JP2013118314A - 磁性部品の製造方法および磁性部品 - Google Patents
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Abstract
【課題】均一な絶縁性被覆を備えた磁性部品を提供する。
【解決手段】フェライトコアの表面に被覆層が設けられた磁性部品の製造方法であって、 巻線部と固定部とを有するフェライトコアが、金属アルコキシドが含まれる加水分解溶液に浸されている状態にすることで、前記巻線部と前記固定部を含む前記フェライトコアの表面に、前記被覆層として厚さが0.3μm〜5μmの金属酸化物層を設ける、第1の工程を有することを特徴とする。
【選択図】図1
【解決手段】フェライトコアの表面に被覆層が設けられた磁性部品の製造方法であって、 巻線部と固定部とを有するフェライトコアが、金属アルコキシドが含まれる加水分解溶液に浸されている状態にすることで、前記巻線部と前記固定部を含む前記フェライトコアの表面に、前記被覆層として厚さが0.3μm〜5μmの金属酸化物層を設ける、第1の工程を有することを特徴とする。
【選択図】図1
Description
本発明は、例えばMn−Zn系フェライトに代表されるフェライトコアの表面に被覆層を設けた磁性部品およびその製造方法に関する。
従来からトランスやチョークコイルに供する磁性コアの材料として、磁気特性に優れ、かつ安価であるフェライト焼結体が広く使用されている。例えばMn−Zn系フェライトは高飽和磁束密度、低損失という特徴を活かしてスイッチング電源等の用途に使用されている。その一方でMn−Zn系フェライトはNi−Zn系フェライトに比べて抵抗率が低いため、絶縁性を確保するための被覆やボビンが必要とされるなど、その使用形態に制約がある。また、コア表面に電極が必要とされる用途においては、抵抗率が低いために電極間の絶縁性を十分確保することが困難である。
絶縁性を確保するための被覆としては樹脂が広く知られているが、樹脂被覆の場合は、耐熱性に限界がある。そこで、例えば特許文献1には、金属アルコラートを加水分解して得られる金属酸化物被膜で被覆されたMn−Znフェライト焼結体が開示されている。特許文献1は、塗膜の焼損の問題を克服するとともに、絶縁性に優れ、磁気特性の劣化を抑えたMn−Znフェライト焼結体を提供しようとするものである。
また、特許文献2には、容器を回転させながらフェライト等の被膜形成体にガラススラリーを吹き付けて、その表面にガラス塗膜を形成する方法が開示されている。その目的は、フェライトコアのような被膜形成体の表面に、均一で均質なガラス膜を効率良く形成するガラス膜の形成方法を提供する点にある。
特許文献1に開示の構成によれば、磁気特性の劣化が抑えられる可能性はあるものの、以下の問題があった。例えば、その実施例に開示されているように、Si−アルコラートをスプレーにて塗布しているために、膜厚が大きく、そのばらつきも大きい。膜厚のばらつきは、絶縁性の信頼性を損ない、素子の寸法や特性のばらつきの原因ともなる。なお、特許文献1に開示の構成によれば、磁気特性の劣化が抑えられる可能性はあるものの、その効果は加水分解で得られた金属酸化物被膜を400℃以下の低温で加熱することで達成しようとしており、かかる低温での処理では十分な被膜強度を確保することも困難であった。また、容器を回転させながらガラス塗膜を形成する特許文献2に記載の方法では、ガラス膜の均一性が改善される可能性はあるものの、該方法はガラススラリーの吹き付けを前提としているため、被膜の均一性には限界があり、特に凹部などがある複雑な形状のフェライトコアなどに均一に被膜を形成することが困難であった。かかる問題は、ドライプロセスによって被覆を設ける場合においても同様であった。
そこで本発明は、フェライトコアの表面に被覆層が設けられた磁性部品およびその製造方法であって、均一な絶縁性被覆を備えた磁性部品を提供することを目的とする。
本発明は、フェライトコアの表面に被覆層が設けられた磁性部品の製造方法であって、巻線部と固定部とを有するフェライトコアが、金属アルコキシドが含まれる加水分解溶液に浸されている状態にすることで、前記巻線部と前記固定部を含む前記フェライトコアの表面に、前記被覆層として厚さが0.3μm〜5μmの金属酸化物層を設ける第1の工程を有することを特徴とする。かかる構成では加水分解溶液中にフェライトコアを浸漬した状態で被覆が形成されるため、フェライトコア表面全体に均一な被覆を形成することが可能である。なお、本願において巻線部とは、フェライトコアの部位のうち、その周囲に巻線が配される部分であり、固定部とは他の部材に接触して磁性部品の配置を固定するための部分である。
また、前記磁性部品の製造方法において、前記第1の工程を経たフェライトコアの前記固定部にさらに電極を設ける第2の工程を有することが好ましい。第1の工程を経ることによってフェライトコアの絶縁性が向上する。したがって、第1の工程を経たフェライトコアは、電極付フェライトコアの製造工程に供することでその特徴を好適に活かすことができる。
さらに、前記磁性部品の製造方法において、前記第1の工程と前記第2の工程の間に、前記金属酸化物層と前記電極との間にガラス層を設ける第3の工程を有し、前記ガラス層を、前記フェライトコアの表面において、前記電極を内側に包含するように、かつ部分的に形成することが好ましい。電極を形成する部分において、金属酸化物層と電極の間にガラス層を設けることで、電極/フェライトコア間の絶縁性をさらに高めることができる。また、ガラス層を部分的に形成することで、ガラス層を全体に形成する場合に比べて磁性部品の特性劣化を抑制することができる。
さらに、前記磁性部品の製造方法において、前記第2の工程は、前記金属酸化物層または前記ガラス層の上に導体ペーストを配置し、その後焼き付ける工程を有することが好ましい。第1の工程で形成された金属酸化物層は、熱処理することでその強度を高めることができる。焼き付けを伴う工程で電極を形成することで、焼き付け工程に、かかる熱処理の機能を持たせることができる。
さらに、前記磁性部品の製造方法において、前記フェライトコアはドラム型コアであることが好ましい。前記製造方法において、フェライトコアは、加水分解溶液に浸漬されるため、加水分解溶液はフェライトコアの表面全体に行き渡る。したがって、前記製造方法は、ドラム型コアのように、吹き付けなどの場合に死角が生じやすい形状に対して特に有効である。
また、本発明の磁性部品は、フェライトコアの表面に被覆層が設けられた磁性部品であって、前記フェライトコアは巻線部と固定部とを有し、前記巻線部と前記固定部において、前記フェライトコアの表面に前記被覆層として金属酸化物層が設けられており、前記金属酸化物層の厚さは、前記巻線部および前記固定部とも0.3μm〜5μmであることを特徴とする。かかる構成のように、絶縁性が要求される巻線部と固定部に薄くかつ均一な金属酸化物層を備えることによって、絶縁性の信頼性を高め、寸法等のばらつき低減にも寄与する。
さらに、前記磁性部品において、前記固定部の金属酸化物層上にさらに電極が配置されていることが好ましい。前記金属酸化物層を備えるフェライトコアを用いることで、絶縁性に優れた電極付フェライトコアが提供できる。
さらに、前記磁性部品において、前記金属酸化物層と前記電極との間にガラス層が設けられ、前記ガラス層は、前記フェライトコアの表面において、前記電極を内側に包含するように、かつ部分的に形成されていることが好ましい。固定部において、金属酸化物層と電極の間にガラス層を設けることで、電極/フェライトコア間の絶縁性をさらに高めることができる。また、ガラス層を電極を含むよう部分的に形成することで、ガラス層を全体に形成する場合に比べて磁性部品の特性劣化を抑制することができる。
さらに、前記磁性部品において、前記フェライトコアは、巻線部と前記巻線部の一端または両端に設けられた鍔部とを有し、前記固定部は前記鍔部に設けられていることが好ましい。
本発明によれば、フェライトコアの表面に被覆層が設けられた磁性部品であって、均一な絶縁性被覆を備えた磁性部品を提供することができる。
以下、本発明に係る磁性部品およびその製造方法の実施形態について具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、フェライトコアの表面に被覆層が設けられた磁性部品の製造方法である。その実施形態の一例を図1に示す。本願発明に係る製造方法では、フェライトコアの表面に金属酸化物層を形成する第1の工程を有する。
ここでまず第1の工程に供するフェライトコアについて説明する。フェライトコアとして、Mn系フェライト・Ni系フェライト等のスピネル型フェライト、Z型・Y型等の六方晶フェライトなど、各種フェライトを用いることができる。このうちMn系フェライトなど、抵抗率の低いフェライトに本願発明を適用することが有効である。Mn系フェライトの抵抗率は通常10Ω・m以下である。したがって、Mn系フェライトの表面に電極を設ける場合、絶縁性確保のために該部分の高抵抗化が必須だからである。
第1の工程に供するフェライトコアの作製方法は特に限定されるものではない。例えば、酸化物原料を混合する工程、混合粉を仮焼する工程、仮焼粉を粉砕する工程、粉砕粉を造粒する工程、造粒粉を成形する工程および成形体を焼成する工程を有する、従来から知られているフェライト焼結体の製造方法を用いればよい。必要に応じて成形体や焼結体に加工が施される。例えば、エッジやバリを取るために、焼成後にはバレル研磨やショットブラストなどの研磨を施しておくことが好ましい。
フェライトコアの形状はこれを特に限定するものではないが、本願発明に係る構成は、巻線部と固定部とを有するフェライトコアに適用する。前述のように、巻線部とは、フェライトコアの部位のうち、その周囲に巻線を配するための部分である。固定部は巻線部以外の部分に位置し、他の部材に接触して磁性部品の配置を固定するための部分である。固定部は、例えば、半田等によって他の部材と接合するための電極を形成する部分、基板に実装する際の実装面となる部分、他の部品と当接して位置決めするための部分などである。したがって、固定部は絶縁性等を確保することが望ましい、または必要な部分である。固定部は巻線部を構成する面とは別の面を備える。固定のしやすさの観点からは、かかる固定部は平面を有することが好ましい。フェライトコアの一例を図4に示す。図4に示すフェライトコア1は、巻線部2と、その両端に設けられた鍔部3とが一体で構成されている、いわゆるドラム型コアである。かかる場合、固定部は円形の主面として鍔部3に設けられる。図4に示す例では、巻線部2は断面が円の円柱状であるが、巻線部の構成はこれに限らず断面が楕円や矩形等の多角形の柱状であってもよい。また、鍔部も円板状に限らず、楕円板状や矩形板状でもよく、その形状は特に限定されるものではない。さらには、巻線部の一端だけに鍔部を有する構成や、CコアやEコアのような鍔部を具備しない構成など、ドラム型コア以外の形状のフェライトコアも適用可能である。
次にフェライトコアの表面に金属酸化物層を形成する第1の工程について説明する。第1の工程では、上述した巻線部と固定部とを有するフェライトコアを金属アルコキシドが含まれる加水分解溶液に浸されている状態とし、金属アルコキシドの加水分解反応によって、フェライトコア表面に金属酸化物層を形成する。フェライトコア表面に形成する金属酸化物層は 電気的絶縁性を確保する観点から、シリカ(SiO2)、アルミナ(Al2O3)、チタニア(TiO2)、ジルコニア(ZrO2)が好適である。これらは単独で用いてもよいし、複合で用いてもよい。
金属アルコキシドは、金属酸化物層の種類に応じて選択すればよい。金属酸化物層としてシリカを用いる場合であれば、金属アルコキシドとして、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン等の各種のケイ素アルコキシドを用いることができる。ケイ素アルコキシドは単独で使用してもよいし、二種類以上を用いてもよい。コスト的にはTEOS(Tetraethyl orthosilicate)とも称され、広く用いられているテトラエトキシシランが優位である。
加水分解溶液は、イソプロピルアルコールやエタノールなどのアルコールに、金属アルコキシド、アルカリ及び水を加えて調整されたものである。アルカリは触媒として機能する。pHを大きくすると反応速度が上がるが、大きすぎると単独の金属酸化物球が生成しやすくなるため、pHは9〜11が好ましい。かかる目的に対してはアルカリの種類はこれを特に限定するものではない。ただし、アンモニアや有機塩基は、加水分解反応後の熱処理等によって揮発、分解するため、磁性部品に影響を残さないという観点からは、アルカリとしてアンモニアまたは有機塩基の中から選ばれる少なくとも1種類以上を用いることが好ましい。また、水は金属アルコキシドを理論上100%加水分解可能な量以上含めばよい。テトラエトキシシランの場合であれば、モル比でテトラエトキシシラン濃度の2倍以上の水が存在すればよい。
フェライトコアを被覆する金属酸化物層の形成は、金属アルコキシドが含まれる加水分解溶液にフェライトコアが浸されている状態で行われる。そのため、凹部など、吹き付けや乾式による方法などでは死角になってしまうような部位にも、金属酸化物源を均一に供給することができる。図5に磁性部品の実施形態として、金属酸化物層を設けたドラム型コアの中央部分での断面模式図を示す。フェライトコア4の表面には均一に金属酸化物層5が形成されている。固定部はドラム型コアであるフェライトコア4の鍔部に設けられている。円板状の鍔部のうち、外側(図面において上側)の円形の主面が固定部であり、二つある鍔のうち、少なくと一方を固定部として用いればよい。本実施形態では、金属アルコキシドの加水分解処理液に浸漬して金属酸化物層が形成されるので、鍔と鍔の間に位置する巻線部にも、固定部と同様に均一な厚さの金属酸化物層を設けることができる。すなわち、フェライトコアへの金属酸化物源の供給に関して、方向性を持たざるを得ない吹き付けや乾式による方法に比べて、均一な被覆をフェライトコア表面全体に形成することが可能である。なお、金属酸化物層の形成は、金属アルコキシドが含まれる加水分解溶液に浸されている状態で行われればよいので、フェライトコアを溶液に浸漬する際に、アルコールに、金属アルコキシド、アルカリ及び水をすべて添加しておいてもよいし、それらの一部はフェライトコアを浸漬した後に添加してもよい。
上述の金属アルコキシドの加水分解処理を用いて、巻線部と固定部を含むフェライトコアの表面に被覆層として厚さが0.3μm〜5μmの金属酸化物層を設ける。上述のように、本願発明に係る製造方法では、金属酸化物層の形成が金属アルコキシドが含まれる加水分解溶液に浸されている状態で行われるため、高い絶縁性等が要求される巻線部と固定部の両方を含むフェライトコアの表面全体に、均一な金属酸化物層を設けることが可能である。例えば巻線部と固定部の金属酸化物層の厚さの差を0.1μm以下にすることが可能である。金属酸化物層の厚さが薄すぎると絶縁性向上の効果が十分ではなく、厚すぎると膜応力によってインダクタンス等の特性に与える影響が大きくなる恐れがあるうえ、金属酸化物層形成に要する時間も長くなる。したがって、金属酸化物層の厚さは0.3μm〜5μmが好ましい。より好ましくは1〜3μmである。金属酸化物層の厚さは巻線部、固定部それぞれの断面を観察し、3点の平均を取って金属酸化物層の厚さとすればよい。なお固定部に電極が形成される場合は、金属酸化物層の厚さは、電極が形成される領域内での断面観察によって評価するとよい。金属酸化物層の厚さは、処理するフェライトコアの量等に応じて、金属アルコキシドの濃度や反応時間等を調整することで制御すればよい。加水分解処理の際は、モーター攪拌機、V型混合機、ボールミル混合機、ディゾルバー攪拌機、超音波洗浄器などを用いて、溶液とフェライトコアとを動的に処理してこれらを十分撹拌することが好ましい。
図1に示す第1の工程では、金属アルコキシドの加水分解処理の後に、さらに熱処理を行っている。熱処理を行うことで、残留水和物を除去したり、金属酸化物層の強度を増大させることができる。熱処理温度は200℃以上とすればよいが、金属酸化物層の強度の増大の観点からは、熱処理温度は500℃以上が好ましい。一方、例えば、ケイ素アルコキシドを用い、金属酸化物層としてシリカ被覆を形成した場合は、加水分解処理で得られるシリカ被覆は非晶質である。熱処理温度が高くなりすぎると、シリカ被覆が結晶化し、その際に被覆が損傷する恐れがあるため、熱処理温度は800℃以下が好ましい。さらに、上述のように金属酸化物層の厚さを0.3μm〜5μmとしているので、熱処理によって被覆の強度を増大させる場合にも、それに伴う応力の影響が抑制される。また、図1に示す第1の工程におけるかかる高温での熱処理は必須ではない。後述する電極形成やガラス層形成の際の加熱で前記熱処理を兼ねることもできる。すなわち、加水分解処理以降に500℃以上に加熱する熱履歴を経ていればよい。なお、金属酸化物層を厚めに形成する場合、第1の工程を複数回繰り返すこともできる。
上述の金属酸化物層を形成することで、抵抗率が増加し、金属酸化物層を形成していない状態に対して102倍以上、さらには104倍以上にすることも可能である。かかる金属酸化物層を形成することで低抵抗のフェライトコアに対しても十分な絶縁性が確保される。また、以下に説明する電極の形成も可能となる。
次に、第1の工程を経たフェライトコアの固定部にさらに電極を設ける第2の工程を有する他の実施形態について説明する。図2に例示した第2の工程では、金属酸化物層を形成したフェライトコアに電極ペーストを印刷し、焼き付けを行い、さらにその上にめっき膜を形成して電極を構成している。電極ペーストにはAgやAg−Pdなどの導体ペーストを用いればよい。また、図2に示す構成では電極パターンの形成に印刷を用いているが、その方法はこれに限るものではない。例えば、転写やディッピングを用いることもできる。電極ペーストを使用する方法に限らず、蒸着等他の方法によって電極を形成することもできるが、金属酸化物層の上に導体ペーストを配置し、その後焼き付ける工程を有する方法は前述の熱処理の効果も発揮しうる点でより好ましいと言える。焼き付け温度は電極ペーストの性状に応じて選択すればよいが、金属酸化物層に対する熱処理を兼ねる場合には、焼き付け温度も熱処理の好適範囲である500〜800℃の範囲とすることが好ましい。Agペーストの場合には、例えば700〜800℃程度で行えばよい。図2に示す第2の工程では、めっきの工程を適用して、焼き付けられたAg等の電極の上にさらにNi、Sn、Auなどの金属膜を形成しているが、場合に応じてこれは省略することもできる。
図6に磁性部品の他の実施形態として、金属酸化物層を設けたドラム型コアの中央部分での断面模式図を示す。電極に係る部分以外の構成は図5に示す実施形態と同様であるので説明を省略する。円板状の鍔部のうち、外側(図面において上側)の円形の主面が固定部であり、該固定部の金属酸化物層5上にさらに電極6が配置されている。一対の電極6は前記主面上、所定の距離離間して配置されており、その一端は側面まで連続して延設されている。電極6のうち側面に形成された部分は、例えば巻線部の周りを巻回する導線の接続のために用いられる。
次に図3を用いて本発明に係る磁性部品の製造方法の他の実施形態を説明する。図3に示す実施形態は、金属酸化物層と電極との間にガラス層を設ける第3の工程を、第1の工程と第2の工程の間に有する点で図2に示す実施形態と異なる。かかる第3の工程では第1の工程で形成された金属酸化物層の上に、ガラスペーストを印刷し、その後加熱して焼き付けることでガラス層を形成している。金属酸化物層の上にさらに絶縁層としてガラス層を設けることで絶縁性をさらに向上させることができる。ガラス層はフェライトコアの表面において、電極を内側に包含するように、かつ部分的に形成する。電極の絶縁性を向上させればよいので、フェライトコアの表面において、電極を内側に包含するようにすれば十分であり、それ以外の部分は形成する必要はない。すなわち、ガラス層は上記のように部分的に形成すればよいので、フェライトコア全体にガラス層を形成する場合に比べて、ガラス層形成による応力の影響を低減することが可能である。一般に、ガラス層は、特許文献2のようにガラススラリーを用いたり、粘性の高い水ガラスを用いて形成する。そのためガラス層を使用する場合は、その厚さが大きくなりやすく、応力による特性劣化の影響が出やすいため、上記のように部分的に形成することが有効である。その具体例は、例えば、巻線部にはガラス層を形成しない形態、電極が形成される面のみにガラス層を形成する形態、一方向からのガラス印刷または塗布等でガラス層が形成される形態などである。なお、金属酸化物層と電極との間に設ける絶縁層は、絶縁性等、必要とされる機能を有するものであればガラス以外のものを用いることもできるが、絶縁性やコストの観点からはガラスが好ましい。
ガラスペーストの焼き付けによって絶縁層としてガラス層を形成する場合、焼き付けの上限温度は金属酸化物層との関係を考慮して800℃以下とすることが好ましい。また、焼き付けが金属酸化物層の強度向上も兼ねる場合には焼き付け温度は500℃以上にすることが好ましい。また、ガラス層を形成する本実施形態の場合も、第2の工程において、ガラス層の上に導体ペーストを配置し、その後焼き付ける工程によって、図2に示す実施形態と同様に、金属酸化物層の強度向上のための熱処理を兼ねることができる。また、ガラス層の上に配置する電極を焼き付けで形成する場合、ガラス層への影響を抑えるために、導体ペーストの焼き付け温度はガラス層の焼き付け温度以下とすることが好ましい。なお、ガラス層を形成する方法も、ガラスペーストを印刷し、焼き付ける方法に限定されるものではない。
図7に、固定部の金属酸化物層と電極との間にガラス層が設けられた磁性部品の具体例を示す。図6に示す実施形態と同様の構成は説明を省略する。図7はドラム型コアに金属酸化物層、ガラス層および電極を設けた磁性部品の中央部分での断面模式図である。フェライトコア4の表面には均一に金属酸化物層5が形成されている。固定部はドラム型コアであるフェライトコア4の鍔部に設けられている。矩形板状の鍔部のうち、外側(図面において上側)の矩形の主面が固定部である。かかる固定部には主面全体に渡ってガラス層7が形成されている。かかる主面は平面であり、かつガラス層7が形成されているのは一つの面だけであるので、ガラス層の形成が容易である。例えば、印刷法によって、均一な厚さのガラス層が容易に得られる。その一方で、ガラス層7はフェライトコアの表面において矩形の主面のみ、すなわち部分的に形成されている。このように、ガラス層をフェライトコアの表面において、電極を内側に包含するように、かつ部分的に形成することで、ガラス層形成による応力の影響も極力抑えられている。一対の電極8は前記主面上、所定の距離離間して配置されている。各電極ごとに分離してガラス層を形成してもよいが、図7に示す実施形態のように一つのガラス層の上に各電極が配置されるようにして、一つのガラス層を複数の電極で共用するようにすれば、工程の簡略化が図られる。なお、図7に示す実施形態では、巻線部の周りを巻回する導線の接続を行うために、側面部の電極の代わりに、鍔部の主面の固定部に直線状の溝(図示せず)が設けられている。
上述のように本願発明は、ドラム型コアなどのように、溝、凹部、穴などを有し、特定の方向から成膜する場合には死角が生じやすい形状のフェライトコアに用いると有効である。ドラム型コアの場合でも、高さ方向(巻線部の軸方向)の寸法よりも、横方向(巻線部の軸方向に垂直な方向)の最大寸法(鍔の主面の最大寸法)の方が大きい、扁平なドラム型コアに特に好適である。さらに、吹き付けでは均一な成膜が困難である、鍔と鍔との間隔が1.0mm以下のドラム型コアに用いると特に有効である。
本願発明に係る磁性部品は、電源装置、通信装置等に用いられる各種インダクタ、チョークコイル、フィルタ、トランス、アンテナ等に適用できる。特に低背の表面実装型の磁性部品に好適である。なお、本願発明の第1の工程の構成のうち、金属アルコキシドが含まれる加水分解溶液にフェライトコアが浸されている状態にすることで、前記フェライトコアの表面に金属酸化物層を設ける構成は、フェライトコアへの被覆の形成方法として広く適用できるものである。すなわち、フェライトコアの表面に被覆層が設けられた磁性部品の製造方法であって、金属アルコキシドが含まれる加水分解溶液にフェライトコアが浸されている状態にすることで、前記フェライトコアの表面に金属酸化物層を設ける構成も、従来の絶縁被覆に係る構成に比べて優れた作用効果を発揮する。フェライトコアの表面に均一な金属酸化物層を形成することができるため、巻線部の金属酸化物層の厚さとそれ以外の部分の金属酸化物層の厚さとの差を抑えられる点は上述の通りである。
従来から知られる粉末冶金的手法により、39mol%のMnO、7mol%のZnO、残部Fe2O3を主成分を有する、ドラム型形状のMn−Znフェライトのフェライトコアを得た。フェライトコアの寸法は 鍔部外径3.3mm、鍔部厚み0.2mm、巻線部外径1.3mm、巻線部高さ0.3mmである。また、エタノール200重量部、テトラエトキシシラン50重量部、水50重量部、アンモニア水9重量部の割合で調整した加水分解溶液を作製した。前記フェライトコアと加水分解溶液を円筒容器内に入れ、フェライトコアが加水分解溶液に浸漬された状態で、円筒容器を回転させながら、加水分解処理を行った。所定の時間処理を行った後、加水分解溶液を分離し、フェライトコアを乾燥し、金属酸化物層としてシリカ被覆が形成されたフェライトコアを得た。なお、処理時間を2〜15時間の間で変えることで、シリカ被覆の被覆厚の異なるフェライトコアを得た。得られたフェライトコアを700℃で1時間、窒素流気中で熱処理した。さらに、二つの鍔部の外側の主面にそれぞれAgペーストを印刷し、700℃で焼き付けを行った。シリカ被覆の厚さは電子顕微鏡によるその断面観察から求めた。また、二つの鍔部の電極同士の間で抵抗を測定し、シリカ被覆形成による効果を評価した。電気抵抗値の被覆厚依存性を表1に示す。
表1に示すように金属酸化物層としてシリカ被覆を設けることで電気抵抗が上昇し、0.3μm以上の厚さで電気抵抗は被覆無の場合に比べて4倍以上となった。さらに、0.5μm以上の厚さでは電気抵抗は被覆無の場合に比べて102倍以上と、特に顕著な改善効果が見られた。さらにシリカ被覆を1.0μm以上の厚さにすることで、被覆無の場合に比べて104倍以上に電気抵抗を増加させることができることがわかった。なお、電極を形成した固定部と巻線部とでシリカ被覆の厚さに0.1μmを超える有意差はなかった。また、シリカ被覆無のものと、シリカ被覆1.0μmのものに、それぞれ0.07mmの導線を20ターン巻回し、100kHzでインダクタンスを評価した。シリカ被覆無のもののインダクタンスは10.65nH、シリカ被覆1.0μmのもののインダクタンスは10.58nHであり、インダクタンスの変化率は1%未満と非常に小さいものとなった。すなわち、本実施例の構成によって、インダクタンスへの影響を抑えつつ、均一で、かつ絶縁性に優れた被覆を備えた磁性部品が得られていることが明らかとなった。
1、4:フェライトコア
2:巻線部
3:鍔部
5:金属酸化物層
6、8:電極
7:ガラス層
2:巻線部
3:鍔部
5:金属酸化物層
6、8:電極
7:ガラス層
Claims (9)
- フェライトコアの表面に被覆層が設けられた磁性部品の製造方法であって、
巻線部と固定部とを有するフェライトコアが、金属アルコキシドが含まれる加水分解溶液に浸されている状態にすることで、前記巻線部と前記固定部を含む前記フェライトコアの表面に、前記被覆層として厚さが0.3μm〜5μmの金属酸化物層を設ける第1の工程を有することを特徴とする磁性部品の製造方法。 - 前記第1の工程を経たフェライトコアの前記固定部に、さらに電極を設ける第2の工程を有することを特徴とする請求項1に記載の磁性部品の製造方法。
- 前記第1の工程と前記第2の工程の間に、前記金属酸化物層と前記電極との間にガラス層を設ける第3の工程を有し、
前記ガラス層を、前記フェライトコアの表面において、前記電極を内側に包含するように、かつ部分的に形成することを特徴とする請求項2に記載の磁性部品の製造方法。 - 前記第2の工程は、前記金属酸化物層または前記ガラス層の上に導体ペーストを配置し、その後焼き付ける工程を有することを特徴とする請求項2または3に記載の磁性部品の製造方法。
- 前記フェライトコアがドラム型コアであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の磁性部品の製造方法。
- フェライトコアの表面に被覆層が設けられた磁性部品であって、
前記フェライトコアは巻線部と固定部とを有し、
前記巻線部と前記固定部において、前記フェライトコアの表面に前記被覆層として金属酸化物層が設けられており、前記金属酸化物層の厚さは、前記巻線部および前記固定部とも0.3μm〜5μmであることを特徴とする磁性部品。 - 前記固定部の金属酸化物層上にさらに電極が配置されていることを特徴とする請求項6に記載の磁性部品。
- 前記金属酸化物層と前記電極との間にガラス層が設けられ、前記ガラス層は、前記フェライトコアの表面において、前記電極を内側に包含するように、かつ部分的に形成されていることを特徴とする請求項7に記載の磁性部品。
- 前記フェライトコアは、巻線部と前記巻線部の一端または両端に設けられた鍔部とを有し、前記固定部は前記鍔部に設けられていることを特徴とする請求項6〜8のいずれか一項に記載の磁性部品。
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