JP2013099406A - 大腿骨近位部骨折治療用髄内固定金具 - Google Patents

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Abstract

【課題】比較的簡単で、骨折部位を確実に固定して完全に治癒しうる大腿骨近位部骨折治療用髄内固定金具を提供すること。
【解決手段】髄内に挿入される髄内釘19と、髄内釘19を斜め上方に向って貫通するように配置されて大腿骨骨頭および大腿骨頚部に進入するラグスクリュー20とを備え、髄内釘19の両端部の中で転子部側にある一方の端部が先細状に斜めに切断され、上記一方の端部に螺子21が取り付けられ、大腿骨転子部および大腿骨転子下の表面に沿うように添設プレート22を配置して、添設プレート22と髄内釘19を螺子23と24で結合する。
【選択図】図5

Description

本発明は、大腿骨近位部骨折治療用髄内固定金具に関する。
大腿骨近位部の骨折を分類すると、図1に示すように、関節包1より内側の骨折である内側骨折と、関節包1より外側の骨折である外側骨折に分けられる。さらに、内側骨折は骨頭骨折2、頚部骨折3、頚基部骨折4に分けられ、外側骨折は転子部骨折および転子間骨折5と転子下骨折6に分けられる。関節包1の外側は血流が良いため、骨が癒合しやすいが、関節包1の内側は血流が乏しいため、外側に比べて折れた骨は癒合しにくいと言える。この大腿骨近位部骨折の治療法としては、保存療法と手術療法がある。
保存療法を選択するのは次の場合である。内側骨折で骨のずれがほとんどなく、比較的若い人の場合、骨が付く可能性が高く、数カ月間患肢を完全に免荷していてもそれほど大きな問題が起きない場合である。また、全身状態が悪い場合、手術や麻酔というのは体にかなり負担がかかるので、寝たきりでいる危険性より手術をする危険性の方が高いと判断される場合には保存療法が選択される。手術をしない場合でも、数カ月安静にしていると痛みは落ち着いてくる。外側骨折の場合、安静を保っていれば骨は癒合し、通常3〜4週間程度で多少動かしても骨がずれなくなり、2〜3箇月程度で体重をかけられるようになる。
手術療法には、スクリュー固定術、CHS(Compression Hip Screw)固定術、髄内釘(Proximal Femoral Nail)による固定術、人工骨頭置換術などがあり、骨折の状態により手術療法が決められる。図2(a)に示すような大腿骨転子部骨折7や大腿骨転子下骨折8のような場合、図2(b)に示すCHS固定術や図2(c)に示す髄内釘による固定術が採用される。図2(d)に示すように、大腿骨頚部骨折で骨折線9のみの場合、図2(e)に示すキャンセラススクリューによるスクリュー固定術や図2(f)に示すハリソンピンによるスクリュー固定術が採用される。図2(g)に示すように大腿骨頚部が完全に骨折10をした場合、図2(h)に示す人工骨頭置換術や図2(i)に示す人工股関節置換術が採用される。
CHS固定術は、図3(a)に示すように、至適位置にラグスクリュー11を挿入しやすく、スクリュー固定術より体重を支える力が力学的に優れており、ラグスクリュー11の径が大きく骨の固定力に優れている。従って、場合によっては大腿骨頚部骨折にも使用できるという利点がある。しかし、体重を支える力が髄内釘による固定術より劣り、手術侵襲が比較的大きい(手術時間が長く、出血量が多く、感染の危険性が大きい)という欠点がある。
髄内釘による固定術は、図3(b)に示すように、体の中心線から髄内釘12までの距離dが最も短いため、体重を支える力が力学的に最も優れており、手術侵襲が小さいという利点もある。しかし、図3(b)に示すように、髄内釘12の挿入位置でラグスクリュー13の位置が決定されてしまうので、至適位置にラグスクリュー13を挿入しにくく、ラグスクリュー13の径がCHS固定術のラグスクリュー11の径より小さく、骨の固定力はCHS固定術より劣る。また、骨折線14を押し広げるように髄内釘12が挿入されるため、骨折線14に圧迫力がかかりにくいので、骨折線14が離間して骨癒合が阻害され、回旋転位が起こりやすく、特に、大腿骨頚基部骨折および不安定型大腿骨転子部骨折ではこの欠点が助長されるので、髄内釘による固定術ではうまくいかないことが多い。
スクリュー固定術は手術侵襲が比較的小さく、手術費用が安いという利点がある。しかし、始点となる大腿骨頚部内側の骨皮質上の至適位置にスクリューを挿入しにくく、熟練が必要であるという欠点がある。また、力点となるスクリュー頭部の骨皮質は解剖学的に薄いため、体重を支える力が力学的に最も劣るとともに骨の固定力が劣る。
骨接合が不可能な大腿骨頚部骨折の転位の大きい症例には人工骨頭置換術しか適用できないが、人工骨頭置換術の手術侵襲は骨接合手術の手術侵襲とは比較にならないほど大きく、脱臼の可能性があるという欠点もある。
ガンマネイルとCHSの比較 沢口毅 整形災害外科 41 949-955, 1998 大腿骨頚基部骨折を合併した大腿骨転子部骨折の治療経験 山田ら 骨折 第28巻No3 2006
上記のように、体重を支える力が力学的に最も優れている方法は髄内釘による固定術であるが、骨折部位によっては適用できない場合がある。また、他の手術療法にもそれぞれ、上記のような利点と欠点がある。
本発明は従来の技術の有するこのような問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、比較的簡単で、骨折部位を確実に固定して完全に治癒しうる大腿骨近位部骨折治療用髄内固定金具を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明の大腿骨近位部骨折治療用髄内固定金具は、髄内に挿入される髄内釘と、当該髄内釘を斜め上方に向って貫通するように配置されて大腿骨骨頭および大腿骨頚部に進入するラグスクリューとを備え、上記髄内釘の両端部の中で転子部側にある一方の端部が先細状に斜めに切断されていることを特徴とする。上記一方の端部に螺子を取り付けることが好ましい。また、大腿骨転子部および大腿骨転子下の表面に沿うように添設プレートを配置して、当該添設プレートと髄内釘を螺子で結合することが好ましい。
本発明の大腿骨近位部骨折治療用髄内固定金具は、髄内釘と、ラグスクリューと、添設プレートとを主たる構成要素としており、その構成材料としては、ある程度の柔軟性と一定以上の強度を有することが好ましい。このような特性を有する可撓性材料としては、例えば、ステンレス鋼や超弾性合金(例えば、Ni−Ti合金)を用いることができる。また、Ti合金は鉄鋼材料に比べて比強度(強度/密度)が高く、生体親和性にも優れるなどの特長を有することから、インプラントなどの生体材料を中心にその適用範囲が広がっている。生体用チタン合金としては、Ti−6Al−4Vや細胞毒性の指摘があるバナジウムをニオブに置き換えたTi−6Al−7Nbが主に用いられている。また、近年、骨組織に近い低弾性率を有するTi−29Nb−13Ta−4.6Zr(TNTZ)が開発され、適用研究が行われている。TNTZは生体用材料としてより高い適性を有するものの、タンタルやニオブなどの高融点材料を多く含有していることから、溶解の際に偏析が生じやすいという欠点がある。その点で、可撓性と柔軟性を備えた素材として、Ti−6Al−7Nbは最も好ましい素材の一例である。
髄内挿入時の摩擦抵抗を低減して摺動性を向上するために、髄内釘に被覆層を設けることもできる。この被覆層を構成する材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリカーボネート、シリコーン樹脂、フッ素系樹脂、ポリウレタンエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー等の熱可塑性エラストマー、ラテックスゴム、シリコーンゴム等の各種ゴム材料、またはこれらのうちの2種以上を組み合わせた複合材料を挙げることができる。係る被覆層と髄内釘との接着性を増すために、被覆層と髄内釘との間に下地層を設けることもできる。例えば、下地層としては、熱硬化性樹脂と被覆層構成樹脂とを含む樹脂からなるのが好ましい。下地層に被覆層構成樹脂が含まれていることにより下地層と被覆層の接着力が向上し、下地層に熱硬化性樹脂が含まれていることにより下地層と髄内釘との接着力が向上する。
《股関節への刺激低減》
髄内釘は大腿骨内にすべて埋設され、大腿骨から部分的に突出しないことが好ましい。しかし、現実には、図3(b)に示すように、髄内釘12は大腿骨15内にすべて埋設されずに、髄内釘12の一部(例えば、1〜2cm程度)が大腿骨15から飛び出ていることが多い。大腿骨15から飛び出した髄内釘12は股関節を刺激するので、疼痛の原因となる。そこで、髄内釘の両端部の中で転子部側にある一方の端部を先細状に斜めに切断することにより、髄内釘が大腿骨から飛び出したとしても、股関節への刺激が少なくなるという効果がある。
《骨癒合の促進》
大腿骨頚基部骨折および不安定型大腿骨転子部骨折では、図3(b)に示すように、骨折線14を押し広げるように髄内釘12が挿入されるため、骨折線14に圧迫力がかかりにくくなり、骨折線14が離間して骨癒合が阻害されるという不都合がある。そこで、髄内釘の両端部の中で転子部側にある一方の端部を先細状に斜めに切断することにより、髄内釘が骨折線を押し広げにくくなり、骨折線に圧迫力がかかりやすく、骨癒合が促進されるという効果がある。従って、従来の髄内釘では骨接合が不可能であった、粉砕された大転子部の骨接合も可能である。
《大転子の後方部分の骨折の固定》
大転子の後方部分の骨折に対しては、従来の髄内釘では固定することが困難であった。そこで、髄内釘の両端部の中で転子部側にある一方の端部が先細状に斜めに切断されている。また、不安定な場合では、上記一方の端部に螺子が取り付けられ、大腿骨転子部および大腿骨転子下の表面に沿うように添設プレートを配置して、当該添設プレートと髄内釘を螺子で結合することにより、大転子の後方部分の骨折を固定することが可能である。
《大腿骨頚基部骨折および不安定型大腿骨転子部骨折》
以上のような特徴および効果を有する本発明によれば、大腿骨頚基部骨折および不安定型大腿骨転子部骨折にも適用することが可能である。
《本発明の作用・効果の説明》
さらに、本発明の大腿骨近位部骨折治療用髄内固定金具の作用・効果について、図4を参照しながら説明する。
図4(a)に示すような位置に骨折線16がある通常の大腿骨転子部骨折では特に、問題は起こらない。しかし、図4(b)に示すように、骨折線17が髄内釘挿入位置に近い大腿骨頚部基部骨折では、図4(c)に示すように髄内釘18が挿入されることによって、骨折線が押し広げられてしまう。そこで、図4(d)に示すように、髄内釘18の端部を先細状に斜めに切断することにより、図4(c)に示すように骨折線が押し広げられるような事態を回避することができる。図4(e)に示すように、髄内釘18の先端が骨頭より飛び出したとしても、図4(f)に示すように、髄内釘18の端部が先細状に斜めに切断されていることにより、図4(f)の股関節からの距離dは、髄内釘18の端部が先細状に斜めに切断されていない図4(e)の股関節からの距離dより長くなるので、股関節への刺激は少なくなる。しかし、図4(g)に示すように、髄内釘18の長さが短かすぎると、体重がかかったときの骨への力(F)を制動することができず、図4(h)に示すように転位してしまい、髄内釘により骨折部を固定するという効果を得ることができなくなる。
図1は、大腿骨近位部を説明する概略図である。 図2(a)〜(i)は、大腿骨近位部骨折の手術療法を説明する図である。 図3(a)はCHS固定術を説明する図、図3(b)は髄内釘による固定術を説明する図である。 図4(a)〜(h)は本発明の大腿骨近位部骨折治療用髄内固定金具の作用・効果を説明する図である。 図5(a)は本発明の大腿骨近位部骨折治療用髄内固定金具の一例を大腿骨近位部骨折治療に適用した一実施形態を説明する図、図5(b)は本発明の髄内釘の側面図、図5(c)は図5(b)を左方から見た図である。
以下に、本発明の実施が可能な形態について説明する。当然のことながら、本発明の範囲を逸脱することなく、他の実施形態を利用することもできる。
図5(a)において、19は髄内に挿入される髄内釘である。髄内釘19を斜め上方に向って貫通するように配置されて大腿骨骨頭および大腿骨頚部に進入するラグスクリュー20を備えている。髄内釘19の両端部の中で転子部側にある一方の端部が先細状に斜めに切断され、上記一方の端部に螺子21が取り付けられ、大腿骨転子部および大腿骨転子下の表面に沿うように添設プレート22が配置され、添設プレート22と髄内釘19が螺子23と24で結合されている。25は骨折線である。本実施形態における髄内釘19、ラグスクリュー20および添設プレート22の材料はSUS304である。
本実施形態では添設プレート19と髄内釘16を結合するための螺子は2個設けられているが、もちろん螺子の個数はこれに限定されるものではない。また、螺子21、添設プレート22は必ずしも必要なものではなく、これらが設けられないこともある。さらに、添設プレート22と髄内釘19を螺子以外の結合手段で結合することもできる。
本発明の固定金具は、骨折が完全に治癒した後は体外に取り出すことができる。しかし、本発明の固定金具を体外に取り出すには、麻酔と手術という処置が再度必要であり、患者への負担が大きいので固定金具は取り出さないというのが一般的である。そこで、係る固定金具による違和感があり、取り出して欲しいという患者の要望がある場合にのみ、固定金具を取り出す手術が行われている。
本発明は、大腿骨近位部骨折治療用髄内固定金具として有用である。
1 関節包
2 骨頭骨折
3 頚部骨折
4 頚基部骨折
5 転子部骨折、転子間骨折
6 転子下骨折
7 大腿骨転子部骨折
8 大腿骨転子下骨折
9 骨折線
10 骨折
11 ラグスクリュー
12 髄内釘
13 ラグスクリュー
14 骨折線
15 大腿骨
16 骨折線
17 骨折線
18 髄内釘
19 髄内釘
20 ラグスクリュー
21 螺子
22 添設プレート
23 螺子
24 螺子
25 骨折線

Claims (3)

  1. 髄内に挿入される髄内釘と、当該髄内釘を斜め上方に向って貫通するように配置されて大腿骨骨頭および大腿骨頚部に進入するラグスクリューとを備え、上記髄内釘の両端部の中で転子部側にある一方の端部が先細状に斜めに切断されていることを特徴とする大腿骨近位部骨折治療用髄内固定金具。
  2. 一方の端部に螺子が取り付けられていることを特徴とする請求項1記載の大腿骨近位部骨折治療用髄内固定金具。
  3. 大腿骨転子部および大腿骨転子下の表面に沿うように添設プレートを配置して、当該添設プレートと髄内釘を螺子で結合したことを特徴とする請求項1または2記載の大腿骨近位部骨折治療用髄内固定金具。
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