JPWO2018070362A1 - 潤滑油組成物 - Google Patents
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Abstract
Description
例えば、自動車に搭載されるディーゼルエンジンは、通常のガソリンエンジンに比べて、燃費性能の点で優れているが、窒素酸化物(NOx)や粒子状排出物質(パティキュレート)の排出量が多いという問題がある。
そのため、大気汚染抑制の観点から、ディーゼルエンジンから放出される排出ガス中の窒素酸化物や粒子状排出物質の低減が求められている。その対策として酸化触媒、ディーゼルパティキュレートフィルター等の排ガス後処理装置の開発が進められている。
そのため、ガソリンエンジンにおいても、ガソリンパティキュレートフィルターのような排ガス後処理装置を装着する必要がある。
そのため、硫酸灰分を低減化した潤滑油組成物が求められている。
特許文献1では、優れた清浄性能、摩耗防止性能、酸化安定性を兼ね備え、且つ低硫酸灰分化されたディーゼルエンジン油組成物の提供を目的としている。
[1]基油(A)、有機モリブデン系化合物(B)、及び下記条件(I)を満たす、粒子径が1〜1000nmであるナノオーダー粒子(C)(但し、成分(B)に該当するものを除く)を含む、潤滑油組成物。
条件(I):100℃動粘度が3〜4mm2/s、粘度指数が100〜130である試料油用パラフィン系鉱油に、対象となる、粒子径が1〜1000nmのナノオーダー粒子を分散させてなる試料油(α)に対して、共振ずり測定装置を用いて、固体表面間距離の変化に伴う弾性係数の値の変化を測定した際、下記式(i)を満たす固体表面間距離x0が、50≦x0<1000の範囲に存在する。
式(i):Emin×1.2=E(x0)
〔上記式(i)中、Emin[N/m]は、固体表面間距離が0.1[nm]以上1000[nm]未満の範囲での弾性係数の最小値を示す。E(x0)[N/m]は、固体表面間距離x0[nm]における弾性係数の値を示す。〕
本発明の潤滑油組成物は、基油(A)、有機モリブデン系化合物(B)、及び条件(I)を満たす、粒子径が1〜1000nmであるナノオーダー粒子(C)(但し、成分(B)に該当するものを除く)を含む。
ところで、本発明者らの検討によれば、条件(I)を満たす、粒子径が1〜1000nmであるナノオーダー粒子(C)(但し、成分(B)に該当するものを除く。以下、単に「ナノオーダー粒子(C)」ともいう)を含有させることで、せん断エネルギーをより発生させ易くなることを発見した。
そのため、有機モリブデン系化合物(B)と共に、さらにナノオーダー粒子(C)を含有させることで、ナノオーダー粒子(C)の存在に起因したせん断エネルギーの更なる促進によって、有機モリブデン系化合物(B)の反応被膜の形成がより進み、摩擦係数を更に低減させることができるということが分かった。
その結果、有機モリブデン系化合物(B)の含有量を少なくし、低硫酸灰分化された潤滑油組成物とした場合でも、良好な摩擦低減効果を十分に発現させることができ、省燃費性に優れる潤滑油組成物とすることができる。
また、本発明の一態様の潤滑油組成物の硫酸灰分は、下限値の制限は特に無いが、成分(B)の含有量を考慮すると、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.10質量%以上、更に好ましくは0.15質量%以上、より更に好ましくは0.20質量%以上である。
なお、本明細書において、硫酸灰分は、JIS K2272に準拠して測定した値を意味する。
ただし、本発明の一態様の潤滑油組成物において、成分(A)、成分(B)、及び成分(C)の合計含有量は、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、通常55質量%超、好ましくは60〜100質量%、より好ましくは70〜100質量%、更に好ましくは75〜100質量%、より更に好ましくは80〜100質量%である。
本発明の潤滑油組成物に含まれる基油(A)としては、鉱油であってもよく、合成油であってもよく、鉱油と合成油との混合油を用いてもよい。
なお、後述の「試料油用パラフィン系鉱油」は、あくまで試料油(α)の調製に使用されるものであり、本発明の潤滑油組成物に含まれる基油(A)とは区別されるものである。ただし、本発明の潤滑油組成物に含まれる基油(A)として、試料油(α)の調製に使用されるもの同じパラフィン系鉱油を用いてもよい。
これらの鉱油は、単独で又は2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、本発明の一態様で用いる鉱油としては、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、接触脱ろう、水素化精製等の精製処理を1つ以上施して得られる鉱油、及びGTLワックスを異性化することで得られる鉱油が好ましい。
また、上記精製処理を1つ以上施して得られる鉱油としては、米国石油協会(API:American Petroleum institute)基油カテゴリーのグループ2又はグループ3に分類される鉱油がより好ましい。
これらの合成油は、単独で又は2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、本発明の一態様で用いる合成油としては、ポリα−オレフィン、各種エステル、及びポリアルキレングリコールから選ばれる1種以上が好ましく、少なくともポリα−オレフィンを含むことがより好ましい。
基油(A)の100℃における動粘度が2.0mm2/s以上であれば、蒸発損失が少ないため好ましい。一方、基油(A)の100℃における動粘度が20.0mm2/s以下であれば、粘性抵抗による動力損失を抑えることができ、燃費改善効果が得られるため好ましい。
また、基油(A)が、鉱油及び合成油から選ばれる2種以上の混合油である場合、当該混合油の動粘度及び粘度指数が上記範囲であることが好ましい。
本発明の潤滑油組成物は、摩擦低減効果の高い潤滑油組成物とする観点から、有機モリブデン系化合物(B)を含有する。
有機モリブデン系化合物(B)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、得られる潤滑油組成物の低硫酸灰分化の観点から、有機モリブデン系化合物(B)のモリブデン原子換算での含有量は、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは1000質量ppm以下、より好ましくは900質量ppm以下、更に好ましくは850質量ppm以下、より更に好ましくは800質量ppm以下である。
これらの中でも、有機モリブデン系化合物(B)としては、ジチオカルバミン酸モリブデン(MoDTC)(B1)及びジチオリン酸モリブデン(MoDTP)(B2)から選ばれる1種以上を含むことが好ましく、ジチオカルバミン酸モリブデン(B1)を含むことがより好ましい。
ジチオカルバミン酸モリブデン(B1)としては、例えば、一分子中に2つのモリブデン原子を含む二核のジチオカルバミン酸モリブデン、及び、一分子中に3つのモリブデン原子を含む三核のジチオカルバミン酸モリブデンが挙げられる。
なお、本発明において、ジチオカルバミン酸モリブデン(B1)は、単独で又は2種以上を併用してもよい。
X11〜X18は、それぞれ独立に、酸素原子又は硫黄原子を示し、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。ただし、式(b1−1)中のX11〜X18の少なくとも二つは硫黄原子である。
なお、本発明の一態様においては、式(b1−1)中のX11及びX12が酸素原子であり、X13〜X18が硫黄原子であることが好ましい。
当該アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基等が挙げられる。
当該アルケニル基としては、例えば、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基等が挙げられる。
当該シクロアルキル基としては、例えば、シクロヘキシル基、ジメチルシクロヘキシル基、エチルシクロヘキシル基、メチルシクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、プロピルシクロヘキシル基、ブチルシクロヘキシル基、ヘプチルシクロヘキシル基等が挙げられる。
当該アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、ビフェニル基、ターフェニル基等が挙げられる。
当該アルキルアリール基としては、例えば、トリル基、ジメチルフェニル基、ブチルフェニル基、ノニルフェニル基、メチルベンジル基、ジメチルナフチル基等が挙げられる。
当該アリールアルキル基としては、例えば、フェニルメチル基、フェニルエチル基、ジフェニルメチル基等が挙げられる。
Mo3SkEmLnApQz (b1−3)
Eは、それぞれ独立に、酸素原子又はセレン原子であり、例えば、後述するコアにおいて硫黄を置換し得るものである。
Lは、それぞれ独立に、炭素原子を含有する有機基を有するアニオン性リガンドであり、各リガンドにおける該有機基の炭素原子の合計が14個以上であり、各リガンドは同一であってもよいし、異なっていてもよい。
Aは、それぞれ独立に、L以外のアニオンである。
Qは、それぞれ独立に、中性電子を供与する化合物であり、三核モリブデン化合物上における空の配位を満たすために存在する。
Lとしては、1価のアニオン性リガンドであるモノアニオン性リガンドであることが好ましく、具体的には、下記一般式(i)〜(iv)で表されるリガンドであることがより好ましい。
なお、前記一般式(b1−3)中、Lとして選択されるアニオン性リガンドとしては、前記一般式(iv)で表されるリガンドであることが好ましい。
また、前記一般式(b1−3)において、Lとして選択されるアニオン性リガンドは、すべて同一であることが好ましく、すべて前記一般式(iv)で表されるリガンドであることがより好ましい。
前記一般式(i)〜(iv)中、R31〜R35は、それぞれ独立に、有機基であり、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
R34及びR35として選択し得るそれぞれの有機基の炭素数は、好ましくは7〜30、より好ましくは7〜20、更に好ましくは8〜13である。
なお、R34の有機基と、R35の有機基とは、互いに同一であってもよく、異なっていてもよいが、互いに異なることが好ましい。また、R34の有機基の炭素数と、R35の有機基の炭素数とは、互いに同一であってもよく、異なっていてもよいが、互いに異なることが好ましい。
なお、「ヒドロカルビル基」とは、リガンドの残部に直接結合する炭素原子を有する置換基を示し、具体的には、以下のものが挙げられる。
1.炭化水素置換基
炭化水素置換基としては、アルキル基、アルケニル基等の脂肪族基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基等の脂環式基、芳香族基、脂肪族基及び脂環式基に置換された芳香核、環がリガンド中のもう一つの箇所を介して完結している環式基(即ち、任意の2つの示された置換基がともに脂環式基を形成してもよい)が挙げられる。
2.置換された炭化水素置換基
置換された炭化水素置換基としては、上記炭化水素置換基をヒドロカルビルの特性を変化させない非炭化水素基で置換したものが挙げられる。非炭化水素基としては、例えば、特にクロロ、フルオロ等のハロゲン基、アミノ基、アルコキシ基、メルカプト基、アルキルメルカプト基、ニトロ基、ニトロソ基、スルホキシ基等が挙げられる。
三核モリブデン−硫黄化合物は、また、アニオン電荷が−4を超える場合、モリブデン以外のカチオン、例えば、(アルキル)アンモニウム、アミン又はナトリウムを含んでいてもよい。アニオン性リガンド(L)及び他のアニオン(A)の好ましい実施形態は、4個のモノアニオン性のリガンドを有する構成である。
モリブデン−硫黄コア、例えば、上記(IV−A)及び(IV−B)で表される構造体は、1又は2以上の多座リガンド、即ち、モリブデン原子に結合して、オリゴマーを形成することが可能な官能基を1つより多く有するリガンドにより相互接続(interconnect)させることができる。
ジチオリン酸モリブデン(B2)としては、下記一般式(b2−1)で表される化合物、及び、下記一般式(b2−2)で表される化合物が好ましい。
なお、本発明において、ジチオリン酸モリブデン(B2)は、単独で又は2種以上を併用してもよい。
X1〜X8は、それぞれ独立に、酸素原子又は硫黄原子を示し、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。ただし、式(b2−1)中のX1〜X8の少なくとも二つは硫黄原子である。
なお、本発明の一態様においては、上記一般式(b2−1)中、X1及びX2が酸素原子であり、X3〜X8が硫黄原子であることが好ましい。
上記一般式(b2−2)において、上記と同様の観点から、X1〜X4中の硫黄原子と酸素原子とのモル比〔硫黄原子/酸素原子〕が、好ましくは1/3〜3/1、より好ましくは1.5/2.5〜2.5/1.5である。
R1〜R4として選択し得る具体的な当該炭化水素基としては、上述の一般式(b1−1)又は(b1−2)中のR11〜R14として選択し得る炭化水素基と同じものが挙げられる。
本発明の潤滑油組成物は、下記条件(I)を満たす、粒子径が1〜1000nmの粒子であるナノオーダー粒子(C)を含む。なお、ナノオーダー粒子(C)からは、成分(B)に該当するものは除かれる。
・条件(I):100℃動粘度が3〜4mm2/s、粘度指数が100〜130である試料油用パラフィン系鉱油に、対象となる、粒子径が1〜1000nmのナノオーダー粒子を分散させてなる試料油(α)に対して、共振ずり測定装置を用いて、固体表面間距離の変化に伴う弾性係数の値の変化を測定した際、下記式(i)を満たすx0が、50≦x0<1000の範囲に存在する。
式(i):Emin×1.2=E(x0)
〔上記式(i)中、Emin[N/m]は、固体表面間距離が0.1[nm]以上1000[nm]未満の範囲での弾性係数の最小値を示す。E(x0)[N/m]は、固体表面間距離x0[nm]における弾性係数の値を示す。〕
ただし、共通する構造を有し、相違点が表面修飾基の量やアルキル鎖の構造等の微差である2種以上のナノオーダー粒子については、同一のナノオーダー粒子と判断して、2種以上のナノオーダー粒子の混合物として、試料油(α)を調製して、条件(I)を満たすか否かの判断を行ってもよい。
また、本明細書において、パラフィン系鉱油とは、ASTM D−3238環分析(n−d−M法)により測定した、パラフィン分(%CP)が60以上の鉱油を意味する。
なお、後述のとおり、測定される「固体表面間距離ごとの弾性係数の値」については、ナノオーダー粒子の種類によって大きく変化するものであり、希釈油として用いられる「試料油用パラフィン系鉱油」の影響は、ナノオーダー粒子に比べると、極めて小さい。
条件(I)に記載の「共振ずり測定装置」は、対向する二面の固体表面の間に液体を挟み込み、対向する二面の固体表面に対して垂直方向に発生する表面力(斥力・引力)を表面間距離と同時に測定する表面力装置としての機能を有する。さらに当該装置は、共振ずり応答により、表面間に挟み込んだ液体の特性(構造化挙動、粘度、摩擦、潤滑、せん断抵抗)を評価する機能も有する。
図1は、共振ずり測定装置を用いて、実施例で調製した各種試料油(α)を対向する二面の固体表面の間に挟み込み、固体表面間距離を変化させ、固体表面間距離の変化に伴う弾性係数の値の変化を示すグラフである。
試料油用パラフィン系鉱油のみを測定対象の試料油として、固体表面間距離の変化に伴う弾性係数の値の変化を測定した場合、図1の試料油(α9)のグラフのように、固体表面間距離が50nm以上1000nm未満の範囲では、弾性係数の値にほとんど変化が見られない。つまり、当該範囲での弾性係数の最小値Eminの1.2倍以上の弾性係数の値となることはなく、固体表面間距離が50nm未満の範囲にて、弾性係数の値が最小値Eminの1.2倍以上となり、試料油の弾性の増加が確認される。
例えば、図1には、本願実施例で使用した「ナノオーダー粒子(1)〜(3)」をそれぞれ含む試料油(α1)〜(α3)について、固体表面間距離の変化に伴う弾性係数の値の変化が示されている。図1に示す試料油(α1)〜(α3)のグラフによれば、いずれも50nm以上1000nm未満の範囲に属する特定の固体表面間距離x0から、弾性係数が著しく上昇していることが判る。
つまり、上記条件(I)を満たすナノオーダー粒子(C)が存在することで、固体表面とナノオーダー粒子間でせん断エネルギーを発生し、そのせん断エネルギーによって有機モリブデン系化合物(B)の反応被膜の形成がより促進され、その結果、摩擦係数を更に低減させることができると考えられる。
例えば、図1に示されたように、本願の比較例で使用する「ナノオーダー粒子(7)」を含む試料油(α8)のグラフでは、試料油用パラフィン系鉱油のみの場合と同じように、固体表面間距離が50nm以上1000nm未満の範囲では、弾性係数の値にほとんど変化が見られない。
また、上述の固体表面間距離の測定対象の範囲から、前記式(i)を満たす固体表面間距離x0は、1000nm未満である。
この変化勾配|dE/dx|の値が大きい程、この固体表面間距離x0からdxだけ小さくした際のせん断エネルギーの変化量が大きく、有機モリブデン系化合物(B)の反応被膜の形成がより促進され、摩擦低減効果が高いものと考えられる。
本発明の一態様で用いるナノオーダー粒子(C)としては、前記式(i)を満たす固体表面間距離x0及び変化勾配|dE/dx|が上記範囲に属するように調整する観点から、無機粒子(C1)、及び/又は、金属サリシレート、金属フェネート、及び金属スルホネートから選ばれる1種以上の有機金属系粒子(C2)を含むことが好ましい。
このような有機粒子としては、例えば、ポリメチルメタクリレートやアクリル−スチレン共重合体等のアクリル樹脂、メラミン樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ベンゾグアナミン−ホルムアルデヒド縮合物、ベンゾグアナミン−メラミン−ホルムアルデヒド縮合物、メラミン−ホルムアルデヒド縮合物、シリコーン樹脂、フッ素系樹脂、及びポリエステル等からなる粒子が挙げられる。
ただし、潤滑油用添加剤として使用される、酸化防止剤、分散剤等は、基油中で1nm未満の粒子径で分散、溶解し、会合しにくいため、本発明で規定する「ナノオーダー粒子(C)」とはなり難い。
一方で、潤滑油用添加剤として使用される、粘度指数向上剤、流動点降下剤、消泡剤等の重合体や、コロイド粒子を形成し易い金属系清浄剤等は、調製によっては、上記条件(I)を満たすナノオーダー粒子(C)とすることも可能である。
本発明の一態様において、ナノオーダー粒子(C)としては、無機粒子(C1)を含むことが好ましい。
このような無機粒子(C1)としては、炭酸塩、硫酸塩、水酸化物、金属ナノ粒子、金属ナノチューブ、スメクタイト、ガラスビーズ、タルク、炭素系フィラー、及びシリカから選ばれる1種以上が好ましい。
これらの無機粒子(C1)であれば、粒子同士が会合して形成される凝集物がある程度硬くなり易く、上記条件(I)で規定する固体表面間距離x0は大きくなり易い。
硫酸塩としては、例えば、硫酸バリウム等が挙げられる。
水酸化物としては、例えば、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等が挙げられる。
金属ナノ粒子及び金属ナノチューブを構成する金属としては、例えば、酸化チタン、二酸化チタン、アルミナ、ベーマイト、酸化クロム、酸化ニッケル、酸化銅、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化亜鉛、及びこれらの複合酸化物等の酸化物や、金、銀、銅、鉄、アルミニウム、ニッケル、クロム、亜鉛等が挙げられる。
スメクタイトとしては、例えば、モンモリロナイト、バイデライト、ヘクトライト、サポナイト、スチブンサイト、ノントロナイト、ソーコナイト等が挙げられる。
カーボンナノ材料としては、カーボンナノチューブが好ましく、当該カーボンナノチューブは、1層の黒鉛シートが円筒状に閉じた構造を有する単層カーボンナノチューブであってもよく、2層以上の黒鉛シートが円筒状に閉じた構造を有する多層カーボンナノチューブであってもよい。
例えば、無機粒子(C1)として選択し得るシリカについては、反応性官能基を有する有機化合物等で表面修飾された有機修飾シリカ、アルミン酸ナトリウムや水酸化ナトリウム等の無機化合物で表面処理された無機修飾シリカ、並びに、これらの有機化合物及び無機化合物で表面処理された有機無機修飾シリカ、シランカップリング剤等の有機無機ハイブリッド材料で表面処理された有機無機修飾シリカ等であってもよい。
本明細書において、無機粒子(C1)の平均一次粒子径は、例えば、電子顕微鏡を用いて各粒子の一次粒子径を測定し、その算術平均径を「平均一次粒子径」とするほかに、動的光散乱法(光子相関法)により25℃で測定し、CONTIN法で解析した分散粒子径分布から算出した、散乱強度基準のメジアン径(50%粒子径(D50))を「平均一次粒子径」とすることができる。
なお、電子顕微鏡を用いた算出法においては、任意に選択した10〜100個の粒子の一次粒子径を測定し、その算術平均系を「平均一次粒子径」としてもよい。
本発明の一態様においては、上記条件(I)で規定する固体表面間距離x0は大きくなり易いナノオーダー粒子であるとの観点から、ナノオーダー粒子(C)としては、金属サリシレート、金属フェネート、及び金属スルホネートから選ばれる1種以上の有機金属系粒子(C2)を含むことが好ましい。
また、M’は、アルカリ土類金属原子であり、カルシウム原子、マグネシウム原子、又はバリウム原子が好ましく、カルシウム原子がより好ましい。
pはMの価数であり、1又は2である。
qは、0以上の整数であり、好ましくは0〜3の整数である。
Rは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜18の炭化水素基である。
Rとして選択し得る炭化水素基としては、例えば、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルケニル基、環形成炭素数3〜18のシクロアルキル基、環形成炭素数6〜18のアリール基、炭素数7〜18のアルキルアリール基、炭素数7〜18のアリールアルキル基等が挙げられる。
有機金属系粒子(C2)の塩基価としては、好ましくは100〜600mgKOH/g、より好ましくは120〜550mgKOH/g、更に好ましくは160〜500mgKOH/g、より更に好ましくは200〜450mgKOH/gである。
なお、本明細書において、「塩基価」とは、JIS K2501「石油製品および潤滑油−中和価試験方法」の7.に準拠して測定される過塩素酸法による塩基価を意味する。
なお、有機金属系粒子(C2)の90%粒子径は、動的光散乱法(光子相関法)により25℃で測定し、CONTIN法で解析した分散粒子径分布から算出した、散乱強度基準の90%粒子径(D90)であり、具体的には実施例に記載の方法に基づいて測定された値を意味する。
本発明の一態様の潤滑油組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、上記成分(B)〜(C)以外の潤滑油用添加剤を含有してもよい。
ただし、ここでいう潤滑油用添加剤は、成分(C)以外の添加剤であって、例えば、粒子径が1nm未満又は1000nm超の添加剤や、上記条件(I)を満たさない粒子径1〜1000nmの添加剤が該当する。
これらの潤滑油用添加剤は、単独で又は2種以上を併用してもよい。
本発明の一態様の潤滑油組成物の100℃における動粘度は、好ましくは3〜20mm2/s、より好ましくは3〜10mm2/s、更に好ましくは5〜8mm2/sである。
つまり、本発明の一態様の潤滑油組成物についても、上記要件(I)で規定する前記式満たすx0が、50≦x0<1000の範囲に存在することが好ましい。
なお、本発明の一態様の潤滑油組成物に対して測定した前記式(i)を満たすx0は、50以上であるが、有機モリブデン系化合物(B)の反応被膜の形成がより促進され、摩擦低減効果が高い潤滑油組成物とする観点から、好ましくは60nm以上、より好ましくは80nm以上、より好ましくは100nm以上、更に好ましくは120nm以上、更に好ましくは150nm以上、より更に好ましくは200nm以上、より更に好ましくは350nm以上であり、また、通常1000nm未満である。
摩擦係数が低い程、摩擦低減効果に優れるため、省燃費性に優れた潤滑油組成物であるといえる。なお、SRV試験のより具体的な条件は、実施例に記載の条件に基づくものである。
本発明の一態様の潤滑油組成物は、二輪車、四輪車等の自動車、発電機、船舶等のガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、ガスエンジン等の内燃機関用潤滑油として好ましく使用することができる。また、低硫酸灰分であるため、特に、排出ガス後処理装置(特に、パティキュレートフィルター又は排出ガス浄化装置)を装着した内燃機関(例えば、スーパーチャージャー、ターボチャージャー等の過給機を搭載した直噴ガソリンエンジン、すなわち、ダウンサイジングエンジン)用、及びディーゼルエンジン用に好適である。また、将来の排出ガス規制にも十分に対応することができる内燃機関用潤滑油組成物としても有用である。
そして、本発明の一態様の潤滑油組成物は、これらの内燃機関、特に、排出ガス後処理装置を装着したディーゼルエンジンに充填して、これら内燃機関に係る各部品を潤滑するために好適に用いられる。
JIS K 2283に準拠して測定した。
<粘度指数>
JIS K 2283に準拠して算出した。
<モリブデン原子、カルシウム原子、マグネシウム原子の含有量>
JPI−5S−38−92に準拠して測定した。
<ナノオーダー粒子(3)〜(8)の90%粒子径(D90)>
水素化精製基油「Yubase3」(商品名、SK Lubricants社製)に、測定対象となるナノオーダー粒子を、金属原子換算で1200質量ppmとなる量を添加し、測定試料を調製した。当該測定試料を、粒子径測定システム「ELSZ−1000S」(商品名、大塚電子株式会社製)を用いて、動的光散乱法(光子相関法)により25℃で測定した。分散粒子径分布はCONTIN法で解析し、散乱強度基準の90%粒子径(D90)を算出した。
<硫酸灰分>
JIS K2272に準拠して測定した。
(1)試料油(α1)〜(α10)の調製
以下に示すパラフィン系鉱油に、表1に示す配合量にて、以下のナノオーダー粒子(1)〜(8)をそれぞれ添加して、試料油(α1)〜(α8)及び(α10)をそれぞれ調製した。また、ナノオーダー粒子を配合せずに、下記のパラフィン系鉱油のみからなるものを試料油(α9)とした。
・「パラフィン系鉱油」:100℃動粘度=3.0mm2/s、粘度指数=104、%CP=77、API基油カテゴリーのグループ2に分類されるパラフィン系鉱油。
・「ナノオーダー粒子(1)」:カーボンブラック、三菱化学株式会社製、製品名「三菱(R)カーボンブラック MA100」、平均一次粒子径=24nm(製造会社のカタログ値)。
・「ナノオーダー粒子(2)」:コロイダルシリカ、日産化学工業株式会社製、製品名「IPA−ST−L」、平均一次粒子径=50nm(製造会社のカタログ値)。
・「ナノオーダー粒子(3)」:過塩基性カルシウムサリシレート、塩基価(過塩素酸法)=230mgKOH/g、カルシウム原子の含有量=8.0質量%、D90=280nm、有効成分量=60質量%。
・「ナノオーダー粒子(4)」:過塩基性カルシウムサリシレート、塩基価(過塩素酸法)=360mgKOH/g、カルシウム原子の含有量=13質量%、D90=280nm、有効成分量=60質量%。
・「ナノオーダー粒子(5)」:過塩基性カルシウムスルホネート、塩基価(過塩素酸法)=300mgKOH/g、カルシウム原子の含有量=12質量%、D90=400nm、有効成分量=50質量%。
・「ナノオーダー粒子(6)」:過塩基性マグネシウムサリシレート、塩基価(過塩素酸法)=400mgKOH/g、マグネシウム原子の含有量=7.7質量%、D90=380nm、有効成分量=50質量%。
・「ナノオーダー粒子(7)」:中性カルシウムスルホネート、塩基価(過塩素酸法)=30mgKOH/g、カルシウム原子の含有量=3.0質量%。
・「ナノオーダー粒子(8)」:過塩基性カルシウムフェネート、塩基価(過塩素酸法)=250mgKOH/g、カルシウム原子の含有量=8.8質量%、D90=358nm、有効成分量=50質量%。
共振ずり測定装置(アドバンス理工株式会社、製品名「RSM−1」)を用いて、固体表面間距離の変化に伴う試料油の弾性係数の値の変化を測定した。
具体的には、下記参考文献1に記載の方法に基づき、上記の共振ずり測定装置を用いて、室温(25℃)にて、清浄で平滑な雲母劈開面を対向させた二面間に、試料油(α1)〜(α10)のいずれかを約200μl滴下し、直行円筒形式で接触させた。固体表面間距離は、等色次数干渉縞法により算出した。
また、共振ずり応答については、共振ずりユニットに、電圧Uinを印加して水平方向の振動を発生させ、その振幅を静電容量計にて電圧Uoutを測定し、振動の強度〔Uout/Uin〕として評価した。得られた共振ずり応答(振動の強度〔Uout/Uin〕)を、下記参考文献1に記載の方法で解析することで、弾性係数を算出した。
・参考文献1:A new physical model for resonance shear measurement of confined liquids between solid surfaces, REVIEW OF SCIENTIFIC INSTRUMENTS 79, 113705 2008
そして、各固体表面間距離における弾性係数の値を基に、固体表面間距離の変化に伴う弾性係数の値の変化をグラフ化すると共に、前記式(i)を満たす固体表面間距離x0[nm]、並びに、当該固体表面間距離x0[nm]から固体表面間距離を微小量dx[nm]変化させた際の弾性係数の値の変化量を示す変化勾配|dE/dx|を算出した。結果を表1に示す。
実施例1〜8及び比較例1においては、基油として、上述の試料油の調製で使用したものと同じパラフィン系鉱油を用い、上述のナノオーダー粒子(1)〜(8)及び下記のMoDTC(1)を表2に示す配合量で添加し、潤滑油組成物(I)〜(VIII)及び(i)をそれぞれ調製した。
また、比較例2においては、上述のパラフィン系鉱油に、ナノオーダー粒子を配合せず、下記のMoDTC(1)を表2に示す配合量で添加し、潤滑油組成物(ii)を調製した。
・「MoDTC(1)」:アデカサクラルーブ515(株式会社ADEKA製)、モリブデン原子の含有量=10.0質量%、硫黄原子の含有量=11.5質量%。前記一般式(b1−2)中、X11〜X14が酸素原子、R11〜R14が、それぞれ独立に、炭素数が8又は13の炭化水素基である二核ジアルキルジチオカルバミン酸モリブデン。
<振動摩擦摩耗試験(SRV試験)>
SRV試験機(Optimol社製)を用い、下記の条件にて、調製した各潤滑油組成物の摩擦係数を測定した。摩擦係数が低い程、摩擦低減効果に優れるため、省燃費性に優れた潤滑油組成物であるといえる。
・テストピース:(a)ディスク:SUJ−2材、(b)シリンダー:SUJ−2材
・振幅:1.5mm
・周波数:50Hz
・荷重:400N
・温度:80℃
Claims (6)
- 基油(A)、有機モリブデン系化合物(B)、及び、下記条件(I)を満たす、粒子径が1〜1000nmであるナノオーダー粒子(C)(但し、成分(B)に該当するものを除く)を含む、潤滑油組成物。
条件(I):100℃動粘度が3〜4mm2/s、粘度指数が100〜130である試料油用パラフィン系鉱油に、対象となる、粒子径が1〜1000nmのナノオーダー粒子を分散させてなる試料油(α)に対して、共振ずり測定装置を用いて、固体表面間距離の変化に伴う弾性係数の値の変化を測定した際、下記式(i)を満たす固体表面間距離x0が、50≦x0<1000の範囲に存在する。
式(i):Emin×1.2=E(x0)
〔上記式(i)中、Emin[N/m]は、固体表面間距離が0.1[nm]以上1000[nm]未満の範囲での弾性係数の最小値を示す。E(x0)[N/m]は、固体表面間距離x0[nm]における弾性係数の値を示す。〕 - 前記式(i)を満たす固体表面間距離x0[nm]から、固体表面間距離を微小量dx[nm]変化させた際の弾性係数の値の変化量を示す変化勾配|dE/dx|が80[N/(m・nm)]以上である、請求項1に記載の潤滑油組成物。
- ナノオーダー粒子(C)が、無機粒子(C1)を含む、請求項1又は2に記載の潤滑油組成物。
- ナノオーダー粒子(C)が、金属サリシレート、金属フェネート、及び金属スルホネートから選ばれる1種以上の有機金属系粒子(C2)を含む、請求項1又は2に記載の潤滑油組成物。
- 有機モリブデン系化合物(B)のモリブデン原子換算での含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、10〜1000質量ppmである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
- 硫酸灰分が1.1質量%以下である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
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