JP2013116987A - ポリエステル及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】溶融流動性と耐熱性を併せ持つポリエステルを提供する。
【解決手段】ポリエステルセグメントとポリアルキレングリコールセグメントが共有結合を介して結合したポリエステルであって、ポリアルキレングリコールセグメントの割合が0.5〜50質量%であり、ポリエステルセグメントを構成するジオール成分中のシクロヘキサンジメタノールの割合が70モル%以上であり、重量平均分子量が40000g/mol以上であり、融点が280℃以上であるポリエステル;ジカルボン酸成分と、シクロヘキサンジメタノールを70モル%以上含有するジオール成分と、ポリアルキレングリコールとをエステル交換触媒の存在下、溶融状態で減圧下に反応させる工程を有するポリエステルの製造方法;そのポリエステルを含んでなる組成物;並びに、その組成物を成形してなる成形体。
【選択図】なし
【解決手段】ポリエステルセグメントとポリアルキレングリコールセグメントが共有結合を介して結合したポリエステルであって、ポリアルキレングリコールセグメントの割合が0.5〜50質量%であり、ポリエステルセグメントを構成するジオール成分中のシクロヘキサンジメタノールの割合が70モル%以上であり、重量平均分子量が40000g/mol以上であり、融点が280℃以上であるポリエステル;ジカルボン酸成分と、シクロヘキサンジメタノールを70モル%以上含有するジオール成分と、ポリアルキレングリコールとをエステル交換触媒の存在下、溶融状態で減圧下に反応させる工程を有するポリエステルの製造方法;そのポリエステルを含んでなる組成物;並びに、その組成物を成形してなる成形体。
【選択図】なし
Description
本発明は、耐熱性及び射出成型時の薄肉成型性に優れたポリエステル及びその製造方法に関する。
ポリエステルは汎用性に優れた樹脂であり、幅広い用途で使用されている。そして、近年、半導体封止材料等の耐熱性が要求される用途においても、ポリ(シクロヘキサンジメチレン)テレフタレート(以下「PCT」と略記する)等の耐熱性ポリエステルが使用され始めている(特許文献1)。ただし、PCTを使用した半導体封止材料は、射出成型時の薄肉成型性が不十分である。
一方、ポリエステルにポリアルキレングリコールを混合又は結合する技術に関して、これまでにも多くの報告がある。例えば特許文献2〜5には帯電防止用途のポリエステルが開示されており、ここでは帯電防止性能を向上させる為にポリアルキレンエーテル化合物を導入している。しかし、ポリアルキレンエーテル化合物の量が多いので、耐熱性の高いポリマーは得られない。
特許文献6には、結晶性が改良されたポリエステル組成物が開示されているが、シクロヘキサンジメタノールの記載は無い。特許文献7には、エラストマー性のポリエステルが開示されているが、1,4−ブタンジオールを70%以上含むポリエステルなので、耐熱性が低い。特許文献8には、帯電防止性熱可塑樹脂組成物を得る為の特殊なポリエーテルポリエステルが開示されているが、耐熱性の高いポリエステルは得られていない。
シクロヘキサンジメタノールを含有するポリエステルの結晶化度を低下させる為に、グリコール成分を一部別の構造に変更して、ランダム共重合体としてポリエステルを製造する試みも行われている(特許文献9)。しかし、ランダム共重合はポリエステル主鎖の配列を乱すので、結晶性が著しく低下し、耐熱性が極端に低下する。
特許文献10には、可塑剤及び流れ助剤としてポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)にポリアルキレンエーテルを配合するという技術が開示され、エンドキャップされたポリエチレングリコールをポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレン−テレフタレート)に配合した具体例が記載されている。しかし、本発明者らがこの配合で追試したところ、エンドキャップされたポリエチレングリコールを使用しても、混練中に分子量低下が生じて、機械物性が低いポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)しか得られないという事実が判明した。
本発明は、以上説明した従来技術の課題を解決すべくなされたものである。すなわち、本発明の目的は、耐熱性及び射出成型時の薄肉成型性に優れたポリエステル及びその製造方法を提供することにある。
本発明者らは上記課題を解決する為に、種々のポリエステル、特に耐熱性に優れたポリエステルに関して鋭意検討を行った結果、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、ポリエステルセグメントとポリアルキレングリコールセグメントが共有結合を介して結合したポリエステルであって、前記ポリエステル全体を100質量%とした場合、前記ポリアルキレングリコールセグメントの割合が0.5〜50質量%であり、前記ポリエステルセグメントを構成するジオール成分の総量を100モル%とした場合、ジオール成分中のシクロヘキサンジメタノールの割合が70モル%以上であり、以下の(A)及び(B)を満たすポリエステルである。
(A)ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により標準ポリスチレン基準で測定した重量平均分子量が40000g/mol以上。
(B)示差熱量計(DSC)による昇温速度10℃/分で測定した融点(Tm)が280℃以上。
(A)ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により標準ポリスチレン基準で測定した重量平均分子量が40000g/mol以上。
(B)示差熱量計(DSC)による昇温速度10℃/分で測定した融点(Tm)が280℃以上。
また本発明は、上記のポリエステルを製造する為の方法であって、ジカルボン酸成分と、シクロヘキサンジメタノールを70モル%以上含有するジオール成分と、ポリアルキレングリコールとをエステル交換触媒の存在下、溶融状態で減圧下に反応させる工程を有することを特徴とするポリエステルの製造方法である。
また本発明は、上記のポリエステルを含んでなる組成物、及び、この組成物を成形してなる成形体である。
本発明により、耐熱性が高く、さらに溶融流動性(特に射出成型時の薄肉成型性)や機械物性(曲げ強度等)に優れたポリエステルを提供できる。本発明のポリエステルは、例えば成形体として耐熱性が要求される種々の用途に好適に使用できる。
本発明のポリエステルは、ポリエステルセグメントとポリアルキレングリコールセグメントが共有結合を介して結合してなるポリエステルである。ここで「共有結合」とは、主としてエステル結合を意味するが、エーテル結合の意味も包含する。この両セグメントが共有結合を介して結合してなるポリエステルは、例えば、ポリアルキレングリコールの存在下にジカルボン酸成分とジオール成分を所望条件下で反応させることにより得られる。この場合、ジカルボン酸成分とジオール成分が反応することによりポリエステルセグメントが生成し、またポリアルキレングリコールの末端ヒドロキシル基が反応することにより両セグメントが分子鎖として共有結合を介して結合することになる。
ポリエステルセグメントは、実質的にジカルボン酸成分とジオール成分から構成される。このジカルボン酸成分としては、ジカルボン酸だけでなく、ジカルボン酸ジエステル等のエステル形成誘導体も使用できる。ジカルボン酸成分の種類を適宜選定することにより、本発明のポリエステルの示差熱量計(DSC)による昇温速度10℃/分で測定した融点(Tm)を調整できる。ジカルボン酸成分は、脂肪族ジカルボン酸成分、芳香族ジカルボン酸成分のどちらでも良い。
芳香族ジカルボン酸成分の具体例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、4,4'−ビフェニルジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4'−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4'−ジフェニルケトンジカルボン酸、4,4'−トランス−スチルベンジカルボン酸、エチレングリコールビス(4−カルボキシフェニル)エーテル、4,4'−ジフェニルスルホンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;及びこれら芳香族ジカルボン酸の低級アルキルエステルが挙げられる。この芳香族ジカルボン酸の低級アルキルエステルにおける低級アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基が挙げられる。特に、メチル基が好ましい。
脂肪族ジカルボン酸成分の具体例としては、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、デカヒドロナフタレンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、コハク酸、グルタル酸、アジミン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸等の直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族ジカルボン酸;及びこれら脂肪族ジカルボン酸の低級アルキルエステルが挙げられる。この脂肪族ジカルボン酸の低級アルキルエステルにおける低級アルキル基の具体例は、前記と同様である。
ジカルボン酸成分としては、芳香族ジカルボン酸成分が好ましく、テレフタル酸、4,4'−ビフェニルジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸及びこれらの低級アルキルエステルがより好ましく、テレフタル酸及びテレフタル酸の低級アルキルエステルが特に好ましい。
ジカルボン酸成分は、所望により2種以上併用してもよい。また、ジカルボン酸成分の総量を100モル%とした場合、ジカルボン酸成分中のテレフタル酸、4,4'−ビフェニルジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸及びこれらの低級アルキルエステルから成る群より選ばれる一種以上のジカルボン酸成分の割合は90モル%以上であることが好ましく、95モル%以上であることがより好ましい。さらに、テレフタル酸又はその低級アルキルエステルの割合が90モル%以上であることが特に好ましい。
ポリエステルセグメントを構成するジオール成分としては、少なくともシクロヘキサンジメタノールを使用する。ジオール成分の総量100モル%中、シクロヘキサンジメタノールの割合は70モル%以上である。さらに、その割合は80モル%以上が好ましく、90モル%以上がより好ましい。シクロヘキサンジメタノールとしては、特に、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノールが好ましく、1,4−シクロヘキサンジメタノールがより好ましい。1,4−シクロヘキサンジメタノールとしては、入手の容易さの点から、トランス体とシス体の混合物が通常使用される。トランス体とシス体の比率は、例えば100:0〜60:40の範囲から所望する耐熱性に応じて選べば良い。その比率は90:10〜60:40が好ましく、80:20〜60:40がより好ましく、80:20〜70:30が特に好ましい。
ポリエステルセグメントを構成するジオール成分として、シクロヘキサンジメタノール以外のジオール成分を併用しても良い。その具体例としては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジオール、3−メチルペンタン−1,5−ジオール、2,4−ジエチルペンタン−1,5−ジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等の脂肪族ジオール、2,2−ビス〔4'−(2”−ヒドロキシエトキシ)フェニル〕プロパン、4,4'−ビス(2”−ヒドロキシエトキシ)フェニルスルフィド、4,4'−ビス(2”−ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホン、9,9−ビス〔4'−(2”−ヒドロキシエトキシ)フェニル〕フルオレン、1,4−ビス(2'−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン等の芳香族ジヒドロキシ化合物のエチレンオキサイド付加物、トリシクロ[5.2.1.0(2,6)]デカンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、2,2−ビス(4'―ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン(水添ビスフェノールA)等の脂環式ジオールが挙げられる。特に、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等の脂肪族ジオールが好ましい。
ポリアルキレングリコールセグメントを構成するポリアルキレングリコールとしては、下記一般式(1)で表されるポリエチレングリコール及び下記一般式(2)で表されるポリテトラメチレングリコールが好ましい。
(式中、nは重合度を表す)
(式中、n'は重合度を表す)
ポリアルキレングリコールの分子量は200〜20000g/molが好ましく、400〜10000g/molがより好ましく、1000〜6000g/molが特に好ましい。これらの範囲の上限値は、末端ヒドロキシ基の濃度が低くなることによる重合時間の長時間化を回避する点で意義が有る。また下限値は、ポリエステルの融点を高くする点で意義が有る。
ポリアルキレングリコールの分子量は200〜20000g/molが好ましく、400〜10000g/molがより好ましく、1000〜6000g/molが特に好ましい。これらの範囲の上限値は、末端ヒドロキシ基の濃度が低くなることによる重合時間の長時間化を回避する点で意義が有る。また下限値は、ポリエステルの融点を高くする点で意義が有る。
ポリアルキレングリコールは、一種を単独で用いても良いし、二種以上を併用しても良い。
本発明のポリエステル全体を100質量%とした場合、ポリアルキレングリコールセグメントの割合は0.5〜50質量%である。そしてこの範囲内において、種々の条件、例えばポリアルキレングリコールの分子量に応じて、より具体的な割合を決定すれば良い。例えばポリアルキレングリコールの分子量が200〜20000g/molである場合は、ポリアルキレングリコールセグメントの割合は0.5〜50質量%が好ましく、5〜30質量%がより好ましく、5〜20質量%が特に好ましい。これら範囲の下限値は、溶融粘度を低くする点で意義がある。また上限値は、耐熱性向上ので意義がある。
本発明のポリエステルは、上述したジカルボン酸成分及びジオール成分以外の共重合成分を、本発明の目的を損なわない範囲内で含んでいても良い。共重合成分の具体例としては、グリコール酸、4−ヒドロキシ安息香酸、4−(2'−ヒドロキシエトキシ)安息香酸等のヒドロキシカルボン酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、ナフタレンテトラカルボン酸、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール等の三官能以上の多官能成分が挙げられる。
本発明のポリエステルのゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により標準ポリスチレン基準で測定した重量平均分子量は、40000g/mol以上、好ましくは42000g/mol以上、より好ましくは45000g/mol以上、特に好ましくは47000g/mol以上である。これら範囲は、機械強度向上の点で意義が有る。より具体的な測定方法は、後述する実施例に記載の通りである。
本発明のポリエステルの示差熱量計(DSC)による昇温速度10℃/分で測定した融点(Tm)は、280℃以上、好ましくは285℃以上、より好ましくは287℃以上、特に好ましくは290℃以上である。これら範囲は、耐熱性の点で意義が有る。より具体的な測定方法は、後述する実施例に記載の通りである。
本発明のポリエステルは、例えば、ジカルボン酸成分と、シクロヘキサンジメタノールを70モル%以上含有するジオール成分と、ポリアルキレングリコールとを触媒存在下又は非存在下でエステル化反応し、さらに触媒の存在下に重縮合反応することにより製造できる。特に、ジカルボン酸成分と、シクロヘキサンジメタノールを70モル%以上含有するジオール成分と、ポリアルキレングリコールとをエステル交換触媒の存在下、溶融状態で減圧下に反応させる工程を行うことが好ましい。
使用するジカルボン酸成分のカルボキシル基のモル数と、ジオール成分及びポリアルキレングリコールのヒドロキシ基のモル数の比率は、1.00:1.01〜1.00:2.00が好ましく、1.00:1.05〜1.00:1.50がより好ましく、1.00:1.10〜1.00:1.30が特に好ましい。
より具体的には、ジカルボン酸成分とジオール成分とポリアルキレングリコールとを触媒の存在下に150〜260℃に加熱してエステル交換反応を行い、エステル交換反応により生成したメタノールを留出しながらメタノールの発生が完了するまで加熱を継続し、その後280℃以上に昇温し、反応装置内を減圧にして過剰のジオール成分を留去しながら重縮合反応を行う方法が好ましい。
温度条件や圧力条件としては、公知の条件を適用できる。また、公知のエステル交換触媒や重縮合触媒を使用できる。エステル交換触媒や重縮合触媒の具体例としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属アルコキシド、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属アルコキシド、亜鉛化合物、マンガン化合物、コバルト化合物、アンチモン化合物、ゲルマニウム化合物、チタン化合物、錫化合物が挙げられる。特に、アセチルトリ-iso-プロピルチタネート、テトラブチルチタネート、テトラ−iso−プロピルチタネート等のチタン化合物が好ましい。触媒の添加量は製造されるポリエステルに対して金属換算で1〜300ppmが好ましく、5〜200ppmがより好ましく、10〜100ppmが特に好ましい。
重縮合反応を行う際には、所望によりリン化合物を添加してもよい。リン化合物の具体例としては、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリ−iso−プロピル、リン酸−n−プロピル、リン酸トリフェニルが挙げられる。リン化合物の添加量は、製造されるポリエステルの総量に対してリン換算で、1〜600ppmが好ましく、5〜400ppmがより好ましく、10〜200ppmが特に好ましい。
以上のようにして得た本発明のポリエステルに対して、必要に応じて他の成分を添加又は混合することにより、本発明の組成物が得られる。
例えば、本発明のポリエステルに対して安定剤を添加する場合、その添加量はコスト及び樹脂の外観の点から、ポリエステル100質量部当たり0.001〜5質量部が好ましく、0.001〜2.5質量部がより好ましく、0.001〜1質量部が特に好ましい。
安定剤としては、例えば、フェノール系化合物(ヒンダードフェノール系化合物)、チオエーテル系化合物、ビタミン系化合物、トリアゾール系化合物、多価アミン系化合物、ヒドラジン誘導体系化合物、リン系化合物を使用できる。これらは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
フェノール系化合物の具体例としては、n−オクタデシル−3−(3',5'−ジ−tert−ブチル−4'−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−オクタデシル−3−(3'−メチル−5'−tert−ブチル−4'−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−テトラデシル−3−(3',5'−ジ−tert−ブチル−4'−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート〕、1,4−ブタンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート〕、2,2'−メチレンビス(4−メチル−tert−ブチルフェノール)、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート〕、テトラキス〔メチレン−3−(3',5'−ジ−tert−ブチル−4'−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、3,9−ビス{2−〔3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン、N,N'−ビス−3−(3',5'−ジ−tert−ブチル−4'−ヒドロキシフェニル)プロピオニルヘキサメチレンジアミン、N,N'−テトラメチレン−ビス−3−(3'−メチル−5'−tert−ブチル−4'−ヒドロキシフェノール)プロピオニルジアミン、N,N'−ビス−〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プロピオニル〕ヒドラジン、N−サリチロイル−N'−サリチリデンヒドラジン、3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾール、N,N'−ビス{2−〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕エチル}オキシアミド、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、N,N'−ヘキサメチレンビス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマイドが挙げられる。中でも、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート〕、テトラキス〔メチレン−3−(3',5'−ジ−tert−ブチル−4'−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート〕、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、N,N'−ヘキサメチレンビス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマイドが好ましい。
フェノール系化合物の市販品の商品名としては、例えば、ADEKA製のアデカスタブAO−20、AO−30、AO−40、AO−50、AO−60、AO−70、AO−80、AO−330、チバスペシャリティケミカル製のイルガノックス245、259、565、1010、1035、1076、1098、1222、1330、1425、1520、3114、5057、住友化学工業製のスミライザーBHT−R、MDP−S、BBM−S、WX−R、NW、BP−76、BP−101、GA−80、GM、GS、サイアナミド製のサイアノックスCY−1790が挙げられる。
チオエーテル系化合物の具体例としては、ジラウリルチオジプロピオネート、ジトリデシルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ドデシルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−オクタデシルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ミリスチルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ステアリルチオプロピオネート)が挙げられる。
チオエーテル系化合物の市販品の商品名としては、例えば、ADEKA製のアデカスタブA0−23、AO−412S、AO−503A、チバスペシャリティケミカル製のイルガノックスPS802、住友化学製のスミライザーTPL−R、TPM、TPS、TP−D、エーピーアイコーポレーション製のDSTP、DLTP、DLTOIB、DMTP、シプロ化成製のシーノックス412S、サイアミド製のサイアノックス1212が挙げられる。
ビタミン系化合物の具体例としては、酢酸d−α−トコフェロール、コハク酸d−α−トコフェロール、d−α−トコフェロール、d−β−トコフェロール、d−γ−トコフェロール、d−δ−トコフェロール、d−α−トコトリエノール、d−β−トコフェトリエノール、d−γ−トコフェトリエノール、d−δ−トコフェトリエノール等の天然品、dl−α−トコフェロール、酢酸dl−α−トコフェロール、コハク酸dl−α−トコフェロールカルシウム、ニコチン酸dl−α−トコフェロール等の合成品が挙げられる。ビタミン系化合物の市販品の商品名としては、例えば、エイザイ製のトコフェロール、チバスペシャリティケミカル製のイルガノックス"E201が挙げられる。
トリアゾール系化合物の具体例としては、ベンゾトリアゾール、3−(N−サリシロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾールが挙げられる。
多価アミン系化合物の具体例としては、3,9−ビス〔2−(3,5−ジアミノ−2,4,6−トリアザフェニル)エチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、エチレンジアミン−テトラアセチックアシッド、エチレンジアミン−テトラアセチックアシッドのアルカリ金属塩(Li,Na,K)塩、N,N'−ジサリチリデン−エチレンジアミン、N,N'−ジサリチリデン−1,2−プロピレンジアミン、N,N”−ジサリチリデン−N'−メチル−ジプロピレントリアミン、3−サリチロイルアミノ−1,2,4−トリアゾールが挙げられる。
ヒドラジン誘導体系化合物の具体例としては、デカメチレンジカルボキシリックアシッド−ビス(N'−サリチロイルヒドラジド)、イソフタル酸ビス(2−フェノキシプロピオニルヒドラジド)、N−ホルミル−N'−サリチロイルヒドラジン、2,2−オキザミドビス−〔エチル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ハイドロオキシフェニル)プロピオネート〕、オギザリル−ビス−ベンジリデンヒドラジド、ニッケル−ビス(1−フェニル−3−メチル−4−デカノイル−5−ピラゾレート)、2−エトキシ−2'−エチルオキサニリド、5−tert−ブチル−2−エトキシ−2'−エチルオキサニリド、N,N−ジエチル−N',N'−ジフェニルオキサミド、N,N'−ジエチル−N,N'−ジフェニルオキサミド、オキサリックアシッド−ビス(ベンジリデンヒドラジド)、チオジプロピオニックアシッド−ビス(ベンジリデンヒドラジド)、ビス(サリシロイルヒドラジン)、N−サリシリデン−N'−サリシロイルヒドラゾン、N,N'−ビス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジン、N,N'−ビス{2−〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕エチル}オキサミドが挙げられる。
リン系化合物としては、例えば、ホスファイト系化合物、ホスフェート系化合物が挙げられる。
ホスファイト系化合物の具体例としては、テトラキス〔2−tert−ブチル−4−チオ(2'−メチル−4'−ヒドロキシ−5'−tert−ブチルフェニル)−5−メチルフェニル〕−1,6−ヘキサメチレン−ビス(N−ヒドロキシエチル−N−メチルセミカルバジド)ジホスファイト、テトラキス〔2−tert−ブチル−4−チオ(2'−メチル−4'−ヒドロキシ−5'−tert−ブチルフェニル)−5−メチルフェニル〕−1,10−デカメチレンジカルボキシリックアシッドジヒドロキシエチルカルボニルヒドラジドジホスファイト、テトラキス〔2−tert−ブチル−4−チオ(2'−メチル−4'−ヒドロキシ−5'−tert−ブチルフェニル)−5−メチルフェニル〕−1,10−デカメチレンジカルボキシリックアシッドジサリチロイルヒドラジドジホスファイト、テトラキス〔2−tert−ブチル−4−チオ(2'−メチル−4'−ヒドロキシ−5'−tert−ブチルフェニル)−5−メチルフェニル〕−ジ(ヒドロキシエチルカルボニル)ヒドラジドジホスァイト、テトラキス〔2−tert−ブチル−4−チオ(2'−メチル−4'−ヒドロキシ−5'−tert−ブチルフェニル)−5−メチルフェニル〕−N,N'−ビス(ヒドロキシエチル)オキサミドジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、サイクリックネオペンタテトライルビス(2,6―tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイトが挙げられる。
特に、少なくとも1つのP−O結合が芳香族基に結合しているホスファイト系化合物が好ましい。その具体例としては、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4'−ビフェニレンホスフォナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、4,4'−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェニルジトリデシル)ホスファイト、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ジトリデシルホスファイト−5−tert−ブチル−フェニル)ブタン、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、4,4'−イソプロピリデンビス(フェニル−ジアルキルホスファイト)が挙げられる。中でも、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4'−ビフェニレンホスホナイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイトが好ましい。
ホスファイト系化合物の市販品の商品名としては、例えば、ADEKA製のアデカスタブC、PEP−4C、PEP−8、PEP−11C、PEP−24G、PEP−36、HP−10、2112、260、522A、329A、1178、1500、C、135A、3010、TPP、チバスペシャリティケミカル製のイルガフォス168、住友化学製のスミライザーP−16、クラリアント製のサンドスタブPEPQ、GE製のウエストン618、619G、624が挙げられる。
ホスフェート系化合物の具体例としては、モノステアリルアシッドホスフェート、ジステアリルアシッドホスフェート、メチルアシッドホスフェート、イソプロピルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、オクチルアシッドホスフェート、イソデシルアシッドホスフェート、ジオクタデシルホスフェートが挙げられる。中でも、モノステアリルアシッドホスフェート、ジステアリルアシッドホスフェートが好ましい。ホスフェート系化合物の市販品の商品名としては、例えば、チバスペシャリティケミカル製のイルガノックスMD1024、イーストマン・コダック製のインヒビターOABH、ADEKA製のアデカスタブCDA−1、CDA−6、AX−71が挙げられる。
以上の安定剤のうち、特に、リン系化合物を少なくとも1種含む安定剤が好ましく、ホスフェート系化合物やホスファイト系化合物を含む安定剤がより好ましい。特に好ましいリン系化合物の市販品としては、ADEKA製のアデカスタブAX−71(ジオクタデシルホスフェート)、PEP−8(ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト)、PEP−36(サイクリックネオペンタテトライルビス(2,6−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト)が挙げられる。リン系化合物はポリエステルの調製に用いる触媒の失活剤として作用すると考えられ、本発明のポリエステルの製造における触媒失活剤として有効である。
本発明のポリエステルに対しては、必要に応じて、上述した安定剤以外の成分を本発明の目的を損なわない範囲内で添加又は混合することもできる。他の成分としては、例えば、充填剤(ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、天然繊維、有機繊維、ガラスフレーク、ガラスビーズ、セラミックスファイバー、セラミックビーズ、アスベスト、ワラステナイト、タルク、クレー、マイカ、セリサイト、ゼオライト、ベントナイト、モンモリロナイト、合成マイカ、ドロマイト、カオリン、微粉ケイ酸、長石粉、チタン酸カリウム、シラスバルーン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、ケイ酸アルミニウム、酸化ケイ素、石膏、ノバキュライト、ドーソナイト、白土等)、紫外線吸収剤(レゾルシノール、サリシレート、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン等)、熱安定剤(ヒンダードフェノール、ヒドロキノン、ホスファイト類及びこれらの置換体等)、滑剤、離形剤(モンタン酸及びその塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミド、ポリエチレンワックス等)、染料(ニグロシン等)又は顔料(酸化チタン、硫化カドミウム、フタロシアニン等)を含む着色剤、着色防止剤(亜リン酸塩、次亜リン酸塩等)、難燃剤(赤燐、燐酸エステル、ブロム化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ポリカーボネート、水酸化マグネシウム、メラミン及びシアヌール酸又はその塩等)、導電又は着色剤(酸化チタン、カーボンブラック等)、摺動性改良剤(グラファイト、フッ素樹脂等)、結晶核剤(タルク等の無機系核剤、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビス−12−ジヒドロキシステアリン酸アミド及びトリメシン酸トリシクロヘキシルアミド等の有機アミド系化合物、銅フタロシアニン及びピグメントイエロー110等の顔料系核剤、有機カルボン酸金属塩、フェニルホスホン酸亜鉛等)、帯電防止剤が挙げられる。これらは1種又は2種以上を添加することができる。
本発明のポリエステルに対しては、必要に応じて、本発明の目的を損なわない範囲内で他の熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂を配合できる。熱可塑性樹脂の具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリアセタール、ポリイミド、ポリエーテルイミド、軟質熱可塑性樹脂(例えば、エチレン/グリシジルメタクリレート共重合体、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー、エチレン/プロピレンターポリマー、エチレン/ブテン−1共重合体等)が挙げられる。熱硬化性樹脂の具体例としては、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂が挙げられる。その配合量は本発明の目的を損なわない範囲内であれば良く、特に限定されないが、本発明のポリエステル100質量部当たり0〜50質量部が好ましい。
以上説明した本発明のポリエステル及び他の成分を含んでなる組成物を成形することにより、本発明の成形体が得られる。その成形方法は特に制限されない。例えば、射出成型、押出成型、インフレーション成型、押出中空成型、発泡成型、カレンダー成型、ブロー成型、バルーン成型、真空成型、紡糸等の成型加工法を用いることができる。中でも、ポリエステルの特徴を生かした射出成型、発泡成型、紡糸が好ましい。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。各物性の測定方法は以下の通りである。
(1)重量平均分子量(Mw):
サンプルを、クロロホルム/ヘキサフルオロイソプロパノール(容積比1:1)に溶解した後、クロロホルムで希釈して、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー[Waters社製GPCシステム:検出器=RI、Waters社製2414、カラム=Shodex社製、LF−G、LF−804(カラム温度40℃、流速1ml/min、クロロホルム溶媒)]により、ポリスチレン標準サンプルを基準として重量平均分子量を算出した。
サンプルを、クロロホルム/ヘキサフルオロイソプロパノール(容積比1:1)に溶解した後、クロロホルムで希釈して、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー[Waters社製GPCシステム:検出器=RI、Waters社製2414、カラム=Shodex社製、LF−G、LF−804(カラム温度40℃、流速1ml/min、クロロホルム溶媒)]により、ポリスチレン標準サンプルを基準として重量平均分子量を算出した。
(2)熱物性:
熱物性は、示差走査熱量計(SII社製DSC:RDC220)を用いて測定した。具体的には、まず試料5mgをアルミニウム製押さえ蓋型パンに入れ、クリンプしてサンプルを調製した。このサンプルを、予め25℃に設定したDSC測定部に装入し、窒素気流下、10℃/minの昇温速度で320℃まで昇温した。その後、同温度で2分間保持し、10℃/minで0℃まで冷却し、0℃で2分間保持し、再び10℃/minで320℃まで昇温した。2回目の昇温時の結晶融解時のピークトップを融点(Tm)とし、ベースラインからの積分値を結晶融解熱量(ΔHm)とした。また、冷却時の結晶生成のピークトップを結晶化温度(Tc)とし、ベースラインからの積分値を結晶化熱量(ΔHc)とした。
熱物性は、示差走査熱量計(SII社製DSC:RDC220)を用いて測定した。具体的には、まず試料5mgをアルミニウム製押さえ蓋型パンに入れ、クリンプしてサンプルを調製した。このサンプルを、予め25℃に設定したDSC測定部に装入し、窒素気流下、10℃/minの昇温速度で320℃まで昇温した。その後、同温度で2分間保持し、10℃/minで0℃まで冷却し、0℃で2分間保持し、再び10℃/minで320℃まで昇温した。2回目の昇温時の結晶融解時のピークトップを融点(Tm)とし、ベースラインからの積分値を結晶融解熱量(ΔHm)とした。また、冷却時の結晶生成のピークトップを結晶化温度(Tc)とし、ベースラインからの積分値を結晶化熱量(ΔHc)とした。
(3)溶融粘度:
高化式フローテスター(島津製作所製CFT−500D)を用いて、300℃、荷重50Kg、予熱時間300秒で、0.5mmΦ×10mm(L)のダイから流出する溶融樹脂の溶融粘度を測定した。
高化式フローテスター(島津製作所製CFT−500D)を用いて、300℃、荷重50Kg、予熱時間300秒で、0.5mmΦ×10mm(L)のダイから流出する溶融樹脂の溶融粘度を測定した。
(4)曲げ強度:
小型射出成型機(株式会社メイホー製マイクロ2)を用いて、金型温度155℃で射出成型し、厚さ2mm×幅5mmの断面を有する長さ40mmの試験片を作製した。この試験片を、曲げ試験機(島津製作所製EZ test)で3点曲げして、曲げ強度を測定した。
小型射出成型機(株式会社メイホー製マイクロ2)を用いて、金型温度155℃で射出成型し、厚さ2mm×幅5mmの断面を有する長さ40mmの試験片を作製した。この試験片を、曲げ試験機(島津製作所製EZ test)で3点曲げして、曲げ強度を測定した。
<実施例1:ポリエステルA−1の調製>
1,4−シクロヘキサンジメタノール(cis/trans比=30/70)47.52g(0.33mol)、ジメチルテレフタレート58.20g(0.30mol)及び重量平均分子量1000g/molのポリエチレングリコール(PEG1000)3.0gを、200mlの反応機内に装入して、200℃まで加熱して溶融液を調製した。この溶融液に、テトライソプロポキシチタン18μlを添加し、200℃で1時間、その後260℃まで加熱して同温度で1時間加熱撹拌を行った。
1,4−シクロヘキサンジメタノール(cis/trans比=30/70)47.52g(0.33mol)、ジメチルテレフタレート58.20g(0.30mol)及び重量平均分子量1000g/molのポリエチレングリコール(PEG1000)3.0gを、200mlの反応機内に装入して、200℃まで加熱して溶融液を調製した。この溶融液に、テトライソプロポキシチタン18μlを添加し、200℃で1時間、その後260℃まで加熱して同温度で1時間加熱撹拌を行った。
次に、リン酸トリエチル12μlを添加し、300℃まで加熱しながら反応機内を減圧し、最終的に1mmHgになるまで減圧した状態で加熱撹拌を行った。その際の撹拌機のトルクをモニタリングし、トルクが最大値となったところで反応機内を窒素により常圧に戻し、反応機の下部から溶融樹脂を抜き出した。そして、この溶融樹脂のストランドをペレタイザーにより切断して、ポリエステルA−1のペレット81.0gを得た。
このポリエステルA−1の重量平均分子量、熱物性[融点(Tm)、結晶融解熱量(ΔHm)、結晶化温度(Tc)、結晶化熱量(ΔHc)]、300℃での溶融粘度及び曲げ強度を、表1に示す。
<比較例1>
実施例1において、ポリエチレングリコールを使用しないこと以外は、実施例1と同様の操作によりポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)のペレットを得た。その各物性を表1に示す。
実施例1において、ポリエチレングリコールを使用しないこと以外は、実施例1と同様の操作によりポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)のペレットを得た。その各物性を表1に示す。
<比較例2:特表平11−511500号公報の追試>
比較例1で得たポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレン−テレフタレート)37.00g及びポリエチレングリコールのジステアリルエステル(重量平均分子量400g/mol)3.00gを、二軸押し出し機を用いて300℃の温度で混合し、冷水浴中に押し出し、ペレット化した。その各物性を表1に示す。
比較例1で得たポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレン−テレフタレート)37.00g及びポリエチレングリコールのジステアリルエステル(重量平均分子量400g/mol)3.00gを、二軸押し出し機を用いて300℃の温度で混合し、冷水浴中に押し出し、ペレット化した。その各物性を表1に示す。
<実施例2:ポリエステルA−2の調製>
実施例1において、重量平均分子量1000g/molのポリエチレングリコール(PEG1000)3.0gの代わりに、重量平均分子量6000g/molのポリエチレングリコール(PEG6000)6.0gを使用したこと以外は、実施例1と同様の操作によりポリエステルA−2のペレットを得た。その各物性を表1に示す。
実施例1において、重量平均分子量1000g/molのポリエチレングリコール(PEG1000)3.0gの代わりに、重量平均分子量6000g/molのポリエチレングリコール(PEG6000)6.0gを使用したこと以外は、実施例1と同様の操作によりポリエステルA−2のペレットを得た。その各物性を表1に示す。
<実施例3:ポリエステルA−3の調製>
実施例1において、重量平均分子量1000g/molのポリエチレングリコール(PEG1000)3.0gの代わりに、重量平均分子量4000g/molのポリエチレングリコール(PEG4000)4.0gを使用したこと以外は、実施例1と同様の操作によりポリエステルA−3のペレットを得た。その各物性を表1に示す。
実施例1において、重量平均分子量1000g/molのポリエチレングリコール(PEG1000)3.0gの代わりに、重量平均分子量4000g/molのポリエチレングリコール(PEG4000)4.0gを使用したこと以外は、実施例1と同様の操作によりポリエステルA−3のペレットを得た。その各物性を表1に示す。
<実施例4:ポリエステルA−4の調製>
実施例1において、重量平均分子量1000g/molのポリエチレングリコール(PEG1000)3.0gの代わりに、重量平均分子量20000g/molのポリエチレングリコール(PEG20000)15.0gを使用したこと以外は、実施例1と同様の操作によりポリエステルA−4のペレットを得た。その各物性を表1に示す。
実施例1において、重量平均分子量1000g/molのポリエチレングリコール(PEG1000)3.0gの代わりに、重量平均分子量20000g/molのポリエチレングリコール(PEG20000)15.0gを使用したこと以外は、実施例1と同様の操作によりポリエステルA−4のペレットを得た。その各物性を表1に示す。
<実施例5:ポリエステルA−5の調製>
実施例1において、重量平均分子量1000g/molのポリエチレングリコール(PEG1000)3.0gの代わりに、重量平均分子量1000g/molのポリテトラメチレンオキサイド(PTO1000)3.0gを使用したこと以外は、実施例1と同様の操作によりポリエステルA−5のペレットを得た。その各物性を表1に示す。
実施例1において、重量平均分子量1000g/molのポリエチレングリコール(PEG1000)3.0gの代わりに、重量平均分子量1000g/molのポリテトラメチレンオキサイド(PTO1000)3.0gを使用したこと以外は、実施例1と同様の操作によりポリエステルA−5のペレットを得た。その各物性を表1に示す。
<実施例6:ポリエステルA−6の調製>
実施例1において、重量平均分子量1000g/molのポリエチレングリコール(PEG1000)3.0gの代わりに、重量平均分子量2000g/molのポリエチレングリコール(PEG2000)6.0gを使用したこと以外は、実施例1と同様の操作によりポリエステルA−6のペレットを得た。その各物性を表1に示す。
実施例1において、重量平均分子量1000g/molのポリエチレングリコール(PEG1000)3.0gの代わりに、重量平均分子量2000g/molのポリエチレングリコール(PEG2000)6.0gを使用したこと以外は、実施例1と同様の操作によりポリエステルA−6のペレットを得た。その各物性を表1に示す。
<実施例7:ポリエステルA−7の調製>
実施例1において、重量平均分子量1000g/molのポリエチレングリコール(PEG1000)3.0gの代わりに、重量平均分子量400g/molのポリエチレングリコール(PEG400)1.2gを使用したこと以外は、実施例1と同様の操作によりポリエステルA−7のペレットを得た。その各物性を表1に示す。
実施例1において、重量平均分子量1000g/molのポリエチレングリコール(PEG1000)3.0gの代わりに、重量平均分子量400g/molのポリエチレングリコール(PEG400)1.2gを使用したこと以外は、実施例1と同様の操作によりポリエステルA−7のペレットを得た。その各物性を表1に示す。
<実施例8:ポリエステルA−8の調製>
実施例1において、重量平均分子量1000g/molのポリエチレングリコール(PEG1000)3.0gの代わりに、重量平均分子量200g/molのポリエチレングリコール(PEG200)0.6gを使用したこと以外は、実施例1と同様の操作によりポリエステルA−8のペレットを得た。その各物性を表1に示す。
実施例1において、重量平均分子量1000g/molのポリエチレングリコール(PEG1000)3.0gの代わりに、重量平均分子量200g/molのポリエチレングリコール(PEG200)0.6gを使用したこと以外は、実施例1と同様の操作によりポリエステルA−8のペレットを得た。その各物性を表1に示す。
<比較例3>
実施例1において、重量平均分子量1000g/molのポリエチレングリコール(PEG1000)3.0gの代わりに、1,6−ヘキサンジオール3.54g(0.03mol)を使用したこと以外は、実施例1と同様の操作によりポリエステルのペレットを得た。その各物性を表1に示す。
実施例1において、重量平均分子量1000g/molのポリエチレングリコール(PEG1000)3.0gの代わりに、1,6−ヘキサンジオール3.54g(0.03mol)を使用したこと以外は、実施例1と同様の操作によりポリエステルのペレットを得た。その各物性を表1に示す。
<評価>
表1に示す通り、実施例1〜8のポリエステルは、高い融点(Tm)や曲げ強度を保持しつつ、溶融粘度が低いものであった。この結果から、本発明のポリエステルは耐熱性及び射出成型時の薄肉成型性に優れていることが分かる。
表1に示す通り、実施例1〜8のポリエステルは、高い融点(Tm)や曲げ強度を保持しつつ、溶融粘度が低いものであった。この結果から、本発明のポリエステルは耐熱性及び射出成型時の薄肉成型性に優れていることが分かる。
比較例1のポリエステルはポリアルキレングリコールを使用せずに調製したので、実質的にポリアルキレングリコールセグメントを含まないポリエステルであり、実施例1よりも溶融粘度が高かった。
比較例2は、特表平11−511500号公報に記載されている方法を追試したものであり、具体的には、比較例1のポリエステルと、エンドキャップされたポリエチレングリコールを混練した。その結果、混練中に分子量の低下が生じて、実施例1よりも機械物性(曲げ強度)が低いポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)しか得られなかった。
比較例3のポリエステルはポリアルキレングリコールの代わりに1,6−ヘキサンジオールを使用して調製したので、実質的にポリアルキレングリコールセグメントを含まないポリエステルであり、1,6−ヘキサンジオールによって溶融粘度は改善されたものの、融点(Tm)が実施例1よりも低かった。
Claims (6)
- ポリエステルセグメントとポリアルキレングリコールセグメントが共有結合を介して結合したポリエステルであって、
前記ポリエステル全体を100質量%とした場合、前記ポリアルキレングリコールセグメントの割合が0.5〜50質量%であり、
前記ポリエステルセグメントを構成するジオール成分の総量を100モル%とした場合、ジオール成分中のシクロヘキサンジメタノールの割合が70モル%以上であり、
以下の(A)及び(B)を満たすポリエステル。
(A)ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により標準ポリスチレン基準で測定した重量平均分子量が40000g/mol以上。
(B)示差熱量計(DSC)による昇温速度10℃/分で測定した融点(Tm)が280℃以上。 - ポリエステルセグメントを構成するジカルボン酸成分の総量を100モル%とした場合、ジカルボン酸成分中のテレフタル酸又はその低級アルキルエステルの割合が90モル%以上である請求項1記載のポリエステル。
- ポリエステルセグメントを構成するポリアルキレングリコールの重量平均分子量が200〜20000g/molである請求項1又は2記載のポリエステル。
- 請求項1に記載のポリエステルを製造する為の方法であって、
ジカルボン酸成分と、シクロヘキサンジメタノールを70モル%以上含有するジオール成分と、ポリアルキレングリコールとをエステル交換触媒の存在下、溶融状態で減圧下に反応させる工程を有することを特徴とするポリエステルの製造方法。 - 請求項1〜3の何れか一項記載のポリエステルを含んでなる組成物。
- 請求項5記載の組成物を成形してなる成形体。
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CN115354428A (zh) * | 2022-09-19 | 2022-11-18 | 罗莱生活科技股份有限公司 | 一种聚酯海岛纤维包芯纱线及其生产方法 |
JP7547886B2 (ja) | 2020-09-16 | 2024-09-10 | 三菱ケミカル株式会社 | ポリアルキレングリコール共重合ポリエステル |
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2011
- 2011-12-05 JP JP2011265648A patent/JP2013116987A/ja not_active Withdrawn
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