JP2013073833A - リチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法 - Google Patents

リチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】充放電サイクル時の放電容量の低下が少なく、かつ高い充放電速度でも容量低下が少ないリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法を提供する。
【解決手段】ニッケル化合物を含有する水溶液とケイ素化合物を含有する水溶液とを混合し、得られた混合液中でニッケル化合物とケイ素化合物を反応させて、ニッケル及びケイ素を含む共沈物を得る共沈工程と、得られた共沈物を350〜500℃で焼成する第1焼成工程と、第1焼成工程により得られた焼成物に、当該焼成物中に含まれるニッケルのモル数の1〜1.2倍のモル数と、当該焼成物中に含まれるケイ素のモル数の3〜6倍のモル数とを合計したモル数に相当する量のリチウムを含有するリチウム原料を混合させるリチウム混合工程と、前記焼成物及びリチウム原料の混合物を、600〜700℃で焼成する第2焼成工程とを有するリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法を提供する。
【選択図】なし

Description

本発明は、ニッケルを含有するリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法に関する。さらに詳しくは、リチウム−ニッケル複合酸化物とリチウム、ケイ素及び酸素を含む非晶質性物質とを含むリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法に関する。
非水電解質二次電池、特にリチウムイオン二次電池は、携帯電話、ポータブルパーソナルコンピュータ等に広く使用されている。また、非水電解質二次電池は、パワーツール用電源として採用され、将来のハイブリッド自動車用電源としても大きな期待を担っている。そのため、より高容量化された非水電解質二次電池が切望されている。
ところで、1991年にリチウムイオン二次電池の量産化が開始されてから10年の間に、電池構造の改良が進み、高密度充填の技術は大きく進歩した。しかし、正極活物質をコバルト酸リチウム等のリチウム−コバルト複合酸化物とし、負極活物質を黒鉛とする基本構成は、現在も変わらず主流となっている。そのような中、リチウムイオン二次電池のさらなる高性能化、低コスト化が望まれており、リチウム−コバルト複合酸化物に替わる新たな正極材へのニーズが高まっている。
リチウム−コバルト複合酸化物に替わる有望な正極材として、ニッケルやマンガン、鉄を含有するリチウム含有遷移金属酸化物が活発に研究されている。その中でもリチウム−ニッケル複合酸化物は、リチウム−コバルト複合酸化物よりも高容量であることから、正極材への応用が期待されている。
しかし、ニッケル酸リチウム等のリチウム−ニッケル複合酸化物の場合、LiとNi2+のイオン半径がほぼ等しいため、本来Liが占有すべきサイトにNi2+が混入しやすい。そのため、合成時に化学量論組成であるLiNiOとは異なる結晶構造になる場合が多く、その結果として充放電サイクル時(充放電を繰り返した場合)に放電容量の低下が大きい等の課題がある。
当該課題に対して、例えばLiNi1−x−yのMやNにCo、Mn、Al、Si等を含有させる方法(例えば、特許文献1参照。)や、活物質の粒子表面を炭素、SiO、高分子化合物等でコーティングする方法(例えば、特許文献2及び特許文献3参照。)、活物質の粒子径を制御する方法(例えば、特許文献4参照。)等が開示されている。これらの方法により充放電サイクル時の放電容量の低下がある程度抑制されると報告されているものの、より一層の性能向上が望まれている。
また、正極材には、単に充放電サイクル時の放電容量の低下が少ないだけではなく、高い充放電速度でも容量低下が少ないことも同時に求められており、この点についてもより一層の性能向上が求められている。
特開2008−293661号公報 特開2003−059491号公報 特開2009−087891号公報 特開2000−030693号公報
これらの課題を鑑み、本発明においては、充放電サイクル時の放電容量の低下が少なく、かつ高い充放電速度でも容量低下が少ないリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは上記課題を解決するため、鋭意検討を重ねた結果、水溶性ニッケル化合物と水溶性ケイ素化合物を含む溶液からニッケルとケイ素を含む共沈物を得、当該共沈物の焼成物にリチウムを担持させることにより、充放電サイクル時の放電容量の低下が少なく、かつ高い充放電速度でも容量低下が少ないリチウムイオン二次電池用正極活物質が製造し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1) ニッケル化合物を含有する水溶液とケイ素化合物を含有する水溶液とを混合し、得られた混合液中でニッケル化合物とケイ素化合物を反応させて、ニッケル及びケイ素を含む共沈物を得る共沈工程と、
前記共沈工程により得られた共沈物を350〜500℃で焼成する第1焼成工程と、
前記第1焼成工程により得られた焼成物に、当該焼成物中に含まれるニッケルのモル数の1〜1.2倍のモル数と、当該焼成物中に含まれるケイ素のモル数の3〜6倍のモル数とを合計したモル数に相当する量のリチウムを含有するリチウム原料を混合させるリチウム混合工程と、
前記リチウム混合工程後、前記焼成物及びリチウム原料の混合物を、600〜700℃で焼成する第2焼成工程と、
を有し、
前記共沈工程において、前記ニッケル化合物を含有する水溶液と前記ケイ素化合物を含有する水溶液とを、前記混合液中に含まれるニッケルのモル数に対する当該混合液中に含まれるケイ素のモル数の比が0.05〜0.3となるように混合することを特徴とするリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法、
(2) 前記ニッケル化合物を含有する水溶液及び前記ケイ素化合物を含有する水溶液の少なくも一方に、コバルト、鉄、及びアルミニウムからなる群より選択される1種以上が含まれていることを特徴とする前記(1)に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法、
(3) 前記リチウム混合工程において、前記第1焼成工程により得られた焼成物に、コバルト、鉄、及びアルミニウムからなる群より選択される1種以上を担持させることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法、
(4) 前記共沈工程において、
前記混合液のpHが6〜9であり、
前記混合液を70〜90℃に保持することにより、ニッケル化合物とケイ素化合物の反応を行い、共沈物を得ることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれか一つに記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法、
(5) 前記第1焼成工程における焼成時間が0.5〜3時間であり、前記第2焼成工程における焼成時間が1〜5時間であることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれか一つに記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法、
を提供するものである。
本発明によれば、繰り返しの充放電でも容量低下が少なく、かつ高い充放電速度でも容量の低下が少ないニッケルを含有するリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法が提供される。
実施例1において得られた正極活物質Aの粉末X線回折パターンの測定条件及び結果を示した図である。
<リチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法>
本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法(以下、本発明の製造方法という。)により、リチウム、ニッケル、及びケイ素を含むリチウムイオン二次電池用正極活物質(以下、本発明の正極活物質という。)が得られる。本発明の正極活物質は、リチウム、ニッケル、及びケイ素の他に、コバルト、鉄、及びアルミニウムからなる群より選択される1種以上を含有していてもよい。
本発明の製造方法は、ニッケルとケイ素を含む共沈物を共沈法で製造し、特定温度で焼成後、リチウム塩を添加し、再度特定温度で焼成することによって製造する方法である。すなわち、本発明の製造方法は、下記の共沈工程、第1焼成工程、リチウム混合工程、及び第2焼成工程を有することを特徴とする。
ニッケル化合物を含有する水溶液とケイ素化合物を含有する水溶液とを混合し、得られた混合液中でニッケル化合物とケイ素化合物を反応させて、ニッケル及びケイ素を含む共沈物を得る共沈工程と、
前記共沈工程により得られた共沈物を350〜500℃で焼成する第1焼成工程と、
前記第1焼成工程により得られた焼成物に、当該焼成物中に含まれるニッケルのモル数の1〜1.2倍のモル数と、当該焼成物中に含まれるケイ素のモル数の3〜6倍のモル数とを合計したモル数に相当する量のリチウムを含有するリチウム原料を混合させるリチウム混合工程と、
前記リチウム混合工程後、前記焼成物及びリチウム原料の混合物を、600〜700℃で焼成する第2焼成工程。
[共沈工程]
まず、ニッケル化合物を含有する水溶液(以下、ニッケル化合物溶液)とケイ素化合物を含有する水溶液(以下、ケイ素化合物溶液)とを混合し、得られた混合液中でニッケル化合物とケイ素化合物を反応させて、ニッケル及びケイ素を含む共沈物を得る。
ニッケル化合物溶液中のニッケル化合物は、水溶性のニッケル化合物であれば特に限定されるものではない。また、1種類のニッケル化合物を含む水溶液であってもよく、2種類以上のニッケル化合物を含む水溶液であってもよい。ニッケル化合物溶液中のニッケル化合物としては、具体的には、炭酸ニッケル、硫酸ニッケル、硝酸ニッケル等の水溶性ニッケル化合物やこれらの混合物を用いることができ、特に硫酸ニッケルを用いることが好ましい。
ケイ素化合物溶液中のケイ素化合物は、水溶性のケイ素化合物であれば特に限定されるものではない。また、1種類のケイ素化合物を含む水溶液であってもよく、2種類以上のケイ素化合物を含む水溶液であってもよい。ケイ素化合物溶液中のケイ素化合物としては、具体的には、シリカ、水ガラス、コロイダルシリカ等の水溶性ケイ素化合物やこれらの混合物を用いることができ、特にコロイダルシリカを用いることが好ましい。
ニッケル化合物溶液は、酸性水溶液であることが好ましく、pHが1〜3であることが好ましく、pHが1〜2であることがより好ましい。一方、ケイ素化合物溶液は、塩基性水溶液であることが好ましく、pH9〜11であることが好ましく、pH9〜10であることがより好ましい。いずれの水溶液であっても、pHは酸やアンモニアを用いて好ましい範囲に調整することができる。
また、ケイ素化合物溶液には、炭酸アルカリを混合することもできる。ケイ素化合物溶液及びニッケル化合物溶液を混合した混合液に、さらに炭酸アルカリ溶液を添加してもよい。炭酸アルカリの存在下で反応を行うことにより、ニッケル及びケイ素を含む共沈物をより効率的に得ることが出来る。炭酸アルカリは、ニッケル化合物溶液及びケイ素化合物溶液の混合液中において、炭酸アルカリに対するニッケルのモル比が0.7〜1.0になるように混合させることが好ましい。炭酸アルカリとしては、炭酸ナトリウム等が挙げられる。
ニッケル化合物溶液及びケイ素化合物溶液は、混合後の混合液中に含まれるニッケルのモル数に対する当該混合液中に含まれるケイ素のモル数の比が0.05〜0.3となるように混合する。本発明の製造方法では、これらのニッケル化合物、ケイ素化合物及び後述するリチウム化合物等を主原料として、最終的にリチウム−ニッケル複合酸化物と、リチウム・ケイ素・酸素を含む非晶質性物質(以下、「リチウムシリケート」ということもある)を含有する正極活物質が製造される。混合液中のニッケルとケイ素のモル比が0.3を超えると正極活物質中のリチウム−ニッケル複合酸化物の含有比率が低くなってしまい、充放電容量等の正極材として性能を得づらくなってしまう。一方、当該モル比が0.05未満の場合、すなわちケイ素の量が少ない場合には、高い充放電速度での充放電容量の低下率が大きくなる傾向にある。さらに、当該モル比が当該範囲内であれば、当該混合液中で反応を行った際に共沈物が生じやすく、良好な収率で共沈物を得ることができる。本発明の方法においては、混合液中に含まれるニッケルに対するケイ素のモル比が、0.06〜0.27となるように混合することが好ましく、0.07〜0.25となるように、ニッケル化合物溶液及びケイ素化合物溶液を混合することがより好ましい。
ニッケル化合物溶液及びケイ素化合物溶液の混合液のpHは6〜9の範囲内であることが好ましく、6〜8の範囲内であることがより好ましく、6.5〜7.5の範囲内であることがさらに好ましい。混合液のpHが当該範囲内であれば、当該混合液中で反応を行った際に共沈物が生じやすく、良好な収率で共沈物を得ることができる。
次いで、得られた混合液を70〜90℃に保持することにより、ニッケル化合物とケイ素化合物を反応させて、ニッケル及びケイ素を含む共沈物を得る。ニッケル化合物溶液及びケイ素化合物溶液を混合した後に、得られた混合液を70〜90℃に加温してもよいが、ニッケル化合物溶液及びケイ素化合物溶液を70〜90℃に予め加温した後に、両液を混合することが好ましい。
反応時間は混合液中のニッケル化合物及びケイ素化合物の含有量、反応温度等を考慮して適宜決定することができる。また、反応中、混合液は静置していてもよく、撹拌等してもよい。例えば、混合液を70〜90℃で0.5〜2時間程度撹拌することにより、水溶性のニッケル化合物及びケイ素化合物から、ニッケル及びケイ素を含有する共沈物を得ることができる。
得られた共沈物は、ろ過、水洗後、乾燥させておくことが好ましい。乾燥処理は、共沈物に含まれている水分をある程度除去できる方法であればよい。例えば、公知の方法により100〜150℃程度の温度で乾燥処理することによって、水洗後の固形物(共沈物)を乾燥することができる。
[第1焼成工程]
次いで、共沈工程により得られた共沈物を焼成する。焼成温度は、350〜500℃であり、350〜450℃であることが好ましい。焼成温度を350℃以上とすることにより、ニッケル酸化物が効率よく得られ、500℃以下とすることにより、ニッケル酸化物の焼結を充分に抑制できる。すなわち、上記焼成温度の範囲内とすることにより、最終的に得られるリチウム−ニッケル複合酸化物を正極材に適した結晶構造、すなわち後述するXRDによる「I003/I104」の高い結晶構造としやすくでき、高容量の正極活物質を得ることができる。
また、焼成時間は、共沈物中のニッケルやケイ素から酸化物が合成されるために十分な時間であれば特に限定されるものではなく、焼成温度や共沈物の量等を考慮して適宜決定できる。例えば、0.5〜3時間であることが好ましく、0.5〜2時間であることが好ましい。
以上の工程により、ニッケル酸化物及びケイ素酸化物の混合物(以下、単に「共沈後焼成物」と記載することがある。)が製造される。なお、本発明の製造方法では、共沈後焼成物において、ニッケル酸化物の結晶中にケイ素が入り込むことはないと推察される。
[リチウム混合工程]
次いで、得られた共沈後焼成物にリチウム原料を混合させる。リチウム原料としては、硝酸リチウム、炭酸リチウム、水酸化リチウム等が使用できるが、好ましくは水酸化リチウムである。
共沈後焼成物とリチウム原料の混合方法は特に限定されるものではなく、共沈後焼成物とリチウム原料を物理的に混合してもよく、共沈後焼成物にリチウム原料を含浸させてもよい。物理的に混合する場合、例えば、共沈後焼成物を粉砕後、リチウム原料を添加し、乳鉢ですり潰しながら十分に混合することにより、共沈後焼成物及びリチウム原料の均一な混合物を得ることができる。
共沈後焼成物に混合するリチウム原料の量としては、当該共沈後焼成物中に含まれるニッケルのモル数の1〜1.2倍のモル数と、当該共沈後焼成物中に含まれるケイ素のモル数の3〜6倍、好ましくは4〜6倍のモル数とを合計したモル数に相当する量とすることが好ましい。混合するリチウムの量が上記範囲内である場合に、良好な性能を有する正極活物質が得られる理由は明らかではないが、以下のように推察される。混合するリチウムが少なすぎると、本発明の製造方法によって最終的に得られるリチウム−ニッケル複合酸化物中のリチウムが不足してしまい、十分な放電容量を得づらくなる。また、高い充放電速度であっても容量低下を抑制する効果にかかわっていると考えられるリチウムシリケートも形成しづらくなる。一方、リチウムが多すぎると、リチウム−ニッケル複合酸化物中の過剰なリチウムイオンが充放電時の正負極間でのリチウムイオンの移動を阻害し、正極材としての性能の低下が懸念される。共沈後焼成物に含有させるリチウム原料の量を上記範囲内とすることで、リチウム−ニッケル複合酸化物中に、過剰にならずに充分な量のリチウムを存在させることができ、かつリチウムシリケートも良好に形成させられる結果、良好な性能が得られるものと考えられる。
[第2焼成工程]
共沈後焼成物及びリチウム原料の混合物を、600〜700℃で焼成する。焼成により、リチウム、ニッケル、ケイ素を含有する正極活物質、又はリチウム、ニッケル、ケイ素、及び金属M(アルミニウム、コバルト、鉄から選択される1種以上の元素)を含有する正極活物質が製造される。当該正極活物質中には、リチウム−ニッケル複合酸化物とリチウムシリケートが含まれている。
焼成温度を600℃以上とすることにより、正極材としてより好ましい結晶構造のリチウム−ニッケル複合酸化物、すなわち後述するXRDによる「I003/I104」の高いリチウム−ニッケル複合酸化物の結晶を合成することができる。一方で、焼成温度を700℃以下とすることにより、リチウムの揮散を防ぐことができる。すなわち、第二焼成工程の温度を上記範囲内とすることにより、高容量の正極活物質を得ることができる。
[その他の金属成分]
本発明の製造方法は、上記した通り、リチウム化合物、ニッケル化合物及びケイ素化合物を主たる原料成分として正極活物質を製造するものであり、最終的にリチウム−ニッケル複合酸化物とリチウムシリケートを含有する正極活物質が得られるが、このリチウム−ニッケル複合酸化物中にはコバルト、鉄、及びアルミニウムから選択される1種以上の元素(以下総称して「金属M」という場合がある。)を含有させてもよい。
本発明の製造方法において、金属Mを含有させる方法としては、例えば共沈工程において含有させる方法が挙げられる。共沈工程において金属Mを含有させる場合には、ケイ素化合物溶液又はニッケル化合物溶液の少なくとも一方に金属Mを溶解させておき、金属Mの原子をニッケル及びケイ素と共沈させた後、得られた共沈物を第1焼成工程により焼成することが好ましい。コバルト等の金属Mを共に共沈させることにより、金属Mがニッケル酸化物の格子内に組み込まれたニッケル複合酸化物が得られやすい。その後、得られた共沈後焼成物に、後述するリチウム混合工程によってリチウムを混合させた後、さらに焼成することにより、リチウム、ニッケル、ケイ素、及び金属M(アルミニウム、コバルト、鉄から選択される1種以上の元素)を含有する正極活物質が製造される。共沈により、リチウム以外の金属をケイ素と共に含有させることにより、リチウム、ニッケル、ケイ素、及び金属Mがより均一に分散された正極活物質が製造される。
金属Mとしてコバルトを含有させる場合には、コバルト原料として、硫酸コバルト、硝酸コバルト、炭酸コバルト等の化合物を用いることができる。また、鉄を含有させる場合には、鉄原料として、硫酸鉄、硝酸鉄、炭酸鉄等を用いることができる。アルミニウムを含有させる場合には、アルミニウム原料として、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、ベーマイト等を用いることができる。これらの金属Mの原料は、ケイ素化合物溶液又はニッケル化合物溶液のうち、酸性水溶液である方に溶解させることが好ましい。また、金属Mの原料を含む酸性溶液を、ケイ素化合物溶液及びニッケル化合物溶液の混合液に添加した後、共沈させてもよい。
また、共沈工程時以外で正極活物質にリチウム、ニッケル、及びケイ素に加えて金属M(アルミニウム、コバルト、鉄)を含有させる方法としては、金属Mを含まない共沈物を得た後に、金属M原料を添加してもよい。例えば、乾燥処理した後の共沈物に、粉末状の金属M原料を物理的に混合した後、第1焼成工程以降の工程を行ってもよく、第1焼成工程後の共沈後焼成物に、粉末状の金属M原料をリチウム原料と共に物理的に混合した後、後述の第2焼成工程を行ってもよく、第1焼成工程後の共沈後焼成物にリチウム原料と共に金属M原料を含浸させた後に後述の第2焼成工程を行ってもよい。金属M原料としては、ケイ素化合物溶液又はニッケル化合物溶液に添加される金属M原料として例示されたものを用いることができる。
本発明の製造方法では、高い充放電速度でも容量低下が少ない優れた正極活物質が得られる。その理由は明らかではないが、次のように推察される。すなわち、本発明の製造方法では、上記した通り、正極活物質を、ニッケルとケイ素を共沈させた共沈物を焼成した後、得られた共沈後焼成物にリチウムを担持させることによって製造するが、共沈後焼成物中では、ニッケル酸化物の結晶の間にケイ素酸化物が比較的均一に分散して存在していると考えられる。このため、当該共沈後焼成物にリチウムを担持させることによって、リチウム−ニッケル複合酸化物とリチウムシリケートが近接して存在する正極活物質が得られるものと考えられる。このように、イオン伝導体(電解質)であるリチウムシリケートがリチウム−ニッケル複合酸化物同士の隙間を埋めていることにより、正極活物質中のリチウムイオンの拡散が促進される結果、充放電速度が速まり、高い充放電速度とした場合の容量低下が抑制されると推測される。
<リチウムイオン二次電池用正極活物質>
本発明の製造方法により製造された正極活物質(本発明の正極活物質)について、より詳細に説明する。
本発明の製造方法で製造された正極材物質は、結晶性のリチウム−ニッケル酸複合酸化物と、非晶質のリチウム・ケイ素・酸素を含む非晶質性物質すなわちリチウムシリケートを含有する。
[リチウム−ニッケル複合酸化物]
本発明の正極活物質に含まれるリチウム−ニッケル複合酸化物としては、下記一般式(1)で表される化合物が挙げられる。下記一般式(1)中、MはCo、Fe、及びAlから選択される1種以上の元素を表し、0.5<x<1.5であり、0≦y<0.2である。
一般式(1)・・・LiNi1−y
リチウム−ニッケル複合酸化物中のリチウムイオン量が過剰に存在した場合には、充放電時の正負極間でのLiイオンの移動を阻害し正極材としての性能が低下するおそれがある。そこで、一般式(1)中、xは0・5<x<1.5を満たす正の実数である。本発明の正極活物質に含まれている一般式(1)で表されるリチウム−ニッケル複合酸化物としては、0.8<x<1.3であることがより好ましく、0.95<x<1.15であることがさらに好ましい。
一般式(1)中、yは0≦y<0.2である。yが0の場合、リチウム−ニッケル複合酸化物はLiNiである。yが0.2未満であるため、本発明の正極活物質は充分量のNiを含有することができ、本発明の正極活物質を用いて得られた正極材の放電容量の低下を抑制される。一般式(1)中、yは0であってもよいが、結晶構造の安定化による充放電時の容量低下抑制の観点からは、0<y<0.2であることが好ましく、0.01≦y<0.2であることがより好ましく、0.01≦y≦0.1であることがよりさらに好ましく、0.02≦y≦0.06であることがよりさらに好ましい。
一般式(1)中、Mは、コバルト、鉄、及びアルミニウムから選択される少なくとも1種以上の元素である。すなわち、リチウム−ニッケル複合酸化物は、Mとしてコバルト、鉄、又はアルミニウムのうちのいずれか1種類のみからなる化合物であってもよく、Mとして上記元素群のうち2種類以上を含む化合物であってもよい。本発明の正極活物質に含まれているリチウム−ニッケル複合酸化物としては、上記元素のうち、特に好ましいものは、大気中で安定に存在する酸化数が3のみであるアルミニウムである。
本発明の製造方法では、正極活物質中のリチウム−ニッケル複合酸化物の結晶子径は比較的小さく、30nm〜100nm程度の結晶子径のものが得られやすい。なお、正極活物質の結晶子径の大きさが小さすぎる場合には、一次粒子径も小さくなり、その結果、粒界が増加し、リチウムイオン拡散性が著しく低下する傾向にある。一方で結晶子径の大きさが大きすぎる場合には、リチウム−ニッケル複合酸化物の結晶構造中にリチウム欠損が生成しやすくなる傾向にある。リチウム欠損は、充放電時に結晶の相転移を引き起こすため、充放電を繰返し行うと、電気化学活性ではない結晶構造が増加し容量が低下する傾向にある。本発明の製造方法で得られる正極活物質が良好な性能を有する理由の一つとしては、適度な大きさの結晶子径を有するリチウム−ニッケル複合酸化物が得られることによる可能性がある。
なお、前記結晶子径は、正極活物質の粉末試料のX線回折パターン(XRD)を測定し、得られた測定結果から以下のように解析することによって求められる。すなわち、一般式(1)で表されるリチウム−ニッケル複合酸化物はα−NaFeO型(空間群R−3m)と呼ばれる層状岩塩型の結晶構造を有しており、そのXRDを測定すると、(104)面に帰属される回折ピーク「P104」が2Θ=43〜44°に現れる。測定したP104の半値幅を用いて、下記のSherrer式により、リチウム−ニッケル複合酸化物の結晶子径を算出することができる。Sherrer式中、Dはリチウム−ニッケル複合酸化物の結晶子径(nm)であり、KはSherrer定数(0.9)であり、λは回折X線の波長(nm)であり、βはP104の半値幅(rad)であり、θはP104の回折角(°)である。
D = Kλ/(βcosΘ) ・・・Sherrer式
なお、上記式に用いる回折ピークP104の半値幅は、粉末X線回折装置を用い、単色化CuKα線をX線源として使用し、ゴニオメーターの走査モードを連続として、XRDを測定し求めることができる。
本発明の正極活物質中のリチウム−ニッケル複合酸化物のXRDでは、前記2Θ=43〜44°にある(104)面に帰属される回折ピーク「P104」の他に、2Θ=18〜19°にある(003)面に帰属されるピーク「P003」を有する。このP003の積分強度「I003」とP104の積分強度「I104」の積分強度比[I003/I104]は、リチウム−ニッケル複合酸化物の結晶構造におけるLiとNi3+の配置に依存しており、リチウム−ニッケル複合酸化物の層状岩塩構造におけるLiサイト量を反映するため、リチウム−ニッケル複合酸化物の放電容量の指標となる(例えば、P. Kalyani, N. Kalaiselvi, Adv. Mater. vol.6, p689 (2005).)。本発明の製造方法では、正極活物質中のリチウム−ニッケル複合酸化物が[I003/I104]の高いもの、例えば1.2以上のものを得やすい。すなわち、リチウム−ニッケル複合酸化物の結晶が十分に成長しており、正極活物質として高容量を示すため好ましいとされている良好な結晶状態のリチウム−ニッケル複合酸化物を得やすい。
本発明の正極活物質中のリチウム−ニッケル複合酸化物の含有量は、多いほど高容量となるため好ましいが、高い充放電速度での容量の低下を抑制する効果があると考えられるリチウムシリケートの含有量を確保するためには、80質量%〜95質量%であることが好ましく、90質量%〜95質量%であることがより好ましい。
[リチウムシリケート]
本発明の正極活物質に含まれるリチウムシリケートは、リチウム、ケイ素及び酸素を含む非晶質性物質であり、例えば、下記一般式(2)で表される化合物が挙げられる。下記一般式(2)中、a及びbは、正の実数である。
一般式(2)・・・LiSi
一般式(2)で表わされるリチウムシリケートとしては、a及びbが、1<a/b<6を満たす物質であることが好ましい。a/bを上記範囲内とすることにより、リチウムシリケート中のリチウム含有量を、イオン伝導体としての性能をより効果的に発揮するために充分であり、かつリチウムイオンの拡散が阻害されない程度のより好ましい量にすることができる。なお、一般式(2)で表わされるリチウムシリケートにおいて、a/bが大きくなりすぎる場合には、高コストとなるため、製造コストの点からも好ましくない。一般式(2)で表わされるリチウムシリケートとしては、例えば、LiSiO、LiSiO、LiSi、及びこれらの混合物が挙げられる。
本発明の正極活物質中のリチウムシリケートの含有量は、リチウム−ニッケル複合酸化物の結晶子径等の物性や、所望の正極活物質の容量等を考慮して適宜決定することができる。本発明においては、正極活物質中のリチウムシリケートの含有量は、ケイ素(Si)換算で1〜10質量%であることが好ましく、1〜6質量%であることがより好ましく、1〜3質量%であることがさらに好ましい。リチウムシリケートをケイ素(Si)換算で1質量%以上含有させることにより、高い充放電速度でも容量の低下がより少ない正極活物質を得ることができる。但し、本発明の正極活物質中のリチウムシリケートの含有量が多すぎると、相対的にリチウム−ニッケル複合酸化物の含有量が低下するため、所望の性能が発現されないおそれがある。
<リチウムイオン二次電池>
本発明のリチウムイオン二次電池は、本発明の正極活物質を用いて得られることを特徴とする。
リチウムイオン二次電池は、正極活物質を正極集電体に結着してなる正極と、負極活物質を負極集電体に結着してなる負極と、有機溶媒等の非水溶媒にリチウム塩等の電解質を溶解してなる非水電解液とを主要な構成とする。
本発明のリチウムイオン二次電池は、正極活物質として本発明の正極活物質を用いる以外は、常法により製造することができる。
正極集電体に結着させる正極活物質は、本発明の正極活物質のみであってもよく、本発明の正極活物質とその他の正極活物質とを組み合わせて用いてもよい。また、負極活物質としては、例えば黒鉛やコークス等の炭素材料や金属リチウム等を用いることができる。正極集電体としては、板状のアルミニウム等が用いられ、負極集電体としては、板状の銅等が用いられる。非水溶媒としては、エチレンカーボネート等の環状カーボネート、ジメチルカーボネート等の鎖状カーボネート、及びこれらの混合溶媒等を用いることができる。電解質としては、LiPF等のリチウム塩を用いることができる。
正極又は負極は、例えば正極活物質又は負極活物質、導電助剤、バインダー、及び分散剤等を混合して、適当な粘度に調整した活物質ペーストを作製し、この活物質ペーストを集電体に塗工し、プレスして作製することができる。
本発明のリチウムイオン二次電池の形状は特に限定されるものではなく、コイン型であってもよく、円筒型であってもよく、角型であってもよく、ポリマータイプ(ラミネートフィルムで包まれた角型形状のもの)であってもよい。
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例により何ら制限されるものではない。
[実施例1]
イオン交換水1Lに、Ni(SO)・6HO(和光純薬製)126.5g、ベーマイトAP−3(触媒化成工業製)1.24gを加え、80℃に加温し酸性のニッケル化合物溶液を得た。別途用意したイオン交換水1Lに、コロイダルシリカ スノーテックスXS(日産化学製)33.9g、炭酸ナトリウム59.4gを加え、80℃に加温し塩基性のケイ素化合物溶液を得た。ニッケル化合物溶液とケイ素化合物溶液を80℃に保持しながら、ケイ素化合物溶液をニッケル化合物溶液に30分間連続的に加えて1時間攪拌することにより、共沈反応を行った。ケイ素化合物溶液の全量をニッケル化合物溶液に加えた時点における混合液のpHは7.1であった。
当該混合液中の沈殿物をろ過して回収した後、4Lのイオン交換水で洗浄を行い、120℃で12時間乾燥することにより共沈物aを得た。
続いて、この共沈物aを400℃で1時間焼成した。その後、焼成した共沈物a3.004gと水酸化リチウム1水和物(関東化学製)2.917gを混合し乳鉢にて20分間混練りした。そして、得られた混合物Aを660℃にて3時間焼成し、リチウム、ニッケル、ケイ素、アルミニウムを含有する正極活物質Aを得た。
得られた正極材活物質A中のケイ素の量を元素分析により測定した結果を表1に示す。なお、この測定値は、仕込み量から計算される数値とほぼ一致した。
得られた正極材活物質Aの粉末X線回折パターンを以下に示す条件で測定した。測定条件と結果を図1に示す。この結果、正極材活物質Aの(003)面/(104)面の強度比I003/I104は1.25であった。
(XRD測定条件)
粉末X線回折装置:RINT−2500V(リガク製)、
X線::
単色化:CuKα線、管電圧:50kV、管電流:150mA、
ゴニオメーター:縦型
検出器:シンチレーションカウンター
走査軸:2θ/θ
走査モード:連続
スキャン::
スキャンステップ:0.002°、スキャンスピード:0.25°/min
スリット::
固定スリット:使用、発散スリット:1°、散乱スリット:1°、受光スリット:0.15mm
以上のようにして得られた正極活物質A0.2258gを、ケッチェンブラック 0.01257g及びポリフッ化ビニリデン(PVdF)0.01261gと混合して乳鉢にて30分間混練りした。その後、この混練り物にN−メチル−2−ピロリドン(NMP)300μLを添加してアルミ箔に塗布して乾燥させ、コインセル電池の正極に使用する塗布電極を作製した。作製した塗布電極は直径14mmで、活物質の厚さは13μmであった。この塗布電極を正極に、金属リチウムを負極として、不活性ガス雰囲気でリチウムイオン電池の2032コインセルを作製した。
このコインセルを充放電評価装置(北斗電工製、製品名:HJ1001−SD8)に装填し、25℃、不活性ガス雰囲気で、正極活物質Aの充放電特性を評価した。この評価は、Cレート換算で0.1C、及び1Cに相当する電流値での定電流モードで、カットオフ電位3Vから4.3V vs. Li/Liで行った。
この結果、0.1Cでの1サイクル目の放電容量は158mAh/gであり、30サイクル目の放電容量は139mAh/gであり、正極活物質Aは優れた充放電特性を示すことが確認された。
また、1Cでの30サイクル目の放電容量は114mAh/gであり、[0.1Cで放電容量]/[1Cでの放電容量]×100%は82%であり、高い充放電速度であっても放電容量の低下が少ないことが確認された。
[実施例2]
イオン交換水1Lに、Ni(SO)・6HO(和光純薬製)126.5g、ベーマイトAP−3(触媒化成工業製)1.24gを加え、80℃に加温し酸性のニッケル化合物溶液を得た。別途用意したイオン交換水1Lに、コロイダルシリカ スノーテックスXS(日産化学製)17.0g、炭酸ナトリウム59.4gを加え、80℃に加温し塩基性のケイ素化合物溶液を得た。ニッケル化合物溶液とケイ素化合物溶液を80℃に保持しながら、ケイ素化合物溶液をニッケル化合物溶液に30分間連続的に加えて1時間攪拌することにより、共沈反応を行った。ケイ素化合物溶液の全量をニッケル化合物溶液に加えた時点における混合液のpHは7.2であった。
当該混合液中の沈殿物をろ過して回収した後、4Lのイオン交換水で洗浄を行い、120℃で12時間乾燥することにより共沈物bを得た。
続いて、この共沈物bを400℃で1時間焼成した。その後、焼成した共沈物b3.001gと水酸化リチウム1水和物(関東化学製)2.490gを混合し乳鉢にて20分間混練りした。そして、得られた混合物Bを660℃にて3時間焼成し、リチウム、ニッケル、ケイ素、アルミニウムを含有する正極活物質Bを得た。
実施例1と同様にして、正極材活物質Bの粉末X線回折パターンを測定したところ、(003)面/(104)面の強度比I003/I104は1.22であった。
また、実施例1と同様にして、正極材活物質Bの充放電特性を評価したところ、0.1Cでの1サイクル目の放電容量は155mAh/gであり、30サイクル目の放電容量は138mAh/gであり、正極活物質Bは優れた充放電特性を示すことが確認された。
また、1Cでの30サイクル目の放電容量は117mAh/gであり[0.1Cで放電容量]/[1Cでの放電容量]×100%は85%であり、高い充放電速度であっても放電容量の低下が少ないことが確認された。
[実施例3]
実施例1の混合物Aを680℃で3時間焼成し、正極活物質Cを得た。
実施例1と同様にして、正極材活物質Cの粉末X線回折パターンを測定したところ、(003)面/(104)面の強度比I003/I104は1.29であった。
また、実施例1と同様にして、正極材活物質Cの充放電特性を評価したところ、0.1Cでの1サイクル目の放電容量は164mAh/gであり、30サイクル目の放電容量は136mAh/gであり、正極活物質Bは優れた充放電特性を示すことが確認された。
また、1Cでの30サイクル目の放電容量は110mAh/gであり、[0.1Cで放電容量]/[1Cでの放電容量]×100%は81%であり、高い充放電速度であっても放電容量の低下が少ないことが確認された。
[実施例4]
実施例2で得られた混合物Bを630℃で4時間焼成し、正極活物質Dを得た。
実施例1と同様にして、正極材活物質Dの粉末X線回折パターンを測定したところ、(003)面/(104)面の強度比I003/I104は1.23であった。
また、実施例1と同様にして、正極材活物質Dの充放電特性を評価したところ、0.1Cでの30サイクル目の放電容量は132mAh/gであり、正極活物質Bは優れた充放電特性を示すことが確認された。
[比較例1]
実施例2で得られた共沈物b3.002gと水酸化リチウム1水和物(関東化学製)1.871gを乳鉢にて20分間混合・混練りした後、750℃で12時間焼成し、正極活物質Eを得た。
実施例1と同様にして、正極活物質EのX線回折パターンを測定したところ、(003)面/(104)面の強度比I003/I104は1.04であり、リチウム−ニッケル複合酸化物の結晶成長が不十分であることが分かった。
実施例1と同様にして、正極活物質Eの充放電特性を評価したところ、0.1Cでの1サイクル目の初期放電容量は110mAh/gであり、正極活物質Eの充放電性能が不十分であることが確認された。
[比較例2]
実施例1で得られた共沈物aを550℃で1時間焼成した。その後、焼成した共沈物f3.004gと水酸化リチウム1水和物(関東化学製)2.917gを混合し乳鉢にて20分間混練りした。そして、得られた混合物Fを660℃にて3時間焼成し、正極活物質Fを得た。
実施例1と同様にして、正極活物質FのX線回折パターンを測定したところ、(003)面/(104)面の強度比I003/I104は1.02であり、リチウム−ニッケル複合酸化物の結晶成長が不十分であることが分かった。
実施例1と同様にして、正極活物質Fの充放電特性を評価したところ、0.1Cでの10サイクル目の放電容量は105mAh/gであり、正極活物質Eの充放電性能が不十分であることが確認された。
[比較例3]
実施例1で得られた混合物Aを750℃にて3時間焼成し、正極活物質Gを得た。
実施例1と同様にして、正極活物質GのX線回折パターンを測定したところ、(003)面/(104)面の強度比I003/I104は1.05であり、リチウム−ニッケル複合酸化物の結晶成長が不十分であることが分かった。
実施例1と同様にして、正極活物質Gの充放電特性を評価したところ、0.1Cでの10サイクル目の放電容量は110mAh/gであり、正極活物質Gの充放電性能が低いことが確認された。
[比較例4]
実施例1で得られた混合物Aを550℃にて3時間焼成し、正極活物質Hを得た。
実施例1と同様にして、正極活物質HのX線回折パターンを測定したところ、(003)面/(104)面の強度比I003/I104は0.92であり、リチウム−ニッケル複合酸化物の結晶成長が不十分であることが分かった。
実施例1と同様にして、正極活物質Hの充放電特性を評価したところ、0.1Cでの10サイクル目の放電容量は90mAh/gであり、正極活物質Hの充放電性能が低いことが確認された。
[比較例5]
ケイ素化合物溶液を調製する際にイオン交換水1Lに添加するコロイダルシリカ スノーテックスXS(日産化学製)を61.8gとした以外は、実施例1と同様にしてニッケル化合物溶液とケイ素化合物溶液を混合し、共沈反応を行った。ケイ素化合物溶液の全量をニッケル化合物溶液に加えた時点における混合液のpHは7.1であった。
当該混合液中の沈殿物をろ過して回収した後、4Lのイオン交換水で洗浄を行い、120℃で12時間乾燥することにより共沈物iを得た。
続いて、この共沈物iを400℃で1時間焼成した。その後、焼成した共沈物i3.004gと水酸化リチウム1水和物(関東化学製)3.630gを混合し乳鉢にて20分間混練りした。そして、得られた混合物Iを660℃にて3時間焼成し、正極活物質Iを得た。
実施例1と同様にして、正極活物質IのX線回折パターンを測定したところ、(003)面/(104)面の強度比I003/I104は1.25であり、リチウム−ニッケル複合酸化物の結晶が充分に成長していたことが分かった。
実施例1と同様にして、正極活物質Iの充放電特性を評価したところ、0.1Cでの10サイクル目の初期放電容量は110mAh/gであり、正極活物質Iの充放電性能が低いことが確認された。
[比較例6]
実施例2で得られた焼成した共沈物b3.004gと水酸化リチウム1水和物(関東化学製)1.812gを混合し乳鉢にて20分間混練りした。そして、得られた混合物Jを660℃にて3時間焼成し、正極活物質Jを得た。
実施例1と同様にして、正極活物質JのX線回折パターンを測定したところ、リチウムシリケート由来のピークは観測されたものの、リチウム−ニッケル複合酸化物由来のピークがほとんど観測されず、リチウム−ニッケル複合酸化物の結晶成長が不十分であることが分かった。
実施例1と同様にして、正極活物質Jの充放電特性を評価したところ、0.1Cでの10サイクル目の放電容量は5mAh/g以下であり、正極活物質Jの充放電性能が極めて低いことが確認された。
[比較例7]
コロイダルシリカ スノーテックスXS(日産化学製)を61.8gとした以外は、実施例1と同様に調製し、正極材活物質Kを得た。
実施例1と同様にして、正極材活物質Kに充放電特性を評価したところ、0.1Cでの1サイクル目の放電容量は152mAh/gであり、30サイクル目の放電容量は130mAh/gであり、1Cでの30サイクル目の放電容量は40mAh/gであり、[0.1Cで放電容量]/[1Cでの放電容量]×100%は30.7%であった。つまり、正極材活物質Kは、高い充放電速度での放電容量の低下が大きいことが確認された。
実施例1〜4及び比較例1〜7の反応条件及び結果を表1及び表2に纏めた。表1中、「Si/Ni比」はニッケル化合物溶液及びケイ素化合物溶液の混合液中のケイ素とニッケルのモル比である。また、「Li添加量」の欄中「Li/Ni=X、Li/Si=Y」は、共沈後焼成物に、当該共沈後焼成物中のニッケルのモル数のX倍のモル数と、当該共沈後焼成物中のケイ素のモル数のY倍のモル数とを合計したモル数に相当する量のリチウムを含む水酸化リチウム1水和物を混合したことを示す。
Figure 2013073833
Figure 2013073833

Claims (5)

  1. ニッケル化合物を含有する水溶液とケイ素化合物を含有する水溶液とを混合し、得られた混合液中でニッケル化合物とケイ素化合物を反応させて、ニッケル及びケイ素を含む共沈物を得る共沈工程と、
    前記共沈工程により得られた共沈物を350〜500℃で焼成する第1焼成工程と、
    前記第1焼成工程により得られた焼成物に、当該焼成物中に含まれるニッケルのモル数の1〜1.2倍のモル数と、当該焼成物中に含まれるケイ素のモル数の3〜6倍のモル数とを合計したモル数に相当する量のリチウムを含有するリチウム原料を混合させるリチウム混合工程と、
    前記リチウム混合工程後、前記焼成物及びリチウム原料の混合物を、600〜700℃で焼成する第2焼成工程と、
    を有し、
    前記共沈工程において、前記ニッケル化合物を含有する水溶液と前記ケイ素化合物を含有する水溶液とを、前記混合液中に含まれるニッケルのモル数に対する当該混合液中に含まれるケイ素のモル数の比が0.05〜0.3となるように混合することを特徴とするリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法。
  2. 前記ニッケル化合物を含有する水溶液及び前記ケイ素化合物を含有する水溶液の少なくも一方に、コバルト、鉄、及びアルミニウムからなる群より選択される1種以上が含まれていることを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法。
  3. 前記リチウム混合工程において、前記第1焼成工程により得られた焼成物に、コバルト、鉄、及びアルミニウムからなる群より選択される1種以上を担持させることを特徴とする請求項1又は2に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法。
  4. 前記共沈工程において、
    前記混合液のpHが6〜9であり、
    前記混合液を70〜90℃に保持することにより、ニッケル化合物とケイ素化合物の反応を行い、共沈物を得ることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法。
  5. 前記第1焼成工程における焼成時間が0.5〜3時間であり、前記第2焼成工程における焼成時間が1〜5時間であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法。
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