JP2013067709A - ヒアルロン酸修飾物 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、水に溶解せず、膨潤するヒアルロン酸修飾物を提供することを目的とするものである。
【解決手段】ヒアルロン酸ないしヒアルロン酸塩を有機溶媒に溶解するように処理したのち、特定の割合でポリ−α−ヒドロキシ酸をグラフト化する。
【選択図】なし

Description

本発明は、特に医療用に適した、水に溶解せずに膨潤するヒアルロン酸修飾物に関する。
ヒアルロン酸は、生体の疎水性結合組織のグリコサミノグリカン(ムコ多糖)の1つとして知られている。ヒアルロン酸は、高含水性であり、また潤滑性に優れることから、外科手術の際の癒着防止材料、神経再生用基材、人工皮膚、創傷被覆材等の医療用素材としての利用が期待されている。しかしながら、ヒアルロン酸は、水溶性であるために、一定の形態を保つことが困難であり、よって医療用素材として適用することが困難であった。また、生体材料として用いるには、分解吸収速度が速すぎるという問題も有していた。そのため、ヒアルロン酸に修飾を施し、その性質を改良する試みが行われてきた。
従来検討されてきた医療用ヒアルロン酸修飾物は、薬物担体として用いられるものが多く、水との接触により膨潤する医療用ヒアルロン酸修飾物に関する検討は不十分であった(特許文献1)。また、通常得られるヒアルロン酸修飾物は非常に脆弱であり、たとえ水に不溶なヒアルロン酸修飾物が得られたとしても、その操作性には問題があった。
国際公開2005−023906号
そこで本発明の目的は、水に不溶で、かつ水に膨潤するヒアルロン酸修飾物を提供することである。さらに、本発明は、脆性が改善され、柔軟性を付与したヒアルロン酸修飾物を提供することも目的とするものである。
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討したところ、ヒアルロン酸ないしヒアルロン酸塩に、特定の割合でポリ−α−ヒドロキシ酸をグラフト化することにより、水に溶解せずに膨潤するヒアルロン酸修飾物が得られることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて、さらに改良を重ねることにより完成したものである。
即ち、本発明は、下記に掲げる発明を提供するものである:
項1.ヒアルロン酸またはその塩に、モノマー単位の重合度が15〜40のポリ−α−ヒドロキシ酸を、グラフト結合により側鎖として有するヒアルロン酸修飾物。
項2.ポリ−α−ヒドロキシ酸の重量分率が60〜90%である、項1に記載のヒアルロン酸修飾物。
項3.ヒアルロン酸またはその塩が、重量平均分子量が3万〜15万である、項1または2に記載のヒアルロン酸修飾物。
項4.ヒアルロン酸またはその塩を、有機溶媒に溶解するように処理した後、モノマー単位の重合度が15〜40のポリ−α−ヒドロキシ酸をグラフト化することを特徴とするヒアルロン酸修飾物の製造方法。
項5.グラフト化反応を多段階で行う、項4に記載の製造方法。
項6.項1〜3のいずれか1項に記載のヒアルロン酸修飾物から得られるフィルム。
項7.キャスト法により、項6記載のフィルムを製造する方法。
本発明のヒアルロン酸修飾物は、水に溶解せず、膨潤することから、医療用フィルム、特に癒着防止材料、止血材料、創傷被覆材料、神経再生材料、人工血管、人工硬膜などに適している。
本願発明のヒアルロン酸修飾物により得られたフィルムの膨潤度を示した図である。 本願発明のヒアルロン酸修飾物により得られたフィルムの重量減少率を示した図である。 PLLA22のH−NMRスペクトルである。 PLLA42のH−NMRスペクトルである。 PCL28のH−NMRスペクトルである。 P(CL−LA)のH−NMRスペクトルである。 HA/TBAのH−NMRスペクトルである。 HA−g−PLLA22のH−NMRスペクトルである。 HA−g−PCL28のH−NMRスペクトルである。 HA−g−P(CL−LA)のH−NMRスペクトルである。
以下に、本発明を詳細に説明する。
ヒアルロン酸修飾物
本発明のヒアルロン酸修飾物は、ヒアルロン酸またはその塩に、モノマー単位の重合度が15〜40のポリ−α−ヒドロキシ酸を、グラフト結合により側鎖として有することを特徴とするものである。
本発明におけるヒアルロン酸またはその塩としては、ヒアルロン酸またはそのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、希土類金属塩、有機塩基化合物塩等を挙げることができる。
ヒアルロン酸のアルカリ金属塩としては、例えば、ヒアルロン酸ナトリウム、ヒアルロン酸カリウム、ヒアルロン酸リチウムなどが挙げられる。特に好ましくは、ヒアルロン酸ナトリウムである。
ヒアルロン酸またはその塩の分子量は、特に限定されるものではないが、重量平均分子量3万〜30万程度である。重量平均分子量が3万〜30万程度であると、生体内に埋入した際の、生体吸収期間の点から好ましい。より好ましくは、重量平均分子量5万〜15万程度である。
ヒアルロン酸またはその塩は、従来公知の生物由来のものを抽出する方法や、生物発酵法等の各種公知の方法を用いて製造することができる。あるいは、市販のもの(例えば、Streptococcus zooepidemicus H9390 (Sigma社製)等)を用いることもできる。
本発明におけるポリ−α−ヒドロキシ酸としては、ポリ乳酸(PLLA、PDLLA、PDLA)、ポリグリコール酸、ポリ−ε−カプロラクトンおよびこれらの共重合体(乳酸−εカプロラクトン共重合体、乳酸−グリコール酸共重合体、グリコール酸−ε−カプロラクトン共重合体など)などを挙げることができる。特に好ましくは、ポリ乳酸である。
ポリ−α−ヒドロキシ酸は、従来公知の方法により得ることができる。例えば、開始剤および触媒の存在下、ラクチドやグリコリド、ε−カプロラクトンなどのラクトン類の重合を行うことにより、片末端が全て開始剤由来であり、もう一方の末端が全て水酸基であるポリ−α−ヒドロキシ酸を得ることができる。
重合様式としてはバルク重合、溶液重合など従来公知の様式を利用できる。
バルク重合の場合、開始剤および触媒の存在下、120℃〜150℃で、12時間〜168時間程度反応させる。
開始剤としては、1価のアルコールで沸点が重合温度より高いものを用いることができる。例えば、1−ヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、1−ノナノール、1−デカノール、1−ドデカノール等が挙げられる。好ましくは、1−ドデカノールである。使用する開始剤の量は、環状モノマーのモル数をM、開始剤のモル数をIとした場合のモル比M/Iが、15から40程度になることが好ましい。
また、触媒としては、例えば、スズ、亜鉛、ニッケル、アルミニウム、鉄、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンチモン、ビスマスや遷移金属の有機誘導体もしくはその塩等が挙げられる。好ましくは、2−エチルヘキサンスズである。当該触媒は、モノマー重量に対し、50〜200ppm程度用いられる。
溶液重合の場合、溶媒中、開始剤および触媒の存在下、溶媒の沸点以下(例えばトルエンの場合は80℃など)で、12時間〜168時間程度反応させる。
溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド等が挙げられる。好ましくは、トルエンである。
開始剤、触媒の種類および添加量については、バルク重合と同様である。
本発明において用いられるポリ−α−ヒドロキシ酸の重合度は、モノマー単位で15〜40程度である。15〜40程度であると、生体内に埋入した際の、生体内における分解吸収期間の点で好ましい。より好ましくは、重合度18〜30程度である。前記重合度は1H−NMRにより、末端基定量法で算出することができる。
本発明のヒアルロン酸修飾物における、ポリ−α−ヒドロキシ酸の重量分率は、60〜90程度、ヒアルロン酸またはその塩の重量分率が10〜40程度であると好ましい。ポリ−α−ヒドロキシ酸の重量分率が60〜90程度であると、加水分解性に優れる。より好ましくは、ポリ−α−ヒドロキシ酸の重量分率70〜85程度である。ヒアルロン酸修飾物におけるポリ−α−ヒドロキシ酸の割合は、1H−NMRにより定量することができる。
本発明のヒアルロン酸修飾物においては、ポリ−α−ヒドロキシ酸を、ヒアルロン酸分子鎖1本あたり、8〜1580本程度導入することが好ましい。導入本数8〜1580程度であると、水に接触した際、すぐに溶解することなく膨潤し、その膨潤性にも優れる。より好ましくは、導入本数25〜500程度である。この導入本数は、1H−NMRにより求められる、ヒアルロン酸に由来するプロトンと重量平均分子量、およびポリ−α−ヒドロキシ酸に由来するプロトンと数平均分子量とを用いて計算することができる。
ヒアルロン酸修飾物の製造方法
本発明のヒアルロン酸修飾物は、ヒアルロン酸またはその塩に、ポリ−α−ヒドロキシ酸をグラフト化することにより得ることができる。具体的には、ヒアルロン酸またはその塩を、有機溶媒に溶解するように処理した後、末端水酸基を活性化させたポリ−α−ヒドロキシ酸をカップリング反応させることにより得られる。もしくは、ヒアルロン酸またはその塩を有機溶媒に溶解するように処理した後、ヒアルロン酸の水酸基を重合開始点としてラクトン類のグラフト重合を行うことにより得られる。どちらの場合においても、反応性を高めるためにヒアルロン酸またはヒアルロン酸塩の水酸基、あるいはカルボキシル基に、水酸基やカルボキシル基を有する、メチレン鎖やポリエチレングリコール鎖などのスペーサーを導入しておいても良い。
ヒアルロン酸またはその塩の有機溶媒に溶解するための処理として、特に限定はないが、例えば、イオン交換により陽イオンを交換し、有機溶媒に溶解可能とする方法などが挙げられる。好ましくは、イオン交換により陽イオンを交換し、有機溶媒に溶解可能とする方法である。
具体的には、ヒアルロン酸塩、例えばヒアルロン酸ナトリウムに、陽イオン交換樹脂を加え、ヒアルロン酸の側鎖をカルボン酸の形に変換させたのち、陽イオン樹脂を取り除き、有機塩基を加えることにより陽イオンが置換されたヒアルロン酸を得る方法である。陽イオン交換樹脂としては、例えば、アンバーライト、ダウエックス等が挙げられる。すなわち、有機溶媒に溶解するための処理として、ヒアルロン酸ナトリウムをヒアルロン酸に変換し、次いで有機塩基としてテトラブチルアンモニウムヒドリドによりイオン交換された、ヒアルロン酸テトラブチルアンモニウム塩を用いることが好ましい。
ポリ−α−ヒドロキシ酸の末端水酸基を活性化させる方法としては、特に限定されないが、例えば、N,N’−カルボニルジイミダゾール(CDI)を用いて、末端水酸基を活性化させる方法、アルカリ金属を用いて末端水酸基を活性化させる方法、アルコキシド化合物を用いて末端水酸基を活性化させる方法などが挙げられる。好ましくは、CDIを用いて、末端水酸基をエステル化し、活性化させる方法である。
具体的には、ポリ−α−ヒドロキシ酸を有機溶媒に溶解した後、CDIを加え、反応終了後に再沈殿により精製を行うことにより得られる。ポリ−α−ヒドロキシ酸を溶解する溶媒としては、溶解すれば特に限定はないが、例えば、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等が挙げられる。また、再沈殿に用いる良溶媒としては、反応に用いた溶媒が挙げられ、貧溶媒としては、ジエチルエーテル、メタノール、エタノール、n-ヘキサンおよびこれら貧溶媒を適当に組み合わせた混合溶媒が挙げられる。好ましくは、メタノールとn-ヘキサンの混合溶媒である。反応温度としては、20℃〜25℃、反応時間としては、6時間〜24時間である。
以上のようにして得られた、有機溶媒に溶解可能なヒアルロン酸塩に、末端水酸基の活性化されたポリ−α−ヒドロキシ酸をグラフトさせる。
具体的には、例えば、有機溶媒に溶解可能なヒアルロン酸塩として、ヒアルロン酸テトラブチルアンモニウム塩を用い、末端水酸基の活性化されたポリ−α−ヒドロキシ酸としてCDI活性化体を用いる場合、ヒアルロン酸テトラブチルアンモニウム塩に所定量の触媒および溶媒を加え、完全に溶解させた後、激しく攪拌しながら、別途溶媒に溶解したポリ−α−ヒドロキシ酸のCDI体を滴下することにより反応させる。反応後は、再沈殿法、透析法、洗浄法、あるはこれらの組み合わせにより精製する。
ヒアルロン酸塩やポリ−α−ヒドロキシ酸CDI体を溶解する溶媒は、溶解できるものであれば特に限定はないが、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)等が挙げられる。好ましくは、DMSOである。
触媒としては、例えば、ジメチルアミノピリジン(DMAP)等が挙げられる。好ましくは、DMAPである。当該触媒は、ポリ−α−ヒドロキシ酸CDI体に対し、等モルから2倍モル量程度用いられる。
反応温度としては、40℃〜80℃、反応時間としては、24時間〜120時間である。
また、精製に再沈殿法を用いる場合、用いる良溶媒としては、DMSO、DMF、貧溶媒としては、THF、酢酸エチル、メタノール、エタノールなどが挙げられる。好ましくは、良溶媒としてDMSO、貧溶媒としてTHFあるいは酢酸エチルである。再沈澱法により触媒および未反応のポリ−α−ヒドロキシ酸を除去できない場合は、透析法、あるいは洗浄法を利用することができる。透析法の場合、透析膜のcut off分子量がポリ−α−ヒドロキシ酸の数平均分子量よりも大きく、ヒアルロン酸またはその塩の重量平均分子量よりも小さいものであればよく、例えば、5000〜20000程度であることが好ましい。また、透析内液は反応溶液、透析外液はDMSOが好ましい。洗浄する場合は、乾固した反応混合物を、THFあるいは酢酸エチルに浸漬する。この際、超音波を照射しても良い。
また、精製できた段階で、ヒアルロン酸テトラブチルアンモニウム塩に、ポリ−α−ヒドロキシ酸が所定の本数導入されていない場合、精製物を再度ポリ−α−ヒドロキシ酸CDI体と反応させても良い。この際、反応溶液が白濁する場合には、THFを、反応溶液のDMSO量の半分程度加えても良い。
また、上記のようにヒアルロン酸テトラブチルアンモニウム塩を用いるなど、得られたヒアルロン酸修飾物が、生体内に存在しない陽イオンを有する場合や、水との親和性を高めたい場合には、脱塩を行うことができる。脱塩方法としては、例えば、無機の強酸強塩基からなる塩の水溶液中で攪拌する方法や、イオン交換樹脂を利用する方法、または透析等が挙げられる。
フィルム
フィルムの製造方法については特に限定はされないが、例えば溶媒からキャストする方法や、ホットプレス、押出成形など、溶融体を加工する方法などが挙げられる。
フィルムの厚みは1μmから500μmが好ましく、特に20μmから300μmがより好ましい。また、フィルムの吸水性は乾燥フィルム1gに対して0.5gから10gの水を吸収することが好ましい。特に好ましいのは乾燥フィルム1gに対して1gから9gの水を吸収することが好ましい。
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、得られた物の同定は、H-NMRおよびGPCにより行った。
合成例1−1(ポリ−L−乳酸の合成)
1−ドデカノール1.03mlとL−ラクチド10.0gを100mlナスフラスコに入れ、3時間真空下で乾燥した。そこに、2−エチルヘキサン酸スズ28.2mgを加えて、8時間真空下で乾燥を行った。その後、150℃のオイルバスに浸漬し、完全に溶融させてから、オイルバスの温度を115℃に下げ、24時間反応を行った。反応終了後、良溶媒にクロロホルム、貧溶媒にメタノールを用いた再沈殿法により、精製を行い、末端定量法により求めた重合度が22.2のポリ−L−乳酸(PLLA22)を9.87g得た。なお、PLLA22の同定は、H−NMR(CDCL)およびGPC(DMF、ポリスチレン標準)により行った。得られたPLLA22の組成および収率を、表1に示した。
合成例1−2(ポリ−L−乳酸の活性エステル化)
合成例1−1で得られたポリ−L−乳酸(PLLA22)1.48gを塩化メチレン8mlに溶解した後、N,N’−カルボニルジイミダゾール(CDI)227mgを加え、アルゴン置換した後、室温で12時間攪拌した。反応終了後にエタノール/n−ヘキサン(3/7 v/v)を用いて再沈殿により精製を行い、PLLA22の活性エステル体(PLLA22−CI)を1.41g(収率92.8%)で得た。CDIによる活性化率は、97%であった。
比較合成例1−1
1−ドデカノールの量を0.515mlに変更した以外は、合成例1−1と同様に反応を行った。末端定量法により求めた重合度が42.5のポリ−L−乳酸(PLLA42)を得た。得られたPLLA42の組成および収率を、表1に示した。
Figure 2013067709
比較合成例1−2
ポリ−L−乳酸(PLLA22)1.48gの代わりに、ポリ−L−乳酸(PLLA42)2.96gを用いた以外は、合成例1−2と同様に反応を行った。収率は98.2%、CDIによる活性化率は、100%であった。
合成例2−1(ポリ−ε−カプロラクトンの合成)
1−ドデカノール1.59mlとε−カプロラクトン10gを100mlナスフラスコに入れ、8時間真空下で乾燥した。そこに、2−エチルヘキサン酸スズ5mgを加えて、8時間真空下で乾燥を行った。その後、150℃のオイルバスに浸漬し、完全に溶融させてから、168時間反応を行った。反応終了後、良溶媒にクロロホルム、貧溶媒にメタノールを用いた再沈殿法により、精製を行い、末端定量法により求めた重合度が28のポリ−ε−カプロラクトン(PCL28)を6.88g得た。なお、PCL28の同定は、H−NMR(CDCL)およびGPC(DMF、PEG標準)により行った。得られたPCL28の組成および収率を、表2に示した。
Figure 2013067709
合成例2−2(ポリ−ε−カプロラクトンの活性エステル化)
合成例2−1で得られたポリ−ε−カプロラクトン(PCL28)5.50gを塩化メチレン10mlに溶解した後、N,N’−カルボニルジイミダゾール(CDI)0.78gを加え、アルゴン置換した後、室温で12時間攪拌した。反応終了後にエタノール/n−ヘキサン(3/7 v/v)を用いて再沈殿により精製を行い、PCL28の活性エステル体(PCL28−CI)を4.68g(収率78.5%)で得た。CDIによる活性化率は、65%であった。
合成例3−1(ポリ(カプロラクトン−乳酸)ランダム共重合体の合成)
1−ドデカノール1.261ml、L−ラクチド10gおよびε−カプロラクトン7.689mlを100mlナスフラスコに入れ、8時間真空下で乾燥した。そこに、2−エチルヘキサン酸スズ2.675mgを加えて、8時間真空下で乾燥を行った。その後、150℃のオイルバスに浸漬し、完全に溶融させてから、オイルバスの温度を115℃に下げ、24時間反応を行った。反応終了後、良溶媒にクロロホルム、貧溶媒にメタノールを用いた再沈殿法により、精製を行い、末端定量法により求めた乳酸の重合度が11、カプロラクトンの重合度が12のポリ(カプロラクトン−乳酸)ランダム共重合体(P(CL−LA))を11.9g得た。なお、P(CL−LA)の同定は、H−NMR(CDCL)およびGPC(DMF、ポリスチレン標準)により行った。得られたP(CL−LA)の組成および収率を、表3に示した。
Figure 2013067709
合成例3−2(ポリ(カプロラクトン−乳酸)ランダム共重合体の活性エステル化)
合成例3−1で得られたポリ(カプロラクトン−乳酸)ランダム共重合体(P(CL−LA))3.00gを塩化メチレン10mlに溶解した後、N,N’−カルボニルジイミダゾール(CDI)457mgを加え、アルゴン置換した後、室温で12時間攪拌した。反応終了後にエタノール/n−ヘキサン(3/7 v/v)を用いて再沈殿により精製を行い、P(CL−LA)の活性エステル体(P(CL−LA)−CI)を2.98g(収率96.5%)で得た。CDIによる活性化率は、48.7%であった。
調製例1(ヒアルロン酸ナトリウムの塩交換反応)
30mlサンプル管にヒアルロン酸ナトリウム(分子量9万)800mgを入れ、超純水を加えて溶解した。そこに陽イオン交換樹脂(Dowex 50W×8−200)を、5.84ml(ヒアルロン酸ナトリウムのカルボキシル基に対して5当量)加え、8時間攪拌した。その後、濾過により陽イオン交換樹脂を除去し、得られたヒアルロン酸水溶液に、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBA−OH)1.6g(ヒアルロン酸のカルボキシル基に対して1当量)を加えて中和し、透析の外液に超純水を用いて、2日間透析(MWCO:15,000)をした後、凍結乾燥して、ヒアルロン酸テトラブチルアンモニウム塩(HA/TBA)を1.19g(収率94.2%)得た。HA/TBAの塩交換率の同定は、H−NMR(NaOD/DO)で行い、TBA化率は98%であった。
実施例1(HA−g−PLLA22の製造)
HA/TBA400mgをジメチルスルホキシド(DMSO)9mlに溶解させ、そこに、ジメチルアミノピリジン(DMAP)19.6mgをDMSO1mlに溶解させたものを加え、1時間攪拌した。得られた溶液を60℃のオイルバス中で激しく攪拌しながら、ジメチルスルホキシド(DMSO)30mlに溶解させたPLLA22−CI550mgを滴下し、60℃で72時間攪拌した。その後、さらに、DMSO1mlにジメチルアミノピリジン(DMAP)58.8mgを溶解させたものを加え、1時間攪拌した。得られた溶液を60℃のオイルバス中で激しく攪拌しながら、THF20mlに溶解させたPLLA22−CI1.65gを滴下し、還流しながら60℃で72時間攪拌した。得られた溶液を、透析の外液にDMSOを用いて透析(MWCO:15,000)を5日間行った後、遠心分離により未反応の沈殿物を取り除き、DMSOを除去後、酢酸エチルで得られた反応混合物を洗浄し、さらに、得られた反応混合物をTHFで洗浄し、精製を行った結果、HA/TBA−g−PLLA22を340mg(収率57%)得た。
次に、得られたHA/TBA−g−PLLA22 340mgをDMSO40mlに溶解し、DMSO60mlに溶解したNaCl156mgを加え室温で5時間撹拌した。DMSOを除去し、反応混合物をエチレングリコールで洗浄し、その後メタノールで3回洗浄して精製した結果、HA−g−PLLA22を270mg(収率28.4%)で得た。HA−g−PLLA22の同定は、H−NMR(DMSO)で行った。
比較例1(HA−g−PLLA42の製造)
PLLA22−CIの代わりに、PLLA42−CIを用いた以外は、実施例1と同様に反応を行った。HA/TBA290mgをジメチルスルホキシド(DMSO)9mlに溶解させ、そこに、ジメチルアミノピリジン(DMAP)56.2mgをDMSO1mlに溶解させたものを加え、1時間攪拌した。得られた溶液を60℃のオイルバス中で激しく攪拌しながら、ジメチルスルホキシド(DMSO)90mlに溶解させたPLLA42−CI2.95gを滴下し、60℃で72時間攪拌した。得られた溶液を、透析の外液にDMSOを用いて透析(MWCO:15,000)を5日間行った後、遠心分離により未反応の沈殿物を取り除き、DMSOを除去し、精製を行った後の精製確認時に溶媒であるDMSOに不溶であることから、精製の確認を行うことが不可能となった。この後の塩交換もDMSOを用いることから、これ以上の反応は不可能となった。
実施例2(HA−g−PCL28の製造)
HA/TBA400mgをDMSO20mlに溶解させ、そこにDMAP76.4mgを加え、1時間攪拌した。その溶液を60℃のオイルバス中で激しく攪拌しながら、DMSO20mlに溶解させたPCL28−CI4.3gを滴下し、60℃で72時間攪拌した。その後、反応溶媒を濃縮し、貧溶媒に酢酸エチルを用いた再沈殿を1回行い、遠心分離により上澄みを除去後、もう一度貧溶媒を加え、超音波照射し分散させ、また遠心分離し上澄みを除去する作業を3回繰り返し、精製を行った。収量は439mgであった。
次に、得られたHA/TBA−g−PCL28 439mgをDMSO30mlに溶解し、DMSO60mlに溶解したNaCl62.5mgを加え室温で5時間撹拌した。DMSOを除去し、反応混合物をエチレングリコールで洗浄し、その後メタノールで3回洗浄して精製した結果、HA−g−PCL28を196mg(収率25%)で得た。HA−g−PCL28の同定は、H−NMR(DMSO)で行った。
実施例3(HA−g−P(CL−LA)の製造)
HA/TBA400mgをDMSO20mlに溶解させ、そこにDMAP76.4mgを加え、1時間攪拌した。その溶液を60℃のオイルバス中で激しく攪拌しながら、DMSO20mlに溶解させたP(CL−LA)−CI 2.98gを滴下し、60℃で72時間攪拌した。その後、反応溶媒を濃縮し、貧溶媒に酢酸エチルを用いた再沈殿を2回行うことによって精製を行った。収量は535mgであった。
次に、得られたHA/TBA−g−P(CL−LA) 535mgをDMSO40mlに溶解し、DMSO30mlに溶解したNaCl81mgを加え室温で5時間撹拌した。DMSOを除去し、反応混合物をエチレングリコールで洗浄し、その後メタノールで3回洗浄して精製した結果、HA−g−PLLA22を345mg(収率28.9%)で得た。HA−g−P(CL−LA)の同定は、H−NMR(DMSO)で行った。
調製例2(フィルムの製造)
実施例1〜3で得られたポリマー120mgを4wt%となるようにDMSO2.62mlに溶解し、それを直径3cmのテフロン(登録商標)シャーレに入れた。その後、80℃、常圧で24時間、続いて80℃、減圧下で24時間乾燥することによりフィルムを得た。また、ポリ−α−ヒドロキシ酸単独のフィルムに関しても、上述と同様の方法で作製を行った。この際、P(CL−LA)のフィルムのみ得ることができなかった。
試験例1
<ヒアルロン酸修飾物からなるフィルムの膨潤率(吸水性)評価>
調製例2で得られたヒアルロン酸修飾物のフィルムを、2×2cmに切り抜き、乾燥状態の重量を予め測定した。その後、37℃のPBS(pH=7.4、I=0.14)に浸漬させ、所定時間(0.25、0.5、1、2、4、7、15、30、60、120、240分)経過後にフィルムを引き上げ、軽く超純水で洗浄し表面の水分を軽く拭き取った後、重量を測定した。
結果を図1に示した。
試験例2
<ヒアルロン酸修飾物からなるフィルムの重量減少率(加水分解性)評価>
調製例2で得られたヒアルロン酸修飾物のフィルムのうち、実施例1〜3のポリマーから得られたものについて、5×5cmに切り抜き、乾燥状態の重量を測定した。その後、37℃のPBS(pH=7.4、I=0.14)に浸漬させ、所定時間(1、2、7、14日)経過後にフィルムを取り出し、超純水で洗浄して凍結乾燥を行った。そして凍結乾燥後のフィルムの重量を測定することにより、重量減少率を算出した。なお、PBSのpHを変化させないために2日おきにフィルムを浸漬させたPBSを1ml回収し、新しいPBSを加えた。
同様に、PLLA22、およびPCL28フィルムについても重量減少率を算出した。
重量減少率の算出;
重量減少率(%)=(W0−Wt)/W0
W0:当初のフィルムの重量
Wt:時間tにおけるフィルムの重量
結果を図2に示した。

Claims (7)

  1. ヒアルロン酸またはその塩に、モノマー単位の重合度が15〜40のポリ−α−ヒドロキシ酸を、グラフト結合により側鎖として有するヒアルロン酸修飾物。
  2. ポリ−α−ヒドロキシ酸の重量分率が60〜90%である、請求項1に記載のヒアルロン酸修飾物。
  3. ヒアルロン酸またはその塩が、重量平均分子量が3万〜15万である、請求項1または2に記載のヒアルロン酸修飾物。
  4. ヒアルロン酸またはその塩を、有機溶媒に溶解するように処理した後、モノマー単位の重合度が15〜40のポリ−α−ヒドロキシ酸をグラフト化することを特徴とするヒアルロン酸修飾物の製造方法。
  5. グラフト化反応を多段階で行う、請求項4に記載の製造方法。
  6. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のヒアルロン酸修飾物から得られるフィルム。
  7. キャスト法により、請求項6記載のフィルムを製造する方法。
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