JP2013065983A - 電気機械変換装置、及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】特性ばらつきの小さい電気機械変換装置及びその製造方法を提供することである。
【解決手段】電気機械変換装置1は、第1電極4と、間隙5を隔てて第1電極4と対向して設けられた第2電極6を備える振動膜7と、振動膜7を支持する支持部8と、で構成されるセルを複数有する。間隙5の外周部に、間隙5との間で支持部8の一部を介在させて、振動膜7と支持部8との間の段差を小さくするための構造物10が設けられている。
【選択図】 図1
【解決手段】電気機械変換装置1は、第1電極4と、間隙5を隔てて第1電極4と対向して設けられた第2電極6を備える振動膜7と、振動膜7を支持する支持部8と、で構成されるセルを複数有する。間隙5の外周部に、間隙5との間で支持部8の一部を介在させて、振動膜7と支持部8との間の段差を小さくするための構造物10が設けられている。
【選択図】 図1
Description
本発明は、静電容量型超音波トランスデューサなどの超音波等の弾性波の送信と受信の少なくとも一方を行う電気機械変換装置、及びその製造方法に関する。
超音波トランスデューサは、超音波の送信及び受信の少なくとも一方を行うもので、例えば生体内の腫瘍などの診断装置に用いられている。近年、マイクロマシンニング技術を用いて作製される静電容量型超音波トランスデューサ(Capacitive Micromachined Ultrasonic Transducers : CMUT)の開発が進められている。CMUTは、従来の圧電体を利用した超音波トランスデューサと比較して、広帯域特性が容易に得られる点や振動モードが少なく低ノイズである点などが優れている。このCMUTの特徴は、軽量の振動膜を用いて超音波を送信もしくは受信することである。よって、このCMUTを利用した、従来の医用診断モダリティより高精度な超音波診断が、有望な技術として注目されつつある。
CMUTの1つの製法としては、犠牲層エッチングを特徴とするサーフェスマイクロマシニング技術が用いられる。サーフェスマイクロマシニング技術には、犠牲層エッチングのほかに、薄膜の応力制御に高度な技術が要求される。特に、CMUTは、少なくとも1つのセルを含む単一エレメントが複数の振動膜で構成されるため、薄膜である振動膜における応力分布の大きさはCMUTの性能を決定する。CMUTのみならず、メンブレン(薄膜)構造を作製する方法としては化学気相成長(Chemical Vapor Deposition : CVD)が一般的に用いられ、材料としては窒化ケイ素(SiN)が主に用いられる。
上記技術について、犠牲層を形成後、その上にSiN、金属(電極層)、SiNを形成し、応力による撓みの制御をしたCMUTの製造方法が提案されている(特許文献1参照)。また、犠牲層にパターンを形成せずに、エッチング孔の配置とエッチング時間の制御により犠牲層を制御してエッチングし、振動膜を形成する方法も提案されている(特許文献2参照)。この方法によれば、振動膜支持部と振動膜との上面をほぼ同一面とできるため、応力による振動膜の撓みが抑制された構造になるとされている。
静電容量型超音波トランスデューサは、メンブレンの寸法ばらつきがエレメントの性能を劣化させることから、サーフェスマイクロマシニングによる製法では、犠牲層をパターニングして形成した後に、薄膜を成膜し、犠牲層エッチングを行うのが一般的である。その際、セルの断面において、振動膜支持部と振動膜との間に犠牲層の厚さとほぼ等しい段差が生じることがある。この段差によって、薄膜と電極で形成される振動膜の応力による撓みが大きくなりやすい。このような場合、振動膜の応力がエレメント内もしくは複数のエレメント間で分布を有するとき、振動膜の撓み分布が発生する。これは、上下電極間距離の分布となり、エレメントの変換効率にばらつきをもたらす。超音波トランスデューサは複数のエレメントを用いて、超音波信号を発信もしくは受信するので、変換効率にばらつきがあると、発信される超音波に強度斑や位相ズレが生じたり、受信信号に分布が存在したりするなど、性能を著しく低下させる。静電容量型超音波トランスデューサは電極間距離を小さくすることによって高変換効率化を実現することができる。その際、振動膜の撓みばらつきは、即ち、電極間距離のばらつきになるため、性能が均一で変換効率の高い超音波トランスデューサを実現するためにはメンブレンの撓みばらつきを小さくすることが課題となる。上記特許文献1の技術では、セルのキャビティ径のばらつきは小さくできるが、振動膜の応力による撓みを充分抑制できるとは言えない。他方、上記特許文献2の技術では、振動膜の応力による撓みは抑制できるが、セルのキャビティ径をエッチングの制御により決めるため、ばらつきが出やすい。
上記課題に鑑み、本発明の電気機械変換装置は、第1電極と、間隙を隔てて第1電極と対向して設けられた第2電極を備える振動膜と、振動膜を支持する支持部と、で構成されるセルを複数有する。そして、間隙の外周部に、間隙との間に支持部の一部を介在させて、振動膜と支持部との間の段差を小さくするための構造物が設けられている。
また、上記課題に鑑み、第1電極と、間隙を隔てて前記第1電極と対向して設けられた第2電極を備える振動膜と、振動膜を支持する支持部と、で構成されるセルを複数有する電気機械変換装置の本発明の製造方法は、以下の工程を有する。第1電極を形成する工程。第1電極の上に犠牲層を形成する工程。犠牲層の上に、第1電極とは絶縁された第2電極を形成する工程。前記犠牲層を除去して、第1電極と第2電極との間の間隙と第2電極を備える振動膜を形成する工程。そして、犠牲層を形成する工程で、複数のセルの間の領域に、犠牲層を形成する材料で、振動膜と支持部との間の段差を小さくするための構造物を形成する。
本発明によれば、間隙の外周部に上記の如き構造物を配設して、振動膜の応力による撓みを抑制する。その結果、応力分布が生じたときの撓み分布を小さくすることが可能になり、電気機械変換装置の特性ばらつきを低減する効果が奏される。また、特性ばらつきの小さな電気機械変換装置をエレメントとして複数用いることで、広い領域で同等の信号の受信や送信が可能になる。例えば、多くの位置においてむらの無い送信や受信が可能となって、多次元の超音波信号を同時的に取得したり、高精度な多次元の被検体物理情報を取得したりすることが可能になる。
本発明の特徴は、間隙の外周部に、間隙との間に支持部の一部を介在させて、振動膜と支持部との間の段差を小さくするための構造物が設けられることである。構造物の高さは、振動膜と支持部との間の段差を抑制するという効果の観点から、典型的には、間隙の高さ前後(例えば、間隙の高さ(例えば185nm)を中心として、その表面粗さ(3nm以下程度)が加味された程度の高さ)である。しかし、場合によっては、そうした範囲外の高さであってもよい。ただし、極端に高かったり(例えば、間隙の2倍の高さ)極端に低かったりすると、効果が十分得られないことになる。よって、効果達成の観点から、材料、他の部分の構造などを考慮して、仕様に従って構造物の高さを設定するのが良く、具体的には、間隙の高さ±10%の範囲の高さの構造物であればよい。また、構造物を設ける場所としての支持部の外周部とは、間隙の側面との間で支持部の一部を介在させた所であるが、必ずしも間隙を隙間なく囲んだ外周に沿った所とは限らず、後述の実施形態の如く、一部が途切れていてもよい。この構造物の形成範囲も、効果達成の観点から、材料、他の部分の構造などを考慮して、仕様に従って決めるのが良い。
以下、本発明の実施形態を図を用いて説明する。
図1に、本発明の第1の実施形態である超音波トランスデューサ1を示す。図1(a)は上面図であり、(b)は断面図である。超音波トランスデューサ1は複数のセル2で構成される。図1ではセル2が正方格子状に配設されているが、千鳥状などでもよく、並べ方は問わない。セル2は、基板3上に形成された第1電極4、犠牲層エッチングによって形成される間隙5(一定程度大気圧から減圧された空隙など)、第2電極6と絶縁層9(第1のメンブレン)とを備える振動膜7、振動膜7を支持する支持部8で構成される。振動膜7は、図1では円形であるが、四角形、六角形、楕円形などでもよい。また、基板3は、一般的な集積回路や光デバイスを作製するために使用されるウエハであってもよく、例えばシリコン(Si)、ガリウム砒素(GaAs)、ガラス(SiO2)、SiC、Silicon−on−Insulator(SOI)などでもよい。第1電極4、第2電極6は、金属薄膜ならばよく、例えばAl、Ti、Co、Cu、Mo、Wやその化合物であるAlSi、AlCu、AlSiCu、TiW、TiN、TiCなどでもよい。第1電極4は、基板3とは絶縁されていても、或いは基板が電気を導通する物質であれば接続していてもよい。また、基板3が第1電極4と一体であってもよく、例えば、シリコン(Si)基板そのものを第1電極として機能させてもよい。
図1に、本発明の第1の実施形態である超音波トランスデューサ1を示す。図1(a)は上面図であり、(b)は断面図である。超音波トランスデューサ1は複数のセル2で構成される。図1ではセル2が正方格子状に配設されているが、千鳥状などでもよく、並べ方は問わない。セル2は、基板3上に形成された第1電極4、犠牲層エッチングによって形成される間隙5(一定程度大気圧から減圧された空隙など)、第2電極6と絶縁層9(第1のメンブレン)とを備える振動膜7、振動膜7を支持する支持部8で構成される。振動膜7は、図1では円形であるが、四角形、六角形、楕円形などでもよい。また、基板3は、一般的な集積回路や光デバイスを作製するために使用されるウエハであってもよく、例えばシリコン(Si)、ガリウム砒素(GaAs)、ガラス(SiO2)、SiC、Silicon−on−Insulator(SOI)などでもよい。第1電極4、第2電極6は、金属薄膜ならばよく、例えばAl、Ti、Co、Cu、Mo、Wやその化合物であるAlSi、AlCu、AlSiCu、TiW、TiN、TiCなどでもよい。第1電極4は、基板3とは絶縁されていても、或いは基板が電気を導通する物質であれば接続していてもよい。また、基板3が第1電極4と一体であってもよく、例えば、シリコン(Si)基板そのものを第1電極として機能させてもよい。
セル2は、超音波トランスデューサ1内で第1電極4同士、第2電極6同士はそれぞれ導通しており、第1電極4と第2電極6とは絶縁膜9により絶縁されている。超音波トランスデューサ1は電気的にはキャパシタとして機能し、可動な振動膜7により静電容量が時間的に変動する。振動膜7を周期的に振動させることで超音波を発生し、また、超音波を受けると振動膜7が振動し、電極に交流電流が発生する。
上記課題を解決する本実施形態は、構造物10を支持部8の外周部に(すなわち、間隙5の周りに間隙に対して支持部8の一部を介在させて)配設している。通常、支持部8は、振動膜7の絶縁膜9と一体となっており、図1(b)に示すように、基板3上に形成された第1電極4上、もしくは、第1電極4上に成膜された絶縁膜上や基板上に形成されることで振動膜7を支持する。ここでは、前述した様に、構造物10は、間隙5とは支持部8の部分で離されて存在している。構造物10の存在により、通常、支持部8上部に生じる犠牲層高さ分の段差が緩和される。この段差と振動膜の撓みとの関係を示した図2から、構造物10の効果は明らかである。すなわち、図2に示す如く、構造物の幅は大きいほど振動膜の撓みも小さくなる。ここで、「構造物10の幅」の方向は、間隙5の側面に対する法線方向(図1(b)の左右方向)と一致する。この様に、本実施形態では、セルは、第1電極と、間隙を隔てて第1電極と対向して第1電極とは絶縁されて設けられた第2電極と、第2電極を備え間隙上に形成された振動膜と、支持部と、で構成され、電気機械変換装置はセルを複数有する。そして、支持部の外周部に、間隙との間で幅の方向に支持部の一部を介在させて、振動膜と支持部との間の段差を小さくするために間隙の第1電極側の底面のレベルから第2電極のあるレベルの方向に突出している構造物が設けられる。例えば、この構造物の間隙の底面のレベルからの高さは、間隙の高さと等しい。
構造物10は、間隙5とは上記幅の方向に離れているが、間隙高さの2倍以下の距離に存在する。間隙5上に成膜される層によって振動膜7と支持部8が形成されるが、間隙5を完全に被覆するためには振動膜7の厚さが間隙5の高さの2倍程度必要である。構造物10と間隙5との距離が、振動膜7の最小厚さと比較して同等もしくは小さければ、構造物10と間隙5の間を支持部8の一部で埋めることができ、段差を小さくできる。それ以上離れると、構造物10の有無にかかわらず、支持部上部に段差が生じるため、効果は減少することになる。つまり、支持部の一部を介在させた構造物と間隙との距離は、間隙の高さの2倍以下であり、間隙の側面の法線方向における構造物の幅は、振動膜の厚さ以上であることが好ましい。図1では、各構造物10が各セル2の外周付近に存在しているが、セル間において構造物は繋がって一体となっていてもよい。
図3に本発明の第2の実施形態である超音波トランスデューサアレイ21を示す。超音波トランスデューサアレイは、図1に示す様な超音波トランスデューサ1を水平方向に、一次元もしくは二次元的に配列した電気機械変換装置である。図3では超音波トランスデューサ1が二次元的に正方格子状に配列されているが、千鳥状であっても、六方格子状などであっても構わない。同様に、図3では、超音波トランスデューサ1が正方形をしているが、円形でも、6角形でも、短冊形状などであってもよい。構造物10は、複数の超音波トランスデューサ1(以下では、エレメントとも称する)を跨いで存在していても構わない。つまり、構造物10はエレメントで分離されている必要はない。このとき複数のトランスデューサ1の信号のクロストーク要因にならないためには、構造物10は電気的に浮遊もしくは絶縁である必要がある。図3の構成では、各エレメントの第2電極6が信号線22で引き出されている。
セルを1つ以上含むエレメントが複数配設されて構成された電気機械変換装置であるトランスデューサアレイは、複数のエレメントで弾性波を同時的に受信すること及び複数のエレメントから弾性波を同時的に送信すること、の少なくとも一方を行うことができる。そして、特性ばらつきの小さな電気機械変換装置をエレメントとして複数用いることで、広い領域で同等の信号の受信や送信が可能になって、多次元の超音波信号を同時的に取得したり、高精度な多次元の物理情報を取得したりすることが可能になる。
次に、上述した超音波トランスデューサの製造方法に係る第3の実施形態を図4を用いて説明する。超音波トランスデューサの製法は、アレイ素子である図3に示した超音波トランスデューサアレイの製法と同様であり、トランスデューサアレイの製法にも適用できる。
まず、図4に示す様に、基板31上に、導体の成膜、フォトリソグラフィ、パターニングにより、第1電極32を形成する(図4(a))。このとき、第1電極32と基板31は導通していても、絶縁していても構わない。次に、第1電極32上への成膜、フォトリソグラフィ、パターニングにより、犠牲層33を形成する(図4(b))。第1電極32と犠牲層33との間に絶縁膜があってもよい。犠牲層33の材料は、犠牲層がキャビティ(間隙)形状を決定することを考慮して、周囲の材料との加工選択比が良好であり、パターニングばらつきが小さいものであることが必要である。犠牲層33を形成すると同時に、構造物34も形成される。これにより、工程数が増加することなく、本発明の効果を達成可能な構成が製造される。次に、犠牲層33、構造物34の上に第1のメンブレン35を成膜する(図4(c))。続けて、導体を成膜、フォトリソグラフィ、パターニングすることにより、第2電極36を形成する(図4(d))。
次に、第1のメンブレン35に孔37をあけて、犠牲層33の一部を露出させる。そして、犠牲層33をエッチングし、間隙38を形成する(図4(e))。その後、孔37を封止すると同時に第2のメンブレン39を成膜する(図4(f))。第2電極36を形成した後に、第2のメンブレンを形成し、第2のメンブレンと第1のメンブレンに孔をあけて犠牲層エッチングを行い、更に孔を封止するという製法でもよい。この様に、本実施形態の製造方法は、第1電極の形成工程と、犠牲層の形成工程と、第1電極とは絶縁した第2電極の形成工程と、犠牲層を除去して、電極間の間隙と第2電極を含有する振動膜を形成する工程と、を有する。そして、犠牲層の形成工程において、複数のセルの間の領域に、犠牲層を形成する材料で、振動膜と支持部との間の段差を小さくするために間隙の第1電極側の底面のレベルから第2電極のあるレベルの方向に突出している構造物を同時に形成する。
以下、より具体的な実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。
(実施例1)(構造物を含むトランスデューサ)
本発明の第1の実施例である超音波トランスデューサを説明する。本実施例を最もよく表す図1において、犠牲層33(図4参照)によって形成される間隙5の高さは100乃至300ナノメートルである。振動膜7或いは間隙5の形状を円形とすると、その直径は20乃至70マイクロメートルである。図1の例では、振動膜7は第2電極6を含む3層構成であるが、第2電極6以外の部分の材料としては窒化シリコン、ダイヤモンド、炭化シリコン、酸化シリコン、ポリシリコンなどが挙げられる。例えば、PECVD(Plasma-enhanced-chemical-vapor-deposition)で成膜された窒化シリコンを振動膜7の主要材料とするとき、振動膜7の厚さは500ナノメートル乃至2000ナノメートル程度である。第2電極6の厚さは、振動膜7全体の20%未満であればよい。これは、電極材料による応力から生じる撓みの影響を小さくするためである。窒化シリコンは、撓みの制御性が良く、好ましい材料である。
(実施例1)(構造物を含むトランスデューサ)
本発明の第1の実施例である超音波トランスデューサを説明する。本実施例を最もよく表す図1において、犠牲層33(図4参照)によって形成される間隙5の高さは100乃至300ナノメートルである。振動膜7或いは間隙5の形状を円形とすると、その直径は20乃至70マイクロメートルである。図1の例では、振動膜7は第2電極6を含む3層構成であるが、第2電極6以外の部分の材料としては窒化シリコン、ダイヤモンド、炭化シリコン、酸化シリコン、ポリシリコンなどが挙げられる。例えば、PECVD(Plasma-enhanced-chemical-vapor-deposition)で成膜された窒化シリコンを振動膜7の主要材料とするとき、振動膜7の厚さは500ナノメートル乃至2000ナノメートル程度である。第2電極6の厚さは、振動膜7全体の20%未満であればよい。これは、電極材料による応力から生じる撓みの影響を小さくするためである。窒化シリコンは、撓みの制御性が良く、好ましい材料である。
第1電極4と第2電極6とは絶縁されていなくてはならないが、振動膜7が窒化シリコンであれば絶縁される。また、第1電極4と間隙5との間に別の絶縁層があってもよい。構造物10の材料は、犠牲層材料と同じでも異なっていてもよい。犠牲層材料と同じであれば、構造物10の有無にかかわらず工程数を増加することなく、また間隙5と同じ高さの構造物10を配置することができる。犠牲層及び構造物10の材料としては、振動膜7を構成する材料や該材料との加工選択比や加工温度により決定される。例えば、クロム、モリブデン、アルミニウム、或いはそれらの化合物のほか、ポリシリコン、アモルファスシリコン、酸化シリコン、窒化シリコンなどであればよい。
図2のグラフから段差は小さければよく、そのためには、構造物10の高さは間隙5の底面を基準としての間隙5の高さと同程度ならばよい。同様に、図2は、構造物10の水平方向の幅が大きいほど撓みが小さくなることを示しており、幅は振動膜7の厚さ以上が望ましい。間隙5の側面に垂直に振動膜7の厚さ以上の幅があれば、撓みが小さくなる効果を有する。構造物10は、水平方向(前記幅の方向)には間隙5の側面から、支持部8の部分を介在させて、間隙5の高さの2倍以下の距離を隔てて存在するとよい。構造物10の間隙5からの距離は、好ましくは間隙5の高さ以下の距離を隔てて存在するとよい。構造物10はセル2に対してだけでなく、複数のセル2の間に存在しても同様の効果を有する。
本実施例では、応力の分布に起因する振動膜の撓み分布・ばらつきを抑制する効果により、高変換効率を有する高性能の超音波トランスデューサを実現できる。
(実施例2)(トランスデューサアレイ)
本発明の第2の実施例である超音波トランスデューサアレイを説明する。本実施例は第1の実施例の変形である。本実施例を表す図3において、アレイ21全体の大きさは、一辺の長さが10乃至40ミリメートルであり、その中に、上記超音波トランスデューサ(エレメント)1が一次元または二次元的に配設されている。超音波トランスデューサの内部構成は実施例1と同等である。各トランスデューサへ外部から駆動信号を入力、或いは受信信号を出力する配線が存在するが、これらは超音波トランスデューサアレイの目的によって変わる。図3では、超音波トランスデューサ1が二次元正方格子状に配列された例を示す。例えば、超音波トランスデューサ1の一辺が1ミリメートルとして、1辺が20ミリメートルの正方形の二次元アレイならば、その大きさは20ミリメートル×20ミリメートルとなる。
本発明の第2の実施例である超音波トランスデューサアレイを説明する。本実施例は第1の実施例の変形である。本実施例を表す図3において、アレイ21全体の大きさは、一辺の長さが10乃至40ミリメートルであり、その中に、上記超音波トランスデューサ(エレメント)1が一次元または二次元的に配設されている。超音波トランスデューサの内部構成は実施例1と同等である。各トランスデューサへ外部から駆動信号を入力、或いは受信信号を出力する配線が存在するが、これらは超音波トランスデューサアレイの目的によって変わる。図3では、超音波トランスデューサ1が二次元正方格子状に配列された例を示す。例えば、超音波トランスデューサ1の一辺が1ミリメートルとして、1辺が20ミリメートルの正方形の二次元アレイならば、その大きさは20ミリメートル×20ミリメートルとなる。
このような寸法の超音波トランスデューサアレイ21では、図1における振動膜7の応力に分布が存在する場合、この応力分布は超音波トランスデューサ1間での特性ばらつきの要因となる。構造物10の効果により、電極間距離の超音波トランスデューサ1間ばらつきを低減できる。また、構造物10は2つの超音波トランスデューサ1を跨いで存在してもよい。これにより、超音波トランスデューサ1の最外周のセル2にも内部のセル2と同様の効果を与えることができるのと同時に、隣接する超音波トランスデューサ1との距離を空けることなく構造物を配設可能になる。
本実施例では、複数の超音波トランスデューサによって構成される超音波トランスデューサアレイの特性ばらつきを低減することができる。その結果、強度斑の小さい超音波を生成し、また、受音面積の大きな超音波トランスデューサアレイを実現できる。これにより、広い領域においてむらが無く同等な信号受信や信号送信ができて、高精細な高次元の超音波信号の送信や受信ができる。
(実施例3)(製法)
本発明の第3の実施例である超音波トランスデューサの製造方法を説明する。静電容量型超音波トランスデューサは半導体製造プロセスを応用して製造されるのが一般的である。本実施例における製造方法では、中でも、犠牲層エッチングを主体とする表面マイクロマシニング技術を用いる。本実施例を最もよく表す図4において、基板31は、単結晶シリコン基板が好ましいが、ガラス基板、SOI基板などでも同様に作製できる。
本発明の第3の実施例である超音波トランスデューサの製造方法を説明する。静電容量型超音波トランスデューサは半導体製造プロセスを応用して製造されるのが一般的である。本実施例における製造方法では、中でも、犠牲層エッチングを主体とする表面マイクロマシニング技術を用いる。本実施例を最もよく表す図4において、基板31は、単結晶シリコン基板が好ましいが、ガラス基板、SOI基板などでも同様に作製できる。
基板31上に、真空蒸着またはCVD法またはスパッタリング或いはメッキなどの成膜方法で導体を成膜し、フォトリソグラフィ、エッチングにより、第1電極32を形成する(図4(a))。第1電極32の構成に求められるのは、低電気抵抗・耐熱性・平滑性である。以上から、シリコン基板もしくはSOIを使う場合には、Si自体を第1電極とすることもできる。また、Ti、Mo、Wといった高融点金属、或いはこれらの化合物、更にはこれらをバリアとして第1電極を構成することもできる。ただし、平滑性を満たすためには、成膜で作製する場合、ごく薄くする必要がある。当然、以降のプロセス選択性も求められる。本実施例では、第1電極としてTiを真空蒸着もしくはスパッタリングで50〜100ナノメートル成膜する。或いは、厚めに成膜して、研磨することで平坦にしてもよい。基板31を単結晶シリコンとするときは、予め熱酸化工程により0.5〜2.0マイクロメートルのシリコン酸化膜を成膜したものを用いる。これにより、第1電極をパターニングで分離形成可能になる。
次に犠牲層を形成する(図4(b))。この工程の前に、CVDなどで絶縁層を成膜してもよい。犠牲層は先述のとおり100〜300ナノメートルとする。犠牲層33の構成に求められるのは、エッチング選択性・耐熱性・平滑度・エッチング均一性である。フォトリソグラフィ、エッチングにより犠牲層のパターンを形成する。このパターンで、図1における間隙5の形状が決定される。間隙5の形状は、円形、四角形、六角形などでよい。例えば円形とすると、その直径は20乃至70マイクロメートルである。犠牲層に用いる材料は、Cr、Mo、アモルファスSi、酸化シリコンなどである。構造物34に求められる構成は、材料については犠牲層33に対する要求条件を超えるものはない。例えば、犠牲層33と同程度の厚みや、前述した間隙38となる犠牲層33に対する位置関係や、前述した寸法を有すればよい。
本実施例では、犠牲層33を形成すると同時に構造物34を形成する。これにより、工程を増やすことなく上記効果を奏する超音波トランスデューサ1を作製できる。次に、犠牲層33、構造物34の上に第1のメンブレン35を成膜する(図4(c))。メンブレンとしての材料に対する要求は、軽量で硬く、応力制御が容易で、厚さ分布が小さいことである。例えば、PECVDで窒化シリコンを400〜700ナノメートル成膜する。応力は0〜150MPaの範囲であればよい。ここで、第1のメンブレン35が絶縁体のときは問題ないが、半導体や導体材料、例えば多結晶シリコンなどを選択する場合、第1電極と後述する第2電極との間に絶縁膜が必要となる。この場合は犠牲層33、構造物34の形成前に絶縁層を成膜することが必須となる。
第1のメンブレン35を成膜後、真空蒸着またはCVD法またはスパッタリング或いはメッキなどの成膜方法で導体を成膜し、フォトリソグラフィ、エッチングにより、第2電極36を形成する(図4(d))。第2電極36の構成に求められるのは、エッチング選択性・耐熱性・エッチング均一性・低応力・低抵抗である。耐熱性は、この後に封止膜の成膜工程があるためである。また、電極面積は静電容量の変数であるため、エッチングばらつきが小さいことが要求される。ただし、反応性イオンエッチングを中心とするドライエッチングでは選択比が一般的に小さく、フォトレジストで保護をしていたとしても第1のメンブレン35の材料に損傷を与える恐れがある。これにより応力が大きくなると振動膜が撓み、間隙5の高さ制御が困難になる。以上のことから、第2電極36の材料はTi、Mo、W、或いはそれらの化合物が最適であり、またAlなどの低融点の金属を用いる際でもTiやTiNなどをバリアメタルとすることが必須である。同時に、第2電極32が第1のメンブレン35に対して厚いと応力による撓みが生じ、場合によっては次工程の犠牲層エッチングが困難になる。第2電極32の厚さは50〜200ナノメートルであればよい。図4では第1のメンブレン35上の第2電極36の面積は犠牲層33よりも小さくなっているが、大きくてもよい。
次に、第1のメンブレン35に孔37をあけて、犠牲層33を露出させる。そして、犠牲層33をエッチングし、間隙38を形成する(図4(e))。その後、孔37を封止すると同時に第2のメンブレン39を成膜する(図4(f))。封止の密着性を保ち、応力制御が可能で、均一性が求められる第2のメンブレン39は第1のメンブレン35と同じ材料であることが望ましい。例えば、窒化シリコンをCVDにより成膜する。このとき、第2のメンブレン39は、間隙38の高さに起因する段差を埋めるに十分な厚さ以上が必要であり、600乃至1500ナノメートルの範囲であればよい。
第2電極36を形成した後に、第2のメンブレンを形成し、第2のメンブレンと第1のメンブレンに孔をあけて犠牲層エッチングを行い、更に孔を封止するという製法でもかまわない。この方法であれば、第2電極36のエッチング選択性は問われなくなる。また、孔37周囲以外の部分の第2のメンブレン39をエッチングして、薄くしてもよい。本実施例によって、高い変換効率を有する超音波トランスデューサ及び特性ばらつきの小さい超音波トランスデューサアレイを製造できる。
1・・超音波トランスデューサ(電気機械変換装置)、4・・第1電極、5・・間隙、6・・第2電極、7・・振動膜、8・・支持部、10・・構造物
Claims (8)
- 第1電極と、間隙を隔てて前記第1電極と対向して設けられた第2電極を備える振動膜と、前記振動膜を支持する支持部と、で構成されるセルを複数有する電気機械変換装置であって、
前記間隙の外周部に、前記間隙との間に前記支持部の一部を介在させて、前記振動膜と前記支持部との間の段差を小さくするための構造物が設けられていることを特徴とする電気機械変換装置。 - 前記構造物は、前記間隙の前記第1電極側の底面のレベルから前記第2電極のあるレベルの方向に突出していることを特徴とする請求項1に記載の電気機械変換装置。
- 前記構造物の前記間隙の底面のレベルからの高さが前記間隙の高さと等しいことを特徴とする請求項2に記載の電気機械変換装置。
- 前記支持部の一部を介在させた前記構造物と前記間隙との距離が、前記間隙の高さの2倍以下であり、
前記間隙の側面の法線方向における前記構造物の幅が、前記振動膜の厚さ以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電気機械変換装置。 - 請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電気機械変換装置が、前記セルを1つ以上含むエレメントとして複数配設されており、
前記複数のエレメントで弾性波を受信すること及び前記複数のエレメントから弾性波を送信すること、の少なくとも一方を行うことを特徴とするトランスデューサアレイ。 - 第1電極と、間隙を隔てて前記第1電極と対向して設けられた第2電極を備える振動膜と、前記振動膜を支持する支持部と、で構成されるセルを複数有する電気機械変換装置を製造する製造方法であって、
前記第1電極を形成する工程と、
前記第1電極の上に犠牲層を形成する工程と、
前記犠牲層の上に前記第1電極とは絶縁された第2電極を形成する工程と、
前記犠牲層を除去して、前記第1電極と前記第2電極の間の間隙と前記第2電極を備える振動膜を形成する工程と、
を有し、
前記犠牲層を形成する工程において、前記複数のセルの間の領域に、前記犠牲層を形成する材料で、前記振動膜と前記支持部との間の段差を小さくするための構造物を形成することを特徴とする電気機械変換装置の製造方法。 - 前記構造物を、前記間隙の前記第1電極側の底面のレベルから前記第2電極のあるレベルの方向に突出するよう形成することを特徴とする請求項6に記載の電気機械変換装置の製造方法。
- 前記構造物の前記間隙の底面のレベルからの高さが前記間隙の高さと等しくなるように、前記構造物を形成することを特徴とする請求項7に記載の電気機械変換装置の製造方法。
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