JP2013113430A - 摺動機構及びその摩擦低減方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】摺動面に窒化膜をコーティングし、一般的なディーゼルエンジンオイルに油溶性モリブデン化合物をモリブデン含有量として600〜1000ppm添加し、摺動部材の算術平均粗さを2〜60nmにして、ディーゼルエンジンに含まれるススの量は3wt%以下で、ゾンマーフェルド数の粘度をkg・s/cm2、速度をcm/s、荷重を平均ヘルツ応力(kg/cm2)に換算した際に、0.2×10−9〜1.0×10−9cmの範囲内の潤滑条件で用いる。
【選択図】図1
Description
しかし、エンジンの燃焼により発生するススがエンジンオイルに混入した場合は、ススが阻害要因となって摩擦低減効果が低下または消滅する。特にディーゼルエンジンにおいては、エンジンオイル中のススの量が多くなることから、スス量の増加に伴い二硫化モリブデンの生成または二硫化モリブデンによる摺動が阻害されてしまい、摩擦低減効果が低下し、あるいは、摩擦低減効果が持続しなくなってしまうことが問題となっている。
すなわち、ディーゼルエンジンオイルは清浄分散剤を多く含有するので、有機モリブデン系潤滑オイル添加剤を添加しても、その効果が得られず、或いは、その効果が十分に発揮できない、という現象が顕著に現れてしまう。それに加えて、ディーゼルオイルにススが含まれると、ディーゼルエンジンオイルであっても、摩擦低減効果が低下し、あるいは、摩擦提言効果が持続しなくなってしまう。
しかし、係る従来技術は、低〜中温度領域における摩擦係数を低減することを目的としており、上述した問題を解消することは意図していない。
本発明は、係る知見に基いて創作されたものである。
上述した様に、ディーゼルエンジンオイルにススが混入すれば、ススの混入量が増加するのに伴い、二硫化モリブデンの生成あるいは二硫化モリブデンによる摺動が阻害されて、摩擦低減効果が低下し、最悪の場合には摩擦低減効果が消失してしまう。
しかしながら、上述した構成を具備する本発明の摺動機構と摺動機構の摩擦低減方法で限定されている条件を充足すれば、ススが混入しても、摩擦低減効果は阻害されることはなく、摩擦低減効果を維持することが出来る。
本発明の実施形態として、例えば軸受構造において、一方の摺動部材が軸であり、当該軸の外周面(摺動面)を化学蒸着(CVD)技術により、窒化クロム(CrN)でコーティングした。そして、軸表面の算術平均粗さを50nmとした。
一方、他方の摺動部材として、軸受(少なくとも、インナーレース)を高炭素クロム軸受鋼(SUJ2)で製造した。
そして、潤滑剤として、日本自動車技術会規格「DH−2」のディーゼルエンジンオイル(一般的なディーゼルエンジンオイル)に、ジアルキルジチオカルバミン酸モリブデン(MoDTC)を、モリブデン願流として600〜700ppm添加したものを用いた。
また、摺動部材の算術平均粗さを2〜60nmの範囲内にした。
これに対して、実施形態に係る軸受と殆ど同じ条件ではあるが、摺動する双方の部材が高炭素クロム軸受鋼(SUJ2)であり、ジアルキルジチオカルバミン酸モリブデン(MoDTC)を添加していないディーゼルエンジンオイル(DH−2)で潤滑した軸受を比較例として、ディーゼルエンジンオイルに含まれるススの量が3wt%以下の範囲内で、使用した。
そして、実施形態に係る軸受と、比較例に係る軸受を比較したら、実施形態に係る軸受における摩擦係数は、比較例に係る軸受よりも著しく小さかった。
実施形態に係る摩擦低減方法を適用した摺動機構の摩擦係数を、上述した比較例摩擦係数と比較したところ、実施形態に係る摩擦低減方法を適用した摺動機構の摩擦係数の方が遥かに小さかった。
図1において、高炭素クロム軸受鋼(SUJ2)製で平板状の基材10(算術平均粗さ50nm)上に、高炭素クロム軸受鋼(SUJ2)製のボール20を載置して、基材10とボール20の間をディーゼルエンジンオイルで潤滑した。図1における矢印Pはボール20に負荷される荷重であり、矢印Fは摩擦力が作用する方向である。
潤滑剤としてはディーゼルエンジンオイルを用いた。より詳細には、潤滑剤として、一般的なディーゼルエンジンオイル(出願人が所属するボルボグループ独自の規格では「VDS−4」であり、且つ、日本自動車技術会規格では「DH−2」とされるディーゼルエンジンオイル:以下、符号「VHS−4(DH−2)」で示す)を使用した。
図1の実験装置により、温度80℃、摺動ストローク1mm、摺動周波数100Hz、荷重Pは1kgで、試験時間75min.にて、以下の実験が行われた。この実験条件における潤滑条件は、ゾンマーフェルド数S=0.42×10−9cmであり、境界摩擦が起こる混合摩擦領域である。
なお、以下の実験例では、上述した実験条件を一部変更する場合がある。
ディーゼルエンジンオイルVDS−4に添加する摩擦調整剤として、ジアルキルジチオカルバミン酸モリブデン(MoDTC)を添加した。また、潤滑条件は、ゾンマーフェルド数S=0.42×10−9cmであり、境界摩擦が起こる混合摩擦領域とした。
そして、MoDTCを700ppm添加した場合と、MoDTCを添加しない場合とに分けた。
さらに、基材10については、高炭素クロム軸受鋼(SUJ2)で構成した場合と、高炭素クロム軸受鋼(SUJ2)のボール20側(摺動面側)に窒化クロム(CrN)をコーティングした場合とに分けた。
基材10と潤滑剤との組み合わせを、下表1で示す。
表1
係る発明者による実験例1では、基材10に窒化クロムCrNをコーティングし、且つ、ディーゼルエンジンオイルにMoDTCを700ppm添加したNo.4の組み合わせが、最も摩擦係数が小さかった。
一方、基材10に窒化クロムCrNをコーティングしておらず、ディーゼルエンジンオイルにMoDTCを添加していないNo.1の組み合わせが、最も摩擦係数が大きかった。
実験例1により、基材10に窒化クロムCrNをコーティングし、且つ、ディーゼルエンジンオイルにMoDTCを添加すると、摩擦低減効果が良好に発揮されることが確認された。
実験例1と概略同様な条件で、潤滑条件を変化させて、低摩擦性能を比較した。
上述した様に、ゾンマーフェルト数Sは、 S=粘度×速度÷荷重 である。粘度を「kg・s/cm2」、速度を「cm/s」、荷重を平均ヘルツ応力として「kg/cm2」で計算(換算)すると、ゾンマーフェルト数Sは、「cm」で表現される。
実験例1と同様に、実験例2も、ススが含有していないディーゼルエンジンオイルを用いて、表1のNo.1〜No.4の各々について、摩擦係数を実験した。
すなわち、発明者の実験において、MoDTCを添加したディーゼルエンジンオイルと窒化クロムによる摺動部材のコーティングとの組み合わせにおける低摩擦性能が確認された潤滑条件は、ゾンマーフェルド数Sが「0.2×10−9cm」以上の領域のみであった。
ゾンマーフェルド数Sが「0.2×10−9cm」よりも小さいと、潤滑剤であるディーゼルエンジンオイルが潤滑膜を形成する境界摩擦の範疇を外れてしまい、固体接触を生じるドライ摩擦の範疇に属してしまうことよると推定される。ここで、ドライ摩擦の範疇に属してしまうと、摺動面で潤滑膜を十分に生成することはできない。
ゾンマーフェルド数Sが「1.0×10−9cm」よりも大きいと、いわゆる流体摩擦の範疇に属してしまい、MoDTCを添加したディーゼルエンジンオイルと窒化クロムコーティングとの組み合わせにおける低摩擦性能が発揮されなかったと推定される。流体摩擦の範疇に属している場合には、摺動面間には十分な潤滑剤が存在するが、潤滑剤の膜は生成しない。
実験例2から、MoDTCを添加したディーゼルエンジンオイルと窒化クロムによるコーティングとの組み合わせにおける低摩擦性能は、ゾンマーフェルド数Sが
0.2×10−9cm≦S≦1.0×10−9cm の範囲で発揮されることが確認された。
[実験例3]
MoDTCを添加したディーゼルエンジンオイル(VDS−4(DH−2)+MoDTC)と、窒化クロム(CrN)をコーティングした基材10を用いて、ゾンマーフェルド数S=0.42×10−9cmとして、上述した実験条件において、モリブデン含有量として500〜800ppmの範囲で100ppmずつ変化させて、低摩擦性能が発揮されるか否かを試験した。
ここで、上記ディーゼルエンジンオイルには、ススと同一の組成である炭素粒子(カーボンブラック)を2.0重量%だけ混入(添加)して、使用によりススが混入したディーゼルエンジンオイルに相当する潤滑剤にせしめた。
実験例3の実験結果を下表2で示す。
表2
表2において、MoDTCの添加量を、モリブデン含有量として600ppmとした場合の低摩擦性能は、「△」となっている。これは低摩擦性能は発揮されたが、モリブデン含有量として700〜1000ppmの場合ほどの低摩擦性能は確認されなかったことを示している。
実験例3より、MoDTC添加量が少ないと大きな摩擦低減効果は確認されないので、モリブデン含有量として600ppm以上添加するべきことが確認された。
換言すれば、実験例3により、カーボンブラックを添加したディーゼルエンジンオイルを用いた場合に、MoDTC添加量はモリブデン含有量として600〜1000ppmにするべきであることが確認できた。
MoDTCを添加した潤滑剤(VDS4 10W30+MoDTC)と、窒化クロムをコーティングした基材(CrN)を用いて、ゾンマーフェルド数S=0.42×10−9cmとして、MoDTCの添加量をモリブデン含量で700ppmにして、基材10の算術平均粗さを1〜4nmの範囲で0.5nmずつ変化させて、その他の条件は実験例1と同じにして、低摩擦性能が発揮されるか否かを試験した。
実験例4の実験結果を下表3で示す。
表3
基材10の算術平均粗さが2nmよりも小さいと、流体摩擦の範疇となってしまい、図1で示す様な装置では摩擦係数が計測できなかったと推測される。換言すれば、基材10の算術平均粗さが2nmより小さいと、潤滑剤が摺動部材間で潤滑膜を生成する境界摩擦の範疇に属しない。
実験例4により、基材10の算術平均粗さは2nm以上とするべきことが確認された。
MoDTCを添加した潤滑剤(VDS4 10W30+MoDTC)と、窒化クロムをコーティングした基材(CrN)を用いて、ゾンマーフェルド数S=0.42×10−9cmとして、MoDTCの添加量をモリブデン含量で700ppmにして、50〜70nmの範囲で5nmずつ変化させて、その他の条件は実験例1と同じにして、低摩擦性能が発揮されるか否かを試験した。
実験例5の実験結果を下表4で示す。
表4
基材10の算術平均粗さが60nmよりも小さいと、表面の凹凸が大きいため、摺動部材として機能しなかったと推測される。換言すれば、基材10の算術平均粗さが60nmより大きいと、境界摩擦(潤滑剤が摺動部材間で潤滑膜を形成)における摺動部材としては機能しない。
実験例5により、基材10の算術平均粗さが60nm以下にするべきことで確認された。
そして、実験例4、実験例5により、基材10の算術平均粗さは2nm〜60nmとするべきことが確認された。
実験例1では、未使用のディーゼルエンジンオイルを潤滑剤として用いて、潤滑剤にMoDTCを添加(700ppm)し、且つ、基材10に窒化クロムをコーティングした場合の摩擦低減効果を実験した。
それに対して、実験例6では未使用のディーゼルエンジンオイルに対して、ススと同一の組成である炭素粒子(カーボンブラック)を混入(添加)した潤滑剤を用いて実験を行った。ここで、カーボンブラックが添加されたディーゼルエンジンオイルは、外部からススが混入されたディーゼルエンジンオイルに相当する潤滑剤として、実験例6で採用されている。
ここで、ディーゼルエンジンオイルに添加したカーボンブラックの平均粒子径38mm(分布は30〜50mm)である。カーボンブラック含有量wt%は、潤滑オイルに外部から混入されたススに相当するパラメータとして、実験例6で採用されている。
その他の実験条件については、実験例1と同様である。
表5において、「ディスク試験片」における「コーティング」の列(縦の列)において、符号「−」で示す実施例(No.1〜9)では、基材10に窒化クロムはコーティングしていない。一方、当該列において、符号「CrN」で示す実施例(No.10〜15)では、基材10に窒化クロムはコーティングしている。
また、表5において、「潤滑油」における「摩擦調整剤」の列(縦の列)において、符号「−」で示す実施例(No.1〜3)では、ディーゼルエンジンオイル(符号「VDS−4(DH−2)で示す)にMoDTCを添加していない。一方、当該列において、符号「MoDTC」で示す実施例(No.4〜15)では、ディーゼルエンジンオイルにMoDTCを添加している。
そして、図2におけるプロット「●」は、基材10(Disc)とボール20(Ball)が共に高炭素クロム軸受鋼(SUJ2)であり、基材10には窒化クロムCrNがコーティングされておらず、ディーゼルエンジンオイルにはMoDTCが添加されていない実施例(No.1〜3)を示している。
プロット「○」は、基材10には窒化クロムCrNがコーティングされていないが、ディーゼルエンジンオイルにはMoDTCが添加されている実施例(No.4〜9)を示している。
プロット「△」は、基材10には窒化クロムCrNがコーティングされており、ディーゼルエンジンオイルにはMoDTCが添加されている実施例(No.10〜15)を示している。
また、図2から、基材10に窒化クロムCrNをコーティングした場合(プロット「△」:実施例No.10〜15)は、カーボンブラックを添加しても、基材10には窒化クロムCrNがコーティングされていない場合(プロット「●」および:プロット「○」:実施例No.1〜9)よりも摩擦係数が小さいことが明らかである。すなわち、窒化クロムCrNをコーティングすれば、カーボンブラックを添加しても、摩擦低減効果が発揮される。
しかし、発明者による実験では、カーボンブラック添加量が(ディーゼルエンジンオイルに対して)3.0wt%以下の範囲においては、基材10に窒化クロムCrNをコーティングした場合(プロット「△」:実施例No.10〜15)の摩擦係数は、窒化クロムCrNがコーティングしていない場合(プロット「●」および:プロット「○」:実施例No.1〜9)よりも摩擦係数が小さくなることが確認されている。
すなわち、実験例6においては、カーボンブラック添加量が3.0wt%以下の場合には、ディーゼルエンジンオイルにはMoDTCが添加し、且つ、窒化クロムCrNがコーティングされている実施例(プロット「△」:No.10〜15)は、窒化クロムCrNがコーティングされておらず、MoDTCも添加されていない実施例(プロット「●」:No.1〜3)や、窒化クロムCrNがコーティングされていないが、ディーゼルエンジンオイルにはMoDTCが添加されている実施例(プロット「○」:No.4〜9)に比較して、摩擦係数が小さくなることが確認された。
実験例6ではディーゼルエンジンオイルにカーボンブラックを添加して「ススが混入した潤滑剤」をシミュレートしている。
それに対して、実験例7ではディーゼルエンジン耐久試験で使用後の潤滑オイルを使用している。すなわち、実験例7は、実際にススが混入したディーゼルエンジンオイルを用いて、ススが混入した影響について実験した。
その他の条件については、実験例7は実験例6と同様である。
表5で説明したのと同様に、表6において、「ディスク試験片」における「コーティング」の列(縦の列)において、符号「−」で示す実施例(No.1〜8)では、基材10に窒化クロムはコーティングしていない。一方、当該列において、符号「CrN」で示す実施例(No.9〜12)では、基材10に窒化クロムはコーティングしている。
また、「潤滑油」における「摩擦調整剤」の列(縦の列)において、符号「−」で示す実施例(No.1〜4)では、ディーゼルエンジンオイルにMoDTCを添加していない。一方、当該列において、符号「MoDTC」で示す実施例(No.5〜12)では、ディーゼルエンジンオイルにMoDTCを添加している。
また図3において、縦軸は、計測された摩擦係数(平均摩擦係数)を示している。
プロット「○」は、基材10には窒化クロムCrNがコーティングされていないが、ディーゼルエンジンオイルにはMoDTCが添加されている実施例(No.5〜8)を示している。
プロット「△」は、基材10には窒化クロムCrNがコーティングされており、ディーゼルエンジンオイルにはMoDTCが添加されている実施例(No.9〜12)を示している。
また、図3から、基材10に窒化クロムCrNをコーティングした場合(プロット「△」:実施例No.9〜12)は、残留炭素増加量が増加しても、基材10には窒化クロムCrNがコーティングされていない場合(プロット「●」および:プロット「○」:実施例No.1〜8)よりも摩擦係数が小さいことが明らかである。すなわち、窒化クロムCrNをコーティングすれば、使用によりディーゼルエンジンオイル内にススが混入しても、摩擦低減効果が発揮される。
しかし、発明者による実験では、残留炭素増加量が(ディーゼルエンジンオイルに対して)3.0wt%以下の範囲においては、基材10に窒化クロムCrNをコーティングした場合(プロット「△」:実施例No.9〜12)の摩擦係数は、窒化クロムCrNがコーティングしていない場合(プロット「●」および:プロット「○」:実施例No.1〜8)よりも摩擦係数が小さくなることが確認されている。
すなわち、実験例7においては、使用によりディーゼルエンジンオイル内にススが混入しても、残留炭素増加量が(ディーゼルエンジンオイルに対して)3.0wt%以下の場合においては、ディーゼルエンジンオイルにはMoDTCが添加し、且つ、窒化クロムCrNがコーティングされている実施例(プロット「△」:No.9〜12)は、窒化クロムCrNがコーティングされておらず、MoDTCも添加されていない実施例(プロット「●」:No.1〜4)や、窒化クロムCrNがコーティングされていないが、ディーゼルエンジンオイルにはMoDTCが添加されている実施例(プロット「○」:No.5〜8)に比較して、摩擦係数が小さくなることが確認された。
実験例2では、ススが含有されていないディーゼルエンジンオイルを潤滑剤として、潤滑条件(ゾンマーフェルド数Sの範囲)を実験した。
それに対して、実験例5、実験例6で用いられたディーゼルエンジンオイルを用いて、潤滑条件を種々変化させて(ゾンマーフェルド数Sを変化して)、摩擦係数を計測した。
実験例7の他の条件については、実験例5、実験例6と同様である。
実験例7の結果が、図4で示されている。
0.2×10−9cm≦S≦1.0×10−9cm の範囲では、ディーゼルエンジンオイルにはMoDTCが添加し、且つ、窒化クロムCrNがコーティングされている実施例(プロット「△」)は、窒化クロムCrNがコーティングされておらず、MoDTCも添加されていない実施例(プロット「●」)や、窒化クロムCrNがコーティングされていないが、ディーゼルエンジンオイルにはMoDTCが添加されている実施例(プロット「○」)に比較して、摩擦係数が小さくなることが確認された。
換言すれば、ススが含有されていないディーゼルエンジンオイルを用いた実験例2により確認された潤滑条件(ゾンマーフェルド数Sの範囲)であれば、ススの含有量がディーゼルエンジンオイルに対して3.0wt%以下であれば、ディーゼルエンジンオイルにはMoDTCが添加し、且つ、窒化クロムCrNがコーティングされている場合(プロット「△」)に摩擦低減効果が発揮されることが、実験例7で確認された。
これに対して、本発明に第2実施形態では、PVD(物理蒸着)またはCVD(化学蒸着)によって、ディスク10に、窒化チタン(TiN)をコーティングしている。
第2実施形態のその他の構成及び作用効果は、実施形態1と同様である。
また、第2実施形態について、第1実施形態と同様な実験(実験例1〜実験例7と同様な実験)を行ったが、実験例1〜実験例7と同様な結果を得た。
第3実施形態のその他の構成及び作用効果は、実施形態1と同様である。
第3実施形態についても、第1実施形態と同様な実験(実験例1〜実験例7と同様な実験)を行った。第3実施形態における実験も、実験例1〜実験例7と同様な結果を得た。
第4実施形態のその他の構成及び作用効果も、実施形態1と同様である。
第3実施形態についても、第1実施形態と同様な実験(実験例1〜実験例7と同様な実験)を行った。第2実施形態および第3実施形態と同様に、第3実施形態における実験も、実験例1〜実験例7と同様な結果を得た。
例えば、図示の実施形態では、基材10およびボール20は、高炭素クロム軸受鋼(SUJ2)製であった。しかし、発明者の実験によれば、炭素量が0.15〜0.55重量%であり、焼入れ、焼戻し処理を施し、浸炭処理を施した鉄鋼材により、ボール20を構成した場合でも、第1〜第4実施形態と同様な実験結果が得られている。すなわち、高炭素クロム軸受鋼(SUJ2)に代えて、炭素量が0.15〜0.55重量%で、焼入れ、焼戻し、浸炭を施した鉄鋼材料を用いて、基材10およびボール20を製造しても良い。
20・・・ボール
P・・・荷重
F・・・摺動方向、摩擦力が作用する方向
Claims (2)
- ゾンマーフェルド数の粘度をkg・s/cm2、速度をcm/s、荷重をkg/cm2に換算した際に、0.2×10−9〜1.0×10−9の範囲内の潤滑条件で用いられ、鋼系材料製の摺動部材の少なくとも一方の摺動面が窒化物により被覆されており、摺動部材間にはディーゼルエンジンオイルに油溶性モリブデン化合物をモリブデン含量として600〜1000ppm添加した潤滑剤が介在しており、摺動部材の算術平均粗さが2〜60nmの範囲であり、ディーゼルエンジンオイルに含まれる量が3wt%以下であることを特徴とする摺動機構。
- 鋼系材料製の摺動部材の少なくとも一方の摺動面に窒化物を被覆し、摺動部材間にディーゼルエンジンオイルに油溶性有機モリブデン化合物をモリブデン含量として600〜1000ppm添加した潤滑剤を介在させており、摺動部材の算術平均粗さを2〜60nmにして、粘度をkg・s/cm2、速度をcm/s、荷重をkg/cm2に換算した際に、ゾンマーフェルド数が0.2×10−9〜1.0×10−9cmの範囲内となる潤滑条件で用い、ディーゼルエンジンオイルに含まれるススの量を3wt%以下にすることを特徴とする摺動機構の摩擦低減方法。
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