、1.3kPaにて残存する内部オレフィンを1時間で留去した。引き続き、室温(25℃)まで冷却後、常圧(101.3kPa)に戻して目的物のアルケニル無水コハク酸(a)406.1gを得た。酸価より求めたアルケニル無水コハク酸(a)の平均分子量は364であった。
(アルケニル無水コハク酸(b)の製造)
製造例1において用いた1−オクタデカノールを1−ドデカノールとした以外、製造例1と同様にして、炭素数12の内部オレフィン(2)を得た。得られた内部オレフィン(2)の二重結合分布は、C1位0.4質量%、C2位30.4質量%、C3位29.6質量%、C4位16.2質量%、C5、C6位の合計が23.4質量%であった。
次に、製造例1において用いた内部オレフィン(1)を内部オレフィン(2)とした以外、製造例1と同様にして、アルケニル無水コハク酸(b)を得た。酸価より求めたアルケニル無水コハク酸(b)の平均分子量は280であった。
(アルケニル無水コハク酸(c)の製造)
製造例1において用いた1−オクタデカノールを1−ノナノールとした以外、製造例1と同様にして、炭素数9の内部オレフィン(3)を得た。得られた内部オレフィン(3)の二重結合分布は、C1位0.3質量%、C2位37.1質量%、C3位35.2質量%、C4、5位の合計が27.4質量%であった。
次に、製造例1において用いた内部オレフィン(1)を内部オレフィン(3)とした以外、製造例1と同様にして、アルケニル無水コハク酸(c)を得た。酸価より求めたアルケニル無水コハク酸(c)の平均分子量は238であった。
(アルケニル無水コハク酸(d)の製造)
製造例1において用いたγ―アルミナを原料アルコールである1−オクタデカノール(花王株式会社製、製品名:カルコール8098)に対して10質量%とし、反応温度を280℃、反応時間を10時間、蒸留条件を148−158℃/0.5mmHgとした以外、製造例1と同様にして、炭素数18の内部オレフィン(4)を得た。得られた内部オレフィン(4)の二重結合分布は、C1位0.8質量%、C2位31.3質量%、C3位22.9質量%、C4位15.5質量%、C5位10.8質量%、C6位7.2質量%、C7位5.3質量%、C8、9位の合計が6.2質量%であった。
次に、製造例1において用いた内部オレフィン(1)を内部オレフィン(4)とした以外、製造例1と同様にして、アルケニル無水コハク酸(d)を得た。酸価より求めたアルケニル無水コハク酸(d)の平均分子量は359であった。
(アルケニル無水コハク酸(e)の製造)
製造例1において用いた1−オクタデカノールを1−オクタノールとした以外、製造例1と同様にして、炭素数8の内部オレフィン(5)を得た。得られた内部オレフィン(5)の二重結合分布は、C1位0.3質量%、C2位40.8質量%、C3、C4位の合計が58.9質量%であった。
次に、製造例1において用いた内部オレフィン(1)を内部オレフィン(5)とした以外、製造例1と同様にして、アルケニル無水コハク酸(e)を得た。酸価より求めたアルケニル無水コハク酸(e)の平均分子量は224であった。
(アルケニル無水コハク酸(f)の製造)
プロピレンテトラマー(新日本石油株式会社製、商品名:ライトテトラマー)を用いて、183〜208℃の加熱条件で分留してアルキレン化合物(6)を得た。得られたアルキレン化合物(6)の分布は、C9H18:0.5質量%、C10H20:4質量%、C11H22:20質量%、C12H24:66質量%、C13H26:9質量%、C14H28:0.5質量%であった。
次に、製造例1において用いた内部オレフィン(1)をアルキレン化合物(6)とした以外、製造例1と同様にして、アルケニル無水コハク酸(f)を得た。酸価より求めたアルケニル無水コハク酸(f)の平均分子量は268であった。
製造例7〜12、14〜20
(ポリエステルL−1〜L−6、L−8〜L−13、及びポリエステルH−1の製造)
表1〜3に示す、無水トリメリット酸以外のポリエステルの原料モノマー、エステル化触媒及び没食子酸を、窒素導入管、98℃の熱水を通した分留管を装着した脱水管、撹拌器及び熱電対を装備した5リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、180℃で1時間保温した後に180℃から210℃まで10℃/時間で昇温し、その後210℃で10時間重縮合させた。その後、無水トリメリット酸を添加し、210℃で1時間反応させた後、更に210℃で10kPaの減圧下にて表1〜3に記載の軟化点まで反応を行って、ポリエステルを得た。物性を表1〜3に示す。
(ポリエステルL−7、及びポリエステルH−2の製造)
表1及び3に示す、無水トリメリット酸以外のポリエステルの原料モノマー、エステル化触媒及び没食子酸を、窒素導入管、撹拌器及び熱電対を装備した5リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、235℃まで昇温し、その後235℃で6時間重縮合させた。その後、210℃まで降温し無水トリメリット酸を添加し、210℃で1時間反応させた後、更に210℃で10kPaの減圧下にて表1及び3に記載の軟化点まで反応を行って、ポリエステルを得た。物性を表1及び3に示す。
製造例22
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート、温度計及び窒素導入管を備えた5L容の容器にメチルエチルケトン600gを投入し、上記製造例7で製造したポリエステルL−1 150gを60℃にて添加し、溶解させた。得られた溶液に、20質量%アンモニア水溶液(pKa:9.3)を、樹脂の酸価に対して中和度100モル%になるように添加し、30分撹拌して、混合物を得た。続いてイオン交換水675gを77分かけて添加した。次いで、250r/分の撹拌を行いながら、減圧下、50℃以下の温度でメチルエチルケトンを留去した後、アニオン性界面活性剤「エマールE27C」(ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、花王株式会社製、固形分28質量%)を16.7g混合し、完全に溶解させた。その後、水系分散体の固形分濃度を測定し、イオン交換水を加えることにより、水系分散体の固形分濃度を20質量%に調整した。
製造例22において、用いたポリエステルを製造例8〜19で得られたポリエステルL−2〜L−13に変更した以外は、製造例22と同様にして、樹脂粒子の水系分散体を得た。
製造例35〜36
製造例22において、用いたポリエステルを製造例20〜21で得られたポリエステルH−1〜H−2に変更した以外は、製造例22と同様にして、シェル用樹脂粒子の水系分散体を得た。
製造例37
パラフィンワックス(日本精蝋株式会社製、商品名:HNP0190、融点:85℃)50g、カチオン性界面活性剤(花王株式会社製、商品名:サニゾールB50)5g及びイオン交換水200gを95℃に加熱して、ホモジナイザーを用いて、パラフィンワックスを分散させた後、圧力吐出型ホモジナイザーで分散処理し、固形分濃度20質量%の離型剤粒子を含有する離型剤分散液を得た。離型剤粒子の体積中位粒径は550nmであった。
製造例38
銅フタロシアニン「ECB−301」(大日精化工業株式会社製)50g、非イオン性界面活性剤「エマルゲン150」(花王株式会社製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル)5g及びイオン交換水200gを混合し、ホモジナイザーを用いて25℃にて10分間分散させて、着色剤粒子を含有する着色剤分散液を得た。固形分濃度20質量%の着色剤粒子の体積中位粒径(D50)は120nmであった。
製造例39
荷電制御剤としてサリチル酸系化合物「ボントロンE−84」(オリエント化学工業株式会社製)50g、非イオン性界面活性剤として「エマルゲン150」(花王株式会社製)5g及びイオン交換水200gを混合し、ガラスビーズを使用し、サンドグラインダーを用いて25℃にて10分間分散させて、荷電制御剤粒子を含有する荷電制御剤分散液を得た。固形分濃度20質量%の荷電制御剤粒子の体積中位粒径(D50)は500nmであった。
実施例1
製造例22で作製したコア用樹脂粒子の水系分散体300g、離型剤分散液15g、着色剤分散液8g、荷電制御剤分散液2gを、3L容の容器に入れ、アンカー型の撹拌機で100r/分(周速31m/分)の撹拌下、20℃で0.1質量%塩化カルシウム水溶液150gを30分かけて滴下した。その後、撹拌しながら50℃まで昇温した。3時間経過した時点で体積中位粒径が5μmに達した凝集粒子(1)を得た。その後、製造例35で作製したシェル用樹脂粒子の水系分散体を45g加え、撹拌して分散させることにより、凝集粒子(1)にシェル用樹脂粒子を凝集させた凝集粒子(2)を得た。その後、凝集粒子(2)の分散液に、凝集停止剤としてアニオン性界面活性剤「エマールE27C」(花王株式会社製、固形分28質量%)4.2gを脱イオン水37gで希釈した希釈液を添加して、凝集体を得た。次いで80℃まで昇温し、80℃になった時点から1時間80℃を保持した後、加熱を終了した。これにより融着粒子を形成させた後、20℃まで徐冷し、150メッシュ(目開き150マイクロメートル)の金網でろ過した後、吸引ろ過を行い、イオン交換水で十分に洗浄した後、乾燥させることによりトナー粒子を得た。得られたトナー粒子の体積中位粒径(D50)は5.1μmであった。
トナー粒子100質量部に対し、外添剤(疎水性シリカ、日本アエロジル株式会社製、商品名:アエロジル R−972、個数平均粒子径:16nm)0.5質量部を添加し、ヘンシェルミキサー(日本コークス工業株式会社製)で3600r/分(周速31.7m/秒)、5分間混合することにより、外添剤処理を行いトナー(体積中位粒径D50=5.1μm)を得た。
実施例1において、用いた樹脂粒子の水系分散体の種類及び量を表4に示す樹脂粒子の水系分散体の種類及び量に変更した以外は、実施例1と同様にして、トナーを得た。得られたトナーの評価結果を表4に示す。
実施例1において、離型剤分散液を用いないこと以外は、実施例1と同様にして、トナーを得た。得られたトナーの評価結果を表4に示す。
実施例1〜3を比較すると、コア部とシェル部との質量比(コア/シェル)が100/15の時に、特に低温定着性、スメア性、及び光沢性に優れていることがわかる。
実施例1、11、12を比較すると、前記一般式(1)で表される、アルケニルコハク酸を32モル%含有するカルボン酸成分とアルコール成分とを重縮合して得られるポリエステルをコア部に含む、実施例1のトナーが、耐熱保存性、低温定着性、スメア性、及び光沢性のバランスに優れていることがわかる。
実施例2と実施例4とを比較すると、シェル部に、炭素数2以上6以下の脂肪族ジオール(2級水酸基を有するアルコール)を重縮合して得られるポリエスエルを用いた実施例2のトナーは、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を重縮合して得られるポリエステルを用いた実施例4のトナーよりも、耐熱保存性、低温定着性、スメア性、及び光沢性に優れていることがわかる。
実施例1、5、6を比較すると、アルケニルコハク酸のアルケニル部の炭素数が18の実施例1が、耐熱保存性、低温定着性、スメア性、及び光沢性に優れていることがわかる。
実施例1と実施例7とを比較すると、前記一般式(1)における、R1の直鎖アルケニル基及びR2の直鎖アルキル基の炭素数がともに4以上であるアルケニルコハク酸の含有量がより多い実施例1のトナーが、耐熱保存性、低温定着性、スメア性、及び光沢性に優れていることがわかる。
実施例1と実施例8とを比較すると、カルボン酸成分として、芳香族ジカルボン酸を63モル%有するポリエステルをコア部に用いた実施例1のトナーが、耐熱保存性、低温定着性、スメア性、及び光沢性に優れていることがわかる。
実施例1と実施例9とを比較すると、コア部のポリエステルの酸価が21.6mgKOH/gである実施例1のトナーが、耐熱保存性、低温定着性、スメア性、及び光沢性に優れていることがわかる。これは、コア用樹脂粒子の水系分散体を製造する際の乳化性が低下したため、CV値から、粗大粒子が発生したためであると推定される。
実施例1と実施例10とを比較すると、アルコール成分として、炭素数2以上6以下の脂肪族ジオールを用いたポリエステルをコア部に使用した実施例1のトナーが、耐熱保存性、低温定着性、スメア性、及び光沢性の観点から好ましいことがわかる。
Claims (9)
- コアシェル粒子を結着樹脂として含む静電荷像現像用トナーであって、
コア部が、カルボン酸成分(L−ac)とアルコール成分(L−al)とを重縮合して得られるポリエステル(L)と、ワックスとを含有し、
シェル部が、カルボン酸成分(H−ac)とアルコール成分(H−al)とを重縮合して得られるポリエステル(H)を含有し、
カルボン酸成分(L−ac)が、下記一般式(1)で表されるアルケニルコハク酸及び下記一般式(2)で表されるアルキルコハク酸から選ばれる1種以上を含有し、カルボン酸成分(L−ac)中の前記アルケニルコハク酸及び前記アルキルコハク酸から選ばれる1種以上の合計含有量が3モル%以上であり、
カルボン酸成分(H−ac)中の、前記アルケニルコハク酸及び前記アルキルコハク酸から選ばれる1種以上の含有量が、3モル%未満である、静電荷像現像用トナー。
(式中、R1は炭素数2以上の直鎖アルケニル基、R2は炭素数2以上の直鎖アルキル基を示し、R3及びR4はそれぞれ独立して炭素数2以上の直鎖アルキル基を示す。R1R2CH−で表される分岐アルケニル基及びR3R4CH−で表される分岐アルキル基の総炭素数はそれぞれ独立して9以上24以下である。X及びYは、それぞれ独立に水酸基若しくは炭素数1以上3以下のアルコキシ基を示すか、又は酸素原子を介して互いに結合して酸無水物を形成する基を示す。) - コア部とシェル部との質量比(コア/シェル)が、100/5〜100/60である、請求項1に記載の静電荷像現像用トナー。
- カルボン酸成分(L−ac)中、前記一般式(1)で表されるアルケニルコハク酸及び前記一般式(2)で表されるアルキルコハク酸から選ばれる1種以上の合計含有量が3モル%以上、50モル%以下である、請求項1又は2に記載の静電荷像現像用トナー。
- カルボン酸成分(L−ac)中、芳香族ジカルボン酸の含有量が40モル%以上、90モル%以下である、請求項1〜3のいずれかに記載の静電荷像現像用トナー。
- アルコール成分(L−al)中、炭素数2以上6以下の脂肪族ジオールの含有量が80モル%以上である、請求項1〜4のいずれかに記載の静電荷像現像用トナー。
- アルコール成分(H−al)中、炭素数2以上6以下の脂肪族ジオールの含有量が60モル%以上である、請求項1〜5のいずれかに記載の静電荷像現像用トナー。
- 前記一般式(1)における、R1の直鎖アルケニル基及びR2の直鎖アルキル基の炭素数がともに4以上であるアルケニルコハク酸、及び前記一般式(2)における、R3及びR4の直鎖アルキル基の炭素数がともに4以上であるアルキルコハク酸の、カルボン酸成分(L−ac)中の合計含有量が、前記一般式(1)で表されるアルケニルコハク酸及び前記一般式(2)で表されるアルキルコハク酸の合計量に対して10質量%以上である、請求項1〜6のいずれかに記載の静電荷像現像用トナー。
- 下記工程1〜3を有する、請求項1〜7のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
工程1:ポリエステル(L)を含有する樹脂粒子(X)と、ワックスを含有する離型剤粒子とを、水系媒体中で凝集させて、凝集粒子(1)を得る工程
工程2:工程1で得られた凝集粒子(1)に、ポリエステル(H)を含有する樹脂粒子(Y)を凝集させて、凝集粒子(2)を得る工程
工程3:工程2で得られた凝集粒子(2)を融着させて、コアシェル粒子を得る工程 - コアシェル粒子を結着樹脂として含む静電荷像現像用トナーの製造方法であって、
コア部が、カルボン酸成分(L−ac)とアルコール成分(L−al)とを重縮合して得られるポリエステル(L)と、ワックスとを含有し、
シェル部が、カルボン酸成分(H−ac)とアルコール成分(H−al)とを重縮合して得られるポリエステル(H)を含有し、
カルボン酸成分(L−ac)が、下記一般式(1)で表されるアルケニルコハク酸及び下記一般式(2)で表されるアルキルコハク酸から選ばれる1種以上を含有し、カルボン酸成分(L−ac)中の前記アルケニルコハク酸及び前記アルキルコハク酸から選ばれる1種以上の合計含有量が3モル%以上であり、
カルボン酸成分(H−ac)中の、前記アルケニルコハク酸及び前記アルキルコハク酸から選ばれる1種以上の含有量が、3モル%未満であり、
前記アルケニルコハク酸が、固体触媒の存在下、炭素数9以上24以下の第一級脂肪族アルコールを脱水反応して得られた内部オレフィンと、マレイン酸、無水マレイン酸及びフマル酸から選ばれる1種以上とを、エン反応によって結合して得たアルケニルコハク酸混合物中に含有されるものであり、前記アルキルコハク酸が該アルケニルコハク酸混合物を水素添加して得たアルキルコハク酸混合物中に含有されるものである、請求項1〜7のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
(式中、R 1 は炭素数2以上の直鎖アルケニル基、R 2 は炭素数2以上の直鎖アルキル基を示し、R 3 及びR 4 はそれぞれ独立して炭素数2以上の直鎖アルキル基を示す。R 1 R 2 CH−で表される分岐アルケニル基及びR 3 R 4 CH−で表される分岐アルキル基の総炭素数はそれぞれ独立して9以上24以下である。X及びYは、それぞれ独立に水酸基若しくは炭素数1以上3以下のアルコキシ基を示すか、又は酸素原子を介して互いに結合して酸無水物を形成する基を示す。)
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