次に、本発明の実施の形態を詳説する。
本発明の一実施の形態としてのフェライト磁器組成物は、一般式X2O3・MeOで表わされるスピネル型結晶構造を有し、少なくとも3価の元素化合物であるFe2O3、Mn2O3、及び2価の元素化合物であるZnO、NiOを含み、必要に応じて2価の元素化合物であるCuOを含有している。
具体的には、本フェライト磁器組成物は、CuOの含有モル量が0〜5mol%とされ、Fe2O3及びMn2O3の各含有モル量は、図1に示すように、Fe2O3の含有モル量をxmol%、Mn2O3の含有モル量をymol%としたときに、(x,y)が点A〜点Hで囲まれる斜線部Xの領域とされ、残部がZnO、NiOで形成されている。
ここで、点A〜点Hの各点(x,y)は、以下の含有モル量を示している。
A(25,1)、B(47,1)、C(47,7.5)、D(45,7.5)、E(45,10)、F(35,10)、G(35,7.5)、及びH(25,7.5)
次に、CuO、Fe2O3、Mn2O3の含有モル量を、上述の範囲にした理由について詳述する。
(1)CuOの含有モル量
Ni−Zn系フェライトでは、融点が1026℃と低いCuOをフェライト磁器組成物中に含有させることにより、より低温での焼成が可能となり、焼結性を向上させることができる。
一方、Cuを主成分としたCu系材料とフェライト材料とを同時焼成する場合、大気雰囲気で焼成するとCuは容易に酸化されてCu2Oを生成することから、Cuが酸化しないような還元性雰囲気で焼成する必要がある。
しかしながら、このような還元性雰囲気で焼成した場合、CuOの含有モル量が5mol%を超えると、フェライト原料中のCuOが還元されてCu2Oの生成量が増加し、このため比抵抗ρの低下を招くおそれがある。
そこで、本実施の形態では、CuOの含有モル量が5mol%以下、すなわち0〜5mol%となるように配合量を調整している。
(2)Fe2O3及びMn2O3の各含有モル量
Fe2O3を化学量論組成から減量させ、Feの一部をMnで置換する形態でMn2O3を含有させることにより、比抵抗ρが低下するのを回避でき、絶縁性の向上を図ることができる。
すなわち、スピネル型結晶構造(一般式X2O3・MeO)の場合、化学量論組成では、X2O3(X:Fe、Mn)とMeO(Me:Ni、Zn、Cu)との比率は50:50であり、X2O3とMeOとは、通常、概ね化学量論組成となるように配合される。
そして、Cuを主成分としたCu系材料とフェライト材料とを同時焼成する場合、大気雰囲気で焼成するとCuは容易に酸化されてCu2Oを生成することから、Cuが酸化しないような還元性雰囲気で焼成する必要がある。一方、フェライト材料の主成分であるFe2O3を還元性雰囲気で焼成するとFe3O4を生成することから、Fe2O3に対しては酸化性雰囲気で焼成する必要がある。
しかしながら、〔発明が解決しようとする課題〕の項でも述べたように、Cu−Cu2Oの平衡酸素分圧とFe3O4−Fe2O3の平衡酸素分圧との関係から、800℃以上の温度で焼成する場合、Cu金属とFe2O3とが共存する領域が存在しないことが知られている。
しかるに、Mn2O3は、800℃以上の温度領域ではFe2O3に比べ、より高い酸素分圧で還元性雰囲気となる。したがって、Cu−Cu2Oの平衡酸素分圧以下の酸素分圧では、Mn2O3はFe2O3に比べ強還元性雰囲気となり、このためMn2O3が優先的に還元されて焼結を完了させることが可能となる。つまり、Mn2O3がFe2O3に比べて優先的に還元されることから、Fe2O3がFe3O4に還元される前に焼成処理を完了させることが可能となる。
このようにFe2O3の含有モル量を化学量論組成から減量させる一方で、同じ3価の元素化合物であるMn2O3をフェライト磁器組成物中に含有させることにより、Cu−Cu2Oの平衡酸素分圧以下でCu系材料とフェライト材料とを同時焼成しても、Mn2O3が優先的に還元されることから、Fe2O3が還元される前に焼結を完了させることが可能となり、Cu金属とFe2O3とをより効果的に共存させることができる。そしてこれにより比抵抗ρが低下するのを回避でき、絶縁性を向上させることができる。
ただし、Fe2O3の含有モル量が25mol%未満になると、Fe2O3の含有モル量が過度に少なくなって却って比抵抗ρの低下を招き、所望の絶縁性を確保できなくなる。
また、Mn2O3の含有モル量が1mol%未満になると、Mn2O3の含有モル量が過度に少なくなるため、Fe2O3がFe3O4に還元されやすくなり、比抵抗ρが低下し、十分な絶縁性を確保できない。
また、Fe2O3の含有モル量が47mol%を超える場合も、Fe2O3の含有モル量が過剰となってFe2O3がFe3O4に還元されやすくなり、比抵抗ρが低下し、十分な絶縁性を確保できない。
また、Mn2O3の含有モル量が10mol%を超えた場合も、十分に大きな比抵抗ρを得ることができず、絶縁性を確保できない。
さらに、Fe2O3の含有モル量が25mol%以上であっても35mol%未満の場合、及びFe2O3の含有モル量が45mol%以上であっても47mol%未満の場合は、Mn2O3の含有モル量が7.5mol%を超えると、却って比抵抗ρの低下を招き、所望の絶縁性を確保できなくなる。
そこで、本実施の形態では、Fe2O3及びMn2O3の含有モル量は、図1の点A〜点Hに囲まれた領域となるように各含有モル量を調整している。
尚、フェライト磁器組成物中のZnO及びNiOの各含有モル量は、特に限定されるものではなく、Fe2O3、Mn2O3、及びCuOの各含有モル量に応じて適宜設定することができるが、ZnO:6〜33mol%、NiO:残部となるように配合するのが好ましい。
すなわち、ZnOの含有モル量が33mol%を超えると、キュリー点Tcが低下し、高温での動作保証がなされない可能性があることから、ZnOの含有量は33mol%以下が好ましい。
一方、ZnOは透磁率μの向上に寄与する効果があるが、斯かる効果を発揮するためにはZnOの含有モル量は6mol%が必要である。
したがって、ZnOの含有モル量は6〜33mol%が好ましい。
このように本フェライト磁器組成物は、Cuの含有モル量がCuOに換算して0〜5mol%であり、かつ、FeをFe2O3に換算したときの含有モル量xmol%、及びMnをMn2O3に換算したときの含有モル量ymol%を(x,y)で表したときに、(x,y)が、上述した点A〜点Hに囲まれる特定の範囲にあるので、Cu系材料と同時焼成しても、比抵抗ρの低下を招くこともなく、所望の絶縁性を確保することが可能となる。
具体的には、比抵抗ρは107Ω・cm以上の良好な絶縁性を得ることができる。そしてこれにより、インピーダンス特性等の電気特性の良好な所望のセラミック電子部品を得ることが可能となる。
また、Znの含有モル量をZnOに換算して6〜33mol%とすることにより、良好な透磁率を有すると共に、十分なキュリー点を確保することができ、使用時の温度が高い条件下での動作が保証されたセラミック電子部品を得ることができる。
次に、上記フェライト磁器組成物を使用したセラミック電子部品について、図2〜図14を参照しながら詳述する。
図2は、本発明に係るセラミック電子部品としてのLC複合部品の一実施の形態(第1の実施の形態)を示す斜視図であり、図3は図2の断面図である。
この第1の実施の形態は、集中定数型の縦巻きT型LC複合部品を示している。
すなわち、このLC複合部品は、部品素体1は、コンデンサ部2が一対のコイル部3a、3b間に介在されている。コイル部3a、3bは、コイル導体5a、5bと、該コイル導体5a、5bが埋設された磁性体層6a、6bとを備え、また、コンデンサ部2は、容量電極7と、該容量電極7が埋設された誘電体層8とを備えている。そして、これらコイル部3a、3bのコイル導体5a、5bは前記部品素体1の両端部に形成された第1及び第2の外部電極4a、4bに電気的に接続され、コンデンサ部2の容量電極7は前記部品素体1の側面中央部に形成された第3及び第4の外部電極4c、4dに電気的に接続されている。
図4は、上記LC複合部品の等価回路を示す回路図である。
すなわち、上記LC複合部品は、コイル部3aによって付与されるインダクタンスL1とコイル部3bによって付与されるインダクタンスL2と、コンデンサ部2によって付与される静電容量Cにより、T型の回路構成を形成している。
そして、本第1の実施の形態では、コイル導体5a、5b、容量電極7がCuを主成分とするCu系材料で形成されると共に、磁性体層6a、6bのみならず誘電体層8も上述した本発明のフェライト磁器組成物で形成されている。すなわち、誘電体層8はフェライト磁器組成物の有する誘電率を利用し、該フェライト磁器組成物でもって誘電体層8を形成している。
そしてこれによりCuが酸化されたりFe2O3が還元されることもなく、所望の良好な電気特性や磁気特性を有する。具体的には、比抵抗ρを107Ω・cm以上に改善することができ、特定周波数域でノイズ吸収に適したLC複合部品を得ることができる。
また、容量電極7にもCu系材料を使用しているので、Ag系材料のようにコンデンサ部2でマイグレーションが生じるのを回避することが可能となり、高湿度下で長時間放置しても良好な絶縁抵抗を得ることができ、高信頼性を有するLC複合部品を得ることができる。
図5は、部品素体1の分解斜視図である。
以下、この図5を参照しながら上記LC複合部品の製造方法を詳述する。
まず、セラミック素原料として、Fe2O3、ZnO、NiO、及び必要に応じてCuOを用意する。そして、CuOが0〜5mol%であって、Fe2O3及びMn2O3が点A〜点Hで囲まれる特定領域を満たすように各セラミック素原料を秤量する。
次いで、これらの秤量物を純水及びPSZ(部分安定化ジルコニア)ボール等の玉石と共にポットミルに入れ、湿式で十分に混合粉砕し、蒸発乾燥させた後、700〜800℃の温度で所定時間仮焼する。
次いで、これらの仮焼粉末に、ポリビニルブチラール系等の有機バインダ、エタノール、トルエン等の有機溶剤、及びPSZボールと共に、再びポットミルに投入し、十分に混合粉砕し、セラミックスラリーを作製する。
次に、ドクターブレード法等を使用して前記セラミックスラリーをシート状に成形加工し、所定膜厚の磁性体セラミックグリーンシート(セラミック薄層体;以下、単に「磁性体シート」という。)9a〜9mを作製する。
次いで、これらの磁性体シート9a〜9mのうち磁性体シート9d〜9iについて、互いに電気的に接続可能となるようにレーザ加工機を使用し、所定箇所にビアホールを形成する。
次に、Cuを主成分とした導電性ペースト(以下、「Cuペースト」という。)を用意する。そして、該Cuペーストを使用してスクリーン印刷し、磁性体シート9d〜9j上にコイルパターン10a〜10d又は容量パターン11a〜11c(導電膜)を形成し、かつ、ビアホールを前記Cuペーストで充填しビア導体12a〜12fを作製する。
尚、磁性体シート9d及び磁性体シート9jに形成された各コイルパターン10a、10dには、第1及び第2の外部電極4a、4bと電気的接続が可能となるように引出部10a′、10d′が形成されている。また、磁性体シート9gに形成された容量パターン11bには、第3及び第4の外部電極4c、4dと電気的接続が可能となるように引出部11b′が形成され、かつ磁性体シート9gのビアホール12dの周囲にはランド部13が形成されている。
次いで、これら磁性体シート9d〜9jを積層し、上下両主面に外装用磁性体シート9a〜9c、9k〜9mを配し、これらを加圧・圧着させた後、所定寸法に切断して積層成形体を作製する。そしてこれによりコイルパターン10a〜10dはビア導体12a〜12fを介して電気的に接続されて焼結後にはコイル導体5a、5bを形成し、引出部10a′、10d′を介して第1及び第2の外部電極4a、4bと導通可能とされる。また、磁性体シート9gはコイルパターン10a〜10dと電気的に絶縁されて焼結後には磁性体シート9f〜9hによりコンデンサ部2を形成し、引出部11b′を介して第3及び第4の外部電極4c、4dに導通可能とされる。
次に、この積層成形体をCuが酸化しないような雰囲気下、所定温度で十分に脱脂した後、Cu−Cu2Oの平衡酸素分圧以下となるようにN2−H2−H2Oの混合ガスで雰囲気調整された焼成炉に供給し、900〜1050℃で所定時間焼成し、これによりコイル導体5a、5bが磁性体層6a、6bに埋設され、かつ容量電極7が誘電体層8に埋設された部品素体1を得る。
次に、部品素体1の両端部及び側面中央部に、Cu等を主成分とした外部電極用導電ペーストを塗布し、乾燥させた後、900℃程度の温度で焼き付けて第1〜第4の外部電極4a〜4dを形成し、これにより上述したLC複合部品が作製される。
このように本第1の実施の形態では、Cuの含有モル量がCuOに換算して0〜5mol%であり、かつ、FeをFe2O3に換算したときの含有モル量xmol%、及びMnをMn2O3に換算したときの含有モル量ymol%を(x,y)で表したときに、(x,y)が、上述した点A〜点Hに囲まれる特定領域を満たすようにFe化合物、Mn化合物、Cu化合物、Zn化合物、及びNi化合物をそれぞれ秤量し、これら秤量物を混合した後、仮焼して仮焼粉末を作製する仮焼工程と、前記仮焼粉末から磁性体シート9a〜9mを作製する磁性体シート作製工程と、Cuペーストを磁性体シートに塗布して所定パターンのコイルパターン10a〜10d又は容量パターン11a〜11cを形成する導電パターン(導電膜)形成工程と、前記パターンが形成された磁性体シート9d〜9jを所定順序に積層し、積層成形体を形成する積層体形成工程と、Cu−Cu2Oの平衡酸素分圧以下の焼成雰囲気で前記積層成形体を焼成し、前記磁性体シート9a〜9mと導電パターン10a〜10d、11a〜11cとを同時焼成する焼成工程とを含んでいるので、Cu−Cu2Oの平衡酸素分圧以下の焼成雰囲気で磁性体シート9a〜9mと導電パターン10a〜10d、11a〜11cとを同時焼成しても、Cuが酸化されたりFeが還元されることもなく、絶縁性が良好で高信頼性を有するLC複合部品を得ることができる。
図6は、本発明に係るセラミック電子部品としてのLC複合部品の第2の実施の形態を示す斜視図であり、図7は図6の断面図である。
この第2の実施の形態は、集中定数型の横巻きT型LC複合部品を示している。
すなわち、このLC複合部品は、第1の実施の形態と同様、部品素体15は、コンデンサ部16が一対のコイル部17a、17b間に介在されている。これらコイル部17a、17bは、コイル導体20a、20bと、該コイル導体20a、20bが埋設された磁性体層21a、21bとを備え、また、コンデンサ部16は、容量電極22と、該容量電極22が埋設された誘電体層23とを備えている。そして、これらコイル部17a、17bのコイル導体20a、20bは前記部品素体1の上面及び下面に形成された第1及び第2の外部電極18a、18bに電気的に接続され、コンデンサ部16の容量電極22は前記部品素体15の側面中央部に周設された第3の外部電極18cに電気的に接続されている。
上記LC複合部品も、第1の実施の形態と同様、T型の回路構成を形成している。
そして、本第2の実施の形態でも、コイル導体20a、20b、容量電極22がCuで形成されると共に、磁性体層21a、21bのみならず誘電体層23も上述した本発明のフェライト磁器組成物で形成されている。
そしてこれにより、第1の実施の形態と同様、Cuが酸化されたりFe2O3が還元されることもなく、所望の良好な電気特性や磁気特性を有し、かつマイグレーションが生じることもなく、高信頼性を有するセラミック電子部品を得ることが可能となる。
しかも、本第2の実施の形態では、第1の実施の形態に比べ、コイル部17a、17bでの浮遊容量を低下させることができることから、挿入損失がより一層低下したLC複合部品を得ることが可能となる。
図8は、部品素体15の分解斜視図である。
以下、この図8を参照しながら上記LC複合部品の製造方法を詳述する。
まず、第1の実施の形態と同様の方法で仮焼粉末を作製し、次いでセラミックスラリーを作製する。
次に、ドクターブレード法等を使用して前記セラミックスラリーをシート状に成形加工し、所定膜厚の磁性体シート20a〜20qを作製する。
次いで、各磁性体シート20a〜20q間が導通可能となるようにレーザ加工機を使用し、所定箇所にビアホールを形成する。
次に、Cuペーストを用意する。そして、該Cuペーストを使用してスクリーン印刷し、磁性体シート20d〜20n上にコイルパターン21a〜21f又は容量パターン22a〜22eを形成し、かつ、ビアホールを前記Cuペーストで充填しビア導体23a〜23qを作製する。
尚、磁性体シート20h、20jに形成された容量パターン22b、22dには、第3の外部電極19と電気的接続が可能となるように引出部22b′22d′が形成されている。
そして、これら磁性体シート20a〜20qを積層し、加圧・圧着させ、所定寸法に切断して積層成形体を作製する。そしてこれによりコイルパターン21a〜21c、20d〜20fはビア導体23d〜23mを介して電気的に接続されて焼結後にはコイル導体20a、20bを形成し、ビア導体23a〜23c、23o〜23qを介して第1及び第2の外部電極18a、18bと導通可能とされる。また、磁性体シート20h、20jはコイルパターン21a〜21c、20d〜20fと電気的に絶縁されて焼結後には磁性体シート20g〜20kによりコンデンサ部16を形成し、引出部22b′、22d′を介して第3の外部電極18cに導通可能とされる。
次に、この積層成形体をCuが酸化しないような雰囲気下、加熱して十分に脱脂した後、Cu−Cu2Oの平衡酸素分圧以下となるようにN2−H2−H2Oの混合ガスで雰囲気調整された焼成炉に供給し、900〜1050℃で所定時間焼成し、これによりコイル導体20a、20bが磁性体層21a、21bに埋設され、かつ容量電極22が誘電体層23に埋設された部品素体15を得る。
次に、部品素体1の両端部及び側面中央部に、Cu等を主成分とした外部電極用導電ペーストを塗布し、乾燥させた後、900℃で焼き付けて第1〜第3の外部電極18a〜18cを形成し、これにより上述したLC複合部品が作製される。
このように本第2の実施の形態でも、Cu−Cu2Oの平衡酸素分圧以下の焼成雰囲気で前記積層体を焼成し、前記セラミックグリーンシートと前記導電膜とを同時焼成しているので、第1の実施の形態と同様、Cuが酸化されたりFeが還元されることもなく、比抵抗ρを107Ω・cm以上の絶縁性が良好で高信頼性を有するLC複合部品を得ることができる。
また、容量電極22にCu系材料を使用しているので、マイグレーションが生じるのを回避することができ、高信頼性を有するLC複合部品を得ることができる。
しかも、本第2の実施の形態では、第1の実施の形態に比べ、コイル部17a、17bでの浮遊容量を低下させることができることから、挿入損失がより一層低下したLC複合部品を得ることが可能となる。
図9は、本発明に係るセラミック電子部品としてのLC複合部品の第3の実施の形態を示す断面図である。
この第3の実施の形態は、集中定数型のπ型LC複合部品を示している。
すなわち、このLC複合部品は、部品素体30は、コイル部31が一対のコンデンサ部32a、32b間に介在されている。これらコンデンサ部32a、32bは、容量電極36a、36bと、該容量電極36a、36bが埋設された誘電体層37a、37bとを備え、また、コイル部31は、コイル導体34と、該コイル導体34が埋設された磁性体35とを備えている。そして、コンデンサ部32a、32bの容量電極36a、36bは、部品素体30の両端部に形成された第1及び第2の外部電極33a、33bに電気的に接続され、コイル部31のコイル導体34は、部品素体30の側面中央部に形成された第3及び第4の外部電極(不図示)に電気的に接続されている。
図10は、本LC複合部品の等価回路を示す回路図である。
すなわち、本LC複合部品は、コンデンサ部32aによって付与される静電容量C1とコンデンサ部32bによって付与される静電容量C2が、コイル部31によって付与されるインダクタンスLを介して並列接続されたいわゆるπ型の回路構成を形成している。
そして、本第3の実施の形態でも、コイル導体34、容量電極36a、36bがCu系材料で形成されると共に、磁性体層35のみならず誘電体層37a、37bも上述した本発明のフェライト磁器組成物で形成されている。
そしてこれにより、第1及び第2の実施の形態と同様、Cuが酸化されたりFe2O3が還元されることもなく、所望の良好な電気特性や磁気特性を有すると共に、マイグレーションが生じることもなく、高信頼性を有するセラミック電子部品を得ることが可能となる。
図11は、部品素体30の分解斜視図である。
以下、この図11を参照しながら上記LC複合部品の製造方法を詳述する。
まず、第1及び第2の実施の形態と同様の方法で仮焼粉末を作製し、次いでセラミックスラリーを作製する。
次に、ドクターブレード法等を使用して前記セラミックスラリーをシート状に成形加工し、所定膜厚の磁性体シート38a〜38pを作製する。
次いで、磁性体シート38h、38i間が導通可能となるようにレーザ加工機を使用し、所定箇所にビアホールを形成する。
次に、Cuペーストを用意する。そして、該Cuペーストを使用してスクリーン印刷し、磁性体シート38d〜38f及び38k〜38m上に容量パターン39a〜39c、39f〜39hを形成し、磁性体シート38h、3iにコイルパターン39d、39eを形成し、かつ、ビアホールを前記導電性ペーストで充填しビア導体40を作製する。
尚、各容量パターン39a〜39c、39f〜39h及びコイルパターン39d、39eには、各外部電極と電気的接続が可能となるように引出部39a′〜39c′、39f′〜39h′、39d′、39e′が形成されている。
そして、これら磁性体シート38d〜38nを積層し、上下両主面に外装用磁性体シート38a〜38c、38n〜38pを配し、これらを加圧・圧着させ、その後、所定寸法に切断して積層成形体を作製する。
次に、この積層成形体をCuが酸化しないような雰囲気下、所定温度で十分に脱脂した後、Cu−Cu2Oの平衡酸素分圧以下となるようにN2−H2−H2Oの混合ガスで雰囲気調整された焼成炉に供給し、900〜1050℃で所定時間焼成し、これにより容量電極36a、36bが誘電体層37a、37bに埋設され、かつコイル導体34が磁性体層35に埋設された部品素体30を得る。
次に、部品素体30の両端部及び側面中央部に、Cu等を主成分とした外部電極用導電ペーストを塗布し、乾燥させた後、900℃で焼き付けて第1〜第4の外部電極を形成し、これにより上述したLC複合部品が作製される。
このように本第3の実施の形態でも、Cu−Cu2Oの平衡酸素分圧以下の焼成雰囲気で前記積層体を焼成し、前記セラミックグリーンシートと前記導電膜とを同時焼成しているので、第1及び第2の実施の形態と同様、Cuが酸化されたりFeが還元されることもなく、比抵抗ρを107Ω・cm以上の絶縁性が良好で高信頼性を有するLC複合部品を得ることができる。
また、容量電極36a、36bにCu系材料を使用しているので、マイグレーションが生じるのを回避することができ、高信頼性を有するLC複合部品を得ることができる。
図12は本発明に係るセラミック電子部品としてのLC複合部品の第4の実施の形態を示す内部構造図である。
この第4の実施の形態は、分布定数型の横巻きT型LC複合部品を示している。
すなわち、このLC複合部品は、部品素体40は、容量電極42がコイル導体41間に挟み込まれるような形態でコイル導体41と容量電極42とが磁性体層43に埋設されている。そして、コイル導体41の両端は第1及び第2の外部電極49a、49bに電気的に接続されると共に、容量電極42は第3及び第4の外部電極(グランド電極)49c、49dに電気的に接続されている。
図13は、本LC複合部品の等価回路を示す回路図である。
すなわち、本LC複合部品は、コイル導体41に沿うような形態で容量電極42が配されることから、コイル導体41と磁性体層43とで付与されるインダクタンスLと容量電極42との間で静電容量Cとが形成されている。したがって、このLC複合部品では、コイル導体41と磁性体層43とで付与されるインダクタンスLが外部電極49a、49b間に連続的に形成され、かつインダクタンスLが付与されるコイル導体41の略全長に亙って容量電極42との間で静電容量Cが連続的に形成されるので、入力信号側と出力信号側とのインピーダンス整合がとれ、所望の信号波形を伝送できる高周波特性にも優れたものとなる。
そして、本第4の実施の形態でも、コイル導体41、容量電極42がCu系材料で形成されると共に、磁性体層43が上述した本発明のフェライト磁器組成物で形成されている。
そしてこれにより、第1〜第3の実施の形態と同様、Cuが酸化されたりFe2O3が還元されることもなく、所望の良好な電気特性や磁気特性を有すると共に、マイグレーションが生じることもなく、高信頼性を有するセラミック電子部品を得ることが可能となる。
図14は部品素体40の分解斜視図である。
以下、この図14を参照しながら上記LC複合部品の製造方法を詳述する。
まず、第1〜第3の実施の形態と同様の方法で仮焼粉末を作製し、次いでセラミックスラリーを作製する。
次に、ドクターブレード法等を使用して前記セラミックスラリーをシート状に成形加工し、所定膜厚の磁性体シート44a〜44jを作製する。
次いで、レーザ加工機を使用し、磁性体シート44b〜44hの所定箇所にビアホールを形成する。
次に、Cuペーストを用意する。そして、該Cuペーストを使用してスクリーン印刷し、磁性体シート44b、44c、44e、及び44g〜44i上にコイルパターン45a〜45fを形成し、磁性体シート44d、44fに容量パターン46a、46bを形成し、かつ、ビアホールを前記Cuペーストで充填しビア導体47a〜47iを作製する。
そして、これら磁性体シート44b〜44iを積層し、上下両主面に外装用磁性体シート44a、44jを配し、これらを加圧・圧着させ、その後所定寸法に切断して積層成形体を作製する。
次に、この積層成形体をCuが酸化しないような雰囲気下、所定温度で十分に脱脂した後、Cu−Cu2Oの平衡酸素分圧以下となるようにN2−H2−H2Oの混合ガスで雰囲気調整された焼成炉に供給し、900〜1050℃で所定時間焼成し、これによりコイル導体41及び容量電極42が磁性体層43に埋設された部品素体40を得る。
次に、部品素体40の両端部及び側面中央部に、Cu等を主成分とした外部電極用導電ペーストを塗布し、乾燥させた後、900℃で焼き付けて第1〜第4の外部電極を形成し、これにより上述したLC複合部品が作製される。
このように本第4の実施の形態でも、Cu−Cu2Oの平衡酸素分圧以下の焼成雰囲気で前記積層体を焼成し、前記セラミックグリーンシートと前記導電膜とを同時焼成しているので、第1〜第3の実施の形態と同様、Cuが酸化されたりFeが還元されることもなく、比抵抗ρを107Ω・cm以上の絶縁性が良好で高信頼性を有するLC複合部品を得ることができる。
また、容量電極42もCu系材料で形成されているので、マイグレーションが生じるのを回避することができ、高信頼性を有するLC複合部品を得ることができる。
尚、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。例えば、上記実施の形態では、仮焼粉末からセラミックグリーンシート9a〜9mを作製しているが、セラミック薄層体であればよく、例えば、PETフィルム上に印刷処理を行なって磁性塗膜を形成し、斯かる磁性塗膜上に導電膜であるコイルパターンや容量パターンを形成してもよい。
また、上記実施の形態では、コイルパターンや容量パターンをスクリーン印刷で形成しているが、導電膜の作製方法も特に限定されるものではなく、他の方法、例えばめっき法、転写法、或いはスパッタ等の薄膜形成方法で形成してもよい。
また、上記実施の形態では、LC複合部品について説明したが、これらの形態に限定されるものでない。また、フェライト材料をCu系材料と同時焼成する用途に広範に使用することができ、他のセラミック電子部品にも適用可能であるのはいうまでもない。
次に、本発明の実施例を具体的に説明する。
セラミック素原料として、Fe2O3、Mn2O3、ZnO、CuO、及びNiOを用意し、含有モル量が表1〜3に示すような組成となるように、これらセラミック素原料を秤量した。すなわち、ZnOを30mol%、CuOを1mol%に固定し、Fe2O3とMn2O3との含有モル量を種々異ならせ、残部がNiOとなるように各セラミック素原料を秤量した。
次いで、これら秤量物を純水及びPSZボールと共に塩化ビニル製のポットミルに入れ、湿式で十分に混合粉砕し、これを蒸発乾燥させた後、750℃の温度で仮焼し、仮焼粉末を得た。
次いで、この仮焼粉末を、ポリビニルブチラール系バインダ(有機バインダ)、エタノール(有機溶剤)、及びPSZボールと共に、再び塩化ビニル製のポットミルに投入し、十分に混合粉砕し、セラミックスラリーを得た。
次に、ドクターブレード法を使用し、厚さが25μmとなるようにセラミックスラリーをシート状に成形し、これを縦50mm、横50mmの大きさに打ち抜き、磁性体シートを作製した。
次いで、このようにして作製された磁性体シートを、厚さが総計で1.0mmとなるように複数枚積層し、60℃に加熱し、100MPaの圧力で60秒間加圧して圧着し、その後、外径20がmm、内径が12mmとなるようにリング状に切り出し、セラミック成形体を得た。
次いで、得られたセラミック成形体を加熱して十分に脱脂した。そして、N2−H2−H2Oの混合ガスを焼成炉に供給して酸素分圧を6.7×10-2Paに調整した後、前記セラミック成形体を焼成炉に投入し、1000℃の温度で2時間焼成し、これによりリング状試料を得た。
尚、この酸素分圧6.7×10-2Paは、1000℃におけるCu−Cu2Oの平衡酸素分圧であり、セラミック成形体をCu−Cu2Oの平衡酸素分圧で2時間焼成し、これにより試料番号1〜104のリング状試料を作製した。
そして、試料番号1〜104の各リング状試料について、軟銅線を20ターン巻回し、インピーダンスアナライザ(アジレント・テクノロジー社製、E4991A)を使用し、測定周波数1MHzでインダクタンスを測定し、その測定値から透磁率μを求めた。
次に、テルピネオール(有機溶剤)及びエチルセルロース樹脂(バインダ樹脂)を含有した有機ビヒクルにCu粉末を混合し、三本ロールミルで混錬し、これによりCuペーストを作製した。
次に、磁性体シートの表面にCuペーストをスクリーン印刷し、所定パターンの導電膜を作製した。そして、導電膜の形成された磁性体シートを所定順序で所定枚数積層し、導電膜の形成されていない磁性体シートで挟持し、圧着し、所定の大きさに切断し、積層成形体を得た。
次いで、積層成形体を十分に脱脂した後、N2−H2−H2Oの混合ガスを焼成炉に供給して酸素分圧を6.7×10-2Pa(1000℃におけるCu−Cu2Oの平衡酸素分圧)に調整し、この積層成形体を焼成炉に供給した後、1000℃の温度で2時間焼成し、内部電極が埋設されたセラミック焼結体を得た。
次いで、このセラミック焼結体を水と共にポットに投入し、遠心バレル機を用いてセラミック焼結体にバレル処理を施し、これによりセラミック素体を得た。
そして、セラミック素体の両端部に、Cuを主成分とする外部電極用導電性ペーストを塗布し、乾燥した後、酸素分圧を4.3×10-3Paに調整した焼成炉内で900℃の温度で焼き付け処理を行い、試料番号1〜104の比抵抗測定用試料を作製した。尚、酸素分圧:4.3×10-3Paは温度900℃におけるCu−Cu2Oの平衡酸素分圧である。
比抵抗測定用試料の外形寸法は、縦3.0mm、横3.0mm、厚み1.0mmであった。
図15は、比抵抗測定用試料の断面図であって、セラミック素体51には引出部が互い違いとなるように内部電極52a〜52dが磁性体層53に埋設され、かつ、セラミック素体51の両端面には外部電極54a、54bが形成されている。
次に、試料番号1〜104の比抵抗測定用試料について、外部電極54a、54bに50Vの電圧を30秒間印加し、電圧印加時の電流を測定した。そしてこの測定値から抵抗を算出し、試料寸法から比抵抗の対数logρ(以下、「比抵抗logρ」という。)を算出した。
表1〜3は試料番号1〜104のフェライト組成と測定結果を示している。
試料番号1〜17、22〜25、30〜33、39〜41、47〜49、55〜57、63〜65、71〜73、78〜81、及び86〜104は、図1の斜線部Xの領域外であるので、比抵抗logρが7未満となって比抵抗logρが小さく、所望の絶縁性を得ることができなかった。
これに対し試料番号18〜21、26〜29、34〜38、42〜46、50〜54、58〜62、66〜70、74〜77、及び82〜85は、図1の斜線部Xに囲まれる領域内にあるので、比抵抗logρが7以上となり、良好な絶縁性が得られ、透磁率μも50以上の実用的に十分な値が得られることが分かった。
セラミック素原料を、表4に示すように、Fe2O3の含有モル量を44mol%、Mn2O3の含有モル量を5mol%と本発明範囲内とし、さらにZnOの含有モル量を30mol%とし、CuOを種々異ならせ、残部がNiOとなるように秤量した。そしてそれ以外は、実施例1と同様の方法・手順で試料番号201〜209のリング状試料及び比抵抗測定用試料を作製した。
次いで、試料番号201〜209について、実施例1と同様の方法・手順で比抵抗logρ及び透磁率を測定した。
表4は、試料番号201〜209のフェライト組成と測定結果を示している。
試料番号207〜209は、CuOの含有モル量が5mol%を超えているため、比抵抗logρが7未満となって比抵抗logρが小さく、所望の絶縁性を得ることができなかった。
これに対し201〜206は、CuOの含有モル量が0〜5mol%と本発明範囲内であるので、比抵抗logρが7以上となり、良好な絶縁性が得られ、透磁率μも210以上と良好な結果が得られた。
表5に示すように、Fe2O3の含有モル量を44mol%、Mn2O3の含有モル量を5mol%、CuOの含有モル量を1mol%と本発明範囲内とし、ZnOの含有モル量を種々異ならせ、残部がNiOとなるようにセラミック素原料を秤量した以外は、実施例1と同様の方法・手順で試料番号301〜309のリング状試料及び比抵抗測定用試料を作製した。
そして、試料番号301〜309について、実施例1と同様の方法・手順で比抵抗logρ及び透磁率を測定した。
また、試料番号301〜309について、振動試料型磁力計(東英工業社製VSM−5−15型)を使用し、1T(テスラ)の磁界を印加し、飽和磁化の温度依存性を測定した。そして、この飽和磁化の温度依存性からキュリー点Tcを求めた。
表5は、試料番号301〜309のフェライト組成と測定結果を示している。
試料番号309は、ZnOの含有モル量が33mol%を超えているので、比抵抗logρや透磁率μは良好であったが、キュリー点Tcが110℃となり、他の試料に比べて低くなることが分った。
また、試料番号301、302は、ZnOの含有モル量が6mol%未満であるので、比抵抗logρやキュリー点Tcは良好であったが、透磁率μが20以下に低下した。
これに対し試料番号303〜308は、ZnOの含有モル量が6〜33mol%であるので、キュリー点Tcは165℃以上となって130℃程度の高温下での動作保証を得ることができ、また、透磁率μも35以上となって実用的な透磁率μが得られることが分かった。
以上よりZnOの含有モル量を増加させると透磁率μが大きくなるが、過度に増量させるとキュリー点Tcが低下することが確認された。
実施例1で作製した試料番号1、実施例2で作製した試料番号203、試料番号209と同一組成の磁性体シートを使用し、縦巻きT型LC複合部品を作製した(図2〜図5参照)。
試料番号1及び試料番号203の磁性体シートについては、コイル導体材料及び容量電極材料にCuを使用し、試料番号1′、203′の試料(縦巻きT型LC複合部品)を作製した。
また、試料番号209の磁性体シートについては、コイル導体材料及び外部電極材料にAgを使用し、試料番号209′の試料(縦巻きT型LC複合部品)を作製した。
すなわち、試料番号209′の試料を作製するために、実施例1〜3で使用したCuペーストの他、Agを主成分とした導電性ペースト(以下、「Agペースト」という。)を用意した。
そして、以下の手順で試料番号1′、203′、及び209′の試料を作製した。
まず、レーザ加工機を使用し、試料番号1、203及び209の磁性体シートの所定箇所にビアホールを形成した。
次に、Cuペースト又はAgペーストを使用してスクリーン印刷し、磁性体シート上にコイルパターン又は容量パターンを形成し、かつ、ビアホールを前記Cuペースト又はAgペーストで充填しビア導体を作製した。
そして、これら磁性体シートを積層し、上下両主面に外装用磁性体シートを配し、これらを60℃に加熱し100MPaの圧力で60秒間加圧して圧着し、所定寸法に切断し、試料番号1′、203′及び209′の積層成形体を作製した。
次に、試料番号1′及び203′については、Cuが酸化しないような雰囲気下、加熱して十分に脱脂した後、酸素分圧が6.7×10-2PaとなるようにN2−H2−H2Oの混合ガスで雰囲気調整された焼成炉に供給し、1000℃の温度で2時間焼成し、部品素体を得た。
次いで、上記部品素体の両端部及び側面中央部に、Cuを主成分とした外部電極用導電ペーストを塗布し、乾燥させ、その後、酸素分圧を4.3×10-3Paに調整した焼成炉内で900℃の温度で焼き付け処理を行い、これにより第1〜第4の外部電極を形成した。次いで、電解めっきを施して、第1〜第4の外部電極の表面にNi皮膜及びSn皮膜を順次形成し、これにより試料番号1′、203′の縦巻きT型LC複合部品を作製した。
一方、試料番号209′ついては、部品素体の両端部及び側面中央部に、Agを主成分とした外部電極用導電ペーストを塗布し、乾燥させ、その後、大気雰囲気下、750℃の温度で焼き付け処理を行い、これにより第1〜第4の外部電極を形成した。そしてその後は、試料番号1′、203′と同様、電解めっきを施して、第1〜第4の外部電極の表面にNi皮膜及びSn皮膜を順次形成し、これにより試料番号209′の縦巻きT型LC複合部品を作製した。
作製された各試料の外形寸法は、縦:2.0mm、横:1.25mm、厚み:0.9mmであった。
尚、各試料は、測定周波数1MHzでインダクタンスLは約0.3μH、静電容量Cが約360pFとなるようにコイル導体及びコンデンサの仕様を調整した。
次に、試料番号1′、203′及び209′の各試料について、エレクトロメータ(アドバンテスト社製R8340A)を使用し、コイル導体用外部電極とコンデンサ用外部電極との間の絶縁抵抗、すなわち端子間の絶縁抵抗logIRを測定した。
表6は、試料番号1′、203′及び209′の各試料のフェライト組成及び測定結果を示している。
この表6から明らかなように、試料番号1′は絶縁抵抗logIRは3.1と低くなった。これはフェライト組成中、Fe2O3とMn2O3の含有モル量が本発明範囲外であるため、Fe2O3がFe3O4に還元されてしまい、このため絶縁抵抗logIRが低下したものと思われる。
一方、試料番号203′、209′は、Fe2O3とMn2O3の含有モル量が本発明範囲内であるため、絶縁抵抗logIRは7.2、8.9と良好な結果を得た。尚、試料番号209′は、大気中で焼成しているため、フェライト材料が還元されることもないことから、絶縁抵抗logIRについては良好な結果が得られた。
次に、試料番号1′、203′及び209′の各試料について、ネットワークアナライザ(アジレント・テクノロジー社製E5062A)使用し、挿入損失を測定した。
図16はその測定結果を示している。
試料番号1′は、試料番号203′、209′に比べ挿入損失が劣化した。これはFe2O3とMn2O3の含有モル量が本発明範囲外であるため、上述したようにFe2O3がFe3O4に還元されてしまい、磁性体層の抵抗が低下したためと考えられる。
次に、試料番号203′、209′の各試料30個について、温度85℃、湿度85%RHの高温多湿下、5Vの直流電圧を印加して耐湿負荷試験を行った。すなわち、各試料について、試験開始前、試験開始後250時間、500時間、1000時間、及び2000時間経過後に端子間で絶縁抵抗を測定し、試験前に比べて絶縁抵抗logIRが20%以上低下した試料を不良品とし、該不良品の個数を計数して耐湿性を評価した。
表7は、その測定結果を示している。
試料番号209′は、経時的に不良品の個数が増加し、1000時間経過後には不良発生率が100%となった。これは容量電極をAgで形成しているため、マイグレーションが発生し、コンデンサ部の抵抗が低下したためと考えられる。
これに対し試料番号203′は、容量電極をCuで形成しているため、マイグレーションが発生せず、2000時間経過後も不良品は発生せず、信頼性の高いLC複合部品を得ることができることが分かった。
実施例2で作製した試料番号203と同一組成の磁性体シートを使用し、コイル導体材料及び容量電極材料にCuを使用して横巻きT型LC複合部品を作製した(試料番号203″)(図6〜図8参照)。
すなわち、まず、試料番号203の磁性体シートの所定箇所にレーザ加工機を使用し、所定箇所にビアホールを形成した。
次に、Cuペーストを使用してスクリーン印刷し、磁性体シート上にコイルパターン又は電極パターンを形成し、かつ、ビアホールを前記Cuペーストで充填し、ビア導体を作製した。
そして、これら磁性体シートを積層し、上下両主面に外装用磁性体シートを配し、これらを60℃に加熱し100MPaの圧力で60秒間加圧して圧着し、所定寸法に切断し、試料番号203″の積層成形体を作製した。
次に、Cuが酸化しないような雰囲気下、加熱して十分に脱脂した後、酸素分圧を6.7×10-2PaとなるようにN2−H2−H2Oの混合ガスで雰囲気調整された焼成炉に供給し、1000℃の温度で2時間焼成し、部品素体を得た。
次に、部品素体の両端部及び側面中央部に、Cuペーストを塗布し、乾燥させた後、900℃で焼き付けて第1〜第4の外部電極を形成し、その後電解めっきを施して、第1〜第4の外部電極の表面にNi皮膜及びSn皮膜を順次形成し、これにより試料番号203″の縦巻きT型LC複合部品を作製した。
尚、焼付雰囲気は、酸素分圧を900℃のCu−Cu2Oの平衡酸素分圧である4.3×10-3Paに調整して行った。
作製された試料の外形寸法は、縦:2.0mm、横:1.25mm、厚み:0.9mmであった。尚、各試料は、測定周波数1MHzでインダクタンスLは約0.3μH、静電容量Cが約360pFとなるようにコイル導体及びコンデンサの仕様を調整した。
次に、試料番号203″について、実施例2と同様の方法・手順で挿入損失を測定した。
図17はその測定結果を示している。
この図17から明らかなように、試料番号203″は試料番号203′に比べ挿入損失が向上しているのが分かる。これは試料番号203′が縦巻き構造であるのに対し、試料203″は横巻き構造であるため、コイル部での浮遊容量がより低下したためと思われる。