JP2013119555A - 親水性膜 - Google Patents
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Abstract
【効果】 アニオン性親水基を有する表面上をアルカリ性化合物で処理することにより、その表面の防曇性を飛躍的に向上させることができる。
【選択図】 図1
Description
しかしながら、上記親水性樹脂の大部分は、分子間架橋度が比較的低く、水に溶解したり、水に溶解しなくても、水を吸収してゲル状になりやすい傾向にあった。また分子間架橋度が比較的小さいため、表面が軟らかく傷つきやすい場合もあった。また一部の上記親水性樹脂は親水性が不充分で、防曇材料として使用するには充分とは言えないものであった。
一方、特許文献5では、基材の表面に架橋重合性モノマー組成物を塗布し紫外線照射量をコントロールして不完全に重合した架橋ポリマーを形成させ、次いで親水性モノマーを塗布し再び紫外線を照射する事により親水モノマーを架橋ポリマーの表面にブロック又はグラフト重合させる2度塗りによる2層構造の親水性材料が提案されている。しかし、この2度塗りによる方法は、通常の1度塗りによる1層構造の方法と比較して、煩雑であり、しかもコスト高であり、表面の平滑性も損なう場合があった。
本発明者らは、上記問題を解決する手段として、水酸基含有(メタ)アクリルアミドから得られる重合体の親水性膜(特許文献6)また、特定のアニオン性親水基が表面に高濃度で存在する単層膜(特許文献7)を先に提案している。これ等の方法によれば、透明で傷つきにくく耐薬品性にも優れる高親水性皮膜が得られ、一般的な防曇性皮膜としては十分に使用できるが、例えば脱衣場の化粧鏡等のように非常に曇り易い用途を考えた場合、その防曇性能について更なる改善が要求されていた。
本発明のアニオン性親水基を有する表面とは、表面にアニオン性の親水基が存在している表面であればよく、例えば、スルホン酸基、カルボキシル基 またはリン酸基を有する親水性の表面などが挙げられる。これらの中で、親水性が高く防曇性および持続性に優れるスルホン酸基が好ましい。
これらのアニオン性親水基を有する代表的な表面としては、溶剤の蒸発を利用して表面にアニオン性親水基を偏析させた高親水性の膜(特許文献7:国際公開第2007/064003号)が挙げられ、本発明の親水性表面として好ましく用いられる。
本発明に用いられるアニオン性親水基を有する表面について、その表面のアニオン量は、TOF−SIMSによって分析される。本発明において、好ましく用いられる表面のアニオン量は、凡そ0.1〜100%の範囲(TOF−SIMSで検出されたトータルイオン強度に対するアニオンの相対強度比で表す。)であり、好ましくは0.5〜50%の範囲、更に好ましくは1〜30%の範囲である。
本発明において用いられる表面の水接触角は、通常30°以下、好ましくは20°以下、更に好ましくは10°以下である。
本発明に用いられるアルカリ性化合物とは、水中で塩基性を示す化合物である。例えば、3級アミンおよびホスフィンなどに代表される有機系アルカリ性化合物、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素リチウム、亜ジチオン酸ナトリウム(ナトリウムハイドロサルファイト)などに代表される無機系アルカリ性化合物、さらにナトリウムメトキシド、t−ブトキシカリウムなどの有機金属塩系アルカリ性化合物等が挙げられる。
これらの中で、下記の高い性能を実現し、安価で、比較的に安全性が高い化合物の点で、無機系アルカリ性化合物が好ましく、中でも炭酸水素アルカリ金属塩または炭酸アルカリ金属塩がより好ましく、さらに炭酸水素カリウムまたは炭酸カリウムであればより一層好ましく、炭酸水素カリウムであれば最も好ましい。
本発明のアニオン性親水基を有する表面を、アルカリ性化合物溶液で処理することにより、その表面の防曇性を飛躍的に向上させることができる。
例えば、水接触角で表すと凡そ1〜30°の低下を起こすことができ、アルカリ性化合物溶液で処理されたアニオン性親水基を有する表面の水接触角は、通常20°以下、好ましくは10°以下、より好ましくは5°以下となる。一般的に、非常に曇り易い脱衣場の化粧鏡などの曇り止めには、少なくとも水接触角5°以下の超親水化により水滴の生成を抑え(水薄膜化)、且つその状態を長時間維持しなければならない。
本発明の防曇処理は、通常、アニオン性親水基を有する表面上にアルカリ性化合物溶液を塗布処理し、乾燥後、必要に応じて、表面に過剰に堆積したアルカリ分を除去することによって行われる。
溶剤に溶解されるアルカリ性化合物の濃度は、選択した溶剤により異なるが、凡そ0.001wt%〜飽和溶解度である。濃度が高いと塗布後に過剰のアルカリが表面に堆積し易く透明性が低下する場合があるため、乾燥後のアルカリ除去作業が必要になり易く煩雑である。従って、0.01〜10wt%が好ましく、0.02〜5wt%がより好ましく、0.03〜2wt%であればさらに好ましい。
乾燥後、過剰に堆積したアルカリ成分による白化などが見られた場合、乾燥したテッシュまたはウエスなどで拭きとり透明にすることができる。
また、塗布後の乾燥は、自然乾燥が簡便だが、エアガン、扇風機、ドライヤー、またはオーブンなどを使用した別の乾燥方法でもよい。
アニオン性親水基を有する表面上にアルカリ性化合物を塗布する本発明の防曇処理により、水膜の形成が容易になり、且つその状態を比較的に長く保持できるため、高い防曇性が要求される防曇材料、防曇被膜(以下、防曇コートとも言う)に有用である。
上記アルカリ性化合物塗布層の厚さは、SEM(走査電子顕微鏡)により測定され、そのアルカリ塗布層(処理層)の厚みは用途により異なるが、通常0.01〜1000nm、好ましくは0.1〜500nm、より好ましくは0.2〜100nmの範囲である。
なお、本発明において被膜の物性評価は、下記のようにして行った。
<水接触角の測定>
協和界面科学社製の水接触角測定装置CA−V型を用いて、1サンプルについて3箇所測定し、これら値の平均値を水接触角の値とした。
<ヘーズの測定>
日本電色工業社製のヘーズメーターNDH2000を用いて、1サンプルについて4箇所測定し、これら値の平均値をヘーズの値とした。
<アニオン量の測定>
飛行時間型2次イオン質量分析装置(TOF−SIMS)を用いて、コーティング膜表面のアニオン量を測定した。
(分析装置と測定条件)
TOF−SIMS; ION・TOF社製 TOF−SIMS5
一次イオン; Bi32+ (加速電圧25kV)
測定面積; 340μm2
測定には帯電補正用中和銃を使用
(試料調製等)
サンプルを10mm×10mm程度の大きさに切り出し、測定面にメッシュを当て、サンプルホルダーに固定し、飛行時間型2次イオン質量分析装置(TOF−SIMS)を用いてアニオン量を測定した。
(評価)
アニオン量は、相対強度(トータル検出イオンに対する相対強度(%))で表した。
<呼気防曇性の評価>
呼気により曇らなかった場合を〇、曇った場合を×とした。
防曇性評価装置(協和界面科学,防曇性評価装置「AFA−1」)を用い測定を行った。尚、評価は測定中に防曇指数が全て2以下を維持した場合を○、防曇指数が1回でも2を超えた場合を×とした。
AFA−1の測定条件
水蒸気温度: 35℃
測定室温度: 16℃
測定方法: 1回/3秒の間隔で防曇指数を測定,0〜15秒まではスタート時の状態を保持→15秒〜1分15秒は35℃蒸気を連続吹きつけ→1分15秒〜2分15秒は蒸気を停止して強制乾燥。
(コーティング溶液1の調製)
表1の配合比に従い、固形分65wt%の均一なコーティング溶液1を調製した。
コーティング溶液1を基材となるポリカーボネート製シート(以下PC板と略す。)にバーコーター#16で塗布後、直ちに40〜45℃の温風乾燥機で2分間乾燥し、UVコンベアー(フュージョンUVシステムズ・ジャパン株式会社,無電極放電ランプ Hバルブ,コンベアー速度18m/分)を3回通過させて(積算光量300mJ/cm2×3回)、PC板上に膜厚約14μmのコーティング膜を形成させた。最後に外気と接する単層膜の外表面の汚れを除去する目的で流水洗浄を行い、エアブローで膜表面を乾燥させた。PC板上に形成されたこのコーティング膜について、物性測定およびTOF−SIMSによる分析を行った。結果を表2に示す。
先ず、KHCO3 0.1gを水40gに溶解し、エタノール60gを追加して再度溶解して、0.1wt%−KHCO3溶液を調製した。
PC板上に形成された製造例1のアニオン性親水基(スルホン酸基)を有するコーティング膜の表面に、上記で得られた0.1wt%−KHCO3溶液を含ませたティシュペーパーを擦り付けることにより塗布と乾燥を同時に行い、透明な処理膜を得た。
こうして得られアルカリ処理膜を呼気および防曇性評価装置AFA−1で防曇性の評価を行った。結果を表3に示す。
アルカリ性化合物の種類を変更して実施例1と同様に試験した。結果を表3に示す。
〔比較例1〜2〕
アルカリ性化合物の替わりに中性および酸性の無機塩に変更して実施例1と同様に試験した。結果を表3に示す。
処理液を60wt%−エタノール水に変更して実施例1と同様に試験した。結果を表3に示す。
製造例1のコーティング膜を処理せずに実施例1と同様に呼気での防曇性評価およびAFA−1での防曇性評価を行った。結果を表3に示す。
ガラス板表面を実施例1と同様に0.1wt%−KHCO3溶液で処理(コーティング膜なし)し、水接触角とAFA−1の評価を行った。結果を表4に示す。
ガラス板表面を処理せずに、水接触角とAFA−1の評価を行った。結果を表4に示す。
(コーティング溶液2の調製)
表5の配合比に従い、固形分65wt%の均一なコーティング溶液2を調製した。
コーティング溶液2をPC板にバーコーター#8で塗布後、直ちに45〜50℃の温風乾燥機で2分間乾燥し、UVコンベアー(フュージョンUVシステムズ・ジャパン株式会社,無電極放電ランプ Hバルブ,コンベアー速度6m/分)を1回通過させて(積算光量900mJ/cm2×3回)、PC板上に膜厚約7μmのコーティング膜を形成させた。UV硬化後、コーティング表面を流水洗浄し、エアブローで乾燥させた。
PC板上に形成されたこのコーティング膜について、物性測定およびTOF−SIMSによる分析を行った。結果を表6に示す。
KHCO3 0.2gに水18gを加えて混合溶解し、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGMと略す)82gを追加して再度混合溶解し、0.2wt%−KHCO3溶液を調製した。
PC板上に形成された製造例2のアニオン性親水基(スルホン酸基)を有するコーティング膜の表面に、得られた0.2wt%−KHCO3溶液をバーコーター#10で塗布し、45〜50℃の温風乾燥機で乾燥した。乾燥後、表面に白い斑点物が見られたので、乾燥したテッシュペーパーを擦り付けて拭き取り、測定用の透明なサンプル(アルカリ処理膜)を得た。
こうして得られたアルカリ処理膜について、表面に積層されたアルカリ層の厚み測定、TOF−SIMSによる表面のアルカリ量分析(アルカリ成分の相対強度)、および防曇性評価等を行った。結果を表7に示す。
〔実施例7〕
KHCO3の替わりにジエタノールアミン(DEAと略す)を使用して実施例6と同様に試験した。結果を表7に掲載する。
Claims (5)
- アニオン性親水基を有する表面上を、アルカリ性化合物で処理した親水性膜。
- アニオン性親水基を有する表面上を、アルカリ性化合物で厚さ0.01〜1000nmで処理された請求項1記載の親水性膜。
- 前記アルカリ性化合物が炭酸アルカリ金属塩又は炭酸水素アルカリ金属塩である請求項1記載の親水性膜。
- 前記アルカリ性化合物が炭酸水素カリウムである請求項3記載の親水性膜。
- アニオン性親水基を有する表面上を、アルカリ性化合物溶液で処理する親水性膜の処理方法。
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