JP2013101157A - ハウジングおよび機器 - Google Patents

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Abstract

【課題】加工の容易性が高く、且つ外装部品として要求される硬度、耐蝕性、美的外観等の表面性状を充分に備え、更にムーブメント等の被磁気シールド構成要素に対する磁気シールド機能も充分に備えたハウジングを用いることによって、商品としてのデザイン展開の自由度を高めることができ、更に専用の磁気シールド材を不要にして小型化を容易に実現することができる時計等の機器を提供すること。
【解決手段】外部磁場から磁気シールドされる対象の被磁気シールド構成要素1と、ハウジング60,70とを備えた機器であって、前記ハウジングは、表面にオーステナイト化された表面層61を有するフェライト系ステンレス鋼で構成され、内部のフェライト相63は前記被磁気シールド構成要素に対する磁気シールド機能を備える内層構造を有している。
【選択図】図1

Description

本発明は、外部磁場から磁気シールドされる対象の被磁気シールド構成要素と、ハウジングとを備えた例えば時計等の機器及び該機器の外装部品となるハウジング材の製造方法に関する。
例えば最近の時計には、駆動コイルとステーターとで電磁石を作り、永久磁石でできているローターとの反発を利用して該ローター自身を回転させて針を動かすステップモーターの仕組みを用いたムーブメントが搭載されているものがある。このようなムーブメントは強い外部磁場の影響を受けると正常な動作を行えなくなる場合がある。そのため、前記ムーブメントは、専用の磁気シールド材で覆われている。この専用の磁気シールド材を備えた従来の構造は図2に示されているが、その具体的な説明は本発明の実施例を説明する部分で対比しつつ行うことにする。
一方、時計の外装部品は、その商品特性として、硬度、耐蝕性、美的外観等の表面性状において一定以上の水準に達していることが必要である。また、時計の外装部品は、時計のデザイン展開或いは小型化を進める観点から所望の形状やサイズへの加工の容易性が必要である。
従来、フェライト系ステンレス鋼の合金粉末に有機バインダを混ぜて混連し、これを射出成形法により成形して、脱脂処理を施した後、焼結させることによる時計用外装部品の製造方法が提案されている(特許文献1)。この製造方法に係る時計用外装部品は、磁気シールド材として用いることができ、また加工の容易性もある。
しかし、フェライト系であるため、時計の外装部品として最も重要な硬度、耐蝕性、美的外観等の表面性状において不十分である。すなわち、外装部品の材料として用いるには現実的には不向きなものであると言える。
次に、オーステナイト系ステンレス鋼は強度や耐蝕性等の表面性状において優れていることから、その利点を活かして外装部品として利用されている。しかし、オーステナイト系ステンレス鋼は難加工材であるため、所望の形状への加工が難しく、加工コストの高騰を招いている。そこで、加工の容易なフェライト系ステンレス鋼を用いて先ず所望の形状の外装部品を加工して作り、その後に窒素ガスを用いたオーステナイト化処理をして、外装部品としての強度や耐蝕性等の表面性状を確保する方法が提案されている(特許文献2、特許文献3)。
しかし、フェライト系ステンレス鋼を用い、該フェライト系ステンレス鋼の状態で所望の形状の外装部品に加工し、その後に外装部品としての強度や耐蝕性等の表面性状を充分に確保するために窒素ガスを用いてオーステナイト化処理する限りの技術であり、オーステナイト化処理後のフェライト相の内層部の構造については全く考慮されていない。
窒素ガスを用いたオーステナイト化処理は、窒素原子が処理対象部材の表裏両面からフェライト相内へ進入し、所定の窒素濃度以上になった部分がオーステナイト相に変わることができる。窒素のフェライト相内への進入の移動速度は一様ではなく場所によりばらついている。その結果、窒素濃度も一様ではなく、オーステナイト化された表面層の部分と、フェライト相部分である内層部との境界には大きな凸凹ができる。オーステナイト化処理の程度によっては、両側のオーステナイト化された表面層が互いにつながってしまい、フェライト相の一様な層を維持することができず、内層部が分断されてしまうことがある。
フェライト相の内層部は分断されても外装部品としての表面性状には影響ないが、磁気シールド材としては影響がでる。即ち磁気シールド材としては不十分なものと言える。
特開平9−31505号公報 特開2004−68115号公報 特開2006−316338号公報
本発明の目的は、加工の容易性が高く、且つ外装部品として要求される硬度、耐蝕性、美的外観等の表面性状を充分に備え、更にムーブメント等の被磁気シールド構成要素に対する磁気シールド機能も充分に備えたハウジングを用いることによって、商品としてのデザイン展開の自由度を高めることができ、更に専用の磁気シールド材を不要にして小型化を容易に実現することができる時計等の機器を提供することにある。また、該機器の外装部品となるハウジング材の製造方法を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様は、外部磁場から磁気シールドされる対象の被磁気シールド構成要素と、ハウジングとを備えた機器であって、前記ハウジングは、表面にオーステナイト化された表面層を有するフェライト系ステンレス鋼で構成され、内部のフェライト相は前記被磁気シールド構成要素に対する磁気シールド機能を備える内層部を有していることを特徴とするものである。
本態様によれば、当該機器のハウジングは、フェライト系ステンレス鋼で構成されているので加工の容易性が高く、且つ表面にオーステナイト化された表面層を有するので外装部品として要求される硬度、耐蝕性、美的外観等の表面性状を充分に備え、更に内部のフェライト相は前記被磁気シールド構成要素に対する磁気シールド機能を充分に備える内層部を有しているのでムーブメント等の被磁気シールド構成要素に対する磁気シールド機能を充分に果たすことができる。従って、当該機器の商品としてのデザイン展開の自由度を高めることができ、更に専用の磁気シールド材を不要にして小型化を容易に実現することができる。
本発明の第2の態様は、前記第1の態様の機器において、前記内層部は、該内層部の前記オーステナイト化された表面層との境界領域を除いた一様な厚さのベース内層を備えていることを特徴とするものである。
窒素ガスを用いたオーステナイト化処理は、既述の如く、窒素原子が処理対象部材の表裏両面からフェライト相内へ進入し、所定の窒素濃度以上になった部分がオーステナイト相に変わることができる。そして、窒素のフェライト相内への進入の移動速度は一様ではなく場所によりばらついており、その結果、窒素濃度も一様ではないので、オーステナイト化された表面層の部分と、フェライト相部分である内層部との境界流域には大きな凸凹ができる。フェライト相部分が残っている場合でも、オーステナイト化処理の程度によって、両側のオーステナイト化された表面層が互いにつながってしまい、フェライト相の一様な層を維持することができず、内層部が分断されてしまうことがある。このように分断されると、磁気シールド機能が低下してしまう。
しかし本態様によれば、前記内層部は、該内層部の前記オーステナイト化された表面層との境界にできる凸凹部分を除いた一様な厚さのベース内層を備えているので、前記第1の態様の作用効果に加えて、前記分断に基づく問題の発生を防止し、磁気シールド機能を確実に具備させることができる。尚、このような一様な厚さのベース内層は、フェライト系ステンレス鋼基材の厚さに基づいてオーステナイト化処理の深さを設定することで確保することができる。
本発明の第3の態様は、前記第1の態様又は第2の態様の機器において、該機器は時計であり、前記被磁気シールド構成要素は時計内のムーブメントであり、前記構成のハウジングは時計の胴及び/又は前記ムーブメントに対向配置された裏蓋であることを特徴とするものである。
本態様によれば、時計内のムーブメントは磁気シールド機能を備えたハウジングである胴及び裏蓋によって覆われているので、前記第1の態様又は第2の態様の作用効果に加えて、外部磁場の影響を効果的に低減することができる。特に、前記ムーブメントに対向配置された裏蓋がフェライト相(内層)に基づく磁気シールド機能を有するので、従来必要とされていた専用の磁気シールド部材を不要にすることができ、以て時計全体としての小型化を容易に実現することができる。ムーブメントは精密機構が凝縮されているため、ムーブメント自体の小型化を進めることは限界に近いと言え、本発明による小型化は効果的であると言える。
本発明の第4の態様は、前記第3の態様の機器において、更に時計の文字板と前記ムーブメントの間に位置する下板が磁気シールド材で構成されていることを特徴とするものである。
時計の文字板は透明体(ガラスなど)で覆われているので、不透明なハウジングで覆うことはできない。本態様によれば、時計の文字板と前記ムーブメントの間に下板を配置し、該下板を磁気シールド材で構成したので、前記第3の態様の作用効果に加えて、文字板側における外部磁場の影響を低減することができる。
本発明の第5の態様は、前記第1の態様から第4の態様のいずれか一つの機器において、前記ハウジングは、Crが17〜25wt%のFe−Cr系のフェライト系ステンレス鋼を基材として、該基材の表面から窒素原子が添加されることによるオーステナイト化された前記表面層が前記フェライト相の内層を残した状態で設けられたものであることを特徴とするものである。
本態様によれば、前記ハウジングは、Crが17〜25wt%のFe−Cr系のフェライト系ステンレス鋼を基材とするので、外装部品としての必要な表面性状(硬度、耐蝕性、美的外観等)を備えるオーステナイト化された表面層と、前記被磁気シールド構成要素に対する磁気シールド機能を備える内層構造を有するフェライト相を容易且つ確実に構成することができる。
本発明の第6の態様は、前記第5の態様の機器において、前記基材中におけるNiの含有率が0.05wt%以下であることを特徴とするものである。
本態様によれば、金属アレルギーの発生等をより効果的に防止することができる。
本発明の第7の態様は、機器の外装部品となるハウジングの製造方法であって、フェライト系ステンレス鋼で所望の形状のハウジングを作り、該ハウジングの表面から窒素原子を吸収させて全体をオーステナイト化した後、急冷することによりオーステナイト単相に変換し、該オーステナイト単相を昇温した後、窒化クロムが生成する冷却速度で冷却することにより、表面はオーステナイト化された表面層のままで内部をフェライト相の内層に戻すことを特徴とするものである。
本態様によれば、窒素濃度としてオーステナイト化に必要な量が添加された状態でオーステナイト化処理を完結させることでフェライト系ステンレス鋼の全体をオーステナイト単相に変換する。この変換はオーステナイト化処理を複数回行ってもよい。
続いて該オーステナイト単相を昇温した後、窒化クロムが生成する冷却速度で冷却することにより、表面はオーステナイト化された表面層のままで内部をフェライト相の内層に戻すことができる。これは、窒化クロムが生成することにより、その部分の窒素濃度が減少するので、窒素濃度が小さい内部ではオーステナイト相は不安定となりフェライト相に変わるからである。表面層の部分でも窒化クロムは生成するが、窒素濃度が内部より大きいので窒化クロム生成によって窒素濃度が減少してもオーステナイト相は安定に存在することができる。このような方法でも当該ハウジングを製造することができる。
本発明の製造方法では、窒化クロムがオーステナイト化された表面層と、内部のフェライト相の両方、すなわち全体にわたって分散しているので、全体の強度が向上する効果が得られる。
本発明の参考形態に係る機器としての時計の部分概略断面図。 従来の時計の部分概略断面図。 本発明におけるハウジングの断面組織を説明する概略断面図。 内層が分断された状態のハウジングの断面組織を説明する概略断面図。 本発明の実施形態に係るハウジングの製造方法を説明する概略断面図。
[参考形態]
以下、本発明の参考形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の参考形態に係る機器としての時計(携帯時計)の部分概略断面図を示す。図2は従来の時計の部分概略断面図を示す。
図2に基づいて、先ず従来の構造を説明する。図2において、符号1はムーブメントを示し、該ムーブメント1の下面に磁性材料で形成された専用の磁気シールド材である裏板2が添設されている。ムーブメント1と文字板3との間にも磁気シールド材である下板4が添設され、側面にも磁気シールド材である中枠5が添設されている。
そして、外装部品であるハウジングを成す裏蓋6が前記裏板(専用の磁気シールド材)2を覆うように設けられ、同じくハウジングを成す胴7が前記中枠5を側方から覆うように前記裏蓋6に螺合により取り付けられている。ハウジングを成す裏蓋6及び胴7は、外装部品として要求される硬度、耐蝕性、美的外観等の表面性状を充分に備える材料で構成されている。磁気シールド性は、前記専用の磁気シールド材が設けられているので、前記裏蓋6及び胴7には要求されていない。尚、図2において、符号8はベゼル(縁)、符号9はガラス板を示す。
次に、図1に基づいて本発明の参考形態に係る時計の構造を説明する。本参考形態では、従来の裏板2は設けられていない。ムーブメント1の下面に裏蓋60が直接対向して配設されている。裏蓋60に胴70が螺合により取り付けられている。
図3に示したように、裏蓋60及び胴70は、表面にオーステナイト化された表面層61を有するフェライト系ステンレス鋼で構成されている。そして、内部のフェライト相部分である内層部63は、被磁気シールド構成要素であるムーブメント1に対する磁気シールド機能を備える内層構造を有している。この参考形態においては、内層部63は前記オーステナイト化された表面層61との境界領域にできる凸凹部分65,67を除いた一様な厚さのベース内層69を備える内層構造になっている。この参考形態では、ベース内層69の厚みは50μmである。ベース内層69の厚みは、当該時計自体の大きさと想定される外部磁場の大きさとの関係で設定される。少なくとも50μm程度の厚さを確保するのが好ましく、フェライト系ステンレス鋼基材の板厚によるが、大型の時計の場合に1000μm−2000μm程度にすることもできる。
前記裏蓋60及び胴70は、Crが17〜25wt%のFe−Cr系のフェライト系ステンレス鋼を基材として、該基材の表面から窒素原子が添加されることによるオーステナイト化された前記表面層61が前記フェライト相の内層部63を残した状態で設けられたものである。
尚、オーステナイト化された表面層61の厚みは、外装部品として要求される硬度、耐蝕性、美的外観等の表面性状に基づいて設定される。前記ベース内層69に相当するベース表面層の厚みとして、少なくとも5μm以上の厚さを確保するのが好ましい。大型の時計では2000μm程度にすることもできる。
図4は、ベース内層69を有しない内層構造を示す。オーステナイト化処理が内部深くまで進み、フェライト相部分である内層部63が分断されている。すなわち、オーステナイト化処理の程度によって、両側のオーステナイト化された表面層61,61が互いにつながってしまい、フェライト相の一様な層を維持することができず、内層部63が分断されてしまうことがある。内層部63がこのように分断された構造では磁気シールド機能が低下するので、少なくともベース内層69が残るようにオーステナイト化処理するのが望ましい。
図1に戻って説明を続ける。本参考形態の中枠50は従来と異なり、プラスチック等の非磁性材料で構成されている。前記裏蓋60及び胴70の磁気シールド機能により、中枠50に磁気シールド機能はなくてもよいからである。このように磁気シールド機能を無くせる分、中枠50自体を従来より小型軽量化することができる。尚、磁気シールド材としての下板4は、従来と同じ構成である。
図1において、胴70には巻真パイプ10が嵌入・固定され、この巻真パイプ10内には、りゅうず11の軸部12が回転可能に挿入されている。胴70とベゼル8とは、プラスチックパッキン13により固定され、ベゼル8とガラス板9とはプラスチックパッキン14により固定されている。また、胴70に対し裏蓋60が螺合されているが、これらの接合部(シール部)15には、リング状のゴムパッキン(裏蓋パッキン)16が圧縮状態で介挿されている。この構成によりシール部15が液密に封止され、防水機能が得られる。
りゅうず11の軸部12の途中の外周には、溝17が形成されている。この溝17内には、リング状のゴムパッキン(りゅうずパッキン)18が嵌合されている。ゴムパッキン18は、巻真パイプ10の内周面に密着し、該内周面と溝17の内面との間で圧縮される。この構成により、りゅうず11と巻真パイプ10との間が液密に封止され防水機能が得られる。なお、りゅうず11を回転操作したとき、ゴムパッキン18は軸部12と共に回転し、巻真パイプ10の内周面に密着しながら周方向に摺動する。
次に、上記参考形態の作用を説明する。
本参考形態によれば、当該時計のハウジングを成す裏蓋60及び胴70は、フェライト系ステンレス鋼で構成されているので加工の容易性が高く、且つ表面にオーステナイト化された表面層61を有するので外装部品として要求される硬度、耐蝕性、美的外観等の表面性状を充分に備えている。更に内部のフェライト相である内層部63は前記ムーブメント1に対する磁気シールド機能を充分に備える内層構造を有しているのでムーブメント1に対する磁気シールド機能を充分に果たすことができる。従って、当該時計の商品としてのデザイン展開の自由度を高めることができ、更に専用の磁気シールド材2、5を不要にして小型化を容易に実現することができる。
前記小型化の実現について具体的に説明する。すなわち、時計のムーブメント1に対向配置された当該裏蓋60がその内層(フェライト相)部63に基づく磁気シールド機能を有するので、従来必要とされていた専用の磁気シールド材2を不要にすることができ、以て時計全体としての小型化を容易に実現することができる。繰り返しになるが、ムーブメント1は精密機構が凝縮されているため、ムーブメント自体の小型化を進めることは限界に近いと言え、本参考形態による小型化は効果的であると言える。
更に本参考形態によれば、前記内層構造は、該内層部63の前記オーステナイト化された表面層61との境界にできる凸凹部分65,67を除いた一様な厚さのベース内層69を備えているので、図4に示したような分断に基づく問題の発生を防止し、磁気シールド機能を確実に具備させることができる。尚、このような一様な厚さのベース内層69は、フェライト系ステンレス鋼基材の厚さに基づいてオーステナイト化処理の深さを設定することで確保することができる。
以上の説明では、時計の前記裏蓋60及び胴70の両方が、外装部品としての硬度、耐蝕性、美的外観等の表面性状と、更に磁気シールド機能を併せ持った材料(オーステナイト化表面層を有するフェライト系ステンレス鋼)で構成されているが、時計の仕様に応じて、前記裏蓋60と胴70のいずれか一方だけが当該材料で構成され、他方は外装部品としての前記表面性状だけを考慮された他の材料で構成することも可能である。
[実施形態]
上記参考形態では、ハウジング(前記裏蓋60及び胴70)は、フェライト系ステンレス鋼を基材として、該基材の表面から窒素原子が添加されることによるオーステナイト化された前記表面層61が前記フェライト相の内層部63を残した状態で設けられたものであるが、以下のように製造することも可能である。
フェライト系ステンレス鋼で所望の形状のハウジングを作り、該ハウジングの表面から窒素原子を吸収させて全体をオーステナイト化した後、急冷することによりオーステナイト単相に変換する。そして、該オーステナイト単相を昇温した後、窒化クロムが生成する冷却速度で冷却する。これにより、図5に模式的に示したように、表面はオーステナイト化された表面層61のままで内部をフェライト相の内層部63に戻すことができる。図5はオーステナイト相から戻されたフェライト相の量が未だ少ない状態を示し、フェライト相部分が点在している。フェライト相に戻される量が更に増えることで図3に示した内層構造にまで至らせることができる。
この製造方法によれば、窒素濃度としてオーステナイト化に必要な量が添加された状態でオーステナイト化処理を完結させることでフェライト系ステンレス鋼の全体をオーステナイト単相に変換することができる。この変換はオーステナイト化処理を複数回行って実現してもよい。
続いて該オーステナイト単相を昇温した後、窒化クロムが生成する冷却速度で冷却することにより、表面はオーステナイト化された表面層のままで内部をフェライト相の内層部に戻すことができる。これは、窒化クロムが生成することにより、その部分の窒素濃度が減少するので、窒素濃度が小さい内部ではオーステナイト相は不安定となりフェライト相に変わるからである。表面層の部分でも窒化クロムは生成するが、窒素濃度が内部より大きいので窒化クロム生成によって窒素濃度が減少してもオーステナイト相は安定に存在することができる。このような方法でも当該ハウジングを製造することができる。
この製造方法では、窒化クロムがオーステナイト化された表面層61と、内部のフェライト相の内層部63の両方、すなわち全体にわたって分散しているので、全体の強度が向上する。
〈フェライト系ステンレス鋼の説明〉
本発明におけるハウジングの材料となるフェライト系ステンレス鋼について説明する。該ハウジングの材料となるフェライト系ステンレス鋼基材は、Fe−Cr系合金であれば特定のものに限定されないが、以下のような条件を満足するものであるのが好ましい。
ハウジングを構成するFe−Cr系合金は、Crの含有率が15〜25wt%であるのが好ましく、17〜22wt%であるのがより好ましい。Crの含有率が前記範囲内の値であると、良好な耐蝕性、外観、加工性および磁気遮蔽性(磁気シールド性)が得られる。これに対し、Crの含有率が前記下限値未満であると、耐蝕性が十分に得られない虞がある。一方、Crの含有率が前記上限値を超えると、磁気遮蔽性が十分に得られず、例えば、時計用のハウジングとして用いた場合に、時計のムーブメントが外部磁場によって悪影響を受けるのを十分に防止するのが困難になる虞がある。
また、ハウジングを構成するFe−Cr系合金は、Fe、Cr以外の成分(元素)を含むものであってもよい。これにより、各成分(元素)に応じた固有の効果が発揮される。このような成分(元素)としては、例えば、Mo、Nb、Mn、Si、Zr、Ti等が挙げられる。
例えば、ハウジングを構成するFe−Cr系合金がMoを含むものであると、既述のオーステナイト化表面層61の生成時における、基材の表面付近への窒素原子の導入(例えば、結晶粒界への拡散)を効率良く進行させることができるとともに、外装部品としての耐蝕性を特に優れたものとすることができる。基材を構成するFe−Cr系合金中におけるMoの含有率は、1.0〜4.0wt%であるのが好ましく、1.5〜3.5wt%であるのがより好ましい。
Moの含有率が前記範囲内の値であると、外装部品としての美的外観を特に優れたものとしつつ、オーステナイト化表面層61の生成時における、基材の表面付近への窒素原子の導入(例えば、結晶粒界への拡散)を効率良く進行させることができるとともに、外装部品としての耐蝕性を特に優れたものとすることができる。
これに対し、Moの含有率が前記下限値未満であると、外装部品としての耐蝕性を他の成分の含有率等によっては十分に優れたものとするのが困難になる虞がある。また、Moの含有率が前記下限値未満であると、オーステナイト化表面層61の生成時における、基材の表面付近への窒素原子の導入(例えば、結晶粒界への拡散)を十分に効率良く進行させるのが困難になる虞がある。一方、Moの含有率が前記上限値を超えると、オーステナイト化表面層61の構成組織の不均質化が顕著になり、さらにFeとCrとMoによる析出物ができてしまい、外装部品としての審美性が低下する虞がある。
また、ハウジングを構成するFe−Cr系合金がNbを含むものであると、オーステナイト化表面層61の硬度が向上し、外装部品としての耐擦傷性、耐打痕性等を特に優れたものとすることができる。ハウジングを構成するFe−Cr系合金中におけるNbの含有率は、0.08〜0.28wt%であるのが好ましく、0.10〜0.25wtであるのがより好ましい。Nbの含有率が前記範囲内の値であると、外装部品としての美的外観を特に優れたものとしつつ、耐久性(耐擦傷性、耐打痕性等)を特に優れたものとすることができる。これに対し、Nbの含有率が前記下限値未満であると、上記のようなNbを含むことによる効果が十分に発揮されない虞がある。一方、Nbの含有率が前記上限値を超えると、外装部品としての耐蝕性が低下するという問題が発生する虞がある。
また、ハウジングを構成するFe−Cr系合金は、実質的にNiを含まないかその含有率が十分に小さいものであるのが好ましい。これにより、オーステナイト化表面層61の形成時における、基材の表面付近への窒素原子の導入(例えば、結晶粒界への拡散)を効率良く進行させることができ、外装部品としての耐蝕性、耐久性を特に優れたものとすることができる。また、磁気遮蔽性も優れたものとなり、例えば、時計用外装部品として適用したときに、時計のムーブメントが外部磁場によって悪影響を受けるのをより確実に防止することができる。また、金属アレルギーの発生等をより効果的に防止することができる。ハウジングを構成するFe−Cr系合金中におけるNiの含有率は、0.05wt%以下であるのが好ましく、0.01wt%以下であるのがより好ましい。これにより、前述した効果がさらに顕著なものとして発揮される。
また、ハウジングを構成するFe−Cr系合金は、実質的にCを含まないかその含有率が十分に小さいものであるのが好ましい。これにより、より効果的に、成形時に耐蝕性の低下を最小限に抑えることができる。該Fe−Cr系合金中におけるCの含有率は、0.02wt%以下であるのが好ましく、0.01wt%以下であるのがより好ましい。これにより、前述した効果がさらに顕著なものとして発揮される。
また、ハウジングを構成するFe−Cr系合金は、実質的にSを含まないかその含有率が十分に小さいものであるのが好ましい。これにより、外装部品としての耐蝕性を特に優れたものとすることができる。該Fe−Cr系合金中におけるSの含有率は、0.02wt%以下であるのが好ましく、0.01wt%以下であるのがより好ましい。これにより、前述した効果がさらに顕著なものとして発揮される。
また、ハウジングを構成するFe−Cr系合金は、実質的にPを含まないかその含有率が十分に小さいものであるのが好ましい。これにより、外装部品としての耐蝕性を特に優れたものとすることができる。該Fe−Cr系合金中におけるPの含有率は、0.07wt%以下であるのが好ましく、0.05wt%以下であるのがより好ましい。これにより、前述した効果がさらに顕著なものとして発揮される。
上述したように、基材の表面付近には、窒素原子が添加されることにより、オーステナイト化されたオーステナイト化表面層61が設けられている。
このようなオーステナイト化表面層61を有することにより、外装部品としては、優れた硬度を有し、耐擦傷性(傷の付き難さ)、耐打痕性(打痕の付き難さ)等に優れたものとなる。特に、基材が主としてFe−Cr系合金で構成されたものであるとともに、オーステナイト化表面層61を有するものであることにより、外装部品としては、優れた美的外観を有するとともに、高硬度で、耐擦傷性、耐打痕性、耐蝕性等に優れたものとなる。したがって、外装部品としては、耐久性に優れ、長期間にわたって優れた美的外観を保持することができる。
また、オーステナイト化表面層61中における窒素の含有率は、0.3〜1.2wt%であるのが好ましく、0.8〜1.2wt%であるのがより好ましい。オーステナイト化層22中における窒素の含有率が前記範囲内の値であると、外装部品としての美的外観および耐久性を特に優れたものとすることができる。これに対し、オーステナイト化層22中における窒素の含有率が前記下限値未満であると、オーステナイト化表面層61の厚さ等によっては、外装部品としてとしての硬度、耐久性(耐擦傷性、耐打痕性、耐蝕性等)を十分に優れたものとするのが困難になる虞がある。一方、オーステナイト化表面層61中における窒素の含有率が前記上限値を超えると、オーステナイト化表面層61の厚さ等によっては、窒素の含有量をコントロールすることが困難になり、窒素を添加するのに長時間あるいは複雑な設備が必要になる。
外装部品としては、オーステナイト化表面層61が設けられた部位におけるビッカース硬度Hvが、350以上であるのが好ましく、400以上であるのがより好ましく、450以上であるのがさらに好ましい。ビッカース硬度Hvが前記下限値未満であると、外装部品としての用途によっては、十分な耐擦傷性等が得られない虞がある。
〈ハウジングの製造方法〉
次に、上述したような外装部品としてのハウジング製造方法について説明する。
《基材準備工程》
基材は、主として、上述したFe−Cr系のフェライト系ステンレス鋼で構成されたものである。基材は、通常、製造すべき外装部品としての対応する形状に予め成形される。該フェライト系ステンレス鋼は、一般に加工が容易であるため、時計用外装部品のような複雑で微細な形状のハウジングであっても、容易かつ確実に成形することができる。
外装部品としての製造に用いられる基材に対しては、オーステナイト化処理工程に先立ち、例えば、鏡面加工、スジ目加工、梨地加工等の表面加工が施されてもよい。これにより、得られる外装部品としての表面の光沢具合にバリエーションを持たせることが可能となり、得られる外装部品としての装飾性をさらに向上させることができる。鏡面加工は、例えば、周知の研磨方法を用いて行うことができ、例えば、バフ(羽布)研磨、バレル研磨、その他の機械研磨等を採用することができる。
《オーステナイト化処理工程》
次に、フェライト系ステンレス鋼基材に対して、オーステナイト化処理を施す。これにより、基材の表面付近にオーステナイト化表面層61が形成され、それ以外の部位がフェライト相の内層部63となる(図3)。
オーステナイト化処理は、特定の方法に限定されないが、窒素雰囲気下で熱処理を施し、その後、急冷する急冷処理を施すことにより行うのが好ましい。これにより、基材の表面荒れ等の不都合の発生を十分に防止しつつ、効率良くオーステナイト化表面層61を形成することができる。
また、本工程での熱処理は、基材が置かれた空間を、所定の速度で昇温し、その後、所定の温度(保持温度)Tに保持することにより行うのが好ましい。
熱処理時の昇温速度は、特に限定されないが、5〜20℃/分であるのが好ましく、5〜15℃/分であるのがより好ましい。昇温速度が前記範囲内の値であると、構成組織が肥大化するのをより効果的に防止することができる。これに対し、昇温速度が前記下限値未満であると、熱処理の時間が長くなり構成組織が肥大化し易くなるとともに、外装部品としての生産コストが高くなる傾向を示す。一方、昇温速度が前記上限値を超えると、熱処理設備への負荷が大きくなる虞がある。
また、熱処理時における保持温度Tは、特に限定されないが、950〜1300℃であるのが好ましく、1000〜1200℃であるのがより好ましい。保持温度が前記範囲内の値であると、基材の変形、表面荒れ等の不都合の発生を十分に防止しつつ、好適なオーステナイト化表面層61を効率良く形成することができる。これに対し、保持温度が前記下限値未満であると、基材のオーステナイト化が十分に進行しない虞がある。一方、保持温度が前記上限値を超えると、基材の変形、表面荒れ等の不都合の発生を十分に防止するのが困難となり、外装部品としての美的外観が低下する虞がある。なお、保持温度Tは、所定の温度範囲で変動するものであってもよい。このような場合、保持温度Tの最大値と最小値とがいずれも上記範囲内の値であるのが好ましい。
また、熱処理時において基材を950℃以上に保持する時間としての保持時間は、3〜48時間であるのが好ましく、10〜30時間であるのがより好ましい。保持時間が前記範囲内の値であると、基材の変形、表面荒れ等の不都合の発生を十分に防止しつつ、好適なオーステナイト化表面層61を効率良く形成することができる。これに対し、保持時間が前記下限値未満であると、基材のオーステナイト化が十分に進行しない虞がある。一方、保持時間が前記上限値を超えると、基材の変形、表面荒れ等の不都合の発生を十分に防止するのが困難となり、外装部品としての美的外観が低下する虞がある。また、保持時間が前記上限値を超えると、外装部品の生産性が低下する。
また、急冷処理時の冷却速度(例えば、基材の温度が、保持温度Tから100℃になる際の冷却速度)は、特に限定されないが、80℃/秒以上であるのが好ましく、100〜300℃/秒であるのがより好ましい。これにより、硬度が特に高く、より均質なオーステナイト化表面層61を形成することができ、外装部品としての美的外観および耐久性を特に優れたものとすることができる。これに対し、冷却速度が前記下限値未満であると、冷却時に基材を構成するCrが窒素と不本意な反応を起こしてしまい、耐蝕性が低下するという問題が生じる虞がある。
以上の説明では、外装部品であるハウジングは、内層部63とオーステナイト化表面層61とを有する基材からなるものであるとして説明したが、本発明のハウジングは、基材以外の構成要素を有するものであってもよい。例えば、オーステナイト化表面層61の表面に少なくとも1層の公知の被覆層を有していてもよい。これにより、外装部品としての耐蝕性、耐候性、耐水性、耐油性、耐擦傷性、耐打痕性、耐摩耗性、耐変色性、防錆性、防汚性、防曇性等の特性をさらに優れたものとすることができる。
また、本発明の装飾品は、前述したような方法により製造されたものに限定されるものではない。
次に、本発明におけるハウジングの具体的参考例について説明する。
1.ハウジングの製造
(参考例1)
以下に示すような方法により、ハウジング(腕時計の裏蓋)を製造した。
まず、Feを主成分とするFe−Cr系のフェライト系ステンレス鋼基材を用意した。この基材は、Fe−18.3wt%Cr−2.25wt%Mo−0.15wt%Nb−0.26wt%Mn−0.006wt%C−0.001wt%S−0.022wt%P−0.21wt%Siという組成を有するものであり、主としてフェライト相で構成されたものであった。なお、これら以外の不可避的不純物として含まれる各元素の含有率は、いずれも、0.001wt%未満であった。
次に、この基材を用いて、鍛造により、腕時計の裏蓋の形状を有する基材を作製し、その後、必要箇所を切削、研磨した。
次に、この基材を洗浄した。基材の洗浄としては、まず、アルカリ電解脱脂を30秒間行い、次いで、アルカリ浸漬脱脂を30秒間行った。その後、中和を10秒間、水洗を10秒間、純水洗浄を10秒間行った。
このようにして洗浄を行った基材の表面に、オーステナイト化表面層を形成するためのオーステナイト化処理を施し、腕時計の裏蓋を得た。
オーステナイト化処理は、以下に説明するような方法により行った。
まず、グラファイトファイバー等の断熱材で囲まれた処理室と、処理室内を加熱する加熱手段と、処理室内を減圧する(排気する)減圧手段と、処理室内に窒素ガスを導入する窒素ガス導入手段とを有するオーステナイト化処理装置を用意した。
次に、このオーステナイト化処理装置の処理室内に前記基材を設置し、その後、減圧手段により処理室内を2Paまで減圧した。
次に、減圧手段により処理室内の排気を行いつつ、窒素ガス導入手段により2リットル/分の速度で窒素ガスを処理室内に導入し、処理室内の圧力を0.08〜0.12MPaに保持した。この状態で、加熱手段により処理室内の温度を5℃/分の速度で、1200℃まで上昇させた。
処理室内の温度を1200℃で12時間保持した後、前記基材を水冷により30℃まで急冷した。該基材を1200℃から30℃までの冷却する際の冷却速度は、平均150℃/秒であった。
これにより、基材の表面付近に、窒素原子が導入されオーステナイト化されたオーステナイト化表面層61が形成された腕時計の裏蓋60が得られた。形成されたオーステナイト化表面層61の厚さは350μmであった。また、オーステナイト化表面層61中の窒素の含有率は0.9wt%であった。
(参考例2〜7)
参考例2〜7は、基材を構成するFe−Cr系のフェライト系ステンレス鋼の組成、及びオーステナイト化処理の条件が表1に示したように参考例1と相違しているだけである。その相違以外は、前記参考例1と同様にして腕時計の裏蓋を製造した。
(比較例1)
オーステナイト化処理を施さなかった以外は、前記参考例1と同様にして腕時計の裏蓋を製造した。すなわち、本比較例では、鍛造により得られた基材をそのまま裏蓋とした。
(比較例2)
以下に示すような方法により、腕時計の裏蓋を製造した。
まず、フェライト系ステンレス鋼(主としてFeで構成され、Fe−21.63wt%Cr−2.28wt%Mo−0.12wt%Nb−0.06wt%S−0.45wt%Mn−0.8wt%Si−0.018wt%P−0.04wt%Cという組成を有するもの)の金属粉末を用意した。この金属粉末の平均粒径は、10μmであった。
この金属粉末:75vol%と、ポリエチレン:8vol%と、ポリプロピレン:7vol%と、パラフィンワックス:10vol%とからなる材料を混練した。前記材料の混練には、ニーダーを用いた。また、混練時における材料温度は60℃であった。
次に、得られた混練物を粉砕、分級して平均粒径3mmのペレットとした。このペレットを用いて、射出形成機にて金属粉末射出成形(MIM)し、腕時計の裏蓋の形状を有する成形体を製造した。このとき成形体は、脱バインダー処理、焼結時での収縮を考慮して成形した。射出成形時における成形条件は、金型温度40℃、射出圧力80kgf/cm2、射出時間20秒、冷却時間40秒であった。
次に、前記成形体に対して、脱脂炉を用いた脱バインダー処理を施し、脱脂体を得た。この脱バインダー処理は、1.0×10−1Paのアルゴンガス雰囲気中、80℃で1時間、次いで、10℃/時間の速度で400℃まで昇温した。熱処理時におけるサンプルの重さを測定し、重量低下がなくなった時点を脱バインダー終了時点とした。
次に、このようにして得られた脱脂体に対し、焼結炉を用いて焼結を行い、基材を得た。この焼結は、1.3×10−3〜1.3×10−4Paのアルゴンガス雰囲気中で、900〜1100℃×6時間の熱処理を施すことにより行った。
以上のようにして得られた基材について、その必要箇所を切削、研磨し、腕時計の裏蓋を得た。
(比較例3)
以下に示すような方法により、腕時計の裏蓋を製造した。
まず、オーステナイト系ステンレス鋼(主としてFeで構成され、Fe−18wt%Cr−2.5wt%Mo−0.03wt%S−2wt%Mn−0.8wt%Si−0.04wt%P−0.03wt%C−15wt%Niという組成を有するもの)の金属粉末を用意した。この金属粉末の平均粒径は、10μmであった。
この金属粉末:75vol%と、ポリエチレン:8vol%と、ポリプロピレン:7vol%と、パラフィンワックス:10vol%とからなる材料を混練した。前記材料の混練には、ニーダーを用いた。また、混練時における材料温度は60℃であった。
次に、得られた混練物を粉砕、分級して平均粒径3mmのペレットとした。このペレットを用いて、射出形成機にて金属粉末射出成形(MIM)し、腕時計ケース(裏蓋)の形状を有する成形体を製造した。このとき成形体は、脱バインダー処理、焼結時での収縮を考慮して成形した。射出成形時における成形条件は、金型温度40℃、射出圧力80kgf/cm、射出時間20秒、冷却時間40秒であった。
次に、前記成形体に対して、脱脂炉を用いた脱バインダー処理を施し、脱脂体を得た。この脱バインダー処理は、1.0×10−1Paのアルゴンガス雰囲気中、80℃で1時間、次いで、10℃/時間の速度で400℃まで昇温した。熱処理時におけるサンプルの重さを測定し、重量低下がなくなった時点を脱バインダー終了時点とした。
次に、このようにして得られた脱脂体に対し、焼結炉を用いて焼結を行い、基材を得た。この焼結は、1.3×10−3〜1.3×10−4Paのアルゴンガス雰囲気中で、900〜1100℃×6時間の熱処理を施すことにより行った。
以上のようにして得られた基材について、その必要箇所を切削、研磨し、腕時計の裏蓋を得た。
各参考例および各比較例について、用いた基材の組成、オーステナイト化処理の条件、オーステナイト化表面層の条件を表1にまとめて示す。
Figure 2013101157
2.ハウジングの外観評価
前記各参考例および各比較例で製造した各時計の裏蓋について、目視および顕微鏡による観察を行い、これらの外観を以下の4段階の基準に従い、評価した。
◎:外観優良
○:外観良
△:外観やや不良
×:外観不良
3.表面層の耐擦傷性評価
前記各参考例および各比較例で製造した各裏蓋について、以下に示すような試験を行い、耐擦傷性を評価した。
真鍮製のブラシを、各裏蓋の表面上に押し付け、50往復摺動させた。このときの押し付け荷重は、0.2kgfであった。
その後、裏蓋表面を目視により観察し、これらの外観を以下の4段階の基準に従い、評価した。
◎:表面層の表面に、傷の発生が全く認められない
○:表面層の表面に、傷の発生がほとんど認められない
△:表面層の表面に、傷の発生がわずかに認められる
×:表面層の表面に、傷の発生が顕著に認められる
4.ハウジングの耐打痕性評価
前記各参考例および各比較例で製造した各裏蓋について、以下に示すような試験を行うことにより、耐打痕性を評価した。
SUS鉱製の球(径1cm)を、各裏蓋の上方で高さ50cmの位置から落下させて、裏蓋表面の凹み大きさ(凹み痕の直径)の測定を行い、以下の4段階の基準に従い、評価した。
◎:凹み痕の直径が1mm未満、または、凹み痕が求められない
○:凹み痕の直径が1mm以上2mm未満
△:凹み痕の直径が2mm以上3mm未満
×:凹み痕の直径が3mm以上
5.ハウジングの耐蝕性評価
前記各参考例および各比較例で製造した各裏蓋について、耐蝕性の評価を行った。耐蝕性の評価は、JIS G 0577に準拠した方法により孔食電位を測定することにより行った。孔食電位が高いほど、耐蝕性に優れていると言える。
6.ハウジングの磁気遮蔽性(磁気シールド性)評価
前記各参考例および各比較例で製造した各裏蓋について、以下に示すような試験を行い、磁気遮蔽性の評価を行った。
前記各参考例および各比較例で製造した各裏蓋を、それぞれ、中心部付近を厚さ方向に打ち抜いた。打ち抜かれた部分を30℃以下の条件で粉砕し、ゼラチン製のカプセルに充填した。各カプセルについて、磁束計(QUANTUM DESIGN社製、MPMS−5S SQUID)を用いて、磁化を測定し、ヒステリシスカーブを得た。磁化の測定は、37℃の条件下、−1000G〜1000G(約−80000m/A〜80000m/A)の磁界範囲で行った。得られたヒステリシスカーブより磁界0付近の傾きを求め、これを透磁率とした。透磁率が高いほど、磁気遮蔽性に優れていると言える。
これらの結果を、ビッカース硬度Hvとともに表2に示す。なお、ビッカース硬度Hvとしては、各裏蓋の表面(各参考例についてはオーステナイト化表面層が設けられた部位)について、測定荷重20gfにて測定した値を示す。
Figure 2013101157
表2から明らかなように、本発明における裏蓋は、いずれも優れた美的外観を有しており、耐擦傷性、耐打痕性、耐蝕性にも優れていた。これらの結果から、本発明における裏蓋は、長期間にわたって優れた美的外観を保持することができるものであることがわかる。また、本発明における裏蓋は、磁気遮蔽性も優れていた。また、本発明における裏蓋は、いずれも、ザラツキ感のない、優れた触感を有していた。
これに対し、比較例の裏蓋では満足な結果が得られなかった。
1 ムーブメント、2 裏板(専用の磁気シールド材)、3 文字板、4 下板(専用の磁気シールド材)、5 中枠(専用の磁気シールド材)、6 従来の裏蓋、7 従来の胴、8 ベゼル、9 ガラス板、10 巻真パイプ、11 りゅうず、12 軸部、13 プラスチックパッキン、14 プラスチックパッキン、15 シール部、16 ゴムパッキン(裏蓋パッキン)、17 溝、18 ゴムパッキン、50 中枠、60 裏蓋、61 オーステナイト化表面層、63 内層(フェライト相)部、65 凸凹部分、67 凸凹部分、69 ベース内層、70 胴、
本発明は、外部磁場から磁気シールドされる対象の被磁気シールド構成要素と、ハウジングとを備えた例えば時計等の機器及び該機器の外装部品となるハウジングに関する。

Claims (7)

  1. 外部磁場から磁気シールドされる対象の被磁気シールド構成要素と、ハウジングとを備えた機器であって、
    前記ハウジングは、表面にオーステナイト化された表面層を有するフェライト系ステンレス鋼で構成され、内部のフェライト相は前記被磁気シールド構成要素に対する磁気シールド機能を備える内層部を有していることを特徴とする機器。
  2. 請求項1に記載された機器において、前記内層部は、該内層部の前記オーステナイト化された表面層との境界領域を除いた一様な厚さのベース内層を備えていることを特徴とする機器。
  3. 請求項1又は2に記載された機器において、該機器は時計であり、前記被磁気シールド構成要素は時計内のムーブメントであり、前記構成のハウジングは時計の胴及び/又は前記ムーブメントに対向配置された裏蓋であることを特徴とする機器。
  4. 請求項3に記載された機器において、更に時計の文字板と前記ムーブメントの間に位置する下板が磁気シールド材で構成されていることを特徴とする機器。
  5. 請求項1から4のいずれか1項に記載された機器において、前記ハウジングは、Crが17〜25wt%のFe−Cr系のフェライト系ステンレス鋼を基材として、該基材の表面から窒素原子が添加されることによるオーステナイト化された前記表面層が前記フェライト相の内層部を残した状態で設けられたものであることを特徴とする機器。
  6. 請求項5に記載された機器において、前記基材中におけるNiの含有率が0.05wt%以下であることを特徴とする機器。
  7. 機器の外装部品となるハウジングの製造方法であって、
    フェライト系ステンレス鋼で所望の形状のハウジングを作り、
    該ハウジングの表面から窒素原子を吸収させて全体をオーステナイト化した後、急冷することによりオーステナイト単相に変換し、
    該オーステナイト単相を昇温した後、窒化クロムが生成する冷却速度で冷却することにより、表面はオーステナイト化された表面層のままで内部をフェライト相の内層に戻すことを特徴とするハウジング材の製造方法。
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