JP2011076941A - 固体電解質型燃料電池 - Google Patents

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俊治 大塚
Katsuhisa Tsuchiya
勝久 土屋
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司 重住
Toshiharu Oe
俊春 大江
Kiyotaka Nakano
清隆 中野
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Abstract

【課題】燃料電池モジュールに供給する発電用空気の最適化を図ることにより、空気枯れによるセルの劣化を確実に防止すると共に、CO濃度が高まることを確実に防止する。
【解決手段】需要電力Pに基づいて指令電流設定部111で設定された指令電流Isを生成できるように燃料流量調整ユニット38を制御し、生成された電力をインバータ54へ出力させる制御部110を有し、この制御部は、各時刻において燃料電池モジュール2に供給される発電用空気供給量Aが、常に、燃料電池モジュール2からインバータ54へ出力される実発電電力Prに対応した基準発電用空気供給量A0以上になり、且つ発電用空気供給量と基準発電用空気供給量の差である発電用空気オフセットβが指令電力設定部により設定された指令電力の変化に応じて変化し、この指令電力の変化率の絶対値が小さい状態に比べて大きい状態では発電用空気余裕量が多くなるように制御する。
【選択図】図6

Description

本発明は、固体電解質型燃料電池に係わり、特に、燃料と発電用空気を反応させることにより、需要電力に基づいて可変の電力を発生する固体電解質型燃料電池に関する。
固体電解質型燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell:以下「SOFC」とも言う)は、電解質として酸化物イオン導電性固体電解質を用い、その両側に電極を取り付け、一方の側に燃料ガスを供給し、他方の側に酸化剤(空気、酸素等)を供給して、比較的高温で発電反応を生じさせて発電を行う燃料電池である。
このSOFCにおいては、酸化物イオン導電性固体電解質を通過した酸素イオンと燃料との反応によって水蒸気又は二酸化炭素を生成し、電気エネルギー及び熱エネルギーが発生する。電気エネルギーは、SOFC外部に取り出されて、各種電気的用途に使用される。一方、熱エネルギーは、燃料、SOFC及び酸化剤等に伝達され、これらの温度上昇に使用される。
従来のSOFCは発電電力が一定に保たれた状態で運転されるのが一般的であったが、夜間に電気需要が殆どない施設や昼夜の電気需要が大きく変化する施設などへSOFCを設置する場合には、需要電力に応じて発電電力を変化させて負荷追従を行う必要がある。具体的には、SOFCにおいて需要電力に応じて発電電力を変化させて負荷追従を行うには、互いが直列に接続された百数十本の複数の固定電解質型燃料電池セルを備えた燃料電池モジュールの改質器に燃料、水、改質用空気を供給し、改質器で行われる水蒸気改質の量を変化させる。そして、この水蒸気改質によって発生した水素を百数十本の複数のセルに均等に供給し、発電用空気と共に発電反応を生じさせる。この際、燃料の増量や発電反応によって電気出力に見合ったセルの温度に高める必要もある。
しかしながら、従来のSOFCにおいては、燃料電池モジュールの改質器への燃料や水の供給遅れ、改質反応の遅れや不安定性、百数十本の複数のセル全体への燃料の供給遅れや供給斑、発電用空気が百数十本の複数のセル全体に行き渡るまでの遅れや時間斑、改質後の燃料の状態、個々のセルの特性差に起因した発電反応の遅れやセル間での発電反応の斑、セルの温度上昇の斑等、負荷追従を不安定にさせる多くの要因があり、需要電力に応じて負荷追従を迅速且つ安定に行うことが非常に難しいという問題がある。
また、従来のSOFCにおいては、上述したような負荷追従を不安定にさせる多くの要因を抱えているため、セルで実際に発電されている発電量(実発電電力)が、需要電力の負荷によってインバータで要求される電力(指令電力)に追従できず、セルの実発電電力が指令電力を下回って不足した状態となっているにもかかわらず、インバータに要求された通りの指令電力がセルから引き出されてしまうため、セルに多大なダメージを与えてしまうという問題がある。
さらに、従来のSOFCにおいては、特に、需要電力の変化が大きく不安定な状態においては、需要電力の負荷の追従性が低下し、燃料電池モジュール内の空気枯れや高濃度のCOが発生しやすくなるが、このような燃料電池モジュール内の空気枯れや高濃度COの発生を確実に防止するために、需要電力の負荷に対して安全性を過剰に見込んで追従を行った場合には、返ってSOFCの省エネ性能を低下させてしまうという問題もある。
一方、例えば、特許文献1には、需要電力に応じて発電電力を変化させるSOFC等の燃料電池として、需要電力の負荷量から増減量が決定された燃料が燃料電池に供給される前に、発電用空気を先に供給することにより、燃料電池の不完全燃焼によるCO排出量を低減させるものが記載されている。
特開2008−210629号公報
しかしながら、上述した特許文献1に記載された燃料電池においては、燃料電池に供給される燃料と発電用空気との関係において、単に両者が燃料電池に供給されるタイミングのみを制御しているに過ぎず、発電用空気の供給量について燃料の増減量に対応させて最適に補正を行うものではない。
また、上述した従来の燃料電池においては、需要電力の負荷に追従させるために燃料電池モジュールに供給される燃料の供給量を変化させても、それに対応した発電用空気の供給、改質、燃焼、発電が複数の固体電解質型燃料電池セル全体で理想通りに行われているか否かは不透明である。特に、燃料電池に供給される発電用空気供給量が、燃料電池モジュールからインバータへ出力される実発電電力に対応した基準発電用空気供給量よりも少ない場合には、確実に空気枯れによって燃料電池セルの劣化が生じたり、CO濃度が高まってしまうという問題がある。さらに、燃料電池に供給される発電用空気供給量が、過剰すぎる場合には、セルを過剰に冷却してしまったり、燃料電池モジュール内の圧力の変動を生じさせてしまうという問題もある。
そこで、本発明は、上述した従来技術の課題を解決するためになされたものであり、燃料電池モジュールに供給する発電用空気の最適化を図ることにより、空気枯れによるセルの劣化を確実に防止することができると共に、CO濃度が高まることを確実に防止することができる固体電解質型燃料電池を提供することを目的としている。
上記の目的を達成するために、本発明は、燃料と発電用空気を反応させることにより、需要電力に基づいて可変の電力を発生する固体電解質型燃料電池であって、複数の固体電解質型燃料電池セルを備えた燃料電池モジュールと、上記燃料電池モジュールに燃料を供給する燃料供給手段と、上記燃料電池モジュールに発電用空気を供給する発電用空気供給手段と、上記燃料電池モジュールに水を供給する水供給手段と、上記燃料電池モジュールによって発電された電力を受け入れ、交流に変換するインバータと、需要電力に基づいて、上記燃料電池モジュールが発電すべき指令電力を設定する指令電力設定部と、この指令電力設定部により設定された指令電力を生成できるように上記燃料供給手段、上記発電用空気供給手段、及び、上記水供給手段を制御し、上記燃料電池モジュールにおいて生成された電力を上記インバータへ出力させる制御部と、を有し、上記制御部は、上記インバータに指令を与えて上記燃料電池モジュールから実発電電力を取り出すと共に、各時刻において上記燃料電池モジュールに供給される発電用空気供給量が、常に、その時刻における上記燃料電池モジュールから上記インバータへ出力される実発電電力に対応した基準発電用空気供給量以上になり、且つ上記発電用空気供給量と上記基準発電用空気供給量の差である発電用空気余裕量が、上記指令電力設定部により設定された指令電力の変化に応じて変化し、この指令電力の変化率の絶対値が小さい状態に比べて大きい状態では上記発電用空気余裕量が多くなるように上記発電用空気供給手段を制御することを特徴としている。
このように構成された本発明においては、従来の固体電解質型燃料電池では需要電力の負荷に追従させるために燃料供給手段を制御し、燃料電池モジュールに供給される燃料の供給量を変化させても、それに対応した改質用空気及び発電用空気の供給、改質、燃焼、発電が複数の固体電解質型燃料電池セル全体で理想通りに行われているか否かは不透明であるが、本発明の固体電解質型燃料電池は、各時刻において燃料電池モジュールに供給される発電用空気供給量が、常に、その時刻において燃料電池モジュールからインバータへ出力される実発電電力に対応した基準発電用空気供給量以上になるように制御部が発電用空気供給手段を制御するため、複数の固体電解質型燃料電池セルの各々において、空気枯れによるセルの劣化を確実に防止することができると共に、CO濃度が高まることを確実に防止することができる。また、本発明においては、発電用空気供給量と基準発電用空気供給量の差である発電用空気余裕量が、指令電力設定部により設定された指令電力の変化に応じて変化し、この指令電力の変化率の絶対値が小さい状態に比べて大きい状態では発電用空気余裕量が多くなるように制御部が発電用空気供給手段を制御するため、例えば、指令電力の変化率が比較的小さい状態において発電用空気を燃料電池モジュールに供給する場合には、固体電解質型燃料電池セルの各々に発電用空気を過剰に供給することによるセルの過剰冷却を抑制すると共に、圧力変動の緩和を図ることができるため、セルの耐久性の低下を防止することができる。
本発明において、好ましくは、上記制御部は、各時刻において上記燃料電池モジュールに供給される燃料供給量が、常に、その時刻において上記燃料電池モジュールから上記インバータへ出力される実発電電力に対応した基準燃料供給量以上になり、且つ上記燃料供給量と上記基準燃料供給量の差である燃料余裕量が、上記指令電力設定部により設定された指令電力の変化に応じて変化し、この指令電力の変化率の絶対値が小さい状態に比べて大きい状態では上記燃料余裕量が多くなるように上記燃料供給手段を制御すると共に、上記発電用空気余裕量が上記燃料供給量に対応させて補正されるように上記発電用空気供給手段を制御する。
このように構成された本発明においては、各時刻において燃料電池モジュールに供給される発電用空気余裕量が、燃料供給手段から燃料電池モジュールに供給される燃料供給量に対応させて補正されるように制御部が発電用空気供給手段を制御するため、需要電力の負荷に追従させるために、燃料供給量と発電用空気供給量を増加補正する際にも、負荷に対して補正した実際の燃料供給量に対応させて発電用空気余裕量を補正することにより、発電反応に用いられる燃料量と発電用空気量のバランスを最適に保つことができ、空気枯れによるセルの劣化を確実に防止することができると共に、CO濃度の抑制を図ることができる。
本発明において、好ましくは、上記制御部は、上記指令電力の変化率の絶対値が所定のしきい値未満となる場合には、上記発電用空気余裕量を増加させる補正を禁止し、上記指令電力の変化率の絶対値が所定のしきい値以上となる場合には、上記発電用空気余裕量を増加させる補正を行うように上記発電用空気供給手段を制御する。
このように構成された本発明においては、指令電力の変化率の絶対値が所定のしきい値未満となる場合には、制御部が発電用空気余裕量を増加させる補正を禁止し、指令電力の変化率の絶対値が所定のしきい値以上となる場合には、制御部が発電用空気余裕量を増加させる補正を行うように発電用空気供給手段を制御するため、需要電力の負荷変化が少なく熱自立が可能な状況では、発電用空気によるセルの冷却を抑制することにより、省エネを図ることができる。また、燃料電池モジュールに供給する発電用空気を需要電力の微小な負荷変化に追従させないことにより、燃料電池モジュールに供給する発電用空気の気流を安定させて、少ない空気でも確実にセルに供給し、空気枯れを確実に防止することができる。
本発明において、好ましくは、上記所定のしきい値は、上記指令電力の変化率が正となる領域よりも負となる領域の方が小さくなるように設定されている。
このように構成された本発明においては、指令電力の変化率が負となる領域では、指令電力の変化率が正となる領域よりも、発電用空気余裕量を増加させる補正を行いやすくさせることにより、需要電力の低下により負荷の追従性が悪い燃料が発電に使われずに過剰に燃焼側に供給されてCO濃度が高まるのを発電用空気で燃焼させることによって防止することができる。
本発明において、好ましくは、上記制御部は、各時刻において上記燃料電池モジュールに供給される水供給量が、常に、その時刻において上記燃料電池モジュールから上記インバータへ出力される実発電電力に対応した基準水供給量以上になり、且つ上記水供給量と上記基準水供給量の差である水余裕量が、上記指令電力設定部により設定された指令電力の変化に応じて変化し、この指令電力の変化率の絶対値が小さい状態に比べて大きい状態では上記水余裕量が多くなるように上記水供給手段を制御し、上記基準発電用空気供給量に対する上記発電用空気余裕量の割合が、上記基準水供給量に対する上記水余裕量の割合よりも大きくなるように上記発電用空気供給手段を制御する。
このように構成された本発明においては、指令電力の変化率の絶対値が小さい状態に比べて大きい状態では水余裕量が多くなるように制御部が水供給手段を制御するため、燃料電池モジュールに供給される発電用空気を増加させることによって、モジュールの内圧が上昇すると共にモジュール内において空気の斑が生じ、モジュールに燃料を供給しにくい状況となっても、燃料を増加させると共に水の供給量を高めることにより、モジュール内における炭素析出を抑制することができる。また、基準発電用空気供給量に対する発電用空気余裕量の割合が、基準水供給量に対する水余裕量の割合よりも大きくなるように制御部が発電用空気供給手段を制御するため、増加させた燃料が複数のセルのうちの特定のセルのみに過剰に供給されることによるセル全体の空気枯れを確実に防止することができる。
本発明において、好ましくは、上記制御部は、上記指令電力が減少する場合の上記発電用空気余裕量の方が上記指令電力が増加する場合の上記発電用空気余裕量よりも多くなるように上記発電用空気供給手段を制御する。
このように構成された本発明においては、指令電力が減少する場合の発電用空気余裕量の方が指令電力が増加する場合の発電用空気余裕量よりも多くなるように制御部が発電用空気供給手段を制御するため、需要電力の低下により負荷の追従性が悪い燃料が発電に使われずに過剰に燃焼側に供給されてCO濃度が高まるのを発電用空気で燃焼させることによって防止することができる。
本発明において、好ましくは、上記制御部は、上記指令電力が増加する場合には上記発電用空気余裕量を減少させて上記指令電力の変化を抑制し、上記指令電力が減少する場合には上記発電用空気余裕量を増大させて上記指令電力の変化に対する負荷追従性を高めるように上記発電用空気供給手段を制御する。
このように構成された本発明においては、指令電力が増加する場合には発電用空気余裕量を減少させて指令電力の変化を抑制するように制御部が発電用空気供給手段を制御するため、指令電力の変化に対する負荷追従性を抑制して発電用空気の供給の安定化を図ると共に、発電用空気によってセルが過剰に冷却されるのを抑制することができ、発電効率を高めることができる。一方、指令電力が減少する場合には発電用空気余裕量を増大させて指令電力の変化に対する負荷追従性を高めるように発電用空気供給手段を制御するため、省エネを図ることができ、セルの空気枯れを確実に防止することができる。
本発明において、好ましくは、更に、上記燃料供給手段から上記燃料電池モジュールに供給される燃料量を検出する燃料検出手段を有し、上記制御部は、上記指令電力を増加させる時には上記発電用空気供給量が上記燃料供給量よりも所定時間早く増大され、上記指令電力が減少している場合には上記発電用空気供給量が上記燃料供給量よりも所定時間遅れて減少されるように上記燃料供給手段及び上記発電用空気供給手段を制御し、上記発電用空気余裕量は、上記燃料検出手段が検出した燃料量の検出値に基づいて決定される。
このように構成された本発明においては、指令電力を増加させる時には発電用空気供給量が燃料供給量よりも所定時間早く増大されるように制御部が発電用空気供給手段を制御するため、燃料の増量供給を行う前に、燃料電池モジュールに供給する発電用空気の気流を予め安定させて、モジュール内の圧力斑を抑制することによって燃料枯れになることを防止することができる。これらを配慮した上で、発電用空気余裕量についても燃料検出手段が検出した燃料量の検出値に基づいて決定されるため、モジュール内の空気枯れと圧力斑を確実に抑制することができる。一方、指令電力が減少させる時には発電用空気供給量が燃料供給量よりも所定時間遅れて減少されるように制御部が発電用空気供給手段を制御するため、燃料の減量供給の制御が開始してからセル全体にその制御結果が反映されるまでに燃料供給の遅れが生じたり、発電反応のばらつきが生じたりしても、空気枯れやCO濃度の高まりを確実に防ぐことができる。
本発明において、好ましくは、上記制御部は、上記指令電力の変化率の絶対値が大きい程上記発電用空気余裕量が多くなるように上記発電用空気供給手段を制御する。
このように構成された本発明においては、指令電力の変化率の絶対値が大きい程発電用空気余裕量が多くなるように制御部が発電用空気供給手段を制御するため、燃料供給量を司る指令電力の変化率に対応させて発電用空気余裕量を変化させることができ、空気枯れやCOの発生を確実に抑制することができる。
本発明において、好ましくは、上記制御部は、上記指令電力を少なくとも減少させる場合には上記指令電力が減少される所定期間前に上記発電用空気余裕量を増加させるように上記発電用空気供給手段を制御する。
このように構成された本発明においては、指令電力を少なくとも減少させる場合には指令電力が減少される所定期間前に発電用空気余裕量を増加させるように制御部が発電用空気供給手段を制御するため、指令電力を減少させて発電量を減少させた際に、例えば、改質状態や燃料の供給遅れ等の燃料電池の様々な状態変化に応じて最適な燃料の供給が行われず、過剰な燃料量の燃焼に伴って空燃比が燃料リッチになったり、CO濃度が高まることを抑制することができる。
本発明において、好ましくは、上記制御部は、上記指令電力を減少させる変化率が大きい程上記発電用空気余裕量が多くなるように上記発電用空気供給手段を制御する。
このように構成された本発明においては、指令電力を減少させる変化率が大きい程発電用空気余裕量が多くなるように制御部が発電用空気供給手段を制御するため、指令電力の減少量に応じて発電用空気余裕量を最適にすることができ、セルの全体に発電用空気を過剰に供給することによるセルへの冷却の影響を抑制すると共に、CO濃度が異常に高まることも防止することができる。
本発明の固体電解質型燃料電池(SOFC)によれば、燃料電池モジュールに供給する発電用空気の最適化を図ることにより、空気枯れによるセルの劣化を確実に防止することができると共に、CO濃度が高まることを確実に防止することができる。
本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池を示す全体構成図である。 本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池の燃料電池モジュールを示す正面断面図である。 図2のIII-III線に沿った断面図である。 本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池の燃料電池セルユニットを示す部分断面図である。 本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池の燃料電池セルスタックを示す斜視図である。 本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池を示すブロック図である。 本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池の起動時の動作を示すタイムチャートである。 本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池の運転停止時の動作を示すタイムチャートである。 本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池の需要電力に対応して発電出力値を変更する負荷追従時の運転状態を示すタイムチャートである。 本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池における指令電流に対する燃料供給量、発電用空気供給量、水供給量の推移の例を示すタイムチャートである。 本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池における指令電流の変化率に対する発電用空気オフセットβの可変オフセット部分β2の特性を示す図である。 本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池における指令電流の変化率に対する水オフセットγの可変オフセット部分γ2の特性を示す図である。 本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池における指令電流の変化率に対する発電用空気オフセットβの可変オフセット部分β2の増加補正割合と水オフセットγの可変オフセット部分γ2の増加補正割合を比較した図である。 本発明の他の実施形態による固体電解質型燃料電池における指令電流の変化率に対する発電用空気オフセットβの可変オフセット部分β2の特性を示す図である。
次に、添付図面を参照して、本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)を説明する。
図1は、本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)を示す全体構成図である。この図1に示すように、本発明の第1実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)1は、燃料電池モジュール2と、補機ユニット4を備えている。
燃料電池モジュール2は、ハウジング6を備え、このハウジング6内部には、断熱材(図示せず但し断熱材は必須の構成ではなく、なくても良いものである。)を介して密封空間8が形成されている。なお、断熱材は設けないようにしても良い。この密閉空間8の下方部分である発電室10には、燃料ガスと酸化剤(空気)とにより発電反応を行う燃料電池セル集合体12が配置されている。この燃料電池セル集合体12は、10個の燃料電池セルスタック14(図5参照)を備え、この燃料電池セルスタック14は、16本の燃料電池セルユニット16(図4参照)から構成されている。このように、燃料電池セル集合体12は、160本の燃料電池セルユニット16を有し、これらの燃料電池セルユニット16の全てが直列接続されている。
燃料電池モジュール2の密封空間8の上述した発電室10の上方には、燃焼室18が形成され、この燃焼室18で、発電反応に使用されなかった残余の燃料ガスと残余の酸化剤(空気)とが燃焼し、排気ガスを生成するようになっている。
また、この燃焼室18の上方には、燃料ガスを改質する改質器20が配置され、上述した残余ガスの燃焼熱によって改質器20を改質反応が可能な温度となるように加熱している。さらに、この改質器20の上方には、燃焼熱を受けて空気を加熱するための空気用熱交換器22が配置されている。
次に、補機ユニット4は、水道等の水供給源24からの水を貯水してフィルターにより純水とする純水タンク26と、この貯水タンクから供給される水の流量を調整する水流量調整ユニット28(モータで駆動される「水ポンプ」等)を備えている。また、補機ユニット4は、都市ガス等の燃料供給源30から供給された燃料ガスを遮断するガス遮断弁32と、燃料ガスから硫黄を除去するための脱硫器36と、燃料ガスの流量を調整する燃料流量調整ユニット38(モータで駆動される「燃料ポンプ」等)を備えている。さらに、補機ユニット4は、空気供給源40から供給される酸化剤である空気を遮断する電磁弁42と、空気の流量を調整する改質用空気流量調整ユニット44(モータで駆動される「空気ブロア」等)及び発電用空気流量調整ユニット45(モータで駆動される「空気ブロア」等)と、改質器20に供給される改質用空気を加熱する第1ヒータ46と、発電室に供給される発電用空気を加熱する第2ヒータ48とを備えている。これらの第1ヒータ46と第2ヒータ48は、起動時の昇温を効率よく行うために設けられているが、省略しても良い。
次に、燃料電池モジュール2には、排気ガスが供給される温水製造装置50が接続されている。この温水製造装置50には、水供給源24から水道水が供給され、この水道水が排気ガスの熱により温水となり、図示しない外部の給湯器の貯湯タンクへ供給されるようになっている。
また、燃料電池モジュール2には、燃料ガスの供給量等を制御するための制御ボックス52が取り付けられている。
さらに、燃料電池モジュール2には、燃料電池モジュールにより発電された電力を外部に供給するための電力取出部(電力変換部)であるインバータ54が接続されている。
次に、図2及び図3により、本発明の実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)の燃料電池モジュールの内部構造を説明する。図2は、本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)の燃料電池モジュールを示す側面断面図であり、図3は、図2のIII-III線に沿った断面図である。
図2及び図3に示すように、燃料電池モジュール2のハウジング6内の密閉空間8には、上述したように、下方から順に、燃料電池セル集合体12、改質器20、空気用熱交換器22が配置されている。
改質器20は、その上流端側に純水を導入するための純水導入管60と改質される燃料ガスと改質用空気を導入するための被改質ガス導入管62が取り付けられ、また、改質器20の内部には、上流側から順に、蒸発部20aと改質部20bを形成され、改質部20bには改質触媒が充填されている。この改質器20に導入された水蒸気(純水)が混合された燃料ガス及び空気は、改質器20内に充填された改質触媒により改質される。改質触媒としては、アルミナの球体表面にニッケルを付与したものや、アルミナの球体表面にルテニウムを付与したものが適宜用いられる。
この改質器20の下流端側には、燃料ガス供給管64が接続され、この燃料ガス供給管64は、下方に延び、さらに、燃料電池セル集合体12の下方に形成されたマニホールド66内で水平に延びている。燃料ガス供給管64の水平部64aの下方面には、複数の燃料供給孔64bが形成されており、この燃料供給孔64bから、改質された燃料ガスがマニホールド66内に供給される。
このマニホールド66の上方には、上述した燃料電池セルスタック14を支持するための貫通孔を備えた下支持板68が取り付けられており、マニホールド66内の燃料ガスが、燃料電池セルユニット16内に供給される。
次に、改質器20の上方には、空気用熱交換器22が設けられている。この空気用熱交換器22は、上流側に空気集約室70、下流側に2つの空気分配室72を備え、これらの空気集約室70と空気分配室72は、6個の空気流路管74により接続されている。ここで、図3に示すように、3個の空気流路管74が一組(74a,74b,74c,74d,74e,74f)となっており、空気集約室70内の空気が各組の空気流路管74からそれぞれの空気分配室72へ流入する。
空気用熱交換器22の6個の空気流路管74内を流れる空気は、燃焼室18で燃焼して上昇する排気ガスにより予熱される。
空気分配室72のそれぞれには、空気導入管76が接続され、この空気導入管76は、下方に延び、その下端側が、発電室10の下方空間に連通し、発電室10に余熱された空気を導入する。
次に、マニホールド66の下方には、排気ガス室78が形成されている。また、図3に示すように、ハウジング6の長手方向に沿った面である前面6aと後面6bの内側には、上下方向に延びる排気ガス通路80が形成され、この排気ガス通路80の上端側は、空気用熱交換器22が配置された空間と連通し、下端側は、排気ガス室78と連通している。
また、排気ガス室78の下面のほぼ中央には、排気ガス排出管82が接続され、この排気ガス排出管82の下流端は、図1に示す上述した温水製造装置50に接続されている。
図2に示すように、燃料ガスと空気との燃焼を開始するための点火装置83が、燃焼室18に設けられている。
次に図4により燃料電池セルユニット16について説明する。図4は、本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)の燃料電池セルユニットを示す部分断面図である。
図4に示すように、燃料電池セルユニット16は、燃料電池セル84と、この燃料電池セル84の上下方向端部にそれぞれ接続された内側電極端子86とを備えている。
燃料電池セル84は、上下方向に延びる管状構造体であり、内部に燃料ガス流路88を形成する円筒形の内側電極層90と、円筒形の外側電極層92と、内側電極層90と外側電極層92との間にある電解質層94とを備えている。この内側電極層90は、燃料ガスが通過する燃料極であり、(−)極となり、一方、外側電極層92は、空気と接触する空気極であり、(+)極となっている。
燃料電池セル16の上端側と下端側に取り付けられた内側電極端子86は、同一構造であるため、ここでは、上端側に取り付けられた内側電極端子86について具体的に説明する。内側電極層90の上部90aは、電解質層94と外側電極層92に対して露出された外周面90bと上端面90cとを備えている。内側電極端子86は、導電性のシール材96を介して内側電極層90の外周面90bと接続され、さらに、内側電極層90の上端面90cとは直接接触することにより、内側電極層90と電気的に接続されている。内側電極端子86の中心部には、内側電極層90の燃料ガス流路88と連通する燃料ガス流路98が形成されている。
内側電極層90は、例えば、Niと、CaやY、Sc等の希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたジルコニアとの混合体、Niと、希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたセリアとの混合体、Niと、Sr、Mg、Co、Fe、Cuから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンガレードとの混合体、の少なくとも一種から形成される。
電解質層94は、例えば、Y、Sc等の希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたジルコニア、希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたセリア、Sr、Mgから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンガレート、の少なくとも一種から形成される。
外側電極層92は、例えば、Sr、Caから選ばれた少なくとも一種をドープしたランタンマンガナイト、Sr、Co、Ni、Cuから選ばれた少なくとも一種をドープしたランタンフェライト、Sr、Fe、Ni、Cuから選ばれた少なくとも一種をドープしたランタンコバルタイト、銀、などの少なくとも一種から形成される。
次に図5により燃料電池セルスタック14について説明する。図5は、本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)の燃料電池セルスタックを示す斜視図である。
図5に示すように、燃料電池セルスタック14は、16本の燃料電池セルユニット16を備え、これらの燃料電池セルユニット16の下端側及び上端側が、それぞれ、セラミック製の下支持板68及び上支持板100により支持されている。これらの下支持板68及び上支持板100には、内側電極端子86が貫通可能な貫通穴68a及び100aがそれぞれ形成されている。
さらに、燃料電池セルユニット16には、集電体102及び外部端子104が取り付けられている。この集電体102は、燃料極である内側電極層90に取り付けられた内側電極端子86と電気的に接続される燃料極用接続部102aと、空気極である外側電極層92の外周面全体と電気的に接続される空気極用接続部102bとにより一体的に形成されている。空気極用接続部102bは、外側電極層92の表面を上下方向に延びる鉛直部102cと、この鉛直部102cから外側電極層92の表面に沿って水平方向に延びる多数の水平部102dとから形成されている。また、燃料極用接続部102aは、空気極用接続部102bの鉛直部102cから燃料電池セルユニット16の上下方向に位置する内側電極端子86に向って斜め上方又は斜め下方に向って直線的に延びている。
さらに、燃料電池セルスタック14の端(図5では左端の奥側及び手前側)に位置する2個の燃料電池セルユニット16の上側端及び下側端の内側電極端子86には、それぞれ外部端子104が接続されている。これらの外部端子104は、隣接する燃料電池セルスタック14の端にある燃料電池セルユニット16の外部端子104(図示せず)に接続され、上述したように、160本の燃料電池セルユニット16の全てが直列接続されるようになっている。
次に図6により本実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)に取り付けられたセンサ類等について説明する。図6は、本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)を示すブロック図である。
図6に示すように、固体電解質型燃料電池1は、制御部110を備え、この制御部110には、使用者が操作するための「ON」や「OFF」等の操作ボタンを備えた操作装置112、発電出力値(ワット数)等の種々のデータを表示するための表示装置114、及び、異常状態のとき等に警報(ワーニング)を発する報知装置116が接続されている。
なお、この報知装置116は、遠隔地にある管理センタに接続され、この管理センタに異常状態を通知するようなものであっても良い。
次に、制御部110には、以下に説明する種々のセンサからの信号が入力されるようになっている。
先ず、可燃ガス検出センサ120は、ガス漏れを検知するためのもので、燃料電池モジュール2及び補機ユニット4に取り付けられている。
CO検出センサ122は、本来排気ガス通路80等を経て外部に排出される排気ガス中のCOが、燃料電池モジュール2及び補機ユニット4を覆う外部ハウジング(図示せず)へ漏れたかどうかを検知するためのものである。
貯湯状態検出センサ124は、図示しない給湯器におけるお湯の温度や水量を検知するためのものである。
電力状態検出センサ126は、インバータ54及び分電盤(図示せず)の電流及び電圧等を検知するためのものである。
発電用空気流量検出センサ128は、発電室10に供給される発電用空気の流量を検出するためのものである。
改質用空気流量センサ130は、改質器20に供給される改質用空気の流量を検出するためのものである。
燃料流量センサ132は、改質器20に供給される燃料ガスの流量を検出するためのものである。
水流量センサ134は、改質器20に供給される純水(水蒸気)の流量を検出するためのものである。
水位センサ136は、純水タンク26の水位を検出するためのものである。
圧力センサ138は、改質器20の外部の上流側の圧力を検出するためのものである。
排気温度センサ140は、温水製造装置50に流入する排気ガスの温度を検出するためのものである。
発電室温度センサ142は、図3に示すように、燃料電池セル集合体12の近傍の前面側と背面側に設けられ、燃料電池セルスタック14の近傍の温度を検出して、燃料電池セルスタック14(即ち燃料電池セル84自体)の温度を推定するためのものである。
燃焼室温度センサ144は、燃焼室18の温度を検出するためのものである。
排気ガス室温度センサ146は、排気ガス室78の排気ガスの温度を検出するためのものである。
改質器温度センサ148は、改質器20の温度を検出するためのものであり、改質器20の入口温度と出口温度から改質器20の温度を算出する。
外気温度センサ150は、固体電解質型燃料電池(SOFC)が屋外に配置された場合、外気の温度を検出するためのものである。また、外気の湿度等を測定するセンサを設けるようにしても良い。
これらのセンサ類からの信号は、制御部110に送られ、制御部110は、これらの信号によるデータに基づき、水流量調整ユニット28、燃料流量調整ユニット38、改質用空気流量調整ユニット44、発電用空気流量調整ユニット45に、制御信号を送り、これらのユニットにおける各流量を制御するようになっている。
また、制御部110は、インバータ54に、制御信号を送り、電力供給量を制御するようになっている。
つぎに、図7により本実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)による起動時の動作を説明する。図7は、本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)の起動時の動作を示すタイムチャートである。
最初は、燃料電池モジュール2を温めるために、無負荷状態で、即ち、燃料電池モジュール2を含む回路を開いた状態で、運転を開始する。このとき、回路に電流が流れないので、燃料電池モジュール2は発電を行わない。
先ず、改質用空気流量調整ユニット44から改質用空気を第1ヒータ46を経由して燃料電池モジュール2の改質器20へ供給する。また、同時に、発電用空気流量調整ユニット45から発電用空気を第2ヒータ48を経由して燃料電池モジュール2の空気用熱交換器22へ供給し、この発電用空気が、発電室10及び燃焼室18に到達する。
この直ぐ後、燃料流量調整ユニット38からも燃料ガスが供給され、改質用空気が混合された燃料ガスが、改質器20及び燃料電池セルスタック14、燃料電池セルユニット16を通過して、燃焼室18に到達する。
次に、点火装置83により着火して、燃焼室18にある燃料ガスと空気(改質用空気及び発電用空気)とを燃焼させる。この燃料ガスと空気との燃焼により排気ガスが生じ、この排気ガスにより、発電室10が暖められ、また、排気ガスが燃料電池モジュール2の密封空間8内を上昇する際、改質器20内の改質用空気を含む燃料ガスを暖めると共に、空気熱交換器22内の発電用空気も暖める。
このとき、燃料流量調整ユニット38及び改質用空気流量調整ユニット44により、改質用空気が混合された燃料ガスが改質器20に供給されているので、改質器20において、式(1)に示す部分酸化改質反応POXが進行する。この部分酸化改質反応POXは、発熱反応であるので、起動性が良好となる。また、この昇温した燃料ガスが燃料ガス供給管64により燃料電池セルスタック14の下方に供給され、これにより、燃料電池セルスタック14が下方から加熱され、また、燃焼室18も燃料ガスと空気が燃焼して昇温されているので、燃料電池セルスタック14は、上方からも加熱され、この結果、燃料電池セルスタック14は、上下方向において、ほぼ均等に昇温可能となっている。この部分酸化改質反応POXが進行しても、燃焼室18では継続して燃料ガスと空気との燃焼反応が持続される。
mn+xO2 → aCO2+bCO+cH2 (1)
部分酸化改質反応POXの開始後、改質器温度センサ148により改質器20が所定温度(例えば、600℃)になったことを検知したとき、水流量調整ユニット28、燃料流量調整ユニット38及び改質用空気流量調整ユニット44により、燃料ガスと改質用空気と水蒸気とを予め混合したガスを改質器20に供給する。このとき、改質器20においては、上述した部分酸化改質反応POXと後述する水蒸気改質反応SRとが併用されたオートサーマル改質反応ATRが進行する。このオートサーマル改質反応ATRは、熱的に内部バランスが取れるので、改質器20内では熱的に自立した状態で反応が進行する。即ち、酸素(空気)が多い場合には部分酸化改質反応POXによる発熱が支配的となり、水蒸気が多い場合には水蒸気改質反応SRによる吸熱反応が支配的となる。この段階では、既に起動の初期段階は過ぎており、発電室10内がある程度の温度まで昇温されているので、吸熱反応が支配的であっても大幅な温度低下を引き起こすことはない。また、オートサーマル改質反応ATRが進行中も、燃焼室18では燃焼反応が継続して行われている。
式(2)に示すオートサーマル改質反応ATRの開始後、改質器温度センサ146により改質器20が所定温度(例えば、700℃)になったことを検知したとき、改質用空気流量調整ユニット44による改質用空気の供給を停止すると共に、水流量調整ユニット28による水蒸気の供給を増加させる。これにより、改質器20には、空気を含まず燃料ガスと水蒸気のみを含むガスが供給され、改質器20において、式(3)の水蒸気改質反応SRが進行する。
mn+xO2+yH2O → aCO2+bCO+cH2 (2)
mn+xH2O → aCO2+bCO+cH2 (3)
この水蒸気改質反応SRは吸熱反応であるので、燃焼室18からの燃焼熱と熱バランスをとりながら反応が進行する。この段階では、燃料電池モジュール2の起動の最終段階であるため、発電室10内が十分高温に昇温されているので、吸熱反応が進行しても、発電室10が大幅な温度低下を招くこともない。また、水蒸気改質反応SRが進行しても、燃焼室18では継続して燃焼反応が進行する。
このようにして、燃料電池モジュール2は、点火装置83により点火した後、部分酸化改質反応POX、オートサーマル改質反応ATR、水蒸気改質反応SRが、順次進行することにより、発電室10内の温度が徐々に上昇する。次に、発電室10内及び燃料電池セル84の温度が燃料電池モジュール2を安定的に作動させる定格温度よりも低い所定の発電温度に達したら、燃料電池モジュール2を含む回路を閉じ、燃料電池モジュール2による発電を開始し、それにより、回路に電流が流れる。燃料電池モジュール2の発電により、燃料電池セル84自体も発熱し、燃料電池セル84の温度も上昇する。この結果、燃料電池モジュール2を作動させる定格温度、例えば、600℃〜800℃になる。
この後、定格温度を維持するために、燃料電池セル84で消費される燃料ガス及び空気の量よりも多い燃料ガス及び空気を供給し、燃焼室18での燃焼を継続させる。なお、発電中は、改質効率の高い水蒸気改質反応SRで発電が進行する。
次に、図8により本実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)の運転停止時の動作を説明する。図8は、本実施形態により固体電解質型燃料電池(SOFC)の運転停止時の動作を示すタイムチャートである。
図8に示すように、燃料電池モジュール2の運転停止を行う場合には、先ず、燃料流量調整ユニット38及び水流量調整ユニット28を操作して、燃料ガス及び水蒸気の改質器20への供給量を減少させる。
また、燃料電池モジュール2の運転停止を行う場合には、燃料ガス及び水蒸気の改質器20への供給量を減少させると同時に、改質用空気流量調整ユニット44による発電用空気の燃料電池モジュール2内への供給量を増大させて、燃料電池セル集合体12及び改質器20を空気により冷却し、これらの温度を低下させる。その後、発電室温度が所定温度、例えば、400℃まで低下したとき、燃料ガス及び水蒸気の改質器20への供給を停止し、改質器20の水蒸気改質反応SRを終了する。この発電用空気の供給は、改質器20の温度が所定温度、例えば、200℃まで低下するまで、継続し、この所定温度となったとき、発電用空気流量調整ユニット45からの発電用空気の供給を停止する。
このように、本実施形態においては、燃料電池モジュール2の運転停止を行うとき、改質器20による水蒸気改質反応SRと発電用空気による冷却とを併用しているので、比較的短時間に、燃料電池モジュールの運転を停止させることができる。
再び、図1及び図6に示すように、本実施形態の固体電解質型燃料電池1においては、この固体電解質型燃料電池1が設置される家庭等の施設56にインバータ54が接続されている。この施設56には、固体電解質型燃料電池1とは別に、家庭用電源等の商用電源58も接続されており、商用電源58からも施設56に電力が供給されるようになっている。
また、図6に示すように、固体電解質型燃料電池1は、施設56が必要とする需要電力P(負荷)から決定された固体電解質型燃料電池1の要求電力に基づいて、固体電解質型燃料電池1が発電すべき電流量である指令電流Isを設定する指令電流設定部111を備えている。
ここで、本実施形態による固体電解質型燃料電池1が発生する電力は、住宅等の施設56が必要とする需要電力Pに基づいて制御されるが、需要電力Pが固体電解質型燃料電池1により発生させることができる最大定格電力を超えている場合には、不足分は系統電力から供給される。したがって、需要電力Pから最大定格電力を超える部分を除いた電力が、固体電解質型燃料電池1に対する要求電力となる。
また、要求電力は時間的な変動が激しいため、固体電解質型燃料電池1が発生する電力がこれに完全に追従することは困難である。このため、固体電解質型燃料電池1(燃料電池モジュール2)が生成する電力は、需要電力Pの変動を追従可能な程度に抑制した指令電力を目標値として制御される。
さらに、燃料供給量等を指令電力に基づいて制御した場合においても、燃料電池モジュール2内で実際に電力を生成するには時間を要するので、制御部110がインバータ54に指令を出すことにより燃料電池モジュール2からインバータ54に実際に取り出される実発電電力は、指令電力に対して時間遅れがある。
なお、本実施形態においては、固体電解質型燃料電池1は、インバータ54の出力電圧が100V一定になるように作動するので、上述した需要電力、最大定格電力、指令電力、実発電電力は、夫々、需要電流、最大定格電流、指令電流、実発電電流に比例する。また、本実施形態の固体電解質型燃料電池1は、形式的にこれらの電流値に基づいて制御が行われているが、固体電解質型燃料電池1は、これらの「電流」を「電力」と置き換えても同様の制御を実施することができる。
つぎに、図9は、本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池の需要電力に対応して発電出力値を変更する負荷追従時の運転状態を示すタイムチャートである。ここで、図9の横軸は時間を示し、指令電流値Isが変化する代表的な時刻をt1〜t5で示している。一方、図9の縦軸は需要電力Pが設定されてからインバータ54において実発電電力Prの取り出しを許可するインバータ許可電流Isinvが出力されるまでの工程(i)〜(iv)を上方から下方に向かって時系列順に示している。
まず、図9に示すように、固体電解質型燃料電池1は、施設56が必要とする需要電力P(負荷量)が決定されると(図9の「(i)需要電力P」参照)、この需要電力Pに基づいて、固体電解質型燃料電池1が発電すべき電流量である指令電流Isが指令電流設定部111によって設定される(図9の「(ii)指令電流Is」参照)。
つぎに、制御部110は、指令電流設定部111で設定した指令電流Isに基づいて、燃料流量調整ユニット38から燃料電池モジュール2内の改質器20に供給する燃料供給量Fについて、詳細は後述する所定の制御によって設定する。そして、この燃料供給量Fを指令電流Isの変化に応じて増大又は減少させて、少なくとも指令電流Isを出力できるように燃料流量調整ユニット38を制御し、要求された負荷に追従させた燃料の供給を行う。
同時に、燃料流量センサ132によって燃料流量調整ユニット38から改質器20に実際に供給される燃料供給量の実測値である実燃料供給量Frが検出される(図9の「(iii)実燃料供給量Fr」参照)。
つぎに、制御部110は、発電用空気流量調整ユニット45から燃料電池モジュール2内の燃料電池セル集合体12に供給する発電用空気供給量Aについて、指令電流設定部111で設定した指令電流Is及び先に検出された実燃料供給量Frに基づいて、詳細は後述する所定の制御によって設定する。
同様に、制御部110は、水流量調整ユニット28から燃料電池モジュール2内の改質器20に供給する水供給量Wについても、指令電流設定部111で設定した指令電流Is及び先に検出された実燃料供給量Frに基づいて、詳細は後述する所定の制御によって設定する。
つぎに、制御部110は、インバータ54に実発電電力Prの取り出しを許可するインバータ許可電流Isinvの制御信号を送り、施設56に供給する電力供給量を制御する。ここで、本実施形態による固体電解質型燃料電池1では、インバータ許可電流Isinvは、通常、燃料電池モジュール2からインバータ54へ実際に出力される電流(実発電電流Ir)に相当する値となる(図9の「(iv)インバータ許可電流Isinv」参照)。
つぎに、図10を参照し、上述した燃料供給量Fの制御について詳細に説明する。
図10は、本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池における指令電流に対する燃料供給量、発電用空気供給量、水供給量の推移の例を示すタイムチャートである。ここで、図10の横軸は時間を示し、縦軸は指令電流Is、及び、電流値に換算した燃料供給量F、発電用空気供給量A、及び、水供給量Wをそれぞれ示す。
図10に示すように、燃料供給量Fは、インバータ54へ出力される実発電電流Irに対応した基準燃料供給量F0に余剰の燃料供給量(以下「燃料余裕量」と呼ぶ)を燃料オフセットαとして加算して設定されるようになっている(式(4)参照)。
F=F0+α (4)
ここで、基準燃料供給量F0は、インバータ許可電流Isinvまたは実発電電流Irを得るために固体電解質型燃料電池セル84において消費される必要燃料量と、改質器20を改質反応が可能な温度に維持する燃焼熱を得るために燃焼室18において燃焼される燃料量との合計燃料量であり、すなわち、インバータ許可電流Isinvまたは実発電電流Irを得るために必要な固体電解質燃料電池1のシステム全体における燃料量である。
なお、基準燃料供給量F0については、インバータ許可電流Isinvまたは実発電電流Irを得るために固体電解質燃料電池セル84において過不足なく消費される必要燃料量であって、燃料のすべてが余らずに発電に使用されたときに得られる電流がインバータ許可電流Isinvまたは実発電電流Irとなる場合の燃料量として設定されてもよい。
また、本実施形態においては、基準燃料供給量F0に相当する電流値は、指令電流Isから予め決定されるものであり、基準燃料供給量F0の推移は指令電流Isの推移に相似して変化するようになっている。
ちなみに、図10の実線は、指令電流Is並びに基準燃料供給量F0(並びに詳細は後述する基準発電用空気供給量A0及び基準水供給量W0)の推移を示し、点線は、基準燃料供給量F0に固定オフセット部分α1を加算した燃料量の推移を示し、一点鎖線は、基準燃料供給量F0に燃料オフセットαを加算した全体の燃料供給量Fの推移を示している。ここで、図10に一点鎖線で示す全体の燃料供給量Fの推移は、実燃料供給量Frの推移とみなすこともできる。
また、例えば、需要電力Pが増大することによって指令電流Isが増大し、より多くの燃料が必要となった場合に、増量された燃料が改質器20で改質されて燃料電池モジュール2に到達するには、ある程度の時間が必要となる。そして、十分な量の燃料が供給されないうちに、インバータ54によって、増量した燃料に対応した実発電電流Irの取り出しを行うと、燃料電池セル84において燃料が足りなくなる「燃料枯れ」が発生する可能性がある。そこで、本実施形態では、基準燃料供給量F0に対して燃料オフセットαを加算することにより、燃料余裕量(燃料オフセットα)を設けて、燃料枯れを防止している。
さらに、燃料オフセットαは、常に一定の固定量である固定オフセット部分α1と可変量の可変オフセット部分α2を備えている。
固定オフセット部分α1は、固体電解質型燃料電池1の燃料電池セル84の発電効率等の個体差や指令電流Isの増減速度等を考慮して、指令電流Isの値や変化率にかかわらず、常に予め決定された一定量に設定されている。
一方、可変オフセット部分α2は、固体電解質型燃料電池1の運転状態に応じて変化するように設定されており、本実施形態では、指令電流Isの変化率kに応じて変化するように設定されている。
ここで、指令電流の変化率kとは、第1の電流である、その時刻における指令電流と、第2の電流である、過去に設定された指令電流との時間当たりの電流の変化である。本実施形態では、指令電流Isの変化率kは、現在の指令電流とIs、前回の指令電流Is-1との時間当たりの変化であり、A/secの単位で表される。
より具体的には、現在の指令電流Isと前回の指令電流Is-1との間の指令電流Isの変化率kが正(k>0)である場合(図10の領域A、領域C、領域D参照)、可変オフセット部分α2は、一定の所定量F1に設定され、燃料オフセットαは、式(5)のようになる。
α=α1+α2=α1+F1 (5)
また、指令電流Isの変化率kが0(k=0)である場合(図10の領域B参照)には、可変オフセット部分α2は0に設定され、燃料オフセットαは、式(6)のようになる。
α=α1+α2=α1 (6)
さらに、指令電流Isの変化率kが負である場合、可変オフセット部分α2は、燃料供給量Fが一定の減少率で減少する電流に対応する減少率で減少するように設定されている。
また、本実施形態では、指令電流Isの変化率kに変化が生じた場合、例えば、指令電流Isが一定の増加率で増加している状態(変化率kが正の状態)から指令電流Isが一定となった状態(変化率kが0の状態)へ移行した場合には、固体電解質型燃料電池1の運転状態が過渡期であると判断して、可変オフセット部分α2の補正(過渡補正)を行うようになっている。
さらに、指令電流Isの変化率kが0の状態となる場合、すなわち、指令電流Isが前回の指令電流Is-1と同じ値に設定される場合において、指令電流Isの変化率kが0となった時刻(図10の時刻tn参照)から所定時間経過した時刻(図10の時刻tn+1参照)までの期間については、可変オフセット部分α2が0ではなく、所定の固定量F1に設定され、固体電解質型燃料電池1の運転状態が過渡期にあるときの燃料枯れを防止することができるようになっている。
また、指令電流Isが所定値以上減少した場合には、前回の燃料供給量Fを所定時間(図10の時刻tn+s〜tn+3及び時刻tn+5〜tn+6参照)維持する補正を行うように設定されている。このように指令電流Isが比較的急激に減少する場合には、次の指令電流Is+1が急激に上昇する場合がある。そこで、このように前回の燃料供給量Fを所定時間維持するように設定することにより、次回の指令電流Is+1が急激に上昇(回復)してより多くの燃料を必要とする場合でも、燃料電池セル84において燃料枯れになるのを防止することができるようになっている。
さらに、時刻tn+2及びtn+5のそれぞれにおいて指令電流Isが減少した後、再び一定の増加率で増加しており(図10の領域C及び領域D参照)、燃料供給量Fが、時刻tn+4及びtn+7でそれぞれの指令電流Isに対応する基準燃料供給量F0に一定の固定オフセット部分α1と一定の可変オフセット部分α2とを加算した量に達するまで、一定の減少率で減少する(図10の時刻tn+3〜tn+4及び時刻tn+6〜tn+7参照)。
つぎに、図10を参照し、発電用空気供給量Aの制御について詳細に説明する。
図10に示すように、発電用空気供給量Aは、インバータ54へ出力される実発電電流Irに対応した基準発電用空気供給量A0に余剰の発電用空気供給量(以下「発電用空気余裕量」と呼ぶ)を発電用空気オフセットβとして加算して設定されるようになっている(式(7)参照)。
A=A0+β (7)
ここで、基準発電用空気供給量A0は、インバータ許可電流Isinvまたは実発電電流Irを得るために固体電解質型燃料電池セル84において消費される必要発電用空気量と、改質器20を改質反応が可能な温度に維持する燃焼熱を得るために燃焼室18において燃焼される発電用空気量との合計発電用空気量であり、すなわち、インバータ許可電流Isinvまたは実発電電流Irを得るために必要な固体電解質燃料電池1のシステム全体における発電用空気量である。
なお、基準発電用空気供給量A0については、インバータ許可電流Isinvまたは実発電電流Irを得るために固体電解質燃料電池セル84において過不足なく消費される必要発電用空気量であって、発電用空気のすべてが余らずに発電に使用されたときに得られる電流がインバータ許可電流Isinvまたは実発電電流Irとなる場合の発電用空気量として設定されてもよい。
また、本実施形態においては、基準発電用空気供給量A0に相当する電流値は、指令電流Isから予め決定されるものであり、基準発電用空気供給量A0の推移は指令電流Isの推移に相似して変化するようになっている。
ちなみに、基準発電用空気供給量A0に相当する電流値の推移は、図10に実線で示す指令電流Is並びに基準燃料供給量F0(並びに詳細は後述する基準水供給量W0)の推移と等しくなっている。
また、図10に示す点線は、基準発電用空気供給量A0に発電用空気オフセットβを加算した、全体の発電用空気供給量Aの推移を示している。
また、例えば、需要電力Pが増大することによって指令電流Isが増大し、より多くの発電用空気が必要となった場合に、増量された発電用空気が燃料電池モジュール2内の160本の燃料電池セル84の各々に均一に供給されるまでには、ある程度の時間が必要となる。そして、十分な量の発電用空気が供給されないうちに、インバータ54によって、増量した発電用空気に対応した実発電電流Irの取り出しを行うと、燃料電池セル84において発電用空気が足りなくなる、いわゆる「空気枯れ」が発生し、セルの劣化やCO濃度の上昇につながる可能性がある。そこで、本実施形態では、各時刻における全体の発電用空気供給量Aに相当する電流値が少なくとも実燃料供給量Frの電流値以上となるように、基準発電用空気供給量A0に対して発電用空気オフセットβ(発電用空気余裕量)を加算することにより、空気枯れを防止している。
さらに、発電用空気オフセットβは、実燃料供給量Frと基準燃料供給量F0との差である燃料オフセットαに対応した可変オフセット部分β1、及び、実燃料供給量Frに応じて変化させる可変オフセット部分β2を備えている。
すなわち、可変オフセット部分β1は、電流値に換算した量においては、燃料オフセットαと等しくなり、燃料オフセットαの可変オフセット部分α2が指令電流Isの変化率kに応じて変化する分だけ可変となる。
一方、可変オフセット部分β2は、各時刻における全体の発電用空気供給量Aに相当する電流値が少なくとも実燃料供給量Frの電流値以上となるように、実燃料供給量Frの電流値に加算するものであり、指令電流Isの変化率kに応じて変化するように設定されている。
図11は、本実施形態による固体電解質型燃料電池における指令電流の変化率に対する発電用空気オフセットβの可変オフセット部分β2の特性を示す図である。
ここで、図11の横軸は指令電流Isの変化率kを示し、縦軸は発電用空気オフセットβの可変オフセット部分β2を示している。
図11に示すように、指令電流Isの変化率kが正となる領域において発電用空気オフセットβの可変オフセット部分β2が変化するときの指令電流の変化率kの所定のしきい値をk1とし、指令電流Isの変化率kが負となる領域において発電用空気オフセットβの可変オフセット部分β2が変化するときの指令電流の変化率kの所定のしきい値の大きさをk2(k2<k1)とすると、指令電流Isの変化率kが−k2よりも大きく、k1未満となる領域では、発電用空気オフセットβの可変オフセット部分β2が零となる。
すなわち、指令電流Isの変化率kが−k2よりも大きく、k1未満となる領域ではβ2を零にすることにより、発電用空気オフセットβ(発電用空気余裕量)の可変オフセット部分β2を増加させる補正を禁止するように制御部110が発電用空気流量調整ユニット45を制御している。
一方、発電用空気オフセットβの可変オフセット部分β2は、指令電流Isの変化率kがk1以上となる領域ではb1(b1>0)となり、指令電流Isの変化率kが−k2以下となる領域ではb2(b2>b1)となるように設定されている。
すなわち、指令電流Isの変化率kが−k2以下となる負の領域においては、指令電流Isの変化率kがk1以上となる正の領域に比べて発電用空気オフセットβ(発電用空気余裕量)の可変オフセット部分β2をより多く増加させる補正を行うように制御部110が発電用空気流量調整ユニット45を制御している。
さらに、負の領域の指令電流Isの変化率kのしきい値の大きさk2を正の領域指令電流Isの変化率kのしきい値の大きさk1よりも小さく設定することにより、指令電流Isが減少傾向にある場合には、指令電流Isが増加傾向にある場合に比べて発電用空気オフセットβ(発電用空気余裕量)の可変オフセット部分β2を増加させる補正を行いやすくさせるように制御部110が発電用空気流量調整ユニット45を制御している。
つぎに、図10を参照し、水供給量Wの制御について詳細に説明する。
図10に示すように、水供給量Wは、インバータ54へ出力される実発電電流Irに対応した基準水供給量W0に余剰の水供給量(以下「水余裕量」と呼ぶ)を水オフセットγとして加算して設定されるようになっている(式(8)参照)。
W=W0+γ (8)
ここで、基準水供給量W0は、インバータ許可電流Isinvまたは実発電電流Irを得るために改質器20で行われる水蒸気改質において過不足なく消費される必要水量であり、水の全てが余らずに発電に使用されたときに得られる電流がインバータ許可電流Isinvまたは実発電電流Irとなる場合の水量である。また、基準水供給量W0に相当する電流値は、指令電流Isから予め決定されるものであり、基準水供給量W0の推移は指令電流Isの推移に相似して変化するようになっている。
ちなみに、基準水供給量W0に相当する電流値の推移は、図10に実線で示す指令電流Is、基準燃料供給量F0並びに基準発電用空気供給量A0の推移と等しくなっている。
また、図10に示す二点鎖線は、基準水供給量W0に水オフセットγを加算した、全体の水供給量Wの推移を示している。
また、例えば、需要電力Pが増大することによって指令電流Isが増大し、改質器20に供給すべきより多くの水が必要となった場合に、需要電力Pの負荷に追従させる際に、改質器20内において燃料及び水蒸気の斑や圧力変化が発電量を大きく変化させてしまい、改質器20内の特定箇所で炭素が析出してしまうため、安定的な発電を長期的に亘って行うことができなくなる可能性がある。そこで、本実施形態では、各時刻における全体の水供給量Wに相当する電流値が少なくとも実燃料供給量Frの電流値以上となるように、基準水供給量W0に対して水オフセットγ(水余裕量)を加算することにより、改質器20内で発生する炭素析出を防止している。
さらに、水オフセットγは、実燃料供給量Frと基準燃料供給量F0との差である燃料オフセットαに対応した可変オフセット部分γ1、及び、実燃料供給量Frに応じて変化させる可変オフセット部分γ2を備えている。
すなわち、可変オフセット部分γ1は、電流値に換算した量においては、燃料オフセットαと等しくなり、燃料オフセットαの可変オフセット部分α2が指令電流Isの変化率kに応じて変化する分だけ可変となる。
一方、可変オフセット部分γ2は、各時刻における全体の水供給量Wに相当する電流値が少なくとも実燃料供給量Frの電流値以上となるように、実燃料供給量Frの電流値に加算するものであり、指令電流Isの変化率kに応じて変化するように設定されている。
図12は、本実施形態による固体電解質型燃料電池における指令電流の変化率に対する水オフセットγの可変オフセット部分γ2の特性を示す図である。
ここで、図11の横軸は指令電流Isの変化率kを示し、縦軸は水オフセットγの可変オフセット部分γ2を示している。
図12に示すように、指令電流Isの変化率kが正となる領域において水オフセットγの可変オフセット部分γ2が変化するときの指令電流の変化率kの所定のしきい値をk3とし、指令電流Isの変化率kが負となる領域において水オフセットγの可変オフセット部分γ2が変化するときの指令電流Isの変化率kの所定のしきい値の大きさをk4(k4>k3)とすると、指令電流Isの変化率kが−k4よりも大きく、k3未満となる領域(−k4<k<k3)では、水オフセットγの可変オフセット部分γ2が零となる。
すなわち、指令電流Isの変化率kが−k4よりも大きく、k3未満となる領域ではγ2を零にすることにより、水オフセットγ(水余裕量)の可変オフセット部分γ2を増加させる補正を禁止するように制御部110が水流量調整ユニット28を制御している。
一方、水オフセットγの可変オフセット部分γ2は、指令電流Isの変化率kがk3以上となる領域ではc1(c1>0)となり、指令電流Isの変化率kが−k4以下となる領域ではc2(0<c2<c1)となるように設定されている。
すなわち、指令電流Isの変化率kがk3以上となる正の領域においては、指令電流Isの変化率kが−k4以下となる負の領域に比べて水オフセットγ(水余裕量)の可変オフセット部分γ2をより多く増加させる補正を行うように制御部110が水流量調整ユニット28を制御している。
さらに、正の領域の指令電流Isの変化率kのしきい値k3を負の領域指令電流Isの変化率kのしきい値の大きさk4よりも小さく設定することにより、指令電流Isが増加傾向にある場合には、指令電流Isが減少傾向にある場合に比べて水オフセットγ(水余裕量)の可変オフセット部分γ2を増加させる補正を行いやすくさせるように制御部110が水流量調整ユニット28を制御している。
つぎに、図13は、本実施形態による固体電解質型燃料電池における指令電流の変化率に対する発電用空気オフセットβの可変オフセット部分β2の増加補正割合と水オフセットγの可変オフセット部分γ2の増加補正割合とを比較した図である。
ここで、図13の横軸は指令電流Isの変化率kを示し、縦軸は発電用空気オフセットβの可変オフセット部分β2の増加補正割合(β2/A0)及び水オフセットγの可変オフセット部分γ2の増加補正割合(γ2/W0)をそれぞれ示している。
なお、発電用空気オフセットβの可変オフセット部分β2の増加補正割合(β2/A0)は、基準発電用空気供給量A0に対する発電用空気オフセットβ(発電用空気余裕量)の可変オフセット部分β2の割合を意味しており、水オフセットγの可変オフセット部分γ2の増加補正割合(γ2/W0)は、基準水供給量W0に対する水オフセットγ(水余裕量)の可変オフセット部分γ2の割合を意味している。
図13に示すように、指令電流Isの変化率kがk1以上となる正の領域、及び、指令電流Isの変化率kが−k2以下となる負の領域においては、発電用空気オフセットβの可変オフセット部分β2の増加補正割合(β2/A0)が水オフセットγの可変オフセット部分γ2の増加補正割合(γ2/W0)よりも大きくなるように設定されている。
再び、図10の点P1〜点P3に示すように、需要電力P(負荷量)の増加に伴って指令電流Isが増加した際、水、発電用空気、及び、燃料について増量供給を開始する点をそれぞれ点P1、点P2、点P3とすると、まず、点P1において制御部110が水流量調整ユニット28を制御し、水の増量供給が開始された後、所定時間経過した点P2において制御部110が発電用空気流量調整ユニット45を制御し、発電用空気オフセットβの可変オフセット部分β2による発電用空気の増量供給が開始される。
つぎに、点P2から所定時間経過した点P3において制御部110が燃料流量調整ユニット38を制御し、燃料の増量供給が開始される。
すなわち、需要電力P(負荷量)の増加に伴って指令電流Isが増加した際には、水、発電用空気、燃料が順次所定の時間遅れで増量供給される。
また、指令電流Isの変化率kが0となった時刻(図10の時刻tn参照)から所定時間経過した時刻(図10の時刻tn+1参照)までの期間においては、燃料オフセットαの可変オフセット部分α2、発電用空気オフセットβの可変オフセット部分β2、及び、水オフセットγの可変オフセット部分γ2がいずれも0ではなく、それぞれの可変オフセット部分α2、β2、γ2が所定の固定量F1、A1、W1に設定され、固体電解質型燃料電池1の運転状態が過渡期にあるときの、燃料枯れ、空気枯れ、及び、改質器20内における炭素析出の発生を防止することができるようになっている。
そして、図10の点P4〜点P6に示すように、時刻tn+1で燃料オフセットαの可変オフセット部分α2、発電用空気オフセットβの可変オフセット部分β2、及び、水オフセットγの可変オフセット部分γ2が共に減量され、その後、それぞれが0に達した時点をそれぞれ点P4、点P5、点P6とすると、まず、点P4において制御部110が燃料流量調整ユニット38を制御し、燃料オフセットαの可変オフセット部分α2の減量供給を停止する。
その後、点P4から所定時間経過した点P5において制御部110が発電用空気流量調整ユニット45を制御し、発電用空気オフセットβの可変オフセット部分β2の減量供給を停止する。
つぎに、点P5から所定時間経過した点P6において制御部110が水流量調整ユニット28を制御し、水オフセットγの可変オフセット部分γ2の減量供給を停止する。
すなわち、需要電力P(負荷量)の減少に伴って指令電流Isが減少した際には、燃料、発電用空気、水が順次所定の時間遅れで減量供給される。
また、点P11〜点P13についても、点P4〜点P6と同様に、時刻tn+6〜tn+7にかけて燃料の減量供給、発電用空気の減量供給、水の減量供給が順次所定の時間遅れで一定の減少率で行われた後、点P11で燃料の減量停止、点P12で発電用空気の減量停止、点P13で水の減量停止が順次所定の時間遅れで行われる。
つぎに、図10に示すように、指令電流Isが減少する時刻tn+2における発電用空気供給量Aを示す点をP8とし、この点P8から所定時間前に発電用空気オフセットβの可変オフセット部分β2を0から増量させるときの発電用空気供給量Aを示す点をP7とすると、制御部110は、時刻tn+2で減少した指令電流Isが出力される所定時間前の点P7において、発電用空気オフセットβの可変オフセット部分β2を0から所定値(β2=b3)まで増量させた後、時刻tn+3まで発電用空気供給量Aを一定量に維持するように発電用空気流量調整ユニット45を制御した後、燃料電池モジュール2において生成された実発電電力Prの取り出しを許可するインバータ許可電流Isinvをインバータ54へ出力させるようになっている。
同様に、指令電流Isが減少する時刻tn+5における発電用空気供給量Aを示す点をP10とし、この点P10から所定時間前に発電用空気オフセットβの可変オフセット部分β2を所定値(β2=b4)から増量させるときの発電用空気供給量Aを示す点をP9とすると、制御部110は、時刻tn+5で減少した指令電流Isが出力される所定時間前の点P9において、発電用空気オフセットβの可変オフセット部分β2を第1の所定値(β2=b4)から第2の所定値(β2=b5(>b4))まで増量させた後、時刻tn+6まで発電用空気供給量Aを一定量に維持するように発電用空気流量調整ユニット45を制御するようになっている。
つぎに、図10に示すように、時刻tn+5における指令電流Isの減少量ΔIs2は、時刻tn+2における指令電流Isの減少量ΔIs1よりも大きくなっている。
また、点P9〜点P10において増量される発電用空気オフセットβの可変オフセット部分β2は、点P7〜点P8において増量される発電用空気オフセットβの可変オフセット部分β2(β2=b3)よりも大きくなっている。
すなわち、制御部110は、指令電流Isの減少量ΔIsが大きい程、発電用空気オフセットβの可変オフセット部分β2が多くなるように発電用空気流量調整ユニット45を制御するようになっている。
上述した本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)によれば、各時刻において燃料電池モジュール2に供給される発電用空気供給量Aが、常に、その時刻において燃料電池モジュール2からインバータ54へ出力される実発電電流Irに対応した基準発電用空気供給量A0以上になるように制御部110が発電用空気流量調整ユニット45を制御するため、複数の固体電解質型燃料電池セル84の各々において、空気枯れによるセルの劣化を確実に防止することができると共に、CO濃度が高まることを確実に防止することができる。また、発電用空気供給量Aと基準発電用空気供給量A0の差である発電用空気余裕量(発電用空気オフセットβ)が、指令電流設定部111により設定された指令電流Isの変化に応じて変化し、この指令電流Isの変化率kの大きさが小さい状態に比べて大きい状態では発電用空気余裕量(発電用空気オフセットβ)が多くなるように制御部110が発電用空気流量調整ユニット45を制御するため、例えば、指令電流Isの変化率kが比較的小さい状態において発電用空気を燃料電池モジュール2に供給する場合には、複数の固体電解質型燃料電池セル84の各々に発電用空気を過剰に供給することによるセルの過剰冷却を抑制すると共に、圧力変動の緩和を図ることができ、セルの耐久性の低下を防止することができる。
また、本実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)によれば、各時刻において燃料電池モジュール2に供給される発電用空気余裕量(発電用空気オフセットβ)が、燃料流量調整ユニット38から燃料電池モジュール2に実際に供給される実燃料供給量Frに対応させて補正されるように制御部110が発電用空気流量調整ユニット45を制御するため、需要電力Pの負荷に追従させるために、燃料供給量Aと発電用空気供給量Aを増加補正する際にも、発電反応に用いられる燃料量と発電用空気量のバランスを最適に保つことができ、空気枯れによる固体電解質型燃料電池セル84の劣化を確実に防止することができると共に、CO濃度の抑制を図ることができる。
さらに、本実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)によれば、指令電流Isの変化率kの大きさが所定のしきい値未満となる場合には、制御部110が発電用空気余裕量(発電用空気オフセットβ)を増加させる補正を禁止し、指令電流Isの変化率kの大きさが所定のしきい値以上となる場合には、制御部110が発電用空気余裕量(発電用空気オフセットβ)を増加させる補正を行うように発電用空気流量調整ユニット45を制御するため、需要電力Pの負荷変化が少なく熱自立が可能な状況では、発電用空気による固体電解質型燃料電池セル84の冷却を抑制することにより、省エネを図ることができる。また、燃料電池モジュール2に供給する発電用空気を需要電力Pの微小な負荷変化に追従させないことにより、燃料電池モジュール2に供給する発電用空気の気流を安定させて、少ない空気でも確実にセルに供給し、空気枯れを確実に防止することができる。
また、本実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)によれば、負の領域の指令電流Isの変化率kのしきい値の大きさk2を正の領域の指令電流Isの変化率kのしきい値の大きさk1よりも小さく設定することにより、指令電流Isの変化率kが負となる領域では、指令電流Isの変化率kが正となる領域よりも、発電用空気余裕量(発電用空気オフセットβ)を増加させる補正を行いやすくさせるように制御部110が発電用空気流量調整ユニット45を制御するため、需要電力Pの低下により負荷の追従性が悪い燃料が発電に使われずに過剰に燃焼側に供給されてCO濃度が高まるのを発電用空気で燃焼させることによって防止することができる。
さらに、本実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)によれば、指令電流Isの変化率kの大きさが小さい状態に比べて大きい状態では水余裕量(水オフセットγ)が多くなるように制御部110が水流量調整ユニット28を制御するため、燃料電池モジュール2に供給される発電用空気を増加させることによって、燃料電池モジュール2内の圧力が上昇すると共に燃料電池モジュール2内において発電用空気の斑が生じ、燃料電池モジュール2に燃料を供給しにくい状況となっても、燃料を増加させると共に水供給量Wを高めることにより、改質器20内における炭素析出を抑制することができる。また、発電用空気オフセットβの可変オフセット部分β2の増加補正割合(β2/A0)が水オフセットγの可変オフセット部分γ2の増加補正割合(γ2/W0)よりも大きくなるように制御部110が発電用空気流量調整ユニット45及び水流量調整ユニット28を制御するため、増加させた燃料が複数の固体電解質型燃料電池セル84のうちの特定のセルのみに過剰に供給されることによるセル全体の空気枯れを確実に防止することができる。
また、本実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)によれば、指令電流Isの変化率kが−k2以下となる負の領域においては、指令電流Isの変化率kがk1以上となる正の領域に比べて発電用空気オフセットβ(発電用空気余裕量)の可変オフセット部分β2をより多く増加させる補正を行うように制御部110が発電用空気流量調整ユニット45を制御しているため、需要電力Pの低下により負荷の追従性が悪い燃料が発電に使われずに過剰に燃焼側に供給されてCO濃度が高まるのを発電用空気で燃焼させることによって防止することができる。
さらに、本実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)によれば、指令電流Isが増加する場合には発電用空気オフセットβ(発電用空気余裕量)の増加補正を抑制して指令電流Isの変化を抑制するように制御部110が発電用空気流量調整ユニット45を制御しているため、指令電流Isの変化に対する負荷追従性を抑制して発電用空気の供給の安定化を図ると共に、発電用空気によって固体電解質型燃料電池セル84が過剰に冷却されるのを抑制することができ、発電効率を高めることができる。一方、指令電流Isが減少する場合には発電用空気オフセットβ(発電用空気余裕量)の増加補正を増大させて指令電流Isの変化に対する負荷追従性を高めるように制御部110が発電用空気流量調整ユニット45を制御するため、省エネを図ることができ、固体電解質型燃料電池セル84の空気枯れを確実に防止することができる。
また、本実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)によれば、指令電流Isが増加している場合には発電用空気の増量供給が燃料の増量供給よりも所定時間早めて行われるように制御部110が燃料流量調整ユニット38及び発電用空気流量調整ユニット45を制御するため、燃料の増量供給を行う前に、燃料電池モジュール2に供給する発電用空気の気流を予め安定させて、燃料電池モジュール2内の圧力斑を抑制することによって燃料枯れになることを防止することができる。さらに、これらを配慮した上で、発電用空気オフセットβ(発電用空気余裕量)についても燃料電池モジュール2に実際に供給される実燃料供給量Frに対応させて決定されるため、燃料電池モジュール2内の空気枯れと圧力斑を確実に抑制することができる。一方、指令電流Isが減少している場合には発電用空気の減量供給が燃料の減量供給よりも所定時間遅れて行われるように、制御部110が燃料流量調整ユニット38及び発電用空気流量調整ユニット45を制御するため、燃料の減量供給の制御が開始してから複数の固体電解質型燃料電池セル84全体にその制御結果が反映されるまでに燃料供給の遅れが生じたり、発電反応のばらつきが生じたりしても、空気枯れやCO濃度の高まりを確実に防ぐことができる。
さらに、本実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)によれば、図10の点P7〜点P10に示すように、指令電流Isが減少する場合には指令電流Isが出力される所定期間前(図10の点P7及び点P9参照)に発電用空気オフセットβ(発電用空気余裕量)を増加させるように制御部110が発電用空気流量調整ユニット45を制御した後、燃料電池モジュール2において生成された実発電電力Prの取り出しを許可するインバータ許可電流Isinvをインバータ54へ出力させる。したがって、指令電流Isを減少させて発電量を減少させた際に、例えば、改質状態や燃料の供給遅れ等の燃料電池の様々な状態変化に応じて最適な燃料の供給が行われず、過剰な燃料量の燃焼に伴って空燃比が燃料リッチになったり、CO濃度が高まることを抑制することができる。
さらに、本実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)によれば、指令電流Isの減少量ΔIsが大きい程、発電用空気オフセットβの可変オフセット部分β2が多くなるように制御部110が発電用空気流量調整ユニット45を制御しているため、指令電流Isの減少量Δに応じて発電用空気オフセットβ(発電用空気余裕量)を最適にすることができ、複数の固体電解質型燃料電池セル84の全体に発電用空気を過剰に供給することによる固体電解質型燃料電池セル84への冷却の影響を抑制すると共に、CO濃度が異常に高まることも防止することができる。
なお、上述した本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)においては、一例として、図11に示すような指令電流Isの変化率kに対する発電用空気オフセットβの可変オフセット部分β2の特性を備えた形態について説明しているが、図11に示す特性以外のものについても適用可能である。
図14は、本発明の他の実施形態による固体電解質型燃料電池における指令電流の変化率に対する発電用空気オフセットβの可変オフセット部分β2の特性を示す図であり、図14の横軸は指令電流Isの変化率kを示し、縦軸は発電用空気オフセットβの可変オフセット部分β2を示している。
図14に示すように、指令電流Isの変化率kが正となる領域と負となる領域のそれぞれの領域において、発電用空気オフセットβの可変オフセット部分β2が変化するときの指令電流Isの変化率kの所定のしきい値を複数設定することにより、発電用空気オフセットβの可変オフセット部分β2が各のしきい値毎に多段階に変化するように設定し、指令電流Isの変化率kの大きさが大きい程、発電用空気オフセットβ(発電用空気余裕量)の可変オフセット部分β2が多くなるように制御部110が発電用空気流量調整ユニット45を制御するようにしてもよい。
上述した本発明の他の実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)によれば、燃料供給量Fを司る指令電流Isの変化率kに対応させて発電用空気オフセットβ(発電用空気余裕量)の可変オフセット部分β2を変化させることができ、燃料電池モジュール2の空気枯れやCOの発生を確実に抑制することができる。
また、上述した本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)においては、一例として、需要電力Pの負荷に追従させる際に、基準燃料供給量F0に余剰の燃料供給量として、燃料オフセットα(燃料余裕量)を加算し、この燃料オフセットαが固定オフセット部分α1と可変量の可変オフセット部分α2を備えた形態について説明したが、燃料オフセットαについては、できるだけ小さく設定できることが望ましく、燃料枯れをすることなく理想的な負荷追従を行うことができるものであれば、燃料オフセットαの固定オフセット部分α1を0にしてもよい。
さらに、上述した本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)においては、一例として、図10の点P7〜点P10に示すように、指令電流Isが減少する場合に指令電流Isが出力される所定期間前(図10の点P7及び点P9参照)に発電用空気オフセットβ(発電用空気余裕量)の可変オフセット部分β2を増加させるように制御部110が発電用空気流量調整ユニット45を制御する形態について説明したが、このような形態に限定されず、指令電流Isが増加する場合に指令電流Isが出力される所定期間前についても、発電用空気オフセットβ(発電用空気余裕量)の可変オフセット部分β2を増加させるように制御部110が発電用空気流量調整ユニット45を制御するようにしてもよい。
また、上述した本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)においては、一例として、燃料余裕量α、発電用空気余裕量β、水余裕量γのそれぞれが指令電流のIs変化率kに応じて変化するように設定されているが、このような形態に限定されず、指令電力の変化率に応じて変化するように設定されていてもよい。この場合には、指令電力の変化率の単位は例えばW/secで表される。
1 固体電解質型燃料電池
2 燃料電池モジュール
4 補機ユニット
8 密封空間
10 発電室
12 燃料電池セル集合体
14 燃料電池セルスタック
16 燃料電池セルユニット
18 燃焼室
20 改質器
22 空気用熱交換器
24 水供給源
26 純水タンク
28 水流量調整ユニット
30 燃料供給源
38 燃料流量調整ユニット
40 空気供給源
44 改質用空気流量調整ユニット
45 発電用空気流量調整ユニット
46 第1ヒータ
48 第2ヒータ
50 温水製造装置
52 制御ボックス
54 インバータ
56 施設
58 商用電源
83 点火装置
84 燃料電池セル
110 制御部
111 指令電流設定部
112 操作装置
114 表示装置
116 報知装置
126 電力状態検出センサ
142 発電室温度センサ
150 外気温度センサ

Claims (11)

  1. 燃料と発電用空気を反応させることにより、需要電力に基づいて可変の電力を発生する固体電解質型燃料電池であって、
    複数の固体電解質型燃料電池セルを備えた燃料電池モジュールと、
    上記燃料電池モジュールに燃料を供給する燃料供給手段と、
    上記燃料電池モジュールに発電用空気を供給する発電用空気供給手段と、
    上記燃料電池モジュールに水を供給する水供給手段と、
    上記燃料電池モジュールによって発電された電力を受け入れ、交流に変換するインバータと、
    需要電力に基づいて、上記燃料電池モジュールが発電すべき指令電力を設定する指令電力設定部と、
    この指令電力設定部により設定された指令電力を生成できるように上記燃料供給手段、上記発電用空気供給手段、及び、上記水供給手段を制御し、上記燃料電池モジュールにおいて生成された電力を上記インバータへ出力させる制御部と、を有し、
    上記制御部は、上記インバータに指令を与えて上記燃料電池モジュールから実発電電力を取り出すと共に、各時刻において上記燃料電池モジュールに供給される発電用空気供給量が、常に、その時刻における上記燃料電池モジュールから上記インバータへ出力される実発電電力に対応した基準発電用空気供給量以上になり、且つ上記発電用空気供給量と上記基準発電用空気供給量の差である発電用空気余裕量が、上記指令電力設定部により設定された指令電力の変化に応じて変化し、この指令電力の変化率の絶対値が小さい状態に比べて大きい状態では上記発電用空気余裕量が多くなるように上記発電用空気供給手段を制御することを特徴とする固体電解質型燃料電池。
  2. 上記制御部は、各時刻において上記燃料電池モジュールに供給される燃料供給量が、常に、その時刻において上記燃料電池モジュールから上記インバータへ出力される実発電電力に対応した基準燃料供給量以上になり、且つ上記燃料供給量と上記基準燃料供給量の差である燃料余裕量が、上記指令電力設定部により設定された指令電力の変化に応じて変化し、この指令電力の変化率の絶対値が小さい状態に比べて大きい状態では上記燃料余裕量が多くなるように上記燃料供給手段を制御すると共に、上記発電用空気余裕量が上記燃料供給量に対応させて補正されるように上記発電用空気供給手段を制御する請求項1記載の固体電解質型燃料電池。
  3. 上記制御部は、上記指令電力の変化率の絶対値が所定のしきい値未満となる場合には、上記発電用空気余裕量を増加させる補正を禁止し、上記指令電力の変化率の絶対値が所定のしきい値以上となる場合には、上記発電用空気余裕量を増加させる補正を行うように上記発電用空気供給手段を制御する請求項1又は2に記載の固体電解質型燃料電池。
  4. 上記所定のしきい値は、上記指令電力の変化率が正となる領域よりも負となる領域の方が小さくなるように設定されている請求項3記載の固体電解質型燃料電池。
  5. 上記制御部は、各時刻において上記燃料電池モジュールに供給される水供給量が、常に、その時刻において上記燃料電池モジュールから上記インバータへ出力される実発電電力に対応した基準水供給量以上になり、且つ上記水供給量と上記基準水供給量の差である水余裕量が、上記指令電力設定部により設定された指令電力の変化に応じて変化し、この指令電力の変化率の絶対値が小さい状態に比べて大きい状態では上記水余裕量が多くなるように上記水供給手段を制御し、上記基準発電用空気供給量に対する上記発電用空気余裕量の割合が、上記基準水供給量に対する上記水余裕量の割合よりも大きくなるように上記発電用空気供給手段を制御する請求項1記載の固体電解質型燃料電池。
  6. 上記制御部は、上記指令電力が減少する場合の上記発電用空気余裕量の方が上記指令電力が増加する場合の上記発電用空気余裕量よりも多くなるように上記発電用空気供給手段を制御する請求項1記載の固体電解質型燃料電池。
  7. 上記制御部は、上記指令電力が増加する場合には上記発電用空気余裕量を減少させて上記指令電力の変化を抑制し、上記指令電力が減少する場合には上記発電用空気余裕量を増大させて上記指令電力の変化に対する負荷追従性を高めるように上記発電用空気供給手段を制御する請求項6記載の固体電解質型燃料電池。
  8. 更に、上記燃料供給手段から上記燃料電池モジュールに供給される燃料量を検出する燃料検出手段を有し、上記制御部は、上記指令電力を増加させる時には上記発電用空気供給量が上記燃料供給量よりも所定時間早く増大され、上記指令電力が減少させる時には上記発電用空気供給量が上記燃料供給量よりも所定時間遅れて減少されるように上記燃料供給手段及び上記発電用空気供給手段を制御し、上記発電用空気余裕量は、上記燃料検出手段が検出した燃料量の検出値に基づいて決定される請求項1記載の固体電解質型燃料電池。
  9. 上記制御部は、上記指令電力の変化率の絶対値が大きい程上記発電用空気余裕量が多くなるように上記発電用空気供給手段を制御する請求項1記載の固体電解質型燃料電池。
  10. 上記制御部は、上記指令電力を少なくとも減少させる場合には上記指令電力が減少される所定期間前に上記発電用空気余裕量を増加させるように上記発電用空気供給手段を制御する請求項1記載の固体電解質型燃料電池。
  11. 上記制御部は、上記指令電力を減少させる変化率が大きい程上記発電用空気余裕量が多くなるように上記発電用空気供給手段を制御する請求項10記載の固体電解質型燃料電池。
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