実施の形態1.
図1乃至図7は実施の形態1を示す図で、図1は、空気調和装置100の室内機101の縦断面図、図2は、室内機101の内部構成を模式的に説明する斜視図であり、図2の断面Sが、図1に示される内部構成の縦断面図である。図3は室内ファンであるクロスフローファン2の斜視図であり、図4は、クロスフローファン2の取り付け説明図である。また、図5は、この空気調和装置100の冷凍サイクルの構成を示す模式図である。図6、図7はそれぞれ運転データを示すグラフである。
本実施の形態の空気調和装置100は、室内機101と室外機102とを有し、それらが冷媒配管で接続され冷凍サイクル(ヒートポンプサイクル)を構成するとともに、それらの各々の制御装置60、80が電源線や信号線61で接続される、所謂セパレート形の空気調和装置である。特に、室内機101の構成に特徴があるものなので、以下、室内機101について詳細な説明を行うものとし、室外機102についての詳細な説明は省く。
図1に示す室内機101は、家庭用の空気調和装置(一般的にルームエアコンと呼ばれている)の室内機で、壁掛け式であって、空調する部屋(室内)の壁面上部に設置されるものである。
図1および図2において、室内機101は、上部に吸込口4、そして下部に吹出口5が形成されるとともに、室内機101の外郭を構成する筐体10と、この筐体10内に設置され、室内空気を吸込口4から吸い込むとともに、それら室内空気を最終的に吹出口5から室内に吹き出すクロスフローファン2と、クロスフローファン2が形成する風路内でクロスフローファン2の上流側に配置され、吸い込んだ室内空気を調和して、調和空気を生成する(例えば暖房運転であれば室内空気を暖める)室内熱交換器3と、吸込口4と室内熱交換器3の間に配置され、吸い込んだ室内空気に含まれる塵埃を捕捉するフィルタ6と、筐体10内の吹出口5近傍に配置され、吹出口5から吹き出される調和空気(吹き出し風)の風向を調整する上下風向制御板7および左右風向制御板8と、詳細は後述するが、クロスフローファン2を電磁誘導加熱させる誘導加熱コイル1と、を備える。
また、図示しないが、室内機101本体内に設置される室内制御基板上に、マイクロコンピュータを搭載しており、このマイクロコンピュータが室内制御装置60となって、使用者の指示や各種センサからの情報、および予め記憶されている設定値等に基づき、設定されたプログラムに従って、クロスフローファン2の回転制御や、上下風向制御板7および左右風向制御板8の回動制御などを行う。また、上記の誘導加熱コイル1への電力の供給やその停止も、この室内制御装置60によって制御される。また、この室内制御装置60は、室外機102に設置される室外制御基板上に搭載されている同じくマイクロコンピュータである室外制御装置80と信号線61を介して通信し、互いに情報のやり取りを行っている。
室内熱交換器3は、フィンアンドチューブ型であり、互いが平行となるように配列された複数の薄板状アルミニウム製のフィン31と、それらのアルミフィン31を貫通しながら複数列を成して蛇行状に挿設される銅管32を有し、室内機101の前面側下部に位置する前面下部熱交換器3aと、前面側上部に位置する前面上部熱交換器3bと、背面側に位置する背面熱交換器3cとから構成される。室内熱交換器3は、吸込口4とクロスフローファン2との間で、クロスフローファン2を囲むように配置され、吸込口4より吸い込まれた室内空気を調和(冷却、除湿、加熱)して、調和空気を生成する。なお室内熱交換器3の配置はこの形態に限定すされるものではなく、例えば、背面熱交換器3cを備えていなくてもよい。
上下風向制御板7は、上下方向に回動され、吹き出し風の上下方向の風向を調整し、左右風向制御板8は、左右方向に回動され、吹き出し風の左右方向の風向を調整する。上下風向制御板7は、空気調和装置100の運転が停止される際には、吹出口5を塞ぐように回動し、空気調和装置100の停止中は、吹出口5を塞いでいる。上下風向制御板7は、左右方向に長い板状であって、この室内機101においては、図1に示すように、室内機101本体の前後方向に2枚設置されているが、1枚であってもよく、また、左右方向に2分割された構成であってもよい。
そして、筐体10(室内機101本体)の側面視で中央部よりやや下方に配置されるクロスフローファン2は、図3に示すように、回転中心線Pの方向に略円筒状に長く形成されているもので、その長手方向(回転中心線P方向)が、室内機101本体の左右方向となるように設置されている。そして、図1の矢印Wの方向に回転して、吸込口4から吸い込んで吹出口5から吹き出す送風作用を行うのである。すなわちクロスフローファン2の風路内に空気の流れを生じさせるのである。
クロスフローファン2は、長手方向に並列する複数の円環状平板21の間に、それぞれ複数の羽根22が回転方向に不等ピッチに配列されて構成されている。図2および図4に示すように、クロスフローファン2の一方の側には、クロスフローファン2を回転駆動させるファンモータ45が配置される。ファンモータ45は、筐体10の内部に配置され、筐体10の上部を支点に上下方向に回動して開閉する前面開閉パネル11を使用者が開いたとしても露出されない。このファンモータ45が配置される側(以降、モータ側と呼ぶ)の端板24(モータ側端板24)の中央には、ファンモータ45の駆動軸45aを連結する連結ボス23が固定されている。
そして、ファンモータ23が配置される側とは反対側となるクロスフローファン2の他方の側には、クロスフローファン2の回転軸26が設けられている。回転軸26は、この他方の側(以降、反モータ側と呼ぶ)の端板25(反モータ側端板25)の中央に固定されており、回転軸26は、筐体10の側壁に形成される軸受部10aに嵌合されている。
ファンモータ45が回転駆動すると、駆動軸45aと連結ボス23を介して、クロスフローファン2が同期して回転する。クロスフローファン2の回転と同期して、回転軸26も回転し、回転する回転軸26を軸受部10aにて支持する。なお、円環状平板21は、中央の空間域に、例えば、中心付近で結合し、そこから円環の内径まで放射状に延びるようなリブを形成して、強度を高めてもよい。
ここで、本実施の形態におけるクロスフローファン2は、円環状平板21、モータ側端板24、反モータ側端板25および羽根22の材料として鉄を使用している。これらを鉄製としているのは、クロスフローファン2を、導電性を有するように形成して電磁誘導加熱するためであるが、詳細は後述する。
複数の鉄製の羽根22を、対向する鉄製の円環状平板21、およびモータ側端板24、反モータ側端板25にそれぞれ圧入もしくはかしめにて固定してクロスフローファン2を製造する。ただし、モータ側端板24には連結ボス23を、また、反モータ側端板25には回転軸26を、予め圧入もしくはかしめにて固定しておく。なお、羽根22を固定させた状態から連結ボス23、および回転軸26を、それぞれ対応する端板24、26に圧入もしくはかしめにて固定してもよい。
ここで、連結ボス23および回転軸26は、それぞれ導電性がない、もしくは導電性が極小な絶縁材料を用いて形成されている。例えば、セラミック、ゴム、耐熱樹脂などが用いられる。絶縁材料は通常、熱伝導率が低いため、断熱材としても機能する。このように絶縁材料を用いて連結ボス23および回転軸26を形成するのは、電磁誘導加熱される導電性を有するクロスフローファン2から室内機101本体やファンモータ45に電流や熱が伝わらないようにするためである。
連結ボス23には、モータ駆動軸45aが連結固定されるが、これらの連結固定は、連結ボス23の内径にモータ駆動軸45aが圧入されることで為される。なお、モータ側端板24中央に固定された連結ボス23へのモータ駆動軸45aの連結固定は、圧入に限定されるものではない。例えば、連結ボス23とモータ駆動軸45aにキー溝を形成し、これらのキー溝にキーを嵌入させて連結させてもよい。ただし、この場合は、キーも連結ボス23同様に絶縁材料にて形成する必要がある。このように、連結ボス23を介してモータ駆動軸45aの回転に同期してクロスフローファン2を回転させることが可能となる連結構造であればよい。
また、羽根22の円環状平板21や端板24、25への固定を、圧入もしくはかしめにて行っているが、これらの固定も圧入やかしめに限定されるものではなく、溶接してもよいし、圧入やかしめと溶接を併用してもよい。
一般的にクロスフローファンといえば、ファンモータやその駆動軸は除かれるが、モータ側端板に固定されてファンモータ駆動軸が連結固定される連結ボスや、反モータ側端板に固定されて室内機本体の軸受部に回転支持される回動軸は、構成要素として含まれるものとされているが、この実施の形態においては、クロスフローファン2とは、ファンモータ45とその駆動軸45aを含まないだけでなく、絶縁材料で形成される連結ボス23、回転軸26も含まず、鉄製である複数の羽根22と複数の円環状平板21、およびモータ側端板24、反モータ側端板25により構成される部分を指すものとする。すなわち、鉄製部品で構成され、導電性を有する部分のみをクロスフローファン2と定義する。
このため、このクロスフローファン2は鉄製と言える。現在、市販されているルームエアコンの室内機に搭載されるクロスフローファンの多くは、樹脂成形されたものであるが、本実施の形態のクロスフローファン2は、電磁誘導加熱されるように、導電性のある鉄を材料としているのである。詳細は後述するが、クロスフローファン2の材料は鉄に限定されるものではなく、導電性があれば他の金属であってもよく、また、樹脂成形で製作したものに金属をメッキして導電性を持たせるように構成してもよい。
クロスフローファン2から吹出口5までは吹出側風路51となっている。この吹出側風路51は、図1に示すように背面側が湾曲したケーシング9により、また、前面側が前面下部熱交換器3aの下方に位置するノズル12により形成される。この吹出側風路51の背面を構成するケーシング9のクロスフローファン2の近傍部位には、収納凹部91が形成されている。
この収納凹部91は、ケーシング9に室内機101本体の背面方向へ窪んで設けられ、クロスフローファン2の長手方向の長さと同程度の長さで、その長手方向がクロスフローファンの長手方向と同方向となるように、すなわち室内機101本体の左右方向に細長く延びるように設けられている。
そして、この収納凹部91内に、鉄製のクロスフローファン2を電磁誘導加熱させる誘導加熱コイル1が収納されている。誘導加熱コイル1は、高周波交流電流が供給されると、発熱して高温となるため、その熱が樹脂で成形されたケーシング9に伝わってケーシング9が熱変形や熱疲労を起こしてしまう不具合を回避するために、収納凹部91の底面および四方の内壁と誘導加熱コイル1の間には、断熱材92が設置されている。
なお、断熱材92を設けず、ケーシング9を耐熱樹脂で成形して、発熱した誘導加熱コイル1に対して熱的な耐力を持たせるような構成としてもよい。誘導加熱コイル1は鉄製のクロスフローファン2を電磁誘導加熱させるためのものであるので、ケーシング9を導電性のある材料で形成してはならない。
誘導加熱コイル1は、収納凹部91の長手方向に延びるように銅線が細長く複数周巻かれて(巻回されて)構成される。収納凹部91内に周巻状に収納される誘導加熱コイル1の長手方向の長さは、収納凹部91の長さよりも幾分短い。図2において、誘導加熱コイル1は簡略化して3周巻きとして描かれているが、この実施の形態における誘導加熱コイル1は、φ0.8〜φ1.0の銅線を20〜30周巻いたものである。ただし、銅線の線径はこれに限定されるものではなく、また線径が異なれば銅線の電気抵抗が異なるので、それに応じて最適な巻き数(周巻数)は変化する。
なお、誘導加熱コイル1は吐出側風路51に突出しないように収納凹部91内に収められている。吹出側風路51に誘導加熱コイル1の一部でも突出していると、吹出口5から吹き出される空気の通風抵抗となってしまうので、これを避けるために、誘導加熱コイル1を吐出側風路51に突出させない。
また、誘導加熱コイル1は、吹出側風路51に突出しない状態で、電磁誘導加熱させるクロスフローファン2との距離を短くするために、吹出側風路51側の端部が吹出側風路51に臨むケーシング9の面とほぼ同一面となるように収納される。図1に示すように、ケーシング9の上下方向の湾曲に沿って、誘導加熱コイル1も全体的に湾曲させて収納する。収納する際に、ケーシング9の湾曲に沿って湾曲している収納凹部91の底面(断熱材92が介在する場合には底面の断熱材)に押し付けるようにして誘導加熱コイル1を収納すれば、誘導加熱コイル1をケーシング9に沿って湾曲させることができる。これにより、誘導加熱コイル1は、吹出側風路51に突出して通風抵抗となることなく、かつ、クロスフローファン2との距離を短くすることができる。
誘導加熱コイル1はその先端部と末端部が電流供給回路13に接続され、この電流供給回路13から高周波数の交流電流が供給される。電流供給回路13はインバータ回路であって、上記した室内制御基板に実装され、室内制御装置60によって制御される。この実施の形態においては、26kHzの交流電流を電流供給回路13から誘導加熱コイル1に供給する。
図5は、この空気調和装置100の冷凍サイクルの構成を示す模式図であるが、室外機102には、低圧の冷媒を圧縮して高温高圧な冷媒として吐出し、冷凍サイクルに冷媒を循環させる圧縮機70が設置される。この圧縮機70で圧縮された冷媒は、四方弁71によって流れ方向が切り換えられる。冷房運転や除湿運転では、室外熱交換器72に高温高圧な冷媒が流通するような流れに、暖房運転では、室内熱交換器3に高温高圧な冷媒が流通する流れとする。暖房運転では、室内熱交換器3が凝縮器、室外熱交換器72が蒸発器として機能する。四方弁71の流れ方向の切り換え制御は、室外制御装置80によってなされる。
図5の矢印は、暖房運転における冷媒の流れ方向を示しているが、暖房運転であれば、室内熱交換器3を通過した凝縮後の冷媒は、膨張弁73で減圧され、室外熱交換器72に流入してここで蒸発し、その後再び圧縮機70にて圧縮されて、このサイクルを繰り返す。圧縮機70は、運転回転数が可変なインバータ圧縮機である。室外熱交換器72の近傍には、室外熱交換器72に外気を通過させて熱交換を促進させる室外ファンであるプロペラファン74が配置される。このプロペラファン74も回転数が可変である。
冷凍サイクルを循環する作動流体である冷媒には、ここではHFC混合冷媒であるR410Aが用いられている。また、室内機101と室外機102とは接続配管75a、75bで接続され、冷凍サイクルとしての循環回路が連結される。接続配管75aは暖房運転において、凝縮工程を通過後の冷媒が流れる液側の接続配管で、接続配管75bは暖房運転において凝縮工程に流入前の冷媒が流れるガス側の接続配管である。
圧縮機70とプロペラファン74の運転制御、四方弁71の流路切り換え制御、膨張弁73の開度調整(減圧度合いの調整)制御は、マイクロコンピュータである室外制御装置80が、室内制御装置60と信号線61を介して情報をやり取りしながら行っている。なお、室外制御装置80が実装されている室外制御基板上には、それら制御因子(圧縮機70や膨張弁73等)の駆動回路が実装されていて、室外制御装置80が個々の駆動回路を動かすことで各々の制御因子を制御しているが、図5ではそのような駆動回路の図示は省略している。
また、前述のとおり、室内制御装置60が、クロスフローファン2の運転制御、誘導加熱コイル1への電流供給制御、左右風向制御板8や上下風向制御板7の回動制御を、室外制御装置80と信号線61を介して情報をやり取りしながら行っている。マイクロコンピュータである室外制御装置80が実装されている室内制御基板上には、誘導加熱コイル1の電流供給回路13以外にも、上記の制御因子(クロスフローファン2や風向制御板7、8等)の駆動回路が実装されていて、室内制御装置60が個々の駆動回路を動かすことで各々の制御因子を制御しているが、図5ではそのような駆動回路の図示は、電流供給回路13を除いて省略している。
次に、この実施の形態における空気調和装置100の動作を、室内機101の動作を主として説明する。使用者が、この空気調和装置100に対してリモコン15により暖房運転の指示を行い、室内機101の前面に設置されているリモコン受信部14がその指示信号を受信して、指示が室内制御装置60に伝わると、室内制御装置60は、室外制御装置80に暖房運転開始の情報を通信し、その通信を受けて、室外制御装置80は圧縮機70を起動させる。室内制御装置60は、そのような室外制御装置80への通信と並行して、電流供給回路13に対して誘導加熱コイル1への交流電流供給を指示し、誘導加熱コイル1への交流電流を供給させる。誘導加熱コイル1にはインバータ回路である電流供給回路13を通して得られた26kHzの交流電流が通電される。なお、この実施の形態においては、リモコン受信部14が暖房運転開始の指示信号を受信した時点を、暖房運転開始とする。
さらに、誘導加熱コイル1への電流供給と並行して、室内制御装置60は、室内ファンであるクロスフローファン2を回転させる。この時のクロスフローファン2の回転数は、室内機101で設定されている最小の回転数とする。例えば、この室内機101においては、クロスフローファン2の回転数として、強モード、中モード、弱モードの3パターンがあり、それぞれ、回転数が高、中、低の3段階に設定されているので、弱モードの回転数で回転させる。弱モードにおけるクロスフローファン2の回転数は、ここでは120rpmとなっている。
誘導加熱コイル1に高周波数の交流電流が通電されることにより、誘導加熱コイル1の近くに位置する鉄製であるクロスフローファン2に渦電流が発生する。そしてクロスフローファン2の電気抵抗によりジュール熱が発生してクロスフローファン2が加熱される。所謂、クロスフローファン2が電磁誘導加熱されたのである。鉄製のクロスフローファン2の表面に渦電流が発生し、その電気エネルギーの損失が熱エネルギー損失すなわちジュール熱に変換されることによって、クロスフローファン2が電磁誘導加熱されるのである。
そして、誘導加熱コイル1に通電している間はクロスフローファン2を回転させることにより、クロスフローファン2が局所発熱しないように、言い換えれば、クロスフローファン2を局所加熱しないようにしている。クロスフローファン2を回転させながら、誘導加熱コイル1に交流電流を通電して、クロスフローファン2を電磁誘導加熱させることで、円筒状であるクロスフローファン2の特定の領域だけが加熱され、そこだけが局所的に高温となってしまうことを防止するのである。この時のクロスフローファン2の回転数は、前述のとおり、室内機100で許容されている最小の回転数、弱モードで設定されている回転数である。
クロスフローファン2の熱容量は、熱交換器3の熱容量と比べると小さく、電磁誘導加熱により、短時間でその温度を上昇させることができる。この室内機101は、冷凍サイクルによるヒートポンプ暖房が立ち上がるまでの待ち時間、すなわち、冷凍サイクルを循環する冷媒によって室内熱交換器3が室内空気を暖めて温風を生成できるようになるまでの間に、熱容量の比較的小さい鉄製のクロスフローファン2を回転させながら電磁誘導加熱して短時間でその温度を高め、クロスフローファン2を通過する空気に熱伝達させてその空気を暖め、吹き出し風を温風として吹出口5より吹き出させるものである。そのため、使用者が暖房運転の開始を指示してから、短時間で吹出口5から温風を吹き出すことができるようになるのである。
クロスフローファン2と室内熱交換器3とをそれぞれ電磁誘導加熱させた場合に、その熱容量の差により温度上昇にどのくらいの差が生じるものか示すものとして、図6に示す実験データがある。図6は、クロスフローファン2を電磁誘導加熱した場合(上記のとおり最小回転数で回転させながらの電磁誘導加熱)と、室内熱交換器3を電磁誘導加熱した場合との吹出口5から吹き出される吹き出し風の温度(吹き出し温度)上昇値を比較した試験結果を示すグラフである。横軸が、電磁誘導加熱を開始してからの経過時間で、縦軸は吹き出し温度上昇値を示す。吹き出し風の温度上昇値は、吹き出し風の温度(吹き出し温度)とこの試験開始時点の部屋の温度(初期室温)との差であり、吹き出し温度−初期室温である。
なお、電磁誘導加熱される対象物の熱容量の影響調査を目的とする試験であるため、この試験は、室外機102とは接続していない室内機101単体で行い、冷凍サイクルが構築されていない。すなわち、室内熱交換器3の銅管32内には冷媒は流れない。また、誘導加熱コイル1への供給電力(誘導加熱コイル1の消費電力)は両者で同じとし、ここでは1000W(ワット)の電力をともに投入している。
クロスフローファン2もしくは室内熱交換器3を電磁誘導加熱させてその温度を上昇させることにより、クロスフローファン2もしくは室内熱交換器3を通過してくる空気が、熱伝達により暖められ吹き出し温度が上昇する。なお、電磁誘導加熱したクロスフローファン2もしくは室内熱交換器3を空気が通過して吹出口5から吹き出し風として吹き出されるのは、クロスフローファン2の回転によるものである。
クロスフローファン2を電磁誘導加熱する場合には、室内熱交換器3を電磁誘導加熱せず、室内熱交換器3に誘導加熱コイル1を近づけて室内熱交換器3を電磁誘導加熱する場合には、クロスフローファン2が電磁誘導加熱されないようにしている。室内熱交換器3を電磁誘導加熱する場合の、室内熱交換器3と誘導加熱コイル1との距離は、クロスフローファン2を電磁誘導加熱する場合の、クロスフローファン2と誘導加熱コイル1の距離と同程度にしている。
図6に示されるように、この試験においては、クロスフローファン2を電磁誘導加熱する場合でも、室内熱交換器3を電磁誘導加熱する場合でも、最終的に到達する吹き出し温度上昇値は、およそ23K(ケルビン)であった。吹き出し温度の収束値(漸近値)が約23Kである。吹き出し温度の上昇度合いとなる吹き出し温度の立ち上がり速度を比較するために、ここでは、吹き出し温度上昇値が、その収束値である23Kの90%である20.7K(23×0.9=20.7)に到達するまでの時間を比較してみる。
クロスフローファン2を電磁誘導加熱した場合は、図6の実線カーブで示されるように、吹き出し温度上昇値が20.7Kに到達するまでの経過時間は、約60秒であった。一方、室内熱交換器3を電磁誘導加熱した場合では、図6の破線カーブで示されるように、その経過時間は約140秒であった。このように、クロスフローファン2を電磁誘導加熱した場合の方が、明らかに吹き出し温度の立ち上がり速度が速いことがわかる。この試験においては、約2.3倍早かった。
この図6の試験結果が示すように、室内交換器3よりも熱容量の小さいクロスフローファン2を電磁誘導加熱した方が、吹き出し温度の立ち上がりが早いのである。それは、電磁誘導加熱の対象物自身の温度上昇度合いが、熱容量が小さい方が早いためである。また、室内熱交換器3は、アルミニウムと銅で構成されており、鉄製のクロスフローファン2に比べて電気抵抗が小さいため、誘導加熱の効果が低いということも、図6に示すようなクロスフローファン2を電磁誘導加熱した場合の方が、明らかに吹き出し温度の立ち上がり速度が速いことの一因でもある。
続いて、実際に室外機102と接続し、冷凍サイクルを構築した状態にて、室内機101におけるクロスフローファン2の電磁誘導加熱と、冷凍サイクル稼働による通常のヒートポンプ暖房を組み合わせたこの実施の形態1の空気調和装置100(ハイブリッド式空気調和装置)の運転状況を説明する。図7は、この空気調和装置100の運転データをグラフ化した運転特性図である。
当然のことであるが、鉄製のクロスフローファン2を電磁誘導加熱するために誘導加熱コイル1に高周波数の交流電流を流すので、この空気調和装置100は、そのための電力を消費する。そして、冷凍サイクルで動力(電力)を使う圧縮機70は、起動から徐々に回転数を高めていくが、回転数の増加とともに圧縮機70の消費電力(入力)が増加していく。
一方で、圧縮機70の回転数の増加、言い換えれば圧縮機70の入力の増加は、冷凍サイクルの冷媒循環量の増加を意味する。圧縮機70の回転数が徐々に上昇して室内熱交換器3の銅管32内を流れる高温高圧の冷媒量が増えることにより、高温の冷媒によって熱が銅管32へ、さらにフィン31に伝達され、室内熱交換器3の温度が上昇する。すなわち、室内熱交換器3における通過する室内空気を暖める能力が高まっていくのである。
室内熱交換器3において室内空気を暖める能力が高まってくれば、クロスフローファン2を電磁誘導加熱して、そこを通過する空気を暖める必要はなくなってくる。そこで、この空気調和装置100では、室内制御装置60と室外制御装置80とが協働して、圧縮機70の回転数、言い換えれば圧縮機70の入力(消費電力)の増加に対応させて、クロスフローファン2の電磁誘導加熱量、すなわち誘導加熱コイル1への供給電力(誘導加熱コイル1の消費電力)を減少させる制御を行っている。
この空気調和装置100は、暖房運転開始直後の圧縮機70の入力(消費電力)が低く、空気調和装置100が電力的に余裕がある時間に、積極的に誘導加熱コイル1に電流(電力)を供給し、クロスフローファン2を回転させながら電磁誘導加熱して、暖房運転開始から短時間で温風を吹き出すよううにしているのである。
図7に示す運転特性図において、上段の(a)で示すグラフは、電磁誘導加熱を伴わずに、冷凍サイクル稼働による従来のヒートポンプ暖房のみを行う空気調和装置と、ハイブリッド式空気調和装置である鉄製クロスフローファン2の電磁誘導加熱と冷凍サイクルによるヒートポンプ暖房を組み合わせたこの実施の形態1に係る空気調和装置100の吹き出し温度(吹出口5から吹き出される吹き出し風の温度)を、横軸に経過時間を取って比較したものである。それぞれの空気調和装置は、室内熱交換器3の大きさなど冷凍サイクルの構成においては、同一仕様、同一容量である。
図7下段の(b)で示すグラフは、(a)における空気調和装置100の暖房運転開始からの経過時間に対応した圧縮機70の入力(消費電力)と、クロスフローファン2を電磁誘導加熱するための誘導加熱コイル1の入力(消費電力)、およびこの空気調和装置100全体の消費電力を示すものである。全体消費電力には、圧縮機70の消費電力と誘導加熱コイル1の消費電力に加えて、クロスフローファン2を回転させるファンモータ45の消費電力量、室外機102のプロペラファン74の消費電力、室内機101と室外機102にそれぞれ設置される制御基板に必要な消費電力などが含まれている。
試験(運転)条件は、屋外の一戸建て住宅を模擬(想定)した環境試験室において、外気温度が10℃、室内機が設置される部屋の初期室温は15℃とする。空気調和装置100においては、クロスフローファン2を電磁誘導加熱するための誘導加熱コイル1への最大投入電力(許容最大電力)は1500W(ワット)、空気調和装置100の最大許容消費電力を2000Wとする制限をかけて実施した。これは、電源容量が100V(ボルト)−20A(アンペア)の空気調和装置を対象としているためである。
また、室内機の吹出口の前に人が立ち、その人が、その人に当たる吹き出し風が暖かく快適であると判断できる条件を調査したところ、吹き出し温度が45℃まで上昇すると、吹き出し風が暖かく快適だと感じるようになることがわかった。よって、吹き出し温度が45℃に達するまでの経過時間を両者で比較することとした。
図7(a)(b)の経過時間は、使用者のリモコンによる暖房運転開始の指示を室内機のリモコン受信部が受信した時点(暖房運転開始)をゼロとして、その時点からの経過時間を示している。図7(a)において、従来の(一般的な)ヒートポンプ暖房のみの空気調和装置では、室内熱交換器の温度が、室内ファンであるクロスフローファンの回転を始める所定の温度に達するまでに約170秒を要し、経過時間約170秒で、クロスフローファンが弱モード(120rpm)での回転を始め、吹出口から暖房調和空気である吹き出し風の吹き出しが始まる。そして、その吹き出し温度が45℃に達するのは経過時間が205秒経ったときであった。
この試験に使用した従来の冷凍サイクルによるヒートポンプ暖房のみの空気調和装置では、室内機の前にいる人が暖かくて快適だと感じるまでに、暖房運転開始から約3分半の時間が必要であった。図7(a)には、このヒートポンプ暖房のみの空気調和装置の室内熱交換器の表面温度の変化も合わせて図示している。この室内熱交換器の温度は、経過時間が約40秒経った頃から上昇を始めるが、これは暖房運転開始指示をリモコン受信部が受信すると、直ちに圧縮機が回転駆動を始めるわけではなく、空気調和装置の稼働開始時の室内制御装置と室外制御装置の通信に、多少の時間が必要とされるためである。
一方、通常の冷凍サイクルに加えてクロスフローファン2を電磁誘導加熱する構成を備えたハイブリッド式空気調和装置である空気調和装置100の場合では、図7(a)に示すように、その吹き出し温度は、A、B、C、Dの4つの領域に区分けすることができる。まず領域Aは、圧縮機70の消費電力がゼロか、もしくは小さく、クロスフローファン2を電磁誘導加熱するために、誘導加熱コイル1に最大の1500Wの電力を投入することが可能となる領域である。このため、クロスフローファン2の温度は電磁誘導加熱により短時間で上昇でき、経過時間約30秒で、吹き出し温度を一気に45℃まで到達させることができる。なお、クロスフローファン2は、暖房運転開始指示をリモコン受信部が受信すると、すなわち暖房運転が開始されると、直ちに、室内機101において最も回転数が低く設定されている弱モードの回転数での回転を開始するものである。
上記において圧縮機70の消費電力が小さくとは、誘導加熱コイル1に最大許容電力でである1500Wを投入した場合でも、空気調和装置100の全体消費電力が、最大許容値である2000Wより小さくなるような、消費電力であることを意味する。このように、この空気調和装置100では、従来のヒートポンプ暖房だけの空気調和装置で暖房運転開始から約205秒を要していた45℃の吹き出し温度を、約30秒と大幅に短縮して、すなわち短時間で確保することができるのである。領域Aにおいて、図7(b)に示すように圧縮機70の消費電力を示すグラフが、経過時間が多少経ってから立ち上がるのは、ヒートポンプ暖房のみの空気調和装置と同様に、前述のとおり、空気調和装置100の稼働開始時の室内制御装置60と室外制御装置80の通信に、多少の時間が必要だからである。
なお、圧縮機70の起動開始を室外制御装置80が意図的に遅らせて、誘導加熱コイル1へ最大投入電力である1500Wを供給する時間を長くして、ヒートポンプ暖房が立ち上がるまでの、クロスフローファン2の電磁誘導加熱による吹き出し温度の更なる上昇を図るような制御構成としてもよい。
また、クロスフローファン2の回転数は、暖房運転開始からここまで弱モードで設定されている回転数であるが、クロスフローファン2の温度が電磁誘導加熱により十分上昇して吹き出し温度が45℃を超える30秒経過後から、弱モードよりも回転数が高く設定されている中モードや高モードに切り換え、クロスフローファン2の回転数を高めるように制御してもよい。これにより使用者が、より暖かさを感じられるようになる。すなわち、誘導加熱コイル1への通電開始後に所定時間(ここでは30秒)が経過したら、クロスフローファン2の回転数を増加させるような制御をしてもよい。
室内制御装置60は、室外制御装置80と協働し、空気調和装置100の全体消費電力が最大許容消費電力である2000Wを超えないよう(2000W以下であるよう)に、特に、消費電力が大きく、その回転数とともに消費電力が変化する圧縮機70の消費電力を室外制御装置80から得て、その圧縮機70の消費電力に基づき、誘導加熱コイル1への供給電力を決定し、電流供給回路13を通して、決定した供給電力(投入電力)に見合った交流電流を誘導加熱コイル1に供給する。
領域Bでは、圧縮機70の消費電力が回転数の上昇とともに増加するため、室内制御装置60は、空気調和装置100の最大許容消費電力である2000Wを超えないように、誘導加熱コイル1への投入電力を、最大の1500Wから圧縮機70の消費電力の増加に対応させて徐々に低減させる。そのため、この時点まで温風を主に生成していたクロスフローファン2の電磁誘導加熱量が減少するので、一時的に吹き出し温度が低下する。なお、誘導加熱コイル1への供給電力の低減は、供給電圧と供給電流を低減させるものであるが、交流電流の周波数は26kHzで一定とする。
その後、領域Cでは、さらに圧縮機70の消費力が回転数の上昇とともに増加し、空気調和装置100の最大許容消費電力である2000Wを超えないように制御するために、クロスフローファン2の電磁誘導加熱のための消費電力を低減せざるを得なくなる。しかし、この時点では、すでに圧縮機70による冷凍サイクルの冷媒循環量も増加して冷凍サイクル(ヒートポンプサイクル)が機能し始めており、室内熱交換器3の温度も上昇過程にある。そのため、吹き出し温度は、主として冷凍サイクル、すなわちヒートポンプ暖房を主として、45℃以上の温度を保ちながら、徐々に上昇している。
なお、図7(a)において、ハイブリッド式である空気調和装置100の室内熱交換器3の温度変化は図示されていないが、図7(a)に図示されている、比較対象である従来の冷凍サイクルによるヒートポンプ暖房のみの空気調和装置の室内熱交換器の温度変化とほぼ同様であり、そのため図7(a)では空気調和装置100の室内熱交換器3の温度変化は図示を割愛している。これは両者の圧縮機運転パターンが同様であり、冷凍サイクルだけを見れば違いがほとんどないためである。クロスフローファン2を電磁誘導加熱したとしても、冷凍サイクルには影響がないのである。
最後に、領域Dでは冷凍サイクルが本格的に機能し始め、室内熱交換器3が高温に、すなわち、ヒートポンプ暖房のみの空気調和装置においてもクロスフローファンの回転を始められる温度まで達するので、クロスフローファン2をもはや電磁誘導加熱する必要はなくなり、誘導加熱コイル1の消費電力は0Wに収束させていく。経過時間360秒後には、両者の吹き出し温度はほぼ同じとなる。
このように、実施の形態1の空気調和装置100は、室内機101に導電性を有するクロスフローファン2と、このクロスフローファン2に近接するように配置され、高周波数の交流電流が供給される誘導加熱コイル1と、を備えており、暖房運転開始が指示されると、室内制御装置60が、クロスフローファン2を回転させるとともに、電磁誘導加熱コイル1に高周波数の交流電流を供給し、クロスフローファン2を回転させながら電磁誘導加熱することにより、冷凍サイクルによるヒートポンプ暖房の立ち上がりまでの時間、すなわちヒートポンプ暖房運転の準備時間中に、電磁誘導加熱されたクロスフローファン2からの熱伝達により暖められた空気を吹出口5から温風として吹き出すことができるので、使用者の暖房運転の開始指示から使用者が暖かさに満足する温風が吹出口5から吹き出るまでの時間を短縮することができる。ヒートポンプ暖房に対する暖房運転開始から温風吹き出しまでの待ち時間が長いということの不満が解消され、暖房運転開始の指示から短時間で温風が吹き出ることで、使用者にとって暖房運転の快適性に優れた空気調和装置となる。
また、実施の形態1の空気調和装置100は、暖房運転開始の指示があると、室内制御装置60が、誘導加熱コイル1に、許容される範囲の最大の電力を供給してクロスフローファン2を電磁誘導加熱するので、クロスフローファン2の温度を短時間で上昇させることができ、クロスフローファン2からの熱伝達により、暖房運転開始直後の吹き出し温度を一気に高めることができる。
また、実施の形態1の空気調和装置100は、暖房運転開始の指示により冷凍サイクルの圧縮機70が起動され、その回転数の上昇とともに圧縮機70の消費電力が増加していくと、その圧縮機70の消費電力の増加に対応させて、誘導加熱コイル1への供給電力を最大値から減少させるように制御するので、室内熱交換器3で温風を生成できるようになっているにも係らず、必要以上にクロスフローファン2を電磁誘導加熱してしまうことを回避でき、無駄な電磁誘導加熱のための消費電力発生を防ぐことができる。そして、空気調和装置100が消費電力過剰による過電流遮断などで停止してしまう不具合の発生を回避することができる。
なお、圧縮機70の消費電力の増加に対応させて、誘導加熱コイル1への供給電力を減少させる制御を行うが、圧縮機70の電流の増加に対応させて、もしくは、圧縮機70の回転数を示す圧縮機70の駆動回路であるインバータ回路の出力周波数の増加に対応させて、誘導加熱コイル1への供給電力を減少させるように制御してもよい。また、誘導加熱コイルへの供給電力(電磁誘導加熱の消費電力)の減少は、段階的に行う制御であってもよい。
また、実施の形態1の空気調和装置100は、クロスフローファン2を回転させながら電磁誘導加熱することにより、クロスフローファン2の局所加熱を避けることができる、すなわち、ある部分だけが局所的に電磁誘導加熱されるのではなく、クロスフローファン2を周方向に均等に電磁誘導加熱して、クロスフローファン2に温度むらが生じないようにすることができるので、通過する空気へのクロスフローファン2からの熱伝達が、羽根22の周方向において均等になり、温風を安定して生成でき、吹出口5からの吹き出し風に、低温の吹き出し風が突然紛れ込んでしまうといったような現象を避けることができる。
また、実施の形態1の空気調和装置100は、クロスフローファン2を回転させながら電磁誘導加熱して、クロスフローファン2の局所加熱を避けるようにしていることにより、クロスフローファン2を構成する羽根22の熱負荷(熱応力)が緩和されるので、熱疲労よる寿命の低下を抑制することができる。
また、実施の形態1の空気調和装置100は、クロスフローファン2を回転させながら電磁誘導加熱する際に、少なくても電磁誘導加熱の開始から所定時間までは、室内機101に設定されている最小の回転数(ここでは弱モードの120rpm)で回転させることにより、電磁誘導加熱を開始した直後で、クロスフローファン2の温度が上昇途中であって、まだ十分に上昇しきれていない状態でも、吹出口5から吹き出されるまだ十分な温風とはいえない暖かさが乏しい吹き出し風は、最小の回転数による風速であるので、その吹き出し風が、たとえ使用者に直接あたったとしても、使用者の感じる不快感を軽減させることができる。
また、実施の形態1の空気調和装置100は、室内機101本体の背面寄りに位置し、クロスフローファン2の風路51の背面側を構成するケーシング9に収納凹部91を設けて、クロスフローファン2を電磁誘導加熱する誘導加熱コイル1を、その収納凹部91内に、風路51に突出しないように収納したので、誘導加熱コイル1が通風抵抗となることはなく、クロスフローファン2の送風効率を低下させることがない。
また、収納凹部91の底面およぶ四方の内壁と誘導加熱コイル1の間には、断熱材92を介在させているので、樹脂製のケーシングの熱変形や熱疲労の発生を回避することができる。
また、実施の形態1の空気調和装置100は、室内機101の本体(筐体10)と導電性のあるクロスフローファン2との間に介在する連結ボス23および回転軸26が、それぞれ導電性がない、もしくは導電性が極小な絶縁材料にて形成されていることにより、電磁加熱誘導によりクロスフローファン2に発生した渦電流や熱が室内機101本体へ漏洩することを防ぐことができるので、クロスフローファン2の電磁誘導加熱効率を高められる。また、室内機101本体の漏電や発熱を回避することができる。
なお、本実施の形態1では、鉄製のクロスフローファン2を電磁誘導加熱させたが、クロスフローファン2は、導電性を有する他の金属で製造してもよい。例えば、アルミ、銅、ニッケル、コバルト、クロム、ステンレスなどがある。これらの合金であってもよい。ただし、金属の電気抵抗が小さいほど電磁誘導加熱の効果が低くなるので、アルミや銅よりも、それらよりも電気抵抗が高く汎用性のある鉄やステンレスが望ましい。
また、射出成形された、1枚の円環状平板に複数の羽根が立設する樹脂部品を、超音波溶着させて製作した樹脂製のクロスフローファンを製作し、その樹脂製のクロスフローファンの表面に金属メッキを施して金属膜を形成させ、導電性を有するクロスフローファン2としてもよい。メッキする金属は、導電性のある上記したものやそれらの合金である。このように、樹脂製のクロスフローファンの表面に金属メッキを施して導電性を持たせるようにすれば、電磁誘導加熱が可能となる導電性のあるクロスフローファン2の製造の容易化を図ることができる。
また、誘導加熱コイル1の設置位置(配置箇所)は、クロスフローファン2より奥側である室内機101本体の背面側(壁側)に設置したが、設置位置はこれに限るものではなく、クロスフローファン2に近接する場所、すなわちクロスフローファン2の近傍であれば他の場所でもよく、例えば、ノズル12に設置するようにしてもよい。ただし、他の場所に設置する場合であっても、クロスフローファン2の送風に対する抵抗とならないように、風路に突出させないのが望ましい。
また、本実施の形態1の空気調和装置100は、家庭用のもの(ルームエアコン)で、室内機101が壁掛けタイプであるが、空気調和装置の構成はこれに限るものではなく、貫流式ファンであるクロスフローファンを用いて送風する室内機を有する空気調和装置であれば、室内機が天井埋め込み型、床置き型など他のタイプでもよい。また、家庭用に限らず、業務用エアコンや、鉄道やエレベーターなどの移動体に設置される空気調和装置に適用させてもよい。
なお、誘導加熱コイル1の巻き数(周巻数)や誘導加熱コイル1に供給する交流電流の周波数は、誘導加熱コイル1の線径、クロスフローファン2の電気抵抗の大きさ(材質)、クロスフローファン2と誘導加熱コイル1の距離、クロスフローファン2の温度をどこまで上昇させるかなどによって、適宜に決定されるものである。
実施の形態2.
上記の実施の形態1では、暖房運転開始時に誘導加熱コイル1への通電開始とほぼ同タイミングで、室内機101に設定されている最小の回転数である弱モードの回転数120rpmにて、導電性のあるクロスフローファン2を回転させ、回転するクロスフローファン2を電磁誘導加熱した。そのため、誘導加熱コイル1への通電開始直後でクロスフローファン2の温度が上昇過程にあって、まだ使用者が満足のいく温風が生成できるまでクロスフローファン2の温度が上昇していなくても、吹出口5から吹き出される吹き出し風は、弱モードの風速となるので、仮に使用者にその風が直接あたったとしても、使用者の不快感が軽減されるものである。
しかし、軽減はされるものの、暖房運転を要求している使用者に、使用者が満足できる温度まで上昇していない風が直接あったてしまう事態は、できるだけ避けたい。そこで、この実施の形態2では、使用者の暖房運転の開始指示から、短時間で使用者が暖かさに満足する温風を吹出口5から吹き出すことが可能であるとともに、暖房運転開始から使用者が暖かさに満足できる温風が生成できるまでは、使用者に吹き出し風があたることのない空気調和装置を提供する。
この実施の形態2に示す空気調和装置200の構成は、実施の形態1の空気調和装置100と同じであり、ここでは同一部品には同一符号を付して、詳細な説明は省略する。実施の形態2の空気調和装置200は、実施の形態1の空気調和装置100と、ヒートポンプ暖房が立ち上がるまでの時間におけるクロスフローファン2の回転制御を含む室内機の運転制御が異なるものであり、それ以外については実施の形態1と同様である。説明が不明確とならないように、便宜上、実施の形態2の空気調和装置を空気調和装置200、室内機を室内機201と記すが、上記のとおり、実施の形態1の空気調和装置100、室内機101とは、構成は同じで、運転制御だけが異なるものであり、2つ以外は同一の符号を付すものとする。
これより、実施の形態2の空気調和装置200の動作について、室内機201を主として説明する。図8は、クロスフローファン2を回転させた場合の、回転数に対する発生圧力を示すグラフである。ここで、発生圧力とは、クロスフローファン2の上流側(風上側)における空気の圧力に対する下流側(風下側)における空気の圧力の増加量を示しており、クロスフローファン2を通過することで、どれだけ圧力が高まったかを示している。
Qの符号を付した実線で示す曲線は、クロスフローファン2の回転数を、高い回転数から徐々に下げていった場合の発生圧力特性を示しており、Rの符号を付した破線で示す曲線は、曲線Qとは逆に、クロスフローファン2の回転数を低い回転数から徐々に上げていった場合の発生圧力特性を示している。曲線Rは、領域Gにおいては、曲線Qと一致している。
曲線Qは、一般的に累乗曲線となる場合が多い。そして、クロスフローファン2の回転数に対する発生圧力の変化は、ヒステリシス特性を有しており、図8に示されるように、曲線Qと曲線Rとは、特定の回転数より低い回転数域においては、異なるカーブを呈し、同じ回転数であっても異なる発生圧力を示す。クロスフローファン2の回転数に対する発生圧力の変化を示す曲線Qおよび曲線Rについて、それぞれの特性から、回転数域を、領域E、F、Gに分類することができる。
図8において、領域Eでは、曲線Qが示すように、クロスフローファン2の回転数が、領域Eの回転数より高い回転数から下降してきた場合には、発生圧力が停止状態を除けば0よりも大きい、すなわち、下流側の圧力が上流側より高まっていることから、上流側から下流側への送風作用が行われていることを意味している。元々、吸込口4から吹出口5に至る空気の流れ(送風)が存在して(形成されて)おり、その状態からの回転数低下であるため、流れの方向が維持され、超低速の回転となっても、風速が下がるだけで送風作用が失われることはない。
一方、曲線Rが示すように、クロスフローファン2の回転数が、停止から上昇していく場合には、領域Eでは、発生圧力が0となる。すなわち、送風作用が行われていないことを示している。これは、元々空気の流れ(送風)がない状態で、クロスフローファン2を超低速で回転させても、クロスフローファン2に渦が発生してしまい、渦の圧力損失で送風のエネルギーが費やされてしまうからである。曲線Rの領域Eにおいては、クロスフローファン2が回転しているにも係らず、上流側から下流側への空気の流れが生じていない、すなわち送風が行われていないのである。このクロスフローファン2においては、領域Eの最大回転数(領域Eと領域Fの境界の回転数)は、35rpmであった。なお、曲線Qの場合は、領域Eにおいて、風速低下だけで流れが維持されるので、渦が発生することなく、送風エネルギーが渦で消耗されないのである。
領域Fでは、クロスフローファン2の回転数が上昇していく(曲線R)か、下降してきた(曲線Q)かで、発生圧力が異なり、これは送風量が異なる、ということを意味している。曲線Qであるクロスフローファン2の回転数が下降してきた場合の方が、送風量が多い。領域Gでは、クロスフローファン2の回転数に対する送風量が両者で常に一致する。このクロスフローファン2においては、領域Fと領域Gの境界の回転数は、100〜110rpmであり、そのため、弱モードの設定回転数を120rpmとしている。
図8の曲線Qにおける領域Eのように、クロスフローファン2が回転しているにも係らず、クロスフローファン2の上流側と下流側に空気の流れが生じない、すなわち送風が行われない状態の回転数域を、ここでは無送風回転と呼ぶこととする。なお、この無送風回転時における吹き出し風の風速は、大気中のゆらぎと同程度(0.1m/s以下)であった。
そこで、この実施の形態2に係る空気調和装置200においては、室内制御装置60が、暖房運転開始(リモコン受信部14が暖房運転開始の指示を受信して)から、電磁誘導加熱によりクロスフローファン2の温度が温風を生成できる程度に上昇するまで、クロスフローファン2を、このような無送風回転、すなわち送風作用を伴わない低い回転数で回転させながら電磁誘導加熱するものである。そして、クロスフローファン2の温度が温風を生成できる程度に上昇してから、クロスフローファン2の回転数を弱モードもしくは、弱モードより高い回転数、すなわち送風作用を伴う回転数に移行(上昇)させて、電磁誘導加熱を継続する制御を行うのである。
すなわち、この空気調和装置200では、冷凍サイクルによるヒートポンプ暖房運転の準備時間中にクロスフローファン2を回転させながら電磁誘導加熱するにあたって、室内制御装置60が、クロスフローファン2の回転数を、暖房運転開始(電磁誘導加熱の開始)から所定時間は、送風作用を伴わないような超低速な回転数とし、所定時間経過後から送風作用を伴う回転数に上昇させる制御を行うのである。回転数の上昇に伴って吸込口4から室内空気が吸い込まれるが、すでにクロスフローファン2の温度は、使用者が満足する温度の温風を生成できるまでに上昇しているので、吸込口4から新たに吸い込まれる空気は、クロスフローファン2から熱伝達され、使用者が満足できる温度の温風が、少なくとも冷凍サイクルによるヒートポンプ暖房が立ち上がるまでは継続的に吹出口5から吹き出されることになる。
そのため、暖房運転開始からクロスフローファン2の熱伝達により使用者が暖かさに満足する温風が生成できるまでに、使用者に吹き出し風があたることが確実に避けられる。また、送風作用は行われていないが、クロスフローファン2は、超低速回転とは言え回転はしているので、局所的に加熱されることはなく、クロスフローファン2のを周方向に均等に電磁誘導加熱して、クロスフローファン2に温度むらが生じないようにすることができる。
なお、この空気調和装置200において、クロスフローファン2を無送風回転から送風作用を伴う回転数に上昇させた以降は、室内制御装置60が、実施の形態1の空気調和装置100と同様な制御を行う。すなわち、圧縮機70の回転数の上昇とともに圧縮機70の消費電力が増加していくと、その圧縮機70の消費電力の増加に応じて、誘導加熱コイル1への供給電力を減少させ、クロスフローファン2の電磁誘導加熱量を減じるように制御する。
クロスフローファン2をこのような無送風回転で回転させながら誘導加熱コイル1に交流電流を通電して電磁誘導加熱することを、ここでは予熱と呼ぶこととする。クロスフローファン2の予熱においては、空気の流れがないため、誘導加熱コイル1の与えた熱量の大部分が、クロスフローファン2の温度上昇に使われる。弱モードの回転数(120rpm)で回転させながら電磁誘導加熱する場合では、空気の流れがあり、通過する空気が熱量を奪うので、実施の形態1の空気調和装置100に比べ、同一供給電力においては、この空気調和装置200の方が、クロスフローファン2の温度上昇速度がより速くなる。
図9は、クロスフローファン2を予熱した場合のクロスフローファン2の表面温度と、吹出口5からの吹き出し風の温度(吹き出し温度)の変化を、経過時間を横軸にとって示すグラフであり、予熱時間をいくつか変えて試験している。この試験では、冷凍サイクルを稼働しておらず、室内熱交換器3に冷媒は流れず、室内熱交換器3は通過する空気を暖めない。室内機201単体で運転しており、吹き出し温度の上昇(変化)は、電磁誘導加熱されたクロスフローファン2からの熱伝達によるものである。
試験条件として、誘導加熱コイル1への投入電力は、最大許容電力としている1500W、予熱時間は、それぞれ0秒(予熱なし)、5秒、10秒、15秒の4パターンである。予熱時間終了と同時に、クロスフローファン2の回転数を、無送風回転から弱モードの回転数へ上昇させている。無送風回転の回転数はおおよそ30rpm、弱モードの回転数が120rpmである。ファンモータには、30rpm程度の回転数設定が可能なものを使用した。予熱なしのパターンは、実施の形態1における空気調和装置100の運転パターンと同じとなる。
図9において、上段(a)がクロスフローファン2の表面温度の変化を、下段(b)が吹き出し温度の変化を示している。クロスフローファン2の表面温度は、吹出口5から非接触での測定が可能な放射温度計を用いて測定した。図9(a)(b)ともに、試験開始時の部屋の温度(初期室温)からの温度変化(K:ケルビン)として示している。試験開始時においては、初期室温とクロスフローファン2の表面温度は等しい。試験開始と同時に(経過時間0で)、クロスフローファン2を無送風回転で回転させ、誘導加熱コイル1に、1500Wの電力で26kHzの交流電流を通電する。ただし、予熱なしパターンでは、試験開始と同時にクロスフローファン2を弱モードで回転させる。
いずれの予熱時間の場合においても、図9(b)が示すように、吹き出し温度変化の収束値(漸近値)は、34Kとなる。吹き出し温度変化(上昇)が、その収束値である34Kに到達するまでの経過時間は、クロスフローファン2の予熱なしの場合と予熱時間5秒の場合では約30秒、予熱時間10秒の場合が約12秒、予熱時間15秒の場合では約17秒であった。予熱時間10秒、15秒では、それぞれ予熱終了後約2秒で到達している。予熱時間が5秒と短い場合では、収束値である34Kに到達するまでにかかる時間が、予熱なし(予熱0秒)の場合とほとんど変化なく、吹き出し温度の立ち上がり時間の短縮には貢献できないことがわかった。
一方、予熱時間が15秒の場合では、経過時間17秒から27秒にかけて吹き出し温度が34Kを大きく上回っていた。これは、図9(a)に示されるように、クロスフローファン2が、必要以上に加熱されているためである。予熱時間10秒の場合には、吹き出し温度が略垂直に立ち上がったとき(経過時間12秒の時)の到達値が、ちょうど収束値である34Kになっており、クロスフローファン2の電磁誘導加熱に無駄のない、最も適した予熱時間であることがわった。
この時(経過時間12秒の時)のクロスフローファン2の温度の上昇値は約95Kとなる。クロスフローファン2の温度変化の収束値(漸近値)が73Kであるので、この収束値73Kに対して1.3倍の大きさまで加熱されていることになる。予熱時間10秒の場合において、クロスフローファン2の温度変化が、95Kまで上昇し、その後に73Kに下がって収束するのは、予熱時間10秒を過ぎると、クロスフローファン2の回転数が、送風作用を伴う、すなわち空気の流れを生じさせる弱モードの回転数に上昇して、クロスフローファン2から流れる空気に熱伝達されるからである。そして熱的な系が安定することで、73Kに収束する。
クロスフローファン2の回転数が、無送風回転から弱モードの回転数に上昇すると、空気の流れが生まれ、吹出口5から吹き出し風として吹き出されるようになるが、無送風回転の時には空気の流れがなかったので、クロスフローファン2から吹出口5に到る風路には、暖められていない冷たい空気が存在している。そのため、弱モードの回転数に上昇して最初に吹き出される吹き出し風は、熱伝達された空気と、その風路に存在していた冷たい空気とが混合した空気が、吹き出し風となってしまう。吹き出し風の温度が、熱伝達された直後の空気の温度よりも低くなるのである。
よって、吹出口5から吹き出される最初の吹き出し風から、使用者が十分に暖かいと満足できるようにするためには、クロスフローファン2を予め強めに加熱して、すなわち収束値73Kよりも高い温度まで上昇するように加熱して、熱伝達された空気が、上記の冷たい空気と混合して温度低下しても、その混合空気の温度が、使用者が十分に暖かいと満足できるレベルであればよいのである。収束値よりも高い95Kとなるまでクロスフローファン2を加熱したことにより、吹き出し温度(温度変化値)を、吹き出し始めから、吹き出し温度変化の収束値である34Kとすることができるのである。
クロスフローファン2を予め熱的な系が安定したときの収束値の温度よりも高く温度上昇させるように強めに加熱しておくことで、吹き出し風が最初に吹き出される時に、風路に存在していた冷たい空気との混合による吹き出し風の温度低下を補い、使用者が満足できる温風を最初から吹き出すことができる。図9(b)の予熱時間10秒に示すように、吹き出し温度の垂直立ち上げと、立ち上がった吹き出し温度上昇値を吹き出し温度変化の収束値に近づけることができる。
クロスフローファン2の予熱時間を細かく変化させて、クロスフローファン2の回転数が無送風回転から弱モードの回転数に上昇してからの吹き出し始めの吹き出し温度を評価したところ、クロスフローファン2の温度変化の漸近値(ここでは73K)に対しておおよそ1.1倍〜1.5倍の温度上昇までクロスフローファン2を電磁誘導加熱すれば、使用者にとっての快適性が良好である、すなわち、吹き出し始めの吹き出し風が十分に暖かいと満足できることがわかった。具体的には、クロスフローファン2の温度上昇収束値が73Kの場合であれば、クロスフローファン2の温度を80K〜110Kまで温度上昇するように電磁誘導加熱すればよい。
ところで、無送風回転には、弱モードで設定されている回転数よりも低い超低速な回転数が要求される。図9の試験時のように、30rpm程度の回転数の設定ができ、その回転数での安定した回転が実現可能なファンモータを用いてもよいが、このようなファンモータを用いることにより、空気調和装置200のコストが上昇したり、強モードで設定されるような高速な回転数においてモータ効率が低下したりしてしまうことが考えられる。
そこで、実施の形態2の空気調和装置200では、実施の形態1の空気調和装置100と同じファンモータ45により、クロスフローファン2の35rpm以下(実質的には25〜35rpm)の超低速回転、すなわち無送風回転を実現できる制御を、室内制御装置60が実施している。以下にその制御方法を説明する。
図10は、ファンモータ45によりクロスフローファン2の無送風回転を実現するためのファンモータ45の運転制御方法を示す特性図である。この空気調和装置200の室内制御装置60は、クロスフローファン2を回転駆動させるファンモータ45の駆動回路(図示していないが室内制御装置60が設置されている基板上に実装される)に対して、ファンモータ45への直流電圧の印加をON−OFF制御させるのである。室内制御装置60の指示に従って、ファンモータ45の駆動回路はON−OFFを繰り返すスイッチング動作を行う。
ファンモータ45に印加する直流電圧は、弱モードでクロスフローファン2を回転させる際に設定されている電圧である。すなわち、室内機201に設定されているファンモータ45の最低電圧である。言い換えると、室内機201に設定されているクロスフローファン2の最小回転数時の電圧である。図10に示すように、室内制御装置60が、この電圧を印加後(ON後)に、弱モードで設定される回転数まで上昇する前に、すなわち、回転数の上昇途中で電圧の印加を解除(OFF)するのである。この時のファンモータ45の回転数が、図10においてmaxで示される回転数で、ここでは35rpmである。
ファンモータ45、ひいてはクロスフローファン2は、電圧印加がOFFとなっても、慣性力があるので、すぐに停止することはなく摩擦抵抗を受けて回転数を低下させながら回転を続ける。そして、適度な回転数まで低下した時に、再び電圧を印加(ON)して、回転数を上昇させる。この適度な回転数が、図10においてminで示される回転数で、ここでは25rpmである。再び電圧ONとして上昇に転じた回転数が、再び上昇途中のmax回転数の時に、再度電圧の印加を解除(OFF)する。そして以降、無送風回転の間、すなわちクロスフローファン2の予熱の間は、このようなファンモータ45への電圧印加のON−OFFを繰り返すのである。ファンモータ45への電圧印加のON−OFFを繰り返して、クロスフローファン2の回転数を、maxで示されている回転数とminで示される回転数の間で回転数を上下させるものであり、maxで示される回転数とminで示される回転数は、ともに図8の領域Eの範囲にある回転数(無送風回転)とするものである。
このようなファンモータ45の電圧印加のON−OFFをスイッチング操作して繰り返すことにより、擬似的な超低速回転が達成できるのである。見かけ上、maxとminの平均回転数で回転していることになる。図10の場合では、擬似的に30rpmでの回転が実現されていることになる。ファンモータ45を、安定して超低速な回転が可能な高価な仕様のモータに変更しなくても、ファンモータ45への電圧印加をON−OFF制御することで、設定されている最小回転数よりも低い回転数であり無送風回転となる超低速な回転数での回転が実現できるのである。
ファンモータ45への電圧印加のON−OFF制御の間隔を短く、すなわち、ファンモータ45の駆動回路のスイッチング操作を細かく行うほど、図10に示すmax回転数とmin回転数の差が小さくなり、無送風回転(予熱)時のクロスフローファン2の回転数がより安定的になる。
実際の制御においては、ファンモータ45もしくはクロスフローファン2の回転数に基づいてON−OFFのタイミングを計るわけではなく、時間でコントロールしている。ON時間、OFF時間がそれぞれ決定されていて、その時間に基づいてファンモータ45への電圧の印加を制御しているのである。図10においては、回転開始時のON時間が2秒であり、以降は、OFF時間が2秒、ON時間が0.5秒を繰り返すように制御している。ON時間、OFF時間は、ファンモータ45の仕様および実現したい擬似的な超低速な回転数に応じた最適値を、予め試験結果などから決定し、室内制御装置60にプログラムすればよい。
なお、空気調和装置200において、クロスフローファン2の予熱時間(クロスフローファン2を無送風回転で回転させながら電磁誘導加熱する時間)は、室内制御装置60によって制御される。このとき室内制御装置60は、予めプログラムされている設定時間だけ予熱したら無送風回転から送風可能な回転数(ここでは弱モードの回転数)に上げるように制御している。そして、この設定時間を、室温センサが測定する室内機201の設置される部屋の温度に応じて、段階的もしくは連続的に変化するものとしている。
すなわち、室内制御装置60は、室温もしくは吸込温度が低いほど、予熱時間が長くなるように制御する。クロスフローファン2の予熱時間の長さを、室温もしくは吸込空気温度に応じて変化させることにより、クロスフローファン2の予熱不足や予熱過剰を避けることができ、使用者が暖かさに満足できない吹き出し風が吹出口5から吹き出されたり、電磁誘導加熱のためのエネルギーを無駄に消費したりする不具合を回避することができる。
このように、実施の形態2の空気調和装置200は、暖房運転開始からヒートポンプ暖房の立ち上がりまでの時間、すなわちヒートポンプ暖房運転の準備時間中に導電性を有するクロスフローファン2を電磁誘導加熱する際に、暖房運転開始から、電磁誘導加熱によりクロスフローファン2の温度が温風を生成できるレベルに上昇するまでは、無送風回転で回転させながら電磁誘導加熱し、クロスフローファン2の温度が温風を生成できるレベルまで達してから、送風作用を伴う、すなわち空気の流れを生じさせる回転数に上昇させて電磁誘導加熱を継続するようにしたことにより、使用者が暖かさに満足できるレベルでない吹き出し風が吹出口5から吹き出されることがなく、使用者にそのような吹き出し風があたることを確実に回避することができる。
そして、無送風回転という超低速な回転数での回転であっても、クロスフローファン2は回転しているので、クロスフローファン2が局所的に加熱されることはなく、クロスフローファン2を周方向に均等に電磁誘導加熱して、クロスフローファン2に温度むらが生じないようにすることができる。
さらに、クロスフローファン2の無送風回転での電磁誘導加熱(予熱)においては、空気の流れが生じていないため、与えた熱量の大部分が、クロスフローファン2の温度上昇に費やされるので、クロスフローファン2の温度上昇(温度の立ち上がり)が速くなる。それにより、暖房運転開始から、使用者が暖かさに十分満足する温風が吹出口5から吹き出されるまでの時間を、実施の形態1の空気調和装置100と比べて、より短縮することができる。
また、実施の形態2の空気調和装置200は、クロスフローファン2の温度が、熱的な系の安定後の収束値(漸近値)よりも高めの温度に上昇するまでクロスフローファン2を予熱し、その温度まで上昇してから、クロスフローファン2の回転数を、送風が伴う回転数に上昇させるように制御したことにより、吹出口5からの吹き出し始めの吹き出し温度を高めることができるので、使用者は、最初の吹き出し風から暖かさに十分満足できる温風を感じることができ、使用者にとっての暖房運転の快適性を高めることができる。
また、実施の形態2の空気調和装置200は、クロスフローファン2の温度が、熱的な系の安定後の収束値(漸近値)よりも1.1〜1.5倍となる温度に上昇するまでクロスフローファン2を予熱し、その温度まで上昇してから、クロスフローファン2の回転数を、送風が伴う回転数に上昇させるように制御したことにより、吹出口5からの吹き出し始めの吹き出し温度を高めることができるとともに、加熱不足により吹き出し温度が高まるのに時間がかかってしまったり、加熱のし過ぎにより吹き出し温度が必要以上に上昇したりしてしまう不具合を防ぐことでき、使用者にとっての快適性が向上できるとともに、必要以上な電磁誘導加熱を避けて、エネルギーの無駄な消費を回避することができる。
また、実施の形態2の空気調和装置200は、ファンモータ45への直流電圧の印加を、短時間でON−OFFする(印加と印加解除を繰り返す)制御、すなわちファンモータ45への電圧の印加と、クロスフローファン2の回転数が上昇している途中(最低電圧で設定されている最小回転数に上昇する前)での電圧印加解除と、を繰り返す制御を行うことにより、室内機201に設定されている最小の回転数よりも低い回転数領域で、所定の幅でクロスフローファン2の回転数を上げたり下げたりして、30rpm程度のような超低速な回転数であるクロスフローファン2の無送風回転を擬似的に実現することができるので、ファンモータ45に超低速な回転が可能である高価なモータを用いたり、高回転域でのモータ効率の低下を招いたりすることなく、クロスフローファン2の予熱(無送風回転で回転させながら電磁誘導加熱すること)が可能となる。
また、実施の形態2の空気調和装置200は、室内制御装置60が、クロスフローファン2の予熱時間の長さを、室内機201が設置されている部屋の温度に応じて変化させることにより、予熱不足やその逆に予熱を必要以上に長く行ってしてしまう不具合を避けることができるので、使用者が暖かさに満足できない吹き出し風が吹出口5から吹き出されたり、電磁誘導加熱のためのエネルギーを無駄に消費したりする事態を回避することができる。
実施の形態3.
この実施の形態3では、実施の形態2と同様な目的で、使用者の暖房運転の開始指示から、短時間で使用者が暖かさに満足する温風を吹出口5から吹き出すことが可能であるとともに、暖房運転開始から使用者が暖かさに満足する温風が生成できるまでは、使用者に吹き出し風があたることのない空気調和装置を提供する。そして実施の形態2とは、運転制御が異なるものである。
この実施の形態3に示す空気調和装置300の構成は、実施の形態1の空気調和装置100と同じであり、ここでは同一部品には同一符号を付して、詳細な説明は省略する。実施の形態3の空気調和装置300は、実施の形態1の空気調和装置100と、ヒートポンプ暖房運転準備時間中の室内機の運転制御が異なるものであり、それ以外については実施の形態1と同様である。説明が不明確とならないように、便宜上、実施の形態3の空気調和装置を空気調和装置300、室内機を室内機301と記すが、上記のとおり、実施の形態1の空気調和装置100、室内機101とは、構成は同じで、運転制御だけが異なるものであり、2つ以外は同一の符号を付すものとする。
これより、実施の形態3の空気調和装置300の動作について、室内機301を主として説明する。図11は空気調和装置300の室内機301の縦断面図である。図11に示すように、この室内機301では、クロスフローファン2を回転させながら電磁誘導加熱する際に、電磁誘導加熱開始から所定時間までは上下風向制御板7を閉じた状態、すなわち吹出口5を塞いだ状態で行うものである。
リモコン受信部14が使用者からの暖房運転開始の指示を受信すると、室内制御装置60は、実施の形態1の室内機101と同様に、クロスフローファン2を弱モードに設定されている回転数で回転させながら誘導加熱コイル1に高周波数の交流電流を供給してクロスフローファン2の電磁誘導加熱を始める。しかし、この時に上下風向制御板7を回動させないで(開かないで)、空気調和装置300が停止状態にあった時の閉じた状態を維持させる。このため、吹出口5は塞がれた状態のままで、図11に点による網掛けで示すような、室内熱交換器3と上下風向制御板7により囲まれた略閉状態の空間Hが形成されている。
なお、ここでクロスフローファン2の回転数は、弱モードに設定されている回転数に限るものではなく、実施の形態2の室内機201が示した無送風回転ではなく、上下風向制御板7が開いている状態であれば、吹出口5から吹き出し風が吹き出されるような送風作用を伴う回転数であればよい。
電磁誘導加熱されるクロスフローファン2は、上下風向制御板7が開いていれば送風作用を行うが、この段階では、吹出口5が閉じて吹き出す場所がないため、送風作用は行えず、空間Hに存在している空気は、回転しながら電磁誘導加熱されているクロスフローファン2により、攪拌され、クロスフローファン2からの熱伝達で温度が上昇する。
そして、空間Hの空気の温度が、使用者が暖かさに十分満足できる温度まで上昇したならば、室内制御装置60が、上下風向制御7を開いて、すなわち回動させて吹出口5の閉塞を解除して開口するのである。なお、上下風向制御板7が開いた状態は、図1に示されるとおりである。上下風向制御板7が開くと同時に吹出口5が開口することで、弱モードの回転数で回転しているクロスフローファン2の送風作用が可能となり、吹出口5から吹き出し風が吹き出されるようになる。
この時、空間Hで攪拌され十分に暖められた空気が最初に吹き出されることになる。そして、すでにこの時点ではクロスフローファン2は、電磁誘導加熱により温度が十分に上昇しているので、吸込口4から新たに吸い込まれる空気もクロスフローファン2から熱伝達され、使用者が満足できる温度の温風が、少なくとも冷凍サイクルによるヒートポンプ暖房が立ち上がるまでは継続的に吹出口5から吹き出されることになる。
すなわち、この空気調和装置300では、冷凍サイクルによるヒートポンプ暖房運転の準備時間中にクロスフローファン2を回転させながら電磁誘導加熱するにあたって、室内制御装置60が、暖房運転開始(電磁誘導加熱の開始)から所定時間は、上下風向制御板7で吹出口5を塞いだ状態とし、所定時間経過後に上下風向制御板7を回動させて吹出口5を開口する制御を行うものである。
このように、暖房運転開始から、電磁誘導加熱されたクロスフローファン2により使用者が暖かさに満足する温風が生成できるまでは、上下風向制御板7により吹出口5を塞いでいるので、クロスフローファン2を、吹出口5が開口していれば送風作用を伴う回転数で回転させながら電磁誘導加熱していても、使用者に吹き出し風があたることがない。そして、吹出口5が開口すると同時に、使用者が暖かさに満足できる温風が吹き出すので、使用者が満足する温度にまで上昇していない吹き出し風が使用者にあったてしまうこともない。
さらに、吹出口5を上下風向制御板7で塞いだ状態で、クロスフローファン2を回転させながら電磁誘導加熱することにより、送風可能な回転数であっても空気の流れが生じないため、与えた熱量の大部分が、クロスフローファン2の温度上昇に費やされ、それが空間Hの空気に熱伝達されるので、クロスフローファン2の温度上昇(温度の立ち上がり)が速くなる。それにより、暖房運転開始から、使用者が暖かさに十分満足できる温風が吹出口5から吹き出されるまでの時間を、実施の形態1の空気調和装置100と比べて、より短縮することができる。
なお、この空気調和装置300において、上下風向制御板7を回動し吹出口5を開口させた以降は、室内制御装置60が、実施の形態1の空気調和装置100と同様な制御を行う。すなわち、圧縮機70の回転数の上昇とともに圧縮機70の消費電力が増加していくと、その圧縮機70の消費電力の増加に対応させて、誘導加熱コイル1への供給電力を減少させ、クロスフローファン2の電磁誘導加熱量を減じるように制御する。
また、この空気調和装置300において、暖房運転開始後に上下風向制御板7を回動させて吹出口5を開口させるタイミング(開口までの時間)は、室内制御装置60によって制御される。このとき室内制御装置60は、温度センサにより測定される室内熱交換器3の温度、もしくは空間Hに臨む表面を有する他の部品の温度、または、直接的に温度センサにて測定された空間Hに存在する空気の温度が、予めプログラムされている設定温度に上昇したら、上下風向制御板7を回動させて吹出口5を開口させるようにしている。この設定温度は、空間Hに存在している空気の温度が、使用者が暖かさに十分に満足する温度である。
よって、空間Hの空気が、使用者が暖かさに満足する温度にまで上昇していないうちに、吹出口5が開口して、吹き出し風として吹き出されてしまうことはなく、そのような吹き出し風が使用者にあたってしまうこともない。さらには、吹出口5を開口させるまでに必要以上に長い時間をかけることがなく、電磁誘導加熱のためのエネルギーを無駄に消費したりする不具合を回避することができる。
また、この制御方法とは異なる制御方法として、室内制御装置60が、予めプログラムされている設定時間が経過したら、上下風向制御板7を回動させて吹出口5を開口させるようにして制御してもよい。そして、この設定時間を、室温センサが測定する室内機301の設置される部屋の温度に応じて、段階的もしくは連続的に変化するものとしてもよい。暖房運転開始から吹出口5の開口までの時間を、室温もしくは吸込空気温度に応じて変化させることにより、使用者が暖かさに満足できない吹き出し風が吹出口5から吹き出されたり、電磁誘導加熱のためのエネルギーを無駄に消費したりする不具合を回避することができる。
このように、実施の形態3の空気調和装置300は、暖房運転開始からヒートポンプ暖房の立ち上がりまでの時間、すなわちヒートポンプ暖房運転の準備時間中に導電性を有するクロスフローファン2を回転させながら電磁誘導加熱する際に、暖房運転開始から、室内熱交換器3と上下風向制御板7とで囲まれる空間Hの空気温度が、使用者が暖かさに満足できる吹き出し風となる所定の温度に上昇するまでは、上下風向制御板7を閉じた状態、すなわち吹出口5を塞いだ状態とし、空間Hの空気温度が、その所定の温度まで上昇したならば、上下風向制御板7を回動させて吹出口5を開口させるように制御したことにより、吹出口5が開口すると同時に、使用者が暖かさに満足する温風を吹き出すことができるので、使用者が満足する温度にまで上昇していない吹き出し風が使用者にあたることを確実に回避することができる。
そして、空間Hに含まれるクロスフローファン2から上下風向制御板7に至る間の空気を、吹出口5が開口されるまでに攪拌して暖めることができることにより、実施の形態2の空気調和装置200が示したような、クロスフローファン2の温度が熱的な系が安定したときの収束値よりも高めの温度となるようクロスフローファン2を予め強めに加熱させる必要がなくなり、その分の誘導加熱時間を省けるので、使用者が暖かさに十分満足できる温風の吹き出しまでにかかる時間を、より短縮することができ、使用者にとっての快適性が向上できる。また、強めの加熱のためのエネルギーを消費しないで済むので、省エネルギーに寄与する。
さらに、吹出口5を上下風向制御板7で塞いだ状態で、クロスフローファン2を回転させながら電磁誘導加熱することにより、空気の流れが生じないため、与えた熱量の大部分が、クロスフローファン2の温度上昇に費やされ、それが空間Hの空気に熱伝達されるので、クロスフローファン2の温度上昇(温度の立ち上がり)が速くなって、暖房運転開始から、使用者が暖かさに十分満足できる温風が吹出口5から吹き出されるまでの時間を、より短縮することができる。
また、実施の形態3の空気調和装置300は、室内制御装置60が、温度センサにより測定される室内熱交換器3の温度、もしくは空間Hに臨む表面を有する他の部品の温度、または、直接的に温度センサにて測定された空間Hに存在する空気の温度が、予めプログラムされている設定温度に上昇したら、上下風向制御7を回動させて吹出口5を開口させるようにしているので、使用者が暖かさに満足できない吹き出し風が吹出口5から吹き出されたり、電磁誘導加熱のためのエネルギーを無駄に消費したりする不具合を回避することができる。
また、実施の形態3の空気調和装置300では、室内制御装置60が、予めプログラムされている設定時間が経過したら、上下風向制御7を回動させて吹出口5を開口させるような制御をしてもよく、この設定時間を、室温センサが測定する室内機301の設置される部屋の温度に応じて、段階的もしくは連続的に変化させることにより、使用者が暖かさに満足できない吹き出し風が吹出口5から吹き出されたり、電磁誘導加熱のためのエネルギーを無駄に消費したりする不具合を回避することができる。
実施の形態4.
ここまでは、導電性を有するクロスフローファン2の電磁誘導加熱を、暖房運転開始から短時間で、冷凍サイクルによるヒートポンプ暖房が立ち上がるよりも早くに、使用者が暖かさに満足する温風を吹き出すことに活用してきた。これ以降では、導電性を有するクロスフローファン2の電磁誘導加熱を、暖房運転開始時以外に展開した活用例について説明する。まず、この実施の形態4として、冷凍サイクルによるヒートポンプ暖房運転中に行われる、室外熱交換器72の除霜運転(デフロスト運転)時に活用する形態について説明する。
ここで、除霜運転について説明する。冷凍サイクルによるヒートポンプ暖房運転を続け、冷媒の蒸発温度が0℃以下となると、蒸発器として機能している室外熱交換器72の表面に、外気に存在する水分が凝固して霜となって付着する。付着した霜が成長して大きくなると、室外熱交換器72の流通抵抗が増大し、外気との熱交換効率が著しく低下してしまう。そこで、室外熱交換器72に付着した霜を除去すべく除霜運転が行われる。通常は、四方弁71を切り換えて冷凍サイクルの冷媒の流れをリバースさせ、暖房運転のサイクルから冷房運転時の冷凍サイクルに切り換える。これにより室外熱交換器72を凝縮器として機能させ、冷媒の凝縮熱により付着した霜を溶融し、ドレン水として室外機101外へ導出させる。一般的にデフロスト運転と呼ばれ、ヒートポンプ暖房では広く利用されている技術である。
従来の一般的な空気調和装置では、デフロスト運転が行われている間は、室内熱交換器が蒸発器として機能しているため、このとき室内ファンであるクロスフローファンを回転させていると、暖房運転をしていたはずなのに冷風が吹出口から吹き出されてしまうことになってしまうので、デフロスト運転になると室内ファン(クロスフローファン)の回転を停止していた。そのため、吹出口からの温風の吹き出しが一時的に(デフロスト運転中は)中断されることになり、暖房運転を要求している使用者の快適性を損なう問題があった。
この実施の形態4に示す空気調和装置400の構成は、実施の形態1の空気調和装置100と同じであり、詳細な説明は省略する。実施の形態4の空気調和装置400は、実施の形態1の空気調和装置100が有する機能に加えて、デフロスト運転中にも、クロスフローファン2を電磁誘導加熱させる制御を行うものであり、それ以外については実施の形態1と同様である。説明が不明確とならないように、便宜上、実施の形態4の空気調和装置を空気調和装置400、室内機を室内機401と記す。
この空気調和装置400では、室内制御装置60が、デフロスト運転の開始とともに、弱モードに設定される回転数で導電性を有するクロスフローファン2を回転させながら、誘導加熱コイル1に高周波数の交流電流を供給して、クロスフローファン2を電磁誘導加熱する。これにより、デフロスト運転中であっても、電磁誘導加熱されて温度が上昇したクロスフローファン2からの熱伝達により暖められた空気が温風として吹出口5から吹き出され、温風の吹き出しが中断されることがない、もしくは中断されるとしても極めて短時間となる、言い換えれば、デフロスト運転中であっても吹出口5から温風を吹き出すことができるので、暖房運転の快適性が向上する。
デフロスト運転では、ヒートポンプ暖房の立ち上がり直後に比べて圧縮機70の消費電力が小さい。そのため、圧縮機70が駆動中であっても、空気調和装置400の最大許容消費電力に対して、クロスフローファン2の電磁誘導加熱のために使える電力の確保が十分に可能である。デフロスト運転時にクロスフローファン2を電磁誘導加熱する場合おいても、室内制御装置60は、室外制御装置80を通じて把握する圧縮機70の消費電力を考慮しながら、空気調和装置400の最大許容消費電力を超えないように、誘導加熱コイル1へ電力を供給する。そして、冷凍サイクルがデフロスト運転から再びヒートポンプ暖房に戻る際にも、室内制御装置60が、圧縮機70の消費電力の増加(回転数の増加)に対応させて、空気調和装置400の最大許容消費電力を超えないように、誘導加熱コイル1への投入電力を減少させていく。
なお、この空気調和装置400も、暖房運転開始時には、実施の形態1の空気調和装置100と同様に、ヒートポンプ暖房運転の準備時間中に、電磁誘導加熱されたクロスフローファン2からの熱伝達により暖められた空気を吹出口5から温風として吹き出し、使用者の暖房運転の開始指示から使用者が暖かさに満足する温風が吹出口5から吹き出るまでの時間を短縮するものである。
また、デフロスト運転時にクロスフローファン2を電磁誘導加熱する場合おいて、実施の形態2の空気調和装置200が示したように、室内制御装置60が、クロスフローファン2が使用者の満足する温風を生成できる温度に上昇するまでは、クロスフローファン2を無送風回転で回転させながら電磁誘導加熱し、そのような温度まで上昇してから、送風作用を伴う回転数に上昇させるように制御してもよい。このような制御を行えば、デフロスト運転の最初に十分には暖まっていない吹き出し風が吹き出されることがなくなり、暖房運転の快適性をより向上させることができる。
また、デフロスト運転時にクロスフローファン2を電磁誘導加熱する場合おいて、実施の形態3の空気調和装置300が示したように、室内制御装置60が、クロスフローファン2が使用者の満足する温風を生成できる温度に上昇するまでは、上下風向制御板7で吹出口5を塞いだ状態とし、そのような温度まで上昇したら、上下風向制御板7を回動させて吹出口5を開口させるように制御してもよい。通常のデフロスト運転時では、吹出口5を塞ぐように上下風向制御板7を回動させないが、この場合は、デフロスト運転の開始とともに吹出口5を塞ぐように上下風向制御板7を回動させるのである。このような制御を行えば、デフロスト運転の最初に十分には暖まっていない吹き出し風が吹き出されることがなくなり、暖房運転の快適性をより向上させることができる。
このように、実施の形態4の空気調和装置400は、室内機401に、導電性を有するクロスフローファン2と、このクロスフローファン2に近接するように配置され、高周波数の交流電流が供給される誘導加熱コイル1と、を備えており、暖房運転中にデフロスト運転が行われると、そのデフロスト運転中に、室内制御装置60が、クロスフローファン2を回転させるとともに、電磁誘導加熱コイル1に交流電流を供給し、クロスフローファン2を回転させながら電磁誘導加熱することにより、デフロスト運転中であっても、電磁誘導加熱されて温度が上昇したクロスフローファン2からの熱伝達により暖められた空気が温風として吹出口5から吹き出され、温風の吹き出しが中断されることがない、もしくは中断されるとしても極めて短時間となるので、暖房運転の快適性を向上することができる。
実施の形態5.
次に実施の形態5として、導電性を有するクロスフローファン2の電磁誘導加熱を、除湿運転時に活用する形態について説明する。
まず、除湿運転について説明する。一般的なヒートポンプ式空気調和装置の除湿運転とは、冷凍サイクルを冷房運転時と同じ冷媒の流れで稼働させ、蒸発器として機能している室内熱交換器により室内空気を冷却していくと、乾球温度の低下とともに相対湿度が高くなり、飽和状態に達した時点(露点)で室内空気中の水蒸気が凝縮して水になる(結露する)ので、この水(ドレン水)を室外に排水することで、室内空気中の水分を除去するものである。冷凍サイクル(ヒートポンプサイクル)としては、冷房運転と同じであるため、吹出口からは、室内熱交換器で冷却され温度が低下した空気が吹き出されることになる、湿度の低下とともに室温の低下も起こる。
このため、除湿運転中は、冷風が直接使用者に当たらないように、上下風向制御板7を略水平となるように回動させて水平吹きとして、室内機から遠い方向へ吹き出すようにしたり、室内ファン(クロスフローファン)の回転数を設定されている最小の回転数(弱モード)として風量を小さくしたりしている。また、圧縮機の回転数も低回転として冷凍サイクルの冷媒循環量を少なくして、所謂、弱冷房状態としている。
このように、除湿運転は、冷凍サイクルとしては冷房運転であるがゆえに、通常の冷房運転とは異なる制御が行われていても室温の低下は抑えられない。除湿運転により湿度だけを下げたいと要求している使用者にとっては、湿度低下とともに生じる室温低下によって寒さを感じ、快適性が損なわれるという問題があった。そこで、近年のヒートポンプ式空気調和装置では、除湿運転時の室温低下を抑制して湿度低下のみを行うために、再熱除湿運転と呼ばれる方法を採用しているものがある。
この方法のために、室内熱交換器を熱的に2つに分割し、それらの間に冷媒流量制御弁を介在させる。冷房運転時は、冷媒流量制御弁を全開として、室内熱交換器をすべて蒸発器として機能させる。暖房運転時にも同様に冷媒流量制御弁を全開として、室内熱交換器をすべて凝縮器として作用させる。しかし、除湿運転(再熱除湿運転)時は、冷凍サイクルの冷媒の流れ方向は冷房運転と同じであるが、室外機にある膨張弁の絞りを緩和して、熱的に分割された室内熱交換器の上流側となる室内熱交換器でも冷媒を凝縮させ、冷媒流量制御弁の開度を絞ってここで減圧させて、下流側の室内熱交換器で冷媒を蒸発させる。
下流側の室内熱交換器の蒸発熱により除湿(湿度低下)が行われ、それと同時に吸い込み室内空気の温度低下も生じるが、上流側の室内熱交換器での凝縮熱により吸い込み室内空気が暖められることで下流側の室内熱交換器による温度低下を補い、吹出口からは湿度は低下しているが温度低下していない吹き出し風が、吹き出されるようにするものである。
しかし、このような再熱除湿運転により除湿を行う場合でも、その除湿量は蒸発器として機能する室内熱交換器の大きさに影響される(大きさが大きいほど除湿量が多い)ものであり、また室内熱交換器は、室内機の制限寸法により、おのずと搭載できる大きさには限界があり、熱的に2つに分割された一方の室内熱交換器でしか除湿できないことから、室温低下は伴うが室内熱交換器をすべて除湿に利用するものに比べて除湿能力は低い。
また、室内ファンであるクロスフローファンには、湿度の高い空気、すなわち水分を多く含む空気が接することから、結露した水分により、クロスフローファンにカビが発生する恐れがある。これに対して、長時間の送風運転(空運転)によりクロスフローファンを乾燥させて、カビの増殖を抑制することはできるが、乾燥させただけではカビを完全に死滅させることはできず、いずれ増殖につながる恐れがあった。
この実施の形態5に示す空気調和装置500の構成は、実施の形態1の空気調和装置100と同じであり、詳細な説明は省略する。実施の形態5の空気調和装置500は、実施の形態1の空気調和装置100が有する機能に加えて、除湿運転中にも、クロスフローファン2を電磁誘導加熱させる制御を行うものであり、それ以外については実施の形態1と同様である。説明が不明確とならないように、便宜上、実施の形5の空気調和装置を空気調和装置500、室内機を室内機501と記す。
この空気調和装置500では、室内制御装置60が使用者のリモコン15による、もしくはタイマー設定による除湿運転開始の指示を受けて除湿運転が開始されると、室内制御装置60が、誘導加熱コイル1に高周波数の交流電流を供給して、除湿運転のために回転しているクロスフローファン2を電磁誘導加熱する。室内熱交換器3は熱的に分割される構造になっておらず、室内熱交換器3の配管途中に冷媒流量制御弁も備えていない。除湿運転中は、室内熱交換器3をすべて蒸発器として機能させている。
除湿運転中に吸込口4より室内機501に吸い込まれた室内空気は、蒸発器として機能している室内熱交換器3を通過する際に、含有する水分が結露することにより除湿される。結露した水分は、ドレン水としてドレンホースを通って屋外に排水される。室内熱交換器3を通過するときに、室内空気は冷却されて温度低下が起こるが、室内空気は、室内熱交換器3の通過後、電磁誘導加熱されて温度が上昇しているクロスフローファン2を通過する際に、クロスフローファン2からの熱伝達により暖められ、室内熱交換器3通過で生じた温度低下を補われ、吹出口5から吹き出される。この結果、吸込口4からの吸い込み空気に対して、吹出口5から吹き出される空気(吹き出し風)の温度低下が起こらないようにすることができる。
これにより、室内熱交換器を熱的に2分割して一方を蒸発器、他方を凝縮器として機能させる再熱除湿運転を行わず、室内熱交換器3をすべて蒸発器として機能させて除湿運転を行っても、室温の低下を抑制できるので、除湿(湿度低下)のみを要求して除湿運転を指示する使用者が室温低下による寒さを感じることはなく、除湿運転の快適性が向上できる。
また、室内熱交換器3をすべて蒸発器として機能させているため、室内熱交換器を熱的に2分割して行う再熱除湿運転に比べて除湿能力を高めることができ、目標湿度までの到達時間を短縮でき、使用者に、より早く快適な湿度空間を提供することができるようになる。
除湿運転では、圧縮機70の最大回転数が冷房運転の時よりも低めに制限され、冷房運転時に比べて圧縮機70の消費電力が小さい。そのため、圧縮機70が駆動中であっても、空気調和装置500の最大許容消費電力に対して、クロスフローファン2の電磁誘導加熱のために使える電力の確保が十分に可能である。除湿運転中にクロスフローファン2を電磁誘導加熱する場合おいても、室内制御装置60が、室外制御装置80を通じて把握する圧縮機70の消費電力を考慮してながら、空気調和装置500の最大許容消費電力を超えないように、誘導加熱コイル1への供給電力を制御する。
室内制御装置60は、除湿運転開始当初の室温もしくは吸込室内空気温度が維持されるように、空気調和装置500の除湿運転中は、室温センサにより測定される室温もしくは吸い込み温度センサにより測定される室内機501に吸い込まれる室内空気温度に応じて、誘導加熱コイル1への供給電力を調整し、電磁誘導加熱するクロスフローファン2の温度を制御する。除湿運転開始当初の室温よりも、現在の室温が低下傾向にあれば、誘導加熱コイル1への供給電力を大きくし、クロスフローファン2の温度を上昇させる。これにより、加熱不足による室温低下、および加熱過剰による室温上昇が回避でき、除湿運転時の快適性がより向上する。
さらにこれに加えて、温度センサにより測定される冷媒の蒸発温度に相当する室内熱交換器3の温度も電磁誘導加熱量制御のパラメータとしてもよい。これを加えることで、室温の変化傾向が予測可能となり、すなわち、室内熱交換器3の温度が低下すれば室内温度が低下することにつながるので、室内熱交換器3の温度変化を検知した時点で、誘導加熱コイル1への供給電力を変化させる。これにより、加熱不足による室温低下、および加熱過剰による室温上昇が回避できるとともに、きめ細やかな制御が可能となり、室温をより安定させるこができ、除湿運転時の快適性をより高めることができる。
なお、この空気調和装置500も、暖房運転開始時には、実施の形態1の空気調和装置100と同様に、ヒートポンプ暖房運転の準備時間中に、電磁誘導加熱されたクロスフローファン2からの熱伝達により暖められた空気を吹出口5から温風として吹き出し、使用者の暖房運転の開始指示から使用者が暖かさに満足する温風が吹出口5から吹き出るまでの時間を短縮するものである。
このように、本実施の形態5の空気調和装置500は、室内機501に、導電性を有するクロスフローファン2と、このクロスフローファン2に近接するように配置され、高周波数の交流電流が供給される誘導加熱コイル1と、を備えており、除湿運転中に、室内制御装置60が、電磁誘導加熱コイル1に交流電流を供給し、回転しているクロスフローファン2を電磁誘導加熱することにより、室内空気が、クロスフローファン2を通過する際に、クロスフローファン2からの熱伝達により暖められ、室内熱交換器3を通過する際に生じた温度低下を補われて、吹出口5からの吹き出されるので、除湿運転時の室温の低下を抑制でき、除湿のみを要求している使用者が寒さを感じることなく、除湿運転の快適性を向上させることができる。
また、除湿運転時に、室内熱交換器3のすべてを蒸発器として機能させて除湿することができることにより、空気調和装置500のサイズ拡大を図ることなく、室内熱交換器を熱的に2分割して行う再熱除湿運転に比べ、除湿量を大幅に増やすことができるので、使用者が要求する目標湿度までの到達時間を短縮でき、使用者に、より早く快適な湿度空間を提供することができる。
さらに、除湿運転時に、回転して送風作用を行っているクロスフローファン2を電磁誘導加熱して高温にさせることにより、クロスフローファン2に結露水が付着するのを防ぐことができるとともに、カビを高温の熱により死滅させることができ、カビの増殖を招くことなく、室内にカビが原因となる悪臭が放出されることを防止することができる。
また、室内熱交換器3を熱的に2つに分離させたり、その間に再熱除湿のための冷媒流量制御弁やその流量制御弁の周囲に装着する防音材を設置したりする必要がなくなるので、室温低下を起こさない除湿運転が可能であるにも係らず、空気調和装置500の室内機501の構造を簡素化でき低コスト化を図ることができる。
実施の形態6.
次に実施の形態6として、導電性を有するクロスフローファン2の電磁誘導加熱を、室内機内部の乾燥運転時に活用する形態について説明する。
まず、室内機の内部乾燥運転について説明する。冷房運転もしくは除湿運転が終わった後は、室内熱交換器の表面に、結露した空気中の水分が付着していることが多く、その水分を除去するために、室内機内部を乾燥させる乾燥運転を行う空気調和装置がある。内部乾燥運転にはいくつかの方法があるが、具体例としては、室内ファンであるクロスフローファンの送風運転、すなわち冷凍サイクルは稼働させずに室内ファンのみ空運転させることを所定時間、例えば20〜30分程度行って、その後に冷凍サイクルによる弱めのヒートポンプ暖房運転と再びの送風運転をそれぞれ例えば5〜15分程度行い、付着した水分を蒸発させる。これにより、室内機内部のカビの発生を防ぐものである。
しかし、このような内部乾燥運転では、ヒートポンプ暖房で温度が上昇した室内熱交換器の水分は蒸発させることができても、室内ファンであるクロスフローファンに付着した水分は空運転だけでは完全に除去できず、クロスフローファンの表面にカビの発生や増殖の恐れがあった。
この実施の形態6に示す空気調和装置600の構成は、実施の形態1の空気調和装置100と同じであり、詳細な説明は省略する。実施の形態6の空気調和装置600は、実施の形態1の空気調和装置100が有する機能に加えて、冷房運転もしくは除湿運転後に実施する室内機の内部を乾燥させる乾燥運転中にも、クロスフローファン2を電磁誘導加熱させる制御を行うものであり、それ以外については実施の形態1と同様である。説明が不明確とならないように、便宜上、実施の形6の空気調和装置を空気調和装置600、室内機を室内機601と記す。
この空気調和装置600では、使用者のリモコン15による、もしくはタイマー設定による冷房運転もしくは除湿運転の終了指示を受け、冷房運転もしくは除湿運転を終了すると、使用者の要求がある場合(リモコン15で設定登録しておく)に、内部乾燥運転が行われるが、その開始とともに、室内制御装置60が、誘導加熱コイル1に高周波数の交流電流を供給して、クロスフローファン2を回転させながら電磁誘導加熱する。
これにより、電磁誘導加熱されてクロスフローファン2が高温となるために、クロスフローファン2に付着した水分を蒸発させ除去することができる。よって、クロスフローファン2の水分を完全に除去して乾燥させることができるので、クロスフローファン2の表面にカビが発生したり、カビが増殖したりすることを防ぐことができる。そして、カビが原因の悪臭が室内に放出されることを回避することができる。
また、クロスフローファン2を回転させながら電磁誘導加熱しているので、内部乾燥運転における乾燥のためのクロスフローファン2の送風運転(空運転)の時間を短縮でき、結果として内部乾燥運転時間を短縮することができる。
内部乾燥運転におけるヒートポンプ暖房は、弱暖房であり、圧縮機70の回転数が低く、圧縮機70の消費電力が小さいので、内部乾燥運転にて、ヒートポンプ暖房とクロスフローファン2の電磁誘導加熱が協働することになっても、空気調和装置600の最大許容消費電力を超えることなく、クロスフローファン2を電磁誘導加熱する電力を十分に確保することができる。
なお、この空気調和装置600も、暖房運転開始時には、実施の形態1の空気調和装置100と同様に、ヒートポンプ暖房運転の準備時間中に、電磁誘導加熱されたクロスフローファン2からの熱伝達により暖められた空気を吹出口5から温風として吹き出し、使用者の暖房運転の開始指示から使用者が暖かさに満足する温風が吹出口5から吹き出るまでの時間を短縮するものである。
このように、本実施の形態6の空気調和装置600は、室内機601に、導電性を有するクロスフローファン2と、このクロスフローファン2に近接するように配置され、高周波数の交流電流が供給される誘導加熱コイル1と、を備えており、冷房運転もしくは除湿運転後の室内機601内部の乾燥運転中に、室内制御装置60が、クロスフローファン2を回転させながら電磁誘導加熱することにより、クロスフローファン2の温度が高温となって、クロスフローファン2の表面に付着した水分を蒸発させることができるので、クロスフローファン2にカビが発生したり増殖したりすることがなく、カビが原因の悪臭が室内に送風されることを回避することができる。
また、室内機601の内部乾燥運転におけるクロスフローファン2の送風運転(空運転)の時間を短縮、もしくは送風運転を廃止することができるので、内部乾燥運転の時間を大幅に短縮することができる。
なお、上記のいずれの実施の形態においても、室内制御装置60が行う制御は、室内制御装置60が室外制御装置80と通信し、室外制御装置80と協働して行う制御も含むものである。同様に、室外制御装置80が行う制御は、室外制御装置80が室内制御装置60と通信し、室内外制御装置60と協働して行う制御も含んでいる。