本発明のタイヤ用ゴム組成物は、ゴム成分と、シリカと、水酸化アルミニウムと、特定量の特定の数平均分子量を有するジエン系重合体(1)とを含み、上記ジエン系重合体(1)が、下記(A)と(B)を反応させて得られる変性されたジエン系重合体(以下、変性ジエン系重合体ともいう)である。
(A):下記(C)の存在下に、共役ジエンモノマー又は共役ジエンモノマーと芳香族ビニルモノマーとを重合させることにより得られるアルカリ金属末端を有する活性共役ジエン系重合体
(B):官能基を有する変性剤
(C):下記式(1)で表される化合物と有機アルカリ金属化合物を反応させて得られる化学種
(式(1)中、R
1及びR
2は、同一若しくは異なって、水素原子、分岐若しくは非分岐のアルキル基、分岐若しくは非分岐のアリール基、分岐若しくは非分岐のアルコキシ基、分岐若しくは非分岐のシリルオキシ基、分岐若しくは非分岐のアセタール基、カルボキシル基、メルカプト基又はこれらの誘導体を示す。Aは、分岐若しくは非分岐のアルキレン基、分岐若しくは非分岐のアリーレン基又はこれらの誘導体を示す。)
本発明では、更に、ゴム成分として、特定の数平均分子量を有し、上記(A)と(B)を反応させて得られる変性されたジエン系重合体(変性ジエン系重合体)であるジエン系重合体(2)を含むことが好ましい。
ジエン系重合体(1)、(2)は、上記(A)と(B)を反応させて得られる変性されたジエン系重合体であるが、本発明では、軟化剤として、上記ジエン系重合体(1)を配合し、ゴム成分として、上記ジエン系重合体(2)を必要に応じて配合する。
上記式(1)で表される化合物と有機アルカリ金属化合物を反応させて得られる化学種(C)を重合開始剤として、重合反応を行うため、重合反応により得られるポリマー鎖(上記(A)(活性共役ジエン系重合体))は、その両末端がリビングポリマー末端となる。そのため、活性共役ジエン系重合体(A)の両末端を変性剤(B)により変性することができ、上記(A)の両末端を上記(B)により変性された上記変性ジエン系重合体は、片末端のみが変性されている場合に比べて、優れたウェットグリップ性能、耐摩耗性が得られ、これらの性能をバランス良く改善できる。特に、ジエン系重合体(1)は、軟化作用があるため、オイルと置換することにより、更に良好な低燃費性、耐摩耗性が得られる。
これに対し、両末端に官能基(変性基)を導入する方法として、官能基を有する重合開始剤を用いて重合し、さらに、重合末端に変性剤を反応させる方法が考えられる。この場合には、片方の末端には、重合開始剤が有する官能基が、もう一方の末端には、変性剤による官能基が存在することとなる。しかし、重合開始剤が有する官能基は、一般的にシリカとの相互作用が弱いため、ウェットグリップ性能、耐摩耗性のバランス性能が劣る。また、重合開始剤が有する官能基は、脱離しやすいため、エネルギー損失増大の一因となり、低燃費性に劣る。さらに、重合開始剤が有する官能基の極性が高い場合には、リビングポリマー末端に配位して重合末端と変性剤との反応に影響を及ぼし、任意の官能基を重合末端に導入することができない。
一方、上記(A)は、重合開始剤として上記(C)を使用して得られるため、重合反応により2方向にポリマー鎖が伸び、2個のリビングポリマー末端が存在するため、任意の変性剤により官能基を導入することができる。そのため、上記(A)と(B)を反応させて得られる上記変性ジエン系重合体を配合することにより、ウェットグリップ性能、耐摩耗性のバランス性能に優れたゴム組成物が得られる。
本発明では、シリカと、水酸化アルミニウムを配合したゴム組成物において、上記変性ジエン系重合体を軟化剤として用いる(すなわち、ジエン系重合体(1)として用いる)ことにより、シリカ、水酸化アルミニウムを配合したことにより得られる良好なウェットグリップ性能を維持又は改善しつつ、耐摩耗性を向上でき、ウェットグリップ性能、耐摩耗性に優れたゴム組成物が得られる。
更に、上記変性ジエン系重合体をゴム成分として用いる(すなわち、ジエン系重合体(2)として用いる)ことにより、ウェットグリップ性能、耐摩耗性を相乗的に向上でき、ウェットグリップ性能、耐摩耗性に更に優れたゴム組成物が得られる。
本発明において、ジエン系重合体(1)、(2)は、(A)と(B)を反応させて得られる変性された変性ジエン系重合体である。ジエン系重合体(1)、(2)は、その数平均分子量が異なるだけで、好ましい態様(例えば、好ましいモノマー成分や変性剤等)は、同一であるため、以下において、ジエン系重合体(1)、(2)の製造方法等についてまとめて説明する。なお、ゴム成分には、ジエン系重合体(1)は含まれない。
(A)は、(C)の存在下に、共役ジエンモノマー又は共役ジエンモノマーと芳香族ビニルモノマーとを重合させることにより得られるアルカリ金属末端を有する活性共役ジエン系重合体である。なお、活性共役ジエン系重合体は、2個のアルカリ金属末端を有する。
(C)は、下記式(1)で表される化合物と有機アルカリ金属化合物とを反応させて得られる化学種である。
(式(1)中、R
1及びR
2は、同一若しくは異なって、水素原子、分岐若しくは非分岐のアルキル基、分岐若しくは非分岐のアリール基、分岐若しくは非分岐のアルコキシ基、分岐若しくは非分岐のシリルオキシ基、分岐若しくは非分岐のアセタール基、カルボキシル基(−COOH)、メルカプト基(−SH)又はこれらの誘導体を示す。Aは、分岐若しくは非分岐のアルキレン基、分岐若しくは非分岐のアリーレン基又はこれらの誘導体を示す。)
R1及びR2の上記分岐若しくは非分岐のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、へキシル基、へプチル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等の炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜8、より好ましくは炭素数1〜4、更に好ましくは炭素数1〜2)のアルキル基等が挙げられる。なお、アルキル基には、アルキル基が有する水素原子がアリール基(フェニル基等)により置換された基も含む。
R1及びR2の上記分岐若しくは非分岐のアリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ビフェニル基などの炭素数6〜18(好ましくは炭素数6〜8)のアリール基が挙げられる。なお、アリール基には、アリール基が有する水素原子がアルキル基(メチル基等)により置換された基も含む。
R1及びR2の上記分岐若しくは非分岐のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、t−ブトキシ基等の炭素数1〜8のアルコキシ基(好ましくは炭素数1〜6、より好ましくは炭素数1〜4)等が挙げられる。なお、アルコキシ基には、シクロアルコキシ基(シクロヘキシルオキシ基等の炭素数5〜8のシクロアルコキシ基等)、アリールオキシ基(フェノキシ基、ベンジルオキシ基等の炭素数6〜8のアリールオキシ基等)も含まれる。
R1及びR2の上記分岐若しくは非分岐のシリルオキシ基としては、例えば、炭素数1〜20の脂肪族基、芳香族基が置換したシリルオキシ基(トリメチルシリルオキシ基、トリエチルシリルオキシ基、トリイソプロピルシリルオキシ基、ジエチルイソプロピルシリルオキシ基、t−ブチルジメチルシリルオキシ基、t−ブチルジフェニルシリルオキシ基、トリベンジルシリルオキシ基、トリフェニルシリルオキシ基、トリ−p−キシリルシリルオキシ基等)等が挙げられる。
R1及びR2の上記分岐若しくは非分岐のアセタール基としては、例えば、−C(RR’)−OR″、−O−C(RR’)−OR″で表される基を挙げることができる。前者としては、メトキシメチル基、エトキシメチル基、プロポキシメチル基、ブトキシメチル基、イソプロポキシメチル基、t−ブトキシメチル基、ネオペンチルオキシメチル基等が挙げられ、後者としては、メトキシメトキシ基、エトキシメトキシ基、プロポキシメトキシ基、i−プロポキシメトキシ基、n−ブトキシメトキシ基、t−ブトキシメトキシ基、n−ペンチルオキシメトキシ基、n−ヘキシルオキシメトキシ基、シクロペンチルオキシメトキシ基、シクロヘキシルオキシメトキシ基等を挙げることができる。
R1及びR2としては、水素原子、分岐若しくは非分岐のアルキル基、分岐若しくは非分岐のアリール基が好ましい。これにより、低燃費性、ウェットグリップ性能、耐摩耗性のバランスを改善できる。また、2方向へ均等にポリマーを成長させることができるという理由から、R1、R2が同一の基であることが好ましい。
Aの上記分岐若しくは非分岐のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、テトラデシレン基、ペンタデシレン基、ヘキサデシレン基、ヘプタデシレン基、オクタデシレン基等の炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜8、より好ましくは炭素数1〜4)のアルキレン基が挙げられる。
Aの上記アルキレン基の誘導体としては、例えば、アリール基やアリーレン基が置換したアルキレン基等が挙げられる。
Aの上記アリーレン基としては、例えば、フェニレン基、トリレン基、キシリレン基、ナフチレン基などが挙げられる。
Aの上記アリーレン基の誘導体としては、例えば、アルキレン基が置換したアリーレン基等が挙げられる。
Aとしては、分岐若しくは非分岐のアリーレン基が好ましく、フェニレン基(下記式(2)で表される化合物)がより好ましい。これにより、低燃費性、ウェットグリップ性能、耐摩耗性のバランスを改善できる。
上記式(2)のR1及びR2は、上記式(1)のR1及びR2と同様である。
上記式(1)又は(2)で表される化合物の具体例としては、1,2−ジビニルベンゼン、1,3−ジビニルベンゼン、1,4−ジビニルベンゼン、1,2−ジイソプロペニルベンゼン、1,3−ジイソプロペニルベンゼン、1,4−ジイソプロペニルベンゼン、1,2−ジイソブテニルベンゼン、1,3−ジイソブテニルベンゼン、1,4−ジイソブテニルベンゼン、1,3−フェニレンビス(1−ビニルベンゼン)、1,4−フェニレンビス(1−ビニルベンゼン)、1,1’−メチレンビス(2−ビニルベンゼン)、1,1’−メチレンビス(3−ビニルベンゼン)、1,1’−メチレンビス(4−ビニルベンゼン)等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、1,3−ジビニルベンゼン、1,3−ジイソプロペニルベンゼン、1,3−フェニレンビス(1−ビニルベンゼン)が好ましい。
本発明に用いられる有機アルカリ金属化合物としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等のアルカリ金属を含有する炭化水素化合物が挙げられる。なかでも、2〜20個の炭素原子を有するリチウム又はナトリウム化合物が好ましい。その具体例としては、例えば、エチルリチウム、n−プロピルリチウム、iso−プロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−オクチルリチウム、n−デシルリチウム、フェニルリチウム、2−ナフチルリチウム、2−ブチル−フェニルリチウム、4−フェニル−ブチルリチウム、シクロヘキシルリチウム、4−シクロペンチルリチウム、1,4−ジリチオ−ブテン−2等が挙げられる。なかでも、迅速に反応が進行して分子量分布が狭いポリマーを与える点で、n−ブチルリチウム又はsec−ブチルリチウムが好ましい。
(C)の調製方法は、上記式(1)で表される化合物と上記有機アルカリ金属化合物とを接触させる方法であれば特に制限はない。具体的には、反応に不活性な有機溶剤、例えば炭化水素溶剤に、上記式(1)で表される化合物、上記有機アルカリ金属化合物をそれぞれ別々に溶解し、当該式(1)で表される化合物溶液に当該有機アルカリ金属化合物溶液を撹拌下で滴下することにより(C)を調製できる。なお、(C)を調製する際の反応温度は、40〜60℃が好ましい。
炭化水素溶剤としては、上記有機アルカリ金属化合物(アルカリ金属触媒)を失活させないものであり、適当な炭化水素溶剤としては、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、脂環族炭化水素から選ばれ、特に炭素数が2〜12であるプロパン、n−ブタン、iso−ブタン、n−ペンタン、iso−ペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、プロペン、1−ブテン、iso−ブテン、トランス−2−ブテン、シス−2−ブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどをあげることができる。また、これらの溶剤は2種以上を混合して使用することができる。
本発明に用いられる共役ジエンモノマーとしては、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン(ピペリン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられる。なかでも、得られる重合体の物性、工業的に実施する上での入手性の観点から、1,3−ブタジエン、イソプレンが好ましい。
本発明に用いられる芳香族ビニルモノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等が挙げられる。なかでも、得られる重合体の物性、工業的に実施する上での入手性の観点から、スチレンが好ましい。
モノマーとしては、共役ジエンモノマーのみを用いてもよく、共役ジエンモノマーと芳香族ビニルモノマーを併用してもよい。共役ジエンモノマーと芳香族ビニルモノマーを併用する場合の両者の比率は、共役ジエンモノマー/芳香族ビニルモノマーの質量比で50/50〜90/10が好ましく、より好ましくは55/45〜85/15である。該比が50/50未満であると、重合体が炭化水素溶剤に不溶となり、均一な重合が不可能となる場合があり、一方該比が90/10を超えると重合体の強度が低下する場合がある。
変性ジエン系重合体としては、共役ジエンモノマーと芳香族ビニルモノマーを共重合させることにより得られるものが好ましく、1,3−ブタジエン及びスチレンを共重合させることにより得られるもの(変性スチレンブタジエン重合体)が特に好ましい。このような変性ジエン系重合体をジエン系重合体(1)として使用すると、良好なウェットグリップ性能を維持又は改善しつつ、低燃費性、耐摩耗性を更に改善できる。更に、このような変性ジエン系重合体をジエン系重合体(2)として使用すると、低燃費性、ウェットグリップ性能、耐摩耗性を更に相乗的に改善できる。
(A)の調製方法としては、重合開始剤として(C)を用いる以外は特に制限はなく、従来公知の方法を用いることができる。具体的には、反応に不活性な有機溶剤、例えば炭化水素溶剤中において、重合開始剤として(C)を用いて、共役ジエンモノマー又は共役ジエンモノマーと芳香族ビニルモノマーとを必要に応じてランダマイザーの存在下で重合させることにより、目的の2個のアルカリ金属末端を有する活性共役ジエン系重合体が得られる。ここで、使用する重合開始剤(C)、モノマー成分(共役ジエンモノマー、芳香族ビニルモノマー)の比率等を変化させることにより、得られる活性共役ジエン系重合体の数平均分子量を調整できる。
炭化水素溶剤としては、上記(C)の調製の場合と同様のものを好適に使用できる。
ランダマイザーとは、重合体中の共役ジエン部分のミクロ構造制御、例えばブタジエンにおける1,2−結合、イソプレンにおける3,4−結合の増加など、あるいは重合体におけるモノマー単位の組成分布の制御、例えばブタジエン−スチレン共重合体におけるブタジエン単位、スチレン単位のランダム化などの作用を有する化合物のことである。
ランダマイザーとして、各種の化合物を使用できる。なかでも、エーテル化合物又は第三級アミンが、工業的実施上の入手容易性の点で好ましい。エーテル化合物としては、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,4−ジオキサンなどの環状エーテル;ジエチルエーテル、ジブチルエーテルなどの脂肪族モノエーテル;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテルなどの脂肪族ジエーテル;ジフェニルエーテル、アニソールなどの芳香族エーテルがあげられる。また、第三級アミン化合物の例としては、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミンなどのほかに、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N−ジエチルアニリン、ピリジン、キノリンなどをあげることができる。
(B)は、官能基を有する変性剤である。(B)としては、窒素、酸素、およびケイ素からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含む官能基を有する化合物が好ましい。
官能基としては、例えばアミノ基、アミド基、アルコキシシリル基、イソシアネート基、イミノ基、イミダゾール基、ウレア基、エーテル基(特に、エポキシ基)、カルボニル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、ニトリル基、ピリジル基、ジグリシジルアミノ基等があげられる。なお、これらの官能基は、置換基を有していてもよい。なかでも、シリカとの反応性が高いという理由から、アミノ基、アルコキシシリル基、エーテル基(特に、エポキシ基)、カルボニル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ジグリシジルアミノ基が好ましい。
(B)としては、下記式(3)で表される化合物が好ましい。また、使用する(B)は、1種類である((A)の両末端に導入する変性剤が同一である)ことが好ましい。使用する(B)を1種類とすることにより、(A)の両末端に同一の官能基を導入することができ、均一なポリマー末端となることで、シリカとの反応性が安定する。
下記式(3)で表される化合物は、2個以上のエポキシ基を有する多官能化合物である。活性共役ジエン系重合体(A)の活性末端と、エポキシ基が反応することにより、重合体鎖に水酸基を導入できる。さらに、上記多官能化合物は、分子中に2個以上のエポキシ基を有するため、1の多官能化合物が複数の活性共役ジエン系重合体(A)の活性末端と反応することにより、2個以上の重合体鎖をカップリングすることができる。そのため、該多官能化合物により変性された部位(末端など)を3個以上有する変性ジエン系重合体も得られる。変性ジエン系重合体の変性された部位(末端など)の数が増加することにより、より低燃費性、ウェットグリップ性能、耐摩耗性のバランスを改善できる。
(式(3)中、R
3及びR
4は、同一又は異なって、炭素数1〜10の炭化水素基を表し、該炭化水素基は、エーテル、及び3級アミンからなる群より選択される少なくとも1種の基を有してもよい。R
5及びR
6は、同一若しくは異なって、水素原子、又は炭素数1〜20の炭化水素基を表し、該炭化水素基は、エーテル、及び3級アミンからなる群より選択される少なくとも1種の基を有してもよい。R
7は、炭素数1〜20の炭化水素基を表し、該炭化水素基は、エーテル、3級アミン、エポキシ、カルボニル、及びハロゲンからなる群より選択される少なくとも1種の基を有してもよい。nは1〜6の整数を表す。)
R3及びR4は、炭素数1〜10のアルキレン基(好ましくは炭素数1〜3)が好ましい。R5及びR6は、水素原子が好ましい。R7は、炭素数1〜20の炭化水素基(好ましくは炭素数3〜20、より好ましくは炭素数6〜10、更に好ましくは炭素数8)が挙げられ、下記式などで表されるシクロアルキル基、シクロアルキレン基が好ましく、シクロアルキレン基がより好ましい。
また、nは2〜3であることが好ましい。上記式(3)で表される化合物としては、例えば、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、テトラグリシジルアミノジフェニルメタン、テトラグリシジル−p−フェニレンジアミン、ジグリシジルアミノメチルシクロヘキサン、テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン等が好適に用いられる。
本発明において、ジエン系重合体(変性ジエン系重合体)は、反応に不活性な有機溶剤、例えば炭化水素溶剤中において、(A)と(B)を反応させて得られる。
炭化水素溶剤としては、上記(C)の調製の場合と同様のものを好適に使用できる。
官能基を有する変性剤(B)の量は、有機アルカリ金属化合物1モルに対して、好ましくは0.1〜10モルであり、より好ましくは0.5〜2モルである。0.1モル未満であると、低燃費性の改良効果が少なく、逆に10モルを超えると、(B)が重合溶媒中に残存するため、その溶媒をリサイクル使用する場合には溶媒からの分離工程を必要とする等、経済的に好ましくない。
(A)と(B)との反応は、迅速に起きるため、反応温度及び反応時間は広範囲に選択できる。一般的には、室温(25℃)〜80℃、数秒〜数時間である。反応は、(A)と(B)とを接触させればよく、例えば、(C)を用いて、ジエン系重合体を重合し、該重合体溶液中に(B)を所定量添加する方法が、好ましい態様として例示できるが、この方法に限定されるものではない。
混練加工性の観点から、(A)と(B)の反応前又は反応後に、一般式RaMXbで示されるカップリング剤を添加してもよい(式中Rはアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基又は芳香族炭化水素基、Mはケイ素又はスズ原子、Xはハロゲン原子、aは0〜2の整数、bは2〜4の整数を表す)。カップリング剤の量は、使用する有機アルカリ金属化合物(アルカリ金属触媒)1モル当たり、好ましくは0.03〜0.4モルであり、より好ましくは0.05〜0.3モルである。該使用量が0.03モル未満の場合は加工性の改良効果が少なく、逆に0.4モルを超える場合は、官能基を有する変性剤と反応するアルカリ金属末端が少なくなり、低燃費性改良効果が小さくなる。
反応終了後、変性されたジエン系重合体を公知の方法により、反応溶媒中から分離することにより、ジエン系重合体(1)、(2)が得られる。ジエン系重合体(1)、(2)は、例えば、凝固剤の添加あるいはスチーム凝固など通常の溶液重合によるゴムの製造において使用される凝固方法により凝固でき、反応溶媒中から分離できる。なお、凝固温度も何ら制限されない。
ジエン系重合体(2)の場合は、反応溶媒から分離した凝固物を更に乾燥を行うことが好ましい。凝固物の乾燥は、通常の合成ゴムの製造で用いられるバンドドライヤー、押し出し型のドライヤー等が使用でき、乾燥温度も何ら制限されない。
上記ジエン系重合体(2)の数平均分子量(Mn)は、110000以上、好ましくは150000以上、より好ましくは200000以上である。Mnが110000未満であると、耐摩耗性が充分に得られないおそれがある。該Mnは、1500000以下、好ましくは1200000以下、より好ましくは1000000以下、更に好ましくは500000以下である。Mnが1500000を超えると、加工性が著しく悪化し、粘度が高く生産性が悪化するおそれがある。
なお、本明細書において、数平均分子量(Mn)は、実施例に記載の方法により測定される値である。
上記ジエン系重合体(2)のムーニー粘度(ML1+4)(100℃)は、好ましくは10〜200、より好ましくは20〜150である。上限は、更に好ましくは100以下、特に好ましくは75以下である。ムーニー粘度が10未満であると、加硫物の引張り強度等の機械物性が低下する場合があり、一方該粘度が200を超えると、他のゴムと組み合わせて使用する場合に混和性が悪く、加工操作性が悪化し、得られたゴム組成物の加硫物の機械物性が低下する場合がある。なお、ムーニー粘度は、実施例に記載の方法により測定出来る。
上記ジエン系重合体(2)の共役ジエン部のビニル含量は、特に限定されないが、好ましくは10〜70モル%、より好ましくは15〜60モル%である。下限は、更に好ましくは35モル%以上、特に好ましくは40モル%以上、最も好ましくは50モル%以上である。10モル%未満であると、重合体のガラス転移温度が低温となり、タイヤ用のポリマーとして用いた場合、グリップ性能(ウェットグリップ性能)が劣る場合があり、一方、70モル%を超えると、重合体のガラス転移温度が上昇し、反撥弾性に劣る場合がある。
なお、本明細書において、ビニル含量(1,2−結合ブタジエン単位量)は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定できる。
ゴム成分100質量%中の上記ジエン系重合体(2)の含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは40質量%以上、特に好ましくは60質量%以上である。5質量%未満であると、充分な低燃費性、ウェットグリップ性能、耐摩耗性を得ることができないおそれがある。該ジエン系重合体の含有量は、100質量%であってもよいが、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下である。
本発明のゴム組成物は、上記ジエン系重合体(2)以外に使用できるゴム成分としては、例えば、天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)等が挙げられる。ゴム成分は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、良好なウェットグリップ性能が得られるという理由から、SBRが好ましい。
SBRとしては特に限定されず、乳化重合スチレンブタジエンゴム(E−SBR)、溶液重合スチレンブタジエンゴム(S−SBR)等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。
本発明では、シリカと、水酸化アルミニウムを配合したゴム組成物において、上記ジエン系重合体(1)が使用される。シリカ、水酸化アルミニウムと共にジエン系重合体(1)を使用することにより、シリカ、水酸化アルミニウムにより得られる良好なウェットグリップ性能を維持又は改善しつつ、低燃費性、耐摩耗性を更に改善できる。
上記ジエン系重合体(1)の数平均分子量(Mn)は、1000以上、好ましくは1500以上である。Mnが1000未満であると、ヒステリシスロスが大きく、低燃費性が低下する。また、耐摩耗性も低下する。該Mnは、100000以下、好ましくは50000以下、より好ましくは20000以下、更に好ましくは10000以下である。Mnが100000を超えると、ウェットグリップ性能が低下する。
上記ジエン系重合体(1)の共役ジエン部のビニル含量は、特に限定されないが、好ましくは0.1〜70モル%、より好ましくは0.1〜60モル%である。下限は、更に好ましくは35モル%以上、特に好ましくは40モル%以上、最も好ましくは50モル%以上である。0.1モル%未満であると、架橋密度の低下を招き、破壊強度、耐摩耗性の低下が大きくなるおそれがある。一方、70モル%を超えると、架橋密度の上昇を招き、破壊強度の低下が大きくなるおそれがある。
上記ジエン系重合体(1)の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、2質量部以上、好ましくは3質量部以上、より好ましくは5質量部以上、更に好ましくは10質量部以上である。2質量部未満であると、充分な低燃費性、耐摩耗性が得られない傾向がある。上記ジエン系重合体(1)の含有量は、200質量部以下、好ましくは150質量部以下、より好ましくは120質量部以下である。200質量部を超えると、低燃費性、加工性が悪化する傾向がある。
上記ジエン系重合体(1)はゴム組成物を軟化する作用を有しているため、上記ジエン系重合体(1)を用いることで、ゴム組成物中のオイルの含有量を少なくし、低燃費性、耐摩耗性をより改善できる。
本発明のゴム組成物において、オイルの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは80質量部以下、より好ましくは50質量部以下、更に好ましくは30質量部以下、特に好ましくは5質量部以下、最も好ましくは0質量部(実質的に配合しない)である。
なお、オイルの含有量には、油展ゴムに含まれるオイル量も含まれる。
本発明では、シリカが使用される。上記ジエン系重合体(1)とともに、シリカを配合することにより、シリカにより得られる良好なウェットグリップ性能を維持又は改善しつつ、低燃費性、耐摩耗性を更に改善できる。シリカとしては特に限定されず、例えば、乾式法シリカ(無水ケイ酸)、湿式法シリカ(含水ケイ酸)等が挙げられるが、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。
シリカのチッ素吸着比表面積(N2SA)は、40m2/g以上が好ましく、50m2/g以上がより好ましく、100m2/g以上が更に好ましく、150m2/g以上が特に好ましい。40m2/g未満では、破断強度、耐摩耗性が低下する傾向がある。また、シリカのN2SAは、250m2/g以下が好ましく、220m2/g以下がより好ましく、200m2/g以下が更に好ましい。250m2/gを超えると、低燃費性、加工性が低下する傾向がある。
なお、シリカのチッ素吸着比表面積は、ASTM D3037−81に準じてBET法で測定される値である。
シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは20質量部以上、更に好ましくは30質量部以上である。10質量部未満であると、シリカの配合による充分な効果が得られない傾向がある。上記シリカの含有量は、好ましくは150質量部以下、より好ましくは120質量部以下、更に好ましくは100質量部以下である。150質量部を超えると、シリカのゴムへの分散が困難になり、ゴムの加工性、耐摩耗性が悪化する傾向がある。
本発明では、シリカとともに、シランカップリング剤を使用することが好ましい。シランカップリング剤としては、例えば、スルフィド系、メルカプト系、ビニル系、アミノ系、グリシドキシ系、ニトロ系、クロロ系シランカップリング剤などが挙げられる。なかでも、スルフィド系、メルカプト系が好ましく、メルカプト系が特に好ましい。
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、メルカプト系シランカップリング剤として、下記式(4)で表されるシランカップリング剤及び/又は下記式(5)で示される結合単位Aと下記式(6)で示される結合単位Bとを含むシランカップリング剤を含有することが好ましい。
下記式(4)で表されるシランカップリング剤を配合することにより、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド等の従来タイヤ用ゴム組成物に配合されているスルフィド系のシランカップリング剤に比べて、より低燃費性、ウェットグリップ性能、耐摩耗性を向上できる。
特に、上記ジエン系重合体(1)、(2)と、シリカと、下記式(4)で表されるシランカップリング剤とを併用することにより、上記性能を相乗的に向上できる。
(式(4)中、R
8は−O−(R
12−O)
m−R
13(m個のR
12は、同一又は異なって、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30の2価の炭化水素基を表す。R
13は、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基、炭素数6〜30のアリール基又は炭素数7〜30のアラルキル基を表す。mは1〜30の整数を表す。)で表される基を表す。R
9及びR
10は、同一若しくは異なって、R
8と同一の基、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜12のアルキル基又は−O−R
14(R
14は水素原子、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基、炭素数6〜30のアリール基又は炭素数7〜30のアラルキル基を表す。)で表される基を表す。R
11は、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキレン基を表す。)
上記式(4)のR8は−O−(R12−O)m−R13(m個のR12は、同一又は異なって、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30の2価の炭化水素基を表す。R13は、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基、炭素数6〜30のアリール基又は炭素数7〜30のアラルキル基を表す。mは1〜30の整数を表す。)で表される基を表す。
上記R12は、同一又は異なって、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜3)の2価の炭化水素基を表す。
該炭化水素基としては、例えば、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキレン基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニレン基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルキニレン基、炭素数6〜30のアリーレン基等が挙げられる。なかでも、上記アルキレン基が好ましい。
R12の分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜3)のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、テトラデシレン基、ペンタデシレン基、ヘキサデシレン基、ヘプタデシレン基、オクタデシレン基等が挙げられる。
R12の分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30(好ましくは炭素数2〜10、より好ましくは炭素数2〜5)のアルケニレン基としては、例えば、ビニレン基、1−プロペニレン基、2−プロペニレン基、1−ブテニレン基、2−ブテニレン基、1−ペンテニレン基、2−ペンテニレン基、1−ヘキセニレン基、2−ヘキセニレン基、1−オクテニレン基等が挙げられる。
R12の分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30(好ましくは炭素数2〜10、より好ましくは炭素数2〜5)のアルキニレン基としては、例えば、エチニレン基、プロピニレン基、ブチニレン基、ペンチニレン基、ヘキシニレン基、へプチニレン基、オクチニレン基、ノニニレン基、デシニレン基、ウンデシニレン基、ドデシニレン基等が挙げられる。
R12の炭素数6〜30(好ましくは炭素数6〜10)のアリーレン基としては、例えば、フェニレン基、トリレン基、キシリレン基、ナフチレン基等が挙げられる。
上記mは1〜30(好ましくは2〜10、より好ましくは3〜7、更に好ましくは5〜6)の整数を表す。mが0であるとシリカに近づきにくく、シランカップリング剤とシリカの反応が起こりづらくなる傾向があり、mが31以上であると分子間で凝集が起こるためシリカに近づきにくく、シランカップリング剤とシリカの反応が起こりづらくなる傾向がある。
R13は、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基、炭素数6〜30のアリール基又は炭素数7〜30のアラルキル基を表す。なかでも、立体障害が少ないという理由から、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基が好ましい。
R13の分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30(好ましくは炭素数5〜25、より好ましくは炭素数10〜15)のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、へキシル基、へプチル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基等が挙げられる。
R13の分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30(好ましくは炭素数5〜25、より好ましくは炭素数10〜15)のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、1−オクテニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、オクタデセニル基等が挙げられる。
R13の炭素数6〜30(好ましくは炭素数10〜25)のアリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ビフェニル基等が挙げられる。
R13の炭素数7〜30(好ましくは炭素数10〜25)のアラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。
上記式(4)のR8の具体例としては、例えば、−O−(C2H4−O)5−C11H23、−O−(C2H4−O)5−C12H25、−O−(C2H4−O)5−C13H27、−O−(C2H4−O)5−C14H29、−O−(C2H4−O)5−C15H31、−O−(C2H4−O)3−C13H27、−O−(C2H4−O)4−C13H27、−O−(C2H4−O)6−C13H27、−O−(C2H4−O)7−C13H27等が挙げられる。なかでも、−O−(C2H4−O)5−C11H23、−O−(C2H4−O)5−C13H27、−O−(C2H4−O)5−C15H31、−O−(C2H4−O)6−C13H27が好ましい。
R9及びR10は、同一若しくは異なって、R8と同一の基(すなわち、−O−(R12−O)m−R13で表される基)、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜12のアルキル基又は−O−R14(R14は水素原子、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基、炭素数6〜30のアリール基又は炭素数7〜30のアラルキル基を表す。)で表される基を表す。なかでも、シリカとの接触確率が向上するという理由から、R8と同一の基、−O−R14(R14が分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基の場合)で表される基が好ましい。
R9及びR10の分岐若しくは非分岐の炭素数1〜12のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、へキシル基、へプチル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、ノニル基等が挙げられる。
R14の分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜3)のアルキル基としては、例えば、上記R13の分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基と同様の基を挙げることができる。
R14の分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基としては、例えば、上記R13の分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基と同様の基を挙げることができる。
R14の炭素数6〜30のアリール基としては、例えば、上記R13の炭素数6〜30のアリール基と同様の基を挙げることができる。
R14の炭素数7〜30のアラルキル基としては、例えば、上記R13の炭素数7〜30のアラルキル基と同様の基を挙げることができる。
上記式(4)のR9及びR10の具体例としては、例えば、−O−(C2H4−O)5−C11H23、−O−(C2H4−O)5−C12H25、−O−(C2H4−O)5−C13H27、−O−(C2H4−O)5−C14H29、−O−(C2H4−O)5−C15H31、−O−(C2H4−O)3−C13H27、−O−(C2H4−O)4−C13H27、−O−(C2H4−O)6−C13H27、−O−(C2H4−O)7−C13H27、C2H5−O−、CH3−O−、C3H7−O−等が挙げられる。なかでも、−O−(C2H4−O)5−C11H23、−O−(C2H4−O)5−C13H27、−O−(C2H4−O)5−C15H31、−O−(C2H4−O)6−C13H27、C2H5−O−が好ましい。
R11の分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜5)のアルキレン基としては、例えば、上記R12の分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキレン基と同様の基を挙げることができる。
上記式(4)で表されるシランカップリング剤としては、例えば、エボニックデグッサ社製のSi363等を使用することができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
下記式(5)で示される結合単位Aと下記式(6)で示される結合単位Bとを含むシランカップリング剤を配合することにより、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド等の従来タイヤ用ゴム組成物に配合されているスルフィド系のシランカップリング剤に比べて、より低燃費性、ウェットグリップ性能及び耐摩耗性を向上できる。特に、上記ジエン系重合体(1)、(2)と、シリカと、下記式(5)で示される結合単位Aと下記式(6)で示される結合単位Bとを含むシランカップリング剤とを併用することにより、上記性能を相乗的に向上できる。
(式(5)、(6)中、R
15は水素、ハロゲン、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルキニル基、又は該アルキル基の末端の水素が水酸基若しくはカルボキシル基で置換されたものを示す。R
16は分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキレン基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニレン基、又は分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルキニレン基を示す。R
15とR
16とで環構造を形成してもよい。)
上記構造のシランカップリング剤は、結合単位Aと結合単位Bを有するため、ビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドなどのポリスルフィドシランに比べ、加工中の粘度上昇が抑制される。これは結合単位Aのスルフィド部分がC−S−C結合であるため、テトラスルフィドやジスルフィドに比べ熱的に安定であることから、ムーニー粘度の上昇が少ないためと考えられる。
また、結合単位Aと結合単位Bを有するため、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのメルカプトシランに比べ、スコーチ時間の短縮が抑制される。これは結合単位Bはメルカプトシランの構造を持っているが、結合単位Aの−C7H15部分が結合単位Bの−SH基を覆うためポリマーと反応しにくく、スコーチが発生しにくいためと考えられる。そのため、耐摩耗性の悪化を防止でき、低燃費性、ウェットグリップ性能、耐摩耗性をバランスよく向上できる。
本発明の効果が良好に得られるという点から、上記構造のシランカップリング剤において、結合単位Aの含有量は、好ましくは30モル%以上、より好ましくは50モル%以上であり、好ましくは99モル%以下、より好ましくは90モル%以下である。また、結合単位Bの含有量は、好ましくは5モル%以上、より好ましくは10モル%以上であり、好ましくは65モル%以下、より好ましくは55モル%以下である。また、結合単位A及びBの合計含有量は、好ましくは95モル%以上、より好ましくは98モル%以上、特に好ましくは100モル%である。
なお、結合単位A、Bの含有量は、結合単位A、Bがシランカップリング剤の末端に位置する場合も含む量である。結合単位A、Bがシランカップリング剤の末端に位置する場合の形態は特に限定されず、結合単位A、Bを示す式(5)、(6)と対応するユニットを形成していればよい。
R15のハロゲンとしては、塩素、臭素、フッ素などが挙げられる。
R15の分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、へキシル基、へプチル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等が挙げられる。該アルキル基の炭素数は、好ましくは1〜12である。
R15の分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基としては、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、1−オクテニル基等が挙げられる。該アルケニル基の炭素数は、好ましくは2〜12である。
R15の分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルキニル基としては、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基、へプチニル基、オクチニル基、ノニニル基、デシニル基、ウンデシニル基、ドデシニル基等が挙げられる。該アルキニル基の炭素数は、好ましくは2〜12である。
R16の分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、テトラデシレン基、ペンタデシレン基、ヘキサデシレン基、ヘプタデシレン基、オクタデシレン基等が挙げられる。該アルキレン基の炭素数は、好ましくは1〜12である。
R16の分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニレン基としては、ビニレン基、1−プロペニレン基、2−プロペニレン基、1−ブテニレン基、2−ブテニレン基、1−ペンテニレン基、2−ペンテニレン基、1−ヘキセニレン基、2−ヘキセニレン基、1−オクテニレン基等が挙げられる。該アルケニレン基の炭素数は、好ましくは2〜12である。
R16の分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルキニレン基としては、エチニレン基、プロピニレン基、ブチニレン基、ペンチニレン基、ヘキシニレン基、へプチニレン基、オクチニレン基、ノニニレン基、デシニレン基、ウンデシニレン基、ドデシニレン基等が挙げられる。該アルキニレン基の炭素数は、好ましくは2〜12である。
上記構造のシランカップリング剤において、結合単位Aの繰り返し数(x)と結合単位Bの繰り返し数(y)の合計の繰り返し数(x+y)は、3〜300の範囲が好ましい。この範囲内であると、結合単位Bのメルカプトシランを、結合単位Aの−C7H15が覆うため、スコーチタイムが短くなることを抑制できるとともに、シリカやゴム成分との良好な反応性を確保することができる。
上記構造のシランカップリング剤としては、例えば、Momentive社製のNXT−Z30、NXT−Z45、NXT−Z60等を使用することができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記式(4)で表されるシランカップリング剤及び/又は上記式(5)で示される結合単位Aと上記式(6)で示される結合単位Bとを含むシランカップリング剤の含有量は、シリカの含有量100質量部に対して1質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましく、8質量部以上が更に好ましい。1質量部未満では、破壊強度、耐摩耗性が大きく低下する傾向がある。また、上記含有量は、シリカの含有量100質量部に対して15質量部以下が好ましく、12質量部以下がより好ましい。15質量部を超えると、シランカップリング剤を添加することによる破壊強度、耐摩耗性の向上や転がり抵抗低減などの効果が充分に得られない傾向がある。
上記含有量は、上記式(4)で表されるシランカップリング剤及び上記式(5)で示される結合単位Aと上記式(6)で示される結合単位Bとを含むシランカップリング剤を併用する場合は、合計含有量を意味する。
なお、本発明において、スルフィド系などの他のシランカップリング剤を使用する場合においても、配合するシランカップリング剤の合計含有量は上記範囲内であることが好ましい。
本発明では、水酸化アルミニウムが使用される。上記ジエン系重合体(1)とともに、水酸化アルミニウムを配合することにより、水酸化アルミニウムにより得られる良好なウェットグリップ性能を維持又は改善しつつ、低燃費性、耐摩耗性を更に改善できる。
水酸化アルミニウムとしては、特に限定されないが、上記水酸化アルミニウムの平均一次粒子径は、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは0.8μm以上である。0.5μm未満では、水酸化アルミニウムの分散が困難となり、耐摩耗性が悪化する傾向がある。また、該平均一次粒子径は、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下である。10μmを超えると、水酸化アルミニウムが破壊核となり、耐摩耗性が悪化する傾向がある。
なお、本発明において、水酸化アルミニウムの平均一次粒子径は数平均粒子径であり、透過型電子顕微鏡により測定される。
水酸化アルミニウムの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは3質量部以上、より好ましくは10質量部以上である。3質量部未満では、グリップ性能の発現が充分でない傾向がある。また、該水酸化アルミニウムの含有量は、好ましくは60質量部以下、より好ましくは40質量部以下である。60質量部を超えると、耐摩耗性が低下する傾向がある。
本発明のゴム組成物は、カーボンブラックを含有することが好ましい。これにより、良好な補強性が得られ、耐摩耗性をより改善できる。
カーボンブラックとしては特に限定されず、例えば、GPF、HAF、ISAF、SAFなどを用いることができる。
カーボンブラックのチッ素吸着比表面積(N2SA)は30m2/g以上が好ましく、70m2/g以上がより好ましく、120m2/g以上が更に好ましい。N2SAが30m2/g未満では、充分な補強性が得られない傾向がある。また、カーボンブラックのN2SAは250m2/g以下が好ましく、160m2/g以下がより好ましい。N2SAが250m2/gを超えると、未加硫時の粘度が非常に高くなり、加工性が悪化する傾向がある。また、低燃費性が悪化する傾向がある。
なお、カーボンブラックのチッ素吸着比表面積は、JIS K6217−2:2001に準拠して測定される。
カーボンブラックのジブチルフタレート(DBP)吸油量は、好ましくは70ml/100g以上、より好ましくは90ml/100g以上である。また、カーボンブラックのDBP吸油量は、好ましくは160ml/100g以下、より好ましくは125ml/100g以下である。該範囲内とすることによって、低燃費性、ウェットグリップ性能、耐摩耗性をバランスよく改善できる。
なお、カーボンブラックのDBP吸油量は、JIS K6217−4:2001に準拠して測定される。
本発明のゴム組成物にカーボンブラックが配合される場合、カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは8質量部以上である。5質量部未満の場合、カーボンブラックを配合した効果が充分に得られないおそれがある。また、カーボンブラックの含有量は、好ましくは60質量部以下、より好ましくは50質量部以下、更に好ましくは30質量部以下である。60質量部を超えると、低燃費性が悪化する傾向がある。
シリカ及びカーボンブラックの合計100質量%中のシリカの含有量は、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上であり、好ましくは98質量%以下、より好ましくは95質量%以下である。上記範囲内であると、ウェットグリップ性能、耐摩耗性がバランスよく得られる。
カーボンブラック、シリカ、水酸化アルミニウムの合計含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは30〜200質量部、より好ましくは80〜120質量部である。上記範囲内であると、ウェットグリップ性能、耐摩耗性がバランスよく得られる。
本発明では、加硫促進剤を使用してもよい。使用できる加硫促進剤としては、例えば、スルフェンアミド系、チアゾール系、チウラム系、チオウレア系、グアニジン系、ジチオカルバミン酸系、アルデヒド−アミン系若しくはアルデヒド−アンモニア系、イミダゾリン系、又は、キサンテート系加硫促進剤が挙げられる。なかでも、加硫開始後速やかに加硫が起こるという理由から、スルフェンアミド系加硫促進剤が好ましい。
スルフェンアミド系加硫促進剤としては、例えば、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(TBBS)、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)、N,N’−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(DZ)等が挙げられる。なかでも、TBBS、CBSが好ましく、CBSがより好ましい。
加硫促進剤の配合量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは1質量部以上である。0.1質量部未満では、加硫速度が遅い傾向がある。また、上記配合量は、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。10質量部を超えると、ブルーミングを起こし、耐摩耗性が低下するおそれがある。
本発明のゴム組成物には、前記成分以外にも、ゴム組成物の製造に一般に使用される配合剤、例えば、クレー等の補強用充填剤、酸化亜鉛、ステアリン酸、各種老化防止剤、ワックス、硫黄などの加硫剤などを適宜配合することができる。
本発明のゴム組成物の製造方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、前記各成分をオープンロール、バンバリーミキサーなどのゴム混練装置を用いて混練し、その後加硫する方法等により製造できる。
本発明のゴム組成物は、タイヤの各部材(特に、トレッド)に好適に使用できる。
本発明の空気入りタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法によって製造される。すなわち、必要に応じて各種添加剤を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でタイヤの各部材(特に、トレッド)の形状に合わせて押し出し加工し、タイヤ成型機上にて通常の方法にて成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、未加硫タイヤを形成した後、加硫機中で加熱加圧してタイヤを製造することができる。
本発明の空気入りタイヤは、乗用車用タイヤ、トラック・バス用タイヤ、二輪車用タイヤ、高性能タイヤ等として用いられ、特に、高性能タイヤとして好適に用いられる。なお、本明細書における高性能タイヤとは、グリップ性能に特に優れたタイヤであり、競技車両に使用する競技用タイヤをも含む概念である。
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
以下、製造例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。なお、薬品は必要に応じて定法に従い精製を行った。
シクロヘキサン:東京化成(株)製(純度99.5%以上)
スチレン:東京化成(株)製(純度99%以上)
1,3−ブタジエン:東京化成(株)製
N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン:和光純薬工業(株)製
n−ブチルリチウムヘキサン溶液:和光純薬工業(株)製
1,3−ジビニルベンゼンのヘキサン溶液(1.6M):東京化成(株)製
イソプロパノール:和光純薬工業(株)製
2,6−tert−ブチル−p−クレゾール:和光純薬工業(株)製
テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン:和光純薬工業(株)製(下記式で表される化合物(変性剤))
メタノール:関東化学(株)製
製造例1
(重合開始剤の調製)
十分に窒素置換した100ml耐圧製容器に、1,3−ジビニルベンゼンのヘキサン溶液(1.6M)10mlを加え、0℃にてn−ブチルリチウムヘキサン溶液(1.6M)20mlを滴下し、1時間攪拌することで重合開始剤溶液を得た。
製造例2
(ジエン系重合体(A)(変性ジエン系重合体(上記ジエン系重合体(2)に相当))の調製)
十分に窒素置換した1000ml耐圧製容器に、シクロヘキサン600ml、スチレン0.12mol、1,3−ブタジエン0.8mol、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン0.023mmolを加え、更に、製造例1で得られた重合開始剤溶液0.05mlを加えて40℃で攪拌した。3時間後、変性剤であるテトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサンを0.033mmol加えて攪拌した。1時間後、イソプロパノール3mlを加えて重合を停止させた。反応溶液に2,6−tert−ブチル−p−クレゾール1gを添加後、メタノールで再沈殿処理を行い、加熱乾燥させてジエン系重合体(A)(変性された部位(末端など)を2個以上有する変性ジエン系重合体(上記ジエン系重合体(2)に相当))を得た。
製造例3
(ジエン系重合体(B)(変性ジエン系重合体(上記ジエン系重合体(1)に相当))の調製)
十分に窒素置換した1000ml耐圧製容器に、シクロヘキサン600ml、スチレン0.12mol、1,3−ブタジエン0.80mol、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン2.333mmolを加え、更に、製造例1で得られた重合開始剤溶液5mlを加えて40℃で攪拌した。3時間後、変性剤であるテトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサンを3.33mmol加えて攪拌した。1時間後、イソプロパノール3mlを加えて重合を停止させた。反応溶液に2,6−tert−ブチル−p−クレゾール1gを添加後、製造例2と同様の方法で、ジエン系重合体(B)(変性された部位(末端など)を2個以上有する変性ジエン系重合体(上記ジエン系重合体(1)に相当))を得た。
製造例4
(ジエン系重合体(C)の調製)
N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンを13.997mmol、重合開始剤溶液を30ml、テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサンを20mmolに変更した点以外は、製造例3と同様の方法により、ジエン系重合体(C)を得た。
製造例5
(ジエン系重合体(D)の調製)
N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンを0.047mmol、重合開始剤溶液を0.1ml、テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサンを0.067mmolに変更した点以外は、製造例3と同様の方法により、ジエン系重合体(D)を得た。
得られたジエン系重合体(A)〜(D)について下記の評価を行った。なお、ムーニー粘度については、ジエン系重合体(A)のみ評価を行った。
(ムーニー粘度)
JIS K 6300−1「未加硫ゴム−物理特性−第1部:ムーニー粘度計による粘度及びスコーチタイムの求め方」に準じて、ムーニー粘度試験機を用いて、1分間の予熱によって熱せられた100℃の温度条件にて、小ローターを回転させ、4分間経過した時点でのジエン系重合体のムーニー粘度(ML1+4/100℃)を測定した。なお、小数点以下は、四捨五入した。その結果、ジエン系重合体(A)のムーニー粘度は、60であった。
(ビニル含量)
赤外吸収スペクトル分析により、ジエン系重合体のビニル含量を測定した。その結果、ジエン系重合体(A)〜(D)のビニル含量は、それぞれ、57モル%、57モル%、57モル%、57モル%であった。
(数平均分子量(Mn)の測定)
Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)(東ソー(株)製GPC−8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMALTPORE HZ−M)による測定値を基に標準ポリスチレン換算により求めた。その結果、ジエン系重合体(A)〜(D)のMnは、それぞれ、300000、5000、500、150000であった。
以下、実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
ジエン系重合体(A)〜(D):上記製造例2〜5で調製したジエン系重合体(A)〜(D)
SBR:旭化成(株)製のタフデン4850(S−SBR、スチレン含有量:39質量%、ゴム固形分100質量部に対してオイル分50質量部含有)
カーボンブラック:キャボットジャパン(株)製のショウブラックN110(N
2SA:145m
2/g、DBP吸油量:115ml/100g)
シリカ:エボニックデグッサ社製のウルトラジルVN3(N
2SA:175m
2/g)
シランカップリング剤1:エボニックデグッサ社製のSi363(下記式で表されるシランカップリング剤(上記式(4)のR
8=−O−(C
2H
4−O)
5−C
13H
27、R
9=C
2H
5−O−、R
10=−O−(C
2H
4−O)
5−C
13H
27、R
11=−C
3H
6−))
シランカップリング剤2:Momentive社製のNXT−Z45(結合単位Aと結合単位Bとの共重合体(結合単位A:55モル%、結合単位B:45モル%))
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸
アロマオイル:(株)ジャパンエナジー製のダイアナプロセスオイルX140
液状ポリマー:サートマー社製のRICON100(液状SBR、重量平均分子量(Mw):5000)
水酸化アルミニウム:昭和電工(株)製のハイジライトH−43(平均一次粒子径:1μm)
老化防止剤:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン)
ワックス:大内新興化学工業(株)製のサンノックN
硫黄:鶴見化学工業(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤1:大内新興化学工業(株)製のノクセラーCZ(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
加硫促進剤2:大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(N,N’−ジフェニルグアニジン)
実施例及び比較例
表1に示す配合処方にしたがい、バンバリーミキサーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の薬品を165℃で、4分間混練りし、混練り物を得た。次に、オープンロールを用いて、得られた混練り物に硫黄及び加硫促進剤を添加し、80℃で、4分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。更に、得られた未加硫ゴム組成物をトレッド形状に成形して、他のタイヤ部材とはりあわせ、150℃で35分間25kgfの条件下で加硫することにより、試験用カートタイヤ(タイヤサイズ:11×7.10−5)を作製した。
得られた試験用カートタイヤを用いて以下の評価を行った。結果を表1に示す。
(実車評価)
試験用カートに試験用カートタイヤを装着させ、ウェットアスファルト路面の1周約2kmのサーキットコースにて実車走行を8周行ない、この際のウェットグリップ性能(グリップ感、ブレーキ性能、トラクション性能)について、つぎの5段階のフィーリング評価を行なった。
5:非常に良好、4:良好、3:普通、2:やや劣る、1:劣る
また、18周走行後の試験用カートタイヤの摩耗外観より、耐摩耗性に関して以下の基準で評価した。
5:非常に良好、4:良好、3:普通、2:やや劣る、1:劣る
表1より、ゴム成分と、シリカと、水酸化アルミニウムと、特定の数平均分子量を有し、変性された特定のジエン系重合体(1)とを特定量含む実施例は、良好なウェットグリップ性能を維持又は改善しつつ、耐摩耗性を向上できた。