JP2013071603A - ハイブリッド車両の制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】電動機のトルクに応じて異音低減制御を実行するハイブリッド車両において、燃料消費率の改善を図ることができる制御装置を提供する。
【解決手段】ハイブリッド車両において、動力伝達系での異音(歯打ち音)を防止するための異音低減制御の実行条件である第2モータジェネレータのトルク指令値の範囲として、実エンジン回転数Nerealから目標エンジン回転数Netargetを減算した回転数偏差ΔNeが「0」または正の値である場合には、その範囲を小さく設定し、第2モータジェネレータのトルク指令値が比較的低くなるまで異音低減制御を開始させないようにすることで燃料消費率の改善を図る。一方、上記回転数偏差が負の値である場合には、その値が小さいほど上記範囲を大きく設定し、第2モータジェネレータのトルク指令値が比較的高いタイミングで異音低減制御を開始させることで異音の発生を防止する。
【選択図】図5

Description

本発明は、走行用駆動源として内燃機関と電動機とが搭載されたハイブリッド車両の制御装置に係る。特に、本発明は、動力伝達系において発生する異音を低減または防止するための内燃機関の制御の改良に関する。
近年、環境保護の観点から、車両に搭載された内燃機関(以下、「エンジン」と呼ぶ場合もある)からの排気ガスの排出量低減や燃料消費率(燃費)の改善が望まれており、これらを満足する車両として、ハイブリッドシステムを搭載したハイブリッド車両が実用化されている。
このハイブリッド車両は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどのエンジンと、このエンジンの出力により発電された電力やバッテリ(蓄電装置)に蓄えられた電力により駆動する電動機(例えばモータジェネレータまたはモータ)とを備え、これらエンジン及び電動機のいずれか一方または双方を走行駆動力源として利用しながら走行する。
この種のハイブリッド車両に採用されるパワートレーンとして、下記の特許文献1〜特許文献3に開示されているように、エンジン、第1及び第2の電動機(モータジェネレータ)、動力分割機構を構成する遊星歯車機構を備えたものが知られている。具体的には、動力分割機構のプラネタリキャリアにエンジンのクランクシャフトが連結され、サンギヤに第1電動機(第1モータジェネレータMG1)が連結され、リングギヤにリダクション機構(例えば遊星歯車機構により構成されている)を介して第2電動機(第2モータジェネレータMG2)が連結されている。そして、このリングギヤには、減速機構やデファレンシャルギヤを介して駆動輪が動力伝達可能に連結されている。
これにより、通常走行時には、エンジンからプラネタリキャリアに入力された駆動力(トルク)が、リングギヤ(駆動輪側)及びサンギヤ(第1電動機側)に分割(トルクスプリット)される。リングギヤ側に分割されたトルクは、直達トルク(エンジンから駆動輪に向けて直接的に伝達されるトルク)として駆動輪を駆動する。一方、サンギヤ側に分割されたトルクは第1電動機に伝達され、この第1電動機が発電を行う。これにより得られた電力によって第2電動機が駆動し(トルクが発生し)、駆動輪に対するアシストトルクが得られることになる。
このように、上記動力分割機構が差動機構として機能し、その差動作用によって、エンジンからの動力の主部を駆動輪に機械的に伝達し、そのエンジンからの動力の残部を第1電動機から第2電動機への電気パスを用いて電気的に伝達することにより、電気的に変速比が変更される変速機(電気式無段変速機)としての機能が発揮されるようになっている。これにより、駆動輪に要求される駆動力を得ながらも、燃料消費率が最適化されたエンジンの運転状態(後述する最適燃費動作ライン上での運転状態)を得ることが可能となる。
また、車両の発進時や低速走行時のようにエンジン効率が低くなる領域では、エンジンを停止させて上記第2電動機のみの動力で駆動輪を駆動するようにしている。
ところで、上述したハイブリッド車両にあっては、ある運転状態において動力伝達系で異音が発生する可能性がある。例えば、エンジンからの直達トルクのみで車両が走行している場合、または、駆動輪に伝達されるトルクの大部分がエンジンからの直達トルクである場合には、上記第2電動機のトルクが略零となっている。この場合、第2電動機のロータから上記リングギヤまでの間の動力伝達経路(例えば上記リダクション機構)においてはギヤ同士のガタ(バックラッシ等)がフローティングの状態(ギヤ同士のガタが一方側(一方の回転側)に詰まっていない状態)となっている。このような状況で、エンジンの回転変動等がリダクション機構に伝達されると、このリダクション機構のギヤの歯同士が上記ガタ分だけ相対的に移動し、歯同士の衝突が繰り返されることで、所謂歯打ち音(「ガラ音」とも呼ばれる)が発生することになる。尚、この歯打ち音の発生原因としては、上述した第2電動機のトルクが略零となっていることに限らず、エンジンの負荷状態、エンジン回転数、筒内での燃焼状態など種々のものが挙げられる。
このような異音(歯打ち音)の発生を防止するために、下記の特許文献1では、第2電動機のトルク指令値が所定範囲内(±20Nmの範囲内)に達した場合には、エンジン回転数を上昇させ、リダクション機構のギヤ同士の間のガタを一方側に詰めることが行われている(以下、この制御を「異音低減制御」と呼ぶ)。この場合、エンジンの運転状態としては、燃料消費率が最適となる動作点(最適燃費動作ライン上の動作点)からずれることになり、この最適燃費動作ライン上で運転される場合に比べて燃料消費率は悪化することになる。
特開平11−93725号公報 特開2008−201351号公報 特開2010−138751号公報
上記特許文献1のように第2電動機のトルク指令値が所定範囲内(予め特定された所定範囲内)となった際に異音低減制御(エンジン動作点移行制御とも呼ばれる)を実行するようにした場合、以下の述べるような不具合がある。
上述したようなハイブリッド車両にあっては、運転状態によっては、実際のエンジン回転数(以下、「実エンジン回転数」と呼ぶ)が制御目標エンジン回転数(以下、「目標エンジン回転数」と呼ぶ)よりも低くなることがある。例えば、運転者がアクセルペダルを踏み込んだ後、直ちにアクセルペダルの踏み込みを解除した場合などが挙げられる。
このような状況で、第2電動機のトルク指令値が上記所定範囲に近付いていった場合に、実エンジン回転数が低くなっていることに起因して上記異音が発生してしまう可能性があることを考慮し、上記異音低減制御を開始する閾値を規定する上記範囲としての第2電動機のトルク指令値の範囲を大きめに設定しておく必要があった。つまり、第2電動機のトルク指令値の変化に対して早めに異音低減制御が開始されるように、上記異音低減制御を行う範囲である第2電動機のトルク指令値の範囲を大きめに設定しておく必要があった。
しかし、このように異音低減制御を行う範囲である第2電動機のトルク指令値の範囲を大きめに設定した場合、実エンジン回転数が目標エンジン回転数に略一致している状況であっても、第2電動機のトルク指令値が上記所定範囲に近付いていく際に異音低減制御が早めに開始されることになる。その結果、未だ異音が発生しない状況であるにも拘わらず異音低減制御が開始されてしまって、燃料消費率が悪化した(上記最適燃費動作ライン上で運転される場合に比べて燃料消費率が悪化した)運転状態が必要以上に長くなってしまったり、この異音低減制御の実行回数(実行頻度)が多くなってしまうことになる。このため、この異音低減制御の開始タイミングを適正化することによる燃料消費率の改善が求められていた。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、電動機のトルクに応じて異音低減制御を実行するハイブリッド車両において、燃料消費率の改善を図ることができる制御装置を提供することにある。
−発明の概要−
上記の目的を達成するために講じられた本発明の概要は、電動機のトルクが所定の異音低減制御実行範囲となった場合に異音低減制御を実行するハイブリッド車両に対し、異音が発生しやすい運転状態にある場合(例えば実回転数が目標回転数に対して低い場合)には、異音低減制御実行範囲を広く設定して電動機のトルクが比較的高い(トルクの絶対値が比較的高い)タイミングで異音低減制御を開始させ、これにより異音の発生を防止する。一方、異音が発生しにくい運転状態にある場合(例えば実回転数が目標回転数に対して高い場合)には、異音低減制御実行範囲を狭く設定して電動機のトルクが比較的低く(トルクの絶対値が比較的低く)なるまで異音低減制御を開始させないようにし、これにより燃料消費率の改善を図る。
−解決手段−
具体的に、本発明は、少なくとも3軸を有し、これら3軸のうちの一つに内燃機関の出力軸が連結され、他の二つにそれぞれ電動機が連結されて、上記内燃機関及び電動機の少なくとも一つを走行用駆動力源として走行すると共に、上記電動機のトルクが所定の異音低減制御実行範囲となった場合に、動力伝達経路における異音の発生を低減または防止する異音低減制御を実行するハイブリッド車両の制御装置を前提とする。このハイブリッド車両の制御装置に対し、上記内燃機関の実回転数が目標回転数に対して高い場合には、この実回転数が目標回転数に対して低い場合に比べて、上記異音低減制御実行範囲を小さく設定する構成としている。
内燃機関の実回転数が目標回転数に対して高い場合には、電動機のトルクが比較的低くなっても上記異音は発生しにくい運転状態にある。これに対し、内燃機関の実回転数が目標回転数に対して低い場合には、電動機のトルクが比較的高い状況でも上記異音が発生する可能性がある。このため、内燃機関の実回転数が目標回転数に対して高い場合には異音低減制御実行範囲を小さく設定して電動機のトルクが比較的低くなるまで異音低減制御を開始させないようにすることで燃料消費率の改善を図ることができる。また、内燃機関の実回転数が目標回転数に対して低い場合には異音低減制御実行範囲を大きく設定して電動機のトルクが比較的高いタイミングで異音低減制御を開始させることで異音の発生を防止することができる。
上記異音低減制御実行範囲として具体的には以下のものが挙げられる。先ず、上記内燃機関の実回転数が目標回転数に一致している場合には、この実回転数が目標回転数に対して低い場合に比べて、上記異音低減制御実行範囲を小さく設定するものである。また、上記内燃機関の実回転数が目標回転数に対して低いほど、上記異音低減制御実行範囲を大きく設定するものである。更には、上記内燃機関の実回転数が目標回転数以上である場合には、その偏差に関わらず上記異音低減制御実行範囲を一定値に維持するものである。
内燃機関の実回転数が目標回転数に対して低いほど、異音低減制御実行範囲を大きく設定するものにあっては、異音が発生しやすい運転状態にあるほど早期に(電動機のトルクが比較的高いタイミングで)異音低減制御を開始させることになり、必要以上に異音低減制御を長期化させることなしに異音の発生を防止することができる。また、内燃機関の実回転数が目標回転数以上である場合には、上記異音低減制御実行範囲を一定値に維持するものにあっては、内燃機関の過渡運転等において実回転数が低下するような状況が生じたとしても異音低減制御の開始の遅れを抑制することができ、異音の発生を防止または抑制できる。
上記異音低減制御として、具体的には、内燃機関の回転数とトルクとの関係を規定する内燃機関動作特性を切り換えることにより上記異音を低減または防止するものであって、上記電動機のトルクが所定の異音低減制御実行範囲となった場合に、内燃機関動作特性を高回転低トルク側の特性に切り換えるようになっている。
また、ハイブリッド車両の動力伝達経路の構成として具体的には、上記内燃機関の出力軸が連結されるプラネタリキャリアと、第1の電動機が連結されるサンギヤと、第2の電動機が連結されるリングギヤとを備えた遊星歯車機構により構成される動力分割機構を備えており、第2の電動機のトルク指令値が上記異音低減制御実行範囲内にある場合に異音低減制御を実行する構成としている。
本発明では、電動機のトルクが所定の異音低減制御実行範囲となった場合に異音低減制御を実行するハイブリッド車両に対し、内燃機関の実回転数が目標回転数に対して高い場合には、この実回転数が目標回転数に対して低い場合に比べて、異音低減制御実行範囲を小さく設定する構成としている。このため、内燃機関の実回転数が目標回転数に対して高い場合には電動機のトルクが比較的低くなるまで異音低減制御を開始させないようにすることで燃料消費率の改善を図ることができる。
実施形態に係るハイブリッド車両を示す概略構成図である。 ECU等の制御系の構成を示すブロック図である。 エンジンの最適燃費動作ライン及び異音防止動作ラインの一例を示す図である。 実施形態における異音低減制御実行トルクマップを示す図である。 実施形態における異音低減制御の手順を示すフローチャート図である。 図6(a)は異音低減制御実行トルク範囲が大きく設定された場合における異音低減制御の開始タイミングを説明するための図であり、図6(b)は異音低減制御実行トルク範囲が小さく設定された場合における異音低減制御の開始タイミングを説明するための図である。 変形例における異音低減制御実行トルクマップを示す図である。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本実施形態では、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)方式のハイブリッド車両に本発明を適用した場合について説明する。
図1は本実施形態に係るハイブリッド車両を示す概略構成図である。この図1に示すように、ハイブリッド車両HVは、車両走行用の駆動力を発生するエンジン(内燃機関)1、主に発電機として機能する第1モータジェネレータMG1(第1の電動機)、主に電動機として機能する第2モータジェネレータMG2(第2の電動機)、動力分割機構3、リダクション機構4、カウンタドライブギヤ51、カウンタドリブンギヤ52、ファイナルギヤ53、デファレンシャル装置54、前輪車軸(ドライブシャフト)61,61、前輪(駆動輪)6L,6R、及び、ECU(Electronic Control Unit)100などを備えており、このECU100により実行されるプログラムによって本発明のハイブリッド車両の制御装置が実現される。
なお、ECU100は、例えば、HV(ハイブリッド)ECU、エンジンECU、バッテリECUなどによって構成されており、これらのECUが互いに通信可能に接続されている。
次に、エンジン1、モータジェネレータMG1,MG2、動力分割機構3、リダクション機構4、及び、ECU100などの各部について説明する。
−エンジン−
エンジン1は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの燃料を燃焼させて動力を出力する公知の動力装置(内燃機関)であって、吸気通路11に設けられたスロットルバルブ13のスロットル開度(吸入空気量)、燃料噴射量、点火時期などの運転状態を制御できるように構成されている。また、燃焼後の排気ガスは排気通路12を経て図示しない酸化触媒による浄化が行われた後に外気に放出される。
上記エンジン1のスロットルバルブ13の制御には、例えば、エンジン回転数とドライバのアクセルペダル踏み込み量(アクセル開度)等のエンジン1の状態に応じた最適な吸入空気量(目標吸気量)が得られるようにスロットル開度を制御する電子スロットル制御が採用されている。このような電子スロットル制御では、スロットル開度センサ103を用いてスロットルバルブ13の実際のスロットル開度を検出し、その実スロットル開度が、上記目標吸気量が得られるスロットル開度(目標スロットル開度)に一致するようにスロットルバルブ13のスロットルモータ14をフィードバック制御している。
そして、エンジン1の出力は、クランクシャフト(出力軸)10及びダンパ2を介してインプットシャフト21に伝達される。ダンパ2は、例えばコイルスプリング式トランスアクスルダンパであってエンジン1のトルク変動を吸収する。
−モータジェネレータ−
第1モータジェネレータMG1は、インプットシャフト21に対して相対回転自在に支持された永久磁石からなるロータMG1Rと、3相巻線が巻回されたステータMG1Sとを備えた交流同期発電機であって、発電機として機能するとともに電動機(電動モータ)としても機能する。また、第2モータジェネレータMG2も同様に、インプットシャフト21に対して相対回転自在に支持された永久磁石からなるロータMG2Rと、3相巻線が巻回されたステータMG2Sとを備えた交流同期発電機であって、電動機(電動モータ)として機能するとともに発電機としても機能する。
図2に示すように、第1モータジェネレータMG1及び第2モータジェネレータMG2は、それぞれインバータ200を介してバッテリ(蓄電装置)300に接続されている。インバータ200はECU100によって制御され、そのインバータ200の制御により各モータジェネレータMG1,MG2の回生または力行(アシスト)が設定される。その際の回生電力はインバータ200を介してバッテリ300に充電される。また、各モータジェネレータMG1,MG2の駆動用電力はバッテリ300からインバータ200を介して供給される。
−動力分割機構−
図1に示すように、動力分割機構3は、複数の歯車要素の中心で自転する外歯歯車のサンギヤS3と、サンギヤS3に外接しながらその周辺を自転しつつ公転する外歯歯車のピニオンギヤP3と、ピニオンギヤP3と噛み合うように中空環状に形成された内歯歯車のリングギヤR3と、ピニオンギヤP3を支持するとともに、このピニオンギヤP3の公転を通じて自転するプラネタリキャリアCA3とを有する遊星歯車機構によって構成されている。プラネタリキャリアCA3はエンジン1側のインプットシャフト21に回転一体に連結されている。サンギヤS3は、第1モータジェネレータMG1のロータMG1Rに回転一体に連結されている。これにより、上記サンギヤS3、リングギヤR3、プラネタリキャリアCA3が、本発明でいう3軸を構成している。
この動力分割機構3は、エンジン1及び第2モータジェネレータMG2の少なくとも一方の駆動力を、カウンタドライブギヤ51、カウンタドリブンギヤ52、ファイナルギヤ53、デファレンシャル装置54、及び、ドライブシャフト61,61を介して左右の駆動輪6L,6Rに伝達する。
−リダクション機構−
リダクション機構4は、複数の歯車要素の中心で自転する外歯歯車のサンギヤS4と、キャリア(トランスアクスルケース)CA4に回転自在に支持され、サンギヤS4に外接しながら自転する外歯歯車のピニオンギヤP4と、ピニオンギヤP4と噛み合うように中空環状に形成された内歯歯車のリングギヤR4とを有する遊星歯車機構によって構成されている。リダクション機構4のリングギヤR4と、上記動力分割機構3のリングギヤR3と、カウンタドライブギヤ51とは互いに一体となっている。また、サンギヤS4は第2モータジェネレータMG2のロータMG2Rと回転一体に連結されている。
このリダクション機構4は、第2モータジェネレータMG2の駆動力を適宜の減速比で減速する。この減速された駆動力は、カウンタドライブギヤ51、カウンタドリブンギヤ52、ファイナルギヤ53、デファレンシャル装置54、及び、ドライブシャフト61を介して左右の駆動輪6L,6Rに伝達される。
−シフト操作装置−
ハイブリッド車両HVにおける運転席の近傍にはシフト操作装置7(図2参照)が配置されている。このシフト操作装置7にはシフトレバー71が変位可能に設けられている。そして、この例のシフト操作装置7には、前進走行用のドライブレンジ(Dレンジ)、アクセルオフ時の制動力(エンジンブレーキ)が大きな前進走行用のブレーキレンジ(Bレンジ)、後進走行用のリバースレンジ(Rレンジ)、中立のニュートラルレンジ(Nレンジ)が設定されており、ドライバが所望のレンジへシフトレバー71を変位させることが可能となっている。これらDレンジ、Bレンジ、Rレンジ、Nレンジの各位置はシフトポジションセンサ104によって検出される。シフトポジションセンサ104の出力信号はECU100に入力される。なお、駐車ポジション(Pポジション)は別配置のPスイッチによって設定することができる。
−ECU−
ECU100は、エンジン1の運転制御、エンジン1及びモータジェネレータMG1,MG2の協調制御などを含む各種制御を実行する電子制御装置であって、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びバックアップRAMなどを備えている。
ROMには、各種制御プログラムや、それら各種制御プログラムを実行する際に参照されるマップ等が記憶されている。CPUは、ROMに記憶された各種制御プログラムやマップに基づいて演算処理を実行する。また、RAMはCPUでの演算結果や各センサから入力されたデータ等を一時的に記憶するメモリであり、バックアップRAMは図示しないイグニッションスイッチのOFF時などにおいて保存すべきデータ等を記憶する不揮発性のメモリである。
ECU100には、図2に示すように、アクセルペダルの踏み込み量であるアクセル開度Accを検出するアクセル開度センサ101、クランクシャフト10が所定角度だけ回転する度にパルス信号を発信するクランクポジションセンサ102、上記スロットル開度センサ103、上記シフトポジションセンサ104、車輪の回転速度を検出する車輪速センサ105、ブレーキペダルに対する踏力(ブレーキ踏力)を検出するブレーキペダルセンサ106、エンジン冷却水温を検出する水温センサ107、吸入空気量を検出するエアフロメータ108、吸入空気温度を検出する吸気温センサ109等が接続されており、これらの各センサからの信号がECU100に入力されるようになっている。また、図示しない空燃比センサ、O2センサ、バッテリ300の充放電電流を検出する電流センサ、バッテリ温度センサなども接続されており、これらの各センサからの信号もECU100に入力されるようになっている。
また、ECU100には、エンジン1のスロットルバルブ13を開閉駆動するスロットルモータ14、燃料噴射装置(インジェクタ)15、点火装置16などが接続されている。
そして、ECU100は、上記した各種センサの出力信号に基づいて、エンジン1のスロットル開度制御(吸入空気量制御)、燃料噴射量制御、及び、点火時期制御などを含むエンジン1の各種制御を実行する。さらに、ECU100は後述する「異音低減制御」も実行する。
さらに、ECU100は、バッテリ300を管理するために、上記電流センサにて検出された充放電電流の積算値や、バッテリ温度センサにて検出されたバッテリ温度などに基づいて、バッテリ300の充電状態(SOC:State of Charge)や、バッテリ300の入力制限Win及び出力制限Woutなどを演算する。
また、ECU100には上記インバータ200が接続されている。インバータ200は、各モータジェネレータMG1,MG2それぞれの制御用のIPM(Intelligent Power Module:インテリジェントパワーモジュール)を備えている。その各IPMは、複数(例えば6個)の半導体スイッチング素子(例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)などによって構成されている。
インバータ200は、例えば、ECU100からの指令信号(例えば、第1モータジェネレータMG1のトルク指令値、第2モータジェネレータMG2のトルク指令値)に応じてバッテリ300からの直流電流を、モータジェネレータMG1,MG2を駆動する電流に変換する一方、エンジン1の動力により第1モータジェネレータMG1で発電された交流電流、及び、回生ブレーキにより第2モータジェネレータMG2で発電された交流電流を、バッテリ300に充電するための直流電流に変換する。また、インバータ200は、第1モータジェネレータMG1で発電された交流電流を走行状態に応じて、第2モータジェネレータMG2の駆動用電力として供給する。
−走行モード−
本実施形態に係るハイブリッド車両においては、発進時や低速走行時等であってエンジン1の運転効率が悪い場合には、第2モータジェネレータMG2のみにより走行(以下、「EV走行」ともいう)を行う。また、車室内に配置された走行モード選択スイッチによって運転者がEV走行モードを選択した場合にもEV走行を行う。
一方、通常走行時には、例えば上記動力分割機構3によりエンジン1の動力を2経路に分け(トルクスプリット)、一方で駆動輪6L,6Rの直接駆動(直達トルクによる駆動)を行い、他方で第1モータジェネレータMG1を駆動して発電を行う。この時、発生する電力で第2モータジェネレータMG2を駆動して駆動輪6L,6Rの駆動補助を行う(電気パスによる駆動)。このように、上記動力分割機構3が差動機構として機能し、その差動作用によりエンジン1からの動力の主部を駆動輪6L,6Rに機械的に伝達し、そのエンジン1からの動力の残部を第1モータジェネレータMG1から第2モータジェネレータMG2への電気パスを用いて電気的に伝達することにより、電気的に変速比が変更される変速機としての機能が発揮される。これにより、駆動輪6L,6R(リングギヤR3,R4)の回転数及びトルクに依存することなく、エンジン回転数及びエンジントルクを自由に操作することが可能となり、駆動輪6L,6Rに要求される駆動力を得ながらも、燃料消費率が最適化されたエンジンの運転状態を得ることが可能となる。具体的に、図3を用いて説明する。この図3は横軸をエンジン回転数とし、縦軸をエンジントルクとしたエンジン1の動作点を表す図である。図中の実線は最適燃費動作ラインであって、上述した動力分割機構3を利用した電気的変速機能によって、エンジン1を、この最適燃費動作ライン上の運転状態に制御することが可能となっている。具体的には、アクセル開度等に応じて決定される要求パワーライン(図中に二点鎖線で示すライン)と、上記最適燃費動作ラインとの交点(図中の点A)をエンジン1の目標動作点(目標運転点)としてハイブリッドシステムが制御されることになる。
また、高速走行時には、さらにバッテリ(走行用バッテリ)300からの電力を第2モータジェネレータMG2に供給し、この第2モータジェネレータMG2の出力を増大させて駆動輪6L,6Rに対して駆動力の追加(駆動力アシスト;力行)を行う。
更に、減速時には、第2モータジェネレータMG2が発電機として機能して回生発電を行い、回収した電力をバッテリ300に蓄える。尚、バッテリ300の充電量が低下し、充電が特に必要な場合には、エンジン1の出力を増加して第1モータジェネレータMG1による発電量を増やしてバッテリ300に対する充電量を増加する。もちろん、低速走行時においても必要に応じてエンジン1の駆動量を増加する制御を行う場合もある。例えば、前述のようにバッテリ300の充電が必要な場合や、エアコン等の補機を駆動する場合や、エンジン1の冷却水の温度を所定温度まで上げる場合や、車両が急加速する場合等である。
さらに、上記ハイブリッド車両においては、車両の運転状態やバッテリ300の状態によって、燃費を向上させるために、エンジン1を停止させる。そして、その後も、車両の運転状態やバッテリ300の状態を検知して、エンジン1を再始動させる。このように、ハイブリッド車両においては、イグニッションスイッチがON位置であってもエンジン1は間欠運転される。
−動作ライン−
次に、後述する「異音低減制御(エンジン動作点移行制御)」において利用されるエンジン1の動作ライン(エンジン1の回転数とトルクとの関係を規定する内燃機関動作特性)について説明する。
上述した如く、ハイブリッド車両HVでは、駆動輪6L,6R(リングギヤR3,R4)の回転数及びトルクに依存することなく、エンジン回転数及びエンジントルクを自由に操作することができる。例えば、エンジン1の動作点を上記最適燃費動作ライン(最適燃費線)に沿うように制御することが可能であり、また、エンジン1の動作点を他の任意の動作ラインに沿うように制御することも可能である(例えば特開2000−087774号公報、特開2005−105943号公報を参照)。本実施形態では、この点を利用し、異音低減制御が実行される。
この異音低減制御として具体的には、先ず、図3に示すように、上述した最適燃費動作ライン(実線)の他に、異音防止動作ライン(破線)を設定しておく。この異音防止動作ラインは、上記異音(歯打ち音)が発生する運転条件となった場合に切り換えられる動作ラインである。つまり、第2モータジェネレータMG2のトルク指令値が所定範囲内(この所定範囲の詳細については後述する)になった場合には、選択される動作ラインを最適燃費動作ラインから異音防止動作ラインに切り換え、この異音防止動作ラインと要求パワーラインとの交点(図中の点B)をエンジン1の目標動作点としてハイブリッドシステムが制御され、異音の発生が防止されることになる。尚、この異音防止動作ラインは、エンジン回転数−エンジントルク特性において、歯打ち音を低減(例えばドライバ等が気にならいレベルにまで低減)できるような動作ラインを、実験やシミュレーション計算などによって経験的に適合した動作ラインである。
また、上記最適燃費動作ラインが選択されている場合の目標動作点(点A)と、異音防止動作ラインが選択されている場合の目標動作点(点B)との関係としては、同一パワーが要求されている場合に、異音防止動作ラインが選択されている場合の方が高回転低トルク側の目標動作点に設定されるようになっている。これは、異音が発生しやすい運転状態では、エンジン回転数を高回転側に設定し、リダクション機構4のギヤ同士の間のガタを一方側に詰めることで歯打ち音の発生を抑制するためである。
これら最適燃費動作ライン及び異音防止動作ラインは、マップ化されており、そのマップは例えば上記ECU100のROM内に記憶されている。
−異音低減制御実行条件−
次に、本実施形態の特徴である異音低減制御の実行条件について具体的に説明する。この異音低減制御の実行条件は、第2モータジェネレータMG2のトルク指令値が所定範囲内(以下、「異音低減制御実行トルク範囲」と呼ぶ)になった場合に成立する。この異音低減制御実行トルク範囲(本発明でいう異音低減制御実行範囲)は、異音低減制御を実行する条件となる第2モータジェネレータMG2のトルク指令値の範囲を規定するものであって、後述する異音低減制御実行トルク閾値Tmg2resによって規定される。具体的には、この異音低減制御実行トルク閾値Tmg2resの正の値と負の値との間の範囲が上記異音低減制御実行トルク範囲として規定される。例えば、異音低減制御実行トルク閾値Tmg2resが10Nmとして求められた場合には、異音低減制御実行トルク範囲としては−10Nm〜+10Nmの範囲として規制されることになる。そして、この異音低減制御実行トルク閾値Tmg2resは、実エンジン回転数Nerealと目標エンジン回転数Netargetとの偏差に応じて変更されるようになっている。つまり、この偏差の変化に伴って異音低減制御実行トルク範囲が変更されることになる。
具体的には、実エンジン回転数Nerealから目標エンジン回転数Netargetを減算した値である回転数偏差ΔNe(=Nereal−Netarget)が正の値である場合には負の値である場合に比べて上記異音低減制御実行トルク閾値Tmg2resとしては小さな値として求められるようになっている。尚、上記実エンジン回転数Nerealは、上記クランクポジションセンサ102の出力信号に基づいて算出される。また、上記第1モータジェネレータMG1のロータMG1Rの回転数(図示しない回転数センサにより検出)と動力分割機構3のギヤ比から実エンジン回転数Nerealを求めるようにしてもよい。また、目標エンジン回転数Netargetは、上述した如く仮に最適燃費動作ライン上での運転状態にある場合には、アクセル開度等に応じて決定される要求パワーラインと、上記最適燃費動作ラインとの交点でのエンジン回転数である。
図4は、上記回転数偏差ΔNeに応じて上記異音低減制御実行トルク閾値Tmg2resを抽出するための異音低減制御実行トルクマップである。
この図4に示すように、上記回転数偏差ΔNeが「0」である場合や正の値である場合、つまり、実エンジン回転数Nerealが目標エンジン回転数Netargetに一致している場合や、実エンジン回転数Nerealが目標エンジン回転数Netargetよりも高い場合には、異音低減制御実行トルク閾値Tmg2resとしては比較的低い値の一定値として求められる。言い換えると、実エンジン回転数Nerealにアンダーシュート等が生じていない運転状態にある場合には、異音低減制御実行トルク閾値Tmg2resとしては比較的低い値が求められる。具体的には、図中のIの値(例えば10Nm)が求められる。上述した如く異音低減制御実行トルク範囲は、この異音低減制御実行トルク閾値Tmg2resの正の値と負の値との間の範囲として規定されるため、この場合、異音低減制御実行トルク範囲としては−10Nm〜+10Nmの範囲として規定されることになる。この値はこれに限定されるものではなく、適宜設定される。
一方、上記回転数偏差ΔNeが負の値である場合、つまり、実エンジン回転数Nerealが目標エンジン回転数Netargetよりも低い場合には、異音低減制御実行トルク閾値Tmg2resとしては、この回転数偏差ΔNeが小さいほど(実エンジン回転数Nerealと目標エンジン回転数Netargetとの乖離が大きいほど)高い値として求められる。言い換えると、実エンジン回転数Nerealにアンダーシュート等が生じている場合には、そのアンダーシュート量が大きいほど異音低減制御実行トルク閾値Tmg2resとしては高い値が求められる。具体的には、回転数偏差ΔNeに応じて図中のIの値(例えば10Nm)から図中のIIの値(例えば30Nm)の範囲が求められる。これにより、−10Nm〜+10Nmの範囲から−30Nm〜+30Nmの範囲の間で回転数偏差ΔNeに応じて異音低減制御実行トルク範囲が変更されることになる。これらの値もこれに限定されるものではなく、適宜設定される。
尚、図4における破線は、従来技術において設定されていた異音低減制御実行トルク閾値であって、実エンジン回転数Nerealと目標エンジン回転数Netargetとの偏差(上記回転数偏差ΔNe)に関わらず、例えば上記IIの値に固定されていた。
−異音低減制御−
次に、本実施形態の特徴とする動作である異音低減制御について具体的に説明する。本実施形態における異音低減制御では、第2モータジェネレータMG2のトルク指令値が変更される場合(例えば第2モータジェネレータMG2のトルク指令値が小さくなる場合:本明細書では、第2モータジェネレータMG2のトルク指令値の絶対値が小さくなる場合を「トルク指令値が小さくなる」とし、トルク指令値の絶対値が大きくなる場合を「トルク指令値が大きくなる」と表現することとする)における異音低減制御の開始タイミングが、上述した異音低減制御実行トルク範囲によって決定される。そして、この異音低減制御実行トルク範囲は、実エンジン回転数Nerealから目標エンジン回転数Netargetを減算した値である回転数偏差ΔNeに応じて上記異音低減制御実行トルクマップから抽出される異音低減制御実行トルク閾値Tmg2resにより規定される。そして、回転数偏差ΔNeが「0」または正の値である場合には、異音低減制御実行トルク閾値Tmg2resとしては比較的小さな値となり上記異音低減制御実行トルク範囲も小さな範囲(狭い範囲)に設定され、これによって異音低減制御の実行開始タイミングが遅延されることになる(第2モータジェネレータMG2のトルク指令値が低い値(異音低減制御実行トルク範囲)となるまで異音低減制御を実行しないことになる)。一方、回転数偏差ΔNeが負の値である場合には、異音低減制御実行トルク閾値Tmg2resとしては比較的大きな値となり上記異音低減制御実行トルク範囲も大きな範囲(広い範囲)に設定され、これによって異音低減制御の実行開始タイミングが早期に訪れることになる(第2モータジェネレータMG2のトルク指令値が比較的高い値でも異音低減制御を実行することになる)。この場合、上述した如く回転数偏差ΔNeが小さいほど異音低減制御実行トルク範囲は大きな値に設定されるため、この回転数偏差ΔNeが小さいほど異音低減制御の実行開始タイミングとしては早期に訪れるようになっている。
次に、本実施形態における異音低減制御の具体的な動作手順について図5のフローチャートに沿って説明する。このフローチャートは、異音低減制御の非実行状態から実行状態に移る際の動作手順を示しており、例えば、エンジン1の始動後、数msec毎、または、クランクシャフト10が所定角度だけ回転する毎に実行される。
先ず、ステップST1において、実エンジン回転数Nereal及び目標エンジン回転数Netargetを算出する。上述した如く、実エンジン回転数Nerealは、上記クランクポジションセンサ102の出力信号に基づいて算出される。また、目標エンジン回転数Netargetは、上述した如く仮に最適燃費動作ライン上での運転状態にある場合には、アクセル開度等に応じて決定される要求パワーラインと、上記最適燃費動作ラインとの交点(図3における点A)でのエンジン回転数として求められる。
その後、ステップST2に移り、実エンジン回転数Nerealから目標エンジン回転数Netargetを減算することで回転数偏差ΔNeを算出する。
ステップST3では、この算出した回転数偏差ΔNeを上記異音低減制御実行トルクマップ(図4)に当て嵌めて、異音低減制御実行トルク閾値Tmg2resを抽出する。
その後、ステップST4に移り、現在の第2モータジェネレータMG2のトルク指令値が、上記抽出された異音低減制御実行トルク閾値Tmg2resにより規定される異音低減制御実行トルク範囲内にあるか否かを判定する。現在の第2モータジェネレータMG2のトルク指令値が異音低減制御実行トルク範囲内になく、ステップST4でNO判定された場合には、異音低減制御を実行することなく、そのままリターンされる。
一方、現在の第2モータジェネレータMG2のトルク指令値が異音低減制御実行トルク範囲内にあり、ステップST4でYES判定された場合には、ステップST5に移って異音低減制御を実行する。つまり、エンジン1の動作ラインを異音防止動作ラインに切り換え、この異音防止動作ラインと要求パワーラインとの交点(図3における点B)をエンジン1の目標動作点としてハイブリッドシステムが制御されることになる。これにより、エンジン回転数が上昇し、リダクション機構4のギヤ同士の間のガタが一方側に詰まることで歯打ち音の発生が抑制されることになる。
以上の動作が繰り返され、異音低減制御実行トルク範囲に応じたタイミングで異音低減制御が実行されることになる。
図6(a)は異音低減制御実行トルク範囲が大きく設定された場合(図中における範囲αを参照)における異音低減制御の開始タイミングを説明するための図であり、図6(b)は異音低減制御実行トルク範囲が小さく設定された場合(図中における範囲βを参照)における異音低減制御の開始タイミングを説明するための図である。
図6(a)では、上記回転数偏差ΔNeが小さいことに起因して異音低減制御実行トルク範囲が比較的大きな範囲として設定されている。このため、第2モータジェネレータMG2のトルク指令値が比較的高い状況から異音低減制御が開始されることになり、実エンジン回転数Nerealが低い(目標エンジン回転数Netargetよりも低い)ことに起因して異音が発生するといったことが防止されることになる。尚、この図6(a)にあっては、タイミングt1において、第2モータジェネレータMG2のトルク指令値が異音低減制御実行トルク範囲に達しており、この時点から異音低減制御が開始されることになる。
一方、図6(b)では、上記回転数偏差ΔNeが大きいことに起因して異音低減制御実行トルク範囲が比較的小さな範囲として設定されている。このため、第2モータジェネレータMG2のトルク指令値が比較的低くなるまで異音低減制御が開始されないことになり、最適燃費動作ライン上での運転状態が長く継続されることで燃料消費率の改善を図ることができる。尚、この図6(b)にあっては、タイミングt2において、第2モータジェネレータMG2のトルク指令値が異音低減制御実行トルク範囲に達しており、この時点から異音低減制御が開始されることになる。
以上説明したように本実施形態では、実エンジン回転数Nerealと目標エンジン回転数Netargetとの偏差(回転数偏差ΔNe)から求められる異音低減制御実行トルク範囲に応じて異音低減制御の実行タイミングが変更されるようになっている。つまり、実エンジン回転数Nerealが目標エンジン回転数Netargetに対して低く、異音が発生しやすい状況である場合には、早期に(第2モータジェネレータMG2のトルク指令値が比較的高いタイミングで)異音低減制御を開始させ、これによって異音の発生を確実に防止することができる。一方、実エンジン回転数Nerealが目標エンジン回転数Netargetに一致していたり、この目標エンジン回転数Netargetよりも高い場合であって異音が発生しにくい状況である場合には、異音低減制御を遅延させ(第2モータジェネレータMG2のトルク指令値が比較的低くなるまで異音低減制御を開始せず)、最適燃費動作ライン上での運転状態が長く継続されるようにすることで燃料消費率の改善を図ることができる。
(変形例)
次に、変形例について説明する。本変形例は、異音低減制御実行トルクマップの変形例であって、その他の構成及び動作は上述した実施形態と同様である。従って、ここでは異音低減制御実行トルクマップについて主に説明する。
図7は、本変形例における異音低減制御実行トルクマップである。この図7に示すように、本変形例における異音低減制御実行トルクマップは、上記回転数偏差ΔNeが「0」である場合や正の値である場合、つまり、実エンジン回転数Nerealが目標エンジン回転数Netargetに一致している場合や、実エンジン回転数Nerealが目標エンジン回転数Netargetよりも高い場合には、異音低減制御実行トルク閾値Tmg2resとしては比較的低い値の一定値が求められる。言い換えると、実エンジン回転数Nerealにアンダーシュート等が生じていない運転状態にある場合には、異音低減制御実行トルク閾値Tmg2resとしては比較的低い値が求められる。具体的には、図中のIの値(例えば10Nm)が求められる。上述した如く異音低減制御実行トルク範囲は、この異音低減制御実行トルク閾値Tmg2resの正の値と負の値との間の範囲として規定されるため、この場合、異音低減制御実行トルク範囲としては−10Nm〜+10Nmの範囲として設定されることになる。この値はこれに限定されるものではなく、適宜設定される。
一方、上記回転数偏差ΔNeが負の値である場合、つまり、実エンジン回転数Nerealが目標エンジン回転数Netargetよりも低い場合には、異音低減制御実行トルク閾値Tmg2resとしては比較的高い値の一定値が求められる。言い換えると、実エンジン回転数Nerealにアンダーシュート等が生じている運転状態にある場合には、異音低減制御実行トルク閾値Tmg2resとしては比較的高い値が求められる。具体的には、図中のIIの値(例えば30Nm)が求められる。上述した如く異音低減制御実行トルク範囲は、この異音低減制御実行トルク閾値Tmg2resの正の値と負の値との間の範囲として規定されるため、この場合、異音低減制御実行トルク範囲としては−30Nm〜+30Nmの範囲として設定されることになる。この値もこれに限定されるものではなく、適宜設定される。
尚、図7における破線は、従来技術において設定されていた異音低減制御実行トルク閾値であって、実エンジン回転数Nerealと目標エンジン回転数Netargetとの偏差(上記回転数偏差ΔNe)に関わらず、例えば上記IIの値に固定されていた。
このように、本変形例における異音低減制御実行トルクマップにあっては、上記回転数偏差ΔNeに応じて、異音低減制御実行トルク閾値Tmg2resを2段階に切り換え、それに伴って異音低減制御実行トルク範囲も2段階に切り換えるようにしている。
本変形例においても、実エンジン回転数Nerealが目標エンジン回転数Netargetに対して低く、異音が発生しやすい状況である場合には、早期に(第2モータジェネレータMG2のトルク指令値が比較的高いタイミングで)異音低減制御を開始させ、これによって異音の発生を確実に防止することができる。一方、実エンジン回転数Nerealが目標エンジン回転数Netargetに一致していたり、この目標エンジン回転数Netargetよりも高い場合であって異音が発生しにくい状況である場合には、異音低減制御を遅延させ(第2モータジェネレータMG2のトルク指令値が比較的低くなるまで異音低減制御を開始せず)、最適燃費動作ライン上での運転状態が長く継続されるようにすることで燃料消費率の改善を図ることができる。
−他の実施形態−
以上説明した実施形態及び変形例では、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)方式のハイブリッド車両の制御に本発明を適用した例を示したが、本発明はこれに限られることなく、FR(フロントエンジン・リアドライブ)方式のハイブリッド車両や、4輪駆動方式のハイブリッド車両の制御にも適用できる。
また、上記実施形態及び変形例では、第1モータジェネレータMG1及び第2モータジェネレータMG2の2つの電動機が搭載されたハイブリッド車両の制御に本発明を適用した例を示したが、3つ以上の電動機が搭載されたハイブリッド車両の制御にも適用可能である。
また、上記実施形態及び変形例における異音低減制御実行トルクマップでは、異音低減制御実行トルク範囲の最大値を、従来技術において設定されていた異音低減制御実行トルク範囲に一致させるようにしていた。本発明はこれに限らず、異音低減制御実行トルク範囲の最大値を、従来技術において設定されていた異音低減制御実行トルク範囲よりも大きく設定するようにしてもよい。
本発明は、内燃機関と電動機とが搭載されたハイブリッド車両において、動力伝達系で発生する異音を低減または防止するための内燃機関の制御に適用可能である。
1 エンジン(内燃機関)
10 クランクシャフト(内燃機関の出力軸)
3 動力分割機構
4 リダクション機構(動力伝達経路)
102 クランクポジションセンサ
HV ハイブリッド車両
S3 サンギヤ
R3 リングギヤ
CA3 プラネタリキャリア
MG1 第1モータジェネレータ(第1の電動機)
MG2 第2モータジェネレータ(第2の電動機)

Claims (6)

  1. 少なくとも3軸を有し、これら3軸のうちの一つに内燃機関の出力軸が連結され、他の二つにそれぞれ電動機が連結されて、上記内燃機関及び電動機の少なくとも一つを走行用駆動力源として走行すると共に、上記電動機のトルクが所定の異音低減制御実行範囲となった場合に、動力伝達経路における異音の発生を低減または防止する異音低減制御を実行するハイブリッド車両の制御装置において、
    上記内燃機関の実回転数が目標回転数に対して高い場合には、この実回転数が目標回転数に対して低い場合に比べて、上記異音低減制御実行範囲を小さく設定する構成とされていることを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
  2. 請求項1記載のハイブリッド車両の制御装置において、
    上記内燃機関の実回転数が目標回転数に一致している場合には、この実回転数が目標回転数に対して低い場合に比べて、上記異音低減制御実行範囲を小さく設定する構成とされていることを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
  3. 請求項1または2記載のハイブリッド車両の制御装置において、
    上記内燃機関の実回転数が目標回転数に対して低いほど、上記異音低減制御実行範囲を大きく設定する構成とされていることを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
  4. 請求項1、2または3記載のハイブリッド車両の制御装置において、
    上記内燃機関の実回転数が目標回転数以上である場合には、その偏差に関わらず上記異音低減制御実行範囲を一定値に維持する構成とされていることを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
  5. 請求項1〜4のうち何れか一つに記載のハイブリッド車両の制御装置において、
    上記異音低減制御は、内燃機関の回転数とトルクとの関係を規定する内燃機関動作特性を切り換えることにより上記異音を低減または防止するものであって、上記電動機のトルクが所定の異音低減制御実行範囲となった場合に、内燃機関動作特性を高回転低トルク側の特性に切り換えるようになっていることを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
  6. 請求項1〜5のうち何れか一つに記載のハイブリッド車両の制御装置において、
    上記内燃機関の出力軸が連結されるプラネタリキャリアと、第1の電動機が連結されるサンギヤと、第2の電動機が連結されるリングギヤとを備えた遊星歯車機構により構成される動力分割機構を備えており、第2の電動機のトルク指令値が上記異音低減制御実行範囲内にある場合に異音低減制御を実行する構成とされていることを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
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