JP2013089685A - 有機光電変換素子およびこれを用いた太陽電池 - Google Patents

有機光電変換素子およびこれを用いた太陽電池 Download PDF

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Abstract

【課題】耐久性に優れ、かつ十分な光電変換効率を発揮することができる光電変換素子を提供する。
【解決手段】第一の電極、第二の電極、前記第一の電極および前記第二の電極の間に存在する、バルクヘテロジャンクション型の光電変換層、および前記第一の電極または前記第二の電極と、前記光電変換層と、の間に存在する正孔輸送層を含む有機光電変換素子であって、前記正孔輸送層と前記光電変換層との間に、膜厚が5nm以下の仕事関数を低減する層が配置されてなる、有機光電変換素子。
【選択図】なし

Description

本発明は、有機光電変換素子およびこれを用いた太陽電池に関する。
近年、地球温暖化に対処するため、二酸化炭素排出量の削減が切に望まれている。また、近い将来、石油、石炭、および天然ガス等の化石燃料が枯渇することが予想されており、これらに替わる地球に優しいエネルギー資源の確保が急務となっている。そこで、太陽光、風力、地熱、原子力等利用した発電技術の開発が盛んに行われているが、なかでも太陽光発電は、安全性の高さから特に注目されている。
太陽光発電では、光起電力効果を利用した光電変換素子を用いて、光エネルギーを直接電力に変換する。光電変換素子は、一般的に、一対の電極の間に光電変換層(光吸収層)が挟持されてなる構造を有し、当該光電変換層において光エネルギーが電気エネルギーに変換される。光電変換素子は、光電変換層に用いられる材料や、素子の形態により、単結晶・多結晶・アモルファスのSiを用いたシリコン系光電変換素子、GaAsやCIGS(銅(Cu)、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、セレン(Se)からなる半導体)等の化合物半導体を用いた化合物系光電変換素子、色素増感型光電変換素子(グレッツェルセル)等が提案・実用化されている。
しかしながら、これらの太陽電池を用いた場合の発電コストは、依然として化石燃料を用いて発電・送電する場合のコストと比較して高く、これが太陽光発電の普及の妨げとなっていた。また、基板に重いガラスを用いなければならないため、屋根等に設置する場合に補強工事が必要であり、これらも発電コストを高騰させる一因であった。
太陽光発電における発電コストを低減させるための技術として、透明電極と対電極との間に、電子供与性有機化合物(p型有機半導体)と電子受容性有機化合物(n型有機半導体)との混合物を光電変換層として含むバルクへテロジャンクション型の光電変換素子が提案されている(例えば、非特許文献1を参照)。
バルクへテロジャンクション型有機光電変換素子は、軽量で柔軟性に富むことから、様々な製品への応用が期待されている。また、構造が比較的単純であり、p型有機半導体およびn型有機半導体を塗布することによって光電変換層を形成できることから、大量生産に好適であり、コストダウンによる太陽電池の早期普及にも寄与するものと考えられる。より具体的には、バルクへテロジャンクション型有機光電変換素子において、電極(陽極および陰極)等を構成する金属層や金属酸化物層は蒸着法等により形成されうるが、これら以外の層は塗布プロセスを用いて形成することができる。したがって、バルクへテロジャンクション型光電変換素子の製造は高速でかつ安価に行うことが可能であると期待され、上述した発電コストの課題を解決できる可能性があると考えられるのである。さらに、従来のシリコン系光電変換素子、化合物系光電変換素子、色素増感型光電変換素子等の製造とは異なり、160℃よりも高温の製造プロセスを必須に伴うものではないため、安価でかつ軽量なプラスチック基板上への形成も可能であると期待される。
しかしながら、有機光電変換素子は、他のタイプの光電変換素子と比較して、光電変換効率や、熱や光に対する耐久性が十分とはいえない。
例えば、有機光電変換素子は一般的な有機エレクトロニクスデバイス(例えば、有機薄膜トランジスタ(OTFT)や有機発光ダイオード(OLED))と同様に、酸素や水分の影響を受けやすいという問題点を有している。素子に酸素や水分が侵入すると、素子が劣化し、素子寿命が短くなってしまうため、バリア部材(例えば、バリアフィルムやガラス板等)を用いることにより、これらの侵入を防ぐことが必要となる。
しかしながら、バリア部材で封止した場合であっても、製造中に混入しそのまま残存した微量の水分や酸素、バリア部材を透過してしまう微量の水分や酸素等が素子中には不可避的に存在する。このように微量の水分が存在する状態で、連続した光照射を行った場合、主には正孔輸送層材料として使用されるPEDOT:PSS(poly(3,4−ethylenedioxythiophene):poly(styrenesulfonate))等に含まれるイオン性物質等が拡散したり、p型半導体材料およびn型半導体材料によって形成されるバルクヘテロジャンクション層(光電変換層)のモルフォロジーが変化したりすることにより、短絡電流密度(JSC)の減衰が起き、素子の寿命が著しく短くなってしてしまうことが問題となっていた。
これらの問題への対策として、例えば、正孔輸送材料として使用されるPEDOT:PSSの代わりに、酸化モリブデン(MoO)などの酸化物半導体層を用いることで、暗所保存の安定性が向上する技術が提案されている(例えば、非特許文献2、特許文献1など)。
更に、この様な酸化物半導体層を使った光電変換素子の変換効率を向上させる目的で、酸化物半導体からなる正孔輸送層と光電変換層との間に有機層を挟むことで界面の準位ミスマッチを低減する技術が提案されている(例えば、特許文献2、非特許文献3、非特許文献4など)。
特開2008−91381号公報 特開2006−24791号公報
A.Heeger et al.,Nature Mat.,vol.6(2007),p497 Adv. Mater. 2011, 23, 2226-2230 APPLIED PHYSICS LETTERS 96, 063303 2010 Adv. Funct. Mater. 2011, 21, 167-171
しかしながら、本発明者らが検討したところ、上記文献に記載された技術を以てしても、十分な耐久性と光電変換効率が得られないことが判明した。すなわち、上記非特許文献2や特許文献1に記載された技術によると、連続的な光照射によって光電変換素子を駆動させた場合、酸化物半導体と有機層の界面で大きな準位のミスマッチが発生することで、短絡電流密度短絡電流密度(JSC)の減衰が起き、素子の寿命が著しく短くなってしまうことが分かった。この準位のミスマッチは、上記特許文献2や非特許文献3〜4に記載された技術を以てしても光電変換素子の耐久性においては不十分であった。
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、耐久性に優れ、かつ十分な光電変換効率を発揮することができる光電変換素子を提供することを目的とする。
本発明者らが、上記課題を解決すべく鋭意研究を行ったところ、酸化物半導体からなる正孔輸送層と光電変換層との間に、仕事関数が4.5eVよりも浅い仕事関数制御材料を有することで、連続的な光照射によって光電変換素子を駆動させた場合においても、耐久性に優れ、かつ十分な光電変換効率が発揮されることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明の有機光電変換素子は、第一の電極、第二の電極、前記第一の電極および前記第二の電極の間に存在する、バルクヘテロジャンクション型の光電変換層、および前記第一の電極または前記第二の電極と、前記光電変換層と、の間に存在する正孔輸送層を含む有機光電変換素子であって、前記正孔輸送層と前記光電変換層との間に、膜厚が5nm以下の仕事関数を低減する層が配置されてなることを特徴とする。
本発明によれば、耐久性に優れ、かつ十分な光電変換効率を発揮することができる有機光電変換素子を提供することが可能となる。
本発明の有機光電変換素子の効果を模式的に説明する図である。 本発明の一実施形態に係る、有機光電変換素子を模式的に表した断面概略図である。 本発明の他の一実施形態に係る、有機光電変換素子を模式的に表した断面概略図である。 本発明の他の一実施形態に係る、タンデム型の光電変換層を備えた有機光電変換素子を模式的に表した断面概略図である。
本発明は、第一の電極;第二の電極;第一の電極および第二の電極の間に存在する、バルクヘテロジャンクション型の光電変換層;ならびに第一の電極または第二の電極と、光電変換層と、の間に存在する正孔輸送層;を有する有機光電変換素子であって、前記正孔輸送層と前記光電変換層との間に、膜厚が5nm以下の仕事関数を低減する層(本明細書中では、「仕事関数低減層」とも称する)が配置されてなる点に特徴を有する。このように正孔輸送層と光電変換層との間に仕事関数を低減するための層を配置することにより、有機光電変換素子の耐久性が向上するという効果が得られるメカニズムについては定かではないが、本発明者らは以下のように推測している。なお、本発明は、下記推測に限定されるものではない。
すなわち、図1(特に図1の左図及び中央図)に示されるように、仕事関数低減層が正孔輸送層と光電変換層との間に存在しない場合には、連続的な光照射によって光電変換素子を駆動させると、正孔輸送層と光電変換層との界面で大きな準位の大きなミスマッチが形成する。これにより、短絡電流密度短絡電流密度(JSC)の減衰が起き、素子の寿命を大きく損なう。これに対して、図1(特に図1の右図)に示されるように、正孔輸送層と光電変換層との間に仕事関数を低減するための仕事関数低減層を配置することで、連続的な光照射によって光電変換素子を駆動させた場合の、正孔輸送層と光電変換層との界面での大きな準位のミスマッチの発生を低減することができ、その結果、短絡電流密度(JSC)の減衰を抑制して、光電変換素子の寿命を向上することができると推測される。したがって、本発明の有機光電変換素子は耐久性に優れる。
以下、添付した図面を参照しながら本発明の有機光電変換素子を説明するが、本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲の記載により定められるべきものであり、以下の形態のみに制限されない。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
図2は、本発明の一実施形態に係る、有機光電変換素子を模式的に表した断面概略図である。具体的には、図2の有機光電変換素子10は、基板25上に、陽極11、正孔輸送層26、仕事関数低減層13、光電変換層14、電子輸送層27、および陰極12がこの順に積層されてなる構成を有する。
図2に示す有機光電変換素子10の作動時において、光は基板25側から照射される。本実施形態において、陽極11は、照射された光が光電変換層14へと届くようにするため、透明な電極材料(例えば、ITO)で構成される。基板25側から照射された光は、透明な陽極11、正孔輸送層26および仕事関数低減層13を経て光電変換層14へと届く。
図2において、基板25を経て陽極11から入射された光は、光電変換層14における電子受容体あるいは電子供与体で吸収され、電子供与体から電子受容体に電子が移動し、正孔と電子のペア(電荷分離状態)が形成される。
発生した電荷は内部電界、例えば、陽極11と陰極12との仕事関数が異なる場合では陽極11と陰極12との電位差によって、電子は電子受容体間を通り、また正孔は電子供与体間を通り、それぞれ異なる電極へ運ばれ、光電流が検出される。
なお、正孔輸送層26は、正孔の移動度が高い材料で形成されており、光電変換層14のpn接合界面で生成した正孔を効率よく陽極11へと輸送する機能を担っている。一方、電子輸送層27は、電子の移動度が高い材料で形成されており、光電変換層14のpn接合界面で生成した電子を効率よく陰極12へと輸送する機能を担っている。
図3は、本発明の他の一実施形態に係る有機光電変換素子を模式的に表した断面概略図である。図3の有機光電変換素子20は、図2の有機光電変換素子10と比較して、陽極11と陰極12とが逆の位置に配置され、また、正孔輸送層26と電子輸送層27とが逆の位置に配置されている点が異なる。すなわち、図3の有機光電変換素子20は、基板25上に、陰極12、電子輸送層27、光電変換層14、仕事関数低減層13、正孔輸送層26、および陽極11がこの順に積層されてなる構成を有している。このような構成を有することにより、光電変換層14のpn接合界面で生成される電子は電子輸送層27を経て陰極12へと輸送され、正孔は正孔輸送層26を経て陽極11へと輸送される。
図4は、本発明の他の一実施形態に係る、タンデム型(多接合型)の光電変換層を備えた有機光電変換素子を模式的に表した断面概略図である。図4の有機光電変換素子30は、図2の有機光電変換素子10と比較して、光電変換層14に代えて、第1の光電変換層14aと、第2の光電変換層14bと、これら2つの光電変換層14a,14bの間に介在する電荷再結合層38との積層体が配置されている点が異なる。図4に示すタンデム型の有機光電変換素子30では、第1の光電変換層14aおよび第2の光電変換層14bに、それぞれ吸収波長の異なる光電変換材料(p型有機半導体およびn型有機半導体)を用いることにより、より広い波長域の光を効率よく電気に変換することが可能となる。
以下、本発明に係る有機光電変換素子の各構成要素について詳細に説明する。
[正孔輸送層]
本形態の有機光電変換素子は、正孔輸送層を必須に含む。正孔輸送層とは、陽極(アノード)と光電変換層との間に配置され、光電変換層と電極との間で正孔の授受をより効率的にすることのできる層のことである。また、正孔を輸送する機能を有し、かつ電子を輸送する能力が著しく小さい(例えば、正孔の移動度の10分の1以下)という性質を有する。なお、光電変換層に用いられるn型半導体材料のLUMO準位よりも浅いLUMO準位を有する正孔輸送層には、光電変換層で生成した電子をアノード側には流さないような整流効果を有する、電子ブロック機能が付与される。このような正孔輸送層は、電子ブロック層とも呼ばれ、このような機能を有する正孔輸送層を使用する方が好ましい。よって、本明細書では、正孔注入層、正孔取出し層、電子ブロック層等も正孔輸送層の概念に含む。
本発明において、正孔輸送層は、少なくとも金属酸化物からなり、金属酸化物を主成分とすることが好ましい。ここで、「主成分」とは正孔輸送層の構成材料の合計量100質量%に占める金属酸化物の割合が50質量%以上であることを意味する。ただし、金属酸化物層の構成材料の合計量100質量%に占める金属材料の割合は、好ましくは60質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上であり、さらに好ましくは90質量%以上であり、最も好ましくは100質量%である。
金属酸化物層に用いられる金属酸化物(一部、非金属材料を含む)としては、モリブデン(Mo)、バナジウム(V)、タングステン(W)、クロム(Cr)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、トリウム(Tr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)あるいは、ランタン(La)からルテチウム(Lu)までのいわゆる希土類元素などの酸化物が挙げられる。なかでも、正孔輸送能に優れるという観点からは、三酸化モリブデン(MoO)、酸化ニッケル(NiO)、三酸化タングステン(WO)、五酸化二バナジウム(V)等の金属酸化物等を好ましく用いることができ、三酸化モリブデン、三酸化タングクテン、五酸化二バナジウムが特に好ましい。これらの無機酸化物は1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
正孔輸送層の厚さは、特に制限はないが、光電変換効率と耐久性の観点から、1〜1000nmであり、より好ましくは2〜50nm、3〜20nm程度が最も好ましい。
正孔輸送層は一般的な製膜方法を用いて形成でき、例えば、真空蒸着法、加熱真空蒸着法、電子ビーム蒸着法、レーザービーム蒸着法、スパッタ法、CVD法、大気圧プラズマ法などのドライプロセス、塗布法、メッキ法、電界形成法などのウェットプロセスなどを用いることができる。また、塗布法の中でも、印刷技術を用いた直接パターニング法、例えば、インクジェット印刷法などを好ましく用いることができる。
[仕事関数低減層]
本発明に係る仕事関数低減層は、正孔輸送層と光電変換層との間に配置されることを特徴とする。このように正孔輸送層と光電変換層との間に仕事関数を低減するための層を配置することにより、有機光電変換素子の耐久性が向上できる。
ここで、仕事関数低減層に用いることができる材料の例としては、本発明の効果が得られれば特に限定されないが、物性的には仕事関数が小さい材料が好ましい。具体的には、仕事関数低減層に好ましく使用される材料は、仕事関数が6.0未満の材料であることが好ましく、仕事関数が4.0未満の材料であることがより好ましく、仕事関数が2.0〜3.9eVの材料であることがさらにより好ましく、仕事関数が2.1〜3.8eVの材料であることがさらにより好ましく、仕事関数が2.5〜3.5eVの材料であることが特に好ましい。このような範囲の仕事関数を有する材料を仕事関数低減層に使用することによって、有機光電変換素子の耐久性をさらに向上することができる。
以下に、本発明で好ましく用いることができる仕事関数低減層の材料をより具体的に例示する。仕事関数低減層に使用される材料は、無機金属化合物、有機金属化合物及び有機半導体材料からなる群より選択されることが好ましいが、これらに限定されるものではない。
無機金属化合物または有機金属化合物を構成する金属としては、特に制限されないが、アルカリ金属、第二族、第四〜第七族の金属、第十二〜第十四族の金属などが挙げられる。ここで、アルカリ金属としては特に制限はないが、例えば、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)及びセシウム(Cs)などが挙げられる。第二族金属としては特に制限はないが、例えば、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)及びバリウム(Ba)などが挙げられる。第四〜第七族の金属としては特に制限はないが、例えば、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、クロム(Cr)、タングステン(W)、マンガン(Mn)、レニウム(Re)などが挙げられる。また、第十二〜第十四族の金属としては特に限定されないが、例えば、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)などを挙げることができる。なお、仕事関数低減層が三酸化タングステンを含む場合には、正孔輸送層は仕事関数を低減する層とは異なる組成を有する。このため、例えば、仕事関数低減層に三酸化タングステンを使用する場合には、正孔輸送層には三酸化タングステン以外の金属化合物、例えば、三酸化モリブデンが使用される。
無機金属化合物としては特に制限はないが、例えば、上記金属の、ハロゲン化物、酸化物、硫化物、窒化物、炭酸塩などが挙げられる。これらのうち、好ましくは上記金属の、ハロゲン化物、酸化物が使用され、より好ましくは上記金属の、ハロゲン化物、酸化物が使用される。また、有機金属化合物としては特に制限はないが、例えば、上記金属の、ギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸、酪酸塩、吉草酸塩、カプロン酸塩、エナント酸塩、カプリル酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、安息香酸塩、フタル酸塩、イソフタル酸塩、テレフタル酸塩、サリチル酸塩、ピルビン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、アジピン酸塩、メシル酸塩、トシル酸塩、ベンゼンスルホン酸塩などが挙げられる。これらのうち、好ましくは上記金属の、ギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩、吉草酸塩、カプロン酸塩、エナント酸塩、カプリル酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、安息香酸塩が使用され、より好ましくは上記金属の、ギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩などの脂肪族カルボン酸塩が使用される。
上述した金属化合物の中では、Li、Na、K、Cs、Mg、Ca、Srの、フッ化物、炭酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、プロピオン塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、安息香酸塩;Li、Na、K、Cs、Mg、Ca、Sr、Cr、Wの、酸化物が好ましく使用され、フッ化Li、フッ化K、フッ化Na、フッ化Cs、フッ化Mg、フッ化Ca、炭酸Li、炭酸K、炭酸Na、炭酸Cs、酢酸Li、酢酸K、酢酸Na、酢酸Cs、酸化Li、酸化K、酸化Na、酸化Cs、酸化Li、酸化Mg、酸化Ca、三酸化タングステン(WO)などが好ましく使用される。より好ましくは、フッ化Li、フッ化K、フッ化Na、フッ化Cs、フッ化Mg、フッ化Ca、炭酸Cs、酢酸Cs、三酸化タングステン(WO)が使用される。
また、本発明で用いることができる有機半導体材料は、特に限定されないが、上述したような範囲の仕事関数を有することが好ましい。具体的には、有機光電変換素子における電子輸送層に用いられる材料や、光電変換層に含まれるn型半導体材料、およびこれらの誘導体を用いることができる。
例えば、有機半導体材料としては、8−キノリノール誘導体の金属錯体、フタロシアニン誘導体、ポリフルオレン誘導体などがある。このうち、8−キノリノール誘導体の金属錯体としては、特に制限されないが、例えば、トリス(8−キノリノール)アルミニウム(Alq)、トリス(5,7−ジクロロ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5,7−ジブロモ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(2−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、ビス(8−キノリノール)亜鉛(Znq)等、およびこれらの金属錯体の中心金属がIn、Mg、Cu、Ca、Sn、GaまたはPbに置き替わった金属錯体などが挙げられる。また、フタロシアニン誘導体としては、特に制限されないが、例えば、フタロシアニンの中心金属がCu、Sn、Si、Zn、Alなどを含むもの。また、これら中心金属に共有結合または配位結合した側鎖構造を有するもの。例えば、フタロシアニンクロロアルミニウムや、フタロシアニンアルキルシラン、また、メタルフリーおよびメタルフタロシアニン、またはそれらの末端がアルキル基やスルホン酸基、ハロゲン原子等で置換されているものなどが挙げられる。ポリフルオレン誘導体としては、特に制限されないが、例えば、APPLIED PHYSICS LETTERS 96, 063303 2010に記載のポリジオクチルフルオレン−ブチルフェニルジフェニルアミン(通称「TFB」)、WO 2002/028983A1の図4aや図4bに記載のフルオレン誘導体などが挙げられる。
上記仕事関数低減層を形成するための材料は、1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を併用しても構わない。
仕事関数低減層の仕事関数は特に制限さないが、小さい値であることが好ましい。具体的には、(単膜/単層での)仕事関数低減層の仕事関数は、6.0eV未満であることが好ましく、4.0eV以下、4.0eV未満、2.0〜3.9eV、2.1〜3.8eV、2.5〜3.5eVの順で好ましい。このような範囲の仕事関数を有する材料を仕事関数低減層に使用することによって、有機光電変換素子の変換効率を高く保ったまま、耐久性を大きく向上することができ、変換効率および耐久性の両立といった観点で好ましい。なお、「仕事関数」とは、物質の表面から1個の電子を表面のすぐ外側に取り出すのに必要な最小のエネルギーと定義され、一般的には仕事関数の大きい材料(金属)は酸化されにくく、仕事関数の小さい材料(金属)は酸化されやすいという性質を有する。また、仕事関数の測定方法としては既存の方法を用いることができる。本明細書では、仕事関数は、UPS法により測定される。
また、本発明に係る仕事関数低減層の膜厚は5nm以下である。ここで、仕事関数低減層の膜厚が5nmを超えると、素子の安定性が損なわれ、光電変換効率が低減する。一方、5nm以下であれば、本発明の効果が有効に達成でき、仕事関数が浅い方向に調整できるため素子の安定性向上に効果が得られる。また、同様に5nm以下であれば、仕事関数低減層があっても優れた光電変換効率を得ることができ、また、優れた光電変換効率と耐久性のバランスが達成できる。更に、本発明における仕事関数低減層は仕事関数の物性値から膜厚を選択することがより好ましい。仕事関数低減層の膜厚(乾燥膜厚)は、好ましくは0.05〜5nmであり、より好ましくは0.1〜3nmであり、更に好ましくは0.15〜2nm、特に好ましくは0.2〜1nmである。また、特に仕事関数低減層が有機半導体材料からなる場合には、仕事関数低減層の膜厚(乾燥膜厚)は、1nm以下の薄膜層であることが好ましく、0.1〜1nmであることがより好ましい。
本発明において、仕事関数低減層は、所謂層状ではなく、均一層ではなく疎らな海島状の形態であることも本発明において好ましい構成である。このような構成をとることによって、正孔輸送層と光電変換層とが直接接する部分ができるため、仕事関数低減層があっても十分な光電変換効率が得られ、且つ、有機光電変換素子の耐久性をより向上させることができる。この様な均一層ではなく疎らな海島状の形態を有する仕事関数低減層の形成方法としては、特に制限されないが、例えば、真空蒸着法などのドライプロセスが好ましく使用できる。なお、疎らな海島状の形態は、一般的な走査型電子顕微鏡SEMや原子間力顕微鏡AFM(SPM)などの観察によって凹凸構造を確認することができる。
さらに、仕事関数低減層は、正孔輸送層と光電変換層の界面よりも、正孔輸送層側に混合される形で分布することも本発明の一実施形態の一つである。このような構成をとることによっても同様に、仕事関数低減層があっても十分な光電変換効率が得られ、且つ、有機光電変換素子の耐久性をより向上させることができる。なお、仕事関数低減層を正孔輸送層と光電変換層の界面よりも正孔輸送層側に混合される形で分布させる方法としては、特に制限されないが、例えば、真空蒸着による共蒸着法で徐々に仕事関数制御層を形成する材料をドープしていく方法や、正孔輸送層を形成する材料と仕事関数低減層を形成する材料を共に溶解し、仕事関数低減層を形成する材料を含まない層と含む層とを積層塗布する方法などが好ましく使用できる。
[光電変換層]
(n型有機半導体およびp型有機半導体)
光電変換層は、光起電力効果を利用して光エネルギーを電気エネルギーに変換する機能を有する。これらの光電変換材料に光が吸収されると、励起子が発生し、これがpn接合界面において、正孔と電子とに電荷分離される。
本形態の光電変換層に使用されるp型有機半導体は、ドナー性(電子供与性)の有機化合物であれば特に制限はなく、本技術分野で使用されうる材料を適宜採用することができる。このような化合物のうち縮合多環芳香族低分子化合物としては、例えば、アントラセン、テトラセン、ペンタセン、ヘキサセン、へプタセン、クリセン、ピセン、フルミネン、ピレン、ペロピレン、ペリレン、テリレン、クオテリレン、コロネン、オバレン、サーカムアントラセン、ビスアンテン、ゼスレン、ヘプタゼスレン、ピランスレン、ビオランテン、イソビオランテン、サーコビフェニル、アントラジチオフェン等の化合物、ポルフィリンや銅フタロシアニン、テトラチアフルバレン(TTF)−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)錯体、ビスエチレンジチオテトラチアフルバレン(BEDTTTF)−過塩素酸錯体、およびこれらの誘導体や前駆体が挙げられる。
また上記の縮合多環を有する誘導体の例としては、国際公開第03/16599号パンフレット、国際公開第03/28125号パンフレット、米国特許第6,690,029号明細書、特開2004−107216号公報等に記載の置換基をもったペンタセン誘導体、米国特許出願公開第2003/136964号明細書等に記載のペンタセンプレカーサ、J.Amer.Chem.Soc.,vol127.No14.4986、J.Amer.Chem.Soc.,vol.123、p9482、J.Amer.Chem.Soc.,vol.130(2008)、No.9、2706等に記載のトリアルキルシリルエチニル基で置換されたアセン系化合物等が挙げられる。
共役系ポリマーとしては、例えば、ポリ3−ヘキシルチオフェン(P3HT)等のポリチオフェンおよびそのオリゴマー、またはTechnical Digest of the International PVSEC−17, Fukuoka, Japan, 2007, P1225に記載の重合性基を有するようなポリチオフェン、Nature Material,(2006)vol.5,p328に記載のポリチオフェン−チエノチオフェン共重合体、WO2008/000664に記載のポリチオフェン−ジケトピロロピロール共重合体、Adv Mater,2007p4160に記載のポリチオフェン−チアゾロチアゾール共重合体,Nature Mat.vol.6(2007),p497に記載のPCPDTBT等のようなポリチオフェン共重合体、Adv.Mater.,vol.19,(2007)p2295に記載のポリチオフェン−カルバゾール−ベンゾチアジアゾール共重合体(PCDTBT)、Macromolecules 2009,42,p1610−1618に記載のビニル基置換ポリヘキシルチオフェン(P3HNT)、ポリピロールおよびそのオリゴマー、ポリアニリン、ポリフェニレンおよびそのオリゴマー、ポリフェニレンビニレンおよびそのオリゴマー、ポリチエニレンビニレンおよびそのオリゴマー、ポリアセチレン、ポリジアセチレン、ポリシラン、ポリゲルマン等のσ共役系ポリマー等のポリマー材料が挙げられる。
また、ポリマー材料ではなくオリゴマー材料としては、チオフェン6量体であるα−セクシチオフェンα,ω−ジヘキシル−α−セクシチオフェン、α,ω−ジヘキシル−α−キンケチオフェン、α,ω−ビス(3−ブトキシプロピル)−α−セクシチオフェン、等のオリゴマーが好適に用いることができる。
これらの化合物の中でも、溶液プロセスが可能な程度に有機溶剤への溶解性が高く、かつ乾燥後は結晶性薄膜を形成し、高い移動度を達成することが可能な化合物が好ましい。より好ましくは、後述のn型有機半導体材料であるフラーレン誘導体と適度な相溶性を有するような化合物(適度な相分離構造形成し得る化合物)であることが好ましい。
また、バルクへテロジャンクション層上にさらに溶液プロセスで電子輸送層や正孔ブロック層を形成する際には、一度塗布した層の上にさらに塗布することができれば、容易に積層することができるが、通常溶解性のよい材料からなる層の上にさらに層を溶液プロセスによって積層使用とすると、下地の層を溶かしてしまうために積層することができないという課題を有していた。したがって、溶液プロセスで塗布した後に不溶化できるような材料が好ましい。
このような材料としては、Technical Digest of the International PVSEC−17, Fukuoka, Japan, 2007, P1225に記載の重合性基を有するようなポリチオフェンのような、塗布後に塗布膜を重合架橋して不溶化できる材料、または米国特許出願公開第2003/136964号、および特開2008−16834等に記載されているような、熱等のエネルギーを加えることによって可溶性置換基が反応して不溶化する(顔料化する)材料等を挙げることができる。
一方、本形態の光電変換層に使用されるn型有機半導体も、アクセプター性(電子受容性)の有機化合物であれば特に制限はなく、本技術分野で使用されうる材料を適宜採用することができる。このような化合物としては、例えば、フラーレン、カーボンナノチューブ、オクタアザポルフィリン等、上記p型有機半導体の水素原子をフッ素原子に置換したパーフルオロ体(例えば、パーフルオロペンタセンやパーフルオロフタロシアニン等)、ナフタレンテトラカルボン酸無水物、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、ペリレンテトラカルボン酸無水物、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド等の芳香族カルボン酸無水物やそのイミド化物を骨格として含む高分子化合物等が挙げられる。
このうち、p型有機半導体と高速(〜50fs)かつ効率的に電荷分離を行うことができるという観点から、フラーレンもしくはカーボンナノチューブまたはこれらの誘導体を用いることが好ましい。より具体的には、フラーレンC60、フラーレンC70、フラーレンC76、フラーレンC78、フラーレンC84、フラーレンC240、フラーレンC540、ミックスドフラーレン、フラーレンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、単層カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン(円錐型)等、およびこれらの一部が水素原子、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、置換されたまたは非置換の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルキル基、シリル基、エーテル基、チオエーテル基、アミノ基等によって置換されたフラーレン誘導体が挙げられる。
特に、[6,6]−フェニルC61−ブチリックアシッドメチルエステル(略称PCBMまたはPC60BM)、[6,6]−フェニルC61−ブチリックアシッド−nブチルエステル(PCBnB)、[6,6]−フェニルC61−ブチリックアシッド−イソブチルエステル(PCBiB)、[6,6]−フェニルC61−ブチリックアシッド−nヘキシルエステル(PCBH)、[6,6]−フェニルC71−ブチリックアシッドメチルエステル(略称PC71BM)、Adv.Mater.,vol.20(2008),p2116に記載のbis−PCBM、特開2006−199674号公報に記載のアミノ化フラーレン、特開2008−130889号公報に記載のメタロセン化フラーレン、米国特許第7,329,709号明細書に記載の環状エーテル基を有するフラーレン等のような、置換基により溶解性が向上されてなるフラーレン誘導体を用いることが好ましい。なお、本形態において、n型有機半導体は、1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を併用しても構わない。
本形態の光電変換層における、p型有機半導体およびn型有機半導体の接合形態は、バルクへテロ接合である(即ち、光電変換層は、バルクヘテロジャンクション型の光電変換層である)。ここで、「バルクヘテロジャンクション」とは、p型有機半導体とn型有機半導体との混合物を塗布することにより形成され、この単一の層中において、p型有機半導体のドメインとn型有機半導体のドメインとがミクロ相分離構造をとっている。したがって、バルクヘテロジャンクションでは、平面へテロ接合と比較して、pn接合界面が層全体にわたって数多く存在することになる。よって、光吸収により生成した励起子の多くがpn接合界面に到達できることになり、電荷分離に至る効率を高めることができる。このような理由から、本形態の光電変換層における、p型有機半導体とn型有機半導体との接合は、バルクヘテロジャンクションであることが好ましい。
また、バルクヘテロジャンクション層は、通常の、p型有機半導体材料とn型有機半導体層が混合されてなる単一の層(i層)からなる場合の他に、当該i層がp型有機半導体からなるp層およびn型有機半導体からなるn層により挟持されてなる3層構造(p−i−n構造)を有する場合がある。このようなp−i−n構造は、正孔および電子の整流性がより高くなり、電荷分離した正孔・電子の再結合等によるロスが低減され、一層高い光電変換効率を得ることができる。
本発明において、光電変換層に含まれるp型有機半導体とn型有機半導体との混合比は、質量比で2:8〜8:2の範囲が好ましく、より好ましくは4:6〜6:4の範囲である。また、光電変換層の厚さ(乾燥膜厚)は、特に制限はないが、好ましくは50〜400nmであり、より好ましくは80〜300nmである。
(電子輸送層)
本形態の有機光電変換素子は、必要に応じて電子輸送層を含みうる。電子輸送層は、電子を輸送する機能を有し、かつ正孔を輸送する能力が著しく小さいという性質を有する。電子輸送層は、光電変換層と陰極との間に設けられ、電子を陰極へと輸送しつつ、正孔の移動を阻止することで、電子と正孔とが再結合するのを防ぐことができる。よって、本明細書では、電子注入層、正孔ブロック層、励起子ブロック層等も電子輸送層の概念に含む。
電子輸送層に用いられる電子輸送材料は、特に制限はなく、本技術分野で使用されうる材料を適宜採用することができる。例えば、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタンおよびアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体等が挙げられる。また、上記オキサジアゾール誘導体において、オキサジアゾール環の酸素原子を硫黄原子に置換したチアジアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有するキノキサリン誘導体も、電子輸送材料として用いることができる。さらに、これらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
また、8−キノリノール誘導体の金属錯体、例えば、トリス(8−キノリノール)アルミニウム(Alq)、トリス(5,7−ジクロロ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5,7−ジブロモ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(2−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、ビス(8−キノリノール)亜鉛(Znq)等、およびこれらの金属錯体の中心金属がIn、Mg、Cu、Ca、Sn、GaまたはPbに置き替わった金属錯体も、電子輸送材料として用いることができる。その他、メタルフリーもしくはメタルフタロシアニン、またはそれらの末端がアルキル基やスルホン酸基等で置換されているものも、電子輸送材料として好ましく用いることができる。上述の正孔輸送層と同様に、n型−Si、n型−SiC等の無機半導体や、n型の伝導性を有する無機酸化物(酸化チタン、酸化亜鉛等)も電子輸送材料として用いることができる。
更には電極に双極子材料を結合させることで界面双極子を形成し、電荷の取り出しを向上させる材料種、例えばWO2008/134492に記載の3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン(AEAP−TMOS)などを挙げることができる。
また、不純物をドープしたn性の高い電子輸送層を用いることもできる。その例としては、特開平4−297076号公報、同10−270172号公報、特開2000−196140号公報、同2001−102175号公報、J.Appl.Phys.,95,5773(2004)等に記載されたものが挙げられる。
具体例としては、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TPD)や4,4’−ビス[N−(ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(α−NPD)等の芳香族ジアミン化合物やその誘導体、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、イミダゾール、イミダゾロン、スチルベン誘導体、ピラゾリン誘導体、テトラヒドロイミダゾール、ポリアリールアルカン、ブタジエン、4,4’,4”−トリス(N−(3−メチルフェニル)N−フェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)、ポルフィン、テトラフェニルポルフィン銅、フタロシアニン、銅フタロシアニン、チタニウムフタロシアニンオキサイド等のポリフィリン化合物、トリアゾール誘導体、オキサジザゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アニールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、シラザン誘導体等を用いることができ、高分子材料では、フェニレンビニレン、フルオレン、カルバゾール、インドール、ピレン、ピロール、ピコリン、チオフェン、アセチレン、ジアセチレン等の重合体や、その誘導体等を好ましく用いることができる。
電子輸送層の厚さは、特に制限はないが、通常1〜2000nmである。リーク防止効果をより高める観点からは、厚さは5nm以上であることが好ましい。また、高い透過率と低い抵抗を維持する観点からは、厚さは1000nm以下であることが好ましく、200nm以下であることがより好ましい。
(電荷再結合層;中間電極)
図4で示すような、2以上の光電変換層を有するタンデム型(多接合型)の有機光電変換素子において、光電変換層間には、電荷再結合層(中間電極)が配置される。
電荷再結合層(中間電極)に用いられる材料は、導電性および透光性を併せ持つ材料であれば、特に制限はなく、上述の電極材料として例示した、ITO、AZO、FTO、酸化チタン等の透明金属酸化物、Ag、Al、Au等の金属、およびカーボンナノ粒子、カーボンナノワイヤー等の炭素材料、PEDOT:PSS、ポリアニリン等の導電性高分子等が用いられうる。これらの材料は、1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、各材料からなる層を2種以上積層させて電荷再結合層を構成することも可能である。なお前述した正孔輸送層と電子輸送層の中には、適切に組み合わせて積層することで中間電極(電荷再結合層)として働く組み合わせもあり、このような構成とすると電荷再結合層(中間電極)1層分を形成する工程を省くことができ好ましい。
電荷再結合層の導電率は、高い変換効率を得る観点から、高いことが好ましく、具体的には、5〜50000S/cmであることが好ましく、100〜10,000S/cmであることがより好ましい。また、電荷再結合層の厚さは、特に制限はないが、1〜1000nmであることが好ましく、5〜50nmであることが好ましい。厚さが1nm以上とすることにより、膜面を平滑化することができる。一方、厚さが1000nm以下とすることにより、短絡電流密度Jsc(mA/cm)の低下を軽減することができる。
[電極]
本形態の有機光電変換素子は、第一の電極および第二の電極を必須に含む。第一の電極および第二の電極は、各々、陽極または陰極として機能する。本明細書において、「第一の」および「第二の」とは、陽極または陰極としての機能を区別するための用語である。したがって、第一の電極が陽極として機能し、第二の電極が陰極として機能する場合もあるし、逆に、第一の電極が陰極として機能し、第二の電極が陽極として機能する場合もある。光電変換層14で生成されるキャリア(正孔・電子)は、電極間を移動し、正孔は陽極12へ、電子は陰極16へと到達する。なお、本発明においては主に正孔が流れる電極を陽極と呼び、主に電子が流れる電極を陰極と呼ぶ。また、タンデム構成をとる場合には電荷再結合層(中間電極)を用いることでタンデム構成を達成することができる。さらに、電極が透光性を有するものであるか否かという機能面から、透光性を有する電極を透明電極と呼び、透光性のない電極を対電極と呼び分ける場合もある。図2の形態の場合、通常、陽極は透光性のある透明電極であり、陰極は透光性のない対電極である。
本形態の電極に使用される材料は、光電変換素子として駆動する限りにおいては特に制限はなく、本技術分野で使用されうる電極材料を適宜採用することができる。なかでも、陽極は陰極と比較して相対的に仕事関数が大きい材料から構成されることが好ましく、逆に陰極は陽極と比較して相対的に仕事関数が小さい材料から構成されることが好ましい。なお、電荷輸送層(正孔輸送層または電子輸送層)が存在する場合は、上記以外の形態であっても十分に光電変換素子として機能する。
上述の図2に示す有機光電変換素子10において、陽極11は、相対的に仕事関数が大きく、透明な(好ましくは、380〜800nmの可視光に対して80%以上の透過率を有する)電極材料から構成されることが好ましい。一方、陰極12は、相対的に仕事関数が小さく(例えば、4eV以下)、通常、透光性の低い電極材料から構成されうる。
このような、図2に示す有機光電変換素子10において、陽極(透明電極)に使用される電極材料としては、例えば、金、銀、白金等の金属;インジウムスズ酸化物(ITO)、SnO、ZnO等の透明な導電性金属酸化物;金属ナノワイヤー、カーボンナノチューブ等の炭素材料等が挙げられる。また、陽極の電極材料として導電性高分子を用いることも可能である。陽極に使用されうる導電性高分子としては、例えば、PEDOT:PSS、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリチエニレンビニレン、ポリアズレン、ポリイソチアナフテン、ポリカルバゾール、ポリアセチレン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアセン、ポリフェニルアセチレン、ポリジアセチレン、ポリナフタレンおよびこれらの誘導体等が挙げられる。これらの電極材料は、1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上の材料を混合して使用してもよい。また、これらの材料の形状も特に制限はなく、ナノ粒子、ナノワイヤー、極薄膜等の形状で使用されうる。さらに、各材料からなる層を2種以上積層させて電極を構成することも可能である。
一方、図2の有機光電変換素子において、陰極(対電極)に使用される電極材料としては、合金、電子伝導性化合物、およびこれらの混合物が使用されうる。具体的には、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。このうち、電子の取り出し性能や、酸化等に対する耐久性の観点から、仕事関数が低い第一の金属と、第一の金属よりも仕事関数が大きく安定な金属である第二の金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、リチウム/アルミニウム混合物や、安定な金属であるアルミニウム等を用いることが好ましい。また、これらの材料のうち金属を用いることも好ましく、これにより、第一の電極側から入射し光電変換層で吸収されずに透過した光を、第二の電極で反射させて光電変換に再利用することができ、光電変換効率を向上させることが可能である。また、これらの材料の形状も特に制限はなく、ナノ粒子、ナノワイヤー、極薄膜等の形状で使用されうる。さらに、各材料からなる層を2種以上積層させて電極を構成することも可能である。
また、図3に示す有機光電変換素子では、光が入射する基板25側に陰極12が位置し、反対側に陽極11が位置する。したがって、図3に示す陽極11は、相対的に仕事関数が大きく、通常、透光性の低い電極材料から構成されることが好ましい。一方、陰極12は、相対的に仕事関数が小さく、透明な電極材料から構成される。
図3の有機光電変換素子において、陰極(透明電極)に使用される電極材料としては、例えば、金、銀、銅、白金、ロジウム、ルテニウム、アルミニウム、マグネシウム、インジウム、スズ、亜鉛等の金属、金属化合物、および合金(具体的には、インジウムスズ酸化物(ITO)、SnO、ZnO、IDIXO(In−ZnO));カーボンナノ粒子、カーボンナノワイヤー、カーボンナノ構造体等の炭素材料;が挙げられる。これらの電極材料は、1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上の材料を混合して使用してもよい。また、これらの材料の形状も特に制限はなく、ナノ粒子、ナノワイヤー、極薄膜等の形状で使用されうる。さらに、各材料からなる層を2種以上積層させて電極を構成することも可能である。このうち、カーボンナノワイヤーを用いることにより、透明で導電性の高い陰極を塗布法により形成できるため好ましい。また、金属系の材料を使用する場合、陽極(対電極)と対向する側に、例えば、金、銀、銅、鉄、ニッケル、クロム、アルミニウム、またはこれらの合金(アルミニウム合金)、金属化合物(銀化合物)等を用いて、補助電極(グリッド電極、バスライン電極とも称される)を作製した後、上述の図2の有機光電変換素子の陽極(透明電極)材料として例示した導電性高分子の膜を設けることで、陰極(透明電極)とすることができる。このように補助電極を設けることにより、素子を大面積化した場合に起こる曲線因子(FF)の低減を抑えることができる。
補助電極の形状は特に制限はないが、例えば、導電部がストライプ状もしくはメッシュ状、またはランダムな網目状である。導電部がストライプ状またはメッシュ状の補助電極を形成する方法としては、特に制限はなく、従来公知の方法が利用できる。例えば、基板全面に金属層を形成し、公知のフォトリソグラフィ法によって形成できる。具体的には、基板上に全面に、蒸着、スパッタ、めっき等の1もしくは2以上の物理的または化学的形成手法を用いて導電体層を形成する方法や、金属箔を接着剤で基板に積層した後、公知のフォトリソグラフィ法を用いてエッチングする方法等により、所望のストライプ状またはメッシュ状に加工できる。別の方法としては、金属微粒子を含有するインクをスクリーン印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、インクジェット方式等の各種印刷法により所望の形状に印刷する方法や、めっき可能な触媒インクを同様な各種印刷法で所望の形状に塗布した後、めっき処理する方法、さらに別な方法としては、銀塩写真技術を応用した方法も利用できる。こうした方法の中でも、金属微粒子を含有するインクを各種印刷法により所望の形状に印刷する方法は簡便な工程で製造できることから製造時にリークの原因となるような異物の巻き込みを低減でき、また、必要個所にしかインクを使用しないので液のロスが少ないことから最も好ましい。
一方、図3の有機光電変換素子において、陽極(対電極)に使用される電極材料としては、例えば、銀、ニッケル、モリブデン、金、白金、タングステン、および銅等が挙げられる。
第一の電極および第二の電極のシート抵抗は、特に制限はないが、数百Ω/□以下が好ましく、50Ω/□以下がより好ましく、15Ω/□以下がさらに好ましい。なお、第一の電極および第二の電極のシート抵抗の下限は、特に制限されないが、通常、380〜800nmの波長の可視光に対して80%以上の透過率を示す範囲でなるべく低いほど好ましい。通常は0.01Ω/□以上、好ましくは0.1Ω/□以上であれば本発明の効果を得ることができる。ここで、第一の電極および第二の電極のシート抵抗は、同じであってもあるいは異なってもよい。また、第一の電極および第二の電極の膜厚も特に制限はなく、材料によって異なるが、通常、10〜1000nmであり、好ましくは100〜200nmであり、光の透過率または抵抗の観点から当業者により適宜設定されうる。ここで、第一の電極および第二の電極の膜厚は、同じであってもあるいは異なってもよい。
また、補助電極を有する場合のシート抵抗は、10Ω/□以下であることが好ましく、0.01〜8Ω/□であることがより好ましい。この場合、シート抵抗は補助電極の形状(線幅、高さ、ピッチ、形状)によって決まり、補助電極よりも抵抗の高い材料を使用する場合であっても窓部の抵抗影響はほとんど受けない。
[基板]
基板側から光電変換される光が入射する場合、基板はこの光電変換される光を透過させることが可能な、即ちこの光電変換すべき光の波長に対して透明な部材であることが好ましい。ここで「透明」とは、380〜800nmの可視光に対して80%以上の透過率を示すことを意味する。基板は、例えば、ガラス基板や樹脂基板等が好適に挙げられるが、軽量性と柔軟性の観点から透明樹脂フィルムを用いることが望ましい。
本発明で透明基板として好ましく用いることができる透明樹脂フィルムには特に制限がなく、その材料、形状、構造、厚み等については公知のものの中から適宜選択することができる。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、変性ポリエステル等のポリエステル系樹脂フィルム、ポリエチレン(PE)樹脂フィルム、ポリプロピレン(PP)樹脂フィルム、ポリスチレン樹脂フィルム、環状オレフィン系樹脂等のポリオレフィン類樹脂フィルム、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂フィルム、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂フィルム、ポリサルホン(PSF)樹脂フィルム、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂フィルム、ポリカーボネート(PC)樹脂フィルム、ポリアミド樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム、アクリル樹脂フィルム、トリアセチルセルロース(TAC)樹脂フィルム等を挙げることができるが、可視域の波長(380〜800nm)における透過率が80%以上である樹脂フィルムであれば、本発明に係る透明樹脂フィルムに好ましく適用することができる。なかでも透明性、耐熱性、取り扱いやすさ、強度およびコストの点から、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエーテルサルホンフィルム、ポリカーボネートフィルムであることが好ましく、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルムであることがより好ましい。
本発明に用いられる透明基板には、塗布液の濡れ性や接着性を確保するために、表面処理を施すことや易接着層を設けることができる。表面処理や易接着層については従来公知の技術を使用できる。例えば、表面処理としては、コロナ放電処理、火炎処理、紫外線処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理等の表面活性化処理を挙げることができる。また、易接着層としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ビニル系共重合体、ブタジエン系共重合体、アクリル系共重合体、ビニリデン系共重合体、エポキシ系共重合体等を挙げることができる。
また、酸素および水蒸気の透過を抑制する目的で、透明基板にはバリアコート層が予め形成されていてもよいし、透明導電層を転写する反対側にはハードコート層が予め形成されていてもよい。
(その他の層)
本形態の有機光電変換素子は、上記の各部材(各層)の他に、光電変換効率の向上や、素子の寿命の向上のために、他の部材(他の層)をさらに設けてもよい。その他の部材としては、例えば、励起子ブロック層、UV吸収層、光反射層、波長変換層、平滑化層等が挙げられる。また、上層に偏在した金属酸化物微粒子をより安定にするため等にシランカップリング剤等の層を設けてもよい。さらに本発明の光電変換層に隣接して金属酸化物の層を積層してもよい。
また、本発明の有機光電変換素子は、太陽光のより効率的な受光を目的として、各種の光学機能層を有していてもよい。光学機能層としては、例えば、反射防止膜、マイクロレンズアレイ等の集光層、陰極で反射した光を散乱させて再度発電層に入射させることができるような光拡散層等が挙げられる。
反射防止層としては、各種公知の反射防止層を設けることができるが、例えば、透明樹脂フィルムが二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムである場合は、フィルムに隣接する易接着層の屈折率を1.57〜1.63とすることで、フィルム基板と易接着層との界面反射を低減して透過率を向上させることができるのでより好ましい。屈折率を調整する方法としては、酸化スズゾルや酸化セリウムゾル等の比較的屈折率の高い酸化物ゾルとバインダー樹脂との比率を適宜調整して塗設することで実施できる。易接着層は単層でもよいが、接着性を向上させるためには2層以上の構成にしてもよい。
集光層としては、例えば、支持基板の太陽光受光側にマイクロレンズアレイ上の構造を設けるように加工したり、あるいは所謂集光シートと組み合わせたりすることにより特定方向からの受光量を高めたり、逆に太陽光の入射角度依存性を低減することができる。
マイクロレンズアレイの例としては、基板の光取り出し側に一辺が30μmでその頂角が90度となるような四角錐を2次元に配列する。一辺は10〜100μmが好ましい。これより小さくなると回折の効果が発生して色付き、大きすぎると厚みが厚くなり好ましくない。
また光散乱層としては、各種のアンチグレア層、金属または各種無機酸化物等のナノ粒子・ナノワイヤー等を無色透明なポリマーに分散した層等を挙げることができる。
<有機光電変換素子の製造方法>
上述の本形態の有機光電変換素子の製造方法は特に制限はなく、従来公知の手法を適宜参照することにより製造することができる。以下、図3に示す有機光電変換素子の製造方法を例に挙げて、本形態の有機光電変換素子の好ましい製造方法を説明する。ただし、当該製造方法における各工程は、図3の有機光電変換素子のみならず、図2に示す有機光電変換素子や、図4に示すようなタンデム型の製造に適用可能である。
本形態の有機光電変換素子の製造方法は、陰極を形成する工程と、前記陰極の上に、p型有機半導体材料およびn型有機半導体材料を含む光電変換層を形成する工程と、前記光電変換層の上に、陽極を形成する工程とを含む。以下、本形態の有機光電変換素子の製造方法の各工程について、詳細に説明する。
本形態の製造方法では、まず、陰極を形成する。陰極を形成する方法は、特に制限はないが、操作の容易性や、ダイコータ等の装置を用いてロール・ツー・ロールで生産可能なことから、基板の上に、陰極の構成材料を含む液体を塗布し、乾燥させる方法であることが好ましい。またこれ以外にも、市販の薄膜状の電極材料をそのまま使用しても構わない。
上記で陰極を形成した後、必要に応じて、この陰極上に、電子輸送層を形成してもよい。電子輸送層を形成する手段としては、蒸着法、溶液塗布法のいずれであってもよいが、好ましくは溶液塗布法である。溶液塗布法を用いて電子輸送層を形成する場合には、上述した電子輸送材料を適当な溶剤に溶解・分散させた溶液を、適当な塗布法を用いて陰極上に塗布し、乾燥させればよい。溶液塗布法に用いられる塗布法としては、キャスト法、スピンコート法、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、グラビアコート法、スプレーコーティング法、ディッピング(浸漬)コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法、インクジェット法、スクリーン印刷法、凸版印刷法、凹版印刷法、オフセット印刷法、フレキソ印刷法等の印刷法、Langmuir−Blodgett(LB)法等の通常の方法を用いることができる。なかでも、スピンコート法、ブレードコーティング法を用いることが特に好ましい。なお、塗布法に使用する溶液の固形分濃度は、塗布方法や膜厚によっても変動しうるが、0.5〜15質量%が好ましく、より好ましくは1〜10質量%である。また、なお、塗布の際の塗布液および/または塗布面の温度は、特に制限はないが、塗布・乾燥時の温度変動による析出、ムラを防ぐといった観点から、好ましくは30〜180℃であり、より好ましくは50〜160℃である。さらに、乾燥の具体的な形態についても特に制限はなく、従来公知の知見が適宜参照されうる。乾燥(加熱処理)条件の一例を挙げると90〜180℃程度の温度で、5〜90分間程度といった条件が例示される。乾燥に使用する装置としては、ホットプレート、温風乾燥、赤外線ヒーター、マイクロウエーブ、真空乾燥機等が挙げられるが、これ以外の乾燥装置を用いることも勿論可能である。
続いて、上記で形成した陰極または電子輸送層上に、p型有機半導体およびn型有機半導体を含む光電変換層を形成する。光電変換層を形成するための具体的な手法について特に制限はないが、好ましくは、p型有機半導体およびn型有機半導体をそれぞれ、または一括して、適当な溶剤に溶解・分散させた溶液を、適当な塗布法(具体的な形態については、上述した通りである)を用いて陰極上に塗布し、乾燥させればよい。その後、残留溶媒および水分、ガスの除去、および半導体材料の結晶化による移動度向上・吸収長波化を引き起こすために加熱を行うことが好ましい。製造工程中において所定の温度でアニール処理されると、微視的に一部が凝集または結晶化が促進され、光電変換層を適切な相分離構造とすることができる。その結果、光電変換層の正孔と電子(キャリア)の移動度が向上し、高い効率を得ることができるようになる。このようにして、p型有機半導体およびn型有機半導体が一様に混合され、バルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子とすることができる。
一方、p型有機半導体とn型有機半導体の混合比の異なる複数層からなる光電変換層(例えば、p−i−n構造)を形成する場合には、一の層を塗布後に、当該層を不溶化(顔料化)し、その後、他の層を塗布することにより形成することが可能である。
なお、ポリアルキレンイミンを含む光電変換層を形成する場合、例えば、P型有機半導体および/またはn型有機半導体とポリアルキレンイミンと適当な溶媒に溶解・分散させた溶液を調製し、これを塗布、乾燥すればよい。
当該光電変換層を形成する工程は、酸素や水分に曝さないようにするために窒素雰囲気下のグローブボックス内で行うことが好ましい。このように、窒素雰囲気下で行うことにより、大気中の酸素または水分によりp型有機半導体が劣化するのを防ぎ、素子の耐久性を高めることができる。
次に、光電変換層上に、仕事関数低減層を形成する。ここで、仕事関数低減層を形成するための具体的な手法について特に制限はないが、蒸着法、溶液塗布法などの公知の方法が使用できる。好ましくは蒸着法(例えば、真空蒸着法)が用いられる。なお、当該仕事関数低減層を形成する工程は、上記光電変換層を形成する工程と同様、窒素雰囲気下のグローブボックス内で行うことが好ましい。このように、窒素雰囲気下で行うことにより、大気中の酸素または水分により仕事関数低減層が劣化するのを防ぎ、素子の耐久性を高めることができる。
次に、仕事関数低減層と陽極との間に正孔輸送層を、蒸着法または溶液塗布法、好ましくは蒸着法(例えば、真空蒸着法)を用いて形成する。なお、当該正孔輸送層を形成する工程は、上記光電変換層を形成する工程と同様、窒素雰囲気下のグローブボックス内で行うことが好ましい。このように、窒素雰囲気下で行うことにより、大気中の酸素または水分により正孔輸送層が劣化するのを防ぎ、素子の耐久性を高めることができる。
なお、ポリアルキレンイミンを含む正孔輸送層を形成する場合の方法も特に制限はなく、例えば、正孔輸送材料とポリアルキレンイミンと適当な溶媒に溶解・分散させた溶液を調製し、これを塗布、乾燥することにより形成される。
その後、上記で形成した正孔輸送層上に、陽極を形成する。陽極を形成するための手段についても特に制限はなく、蒸着法、溶液塗布法のいずれであってもよいが、好ましくは蒸着法(例えば、真空蒸着法)が用いられる。なお、当該陽極を形成する工程は、上記光電変換層を形成する工程と同様、窒素雰囲気下のグローブボックス内で行うことが好ましい。
さらに、上述した各種の層以外の層が含まれる場合には、これらの層を形成するための工程を、溶液塗布法や蒸着法等を用いることで適宜追加して行うことができる。
上記電極(陰極・陽極)、光電変換層、正孔輸送層、電子輸送層等は、必要に応じてパターニングされうる。パターニングの方法は特に制限はなく、公知の手法を適宜適用することができる。例えば、バルクへテロジャンクション型の光電変換層や正孔輸送層・電子輸送層等で使用される可溶性の材料をパターニングする場合には、ダイコート、ディップコート等の全面塗布後に不要部だけ拭き取ってもよいし、製膜後に炭酸レーザー等を用いてアブレーションする方法、スクライバで直接削り取る方法等でパターニングしてもよいし、インクジェット法やスクリーン印刷等の方法を使用して塗布時に直接パターニングしてもよい。一方、電極等で使用される不溶性の材料の場合は、真空蒸着法や真空スパッタ法、プラズマCVD法、電極材料の微粒子を分散させたインキを用いたスクリーン印刷法やグラビア印刷法、インクジェット法等の各種印刷方法、蒸着膜に対しエッチング又はリフトオフする等の公知の方法を用いることができる。また、別の基板上に形成したパターンを転写することによってパターンを形成してもよい。
また、本形態の有機光電変換素子は、環境中の酸素、水分等による劣化を防止するために、必要に応じて封止されうる。封止の方法は特に制限はなく、有機光電変換素子や有機エレクトロルミネッセンス素子等で用いられる公知の手法によって行われうる。例えば、(1)アルミニウムまたはガラス等でできたキャップを接着剤によって接着することによって封止する手法;(2)アルミニウム、酸化ケイ素、酸化アルミニウム等のガスバリア層が形成されたプラスチックフィルムと有機光電変換素子上を接着剤で貼合する手法;(3)ガスバリア性の高い有機高分子材料(ポリビニルアルコール等)をスピンコートする方法;(4)ガスバリア性の高い無機薄膜(酸化ケイ素、酸化アルミニウム等)または有機膜(パリレン等)を真空下で堆積する方法;ならびに(5)これらを複合的用いて積層する方法等が挙げられる。
さらに、本形態の有機光電変換素子は、エネルギー変換効率と素子寿命向上の観点から、素子全体を2枚のバリア付き基板で封止した構成でもよく、好ましくは、水分ゲッター、酸素ゲッター等を同封した構成であることがより好ましい。
<有機光電変換素子の用途>
本発明の他の形態によれば、上述の第1の形態に係る有機光電変換素子や、上記製造方法により得られる有機光電変換素子を有する太陽電池が提供される。本形態の有機光電変換素子は、優れた光電変換効率、耐久性を有するため、これを発電素子とする太陽電池に好適に使用されうる。
また、本発明のさらに他の形態によれば、上述した有機光電変換素子がアレイ状に配列されてなる光センサアレイが提供される。すなわち、本形態の有機光電変換素子は、その光電変換機能を利用して、光センサアレイ上に投影された画像を電気的な信号に変換する光センサアレイとして利用することもできる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<p型半導体材料(PCDTBT)の調製>
p型半導体材料として、ポリチオフェン−カルバゾール−ベンゾチアジアゾール共重合体(PCDTBT)を、Adv.Mater.,vol.19,(2007)p.2295に記載の方法にしたがって合成した。得られた重合体をソックスレー抽出により精製し、数平均分子量(Mn):35,000、PDI:2.0であるPCDTBTを得た。
<有機光電変換素子の作製>
[比較例1]有機光電変換素子SC−101の作製
ガラス基板上に、インジウムスズ酸化物(ITO)透明導電膜を150nm堆積させたもの(シート抵抗:10Ω/□)を、フォトリソグラフィおよび塩酸を用いた湿式エッチングとを用いて20mm幅にパターニングし、第一の電極(透明電極;陰極)を形成した。パターン形成した第1の電極を、界面活性剤と超純水の混合液を用いて超音波洗浄した後、さらに超純水を用いて超音波洗浄し、窒素ブローで乾燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行った。
次に、上記第一の電極(透明電極)が形成された基板をグローブボックス(酸素濃度10ppm、露点温度−80度)に入れ、窒素雰囲気下で、150mMのTiOx前駆体溶液を透明電極上にスピンコート(回転速度5000rpm、回転時間60秒間)し、所定のパターンに拭き取った。そして、これを空気中で2時間放置して、TiOx前駆体を加水分解させた後、基板をグローブボックス内に戻し、150℃で1時間加熱処理することにより膜厚約10nmのTiOx層からなる電子輸送層を形成した。
なお、上記150mMのTiOx前駆体溶液は、次の方法(ゾルゲル法)により調製した。100mL三口フラスコに、2−メトキシエタノール12.5mLと、6.25mmolのチタニウムテトライソプロポキシドとを入れ、氷浴中で10分間冷却した。次に、12.5mmolのアセチルアセトンをゆっくり加えて、氷浴中で10分間撹拌した。次に、この混合溶液を80℃で2時間加熱後、1時間還流した。これを室温(25℃)まで冷却し、2−メトキシエタノールを用いて濃度150mMに調整し、TiOx前駆体溶液を得た。
続けて、o−ジクロロベンゼンに、上記で合成したPCDTBTと、PC60BM(フロンティアカーボン社製、E100H:6,6−フェニル−C61−ブチリックアシッドメチルエステル)と1:1(質量比)で混合したものを3.0質量%の割合で溶解させた溶液Aを調製した。これを乾燥膜厚が約100nmになるよう上記電子輸送層上に製膜し、光電変換層を形成した。
なお、以上の工程は、全て窒素雰囲気下で行った。
次に、上記一連の機能層を製膜した基板を真空蒸着装置チャンバー内に移動させ、1×10−4Pa以下にまで真空蒸着装置内を減圧した後、蒸着速度0.05nm/秒で三酸化モリブデンを膜厚が10nmになるよう蒸着製膜して、正孔輸送層を形成した。続けて、Agメタルを蒸着速度0.5〜1.0nm/秒で、200nm積層することで、第2の電極を形成した。得られた有機光電変換素子を窒素チャンバーに移動させ、封止用キャビティグラスとUV硬化樹脂を用いて封止を行い、受光部が約5mm×20mmサイズの有機光電変換素子SC−101を完成させた。
なお、それぞれの材料について単膜を作製し、UPS法(ヴァキュームジェネレーターズ社製、ESCALab200R及びUPS−1)により仕事関数を測定し、その結果を下記表1に示す。
[実施例1〜9]有機光電変換素子SC−102〜SC−110の作製
比較例1(有機光電変換素子SC−101の作製)において、光電変換層を製膜した後正孔輸送層を形成する前に、下記表1に示される仕事関数を低減化する材料をそれぞれ表1に示す膜厚(0.2nm〜5nm)まで0.02nm/秒の蒸着速度で蒸着して、仕事関数低減層を形成したこと以外は、比較例1に記載の方法と同様の方法に従って、有機光電変換素子SC−102〜SC−110を作製した。
なお、本実施例で使用された金属塩、金属酸化物、フタロシアニンクロロアルミニウム(Cl−AlPc)は、Sigma−Aldrich社から購入し、そのまま使用した。
このようにして得られた有機光電変換素子SC−102〜SC−110の仕事関数を、比較例1と同様にして測定し、その結果を下記表1に示す。
[実施例10〜11]有機光電変換素子SC−112〜SC−113の作製
比較例1(有機光電変換素子SC−101の作製)において、光電変換層を製膜した後正孔輸送層を形成する前に、ポリジオクチルフルオレン−ブチルフェニルジフェニルアミン(TFB)を0.3wt%になるようにクロロベンゼンに溶解し、スピンコーターを用い、膜厚換算で下記表1に示される膜厚になるよう塗布し、仕事関数低減層を形成したこと以外は、比較例1に記載の方法と同様の方法にしたがって、有機光電変換素子SC−112〜SC113を作製した。
なお、ポリジオクチルフルオレン−ブチルフェニルジフェニルアミン(TFB)は、ルミネッセンステクノロジー社から購入し、そのまま使用した。
このようにして得られた有機光電変換素子SC−112〜SC−113の仕事関数を、比較例1と同様にして測定し、その結果を下記表1に示す。
[比較例2]有機光電変換素子SC−111の作製
比較例1(有機光電変換素子SC−101の作製)において、光電変換層を製膜した後正孔輸送層を形成する前に、下記表1に示される仕事関数を低減化する材料を表1に示す膜厚(10nm)まで0.02nm/秒の蒸着速度で蒸着して、本発明外の膜厚領域である層を形成したこと以外は、比較例1に記載の方法と同様の方法に従って、有機光電変換素子SC−111を作製した。
なお、本比較例で使用されたフタロシアニンクロロアルミニウム(Cl−AlPc)は、Sigma−Aldrich社から購入し、そのまま使用した。
このようにして得られた有機光電変換素子SC−111の仕事関数を、比較例1と同様にして測定し、その結果を下記表1に示す。
[比較例3]有機光電変換素子SC−114の作製
比較例1(有機光電変換素子SC−101の作製)において、光電変換層を製膜した後正孔輸送層を形成する前に、ポリジオクチルフルオレン−ブチルフェニルジフェニルアミン(TFB)を0.3wt%になるようにクロロベンゼンに溶解し、スピンコーターを用い、膜厚換算で10nmの膜厚になるよう塗布し、仕事関数低減層を形成したこと以外は、比較例1に記載の方法と同様の方法にしたがって、有機光電変換素子SC−114を作製した。
なお、ポリジオクチルフルオレン−ブチルフェニルジフェニルアミン(TFB)は、ルミネッセンステクノロジー社から購入し、そのまま使用した。
このようにして得られた有機光電変換素子SC−114の仕事関数を、比較例1と同様にして測定し、その結果を下記表1に示す。
[実施例12][有機光電変換素子SC−115の作製]
比較例1(有機光電変換素子SC−101の作製)において、光電変換層を製膜した後正孔輸送層を形成する前に、基板を真空蒸着装置チャンバー内に移動させ、1×10−4Pa以下にまで真空蒸着装置内を減圧した後、三酸化モリブデンの蒸着速度は0.05nm/秒で、フッ化リチウム(LiF)を3000ppmになるようにドープした層を5nm厚になるよう共蒸着させて、仕事関数低減層を形成し、さらに蒸着速度0.05nm/秒で三酸化モリブデンを膜厚が5nmになるよう蒸着製膜し、正孔輸送層を形成した以外は、比較例1に記載の方法と同様の方法に従って、有機光電変換素子SC−115を作製した。このように形成した仕事関数低減層はについてSEM観察したところ、仕事関数低減層は、均一層ではなく疎らな海島状の形態であった。また、前記仕事関数低減層は、正孔輸送層と光電変換層の界面よりも、正孔輸送層側に混合される形態で分布していた。
このようにして得られた有機光電変換素子SC−115の仕事関数を、比較例1と同様にして測定し、その結果を下記表1に示す。
[比較例4]有機光電変換素子SC−116の作製
比較例1(有機光電変換素子SC−101の作製)において、光電変換層を製膜した後、蒸着速度0.05nm/秒で五酸化二バナジウム(V)を膜厚が10nmになるよう蒸着製膜して、正孔輸送層を形成した以外は、比較例1に記載の方法と同様の方法に従って、有機光電変換素子SC−116を作製した。なお、ここで使用された五酸化二バナジウムは、Sigma−Aldrich社から購入し、そのまま使用した。
このようにして得られた有機光電変換素子SC−114の仕事関数を、比較例1と同様にして測定し、その結果を下記表1に示す。
[実施例13]有機光電変換素子SC−117の作製
比較例2(有機光電変換素子SC−114の作製)において、光電変換層を製膜した後、下記表1に示されるようにフッ化リチウム(LiF)を膜厚が0.6nmになるよう蒸着速度0.02nm/秒で蒸着製膜して、仕事関数低減層を形成した後、五酸化二バナジウム(V)を膜厚が10nmになるよう蒸着速度0.05nm/秒で蒸着製膜して、正孔輸送層を形成した以外は、比較例2に記載の方法と同様の方法に従って、有機光電変換素子SC−117を作製した。
このようにして得られた有機光電変換素子SC−117の仕事関数を、比較例1と同様にして測定し、その結果を下記表1に示す。
<光電変換率の評価>
上記で作製した光電変換素子について、ソーラーシミュレーター(AM1.5Gフィルタ)の100mW/cmの強度の光を照射し、有効面積を1cmにしたマスクを受光部に重ね、I−V特性を評価することで、短絡電流密度Jsc[mA/cm]、開放電圧Voc[V]及びフィルファクターFFを測定し、また光電変換効率ηを下記式1より算出した。結果を表1に示す。
Figure 2013089685
<光安定性の評価>
上記で作製した光電変換素子を85℃のホットプレート上に置き、2波長タイプの白色LED(東芝製小型SMD)を光源に用い、上記光電変換効率の評価において測定された短絡電流密度Jscとほぼ同じ値(約1Sun)になるようLEDの光量を調整し、1000時間光照射した。光照射後の短絡電流密度Jscを、上記光電変換効率の評価における測定方法に従って測定し、初期Jscに対する劣化後のJscの割合[%]を求めた。結果を表1に示す。
Figure 2013089685
表1の結果より、正孔輸送層と光電変換層との間に仕事関数低減層を設けた本発明の有機光電変換素子SC−102〜SC−110、SC−112〜SC−113、SC−115およびSC−117は、当該仕事関数低減層を持たない有機光電変換素子SC−101およびSC−116、膜厚が5nmを超える層を有するSC−111およびSC−114に比べて光安定性が高く、優れた耐久性を有することが示される。また、仕事関数低減層の仕事関数を4.0eV未満にするまたは仕事関数低減層の膜厚を0.2〜1nmとすることで、光安定性及び耐久性がさらに向上することが分かる。
10、20、30 有機光電変換素子、
11 陽極、
12 陰極、
13 仕事関数低減層、
14 光電変換層、
14a 第1の光電変換層、
14b 第2の光電変換層、
25 基板、
26 正孔輸送層、
27 電子輸送層、
38 電荷再結合層。

Claims (8)

  1. 第一の電極、
    第二の電極、
    前記第一の電極および前記第二の電極の間に存在する、バルクヘテロジャンクション型の光電変換層、および
    前記第一の電極または前記第二の電極と、前記光電変換層と、の間に存在する正孔輸送層を含む有機光電変換素子であって、
    前記正孔輸送層と前記光電変換層との間に、膜厚が5nm以下の仕事関数を低減する層が配置されてなる、有機光電変換素子。
  2. 前記正孔輸送層が、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、バナジウム(V)およびレニウム(Re)からなる群より選ばれる少なくとも一種の金属原子を含む、請求項1に記載の有機光電変換素子。
  3. 前記仕事関数を低減する層が、6.0eV未満の仕事関数を有する、請求項1または2に記載の有機光電変換素子。
  4. 前記仕事関数を低減する層が、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、セシウム(Cs)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、バリウム(Ba)、モリブデン(Mo)およびタングステン(W)からなる群より選ばれる原子を含む化合物、ならびに有機半導体材料らなる群より選択される少なくとも一種の材料を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機光電変換素子。
  5. 前記仕事関数を低減する層の膜厚が、0.05〜5nmである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機光電変換素子。
  6. 前記仕事関数を低減する層が、均一層ではなく疎らな海島状の形態である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の有機光電変換素子。
  7. 前記仕事関数を低減する層は、正孔輸送層と光電変換層の界面よりも、正孔輸送層側に混合される形で分布する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の有機光電変換素子。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の有機光電変換素子を有する、太陽電池。
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