JP2013071954A - プロピレン系ブロック共重合体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】
プロピレン系モノマーを、メタロセン触媒(M)および有機アルミニウム化合物(C)の存在下で重合する第1工程により結晶性ポリプロピレン成分(A)を製造し、次いでそれに活性水素を有する化合物(D)と有機アルミニウム化合物(C’)との反応生成物(E)の少なくとも一種類を添加して重合する第2工程によりプロピレン系エラストマー成分(B)を製造することからなる多段重合によるプロピレン系ブロック共重合体の製造方法。
【選択図】 なし
Description
この様なプロピレン系ブロック共重合体を製造する為に、従来使われていたチーグラー触媒の代わりにメタロセン系触媒を用いた検討例が増えて来ている(特許文献1、2参照)。メタロセン触媒は活性点が均一であり、チーグラー触媒と較べて結晶性分布と分子量分布が狭いために、結晶性ポリプロピレンやプロピレンエチレン共重合体エラストマーの結晶性を下げる為にコモノマーの含量を高めた場合であっても、チーグラー触媒を用いた場合よりも製品のべたつきが少ないという利点を有している。また、メタロセン触媒の利用とあわせて、第1工程と第2工程の両方を気相重合で行う方法が用いられる事も多い。
前記第2工程に活性水素を有する化合物(D)と有機アルミニウム化合物(C’)との反応生成物(E)を添加することを特徴とする前記方法。
(i)結晶性ポリプロピレン成分(A)が、プロピレン単独重合体、あるいは、エチレン及び炭素数が4〜8のα−オレフィンからなる群から選ばれた少なくとも1種類のモノマーとプロピレンとのランダム共重合体であって、エチレン若しくはα−オレフィンの含量の総和が10wt%以下である。
(ii)プロピレン系エラストマー成分(B)がエチレン及び炭素数が4〜8のα−オレフィンからなる群から選ばれた少なくとも1種のモノマーとプロピレンとのランダム共重合体であって、エチレン若しくはα−オレフィンの含量の総和が結晶性ポリプロピレン成分(A)のエチレン若しくはα−オレフィンの含量の総和よりも高い、
ということにある。
(3)本発明の第3の特徴は、プロピレン系エラストマー成分(B)がプロピレンと1−ブテンのランダム共重合体、若しくは、プロピレンとエチレンと1−ブテンのランダム共重合体であるプロピレン系ブロック共重合体の製造方法、にある。
(4)本発明の第4の特徴は、活性水素を有する化合物(D)と有機アルミニウム化合物(C’)を接触させる事による反応生成物(E)を製造し、この反応生成物(E)を第2工程の重合が開始する前に結晶性ポリプロピレン成分(A)と接触させることにより添加することを特徴とするプロピレン系ブロック共重合体の製造方法、にある。
(6)本発明の第6の特徴は、反応生成物(E)を製造する際の活性水素を有する化合物(D)と有機アルミニウム化合物(C’)の使用量の比が0.001〜10mol/mol−Al(C’)の範囲内にあることを特徴とするプロピレン系ブロック共重合体の製造方法、にある。
(7)本発明の第7の特徴は、有機アルミニウム化合物(C)のアルミニウム原子当たりの使用量に対する、反応性生物(E)の主要構成要素である活性水素を有する化合物(D)の使用量の比が0.001〜10mol/mol−Al(C)の範囲内にあることを特徴とするプロピレン系ブロック共重合体の製造方法、にある。
(8)本発明の第8の特徴は、活性水素を有する化合物(D)が、アルコールであることを特徴とするプロピレン系ブロック共重合体の製造方法、にある。
(9)本発明の第9の特徴は、第2工程を気相法で行うことを特徴とするプロピレン系ブロック共重合体の製造方法、にある。
という手段により、本発明の課題を解決することができたものである。
本発明の最良の実施形態として、プロピレン単独またはプロピレンとエチレン及び炭素数が4〜8のα−オレフィンからなる群から選ばれた少なくとも1種類のコモノマーを含むプロピレンのモノマー混合物を、メタロセン触媒(M)および有機アルミニウム化合物(C)の存在下で重合する第1工程により(i)プロピレン単独重合体、あるいは、エチレン及び炭素数が4〜8のα−オレフィンからなる群から選ばれた少なくとも1種類のモノマーとプロピレンとのランダム共重合体であって、エチレン及びα−オレフィンの含量の総和が10wt%以下である結晶性ポリプロピレン成分(A)を製造し、次いでそれにさらに活性水素を有する化合物(D)と有機アルミニウム化合物(C’)との反応生成物(E)を重合系に適量添加して、その存在下でプロピレンとコモノマーの混合物を重合する第2工程により、(ii)エチレン及び炭素数が4〜8のα−オレフィンからなる群から選ばれた少なくとも1種のモノマーとプロピレンとのランダム共重合体であって、エチレン及びα−オレフィンの含量の総和が結晶性ポリプロピレン成分(A)のエチレン及びα−オレフィンの含量の総和よりも高い、特性を有するプロピレン系エラストマー成分(B)を製造するという、少なくとも第1工程と第2工程からなる2段、またはこの重合工程を例えば、2〜6段と繰り返す多段重合によるプロピレン系ブロック共重合体の製造方法を達成することができたものである。
同様に、第2工程で重合するモノマー仕様としては、プロピレン系エラストマー成分(B)を構成する主要構成単位はプロピレンであるから、プロピレンにエチレン及び炭素数が4〜8のα−オレフィンからなる群から選ばれた少なくとも1種のコモノマーを所定量含ませたプロピレンモノマー混合物を使用する。
本発明は、このような技術課題を、特に、第2工程におけるプロピレン系エラストマー成分(B)を製造する為の重合を実施する段階で、重合器に活性水素を有する化合物(D)と有機アルミニウム化合物(C’)との反応生成物(E)を重合系に適量添加するという、少なくとも一種類の反応生成物(E)のその存在下で重合することにより、プロピレン系ブロック共重合体の、特に重合体粒子のべたつきや、流動性の問題を解決することができたものである。
以下に、本発明を実施する為の適正な形態を順次詳細に説明をする。
本発明のプロピレン系ブロック共重合体の製造方法はメタロセン触媒の使用を必須とするものである。チーグラー触媒を使用すると、比較的柔軟性の劣るプロピレン系ブロック共重合体の製造であってもべたつき等の問題が生じる。この点については既出の特許文献に開示されている通りである。
本発明の骨子は特定の構造を有するヒドロキソ化合物の存在下でプロピレン系エラストマー成分(B)を製造する第2工程を行う事にあり、メタロセン触媒の種類は特に限定されるものではない。本発明に用いる事が出来るメタロセン触媒の代表的な例として、下記の成分(a)、(b)、及び、任意成分である成分(c)からなるメタロセン触媒を挙げる事ができる。
成分(a):一般式(1)で表される遷移金属化合物から選ばれる少なくとも1種のメタロセン遷移金属化合物
成分(b):下記(b−1)〜(b−4)から選ばれる少なくとも1種の固体成分
(b−1)有機アルミオキシ化合物が担持された微粒子状担体
(b−2)成分(a)と反応して成分(a)をカチオンに変換することが可能なイオン性化合物またはルイス酸が担持された微粒子状担体
(b−3)固体酸微粒子
(b−4)イオン交換性層状珪酸塩
成分(c):有機アルミニウム化合物
成分(a)は、下記の一般式(1)で表される遷移金属化合物から選ばれる少なくとも1種のメタロセン遷移金属化合物である。
(式中、AおよびA’は置換基を有していてもよい共役五員環配位子、Qは二つの共役五員環配位子間を任意の位置で架橋する結合性基、X及びYは、助触媒と反応してオレフィン重合能を発現させるσ共有結合性補助配位子、Mは、周期律表第4族の遷移金属である)
上記一般式中、共役五員環配位子は置換基を有していてもよいシクロペンタジエニル基誘導体である。置換基を有する場合、その置換基の例としては、炭素数1〜30の炭化水素基(ハロゲン、珪素、酸素、硫黄などのヘテロ原子を含有していてもよい)が挙げられ、この炭化水素基は一価の基としてシクロペンタジエニル基と結合していても、またこれが複数存在するときにその内の2個がそれぞれ他端(ω−端)で結合してシクロペンタジエニルの一部と共に環を形成していてもよい。この置換基の他の例としては、インデニル基、フルオレニル基、またはヒドロアズレニル基等が挙げられ、これらの基は、さらに置換基を有していてもよく、中でもインデニル基またはヒドロアズレニル基が好ましい。
Qとして、好ましくはメチレン基、エチレン基、シリレン基、ゲルミレン基、およびこれらに炭化水素基が置換したもの、並びにシラフルオレン基等が挙げられる。
XおよびYの補助配位子は、成分(b)などの助触媒と反応してオレフィン重合能を有する活性なメタロセンを生成させるものであり、各々水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、あるいは酸素、窒素、ケイ素等のヘテロ原子を有していてもよい炭化水素基が例示できる。これらのうち好ましいものは、炭素数1〜10の炭化水素基、あるいはハロゲン原子である。
Mは、チタン、ジルコニウム、ハフニウムである。特に、ジルコニウム、ハフニウムが好ましい。
さらに上記遷移金属化合物の中でも、プロピレンの立体規則性重合を進行させ、かつ得られるプロピレン重合体の分子量が高いものが好ましい。具体的には、特開平1−301704号公報、特開平4−2211694号公報、特開平6−100579号公報、特表2002−535339号公報、特開平6−239914号公報、特開平10−226712号公報、特開平3−193796号公報、特表2001−504824号公報などに記載の遷移金属化合物が好ましく挙げられる。
(1)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス(2−メチルシクロペンタジエニル)]ジルコニウム
(2)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−フェニルシクロペンタジエニル)]ジルコニウム
(3)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス(2,4,5−トリメチルシクロペンタジエニル)]ジルコニウム
(4)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−フェニル−インデニル)]ジルコニウム
(5)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス(2−エチル−4−フェニル−インデニル)]ジルコニウム
(6)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレン(2−メチル−4−フェニル−インデニル)(2−イソプロピル−4−フェニル−インデニル)]ジルコニウム
(7)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレン(2−メチル−4−t−ブチルフェニル−インデニル)(2−イソプロピル−4−t−ブチルフェニル−インデニル)]ジルコニウム
(8)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ジルコニウム
(9)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−チエニル)−4−フェニル−インデニル}]ジルコニウム
(10)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(2−ナフチル)−インデニル}]ジルコニウム
(11)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−t−ブチルフェニル)−インデニル}]ジルコニウム
(12)ジクロロ{1,1’−ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}ジルコニウム
(13)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル}]ジルコニウム
(14)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−t−ブチルフェニル)−4H−アズレニル}]ジルコニウム
(15)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(2−フルオロ−4−ビフェニル)−4H−アズレニル}]ジルコニウム
(16)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−5,6,7,8−テトラヒドロアズレニル}]ジルコニウム
(17)ジクロロ{1,1’−ジメチルシリレン(2,3−ジメチルシクロペンタジエニル)(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}ジルコニウム
(18)ジクロロ{1,1’−ジメチルシリレン(2−メチル−4−フェニルシクロペンタジエニル)(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}ジルコニウム
(19)ジクロロ{1,1’−ジメチルシリレン(2,3,4−トリメチルシクロペンタジエニル)(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}ジルコニウム
(20)ジクロロジメチルメチレン(3−t−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)フルオレニル)ジルコニウム
(21)ジクロロジメチルメチレン(3−t−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)(2,7−ジt−ブチルフルオレニル)ジルコニウム
(22)ジクロロジメチルメチレン(3−t−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)(1,1,4,4,7,7,10,10−オクタメチル−1,2,3,4,7,8,9,10−オクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウム
上記で表される好ましい化合物は、煩雑な多数の例示を避けて代表的例示化合物のみ記載した。中心金属がジルコニウムの化合物を記載したが、同様のハフニウム化合物も使用可能であることは言うまでもなく、また、種々の配位子や架橋結合基あるいは補助配位子を任意に使用しうることは自明である。
成分(b)として、上述した成分(b−1)〜成分(b−4)から選ばれる少なくとも1種の固体成分を使用する。これらの各成分は公知のものであり、公知技術の中から適宜選択して使用することができる。その具体的な例示や製造方法については、特開2002−284808号公報、特開2002−53609号公報、特開2002−69116号公報などに詳細な例示がある。
ここで、成分(b−1)、成分(b−2)に用いられる微粒子状単体としては、シリカ、アルミナ、マグネシア、シリカアルミナ、シリカマグネシアなどの無機酸化物、塩化マグネシウム、オキシ塩化マグネシウム、塩化アルミニウム、塩化ランタンなどの無機ハロゲン化物、さらには、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、スチレンジビニルベンセン共重合体、アクリル酸系共重合体などの多孔質の有機単体を挙げることができる。
また、成分(b)の非限定的な具体例としては、成分(b−1)として、メチルアルモキサン、イソブチルアルモキサン、メチルイソブチルアルモキサン、ブチルボロン酸アルミニウムテトライソブチルなどが担持された微粒子状担体を、成分(b−2)として、トリフェニルボラン、トリス(3,5−ジフルオロフェニル)ボラン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどが担持された微粒子状担体を、成分(b−3)として、アルミナ、シリカアルミナ、塩化マグネシウム、フッ素化合物処理した後に、か焼したシリカアルミナ、ペンタフルオロフェノールとジエチル亜鉛等の有機金属化合物を反応させ、さらに水と反応後、同生成物を担持したシリカなどを、成分(b−4)として、モンモリロナイト、ザコウナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト、ベントナイト、テニオライトなどのスメクタイト族、バーミキュライト族、雲母族などが挙げられる。これらは、混合層を形成しているものでもよい。
上記成分(b)の中で特に好ましいものは、成分(b−4)のイオン交換性層状珪酸塩であり、さらに好ましい物は、酸処理、アルカリ処理、塩処理、有機物処理などの化学処理が施されたイオン交換性層状珪酸塩である。
必要に応じて成分(c)として用いられる有機アルミニウム化合物の例は、
一般式 AlRaX3−a
(式中、Rは、炭素数1から20の炭化水素基、Xは、水素、ハロゲン、アルコキシ基、aは0<a≦3の数)
で示されるトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウムまたはジエチルアルミニウムモノクロライド、ジエチルアルミニウムモノメトキシドなどのハロゲンもしくはアルコキシ含有アルキルアルミニウムである。またこの他に、メチルアルミノキサンなどのアルミノキサン類なども使用できる。これらのうち特にトリアルキルアルミニウムが好ましい。
成分(a)、成分(b)および必要に応じて成分(c)を接触させて触媒とする。その接触方法は特に限定されないが、以下のような順序で接触させることができる。また、この接触は、触媒調製時だけでなく、オレフィンによる予備重合時に行ってもよい。なお、オレフィンの重合時に有機アルミニウム化合物を用いる場合は、後述の有機アルミニウム(C)として扱い、触媒の任意成分(c)としては扱わない。これは、仮に同一の化合物を用いた場合であっても用いられる環境と工程が異なる為に両者の機能が異なるが故である。
1)成分(a)と成分(b)を接触させる
2)成分(a)と成分(b)を接触させた後に成分(c)を添加する
3)成分(a)と成分(c)を接触させた後に成分(b)を添加する
4)成分(b)と成分(c)を接触させた後に成分(a)を添加する
その他、三成分を同時に接触させてもよい。
本発明で使用する成分(a)、(b)及び(c)の使用量は任意である。例えば、成分(b)に対する成分(a)の使用量は、成分(b)1gに対して、好ましくは0.1μmol〜500μmol、特に好ましくは0.5μmol〜100μmolの範囲である。成分(b)に対する成分(c)の使用量は、成分(b)1gに対し、好ましくは遷移金属の量が0.001mmol〜100mmol、特に好ましくは0.005mmol〜50mmolの範囲である。したがって、成分(a)に対する成分(c)の量は、遷移金属のモル比で0.002〜106、好ましくは0.02〜105、特に好ましくは0.2〜104の範囲内である。
さらに、上記各成分の接触の際、もしくは接触の後に、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどの重合体やシリカ、チタニアなどの無機酸化物固体を共存させることも可能である。
2−(1)逐次重合
本発明を実施するに際しては、結晶性ポリプロピレン成分(A)とプロピレン系エラストマー成分(B)を逐次重合することが必要である。具体的には、第1工程において結晶性ポリプロピレン成分(A)を重合した後で、第2工程においてプロピレン系エラストマー成分(B)を重合する事が必要である。本発明の効果を阻害しない限り、第1工程の前、第1工程と第2工程の間、第2工程の後、の任意の箇所で他の重合を行っても問題はない。
逐次重合を行う際には、バッチ法と連続法のいずれを用いることも可能であるが、一般的には生産性の観点から連続法を用いることが望ましい。
バッチ法の場合には、時間と共に重合条件を変化させることにより単一の重合反応器を用いて結晶性ポリプロピレン成分(A)とプロピレン系エラストマー成分(B)を個別に重合することが可能である。本発明の効果を阻害しない限り、複数の重合反応器を並列に接続して用いてもよい。
連続法の場合には結晶性ポリプロピレン成分(A)とプロピレン系エラストマー成分(B)を個別に重合する必要から2個以上の重合反応器を直列に接続した製造設備を用いる必要がある。結晶性ポリプロピレン成分(A)を製造する第1工程に対応する重合反応器とプロピレン系エラストマー成分(B)を製造する第2工程に対応する重合反応器については直列の関係になくてはならないが、第1工程、第2工程のそれぞれについて複数の重合反応器を直列及び/又は並列に接続して用いてもよい。
(ii)エチレン及び炭素数が4〜8のα−オレフィンからなる群から選ばれた少なくとも1種のモノマーとプロピレンとのランダム共重合体であって、エチレン及びα−オレフィンの含量の総和が結晶性ポリプロピレン成分(A)のエチレン及びα−オレフィンの含量の総和よりも高いという、特性を満たしていなくてはならない。
本発明のプロピレン系ブロック共重合体は、重合段階で、結晶性ポリプロピレン成分(A)の主成分の結晶相(ハードセグメント)にエラストマー成分(ソフトセグメント)を導入したものであり、第1工程と第2工程におけるモノマー仕様の種類および含有量の一部が例え共通する場合があっても、第1工程による結晶性プロピレン成分(A)と第2工程のプロピレン系エラストマー成分(B)の両者は、ポリマーの技術常識からして、物性上または組織上において明確に相違するので、混同することはない。
重合プロセスはバルク法又は気相法を用いることができる。バルク法と気相法の中間的な条件として超臨界条件を用いることも可能であるが、実質的には気相法と同等であるため、特に区別することなく気相法に含める。なお、多槽連続重合プロセスの場合、バルク法の重合反応器の後に気相法の重合反応器を付ける場合があるが、この場合は当業界の慣例にしたがってバルク法と呼ぶ事にする。また、バッチ法の場合に第1工程をバルク法で行い第2工程を気相法で行う事もあるが、この場合も同様にバルク法と呼ぶ事にする。
また、バルク法と気相法のそれぞれにおいて種々のプロセスが提案されている。攪拌(混合)方法や除熱方法に違いがあるが、この観点において本発明は特段プロセス種を限定する事はない。
プロピレン系エラストマー成分(B)は炭化水素などの有機溶媒や液化プロピレンに溶けやすいため、プロピレン系エラストマー成分(B)の製造を行う第2工程は気相法を用いることが好ましい。
結晶性ポリプロピレン成分(A)の製造を行う第1工程はバルク法であっても気相法であっても問題ないが、より柔軟性の高い製品を製造する為に比較的結晶性の低い結晶性ポリプロピレン成分(A)を製造する場合には、付着などの問題を避けるために気相法を用いることが望ましい。
したがって、連続法を用いて、まず、結晶性ポリプロピレン成分(A)の製造を行う第1工程を気相法で行い、引き続きプロピレン系エラストマー成分(B)の製造を行う第2工程を気相法にて行う事が最も望ましい。
重合温度は通常用いられている温度範囲であれば特に問題なく用いることができる。具体的には、0℃〜200℃、好ましくは40℃〜100℃の範囲を用いることができる。
重合圧力は選択するプロセスによって差異が生じるが、通常用いられている圧力範囲であれば特に問題なく用いることができる。具体的には、0より大きく200MPaまで、好ましくは0.1〜50MPaの範囲を用いることができる。この際に、窒素などの不活性ガスを共存させても問題はない。
メタロセン触媒はチーグラー触媒とは異なり、有機アルミニウム化合物を助触媒として用いる事が必須ではない。従って、活性化された触媒の形成という観点では重合反応器に有機アルミニウム化合物を添加する事は必ずしも必要ではない。しかし、オレフィンの重合反応は他の触媒反応と較べて極めて短時間に極めて多くの触媒サイクルが回るという点で特異的であり、その為不純物の影響を受けやすいという技術上の課題が存在する。この課題を解決する為に、通常の化成品と較べて遥かに純度の高い原料を用いたり、原料を更に精製して使用したり、種々の工夫がなされているのは周知の事実である。この観点で、重合反応器に反応性の高い有機アルミニウム化合物を添加し、不純物がメタロセン触媒と反応する前に有機アルミニウム化合物と反応させ無害化する手法が良く用いられる。
本発明においても有機アルミニウム化合物(C)を用いる事が必要である。有機アルミニウム化合物(C)を用いないと、後述の活性水素を有する化合物(D)と有機アルミニウム化合物(C’)との反応生成物(E)による活性抑制反応を安定に制御する事ができず、本発明の効果が得られない。また、上記の通り不純物の無害化効果も期待できる為、安定運転の観点で極めて重要である。
本発明の有機アルミニウム化合物(C)として任意の化合物を用いる事ができるが、好適な化合物の例はメタロセン触媒の任意成分である成分(c)と同様であり、とりわけ、トリイソブチルアルミニウムとトリオクチルアルミニウムが好ましい。
有機アルミニウム化合物(C)の使用量は不純物のレベルに応じて任意に設定する事ができる。一般的には、製造するプロピレン系ブロック共重合体の重量に対するアルミニウム原子のモル数として、0.001〜1000mmol−Al/kgの範囲内となる様に添加する。好ましくは、0.01〜100mmol−Al/kg、更に好ましくは、0.1〜20mmol/kgの範囲内となる様に添加するのが良い。
本発明の活性水素を有する化合物(D)は有機アルミニウム化合物(C’)と反応することが出来る化合物であり、その為の反応部位として活性水素を有する事が必要である。活性水素を有する化合物(D)の具体的な例としては、アルコール類、シラノール類、カルボン酸類、スルホン酸類、ヒドロキシカルボニル化合物類、アミン類、などを例示する事が出来る。この中で、アルコール類が最も好ましい。アルコール類として、直鎖状の脂肪族アルコール、環状の脂肪族アルコール、芳香族のアルコール、のいずれも用いる事ができる。活性水素を有する化合物(D)の炭素数は任意の値とする事が出来るが、炭素数が大きすぎると製品であるプロピレン系ブロック共重合体に残留する割合が高くなりすぎるので、30以下である事が好ましい。より好ましくは20以下、更に好ましくは15以下である。活性水素を有する化合物(D)として好ましい化合物の具体例を挙げると、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、t−ブタノール、n−ヘキサノール、オクタノール、2−エチルヘキサノール、デカノール、ドデカノール、ウンデカノール、ステアリルアルコール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、フェノール、クレゾール、ジメチルフェノール、t−ブチルフェノール、ジ−t−ブチルフェノール、ジ−t−ブチルメチルフェノール、ナフチルアルコール、メトキシフェノール、などがある。幾何異性体(n,i,t,o,m,pなど)を記載しなかった例もあるが、上記の例示は全ての幾何異性体を含めた例示であるので、如何なる幾何異性体を排除するものではない。
本発明の有機アルミニウム化合物(C’)として任意の化合物を用いる事ができるが、好適な化合物の例はメタロセン触媒の任意成分である成分(c)と同様であり、とりわけ、トリイソブチルアルミニウムとトリオクチルアルミニウムが好ましい。
本発明の骨子は活性水素を有する化合物(D)と有機アルミニウム化合物(C’)との反応生成物(E)の存在下でプロピレン系エラストマー成分(B)を製造する第2工程を行う事にある。以下、反応生成物(E)について詳細を述べる。反応生成物(E)は活性水素を有する化合物(D)と有機アルミニウム化合物(C’)とを接触させる事により反応させて得られる生成物であり、接触生成物(E)と呼ぶ事もできる。
活性水素を有する化合物(D)と有機アルミニウム化合物(C’)との反応は通常の化学反応で用いられる方法で行う事ができる。以下、具体的な項目について説明するが、本節2−(6)で「両者の反応」と表現するものは「活性水素を有する化合物(D)と有機アルミニウム化合物(C’)との反応」の意味である。
両者の反応の反応様式はバッチ法で行っても良いし、連続法で行っても良い。両者の反応をきちんと制御するという観点で、バッチ法で反応させる方が好ましい。また、通常の化学反応と同様に不活性媒体で希釈する事も可能である。具体的には、炭化水素溶媒を用いる事が好ましく、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、などを好ましい溶媒として例示する事ができる。
a)最初に活性水素を有する化合物(D)を反応器に添加し、その後有機アルミニウム化合物(C’)を添加する。
b)最初に有機アルミニウム化合物(C’)を反応器に添加し、その後活性水素を有する化合物(D)を添加する。
c)反応器に、活性水素を有する化合物(D)と有機アルミニウム化合物(C’)を同時に添加する。
のいずれの方法を用いても良い。
両者の反応は任意の温度で行う事ができるが、好ましくは0〜100℃、更に好ましくは10〜50℃、特に好ましくは15〜35℃である。温度が高すぎても低すぎても、温度制御にコストが掛かり好ましくない。
両者の反応は任意の時間で行う事ができる。活性水素を有する化合物と有機アルミニウム化合物との反応は極めて速い事が知られており、ほぼ拡散律速に近い速度を有していると言われている。従って、活性水素を有する化合物(D)と有機アルミニウム化合物(C’)は接触と同時に反応すると考えて良い。従って、両者の反応を長い時間行う事にはあまり意味がないが、反応時間の設定を短くしすぎると工程管理の観点で難しくなる場合がある。両者の反応時間は、好ましくは1〜300分、更に好ましくは5〜60分である。なお、両者の反応を行う際に反応器に両者を添加する時間はこの反応時間には含めないものとする。
一例を示すと、反応モル比を任意に変えることにより、容易に実施できるような技術事項であり、しかも、その反応生成物(E)の化合物を反応時点および反応生成物を容易に推定することもできる程度のことである。このような背景技術を考慮すれば、活性水素を有する化合物(D)と有機アルミニウム化合物(C’)の反応生成物(E)と特定しただけで当業者が容易に理解できるような技術事項であるから、反応生成物(E)と特定しただけでも、当業者が容易に技術事項を把握して、容易に実施および効果を確認することができる。
なお、触媒の任意成分として用いる事の出来る有機アルミニウム化合物(c)は活性水素を有する化合物(D)の使用量の計算には含めないものとする。
そもそも、アルコールの様な活性水素を有する化合物(D)を重合抑制剤として用いてプロピレン系ブロック共重合体の粒子性状を改良する方法はチーグラー触媒を用いた製造技術の中で開発されてきたものである。チーグラー触媒はチタン原子を有する固体触媒成分を有機アルミニウム化合物によって活性化した触媒であり、固体触媒中のチタン化合物と有機アルミニウム化合物が反応して形成されたアルキル−Ti結合にプロピレンの様なモノマーが配位、挿入して重合が進むと考えられている。一般的に、プロピレンの重合を行う場合、アルコキシ−Ti化合物は好ましい固体触媒成分とはならず、アルコキシ−Al結合を有する有機アルミニウム化合物も好ましい助触媒ではない。従って、チーグラー触媒を用いたプロピレン系の重合反応場にアルコール化合物を共存させると、重合触媒能を有するアルキル−Ti結合とアルコール化合物が反応して不活性なアルコキシ−Ti化合物になったり、助触媒として必須の有機アルミニウム化合物がアルコール化合物と反応して助触媒能の乏しいアルコキシアルミニウム化合物になったりして、重合反応が停止すると考えられる。プロピレン系ブロック共重合体は粒子として製造されるので、重合場に存在するアルコール化合物は粒子の外側から粒子の内部に向けて徐々に拡散すると考えられるが、拡散経路上に存在するTi化合物や有機アルミニウム化合物と反応するとその場で消費される為、主に粒子の外部の重合活性点における重合反応が停止し、粒子内部の重合活性点における重合反応は維持継続されると考えることが出来る。従って、本発明のプロピレン系ブロック共重合体の柔軟性とは比較にならないほど硬いプロピレン系ブロック共重合体の製造ではあるが、チーグラー触媒を用いたプロピレン系ブロック共重合体の製造において、プロピレン−エチレン共重合体エラストマーの様なべたつきやすい重合体を製造する際にアルコール類を存在させると、粒子表面のプロピレン−エチレン共重合体エラストマーの生成量を抑制する事ができ、粒子表面のべたつきを抑制する事が出来るので粒子性状を改良する事ができると解釈されるのが通例である。
また、粒子表面における重合反応を選択的に抑制する為には粒子表面で局所的に反応を起こす必要があり、粒子内部への拡散を遅くする程度に重合抑制剤が大きくなくてはならないと考えられる。この観点でも反応生成物(E)は公知の重合抑制剤と比較して充分大きな分子サイズを有しており、効果が高いと考えている。
本発明における活性水素を有する化合物(D)と有機アルミニウム化合物(C’)の反応生成物(E)はプロピレン系エラストマー成分(B)を製造する第2工程を行う際に存在していれば良く、添加方法は特に限定されるものではない。例えば、バッチ法を用いる場合には第1工程を終わった後に反応生成物(E)添加し、その後第2工程を行っても良いし、第2工程の開始と同時に反応生成物(E)を添加しても良い。連続法を用いる場合には、第1工程を行う重合反応器から第2工程を行う重合反応器への移送経路(例えば、移送配管や途中の脱ガス槽など)で反応生成物(E)を添加しても良いし、第2工程を行う重合反応器に反応生成物(E)を添加しても良い。
第1工程が終わった後、かつ、第2工程が始まる前に反応生成物(E)を添加する場合には、反応生成物(E)を結晶性ポリプロピレン成分(A)と接触させる事になる。一方で、第2工程の開始と同時に反応生成物(E)を添加する場合や第2工程を行う重合反応器に反応生成物(E)を添加する場合は、製造途上のプロピレン系ブロック共重合体と接触させる事になる。いずれの方法を用いても良く、また、両手法を併用する事も可能である。
本発明のプロピレン系ブロック共重合体はリアクターTPOとして用いるものであって、
透明性に優れ、柔軟性と耐熱性のバランスが高い特徴を有するものである。具体的には、結晶性ポリプロピレン成分(A)を製造する第1工程と、その後にプロピレン系エラストマー成分(B)を製造する第2工程とを含む多段重合によって製造されるものである。以下、詳細を説明する。
本発明の結晶性ポリプロピレン成分(A)は、プロピレン単独重合体、あるいは、エチレン及び炭素数が4〜8のα−オレフィンからなる群から選ばれた少なくとも1種類のモノマーとプロピレンとのランダム共重合体である。結晶性ポリプロピレン成分(A)は製品であるリアクターTPOの耐熱性を発現させる為の成分であり、ある程度融点が高い方が好ましい。一方で、リアクターTPOの柔軟性を充分なレベルとする為には、結晶性ポリプロピレン成分(A)の結晶性が高すぎない方が好ましいので、結晶性と対応する融点も高すぎない方が好ましい。従って、より高い柔軟性と耐熱性のバランスを得る為にはプロピレン単独重合体よりもランダム共重合体の方が好ましく、使用するメタロセン触媒によってプロピレン単独重合体の結晶性がどの程度か決まるので、そのレベルに応じてプロピレンとコモノマーとの共重合を行い、融点及び結晶性を制御する事が好ましい。
結晶性ポリプロピレン成分(A)がエチレン及び炭素数が4〜8のα−オレフィンからなる群から選ばれた少なくとも1種類のモノマーとプロピレンとのランダム共重合体である場合、エチレン若しくはα−オレフィンの含量の総和は10wt%以下である必要がある。より好ましくは、エチレン若しくはα−オレフィンの含量の総和は0.1wt%以上5wt%以下であり、更に好ましくは1wt%以上3wt%以下である。耐熱性の観点からは、エチレンやα−オレフィンの含量が高すぎず、融点が下がりすぎない方が好ましい。好ましいコモノマーはエチレンと1−ブテンであり、特にエチレンが好ましい。炭素数が9以上のα−オレフィンは沸点が高くなりすぎ、製造が難しくなるので用いる事ができない。
一方、融点が高くなるとそれに伴い結晶性ポリプロピレン成分(A)の結晶性が増加する為に剛性が高くなり、柔軟性を付与するためにプロピレン系エラストマー成分(B)を増やす必要が出てくる。より高い柔軟性と耐熱性のバランスを得る為には、プロピレン系エラストマー成分(B)の量をプロピレン系エラストマー成分(B)がマトリックスとならない範囲におさめる事が好ましく、Tm(A)は高くなり過ぎない方が好ましい。この為、Tm(A)は145℃以下である事が好ましく、特に好ましくは140℃以下である。
結晶性ポリプロピレン成分(A)の融点はコモノマーの含量によって制御する事ができる。使用するメタロセン触媒によってコモノマー含量と融点との関係は異なるが、この関係を事前に調べておき、コモノマーの含量を適宜調整すれば融点を望みの値に制御できる。コモノマー含量が高くなるほど、結晶性ポリプロピレン成分(A)の融点は低くなり、結晶性も低くなり、柔軟性が高くなる。逆も同様である。
本発明のプロピレン系エラストマー成分(B)はエチレン及び炭素数が4〜8のα−オレフィンからなる群から選ばれた少なくとも1種のモノマーとプロピレンとのランダム共重合体であって、なおかつ、エチレン若しくはα−オレフィンの含量の総和が結晶性ポリプロピレン成分(A)のエチレン若しくはα−オレフィンの含量の総和よりも高いものである。プロピレン系エラストマー成分(B)は製品であるリアクターTPOに柔軟性を付与する成分であるので、結晶性ポリプロピレン成分(A)よりも柔らかい成分である必要がある。3−(1)で説明した通りコモノマー含量が高い程柔軟性が高くなるので、プロピレン系エラストマー成分(B)のコモノマー含量、すなわち、エチレン若しくはα−オレフィンの含量の総和は結晶性ポリプロピレン成分(A)のエチレン若しくはα−オレフィンの含量の総和よりも高くなくてはならない。
コモノマーとしてエチレンを用いる場合、他のコモノマーとしてα−オレフィンを併用するかどうかに関わらず、エチレン含量を1wt%以上60wt%以下とする事が好ましい。より好ましくは、3wt%以上40wt%以下、特に好ましくは、4wt%以上20wt%以下、最も好ましくは、5wt%以上14wt%以下である。高い柔軟性を達成する為にはプロピレン系エラストマー成分(B)の結晶性を低くする方が好ましく、その為にはエチレン含量は高い方が好ましい。逆に、透明性を高くするという観点では結晶性ポリプロピレン成分(A)とプロピレン系エラストマー成分(B)が相分離しない条件とする事が好ましく、プロピレン系エラストマー成分(B)のエチレン含量は低い方が好ましい。この二つの観点で、上記の好ましい範囲を用いる事が望ましい。
プロピレン系エラストマー成分(B)のエチレン及び炭素数が4〜8のα−オレフィンの含量は、結晶性ポリプロピレン成分(A)におけるエチレン及び炭素数が4〜8のα−オレフィンの含量と同様の手法により調整することが出来る。
本発明のプロピレン系ブロック共重合体は、結晶性ポリプロピレン成分(A)とプロピレン系エラストマー成分(B)を必須成分とするものである。結晶性ポリプロピレン成分(A)とプロピレン系エラストマー成分(B)の重量比は10:90〜90:10の範囲が好ましい。好ましくは、結晶性ポリプロピレン成分(A)とプロピレン系エラストマー成分(B)の重量比が15:85〜85:15、より好ましくは、25:75〜75:25、特に好ましくは、35:65〜65:35の範囲内である。柔軟性を高くするという観点では、結晶性ポリプロピレン成分(A)は多すぎない方が好ましい。一方、耐熱性を高くするという観点では、結晶性ポリプロピレン成分(A)は少なすぎない方が好ましい。この二つの観点で、上記の好ましい範囲を用いる事が望ましい。
結晶性ポリプロピレン成分(A)とプロピレン系エラストマー成分(B)の重量比は結晶性ポリプロピレン成分(A)を製造する第1工程における製造量とプロピレン系エラストマー成分(B)を製造する第2工程における製造量によって制御する。例えば、結晶性ポリプロピレン成分(A)の量を増やしてプロピレン系エラストマー成分(B)の量を減らすためには、第1工程の製造量を維持したまま第2工程の製造量を減らせばよく、それは、第2工程の滞留時間を短くしたり、重合温度を下げたりすれば良い。また、本発明の活性水素を有する化合物(D)と有機アルミニウム化合物(C’)の反応生成物(E)や酸素などのその他の重合抑制剤の量を増やす事でも制御することができる。その逆も又同様である。
結晶性ポリプロピレン成分(A)のMFRは任意の値を用いる事ができるが、一般的には0.1〜1000g/10minの範囲内とする事が好ましい。より好ましくは、1−100g/10minである。結晶性ポリプロピレン成分(A)を製造する第1工程において、水素を連鎖移動剤として用いる事で結晶性ポリプロピレン成分(A)のMFRを調整する事が出来る。具体的には、連鎖移動剤である水素の濃度を高くすると結晶性ポリプロピレン成分(A)のMFRが高くなる。逆も又同様である。
プロピレン系エラストマー成分(B)のMFRも任意の値を用いる事ができるが、一般的には0.1〜1000g/10minの範囲内とする事が好ましい。より好ましくは、1〜100g/10min、更に好ましくは、3〜60g/10minの範囲内である。メタロセン触媒はチーグラー触媒と異なり、分子量分布が狭い為に非常に小さい分子量の成分を製造してもべたつき等の問題を起こしづらいが、あまりにもMFRを高くすると同様の問題が生じうる。プロピレン系エラストマー成分(B)のMFRは結晶性ポリプロピレン成分(A)のMFRと同様に制御する事が出来る。
一方、プロピレン系ブロック共重合体の融点Tm(w)は主に結晶性ポリプロピレン成分(A)の融点Tm(A)に支配されているので、融点が高くなるとそれに伴い結晶性ポリプロピレン成分(A)の結晶性が増加する為に剛性が高くなり、柔軟性を付与するためにプロピレン系エラストマー成分(B)を増やす必要が出てくる。より高い柔軟性と耐熱性のバランスを得る為には、プロピレン系エラストマー成分(B)の量をプロピレン系エラストマー成分(B)がマトリックスとならない範囲におさめる事が好ましく、Tm(w)は高くなり過ぎない方が好ましい。この為、Tm(w)は145℃以下である事が好ましく、特に好ましくは140℃以下である。
プロピレン系ブロック共重合体の融点Tm(w)は既述の方法によって結晶性ポリプロピレン成分(A)の融点Tm(A)を制御する事によって調整する事が出来る。また、結晶性ポリプロピレン成分(A)とプロピレン系エラストマー成分(B)の親和性(相溶性パラメーター)を制御する目的で、両成分のコモノマー含量を適宜設定する事によって調製する事も可能である。実際には、両成分のコモノマー含量を変えてみてTm(w)の変化の仕方を把握すれば、Tm(w)を望みの値に調整する事は当業者にとって容易である。
本発明のプロピレン系ブロック共重合体においては、各種の機能を付加させるために、付加的成分(任意成分)を添加剤として、本発明の効果を著しく損なわない範囲内で配合することもできる。
この付加的成分としては、従来公知のポリオレフィン樹脂用配合剤として使用される酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、金属不活性化剤、安定剤、中和剤、滑剤、帯電防止剤、防曇剤、核剤、過酸化物、充填剤、抗菌防黴剤、蛍光増白剤のような各種添加剤を加えることができる。
これら添加剤の配合量は、一般に0.0001〜3wt%、好ましくは0.001〜1wt%である。
ポリオレフィンの酸化劣化は熱、光、機械力、金属イオン等と酸素との作用により生ずるパーオキサイドラジカルやハイドロパーオキサイド化合物を経由したラジカル連鎖反応であり、一般的に自動酸化と呼ばれている。この自動酸化を抑制する為に用いられるのが酸化防止剤であり、連鎖反応のどこに作用するかによって、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、の3種に大別されるのが一般的である。
フェノール系酸化防止剤はラジカル補足剤であり、パーオキサイドラジカルなどと反応して生じるラジカルが比較的安定である事から系中のラジカル濃度を下げる事ができる。一般的には、置換フェノール化合物、特に、オルト位に嵩高い置換基を有する置換フェノール化合物を用いる。
以下、フェノール系酸化防止剤として代表的な化合物を例示する。モノフェノール型の化合物では、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(通称:BHT)、トコフェロール(ビタミンE)、n−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート(商品名:Irganox1076、スミライザーBP−76)を例示する事が出来る。ビスフェノール型の化合物では、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)(商品名:スミライザーMDP−S)、1,1−ビス(2’−メチル−4’−ヒドロキシ−5’−t−ブチルフェニル)ブタン(商品名:スミライザーBBM−S、アデカスタブAO−40)、3,9−ビス[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン(商品名:スミライザーGA−80、アデカスタブAO−80)を例示する事ができる。トリフェノール型の化合物では、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン(商品名:アデカスタブAO−30)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン(商品名:Irganox1330、アデカスタブAO−330)、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート(商品名:Irganox3114、アデカスタブAO−20)、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート(商品名:スミライザーBP−179)を例示する事が出来る。テトラフェノール型の化合物では、テトラキス{メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート}メタン(商品名:Irganox1010)を例示する事が出来る。
以下、リン系酸化防止剤として代表的な化合物を例示する。ホスファイト型の化合物では、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト(商品名:Irgafos168、スミライザーP−16、アデカスタブ2112)、トリスノニルフェニルホスファイト(商品名:スミライザーTNP、アデカスタブ1178)、トリス(ミックスド,モノ−ジノニルフェニルホスファイト)(商品名:アデカスタブ329K)、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト(通称:P−EPQ)を例示する事が出来る。
以下、硫黄系酸化防止剤として代表的な化合物を例示する。スルフィド型の化合物では、ジラウリル−3,3’−チオ−ジプロピオネート(通称:DLTDP)、ジ−ミリスチル−3,3’−チオ−ジプロピオネート(通称:DMTDP)、ジステアリル−3,3’−チオ−ジプロピオネート(通称:DSTDP)、ペンタエリスリトール−テトラキス−(3−ラウリルチオ−プロピオネート)(商品名:スミライザーTP−D、アデカスタブAO−412S)を例示する事が出来る。
紫外線吸収剤は紫外線領域に吸収帯を持つ化合物であり、トリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリシレート系、シアノアクリレート系、ニッケルキレート系、無機微粒子系、などが知られている。この中で最も汎用的に用いられているのは、トリアゾール系である。
以下、紫外線吸収剤として代表的な化合物を例示する。トリアゾール系の化合物では、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール(商品名:スミソーブ200、TinuvinP)、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール(商品名:スミソーブ340、Tinuvin399)、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール(商品名:スミソーブ320、Tinuvin320)、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール(商品名:スミソーブ350、Tinuvin328)、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール(商品名:スミソーブ300、Tinuvin326)を例示する事が出来る。ベンゾフェノン系の化合物では、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン(商品名:スミソーブ110)、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン(商品名:スミソーブ130)を例示する事が出来る。サリシレート系の化合物では、4−t−ブチルフェニルサリシレート(商品名:シーソーブ202)を例示する事が出来る。シアノアクリレート系の化合物では、エチル(3,3−ジフェニル)シアノアクリレート(商品名:シーソーブ501)を例示する事が出来る。ニッケルキレート系の化合物では、ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル(商品名:アンチゲンNBC)を例示する事が出来る。無機微粒子系の化合物では、TiO2、ZnO2、CeO2を例示する事が出来る。
以下、HALSとして代表的な化合物を例示する。セバケート型の化合物では、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート(商品名:アデカスタブLA−77、Tinuvin770)、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート(商品名:Tinuvin765)を例示する事が出来る。ブタンテトラカルボキシレート型の化合物では、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート(商品名:アデカスタブLA−57)、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート(商品名:アデカスタブLA−52)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノール及びトリデシルアルコールとの縮合物(商品名:アデカスタブLA−67)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノール及びトリデシルアルコールとの縮合物(商品名:アデカスタブLA−62)を例示する事が出来る。コハク酸ポリエステル型の化合物では、コハク酸と1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンとの縮合重合体を例示する事が出来る。トリアジン型の化合物では、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン・2,4−ビス{N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ}−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物(商品名:Chimasorb199)、ポリ{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}(商品名:Chimasorb944)、ポリ(6−モルホリノ−s−トリアジン−2,4−ジイル){(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}(商品名:Chimasorb3346)を例示する事が出来る。
安定剤はそもそもポリ塩化ビニル(PVC)向けの添加剤であり、PVCから塩酸(HCl)が脱離して劣化する事を防ぐ目的で使用される。各種安定剤のうち幾つかの化合物は中和剤としての機能も有している事からポリオレフィンの添加剤としても用いられる事がある。中和剤はポリオレフィンの製造に用いられるチーグラー触媒に由来する塩素成分を中和するのに用いられる化合物である。中和剤としては、中和能力があるカルボン酸塩を用いる事が多いが、塩素イオンの捕捉能力がある無機化合物も用いる事が出来る。両者とも安定剤として用いられる化合物である。基本的に塩素原子を含まないメタロセン触媒を用いる場合には本来必要のない添加剤であるが、塩素原子は容易にコンタミする化学種であるため、安定生産の観点から保険的に用いられる場合が多い。
以下、中和剤として代表的な化合物を例示する。カルボン酸塩型の化合物では、ステアリン酸カルシウムとステアリン酸亜鉛を例示する事が出来る。無機化合物では、ハイドロタルサイト、並びに、水酸化アルミニウムと炭酸リチウムの包摂物(商品名:ミズカラック)を例示する事が出来る。
防曇剤はポリマーの表面を親水性に変えて水滴が付きづらくする添加剤であり、通常は帯電防止剤と同様の界面活性剤が用いられる。
ソルビトール系核剤は6価のアルコールであるソルビトールとベンズアルデヒド類との1:2縮合物であるベンジリデンソルビトール骨格を有する化合物であり、アセタール構造の形成に関与しない2価の水酸基による水素結合の効果によって分子間集合体を形成し3次元ネットワーク構造を形成すると言われている。ポリプロピレンに用いた場合には、このネットワーク構造の表面からポリプロピレンの結晶が成長すると考えられており、透明性改善に優れた効果を発揮する。具体的な化合物を例示すると、1,3,2,4−ジベンジリデンソルビトール(商品名:ゲルオールD、EC−1)、1,3,2,4−ジ(p−メチルベンジリデン)ソルビトール(商品名:ゲルオールMD)、1,3,2,4−ビス(3,4−ジメチルベンジリデン)ソルビトール(商品名:ゲルオールMX、Millad3988)、1,2,3−トリデオキシ−4,6,5,7−ビス−O−{(4−n−プロピルフェニル)メチレン}ノニトール(商品名:MilladNX8000)などがある。
リン酸金属塩系核剤はポリプロピレンよりも高い融点を有するリン酸金属塩の微結晶が分散する事により結晶核の形成を促進するものであり、アルキルベンゼン骨格を有するのが一般的である。具体的な化合物を例示すると、2,2’−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)リン酸ナトリウム(商品名:アデカスタブNA−11)、2,2−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)リン酸アルミニウムハイドロオキサイドとステアリン酸リチウムの混合物(商品名:アデカスタブNA−21)がある。
カルボン酸金属塩系核剤は最も古い核剤系であり、リン酸金属塩系の核剤に較べると効果が劣る難点がある。具体的な化合物を例示すると、ジ(4−t−ブチル安息香酸)アルミニウムハイドロオキサイド(通称:AL−PTBBA)がある。
これらの付加的成分は、重合により得られた本発明のプロピレン系ブロック共重合体中に直接添加し溶融混練して使用することも可能であるし、溶融混練中に添加してもよい。さらには溶融混練後に直接添加、あるいは、本発明の効果を著しく損なわない範囲においてマスターバッチとして添加することも可能である。また、これらの複合的な手法により添加してもよい。
一般的には、酸化防止剤、中和剤などの添加剤を配合して、混合、溶融、混練された後に製品に成形され使用される。成形時に本発明の効果を著しく損なわない範囲で他の樹脂、あるいは、その他の付加的成分(マスターバッチを含む)を添加し使用することも可能である。
本発明のプロピレン系ブロック共重合体は、柔軟性と透明性に優れ、製品が耐熱性を有しながら低温での成形加工が可能であり、ベタツキやブリードが抑制されるという特徴をもつため、フィルム、シート、積層体、各種容器、各種成形品、各種被覆材などに好適に使用される。
特に、フィルムやシートにおいてはブリードが抑制され、ベタツキ感が顕著に低減されることでブロッキングが発生しにくく、外観がよいため好適である。
また、各種容器として用いられる場合には、ブリードによる内容物汚染が非常に少なく、食品や医療及び産業用の各分野に好適である。
成形品としても、ブリードによる経時の外観悪化がなく、好適に用いることができる。
フィルムやシートの成形法の例としては、空冷インフレーション成形、水冷インフレーション成形、Tダイによる無延伸成形、一軸延伸成形、二軸延伸成形、カレンダー成形などを用いることができる。
また、フィルムやシートとして使用する場合に、積層体において、多層構成中の層としての使用も可能である。すなわち、その柔軟性を生かし中間層に使用することも可能であるし、ベタツキやブリードアウトが無く強度に優れ低温での成形が可能である点を生かし表面層としての使用も可能である。
容器成形としては、熱圧成形、圧空成形、真空成形、真空圧空成形、ブロー成形、延伸ブロー成形、射出成形などを用いることができる。
成形品を得るためには、通常の射出成形はもちろん、インサート成形、サンドイッチ成形、ガスアシスト成形などを行うことができるし、プレス成形、スタンピングモールド、回転成形などを利用することもできる。
これらの成形体は耐熱性を有するため、熱水による殺菌や比較的高い温度での使用に好適であり、単に変形を生じないだけでなく、熱を加えた際にブリードアウトによる透明性悪化が生じないという特徴をも有する。
(1)メルトフローレート(MFR)
プロピレン系ブロック共重合体と結晶性ポリプロピレン成分(A)のMFTはJIS K7210 A法 条件M に従い、以下の条件で測定した。
試験温度:230℃
公称加重:2.16kg
ダイ形状:直径2.095mm 長さ8.00mm
プロピレン系エラストマー成分(B)のMFRについては直接測定する事ができないので、当業者に良く知られた方法である粘度則を用いて計算した。具体的な計算式を以下に示す。
MFR−B=exp[{log(MFR−w)−W(A)xlog(MFR−A)}÷W(B)]
MFR−w;プロピレン系ブロック共重合体のMFR
MFR−A;結晶性ポリプロピレン成分(A)のMFR
MFR−B;プロピレン系エラストマー成分(B)のMFR
W(A);結晶性ポリプロピレン成分(A)の重量のプロピレン系ブロック共重合体全体の重量に対する比率(g/g)
W(B);プロピレン系エラストマー成分(B)の重量のプロピレン系ブロック共重合体全体の重量に対する比率(g/g)
ASTM D1895−69に準拠してポリマーの嵩密度を測定した。
(3)パウダー粒径の測定
レッチェテクノロジー社製 粒度分布測定装置カムサイザーを使用して測定した。
(4)結晶性ポリプロピレン成分(A)とプロピレン系エラストマー成分(B)の重量比
得られたプロピレン系ブロック共重合体を用いて、以下の(4)に記載の手順でTREFの測定を行い、40℃までに(40℃を含む)溶出した量をプロピレン系エラストマー成分(B)の量とした。また、40℃より高い温度で溶出した量を結晶性ポリプロピレン成分(A)の量とした。当然ながら、全体の溶出量がプロピレン系ブロック共重合体の量に対応する。こうして得られた両成分の量から重量比を求める事は容易である。また、全体の溶出量に対する値として、W(A)、W(B)を求める事が出来る。
試料を140℃でo−ジクロロベンゼン(0.5mg/mLのBHTを含む)に溶解し溶液とする。これを140℃のTREFカラムに導入した後、8℃/分の降温速度で100℃まで冷却し、引き続き4℃/分の降温速度で−15℃まで冷却し、60分間保持する。その後、溶媒であるo−ジクロロベンゼン(0.5mg/mLのBHTを含む)を1mL/分の流速でカラムに流し、TREFカラム中で−15℃のo−ジクロロベンゼンに溶解している成分を10分間溶出させ、次に昇温速度100℃/時間にてカラムを140℃までリニアに昇温し、溶出曲線を得る。
(TREF部)
TREFカラム:4.3mmφ × 150mmステンレスカラム
カラム充填材:100μm 表面不活性処理ガラスビーズ
加熱方式:アルミヒートブロック
冷却方式:ペルチェ素子(ペルチェ素子の冷却は水冷)
温度分布:±0.5℃
温調器:(株)チノー デジタルプログラム調節計KP1000(バルブオーブン)
加熱方式:空気浴式オーブン
測定時温度:140℃
温度分布:±1℃
バルブ:6方バルブ 4方バルブ
(試料注入部)
注入方式:ループ注入方式
注入量:ループサイズ 0.1ml
注入口加熱方式:アルミヒートブロック
測定時温度:140℃
(検出部)
検出器:波長固定型赤外検出器 FOXBORO社製 MIRAN 1A
検出波長:3.42μm
高温フローセル:LC−IR用ミクロフローセル 光路長1.5mm 窓形状2φ×4mm長丸 合成サファイア窓板
測定時温度:140℃
(ポンプ部)
送液ポンプ:センシュウ科学社製 SSC−3461ポンプ
溶媒:o−オルトジクロロベンゼン(0.5mg/mLのBHTを含む)
試料濃度:5mg/mL
試料注入量:0.1mL
溶媒流速 :1mL/分
結晶性ポリプロピレン成分(A)に含まれるエチレンの含量は、第1工程の終了後に採取したサンプルを用いてNMRにより決定した。プロピレン系ブロック共重合体に含まれるエチレンと1−ブテンの含量は、第2工程の終了後に得られたサンプルを用いてNMRにより決定した。プロピレン系エラストマー成分(B)に含まれるエチレンと1−ブテンの含量は(4)で求めた各成分の量を用いて、以下の計算式により計算した。
(計算式)
[E]B={[E]w−[E]AxW(A)}÷W(B)
[B]B=[B]w÷W(B)
(変数の定義)
[E]w;プロピレン系ブロック共重合体のエチレン含量
[E]A;結晶性ポリプロピレン成分(A)のエチレン含量
[E]B;プロピレン系エラストマー成分(B)のエチレン含量
[B]w;プロピレン系ブロック共重合体の1−ブテン含量
[B]B;プロピレン系エラストマー成分(B)の1−ブテン含量
W(A)とW(B)の定義は(1)に記載の通りである。
なお、NMRによるエチレン、1−ブテンの含量の決定方法は以下の通りである。
各コモノマー含量は13C−NMRスペクトルから求めた。13C−NMR測定は10mmφのクライオプローブを搭載したブルカー・バイオスピン製AVANCE−400 FT−NMRを用いて行った。
250 mgの試料を2.5mlのo−ジクロロベンゼン/臭化ベンゼン−d5混合溶媒(体積比8/2)に均一に溶解し、130℃で測定を行った。パルス角90°、パルス間隔15秒として1H完全デカップル下、512回の積算を行った。スペクトルの帰属はJ.Polym.Sci.,Polym.Phys.Ed.,21,573 (1983)やJ.Appl.Polym.Sci.,80,1880 (2001)等を参考に行った。
各コモノマー含量は以下の式に従って求めた。
ブテン含量(mol%)=I(B)/{I(B)+I(P)+I(E)}×100
プロピレン含量(mol%)=I(P)/{I(B)+I(P)+I(E)}×100
エチレン含量(mol%)=I(E)/{I(B)+I(P)+I(E)}×100
ここで、I(B)は11ppm付近に生じるブテンユニットのメチル基に由来する信号の積分強度であり、I(P)は19〜22ppm付近に生じるプロピレンユニットのメチル基に由来する信号の積分強度と17〜18ppm付近に生じる2,1−挿入したプロピレンユニットのメチル基に由来する信号の積分強度の和であり、I(E)は10ppm〜48ppmの間に現れる共重合体に由来する全ての信号強度の総和からI(B)の4倍とI(P)の3倍を各々減算した後2で割った数値である。
当業者に良く知られている事であるが、メタロセン触媒を用いたオレフィン重合において異種結合が観測される場合がある。従って、プロピレンや1−ブテンを含む共重合の場合、1,3−挿入したプロピレンユニットや1,4−挿入したブテンユニットが存在する可能性がある。これらのユニットはいずれもメチレン鎖が複数連続した構造であるので、本発明においてはこれらに由来する信号もエチレンユニットに由来する信号として取り扱い、上記の式の通り各モノマー含量の計算方法を定義する。
セイコー社製DSCを用い、試料5.0mgを採り、200℃で5分間保持した後、40℃まで10℃/分の降温速度で結晶化させ、さらに10℃/分の昇温速度で融解させたときの融解ピーク温度をTmとした(単位:℃)。
1.触媒の製造
担体粒径測定
実施例ではモンモリロナイト(水澤化学社製ベンクレイSL)を担体として用いて触媒合成を行った。触媒合成に先立って、レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置(堀場製作所社製「LA−920」)を使用して担体の平均粒径を測定した。測定ではエタノールを分散媒として使用し、形状係数を1.0として平均粒径を求めた。得られた値は50μmであった。
10リットルの撹拌翼の付いたガラス製セパラブルフラスコに、蒸留水3.75リットル、続いて濃硫酸(96%)2.5kgをゆっくりと添加した。50℃で、さらにモンモリロナイト(水澤化学社製ベンクレイSL)を1kg分散させ、90℃に昇温し、6.5時間その温度を維持した。50℃まで冷却後、このスラリーを減圧濾過し、ケーキを回収した。このケーキに蒸留水を7リットル加え再スラリー化後、濾過した。この洗浄操作を、洗浄液(濾液)のpHが、3.5を越えるまで実施した。回収したケーキを窒素雰囲気下110℃で終夜乾燥した。乾燥後の質量は707gであった。こうして得られた化学処理した珪酸塩を更にキルン乾燥機で乾燥し、乾燥珪酸塩を得た。
内容積3リットルの撹拌翼のついたガラス製反応器に上記で得た乾燥珪酸塩200gを導入し、混合ヘプタン1160ml、さらにトリエチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.60M)840mlを加え、室温で撹拌した。1時間後、混合ヘプタンにて洗浄し、珪酸塩スラリーを2.0リットルに調製した。次に、調製した珪酸塩スラリーにトリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.71M/L)9.6mlを添加し、25℃で1時間反応させた。並行して、〔(r)−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル}]ジルコニウム〕(合成は特開平10−226712号公報実施例に従って実施した)2180mg(3mmol)と混合ヘプタン870mlに、トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.71M)を33.1ml加えて、室温にて1時間反応させた混合物を、珪酸塩スラリーに加え、1時間撹拌した。
続いて、窒素で十分置換を行った内容積10リットルの撹拌式オートクレーブに、n−ヘプタン2.1リットルを導入し、40℃に保持した。そこに先に調製した珪酸塩/メタロセン錯体スラリーを導入した。温度が40℃に安定したところでプロピレンを100g/時間の速度で供給し、温度を維持した。4時間後プロピレンの供給を停止し、さらに2時間維持した。予備重合終了後、残モノマーをパージし、撹拌を停止させ約10分間静置後、上澄み約3リットルをデカントした。続いてトリイソブチルアルミニウム(0.71M/L)のヘプタン溶液9.5ml、さらに混合ヘプタンを5.6リットル添加し、40℃で30分間撹拌し、10分間静置した後に、上澄みを5.6リットル除いた。さらにこの操作を3回繰り返した。最後の上澄み液の成分分析を実施したところ有機アルミニウム成分の濃度は、1.23ミリモル/L、Zr濃度は8.6×10−6g/Lであり、仕込み量に対する上澄み液中の存在量は0.016%であった。続いて、トリイソブチルアルミニウム(0.71M/L)のヘプタン溶液17.0mlを添加した後に、45℃で減圧乾燥した。この操作により触媒1g当たりポリプロピレン2.2gを含む予備重合触媒(触媒−1)が得られた。
上記で得られた予備重合触媒(触媒−1)を用いて、以下の手順に従ってプロピレン系ブロック共重合体の製造を行った。
100mlのガラス製フラスコにマグネチックスターラーをセットし、精製した窒素で完全に置換した。ここに、混合ヘプタンを15ml加え、更に、トリイソブチルアルミニウム・n−ヘプタン溶液2.76ml(2.0mmol)を加えた。フラスコを水浴に浸して攪拌を開始し、別途調整しておいた濃度0.5mol/Lのエタノール・混合ヘプタン溶液を4ml(2.0mmol)ゆっくりとフラスコに添加し、15分間反応させた。こうして、Al濃度0.092mol/Lの反応生成物(E)の混合ヘプタン溶液を得た。
第1工程
撹拌および温度制御装置を有する内容積3Lのオートクレーブをプロピレンで充分置換した後に、トリイソブチルアルミニウム・n−ヘプタン溶液2.76ml(2.0mmol)を加え、エチレン19g、水素40ml、続いて液体プロピレン750gを導入し、60℃に昇温しその温度を維持した。上記の予備重合触媒(触媒−1)をn−ヘプタンでスラリー化し、触媒として(予備重合ポリマーの重量は除く)9mgを圧入し重合を開始した。槽内温度を60℃に維持して30分重合を継続した。その後、常圧まで残モノマーをパージし、さらに精製した窒素で完全に置換した。生成したポリマーを一部サンプリングして分析したところ、エチレン含量1.8wt%、MFR6.0g/10分、平均粒径1,000μであった。
第1工程にてポリマーを一部サンプリングした後、最初に調製した反応生成物(E)の混合ヘプタン溶液を8.7ml(Al原子0.8mmol)をオートクレーブに添加して充分に混合した。
第2工程
別途、撹拌および温度制御装置を有する内容積20Lのオートクレーブを用いて、第2工程で使用する混合ガスを調製した。調製温度は85℃、混合ガス組成はエチレン14vol%、プロピレン59vol%、1−ブテン27vol%であった。反応生成物(E)の混合ヘプタン溶液を添加して充分に混合した後、この混合ガスを3Lのオートクレーブに供給し第2工程の重合を開始した。重合温度は80℃、圧力1.5MPaAにて29分重合を継続した。その後、エタノールを10ml導入して重合を停止した。回収したポリマーはオーブンで充分に乾燥した。活性は15.4kg/g−触媒、エチレン含量2.9wt%、ブテン含量18wt%、MFR14g/10分、BDは0.38g/ccであった。
また、TREF測定を行った結果、第2工程で製造したプロピレン系エラストマー成分(B)の量は35wt%であり、結晶性ポリプロピレン成分(A)とプロピレン系エラストマー成分(B)の重量比は65:35であった。既述の通りプロピレン系エラストマー成分(B)のコモノマー含量を計算した所、エチレン含量5wt%、ブテン含量40wt%であった。また、プロピレン系エラストマー成分(B)のMFRも計算した所、67g/10minであった。
反応生成物(E)の混合ヘプタン溶液の添加量を2.2ml(Al原子0.2mmol)とした以外は実施例1と同様にプロピレン系ブロック共重合体の製造を行った。結果を表1に示す。
反応生成物(E)を添加しなかった事を除けば実施例1と同様にプロピレン系ブロック共重合体の製造を行った。結果を表1に示す。プロピレン系ブロック共重合体のBDは0.36g/ccであり、実施例1と比較して流動はするがべたつきのある粒子であった。
比較例2
反応生成物(E)の代わりに、エタノールを0.05mmol添加した事を除けば実施例1と同様にプロピレン系ブロック共重合体の製造を行った。結果を表1に示す。プロピレン系ブロック共重合体のBDは0.30g/ccであり、実施例1と比較してべたつきが強く、殆ど流動しない粒子であった。
比較例3及び比較例4
エタノールの添加量をそれぞれ0.2mmol、0.8mmolとした事を除けば比較例2と同様にプロピレン系ブロック共重合体の製造を行った。結果を表1に示す。プロピレン系ブロック共重合体は非常にべたつきの強い粒子であり、全く流動しない為にBDを測定する事ができなかった。
1.触媒の製造
触媒の調製において、〔(r)−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル}]ジルコニウム〕の代わりに〔(r)−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル}]ハフニウム〕(合成は特開平11−240909号公報実施例に従って実施した)を用いた事を除けば実施例1と同様に触媒(触媒−2)を製造した。
上記で得られた予備重合触媒(触媒−2)を用いて、以下の手順に従ってプロピレン系ブロック共重合体の製造を行った。
第1工程
撹拌および温度制御装置を有する内容積3Lのオートクレーブをプロピレンで充分置換した後に、トリイソブチルアルミニウム・n−ヘプタン溶液2.76ml(2.0mmol)を加え、エチレン18g、水素20ml、続いて液体プロピレン750gを導入し、50℃に昇温しその温度を維持した。上記の予備重合触媒(触媒−2)をn−ヘプタンでスラリー化し、触媒として(予備重合ポリマーの重量は除く)100mgを圧入し重合を開始した。槽内温度を50℃に維持して15分重合を継続した。その後、常圧まで残モノマーをパージし、さらに精製した窒素で完全に置換した。生成したポリマーを一部サンプリングして分析したところ、エチレン含量1.9wt%、MFR8.0g/10分、平均粒径450μであった。
第1工程にてポリマーを一部サンプリングした後、実施例1で調製した反応生成物(E)の混合ヘプタン溶液を8.7ml(Al原子0.8mmol)をオートクレーブに添加して充分に混合した。
第2工程
別途、撹拌および温度制御装置を有する内容積20Lのオートクレーブを用いて、第2工程で使用する混合ガスを調製した。調製温度は85℃、混合ガス組成はエチレン45vol%、プロピレン11vol%、1−ブテン44vol%であった。反応生成物(E)の混合ヘプタン溶液を添加して充分に混合した後、この混合ガスを3Lのオートクレーブに供給し第2工程の重合を開始した。重合温度は80℃、圧力1.0MPaAにて41分重合を継続した。その後、エタノールを10ml導入して重合を停止した。回収したポリマーはオーブンで充分に乾燥した。活性は2.5kg/g−触媒、エチレン含量4.5wt%、ブテン含量58wt%、MFR27g/10分、BDは0.41g/ccであった。
また、TREF測定を行った結果、第2工程で製造したプロピレン系エラストマー成分(B)の量は63wt%であり、結晶性ポリプロピレン成分(A)とプロピレン系エラストマー成分(B)の重量比は37:63であった。既述の通りプロピレン系エラストマー成分(B)のコモノマー含量を計算した所、エチレン含量6wt%、ブテン含量73wt%であった。また、プロピレン系エラストマー成分(B)のMFRも計算した所、56g/10minであった。
反応生成物(E)を添加しなかった事を除けば実施例3と同様にプロピレン系ブロック共重合体の製造を行った。結果を表2に示す。プロピレン系ブロック共重合体は非常にべたつきの強い粒子であり、全く流動しない為にBDを測定する事ができなかった。
反応生成物(E)の代わりに、アセトン0.8mmolを使用した事を除けば実施例3と同様にしてプロピレン系ブロック共重合体の製造を行った。結果を表2に示す。プロピレン系ブロック共重合体は非常にべたつきの強い粒子であり、全く流動しない為にBDを測定する事ができなかった。
参考のために実施例1で得られたプロピレン系ブロック共重合体を一般的な手法でペレット化し、その際の粒子のハンドリングを確認するとともに、得られたペレットを射出成型し、基本物性を以下の方法で評価した。
実施例1で得られたプロピレン系ブロック共重合体に以下の添加剤を配合し、ポリ袋中でよく攪拌混合した。重合体粒子は流動性に優れ、添加剤は十分に攪拌された。
・添加剤配合
酸化防止剤:テトラキス{メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート}メタン(BASF社製Irganox1010)500ppm、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト(BASF社製Irgafos168)500ppm
中和剤:ステアリン酸カルシウム500ppm
・造粒
以下の条件で造粒しペレット化した。重合体粒子は流動性に優れ、フィーダにより押出機に安定して供給でき、容易にペレット化することができた。
フィーダ:クマエンジニアリング社製アキュレートフィーダ(モデル100)
押出機:テクノベル社製KZW−15−45MG2軸押出機
スクリュ:口径15mm L/D=45
押出機設定温度:(ホッパ下から)40,80,160,180,180,180(ダイ℃)
スクリュ回転数:400rpm
吐出量:約1.5kg/hr(フィーダにて調整)
ダイ:口径3mm ストランドダイ 穴数2個
得られたペレットを以下の条件で射出成形し、物性評価用の試験片を得た。
規格番号:JIS K−7152(ISO 294−1)準拠
参考成型機:東芝機械社製EC20P射出成型機
成型機設定温度:(ホッパ下から)80,210,210,200,200℃
金型温度:40℃
射出速度:52mm/s(スクリュの速度)
保持圧力:10MPa
保圧時間:15秒
冷却時間:60秒
金型形状:平板(厚さ4mm 幅10mm 長さ80mm × 2丁取り)
および 平板(厚さ2mm 幅40mm 長さ80mm)
得られた試験片について、下記項目の物性を評価した。
試験片の透明性を、以下の条件により評価した。評価の結果、HAZEは61%、全光線透過率は90%であり、透明性に優れるものであった。
規格番号:JIS K−7361−1準拠
測定機:曇り度計NDH2000(日本電色工業株式会社製)
試験片厚み:2mm
試験片の作成方法:射出成形平板
状態の調節:成形後に室温23℃、湿度50%に調節された恒温室内に24時間放置
試験片の数:3
評価項目:曇り度(HAZE)、全光線透過率
試験片の曲げ特性を以下の条件により評価した。評価の結果、曲げ弾性率は190MPaであり、柔軟性に優れるものであった。
規格番号:JIS K−7171(ISO178)準拠
試験機:全自動曲げ試験機 ベンドグラフ(株式会社東洋精機製作所製)
試験片の採取方向:流れ方向
試験片の形状:厚み4mm 幅10mm 長さ80mm
状態の調節:室温23℃、湿度50%に調節された恒温室内に24時間以上放置
試験室:室温23℃、湿度50%に調節された恒温室
試験片の数:5
支点間距離:64.0mm
試験速度:2.0mm/分
評価項目:曲げ弾性率
得られたブロック共重合体のビカット軟化点を、以下の条件で評価した。評価の結果、ビカット軟化点温度は122℃であり、耐熱性に優れるものであった。
規格番号:JIS K7206(荷重を250gとした以外は50法に準拠)
測定機:全自動HDT測定機(東洋精機製)
試験片の形状:厚さ2mm 25mm×25mm平板を2枚重ね
試験片の作成方法:射出成形平板を上記形状に打ち抜き(成形については成形項を参照)
状態の調節:室温23℃、湿度50%に調節された恒温室内に24時間以上放置(アニール無し)
試験加重:250g
昇温速度:50℃/h
試験片の数:3
比較例1で得られたプロピレン系ブロック共重合体についても、同様の評価を行った。これらの粒子はべたつき感があり取り扱いが難しかったが、何とか、造粒、成形、評価が出来た。物性については実施例1により得られた重合体粒子を用いた場合と一致した。
比較例2で得られたプロピレン系ブロック共重合体についても同様の評価を試みた。しかし、これらの重合体粒子は流動性が非常に悪く、造粒時にフィーダでの吐出量が安定せず、ペレット化が困難であった。
また、比較例3及び比較例4で得られたプロピレン系ブロック共重合体については、粒子の流動性が極めて悪く、フィーダにより押出機に重合体粒子を全く供給することができなかった。
その結果、これらのプロピレン系ブロック共重合体はペレットを作成することができず、射出成形や物性評価を実施できなかった。
以上の実施例1〜3及び各比較例1〜6を対照検討することにより、本発明では、透明性に優れ、柔軟性と耐熱性のバランスが高いプロピレン系ブロック共重合体を極めて良好な流動性を有する粒子として得られることが明白である。
具体的には、実施例1及び実施例2は比較例1〜4と比較してBDが高く、同一の透明性、柔軟性、耐熱性を有するプロピレン系ブロック共重合体を良好な粒子として得られている事が分かる。特に、エタノールを用いた比較例2〜4との対比から、第2工程開始前にエタノールを直接添加する事に代えて、活性水素を有する化合物(D)と有機アルミニウム化合物(C’)の反応生成物(E)を用いる事の意義は明白である。
また、実施例3は比較例5と比較して、BDが高く、また、柔軟性にも優れている。比較例6ではアセトンを用いているが、実施例3と比較して粒子の流動性が極めて悪く、アセトンと活性水素を有する化合物(D)と有機アルミニウム化合物(C’)の反応生成物(E)との差異は明確である。
全ての実施例および比較例を比較すると、活性水素を有する化合物(D)と有機アルミニウム化合物(C’)の反応生成物(E)は必ずしも活性を下げる訳ではない事が分かる。例えば、実施例3では第2工程の重合時間が16分でありプロピレン系エラストマー成分(B)は63wt%得られている。一方で、何も添加しない比較例5では第2工程の重合時間が30分でありプロピレン系エラストマー成分(B)は42wt%しか得られておらず、実施例3は比較例5よりも活性が高い事は明白である。実施例3においては粒子の流動性が向上している事から粒子表面が改質されている事は疑いようがなく、本発明における活性水素を有する化合物(D)と有機アルミニウム化合物(C’)は粒子表面における重合抑制機能と粒子内部における活性化機能の2つの機能を有していると考えられる。その点でも、本発明は従来の公知技術とは大きく異なるものである。
Claims (9)
- メタロセン触媒及び有機アルミニウム化合物(C)の存在下で、下記特性(i)を満たす結晶性ポリプロピレン成分(A)を製造する第1工程と、前記メタロセン触媒、前記有機アルミニウム化合物(C)及び前記結晶性ポリプロピレン成分(A)の存在下で、下記特性(ii)を満たすプロピレン系エラストマー成分(B)を製造する第2工程とを含むプロピレン系ブロック共重合体の製造方法であって、
前記第2工程に活性水素を有する化合物(D)と有機アルミニウム化合物(C’)との反応生成物(E)を添加することを特徴とする前記方法。
(i)結晶性ポリプロピレン成分(A)が、プロピレン単独重合体、あるいは、エチレン及び炭素数が4〜8のα−オレフィンからなる群から選ばれた少なくとも1種類のモノマーとプロピレンとのランダム共重合体であって、エチレン若しくはα−オレフィンの含量の総和が10wt%以下である。
(ii)プロピレン系エラストマー成分(B)がエチレン及び炭素数が4〜8のα−オレフィンからなる群から選ばれた少なくとも1種のモノマーとプロピレンとのランダム共重合体であって、エチレン若しくはα−オレフィンの含量の総和が結晶性ポリプロピレン成分(A)のエチレン若しくはα−オレフィンの含量の総和よりも高い。 - 結晶性ポリプロピレン成分(A)とプロピレン系エラストマー成分(B)の重量比が10:90〜90:10の範囲内にあることを特徴とする請求項1に記載のプロピレン系ブロック共重合体の製造方法。
- プロピレン系エラストマー成分(B)がプロピレンと1−ブテンのランダム共重合体、若しくは、プロピレンとエチレンと1−ブテンのランダム共重合体である請求項1又は2に記載のプロピレン系ブロック共重合体の製造方法。
- 活性水素を有する化合物(D)と有機アルミニウム化合物(C’)を接触させる事による反応生成物(E)を製造し、この反応生成物(E)を第2工程の重合が開始する前に結晶性ポリプロピレン成分(A)と接触させることにより添加したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のプロピレン系ブロック共重合体の製造方法。
- 活性水素を有する化合物(D)と有機アルミニウム化合物(C’)を接触させる事により反応生成物(E)を製造し、この反応生成物(E)を第2工程のプロピレン系エラストマー成分(B)の重合を行う反応器に添加することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のプロピレン系ブロック共重合体の製造方法。
- 反応生成物(E)を製造する際の活性水素を有する化合物(D)と有機アルミニウム化合物(C’)の使用量の比が0.001〜10mol/mol−Al(C’)の範囲内にあることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のプロピレン系ブロック共重合体の製造方法。
- 有機アルミニウム化合物(C)のアルミニウム原子当たりの使用量に対する、反応生成物(E)の主要構成要素である活性水素を有する化合物(D)の使用量の比が0.001〜10mol/mol−Al(C)の範囲内にあることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のプロピレン系ブロック共重合体の製造方法。
- 活性水素を有する化合物(D)が、アルコールであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のプロピレン系ブロック共重合体の製造方法。
- 第2工程を気相法で行うことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のプロピレン系ブロック共重合体の製造方法。
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