JP2013101039A5 - - Google Patents

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具体的には、例えば、プリカーサイオン選択手段は複数のMSn-1ピークの同定確率推定値を比較し、同定確率推定値が高いものから順にMSn-1ピークを選択し、プリカーサイオンに設定してMSn分析を実行するようにするとよい。これにより、比較的少ない回数のMSn分析の実行によって、より多数の物質を同定することができる。この場合、全てのMSn-1ピークに対するMSn分析を実行せずに、所定回数のMSn分析を実行した時点で当該試料に対する同定処理を打ち切る、或いは、同定された物質の数が所定個数に達したり同定された物質の数の増加の程度が大きく減じたりした場合に当該試料に対する同定処理を打ち切る、といった制御を行ってもよい。また、プリカーサイオン選択手段は同定確率推定値が所定値以上であるMS n-1 ピークのみを選択し、該ピークをプリカーサイオンに設定してMSn分析を実行するようにしてもよい。
第1発明に係る質量分析データ処理方法及び第2発明に係る質量分析データ処理装置によれば、MSn-1ピークに対するMSn分析を行って得られる結果を用いて物質同定を行うときに同定が可能である確率を、実際にそのMSn分析や同定処理を行うことなく定量的に推定することが可能となる。そのため、例えば、複数のMS n-1 ピークの中のいずれのMS n-1 ピークをプリカーサイオンとして選択すれば同定に有利であるのかを、定量的に判断することができる。それ故に、例えば或るMSn-1ピークの強度が高い場合であっても該MSn-1ピークの同定確率が低い場合には、該MSn-1ピークに対するMSn分析を回避する、或いはより同定確率の高いMSn-1ピークに対するMSn分析を優先的に行う、といった質量分析装置の制御が可能となり、従来に比べて短時間でより多くの物質を同定することができるようになる。
本発明に係る質量分析データ処理方法は、目的試料からLC等により分離・分画されることで得られた多数の分画試料に対してそれぞれMSn-1分析を実行して得られるMSn-1スペクトル上に現れる1又は複数のピークをプリカーサイオンに選出して該プリカーサイオンに対するMSn分析を行い、その結果得られるMSnスペクトルを利用して目的試料に含まれる各種物質を同定する質量分析システムにおいて、実際にMSn分析を実行する前に、MSn-1スペクトル上のMS n-1 ピークについて、該ピークをプリカーサイオンに選出したときに物質の同定が成功する確率を定量的に推定する同定確率推定処理に特徴を有する。
[ステップS122]局所的な変動量の算定
次に、ピーク部分及びピーク近傍を除外したサンプリング点集合M’(w,μ)において、通過帯域が半値幅wであるフィルタによりロープロファイルを平滑化した、平滑化プロファイル*m(w,μ)を求める。つまり、*m(w,μ)は次の(2)式で求まる。
*m(w,μ)={1/(2w+1)}ΣRm’ …(2)
(ただしm’∈M’(w,μ))
ここで、Σはm’=−wからwまでの総和である。この平滑化プロファイル*m(w,μ)と元のロープロファイルとの差を局所的な変動量と定義し、ΔRm(w,μ)で表す。つまり、ΔRm(w,μ)は次の(3)式で求まる。
ΔRm(w,μ)=Rm*m(w,μ) …(3)
[ステップS113]局所的な変動量に基づくノイズレベルの算定
ここでは、上記局所的な変動量ΔRm(w,μ)の2乗平均のc倍をノイズレベルN(Rm;w,μ)と定義する。cはノイズレベルを定義するための適当な定数である。つまり、N(Rm;w,μ)の定義式は次の(4)式である。
N(Rm;w,μ) =c・√{ΣΔRm(w,μ) 2 …(4)
なお、ノイズレベルの定義は上記説明のものに限定されず、MS1スペクトルのノイズレベルを適切に定義できる方法でありさえすればよい。
実際の2つのMS1ロープロファイルに基づいて上記方法によりノイズレベルN(Rm;w,μ)を算定した結果の例を図5に示す。
[ステップS16]同定確率推定モデルとパラメータの算出
続いて、上記階段状のプロファイルに対し解析的な関数を用いてフィッティングを行い、MS1ピークの累積数と同定成功累積数との滑らかなカーブ状の関係を求める。ここでは、フィッティング関数の形状として、次の(5)式の双曲線関数を用いた。
(ident)tanhn/(all)σ) …(5)
ただし、nは或る順位よりも上位順位であるMS1ピーク数であり、N(all)及びN(ident)はそれぞれMS1ピークの総数及び同定に成功したMS1ピークの総数である。また、σはフィッティング関数の立ち上がりの速さを定めるパラメータであり、先に求めた階段状のプロファイルにフィットするように算出する。図9中に階段状のプロファイルにフィットさせたカーブを一点鎖線で示している。このカーブが同定確率推定モデルであり、σはこのモデルを規定するパラメータである。
[ステップS24]MS1ピークの同定確率推定
(5)式のフィッティング関数の傾きが1であるということは100%、その傾きが0.5であるということは50%の確率で以て同定に成功することを示している。したがって、フィッティング関数の微分である次の(6)式により、最適化用MS1ピークに対し、その順位値nから同定に成功する確率を推定することができる。
(ident)(N (all) σ)}sech2 n/(all)σ) …(6)
図13は図9に上記微分関数で示される推定確率を重ねて示したものであり、右目盛りが同定成功の推定確率である。
任意の質量電荷比m/z及びSN比を示すMS1ピークの同定確率は、上述したn(d)又は*n(d)による求まる近似順位値を用いて、(7)式又は(8)式により推定することができる。
(ident)(all)σ)sech2{n(d)/(all)σ} …(7)
(ident)(all)σ)sech2*n(d)/(all)σ} …(8)
即ち、上述したステップS11〜S18の処理によって既に同定確率推定モデルは構築されているので、同定確率を推定したいMS1ピークの近似順位値さえ求まれば、このMS1ピークの同定確率は簡単な演算で推定可能である。図14は上記例における任意の質量電荷比m/z及びSN比を示すMS1ピークについての距離dと同定確率推定値との関係を示す図であり、図中、n(d)は(7)式に基づく場合、*n(d)は(8)式に基づく場合である。
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