次に、添付図面を参照して、本発明の実施形態による固体酸化物型燃料電池(SOFC)を説明する。
図1は、本発明の一実施形態による固体酸化物型燃料電池(SOFC)を示す全体構成図である。この図1に示すように、本発明の一実施形態による固体酸化物型燃料電池(SOFC)1は、燃料電池モジュール2と、補機ユニット4を備えている。
燃料電池モジュール2は、ハウジング6を備え、このハウジング6内部には、断熱材7を介して密封空間8が形成されている。この密閉空間8の下方部分である発電室10には、燃料と酸化剤(空気)とにより発電反応を行う燃料電池セル集合体12が配置されている。この燃料電池セル集合体12は、10個の燃料電池セルスタック14(図5参照)を備え、この燃料電池セルスタック14は、16本の燃料電池セルユニット16(図4参照)から構成されている。このように、燃料電池セル集合体12は、160本の燃料電池セルユニット16を有し、これらの燃料電池セルユニット16の全てが直列接続されている。
燃料電池モジュール2の密封空間8の上述した発電室10の上方には、燃焼室18が形成され、この燃焼室18で、発電反応に使用されなかった残余の燃料と残余の酸化剤(空気)とが燃焼し、排気ガスを生成するようになっている。
また、この燃焼室18の上方には、燃料を改質する改質器20が配置され、前記残余ガスの燃焼熱によって改質器20を改質反応が可能な温度となるように加熱している。さらに、この改質器20の上方には、改質器20の熱を受けて空気を加熱し、改質器20の温度低下を抑制するための空気用熱交換器22が配置されている。
次に、補機ユニット4は、水道等の水供給源24からの水を貯水してフィルターにより純水とする純水タンク26と、この貯水タンクから供給される水の流量を調整する水流量調整ユニット28(モータで駆動される「水ポンプ」等)を備えている。また、補機ユニット4は、都市ガス等の燃料供給源30から供給された燃料を遮断するガス遮断弁32と、燃料ガスから硫黄を除去するための脱硫器36と、燃料ガスの流量を調整する燃料流量調整ユニット38(モータで駆動される「燃料ポンプ」等)を備えている。さらに、補機ユニット4は、空気供給源40から供給される酸化剤である空気を遮断する電磁弁42と、空気の流量を調整する改質用空気流量調整ユニット44及び発電用空気流量調整ユニット45(モータで駆動される「空気ブロア」等)と、改質器20に供給される改質用空気を加熱する第1ヒータ46と、発電室に供給される発電用空気を加熱する第2ヒータ48とを備えている。これらの第1ヒータ46と第2ヒータ48は、起動時の昇温を効率よく行うために設けられているが、省略しても良い。
次に、燃料電池モジュール2には、排気ガスが供給される温水製造装置50が接続されている。この温水製造装置50には、水供給源24から水道水が供給され、この水道水が排気ガスの熱により温水となり、図示しない外部の給湯器の貯湯タンクへ供給されるようになっている。
また、燃料電池モジュール2には、燃料ガスの供給量等を制御するための制御ボックス52が取り付けられている。
さらに、燃料電池モジュール2には、燃料電池モジュールにより発電された電力を外部に供給するための電力取出部(電力変換部)であるインバータ54が接続されている。
次に、図2及び図3により、本発明の実施形態による固体酸化物型燃料電池(SOFC)の燃料電池モジュールの内部構造を説明する。図2は、本発明の一実施形態による固体酸化物型燃料電池(SOFC)の燃料電池モジュールを示す側面断面図であり、図3は、図2のIII-III線に沿って断面図である。
図2及び図3に示すように、燃料電池モジュール2のハウジング6内の密閉空間8には、上述したように、下方から順に、燃料電池セル集合体12、改質器20、空気用熱交換器22が配置されている。
改質器20は、その上流端側に純水を導入するための純水導入管60と改質される燃料ガスと改質用空気を導入するための被改質ガス導入管62が取り付けられ、また、改質器20の内部には、上流側から順に、蒸発部20aと改質部20bを形成され、これらの蒸発部20aと改質部20bには改質触媒が充填されている。この改質器20に導入された水蒸気(純水)が混合された燃料ガス及び空気は、改質器20内に充填された改質触媒により改質される。改質触媒としては、アルミナの球体表面にニッケルを付与したものや、アルミナの球体表面にルテニウムを付与したものが適宜用いられる。
この改質器20の下流端側には、燃料ガス供給管64が接続され、この燃料ガス供給管64は、下方に延び、さらに、燃料電池セル集合体12の下方に形成されたマニホールド66内で水平に延びている。燃料ガス供給管64の水平部64aの下方面には、複数の燃料供給孔64bが形成されており、この燃料供給孔64bから、改質された燃料ガスがマニホールド66内に供給される。
このマニホールド66の上方には、上述した燃料電池セルスタック14を支持するための貫通孔を備えた下支持板68が取り付けられており、マニホールド66内の燃料ガスが、燃料電池セルユニット16内に供給される。
次に、改質器20の上方には、空気用熱交換器22が設けられている。この空気用熱交換器22は、上流側に空気集約室70、下流側に2つの空気分配室72を備え、これらの空気集約室70と空気分配室72は、6個の空気流路管74により接続されている。ここで、図3に示すように、3個の空気流路管74が一組(74a,74b,74c,74d,74e,74f)となっており、空気集約室70内の空気が各組の空気流路管74からそれぞれの空気分配室72へ流入する。
空気用熱交換器22の6個の空気流路管74内を流れる空気は、燃焼室18で燃焼して上昇する排気ガスにより予熱される。
空気分配室72のそれぞれには、空気導入管76が接続され、この空気導入管76は、下方に延び、その下端側が、発電室10の下方空間に連通し、発電室10に余熱された空気を導入する。
次に、マニホールド66の下方には、排気ガス室78が形成されている。また、図3に示すように、ハウジング6の長手方向に沿った面である前面6aと後面6bの内側には、上下方向に延びる排気ガス通路80が形成され、この排気ガス室通路80の上端側は、空気用熱交換器22が配置された空間と連通し、下端側は、排気ガス室78と連通している。また、排気ガス室78の下面のほぼ中央には、排気ガス排出管82が接続され、この排気ガス排出管82の下流端は、図1に示す上述した温水製造装置50に接続されている。
図2に示すように、燃料ガスと空気との燃焼を開始するための点火装置83が、燃焼室18に設けられている。
次に図4により燃料電池セルユニット16について説明する。図4は、本発明の一実施形態による固体酸化物型燃料電池(SOFC)の燃料電池セルユニットを示す部分断面図である。
図4に示すように、燃料電池セルユニット16は、燃料電池セル84と、この燃料電池セル84の上下方向端部にそれぞれ接続された内側電極端子86とを備えている。
燃料電池セル84は、上下方向に延びる管状構造体であり、内部に燃料ガス流路88を形成する円筒形の内側電極層90と、円筒形の外側電極層92と、内側電極層90と外側電極層92との間にある電解質層94とを備えている。この内側電極層90は、燃料ガスが通過する燃料極であり、(−)極となり、一方、外側電極層92は、空気と接触する空気極であり、(+)極となっている。
燃料電池セル16の上端側と下端側に取り付けられた内側電極端子86は、同一構造であるため、ここでは、上端側に取り付けられた内側電極端子86について具体的に説明する。内側電極層90の上部90aは、電解質層94と外側電極層92に対して露出された外周面90bと上端面90cとを備えている。内側電極端子86は、導電性のシール材96を介して内側電極層90の外周面90bと接続され、さらに、内側電極層90の上端面90cとは直接接触することにより、内側電極層90と電気的に接続されている。内側電極端子86の中心部には、内側電極層90の燃料ガス流路88と連通する燃料ガス流路98が形成されている。
内側電極層90は、例えば、Niと、CaやY、Sc等の希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたジルコニアとの混合体、Niと、希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたセリアとの混合体、Niと、Sr、Mg、Co、Fe、Cuから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンガレードとの混合体、の少なくとも一種から形成される。
電解質層94は、例えば、Y、Sc等の希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたジルコニア、希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたセリア、Sr、Mgから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンガレート、の少なくとも一種から形成される。
外側電極層92は、例えば、Sr、Caから選ばれた少なくとも一種をドープしたランタンマンガナイト、Sr、Co、Ni、Cuから選ばれた少なくとも一種をドープしたランタンフェライト、Sr、Fe、Ni、Cuから選ばれた少なくとも一種をドープしたランタンコバルタイト、銀、などの少なくとも一種から形成される。
次に図5により燃料電池セルスタック14について説明する。図5は、本発明の一実施形態による固体酸化物型燃料電池(SOFC)の燃料電池セルスタックを示す斜視図である。
図5に示すように、燃料電池セルスタック14は、16本の燃料電池セルユニット16を備え、これらの燃料電池セルユニット16の下端側及び上端側が、それぞれ、セラミック製の下支持板68及び上支持板100により支持されている。これらの下支持板68及び上支持板100には、内側電極端子86が貫通可能な貫通穴68a及び100aがそれぞれ形成されている。
さらに、燃料電池セルユニット16には、集電体102及び外部端子104が取り付けられている。この集電体102は、燃料極である内側電極層90に取り付けられた内側電極端子86と電気的に接続される燃料極用接続部102aと、空気極である外側電極層92の外周面全体と電気的に接続される空気極用接続部102bとにより一体的に形成されている。空気極用接続部102bは、外側電極層92の表面を上下方向に延びる鉛直部102cと、この鉛直部102cから外側電極層92の表面に沿って水平方向に延びる多数の水平部102dとから形成されている。また、燃料極用接続部102aは、空気極用接続部102bの鉛直部102cから燃料電池セルユニット16の上下方向に位置する内側電極端子86に向って斜め上方又は斜め下方に向って直線的に延びている。
さらに、燃料電池セルスタック14の端(図5では左端の奥側及び手前側)に位置する2個の燃料電池セルユニット16の上側端及び下側端の内側電極端子86には、それぞれ外部端子104が接続されている。これらの外部端子104は、隣接する燃料電池セルスタック14の端にある燃料電池セルユニット16の外部端子104(図示せず)に接続され、上述したように、160本の燃料電池セルユニット16の全てが直列接続されるようになっている。
次に図6により本実施形態による固体酸化物型燃料電池(SOFC)に取り付けられたセンサ類等について説明する。図6は、本発明の一実施形態による固体酸化物型燃料電池(SOFC)を示すブロック図である。
図6に示すように、固体酸化物型燃料電池1は、制御部110を備え、この制御部110には、使用者が操作するための「ON」や「OFF」等の操作ボタンを備えた操作装置112、発電出力値(ワット数)等の種々のデータを表示するための表示装置114、及び、異常状態のとき等に警報(ワーニング)を発する報知装置116が接続されている。なお、この報知装置116は、遠隔地にある管理センタに接続され、この管理センタに異常状態を通知するようなものであっても良い。
次に、制御部110には、以下に説明する種々のセンサからの信号が入力されるようになっている。
先ず、可燃ガス検出センサ120は、ガス漏れを検知するためのもので、燃料電池モジュール2及び補機ユニット4に取り付けられている。
CO検出センサ122は、本来排気ガス通路80等を経て外部に排出される排気ガス中のCOが、燃料電池モジュール2及び補機ユニット4を覆う外部ハウジング(図示せず)へ漏れたかどうかを検知するためのものである。
貯湯状態検出センサ124は、図示しない給湯器におけるお湯の温度や水量を検知するためのものである。
電力状態検出センサ126は、インバータ54及び分電盤(図示せず)の電流及び電圧等を検知するためのものである。
発電用空気流量検出センサ128は、発電室10に供給される発電用空気の流量を検出するためのものである。
改質用空気流量センサ130は、改質器20に供給される改質用空気の流量を検出するためのものである。
燃料流量センサ132は、改質器20に供給される燃料ガスの流量を検出するためのものである。
水流量センサ134は、改質器20に供給される純水の流量を検出するためのものである。
水位センサ136は、純水タンク26の水位を検出するためのものである。
圧力センサ138は、改質器20の外部の上流側の圧力を検出するためのものである。
排気温度センサ140は、温水製造装置50に流入する排気ガスの温度を検出するためのものである。
発電室温度センサ142は、図3に示すように、燃料電池セル集合体12の近傍の前面側と背面側に設けられ、燃料電池セルスタック14の近傍の温度を検出して、燃料電池セルスタック14(即ち燃料電池セル84自体)の温度を推定するためのものである。
燃焼室温度センサ144は、燃焼室18の温度を検出するためのものである。
排気ガス室温度センサ146は、排気ガス室78の排気ガスの温度を検出するためのものである。
改質器温度センサ148は、改質器20の温度を検出するためのものであり、改質器20の入口温度と出口温度から改質器20の温度を算出する。
外気温度センサ150は、固体酸化物型燃料電池(SOFC)が屋外に配置された場合、外気の温度を検出するためのものである。また、外気の湿度等を測定するセンサを設けるようにしても良い。
これらのセンサ類からの信号は、制御部110に送られ、制御部110は、これらの信号によるデータに基づき、水流量調整ユニット28、燃料流量調整ユニット38、改質用空気流量調整ユニット44、発電用空気流量調整ユニット45に、制御信号を送り、これらのユニットにおける各流量を制御するようになっている。
次に図7により本実施形態による固体酸化物型燃料電池(SOFC)による起動時の動作を説明する。図7は、本発明の一実施形態による固体酸化物型燃料電池(SOFC)の起動時の動作を示すタイムチャートである。
最初は、燃料電池モジュール2を温めるために、無負荷状態で、即ち、燃料電池モジュール2を含む回路を開いた状態で、運転を開始する。このとき、回路に電流が流れないので、燃料電池モジュール2は発電を行わない。
先ず、改質用空気流量調整ユニット44から改質用空気を第1ヒータ46を経由して燃料電池モジュール2の改質器20へ供給する。また、同時に、発電用空気流量調整ユニット45から発電用空気を第2ヒータ48を経由して燃料電池モジュール2の空気用熱交換器22へ供給し、この発電用空気が、発電室10及び燃焼室18に到達する。
この直ぐ後、燃料流量調整ユニット38からも燃料ガスが供給され、改質用空気が混合された燃料ガスが、改質器20及び燃料電池セルスタック14、燃料電池セルユニット16を通過して、燃焼室18に到達する。
次に、点火装置83により着火して、燃焼室18にある燃料ガスと空気(改質用空気及び発電用空気)とを燃焼させる。この燃料ガスと空気との燃焼により排気ガスが生じ、この排気ガスにより、発電室10が暖められ、また、排気ガスが燃料電池モジュール2の密封空間8内を上昇する際、改質器20内の改質用空気を含む燃料ガスを暖めると共に、空気熱交換器22内の発電用空気も暖める。
このとき、燃料流量調整ユニット38及び改質用空気流量調整ユニット44により、改質用空気が混合された燃料ガスが改質器20に供給されているので、改質器20において、式(1)に示す部分酸化改質反応POXが進行する。この部分酸化改質反応POXは、発熱反応であるので、起動性が良好となる。また、この昇温した燃料ガスが燃料ガス供給管64により燃料電池セルスタック14の下方に供給され、これにより、燃料電池セルスタック14が下方から加熱され、また、燃焼室18も燃料ガスと空気が燃焼して昇温されているので、燃料電池セルスタック14は、上方からも加熱され、この結果、燃料電池セルスタック14は、上下方向において、ほぼ均等に昇温可能となっている。この部分酸化改質反応POXが進行しても、燃焼室18では継続して燃料ガスと空気との燃焼反応が持続される。
CmHn+xO2 → aCO2+bCO+cH2 (1)
部分酸化改質反応POXの開始後、改質器温度センサ148により改質器20が所定温度(例えば、600℃)になったことを検知したとき、水流量調整ユニット28、燃料流量調整ユニット38及び改質用空気流量調整ユニット44により、燃料ガスと改質用空気と水蒸気とを予め混合したガスを改質器20に供給する。このとき、改質器20においては、上述した部分酸化改質反応POXと後述する水蒸気改質反応SRとが併用されたオートサーマル改質反応ATRが進行する。このオートサーマル改質反応ATRは、熱的に内部バランスが取れるので、改質器20内では熱的に自立した状態で反応が進行する。即ち、酸素(空気)が多い場合には部分酸化改質反応POXによる発熱が支配的となり、水蒸気が多い場合には水蒸気改質反応SRによる吸熱反応が支配的となる。この段階では、既に起動の初期段階は過ぎており、発電室10内がある程度の温度まで昇温されているので、吸熱反応が支配的であっても大幅な温度低下を引き起こすことはない。また、オートサーマル改質反応ATRが進行中も、燃焼室18では燃焼反応が継続して行われている。
式(2)に示すオートサーマル改質反応ATRの開始後、改質器温度センサ146により改質器20が所定温度(例えば、700℃)になったことを検知したとき、改質用空気流量調整ユニット44による改質用空気の供給を停止すると共に、水流量調整ユニット28による水蒸気の供給を増加させる。これにより、改質器20には、空気を含まず燃料ガスと水蒸気のみを含むガスが供給され、改質器20において、式(3)の水蒸気改質反応SRが進行する。
CmHn+xO2+yH2O → aCO2+bCO+cH2 (2)
CmHn+xH2O → aCO2+bCO+cH2 (3)
この水蒸気改質反応SRは吸熱反応であるので、燃焼室18からの燃焼熱と熱バランスをとりながら反応が進行する。この段階では、燃料電池モジュール2の起動の最終段階であるため、発電室10内が十分高温に昇温されているので、吸熱反応が進行しても、発電室10が大幅な温度低下を招くこともない。また、水蒸気改質反応SRが進行しても、燃焼室18では継続して燃焼反応が進行する。
このようにして、燃料電池モジュール2は、点火装置83により点火した後、部分酸化改質反応POX、オートサーマル改質反応ATR、水蒸気改質反応SRが、順次進行することにより、発電室10内の温度が徐々に上昇する。次に、発電室10内及び燃料電池セル84の温度が燃料電池モジュール2を安定的に作動させる定格温度よりも低い所定の発電温度に達したら、燃料電池モジュール2を含む回路を閉じ、燃料電池モジュール2による発電を開始し、それにより、回路に電流が流れる。燃料電池モジュール2の発電により、燃料電池セル84自体も発熱し、燃料電池セル84の温度も上昇する。この結果、燃料電池モジュール2を作動させる定格温度、例えば、600℃〜800℃になる。
この後、定格温度を維持するために、燃料電池セル84で消費される燃料ガス及び空気の量よりも多い燃料ガス及び空気を供給し、燃焼室18での燃焼を継続させる。なお、発電中は、改質効率の高い水蒸気改質反応SRで発電が進行する。
次に、図8により本実施形態による固体酸化物型燃料電池(SOFC)の運転停止時の動作を説明する。図8は、本実施形態により固体酸化物型燃料電池(SOFC)の運転停止時の動作を示すタイムチャートである。
図8に示すように、燃料電池モジュール2の運転停止を行う場合には、先ず、燃料流量調整ユニット38及び水流量調整ユニット28を操作して、燃料ガス及び水蒸気の改質器20への供給量を減少させる。
また、燃料電池モジュール2の運転停止を行う場合には、燃料ガス及び水蒸気の改質器20への供給量を減少させると同時に、改質用空気流量調整ユニット44による発電用空気の燃料電池モジュール2内への供給量を増大させて、燃料電池セル集合体12及び改質器20を空気により冷却し、これらの温度を低下させる。その後、改質器20の温度が所定温度、例えば、400℃まで低下したとき、燃料ガス及び水蒸気の改質器20への供給を停止し、改質器20の水蒸気改質反応SRを終了する。この発電用空気の供給は、改質器20の温度が所定温度、例えば、200℃まで低下するまで、継続し、この所定温度となったとき、発電用空気流量調整ユニット45からの発電用空気の供給を停止する。
このように、本実施形態においては、燃料電池モジュール2の運転停止を行うとき、改質器20による水蒸気改質反応SRと発電用空気による冷却とを併用しているので、比較的短時間に、燃料電池モジュールの運転を停止させることができる。
次に、図9乃至図14を参照して、本発明の実施形態による固体酸化物型燃料電池1の制御を説明する。
図9は、需要電力の変化と、燃料供給量、及び燃料電池モジュールから実際に取り出される電流の関係を模式的に示したグラフである。
図9に示すように、燃料電池モジュール2は、図9の最上段に示す需要電力に応じた電力を生成できるように制御される。制御手段である制御部110は、需要電力に基づいて、燃料電池モジュール2が生成すべき目標の電流である燃料供給電流値Ifを、図9の2段目のグラフに示すように設定する。燃料供給電流値Ifは、概ね需要電力の変化に追従するように設定されるが、燃料電池モジュール2の応答速度は需要電力の変化に対して極めて緩慢であるため、需要電力の短周期の急激な変化には追従せず、需要電力に緩やかに追従するように設定される。また、需要電力が固体酸化物型燃料電池の定格発電電力を超えた場合には、燃料供給電流値Ifは定格発電電力に対応する電流値まで追従し、それ以上の電流値に設定されることはない。
制御部110は、図9の3段目のグラフに示すように、燃料供給手段である燃料流量調整ユニット38を制御して、燃料供給電流値Ifを生成できる流量の燃料供給量Frを燃料電池モジュール2に供給する。なお、燃料供給量に対する実際に発電に使用される燃料の割合である燃料利用率が一定であるとすれば、燃料供給電流値Ifと燃料供給量Frは比例する。図9のグラフは、燃料供給電流値Ifと燃料供給量Frが比例するものとして描かれているが、実際には、燃料利用率は運転状態に応じて変更される。
さらに、図9の最下段のグラフに実線で示すように、制御部110に内蔵された取出可能電流指示手段110a(図6)は、燃料電池モジュール2から取り出すことができる電流値である取出可能電流Iinvをインバータ54に対して指示する信号を出力する。インバータ54は、図9の最下段のグラフに一点鎖線で示すように、時々刻々急激に変化する需要電力に応じ、取出可能電流Iinvの範囲内で燃料電池モジュール2から電流を取り出す。このように燃料電池モジュール2から実際に取り出された電流が、実発電電流Iaとなる。需要電力が取出可能電流Iinvを上回る部分については、系統電力から供給され、これが買電力となる。
ここで、図9に示すように、取出可能電流指示手段110aがインバータ54に指示する取出可能電流Iinvは、電流が増加傾向にある場合、燃料供給量Frの変化に対して所定時間遅れて変化するように設定される。例えば、図9の時刻t10においては、燃料供給電流値If及び燃料供給量Frが上昇を始めた後、遅れて、取出可能電流Iinvの増加が開始される。また、時刻t12においても、燃料供給電流値If及び燃料供給量Frの増加の後、遅れて、取出可能電流Iinvの増加が開始される。このように、燃料供給量Frを増加させた後、実際に燃料電池モジュール2から取り出す電流を増加させるタイミングを遅らせることにより、燃料電池モジュール2に供給された燃料が改質器20等を通って燃料電池セルスタック14に到達するまでの時間遅れや、燃料が電池セルスタック14に到達した後、実際の発電反応が可能になるまでの時間遅れに対処している。これにより、各燃料電池セルユニット16において燃料枯れが発生し、燃料電池セルユニット16が損傷されるのを確実に防止している。なお、図9は、燃料供給量Frの増加と、取出可能電流Iinvの増加のタイミングをマクロ的、概略的に示したものであり、詳細については後述する。
また、図9の最下段のグラフ示すように、実際にインバータ54に取り出される実発電電流Ia(一点鎖線)は、需要電力に対応する電流が取出可能電流Iinvを上回っている場合においても、取出可能電流Iinv(実線)よりも僅かに少なくなる。この取出可能電流Iinvと実発電電流Iaの差は、取出可能電流Iinvが増加傾向にある場合(図9のt10〜t11、t12〜t14)には大きく、取出可能電流Iinvが一定値である場合には小さくなる。これは、取出可能電流Iinvを増加させている過渡状態において、オーバーシュート等により、一時的に実発電電流Iaが取出可能電流Iinvを超えてしまうのを確実に防止するためである。
さらに、取出可能電流Iinvがほぼ一定の場合においても、取出可能電流Iinvと実発電電流Iaの間には差が存在する。この差は、実発電電流Iaが取出可能電流Iinvを超えてしまい、燃料電池モジュール2が損傷されるのを防止するために、インバータ54の電流取り出し特性が安全側に設計されているためである。制御部110に内蔵された電流監視手段110b(図6)は、取出可能電流Iinvに対し、インバータ54が実際に取り出した実発電電流Iaを監視する。また、制御部110に内蔵されたインバータ特性補正手段110c(図6)は、電流監視手段110bによる監視結果に基づいて、インバータ54の特性に起因する取出可能電流Iinvと実発電電流Iaの差(燃料電池モジュール2の発電能力と実発電電流Iaの差)が減少するように燃料供給量を補正する。
図10は、電流監視手段110b及びインバータ特性補正手段110cによる制御を示すフローチャートである。図10に示すフローチャートは、固体酸化物型燃料電池1の作動中において、所定の時間間隔で繰り返し実行される。
まず、図10のステップS1において、電流監視手段110bは、直近の過去1分間における取出可能電流Iinvと実発電電流Iaの差の移動平均電流Avを計算する。なお、実発電電流Iaが低下傾向にある場合における取出可能電流Iinv及び実発電電流Iaのデータは、移動平均電流Avの計算から除外される。即ち、需要電力の低下に伴い、発電電力よりも需要電力が下回る状態(逆潮流)となった場合には、インバータは逆潮流がなくなるまで実発電電流Iaを低下させる。このため、実発電電流Iaが低下した場合には、取出可能電流Iinvと実発電電流Iaの差が過渡的に増大し、この過渡的な差を移動平均電流Avに含めると、インバータ54固有の特性を正確に補正することができなくなる。このように、インバータ特性補正手段110cによる補正は、過去の取出可能電流Iinv及び実発電電流Iaのデータの履歴に基づいて行われると共に、取出可能電流Iinvが増加又は一定である場合におけるデータに基づいて行われる。
次に、ステップS2においては、高速追従モード運転中か否かが判断される。高速追従モード運転中である場合にはステップS3に進み、高速追従モード運転中でない場合にはステップS4に進む。高速追従モード運転は、制御部110に内蔵された高速追従手段110d(図6)により実行される運転モードである。高速追従手段110dは、需要電力が取出可能電流Iinvに対応する電力を大幅に上回っており、系統電力から供給される買電力が大きい場合において、燃料電池モジュール2の発電能力(取出可能電流Iinv)を需要電力に急速に追従させるように作用する。高速追従モード運転については、図11乃至図15を参照して後述する。
ステップS3においては、インバータ特性補正手段110cによる補正は実行されず、図10に示すフローチャートの1回の処理を終了する。これは、高速追従モード運転中においては、急激に取出可能電流Iinvが増加されるため、この状態においてインバータ特性補正手段110cによる補正を実行すると、過渡的に、実発電電流Iaが取出可能電流Iinvを超えるリスクがあるためである。或いは、変形例として、高速追従モード運転中においては、インバータ特性補正手段110cによる補正量を抑制するように本発明を構成することもできる。
一方、ステップS4においては、ステップS1において計算された移動平均電流Avに基づいて燃料供給量、発電用空気供給量、及び水供給量が補正される。具体的には、移動平均電流Avに所定の係数である0.8を乗じた電流が、燃料供給電流値If(図9)から減じられ、この減じられた燃料供給電流値Ifに基づいて燃料供給量、発電用空気供給量、及び水供給量が計算される。このように、燃料供給量を低下させる補正と共に、発電用空気供給量及び水供給量を低下させる補正も実行される。これにより、取出可能電流Iinvと実発電電流Iaの差(の移動平均)が大きいほど、燃料供給量、発電用空気供給量、及び水供給量は、大幅に減量補正される。一方、取出可能電流Iinvについては、移動平均電流Avに基づく値の変更は行われない。このため、同一の取出可能電流Iinvに対し、燃料供給量、発電用空気供給量、及び水供給量が減少され、燃料電池モジュール2による実際の発電能力が低下される。これにより、燃料電池モジュール2による発電能力と、取出可能電流Iinvよりも低い実発電電流Iaの差が減少する。
次に図11乃至図15を参照して、制御部110、及び制御部110に内蔵された高速追従手段110dによる燃料、発電用空気、水供給量、及び取出可能電流の制御を説明する。
図11は、制御部による燃料、発電用空気、及び水供給量制御のフローチャートである。図12は制御部による第1遅延制御の一例を示すタイムチャートであり、図13は高速追従手段110dによる高速追従モード運転である第2遅延制御の一例を示すタイムチャートである。図14は、各発電電流に対して決定され得る燃料利用率の値の範囲を示すグラフである。図15は、各発電電流に対して決定され得る空気利用率の値の範囲を示すグラフである。
本実施形態において、制御部110は、第1遅延制御を実行する第1遅延制御手段(図示せず)と、第2遅延制御を実行する高速追従手段110dと、を備えている。第1遅延制御は、図11に示すフローチャートのステップS22において実行される制御である。また、第2遅延制御は、図11に示すフローチャートのステップS6以下、又はステップS14以下で実行される制御であって、第1遅延制御よりも需要電力に対する追従性を高めた制御モードである。
まず、図12を参照して、第1遅延制御手段(図示せず)により実行される第1遅延制御を説明する。図12に示すタイムチャートは、その上段に需要電力、中段に買電力、下段に燃料、発電用空気、水供給量、及び取出可能電流Iinvを示している。
まず、図12の時刻t21において需要電力が増加し始めるが、取出可能電流Iinvは、この増加に直ちに追従することはないため、燃料電池モジュール2から取り出される電力に変化はなく、需要電力の増加分は全て系統電力により賄われるため、需要電力と共に買電力も増加する。次いで、時刻t22において、燃料電池モジュール2による発電電力を増加させるべく、制御部110に内蔵されている第1遅延制御手段(図示せず)は、水供給手段である水流量調整ユニット28に信号を送り、水供給量を増加させる。この時点においても、取出可能電流Iinvは増加されていないため、需要電力と共に買電力が増加する。
次に、時刻t22から5秒後の時刻t23において、第1遅延制御手段(図示せず)は、発電用酸化剤ガス供給手段である発電用空気流量調整ユニット45に信号を送り、空気供給量を増加させる。この時点においても、取出可能電流Iinvは増加されていないため、需要電力の増加分は全て買電力により賄われている。さらに、時刻t23から5秒後の時刻t24において、第1遅延制御手段(図示せず)は、燃料供給手段である燃料流量調整ユニット38に信号を送り、燃料供給量を増加させる。この時点においても、取出可能電流Iinvは増加されていないため、需要電力の増加分は全て買電力により賄われている。
次いで、時刻t24から10秒後の時刻t25において、取出可能電流指示手段110aは、インバータ54に信号を送り、取出可能電流Iinvを20mA増加させる。取出可能電流Iinvの増加と共に、燃料電池モジュール2から実際に取り出される実発電電流Iaも増加するため、需要電力の増加分の一部が固体酸化物型燃料電池1により賄われ、買電力が減少する。このように、時刻t25において取出可能電流Iinvを増加させるために、前もって、水、発電用空気、燃料の各供給量を増加させ、その後所定時間遅延して取出可能電流Iinvを増加させている。これにより、増加された燃料が改質器2内で改質され、燃料電池セルスタック14に行き渡った後に、取出可能電流Iinvが増加され、燃料電池モジュール2から実際に取り出される実発電電流Iaも増加される。なお、時刻t22、t23、t24における水、発電用空気、燃料の各増加量は、発電電流20mAの増加に対応した量に設定されている。
さらに、時刻t25においては、取出可能電流Iinvを更に増加させるべく、水供給量が、もう1段階増加される。同様に、時刻t26、t27において、発電用空気、燃料の供給量が夫々増加され、時刻t28において、取出可能電流Iinvが更に20mA増加される。これにより買電力が減少する。このように、取出可能電流Iinvは、20秒間に1回、20mAずつ5段階増加されることにより、時刻t29において、取出可能電流Iinvが需要電力の増加分に追いつき、買電力は、時刻t21におけるレベルまで低下する。このように、第1遅延制御においては、水供給量、発電用空気供給量、及び燃料供給量を増加させた後、所定時間遅れて、増加された燃料供給量に対応する電力まで取出可能電流Iinv(発電電力)を増加させ、この制御を繰り返すことにより取出可能電流Iinvを需要電力に対応する実発電電流Iaに近づける。なお、本実施形態の固体酸化物型燃料電池1においては、系統電力への逆潮流等を防止するため、燃料電池モジュール2による発電電力は、需要電力が少ない場合でも常に需要電力よりも20W少なく設定されるので、買電力が0になることはない。
次に、図11乃至図15を参照して、第1遅延制御と第2遅延制御の切り換えについて説明する。
まず、図11のステップS1においては、制御部110は、買電力検出手段である電力状態検出センサ126より買電力量QWを読み込む。次に、ステップS2においては、燃料電池モジュール2の現在の発電電力が、定格発電電力よりも何W少ないかが判断される。この差が200Wよりも少ない場合にはステップS22に進み、200W以上の場合にはステップS3に進む。本実施形態においては、定格発電電力=700Wであるため、燃料電池モジュール2の発電電力が500W以上である場合にはステップS22に進む。ステップS22においては、図12により説明した第1遅延制御が実行され、図11のフローの1回の処理を終了する。これは、燃料電池モジュール2による現在の発電電力が定格発電電力に近い状態においては、発電電力増加の余地が少なく、第2遅延制御により追従性を高める必要性が少ないためである。
次に、ステップS3においては、制御部110により、燃料電池モジュール2の出力電圧が第2遅延制御禁止電圧である100V以下であるか否かが判断される。100V以下である場合にはステップS22に進み、100Vよりも高い場合にはステップS4に進む。即ち、燃料電池モジュール2の出力電圧が100V以下に電圧降下している状態において、第2遅延制御により追従性を高めると、燃料電池セルスタック14の劣化を進行させてしまう虞があるため、そのような場合には燃料電池セルスタック14に負担をかけにくい第1遅延制御が選択される。
さらに、ステップS4においては、制御部110により、買電力量QWが200W以下であるか否かが判断される。200W以下である場合にはステップS22に進み、200Wよりも多い場合にはステップS5に進む。ステップS22においては第1遅延制御が実行され、図11のフローの1回の処理を終了する。これは、買電力量QWが200W以下である状態においては、発電電力増加の余地が少なく、第2遅延制御により追従性を高める必要性が少ないためである。
次いで、ステップS5においては、制御部110により、買電力量QWが400W以上であるか否かが判断される。400W以上である場合にはステップS14に進み、400Wよりも少ない場合(200〜400Wの場合)にはステップS6に進む。ステップS6以下においては2倍速第2遅延制御が実行され、ステップS14以下においては3倍速第2遅延制御が実行される。ここで、2倍速第2遅延制御においては、第1遅延制御における2段階分の燃料供給量等の増加量が1段階で増加され、3倍速第2遅延制御においては、第1遅延制御における3段階分の燃料供給量等の増加量が1段階で増加される。このように、第2遅延制御では、燃料電池モジュール2による現在の発電電力と需要電力の差である買電力量が多い場合には、少ない場合よりも1段階の増加量が多くされ、追従性の高い制御が選択される。ただし、高速追従手段110dが実行する第2遅延制御は、2倍速第2遅延制御及び3倍速第2遅延制御の2種類が予め設定されており、これらの何れかが選択される。従って、第2遅延制御においても、1段階での増加量は、第1遅延制御における3段階分の増加量以下に制限されている。
ステップS14においては、高速追従手段110dにより、3倍速第2遅延制御による、水、発電用空気、燃料の各供給量が計算される。図12により説明した第1遅延制御においては、1段階20mAずつ取出可能電流Iinvが増加され、水、発電用空気、燃料の各供給量も、増加後の取出可能電流Iinvに対応した供給量に前もって変更されていた。一方、図13に示すように、3倍速第2遅延制御においては、第1遅延制御における3段階分に相当する60mAの取出可能電流Iinvの増加に対応する水、発電用空気、燃料が1回に増量される。ステップS14においては、3段階分増加された取出可能電流Iinvに対応した水、発電用空気、燃料の各供給量が計算される。
次に、ステップS15においては、買電力量QWの急減が発生しているか否かが判断される。買電力量QWが急激に減少している場合にはステップS22に進み、急激に減少していない場合にはステップS16に進む。買電力量QWは、需要電力が急激に減少することにより、これに伴って急激に減少する。従って、3倍速第2遅延制御を実際に開始する前に買電力量QWが急激に低下している場合には、買電力量QWが更に低下することが予想されるため、取出可能電流Iinvを急激に増加させるための3倍速第2遅延制御は中止され、第1遅延制御が実行される。
ステップS16においては、ステップS14において計算された発電用空気、燃料の各供給量が、許容される各利用率の範囲内にあるか否かが判断される。まず、燃料については、各発電電流に対して許容される燃料利用率の範囲が図14に示すように予め設定されている。燃料利用率とは、発電電流を出力するために必要な燃料供給量を、実際に供給される燃料供給量で除した値である。この燃料利用率は高いほど高効率で発電できることになるが、高すぎる場合には燃料枯れが発生し、また、燃料電池モジュール2が熱自立できなくなり、燃料電池セルスタック14の温度が低下する。逆に、燃料利用率が低い場合には発電効率が低下し、また、低すぎる場合には、発電に利用されずに燃焼室18内で燃焼される燃料が増えるために、燃料電池モジュール2内の温度が過剰に上昇する。このため、燃料利用率には予め許容範囲が設定されている。
従って、ステップS16においては、図13の時刻t34における取出可能電流Iinvに対し、時刻t34において増加された燃料供給量が、図14のように規定されている燃料利用率の許容範囲内にあるか否かが判断される。さらに、時刻t38における、3段階増加された後の取出可能電流Iinvに対し、時刻t34において増加された燃料供給量が、燃料利用率の許容範囲内にあるか否かが判断される。
同様に、発電用空気についても、各発電電流に対して許容される空気利用率の範囲が図15に示すように予め設定されている。空気利用率とは、取出可能電流Iinvを出力するために必要な発電用空気供給量を、実際に供給される発電用空気供給量で除した値である。この空気利用率が高すぎる場合には空気枯れが発生し燃料電池セルスタック14を損傷してしまうことがある。逆に、空気利用率が低い場合には、必要以上の空気が燃料電池モジュール2内を通過することになるため、空気によって燃料電池セルスタック14の熱が奪われ、この熱を補うために燃料が消費されるので発電効率が低下する。このため、空気利用率には予め許容範囲が設定されている。
従って、ステップS16においては、図13の時刻t33における取出可能電流Iinvに対し、時刻t33において増加された発電用空気供給量が、図15のように規定されている空気利用率の許容範囲内にあるか否かが判断される。さらに、時刻t38における3段階増加された後の取出可能電流Iinvに対し、時刻t33において増加された発電用空気給量が、空気利用率の許容範囲内にあるか否かが判断される。
燃料利用率及び空気利用率が各許容範囲内にある場合には、ステップS18に進み、許容範囲内にない場合にはステップS17に進む。ステップS17においては、ステップS14において計算された燃料供給量、発電用空気が修正される。即ち、ステップS16において判断された燃料利用率が、許容されている燃料利用率よりも高くなった場合には、燃料利用率が許容範囲内に入るように、燃料が増量補正される。逆に、ステップS16において判断された燃料利用率が、許容されている燃料利用率よりも低くなった場合には、燃料利用率が許容範囲内に入るように、燃料が減量補正される。同様に、ステップS16において判断された各空気利用率も許容範囲内に入るように修正される。
次に、ステップS18においては、ステップS14において計算された水供給量と、ステップS14において計算され、又はステップS17において修正された燃料供給量から計算されるS/C(水蒸気量と炭素量の比)が許容範囲内にあるか否かが判断される。ここで、水蒸気量と炭素量の比S/C=1とは、供給された燃料に含まれる炭素の全量が、供給された水(水蒸気)により化学的に過不足なく水蒸気改質される状態を意味する。本実施形態においては、S/Cの許容範囲は2.5乃至3.5に設定されている。従って、水蒸気量と炭素量の比S/C=2.5とは、燃料を水蒸気改質するために化学的に必要最小限の水蒸気量の2.5倍の水蒸気(水)が供給されている状態を意味する。なお、実際には、S/C=1となる水蒸気量では改質器20内において炭素析出が発生してしまうため、S/C=2.5程度となる水蒸気量が燃料を水蒸気改質するための適量である。
また、ステップS18においては、燃料供給量を増加させた前後におけるS/Cが許容範囲内にあるか否かが判断される。即ち、図13の時刻t32において、水供給量が増加された後、時刻t34において燃料供給量が増加されるまでの間のS/C、及び、水供給量、燃料供給量とも増加された時刻t34〜t35の間のS/Cの両方について、2.5乃至3.5の範囲内にあるか否かが判断される。両方のS/Cが許容範囲内にある場合にはステップS20に進み、許容範囲内にない場合にはステップS19に進む。
ステップS19においては、各S/Cが許容範囲内に入るように、水供給量が修正される。即ち、S/Cが2.5よりも小さい場合には、水供給量が増量補正され、S/Cが3.5よりも大きい場合には、水供給量が減量補正される。
ステップS20においては、ステップS14において計算され、又は、ステップS17又はS19で修正された量の水、発電用空気、燃料が順次供給される。即ち、図13の時刻t31において需要電力が増加した後、時刻t32において、水供給量が増加される。次に、時刻t32から5秒後の時刻t33において、高速追従手段110dは、空気供給量を増加させる。さらに、時刻t33から5秒後の時刻t34において、高速追従手段110dは、燃料供給量を増加させる。このように、3倍速第2遅延制御では、第1遅延制御における3回分程度の増加量が1回で増加されるため、第1遅延制御よりも急激に水、発電用空気、燃料の供給量が増加される。
次に、図11のステップS21においては、取出可能電流Iinvが1段階ずつ3回、増加される。即ち、時刻t34から10秒後の時刻t35において、取出可能電流指示手段110aは、インバータ54に信号を送り、取出可能電流Iinvを20mA増加させる。さらに、時刻t35から0.5秒後の時刻t36において、取出可能電流Iinvは更に20mA増加され、その0.5秒後の時刻t37において、取出可能電流Iinvは更に20mA増加される。これにより、取出可能電流Iinvは、時刻t32において水供給量が増加された後、21秒で、第1遅延制御における3段階分の60mA増加される。このように、3倍速第2遅延制御における取出可能電流Iinv(発電電力)の1段階の増加量は、第1遅延制御における1段階の増加量と同じである。しかしながら、3倍速第2遅延制御においては、水、発電用空気、燃料の供給量は、取出可能電流Iinvの3段階分の増加量を1回で増加させている。
このように、図11のステップS14以下で実行される3倍速第2遅延制御により、約3倍の速さで、取出可能電流Iinvは需要電力に追従し、これにより買電力量QWが減少される。また、3倍速第2遅延制御では、第1遅延制御における3回分程度の増加量が1回で増加され、第1遅延制御よりも急激に供給量が増加されるのに対して、取出可能電流Iinv(発電電力)の増加は、1回で3段階分の取出可能電流Iinvを増加させることはなく、0.5秒ずつ間隔をあけて3回で増加される。このように、取出可能電流Iinvの増加は、燃料供給量等の増加よりも緩やかに行われる。
次いで、図13の時刻t37においては、買電力量QWが200Wを超え、400W未満となっているため、図11のステップS6以下の、2倍速第2遅延制御が実行される。ステップS6乃至S13により実行される2倍速第2遅延制御は、ステップS6において計算される水、発電用空気、燃料の1回の増加量が、第1遅延制御における増加量の2倍にされていることを除き、上述した3倍速第2遅延制御と同様である。
即ち、ステップS12においては、ステップS6において計算され、又は、ステップS8又はS11で修正された量の水、発電用空気、燃料が順次供給される。即ち、図13の時刻t37において、水供給量が増加される。次に、時刻t37から5秒後の時刻t38において、高速追従手段110dは、空気供給量を増加させる。さらに、時刻t38から5秒後の時刻t39において、高速追従手段110dは、燃料供給量を増加させる。
次に、ステップS13においては、取出可能電流Iinvが1段階ずつ2回、増加される。即ち、時刻t39から10秒後の時刻t40において、取出可能電流指示手段110aは、取出可能電流Iinvを20mA増加させる。さらに、時刻t40から0.5秒後の時刻t41において、取出可能電流Iinvは更に20mA増加される。これにより、取出可能電流Iinvは、時刻t37において水供給量が増加された後、20.5秒で、第1遅延制御における2段階分の40mA増加される。このように、図11のステップS6以下で実行される2倍速第2遅延制御により、約2倍の速さで、取出可能電流Iinvは需要電力に追従し、これにより買電力量QWが減少される。
本発明の実施形態の固体酸化物型燃料電池1によれば、電流監視手段110bが取出可能電流Iinv及び実発電電流Iaを監視し(図10、ステップS1)、インバータ特性補正手段110cは、この監視結果に基づいてインバータ54の特性に起因した発電能力に対する実発電電流の不足を減少させる(図10、ステップS4)。これにより、インバータ54が指示された取出可能電流Iinvよりも少ない電流しか取り出さない特性を有している場合でも、発電能力に近い電流が、実際に燃料電池モジュール2から取り出され、燃料電池モジュール2に余分な発電能力を付与することによる燃料の浪費を抑制することができる。また、燃料電池モジュール2に余分な発電能力を付与することにより発生する余剰燃料が燃料電池モジュール2内を加熱し、燃料電池モジュール2内の温度の過剰な上昇を抑制することができる。
また、本実施形態の固体酸化物型燃料電池1によれば、過去の取出可能電流Iinv及び実発電電流Iaのデータの履歴に基づいて(図10、ステップS1)補正が行われる(図10、ステップS4)ので、過剰な補正により実発電電流Iaが取出可能電流Iinvを上回ってしまうリスクを回避することができ、より安全にエネルギー効率を向上させることができる。
さらに、本実施形態の固体酸化物型燃料電池1によれば、実発電電流Iaが増加又は一定の場合における取出可能電流Iinv及び実発電電流Iaのデータに基づいて(図10、ステップS1)補正が実行される(図10、ステップS4)。これにより、取出可能電流Iinvと実発電電流Iaの乖離が生じやすい実発電電流Ia低下時のデータが除外されるので、より正確にインバータ特性を補正することができる。
また、本実施形態の固体酸化物型燃料電池1によれば、燃料電池モジュール2の発電能力を急速に増加させる高速追従モード運転時(図13)における補正が禁止されるので、過渡的な変化の中で実発電電流Iaが取出可能電流Iinvを上回り、燃料枯れ等の不具合が発生するリスクを確実に回避することができる。
さらに、本実施形態の固体酸化物型燃料電池1によれば、燃料供給量と共に、発電用空気及び水の供給量も補正される(図10、ステップS4)ので、排気中の一酸化炭素濃度等のエミッション性能、燃料電池モジュール2内の温度、改質器20における改質反応等に対する悪影響を回避しながらエネルギー効率を向上させることができる。
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、上述した実施形態に種々の変更を加えることができる。特に、上述した実施形態においては、取出可能電流Iinvに対して燃料供給量を減少させることにより、燃料電池モジュールの発電能力を低下させ、発電能力と実際に取り出される実発電電流の差を減少させていたが、変形例として、燃料供給量に対して取出可能電流Iinvを増加させる(実際に取り出し可能な電流よりも取出可能電流Iinvを大きくする)ことによって実際に取り出される実発電電流を増加させ、発電能力と実発電電流の差を減少させるように本発明を構成することもできる。
また、上述した実施形態においては、実発電電流が減少している場合のデータを除き、実発電電流が増加又は一定の場合におけるデータに基づいて、燃料供給量を補正していたが、変形例として、実発電電流が減少している場合におけるデータも使用して、燃料供給量又は取出可能電流Iinvを補正するように、本発明を構成することもできる。或いは、実発電電流が減少している場合、実発電電流が一定の場合、及び実発電電流が増加している場合夫々について移動平均電流を計算し、これらの移動平均電流に基づいて補正を行うように、本発明を構成することもできる。また、取出可能電流Iinvと実発電電流との差を実発電電流の変化傾向に応じて記憶しておき、記憶された差に基づいて、取出可能電流Iinvと実発電電流の差を減少させるべく補正量を学習させるように本発明を構成することもできる。