JP2013060368A - カルバゾール誘導体及びそれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子 - Google Patents
カルバゾール誘導体及びそれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子 Download PDFInfo
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Abstract
Description
真空蒸着法では、有機層の積層化が可能であるため、電極から発光層への電荷注入や電荷と励起子の閉じ込めが容易であり、高効率の素子作製が可能である。その一方で、大面積での均一な成膜が困難であること、材料の利用効率が低いこと、高コストであること等の課題を有している。
このため、塗布法による多段積層のためには、塗布成膜後の不溶化プロセスが重要であり、光や熱により重合・不溶化する材料が注目されている。
上記の本発明に係るカルバゾール誘導体を用いることにより、有機EL素子を構成する各層の積層を塗布成膜により好適に行うことができる。
前記カルバゾール誘導体は、発光層におけるホスト材料としても好適に用いることができる。
したがって、前記カルバゾール誘導体を用いた本発明に係る有機EL素子は、大面積かつ低コストな表示素子や光源としての有効利用が期待される。
本発明に係るカルバゾール誘導体は、上記化学式(1)又は化学式(2)で表される構造からなる。
これらの化合物は、一般的なホスト材料である、カルバゾール誘導体の4,4’−ビス(カルバゾール−9−イル)ビフェニル(略称:CBP)にビニルベンジルエーテル基を導入したものであり、化学式(1)は1つ導入したもの(略称:V−CBP)、化学式(2)は2つ導入したもの(略称:DV−CBP)である。
まず、9H−カルバゾールと4,4’−ジヨードビフェニルを出発原料としたウルマン反応によりCBPが得られる。カルバゾール部位の3位にビルスマイヤー−ハック反応によりホルミル基を導入し、水素化ホウ素ナトリウムで還元することによりアルコール体が得られる。そして、ウィリアムソンエーテル法により4−ビニルベンジルクロライドとカップリングさせることにより、目的化合物であるV−CBPとDV−CBPを合成することができる。なお、それぞれの具体的な合成例は、下記実施例に示す。
さらに、ホール輸送発光層、電子注入層、電子輸送発光層等をも含む公知の積層構造とすることもできる。
また、DV−CBPの重合物、又は、V−CBPとDV−CBPとの混合物の重合物を発光層におけるホスト材料として用いた場合、発光層の不溶化も図られるため、その上に、電子輸送層を塗布成膜によって形成することが可能となる。すなわち、DV−CBPの重合物、又は、V−CBPとDV−CBPとの混合物の重合物を含有する有機層と電極との間においても、機能分離された電子輸送層の塗布膜を積層させることができる。
したがって、有機EL素子の積層構造において、電極等の金属層以外の有機層は、すべて塗布膜により形成することが可能となる。
前記各層の膜厚は、各層同士の適応性や求められる全体の層厚さ等を考慮して、適宜状況に応じて定められるが、通常、5nm〜5μmの範囲内であることが好ましい。
(合成例1)V−CBPの合成
なお、生成物は、1H−NMR、13C−NMR及び元素分析により同定した(以下、同様)。
TGAは、熱量分析装置(SEIKO EXSTAR 6000 TG/DTA6200 unit)を用いて、試料をアルミパンに載せ、昇温速度10℃/minで測定した。
重量5%減衰時の温度から、V−CBPとDV−CBPの分解温度を375℃と見積もった。
DSCは、示差走査熱量計(Perkin-Elmer Diamond DSCPyris)を用いて、試料をアルミパン中に封印し、昇温速度10℃/mi冷却速度、100℃/minで測定した。
V−CBPは、72℃にガラス転移に由来する吸熱ピークと、159℃に重合反応によるブロードな発熱ピークが観測された。
DV−CBPは、177℃に融解に由来する吸熱ピークと、183℃に重合反応による発熱ピークが観測された。
V−CBP及びDV−CBPのいずれも、降温後、再度昇温したところ、明確なピークは現れず、重合後は熱的に安定であることが確認された。
重合後のV−CBP及びDV−CBP薄膜の不溶性試験を行った。重合膜は、グローブボックス内の窒素雰囲気下にて石英基板上にスピンコート後、180℃で30分間加熱することにより成膜した。各重合膜をクロロホルム、o−ジクロロベンゼン、THFに30分間浸漬し、紫外−可視(UV−vis)吸収スペクトル測定(島津製作所 UV-3150 紫外可視近赤外分光光度計)から吸光度の変化を確認した。
これにより、塗布成膜したDV−CBP又はV−CBPとDV−CBPの混合物は熱重合膜となることにより、その上に電子輸送層等を塗布成膜可能であることが示された。
蛍光分光光度計(Jobin-Yvon-Spex FluroMax-2)を用いて、V−CBP、DV−CBPの重合膜のPLスペクトルを測定したところ、386nm、380nmにそれぞれ最大発光波長を持つ青色発光が認められた。
ストリークカメラ及びクライオスタット(浜松ホトニクス製)を用いて、5KにおけるDV−CBPの重合膜のリン光スペクトルを測定した。
短波長側の発光端からDV−CBPの重合膜の三重項エネルギーを2.60eVと見積もった。DV−CBPはCBP(2.60eV)と同等の三重項エネルギーを有することが認められた。
光電子収量分光法により、DV−CBPの重合膜のイオン化ポテンシャル(Ip)を測定した。大気下の測定にはAC-3(理研計器)、真空下の測定にはPYS-202-Y(住友重機械工業)を用いた。また、UV−vis吸収スペクトルの吸収端から光学エネルギーギャップを求め、イオン化ポテンシャルとの差から電子親和力(Ea)を見積もった。
DV−CBPの重合膜のIpは、大気下で6.10eV、真空下で6.20eVであり、Eaは2.75eVであった。一方、CBPは、Ipが大気下で6.10eV、真空下で5.91eV、Eaが2.66eVであった。このように、DV−CBPの重合膜のIpとEaは、その主骨格であるCBPと同等の値を示し、熱重合基はCBPの電子状態に影響を与えていないことが確認された。
DV−CBPに青色蛍光材料4,4’−ビス[4−(ジフェニルアミノ)スチリル]ビフェニル(略称:BDAVBi)を8wt%の濃度でドープした薄膜のPLQEを測定した。DV−CBPポリマーのドープ膜は、グローブボックス内の窒素雰囲気下、石英基板上にスピンコート後、180℃にて30分間加熱することにより成膜した。
DV−CBPをホストに用いた場合、PLQEは0.75であり、CBPの0.78と同等の高い効率を示した。このことから、ホストから蛍光ドーパントへ効率的に励起子が移動していること、及び、熱重合基が消光剤として働いていないことが認められた。また、DV−CBPは熱のみで重合し、発光材料の光学特性に影響を及ぼす懸念のある開始剤を用いていないことも、高いPLQEの一因であると考えられる。
図1に示すような層構成からなる有機EL素子を作製した。
インジウム−スズ酸化物(略称:ITO)付きガラス基板(陽極1)上にポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸(略称:PEDOT:PSS)の水分散液をスピンコートした後、120℃にて10分間加熱し、バッファ層2(40nm)を成膜した。
次いで、青色蛍光材料4,4’−ビス[4−(ジフェニルアミノ)スチリル]ビフェニル(略称:BDAVBi)とDV−CBPを重量比1:12の割合で混合し、1,2−ジメトキシエタンに溶解させ、PEDOT:PSS上にスピンコートした後、180℃にて30分間加熱し、不溶性の発光層3(40nm)を成膜した。
さらに、2,2’,2”−(1,3,5−ベンゼントリイル)トリス(1−フェニル−1H−ベンゾイミダゾール)(略称:TPBi)を1,2−ジクロロエタンに溶解させ、不溶性の発光層上にスピンコートした後、135℃にて1時間加熱し、電子輸送層4(50nm)を成膜した。
最後に、電子注入層5としてLiF(1nm)と、Al陰極6(80nm)を真空蒸着により成膜した。
上記において作製した有機EL素子の層構成は以下のとおりである。なお、spはスピンコート(塗布)、vdは真空蒸着による成膜であることを意味する(以下、同様)。
ITO/PEDOT:PSS(40nm,sp)/DV−CBP:8wt%BDAVBi(40nm,sp)/TPBi(50nm,sp)/LiF(1nm,vd)/Al(80nm,vd)
このように、塗布成膜後、重合し不溶化する材料を発光層に用いることにより、アルコール可溶性材料に限られていた電子輸送層の塗布成膜が、本実施例で用いた1,2−ジクロロエタンのような溶解性の高い溶媒でも可能となった。
ITO付きガラス基板(陽極1)上にPEDOT:PSSの水分散液をスピンコートし、120℃にて10分間加熱し、バッファ層2(20nm)を成膜した。DV−TCTA(化17)をp−キシレンに溶解させ、PEDOT:PSS上にスピンコートした後、180℃にて30分間加熱し、不溶性のホール輸送層7(20nm)を成膜した。
次いで、トリス[2−(4−トルイル)ピリジン]イリジウム(III)(略称:Ir(mppy)3)とDV−CBPを重量比1:12の割合で混合し、1,2−ジメトキシエタンに溶解させ、不溶性のホール輸送層7上にスピンコートした後、180℃にて30分間加熱し、不溶性の発光層3(40nm)を成膜した。
さらに、TPBiを1,2−ジクロロエタンに溶解させ、不溶性の発光層3上にスピンコートした後、135℃にて1時間加熱し、電子輸送層4(50nm)を成膜した。
最後に、電子注入層5としてLiF(1nm)と、Al陰極6(80nm)を真空蒸着により成膜した。
ITO/PEDOT:PSS(20nm,sp)/DV−TCTA(20nm,sp)/DV−CBP:8wt%Ir(mppy)3(20nm,sp)/TPBi(50nm,sp)/LiF(1nm,vd)/Al(80nm,vd)
2 バッファ層
3 発光層
4 電子輸送層
5 電子注入層
6 陰極
7 ホール輸送層
Claims (4)
- 一対の電極間に発光層を含む1層又は複数層の有機層を備えた有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記有機層の少なくとも1層が、請求項1記載のカルバゾール誘導体の重合物を含有していることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
- 前記有機層の少なくとも1層が、ホスト材料としての請求項1記載のカルバゾール誘導体の重合物と、ゲスト材料としての蛍光又はリン光材料とを含有していることを特徴とする請求項2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
- 前記化学式(2)で表されるカルバゾール誘導体の重合物、又は、前記化学式(1)で表されるカルバゾール誘導体と前記化学式(2)で表されるカルバゾール誘導体との混合物の重合物を含有する有機層と電極との間に電子輸送層の塗布膜が形成されていることを特徴とする請求項2又は3に記載のエレクトロルミネッセンス素子。
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