JP2013053188A - ポリアミド樹脂組成物およびそれからなる成形体 - Google Patents

ポリアミド樹脂組成物およびそれからなる成形体 Download PDF

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Abstract

【課題】耐熱性や熱伝導性に加えて、外観が良好なポリアミド樹脂組成物を提供する。
【解決手段】テレフタル酸成分と炭素数8〜12の直鎖脂肪族ジアミン成分とからなるポリアミド(A)および熱伝導性充填材(B)とを含有し、(A)と(B)との容量比(A/B)が30/70〜90/10であって、前記ポリアミド(A)中のジアミン単位に対するトリアミン単位が0.3モル%以下であることを特徴とするポリアミド樹脂組成物、および、該直鎖脂肪族ジアミンが、1,10−デカンジアミンであることを特徴とするポリアミド樹脂組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、熱伝導性ポリアミド樹脂組成物に関する。
ポリアミド6T、ポリアミド9Tに代表される芳香族ポリアミドは、耐熱性や成形加工性に優れているため、電気電子部品等の成形材料として用いられている。これらの分野においては、高性能化、小型化および軽量化が盛んにおこなわれており、近年、発生する熱を効果的に外部に放散させる熱対策が非常に重要な課題となっている。従来から、放熱性を改良する方法としては、熱伝導性の充填材を成形材料に配合する方法が知られている(特許文献1)。
特開2004−59638号公報
しかしながら、特許文献1で用いられているポリアミドは、含まれるトリアミン量が多く、成形時にゲルが発生し外観が悪くなるという問題があった。
本発明は、耐熱性や熱伝導性に加えて、外観が良好なポリアミド樹脂組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明の要旨は下記の通りである。
(1)テレフタル酸成分と炭素数8〜12の直鎖脂肪族ジアミン成分とからなるポリアミド(A)および熱伝導性充填材(B)とを含有し、(A)と(B)との容量比(A/B)が30/70〜90/10であって、前記ポリアミド(A)中のジアミン単位に対するトリアミン単位が0.3モル%以下であることを特徴とするポリアミド樹脂組成物。
(2)直鎖脂肪族ジアミンが、1,10−デカンジアミンであることを特徴とする(1)に記載のポリアミド樹脂組成物。
(3)熱伝導性充填材(B)が、窒化ホウ素、黒鉛、タルク、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウムおよび酸化亜鉛からなる群より選ばれた1種以上であることを特徴とする(1)または(2)に記載のポリアミド樹脂組成物。
(4)(1)〜(3)のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物を成形してなる成形体。
本発明によれば、耐熱性、熱伝導性に加えて、外観が良好なポリアミド樹脂組成物を提供することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、ポリアミド(A)と熱伝導性充填材(B)から構成される。
本発明で用いるポリアミド(A)は、テレフタル酸成分と炭素数8〜12の直鎖脂肪族ジアミン成分とから構成される。これらのモノマーを用いることで、耐熱性が高いポリアミドを得ることができる。
炭素数が8〜12の直鎖脂肪族ジアミンとしては、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミンが挙げられる。中でも、1,8−オクタンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,12−ドデカンジアミンがより好ましい。一般的に、ポリアミドにおいては、いわゆる偶奇効果が発現し、用いられるジアミンの炭素数が偶数である場合の方が、炭素数が奇数である場合よりも、より安定な結晶構造をとり、耐熱性が高いためである。ジアミンの炭素数が8未満の場合、得られるポリアミドの融点が340℃を超え、アミド結合の分解温度を上回るため好ましくない。一方、ジアミンの炭素数が12を超える場合、得られるポリアミドの耐熱性が不足するため好ましくない。
ポリアミド(A)には、テレフタル酸以外の他のジカルボン酸成分、および/または炭素数が8〜12である直鎖脂肪族ジアミン以外の種類の他のジアミン成分(以下、「共重合成分」と略称する場合がある。)が共重合されていてもよい。共重合成分は、原料モノマーの総モル数に対し、5モル%以下とすることが好ましく、実質的に共重合成分を含まないことがより好ましい。共重合成分を5モル%以下とすることで、耐熱性を向上させることができる。
他のジカルボン酸成分としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸が挙げられる。
他のジアミン成分としては、1,2−エタンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン等の脂肪族ジアミン、シクロヘキサンジアミン等の脂環式ジアミン、キシリレンジアミン等の芳香族ジアミンが挙げられる。なお、上記に列挙された1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミンのいずれかは、本発明のポリアミドに必須のジアミン成分である。1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミンのいずれかを必須のジアミン成分として用いた場合には、それ以外のジアミン成分を共重合成分として用いてもよい。
ポリアミド(A)には、必要に応じて、カプロラクタムやラウロラクタム等のラクタム類、アミノカプロン酸や11−アミノウンデカン酸等のω−アミノカルボン酸を共重合させてもよい。
ポリアミド(A)の重量平均分子量は、15,000〜50,000であることが好ましく、20,000〜50,000であることがより好ましく、26,000〜50,000であることがさらに好ましい。ポリアミドの重量平均分子量を15,000〜50,000とすることで、射出成形時の流動性を維持しつつも、機械的特性を向上させることができる。
ポリアミド(A)の相対粘度は、特に限定されず、目的に応じて適宜設定すればよい。例えば、成形加工が容易なポリアミドを得ようとすれば、相対粘度を2.0以上とすることが好ましい。
本発明で用いるポリアミド(A)は、トリアミン量が十分に低減されていることが必要である。ポリアミド(A)は、重合時におけるジアミン同士の縮合反応により、トリアミン構造が副生し易い。ポリアミド中に含まれるトリアミン単位は、ジアミン単位の0.3モル%以下であることが必要で、0.15モル%以下であることが好ましく、0.12モル%以下であることがさらに好ましく、0.10モル%以下であることが特に好ましい。ポリアミド(A)中のトリアミン構造がジアミン単位の0.3モル%を超える場合、ゲルが多く発生するため、得られる成形体の表面にフィッシュアイやブツとして存在し、表面外観を損ねるので好ましくない。本発明で用いるポリアミド(A)は、ポリアミド6やポリアミド66に比べて溶融粘度が高いため、ゲルが発生すると、成形体の表面平滑性を損ね、表面外観を損ねる。そのため、本発明において、トリアミン量を低減することは非常に重要なことである。
トリアミン単位をジアミン単位の0.3モル%以下とするためには、ジカルボン酸成分とジアミン成分とから塩を生成する際、水や有機溶剤の添加量を、原料モノマーの合計100質量部に対して5質量部以下とすることが好ましく、0.5質量部未満とすることがより好ましく、全く使用しないことがさらに好ましい。
一般的に、ポリアミドの加熱重合反応を均一的に進行させるために、水の共存下、原料を混合し、加熱して脱水反応を進行させる方法が用いられている。しかしながら、このような方法においては、重合時の水と有機溶剤の合計量が、原料モノマーの合計100質量部に対して5質量部を超えて多くなると、重合度の上昇が抑制されることがある。その場合、アミン末端が多い状態での重合装置中の滞留時間が長くなり、ジアミン同士の縮合反応により副生成するトリアミン量が増加する。その結果、ポリアミドの一部が架橋構造をとり、ゲル化が促進されたり、色調が低下したりする。ゲル化はポリアミドの結晶性の低下や、結晶化速度を遅延させる原因となる。そして、本発明のような半芳香族ポリアミドでは、トリアミンの生成が脂肪族ポリアミドより顕著である。従って、本発明のように、トリアミン単位がジアミン単位の0.3モル%以下であるポリアミドを得るためには、水や有機溶剤の添加量を、原料モノマーの合計100質量部に対して5質量部以下とすることが必要であり、実質的に水を添加しないことがより好ましい。
本発明で用いるポリアミド(A)は、ポリアミドを製造する方法として従来から知られている加熱重合法や溶液重合法の方法を用いて製造することができる。中でも、工業的に有利である点から、加熱重合法が好ましく用いられる。
加熱重合法としては、モノマーから反応物を得る工程(i)と、反応物を重合する工程(ii)からなる方法が挙げられる。本発明においては、トリアミン単位がジアミン単位の0.3モル%以下であるポリアミドを得るために、工程(i)の段階を、重合系中の水分や溶媒が少ない条件、すなわち、ジカルボン酸とジアミンの合計100質量部に対して、水と有機溶剤の合計量が5質量部以下である水および/または有機溶剤の存在下で実施することが好ましい。
工程(i)としては、例えば、ジカルボン酸粉末を予めジアミンの融点以上かつジカルボン酸の融点以下の温度に加熱し、ジアミンの融点以上かつジカルボン酸の融点以下の温度において、ジカルボン酸の粉末の状態を保つように、実質的に水を含有させずに、ジアミンをジカルボン酸粉末に添加する方法が挙げられる。あるいは、別の方法として、溶融状態のジアミンと固体のテレフタル酸からなる懸濁液を攪拌混合し、混合液を得た後、最終的に生成するポリアミドの融点未満の温度で、テレフタル酸とジアミンとの反応による塩の生成と、前記塩の重合による低重合物の生成反応とをおこない、塩および低重合物の混合物を得る方法が挙げられる。この場合、反応をさせながら破砕をおこなってもよいし、反応後に一旦取り出してから破砕をおこなってもよい。工程(i)としては、制御が容易な前者の方法の方が好ましい。
工程(ii)としては、例えば、工程(i)で得られた反応物を、最終的に生成するポリアミドの融点未満の温度で固相重合し、所定の分子量まで高分子量化させ、ポリアミドを得る方法が挙げられる。固相重合は、重合温度180〜270℃、反応時間0.5〜10時間で窒素等の不活性ガス気流中でおこなうことが好ましい。
ポリアミド(A)の製造において、重合の効率を高めるため重合触媒を用いたり、重合度の調整、熱分解や着色を抑制するため末端封止剤を用いたりすることができる。
重合触媒としては、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸またはそれらの塩が挙げられ、重合触媒の添加量としては、通常、ジカルボン酸とジアミンの総モルに対して2モル%以下で用いることが好ましい。
末端封鎖剤としては、酢酸、ラウリン酸、安息香酸等のモノカルボン酸、オクチルアミン、シクロヘキシルアミン、アニリン等のモノアミンが挙げられ、これらいずれか一種、あるいはこれらを組み合わせて用いられる。末端封鎖剤の添加量としては、通常、ジカルボン酸成分とジアミン成分の合計に対して5モル%以下で用いることが好ましい。
本発明のポリアミド樹脂組成物には、熱伝導性充填材(B)を含有させることが必要である。
本発明で用いる熱伝導性充填材(B)としては、熱伝導性を有するものであれば特に限定されないが、5W/(m・K)以上の熱伝導率を有するものを使用することが好ましい。なお、充填材として機械的性質を改善する目的で用いられるものや、導電性、絶縁性、磁性、圧電性、電磁波吸収の機能を付与する目的で用いられるものでも、上記熱伝導率を有するものは、本発明において充填材として用いることが可能である。熱伝導性充填材(B)の熱伝導率は、その焼結品を用いて測定することができる。
熱伝導性充填材(B)としては(括弧内に熱伝導率の代表値(単位:W/(m・K)を記す。)、タルク(5〜10)、酸化アルミニウム(36)、酸化マグネシウム(60)、酸化亜鉛(25)、炭酸マグネシウム(15)、炭化ケイ素(160)、窒化アルミニウム(170)、窒化ホウ素(210)、窒化ケイ素(40)、カーボン(10〜数百)、黒鉛(10〜数百)等の無機系充填材、銀(427)、銅(398)、アルミニウム(237)、チタン(22)、ニッケル(90)、錫(68)、鉄(84)、ステンレス(15)等の金属系充填材が挙げられる。中でも、ポリアミド(A)に配合した際の熱伝導性が高い点から、窒化ホウ素、黒鉛が好ましく、経済性の点から、タルク、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛が好ましい。これらは2種以上を併用してもよい。
窒化ホウ素の形態としては、例えば、板状、鱗片状、薄片状が挙げられ、中でも鱗片状、薄片状がより好ましい。薄片状とすることで、成形体としたときに平面方向に配向しやすく、その結果、熱伝導性を高めることができる。鱗片状窒化ホウ素の平均粒径は、1〜200μmであることが好ましく、5〜100μmであることがより好ましい。窒化ホウ素の結晶系は、特に限定されないが、六方晶系、立方晶系が挙げられる。中でも、六方晶系結晶構造を有する窒化ホウ素は、熱伝導性が高いので好ましい。
黒鉛の形態としては、例えば、球状、粉状、繊維状、針状、鱗片状、ウィスカ状、マイクロコイル状、ナノチューブ状が挙げられ、中でも、鱗片状がより好ましい。鱗片状とすることで、ポリアミド(A)に配合した際に熱伝導性を向上させることができる。鱗片状黒鉛の平均粒径は、1〜300μmであることが好ましく、5〜150μmであることがより好ましい。
タルクの形態としては、例えば、板状、鱗状、鱗片状、薄片状が挙げられ、中でも、鱗片状、薄片状が好ましい。鱗片状、薄片状とすることで、成形体としたときに平面方向に配向しやすく、熱伝導性を向上させることができる。鱗片状タルクの平均粒径は、1〜200μmであることが好ましく、5〜100μmであることがより好ましい。
酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛の形態としては、例えば、球状、繊維状、紡錘状、棒状、針状、筒状、柱状が挙げられ、中でも、球状が好ましい。球状とすることで、樹脂組成物の流動性や絶縁性の低下を抑制しつつ、熱伝導性を向上させることができる。前記熱伝導性充填材の平均粒径は、0.5〜150μmであることが好ましく、1〜100μmであることがさらに好ましい。
熱伝導性充填材(B)は、ポリアミド(A)との密着性を向上させるため、シラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤により表面処理をおこなってもよい。シラン系カップリング剤としては、例えば、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルジメトキシメチルシラン等のアミノシラン系、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシシラン系が挙げられ、チタン系カップリング剤としては、例えば、イソプロピルトリステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネートが挙げられる。これらは2種以上を併用してもよい。
本発明のポリアミド樹脂組成物において、ポリアミド(A)と熱伝導性充填材(B)との容量比(A/B)は、30/70〜90/10であることが必要であり、40/60〜70/20であることがより好ましい。ポリアミド(A)が30容量%未満では、溶融粘度が著しく高くなる傾向にあり、成形加工できなくなるので好ましくない。また、ポリアミド(A)が90容量%を超えると、十分な熱伝導性を得ることができないので好ましくない。
本発明のポリアミド樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、他の熱可塑性樹脂を含有させてもよい。他の熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂、ポリ(アクリル酸)、ポリ(アクリル酸エステル)、ポリ(メタクリル酸)、ポリ(メタクリル酸エステル)、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネートおよびそれらの共重合体が挙げられる。
また、本発明のポリアミド樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、各種添加剤を添加してもよい。各種添加剤としては、繊維状充填材、顔料、熱安定剤、酸化防止剤、耐候剤、難燃剤、可塑剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤、結晶核剤、熱伝導性充填材の他の充填材が挙げられる。
繊維状充填材の具体例としては、例えば、ガラス繊維、アラミド繊維、炭素繊維、金属繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、窒化硅素繊維、硼素繊維、チタン酸カリウム繊維、ケナフが挙げられる。
熱安定剤や酸化防止剤の具体例としては、例えば、ヒンダードフェノール類、リン化合物、ヒンダードアミン、イオウ化合物、銅化合物、アルカリ金属のハロゲン化物が挙げられる。
難燃剤の具体例としては、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、無機系難燃剤が挙げられる。中でも、環境を配慮した場合、非ハロゲン系難燃剤の使用が望ましい。非ハロゲン系難燃剤の具体例としては、リン系難燃剤、水和金属化合物(水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等)、窒素含有化合物(メラミン系、グアニジン系)、無機系化合物(硼酸塩、モリブデン化合物等)が挙げられる。
熱伝導性充填材の他の充填材の具体例としては、例えば、層状珪酸塩、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、ワラストナイト、シリカ、ケイ酸カルシウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カルシウム、アルミノ珪酸ナトリウム、珪酸マグネシウム、ガラスバルーン、三酸化アンチモン、ゼオライト、ハイドロタルサイト等の無機充填材、澱粉、セルロース微粒子、木粉、おから、モミ殻等の有機充填材が挙げられる。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、ポリアミド(A)と熱伝導性充填材(B)と、さらには必要に応じて各種添加剤を、一般的な押出機、例えば一軸押出機、二軸押出機、ロール混錬機、ブラベンダーを用いて溶融混練することにより製造することができる。このとき、スタティックミキサーやダイナミックミキサーを併用してもよい。各種添加剤の添加方法は、特に限定されないが、例えば、ホッパーから添加してもよいし、サイドフィーダーから添加してもよい。また、逐次添加してもよいし、また連続的に添加してもよい。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、射出成形、圧縮成形、押出し成形、トランスファー成形、シート成形等通常公知の溶融成形法を用いて所望の形状に成形して成形体とすることができる。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、半導体素子、抵抗等の封止材料、コネクター、ソケット、リレー部品、コイルボビン、光ピックアップ、発振子、コンピュータ関連部品等の電気・電子部品、VTR、テレビ、アイロン、エアコン、ステレオ、掃除機、冷蔵庫、炊飯器、照明器具等の家庭電気製品部品、放熱シートやヒートシンク、ファン等の電子部品からの熱を外部に逃すための放熱部材、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング等照明器具部品、コンパクトディスク、レーザーディスク、スピーカー等の音響製品部品、光ケーブル用フェルール、携帯電話機、固定電話機、ファクシミリ、モデム等の通信機器部品、分離爪、ヒータホルダー等の複写機、印刷機関連部品、インペラー、ファン歯車、ギヤ、軸受け、モーター部品及びケース等の機械部品、自動車用機構部品、エンジン部品、エンジンルーム内部品、電装部品、内装部品等の自動車部品、マイクロ波調理用鍋、耐熱食器等の調理用器具、航空機、宇宙機、宇宙機器用部品、センサー類部品が挙げられる。
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
1.測定方法
(1)ポリアミドの相対粘度
96質量%硫酸を溶媒とし、濃度1g/dL、25℃で測定した。
(2)ポリアミドの重量平均分子量
東ソー社製ゲル浸透クロマトグラフィ装置を用い、下記条件で調整した試料溶液にてGPC分析を行った後、ポリメチルメタクリレート(ポリマーラボラトリーズ社製)を標準試料として作成した検量線を用いて、重量平均分子量を求めた。
<試料調製>
ポリアミド5mgに10mMトリフルオロ酢酸ナトリウム含有ヘキサフルオロイソプロパノール2mlを加えて溶解後、ディスクフィルターで濾過した。
<条件>
・検出器:示差屈折率検出器RI−8010(東ソー社製)
・溶離液:10mMトリフルオロ酢酸ナトリウム含有ヘキサフルオロイソプロパノール
・流速:0.4ml/分
・温度:40℃
(3)ポリアミドの融点
パーキンエルマー社製示差走査型熱量計DSC−7を用い、昇温速度20℃/分で350℃まで昇温した後、350℃で5分間保持し、降温速度20℃/分で25℃まで降温し、さらに25℃で5分間保持後、再び昇温速度20℃/分で昇温測定した際の吸熱ピークのトップを融点とした。
(4)ポリアミド中のトリアミンの定量
ポリアミド10mgに47%臭化水素酸を3mL加え、130℃で20時間加熱後、蒸発乾固し、さらに80℃2時間減圧乾燥した。これにピリジン2mL、N,O−ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミド1mLを加え、90℃で30分加熱した。冷却後、メンブランフィルターでろ過した溶液を、質量分析計を備えたガスクロマトグラフィー装置で分析した。別に測定した標準物質のジアミンとトリアミンにより得た検量線を用いてポリアミド中のジアミンとトリアミンを定量し、ジアミンに対するトリアミンのモル比を算出した。トリアミンの標準物質は、酸化パラジウムを触媒として用いて、オートクレーブ中にてジアミンを240℃で3時間加熱撹拌して反応させて得たトリアミン化合物を用いた。
(5)密度
ミラージュ貿易社製電子比重計ED−120Tを用いて水中置換法により23℃で測定した。
(6)曲げ強度、曲げ弾性率
ポリアミド樹脂組成物を十分に乾燥した後、射出成形機(東芝機械社製EC100)を用いて所定の温度設定で射出成形をおこない、127mm×12.7mm×10mmの成形体を作製した。
得られた成形体を用いて、ASTM規格D−790に従って測定した。
(7)荷重たわみ温度(DTUL)
(6)で得られた成形片を用いて、ASTM規格D−648に従って、荷重1.8MPa下で測定した。
(8)熱伝導率:
熱伝導率λは、熱拡散率α、密度ρおよび比熱Cpを下記方法により求め、その積として次式で算出した。
λ=αρCp
λ:熱伝導率(W/(m・K))
α:熱拡散率(m/秒)
ρ:密度(g/m
Cp:比熱(J/g・K)
熱拡散率αは、(6)で得られた成形片の樹脂流れ方向と厚み方向について、アルバック理工社製熱定数測定装置TC−7000を用い、レーザーフラッシュ法にて測定した。比熱Cpはパーキンエルマー社製示差走査熱量計DSC−7を用い、昇温速度10℃/分の条件で測定した。
(8)外観
(6)で得られた成形片の外観を、以下の基準で、目視で評価した。
○:外観ムラがなく、表面が均一である。
×:外観ムラがあるか、表面が均一でない。
2.原料
(1)ジカルボン酸成分
・テレフタル酸
・イソフタル酸
(2)ジアミン成分
・1,8−オクタンジアミン
・1,9−ノナンジアミン
・1,10−デカンジアミン
・1,12−ドデカンジアミン
(3)ポリアミド
・ポリアミド6(PA6):融点220℃、相対粘度1.9、密度1.13g/cm
・ポリアミド66(PA66):融点260℃、相対粘度2.8、密度1.14g/cm
(4)熱伝導性充填材
・酸化アルミニウム(ALO):電気化学工業社製、平均粒径10μm、熱伝導率38W/(m・K)、密度3.97g/cm
・炭酸マグネシウム(MgC):神島化学社製、平均粒径10μm、熱伝導率15W/(m・K)、密度3.05g/cm
・酸化マグネシウム(MgO):タテホ化学社製、平均粒径30μm、熱伝導率50W/(m・K)、密度3.58g/cm、球状
・酸化亜鉛(ZnO):堺化学工業社製、平均粒径10μm、熱伝導率25W/(m・K)、密度 5.78g/cm
・タルク(TAL):日本タルク社製、平均粒径23μm、熱伝導率5〜10W/(m・K)、密度2.70g/cm、鱗片状
・窒化ホウ素(BN):電気化学社製、平均粒径15μm、熱伝導率210W/(m・K)、密度2.26g/cm、六方晶系鱗片状
・黒鉛(GR):日本黒鉛工業社製、平均粒径40μm、熱伝導率100W/(m・K)、密度2.25g/cm、鱗片状
(5)その他の充填材
・ガラス繊維(GF):オーウェンスコーニング社製、平均繊維径10μm、平均繊維長3mm、密度2.50g/cm
製造例1
[工程(i)]
ジアミン成分として1,10−デカンジアミン(5050質量部)、ジカルボン成分として粉末状テレフタル酸(4870質量部)、末端封鎖剤として安息香酸(72質量部)、重合触媒として次亜リン酸ナトリウム一水和物(6質量部)をオートクレーブに入れ、100℃に加熱後、ダブルヘリカル型の攪拌翼を用いて回転数28rpmで撹拌を開始し、1時間加熱した。原料モノマーのモル比は、1,10−デカンジアミン:テレフタル酸=50:50であった。この混合物を、回転数を28rpmに保ったまま230℃昇温し、引き続き230℃で3時間加熱した。その際、塩と低重合体の生成反応と破砕は同時におこなった。その後、反応により生じた水蒸気を放圧し、反応物を得た。
[工程(ii)]
工程(i)で得られた反応物を、乾燥機中、常圧窒素気流下、230℃で5時間加熱して重合しポリアミド(P−1)を得た。
製造例2
[工程(i)]
ジカルボン成分としてテレフタル酸粉末(4870質量部)、重合触媒として次亜リン酸ナトリウム(6質量部)、末端封鎖剤としての安息香酸(72質量部)を、リボンブレンダー式の反応装置に入れ、窒素密閉下、ダブルヘリカル型の攪拌翼を用いて回転数30rpmで撹拌しながら170℃に加熱した。その後、温度を170℃に保ち、かつ回転数を30rpmに保ったまま、液注装置を用いて、100℃に加温したデカンジアミン(5050質量部)を、28質量部/分の速度で、3時間かけて連続的(連続液注方式)にテレフタル酸粉末に添加し反応物を得た。原料モノマーのモル比は、1,10−デカンジアミン:テレフタル酸=50:50であった。
[工程(ii)]
工程(i)で得られた反応物を、引き続き工程(i)で用いたリボンブレンダー式の反応装置内で、窒素気流下、230℃に昇温し、230℃で5時間加熱して重合しポリアミド(P−2)を得た。
製造例3〜5
樹脂組成、製造条件を表1のように変更する以外は、製造例2と同様にしてポリアミドを得た。
製造例6〜10
樹脂組成、製造条件を表1のように変更する以外は、製造例1と同様にしてポリアミドを得た。
表1に、ポリアミドの樹脂組成、製造条件およびその特性値を示す。
実施例1
スクリュー径26mmの二軸押出機(東芝機械社製TEM26SS)の主供給口に、ポリアミド(P−1)60容量部と酸化アルミニウム40容量部とを供給し、340℃で溶融混練した。その後、ストランド状に引き取った後、水槽に通して冷却固化し、それをペレタイザーでカッティングしてポリアミド樹脂組成物を得た。
実施例2〜20、比較例1〜5、7
表2にように樹脂組成と混練温度を変更した以外は、実施例1と同様にしてポリアミド樹脂組成物を得た。なお、ガラス繊維を用いる場合は、サイドフィーダーにより途中から供給して溶融混練をおこなった。
比較例6
熱伝導性充填材の配合量を変更した以外は、実施例1と同様にしてポリアミド樹脂組成物を得たが、熱伝導性充填材の配合量が多かったため著しく増粘し、射出成形で成形体が得られなかった。
実施例と比較例で得られたポリアミド樹脂組成物の樹脂組成、製造条件およびその特性値を表2に示す。
実施例1〜20は、耐熱性、熱伝導性に優れ、外観が良好であった。
比較例1、2は、ポリアミドとしてナイロン6樹脂およびナイロン66樹脂を用いたため、熱たわみ温度が低かった。
比較例3、4、7は、ポリアミド中のジアミン単位に対するトリアミン単位が0.3モル%より多かったため、ゲルが大量に発生し外観が汚かった。
比較例5は、熱伝導性充填材(B)の配合量が少なかったため、熱伝導率が低かった。

Claims (4)

  1. テレフタル酸成分と炭素数8〜12の直鎖脂肪族ジアミン成分とからなるポリアミド(A)および熱伝導性充填材(B)とを含有し、(A)と(B)との容量比(A/B)が30/70〜90/10であって、前記ポリアミド(A)中のジアミン単位に対するトリアミン単位が0.3モル%以下であることを特徴とするポリアミド樹脂組成物。
  2. 直鎖脂肪族ジアミンが、1,10−デカンジアミンであることを特徴とする請求項1に記載のポリアミド樹脂組成物。
  3. 熱伝導性充填材(B)が、窒化ホウ素、黒鉛、タルク、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウムおよび酸化亜鉛からなる群より選ばれた1種以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリアミド樹脂組成物。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物を成形してなる成形体。
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