JP2013091843A - アルミニウム合金板、これを用いた接合体および自動車用部材 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】アルミニウム合金板10は、アルミニウム合金基板1と、アルミニウム合金基板1の表面に形成された表面酸化皮膜2とを備え、表面酸化皮膜2は、ジルコニウム量が0.01〜10原子%、マグネシウム量が0.1原子%以上10原子%未満であり、表面酸化皮膜2を入射角75度の平行偏光使用によるFT−IR(フーリエ変換式赤外分光光度計)分析し、金属水酸化物のスペクトルを吸光度表示した際における、400cm−1から1800cm−1までをベースラインとした時の、1060cm−1の波数部分に生じるスペクトルピーク高さが0.020以下であることを特徴とする。
【選択図】図1
Description
特許文献1に記載された酸洗を行う方法では、合金成分であるMgを多く含有する力学的に弱い酸化皮膜が除去されるため、初期の界面剥離が防止され、接着強度が改善される。しかしながら、水分、酸素、塩化物イオン等が浸透してくる高温湿潤環境や塩水噴霧環境等の劣化環境にさらされると、酸化皮膜除去面に合金成分であるCuが濃縮し、そのCuによって接着剤層の劣化が加速する銅害と呼ばれる現象が発生する。その結果、アルミニウム合金板の素地(基板)に水分等が浸透してくることがあり、界面が劣化して、界面剥離を起こして接着強度が低下するという問題がある。また、Al表面にCuが濃化すると、Alとの電位差で、塩水環境下でAlの腐食が促進される。
上記特許文献1、4〜6では、冷間圧延後にアルミニウム合金表面のマグネシウムの除去が必要になるばかりか、このようなマグネシウムの除去だけでは、表面特性の経時変化が少ない表面安定性に優れたものが得られるものではない。また、上記特許文献2のように、表面調整後14日以内に単に防錆油を塗布して表面を保護するだけでは、表面特性の経時変化が少ない表面安定性に優れたものが得られるものではない。
このように、表面安定性、すなわち、油を塗布して長期間保管し、その後に脱脂した後の水濡れ性(長期湿潤保管後の脱脂後水濡れ性(以下、適宜、水濡れ安定性という))に優れたアルミニウム合金板が要求されている。
さらに好ましくは、これら接着耐久性および水濡れ安定性に共に優れたアルミニウム合金板、これを用いた接合体および自動車用部材を提供することを課題とする。
このような構成によれば、アルミニウム合金板が接着剤層をあらかじめ備えるため、アルミニウム合金板を用いて接合体または自動車用部材を作製する際、アルミニウム合金板の表面での接着部材の形成作業を省略できる。
また、水濡れ安定性に優れたアルミニウム合金板を用いて接合体とすることで、アルミニウム合金板同士の接着性が向上しやすくなり、接着耐久性が向上しやすくなる。
このような構成によれば、前記のような接合体から製造されるため、自動車用部材が高温湿潤環境や塩水噴霧環境にさらされても、自動車用部材を構成する接合体において、接着部材または接着剤層と、表面酸化皮膜との界面における水和が抑制できると共に、アルミニウム合金基板の溶出を抑制できる。その結果、界面剥離が抑制でき、接着強度の低下が抑制できる。また、水濡れ安定性に優れたアルミニウム合金板を用いて接合体とすることで、アルミニウム合金板同士の接着性が向上しやすくなり、接着耐久性が向上しやすくなる。
本発明によれば、水濡れ安定性に優れたアルミニウム合金板、これを用いた接合体および自動車用部材を提供できる。
本発明によれば、これら接着耐久性および水濡れ安定性に共に優れたアルミニウム合金板、これを用いた接合体および自動車用部材を提供できる。
以下、本発明に係るアルミニウム合金板について、図1(a)を参照して具体的に説明する。図1(a)に示すように、アルミニウム合金板10は、アルミニウム合金基板1(以下、基板と称す)と、この基板1の表面に形成された表面酸化皮膜2とを備えている。なお、表面酸化皮膜2は、後記するように、製造方法においては、初めに酸化皮膜を形成し、その後、形成した酸化皮膜をジルコニウム塩水溶液で表面処理することにより、酸化皮膜に二酸化ジルコニウムが付着あるいは入り込み、かつ、酸化皮膜のマグネシウム量が制御された皮膜として形成するようにしている。
なお、ここで、基板1の表面とは、基板1の表面の少なくとも一面を意味し、いわゆる片面、両面が含まれる。
以下、アルミニウム合金板10の各構成について説明する。
基板1は、アルミニウム合金からなり、アルミニウム合金板10の用途に応じて、JISに規定される、またはJISに近似する種々の非熱処理型アルミニウム合金または熱処理型アルミニウム合金から適宜選択される。なお、非熱処理型アルミニウム合金は、純アルミニウム(1000系)、Al−Mn系合金(3000系)、Al−Si系合金(4000系)およびAl−Mg系合金(5000系)であり、熱処理型アルミニウム合金は、Al−Cu−Mg系合金(2000系)、Al−Mg−Si系合金(6000系)およびAl−Zn−Mg系合金(7000系)である。
表面酸化皮膜2は、高温湿潤環境や塩水噴霧環境にさらされた場合でも接着耐久性の向上を図るために、また、水濡れ安定性の向上を図るために、基板1の表面に、所定量のジルコニウムおよびマグネシウムを含有するものである。
さらに、金属水酸化物ピーク高さが所定以下となるように、金属水酸化物量が抑制された皮膜として形成されるものである。あるいは、金属酸化物ピーク高さが所定以下となるように、金属酸化物量が抑制された皮膜として形成されるものである。これらについては、接着耐久性を重視する場合には、金属水酸化物量を抑制し、水濡れ安定性を重視する場合には、金属酸化物量を抑制する。よって、金属水酸化物量および金属酸化物量の少なくとも一方を規定すればよい。しかしながら、接着耐久性および水濡れ安定性の両方を満足させる観点から、金属水酸化物量および金属酸化物量を共に規定することが好ましい。
なお、表面酸化皮膜2の形成は、ここでは、後記する表面酸化皮膜形成工程S2(図2参照)において、加熱処理により基板1の表面に酸化皮膜を形成した後に、酸化皮膜の表面をジルコニウム塩水溶液で表面処理を行った酸化皮膜の全体で表面酸化皮膜2を形成している。
表面酸化皮膜2は、ジルコニウム量が0.01〜10原子%の範囲として有している。表面酸化皮膜2のジルコニウム量が0.01〜10原子%となるようにジルコニウムを含有させることで、表面酸化皮膜2の水、酸素、塩化物イオンなどの劣化因子に対する安定性が増し、接着剤と表面酸化皮膜2の界面における水和が抑制されると共に、基板1の溶出が抑制される。その結果、アルミニウム合金板10の接着耐久性が向上する。また、ジルコニウムが存在するとことで、高温湿潤環境や塩水噴霧環境でも表面が安定化し、界面での劣化が防止され、接着耐久性が向上する。さらに、表面酸化皮膜2のジルコニウム量が0.01〜10原子%となるようにジルコニウムを含有させることで、長期の湿潤環境におけるアルミニウム合金基板の酸化が抑制される。これにより、長期間の表面安定性が得られ、長期間の保管後においても、脱脂後の水濡れ性が維持される。
表面酸化皮膜2は、マグネシウム量が0.1原子%以上10原子%未満の範囲として有している。
基板1を構成するアルミニウム合金は、通常、合金成分としてマグネシウムを含有している。そして、基板1の表面に形成された表面酸化皮膜2においては、その表面にマグネシウムが濃化した状態で存在し、そのマグネシウムが接着界面の弱境界層となり初期の接着耐久性が低下する。また、水分、酸素、塩化物イオンなどが浸透してくる高温湿潤環境や塩水噴霧環境においては、接着剤との界面の水和、基板1の溶解の原因となり、アルミニウム合金板10の接着耐久性を低下させる。また、マグネシウムは酸化により体積収縮する元素で、アルミニウム合金中にマグネシウム含まれる場合、基板1の表面の酸化物はアルミニウムとマグネシウムの複合酸化物を形成する。酸化物中のマグネシウム成分量が多いと表面酸化皮膜2に細孔を形成しやすくなる。そして、油成分が細孔に取り込まれ、脱脂工程で除きにくくなり、脱脂後の水濡れ性が低下する。そのため、長期間の保管後における脱脂後の水濡れ性の確保のためには、マグネシウムは規定の範囲にする必要がある。
また、水濡れ安定性に関しても、ジルコニウム量とマグネシウム量を共に制御することと、それらの比率を前記の範囲に制御することで、さらに長期間の保管をしても、良好な水濡れ安定性が発現する。
(金属水酸化物のスペクトルピーク高さ:0.020以下)
金属水酸化物であるAl(OH)3やMg(OH)2は、表面酸化皮膜2中の酸化物が水と接触することで反応し、形成されるが、金属水酸化物は酸化物に比べ、脆く、溶解しやすい。そのため、接着耐久性で特に問題となる塩分が存在する劣化環境で、アルミニウム合金板表面と接着剤との界面剥離が生じやすい。金属水酸化物ピーク高さを0.020以下に抑制することで、安定的に接着耐久性が発現する。好ましくは0.017以下、より好ましくは0.015以下である。
なお、金属水酸化物ピーク高さは小さいほうが好ましく、0でもよいが、現実的に抑制可能な下限値は0.001である。
金属水酸化物のスペクトルピークの定量方法としては、例えば、入射角75度の平行偏光使用によるFT−IR(フーリエ変換式赤外分光光度計:Nicolet 製Magna-750 spectrometer)分析し、金属水酸化物のスペクトルを吸光度表示した際における、400cm−1から1800cm−1までをベースラインとした時の、1060cm−1の波数部分に生じるスペクトルピーク高さ(最大高さ)により定量化する方法を用いることができる。
アルミニウム合金板表面ではAlとMgの複合酸化物を形成している。AlとMgの複合酸化物は脱脂後の水濡れ性を低下させる、プレス油中のエステル成分や有機物を吸着しやすい細孔を有していると考えられている。そして、Mgの割合が多いほど、その吸着しやすい細孔が増えるため、酸化物量が少ないほど好ましい。金属酸化物ピーク高さを0.040以下に抑制することで、良好な水濡れ安定性が発現する。好ましくは0.037以下、より好ましくは0.035以下である。
なお、金属酸化物ピーク高さは小さいほうが好ましく、0でもよいが、現実的に抑制可能な下限値は0.001である。
金属酸化物のスペクトルピークの定量方法としては、例えば、入射角75度の平行偏光使用によるFT−IR(フーリエ変換式赤外分光光度計:Nicolet 製Magna-750 spectrometer)分析し、金属酸化物のスペクトルを吸光度表示した際における、400cm−1から1800cm−1までをベースラインとした時の、800cm−1から1000cm−1の波数部分に生じるスペクトルピーク高さ(最大高さ)により定量化する方法を用いることができる。
この表面酸化皮膜2は、その膜厚が1〜30nmであることが好ましい。膜厚が1nm未満では、基板1を作製する際に使用される防錆油、および、アルミニウム合金板10から接合体(図3(a)〜(d)参照)および自動車用部材(図示せず)を作製する際に使用されるプレス油中のエステル成分の吸着が抑制される。そのため、表面酸化皮膜2が無くても、アルミニウム合金板10の脱脂性、化成処理性、接着耐久性が確保されるが、表面酸化皮膜2の膜厚を1nm未満に制御するには過度の酸洗浄等が必要となり、生産性に劣り、実用性が低下し易い。一方、表面酸化皮膜2の膜厚が30nmを超える場合には、皮膜量が過剰のために表面に凹凸ができ易く、結果的に化成ムラが生じ易く、化成性が低下し易い。なお、膜厚のさらに好ましい範囲は10〜20nmである。
基板1の表面に形成された表面酸化皮膜2中の元素量(ジルコニウム量、マグネシウム量、ハロゲン量、リン量等)は、GD−OES(グロー放電発光分析装置(Glow Discharge Optical Emission Spectroscopy))によって測定され、表面酸化皮膜2の深さ方向プロファイルにおいて酸素量の測定値が15原子%以下となる深さまで測定した際の所定元素の測定最大値を元素量とした。また、GD−OESは、表面酸化皮膜2の膜厚についても測定することが可能である。すなわち、GD−OESにより測定した、深さ方向プロファイルにおいて酸素量の測定値が15原子%以下となる深さを表面酸化皮膜2の膜厚とすることができる。なお、元素量および膜厚は、表面酸化皮膜2の表面における数箇所の測定結果の平均値とすることができるのはいうまでもない。なお、ジルコニウム量は、表面酸化皮膜2の二酸化ジルコニウム量から求めることもできる。つまり、二酸化ジルコニウム量を求め、その求めた二酸化ジルコニウム量から所定の演算によりジルコニウム量を算出する。
<接着剤層>
この接着剤層3を構成する接着剤としては、特に限定されるものではなく、従来からアルミニウム合金板を接合する際に用いられてきた接着剤を用いることができる。例えば、熱硬化型のエポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられる。接着剤層3の厚さは、特に限定されるものではないが、10〜500μmが好ましく、50〜400μmがより好ましい。接着剤層3の厚さが10μm未満の場合には、アルミニウム合金板10Aと、他の接着剤層を備えていないアルミニウム合金板10(図1(a)参照)とを接着剤層3を介して高い接着耐久性で接合できない場合がある。すなわち、後記する図3(c)の接合体20Bの接着耐久性が低下する場合がある。接着剤層3の厚さが500μmを超える場合には、接着強度が小さくなる場合がある。
次に、前記したアルミニウム合金板の製造方法について、図2を参照して説明する。なお、アルミニウム合金板の構成については、図1(a)、(b)を参照する。
基板作製工程S1は、圧延によって基板1を作製する工程である。具体的には、以下のような手順で基板1を作製することが好ましい。
表面酸化皮膜形成工程S2は、前工程S1で作製された基板1の表面に表面酸化皮膜2を形成させる工程である。そして、例えば、基板1を加熱処理し、それに続いて表面処理を行うことによって、表面酸化皮膜2のジルコニウム量およびマグネシウム量を所定範囲に調整する工程である。さらには金属水酸化物ピーク高さや、金属酸化物ピーク高さを所定範囲に調整する工程である。
加熱処理は、基板1を400〜580℃に加熱して、基板1の表面に、表面酸化皮膜2を構成する酸化皮膜を形成するものである。また、加熱処理は、アルミニウム合金板10の強度を調整するものでもある。なお、加熱処理は、加熱速度100℃/分以上の急速加熱とすることが好ましい。
表面処理は、酸化皮膜が形成された基板1の表面に表面処理を行うもので、この表面処理によって、前記加熱処理で形成された酸化皮膜、すなわち、酸化皮膜が表面処理された表面酸化皮膜2のジルコニウム量およびマグネシウム量が所定範囲に調整される。さらには金属水酸化物ピーク高さや、金属酸化物ピーク高さが所定範囲に調整される。
なお、水洗に用いることが出来るのは、工業用水、水道水、イオン交換水、蒸留水、純水等である。
接着剤層形成工程S3は、前記工程S2で形成された表面酸化皮膜2の表面に、接着剤からなる接着剤層3を形成させる工程である。接着剤層3の形成方法については、特に限定されるものではないが、例えば、接着剤が固体である場合には、これを溶剤に溶解させて溶液とした後に、また、接着剤が液状である場合にはそのまま、表面酸化皮膜2の表面に噴霧したり塗布する方法が挙げられる。
その他、例えばアルミニウム合金板10、10Aの板表面の異物を除去する異物除去工程や、各工程で発生した不良品を除去する不良品除去工程等を含めてもよい。
次に、本発明に係るアルミニウム合金板10、10Aにプレス油を塗布する方法について説明する。
プレス油の塗布の方法としては、例えば、エステル成分としてオレイン酸エチルを含有するプレス油に、アルミニウム合金板10、10Aを浸漬させるだけでよい。エステル成分を含有するプレス油を塗布する方法や条件は、特に限定されるものではなく、通常のプレス油を塗布する方法や条件が広く適用できる。また、エステル成分もオレイン酸エチルに限定されるものではなく、ステアリン酸ブチルやソルビタンモノステアレート等、様々なものを利用することができる。
次に、本発明に係る接合体について説明する。なお、以下では、アルミニウム合金板10、10Aは、片面に表面酸化皮膜2を備えるもの(図1(a)、(b)参照)で説明する。
図3(a)に示すように、接合体20は、2つのアルミニウム合金板10、10と、接着部材11とを備える。具体的には、接合体20は、アルミニウム合金板同士10、10が、接着部材11を介して接合されている。そして、接着部材11は、その一面は一方のアルミニウム合金板10の表面酸化皮膜2側に接合され、その他面は他方のアルミニウム合金板10の表面酸化皮膜2側に接合されている。その結果、2つのアルミニウム合金板10、10の表面酸化皮膜2、2のそれぞれは、接着部材11を介して互いに対向するように配置されることとなる。
アルミニウム合金板10については、前記したとおりであるので説明を省略する。
<接着部材>
接着部材11は、接着剤からなるもので、前記した接着剤層3と同様なものである。具体的には、接着部材11は、熱硬化型のエポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等の接着剤からなる。また、接着部材11の厚さは、特に限定されるものではないが、好ましくは10〜500μm、より好ましくは50〜400μmである。
第2アルミニウム合金板12は、前記した基板1と同様なもので、具体的には、JISに規定される、またはJISに近似する種々の非熱処理型アルミニウム合金または熱処理型アルミニウム合金からなる。
次に、本発明に係る自動車用部材について説明する。
図示しないが、自動車用部材は、前記した接合体20、20A〜20Cから製造されるものである。そして、自動車用部材は、例えば、自動車用パネル等である。また、自動車用部材の製造方法は、特に限定されるものではないが、従来公知の製造方法を用いる。例えば、前記した接合体20、20A〜20Cに切断加工、プレス加工等を施して所定形状の自動車用部材を製造する。
なお、自動車用部材は、前記した接合体20、20A〜20Cから製造されるため、表面酸化皮膜2において金属水酸化物ピーク高さを規定した場合には、高温湿潤環境や塩水噴霧環境にさらされても、界面での接着耐久性が向上する。また、表面酸化皮膜2において金属酸化物ピーク高さを規定した場合には、水濡れ安定性が向上していることで、接着耐久性が向上しやすくなる。
なお、供試材(No.1〜15)の全てにおいてハロゲン、リンは検出されず、Mg、Zrの含有量の合計が100原子%にならない場合には、OやAl、微量不純物を含んでいる。
<凝集破壊率(接着耐久性)>
図4(a)、(b)に示すように、構成が同じ2枚の供試材(25mm幅)の端部を、熱硬化型エポキシ樹脂系接着剤によりラップ長13mm(接着面積:25mm×13mm)となるように重ね合わせ貼り付けた。ここで用いた接着剤は熱硬化型エポキシ樹脂系接着剤(ビスフェノールA型エポキシ樹脂量40〜50%)である。そして、接着剤層の膜厚が150μmとなるように微量のガラスビーズ(粒径150μm)を接着剤に添加して調節した。重ね合わせてから30分間、室温で乾燥させて、その後、170℃で20分間加熱し、熱硬化処理を実施した。その後、室温で24時間静置して接着試験体を作製した。
凝集破壊率(%)=100−{(試験片Aの界面剥離面積/試験片Aの接着面積)×100}+{(試験片Bの界面剥離面積/試験片Bの接着面積)×100}・・・(1)
なお、各試験条件とも3本ずつ作製し、凝集破壊率は3本の平均値とした。また、評価基準は、凝集破壊率が60%未満を不良「×」、60%以上80%未満をやや不良「△」、80%以上90%未満を良好「○」、90%以上を優れている「◎」とした。
長さ70mm×幅150mmの供試材(No.1〜15)をプレス油に浸漬させた。次に、プレス油が塗布された試験片の表面の経時安定性について調べるために、以下のような試験を行った。上記プレス油が塗布されたままのものを15〜35℃で50〜90%RHの環境室内に6ヶ月放置した。そして、6ヶ月後に、自動車用の市販弱アルカリ脱脂液(温度40℃)に2分間浸漬した際の、試験片の面積に対する水濡れ面積率(片側のみ)を測定した(良好な程、高い数値となる)。これにより、化成処理時の水濡れ性(安定した化成処理性)を評価できる。
評価基準は、水濡れ面積率が40%未満をかなり不良「××」40〜60%未満を不良「×」、60〜80%未満をやや不良「△」、80〜90%未満を良好「○」、90%以上を優れている「◎」とした。
表1に示すように、比較例である硝酸ジルコニル水溶液への浸漬を行わなかった供試材(No.1)は、初期、高温湿潤後および塩水噴霧3000時間後のすべてにおいて、凝集破壊率が不良であった。また、未制御の供試材(No.1)に比べ、Mg量を制御した供試材(No.2)、Zr量を制御した供試材(No.3)や、Zr、Mg量を制御した供試材(No.4)や、製造方法にて金属水酸化物ピーク高さを制御した供試材(No.5)は若干改善が見られるものの、湿潤環境や塩水噴霧環境での改善効果が不十分である。
表1に示すように、比較例である硝酸ジルコニル水溶液への浸漬を行わなかった供試材(No.1)は、水濡れ安定性がかなり不良であった。また、未制御の供試材(No.1)に比べ、Mg量を制御した供試材(No.2)、Zr量を制御した供試材(No.3、5)や、Zr、Mg量を制御した供試材(No.4)は若干改善が見られるものの、長期湿潤暴露後の脱脂後水濡れ性の改善効果が不十分である。
2 表面酸化皮膜
3 接着剤層
10、10A アルミニウム合金板
10a、10Aa 第1アルミニウム合金板
11 接着部材
12 第2アルミニウム合金板
20、20A、20B、20C 接合体
Claims (11)
- アルミニウム合金基板と、前記アルミニウム合金基板の表面に形成された表面酸化皮膜とを備え、前記表面酸化皮膜は、ジルコニウム量が0.01〜10原子%、マグネシウム量が0.1原子%以上10原子%未満であり、
前記表面酸化皮膜を入射角75度の平行偏光使用によるFT−IR(フーリエ変換式赤外分光光度計)分析し、金属水酸化物のスペクトルを吸光度表示した際における、400cm−1から1800cm−1までをベースラインとした時の、1060cm−1の波数部分に生じるスペクトルピーク高さが0.020以下であることを特徴とするアルミニウム合金板。 - アルミニウム合金基板と、前記アルミニウム合金基板の表面に形成された表面酸化皮膜とを備え、前記表面酸化皮膜は、ジルコニウム量が0.01〜10原子%、マグネシウム量が0.1原子%以上10原子%未満であり、
前記表面酸化皮膜を入射角75度の平行偏光使用によるFT−IR(フーリエ変換式赤外分光光度計)分析し、金属酸化物のスペクトルを吸光度表示した際における、400cm−1から1800cm−1までをベースラインとした時の、800cm−1から1000cm−1の波数部分に生じるスペクトルピーク高さが0.040以下であることを特徴とするアルミニウム合金板。 - アルミニウム合金基板と、前記アルミニウム合金基板の表面に形成された表面酸化皮膜とを備え、前記表面酸化皮膜は、ジルコニウム量が0.01〜10原子%、マグネシウム量が0.1原子%以上10原子%未満であり、
前記表面酸化皮膜を入射角75度の平行偏光使用によるFT−IR(フーリエ変換式赤外分光光度計)分析し、金属水酸化物のスペクトルを吸光度表示した際における、400cm−1から1800cm−1までをベースラインとした時の、1060cm−1の波数部分に生じるスペクトルピーク高さが0.020以下であり、かつ、
前記表面酸化皮膜を入射角75度の平行偏光使用によるFT−IR(フーリエ変換式赤外分光光度計)分析し、金属酸化物のスペクトルを吸光度表示した際における、400cm−1から1800cm−1までをベースラインとした時の、800cm−1から1000cm−1の波数部分に生じるスペクトルピーク高さが0.040以下であることを特徴とするアルミニウム合金板。 - 前記表面酸化皮膜の表面に、接着剤からなる接着剤層をさらに備えることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のアルミニウム合金板。
- 前記表面酸化皮膜は、ジルコニウム量(Zr量)とマグネシウム量(Mg量)との比率(Zr量/Mg量)が0.0025〜10であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載のアルミニウム合金板。
- 前記アルミニウム合金基板が、Al−Mg系合金、Al−Cu−Mg系合金、Al−Mg−Si系合金またはAl−Zn−Mg系合金からなることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載のアルミニウム合金板。
- 請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のアルミニウム合金板同士が、接着剤からなる接着部材を介して、接合された接合体であって、
前記接着部材は、2つの前記アルミニウム合金板の表面酸化皮膜側に接合され、2つの前記アルミニウム合金板の表面酸化皮膜のそれぞれは、前記接着部材を介して互いに対向するように配置されていることを特徴とする接合体。 - 請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のアルミニウム合金板からなる第1アルミニウム合金板に、接着剤からなる接着部材を介して、アルミニウム合金からなる第2アルミニウム合金板が接合された接合体であって、
前記接着部材は、前記第1アルミニウム合金板の表面酸化皮膜側に接合されていることを特徴とする接合体。 - 請求項4に記載のアルミニウム合金板の接着剤層側に、請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のアルミニウム合金板が接合された接合体であって、
2つの前記アルミニウム合金板の表面酸化皮膜のそれぞれは、前記接着剤層を介して互いに対向するように配置されていることを特徴とする接合体。 - 請求項4に記載のアルミニウム合金板からなる第1アルミニウム合金板に、アルミニウム合金からなる第2アルミニウム合金板が接合された接合体であって、
前記第2アルミニウム合金板は、前記第1アルミニウム合金板の接着剤層側に接合されていることを特徴とする接合体。 - 請求項7ないし請求項10のいずれか一項に記載の接合体から製造されることを特徴とする自動車用部材。
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