JP2013115400A - 記憶素子、記憶装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】記憶素子は、膜面に垂直な磁化を有し、情報に対応して磁化の向きが変化される記憶層と、上記記憶層に記憶された情報の基準となる膜面に垂直な磁化を有する磁化固定層と、上記記憶層と上記磁化固定層の間に設けられる非磁性体による中間層とを有する層構造を備える。その上で、上記層構造の積層方向に電流を流すことで記憶層の磁化の向きが変化して、記憶層に対して情報の記録が行われる。記憶層は、少なくともCo−Fe−B磁性層を有する。また記憶層に接する中間層と、該中間層とは反対側で記憶層が接する他方の層は、少なくとも記憶層と接する界面が酸化物層とされており、さらに上記他方の層は、酸化物層が、Liを含むLi系酸化物層とされている。
【選択図】図4
Description
この構成は、ある方向に固定された磁性層を通過するスピン偏極電子が、他の自由な(方向を固定されない)磁性層に進入する際にその磁性層にトルクを与えること(これをスピントランスファトルクとも呼ぶ)を利用したもので、あるしきい値以上の電流を流せば自由磁性層が反転する。0/1の書換えは電流の極性を変えることにより行う。
この反転のための電流の絶対値は0.1μm程度のスケールの素子で1mA以下である。しかもこの電流値が素子体積に比例して減少するため、スケーリングが可能である。さらに、MRAMで必要であった記録用電流磁界発生用のワード線が不要であるため、セル構造が単純になるという利点もある。
以下、スピントルク磁化反転を利用したMRAMを、ST−MRAM(Spin Torque-Magnetic Random Access Memory)と呼ぶ。スピントルク磁化反転は、またスピン注入磁化反転と呼ばれることもある。高速かつ書換え回数がほぼ無限大であるというMRAMの利点を保ったまま、低消費電力化、大容量化を可能とする不揮発メモリとして、ST−MRAMに大きな期待が寄せられている。
一方、ST−MRAMにおいては、記憶素子に流す電流によりスピントルク磁化反転を行い、記憶層の磁化の向きを反転させる必要がある。
そして、このように記憶素子に直接電流を流して情報の書き込み(記録)を行うことから、書き込みを行うメモリセルを選択するために、記憶素子を選択トランジスタと接続してメモリセルを構成する。この場合、記憶素子に流れる電流は、選択トランジスタに流すことが可能な電流(選択トランジスタの飽和電流)の大きさに制限される。
このように中間層としてトンネル絶縁層を用いた場合には、トンネル絶縁層が絶縁破壊することを防ぐために、記憶素子に流す電流量に制限が生じる。すなわち記憶素子の繰り返し書き込みに対する信頼性の確保の観点からも、スピントルク磁化反転に必要な電流を抑制しなくてはならない。
なお、スピントルク磁化反転に必要な電流は、また、反転電流、記録電流などと呼ばれることがある。
記憶層の熱安定性が確保されていないと、反転した磁化の向きが、熱(動作環境における温度)により再反転する場合があり、書き込みエラーとなってしまう。
ST−MRAMにおける記憶素子は、従来のMRAMと比較して、スケーリングにおいて有利、すなわち記憶層の体積を小さくすることが可能であるという利点があることを記録電流値の観点で上述した。しかしながら、体積が小さくなることは、他の特性が同一であるならば、熱安定性を低下させる方向にある。
ST−MRAMの大容量化を進めた場合、記憶素子の体積は一層小さくなるので、熱安定性の確保は重要な課題となる。
すなわち、ST−MRAMが不揮発メモリとして存在し得るためには、スピントルク磁化反転に必要な反転電流をトランジスタの飽和電流やトンネルバリアが破壊される電流以下に減らし、また、書き込まれた情報を保持するための熱安定性を確保する必要がある。
一方で、垂直磁化膜の有する強い磁気異方性エネルギーのために記憶層の熱安定性を十分に保つことができる。
垂直磁気異方性を有する磁性材料には希土類−遷移金属合金(TbCoFeなど)、金属多層膜(Co/Pd多層膜など)、規則合金(FePtなど)、酸化物と磁性金属の間の界面異方性の利用(Co/MgOなど)等いくつかの種類がある。
しかしST−MRAMにおいて大きな読み出し信号を与える高磁気抵抗変化率を実現するためにトンネル接合構造を採用することを考え、さらに耐熱性や製造上の容易さを考慮すると、界面磁気異方性を利用した材料、すなわちトンネルバリアであるMgO上にCoもしくはFeを含む磁性材料を積層させたものが有望である。
しかしながら、界面磁気異方性を起源とする垂直磁気異方性は、結晶磁気異方性や一イオン異方性等と比較し、異方性エネルギーが小さい上に、磁性層厚が厚くなるに従って低下する。
そこで本開示では、上記記憶層は、少なくともCo−Fe−B磁性層を有するようにするとともに、記憶層に接する中間層と他方の層は、少なくとも記憶層と接する界面が酸化物層とする。特に他方の層はLi系酸化物層とする。
これにより記憶層における異方性を高め、かつ反転電流の低減を可能とする。
また、上記記憶層の熱安定性は十分に保つことができるため、記憶素子に記録された情報を安定に保持し、かつ記憶装置の微細化、信頼性の向上、低消費電力化を実現することが可能になる。
これにより、動作エラーをなくして、記憶素子の動作マージンを充分に得ることができる。従って、安定して動作する、信頼性の高いメモリを実現することができる。
また、書き込み電流を低減して、記憶素子に書き込みを行う際の消費電力を低減することが可能になる。
従って、記憶装置全体の消費電力を低減することが可能になる。
<1.実施の形態の記憶装置の構成>
<2.実施の形態の記憶素子の概要>
<3.実施の形態の具体的構成>
<4.実験>
<5.変形例>
まず、本開示の実施の形態となる記憶装置の構成について説明する。
実施の形態の記憶装置の模式図を、図1及び図2に示す。図1は斜視図、図2は断面図である。
即ち、シリコン基板等の半導体基体10の素子分離層2により分離された部分に、各記憶装置を選択するための選択用トランジスタを構成する、ドレイン領域8、ソース領域7、並びにゲート電極1が、それぞれ形成されている。このうち、ゲート電極1は、図中前後方向に延びる一方のアドレス配線(ワード線)を兼ねている。
そして、ソース領域7と、上方に配置された、図1中左右方向に延びるビット線6との間に、スピントルク磁化反転により磁化の向きが反転する記憶層を有する記憶素子3が配置されている。この記憶素子3は、例えば磁気トンネル接合素子(MTJ素子)により構成される。
また、記憶素子3は、ビット線6と、ソース領域7とに、それぞれ上下のコンタクト層4を介して接続されている。
これにより、2種類のアドレス配線1、6を通じて、記憶素子3に上下方向の電流を流して、スピントルク磁化反転により記憶層17の磁化M17の向きを反転させることができる。
このように中間層としてトンネル絶縁層を用いた場合には、トンネル絶縁層が絶縁破壊することを防ぐために、記憶素子3に流す電流量に制限が生じる。すなわち記憶素子3の繰り返し書き込みに対する信頼性の確保の観点からも、スピントルク磁化反転に必要な電流を抑制することが好ましい。なお、スピントルク磁化反転に必要な電流は、反転電流、記憶電流などと呼ばれることがある。
記憶層の熱安定性が確保されていないと、反転した磁化の向きが、熱(動作環境における温度)により再反転する場合があり、書き込みエラーとなってしまう。
本記憶装置における記憶素子3(ST−MRAM)は、従来のMRAMと比較して、スケーリングにおいて有利、すなわち体積を小さくすることは可能であるが、体積が小さくなることは、他の特性が同一であるならば、熱安定性を低下させる方向にある。
ST−MRAMの大容量化を進めた場合、記憶素子3の体積は一層小さくなるので、熱安定性の確保は重要な課題となる。
そのため、ST−MRAMにおける記憶素子3において、熱安定性は非常に重要な特性であり、体積を減少させてもこの熱安定性が確保されるように設計する必要がある。
次に実施の形態となる記憶素子の概要について説明する。
実施の形態の記憶素子3は、前述したスピントルク磁化反転により、記憶層の磁化の向きを反転させて、情報の記録を行うものである。
記憶層は、強磁性層を含む磁性体により構成され、情報を磁性体の磁化状態(磁化の向き)により保持するものである。
また、図3Bのように少なくとも2つの強磁性体層としての磁化固定層15U、15L、および記録層17を備え、また3つの磁性層の間に中間層16U、16Lを備えても良い。
記憶層17は、膜面に垂直な磁化を有し、情報に対応して磁化の向きが変化される。
磁化固定層15は、記憶層17に記憶された情報の基準となる膜面に垂直な磁化を有する。
中間層16は、非磁性体であって、記憶層17と磁化固定層15の間に設けられる。
電子は2種類のスピン角運動量をもつ。仮にこれを上向き、下向きと定義する。非磁性体内部では両者が同数であり、強磁性体内部では両者の数に差がある。ST−MRAMを構成する2層の強磁性体である磁化固定層15及び記憶層17において、互いの磁気モーメントの向きが反方向状態のときに、電子を磁化固定層15から記憶層17への移動させた場合について考える。
磁化固定層15を通過した電子はスピン偏極、すなわち上向きと下向きの数に差が生じる。非磁性層である中間層16の厚さが充分に薄く構成されていると、磁化固定層15の通過によるスピン偏極が緩和して通常の非磁性体における非偏極(上向きと下向きが同数)状態になる前に他方の磁性体、すなわち記憶層17に電子が達する。
電流すなわち単位時間に通過する電子の数が少ない場合には、向きを変える電子の総数も少ないために記憶層17の磁気モーメントに発生する角運動量変化も小さいが、電流が増えると多くの角運動量変化を単位時間内に与えることができる。
磁化が同方向状態にあるとき、電流を逆に記憶層17から磁化固定層15へ電子を送る向きに流すと、今度は磁化固定層15で反射される際にスピン反転した電子が記憶層17に進入する際にトルクを与え、反方向状態へと磁気モーメントを反転させることができる。ただしこの際、反転を起こすのに必要な電流量は、反方向状態から同方向状態へと反転させる場合よりも多くなる。
本実施の形態の記憶素子は垂直磁化型であるが、従前の面内磁化型の記憶素子の場合における磁性層の磁化の向きを反転させる反転電流をIc_paraとする。
同方向から逆方向に反転させる場合、
Ic_para=(A・α・Ms・V/g(0)/P)(Hk+2πMs)
となり、逆方向から同方向に反転させる場合、
Ic_para=−(A・α・Ms・V/g(π)/P)(Hk+2πMs)
となる。
なお、同方向、逆方向とは、磁化固定層の磁化方向を基準としてみた記憶層の磁化方向である。平行、反平行とも呼ばれる。
Ic_perp=(A・α・Ms・V/g(0)/P)(Hk−4πMs)
となり、逆方向から同方向に反転させる場合、
Ic_perp=−(A・α・Ms・V/g(π)/P)(Hk−4πMs)
となる。
但しeは電子の電荷、ηはスピン注入効率、バー付きのhは換算プランク定数、αはダンピング定数、kBはボルツマン定数、Tは温度である。
メモリとして存在し得るためには、書き込まれた情報を保持することができなければならない。情報を保持する能力の指標として、熱安定性の指標Δ(=KV/kBT)の値で判断される。このΔは(数2)により表される。
ここで、Hkは実効的な異方性磁界、kBはボルツマン定数、Tは温度、Msは飽和磁化量、Vは記憶層の体積、Kは異方性エネルギーである。
記憶層の磁化状態を変化させる電流の閾値は、実際には、例えば記憶層17の厚さが2nmであり、平面パターンが直径100nm円形のTMR素子において、百〜数百μA程度である。
これに対して、電流磁場により磁化反転を行う通常のMRAMでは、書き込み電流が数mA以上必要となる。
従って、ST−MRAMの場合には、上述のように書き込み電流の閾値が充分に小さくなるため、集積回路の消費電力を低減させるために有効であることが分かる。
また、通常のMRAMで必要とされる、電流磁界発生用の配線が不要となるため、集積度においても通常のMRAMに比較して有利である。
この場合、記憶素子に流れる電流は、選択トランジスタで流すことが可能な電流(選択トランジスタの飽和電流)の大きさによって制限される。
また金属多層膜も加熱により拡散し、垂直磁気異方性が劣化することが知られており、さらに垂直磁気異方性が発現するのは面心立方の(111)配向となっている場合であるため、MgOやそれに隣接して配置するFe、CoFe、CoFeBなどの高分極率層に要求される(001)配向を実現させることが困難となる。L10規則合金は高温でも安定であり、かつ(001)配向時に垂直磁気異方性を示すことから、上述のような問題は起こらないものの、製造時に500℃以上の十分に高い温度で加熱する、あるいは製造後に500℃以上の高温で熱処理を行うことで原子を規則配列させる必要があり、トンネルバリア等積層膜の他の部分における好ましくない拡散や界面粗さの増大を引き起こす可能性がある。
界面磁気異方性を起源とする垂直磁気異方性は、酸化物に含まれる酸素とCoあるいはFeとが界面において結合することで生じると言われているが、規則合金が示す結晶磁気異方性や希土類系が示す一イオン異方性等と比較し、異方性エネルギー自体が小さい上に、磁性層厚が厚くなるに従って低下するという課題を有する。
すなわち、例えば基板/下地層14/磁化固定層15/中間層16(酸化物によるトンネルバリア層)/記憶層17/少なくともLiを含む酸化物が記憶層との界面とされたキャップ層という構造を採用することで、記憶層17の異方性を高めることができる。
また、酸化物層、Co−Fe−B磁性層、非磁性層(非磁性添加材料)が積層された積層構造部をすくなくとも一つ含む層構造を採用することも、記憶層17の異方性を高めることができる。
本実施の形態では、記憶層17はCo−Fe−BをベースとしてTaを添加した垂直磁化膜である。
トンネル絶縁層を用いて磁気トンネル接合(MTJ)素子を構成することにより、非磁性導電層を用いて巨大磁気抵抗効果(GMR)素子を構成した場合と比較して、磁気抵抗変化率(MR比)を大きくすることができ、読み出し信号強度を大きくすることができるためである。
また、一般に、スピントランスファの効率はMR比に依存し、MR比が大きいほど、スピントランスファの効率が向上し、磁化反転電流密度を低減することができる。
従って、トンネル絶縁層の材料として酸化マグネシウムを用い、同時に上記の記憶層17を用いることにより、スピントルク磁化反転による書き込み閾値電流を低減することができ、少ない電流で情報の書き込み(記録)を行うことができる。また、読み出し信号強度を大きくすることができる。
これにより、MR比(TMR比)を確保して、スピントルク磁化反転による書き込み閾値電流を低減することができ、少ない電流で情報の書き込み(記録)を行うことができる。また、読み出し信号強度を大きくすることができる。
なお、本実施の形態において、記憶層17と磁化固定層15との間の中間層16(トンネル絶縁層)は、酸化マグネシウムから成る構成とする他にも、例えば酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、SiO2、Bi2O3、MgF2、CaF、SrTiO2、AlLaO3、Al−N−O等の各種の絶縁体、誘電体、半導体を用いて構成することもできる。
そして、MgO膜から成るトンネル絶縁層では、面積抵抗値を上述の範囲とするために、MgO膜の膜厚を1.5nm以下に設定する必要がある。
従って、好ましくは、記憶素子3の面積を0.01μm2以下とする。
異種元素の添加により、拡散の防止による耐熱性の向上や磁気抵抗効果の増大、平坦化に伴う絶縁耐圧の増大などの効果が得られる。この場合の添加元素の材料としては、B、C、N、O、F、Mg、Si、P、Mn、Ni、Cu、Ge、Nb、Ru、Rh、Pd、Ag、Ir、Pt、Au、Re、Osまたはそれらの合金および酸化物を用いることができる。
特に複数層の強磁性層を非磁性層に介して積層させた構成としたときには、強磁性層の層間の相互作用の強さを調整することが可能になるため、磁化反転電流が大きくならないように抑制することが可能になるという効果が得られる。この場合の非磁性層の材料としては、Ru,Os,Re,Ir,Au,Ag,Cu,Al,Bi,Si,B,C,Cr,Ta,Pd,Pt,Zr,Hf,W,Mo,Nbまたはそれらの合金を用いることができる。
記憶素子のその他の構成は、スピントルク磁化反転により情報を記録する記憶素子の従来公知の構成と同様とすることができる。
また、磁化固定層15は、単層の強磁性層から成る構成、或いは複数層の強磁性層を非磁性層を介して積層した積層フェリピン構造とすることが出来る。
反強磁性層の材料としては、FeMn合金、PtMn合金、PtCrMn合金、NiMn合金、IrMn合金、NiO、Fe2O3等の磁性体を挙げることができる。
また、これらの磁性体に、Ag,Cu,Au,Al,Si,Bi,Ta,B,C,O,N,Pd,Pt,Zr,Hf,Ir,W,Mo,Nb等の非磁性元素を添加して、磁気特性を調整したり、その他の結晶構造や結晶性や物質の安定性等の各種物性を調整したりすることができる。
この場合は、キャップ層18ではなく、下地層14において少なくとも記憶層17に接する界面はLiを含む酸化物層とされているようにする。
続いて、実施の形態の具体的構成について説明する。
記憶装置の構成は先に図1,図2で述べたとおり、直交する2種類のアドレス配線1,6(例えばワード線とビット線)の交点付近に、磁化状態で情報を保持することができる記憶素子3が配置されるものである。
そして2種類のアドレス配線1、6を通じて、記憶素子3に上下方向の電流を流して、スピントルク磁化反転により記憶層17の磁化の向きを反転させることができる。
この場合、スピン注入により磁化M17の向きが反転する記憶層17に対して、下層に磁化固定層15を設けている。
スピン注入型メモリにおいては、記憶層17の磁化M17と磁化固定層15の磁化M15の相対的な角度によって情報の「0」「1」を規定している。
情報の記憶は一軸異方性を有する記憶層15の磁化の向きにより行う。書込みは、膜面垂直方向に電流を印加し、スピントルク磁化反転を起こすことにより行う。このように、スピン注入により磁化の向きが反転する記憶層15に対して、下層に磁化固定層15が設けられ、記憶層17の記憶情報(磁化方向)の基準とされる。
本実施の形態では、記憶層17、磁化固定層15としてはCo−Fe−Bを用いる。後述するが、記憶層17は、Co−Fe−B磁性層に加え、非磁性層が含まれている。例えばTa層である。この非磁性層はV、Nb、Cr、W、Mo、Ti、Zr、Hfのいずれかでもよい。
このようにMR比を高くすることによって、スピン注入の効率を向上して、記憶層17の磁化M17の向きを反転させるために必要な電流密度を低減することができる。
なお中間層16は、酸化マグネシウムから成る構成とする他にも、例えば酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、SiO2、Bi2O3、MgF2、CaF、SrTiO2、AlLaO3、Al−N−O等の各種の絶縁体、誘電体、半導体を用いて構成することもできる。
本実施の形態の場合、キャップ層18は、中間層16とは反対側で記憶層17に接する他方の層となるが、キャップ層18において少なくとも記憶層17との界面の層は、Li系酸化物層とされている。
Li系酸化物とは、例えばLiAlO2,LiCuO2,LiSiO2,LiPO3,LiBO2,Li2CO3,LiO2,Li-Mg-Oなどである。
記憶素子3は、下層側から順に、下地層14、下部磁化固定層15L、下部中間層16L、記憶層17、上部中間層16U、上部磁化固定層15U、キャップ層18が積層されている。
即ち記憶層17に対し、上下に中間層16U、16Lを介して磁化固定層15U、15Lが設けられる。
本実施の形態の場合、上部中間層16Uは、下部中間層16Lとは反対側で記憶層17に接する層となるが、上部中間層16Uにおいて少なくとも記憶層17との界面の層は、Li系酸化物層とされている。例えば上部中間層16UがLi系酸化物層で形成される。
即ち、記憶層17の強磁性材料Co−Fe−B組成を選定し、記憶層17が受ける実効的な反磁界の大きさを低くして、記憶層17の飽和磁化量Msよりも小さくなるようにする。
この点を含めて、図4,図5により詳しい層構造を示す。
上述のように記憶層17は、Co−Fe−B磁性層に加え、Ta等の非磁性層が含まれている。即ち記憶層17は、Co−Fe−B磁性層17a、非磁性層17b、Co−Fe−B磁性層17cが積層されて成る。
非磁性層17bは、V、Nb、Cr、W、Mo、Ti、Zr、Hf等の金属元素で形成されてもよく、また複数の金属元素が積層されていてもよい。
またキャップ層18は、少なくとも記憶層17に接する界面が、Li系酸化物層18aとされている。
また中間層16は、上述のようにMgO層とされ、記憶層17に接する界面が酸化物層となっている。
また中間層16とは反対側で記憶層17が接するキャップ層18は、記憶層17と接する界面がLi系酸化物層18aであることから、キャップ層18のLi系酸化物層18aと、記憶層17のCo−Fe−B磁性層17cと、記憶層17の非磁性層17bにより、酸化物層/Co−Fe−B磁性層/非磁性層の積層構造部U2が形成されている。
この場合も記憶層17は、Co−Fe−B磁性層に加え、非磁性層が含まれている。即ち図5に示すように、記憶層17は、Co−Fe−B磁性層17a、非磁性層17b、Co−Fe−B磁性層17cが積層されて成る。この非磁性層17bは、Ta、V、Nb、Cr、W、Mo、Ti、Zr、Hfのいずれか少なくとも1つの金属元素で形成されている。複数の金属元素が積層されていてもよい。
また上部中間層16UはLi系酸化物層とされ、記憶層17に接する界面がLi系酸化物となっている。
また下部中間層16LはMgO層とされ、記憶層17に接する界面が酸化物層となっている。
また下部中間層16Lとは反対側で記憶層17が接する上部中間層16UはLi系酸化物層であるから、上部中間層16Uの酸化物層(Li系酸化物)と、記憶層17のCo−Fe−B磁性層17cと、記憶層17の非磁性層17bにより、酸化物層/Co−Fe−B磁性層/非磁性層の積層構造部U2が形成されている。
垂直磁気異方性を高めるためには、酸化物が記憶層17の両側に配置されるようにすることが好適である。特にLi系酸化物を記憶層17との界面に用いること、また上記の積層構造部U1、U2を設けることにより、熱安定性向上と書き込み電流低減を両立できる。
このように、情報保持能力である熱安定性を充分に確保することができるため、特性バランスに優れた記憶素子3を構成することができる。
これにより、動作エラーをなくして、記憶素子3の動作マージンを充分に得ることができ、記憶素子3を安定して動作させることができる。
従って、安定して動作する、信頼性の高いメモリを実現することができる。
また、書き込み電流を低減して、記憶素子3に書き込みを行う際の消費電力を低減することが可能になる。
従って、本実施の形態の記憶素子3によりメモリセルを構成した、メモリ全体の消費電力を低減することが可能になる。
従って、情報保持特性が優れた、安定して動作する信頼性の高いメモリを実現することができ、記憶素子3を備えたメモリにおいて、消費電力を低減することができる。
また、図3〜図5で説明した記憶素子3を備え、図1に示した構成の記憶装置は、記憶装置を製造する際に、一般の半導体MOS形成プロセスを適用できるという利点を有している。従って、本実施の形態のメモリを、汎用メモリとして適用することが可能になる。
ここで、図3A及び図4に示した本実施の形態の記憶素子3の構成において、試料を作製し、その特性を調べた。
実際の記憶装置には、図1に示したように、記憶素子3以外にもスイッチング用の半導体回路等が存在するが、ここでは、キャップ層18に隣接する記憶層17の磁化反転特性を調べる目的で、記憶素子のみを形成したウェハにより検討を行った。
具体的には、図3Aに示したMTJにおいて各層の材料及び膜厚を次のように選定した。
図6Aに比較例としての試料9、図6Bに本実施の形態に該当する試料1〜試料8を示す。
・下地層14:膜厚10nmのTa膜と膜厚25nmのRu膜の積層膜。
・磁化固定層15:CoPt:2nm/Ru:0.8nm/CoFeB:2nmの積層膜。
・中間層(トンネル絶縁層)16:膜厚0.9nmの酸化マグネシウム膜。
・記憶層17:図6Dに拡大して示すように、CoFeB/非磁性層/CoFeBの積層膜で、トータル膜厚を2.0nmとした。
図6Aに示すように、比較例としての試料9のキャップ層18は、MgO:0.8nm/Ta:3nm/Ru:3nm/Ta:3nmの積層構造とした。つまり記憶層17との界面にLi系酸化物を用いない例である。
一方、実施の形態の試料1〜試料8では、図6Bに示すように、キャップ層18は、Li系酸化物:0.8nm/Ta:3nm/Ru:3nm/Ta:3nmの積層構造とした。
このLi系酸化物として図6Cに示す酸化物をそれぞれ用いて、試料1〜試料9とした。
試料1はLiAlO2、試料2はLiCuO2、試料3はLiSiO2、試料4はLiPO3、試料5はLiBO2、試料6はLi2CO3、試料7はLiO2、試料8はLi−Mg−Oである。
酸化マグネシウム(MgO)膜から成る中間層16、ならびにキャップ層18の内、LiAlO2、LiCuO2、LiSiO2、LiPO3、LiBO2、Li2CO3、LiO2はRFマグネトロンスパッタ法を用いて、成膜し、その他の膜はDCマグネトロンスパッタ法を用いて成膜した。なお、Li−Mg−OはLiMg合金を成膜し、その後、酸化することにより作成した。
さらに、記憶素子3の各層を成膜した後に、磁場中熱処理炉で熱処理を行った後、記憶層17を一般的な電子線リソグラフィ及びイオンミリングプロセスを用いて加工した。
測定に先立ち、反転電流のプラス方向とマイナス方向の値を対称になるように制御することを可能にするため、記憶素子3に対して、外部から磁界を与えることができるように構成した。
また、記憶素子3に印加される電圧が、中間層16が破壊しない範囲内の1Vまでとなるように設定した。
本実施の形態による記憶素子3の書き込み特性および熱安定を評価する目的で、反転電流値のパルス幅依存性(10μsから100msのパルス幅)を測定した。
この電流値のパルス幅依存性をパルス幅1nsに外挿した値を、反転電流値とした。
また、反転電流値のパルス幅依存性の傾きは、記憶素子3の前述した熱安定性の指標Δ=(KV/kBT)に対応する。反転電流値がパルス幅によって変化しない(傾きが小さい)ほど、熱の擾乱に強いことを意味する。
そして、記憶素子3間のばらつきを考慮するために、同一構成の記憶素子3を20個程度作製して、上述の測定を行い、反転電流値及び熱安定性の指標(KV/kBT)の平均値を求めた。
比較例である試料9のKV/kBTと反転電圧Vc0の関係が(KV/kBT、Vc0)=(67、0.52)であるのと比較して、試料1〜試料8の試料ではいずれも高KV/kBT,低Vc0化している。
なお、試料1のVc0は、比較例試料9とほぼ同等であるが、通常KV/kBTが大きくなれば反転電圧Vc0も大きくなるところ、この場合はKV/kBTが大きくなっているのに反転電圧Vc0は同等である。これは試料1が、比較例試料9に比べて、熱安定性の向上と反転電流低減を両立していることを意味している。
他の試料2〜試料8は、明らかに試料9に比べて熱安定性向上と書き込み電流低減を実現できている。
また、Liは軽元素であるため、磁性材料とのスピン‐軌道相互作用が小さい。これにより、記憶層17の実効的なダンピング定数は小さくなり、結果として低Vc0の特性が実現されているものと考えられる。
比較例を含めて全ての試料1〜試料9では、上述した積層構造部U1、U2を備える構造となっている。
界面磁気異方性を起源とする垂直磁気異方性は、酸化物に含まれる酸素とCo或いはFeとが、界面において結合することで生じると言われているが、一方で、酸化物とは反対側の界面において接する非磁性材料も非常に重要な役割を果たす。
つまり最も基本的な単位としては、酸化物/磁性体/非磁性体、非磁性体/磁性体/酸化物の組み合わせが重要である。
試料1〜試料9では、記憶層17に、この重要な基本単位を2つ(上述の積層構造部U
1,U2)を組み込むことにより、より大きなKV/kBTを得ることに成功したと考えられる。
その上で、Li系酸化物を用いることで、一層の熱安定性向上と書き込み電流低減を実現できるものといえる。
以上実施の形態について説明してきたが、本開示の技術は、上述の実施の形態で示した記憶素子3の層構成に限らず、様々な層構成を採用することが可能である。
例えば実施の形態では、記憶層17と磁化固定層15のCo−Fe−Bの組成を同一のものとしたが、上述の実施の形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲でその他様々な構成が取り得る。
また図4,図5では、積層構造部U1,U2の両方を備えた層構造例を示したが、少なくとも積層構造部U1,U2の一方を備える場合も、熱安定性の向上効果は得られる。
また磁化固定層15は、単層でも、2層の強磁性層と非磁性層から成る積層フェリピン構造を用いても良い。また積層フェリピン構造膜に反強磁性膜を付与した構造でもよい。
複合型磁気ヘッド100は、ハードディスク装置等に用いられる磁気ヘッドであり、基板122上に、本開示の技術を適用した磁気抵抗効果型磁気ヘッドが形成されてなるとともに、当該磁気抵抗効果型磁気ヘッド上にインダクティブ型磁気ヘッドが積層形成されてなる。ここで、磁気抵抗効果型磁気ヘッドは、再生用ヘッドとして動作するものであり、インダクティブ型磁気ヘッドは、記録用ヘッドとして動作する。すなわち、この複合型磁気ヘッド100は、再生用ヘッドと記録用ヘッドを複合して構成されている。
第1の磁気シールド125は、磁気抵抗効果素子101の下層側を磁気的にシールドするためのものであり、Ni−Fe等のような軟磁性材からなる。この第1の磁気シールド125上に、絶縁層123を介して磁気抵抗効果素子101が形成されている。
この磁気抵抗効果素子101は、略矩形状に形成されてなり、その一側面が磁気記録媒体対向面に露呈するようになされている。そして、この磁気抵抗効果素子101の両端にはバイアス層128,129が配されている。またバイアス層128,129と接続されている接続端子130,131が形成されている。接続端子130,131を介して磁気抵抗効果素子101にセンス電流が供給される。
さらにバイアス層128,129の上部には、絶縁層123を介して第2の磁気シールド層127が設けられている。
上層コア132は、第2の磁気シールド122と共に閉磁路を形成して、このインダクティブ型磁気ヘッドの磁気コアとなるものであり、Ni−Fe等のような軟磁性材からなる。ここで、第2の磁気シールド127及び上層コア132は、それらの前端部が磁気記録媒体対向面に露呈し、且つ、それらの後端部において第2の磁気シールド127及び上層コア132が互いに接するように形成されている。ここで、第2の磁気シールド127及び上層コア132の前端部は、磁気記録媒体対向面において、第2の磁気シールド127及び上層コア132が所定の間隙gをもって離間するように形成されている。
すなわち、この複合型磁気ヘッド100において、第2の磁気シールド127は、磁気抵抗効果素子126の上層側を磁気的にシールドするだけでなく、インダクティブ型磁気ヘッドの磁気コアも兼ねており、第2の磁気シールド127と上層コア132によってインダクティブ型磁気ヘッドの磁気コアが構成されている。そして間隙gが、インダクティブ型磁気ヘッドの記録用磁気ギャップとなる。
(1)膜面に垂直な磁化を有し、情報に対応して磁化の向きが変化される記憶層と、
上記記憶層に記憶された情報の基準となる膜面に垂直な磁化を有する磁化固定層と、
上記記憶層と上記磁化固定層の間に設けられる非磁性体による中間層と、
を有する層構造を備え、
上記層構造の積層方向に電流を流すことで上記記憶層の磁化の向きが変化して、上記記憶層に対して情報の記録が行われるとともに、
上記記憶層は、少なくともCo−Fe−B磁性層を有し、
上記記憶層に接する上記中間層と、該中間層とは反対側で上記記憶層が接する他方の層は、少なくとも上記記憶層と接する界面が酸化物層とされており、さらに上記他方の層は、上記酸化物層が、Liを含むLi系酸化物層とされている記憶素子。
(2)上記Li系酸化物層は、Liと、少なくともAl,Si,Cu,Mg,P,B,Cのいずれかからなる酸化物を有する上記(1)に記載の記憶素子。
(3)上記Li系酸化物層は、Liと酸素からなる酸化物を有する上記(1)に記載の記憶素子。
(4)上記中間層は、少なくとも上記記憶層と接する界面の層がMgO膜で構成される上記(1)乃至(3)に記載の記憶素子。
(5)上記記憶層は、Co−Fe−B磁性層と、少なくとも1つの非磁性層を有し、
上記記憶層の上記Co−Fe−B磁性層及び上記非磁性層を含んで、酸化物層、上記Co−Fe−B磁性層、上記非磁性層が積層された積層構造部が形成されている上記(1)乃至(4)に記載の記憶素子。
(6)上記中間層の酸化物層と、上記記憶層の上記Co−Fe−B磁性層と、上記記憶層の上記非磁性層により、上記積層構造部が形成されている上記(5)に記載の記憶素子。
(7)上記他方の層のLi系酸化物層と、上記記憶層の上記Co−Fe−B磁性層と、上記記憶層の上記非磁性層により、上記積層構造部が形成されている上記(5)又は(6)に記載の記憶素子。
Claims (8)
- 膜面に垂直な磁化を有し、情報に対応して磁化の向きが変化される記憶層と、
上記記憶層に記憶された情報の基準となる膜面に垂直な磁化を有する磁化固定層と、
上記記憶層と上記磁化固定層の間に設けられる非磁性体による中間層と、
を有する層構造を備え、
上記層構造の積層方向に電流を流すことで上記記憶層の磁化の向きが変化して、上記記憶層に対して情報の記録が行われるとともに、
上記記憶層は、少なくともCo−Fe−B磁性層を有し、
上記記憶層に接する上記中間層と、該中間層とは反対側で上記記憶層が接する他方の層は、少なくとも上記記憶層と接する界面が酸化物層とされており、さらに上記他方の層は、上記酸化物層が、Liを含むLi系酸化物層とされている記憶素子。 - 上記Li系酸化物層は、Liと、少なくともAl,Si,Cu,Mg,P,B,Cのいずれかからなる酸化物を有する請求項1に記載の記憶素子。
- 上記Li系酸化物層は、Liと酸素からなる酸化物を有する請求項1に記載の記憶素子。
- 上記中間層は、少なくとも上記記憶層と接する界面の層がMgO膜で構成される請求項1に記載の記憶素子。
- 上記記憶層は、Co−Fe−B磁性層と、少なくとも1つの非磁性層を有し、
上記記憶層の上記Co−Fe−B磁性層及び上記非磁性層を含んで、酸化物層、上記Co−Fe−B磁性層、上記非磁性層が積層された積層構造部が形成されている請求項1に記載の記憶素子。 - 上記中間層の酸化物層と、上記記憶層の上記Co−Fe−B磁性層と、上記記憶層の上記非磁性層により、上記積層構造部が形成されている請求項5に記載の記憶素子。
- 上記他方の層のLi系酸化物層と、上記記憶層の上記Co−Fe−B磁性層と、上記記憶層の上記非磁性層により、上記積層構造部が形成されている請求項5に記載の記憶素子。
- 情報を磁性体の磁化状態により保持する記憶素子と、
互いに交差する2種類の配線とを備え、
上記記憶素子は、
膜面に垂直な磁化を有し、情報に対応して磁化の向きが変化される記憶層と、
上記記憶層に記憶された情報の基準となる膜面に垂直な磁化を有する磁化固定層と、
上記記憶層と上記磁化固定層の間に設けられる非磁性体による中間層と、
を有する層構造を備え、
上記層構造の積層方向に電流を流すことで上記記憶層の磁化の向きが変化して、上記記憶層に対して情報の記録が行われるとともに、
上記記憶層は、少なくともCo−Fe−B磁性層を有し、
上記記憶層に接する上記中間層と、該中間層とは反対側で上記記憶層が接する他方の層は、少なくとも上記記憶層と接する界面が酸化物層とされており、さらに上記他方の層は、上記酸化物層が、Liを含むLi系酸化物層とされている構成とされ、
上記2種類の配線の間に上記記憶素子が配置され、
上記2種類の配線を通じて、上記記憶素子に上記積層方向の電流を流す記憶装置。
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