JP6520421B2 - プロピレン系ブロック共重合体の製造方法 - Google Patents

プロピレン系ブロック共重合体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、プロピレン系ブロック共重合体の製造方法に関するものである。詳しくは、透明性に優れ、柔軟性と耐熱性のバランスが高いプロピレン系ブロック共重合体を製造する方法であって、流動性が高く取り扱いの容易な重合体粒子を形成する方法に関するものである。
オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)は、エチレン−α−オレフィン共重合体に代表されるランダムコポリマーなどのエラストマー成分またはこの成分を含むブレンドであり、適度な柔軟性と強度を持ち、リサイクルや焼却廃棄などの環境問題適応性が高く、また、軽量で成形性や経済性などにも優れることから、フィルムやシート、繊維や不織布、各種容器や成形品、改質剤などとして幅広い分野で重用されている。
このうち、第一工程で結晶性ポリプロピレンを製造し、第二工程でプロピレン−エチレン共重合体エラストマーを製造して得られるプロピレン系ブロック共重合体からなる熱可塑性エラストマー、いわゆるブロックコポリマータイプのリアクターTPOは、ランダムコポリマータイプの熱可塑性エラストマーに比べて、耐熱性と強度および生産性に優れている。また、ブロックコポリマータイプのリアクターTPOは、機械的な混合により製造されるエラストマーに比べて、生成物の品質が安定し製造工程の短縮化により製造コストが低下し、耐熱性及び強度などに優れ、エラストマーの分散性もよく、エラストマー組成を広く可変にできるなどの有利な特徴を有することから、近年特に利用が広まってきている。
より結晶性の低い、より柔軟なリアクターTPOを製造するための技術開発も進められている。リアクターTPOとしてのプロピレン系ブロック共重合体の柔軟性を高める方法として、第一工程で製造する結晶性ポリプロピレンの結晶性を下げる方法、第二工程で製造するプロピレン−エチレン共重合体エラストマーの割合を増やす方法、同エラストマーの結晶性を下げる方法などを挙げる事ができる。
このようなプロピレン系ブロック共重合体を製造するために、従来使われていたチーグラー触媒の代わりにメタロセン触媒を用いた検討例が増えて来ている(特許文献1、2参照)。メタロセン触媒は活性点が均一であり、チーグラー触媒と較べて結晶性分布と分子量分布が狭いために、結晶性ポリプロピレンやエチレン−プロピレン共重合体エラストマーの結晶性を下げるためにコモノマーの含量を高めた場合であっても、チーグラー触媒を用いた場合よりも製品のべたつきが少ないという利点を有している。また、メタロセン触媒の利用とあわせて、第一工程と第二工程の両方を気相重合で行う方法が用いられる事も多い。
第二工程で製造するエラストマーの結晶性を下げる方法として、プロピレン、エチレン以外のα−オレフィンを併用してプロピレン−エチレン−α−オレフィン共重合体エラストマーとする方法が知られている(特許文献3参照)。この様なα−オレフィンを用いる事により、透明性に優れ、柔軟性と耐熱性のバランスが高いリアクターTPOを作る事が出来る。しかし、α−オレフィンを併用する事でエラストマーの結晶性を下げた場合、プロピレン−エチレン共重合体エラストマーと比較してエラストマーの運動性が高まるために、リアクターTPOとしてのプロピレン系ブロック共重合体粒子の流動性が低下し、反応器内壁や移送配管中で付着や閉塞を起こすなどの問題が生じやすいという技術的な課題があった。メタロセン触媒を用いてもなお、この問題は解決し切れていない。
一方で、リアクターTPOに限らず、プロピレン系ブロック共重合体の粒子性状を改善する目的で、重合抑制剤の存在下で共重合体エラストマーを製造する第二工程を行う方法が知られている(特許文献4〜7参照)。重合抑制剤としては、酸素分子、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、が開示されているが、充分に結晶性が低く粒子性状の良好なプロピレン系ブロック共重合体粒子を得るには効果が充分ではなく、更なる技術開発が求められていた。
それに対して、本発明者らは、重合抑制剤として、炭素数が4以上のヒドロキソ化合物、活性水素を有する化合物と有機アルミニウム化合物との反応生成物、又は有機ケイ素化合物を用いた製造方法を開示している(特許文献8〜10参照)。
特開2005−132992号公報 特開2007−297505号公報 特開2008−260826号公報 特開2001−310907号公報 特開2009−292879号公報 特開2009−292882号公報 特表2005−533138号公報 特開2011−210195号公報 特開2011−210196号公報 特開2012−197953号公報
重合抑制剤は、使用量を多くすると、触媒活性が低下して重合が進行し難くなる副作用が大きくなるため、使用量の調整が必要である。従来の重合抑制剤は、添加量に対する触媒の失活の応答性が敏感なことから、使用量を少なくする必要があるため、製造時に経時で触媒の失活の度合いに振れ幅ができ易いなど、プロセスの制御が困難な場合があった。そこで、従来よりも使用量を多くしても触媒活性が低下し難い重合抑制剤を用いて、安定的に、所望のプロピレン系ブロック共重合体を製造できる方法が求められていた。
本発明における課題は、上述した技術背景を踏まえて、透明性に優れ、柔軟性と耐熱性のバランスが高いリアクターTPOとしてのプロピレン系ブロック共重合体を製造する方法であって、結晶性が低くても流動性が高く取り扱いの容易な重合体粒子を安定的に得ることができる、プロピレン系ブロック共重合体の製造方法を提供する事にある。
本発明者は、非常に結晶性の低いプロピレン系ブロック共重合体の製造に際し、重合抑制剤の構造と得られる重合体粒子の粒子性状の関係、並びに、当該重合抑制剤とメタロセン触媒および有機アルミニウム化合物との間に起こりうる化学反応との関係について鋭意検討を行った結果、弱酸塩を重合抑制剤として用いる事により、極めて流動性が高く取り扱いの容易な重合体粒子が安定的に得られる事を見出し、本発明に至った。
第一工程で結晶性ポリプロピレンを製造し、第二工程でプロピレンとエチレン及び/又はα−オレフィンとの共重合体エラストマーを製造する、リアクターTPOとしてのプロピレン系ブロック共重合体の製造において、特定の弱酸塩の存在下に第二工程を行う事を特徴とする新規な本発明は、基本的に以下の(1)〜()の発明単位から構成される。
(1)本発明の第1の特徴点は、メタロセン触媒及び有機アルミニウム化合物(C)の存在下で、下記特性(i)を満たす結晶性ポリプロピレン成分(A)を製造する第一工程と、前記メタロセン触媒、前記有機アルミニウム化合物(C)及び前記結晶性ポリプロピレン成分(A)の存在下で、下記特性(ii)を満たすプロピレン系エラストマー成分(B)を製造する第二工程とを含むプロピレン系ブロック共重合体の製造方法であって、前記第二工程に炭酸塩である弱酸塩(D)を添加することを特徴とする前記方法、にある。
(i)プロピレン単独重合体、あるいは、エチレン及び炭素数が4〜8のα−オレフィンからなる群から選ばれる少なくとも1種類のコモノマーとプロピレンとのランダム共重合体であって、エチレン及びα−オレフィンの含量の総和が10質量%以下である。
(ii)エチレン及び炭素数が4〜8のα−オレフィンからなる群から選ばれる少なくとも1種のコモノマーとプロピレンとのランダム共重合体であって、エチレン及びα−オレフィンの含量の総和が10質量%超過である。
(2)本発明の第2の特徴点は、結晶性ポリプロピレン成分(A)とプロピレン系エラストマー成分(B)の質量比が10:90〜90:10の範囲内にあることを特徴とするプロピレン系ブロック共重合体の製造方法、にある。
(3)本発明の第3の特徴点は、プロピレン系エラストマー成分(B)が1−ブテンとプロピレンとのランダム共重合体、または、エチレンと1−ブテンとプロピレンとのランダム共重合体であるプロピレン系ブロック共重合体の製造方法、にある。
(4)本発明の第4の特徴点は、前記メタロセン触媒の触媒使用量に対する弱酸塩(D)の使用量の比が0.1〜20mol/g−触媒の範囲内あることを特徴とするプロピレン系ブロック共重合体の製造方法、にある。
(5)本発明の第5の特徴点は、弱酸塩(D)が、第二工程の重合温度及び重合圧力で固体であることを特徴とするプロピレン系ブロック共重合体の製造方法、にある。
)本発明の第の特徴点は、第二工程を気相法で行うことを特徴とするプロピレン系ブロック共重合体の製造方法、にある。
本発明は、前記各特徴点を有する本発明の達成手段により、発明の課題を解決することができたものである。
本発明のプロピレン系ブロック共重合体の製造方法により、透明性に優れ、柔軟性と耐熱性のバランスが高いリアクターTPOとしてのプロピレン系ブロック共重合体を極めて安定に製造する事ができる。特に、本発明で製造されるプロピレン系ブロック共重合体は、透明性に優れ、柔軟性と耐熱性に優れているばかりでなく、重合後の共重合体にべたつきがなく、重合体粒子の流動性にすぐれている。
本発明のプロピレン系ブロック共重合体の製造方法は、メタロセン触媒及び有機アルミニウム化合物(C)の存在下で、下記特性(i)を満たす結晶性ポリプロピレン成分(A)を製造する第一工程と、
前記メタロセン触媒、前記有機アルミニウム化合物(C)及び前記結晶性ポリプロピレン成分(A)の存在下で、下記特性(ii)を満たすプロピレン系エラストマー成分(B)を製造する第二工程とを含むプロピレン系ブロック共重合体の製造方法であって、
前記第二工程に弱酸塩(D)を添加することを特徴とする。
(i)プロピレン単独重合体、または、エチレン及び炭素数が4〜8のα−オレフィンからなる群から選ばれる少なくとも一種類のコモノマーとプロピレンとのランダム共重合体であって、エチレン及びα−オレフィンの含量の総和が10質量%以下である。
(ii)エチレン及び炭素数が4〜8のα−オレフィンからなる群から選ばれる少なくとも一種類のコモノマーとプロピレンとのランダム共重合体であって、エチレン及びα−オレフィンの含量の総和が10質量%超過である。
すなわち、本発明は、プロピレン単独またはプロピレンとエチレン及び炭素数が4〜8のα−オレフィンからなる群から選ばれる少なくとも1種類のコモノマーとを含むプロピレン系モノマーを、メタロセン触媒(M)および有機アルミニウム化合物(C)の存在下で重合する第一工程により(i)プロピレン単独重合体、または、エチレン及び炭素数が4〜8のα−オレフィンからなる群から選ばれる少なくとも1種類のコモノマーとプロピレンとのランダム共重合体であって、エチレン及びα−オレフィンの含量の総和が10質量%以下である結晶性ポリプロピレン成分(A)を製造し、次いでそれにさらに弱酸塩(D)を重合系に適量添加してなる、メタロセン触媒(M)、有機アルミニウム化合物(C)、前記結晶性ポリプロピレン成分(A)、および弱酸塩(D)の存在下で、プロピレン系モノマーを重合する第二工程により、(ii)エチレン及び炭素数が4〜8のα−オレフィンからなる群から選ばれる少なくとも1種のコモノマーとプロピレンとのランダム共重合体であって、エチレン及びα−オレフィンの含量の総和が10質量%超過である、特性を有するプロピレン系エラストマー成分(B)を製造するという、少なくとも第一工程と第二工程からなる2段、またはこの重合工程を例えば、2〜6段と繰り返す多段重合によるプロピレン系ブロック共重合体の製造方法を実施するものである。
本発明のプロピレン系ブロック共重合体は、重合段階で、結晶性ポリプロピレン成分(A)の結晶相(ハードセグメント)にエラストマー成分(ソフトセグメント)を導入することにより、モルホロジーを制御して物性を改良するものである。
本発明のプロピレン系ブロック共重合体の製造方法を実施するための具体的な、プロピレン系モノマーの仕様、触媒、重合条件、添加剤などを以下に詳細に説明をする。
第一工程で重合に供されるプロピレン系モノマーとしては、結晶性ポリプロピレン成分(A)がプロピレン単独重合体である場合には、プロピレンモノマー単独を使用する。
結晶性ポリプロピレン成分(A)がプロピレンのランダム共重合体である場合には、その共重合体を構成するコモノマーである、エチレン及び炭素数が4〜8の1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテンのようなα−オレフィンからなる群から選ばれる少なくとも1種類のコモノマーをプロピレンに含ませた仕様のモノマー混合物をプロピレン系モノマーとして第一工程の原料として使用する。
第二工程において重合するプロピレン系モノマーとしては、プロピレン系エラストマー成分(B)を構成する主要構成単位はプロピレンであるから、プロピレンにエチレン及び炭素数が4〜8の1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテンのようなα−オレフィンからなる群から選ばれる少なくとも1種のコモノマーを所定量含ませたモノマー仕様の混合物を第二工程の原料プロピレン系モノマーとして使用する。
第一工程で製造される結晶性ポリプロピレン成分(A)、および第二工程で製造されるプロピレン系エラストマー成分(B)のために、所定のプロピレン、コモノマーを随時供給するが、その成分(A)、(B)の性質や、重合性に影響を及ぼさない範囲内で、ブタジエン、イソプレン、スチレンのような他のコモノマーを任意に併用することも可能である。
このような第一工程、次いで第二工程という重合操作を多段重合と呼称できるが、一方で、第一工程および第二工程の重合を基本ユニットとして、このユニットを順次繰り返す多段重合が実施される。いわゆる[第一工程+第二工程]nという、nは、1〜40回と任意に実施することが推奨される。通常はn=1〜10回程度重合を行うことにより、所定のグレードのプロピレン系ブロック共重合体の製造方法が達成される。
一方、第一工程を単段重合又は多段重合にて行い、次いで第二工程を単段重合又は多段重合にて行うというような多段重合が実施されることもある。
本発明のプロピレン系ブロック共重合体は、例えば具体的には、プロピレン単独重合体/プロピレン−エチレン−ランダム共重合体、プロピレン単独重合体/プロピレン−1−ブテン−ランダム共重合体、又は、プロピレン単独重合体/プロピレン−エチレン−1−ブテン−ランダム共重合体等のプロピレン系ブロック共重合体が挙げられる。
また、エチレン−プロピレン共重合体/プロピレン−エチレン−ランダム共重合体、エチレン−プロピレン共重合体/プロピレン−1−ブテン−ランダム共重合体、エチレン−プロピレン共重合体/プロピレン−エチレン−1−ブテン−ランダム共重合体等のプロピレン系ブロック共重合体が挙げられる。エチレン−プロピレン共重合体/プロピレン−1−ブテン−ランダム共重合体、又は、エチレン−プロピレン共重合体/プロピレン−エチレン−1−ブテン−ランダム共重合体のプロピレン系ブロック共重合体が好ましい。最も好ましいのはエチレン−プロピレン共重合体/プロピレン−エチレン−1−ブテン−ランダム共重合体のプロピレン系ブロック共重合体である。
同様に、プロピレン−1−ブテン共重合体/プロピレン−1−ブテン−ランダム共重合体、エチレン−1−ブテン−プロピレン共重合体/プロピレン−エチレン−1−ブテン−ランダム共重合体、プロピレン−1−ブテン共重合体/プロピレン−エチレン−1−ブテン−ランダム共重合体等のプロピレン系ブロック共重合体など各種プロピレン系ブロック共重合体が例示できる。
本発明の課題の一つは、プロピレン系ブロック共重合体の、特にべたつきの問題ともいえる、重合体の粒子の相互のべたつきの問題、および重合装置、成形機または加工器機へのべたつきの問題を、重合段階で解決したものであり、これにより、重合段階、流通段階、造粒段階、成形段階において、極めて有利な特性を備えているプロピレン系ブロック共重合体を提供したことになる。特に、第二工程の重合が終了した重合後の本発明のプロピレン系ブロック共重合体を、例えば、通常の乾燥により粒子として回収した場合に、べたつきがなく、流動性が良いということは、反応器及び反応器周辺機器へ共重合体が付着することも少なく、重合段階の効率を見ても、回収、清掃、継続、などの重合器機の再稼動などの実施や取り扱いにおいて、省力的に、省エネ的にも非常に有利な波及効果がある。
本発明は、第二工程におけるプロピレン系エラストマー成分(B)を製造するための重合を実施する段階で、弱酸塩(D)を重合系に添加し、その存在下で重合することにより、重合後の共重合体にべたつきがなく、重合体粒子の流動性に優れたプロピレン系ブロック共重合体を安定的に製造することができる。
このように、本発明で製造されるプロピレン系ブロック共重合体は、透明性に優れ、柔軟性と耐熱性に優れているばかりでなく、重合後の共重合体にべたつきがないことから、反応周辺機器への共重合体の付着防止に配慮する必要がなく、乾燥により粒子とした場合に、さらさらとした粒子径が近似する粉末になる。さらに、この粒子はべたつきが無いので、粉末、粒子、ペレットにしても、梱包、保管、流通および積み重ねなどの時間経過を伴う取り扱いにおいて粘着や凝集することもなく、常にさらさらした性質を有しているので、取り扱い易い成形用の原料粉末形態を維持することになる。この粉末を造粒や、加工のためにホッパーやフィーダに供給する場合に、流動性が良いので取り扱いやすく、定量に安定した一定量をコンスタントに供給ができるとともに、吐出量も安定しており、品質のよい安定した製品ができる。この共重合体の粉末、粒子、ペレットなどを用いて慣用の装置により成形する場合にも、金型への粘着、付着が少なく、しかも成形品が成形周辺機器への付着やブロッキングがないので、高い成形性や、成形効率性を高めることが期待できるとともに、外観の良い品質の良い成形品を製造することが期待される。
本発明の弱酸塩(D)の添加による重合体粒子のべたつきの状態の有無、即ちその流動性の程度を表す定量的な指標の一つとして、ASTM D1895−69に準拠した共重合体の嵩密度(g/ml)が挙げられる。具体的には、第二工程の重合後に重合体粒子を回収し、乾燥し、その粒子についてASTM D1895−69に準拠した共重合体の嵩密度(g/ml)を調査することで定量的に表示することができる。べたつきの無い流動性の状態の定量的な値の指標を「ポリマーBD(Bulk Density)」という用語で表示すると、以下のことが言える。即ち、弱酸塩(D)を添加することにより第二工程の重合を実施すれば、BDが0.37〜0.50g/ml程度の範囲のもの、好ましくは0.40〜0.50g/ml程度の範囲のものを任意に製造することができる。一例として実施例1の仕様で製造されたものは、BDが0.42g/mlであり、これに対して、同じ重合条件で弱酸塩(D)を使用しない場合には、BDが0.36g/ml以下〜測定不能のものが多くなる。べたつきの程度は、プロピレン系エラストマー成分(B)の重合条件や、モノマー仕様の違いに起因して変わる性格のものであるが、同じモノマー仕様および重合条件でプロピレン系ブロック共重合体を製造する場合に、特に第二工程のプロピレン系エラストマー成分(B)の重合段階で、弱酸塩(D)使用の有無により、BDに0.01〜0.10g/ml程度の較差が見られる。第二工程に、弱酸塩(D)が存在しないと、プロピレン系ブロック共重合体は、べたつきの強い粒子が製造されるために、全く流動しないため、取り扱い上から慣用の装置では、比較例に見るとおり、BDが測定できないという結果になる場合が多い。
以下に、本発明を実施するための適正な形態を順次詳細に説明をする。
1.メタロセン触媒
本発明のプロピレン系ブロック共重合体の製造方法はメタロセン触媒の使用を必須とするものである。チーグラー触媒を使用すると、比較的柔軟性の劣るプロピレン系ブロック共重合体の製造であってもべたつき等の問題が生じる。この点については既出の特許文献に開示されている通りである。
本発明の骨子は特定の弱酸塩(D)を添加混合した状態下でプロピレン系エラストマー成分(B)を製造する第二工程を行う事にあり、メタロセン触媒の種類は特に限定されるものではない。本発明に用いる事が出来るメタロセン触媒の代表的な例として、下記の成分(a)、(b)、及び、任意成分である成分(c)からなるメタロセン触媒を挙げる事ができる。
成分(a):一般式(1)で表される遷移金属化合物から選ばれる少なくとも1種のメタロセン遷移金属化合物
成分(b):下記(b−1)〜(b−4)から選ばれる少なくとも1種の固体成分
(b−1)有機アルミオキシ化合物が担持された微粒子状担体
(b−2)成分(a)と反応して成分(a)をカチオンに変換することが可能なイオン性化合物またはルイス酸が担持された微粒子状担体
(b−3)固体酸微粒子
(b−4)イオン交換性層状珪酸塩
成分(c):有機アルミニウム化合物
なお、本発明を実施するに当たっては、メタロセン触媒(M)を構成する下記1−(3)成分(c)で示す任意成分である有機アルミニウム化合物成分(c)と、下記2−(4)有機アルミニウム(C)項で示す有機アルミニウム化合物(C)とは、同一の化合物を用いる事も有り得るが、触媒調製時に用いる場合と重合時に用いる場合とでは環境も触媒や重合体粒子の状態も異なるため、(c)と(C)では別種の機能を果たすものである。有機アルミニウム化合物(C)は主に不純物を無害化するスカベンジャーとしての機能を有し、この化合物を存在させた重合系で、第一工程を行う事により、プロピレン系モノマーの重合が安定に進行するという観点で有用である。一方で、触媒調製時に用いられる任意成分である有機アルミニウム化合物(c)は高活性の触媒を如何に安定して製造するかという観点で用いられるものであり、両者の機能が異なる事は明らかである。
1−(1)成分(a)
成分(a)は、下記の一般式(1)で表される遷移金属化合物から選ばれる少なくとも1種のメタロセン遷移金属化合物である。
Figure 0006520421
(式中、AおよびA’は置換基を有していてもよい共役五員環配位子、Qは二つの共役五員環配位子間を任意の位置で架橋する結合性基、X及びYは、成分(b)と反応してオレフィン重合能を発現させるσ共有結合性補助配位子、Mは、周期律表第4族の遷移金属である)
上記一般式中、共役五員環配位子は置換基を有していてもよいシクロペンタジエニル基誘導体である。置換基を有する場合、その置換基の例としては、炭素数1〜30の炭化水素基(ハロゲン、珪素、酸素、硫黄などのヘテロ原子を含有していてもよい)が挙げられ、この炭化水素基は一価の基としてシクロペンタジエニル基と結合していても、またこれが複数存在するときにその内の2個がそれぞれ他端(ω−端)で結合してシクロペンタジエニルの一部と共に環を形成していてもよい。この様な共役五員環配位子の例としては、インデニル基、フルオレニル基、またはヒドロアズレニル基等が挙げられ、これらの基は、さらに置換基を有していてもよく、中でもインデニル基またはヒドロアズレニル基が好ましい。
Qとして、好ましくはメチレン基、エチレン基、シリレン基、ゲルミレン基、およびこれらに炭化水素基が置換したもの、並びにシラフルオレン基等が挙げられる。
XおよびYの補助配位子は、成分(b)などの助触媒と反応してオレフィン重合能を有する活性なメタロセンを生成させるものであり、各々水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、あるいは酸素、窒素、ケイ素等のヘテロ原子を有していてもよい炭化水素基が例示できる。これらのうち好ましいものは、炭素数1〜10の炭化水素基、あるいはハロゲン原子である。
Mは、チタン、ジルコニウム、ハフニウムである。特に、ジルコニウム、ハフニウムが好ましい。
さらに上記遷移金属化合物の中でも、プロピレンの立体規則性重合を進行させ、かつ得られるプロピレン重合体の分子量が高いものが好ましい。具体的には、特開平1−301704号公報、特開平4−2211694号公報、特開平6−100579号公報、特表2002−535339号公報、特開平6−239914号公報、特開平10−226712号公報、特開平3−193796号公報、特表2001−504824号公報などに記載の遷移金属化合物が好ましく挙げられる。
上記遷移金属化合物の非限定的な例として、下記のものを挙げることができる。
(1)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス(2−メチルシクロペンタジエニル)]ジルコニウム
(2)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−フェニルシクロペンタジエニル)]ジルコニウム
(3)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス(2,4,5−トリメチルシクロペンタジエニル)]ジルコニウム
(4)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−フェニル−インデニル)]ジルコニウム
(5)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス(2−エチル−4−フェニル−インデニル)]ジルコニウム
(6)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレン(2−メチル−4−フェニル−インデニル)(2−イソプロピル−4−フェニル−インデニル)]ジルコニウム
(7)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレン(2−メチル−4−t−ブチルフェニル−インデニル)(2−イソプロピル−4−t−ブチルフェニル−インデニル)]ジルコニウム
(8)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ジルコニウム
(9)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−チエニル)−4−フェニル−インデニル}]ジルコニウム
(10)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(2−ナフチル)−インデニル}]ジルコニウム
(11)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−t−ブチルフェニル)−インデニル}]ジルコニウム
(12)ジクロロ{1,1’−ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}ジルコニウム
(13)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル}]ジルコニウム
(14)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−t−ブチルフェニル)−4H−アズレニル}]ジルコニウム
(15)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(2−フルオロ−4−ビフェニル)−4H−アズレニル}]ジルコニウム
(16)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−5,6,7,8−テトラヒドロアズレニル}]ジルコニウム
(17)ジクロロ{1,1’−ジメチルシリレン(2,3−ジメチルシクロペンタジエニル)(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}ジルコニウム
(18)ジクロロ{1,1’−ジメチルシリレン(2−メチル−4−フェニルシクロペンタジエニル)(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}ジルコニウム
(19)ジクロロ{1,1’−ジメチルシリレン(2,3,4−トリメチルシクロペンタジエニル)(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}ジルコニウム
(20)ジクロロジメチルメチレン(3−t−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)フルオレニル)ジルコニウム
(21)ジクロロジメチルメチレン(3−t−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)(2,7−ジt−ブチルフルオレニル)ジルコニウム
(22)ジクロロジメチルメチレン(3−t−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)(1,1,4,4,7,7,10,10−オクタメチル−1,2,3,4,7,8,9,10−オクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウム
上記で表される好ましい化合物は、煩雑な多数の例示を避けて代表的例示化合物のみ記載した。中心金属がジルコニウムの化合物を記載したが、同様のハフニウム化合物も使用可能であることは言うまでもなく、また、種々の配位子や架橋結合基あるいは補助配位子を任意に使用しうることは自明である。
1−(2)成分(b)
成分(b)として、上述した成分(b−1)〜成分(b−4)から選ばれる少なくとも1種の固体成分を使用する。これらの各成分は公知のものであり、公知技術の中から適宜選択して使用することができる。その具体的な例示や製造方法については、特開2002−284808号公報、特開2002−53609号公報、特開2002−69116号公報などに詳細な例示がある。
ここで、成分(b−1)、成分(b−2)に用いられる微粒子状担体としては、シリカ、アルミナ、マグネシア、シリカアルミナ、シリカマグネシアなどの無機酸化物、塩化マグネシウム、オキシ塩化マグネシウム、塩化アルミニウム、塩化ランタンなどの無機ハロゲン化物、さらには、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、スチレンジビニルベンセン共重合体、アクリル酸系共重合体などの多孔質の有機担体を挙げることができる。
また、成分(b)の非限定的な具体例としては、成分(b−1)として、メチルアルモキサン、イソブチルアルモキサン、メチルイソブチルアルモキサン、ブチルボロン酸アルミニウムテトライソブチルなどが担持された微粒子状担体を、成分(b−2)として、トリフェニルボラン、トリス(3,5−ジフルオロフェニル)ボラン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどが担持された微粒子状担体を、成分(b−3)として、アルミナ、シリカアルミナ、塩化マグネシウム、フッ素化合物処理した後に、か焼したシリカアルミナ、ペンタフルオロフェノールとジエチル亜鉛等の有機金属化合物を反応させ、さらに水と反応後、同生成物を担持したシリカなどを、成分(b−4)として、モンモリロナイト、ソーコナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト、ベントナイト、テニオライトなどのスメクタイト族、バーミキュライト族、雲母族などが挙げられる。これらは、混合層を形成しているものでもよい。
上記成分(b)の中で特に好ましいものは、成分(b−4)のイオン交換性層状珪酸塩であり、さらに好ましい物は、酸処理、アルカリ処理、塩処理、有機物処理などの化学処理が施されたイオン交換性層状珪酸塩である。
1−(3)成分(c)
必要に応じて成分(c)として用いられる有機アルミニウム化合物の例は、
一般式 AlR3−a
(式中、Rは、炭素数1から20の炭化水素基、Xは、水素、ハロゲン、アルコキシ基、aは0<a≦3の数)
で示されるトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウムまたはジエチルアルミニウムモノクロライド、ジエチルアルミニウムモノメトキシドなどのハロゲンもしくはアルコキシ含有アルキルアルミニウムである。またこの他に、メチルアルミノキサンなどのアルミノキサン類なども使用できる。これらのうち特にトリアルキルアルミニウムが好ましい。
1−(4)触媒の形成
成分(a)、成分(b)および必要に応じて成分(c)を接触させて触媒とする。その接触方法は特に限定されないが、以下のような順序で接触させることができる。また、この接触は、触媒調製時だけでなく、オレフィンによる予備重合時に行ってもよい。なお、オレフィンの重合時に有機アルミニウム化合物を用いる場合は、後述の有機アルミニウム(C)として扱い、触媒の任意成分(c)としては扱わない。これは、仮に同一の化合物を用いた場合であっても用いられる環境と工程が異なるために両者の機能が異なるが故である。
1)成分(a)と成分(b)を接触させる
2)成分(a)と成分(b)を接触させた後に成分(c)を添加する
3)成分(a)と成分(c)を接触させた後に成分(b)を添加する
4)成分(b)と成分(c)を接触させた後に成分(a)を添加する
5)三成分を同時に接触させる。
本発明で使用する成分(a)、(b)及び(c)の使用量は任意である。例えば、成分(b)に対する成分(a)の使用量は、成分(b)1gに対して、好ましくは0.1μmol〜500μmol、特に好ましくは0.5μmol〜100μmolの範囲である。成分(b)に対する成分(c)の使用量は、成分(b)1gに対し、好ましくは金属の量が0.001mmol〜100mmol、特に好ましくは0.005mmol〜50mmolの範囲である。したがって、成分(a)に対する成分(c)の量は、金属のモル比で0.002〜10、好ましくは0.02〜10、特に好ましくは0.2〜10の範囲内である。
本発明の触媒は、予めオレフィンを接触させて少量重合されることからなる予備重合処理に付すことが好ましい。使用するオレフィンは、特に限定はないが、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、ビニルシクロアルカン、スチレンなどを使用することが可能であり、特にプロピレンを使用することが好ましい。オレフィンの供給方法は、オレフィンを反応槽に定速的にあるいは定圧状態になるように維持する供給方法やその組み合わせ、段階的な変化をさせるなど、任意の方法が可能である。予備重合温度と時間は、特に限定されないが、各々−20℃〜100℃、5分〜24時間の範囲であることが好ましい。また、予備重合量は、予備重合ポリマー量が成分(b)に対し、好ましくは0.01〜100、さらに好ましくは0.1〜50である。予備重合を終了した後に、触媒の使用形態に応じ、そのまま使用することが可能であるが、必要ならば乾燥を行うことも可能である。さらに、上記各成分の接触の際、もしくは接触の後に、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどの重合体やシリカ、チタニアなどの無機酸化物固体を共存させることも可能である。
2.製造方法
2−(1)逐次重合
本発明を実施するに際しては、結晶性ポリプロピレン成分(A)とプロピレン系エラストマー成分(B)を逐次重合することが必要である。具体的には、第一工程において結晶性ポリプロピレン成分(A)を重合した後で、第二工程においてプロピレン系エラストマー成分(B)を重合する事が必要である。本発明の効果を阻害しない限り、第一工程の前、第一工程と第二工程の間、第二工程の後、の任意の箇所で他の重合を行っても問題はない。
逐次重合を行う際には、バッチ法と連続法のいずれを用いることも可能であるが、一般的には生産性の観点から連続法を用いることが望ましい。
バッチ法の場合には、時間と共に重合条件を変化させることにより単一の重合反応器を用いて結晶性ポリプロピレン成分(A)とプロピレン系エラストマー成分(B)を個別に重合することが可能である。本発明の効果を阻害しない限り、複数の重合反応器を並列に接続して用いてもよい。
連続法の場合には結晶性ポリプロピレン成分(A)とプロピレン系エラストマー成分(B)を個別に重合する必要から2個以上の重合反応器を直列に接続した製造設備を用いる必要がある。結晶性ポリプロピレン成分(A)を製造する第一工程に対応する重合反応器とプロピレン系エラストマー成分(B)を製造する第二工程に対応する重合反応器については直列の関係になくてはならないが、第一工程、第二工程のそれぞれについて複数の重合反応器を直列及び/又は並列に接続して用いてもよい。
第一工程で結晶性プロピレン成分(A)を重合により製造し、第二工程でプロピレン系エラストマー成分(B)を重合により製造するという、少なくとも二段階重合を採用することを必須としながらも、第一工程と第二工程は直結したラインにおいて実施することが好ましいが、各工程がそれぞれ独立した、いわゆるバッチ法においても実施することもできる。まず、第一工程を実施する詳細な態様は、ただ1個の重合反応器だけで実施する態様ばかりでなく、例えば、複数の個別の重合反応器を一番重合反応器、二番重合反応器、さらには三番重合反応器というように任意に配置した、いわゆる直列型配置した重合装置で実施することも可能である。その直列型反応器を一列、二列、三列というように、任意に並列に並べた並列型重合装置により実施するという、いわゆる複合型重合反応器で実施することもできる。その複合型重合反応器を構成する個別の反応器には、供給するプロピレン系モノマー仕様が、例えば、エチレン及び炭素数が4〜8のα−オレフィンからなる群から選ばれる少なくとも1種類のコモノマーとプロピレンの構成割合が、エチレン含量の例において見れば、一番重合反応器のエチレン含量が1質量%、二番重合反応器のエチレン含量が16質量%、三番重合反応器のエチレン含量が8質量%というように、モノマー含量に違いを持たせることも可能である。その複合型反応器が第一工程の結晶性プロピレン成分(A)の重合製造の範疇に属する手法で実施している場合にあっては、その各反応器のプロピレン系重合生成物に含まれるエチレンの含量を求め、各反応器のエチレン含量を平均することにより、第一工程の結晶性ポリプロピレン成分(A)で規定している、下記(i)の特性を満たしていなくてはならない。
(i)プロピレン単独重合体、または、エチレン及び炭素数が4〜8のα−オレフィンからなる群から選ばれる少なくとも1種類のコモノマーとプロピレンとのランダム共重合体であって、エチレン及びα−オレフィンの含量の総和が10質量%以下である。
同様に、第二工程でプロピレン系エラストマー成分(B)を製造する場合にも、第一工程を実施する手法と同様に、ただ1個の重合反応器だけで実施する態様ばかりでなく、直列型反応器および直列型反応器を任意に採用した、いわゆる複合型重合反応器により実施することができる。重合に供給するモノマー仕様についても、第一工程の手法と同じことが言える。第二工程を複合型重合反応器により実施する場合には、各反応器に、弱酸塩(D)を添加するなど、第二工程の全てにおいて弱酸塩(D)の存在下で重合反応を行うようにすることによりべたつきを防止する対策が必要である。いずれにせよ、第二工程の範疇に属する複合型重合反応器による手法で実施する場合には、プロピレン系エラストマー成分(B)が下記(ii)の特性を満たしていなくてはならない。
(ii)エチレン及び炭素数が4〜8のα−オレフィンからなる群から選ばれる少なくとも1種類のコモノマーとプロピレンとのランダム共重合体であって、エチレン及びα−オレフィンの含量の総和が10質量%超過である。
本発明のプロピレン系ブロック共重合体は、第一工程による結晶性プロピレン成分(A)と、第二工程のプロピレン系エラストマー成分(B)とを重合することにより、重合段階で、結晶性ポリプロピレン成分(A)の結晶相(ハードセグメント)にエラストマー成分(ソフトセグメント)を導入したものであり、第一工程と第二工程におけるモノマー仕様の種類および含量の一部が例え共通する場合があっても、成分(A)と成分(B)の両者には、ポリマーの技術常識からして、物性上または組織上において明確に相違するので、混同することはない。
2−(2)重合プロセス
重合プロセスはバルク法又は気相法を用いることができる。バルク法と気相法の中間的な条件として超臨界条件を用いることも可能であるが、実質的には気相法と同等であるため、特に区別することなく気相法に含める。なお、多槽連続重合プロセスの場合、バルク法の重合反応器の後に気相法の重合反応器を付ける場合があるが、この場合は当業界の慣例にしたがってバルク法と呼ぶ事にする。また、バッチ法の場合に第一工程をバルク法で行い第二工程を気相法で行う事もあるが、この場合も同様にバルク法と呼ぶ事にする。
また、バルク法と気相法のそれぞれにおいて種々のプロセスが提案されている。攪拌(混合)方法や除熱方法に違いがあるが、この観点において本発明は特段プロセス種を限定する事はない。
プロピレン系エラストマー成分(B)は炭化水素などの有機溶媒や液化プロピレンに溶けやすいため、プロピレン系エラストマー成分(B)の製造を行う第二工程は気相法を用いることが好ましい。
結晶性ポリプロピレン成分(A)の製造を行う第一工程はバルク法であっても気相法であっても問題ないが、より柔軟性の高い製品を製造するために比較的結晶性の低い結晶性ポリプロピレン成分(A)を製造する場合には、付着などの問題を避けるために気相法を用いることが望ましい。
したがって、連続法を用いて、まず、結晶性ポリプロピレン成分(A)の製造を行う第一工程を気相法で行い、引き続きプロピレン系エラストマー成分(B)の製造を行う第二工程を気相法にて行う事が最も望ましい。
2−(3)一般的な重合条件
重合温度は通常用いられている温度範囲であれば特に問題なく用いることができる。具体的には、0℃〜200℃、好ましくは40℃〜100℃の範囲を用いることができる。
重合圧力は選択するプロセスによって差異が生じるが、通常用いられている圧力範囲であれば特に問題なく用いることができる。具体的には、0より大きく200MPaまで、好ましくは0.1〜50MPaの範囲を用いることができる。この際に、窒素などの不活性ガスを共存させても問題はない。
2−(4)有機アルミニウム化合物(C)
メタロセン触媒はチーグラー触媒とは異なり、有機アルミニウム化合物を助触媒として用いる事が必須ではない。従って、活性化された触媒の形成という観点では重合反応器に有機アルミニウム化合物を添加する事は必ずしも必要ではない。しかし、オレフィンの重合反応は他の触媒反応と較べて極めて短時間に極めて多くの触媒サイクルが回るという点で特異的であり、そのため不純物の影響を受けやすいという技術上の課題が存在する。この課題を解決するために、通常の化成品と較べて遥かに純度の高い原料を用いたり、原料を更に精製して使用したり、種々の工夫がなされているのは周知の事実である。この観点で、重合反応器に反応性の高い有機アルミニウム化合物を添加し、不純物がメタロセン触媒と反応する前に有機アルミニウム化合物と反応させ不純物を無害化する手法が良く用いられる。
本発明の有機アルミニウム化合物(C)として任意の化合物を用いる事ができるが、好適な化合物の例はメタロセン触媒の任意成分である成分(c)と同様であり、とりわけ、トリイソブチルアルミニウムとトリオクチルアルミニウムが好ましい。
有機アルミニウム化合物(C)の使用量は不純物のレベルに応じて任意に設定する事ができる。一般的には、製造するプロピレン系ブロック共重合体の質量に対するアルミニウム原子のモル数として、0.001〜1000mmol−Al/kgの範囲内となる様に添加する。好ましくは、0.01〜100mmol−Al/kg、更に好ましくは、0.1〜20mmol/kgの範囲内となる様に添加するのが良い。
2−(5)弱酸塩(D)
本発明の骨子は特定の弱酸塩(D)の存在下でプロピレン系エラストマー成分(B)を製造する第二工程を行う事にある。本発明の弱酸塩(D)は、弱酸由来のアニオンと塩基由来のカチオンとがイオン結合した化合物であり、弱酸の中和物であることが好ましく、特に水中のpKaが4以上の弱酸より導かれる塩であることが望ましい。強酸塩を使用しても同等の効果は得られるが、強酸塩は水と反応して強酸を発生しうることから、製造設備を腐食などで痛める可能性があるため、結果的に望ましくない場合が想起される。
本発明で用いられる弱酸塩(D)としては、従来よりも使用量を多くしても触媒活性が低下し難く、流動性が高く取り扱いの容易な重合体粒子を安定的に得やすい点から、第二工程の重合温度及び重合圧力で固体の塩であることが好ましい。
弱酸塩(D)として好ましい化合物の具体例を挙げると、陰イオンとしては炭酸、次亜塩素酸、リン酸、ホウ酸、シュウ酸、酢酸、酪酸、ケイ酸、フェノール等の共役塩基が挙げられる。塩は正塩だけでなく、酸性塩であっても良い。中でも、局所的に作用する重合抑制剤として機能し易く、従来よりも使用量を多くしても触媒活性が低下し難く、流動性が高く取り扱いの容易な重合体粒子を安定的に得やすい点から、無機酸の塩であることが好ましく、水中のpKaが4以上の無機酸の塩であることが更に好ましい。このうち、入手や取扱いの容易さとポリマー中に残存する灰分抑制の点から、炭酸水素塩を包含する炭酸塩が特に好ましい。陽イオンとしては、アルカリ金属などの金属陽イオンの他、アンモニウムなどの有機物のカチオンを用いても良い。陽イオンとしては、弱酸塩(D)の溶解度を調整するために適宜選択して用いられれば良い。例えば、有機酸に対しては金属陽イオンを用いることが好ましく、無機酸に対しては、金属陽イオンでも有機物のカチオンでもいずれでも好適に用いられる。入手の容易さ、安定性、および着色等の副作用防止の点から、陽イオン価数の小さいアルカリ金属イオンまたはアルカリ土類金属イオンが望ましく、1価のアルカリ金属イオンが特に好ましい。
中でも、水中のpKaが4以上の無機酸のアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩の少なくとも1種であることが好ましく、更に、炭酸アルカリ金属塩、炭酸アルカリ土類金属塩、炭酸水素アルカリ金属塩、及び炭酸水素アルカリ土類金属塩からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
ここでpKaは、25℃の無限希釈水溶液中の値である。酸が多塩基酸の場合には、pKaは第一解離定数の逆数の対数値であると理解することができる。
本発明に用いられる弱酸塩(D)としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、珪酸ナトリウム、硼酸ナトリウム、りん酸水素2ナトリウム、酢酸ナトリウム、シュウ酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、酢酸カリウム、シュウ酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸水素カルシウム、酢酸カルシウム、シュウ酸カルシウム、炭酸アンモニウム、酢酸マグネシウム、炭酸バリウム、炭酸水素バリウム、酢酸バリウム、シュウ酸バリウム、等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
上記の様な特定の構造を有する弱酸塩(D)が効果的である理由については現在鋭意研究を進めている所であるが、メタロセン触媒及び有機アルミニウム化合物(C)との反応性と、プロピレン系ブロック共重合体粒子内部への拡散現象の2つが重要な意味を持っていると発明者は考えている。以下、発明者の考えを概説する。
そもそも、適量のアルコールの様な化合物を重合抑制剤として用いてプロピレン系ブロック共重合体の粒子性状を改良する方法はチーグラー触媒を用いた製造技術の中で開発されてきたものである。チーグラー触媒はチタン原子を有する固体触媒成分を有機アルミニウム化合物によって活性化した触媒であり、固体触媒中のチタン化合物と有機アルミニウム化合物が反応して形成されたアルキル−Ti結合にプロピレンの様なモノマーが配位、挿入して重合が進むと考えられている。一般的に、プロピレンの重合を行う場合、アルコキシ−Ti化合物は好ましい固体触媒成分とはならず、アルコキシ−Al結合を有する有機アルミニウム化合物も好ましい助触媒ではない。従って、チーグラー触媒を用いたプロピレン系の重合反応場にアルコール化合物を共存させると、重合触媒能を有するアルキル−Ti結合とアルコール化合物が反応して不活性なアルコキシ−Ti化合物になったり、助触媒として必須の有機アルミニウム化合物がアルコール化合物と反応して助触媒能の乏しいアルコキシアルミニウム化合物になったりして、重合反応が停止すると考えられる。プロピレン系ブロック共重合体は粒子として製造されるので、重合場に存在するアルコール化合物は粒子の外側から粒子の内部に向けて徐々に拡散すると考えられるが、拡散経路上に存在するTi化合物や有機アルミニウム化合物と反応するとその場で消費されるため、主に粒子の外部の重合活性点における重合反応が停止し、粒子内部の重合活性点における重合反応は維持継続されると考えることが出来る。従って、チーグラー触媒を用いたプロピレン系ブロック共重合体の製造において、プロピレン−エチレン共重合体エラストマーの様なべたつきやすい重合体を製造する際にアルコール類を存在させると、粒子表面のプロピレン−エチレン共重合体エラストマーの生成量を抑制する事ができ、粒子表面のべたつきを抑制する事が出来るので粒子性状を改良する事ができる。
メタロセンにおける粒子性状改良のためにも、同様の考え方をとって、アルコールのような反応性分子を使用する先行技術があるが、例えば改善の幅が小さかったり、触媒活性低下の副作用が強すぎたりするなど、必ずしもチーグラー触媒と同じ結果にならない場合が多い。
メタロセン触媒に関する記載の所でも触れておいたが、そもそも重合場に添加する有機アルニミウム化合物(C)はメタロセン触媒の助触媒ではなく、不純物の無害化を狙って添加されている。一般的にメタロセン触媒はチーグラー触媒よりも不純物による外乱に弱く、安定した性能を発現するためにはこの有機アルミニウム化合物(C)の使用が不可避である。
アルコール化合物は、メタロセン触媒だけでなく、この有機アルミニウム化合物(C)とも反応することは容易に予想される。仮にこの有機アルミニウム化合物(C)が優先的に消費されてしまうと、残ったメタロセン触媒の挙動は不安定になる。この考えに基づけば、メタロセン触媒に好適な粒子性状改良剤とは、有機アルミニウム化合物(C)と反応しないものであるべきだと考えることができる。
また、チーグラー触媒の項で述べたとおり、粒子の外部の重合活性点における重合反応が優先的に停止されることが結果的に粒子性状の改善につながるという原理は、メタロセン触媒でも同じと予想される。しかしメタロセン触媒がチーグラー触媒よりも失活しやすいことを加えると、粒子性状改良剤は成長粒子の内部にまで浸透しない物質であることがより望ましいと推察できる。
弱酸塩は、ポリマー、モノマー、有機溶媒への溶解度がいずれも非常に小さいため、粒子中の重合活性部位に届かず、表面近傍のそれらのみを選択的に失活させていると発明者らは考えている。その結果、粒子表面近傍ではエラストマー成分が作られなくなり、粒子内部にのみエラストマー成分が閉じ込められることによって、粒子性状が改善される。同時に、粒子内部に位置する大部分の触媒は影響を受けないため、大きく生産性が下がることはない。
弱酸塩が接触することによってメタロセン触媒の活性点が失活する機構については、イオン交換が有力だと考えている。即ち、メタロセン触媒における重合活性点は、成分(b)の様な活性化剤によるアルキル化とカチオン化を受けたアルキル−遷移金属結合であるという認識が一般的であり、そのカウンターアニオンとして非配位性の原子団が近傍にあると考えられている。弱酸塩(D)がここに接触することによって、イオン交換が起こり、メタロセンカチオンの弱酸塩に変換されることで、触媒活性を失うと考えることができる。このような機構によって、弱酸塩(D)が粒子性状改善のために特に有効なのではないかと考えている。
また、特に重合条件下で固体であるような弱酸塩は、触媒内部へと拡散し難く、従来よりも使用量を多くしても触媒活性が低下し難いと推定される。そのため、重合時の温度、中でも第二工程の重合温度及び重合圧力で固体である弱酸塩が好ましく用いられる。目安として、常圧で、60℃で固体、より好ましくは70℃で固体、より更に好ましくは80℃で固体の弱酸塩(D)が好適に用いられる。なお常圧とは、通常の大気圧0.096〜0.106MPaである。
2−(6)弱酸塩(D)の使用方法
弱酸塩(D)はプロピレン系エラストマー成分(B)を製造する第二工程を行う際に存在していれば良く、添加方法は特に限定されるものではない。例えば、バッチ法を用いる場合には第一工程を終わった後に弱酸塩(D)添加し、その後第二工程を行っても良いし、第二工程の開始と同時に弱酸塩(D)を添加しても良い。連続法を用いる場合には、第一工程を行う重合反応器から第二工程を行う重合反応器への移送経路(例えば、移送配管や途中の脱ガス槽など)で弱酸塩(D)を添加しても良いし、第二工程を行う重合反応器に弱酸塩(D)を添加しても良い。
弱酸塩(D)は、飽和炭化水素溶媒中に分散して添加しても良いし、ポリマー粒子などの固体媒体で希釈して添加しても良いし、希釈せずにそのまま添加しても良い。単一の弱酸塩(D)を用いても良いし、複数の弱酸塩(D)を混合して用いても良い。
弱酸塩(D)の使用量は、触媒当たりの使用量に対するモル比で0.1〜20mol/g−触媒の範囲内となる様にするのが好ましい。より流動性に優れた重合体粒子を得る点から、弱酸塩(D)の使用量は、0.4mol/g−触媒以上がより好ましく、1mol/g−触媒以上がより更に好ましい。弱酸塩(D)は、従来の重合抑制剤よりも使用量を多くしても触媒活性が低下し難く、安定的に、所望のプロピレン系ブロック共重合体を製造できる点から、2mol/g−触媒以上であっても好適に用いられる。一方、無駄を省きつつ、副作用のリスクを抑制する点から、10mol/g−触媒以下であることがより好ましい。
なお、本発明に用いられる弱酸塩(D)は、プロピレン系エラストマー成分(B)を製造する第二工程を行う際に存在させることにより重合体粒子表面における重合を抑制する重合抑制剤として機能させるものであって、前記結晶性ポリプロピレン成分(A)を製造する第一工程には添加されていないことが好ましく、また、重合後の混練時等に別途添加される中和剤等との添加剤とも区別されるものである。
3.プロピレン系ブロック共重合体
本発明で製造されるプロピレン系ブロック共重合体は、結晶性ポリプロピレン成分(A)を製造する第一工程と、その後にプロピレン系エラストマー成分(B)を製造する第二工程とを含む多段重合によって製造され、リアクターTPOとして用いられるものであって、透明性に優れ、柔軟性と耐熱性のバランスが高い特徴を有するものである。以下、詳細を説明する。
3−(1)結晶性ポリプロピレン成分(A)
本発明の結晶性ポリプロピレン成分(A)は、プロピレン単独重合体、又は、エチレン及び炭素数が4〜8のα−オレフィンからなる群から選ばれる少なくとも1種類のコモノマーとプロピレンとのランダム共重合体である。結晶性ポリプロピレン成分(A)は製品であるリアクターTPOの耐熱性を発現させるための成分であり、ある程度融点が高い方が好ましい。一方で、リアクターTPOの柔軟性を充分なレベルとするためには、結晶性ポリプロピレン成分(A)の結晶性が高すぎない方が好ましいので、結晶性と対応する融点も高すぎない方が好ましい。従って、より高い柔軟性と耐熱性のバランスを得るためにはプロピレン単独重合体よりもランダム共重合体の方が好ましく、使用するメタロセン触媒によってプロピレン単独重合体の結晶性がどの程度か決まるので、そのレベルに応じてプロピレンとコモノマーとの共重合を行い、融点及び結晶性を制御する事が好ましい。
結晶性ポリプロピレン成分(A)がエチレン及び炭素数が4〜8のα−オレフィンからなる群から選ばれる少なくとも1種類のコモノマーとプロピレンとのランダム共重合体である場合、エチレン若しくはα−オレフィンの含量の総和は10質量%以下である必要がある。より好ましくは、エチレン若しくはα−オレフィンの含量の総和は0.1質量%以上5質量%以下であり、更に好ましくは1質量%以上3質量%以下である。耐熱性の観点からは、エチレンやα−オレフィンの含量が高すぎず、融点が下がりすぎない方が好ましい。好ましいコモノマーはエチレンと1−ブテンであり、特にエチレンが好ましい。炭素数が9以上のα−オレフィンは沸点が高くなりすぎ、製造が難しくなるので用いる事ができない。
結晶性ポリプロピレン成分(A)の融点は当業界で良く知られている様に、示差走査型熱量計(DSC)による融解ピーク温度Tm(A)として測定する事ができる。耐熱性の観点からは融解ピーク温度Tm(A)が低くなりすぎない方が好ましく、Tm(A)は105℃以上が好ましく、特に好ましくは110℃以上である。
一方、融点が高くなるとそれに伴い結晶性ポリプロピレン成分(A)の結晶性が増加するために剛性が高くなり、柔軟性を付与するためにプロピレン系エラストマー成分(B)を増やす必要が出てくる。より高い柔軟性と耐熱性のバランスを得るためには、Tm(A)は高くなり過ぎない方が好ましい。このため、Tm(A)は145℃以下である事が好ましく、特に好ましくは140℃以下である。
結晶性ポリプロピレン成分(A)がエチレン及び炭素数が4〜8のα−オレフィンからなる群から選ばれる少なくとも1種類のコモノマーとプロピレンとのランダム共重合体である場合、エチレン若しくは炭素数が4〜8のα−オレフィンの含量は重合槽に供給するモノマーの比率によって制御する事ができる。エチレンの場合を例に説明すると、重合槽に供給するエチレンのプロピレンに対する量比(エチレン供給量÷プロピレン供給量)を高くすれば、得られるエチレン−プロピレン共重合体のエチレン含量は高くなる。逆も同様である。重合槽に供給するプロピレンとエチレンの量比と得られるプロピレン−エチレンランダム共重合体中のエチレン含量との関係は使用するメタロセン触媒の種類によって異なるが、適宜供給量比を調整することによって目的のエチレン含量を有するエチレン−プロピレン共重合体を得る事は当業者にとって極めて容易なことである。
結晶性ポリプロピレン成分(A)の融点はコモノマーの含量によって制御する事ができる。使用するメタロセン触媒によってコモノマー含量と融点との関係は異なるが、この関係を事前に調べておき、コモノマーの含量を適宜調整すれば融点を望みの値に制御できる。コモノマー含量が高くなるほど、結晶性ポリプロピレン成分(A)の融点は低くなり、結晶性も低くなり、柔軟性が高くなる。逆も同様である。
第一工程を、多段重合で行う場合には、各段で生成するポリマーが、結晶性ポリプロピレン成分(A)の各性状を満足することが好ましい。
3−(2)プロピレン系エラストマー成分(B)
本発明のプロピレン系エラストマー成分(B)はエチレン及び炭素数が4〜8のα−オレフィンからなる群から選ばれる少なくとも1種のコモノマーとプロピレンとのランダム共重合体であって、なおかつ、エチレン及びα−オレフィンの少なくとも1種の含量の総和が10質量%超過のものである。プロピレン系エラストマー成分(B)は製品であるリアクターTPOに柔軟性を付与する成分であるので、結晶性ポリプロピレン成分(A)よりも柔らかい成分である必要がある。3−(1)で説明した通りコモノマー含量が高い程柔軟性が高くなるので、プロピレン系エラストマー成分(B)のコモノマー含量、すなわち、エチレン及びα−オレフィンの少なくとも1種の含量の総和は結晶性ポリプロピレン成分(A)のエチレン及びα−オレフィンの少なくとも1種の含量の総和よりも高くなくてはならない。
プロピレン系エラストマー成分(B)のコモノマーとして用いることが出来るのは、エチレン及び炭素数が4〜8のα−オレフィンである。炭素数が9以上のα−オレフィンは沸点が高くなりすぎ、製造が難しくなるので用いる事ができない。原料としての入手容易さの点から、好ましいコモノマーはエチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、である。中でも1−ブテンは、柔軟性と透明性のバランスを向上させる事が出来るので、とりわけ好ましく用いる事ができる。具体的には、プロピレン系エラストマー成分(B)をプロピレン−1−ブテン−ランダム共重合体、若しくは、プロピレン−エチレン−1−ブテン−ランダム共重合体とする事が好ましい。最も好ましいのはプロピレン−エチレン−1−ブテン−ランダム共重合体である。しかし、プロピレン系エラストマー成分(B)のコモノマーに1−ブテンを用いると、より柔軟なプロピレン系ブロック共重合体が得られる半面、重合体粒子がべたつき易くなり流動性を確保する事が難しくなる。その点で、本発明の弱酸塩(D)はより柔軟な、特に1−ブテンをコモノマーとして用いたプロピレン系エラストマー成分(B)を有するプロピレン系ブロック共重合体の製造に有益であると言える。
プロピレン系エラストマー成分(B)のエチレン及びα−オレフィンの少なくとも1種の含量の総和は、10質量%超過であれば良いが、好ましくは、10質量%超過90質量%以下である。
コモノマーとしてエチレンを用いる場合、エチレン及びα−オレフィンの少なくとも1種の含量の総和が10質量%超過となる範囲内で、プロピレン系エラストマー成分(B)においてエチレン含量を1質量%以上60質量%以下とする事が好ましい。より好ましくは、3質量%以上40質量%以下、特に好ましくは、4質量%以上20質量%以下、最も好ましくは、5質量%以上14質量%以下である。高い柔軟性を達成するためにはプロピレン系エラストマー成分(B)の結晶性を低くする方が好ましく、そのためにはエチレン含量は高い方が好ましい。逆に、透明性を高くするという観点では結晶性ポリプロピレン成分(A)とプロピレン系エラストマー成分(B)が相分離しない条件とする事が好ましく、プロピレン系エラストマー成分(B)のエチレン含量は低い方が好ましい。この二つの観点で、上記の好ましい範囲を用いる事が望ましい。
コモノマーとして1−ブテンを用いる場合には、エチレン及びα−オレフィンの少なくとも1種の含量の総和が10質量%超過となる範囲内で、プロピレン系エラストマー成分(B)において1−ブテン含量を5質量%以上95質量%以下とする事が好ましい。より好ましくは、10質量%以上90質量%以下、さらに好ましくは、20質量%以上85質量%以下、特に好ましくは、30質量%以上75質量%以下である。1−ブテンはエチレンとは異なり透明性を悪化させる事が少ないので、好適に用いる事ができる範囲は広い。従って、透明を維持しつつ、より柔軟なプロピレン系ブロック共重合体を得るためには、プロピレン系エラストマー成分(B)中の1−ブテンの含量がエチレン含量よりも多い方が好ましい。柔軟性を高めるという観点では、1−ブテン含量は高い方がプロピレン系エラストマー成分(B)の結晶性が低くなって好ましい。逆に、1−ブテンはモノマー単価が高い事と製造時に回収系などに負担が掛かる点を考慮すると、プロピレン系エラストマー成分(B)の1−ブテン含量はあまり高くない程度に設定する事が好ましい。
プロピレン系エラストマー成分(B)のエチレン及び炭素数が4〜8のα−オレフィンの含量は、製造されるプロピレン系ブロック共重合体が所望の透明性、柔軟性及び耐熱性を得られるように適宜調整されれば良く、結晶性ポリプロピレン成分(A)におけるエチレン及び炭素数が4〜8のα−オレフィンの含量と同様の手法により調整することが出来る。
第二工程を、多段重合で行う場合には、各段で生成するポリマーが、プロピレン系エラストマー成分(B)の各性状を満足することが好ましい。
3−(3)プロピレン系ブロック共重合体
本発明で製造されるプロピレン系ブロック共重合体は、結晶性ポリプロピレン成分(A)とプロピレン系エラストマー成分(B)を必須成分とするものである。結晶性ポリプロピレン成分(A)とプロピレン系エラストマー成分(B)の質量比は10:90〜90:10の範囲が好ましい。好ましくは、結晶性ポリプロピレン成分(A)とプロピレン系エラストマー成分(B)の質量比が15:85〜85:15、より好ましくは、25:75〜75:25、特に好ましくは、35:65〜65:35の範囲内である。柔軟性を高くするという観点では、結晶性ポリプロピレン成分(A)は多すぎない方が好ましい。一方、耐熱性を高くするという観点では、結晶性ポリプロピレン成分(A)は少なすぎない方が好ましい。この二つの観点で、上記の好ましい範囲を用いる事が望ましい。
結晶性ポリプロピレン成分(A)とプロピレン系エラストマー成分(B)の質量比は結晶性ポリプロピレン成分(A)を製造する第一工程における製造量とプロピレン系エラストマー成分(B)を製造する第二工程における製造量によって制御する。例えば、結晶性ポリプロピレン成分(A)の量を増やしてプロピレン系エラストマー成分(B)の量を減らすためには、第一工程の製造量を維持したまま第二工程の製造量を減らせばよく、第二工程の滞留時間を短くしたり、重合温度を下げたりすれば良い。また、本発明の弱酸塩(D)や酸素などのその他の重合抑制剤の量を増やす事でも制御することができる。その逆も又同様である。
通常、結晶性ポリプロピレン成分(A)とプロピレン系エラストマー成分(B)の質量比は、結晶性ポリプロピレン成分(A)を製造する第一工程における製造量とプロピレン系エラストマー成分(B)を製造する第二工程における製造量の比で定義する。また、結晶性ポリプロピレン成分(A)とプロピレン系エラストマー成分(B)の結晶性が充分異なる場合には、TREF(温度昇温溶離分別法)などの分析手法を用いて両者を分離同定し量比を求める事でもよい。プロピレン系ブロック共重合体の結晶性分布をTREF測定により評価する手法は当業者によく知られたものであり、G.Glokner,J.Appl.Polym.Sci:Appl.Poly.Symp.;45,1−24(1990)、L.Wild,Adv.Polym.Sci.;98,1−47(1990)、J.B.P.Soares,A.E.Hamielec,Polymer;36,8,1639−1654(1995)などの文献に詳細な測定法が示されている。
本発明のプロピレン系ブロック共重合体のメルトフローレート(以下、MFR)は成形方法や用途によって任意の値に設定する事ができるが、一般的には0.1〜1000g/10minの範囲内とする事が好ましい。フィルムやシートなどの押し出し成形に用いる場合は、MFRが0.2〜20g/10minの範囲内とする事が好ましい。より好ましくは、MFRが0.5〜10g/10minの範囲内であり、更に好ましくは、1.0〜7.0g/10minの範囲内である。射出成形に用いる場合には、MFRが1.0〜200g/10minの範囲内とする事が好ましい。より好ましくは、MFRが10〜100g/10minの範囲内であり、更に好ましくは、20〜50g/10minの範囲内である。繊維に用いる場合には、MFRが10〜1000g/10minの範囲内とする事が好ましい。より好ましくは、MFRが50〜500g/10minの範囲内であり、更に好ましくは、80〜200g/10minの範囲内である。
本発明のプロピレン系ブロック共重合体のMFRを制御する方法として、結晶性ポリプロピレン成分(A)のMFRを制御する方法、プロピレン系エラストマー成分(B)のMFRを制御する方法、結晶性ポリプロピレン成分(A)とプロピレン系エラストマー成分(B)の質量比を制御する方法、を例示する事が出来る。
結晶性ポリプロピレン成分(A)のMFRは任意の値を用いる事ができるが、一般的には0.1〜1000g/10minの範囲内とする事が好ましい。より好ましくは、1−100g/10minである。結晶性ポリプロピレン成分(A)を製造する第一工程において、水素を連鎖移動剤として用いる事で結晶性ポリプロピレン成分(A)のMFRを調整する事が出来る。具体的には、連鎖移動剤である水素の濃度を高くすると結晶性ポリプロピレン成分(A)のMFRが高くなる。逆も又同様である。
プロピレン系エラストマー成分(B)のMFRも任意の値を用いる事ができるが、一般的には0.1〜1000g/10minの範囲内とする事が好ましい。より好ましくは、1〜100g/10min、更に好ましくは、3〜60g/10minの範囲内である。メタロセン触媒はチーグラー触媒と異なり、分子量分布が狭いために非常に小さい分子量の成分を製造してもべたつき等の問題を起こしづらいが、あまりにもMFRを高くすると同様の問題が生じうる。プロピレン系エラストマー成分(B)のMFRは結晶性ポリプロピレン成分(A)のMFRと同様に制御する事が出来る。
プロピレン系ブロック共重合体の融点は当業界で良く知られている様に、示差走査型熱量計(DSC)による融解ピーク温度Tm(w)として測定する事ができる。耐熱性を高くするという観点では、融解ピーク温度Tm(w)は低くなりすぎない方が好ましく、Tm(w)は105℃以上が好ましく、特に好ましくは110℃以上である。
一方、プロピレン系ブロック共重合体の融点Tm(w)は主に結晶性ポリプロピレン成分(A)の融点Tm(A)に支配されているので、融点が高くなるとそれに伴い結晶性ポリプロピレン成分(A)の結晶性が増加するために剛性が高くなり、柔軟性を付与するためにプロピレン系エラストマー成分(B)を増やす必要が出てくる。より高い柔軟性と耐熱性のバランスを得るためには、Tm(w)は高くなり過ぎない方が好ましい。このため、Tm(w)は145℃以下である事が好ましく、特に好ましくは140℃以下である。
プロピレン系ブロック共重合体の融点Tm(w)は既述の方法によって結晶性ポリプロピレン成分(A)の融点Tm(A)を制御する事によって調整する事が出来る。また、結晶性ポリプロピレン成分(A)とプロピレン系エラストマー成分(B)の親和性(相溶性パラメーター)を制御する目的で、両成分のコモノマー含量を適宜設定する事によって調製する事も可能である。実際には、両成分のコモノマー含量を変えてみてTm(w)の変化の仕方を把握すれば、Tm(w)を望みの値に調整する事は当業者にとって容易である。
4.付加的成分(添加剤)
本発明で製造されるプロピレン系ブロック共重合体においては、各種の機能を付加させるために、付加的成分(任意成分)を添加剤として、本発明の効果を著しく損なわない範囲内で配合することもできる。
この付加的成分としては、従来公知のポリオレフィン樹脂用配合剤として使用される酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、金属不活性化剤、安定剤、中和剤、滑剤、帯電防止剤、防曇剤、核剤、過酸化物、充填剤、抗菌防黴剤、蛍光増白剤のような各種添加剤を加えることができる。
これら添加剤の配合量は、一般に0.0001〜3質量%、好ましくは0.001〜1質量%である。
以下、各添加剤について説明する。
ポリオレフィンの酸化劣化は熱、光、機械力、金属イオン等と酸素との作用により生ずるパーオキサイドラジカルやハイドロパーオキサイド化合物を経由したラジカル連鎖反応であり、一般的に自動酸化と呼ばれている。この自動酸化を抑制するために用いられるのが酸化防止剤であり、連鎖反応のどこに作用するかによって、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、の3種に大別されるのが一般的である。
フェノール系酸化防止剤はラジカル捕捉剤であり、パーオキサイドラジカルなどと反応して生じるラジカルが比較的安定である事から系中のラジカル濃度を下げる事ができる。一般的には、置換フェノール化合物、特に、オルト位に嵩高い置換基を有する置換フェノール化合物を用いる。
以下、フェノール系酸化防止剤として代表的な化合物を例示する。モノフェノール型の化合物では、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(通称:BHT)、トコフェロール(ビタミンE)、n−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート(商品名:Irganox1076、スミライザーBP−76)を例示する事が出来る。ビスフェノール型の化合物では、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)(商品名:スミライザーMDP−S)、1,1−ビス(2’−メチル−4’−ヒドロキシ−5’−t−ブチルフェニル)ブタン(商品名:スミライザーBBM−S、アデカスタブAO−40)、3,9−ビス[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン(商品名:スミライザーGA−80、アデカスタブAO−80)を例示する事ができる。トリフェノール型の化合物では、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン(商品名:アデカスタブAO−30)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン(商品名:Irganox1330、アデカスタブAO−330)、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート(商品名:Irganox3114、アデカスタブAO−20)、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート(商品名:スミライザーBP−179)を例示する事が出来る。テトラフェノール型の化合物では、テトラキス{メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート}メタン(商品名:Irganox1010)を例示する事が出来る。
リン系酸化防止剤はハイドロパーオキサイド化合物を還元する作用があり、ハイドロパーオキサイド分解剤とも呼ばれる。単独でも酸化防止効果があるが、上記のフェノール系酸化防止剤と併用すると相乗効果が発生して更に酸化防止効果が高まるため、通常は両者を併用して用いる事が多い。この相乗効果は、フェノール系酸化防止剤と自動酸化に関わるラジカル種との反応で発生したフェノキシラジカル種をリン系酸化防止剤が還元する事により、フェノール系酸化防止剤が再生するために生じると考えられている。
以下、リン系酸化防止剤として代表的な化合物を例示する。ホスファイト型の化合物では、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト(商品名:Irgafos168、スミライザーP−16、アデカスタブ2112)、トリスノニルフェニルホスファイト(商品名:スミライザーTNP、アデカスタブ1178)、トリス(ミックスド,モノ−ジノニルフェニルホスファイト)(商品名:アデカスタブ329K)、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト(通称:P−EPQ)を例示する事が出来る。
硫黄系酸化防止剤もリン系酸化防止剤と同様にハイドロパーオキサイド化合物を還元する作用があり、ハイドロパーオキサイド分解剤とも呼ばれる。こちらもリン系酸化防止剤と同様にフェノール系酸化防止剤との併用による相乗効果があると言われている。
以下、硫黄系酸化防止剤として代表的な化合物を例示する。スルフィド型の化合物では、ジラウリル−3,3’−チオ−ジプロピオネート(通称:DLTDP)、ジ−ミリスチル−3,3’−チオ−ジプロピオネート(通称:DMTDP)、ジステアリル−3,3’−チオ−ジプロピオネート(通称:DSTDP)、ペンタエリスリトール−テトラキス−(3−ラウリルチオ−プロピオネート)(商品名:スミライザーTP−D、アデカスタブAO−412S)を例示する事が出来る。
光劣化を抑制するための添加剤が紫外線吸収剤と光安定剤である。ポリプロピレンに紫外線が当たるとラジカルが生成して自動酸化が起こる。紫外線吸収剤は紫外線を吸収する事によりラジカルの生成を抑制する作用があり、光安定剤は紫外線により生成したラジカルを捕捉・不活性化する作用がある。
紫外線吸収剤は紫外線領域に吸収帯を持つ化合物であり、トリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリシレート系、シアノアクリレート系、ニッケルキレート系、無機微粒子系、などが知られている。この中で最も汎用的に用いられているのは、トリアゾール系である。
以下、紫外線吸収剤として代表的な化合物を例示する。トリアゾール系の化合物では、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール(商品名:スミソーブ200、TinuvinP)、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール(商品名:スミソーブ340、Tinuvin399)、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール(商品名:スミソーブ320、Tinuvin320)、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール(商品名:スミソーブ350、Tinuvin328)、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール(商品名:スミソーブ300、Tinuvin326)を例示する事が出来る。ベンゾフェノン系の化合物では、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン(商品名:スミソーブ110)、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン(商品名:スミソーブ130)を例示する事が出来る。サリシレート系の化合物では、4−t−ブチルフェニルサリシレート(商品名:シーソーブ202)を例示する事が出来る。シアノアクリレート系の化合物では、エチル(3,3−ジフェニル)シアノアクリレート(商品名:シーソーブ501)を例示する事が出来る。ニッケルキレート系の化合物では、ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル(商品名:アンチゲンNBC)を例示する事が出来る。無機微粒子系の化合物では、TiO、ZnO、CeOを例示する事が出来る。
光安定剤はヒンダードアミン系の化合物を用いる事が一般的であり、HALSと呼ばれる。HALSは2,2,6,6−テトラメチルピペリジン骨格を持ち、紫外線を吸収する事は出来ないが、多種多様な機能により光劣化を抑制する。主な機能は、ラジカルの捕捉、ハイドロキシパーオキサイド化合物の分解、ハイドロキシパーオキサイドの分解を加速する重金属の捕捉、の3つと言われている。
以下、HALSとして代表的な化合物を例示する。セバケート型の化合物では、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート(商品名:アデカスタブLA−77、Tinuvin770)、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート(商品名:Tinuvin765)を例示する事が出来る。ブタンテトラカルボキシレート型の化合物では、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート(商品名:アデカスタブLA−57)、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート(商品名:アデカスタブLA−52)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノール及びトリデシルアルコールとの縮合物(商品名:アデカスタブLA−67)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノール及びトリデシルアルコールとの縮合物(商品名:アデカスタブLA−62)を例示する事が出来る。コハク酸ポリエステル型の化合物では、コハク酸と1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンとの縮合重合体を例示する事が出来る。トリアジン型の化合物では、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン・2,4−ビス{N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ}−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物(商品名:Chimasorb199)、ポリ{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}(商品名:Chimasorb944)、ポリ(6−モルホリノ−s−トリアジン−2,4−ジイル){(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}(商品名:Chimasorb3346)を例示する事が出来る。
金属不活性化剤は自動酸化を抑制する添加剤であり、通常は金属イオンに対するキレート能を有する化合物である。金属イオンが自動酸化におけるハイドロキシパーオキサイド化合物をラジカル的に分解して連鎖反応を加速する現象が知られているが、金属イオンとキレートを形成できる化合物を添加する事により、この反応を抑制する事が期待できる。特に、銅管被覆に使用する場合に用いられる安定剤であり、他の酸化防止剤と併用するのが一般的である。金属不活性化剤としてヒドラジン型の化合物が用いられる事が多い。具体例を挙げると、デカンジカルボン酸ジサリチロイルヒドラジドなどがある。
安定剤はそもそもポリ塩化ビニル(PVC)向けの添加剤であり、PVCから塩酸(HCl)が脱離して劣化する事を防ぐ目的で使用される。各種安定剤のうち幾つかの化合物は中和剤としての機能も有している事からポリオレフィンの添加剤としても用いられる事がある。中和剤はポリオレフィンの製造に用いられるチーグラー触媒に由来する塩素成分を中和するのに用いられる化合物である。中和剤としては、中和能力があるカルボン酸塩を用いる事が多いが、塩素イオンの捕捉能力がある無機化合物も用いる事が出来る。両者とも安定剤として用いられる化合物である。基本的に塩素原子を含まないメタロセン触媒を用いる場合には本来必要のない添加剤であるが、塩素原子は容易にコンタミする化学種であるため、安定生産の観点から保険的に用いられる場合が多い。
以下、中和剤として代表的な化合物を例示する。カルボン酸塩型の化合物では、ステアリン酸カルシウムとステアリン酸亜鉛を例示する事が出来る。無機化合物では、ハイドロタルサイト、並びに、水酸化アルミニウムと炭酸リチウムの包摂物(商品名:ミズカラック)を例示する事が出来る。
滑剤は成形性や流動性を高めるために用いる添加剤であり、成形機や押出機の中でポリマー分子間の摩擦力やポリマーと成形性内壁との間の摩擦力を低減する作用を持つ。滑剤として用いられる化合物は、パラフィンやワックスなどの炭化水素化合物、ステアリルアルコールやプロピレングリコールなどのアルコール、n−ブチルステアレートなどの高級脂肪酸エステル、オレイン酸アミドやステアリン酸アミドなどの高級脂肪酸アミド、ステアリン酸カルシウムなどの高級脂肪酸塩、ステアリン酸モノグリセリドなどの多価アルコールの部分エステル、シリコンオイルなどがある。
帯電防止剤はポリマーの電気絶縁特性を弱めるために用いる添加剤であり、静電気によるホコリ等の付着を防ぐ効果がある。帯電防止剤として用いられる化合物は界面活性剤若しくは界面活性剤類似物であり、4級アンモニウム塩、スルホン酸塩、多価アルコールの部分エステル、アルキルジエタノールアミン、アルキルジエタノールアミド、などが一般的である。帯電防止剤の具体例を挙げると、(3−ラウリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムメチルスルフェート、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、アルキルジエタノールアミン(商品名:エレクトロストリッパーEA)、ポリオキシエチレンアルキルアミン(商品名:Ethomen)、ポリオキシエチレンアルキルアミド(商品名:EthomenO/15)などがある。
防曇剤はポリマーの表面を親水性に変えて水滴が付きづらくする添加剤であり、通常は帯電防止剤と同様の界面活性剤が用いられる。
核剤は結晶核の形成を促進する事により、結晶化度の向上と結晶サイズの低下を引き起こし、物性と透明性を向上させる添加剤である。核剤は構造上の特長により、ソルビトール系、リン酸金属塩系、カルボン酸金属塩系の3つに大別される。
ソルビトール系核剤は6価のアルコールであるソルビトールとベンズアルデヒド類との1:2縮合物であるベンジリデンソルビトール骨格を有する化合物であり、アセタール構造の形成に関与しない2価の水酸基による水素結合の効果によって分子間集合体を形成し3次元ネットワーク構造を形成すると言われている。ポリプロピレンに用いた場合には、このネットワーク構造の表面からポリプロピレンの結晶が成長すると考えられており、透明性改善に優れた効果を発揮する。具体的な化合物を例示すると、1,3,2,4−ジベンジリデンソルビトール(商品名:ゲルオールD、EC−1)、1,3,2,4−ジ(p−メチルベンジリデン)ソルビトール(商品名:ゲルオールMD)、1,3,2,4−ビス(3,4−ジメチルベンジリデン)ソルビトール(商品名:ゲルオールMX、Millad3988)、1,2,3−トリデオキシ−4,6,5,7−ビス−O−{(4−n−プロピルフェニル)メチレン}ノニトール(商品名:MilladNX8000)などがある。
リン酸金属塩系核剤はポリプロピレンよりも高い融点を有するリン酸金属塩の微結晶が分散する事により結晶核の形成を促進するものであり、アルキルベンゼン骨格を有するのが一般的である。具体的な化合物を例示すると、2,2’−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)リン酸ナトリウム(商品名:アデカスタブNA−11)、2,2−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)リン酸アルミニウムハイドロオキサイドとステアリン酸リチウムの混合物(商品名:アデカスタブNA−21)がある。
カルボン酸金属塩系核剤は最も古い核剤系であり、リン酸金属塩系の核剤に較べると効果が劣る難点がある。具体的な化合物を例示すると、ジ(4−t−ブチル安息香酸)アルミニウムハイドロオキサイド(通称:AL−PTBBA)がある。
また、本発明のプロピレン系ブロック共重合体以外の樹脂であるエチレン・プロピレン系ゴム、エチレン・ブテン系ゴム、エチレン・ヘキセン系ゴム、エチレン・オクテン系ゴムなどを本発明の効果を著しく損なわない範囲内で配合することもできる。本発明に使用する以外の樹脂は、最大30質量%、好ましくは20質量%まで配合することができる。
これらの付加的成分は、重合により得られた本発明のプロピレン系ブロック共重合体中に直接添加し溶融混練して使用することも可能であるし、溶融混練中に添加してもよい。さらには溶融混練後に直接添加、あるいは、本発明の効果を著しく損なわない範囲においてマスターバッチとして添加することも可能である。また、これらの複合的な手法により添加してもよい。
一般的には、酸化防止剤、中和剤などの添加剤を配合して、混合、溶融、混練された後に製品に成形され使用される。成形時に本発明の効果を著しく損なわない範囲で他の樹脂、あるいは、その他の付加的成分(マスターバッチを含む)を添加し使用することも可能である。
上記混合、溶融、混練は、従来公知のあらゆる方法を用いることが出来るが、通常、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、Vブレンダー、タンブラーミキサー、リボンブレンダー、バンバリーミキサー、ニーダーブレンダー、一軸又は二軸の混練押出機にて実施することができる。これらの中でも一軸又は二軸の混練押出機により混合あるいは溶融混練を行うことが好ましい。
4.本発明の用途及び成形法
本発明のプロピレン系ブロック共重合体は、柔軟性と透明性に優れ、製品が耐熱性を有しながら低温での成形加工が可能であり、べたつきや(B)成分のブリードアウトが抑制されるという特徴をもつため、フィルム、シート、積層体、各種容器、各種成形品、各種被覆材などに好適に使用される。
特に、フィルムやシートにおいてはブリードアウトが抑制され、べたつき感が顕著に低減されることでブロッキングが発生しにくく、外観がよいため好適である。
また、各種容器として用いられる場合には、ブリードアウトによる内容物汚染が非常に少なく、食品や医療及び産業用の各分野に好適である。
成形品としても、ブリードアウトによる経時の外観悪化がなく、好適に用いることができる。
これらの各種製品の成形方法としては、公知の成形法を制限なく用いることができる。
フィルムやシートの成形法の例としては、空冷インフレーション成形、水冷インフレーション成形、Tダイによる無延伸成形、一軸延伸成形、二軸延伸成形、カレンダー成形などを用いることができる。
また、フィルムやシートとして使用する場合に、積層体において、多層構成中の層としての使用も可能である。すなわち、その柔軟性を生かし中間層に使用することも可能であるし、べたつきやブリードアウトが抑制され強度に優れ低温での成形が可能である点を生かし表面層としての使用も可能である。
容器成形としては、熱圧成形、圧空成形、真空成形、真空圧空成形、ブロー成形、延伸ブロー成形、射出成形などを用いることができる。
成形品を得るためには、通常の射出成形はもちろん、インサート成形、サンドイッチ成形、ガスアシスト成形などを行うことができるし、プレス成形、スタンピングモールド、回転成形などを利用することもできる。
これらの成形体は耐熱性を有するため、熱水による殺菌や比較的高い温度での使用に好適であり、単に変形を生じないだけでなく、熱を加えた際にブリードアウトによる透明性悪化が生じないという特徴をも有する。
以下実施例と比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
<物性値の測定方法および装置>
(1)メルトフローレート(MFR)
プロピレン系ブロック共重合体と結晶性ポリプロピレン成分(A)のMFTはJIS K7210 A法 条件M に従い、以下の条件で測定した。
試験温度:230℃
公称荷重:2.16kg
ダイ形状:直径2.095mm 長さ8.00mm
プロピレン系エラストマー成分(B)のMFRについては直接測定する事ができないので、当業者に良く知られた方法である粘度則を用いて計算した。具体的な計算式を以下に示す。
MFR−B=exp[{ln(MFR−w)−W(A)×ln(MFR−A)}÷W(B)]
(変数の定義)
MFR−w;プロピレン系ブロック共重合体のMFR
MFR−A;結晶性ポリプロピレン成分(A)のMFR
MFR−B;プロピレン系エラストマー成分(B)のMFR
W(A);結晶性ポリプロピレン成分(A)の質量のプロピレン系ブロック共重合体全体の質量に対する比率(g/g)
W(B);プロピレン系エラストマー成分(B)の質量のプロピレン系ブロック共重合体全体の質量に対する比率(g/g)
(2)ポリマーBD
ASTM D1895−69に準拠してポリマーの嵩密度を測定した。
(3)パウダー粒径の測定
レッチェテクノロジー社製 粒度分布測定装置カムサイザーを使用して測定した。
(4)結晶性ポリプロピレン成分(A)とプロピレン系エラストマー成分(B)の質量比
得られたプロピレン系ブロック共重合体を用いて、以下の(5)に記載の手順でTREFの測定を行い、40℃までに(40℃を含む)溶出した量をプロピレン系エラストマー成分(B)の量とした。また、40℃より高い温度で溶出した量を結晶性ポリプロピレン成分(A)の量とした。当然ながら、全体の溶出量がプロピレン系ブロック共重合体の量に対応する。こうして得られた両成分の量から質量比を求める事は容易である。また、全体の溶出量に対する値として、W(A)、W(B)を求める事が出来る。
(5)TREF(昇温溶離分別法)の測定方法
試料を140℃でo−ジクロロベンゼン(0.5mg/mLのBHT(3,5−ジブチル−4−ヒドロキシトルエン)を含む)に溶解し溶液とする。これを140℃のTREFカラムに導入した後、8℃/分の降温速度で100℃まで冷却し、引き続き4℃/分の降温速度で−15℃まで冷却し、60分間保持する。その後、溶媒であるo−ジクロロベンゼン(0.5mg/mLのBHTを含む)を1mL/分の流速でカラムに流し、TREFカラム中で−15℃のo−ジクロロベンゼンに溶解している成分を10分間溶出させ、次に昇温速度100℃/時間にてカラムを140℃までリニアに昇温し、溶出曲線を得る。
[装置]
(TREF部)
TREFカラム:4.3mmφ × 150mmステンレスカラム
カラム充填材:100μm 表面不活性処理ガラスビーズ
加熱方式:アルミヒートブロック
冷却方式:ペルチェ素子(ペルチェ素子の冷却は水冷)
温度分布:±0.5℃
温調器:(株)チノー デジタルプログラム調節計KP1000(バルブオーブン)
加熱方式:空気浴式オーブン
測定時温度:140℃
温度分布:±1℃
バルブ:6方バルブ 4方バルブ
(試料注入部)
注入方式:ループ注入方式
注入量:ループサイズ 0.1ml
注入口加熱方式:アルミヒートブロック
測定時温度:140℃
(検出部)
検出器:波長固定型赤外検出器 FOXBORO社製 MIRAN 1A
検出波長:3.42μm
高温フローセル:LC−IR用ミクロフローセル 光路長1.5mm 窓形状2φ×4mm長丸 合成サファイア窓板
測定時温度:140℃
(ポンプ部)
送液ポンプ:センシュウ科学社製 SSC−3461ポンプ
[測定条件]
溶媒:o−オルトジクロロベンゼン(0.5mg/mLのBHTを含む)
試料濃度:5mg/mL
試料注入量:0.1mL
溶媒流速 :1mL/分
(6)各成分のエチレン含量とブテン含量
結晶性ポリプロピレン成分(A)に含まれるエチレンの含量は、第一工程の終了後に採取したサンプルを用いてNMRにより決定した。プロピレン系ブロック共重合体に含まれるエチレンと1−ブテンの含量は、第二工程の終了後に得られたサンプルを用いてNMRにより決定した。プロピレン系エラストマー成分(B)に含まれるエチレンと1−ブテンの含量は(4)で求めた各成分の量を用いて、以下の計算式により計算した。
(計算式)
[E]B={[E]w−[E]A×W(A)}÷W(B)
[B]B={[B]w−[B]A×W(A)}÷W(B)
(変数の定義)
[E]w;プロピレン系ブロック共重合体のエチレン含量
[E]A;結晶性ポリプロピレン成分(A)のエチレン含量
[E]B;プロピレン系エラストマー成分(B)のエチレン含量
[B]w;プロピレン系ブロック共重合体の1−ブテン含量
[B]A;プロピレン系エラストマー成分(A)の1−ブテン含量
[B]B;プロピレン系エラストマー成分(B)の1−ブテン含量
W(A)とW(B)の定義は(1)に記載の通りである。
なお、NMRによるエチレン、1−ブテンの含量の決定方法は以下の通りである。
(7)NMRによるエチレン、1−ブテンの含量の決定方法
各コモノマー含量は13C−NMRスペクトルから求めた。13C−NMR測定は10mmφのクライオプローブを搭載したブルカー・バイオスピン製AVANCE−400 FT−NMRを用いて行った。
250 mgの試料を2.5mlのo−ジクロロベンゼン/臭化ベンゼン−d5混合溶媒(体積比8/2)に均一に溶解し、130℃で測定を行った。パルス角90°、パルス間隔15秒として1H完全デカップル下、512回の積算を行った。スペクトルの帰属はJ.Polym.Sci.,Polym.Phys.Ed.,21,573 (1983)やJ.Appl.Polym.Sci.,80,1880 (2001)等を参考に行った。
各コモノマー含量は以下の式に従って求めた。
ブテン含量(mol%)=I(B)/{I(B)+I(P)+I(E)}×100
プロピレン含量(mol%)=I(P)/{I(B)+I(P)+I(E)}×100
エチレン含量(mol%)=I(E)/{I(B)+I(P)+I(E)}×100
ここで、I(B)は11ppm付近に生じるブテンユニットのメチル基に由来する信号の積分強度であり、I(P)は19〜22ppm付近に生じるプロピレンユニットのメチル基に由来する信号の積分強度と17〜18ppm付近に生じる2,1−挿入したプロピレンユニットのメチル基に由来する信号の積分強度の和であり、I(E)は10ppm〜48ppmの間に現れる共重合体に由来する全ての信号強度の総和からI(B)の4倍とI(P)の3倍を各々減算した後2で割った数値である。
当業者に良く知られている事であるが、メタロセン触媒を用いたオレフィン重合において異種結合が観測される場合がある。従って、プロピレンや1−ブテンを含む共重合の場合、1,3−挿入したプロピレンユニットや1,4−挿入したブテンユニットが存在する可能性がある。これらのユニットはいずれもメチレン鎖が複数連続した構造であるので、本発明においてはこれらに由来する信号もエチレンユニットに由来する信号として取り扱い、上記の式の通り各モノマー含量の計算方法を定義する。
(8)融解ピーク温度(Tm)
セイコー社製DSCを用い、試料5.0mgを採り、200℃で5分間保持した後、40℃まで10℃/分の降温速度で結晶化させ、さらに10℃/分の昇温速度で融解させたときの融解ピーク温度をTmとした(単位:℃)。
<実施例1>
1.触媒の製造
(担体粒径測定)
実施例ではイオン交換性層状珪酸塩(モンモリロナイト:水澤化学社製ベンクレイSL)を担体として用いて触媒合成を行った。触媒合成に先立って、レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置(堀場製作所社製「LA−920」)を使用して担体の平均粒径を測定した。測定ではエタノールを分散媒として使用し、形状係数を1.0として平均粒径を求めた。得られた値は50μmであった。
(珪酸塩の化学処理)
10リットルの撹拌翼の付いたガラス製セパラブルフラスコに、蒸留水3.75リットル、続いて濃硫酸(96%)2.5kgをゆっくりと添加した。50℃で、さらにモンモリロナイト(水澤化学社製ベンクレイSL)を1kg分散させ、90℃に昇温し、6.5時間その温度を維持した。50℃まで冷却後、このスラリーを減圧濾過し、ケーキを回収した。このケーキに蒸留水を7リットル加え再スラリー化後、濾過した。この洗浄操作を、洗浄液(濾液)のpHが、3.5を越えるまで実施した。回収したケーキを窒素雰囲気下110℃で終夜乾燥した。乾燥後の質量は707gであった。こうして得られた化学処理した珪酸塩を更にキルン乾燥機で乾燥し、乾燥珪酸塩を得た。
(触媒の調製)
内容積3リットルの撹拌翼のついたガラス製反応器に上記で得た乾燥珪酸塩200gを導入し、ヘプタン1160ml、さらにトリエチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.60M)840mlを加え、室温で撹拌した。1時間後、混合ヘプタンにて洗浄し、珪酸塩スラリーを2.0リットルに調製した。次に、調製した珪酸塩スラリーにトリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.71mol/L)9.6mlを添加し、25℃で1時間反応させた。並行して、〔ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル}]ジルコニウム〕のラセミ体(合成は特開平10−226712号公報実施例に従って実施した)2180mg(3mmol)と混合ヘプタン870mlに、トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.71mol/L)を33.1ml加えて、室温にて1時間反応させた混合物を得た。当該混合物を、珪酸塩スラリーに加え、1時間撹拌し、珪酸塩/メタロセン錯体スラリーを得た。
(予備重合)
続いて、窒素で十分置換を行った内容積10リットルの撹拌式オートクレーブに、n−ヘプタン2.1リットルを導入し、40℃に保持した。そこに先に調製した珪酸塩/メタロセン錯体スラリーを導入した。温度が40℃に安定したところでプロピレンを100g/時間の速度で供給し、温度を維持した。4時間後プロピレンの供給を停止し、さらに2時間維持した。予備重合終了後、残モノマーをパージし、撹拌を停止させ約10分間静置後、上澄み約3リットルをデカントした。続いてトリイソブチルアルミニウム(0.71mol/L)のヘプタン溶液9.5ml、さらに混合ヘプタンを5.6リットル添加し、40℃で30分間撹拌し、10分間静置した後に、上澄みを5.6リットル除いた。さらにこの操作を3回繰り返した。最後の上澄み液の成分分析を実施したところ有機アルミニウム成分の濃度は、1.23mmol/L、Zr濃度は8.6×10−6g/Lであり、仕込み量に対する上澄み液中の有機アルミニウム成分の存在量は0.016%であった。続いて、トリイソブチルアルミニウム(0.71mol/L)のヘプタン溶液17.0mlを添加した後に、45℃で減圧乾燥した。この操作により触媒1g当たりポリプロピレン2.2gを含む予備重合触媒(触媒−1)が得られた。
2.プロピレン系ブロック共重合体の製造
上記で得られた予備重合触媒(触媒−1)を用いて、以下の手順に従ってプロピレン系ブロック共重合体の製造を行った。
(第一工程)
撹拌および温度制御装置を有する内容積3Lのオートクレーブをプロピレンで充分置換した後に、トリイソブチルアルミニウム・n−ヘプタン溶液2.76ml(2.0mmol)を加え、水素40ml、続いて液体プロピレン750gを導入し、70℃に昇温しその温度を維持した。上記の予備重合触媒(触媒−1)をn−ヘプタンでスラリー化し、触媒として(予備重合ポリマーの質量は除く)9mgを圧入し重合を開始した。槽内温度を70℃に維持して120分重合を継続した。その後、常圧まで残モノマーをパージし、さらに精製した窒素で完全に置換した。生成したポリマーを一部サンプリングして分析したところ、MFR12.0g/10min、平均粒径1,000μmであった。
(弱酸塩(D)の添加)
第一工程にてポリマーを一部サンプリングした後、弱酸塩(D)としての炭酸水素ナトリウム(22.7mmol)とその分散媒体としてのポリプロピレン(0.5g)の混合物を前記3Lのオートクレーブに添加して充分に混合した。
(第二工程)
別途、撹拌および温度制御装置を有する内容積20Lのオートクレーブを用いて、第二工程で使用する混合ガスを調製した。調製温度は95℃、混合ガス組成は水素0.012mol%、エチレン42mol%、プロピレン42mol%、1−ブテン16mol%であった。弱酸塩(D)を添加して充分に混合した後、この混合ガスを3Lのオートクレーブに供給し第二工程の重合を開始した。重合温度は60℃、圧力1.5MPaにて210分重合を継続した。その後、エタノールを10ml導入して重合を停止した。回収したポリマーはオーブンで充分に乾燥した。活性は15.4kg/g−触媒、エチレン含量5.2質量%、ブテン含量13.2質量%、MFR19g/10分、BDは0.42g/mlであった。
また、TREF測定を行った結果、第二工程で製造したプロピレン系エラストマー成分(B)の量は40質量%であり、結晶性ポリプロピレン成分(A)とプロピレン系エラストマー成分(B)の質量比は60:40であった。既述の通りプロピレン系エラストマー成分(B)のコモノマー含量を計算した所、エチレン含量13質量%、ブテン含量33質量%であった。また、プロピレン系エラストマー成分(B)のMFRも計算した所、37.9g/10minであった。
<比較例1>
弱酸塩(D)を添加しなかった事を除けば実施例1と同様にプロピレン系ブロック共重合体の製造を行った。結果を表1に示す。プロピレン系ブロック共重合体のBDは0.33g/mlであり、実施例1と比較して流動はするがべたつきのある粒子であった。
Figure 0006520421
<実施例2>
弱酸塩(D)として炭酸水素ナトリウム(4.1mmol)を用い、弱酸塩(D)の分散媒体としてポリプロピレンに変えてヘプタン(7mL)を使用した点を除けば実施例1と同様にプロピレン系ブロック共重合体の製造を行った。結果を表1に示す。プロピレン系ブロック共重合体のBDは0.41g/mlであった。
<比較例2>
弱酸塩(D)を添加しなかった事を除けば実施例2と同様にプロピレン系ブロック共重合体の製造を行った。結果を表1に示す。プロピレン系ブロック共重合体のBDは0.33g/mlであり、実施例2と比較して流動はするがべたつきのある粒子であった。
<実施例3>
弱酸塩(D)として、炭酸水素ナトリウム(22.7mmol)の代わりに、炭酸ナトリウム(23.9mmol)を添加した事を除けば実施例1と同様にプロピレン系ブロック共重合体の製造を行った。結果を表1に示す。プロピレン系ブロック共重合体のBDは0.46g/mlであった。
<実施例4>
弱酸塩(D)として、炭酸水素ナトリウム(22.7mmol)の代わりに、炭酸ナトリウム(10.6mmol)を添加した事を除けば実施例1と同様にプロピレン系ブロック共重合体の製造を行った。結果を表1に示す。プロピレン系ブロック共重合体のBDは0.44g/mlであった。
<比較例3>
弱酸塩(D)および希釈用ポリプロピレンのいずれも添加しなかった事を除けば実施例1と同様にプロピレン系ブロック共重合体の製造を行った。結果を表1に示す。プロピレン系ブロック共重合体のBDは0.33g/mlであり、実施例1と比較して流動はするがべたつきのある粒子であった。
<比較例4>
エタノール(24mmol)を添加した事を除けば比較例3と同様にプロピレン系ブロック共重合体の製造を行ったが、成分(B)の製造工程ではモノマー消費が全く見られなかった。結果を表1に示す。プロピレン系ブロック共重合体のBDは0.40g/mlであり、分析結果から成分(A)のみの粒子であることが判った。
3.物性の測定
参考のために実施例1で得られたプロピレン系ブロック共重合体を一般的な手法でペレット化し、その際の粒子のハンドリングを確認するとともに、得られたペレットを射出成型し、基本物性を以下の方法で評価した。
(添加剤配合)
実施例1で得られたプロピレン系ブロック共重合体に以下の添加剤を配合し、ポリ袋中でよく攪拌混合した。重合体粒子は流動性に優れ、添加剤は十分に攪拌された。
・添加剤配合物
酸化防止剤:テトラキス{メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート}メタン(BASF社製Irganox1010)500ppm、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト(BASF社製Irgafos168)500ppm
中和剤:ステアリン酸カルシウム500ppm
(造粒)
以下の条件で造粒しペレット化した。重合体粒子は流動性に優れ、フィーダにより押出機に安定して供給でき、容易にペレット化することができた。
フィーダ:クマエンジニアリング社製アキュレートフィーダ(モデル100)
押出機:テクノベル社製KZW−15−45MG2軸押出機
スクリュ:口径15mm L/D=45
押出機設定温度:(ホッパー下から)40,80,160,180,180,180(ダイ℃)
スクリュ回転数:400rpm
吐出量:約1.5kg/hr(フィーダにて調整)
ダイ:口径3mm ストランドダイ 穴数2個
得られたペレットを以下の条件で射出成形し、物性評価用の試験片を得た。
(射出成形)
規格番号:JIS K−7152(ISO 294−1)準拠
参考成型機:東芝機械社製EC20P射出成型機
成型機設定温度:(ホッパー下から)80,210,210,200,200℃
金型温度:40℃
射出速度:52mm/s(スクリュの速度)
保持圧力:10MPa
保圧時間:15秒
冷却時間:60秒
金型形状:平板(厚さ4mm 幅10mm 長さ80mm × 2丁取り)
および 平板(厚さ2mm 幅40mm 長さ80mm)
得られた試験片について、下記項目の物性を評価した。
(透明性)
試験片の透明性を、以下の条件により評価した。評価の結果、HAZEは61%、全光線透過率は90%であり、透明性に優れるものであった。
規格番号:JIS K−7361−1準拠
測定機:曇り度計NDH2000(日本電色工業株式会社製)
試験片厚み:2mm
試験片の作成方法:射出成形平板
状態の調節:成形後に室温23℃、湿度50%に調節された恒温室内に24時間放置
試験片の数:3
評価項目:曇り度(HAZE)、全光線透過率
(曲げ試験)
試験片の曲げ特性を以下の条件により評価した。評価の結果、曲げ弾性率は190MPaであり、柔軟性に優れるものであった。
規格番号:JIS K−7171(ISO178)準拠
試験機:全自動曲げ試験機 ベンドグラフ(株式会社東洋精機製作所製)
試験片の採取方向:流れ方向
試験片の形状:厚み4mm 幅10mm 長さ80mm
状態の調節:室温23℃、湿度50%に調節された恒温室内に24時間以上放置
試験室:室温23℃、湿度50%に調節された恒温室
試験片の数:5
支点間距離:64.0mm
試験速度:2.0mm/分
評価項目:曲げ弾性率
(耐熱性)
得られたブロック共重合体のビカット軟化点を、以下の条件で評価した。評価の結果、ビカット軟化点温度は122℃であり、耐熱性に優れるものであった。
規格番号:JIS K7206(荷重を250gとした以外は50法に準拠)
測定機:全自動HDT測定機(東洋精機製)
試験片の形状:厚さ2mm 25mm×25mm平板を2枚重ね
試験片の作成方法:射出成形平板を上記形状に打ち抜き(成形については成形項を参照)
状態の調節:室温23℃、湿度50%に調節された恒温室内に24時間以上放置(アニール無し)
試験加重:250g
昇温速度:50℃/h
試験片の数:3
比較例1〜3で得られたプロピレン系ブロック共重合体についても、同様の評価を行った。これらの粒子はべたつき感があり取り扱いが難しかったが、何とか、造粒、成形、評価が出来た。物性については実施例1により得られた重合体粒子を用いた場合と一致した。
<実施例と比較例との対照による考察>
以上の実施例1〜4及び各比較例1〜3を対照検討することにより、本発明では、透明性に優れ、柔軟性と耐熱性のバランスが高いプロピレン系ブロック共重合体を極めて良好な流動性を有する粒子として得られることが明らかにされた。
また、本発明における弱酸塩は、従来のアルコール等を用いる公知技術と比較して、触媒活性への悪影響が小さい点も特徴である。たとえば実施例1では有機アルミニウム化合物(C)に対して10当量以上もの弱酸塩を加えているが、それでも比較例1との活性の差はほとんどなかった。一方、比較例4に見られる通り、同じモル量のエタノールを添加した場合、その後の触媒活性はほぼ失われてしまい、エタノール投入以前に製造されたポリプロピレン粒子と同じものが回収された。この点でも、本発明は従来の公知技術とは大きく異なるものである。
このように、本発明の製造方法によれば、従来よりも使用量を多くしても触媒活性が低下し難い重合抑制剤を用いることから、結晶性が低くても流動性が高く取り扱いの容易な重合体粒子を、より安定的に製造できることが明らかにされた。
プロピレン系ブロック共重合体の安定な、高度な製造方法を達成することにより、重合技術分野にかかわる重合技術の進歩およびポリマー生産の産業分野の発展に著しく寄与するとともに、性能の良いプロピレン系ブロック共重合体の利用分野の拡大および促進、成形品、成形加工分野の発展に寄与するものといえる。

Claims (6)

  1. メタロセン触媒及び有機アルミニウム化合物(C)の存在下で、下記特性(i)を満たす結晶性ポリプロピレン成分(A)を製造する第一工程と、
    前記メタロセン触媒、前記有機アルミニウム化合物(C)及び前記結晶性ポリプロピレン成分(A)の存在下で、下記特性(ii)を満たすプロピレン系エラストマー成分(B)を製造する第二工程とを含むプロピレン系ブロック共重合体の製造方法であって、
    前記第二工程に炭酸塩である弱酸塩(D)を添加することを特徴とする前記方法。
    (i)プロピレン単独重合体、または、エチレン及び炭素数が4〜8のα−オレフィンからなる群から選ばれる少なくとも一種類のコモノマーとプロピレンとのランダム共重合体であって、エチレン及びα−オレフィンの含量の総和が10質量%以下である。
    (ii)エチレン及び炭素数が4〜8のα−オレフィンからなる群から選ばれる少なくとも一種類のコモノマーとプロピレンとのランダム共重合体であって、エチレン及びα−オレフィンの含量の総和が10質量%超過である。
  2. 結晶性ポリプロピレン成分(A)とプロピレン系エラストマー成分(B)の質量比は、10:90〜90:10であることを特徴とする請求項1に記載のプロピレン系ブロック共重合体の製造方法。
  3. プロピレン系エラストマー成分(B)は、1−ブテンとプロピレンとのランダム共重合体、または、エチレンと1−ブテンとプロピレンとのランダム共重合体であることを特徴とする請求項1又は2に記載のプロピレン系ブロック共重合体の製造方法。
  4. 前記メタロセン触媒の触媒使用量に対する弱酸塩(D)の使用量の比は、0.1〜20mol/g−触媒であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のプロピレン系ブロック共重合体の製造方法。
  5. 弱酸塩(D)は、第二工程の重合温度及び重合圧力で固体であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のプロピレン系ブロック共重合体の製造方法。
  6. 第二工程を気相法で行うことを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のプロピレン系ブロック共重合体の製造方法。
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