JP2013058744A - 発光ダイオード用リフレクターおよびハウジング - Google Patents

発光ダイオード用リフレクターおよびハウジング Download PDF

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Abstract

【課題】 400nm〜700nmの波長領域における反射率の変動が少なく且つ高い反射率を有し、耐熱性・耐光性・耐候性・封止材との接着性(シリコーンとの接着性)にも優れる発光ダイオード用リフレクターおよびこれを有するハウジングを提供する。
【解決手段】 平均粒径1.0μm未満であって、屈折率が1.5以上である充填材を含むフッ素樹脂組成物を成形して得られ、場合により接着性改善材を含む、波長400nm〜700nmにおける反射率が85%以上である発光ダイオード用リフレクター。
【選択図】 なし

Description

本発明は、フッ素樹脂組成物を成形して得られる耐熱性・耐光性・耐候性に優れる成形品に関する。本発明の成形品は、特に、発光ダイオード(以下、LEDともいう)用リフレクター、および該リフレクターを有するLED用ハウジングに適している。
したがって、本発明は、400nm〜700nmの波長領域における反射率の変動が少なく、且つ耐熱性・耐光性・耐候性・封止材との接着性にも優れるLED用リフレクター、および該リフレクターを有するLED用ハウジングにも関する。
本発明はまた、400nm〜700nmの波長領域において高反射率(反射率85%以上)を有するLED用リフレクターに関する。
発光ダイオード素子(以下、LEDチップともいう)は小型でフィラメント電球より長期間点灯することが出来る照明であり、電気エネルギーの光への変換効率が高いため、直管型蛍光灯を含む従来型の照明器具を置き換える傾向が強まることに伴って、家電製品、LED表示器、照光式操作スイッチとして広く用いられている。LEDの用途は波長により、一般(可視線)LEDと紫外線LEDに分けられる。
例えば一般(近紫外線〜可視線)LED用途は、自動車用ダッシュボード、ディスプレイ(LCDディスプレイ、パソコン用モニター、小型ゲーム、携帯電話)の表示装置のバックライト、室内照明源、室内外表示装置、交通用表示装置などである。また、紫外線LED用途としては、蛍光体と組合せて演色性の高い白色LED、紙幣識別装置(紙幣識別用センサー光源)、光触媒を用いた空気清浄機(家族用、車載用、冷蔵庫用)、汚染物質処理、医療分野でバイオ、医療、分析用蛍光光源、食品分野で殺菌、野菜や食品の鮮度維持、電子部品・インクなどのUV硬化用光源、医療機器、蛍光アクリルを用いたイルミネーション、UV光源モニター、紫外線光量計、分光分析、蛍光剤励起光源、医療機器、水、空気清浄などの殺菌用光源などが挙げられる。
LEDチップを搭載した従来の発光装置は、図1に示したように、一般的に凹状開口部を有するリフレクター(3)と、この凹状開口部内に実装されたLEDチップ(2)と、上記凹状開口部を封止する硬化樹脂モールド(1)とを備えている。該リフレクターが基板上に取り付けられ、ハウジング(5)を形成する。該リフレクターは、セラミックスや白色反射樹脂などを成形して得られる成形品である。
特許文献1には、多気孔アルミナセラミックスからなるLEDハウジングが記載されている。しかし、多気孔アルミナセラミックスは、耐熱性・耐光性・耐候性に優れ、気孔直径と気孔率を制御することによって高反射率を得ることが出来るが、セラミックスの成形はバッチの工程で1,000℃以上の温度に加熱・時間をかけながら焼成するため、製造コストが高く、生産性が悪いという問題があった。
近年では、LEDハウジングの製造コストを低減するため、連続成形可能な熱可塑性樹脂が用いられている。例えば、ポリアミド系の樹脂では300℃でも融解しないものもあるが、比較例5に示したように、500時間150℃で加熱した場合、樹脂が酸化され黒色に変色するため、反射率が低下するという欠点がある。その為、初期にLEDハウジングの反射率が高くても、高出力動作が継続した場合には樹脂ハウジングが高温になる為、LEDハウジングが変色し発光効率が落ちるという問題があった。また、ポリアミド系の樹脂は高温で劣化しやすいので、溶融成形する際に、溶融成形機内での残留時間が長くなると熱分解・変色が起こり、製品ロスが増え、生産性が悪いという問題もあった。
更に、図3の比較例1に示したように、充填材として用いられるルチル型二酸化チタンの屈折率が2.7であるため、可視領域においては反射率が高いが、波長430nm以下では反射率が低下する。これは、ルチル型二酸化チタンが3.00eVのバンドギャップ構造をもつためと考えられる(参照:非特許文献1)。加えて、吸収したエネルギーが熱に変換されると共に、二酸化チタンが光触媒作用を示すため、樹脂の劣化が進むと考えられる。
また、近年LEDに赤緑青3色の蛍光体を組合せた白色LEDの開発が進められており、演色性に優れることから一般照明の用途への展開が期待されている。この方式は、励起光源の波長が青色の460nmから400nmへとさらに短波長となるため、これまで以上にハウジング部材の劣化の恐れがあり、LEDハウジングの長寿命を期待することが出来ない。
さらに、最近LED発光率がアップすることで、発熱量が増え、LEDハウジングの樹脂の劣化を加速することで、LEDハウジングと封止材との連結が壊れ、接着性が弱くなる恐れがあり、LEDの長寿命化を期待することが出来ない。
その為、耐熱性、耐光性、耐侯性、耐薬品性、高周波電気特性、難燃性などの優れた特徴を有し、酸、アルカリなどの薬液、溶剤、塗料などの移送用の配管、薬液貯蔵容器やタンクなどの化学工業製造用品、またはチューブ、ローラ、電線などの電気工業用品等にも広く利用されているフッ素樹脂、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)または、熱溶融性フッ素樹脂のテトラフルオロエチレン・パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン・パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(EPE)などがLEDリフレクター用樹脂として検討されている。
特許文献2には、ルチル型二酸化チタン(Ti−Pure(登録商標)R900 titanium dioxide)を充填材として含有するフッ素樹脂からなるLED用リフレクターが開示されているが、上記比較例1の様に、430nm以下の波長を吸収するルチル型二酸化チタンを充填材として用いているため、430nmから反射率が低下するという問題があり(比較例1参照)、LED用リフレクター、LEDに赤緑青3色の蛍光体を組合せた白色LED用リフレクターに用いることが出来ない。そのため、400nm〜700nmの波長領域における反射率の変動が少なく且つ高い反射率を有し、耐熱性・耐光性・耐候性・封止材との接着性にも優れたLED用リフレクターおよびこれを有するハウジングが求められている。
特許第4576276号 US2010/0032702A1
J.Phys.Chem.B,Vol.107,p.5709〜5716(2003)。
本発明は、フッ素樹脂組成物を成形して得られる耐熱性・耐光性・耐候性に優れる成形品を提供することを目的とする。
特に、本発明は、400nm〜700nmの波長領域において反射率の変動が少なく且つ高い反射率を有し、耐熱性・耐光性・耐候性・封止材との接着性にも優れたLED用リフレクターおよびハウジングを提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明は、平均粒径が1.0μm未満であって、且つバンドギャップが3.00eVを超える充填材を含むフッ素樹脂組成物を成形して得られる成形品を提供するものである。
また本発明は、バンドギャップが3.00eVを超える充填材を含むフッ素樹脂組成物を成形して得られるLED用リフレクターであって、発光ダイオード用リフレクター中の充填材の平均粒径が1.0μm未満であって、且つ波長380nm〜400nmにおける反射率の最大値と最小値の差が25%を超えるLED用リフレクターを提供するものである。
上記リフレクターにおいて、フッ素樹脂として、テトラフルオロエチレンの単独重合体、またはテトラフルオロエチレンと、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)、ビニリデンフルオライド、ビニルフルオライド、エチレン、プロピレンから選ばれる少なくとも1種のモノマーとの共重合体を、単独または2種以上を混合して使用するLED用リフレクターは、本発明の好ましい態様である。
上記リフレクターにおいて、充填材の屈折率が、1.5以上であるLED用リフレクターは、本発明の好ましい態様である。
上記リフレクターにおいて、充填材の平均粒径が0.01μm以上1.0μm未満であるLED用リフレクターは、本発明の好ましい態様である。
上記リフレクターにおいて、充填材が、金属、金属酸化物、または金属硫化物から選ばれる少なくとも1種であるLED用リフレクターは、本発明の好ましい態様である。
上記リフレクターにおいて、金属、金属酸化物、または金属硫化物が、アナターゼ型二酸化チタン、二酸化スズ、五酸化ニオブ、硫化亜鉛から選ばれる少なくとも1種であるLED用リフレクターは、本発明の好ましい態様である。
上記リフレクターにおいて、金属または金属酸化物が、アナターゼ型二酸化チタンであるLED用リフレクターは、本発明の好ましい態様である。
上記リフレクターにおいて、波長400nm〜700nmにおける反射率が85%以上であるLED用リフレクターは、本発明の好ましい態様である。
上記リフレクターにおいて、充填材の含有量が、フッ素樹脂組成物全体に対して0.1〜50質量%であるLED用リフレクターは、本発明の好ましい態様である。
上記リフレクターにおいて、フッ素樹脂組成物が、接着性改善材を含むLED用リフレクターは、本発明の好ましい態様である。
また上記LED用リフレクターを有するハウジングは、本発明の好ましい態様である。
本発明により、フッ素樹脂組成物を成形して得られる耐熱性・耐光性・耐候性に優れる成形品が提供される。
本発明の成形品は、フッ素樹脂組成物に平均粒径が1.0μm未満であって、且つバンドギャップが3.00eVを超える充填材を含んでおり、400nmの波長まで反射率が低下せず、熱に変換される光の吸収が少なく、その結果耐熱性が高いものになる。
また本発明により、400nm〜700nmの波長領域において反射率の変動が少なく且つ高い反射率を有し、耐熱性・耐光性・耐候性・封止材との接着性にも優れたLED用リフレクターおよび該リフレクターを有するハウジングが提供される。
また本発明により、400nm〜700nmの波長領域において、85%以上の高い反射率が得られる。
またさらに、本発明において、平均粒径1.0μm未満の充填材がリフレクター中に均一に分散されていることにより、従来のものより少ない量の充填材で高い反射率を実現し得る。
LED用リフレクターを有するハウジングを示す概略図である。 テープ状のLED用リフレクターを示す概略図である。 成形品の反射率の波長依存性を示すグラフ(波長350nm〜450nm)である。 成形品の反射率の波長依存性を示すグラフ(波長350nm〜700nm)である。 電子顕微鏡で得た実施例3のフッ素樹脂組成物破断面の写真である。 電子顕微鏡で得た比較例2のフッ素樹脂組成物破断面の写真である。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
本発明において成形品とは、フッ素樹脂組成物を溶融成形して得られる成形品であり、例えば、LED用リフレクター、該リフレクターを有するハウジング、フィルム、繊維、チューブなど、それぞれの所定の目的に応じた十分な強度および耐久性を示す成形品である。
本発明に用いられるフッ素樹脂としては、例えば、テトラフルオロエチレン(TFE)の単独重合体、またはTFEと、少なくとも一種の共重合可能なフッ素化モノマー(コモノマー)との共重合体(TFE共重合体)が挙げられ、これらは単独でもまたは2種以上を混合して使用してもよい。少なくとも一種の共重合可能なフッ素化モノマー(コモノマー)は、TFEの単独重合体(ポリテトラフルオロエチレン(PTFE))の融点(315℃)よりも実質的に低い融点となるのに十分な量で重合体中に存在する。
本発明に用いられるフッ素樹脂は、溶融成形可能なフッ素樹脂であることが好ましい。溶融成形とは従来公知の溶融成形装置を用いる成形方法で、重合体が溶融状態で流動することにより、溶融物から例えば、フィルム、繊維、チューブなど、それぞれの所定の目的に応じた十分な強度および耐久性を示す成形品を成形することができることを意味する。
本発明に好適に使用される溶融成形可能なフッ素樹脂は、少なくとも約40〜98モル%のTFE単位と、約2〜60モル%のTFEと共重合可能な少なくとも1種の他のモノマーとの共重合体である。TFEと共重合可能なモノマーとしては、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、クロロトリフルオロエチレン、フルオロアルコキシトリフルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、ビニルフルオライド、エチレン、プロピレンが挙げられる。
フルオロアルコキシトリフルオロエチレンとしては、炭素数3以上、好ましくは炭素数3〜6個のパーフルオロアルケン、炭素数1〜6個のパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)等が挙げられ、より好ましくは、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)(アルキル基は炭素数1〜5、好ましくは炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐アルキル基)である。
TFE共重合体は、複数種のPAVEモノマーとTFEとの共重合体であってもよく、TFE共重合体中のPAVEは、1〜20質量%であることが好ましい。
好ましいTFE共重合体としては、FEP(TFE/HFP共重合体)、PFA(TFE/PAVE共重合体)、TFE/HFP/PAVE共重合体であって、PAVEがパーフルオロ(エチルビニルエーテル)(PEVE)および/またはパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PPVE)である共重合体、MFA(TFE/パーフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)/PAVE共重合体であって、PAVEのアルキル基が炭素数2以上である共重合体)、THV(TFE/HFP/ビニリデンフルオライド(VF2)共重合体)などが挙げられる。より好ましくは、PFA(TFE/PAVE共重合体)である。本発明のフッ素樹脂は、上記TFE共重合体を単独または2種以上を混合して用いることも出来る。また、単独または2種以上のTFE共重合体と、TFEの単独重合体とを混合して用いることも出来る。
本発明に用いられるTFE共重合体は、ASTM D−1238に準じて、その特定のTFE共重合体の標準温度で測定したメルトフローレート(MFR)が約0.5〜100g/10分、好ましくは0.5〜50g/10分である。
また、本発明に用いられるTFE共重合体の溶融粘度は、米国特許第4,380,618号に記載される修正されたASTM D−1238の方法によって372℃で測定し、少なくとも約102Pa・s、好ましくは102Pa・s〜約106Pa・s、より好ましくは約103〜約105Pa・sであることが望ましい。
フッ素樹脂組成物中のTFE共重合体の含有量は、50〜99.9質量%、好ましくは60〜99質量%、より好ましくは70〜95質量%である。
溶融成形可能なフッ素樹脂の形態としては、溶融成形に適した形態であれば特に限定されず、粉末状物、粉末状物の造粒品、粒状物、フレーク、ペレット、ビーズなどあらゆる形態を挙げることが出来る。
本発明で用いられる平均粒径1.0μm未満の充填材は、400nm〜700nmの波長領域において屈折率が高く、高反射率を有する光反射化合物であることが好ましい。この光反射化合物の平均粒径は、1.0μm未満であり、好ましくは0.01μm以上1.0μm未満、より好ましくは0.1μm以上1.0μm未満、特に好ましくは0.2μm以上1.0μm未満である。光反射化合物の平均粒径が1.0μm以上になると、光散乱効果が低くなり、反射率が低下するため好ましくない。平均粒径は、例えば、粒子サイズアナライザー(例えばCILAS社製、CILAS990、CILAS1090、CILAS1190:ISO13320)などにより測定できる。
また、本発明で用いられる充填材のバンドギャップは、3.00eVを超えるものが好ましい。バンドギャップが3.00eV以下となる充填材は、光触媒と同様に430nm以下において光を吸収するため、430nm以下の波長において十分な反射率を得ることが出来ず好ましくない(日本化学会:表面励起プロセスの化学、季刊 化学総説 No.12、p.132〜145(1991))。
バンドギャップは、Journal of Molecular CatalysisA Chemical 338,18 (2011) band gap of anatase TiO2 3.27eVに記載される様な方法にて、島津製作所製自記分光光度計 UV−3101PCを用いて測定することが出来る。
本発明で用いられる充填材の屈折率は1.5以上であることが好ましく、より好ましくは2.0以上である。屈折率が1.5未満の場合には、高い反射率を得ることが出来なくなるため好ましくない。
この様な充填材としては、金属、金属酸化物、及び金属硫化物などが挙げられ、好ましくは金属または金属酸化物である。金属または金属酸化物としては、例えば結晶系のアナターゼ型二酸化チタンTiO2(屈折率:2.5、バンドギャップ:3.27eV)、二酸化スズSnO2(屈折率:2.0、バンドギャップ:3.80eV)、五酸化ニオブNb2O5(屈折率:2.3、バンドギャップ:3.40eV)、酸化亜鉛ZnO(屈折率:2.0、バンドギャップ:3.30eV)を挙げることができ、金属硫化物としては、例えば硫化亜鉛ZnS(屈折率:2.37、バンドギャップ:3.60eV)を挙げることができる。好ましくは、アナターゼ型二酸化チタンであり、市販品としては、例えば、富士チタン株式会社製、TA―300が挙げられる。
また、成形品中の充填材の混合状態は、電界放射型走査電子顕微鏡(例えば、SEM、日立製作所製、S−4500)を用いて観察することができる。
フッ素樹脂組成物中の充填材は、0.1〜50質量%、好ましくは1〜40質量%、より好ましくは5〜30質量%である。充填材が0.1質量%未満の場合には、得られるリフレクターの反射率が低くなるため好ましくなく、充填材の割合が50質量%を超える場合には、フッ素樹脂組成物の溶融粘度が高くなり射出成形し難く、得られる成形品の強度および耐久性が低下するため好ましくない。
また、本発明のフッ素樹脂組成物は、シリコーン、エポキシ樹脂、或いはこれらの混合物からなる封止材との接着性を改善するために、接着性改善材(adhesion promoter)を含有しても良い。接着性改善材は、シリコーン、エポキシ樹脂、或いはこれらの混合物との接着性を示すものであれば特に限定されず、例えば無機充填材或いは有機充填材が挙げられる。無機充填材としては、金属、例えば銀、銅等、金属酸化物、例えばアルミナ、シリカ、マイカ等、が挙げられ、好ましくはアルミナである。無機充填材の表面に親水性を有する官能基(例えばヒドロキシル末端基)、或いはビニル基、シラン基等の官能基を有する無機充填材がより好ましい。有機充填材としては、耐熱性樹脂、例えばシリコンパウダー、ポリイミド、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルスルホン(PES)、スルホン酸基を有するテトラフルオロエチレン共重合体(例えば、Nafion(登録商標))等が挙げられ、好ましくはスルホン酸基を有するテトラフルオロエチレン共重合体である。
これらの接着性改善材は、シリコーン、エポキシ樹脂、或いはこれらの混合物が架橋する際に、封止材とフッ素樹脂組成物との接着性を強化する。
フッ素樹脂組成物中の接着性改善材は、フッ素樹脂組成物全体に対して0.1〜20質量%、好ましくは0.5〜10質量%、より好ましくは1〜5質量%である。接着性改善材としてアルミナを用いる場合、アルミナが0.1質量%未満の場合には、封止材との十分な接着性の改善効果が得られず、アルミナが20質量%を超える場合には、得られるリフレクターの反射率の低下が起こるため好ましくない。
フッ素樹脂と充填材との混合は、溶融成形前であっても、溶融成形と同時であっても良い。また、混合方法としては、一般的に用いられている混合方法を用いることができ、例えば、共凝集法(特開2007−119769)、プラネタリーミキサー、高速インペラー分散機、ロータリードラム型ミキサー、スクリュー型ミキサー、ベルトコンベヤ混合方式、ボールミル、ペブルミル、サンドミル、ロールミル、アトライター、ビードミルなどの公知慣用の分散・混合機を用いて行うことが出来る。フッ素樹脂と充填材を均一に分散出来る装置がより好ましい。
溶融成形前に、フッ素樹脂と充填材との混合を行って得られるフッ素樹脂組成物の形態は、粉末状物、粉末状物の造粒品、粒状物、フレーク、ペレット、ビーズなどあらゆる形態を挙げることが出来る。
前記の混合方法以外に次のようなウェット混合方法もある。例えば、充填材を、担体として働く水溶液或いは有機溶液に溶解し、フッ素樹脂にスプレーすることにより、充填材で被覆されたフッ素樹脂を得ることが出来る。尚、前記の水溶液或いは有機溶液を飛ばすため、軽く乾燥することが好ましい。有機溶液としては、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、クロロホルム、アセトン、トルエンなどを挙げることが出来る。また、充填材に対する溶解性が高いものがより好ましい。
フッ素樹脂組成物の溶融成形方法としては、従来公知の成形方法を用いることができ、例えば、圧縮成形、押出成形、トランスファー成形、ブロー成形、射出成形、回転成形、ライニング成形、発泡体押出成形、フィルム成形などを挙げることができるが、好ましくは押出成形或いは射出成形である。
上記溶融成形方法により得られる成形品は、380nm〜400nmにおける反射率の最大値と最小値の差が25%を超えることから、400nm〜700nmの波長領域において反射率の変動が少なく且つ高い反射率を有し、耐熱性、耐光性、耐候性にも優れた成形品である。後記する測定方法で測定する400nm〜700nmの波長領域における成形品の反射率は85%以上であり、安定した反射率を得ることが可能となる。
該成形品をLED用リフレクターとして用いることにより、400nm〜700nmの波長領域において反射率の変動が少なく且つ85%以上の高い反射率を有し、耐熱性、耐光性、耐候性に優れた発光ダイオード用ハウジングを得ることが出来る。
図3に示される波長350nm〜700nmにおける成形品の反射率は、溶融圧縮成形によって作製した厚み約1.5mmの試料の反射率を以下の条件で測定して得ることができる。試料表面の反射層に波長350nm〜700nmの光を入射角10°で照射し、試料背面に反射板を置かず透過光を逃がす方法で、検出器に積分球を搭載した分光光度計(日立製作所製U−4500)を用いて、正反射成分と拡散反射成分を含む分光反射率(標準白板を対照とした相対反射率)を波長毎に測定した。
本発明におけるLED用リフレクターの形状は特に制限されず、図1に示される凹状のもののほか、例えば、図2に示されるように、テープ状またはシート状のフレキシブル基板上にLED発光素子を複数配置した場合、単膜で絶縁、接着、およびリフレクター機能を具備したカバーレイ層としても用いることが出来る。
本発明においてハウジングは、LEDチップを実装したリフレクターを基板上に取り付けたものを指し、ここでLEDチップは封止材により封止される。
以下に本発明を、実施例および比較例を挙げてさらに具体的に説明するが、この説明は本発明を限定するものではない。
本発明において各物性の測定は、下記の方法によって行った。
A.物性の測定
(1)融点(融解ピーク温度)
示差走査熱量計(Pyris1型DSC、パーキンエルマー社製)を用いた。試料約10mgを秤量して専用のアルミパンに入れ、専用のクリンパーによってクリンプした後、DSC本体に収納し、150℃から360℃まで10℃/分で昇温をする。この時得られる融解曲線から融解ピーク温度(Tm)を求めた。
(2)メルトフローレート(MFR)
ASTM D−1238−95に準拠した耐食性のシリンダー、ダイ、ピストンを備えたメルトインデクサー(東洋精機製)を用いて、5gの試料粉末を372±1℃に保持されたシリンダーに充填して5分間保持した後、5kgの荷重(ピストンおよび重り)下でダイオリフィスを通して押出し、この時の押出速度(g/10分)をMFRとして求めた。
(3)反射率測定
溶融圧縮成形によって作製した厚み約1.5mmの試料の反射率を以下の条件で測定した。
試料表面の反射層に波長350nm〜700nmの光を入射角10°で照射し、試料背面に反射板を置かず透過光を逃がす方法で、検出器に積分球を搭載した分光光度計(日立製作所製U−4500)を用いて、正反射成分と拡散反射成分を含む分光反射率(標準白板を対照とした相対反射率)を波長毎に測定した。
(4)熱処理試験
溶融圧縮成形することによって作成された厚み約1.5mm試料をすでに150℃に昇温された熱風循環式のオーブン(ESPEC SUPER−TEM.OVEN STPH−101)に入れて熱処理を行った。
(5)溶融混練試験
フッ素樹脂と充填材とを表1に示した組成で、溶融混練装置(東洋精機製作所製、KF−70V小型セグメントミキサー)を用いて、フッ素樹脂融点(約308℃)より約40℃高く、350℃、100rpmで5分間溶融混練し、フッ素樹脂組成物を得た。
(6)充填材の分散状態観察
上記のフッ素樹脂組成物を350℃で溶融圧縮成形することによって作成された厚み約1.5mm試料の破断面の走査電子顕微鏡(SEM、日立製作所製、S−4500)観察から充填材の均一分散状態を確認した。また充填材の平均粒径を表1に記す。
(7)せん断接着強度測定
試験片の長さ187.5±0.25mmを60±0.25mmにし、重ね長さ12.5±0.25mmを重ね長さ40.5±0.5mmにし、試験片を重ね合わせ部分の端から50mm±1mmを10.5±0.5mmにした以外は、JIS K 6850に準拠してせん断接着強度を測定した(25℃、引張速度1mm/分)。
B.原料
本発明の実施例、および比較例で用いた原料は下記の通りである。
(1)樹脂
a)パーフルオロフッ素樹脂(TFE/PAVE共重合体、PFA)
三井・デュポンフロロケミカル社製 PFA440HPJ
(融点308℃、メルト フローレート15g/10分)
b)ポリフタルアミド(PPA)複合体
ソルベイアドバンストポリマーズ製、 AMODEL(登録商標)A−4122NLWH905
(融点324℃、22重量%のガラス繊維含有)
(2)充填材
a)アナターゼ型二酸化チタン
富士チタン株式会社製、TA―300
(平均粒径0.3μm)
b)五酸化ニオブ
株式会社高純度化学研究所 Nb25 powder
(平均粒径0.4μm)
c)ルチル型二酸化チタン
E.I.DuPont de Nemours and Company製、Ti−Pure(登録商標)R−900
(平均粒径0.41μm)
d)酸化亜鉛
堺化学工業株式会社製、FINEX−30 powder
(平均粒径0.04μm)
(3)接着性改善材
a)α−アルミナ
日本軽金属株式会社製、A31(平均粒径5.2μm)
b)テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(4−メチル−3,6−ジオキサ−7−オクテン−1−スルホニルフルオリド)[Tetrafluoroethylene/perfluoro(4-methyl-3,6-dioxa-7-octene-1-sulfonyl fluoride)]共重合体
E.I.DuPont de Nemours and Company製、Nafion(登録商標)
Sulfonic Resins R1000
(4)LED封止材:シリコーン
信越化学工業株式会社、ASP−1010(A/B)
(実施例1)
アナターゼ型二酸化チタン(富士チタン株式会社製、TA−300)12.2グラムと100mlの純水をビーカー(2L)に入れ、ダウンフロータイププロペラ型4枚羽根付き攪拌機を用いて150rpmで10分間攪拌した。次いでこれに、二酸化チタン含量がフッ素樹脂PFA(三井・デュポンフロロケミカル社製、PFA440HPJ)に対して10質量%になるよう、乳化重合で得られたPFA水性分散液体372.9グラムを入れ、また30分間攪拌した。撹拌後、これに60%硝酸1.2mlを加えて、ゲル化が進み攪拌が出来なくなるまで攪拌しながらPFA一次粒子とアナターゼ型二酸化チタン粒子を一気に凝集させた。得られたゲル状の凝集体を水性媒体から分離させることで余分の水を除去した後、残った凝集体を150℃で10時間乾燥させ、凝集体の乾燥粉末を得た。得られた乾燥粉末を、溶融混練装置(東洋精機製作所製、KF−70V小型セグメントミクサー)を用いて、350℃、100rpmで5分間溶融混練し、フッ素樹脂組成物を得た。電子顕微鏡により得られたフッ素樹脂組成物の破断面からアナターゼ型二酸化チタンの分散状態を確認したところ、二酸化チタンは均一に分散していることがわかった。またフッ素樹脂組成物を350℃で溶融圧縮成形することによって作成された厚み約1.5mmの試料の反射率を測定した。得られた結果を表1にまとめた。
(実施例2)
アナターゼ型二酸化チタン(富士チタン株式会社製、TA−300)19.4グラムと150mlの純水をビーカー(2L)に入れ、ダウンフロータイププロペラ型4枚羽根付き攪拌機を用いて150rpmで10分間攪拌した。次いでこれに、二酸化チタン含量がフッ素樹脂PFA(三井・デュポンフロロケミカル社製、PFA440HPJ)に対して15質量%になるよう、乳化重合で得られたPFA水性分散液体372.9グラムを入れ、また30分間攪拌した。撹拌後、これに60%硝酸1.3mlを加えて、ゲル化が進み攪拌が出来なくなるまで攪拌しながらPFA一次粒子とアナターゼ型二酸化チタン粒子を一気に凝集させた。得られたゲル状の凝集体を水性媒体から分離させることで余分の水を除去した後、残った凝集体を150℃で10時間乾燥させ、凝集体の乾燥粉末を得た。得られた乾燥粉末を、溶融混練装置(東洋精機製作所製、KF−70V小型セグメントミクサー)を用いて、350℃、100rpmで5分間溶融混練し、フッ素樹脂組成物を得た。電子顕微鏡により得られたフッ素樹脂組成物の破断面からアナターゼ型二酸化チタンの分散状態を確認したところ、二酸化チタンは均一に分散していることがわかった。またフッ素樹脂組成物を350℃で溶融圧縮成形することによって作成された厚み約1.5mmの試料の反射率を測定した。得られた結果を表1にまとめた。
(実施例3)
アナターゼ型二酸化チタン(富士チタン株式会社製、TA−300)27.5グラムと200mlの純水をビーカー(2L)に入れ、ダウンフロータイププロペラ型4枚羽根付き攪拌機を用いて150rpmで10分間攪拌した。次いでこれに、二酸化チタン含量がフッ素樹脂PFA(三井・デュポンフロロケミカル社製、PFA440HPJ)に対して20質量%になるよう、乳化重合で得られたPFA水性分散液体372.9グラムを入れ、また30分間攪拌した。撹拌後、これに60%硝酸1.4mlを加えて、ゲル化が進み攪拌が出来なくなるまで攪拌しながらPFA一次粒子とアナターゼ型二酸化チタン粒子を一気に凝集させた。得られたゲル状の凝集体を水性媒体から分離させることで余分の水を除去した後、残った凝集体を150℃で10時間乾燥させ、凝集体の乾燥粉末を得た。得られた乾燥粉末を、溶融混練装置(東洋精機製作所製、KF−70V小型セグメントミクサー)を用いて、350℃、100rpmで5分間溶融混練し、フッ素樹脂組成物を得た。電子顕微鏡により得られたフッ素樹脂組成物破断面からアナターゼ型二酸化チタンの分散状態を確認したところ、図5に示したように二酸化チタンはPFAマトリックス中に約0.3μmの粒径で(1次粒子の状態で)均一に分散していることがわかった。またフッ素樹脂組成物を350℃で溶融圧縮成形することによって作成された厚み約1.5mmの試料の反射率を測定した。得られた結果を表1にまとめた。
(実施例4)
五酸化ニオブ粒子(株式会社高純度化学研究所製、Nb25 powder)とフッ素樹脂PFAと(三井・デュポンフロロケミカル社製、PFA440HPJ)を、表1に示した組成で、溶融混練装置(東洋精機製作所製、KF−70V小型セグメントミクサー)を用いて、350℃、100rpmで5分間溶融混練し、フッ素樹脂組成物を得た。電子顕微鏡により得られたフッ素樹脂組成物の破断面から五酸化ニオブ粒子の分散状態を確認したところ、五酸化ニオブ粒子は均一に分散していることがわかった。また、フッ素樹脂組成物を350℃で溶融圧縮成形することによって作成された厚み約1.5mmの試料の反射率を測定した。得られた結果を表1にまとめた。
(実施例5)
酸化亜鉛粒子(堺化学工業株式会社製、FINEX−30 powder)とフッ素樹脂PFA(三井・デュポンフロロケミカル社製、PFA440HPJ)とを、表1に示した組成で、溶融混練装置(東洋精機製作所製、KF−70V小型セグメントミクサー)を用いて、350℃、100rpmで5分間溶融混練し、フッ素樹脂組成物を得た。電子顕微鏡により得られたフッ素樹脂組成物の破断面から酸化亜鉛粒子の分散状態を確認したところ、酸化亜鉛粒子は均一に分散していることがわかった。またフッ素樹脂組成物を350℃で溶融圧縮成形することによって作成された厚み約1.5mmの試料の反射率を測定した。得られた結果を表1にまとめた。
(実施例6)
実施例3で得られたフッ素樹脂組成物を350℃で溶融圧縮成形することによって、厚み約1.5mmの試料を作成した。得られたサンプルを150℃に昇温された熱風循環式のオーブンに入れて100時間熱処理を行った後、常温で反射率を測定した。得られた結果を表2にまとめた。
(実施例7)
実施例3で得られたフッ素樹脂組成物を350℃で溶融圧縮成形することによって厚み約1.5mm試料を作成した。得られたサンプルを150℃に昇温された熱風循環式のオーブンに入れて500時間熱処理を行った後、常温で反射率を測定した。得られた結果を表2にまとめた。
(実施例8)
実施例3で得られたフッ素樹脂組成物を350℃で溶融圧縮成形することによって厚み約1.5mmの試料を作成した。得られたサンプルを180℃に昇温された熱風循環式のオーブンに入れて72時間熱処理を行った後、常温で反射率を測定した。得られた結果を表3にまとめた。
(実施例9)
実施例3で得られたフッ素樹脂組成物を350℃で溶融圧縮成形することによって厚み約1.5mmの試料を作成した。得られたサンプルを180℃に昇温された熱風循環式のオーブンに入れて140時間熱処理を行った後、常温で反射率を測定した。得られた結果を表3にまとめた。
(実施例10)
実施例3で得られたフッ素樹脂組成物を350℃で溶融圧縮成形することによって、厚み約1.6±0.1mm、長さ60mm、幅25mmの試料を作成した。重ねた2枚の試料の間の接着部分にLED封止材のシリコーン(信越化学工業株式会社、ASP−1010(A/B))を塗って100℃×2時間、そして150℃×3時間で架橋反応を行った。架橋した試料のせん断接着強度を25℃で引張速度1mm/分で測定した。得られた結果を表4にまとめた。
(実施例11)
アルミナ含量がフッ素樹脂PFAに対して1質量%になるように、実施例3で得られた複合組成物にα−アルミナ(日本軽金属株式会社製、A31)を入れ、溶融混練装置(東洋精機製作所製、KF−70V小型セグメントミクサー)を用いて、350℃、100rpmで5分間溶融混練し、フッ素樹脂組成物を得た。得られたフッ素樹脂組成物を350℃で溶融圧縮成形することによって、厚み約1.6±0.1mm、長さ60mm、幅25mmの試料を作成した。重ねた2枚の試料の間の接着部分にLED封止材のシリコーン(信越化学工業株式会社、ASP−1010(A/B))を塗って100℃×2時間、そして150℃×3時間で架橋反応を行った。架橋した試料のせん断接着強度を25℃で引張速度1mm/分で測定した。得られた結果を表4にまとめた。
(実施例12)
テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(4−メチル−3,6−ジオキサ−7−オクテン−1−スルホニルフルオリド)共重合体の含量がフッ素樹脂PFAに対して5質量%になるように、実施例3で得られた複合組成物にテトラフルオロエチレン/パーフルオロ(4−メチル−3,6−ジオキサ−7−オクテン−1−スルホニルフルオリド)共重合体(E.I.DuPont de Nemours and Company製、Nafion(登録商標) Sulfonic Resins R1000)を入れ、溶融混練装置(東洋精機製作所製、KF−70V小型セグメントミクサー)を用いて、350℃、100rpmで5分間溶融混練し、フッ素樹脂組成物を得た。得られたフッ素樹脂組成物を350℃で溶融圧縮成形することによって、厚み約1.6±0.1mm、長さ60mm、幅25mmの試料を作成した。重ねた2枚の試料の間の接着部分にLED封止材のシリコーン(信越化学工業株式会社、ASP−1010(A/B))を塗って100℃x2時間、そして150℃x3時間で架橋反応を行った。架橋した試料のせん断接着強度を25℃で引張速度1mm/分で測定した。得られた結果を表4にまとめた。
(比較例1)
ルチル型二酸化チタン(E.I.DuPont de Nemours and Company製、Ti−Pure(登録商標)R−900)とフッ素樹脂PFA(三井・デュポンフロロケミカル社製、PFA440HPJ)を、表1に示した組成で溶融混練装置(東洋精機製作所製、KF−70V小型セグメントミクサー)を用いて、350℃、100rpmで5分間溶融混練し、フッ素樹脂組成物を得た。電子顕微鏡により得られたフッ素樹脂組成物の破断面からルチル型二酸化チタンの分散状態を確認したところ、二酸化チタンはPFAに均一に分散していることが分かった。また、フッ素樹脂組成物を350℃で溶融圧縮成形することによって作成された厚み約1.5mmの試料の反射率を測定した。得られた結果を表1にまとめた。
(比較例2)
アナターゼ型二酸化チタン(富士チタン株式会社製、TA−300)とフッ素樹脂PFA(三井・デュポンフロロケミカル社製、PFA440HPJ)とを表1に示した組成でポリ袋に入れ、手で5分間振り動かしてから350℃で溶融圧縮成形することによってシートを作成した後、このシートを細かく切って同じ溶融圧縮成形を再度行うことによって厚み約1.5mmの試料を作成した。電子顕微鏡により得られたフッ素樹脂組成物破断面からアナターゼ型二酸化チタンの分散状態を確認した。図6に示したように、二酸化チタンは直径が80μm〜200μmの凝集体を多数作り、PFAに分散していることが分かった。試料の異なる3箇所以上で反射率を測定したところ、同じ反射率の値が得られた。得られた結果を表1にまとめた。
(比較例3)
充填材としてガラス繊維を含有するPPA複合体(ソルベイアドバンストポリマーズ製、AMODEL(登録商標)A−4122NLWH905)を340℃で溶融圧縮成形することによって作成された厚み約1.5mmの試料の反射率を測定し、得られた結果を表2にまとめた。
(比較例4)
比較例3と同条件で作成した試料を150℃に昇温された熱風循環式のオーブンに入れて100時間熱処理を行った後、常温で反射率を測定した。得られた結果を表2にまとめた。
(比較例5)
比較例3と同条件で作成した試料を150℃に昇温された熱風循環式のオーブンに入れて空気中で500時間熱処理を行った後、反射率を測定した。得られた結果を表2にまとめた。
(比較例6)
比較例3と同条件で作成した試料を180℃に昇温された熱風循環式のオーブンに入れて空気中で72時間熱処理を行った後、反射率を測定した。得られた結果を表3にまとめた。
(比較例7)
比較例3と同条件で作成した試料を180℃に昇温された熱風循環式のオーブンに入れて空気中で140時間熱処理を行った後、反射率を測定した。得られた結果を表3にまとめた。
(参考例1)
フッ素樹脂PFA440HPJを350℃で溶融圧縮成形することによって厚み約1.5mmの試料を作成した。得られた試料の反射率を常温で測定して表1にまとめた。
(リフレクター反射率のアナターゼ型二酸化チタン、五酸化ニオブ、酸化亜鉛の添加依存性)
実施例1では、10質量%のアナターゼ型二酸化チタン粒子(粒径が0.3μm)をPFAに均一に分散させると、波長測定(400nm〜700nm)範囲で光を吸収せずに、90%以上の反射率を示すことがわかった。また、実施例1〜3に示したように、二酸化チタン添加量を20質量%まで増やしても、その反射率は実施例1の各波長の反射率とほぼ変わらないので、90%以上の反射率を出すために10質量%の充填量で十分であることが分かった。また、実施例4と実施例5では、それぞれ10質量%の五酸化ニオブ(粒径が0.4μm)と20質量%の酸化亜鉛(粒径が0.04μm)をPFAに均一に分散させたところ、400nm〜700nm波長領域で光を吸収せずに85%以上の反射率を示した。
一方、表1や図3や図4に示したように、充填材を含まないフッ素樹脂(参考例1)は、光の透過率が高く、特に可視線領域では低い反射率を示す。
(アナターゼ型二酸化チタンの光反射挙動)
実施例1では、10質量%のアナターゼ型二酸化チタンをPFAに均一に分散させると、400nm〜700nm波長領域で光を吸収せずに90%以上の反射率を示した。一方、表1と図3に示したように、10質量%のルチル型系二酸化チタンをPFAに均一に分散させると(比較例1)、可視線領域(440nm〜700nm)で90%以上の反射率を示したが、ルチル型二酸化チタンは430nm以下の波長の光を吸収するので、430nm以下の領域で反射率が低下することが分かった。また、表2と図3に示したように、PPA複合体(比較例3)も上記のPFA/ルチル型系二酸化チタンと同様に、430nm以下の領域で反射率が低下することが分かった。
(反射率のアナターゼ型二酸化チタン粒径依存性)
実施例3では20質量%のアナターゼ型二酸化チタン粒子をPFAに均一に分散させることで、400nm〜700nm波長領域で90%以上の反射率を示した。一方、比較例2は、実施例3で使われた二酸化チタンと同じ結晶(アナターゼ型二酸化チタン)を、同じ添加量(20質量%)で用いたが、あまりせん断力を掛けない溶融圧縮成形で溶融成形されたので、二酸化チタンの凝集が起こり、粒径が80μm〜200μmとなって、同じ波長領域で70%の反射率しか示さなかった。よって、400nm〜700nmの波長領域で高反射を出すためには、アナターゼ型二酸化チタンを一次粒子状態で均一に分散させる必要があり、溶融混練する際に、せん断力を掛ける必要があることが分かった。
(反射率の150℃熱処理時間依存性)
実施例5および6では、フッ素樹脂組成物を150℃、100時間または500時間で継続的に熱処理しても、反射率が殆ど変わらないことが分かった。一方、比較例4および5のPPA複合体では、実施例5および6と同じ条件で熱処理すると、試料に変色が起こり、表2に示したように可視線領域での反射率が低下した。
(反射率の180℃熱処理時間依存性)
実施例7および8では、フッ素樹脂組成物を180℃、72時間または140時間で継続的に熱処理しても、反射率が殆ど変わらないことが分かった。一方、比較例6および7のPPA複合体では、実施例7および8と同じ条件で熱処理すると、試料に変色が起こり、表3に示したように可視線領域での反射率が低下した。
(シリコーンの封止材との接着改善)
表4に示したように、実施例9ではシリコーンの封止材との接着強度が0.04MPaであったが、実施例11では1質量%のアルミナを添加することで、接着強度が0.15MPaまで上がることが分かった。さらに、1質量%のアルミナを添加しても、400nm〜700nmの波長領域で高反射率(90%以上)を維持出来ることが分かった。
Figure 2013058744
Figure 2013058744
Figure 2013058744
Figure 2013058744
本発明により、フッ素樹脂組成物を成形して得られる耐熱性・耐光性・耐候性に優れる成形品が提供される。
本発明により、400nm〜700nmの波長領域において反射率の変動が少なく、且つ耐熱性・耐光性・耐候性・封止材との接着性に優れるLED用リフレクターおよびこれを有するハウジングが提供される。
400nm〜700nmの波長領域におけるフッ素樹脂組成物を成形して得られる成形品の反射率が85%以上となり、安定した反射率を得ることが可能となる。
また、少量の接着性改善材(アルミナ等)を添加することで、シリコーンの封止材との接着を改善し、高反射率を維持することが可能となる。
1 封止材
2 LEDチップ
3 リフレクター
4 基板
5 ハウジング
6 間隙

Claims (12)

  1. バンドギャップが3.00eVを超える充填材を含むフッ素樹脂組成物を成形して得られる発光ダイオード用リフレクターであって、発光ダイオード用リフレクター中の充填材の平均粒径が1.0μm未満であって、且つ波長380nm〜400nmにおける反射率の最大値と最小値の差が25%を超える発光ダイオード用リフレクター。
  2. フッ素樹脂として、テトラフルオロエチレンの単独重合体、またはテトラフルオロエチレンと、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)、ビニリデンフルオライド、ビニルフルオライド、エチレン、プロピレンから選ばれる少なくとも1種のモノマーとの共重合体を、単独または2種以上を混合して使用する請求項1に記載の発光ダイオード用リフレクター。
  3. 充填材の屈折率が1.5以上である請求項1または2に記載の発光ダイオード用リフレクター。
  4. 充填材の平均粒径が、0.01μm以上1.0μm未満である請求項1〜3のいずれかに記載の発光ダイオード用リフレクター。
  5. 充填材が、金属、金属酸化物、または金属硫化物から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜4のいずれかに記載の発光ダイオード用リフレクター。
  6. 金属、金属酸化物、または金属硫化物が、アナターゼ型二酸化チタン、二酸化スズ、五酸化ニオブ、酸化亜鉛、硫化亜鉛から選ばれる少なくとも1種である請求項5に記載の発光ダイオード用リフレクター。
  7. 金属または金属酸化物が、アナターゼ型二酸化チタンである請求項6に記載の発光ダイオード用リフレクター。
  8. 波長400nm〜700nmにおける反射率が85%以上である、請求項1〜7のいずれかに記載の発光ダイオード用リフレクター。
  9. 充填材の含有量が、フッ素樹脂組成物全体に対して0.1〜50質量%である請求項1〜8のいずれかに記載の発光ダイオード用リフレクター。
  10. フッ素樹脂組成物が、接着性改善材を含む請求項1〜9のいずれかに記載の発光ダイオード用リフレクター。
  11. 請求項1〜10のいずれかに記載の発光ダイオード用リフレクターを有するハウジング。
  12. 平均粒径が1.0μm未満であって且つバンドギャップが3.00eVを超える充填材を含むフッ素樹脂組成物を成形して得られる成形品。
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