JP2021055170A - 時計用部品の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】要求される硬度や耐食性を得られるとともに、審美性を高くすることができる時計用部品の製造方法を提供すること。【解決手段】時計用部品の製造方法は、オーステナイト化相を含む高窒素鋼で構成される時計用部品の製造方法であって、クロム窒化物が析出された前記時計用部品の表面に対して局所熱処理を行う。【選択図】図2

Description

本発明は、時計用部品の製造方法に関する。
特許文献1には、時計のムーブメント部品等に用いられるオーステナイト鋼の熱処理方法が開示されている。特許文献1では、モリブデンおよびクロムの窒化物や炭化物等の析出物が発生しやすい温度条件で熱処理を行う析出熱処理をオーステナイト鋼に行った後、当該オーステナイト鋼を機械加工し、さらにその後、発生した析出物を溶体化させる熱処理を行っている。これにより、硬度や耐食性の特性を維持しながら、オーステナイト鋼に対して機械加工しやすくできるようにしている。
特開2017−210684号公報
特許文献1では、熱処理によって析出物を溶体化させた後、溶体化した窒化物や炭化物が再度析出しないように、所定の温度まで加熱されたオーステナイト鋼を急速に冷却させる必要がある。
ここで、通常、このような熱処理は加熱炉内で行われ、加熱されたオーステナイト鋼は加熱炉内で冷却されることになるが、冷却中における加熱炉内の温度分布にはばらつきが存在する。そのため、オーステナイト鋼が設置された場所によっては十分な冷却速度が得られないことがある。そうすると、十分な冷却速度が得られない場所に設置されたオーステナイト鋼では、溶体化した窒化物が再度析出してしまい、硬度や耐食性が劣化してしまうおそれがあるといった問題があった。
本開示の時計用部品の製造方法は、オーステナイト化相を含む高窒素鋼で構成される時計用部品の製造方法であって、クロム窒化物が析出された前記時計用部品の表面に対して局所熱処理を行う。
本開示の時計用部品の製造方法において、前記局所熱処理は、レーザービームを照射する工程を含んでいてもよい。
本開示の時計用部品の製造方法において、前記時計用部品は、ベゼル、ケース本体、裏蓋、バンド、中留、りゅうず、およびボタンの少なくとも1つであってもよい。
本開示の時計用部品の製造方法において、前記時計用部品における隙間に面している箇所に前記局所熱処理を行ってもよい。
本開示の時計用部品の製造方法において、前記時計用部品は、フェライト相で構成された基部と、前記基部の表面に形成され前記オーステナイト化相で構成された表面層と、前記基部と前記表面層との間に形成され前記フェライト相と前記オーステナイト化相とが混在する混在層と、を備えていてもよい。
本開示の時計用部品の製造方法において、前記局所熱処理は、常温環境下において、0.5mm以上、かつ、2mm以下の幅に対する熱処理であってもよい。
一実施形態の時計を示す部分断面図。 ケース本体の表面から所定の範囲を示す断面図。 ケース本体における局所熱処理を行った箇所の表面を示す写真。 ケース本体における局所熱処理を行っていない箇所の表面を示す写真。
[実施形態]
以下、本開示の一実施形態の時計1を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態の時計1を示す部分断面図である。
図1に示すように、時計1は、外装ケース2を備えている。外装ケース2は、円筒状のケース本体21と、ケース本体21の裏面側に固定される裏蓋22と、ケース本体21の表面側に固定される環状のベゼル23と、ベゼル23に保持されるガラス板24とを備えている。また、ケース本体21内には、図示しないムーブメントが収納されている。ムーブメントとしては、例えば、文字盤、および針付きのもの等が挙げられる。
ケース本体21には巻真パイプ25が嵌入および固定され、この巻真パイプ25内にはりゅうず26の軸部261が回転可能に挿入されている。
ケース本体21とベゼル23とは、プラスチックパッキン27により固定され、ベゼル23とガラス板24とは、プラスチックパッキン28により固定されている。
また、ケース本体21に対し裏蓋22が嵌合または螺合されており、シール部50には、リング状のゴムパッキンまたは裏蓋パッキン40が圧縮状態で介挿されている。この構成によりシール部50が液密に封止され、防水機能が得られる。
りゅうず26の軸部261の途中の外周には溝262が形成され、この溝262内にはリング状のゴムパッキン30が嵌合されている。ゴムパッキン30は巻真パイプ25の内周面に密着し、該内周面と溝262の内面との間で圧縮される。この構成により、りゅうず26と巻真パイプ25との間が液密に封止され防水機能が得られる。なお、りゅうず26を回転操作したとき、ゴムパッキン30は軸部261とともに回転し、巻真パイプ25の内周面に密着しながら周方向に摺動する。
また、本実施形態では、ケース本体21とりゅうず26との間には、隙間GSが生じている。
[ケース本体]
図2は、ケース本体21の表面212Aから所定の範囲を示す断面図である。なお、図2では、ケース本体21を表面212Aと直交する方向に切断した断面図を示している。
図2に示すように、ケース本体21は、フェライト相で構成された基部211と、オーステナイト化相で構成された表面層212と、フェライト相およびオーステナイト化相が混在する混在層213とを備える高窒素鋼にて構成される。
本実施形態のケース本体21を構成する上記高窒素鋼は、フェライト系ステンレス鋼に窒素吸収処理を施して、オーステナイト化相に高濃度の窒素を吸収させることで、形成されている。
[基部]
基部211は、質量%で、Cr:18〜22%、Mo:1.3〜2.8%、Nb:0.05〜0.50%、Cu:0.1〜0.8%、Ni:0.5%未満、Mn:0.8%未満、Si:0.5%未満、P:0.10%未満、S:0.05%未満、N:0.05%未満、C:0.05%未満を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなるフェライト系ステンレス鋼により構成される。
Crは、窒素吸収処理において、フェライト相への窒素の移動速度およびフェライト相における窒素の拡散速度を高める元素である。Crが18%未満であると、窒素の移動速度および拡散速度が低くなる。さらに、Crが18%未満であると、表面層212の耐食性が低下する。一方、Crが22%を超えると、硬質化して、材料としての加工性が悪化する。さらに、Crが22%を超えると、美的外観が損なわれる。そのため、Crの含有量は、18〜22%であるのが好ましく、20〜22%とするのがより好ましく、19.5〜20.5%とするのがさらに好ましい。
Moは、窒素吸収処理において、フェライト相への窒素の移動速度およびフェライト相における窒素の拡散速度を高める元素である。Moが1.3%未満であると、窒素の移動速度および拡散速度が低くなる。さらに、Moが1.3%未満であると、材料としての耐食性が低下する。一方、Moが2.8%を超えると、硬質化して、材料としての加工性が悪化する。さらに、Moが2.8%を超えると、表面層212の構成組織の不均質化が顕著になり、美的外観が損なわれる。そのため、Moの含有量は、1.3〜2.8%であるのが好ましく、1.8〜2.8%であるのがより好ましく、2.25〜2.35%とするのがさらに好ましい。
Nbは、窒素吸収処理において、フェライト相への窒素の移動速度およびフェライト相における窒素の拡散速度を高める元素である。Nbが0.05%未満であると、窒素の移動速度および拡散速度が低くなる。一方、Nbが0.50%を超えると、硬質化して、材料としての加工性が悪化する。さらに、析出部が生成され、美的外観が損なわれる。そのため、Nbの含有量は、0.05〜0.50%であるのが好ましく、0.05〜0.35%であるのがより好ましく、0.15〜0.25%であるのがさらに好ましい。
Cuは、窒素吸収処理において、フェライト相での窒素の吸収を制御する元素である。Cuが0.1%未満であると、フェライト相における窒素含有量のばらつきが大きくなる。一方、Cuが0.8%を超えると、フェライト相への窒素の移動速度が低くなる。そのため、Cuの含有量は、0.1〜0.8%であるのが好ましく、0.1〜0.2%であるのがより好ましく、0.1〜0.15%であるのがさらに好ましい。
Niは、窒素吸収処理において、フェライト相への窒素の移動およびフェライト相における窒素の拡散を阻害する元素である。Niが0.5%以上であると、窒素の移動速度および拡散速度が低下する。さらに、耐食性が悪化するとともに、金属アレルギーの発生等を防止するのが困難になる可能性がある。そのため、Niの含有量は、0.5%未満であるのが好ましく、0.2%未満であるのがより好ましく、0.1%未満であるのがさらに好ましい。
Mnは、窒素吸収処理において、フェライト相への窒素の移動およびフェライト相における窒素の拡散を阻害する元素である。Mnが0.8%以上であると、窒素の移動速度および拡散速度が低下する。そのため、Mnの含有量は、0.8%未満であるのが好ましく、0.5%未満であるのがより好ましく、0.1%未満であるのがさらに好ましい。
Siは、窒素吸収処理において、フェライト相への窒素の移動およびフェライト相における窒素の拡散を阻害する元素である。Siが0.5%以上であると、窒素の移動速度および拡散速度が低下する。そのため、Siの含有量は、0.5%未満であるのが好ましく、0.3%未満であるのがより好ましい。
Pは、窒素吸収処理において、フェライト相への窒素の移動およびフェライト相における窒素の拡散を阻害する元素である。Pが0.10%以上であると、窒素の移動速度および拡散速度が低下する。そのため、Pの含有量は、0.10%未満であるのが好ましく、0.03%未満であるのがより好ましい。
Sは、窒素吸収処理において、フェライト相への窒素の移動およびフェライト相における窒素の拡散を阻害する元素である。Sが0.05%以上であると、窒素の移動速度および拡散速度が低下する。そのため、Sの含有量は、0.05%未満であるのが好ましく、0.01%未満であるのがより好ましい。
Nは、窒素吸収処理において、フェライト相への窒素の移動およびフェライト相における窒素の拡散を阻害する元素である。Nが0.05%以上であると、窒素の移動速度および拡散速度が低下する。そのため、Nの含有量は、0.05%未満であるのが好ましく、0.01%未満であるのがより好ましい。
Cは、窒素吸収処理において、フェライト相への窒素の移動およびフェライト相における窒素の拡散を阻害する元素である。Cが0.05%以上であると、窒素の移動速度および拡散速度が低下する。そのため、Cの含有量は、0.05%未満であるのが好ましく、0.02%未満であるのがより好ましい。
[表面層]
表面層212は、基部211を構成する母材に窒素吸収処理を施すことで、フェライト相がオーステナイト化されることにより形成される。
本実施形態では、表面層212を構成するオーステナイト化相には、高濃度の窒素が吸収されている。具体的には、オーステナイト化相の窒素の含有量は質量%で1.0〜1.6%とされている。
また、本実施形態では、ケース本体21の露出する側、すなわち、図1において太線で示されているケース本体21の外周側の表面212Aには、局所熱処理が施されている。局所熱処理の詳細については、後述する。
[混在層]
混在層213は、表面層212の形成過程において、フェライト相で構成された基部211に進入する窒素の移動速度のばらつきによって生じる。すなわち、窒素の移動速度の速い箇所では、フェライト相の深い箇所まで窒素が進入してオーステナイト化され、窒素の移動速度の遅い箇所では、フェライト相の浅い箇所までしかオーステナイト化されないので、深さ方向に対してフェライト相とオーステナイト化相とが混在した混在層213が形成される。なお、混在層213は、断面視においてオーステナイト化相の最も浅い部位から最も深い部位を含む層であり、表面層212よりも薄い層である。
[ケース本体の製造方法]
次に、ケース本体21の製造方法について説明する。
先ず、前述したように、フェライト系ステンレス鋼を機械加工し、窒素吸収処理を施すことで、高窒素鋼から構成されるケース本体21を得る。この際、ケース本体21の表面212Aには、クロム窒化物やモリブデン窒化物等の析出物が析出している。
次に、ケース本体21の外周側の表面212Aに局所熱処理を行う。
本実施形態では、約20℃の常温環境下において、レーザー照射装置によりレーザービームを照射する工程を行うことで、ケース本体21の外周側の表面212Aに対して局所熱処理を行った。この際、レーザービームのレーザーエネルギー密度は、1W/mm以上、かつ、1000W/mm以下とした。また、レーザービームのスポット径、つまり、熱処理を行う箇所の幅は0.5mm以上、かつ、2.0mm以下とした。そして、レーザービームを走査することで、ケース本体21の外周側の表面212Aに対して順次熱処理を行った。すなわち、上記のようなスポット径のレーザービームが照射される箇所に対して、レーザービームを走査しながら短時間の熱処理を行うことで、局所熱処理を実施した。
これにより、ケース本体21の外周側の表面212Aが0.5mm以上、かつ、2.0mm以下の幅で短時間に熱処理されることで、外周側の表面212Aに析出していたクロム窒化物等の析出部が溶体化する。そして、熱処理後、加熱されていた箇所の熱は、表面212Aから放熱されるとともに、ケース本体21の内部に伝達する、つまり、ケース本体21によって自己冷却される。
ここで、本実施形態では、局所的に熱処理されていることから、例えば、加熱炉によって熱処理される場合に比べて、加熱された箇所とケース本体21の内部との温度差が大きくなる。そのため、加熱された箇所からケース本体21の内部への熱の伝達速度が速くなるので、加熱された箇所は急速に冷却される。これにより、局所熱処理によって溶体化したクロム窒化物等が、冷却中に再度析出することを抑制することができる。
なお、局所熱処理により溶体化される析出物は、クロムやモリブデン等の窒化物に限られるものではなく、例えば、クロムやモリブデン等の炭化物や炭窒化物等の析出物も溶体化される。
[実施形態の作用効果]
このような本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
本実施形態のケース本体21の製造方法は、オーステナイト化相を含む高窒素鋼で構成されるケース本体21の製造方法であって、クロム窒化物等が析出されたオーステナイト化相の表面212Aに対して局所熱処理を行う。
これにより、局所熱処理を行った箇所に析出していたクロム窒化物等は溶体化し、かつ、当該箇所の冷却中において溶体化したクロム窒化物等が再度析出することを抑制できるので、クロム窒化物等の析出物を確実に除去できる。そのため、ケース本体21として要求される硬度や耐食性を得られるとともに、ケース本体21の審美性を高くすることができる。
本実施形態では、局所熱処理は、レーザービームを照射する工程を含んでいる。
これにより、ケース本体21の表面212Aに対して、レーザービームを照射することで局所的に熱を加えることができるので、局所熱処理を容易に行うことができる。
本実施形態では、局所熱処理は、常温環境下において、0.5mm以上、かつ、2mm以下の幅に対する熱処理である。
これにより、時計用部品であるケース本体21に対して、局所的に熱処理を行うので、熱処理が行われた箇所の冷却効率を高くすることができる。そのため、特別な冷却装置等を用意する必要がなく、ケース本体21の製造プロセスを簡素化することができる。
[実施例]
局所熱処理を行うことによって、実施例の時計用部品としてのケース本体を製造する方法について説明する。
先ず、質量%で、Cr:20%、Mo:2.1%、Nb:0.2%、Cu:0.1%、Ni:0.05%、Mn:0.5%、Si:0.3%、P:0.03%、S:0.01%、N:0.01%、C:0.02%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなるフェライト系ステンレス鋼からなる母材を製造する。次に、当該母材をケース本体の形状に機械加工し、当該母材に窒素吸収処理を施すことで、オーステナイト化された表面層が形成された高窒素鋼から構成されるケース本体を得た。
窒素吸収処理は、以下に説明する方法により行った。
まず、グラスファイバー等の断熱材で囲まれた処理室と、処理室内を加熱する加熱手段と、処理室内を減圧する減圧手段と、処理室内に窒素ガスを導入する窒素ガス導入手段とを有する窒素吸収処理装置を用意した。
次に、この窒素吸収処理装置の処理室内に前述の機械加工した母材を設置し、その後、減圧手段により処理室内を2Paまで減圧した。
次に、減圧手段により処理室内の排気を行いつつ、窒素ガス導入手段により窒素ガスを導入し、処理室内の圧力を0.08〜0.12MPaに保持した。この状態で、加熱手段により処理室内の温度を5℃/分の速度で、1200℃まで上昇させ、当該1200℃を4時間保持させた。
その後、緩やかに冷却することで、オーステナイト相の表面にクロム窒化物が析出した高窒素鋼から構成されるケース本体を得た。
次に、上記のように加工したケース本体の外周側の表面に、すなわち、ケース本体の露出する側の面に局所熱処理を行った。
具体的には、約20℃の常温環境下でレーザー照射装置を用い、レーザー種類:炭酸ガスレーザー、レーザー出力:200W、スポット径:1.1mm、走査速度:12.5mm/s、レーザーエネルギー密度:165W/mm、波長:10.6μm、の条件でレーザービームを照射することで、上記高窒素鋼から形成されたケース本体の外周側の表面に局所熱処理を順次行った。
図3は、上記のような局所熱処理を行ったケース本体の外周側の表面を、金属顕微鏡により撮影した写真である。また、図4は、局所熱処理を行っていないケース本体の内周側の表面を、金属顕微鏡により撮影した写真である。
図3、図4に示すように、ケース本体の内周側の表面、つまり、局所熱処理を行っていない箇所には、筋状のクロム窒化物等の析出部が観察される。一方、ケース本体の外周側の表面、つまり、局所熱処理を行った箇所には上記のような析出物が観察されず、表面が平滑化されることが示唆された。すなわち、上記のような局所熱処理によって、クロム窒化物等の析出物が溶体化するとともに、当該溶体化した析出物が再度析出しない速度で急速に冷却されることが示唆された。これは、加熱された表面からの放熱に加えて、ケース本体の内部に熱が伝達する自己冷却により、十分な冷却速度が得られたことによるものと考えられる。
このことから、上記のような局所熱処理を行うことにより、クロム窒化物等の析出部を確実に除去でき、時計としての審美性を高くできることが示唆された。
[変形例]
なお、本開示は前述の各実施形態に限定されるものではなく、本開示の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本開示に含まれるものである。
前記実施形態では、本開示の時計用部品はケース本体21として構成されていたが、これに限定されない。例えば、本開示の時計用部品は、ベゼル、裏蓋、バンド、中留、りゅうず、およびボタンの少なくとも1つとして構成されていてもよい。また、時計は、上記のような時計用部品を複数有していてもよい。
前記実施形態では、ケース本体21は、フェライト相で構成された基部211と、オーステナイト化相で構成された表面層212と、フェライト相およびオーステナイト化相が混在する混在層213とを備えていたが、これに限定されない。例えば、ケース本体は、オーステナイト化相のみで構成されていてもよい。
前記実施形態では、ケース本体21は、フェライト相で構成された基部211と、オーステナイト化相で構成された表面層212と、フェライト相およびオーステナイト化相が混在する混在層213とを備えていたが、これに限定されない。例えば、ケース本体は、表面層212、混在層213、および基部211と、さらに基部211に対して混在層213、表面層212とは反対側に設けられる、第2の混在層および第2の表面層を有する構成としてもよい。すなわち、ケース本体の外周側に第1の混在層および第1の表面層を有し、内周側に第2の混在層および第2の表面層を有し、第1の混在層と第2の混在層との間に基部を有する構成としてもよい。
前記実施形態では、ケース本体21の露出する側に局所熱処理が行われていたが、これに限定されない。例えば、図1に示す隙間GSに面している箇所に局所熱処理が行われていてもよい。また、時計に設けられるボタンとケース本体との間に生じる隙間や、ケース本体と裏蓋との間に生じる隙間に面している箇所に、局所熱処理が行われていてもよい。さらに、ケース本体に形成した窪み等によって生じた隙間に面している箇所に、局所熱処理が行われていてもよい。上記のような箇所に局所熱処理を行うことで、所謂隙間腐食を防ぐことができる。
前記実施形態では、時計用部品であるケース本体21に対して局所熱処理を行っていたが、これに限定されない。例えば、時計以外の電子機器のケース、つまり、ハウジング等の電子機器用部品に対して局所熱処理を行ってもよい。
1…時計、2…外装ケース、21…ケース本体、22…裏蓋、23…ベゼル、24…ガラス板、25…巻真パイプ、26…りゅうず、211…基部、212…表面層、212A…表面、213…混在層、GS…隙間。

Claims (6)

  1. オーステナイト化相を含む高窒素鋼で構成される時計用部品の製造方法であって、
    クロム窒化物が析出された前記時計用部品の表面に対して局所熱処理を行う
    ことを特徴とする時計用部品の製造方法。
  2. 請求項1に記載の時計用部品の製造方法において、
    前記局所熱処理は、レーザービームを照射する工程を含む
    ことを特徴とする時計用部品の製造方法。
  3. 請求項1または請求項2に記載の時計用部品の製造方法において、
    前記時計用部品は、ベゼル、ケース本体、裏蓋、バンド、中留、りゅうず、およびボタンの少なくとも1つである
    ことを特徴とする時計用部品の製造方法。
  4. 請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の時計用部品の製造方法において、
    前記時計用部品における隙間に面している箇所に前記局所熱処理を行う
    ことを特徴とする時計用部品の製造方法。
  5. 請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の時計用部品の製造方法において、
    前記時計用部品は、フェライト相で構成された基部と、前記基部の表面に形成され前記オーステナイト化相で構成された表面層と、前記基部と前記表面層との間に形成され前記フェライト相と前記オーステナイト化相とが混在する混在層と、を備える
    ことを特徴とする時計用部品の製造方法。
  6. 請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の時計用部品の製造方法において、
    前記局所熱処理は、常温環境下において、0.5mm以上、かつ、2mm以下の幅に対する熱処理である
    ことを特徴とする時計用部品の製造方法。
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