JP2013075463A - 赤外線反射フィルム及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】高い赤外線反射性と高い可視光透過性を持つ積層型の赤外線反射フィルムの製造方法を提供する。
【解決手段】光透過性基材上に第1層を形成するための酸化チタンを含有し、さらにチタン系架橋剤を含む第1層形成用溶液、及び、その第1層形成用溶液上に第1層よりも屈折率が小さい第2層を形成するための化合物を含有し、さらに前記チタン系架橋剤と反応する高分子化合物を含む第2層形成用溶液、の少なくとも2種の溶液を準備する第1工程と、第1層形成用溶液及び第2層形成用溶液を重ねると共に、両溶液の界面に第1層形成用溶液が含むチタン系架橋剤と第2層形成用溶液が含む高分子化合物との反応生成物を生成させる第2工程と、第2工程で重ねられた両溶液を光透過性基材上に塗布する第3工程と、光透過性基材上に塗布された両溶液及び反応生成物を乾燥する第4工程とを有する赤外線反射フィルムの製造方法により、上記課題を解決する。
【選択図】図1

Description

本発明は、赤外線反射フィルム及びその製造方法に関する。さらに詳しくは、多層同時形成法で作製する赤外線反射フィルムにおいて、層と層との境界面を明確に分離して高い赤外線反射性と高い可視光透過性を持つ赤外線反射フィルム及びその製造方法に関する。
赤外線反射フィルムは、赤外線を遮断して室内温度の上昇を防ぐ目的で、建物や乗り物(例えば、自動車、電車、バス、航空機、船舶等)の窓ガラスに貼着されて使用されるほか、農業ハウス用としても使用される。建物内や乗り物内に入射する赤外線を遮蔽することができるので、建物内や乗り物内等の温度上昇を防ぎ、夏場の冷房に費やすエネルギーを削減することが可能になる。そうした赤外線フィルムは、可視光を透過するために室内に明かりを入れることもできるし、赤外線反射フィルムを通して室内から室外を視認することもできる。しかし、高い赤外線反射性と高い可視光透過性を両立させるのは容易なことではなく、赤外線反射性の高いフィルムは、低透明性で重くなる傾向があり、一方、可視光透過性の高いフィルムは、赤外線反射性が低い傾向にある。さらに、赤外線反射フィルムは、通常、長期間にわたって日光を浴び続けるため、耐久性に優れたものが求められている。
そこで、高い赤外線反射性及び高い可視光透過性を両立し、且つ生産性良く安価に製造できる赤外線反射フィルムが求められており、例えば、特許文献1には、塗布と乾燥処理を繰り返すタンデム塗布方式を利用して製造した赤外線反射フィルムが提案されている。しかし、特許文献1で提案されている赤外線反射フィルムの製造方法は、各屈折率層の塗布及び乾燥を層の数だけ繰り返すことになるため、生産性は必ずしも高くならず、さらに、得られた赤外線反射フィルムは、赤外線の反射特性は殆どが正反射性であり、外壁等に適用した際、該赤外線反射フィルムへ照射された太陽光線中の赤外線がそのまま地面に正反射され、路面温度上昇や隣家の局所的な温度上昇等の悪影響を及ぼす傾向にあるという難点がある。
また、特許文献2には、透明な基板上に、屈折率の異なる薄膜層をゾルゲル法により6層以上積層させた光学多層膜を有する熱線遮断材が提案されている。しかし、特許文献2で提案された熱線遮断材の製造は、生産性が十分ではなく、製造コスト面で問題がある。また、特許文献3には、同様の光学多層膜を真空蒸着法で成膜した紫外線熱線反射多層膜が提案されている。特許文献3で提案された紫外線熱線反射多層膜の製造は、物理的成膜手段で行われるため各層の成膜精度は高いものの、生産性が十分ではなく、製造コスト面で問題がある。
一方、写真フィルム等の塗工プロセスとして、走行する基材上に1回の塗布プロセスにより多層を形成する多層塗工方式が知られている。この多層塗工方式は、例えば図1に示すように、塗布ヘッド1における複数の狭いスリットから塗工液A及びBを押し出し、傾斜したスライド面2上を重力の作用により自然流下させ、重なりあった塗工液A及びBをロール3によって、走行する基材4上に転移させて多層塗工膜を形成するものである。このような多層塗工方式を採用した方法としては、天然物由来のゼラチンをバインダーとするハロゲン化乳化剤を同時多層塗布し、その後冷却する方法が知られている(特許文献4)。この方法は、ゼラチンのゾル−ゲル変換特性を利用して多層膜をゲル化させて超高粘状態にし、粘性の違いを利用して層間の混合を起こり難くした上で熱風乾燥等により塗膜(塗工膜)を形成するものである。
特開平10−286900号公報 特開2003−266578号公報 特開2007−65232号公報 特開昭58−199074号公報
しかしながら、特許文献4で提案された多層塗工膜の製造方法は、粘性の違いを利用して積層構造を確保するために、層と層との界面が明確ではなく、例えば界面での反射現象を利用する赤外線反射フィルムの製造に適用した場合、赤外線の反射性能を十分に確保できないという問題がある。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、生産性がよく、且つ、高い赤外線反射性と高い可視光透過性を持つ積層型の赤外線反射フィルム及びその製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するための本発明に係る赤外線反射フィルムの製造方法は、光透過性基材上に第1層を形成するための酸化チタンを含有し、さらにチタン系架橋剤を含む第1層形成用溶液、及び、該第1層形成用溶液上に前記第1層よりも屈折率が小さい第2層を形成するための化合物を含有し、さらに前記チタン系架橋剤と反応する高分子化合物を含む第2層形成用溶液、の少なくとも2種の溶液を準備する第1工程と、前記第1層形成用溶液及び前記第2層形成用溶液を重ねると共に、該両溶液の界面に前記第1層形成用溶液が含むチタン系架橋剤と前記第2層形成用溶液が含む高分子化合物との反応生成物を生成させる第2工程と、前記第2工程で重ねられた前記両溶液を前記光透過性基材上に塗布する第3工程と、前記光透過性基材上に塗布された前記両溶液及び前記反応生成物を乾燥する第4工程と、を有することを特徴とする。
この発明によれば、第1層形成用溶液及び第2層形成用溶液を重ねる第2工程で、両溶液の界面に第1層形成用溶液が含むチタン系架橋剤と第2層形成用溶液が含む高分子化合物との反応生成物が生成するので、その反応生成物が、第1層形成用溶液と第2層形成用溶液との混合を防ぐ。さらに、その反応生成物が第4工程で乾燥されることにより、その反応生成物が第1層と第2層とを明確に分離して赤外線反射性能を高める。さらに、第1層内に未反応のチタン系架橋剤が残っても第1層の屈折率への影響が小さく、また、第2層内に未反応の高分子化合物が残っても第2層の屈折率の低下の影響が小さい。この方法で製造された赤外線反射フィルムは、第1層と第2層との界面に生成した反応生成物がその界面を明確に分離するので、優れた赤外線反射性を示すと共に、その反応生成物の存在によって赤外線の拡散反射性が高まる。その結果、例えば、照射された太陽光線中の赤外線がそのまま地面に正反射されるのを低減でき、路面温度上昇や隣家の局所的な温度上昇等の悪影響を低減できる等の効果を奏する。
本発明に係る赤外線反射フィルムの製造方法において、前記第2層形成用溶液に含まれる高分子化合物として合成高分子化合物を用いる。
この発明によれば、ポリビニルアルコール等の合成高分子化合物を第2層形成用溶液に含まれる高分子化合物として用いたので、品質管理が容易になる。さらに、ポリビニルアルコール等の合成高分子化合物は層固定用として働くだけではなく、チタン等のイオンと界面で架橋反応して皮膜化し、第1層と第2層との界面を保護する働きもするので、高い界面反射率を安定して得ることができる。
本発明に係る赤外線反射フィルムの製造方法において、前記第4工程で乾燥した反応生成物が、前記チタン系架橋剤を構成するチタン元素を有する基が共有結合してなるポリマー層である。
この発明によれば、乾燥した後の反応生成物はチタン系架橋剤を構成するチタン元素を有する基が共有結合してなるポリマー層であるので、そのポリマー層は強度に優れ、さらに、第1層と第2層との密着性も優れた赤外線反射フィルムを製造できる。
上記課題を解決するための本発明に係る赤外線反射フィルムは、光透過性基材と、該光透過性基材上に設けられた第1層と、該第1層上に設けられて該第1層よりも屈折率が小さい第2層と、前記第1層と前記第2層との間に設けられたポリマー層とを少なくとも有し、前記第1層が酸化チタン層であり、前記ポリマー層がチタン元素を有する基が共有結合してなる層であることを特徴とする。
この発明によれば、第1層と第2層との間にポリマー層が設けられており、そのポリマー層が、チタン元素を有する基が共有結合してなる層であるので、第1層と第2層とを明確に分離でき、赤外線反射性に優れたものとなる。そうしたポリマー層は、それ自体の強度が優れ、さらに第1層と第2層との密着性をも向上させる。また、そのポリマー層の存在によって赤外線の拡散反射性が高まる。その結果、例えば、照射された太陽光線中の赤外線がそのまま地面に正反射されるのを低減でき、路面温度上昇や隣家の局所的な温度上昇等の悪影響を低減できる等の効果を奏する。
本発明に係る赤外線反射フィルムにおいて、波長1000nmの光の入射角5度における正反射光の強度が、全反射光の強度の5%以下である。
本発明に係る赤外線反射フィルムの製造方法によれば、反応生成物が第1層形成用溶液と第2層形成用溶液との混合を防ぎ、さらに、乾燥後の反応生成物が第1層と第2層とを明確に分離し、その反応生成物の作用により赤外線反射性能が優れたものとなる赤外線反射フィルムを生産性よく低コストで製造できる。
本発明に係る赤外線反射フィルムによれば、優れた赤外線反射性を示すと共に、その反応生成物の存在によって赤外線の拡散反射性が高まる。さらに、第1層と第2層との間に設けられたポリマー層は、それ自体の強度が優れ、さらに第1層と第2層との密着性をも向上させることができる。その結果、例えば、照射された太陽光線中の赤外線がそのまま地面に正反射されるのを低減でき、路面温度上昇や隣家の局所的な温度上昇等の悪影響を低減できる等の効果を奏する。
本発明に係る赤外線反射フィルムの製造方法の一例を示す模式断面図である。 本発明に係る赤外線反射フィルムの一例を示す模式断面図である。
以下、本発明に係る赤外線反射フィルム及びその製造方法について詳しく説明する。本発明は、その特徴を含む範囲で以下の実施形態に限定されず、各種の変形形態も包含する。
[赤外線反射フィルムの製造方法]
本発明に係る赤外線反射フィルムの製造方法は、図1に示すように、第1層形成用溶液及び第2層形成用溶液の少なくとも2種の溶液を準備する第1工程と、第1層形成用溶液及び第2層形成用溶液を重ねると共に、その両溶液の界面に反応生成物を生成させる第2工程と、第2工程で重ねられた両溶液を光透過性基材上に塗布する第3工程と、光透過性基材上に塗布された両溶液及び反応生成物を乾燥する第4工程と、を有する。
以下、第1工程〜第4工程を詳しく説明する。
<第1工程>
第1工程は、光透過性基材上に第1層を形成するための酸化チタンを含有し、さらにチタン系架橋剤を含む第1層形成用溶液、及び、該第1層形成用溶液上に前記第1層よりも屈折率が小さい第2層を形成するための化合物を含有し、さらに前記チタン系架橋剤と反応する高分子化合物を含む第2層形成用溶液、の少なくとも2種の溶液を準備する工程である。
(光透過性基材)
光透過性基材は、光、具体的には可視光線(波長:360nm〜830nm)を透過する基材であれば特に制限はない。光透過性基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム等のポリエステル系フィルム;ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等のポリオレフィン系フィルム;セロファン、ジアセチルセルロースフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、アセチルセルロースブチレートフィルム等のセルロース系フィルム;ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム等の塩化ビニル系フィルム;ポリビニルアルコールフィルム;エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム等のビニル系共重合体フィルム;ポリスチレンフィルム;ポリカーボネートフィルム;ポリメチルペンテンフィルム;ポリスルホンフィルム;ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリエーテルイミドフィルム等のポリエーテル系フィルム;ポリイミドフィルム;フッ素樹脂フィルム;ポリアミドフィルム;アクリル樹脂フィルム;ノルボルネン系樹脂フィルム;シクロオレフィン樹脂フィルム等の光透過性樹脂基材を挙げることができる。これらの中でも、透明性及び製造コストの観点から、ポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。なお、光透過性とは、可視光を50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上透過するものをいう。これらの光透過性基材は、透明、半透明のいずれであってもよく、また、着色されていてもよいし、無着色のものでもよい。
光透過性基材は、その表面に設けられる第1層との密着性を向上させる目的で、所望により片面又は両面に、酸化法や凹凸化法等により表面処理を施すことができる。酸化法としては、例えばコロナ放電処理、クロム酸処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン処理、紫外線照射処理等が挙げられ、凹凸化法としては、サンドブラスト法、溶剤処理法等が挙げられる。これらの表面処理法は、光透過性基材の種類に応じて適宜選ばれるが、一般にはコロナ放電処理法が好ましく用いられる。なお、光透過性基材の厚さは特に制限はなく、仕様又は用途に応じて適宜選定されるが、通常、10μm〜300μm、好ましくは30μm〜200μm、より好ましくは50μm〜200μmである。
(第1層形成用溶液)
第1層形成用溶液は、光透過性基材上に第1層を形成するための溶液であり、第1層を形成するための酸化チタンと、反応生成物を生成するためのチタン系架橋剤とを少なくとも含む溶液である。
酸化チタンは、高屈折率の酸化チタン層を第1層として形成するための成分である。この酸化チタンは、バインダー成分とともに第1層を形成するための主成分である。酸化チタンは、酸化チタン水分散液として第1層形成用溶液に含まれる。そうした酸化チタン水分散液としては、各種のものを選択できるが、一例としては、日本アエロジル株式会社製の酸化チタン水分散液(「AERODISP(登録商標)−W740」、固形分40%)を挙げることができる。
なお、酸化チタンとともに第1層を形成する無機化合物を任意に配合してもよい。そうした無機化合物としては、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウム、酸化アンチモン、五酸化タンタル、五酸化ニオブ、酸化ランタン、酸化イットリウム、硫化亜鉛、酸化ルテニウム、酸化イリジウム、酸化亜鉛、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、アルミナ等の無機系酸化物等を挙げることができる。
バインダー成分は、上記した酸化チタンとともに第1層を形成するための成分として第1層形成用溶液に含まれる。バインダー成分としては、酸化チタンとともに高屈折率の第1層を形成できるものであれば特に限定されないが、一例としては、シリコーンアクリル樹脂を挙げることができる。このシリコーンアクリル樹脂は、シリコーンアクリル水分散液として第1層形成用溶液に含まれる。そうしたシリコーンアクリル水分散液としては、各種のものを選択できるが、一例としては、日信化学工業株式会社製のシリコーンアクリル水分散液(「シャリーヌFE−230N」、固形分10%)を挙げることができる。
バインダー成分は、1種でも2種以上でもよく、例えば上記したシリコーンアクリル水分散液とともに第1層形成用溶液に含有させるバインダー成分としては、ゼラチン等を挙げることができる。なお、ゼラチンとしては、新田ゼラチン株式会社のゲルセット用ゼラチン(「アルカリ処理牛由来ゼラチンタイプB」、固形分100%)を挙げることができる。なお、本発明では、ゼラチンのような天然物由来のバインダー成分のみを用いておらず、シリコーンアクリル樹脂等の補足的なバインダー成分として加えている。
チタン系架橋剤は、後述する第2層形成用溶液に含まれる高分子化合物と反応して、第1層と第2層との境界に反応生成物を生成するために、第1層形成用溶液に含まれる。チタン系架橋剤の種類は、第2層形成用溶液に含まれる高分子化合物の種類によって任意に選択されるが、水酸化チタン、有機チタンキレート化合物等が好ましく用いられる。これらのチタン系架橋剤は、ポリビニルアルコール等の高分子化合物との反応性が高く、第1層内に未反応のチタン系架橋剤が残っても第1層の屈折率への影響が小さいという結果が確認されたので好ましく用いられる。水酸化チタンとしては、マツモト交商株式会社製の水酸化チタンを好ましく挙げることができる。有機チタンキレート化合物としては、市販の各種のものを好ましく挙げることができる。
第1層形成用溶液には、溶剤として、例えば、水、又は、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール等の親水性有機溶剤が含まれる。この溶剤は、粘度調整用及び固形分調整用として作用し、通常は、純水、イオン交換水、蒸留水等の水が好ましい。第1層形成用溶液には、本発明の機能を損なわない範囲で、必要に応じて、各種添加剤、例えば酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、レベリング剤、消泡剤、充填剤等を含有させることができる。
第1層形成用溶液は、第1層形成用固形分(N/V)が3質量%〜15質量%の範囲になるように各配合成分が調製されることが好ましい。また、固形分中の酸化チタン:バインダー成分の質量比率(P/V)が20:80〜80:20の範囲になるように各配合成分が調整されることが好ましい。また、バインダー成分としての有機バインダー成分:天然物由来のバインダー成分の質量比率が20:1〜5:1の範囲になるように各配合成分が調整されることが好ましい。また、バインダー成分:チタン系架橋剤の質量比率が100:1〜10:1の範囲になるように各配合成分が調整されることが好ましい。また、第1層形成用溶液全量に対する溶剤(例えば水)の割合は、70質量%以上、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上であることが好ましい。
こうして構成された第1層形成用溶液は、例えば40℃程度の恒温水槽中で加温撹拌され、その後必要に応じてろ過されて、高屈折率層用の水系塗工液として準備される。なお、得られた第1層形成用溶液の粘度は、溶剤の含有量を調整して、40℃で100cps以下であることが好ましい。
なお、第1層形成用溶液で所望の屈折率の第1層を形成できるか否かの事前検討は、その第1層形成用溶液を光透過性基材上に塗工した後、100℃〜150℃のオーブン中で乾燥させて塗膜を形成し、その塗膜の屈折率を屈折率計(例えば株式会社溝尻光学工業所製、「DVA−36L型」等)を用いて測定して評価できる。通常、屈折率は、第2層との屈折率差が0.15〜0.3の範囲を目処に第1層形成用溶液が準備される。
(第2層形成用溶液)
第2層形成用溶液は、第1層形成用溶液である酸化チタン含有溶液の上に重ねる溶液である。この第2層形成用溶液は、その後に乾燥することにより、第1層上にその第1層よりも屈折率が小さい第2層が形成される。この第2層形成用溶液は、第2層を形成するための化合物と、上記第1層形成用溶液に含まれるチタン系架橋剤と反応する高分子化合物とを少なくとも含む溶液である。
第2層を形成する化合物は、第1層との屈折率差が0.15〜0.3になる化合物で形成されるものであればよく、特に限定されないが、通常、酸化ケイ素等を主成分として用いることが好ましい。酸化ケイ素は、酸化ケイ素水分散液として第2層形成用溶液に含まれる。そうした酸化ケイ素水分散液としては、各種のものを選択できるが、一例としては、デュポン社製の酸化ケイ素水分散液(「ルドックスHS−40」、固形分40%)を挙げることができる。
なお、酸化ケイ素とともに第2層を形成する化合物を任意に配合してもよい。そうした化合物としては、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウム、酸化アンチモン、五酸化タンタル、五酸化ニオブ、酸化ランタン、酸化イットリウム、硫化亜鉛、酸化ルテニウム、酸化イリジウム、酸化亜鉛、錫ドープ酸化インジウム(ITO)等の無機化合物等を挙げることができる。
バインダー成分は、上記した酸化ケイ素とともに第2層を形成するための成分として第2層形成用溶液に含まれる。バインダー成分としては、酸化ケイ素とともに低屈折率の第2層を形成できるものであれば特に限定されないが、一例としては、上記した第1層形成用溶液と同様、シリコーンアクリル樹脂を挙げることができる。このシリコーンアクリル樹脂は、シリコーンアクリル水分散液として第2層形成用溶液に含まれる。そうしたシリコーンアクリル水分散液としては、各種のものを選択できるが、一例としては、日信化学工業株式会社製のシリコーンアクリル水分散液(「シャリーヌFE−230N」、固形分10%)を挙げることができる。
バインダー成分は、1種でも2種以上でもよく、例えば上記したシリコーンアクリル水分散液とともに第2層形成用溶液に含有させるバインダー成分としては、ゼラチン等を挙げることができる。なお、ゼラチンとしては、新田ゼラチン株式会社のゲルセット用ゼラチン(「アルカリ処理牛由来ゼラチンタイプB」、固形分100%)を挙げることができる。なお、本発明では、ゼラチンのような天然物由来のバインダー成分のみを用いておらず、シリコーンアクリル樹脂等の補足的なバインダー成分として加えている。
高分子化合物は、上記した第1層形成用溶液に含まれるチタン系架橋剤と反応して、第1層と第2層との境界に反応生成物を生成するために、第2層形成用溶液に含まれる。高分子化合物の種類は、第1層形成用溶液に含まれるチタン系架橋剤の種類によって任意に選択されるが、合成高分子化合物であるポリビニルアルコール(PVA)、ポリフェノール、ポリカルボン酸等を用いる。これらの高分子化合物は、第2層内に未反応の高分子化合物が残っても第2層の屈折率の低下の影響が小さいという結果が確認されたので好ましく用いられる。こうした高分子化合物は、溶剤への溶解性の観点から、重量平均分子量が5千〜30万のものが好ましく、3万〜20万のものがより好ましく、5万〜15万のものがさらに好ましい。特に本発明では、ポリビニルアルコール等の合成高分子化合物を第2層形成用溶液に含まれる高分子化合物として用いたので、品質管理が容易になるという利点がある。
ポリビニルアルコールとしては、日本合成化学株式会社製のポリビニルアルコール(架橋性樹脂、「ゴーセノールKL−03」、固形分100%)を好ましく挙げることができる。ポリビニルアルコール等の合成高分子は、層固定用として働くだけではなく、第1層形成用溶液に含まれるチタン系架橋剤のチタンイオンと界面で架橋反応して皮膜化し、第1層と第2層との界面を保護する働きもするので、高い界面反射率を安定して得ることができる。
第2層形成用溶液には、溶剤として、例えば、水、又は、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール等の親水性有機溶剤が含まれる。この溶剤は、粘度調整用及び固形分調整用として作用し、通常は、純水、イオン交換水、蒸留水等の水が好ましい。第2層形成用溶液には、本発明の機能を損なわない範囲で、必要に応じて、各種添加剤、例えば酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、レベリング剤、消泡剤、充填剤等を含有させることができる。
第2層形成用溶液は、第2層形成用固形分(N/V)が3質量%〜15質量%の範囲になるように各配合成分が調製されることが好ましい。また、固形分中の酸化ケイ素:バインダー成分の質量比率(P/V)が20:80〜80:20の範囲になるように各配合成分が調整されることが好ましい。また、バインダー成分としての有機バインダー成分:天然物由来のバインダー成分の質量比率が20:1〜5:1の範囲になるように各配合成分が調整されることが好ましい。また、バインダー成分:高分子化合物(例えばポリビニルアルコール)の質量比率が100:1〜10:1の範囲になるように各配合成分が調整されることが好ましい。また、第2層形成用溶液全量に対する溶剤(例えば水)の割合は、70質量%以上、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上であることが好ましい。
こうして構成された第2層形成用溶液は、例えば40℃程度の恒温水槽中で加温撹拌され、その後必要に応じてろ過されて、高屈折率層用の水系塗工液として準備される。なお、得られた第2層形成用溶液の粘度は、溶剤の含有量を調整して、40℃で100cps以下であることが好ましい。
なお、第2層形成用溶液で所望の屈折率の第2層を形成できるか否かの事前検討は、その第2層形成用溶液を光透過性基材上に塗工した後、100℃〜150℃のオーブン中で乾燥させて塗膜を形成し、その塗膜の屈折率を屈折率計(例えば株式会社溝尻光学工業所製、「DVA−36L型」等)を用いて測定して評価できる。通常、屈折率は、第1層の屈折率よりも0.15〜0.3の範囲で小さい屈折率を示すことを目処に第2層形成用溶液が準備される。
<第2工程、第3工程、第4工程>
第2工程は、第1層形成用溶液及び第2層形成用溶液を重ねると共に、その両溶液の界面に第1層形成用溶液が含むチタン系架橋剤と第2層形成用溶液が含む高分子化合物との反応生成物を生成させる工程である。第3工程は、第2工程後に引き続いて行われ、第2工程で重ねられた両溶液を光透過性基材上に塗布する工程である。第4工程は、光透過性基材上に塗布された両溶液及び反応生成物を乾燥する工程である。
例えば図1に示すように、所定の角度の傾斜面を有するスライドコーターが好ましく用いられる。具体的には、塗布ヘッド1に設けられた2つのスリット状の吐出口から、第2層形成用溶液A及び第1層形成用溶液Bを押し出し、傾斜したスライド面2上を重力の作用により自然流下させ、第2層形成用溶液Aを第1層形成用溶液B上に重ねる(第2工程)。重ね合わされた両溶液は、ロール3によって走行する光透過性基材4上に塗布する(第3工程)。両溶液を光透過性基材4上に塗布させた後、加熱乾燥させる(第4工程)。こうした工程を経ることにより、第1層と第2層とからなる積層体を形成することができる。
第4工程での加熱乾燥温度は、通常、50℃〜130℃、好ましくは70℃〜100℃である。加熱乾燥時間に特に制限は無いが、通常、1分〜5分間程度である。
(反応生成物)
この第2工程〜第4工程では、反応生成物が形成される。第2工程では、第1層形成用溶液と第2層形成用溶液とが重ね合わされたとき、第1層形成用溶液が含むチタン系架橋剤と第2層形成用溶液が含む高分子化合物とで架橋反応が瞬時に起こり、反応生成物が両溶液の境界で生成する。この反応生成物が境界に生成した状態で、両溶液は光透過性基材上に塗布されるが、その第3工程でも、両溶液の界面で生成した反応生成物は、両溶液が混ざらない状態を維持する。そして、第4工程での乾燥後に得られた第1層と第2層との間の境界も明確に区別でき、その結果、赤外線反射性能が優れたものとなる。
なお、第4工程での乾燥後の反応生成物は、チタン系架橋剤を構成するチタン元素を有する基が共有結合してなるポリマー層となる。このポリマー層は、強度が優れ、さらに、第1層と第2層との密着性も向上させるので、望ましい赤外線反射フィルムを製造できる。
以上説明したように、本発明に係る赤外線反射フィルムの製造方法によれば、第1層形成用溶液及び第2層形成用溶液を重ねる第2工程で、両溶液の界面に第1層形成用溶液が含むチタン系架橋剤と第2層形成用溶液が含む高分子化合物との反応生成物が生成するので、その反応生成物が、第1層形成用溶液と第2層形成用溶液との混合を防ぐ。さらに、その反応生成物が第4工程で乾燥されることにより、その反応生成物が第1層と第2層とを明確に分離し、その反応生成物の作用により赤外線反射性能が優れたものとなる。さらに、第1層内に未反応のチタン系架橋剤が残っても第1層の屈折率への影響が小さく、また、第2層内に未反応の高分子化合物が残っても第2層の屈折率の低下の影響が小さい。この方法で製造された赤外線反射フィルムは、第1層と第2層との界面に生成した反応生成物がその界面を明確に分離するので、優れた赤外線反射性を示すと共に、その反応生成物の存在によって赤外線の拡散反射性が高まる。その結果、例えば、照射された太陽光線中の赤外線がそのまま地面に正反射されるのを低減でき、路面温度上昇や隣家の局所的な温度上昇等の悪影響を低減できる等の効果を奏する。
[赤外線反射フィルム]
本発明に係る赤外線反射フィルムは、図2に示すように、光透過性基材と、その光透過性基材上に設けられた第1層と、その第1層上に設けられて第1層よりも屈折率が小さい第2層と、第1層と第2層との間に設けられたポリマー層とを少なくとも有している。そして、第1層が酸化チタン層であり、ポリマー層がチタン元素を有する基が共有結合してなる層であることに特徴がある。
「少なくとも」とは、第1層及び第2層の他に他の層が設けられていてもよいことを意味し、具体的には、後述の実施例に示すような第3層が設けられる。また、それ以上の層が設けられていてもよい。通常、屈折率の異なる層が奇数積層される。複数の層で積層されている場合の最外層の屈折率は、その直ぐ下層の屈折率よりも高いことが好ましい。積層された各層は、屈折率の高低が繰り返されている、つまり各層の相対的な屈折率が「高−低−高−…−低−高」となる関係にあることが好ましい。層数が増すにしたがって赤外線反射性能は向上するが、逆に可視光線透過率は低下するため、使用用途に合わせて、適当な層数を選択するのがよい。
複数積層された場合の隣接する層間の屈折率差は特に制限はないが、赤外線反射性及び赤外線反射フィルムの透明性の観点から、屈折率差がいずれの層間においても0.1〜0.4の範囲であることが好ましい。なお、隣接する層間における屈折率差が全て同じ値である必要はない。なお、「屈折率」の大小は、本願では波長589nmで測定した屈折率で評価し、その測定は、後述する実施例に記載の屈折率計で行った。
ポリマー層は、第1層と第2層とを明確に区分けするように、その境界面に設けられている。ポリマー層は、チタン系架橋剤と高分子化合物とが反応してできた反応生成物であり、したがって、チタン系架橋剤に由来するチタン元素と、高分子化合物に由来する炭素元素とが検出される。それらの元素は、グロー放電発光分光分析装置で検出できる。ポリマー層の厚さは、10nm〜1μm程度、通常、10nm〜100nmである。
ポリマー層の形態は、透過型電子顕微鏡(TEM)等で観察できる。その形態は、凝集した形状又は粒子状の形状となっており、一様な層というよりは、微粒子が形成された層ということができる。こうしたポリマー層は、入射してきた赤外線を乱反射させる効果(赤外線の拡散反射性)を有する。
粒子として捉えた場合、その平均粒子径は、概ね10nm〜1μm程度、詳しくは10nm〜100nm程度である。その粒子径は、走査型透過電子顕微鏡(STEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)等によって確認することができる。
本発明に係る赤外線反射フィルムは、第2層側から入射する波長1000nmの光の入射角5度における正反射光の強度が、全反射光の強度の5%以下である。正反射光の強度の割合が全反射光の強度の5%以下であることにより、赤外線反射フィルムに照射された太陽光線中の赤外線がそのまま地面に正反射される割合が小さいので、例えば正反射光によって引き起こされる路面温度上昇や隣家の局所的な温度上昇等の悪影響を低減できる。
本願では全反射光と正反射光の強度を波長1000nmで測定したが、この波長1000nmは赤外線領域の波長の中から選択した波長であり、本発明は、その波長における評価結果で赤外線反射フィルムを特定している。また、「入射角」とは、第2層側から赤外線反射フィルムに対して入射する光が空気と赤外線反射フィルム媒質との境界面に達したとき、光の進行方向を表す線がその境界面と交わる点が入射点であり、その線が入射点で境界面に立てた法線となす角であると定義できる。
赤外線反射フィルムの厚さは、光透過性基材の厚さを除くと、好ましくは0.5〜15μm、より好ましくは1〜10μmである。赤外線反射フィルムの可視光線透過率は、通常、75%〜90%である。一方、赤外線透過率は、50%以下である。
以上説明したように本発明に係る赤外線反射フィルムによれば、第1層と第2層との間にポリマー層が設けられており、そのポリマー層が、チタン元素を有する基が共有結合してなる層であるので、第1層と第2層とを明確に分離でき、赤外線反射性に優れたものとなる。そうしたポリマー層は、それ自体の強度が優れ、さらに第1層と第2層との密着性をも向上させる。また、そのポリマー層の存在によって赤外線の拡散反射性が高まる。その結果、例えば、照射された太陽光線中の赤外線がそのまま地面に正反射されるのを低減でき、路面温度上昇や隣家の局所的な温度上昇等の悪影響を低減できる等の効果を奏する。
実施例により本発明をさらに具体的に説明する。本発明は以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
[測定方法]
(屈折率)
屈折率は、屈折率計(例えば株式会社溝尻光学工業所製、「DVA−36L型」)を用いて測定し、波長589nmで測定した結果とした。また、複数の層が積層されている状態での各層の屈折率の測定は、その積層体を構成する各層の分光反射と透過スペクトルとを得た後、光干渉式反射分光膜厚計(大塚電子株式会社製、FE−3000YIT)を用いて測定した。なお、各層の分光反射と透過スペクトルは、各層の成分分析を行って各層を特定することによって、その分光反射と透過スペクトルは準備できる。
(透過率)
可視光線透過率は、JIS R 3106(1998)に準拠して測定した。可視光線は、赤外線反射フィルムの光透過性基材とは反対側から照射した。一方、紫外線透過率(日射透過率)は、JIS R 3106(1998)に準拠して測定した。赤外線は、赤外線反射フィルムの光透過性基材とは反対側から照射した。赤外線透過率が小さいほど、赤外線反射性能に優れる。
(赤外線の正反射率)
分光光度計(日本分光株式会社製、V−650)により、反射角度5°正反射測定ユニット及び150mmφ積分球拡散反射測定ユニットを用いて、波長1000nmの近赤外線の入射角5度の場合の正反射光の強度の割合を、全反射光の強度に対する割合として測定した。その値が小さいほど、赤外線の拡散反射性に優れる。
(密着性)
密着性は、旧JIS K 5400の碁盤目試験方法に準拠して測定した。具体的には、得られた赤外線反射フィルムに碁盤目の切れ込みを100マス(1マス=1mm×1mm)入れた後、密着試験用テープを碁盤目へ貼り付け、そして剥がし、残留したマスの数を確認して層間の密着性を測定した。100マス中、95マス以上が残留していれば、層間の密着性に非常に優れていると言える。
(耐久性)
耐久性は、温度80℃、湿度90%の環境下に50時間保持した後の赤外線反射フィルムを用い、上記した密着性を測定した。製造初期の赤外線反射フィルムの密着性との比較により、赤外線反射フィルムの耐久性を評価した。密着性の差が小さいほど、耐久性に優れる。
(グロー放電発光分光分析法による元素定量分析)
グロー放電発光分光分析装置(株式会社堀場製作所、「GDS−Profiler2」)により、RF電源出力:20W,アルゴンガス圧力:800Pa、アノード径:4mm、パルス電源使用(周波数:25Hz、Duty比:0.1)、測定方式:シンクロ(パルス周期)によって、元素分析を行った。炭素元素は156.144nmで測定でき、チタン元素は364.275nmで測定できる。
[製造例1(高屈折率層用溶液)]
酸化チタン水分散液(日本アエロジル株式会社製、「AERODISP(登録商標)−W740」、固形分40%)60g、バインダー成分であるシリコーンアクリル水分散液(日信化学工業株式会社製、「シャリーヌFE−230N」、固形分10%)120g、同じくバインダー成分であるゲルセット用ゼラチン(新田ゼラチン株式会社、「アルカリ処理牛由来ゼラチンタイプB」、固形分100%)12g、ポリマー層形成材料としての水酸化チタン(マツモト交商株式会社製)3g、イオン交換水(粘度、固形分調整用)485gからなる組成物(全量680g)を、40℃の恒温水槽中でメカニカルスターラーにて加温撹拌し、温度を下げないよう注意しながら、5μmメッシュのフィルター(株式会社ハイテック製、「ミニザルト 17594K」)に通して異物を除去し、高屈折率層用水系塗工液(40℃での粘度50cps以下)とした。
調製した高屈折率層用溶液は、インキ固形分(N/V)が7.5質量%であり、固形中のフィラー:樹脂重量比率(P/V)が50:50であり、樹脂中の有機バインダー成分:ゼラチン重量比率が50:50であり、樹脂:ポリマー層形成材料重量比率が8:1である。なお、屈折率の測定のため、上記高屈折率層用溶液を光透過性基材上に塗工した後、120℃のオーブン中で3分間乾燥させて塗膜を形成し、その塗膜の屈折率を屈折率計(株式会社溝尻光学工業所製、「DVA−36L型」)を用いて測定したところ、屈折率は1.60であった。
[製造例2(低屈折率用溶液)]
酸化ケイ素水分散液(デュポン社製、「ルドックスHS−40」、固形分40%)60g、バインダー成分であるシリコーンアクリル水分散液(日信化学工業株式会社製、「シャリーヌFE−230N」、固形分10%)120g、同じくバインダー成分であるゲルセット用ゼラチン(新田ゼラチン株式会社、「アルカリ処理牛由来ゼラチンタイプB」、固形分100%)12g、ポリマー層形成材料としてのポリビニルアルコール(日本合成化学株式会社製、架橋性樹脂「ゴーセノールKL−03」、固形分100%)12g、イオン交換水(粘度、固形分調整用)596gからなる組成物(全量800g)を、40℃の恒温水槽中でメカニカルスターラーにて加温撹拌し、温度を下げないよう注意しながら、5μmメッシュのフィルター(株式会社ハイテック製、「ミニザルト 17594K」)に通して異物を除去し、高屈折率層用水系塗工液(40℃での粘度50cps以下)とした。
調製した低屈折率層用溶液は、インキ固形分(N/V)が7.5質量%であり、固形中のフィラー:樹脂重量比率(P/V)が50:50であり、樹脂中の有機バインダー成分:ゼラチン重量比率が50:50であり、樹脂:ポリマー層形成材料重量比率が2:1である。なお、屈折率の測定のため、上記高屈折率層用溶液を光透過性基材上に塗工した後、120℃のオーブン中で3分間乾燥させて塗膜を形成し、その塗膜の屈折率を屈折率計(株式会社溝尻光学工業所製、「DVA−36L型」)を用いて測定したところ、屈折率は1.40であり、製造例5の高屈折率層用溶液を用いた場合の塗膜との屈折率差は0.20であった。
[実施例1]
図1に示すスライドコーター(スライド面の傾斜角度;水平方向に対して25度、隣り合う吐出口の距離;8cm、塗布液を光透過性基材へ転位する部位に最も近い吐出口の中心と光透過性基材との距離;10cm)を使用して、製造例1で準備した高屈折率層用溶液、製造例2で準備した低屈折率層用溶液、製造例1で準備した高屈折率層用溶液の順に積層されるように、光透過性基材であるPETフィルム上(東レ株式会社製、「ルミラーU46」、厚さ125μm、コロナ処理をした面上)に塗工液温度約40℃にて同時塗布した。塗工後、5℃にて1分間冷却した後、60℃のオーブン中で3分間乾燥させることにより、3層からなる透明な赤外線反射フィルムを製造した。各層の厚さは6μm程度であった。得られた赤外線反射フィルムの断面を、透過型電子顕微鏡(TEM)で観察したところ、良好な積層構造が確認された。その積層構造を形成する界面には、凝集態様の層が見られた。また、その界面では、グロー放電発光分光分析によりチタン元素と炭素元素の存在を確認でき、チタン元素と炭素元素を含む反応生成物ができていることが確認できた。得られた赤外線反射フィルムの反射特性を評価した結果、波長1000nmの光の入射角5度における正反射光の強度は、全反射光の強度の5%以下であった。また、可視光線(350nm〜780nmの範囲で測定)の透過率は89%であり、赤外線(780nm〜2100nmの範囲で測定)の反射率は16%であった。また、日射反射率(350nm〜2100nmの塗布からの[反射光総量]/[塗布膜表面に入射した太陽光総量](JIS K 5602)は20%であった。
[実施例2]
実施例1において、製造例1で準備した高屈折率層用溶液→製造例2で準備した低屈折率層用溶液→製造例1で準備した高屈折率層用溶液→……→製造例1で準備した高屈折率層用溶液の順で同時に7層を積層させてなる透明な赤外線反射フィルムを製造した。各層の厚さは6μm程度であった。得られた赤外線反射フィルムの断面を、透過型電子顕微鏡(TEM)で観察したところ、良好な積層構造が確認された。その積層構造を形成する界面には、凝集態様の層が見られた。また、その界面では、グロー放電発光分光分析によりチタン元素と炭素元素の存在を確認でき、チタン元素と炭素元素を含む反応生成物ができていることが確認できた。得られた赤外線反射フィルムの反射特性を評価した結果、波長1000nmの光の入射角5度における正反射光の強度は、全反射光の強度の5%以下であった。また、可視光線(350nm〜780nmの範囲で測定)の透過率は87%であり、赤外線(780nm〜2100nmの範囲で測定)の反射率は19%であった。
[比較例1]
実施例1において、高屈折率層用溶液に配合する水酸化チタンに代えてポリビニルアルコールを配合して高屈折率層用溶液を調液した。また、低屈折率層用溶液に配合するポリビニルアルコールに代えて水酸化チタンを配合して低屈折率層用溶液を調液した。それらの溶液を用い、実施例1と同様にして、赤外線反射フィルムの製造を試みた。高屈折率層用溶液は粘度が100cps以下で問題なく調液でき、且つ塗布可能であったが、低屈折率層用溶液は白濁と増粘(粘度は100cps以上)が著しく、塗布することができなかった。これは、低屈折率層用溶液に含まれる酸化ケイ素水分散液と水酸化チタンとの相溶性が悪いためであった。
[比較例2]
実施例1において、シリコーンアクリル水分散液を配合しない高屈折率層用溶液を調液し、同じくシリコーンアクリル水分散液を配合しない低屈折率層用溶液を調液した。それらの溶液を用い、実施例1と同様にして、赤外線反射フィルムの製造を試みた。すなわち、バインダー成分としてゲルセットのみを用いた溶液で赤外線反射フィルムを製造した。得られた赤外線反射フィルムの反射特性を評価した結果、波長1000nmの光の入射角5度における正反射光の強度は、全反射光の強度の9.6%であった。
[赤外線反射のメカニズム]
本発明に係る赤外線反射フィルムでの赤外線反射フィルムのメカニズムについて、上記した実施例1,2及び比較例2の結果に基づいて考察する。赤外線反射フィルムの要求特性は、赤外線の反射と可視光の透過であるため、本来の光学設計によれば、高屈折率層と低屈折率層を積層して、高屈折率層→低屈折率層で光を全反射させることになる。通常、反射させる光の波長(λ)は、光学厚み(膜厚×屈折率)で制御する(λ/4)。一般的な材料設計としては、主材料として金属酸化物とポリマーが用いられ、ポリマーの場合は屈折率差が大きくできないが多層化しやすく、一方、金属酸化物の場合は屈折率差を大きくしやすいが、多層化しにくいという材料特有の特徴がある。本発明に係る赤外線反射フィルムは、金属酸化物を用いて屈折率層を形成しているが、厚さ因子が必ずしも前記した理論どおりになっていない。この点については現在のところ明確にはなっていないが、厚くなって厚さ因子が理論どおりになっていなくても、可視光の透過性が低下しにくく、しかも、その現象は、微粒子の影響ではない(微粒子の層を形成しなくても、同じであったため)ことがいえ、おそらく同時多層形成しているバインダー成分の関与に基づいているものと考えられる。
本発明に係る赤外線反射フィルム及びその製造方法は、例えば建物や乗り物(自動車、電車、バス、航空機、船舶等)の窓ガラス用として、さらに農業ハウス用として利用可能である。また、壁材、床材、天井材等として利用すれば、例えば室内にある遠赤外線を熱源とする機器がある場合に、遠赤外線を拡散反射させて効率良く室内全体を暖めることができ、有用である。
1 塗布ヘッド
2 スライド面
3 ロール
4 基材
A 第2層形成用溶液
B 第1層形成用溶液

Claims (5)

  1. 光透過性基材上に第1層を形成するための酸化チタンを含有し、さらにチタン系架橋剤を含む第1層形成用溶液、及び、該第1層形成用溶液上に前記第1層よりも屈折率が小さい第2層を形成するための化合物を含有し、さらに前記チタン系架橋剤と反応する高分子化合物を含む第2層形成用溶液、の少なくとも2種の溶液を準備する第1工程と、
    前記第1層形成用溶液及び前記第2層形成用溶液を重ねると共に、該両溶液の界面に前記第1層形成用溶液が含むチタン系架橋剤と前記第2層形成用溶液が含む高分子化合物との反応生成物を生成させる第2工程と、
    前記第2工程で重ねられた前記両溶液を前記光透過性基材上に塗布する第3工程と、
    前記光透過性基材上に塗布された前記両溶液及び前記反応生成物を乾燥する第4工程と、を有することを特徴とする赤外線反射フィルムの製造方法。
  2. 前記第2層形成用溶液に含まれる高分子化合物が合成高分子化合物である、請求項1に記載の赤外線反射フィルムの製造方法。
  3. 前記第4工程で乾燥した反応生成物が、前記チタン系架橋剤を構成するチタン元素を有する基が共有結合してなるポリマー層である、請求項1又は2に記載の赤外線反射フィルムの製造方法。
  4. 光透過性基材と、該光透過性基材上に設けられた第1層と、該第1層上に設けられて該第1層よりも屈折率が小さい第2層と、前記第1層と前記第2層との間に設けられたポリマー層とを少なくとも有し、
    前記第1層が酸化チタン層であり、前記ポリマー層がチタン元素を有する基が共有結合してなる層であることを特徴とする赤外線反射フィルム。
  5. 波長1000nmの光の入射角5度における正反射光の強度が、全反射光の強度の5%以下である、請求項4に記載の赤外線反射フィルム。
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