JP2013084457A - 電解質膜の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ネックインやシワ、たわみなどの変形を抑制し、薄膜化が可能な電解質膜の製造方法を提供する。
【解決手段】所定の間隔を空けて配置された2つの第1の接着部材を同一の面に備える第1の支持材と、所定の間隔を空けて配置された2つの第2の接着部材を同一の面に備える第2の支持材とを用意し、第1の支持材に第1の補強材を、第2の支持材に第2の補強材をそれぞれの支持材の備える接着部材の間を跨いで配置する。第1の補強材と第2の補強材とを電解質膜を介して貼り合わせた後、第1の接着部材の所定の接着層から第2の支持材と第2の接着部材と第1の補強材と電解質膜と第2の補強材とを分離し、第1の補強材と電解質膜と第2の補強材とを、第2の接着部材の間で切断する。
【選択図】図9

Description

本発明は、電解質膜の製造方法に関する。
固体高分子形燃料電池(以下、単に「燃料電池」と呼ぶ)は、電解質膜の両面に電極が配置された膜電極接合体(Membrane Electrode Assembly、MEA)を備える。燃料電池に用いられる電解質膜は、イオン伝導性を向上させるために薄膜化される傾向にあるが、薄膜化された電解質膜は、機械的強度が低いため、加工性や取り扱い性などが低下する。そこで、このような薄い電解質膜の搬送を行う場合等には、電解質膜の全面に高剛性のバックアップフィルム等の支持材を密着させることで、加工性や取り扱い性を向上させている。
しかし、このような支持材と電解質膜とを全面で密着させると、支持材から電解質膜を剥離する際に、電解質膜に引っ張り応力がかかることによって電解質膜に膜幅方向の収縮(以下、「ネックイン」ともいう)やシワ、たわみなどの変形が生じることがあった。例えば、特許文献1には、電解質膜の外周部分を補強用面状材によって保持する技術が開示されている。しかし、この技術では、燃料電池の発電の際に生じる電解質膜の膨潤・収縮によるシワなどの発生を抑制することを図っているものの、補強用面状材の中央部分を電解質膜から剥離する際に生じる電解質膜の変形については考慮されていなかった。かかる問題は、固体高分子形燃料電池に限らず、薄い電解質膜を用いた燃料電池、例えば、ダイレクトメタノール形燃料電池などにも共通する問題であった。
特開2010−027227号公報 特開2002−280012号公報
前述の問題を考慮し、本発明が解決しようとする課題は、ネックインやシワ、たわみなどの変形を抑制可能な、電解質膜の製造方法を提供することである。
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
[適用例1]補強材を備える電解質膜の製造方法であって、複数の接着層が第1の接着強度で多層に接着された第1の接着部材が同一面上に所定の間隔を空けて少なくとも2つ配置された第1の支持材と、第2の接着部材が同一面上に所定の間隔を空けて少なくとも2つ配置された第2の支持材と、を用意する第1工程と、前記少なくとも2つの第1の接着部材上に前記第1の接着強度よりも大きな第2の接着強度で該少なくとも2つの第1の接着部材の間を跨いで第1の補強材を接着し、前記少なくとも2つの第2の接着部材上に該少なくとも2つの第2の接着部材の間を跨いで第2の補強材を接着する第2工程と、前記第1の接着部材上の前記第1の補強材と、前記第2の接着部材上の前記第2の補強材とを電解質膜を介して貼り合わせることで、前記電解質膜が、前記第1の補強材および前記第2の補強材によって狭持され、さらに、前記第1の接着部材の接着された前記第1の支持材と前記第2の接着部材の接着された前記第2の支持材とによって狭持された第1の中間部材を生成する第3工程と、前記各第1の接着部材中の所定の接着層間を剥離することで、前記第1の中間部材から、前記第2の支持材と前記少なくとも2つの第2の接着部材と前記第2の補強材と前記電解質膜と前記第1の補強材と前記第1の接着部材の一部とを有する第2の中間部材を分離する第4工程と、前記第2の中間部材の前記少なくとも2つの第2の接着部材の間で、該少なくとも2つの第2の接着部材上の前記第1の補強材と前記電解質膜と前記第2の補強材とを切断する第5工程と、を備える製造方法。
このような構成であれば、第1の支持材上の少なくとも2つの第1の接着部材の間を跨いで第1の補強材を接着し、第2の支持材上の少なくとも2つの第2の接着部材の間を跨いで第2の補強材を接着した後に、電解質膜を介して第1の補強材と第2の補強材とを貼り合わせるので、補強材や電解質膜を搬送する際に生じる変形を抑制することができる。また、第2の接着部材の間で第1の補強材と電解質膜と第2の補強材とを切断するので、ネックインやシワ、たわみなどの変形が抑制され、両面が補強材で補強された、強度の高い電解質膜を得ることができる。
[適用例2]適用例1に記載の製造方法であって、前記第3工程よりも前に、さらに、前記第1の接着部材上に接着された前記第1の補強材の表面から前記第1の接着部材中の前記所定の接着層間まで切り込みを入れる工程を備える、製造方法。このような製造方法であれば、切り込みを入れた箇所において、第1の中間部材から第2の中間部材を容易に分離することができる。
[適用例3]適用例1または2に記載の製造方法であって、前記第4工程において前記第2の中間部材が分離された前記第1の中間部材の少なくとも一部を、前記第1工程で用意する前記第1の支持材として用いる、製造方法。このような製造方法であれば、第2の中間部材が分離された第1の支持材を電解質膜の製造に再利用することができるので、電解質膜の製造にかかるコストを低減することができる。
[適用例4]適用例1から適用例3までのいずれか一の適用例に記載の製造方法であって、前記第5工程において前記第1の補強材と前記電解質膜と前記第2の補強材とが切断された後の前記第2の中間部材から、前記第2の支持材と該第2の支持材上に配置された前記第2の接着部材とを分離し、該分離された前記第2の支持材と該第2の支持材上に配置された前記第2の接着部材とを、前記第1工程で用意する前記第2の支持材として用いる、製造方法。このような製造方法であれば、第2の支持材と第2の接着部材とを電解質膜の製造に再利用することができるので、電解質膜の製造にかかるコストを低減することができる。
[適用例5]適用例1から適用例4までのいずれか一の適用例に記載の製造方法であって、さらに、前記第5工程において切断された前記第1の補強材と前記電解質膜と前記第2の補強材とに電解質を含浸して、イオン伝導性を付与する工程を備える、製造方法。このような製造方法であれば、切断された補強材および電解質膜に電解質を含浸して、イオン伝導性を付与することで燃料電池の電解質膜として利用できる。
本発明は、上述した電解質膜の製造方法の他、種々の形態で実現することが可能である。例えば、電解質膜の製造装置、電解質膜を備えた膜電極接合体や、膜電極接合体を備えた燃料電池、燃料電池を備えた燃料電池システム、燃料電池システムを搭載した車両等の形態で実現することもできる。
本発明の一実施形態としての製造方法により製造された電解質膜を備える燃料電池の概略構成を示す部分断面図である。 補強材を備える電解質膜の製造方法を示すフローチャートである。 ステップS10における第1の支持材の様子を説明するための模式図である。 ステップS10における第2の支持材の様子を説明するための模式図である。 ステップS20における第1の補強材を接着する様子を説明するための模式図である。 ステップS20における第2の補強材を接着する様子を説明するための模式図である。 ステップS40を説明するための模式図である。 ステップS50を説明するための模式図である。 ステップS50において、第1の補強材と第2の補強材とを電解質膜材前駆体を介して貼り合わせた様子を示した図である。 ステップS60を説明するための模式図である。 ステップS70を説明するための模式図である。 ステップS90を説明するための模式図である。 ステップS100を説明するための模式図である。 支持材を再利用する様子を示した模式図である。 電解質膜のネックイン量の測定結果を示した図である。 料電池のサイクル数とセル電圧との関係を示した図である。 第1の接着部材の所定の接着層間まで切り込みを入れない場合の電解質膜の製造方法を示した図である。 電解質膜材前駆体の上から切り込みを入れた場合における、電解質膜の製造方法を示した図である。 第2の接着部材の上で第1の補強材と電解質膜材前駆体と第2の補強材を切断する様子を示した図である。
A.電解質膜を備える燃料電池の構成:
図1は、本発明の一実施形態としての製造方法によって製造された電解質膜を備える、燃料電池100の概略構成を示す部分断面図である。この燃料電池100は、反応ガスとして燃料ガス(例えば水素)と酸化剤ガス(例えば酸素)の供給を受けて発電する固体高分子形燃料電池である。燃料電池100は、複数の単セル30が積層されたスタック構造を有する。
単セル30は、電解質膜10と、電解質膜10の両面にそれぞれ形成されるアノード側電極31aおよびカソード側電極31cと、を有する膜電極接合体20を備える。膜電極接合体20は、一方の面にアノード側ガス拡散層32aを、もう一方の面にカソード側ガス拡散層32cを備えており、アノード側ガス拡散層32aはアノード側セパレータ33aと、カソード側ガス拡散層32cはカソード側セパレータ33cと隣接している。アノード側ガス拡散層32aとアノード側セパレータ33aの間には、燃料ガス流路34aが、カソード側ガス拡散層32cとカソード側セパレータ33cとの間には、酸化剤ガス流路34cが形成されている。
電解質膜10は、湿潤状態で良好なプロトン伝導性を示すフッ素樹脂系のイオン交換膜であり、本実施形態においては電解質膜材11のアノード側の面に第1の補強材12aが配置され、カソード側の面に第2の補強材12cが配置された三層構造を有している。電解質膜10を構成する電解質膜材11は、固体高分子材料としてのフッ素系スルホン酸ポリマーにより形成された高分子電解質膜であり、湿潤状態において良好なプロトン伝導性を有する。本実施形態では、電解質膜材11として、ナフィオン(デュポン社製:登録商標)を用いる。第1の補強材12aおよび第2の補強材12cは、多孔構造のフィルムに電解質が含浸された、プロトン伝導性を有する層であり、電解質膜材11を補強する部材である。本実施形態では第1の補強材12aおよび第2の補強材12cとして、薄膜状に形成されたPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)を用いる。以降、第1の補強材12aおよび第2の補強材12cをまとめて単に補強材12とも記す。
アノード側電極31aおよびカソード側電極31cは、白金や白金合金などの触媒を担持したカーボン粒子と、プロトン伝導性を示す固体高分子形電解質樹脂とを含んでいる。アノード側ガス拡散層32aおよびカソード側ガス拡散層32cは、ガス透過性を有するとともに導電性を有する材料で形成されている。アノード側ガス拡散層32aおよびカソード側ガス拡散層32cの材料としては、例えばカーボンペーパーやカーボンクロスなどの炭素系多孔質体や、金属メッシュ、発泡金属などの金属多孔質体を用いることができる。
アノード側セパレータ33aおよびカソード側セパレータ33cは、ガス遮断性および電子伝導性を有する部材によって形成されている。本実施形態では、アノード側セパレータ33aおよびカソード側セパレータ33cは、カーボンを圧縮してガス不透過とした緻密質カーボンによって形成されている。なお、アノード側セパレータ33aおよびカソード側セパレータ33cは、緻密質カーボン等のカーボン製部材の他に、プレス成形されたステンレス鋼などの金属部材によって形成することができる。
燃料ガス流路34aはアノード側ガス拡散層32aとアノード側セパレータ33aの間に、酸化剤ガス流路34cはカソード側ガス拡散層32cとカソード側セパレータ33cとの間にそれぞれ形成されている。燃料ガス流路34aは水素(H2)ガスの流炉として、酸化剤ガス流路34cは酸素(O2)ガスの流路である。
B.第1実施形態:
B−1.電解質膜の製造方法:
図2は、補強材12を備える電解質膜10の製造方法を示すフローチャートである。以下、図2に示す電解質膜の製造方法の各ステップを、図3〜図11を用いて説明する。なお、ステップS10は本願の第1工程に、ステップS20は本願の第2工程に、ステップS50は本願の第3工程に、ステップS60は本願の第4工程に、ステップS70は本願の第5工程にそれぞれ対応している。
図3および図4は、ステップS10を説明するための模式図であり、図3は第1の支持材4aの様子を、図4は第2の支持材4cの様子を示している。ステップS10では、第1の接着部材3aが同一面上に所定の間隔を空けて少なくとも2つ配置された第1の支持材4a(図3)と、第2の接着部材3cが同一面上に所定の間隔を空けて少なくとも2つ配置された第2の支持材4c(図4)とを用意する。以降、第1の支持材4aと第2の支持材4cをまとめて単に「支持材4」とも記す。また、第1の接着部材3aと第2の接着部材3cをまとめて単に「接着部材3」とも記す。
支持材4は、電解質膜10の備える補強材12よりも剛性が高いという性質を有し、補強材12や電解質膜材11の形状を保持してネックインやシワ、たわみなどの変形なく搬送するための搬送材として用いられる。支持材4は、例えば、フィルム状に形成されたPET(ポリエチレンテレフタラート)、PP(ポリプロピレン)、PEI(ポリエーテルイミド)、PI(ポリイミド)、フッ素樹脂などのバックアップフィルムを用いることができる。
接着部材3は、補強材12と支持材4とを接着させるために用いられる。第1の接着部材3aは、図3に示すように、本実施形態では4層(3aa、3ab、3ac、3ad)の接着層が積層された多層構造を有している。第2の接着部材3cは、図4に示すように、本実施形態では1層の接着層からなる。接着部材3が支持材4上に配置される間隔(一方の接着部材3の最端部から、他方の接着部材3の最端部までをいい、図3に「L1a」、図4に「L1c」で示した長さを意味する。以降、「L1a」と「L1c」をまとめて単に「L1」とも記す。)は、後述するステップS70において、第2の支持材4cから電解質膜10を切断する幅(例えば、図3および図4に「L2」で示した長さ)よりも広い間隔である。本実施形態においては、第1の支持材4a上に配置される第1の接着部材3aの間隔「L1a」と第2の支持材4c上に配置される第2の接着部材3cの間隔「L1c」は同じであるが、それぞれの間隔は、第2の支持材4cから電解質膜10を切断する幅「L2」よりも広い間隔であれば、異なっていてもよい。接着部材3は、例えばシリコーンゴムを基材とした幅数mmから20mmのテープを用いることができる。接着部材3としては、その他、天然ゴムや、アクリル酸エステル共重合体などを基材としたテープを用いてもよい。
接着部材3を同一の面上に備える支持材4を用意した後、ステップS20では、接着部材3上に補強材12を配置して接着する。図5および図6は、ステップS20を説明するための模式図である。図5は第1の支持材4aに第1の接着部材3aの間を跨いで第1の補強材12aを配置して接着する様子を、図6は第2の支持材4cに第2の接着部材3cの間を跨いで第2の補強材12cを配置する様子を示している。接着層3aaと第1の補強材12aは、接着層3aaと接着層3abよりも大きな接着強度(接着している部材を剥離するために必要な強度)で接着している。接着層3aaと接着層3abとの接着強度は本願の「第1の接着強度」に、接着層3aaと第1の補強材12aとの接着強度は本願の「第2の接着強度」に相当する。補強材12は、図5および図6に示すように、接着部材3の間を跨いで配置されるため、接着部材3の間において支持材4と密着していない。また、補強材12は支持材4の高い剛性により、支持材4上に接着部材3を介してシワやたわみなく配置される。
支持材4上に接着部材3の間を跨いで補強材12が配置されると、補強材12は、支持材4により所定の加工位置まで搬送される(ステップS30)。補強材12の搬送は、支持材4の高い剛性により、ネックインやシワ、たわみなどの変形が抑制された状態で行われる。
図7はステップS40を説明するための模式図である。ステップS40では、第1の支持材4a上に配置された第1の接着部材3aの間を跨いで接着された第1の補強材12aの表面側から、第1の接着部材3aの備える4層の接着層(3aa、3ab、3ac、3ad)のうち、接着層3aaと接着層3abとの間まで、カッター9により切り込みを入れる。切り込みは、接着層3aaと接着層3abの間よりも深い層まで(例えば、接着層3acと接着層3adの間まで)入れることもできる。図7に示すように、カッター9にて第1の補強材12aの表面から切り込みを入れる箇所は、第1の接着部材3aの上であるため、切断された第1の補強材12aは、第1の接着部材3aを介して第1の支持材4aに配置されたままになる。
図8はステップS50を説明するための模式図である。ステップS50では、第1の支持材4aの備える第1の接着部材3aの間を跨いで配置された第1の補強材12aと、第2の支持材4cの備える第2の接着部材3cの間を跨いで配置された第2の補強材12cとを、電解質膜材11の前駆体を介して貼り合わせる。電解質膜材11の前駆体(以降、電解質膜材前駆体11fとも記す)とは、イオン伝導性が付与される前の電解質膜材11を意味する。電解質膜材前駆体11fを介しての貼り合わせは、図8に示すように第1の補強材12aと電解質膜材前駆体11fと第2の補強材12cとを同時に貼り合わせるようにしてもよく、あらかじめ第1の補強材12aまたは第2の補強材12c上に電解質膜材前駆体11fを例えば押出成形により配置してから、貼り合わせるようにしてもよい。
図9はステップS50において、第1の支持材4aの備える第1の接着部材3aの間を跨いで配置された第1の補強材12aと、第2の支持材4cの備える第2の接着部材3cの間を跨いで配置された第2の補強材12cとを、電解質膜材前駆体11fを介して貼り合わせた様子を示した図である。第1の支持材4aの備える第1の接着部材3aの間を跨いで配置された第1の補強材12aと、第2の支持材4cの備える第2の接着部材3cの間を跨いで配置された第2の補強材12cとを、電解質膜材前駆体11fを介して貼り合わせた部材を、以降、「第1の中間部材50」ともいう。第1の中間部材50の備える電解質膜材前駆体11fは、図9に示すように、第2の支持材4cから電解質膜10を切断する幅(図9に「L2」で示した長さ)よりも広い幅を覆っている。第1の中間部材50は、第1の支持材4aの備える第1の接着部材3aの間において、第1の補強材12aが第1の支持材4aと密着しておらず、第2の支持材4cの備える第2の接着部材3cの間において、第2の補強材12cが第2の支持材4cと密着していない構造を有している。
図10はステップS60を説明するための模式図である。ステップS60では、接着層3aaと接着層3abとの間で、第1の中間部材50から、第2の支持材4cと第2の接着部材3cと第2の補強材12cと電解質膜材前駆体11fと第1の補強材12aと第1の接着部材3aの一部と、を分離する。分離した第2の支持材4cと第2の接着部材3cと第2の補強材12cと電解質膜材前駆体11fと第1の補強材12aと第1の接着部材3aの一部を、以降、「第2の中間部材60」ともいう。具体的には、本実施形態においては、第1の支持材4a上の第1の接着部材3aのうち、ステップS40において切り込みが入れられた接着層3aaの内側において、第1の中間部材50から第2の中間部材60を分離する。図10に示すように、分離後の第2の支持材4c上には、第2の接着部材3cを跨いで第2の補強材12cが、補強材12c上に電解質膜材前駆体11fが、電解質膜材前駆体11f上に第1の補強材12aが配置されており、第1の補強材12aの両端には、ステップS40において切り込みの入れられた接着層3aaの一部が残存している。一方、第1の支持材4a上には、接着層3aaの一部と、接着層3ab、3ac、3adとが配置されており、接着層3aaの一部の上には第1の補強材12aの一部が残存している。
図11はステップS70を説明するための模式図である。ステップS70では、ステップS60において第1の中間部材50から分離された第2の中間部材60の備える第2の接着部材3cの間で、第1の補強材12aと電解質膜材前駆体11fと第2の補強材12cとを、例えばカッター9で切断する。図11に示すように、第1の補強材12aと電解質膜材前駆体11fと第2の補強材12cからなる積層体を切断する箇所は、第2の接着部材3cの間において、第2の支持材4cと密着していない箇所である。また、その切断する幅は、図3、図4および図9において「L2」で示した幅である。したがって、切断された第1の補強材12aと電解質膜材前駆体11fと第2の補強材12cを備える積層体は、図11に示すように、第1の補強材12aに第1の接着部材3aが接着しておらず、第2の補強材12cに第2の接着部材3cが接着していない積層体である。なお、第1の補強材12aと電解質膜材前駆体11fと第2の補強材12cを備える積層体は、図11に示すように切断した後に第2の支持材4cから分離されても、電解質膜材前駆体11fがある程度の粘着力を有しているので、積層された形状を保つ程度に一体化している。
以上のステップS10からステップS70を行えば、第1の補強材12aと電解質膜材前駆体11fと第2の補強材12cとが積層された電解質膜10を得ることができる。本実施形態において得られる第1の補強材12aと電解質膜材前駆体11fと第2の補強材12cとが積層された電解質膜10は、第2の支持材4c上の2箇所の第2の接着部材3cの間において図3、図4および図9で「L2」で示した幅を、支持材4と密着していない箇所において切断するために、図11に示すように、接着部材3および支持材4を備えていない。
次に、上記ステップS70で得られた補強材12および電解質膜材前駆体11fが積層された電解質膜10に電解質を含浸したのち、加水分解によりイオン伝導性を付与する(ステップS80)。電解質の含浸は、例えば、第1の補強材12aと電解質膜材前駆体11fと第2の補強材12cとが積層された電解質膜10に電解質材を含む溶液を塗布した後、搬送用ロール上で熱を加えることにより行う。電解質としては、例えばフッ素系スルホン酸ポリマーなどのフッ素系固体高分子電解質を用いることができる。その後、電解質を含浸した電解質膜10にイオン伝導性を付与する。イオン伝導性は、例えば、まずアルカリ溶液(NaOH溶液)に、電解質を含浸した第1の補強材12aと電解質膜材前駆体11fと第2の補強材12cとが積層された電解質膜10を浸漬して、補強材12および電解質膜材前駆体11fが有する−SO2F基を−SO3Na基に変性させる。その後、それらを水洗して酸性溶液(H2SO4溶液およびH2NO3溶液)に浸漬して−SO3Na基を−SO3H基へ変性させることによって、付与することができる。
ステップS80を行えば、電解質が含浸され、イオン伝導性が付与された電解質膜10を得ることができる。この電解質膜10の両面に、アノード側電極31a、カソード側電極31cを形成することにより、図1に示す膜電極接合体20を得ることができる。
B−2.支持材の再利用:
図12は、図2のフローチャートに示されたステップS90について説明するための模式図である。ステップS90では、ステップS60において第2の中間部材60が分離された後の第1の中間部材50から、第1の接着部材3aの一部と第1の補強材12aの一部を剥離する。具体的には、本実施形態においては、上記ステップS60において第1の支持材4a上に残存した接着層3aaと、接着層3aa上の第1の補強材12a(以降、第1の支持材4a上に残存した接着層3aaと第1の補強材12aをまとめて「第1の端材」ともいう)を第1の支持材4a上から剥離する。第1の端材が剥離されると、第1の支持材4a上には接着層3ab、3acおよび3adのみが残るため、第1の端材が剥離された第1の支持材4aを上記ステップS10で用いる第1の支持材4aとして再利用することができる。なお、ステップS90では、接着層3aaが第1の補強材12aを第1の支持材4a上にネックインやシワ、たわみなく配置するために十分な面積を有していれば、第1の補強材12aのみを第1の支持材4a上から剥離して、接着層3aaの一部と接着層3ab、3acおよび3adを備える第1の支持材4aを上記ステップS10で用いる第1の支持材4aとして再利用してもよい。
図13は、図2のフローチャートに示されたステップS100について説明するための模式図である。ステップS100では、補強材12および電解質膜材前駆体11fが切断された後の第2の中間部材60から、第2の支持材4cと第2の接着部材3cを分離する。具体的には、本実施形態においてはステップS70において電解質膜10を切断した後に図13に示すように第2の支持材4c上に残存した接着層3aa、第1の補強材12a、電解質膜材前駆体11f、第2の補強材12c(以降、第2の支持材4c上に残存した接着層3aa、第1の補強材12a、電解質膜材前駆体11f、第2の補強材12cをまとめて「第2の端材」ともいう)を、第2の接着部材3cの上から剥離する。第2の端材が剥離されると、第2の支持材4c上には第2の接着部材3cのみが残るため、第2の端材が剥離された第2の支持材4cを上記ステップS10で用いる第2の支持材として再利用することができる。なお、ステップS90とステップS100を行う順序は、図2のフローチャートに示された順序でなくてもよい。ステップS100を行った後にステップS90を行ってもよいし、ステップS90とステップS100を同時に行ってもよい。
図14は、ステップS10からステップS100を行うことで支持材4を再利用する様子を示した模式図である。上記のような電解質膜10の製造方法であれば、図14に示すように電解質膜10を製造する工程で第1の接着部材3aを備える第1の支持材4aと、第2の接着部材3cを備える第2の支持材4cをベルトコンベアやラインコンベアで循環させて電解質膜10を製造することができるため、第1の接着部材3aを備える第1の支持材4aと、第2の接着部材3cを備える第2の支持材4cをステップS10において毎回用意する必要がなくなり、作業性を向上することができる。また、比較的高価な第1の支持材4aおよび第2の支持材4cの2つの支持材4を再利用して電解質膜10を製造するため、電解質膜10の製造コストを低減することができる。具体的には、ステップS90において、第1の支持材4a上に残存した接着層3aaと第1の補強材12a(第1の端材)が剥離された、接着層3ab、3ac、3adを備える第1の支持材4aは、ステップS10に用いる第1の支持材4aとして再利用される。第1の接着部材3aは接着層3aa、3ab、3ac、3adの4層からなるので、上記のようにステップS90において接着層3aaを含む第1の端材を剥離したとしても、あらたな接着層を第1の支持材4a上に配置することなく、第1の支持材4aが備える残りの接着層3ab、3ac、3adを利用して、電解質膜10を製造することができる。第1の接着部材3aが第1の支持材4a上から全て剥離された場合は、ステップS10においてあらたに接着層を多層に配置すればよいので、第1の支持材4aを繰り返し再利用することができる。なお、第1の支持材4a上にあらたに接着層を配置するタイミングは、第1の支持材4a上から第1の接着部材3aが全て剥離された後でなくてもよく、任意のタイミングを採用することができる。例えば、接着層3aaおよび接着層3abを剥離した後に、あらたな接着層3aaおよび接着層3abを配置してもよい。
一方、第2の支持材4cは、ステップS100において第2の接着部材3c上の第2の端材を剥離して、ステップS10で用いる第2の支持材として再利用することができる。したがって、第2の接着部材3cを備える第2の支持材4cをステップS10において毎回用意する必要がない。なお、第2の接着部材3cの接着力が、第2の補強材12cを接着するために十分な接着力でなくなった場合には、ステップS100において第2の支持材4cから十分な接着力でなくなった第2の接着部材3cをいったん剥離した後に、その第2の支持材4cにあらたな第2の接着部材3cを配置して循環させることもできる。
B−3.実験結果:
図15は、本実施形態において作製した電解質膜10と比較対象の電解質膜とのネックイン量の測定結果を示した図である。比較対象の電解質膜は支持材4と全面で密着した電解質膜であり、次のように作製した。まず、第1の支持材4a上にフィルム状の第1の接着部材3aを全面に貼り合わせて、その上に直接第1の補強材12aを配置した。同様に、第2の支持材4c上にフィルム状の第2の接着部材3cを全面に貼り合わせて、その上に直接第2の補強材12cを配置した。次に、第1の支持材4a上の第1の補強材12aと、第2の支持材4c上の第2の補強材12cとを、電解質膜材前駆体11fを介して重ね合わせて、図3、図4および図9で示した幅「L2」と同じ幅をカッター9で切断し、電解質膜材前駆体11fの両面に補強材12が、補強材12の両面にフィルム状の接着部材3が、接着部材3の両面に支持材4が貼り合わされた積層体を作製した。最後に、この積層体から、第1の接着部材3aおよび第1の支持材4aと、第2の接着部材3cおよび第2の支持材4cとを剥離して、第1の補強材12aと電解質膜材前駆体11fと第2の補強材12cが貼り合わされた電解質膜を得た。このようにして作製した電解質膜を、比較対象の電解質膜とした。電解質膜のネックイン量は、それぞれの電解質膜をカッター9で切断する幅(カット幅)を基準として、作製後の電解質膜の幅を測定することにより、基準に対して収縮した割合を以下の式(1)にて算出した。
((カット幅−作製後の電解質膜の幅)/カット幅)×100 …(1)
図15に示すように、比較対象の電解質膜のネックイン量は約15%であるのに対して、本実施形態の電解質膜10のネックイン量は1%未満である。この結果から、本実施形態において作製した電解質膜10は、比較対象の電解質膜よりもネックイン量が大幅に減少することがわかる。
図16は、本実施形態において作製した電解質膜10を備える燃料電池100を「本実施形態品」、比較対象の電解質膜を備える燃料電池を「比較対象品」として、それぞれの燃料電池のサイクル数とセル電圧との関係を示した図である。サイクル数とは、燃料電池の高温状態と低温状態を1サイクルとした場合の繰り返し回数であり、具体的には、燃料電池の起動と停止を1サイクルとした場合の繰り返し回数を意味する。この実験例では、−20℃から80℃までの温度範囲で冷熱サイクルを繰り返しながら、出力電流を0.8A/cm2としてセル電圧を測定した。図16に示すように、本実施形態の電解質膜を用いた燃料電池100は、比較対象の電解質膜を備える燃料電池と比べて、サイクル数が増加した場合におけるセル電圧の低下が抑制されていた。
燃料電池の高温状態と低温状態を繰り返すと電解質膜も収縮・膨潤を繰り返すが、電解質膜がネックインやシワ、たわみなどにより変形している箇所は強度が弱いことから、そのような箇所においては電解質膜が劣化してクロスリークが生じることにより、セル電圧が低下しやすい。本実施形態の電解質膜10を用いた燃料電池は、比較対象の電解質膜を用いた燃料電池と比較して電解質膜のネックイン量が少ないために、サイクル数が増加しても電解質膜の劣化が少なく、サイクル数の増加に伴うセル電圧の低下が抑制されたと考えられる。
C.第2実施形態:
第1実施形態においては、ステップS40において切り込みを入れた接着層3aaと接着層3abとの間において、第1の中間部材50から第2の中間部材60を分離していたが、切り込みを入れずに、第2の中間部材60を分離することもできる。
図17は、第1の接着部材3aの所定の接着層間まで切り込みを入れない場合の電解質膜10の製造方法を示した図である。このような場合において、図17に示すように、第1の接着部材3aをカッター9で切断することなく貼り合わせる(ステップS50a)。すると、第1の接着部材3aを備える第1の補強材12aと、電解質膜材前駆体11fと、第2の補強材12cとが第2の接着部材3cの間を跨いで配置された第2の支持材4cと、接着層3ab、3ac、3adを備える第1の支持材4aとに分離することができる(ステップS60a)。これは、接着層3aaと第1の補強材12aとの接着強度が、接着層3aaと接着層3abとの接着強度よりも大きいためである。次に、第2の支持材4c上の第2の接着部材3cの間を跨いで配置された第2の補強材12cと電解質膜材前駆体11fと第1の補強材12aとを、例えばカッター9で切断すれば、補強材12と電解質膜材前駆体11fが積層された電解質膜10を得ることができる(ステップS70a)。ステップS60aにおいて接着層3aaを備える第1の補強材12aと、電解質膜材前駆体11fと、第2の補強材12cとが第2の接着部材3cの間を跨いで配置された第2の支持材4cと分離された第1の支持材4aは、接着層3ab、3ac、3adを備えており、第1の端材を有していない。したがって、第1の支持材4aは、そのまま上記ステップS10で用いる第1の支持材4aとして再利用することができる(ステップS90a)。第2の支持材4c上に残存した接着層3aa、第1の補強材12a、電解質膜材前駆体11f、第2の補強材12cを、第2の接着部材3cから剥離すれば、第2の接着部材3cを備える第2の支持材4cを上記ステップS10で用いる第2の支持材4cとして再利用することができる(ステップS100a)。
D.第3実施形態:
第1実施形態においては、ステップS40において第1の支持材4aの備える第1の接着部材3aの間を跨いで配置された第1の補強材12aの表面側から接着層3aaと3abとの間までを、カッター9にて切断したが、第1の補強材12aの上にさらに電解質膜材前駆体11fを重ね合わせた後にカッター9にて切断してもよい。
図18は電解質膜材前駆体11fの上から接着層3aaと3abとの間まで切り込みを入れた場合における、電解質膜10の製造方法を示した図である。このような場合において、電解質膜材前駆体11fをカッター9で切断した後に、第1の支持材4a上に配置され、カッター9にて切断された電解質膜材前駆体11fと、第2の支持材4c上に配置された第2の補強材12cとを貼り合わせる(ステップS50b)。その後、接着層3aaを備える第1の補強材12aと、電解質膜材前駆体11fと、第2の補強材12cとが第2の接着部材3cの間を跨いで配置された第2の支持材4cと、電解質膜材前駆体11fの一部を備える第1の補強材12aと、接着層3aaの一部と、接着層3ab、3ac、3adとを備える第1の支持材4aに分離することができる(ステップS60b)。第2の支持材4c上の第2の接着部材3cの間を跨いで配置された第2の補強材12cと電解質膜材前駆体11fと第1の補強材12aとを、例えばカッター9で切断すれば、補強材12と電解質膜材前駆体11fが積層された電解質膜10を得ることができる(ステップS70b)。第1の支持材4aの備える接着層3ab上には、接着層3aaと第1の補強材12aと電解質膜材前駆体11fが残存しているので、これらを剥離すれば、接着層3ab、3ac、3adを備える第1の支持材4aを上記ステップS10で用いる第1の支持材4aとして再利用することができる(ステップS90b)。第2の支持材4cの備える第2の接着部材3c上には、上記の実施形態Bと同じように、接着層3aa、第1の補強材12a、電解質膜材前駆体11f、第2の補強材12cを第2の接着部材3cが残存するためこれらを第2の接着部材3cから剥離して、上記ステップS10で用いる第2の支持材として再利用することができる(ステップS100b)。
E.まとめ:
以上説明したように、上述した種々の実施形態における電解質膜10の製造方法によれば、補強材12および電解質膜材前駆体11fは、支持材4を用いて搬送されるので、搬送中のネックインやシワ、たわみなどの変形が抑制された電解質膜10を製造することができる。電解質膜10は、分離された第2の支持材4cが備える第2の接着部材3cの間を跨いで配置された第1の補強材12aと電解質膜材前駆体11fと第2の補強材12cとを、第2の接着部材3cの間で切断して作製される。したがって、電解質膜10から支持材4を剥離する際に生じる電解質膜10のネックインやシワ、たわみなどの変形を抑制することができる。その結果、本実施形態の電解質膜10を備える燃料電池は、高温状態と低温状態を繰り返しても、セル電圧の低下が抑制され、耐久性が高い。また、第1の補強材12aと第2の補強材12cとを電解質膜材前駆体11fを介して貼り合わせる際に、第1の補強材12aおよび第2の補強材12cをそれぞれ第1の支持材4aおよび第2の支持材4cで保持したまま貼り合わせることができるので、補強材12が支持材4に支持されていない時間を減少することができ、補強材12に生じるネックインやシワ、たわみを抑制することができる。したがって、電解質膜10の製造ラインにおいて、補強材12を供給する箇所などを所望の箇所にすることが可能になるので、電解質膜10の製造ラインの設計の自由度を高めることができる。さらに、上述した種々の実施形態における電解質膜10の製造方法は、比較的高価な支持材4を電解質膜10の製造に再利用することが可能である。そのため、電解質膜10の製造コストを低減することができる。よって、電解質膜の品質の向上と、設計の自由度の向上と、製造コストの低減とを同時に達成することができる。
F.変形例:
以上、本発明の種々の実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の構成を採ることができる。例えば、以下のような変形が可能である。
上述した電解質膜の製造方法では、電解質膜材11として、ナフィオンを用いたが、電解質膜材11はこれに限定されず、例えば、アシプレックス(登録商標)、フレミオン(登録商標)等の他のフッ素系スルホン酸膜を用いることができる。また、電解質膜材11として、フッ素系ホスホン酸膜、フッ素系カルボン酸膜、フッ素炭化水素系グラフト膜、炭化水素系グラフト膜、芳香族膜等が用いられてもよい。
上述した電解質膜の製造方法では、補強材12として、PTFEフィルムを用いたが、補強材12はこれに限定されず、耐酸性、アルカリ性の素材で形成することができ、例えば、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)などのフッ素系樹脂で形成することができる。また、補強材12は、電解質膜材11を部分的に補強する形状(例えば、電解質膜材11を部分的に補強する格子状の形状や、電解質膜の外周部を補強する形状)であってもよい。
上述した電解質膜の製造方法におけるステップS10では、図3および図4に示すように所定の間隔を空けて2つの接着部材3を備える支持材4を用意したが、支持材4が備える接着部材3の数はこれに限らない。例えば、4つの接着部材3を矩形状に備える支持材4を用意することもできる。
上述した電解質膜の製造方法におけるステップS10では、第2の支持材4cが備える第2の接着部材3cは1層のみであったが、第2の接着部材3cは、第1の支持材4aが備える第1の接着部材3aのように接着層が積層された多層構造であってもよい。また、ステップS20では、第1の支持材4aの備える第1の接着部材3a上に第1の補強材12aを、第2の支持材4cの備える第2の接着部材3c上に第2の補強材12cを設置したが、第1の補強材12aもしくは第2の補強材12cの代わりに電解質膜材前駆体11fを設置してもよい。そうすることで、補強材12で片面が補強された電解質膜10を作製することができる。
上述した電解質膜の製造方法におけるステップS40では、カッター9にて接着層3aaと接着層3abの間まで切り込みを入れることで、第1の中間部材50から接着層3aaと接着層3abの間で、接着層3aaの切り込みが入れられた箇所の内側において、第2の中間部材60を容易に分離したが、ステップS40は省略しても、同じように容易に分離することができる。例えば、ステップS10において、あらかじめミシン目のような点線の入った接着層が積層された第1の接着部材3aを第1の支持材4a上に配置すれば、ミシン目の箇所において、第1の中間部材50から、第2の中間部材60を分離することができる。また、例えば、ステップS10において、第1の支持材4a上の積層された複数の接着層の接着強度を、接着層ごとに異ならせることで、接着強度の異なる箇所において、第1の中間部材50から第2の中間部材60を分離してもよい。接着強度を接着層ごとに異ならせる方法は、接着層の材質を変更したり、接着面積を増減させたりすることによって行うことができる。接着面積の増減は、接着層自体の大きさによっても調節できるが、接着層の表面粗さによっても調節することができる。
上述した電解質膜の製造方法におけるステップS70では、第1の補強材12aと電解質膜材前駆体11fと第2の補強材12cからなる積層体を、第2の接着部材3cの間でかつ第2の接着部材3cに接していない箇所において切断したが、切断箇所は、一方の第2の接着部材3cの最端部から、他方の第2の接着部材3cの最端部までであれば、第2の接着部材3cの上であってもかまわない。図19は、第2の接着部材3cの上で第1の補強材12aと電解質膜材前駆体11fと第2の補強材12cを切断する様子を示した図である。このような場合でも、上述した比較対象の電解質膜の製造方法のように第2の補強材12cの全面に第2の接着部材3cや第2の支持材4cが貼りあわされていないので、第2の接着部材3cを剥離する際に生じるネックインやシワ、たわみなどの変形を抑制することができる。なお、この場合、第2の接着部材3cと第2の支持材4cの接着力の方が、第2の接着部材3cと第2の補強材12cとの接着力よりも大きいと、第2の接着部材3cは第2の支持材4c上に残るので、図14に示すように第2の接着部材3cを備える第2の支持材4cを電解質膜10の製造に容易に再利用することができる。
上述した電解質膜の製造方法におけるステップS70では、第1の補強材12aと電解質膜材前駆体11fと第2の補強材12cからなる積層体を切断するカッター9の先端の侵入深さは、第2の支持材4cにカッター9が触れることがない深さであったが、カッター9の先端の侵入深さは第2の支持材4cの剛性を保つことができる程度の深さであれば、第2の支持材4cに触れる深さであってもよい。このような深さで第2の支持材4c上の補強材12と電解質膜材前駆体11fを備える積層体を切断しても、第2の支持材4cの再利用が可能である。
3a…第1の接着部材
3c…第2の接着部材
3aa、3ab、3ac、3ad、…接着層
4a…第1の支持材
4c…第2の支持材
9…カッター
10…電解質膜
11…電解質膜材
11f…電解質膜材前駆体
12a…第1の補強材
12c…第2の補強材
20…膜電極接合体
30…単セル
31a…アノード側電極
31c…カソード側電極
32a…アノード側ガス拡散層
32c…カソード側ガス拡散層
33a…アノード側セパレータ
33c…カソード側セパレータ
34a…燃料ガス流路
34c…酸化剤ガス流路
50…第1の中間部材
60…第2の中間部材
100…燃料電池
L1a、L1c…接着層が支持材上に配置される間隔
L2…支持材から電解質膜を切断する幅

Claims (5)

  1. 補強材を備える電解質膜の製造方法であって、
    複数の接着層が第1の接着強度で多層に接着された第1の接着部材が同一面上に所定の間隔を空けて少なくとも2つ配置された第1の支持材と、第2の接着部材が同一面上に所定の間隔を空けて少なくとも2つ配置された第2の支持材と、を用意する第1工程と、
    前記少なくとも2つの第1の接着部材上に前記第1の接着強度よりも大きな第2の接着強度で該少なくとも2つの第1の接着部材の間を跨いで第1の補強材を接着し、前記少なくとも2つの第2の接着部材上に該少なくとも2つの第2の接着部材の間を跨いで第2の補強材を接着する第2工程と、
    前記第1の接着部材上の前記第1の補強材と、前記第2の接着部材上の前記第2の補強材とを電解質膜を介して貼り合わせることで、前記電解質膜が、前記第1の補強材および前記第2の補強材によって狭持され、さらに、前記第1の接着部材の接着された前記第1の支持材と前記第2の接着部材の接着された前記第2の支持材とによって狭持された第1の中間部材を生成する第3工程と、
    前記各第1の接着部材中の所定の接着層間を剥離することで、前記第1の中間部材から、前記第2の支持材と前記少なくとも2つの第2の接着部材と前記第2の補強材と前記電解質膜と前記第1の補強材と前記第1の接着部材の一部とを有する第2の中間部材を分離する第4工程と、
    前記第2の中間部材の前記少なくとも2つの第2の接着部材の間で、該少なくとも2つの第2の接着部材上の前記第1の補強材と前記電解質膜と前記第2の補強材とを切断する第5工程と、
    を備える製造方法。
  2. 請求項1に記載の製造方法であって、
    前記第3工程よりも前に、さらに、前記第1の接着部材上に接着された前記第1の補強材の表面から前記第1の接着部材中の前記所定の接着層間まで切り込みを入れる工程を備える、製造方法。
  3. 請求項1または2に記載の製造方法であって、
    前記第4工程において前記第2の中間部材が分離された前記第1の中間部材の少なくとも一部を、前記第1工程で用意する前記第1の支持材として用いる、製造方法。
  4. 請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の製造方法であって、
    前記第5工程において前記第1の補強材と前記電解質膜と前記第2の補強材とが切断された後の前記第2の中間部材から、前記第2の支持材と該第2の支持材上に配置された前記第2の接着部材とを分離し、該分離された前記第2の支持材と該第2の支持材上に配置された前記第2の接着部材とを、前記第1工程で用意する前記第2の支持材として用いる、製造方法。
  5. 請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の製造方法であって、
    さらに、前記第5工程において切断された前記第1の補強材と前記電解質膜と前記第2の補強材とに電解質を含浸して、イオン伝導性を付与する工程を備える、製造方法。
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