JP2013051892A - シフォナキサンチンおよび/またはシフォネインの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】シフォナキサンチンおよび/またはシフォネインを効率的かつ多量に生産可能な製造方法を提供すること。
【解決手段】ミル科ミル属に属する緑藻類の糸状体種苗を培養して得た培養糸状体を有機溶媒で抽出し、得られた有機溶媒抽出物からシフォナキサンチンおよび/またはシフォネインを分離することを特徴とするシフォナキサンチンおよび/またはシフォネインの製造方法である。
【選択図】図1

Description

本発明は、シフォナキサンチンおよび/またはシフォネインの製造方法に関し、更に詳細には、ミル属の緑藻類の糸状体を人工的に培養して得られた培養体を利用することによって、効率的に多量のシフォナキサンチンおよび/またはシフォネインを得ることが可能な製造方法に関する。
自然界には多くのカロテノイド色素が存在しており、従来よりβ−カロテンやリコピンなどが着色剤等として利用されてきた。近年その他のカロテノイド色素も様々な生理機能を有することが明らかになり、例えば、アスタキサンチンが優れた抗酸化作用等を有することや、フコキサンチンが抗糖尿作用や抗腫瘍作用を示すことが見出され、健康食品や化粧品の素材として利用されている。
シフォナキサンチンは、下記式(1)に示される供役二重結合に供役したケトカルボニル基を持つ特殊な分子構造をしたカロテノイドであるが、最近、抗腫瘍作用を有することが報告されるなどその機能が注目されている(特許文献1参照)。一方、シフォネインはシフォナキサンチンのエステルであり、シフォナキサンチンを製造するための原料としての利用が検討されている。また、これらは緑藻類等に含まれる光合成色素であるが、光合成色素は近年太陽電池に用いる増感色素としての応用が検討されている。
Figure 2013051892
これまで、シフォナキサンチンおよび/またはシフォネインは、例えば天然に自生するミルやヤブレグサなどの緑藻類の成体から抽出、精製されていた。しかし、天然の緑藻類の成体中に含まれるシフォナキサンチンおよび/またはシフォネインの含有量は少なく、実用的な量を得るにはコストや時間がかかりすぎるという問題があった。
特開2009−227642号公報
したがって、シフォナキサンチンおよび/またはシフォネインを効率的に大量生産することが可能な技術の確立が望まれており、本発明は、そのようなシフォナキサンチンおよび/またはシフォネインの製造方法を提供することを課題とするものである。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究した結果、ミル属に属する緑藻類の糸状体を培養すると、シフォナキサンチンおよび/またはシフォネインの含有率が向上し、さらに培養によって糸状体が増体するため、これを原料として抽出、精製することにより、シフォナキサンチンおよび/またはシフォネインを効率よく大量に得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、ミル科ミル属に属する緑藻類の糸状体種苗を培養して得た培養糸状体を有機溶媒で抽出し、得られた有機溶媒抽出物からシフォナキサンチンおよび/またはシフォネインを分離することを特徴とするシフォナキサンチンおよび/またはシフォネインの製造方法である。
本発明の方法によれば、藻体中のシフォナキサンチンおよび/またはシフォネインの含有率が高まるとともに、藻体の重量を増大させることができるため、これを抽出原料として使用することにより、シフォナキサンチンおよび/またはシフォネインを効率よく多量に製造することが可能である。
実施例2において、各試験区の乾燥質量、シフォナキサンチン含有率、シフォナキサンチン生産量を示す図である。 実施例3において、各試験区の乾燥質量、シフォナキサンチン含有率、シフォナキサンチン生産量を示す図である。 実施例4において、各試験区の乾燥質量、シフォナキサンチン含有率、シフォナキサンチン生産量を示す図である。 実施例5において、培養液中のアンモニア態窒素(NH4-N)濃度を示す図である。(a)はTSP29を追加添加しなかった試験区、(b)はTSP29を2,4,6日目に追加添加した試験区の結果である。 実施例5において、培養液中の硝酸態窒素(NO3-N)濃度を示す図である。(a)はTSP29を追加添加しなかった試験区、(b)はTSP29を2,4,6日目に追加添加した試験区の結果である。 実施例5において、培養液中のリン酸態リン(PO4-P)濃度を示す図である。(a)はTSP29を追加添加しなかった試験区、(b)はTSP29を2,4,6日目に追加添加した試験区の結果である。 実施例5において、各試験区の乾燥質量、シフォナキサンチン含有率、シフォナキサンチン生産量を示す図である。
本発明で用いるミル科(Codiaceae)ミル属(Codium)に属する緑藻類(以下、「ミル属緑藻類」ということがある)としては、ナンバンハイミル(Codium arabicum)、ヒゲミル(Codium barbatum)、クビレハイミル(Codium capitulatum)、ネザシミル(Codium coactum)、サキブトミル(Codium contractum)、ナガミル(Codium cylindricum)、オオハイミル(Codium dimorphum)、ミル(Codium fragile)、ハイミルモドキ(Codium hubbsii)、モツレミル(Codium intricatum)、ヒラミル(Codium latum)、ハイミル(Codium lucasii)、タマミル(Codium minus)、エツキタマミル(Codium ovale)、ヤセガタモツレミル(Codium repens)、フクロミル(Codium saccatum)、コブシミル(Codium spongiosum)、クロミル(Codium subtubulosum)、ウスバミル(Codium tenuifolium)、エゾミル(Codium yezoense)等が含まれる。このうち、ナガミル、モツレミルが好ましく、特にモツレミルはシフォナキサンチンおよびシフォネイン含量が高く、培養による増体量が大きいため好適に用いられる。ミル属緑藻類は一般に雌雄配偶体による異型配偶子生殖を行う。雌雄の配偶体は配偶子嚢を形成し、雌雄配偶子は接合して接合子となり、発芽して発芽体から糸状体となる。糸状体は錯綜した状態から直立部が形成され(直立体)、幼体を経て、成体となる。成体は、放射状に輪生した多数の胞嚢(小嚢)から構成されており、胞嚢の先端からは糸(髄糸)が伸長している(An Illustrated Atlas of the Life History of Algae,Volume 1,堀輝三,p278-279,1994)。
ミル属緑藻類の糸状体種苗の培養は、連続攪拌培養で行うことが好適であり、例えば攪拌子や攪拌機による機械攪拌や、通気等による攪拌を行い、培養液全体を攪拌しながら培養すれば良い。攪拌条件は容器の大きさ等により適宜変化するが、例えば、培養容器として1Lの容量の平底フラスコを用い、通気による攪拌を行う場合には、培養容器内に空気を1.0〜2.5L/分、好ましくは1.5〜2.3L/分で導入すれば良い。このような連続撹拌培養を行うことにより、糸状体が培養容器に着床して直立体を形成することを防止し、糸状体の状態で繰り返し増殖、培養させることができる。
上記培養の際に用いる培養液は、海藻類を培養することができるものであれば特に制限されないが、滅菌された人工海水または海水に、窒素源およびリン源等の栄養成分を含有したものであることが好ましい。窒素源としては、硝酸塩、アンモニウム塩、尿酸等が例示できるが、このうち、アンモニウム塩がシフォナキサンチン含有率を向上できるため好適である。リン源としては、グリセロリン酸2ナトリウム、β−グリセロリン酸ナトリウム等の有機リン酸塩、リン酸3ナトリウム、リン酸3カリウム等の無機リン酸塩が例示できる。これらのうち、バクテリアが繁殖しにくく、安価であることから無機リン酸塩が好適に用いられる。窒素源の添加量は、窒素が好ましくは100〜700μM、より好ましくは200〜300μMとなる量である。このうち、アンモニア態窒素(NH4-N)として好ましくは100〜300μM、より好ましくは150〜300μM、特に好ましくは230〜260μM含有することが好適である。一方、リン源の添加量は、リン酸態リン(PO4-P)として好ましくは2〜40μM、より好ましくは5〜20μMとなる量である。このような範囲であると、シフォナキサンチンおよび/またはシフォネイン含有率を高めることができる。培養に伴って窒素やリンが減少した場合には、適宜窒素源やリン源を添加して培養液の濃度を上記範囲に維持することが望ましい。
培地中に添加可能なその他の栄養成分としては、ビタミンB12、ビオチン、チアミン等が例示できる。これらの栄養成分を含有する藻類培養液として、例えば公知のTSP27、TSP29(ともに株式会社サウスプロダクト製)、KW-21(第一製網製)、PESI培地(Masakazu Tatewaki、Formation of a crustaceous sporophyte with unilocular sporangia in Scytosiphon lomentaria、Phycologia6(1)1966.)等の藻類培養液を滅菌海水等に適宜添加して用いることもできる。このような培養液を糸状体種苗の湿質量に対し、質量比で500〜10,000倍、好ましくは1,000〜5,000倍程度用いる。この範囲であると窒素源やリン源が過剰な状態ではなく、バクテリアが繁殖しないために好ましい。
また、この培養は恒温条件下で行うことが好ましい。通常20〜32℃、好ましくは24〜32℃、より好ましくは28〜30℃の温度である。この範囲であると、シフォナキサンチンおよび/またはシフォネインの含有量が高くなり、増体量も大きくなる。
更に、この培養は光照射条件下で行うことが好ましい。光量は、通常20〜500ppfd(ppfd:photosynthetic photon flux density)、好ましくは20〜300ppfdであり、より好ましくは60〜120ppfdである。この範囲であると、シフォナキサンチンおよび/またはシフォネイン含有率が高く、増体量も大きくなる。一方、光周期は、通常8L:16D〜24L:0D(Light:Dark)程度であればよいが、8L:16D〜16L:8Dの範囲とすると、シフォナキサンチンおよび/またはシフォネイン含有率を高めることができ、一方、16L:8D〜24L:0D、特に24L:0Dとすると、増体量が著しく増大する。したがって、例えば、1週間から10日程度培養する場合には、培養開始から6〜8日程度の生育期は、24L:0Dの範囲とし、その後2〜3日間程度の収穫期では8L:16D〜16L:8Dと光周期を調節することにより、増体量を著しく増大させてから、シフォナキサンチンおよび/またはシフォネイン含有率を高めることができ、シフォナキサンチンおよび/またはシフォネインの生産量を顕著に増加することが可能となる。
以上のような条件で、ミル属緑藻類糸状体種苗を通常6〜10日間、好ましくは7〜8日間程度培養して得られる培養糸状体は、増体して質量が増加するとともに、シフォナキサンチンおよび/またはシフォネイン含有率が向上する。培養糸状体の糸状体種苗に対する増体量は、乾燥質量で1.5〜6.0倍、好ましくは3.0〜4.0倍であり、培養糸状体中のシフォナキサンチン含有率は、乾燥質量基準で0.5〜1.5mg/g d.w.、好ましくは1.2〜1.5mg/g d.w.である。
培養に供するミル属緑藻類の糸状体種苗としては、糸状体としての組織、性質を有するものであれば特に制限なく使用することができ、有性生殖を経た接合子が発芽した糸状体の他、成体の胞嚢から伸長した糸(髄糸)、あるいはこれらを予備培養したもののいずれであってもよい。より具体的には、天然から採取したミル属緑藻類の糸状体や接合子を培養して得られる糸状体(発芽体と直立体の中間に位置するいずれの態様を含む)、成体より分離した胞嚢から伸長した糸(髄糸)を切断したもの、あるいはこれらを予備培養したものなどを糸状体種苗として使用することができる。糸状体種苗は単藻化されたものであることが好ましい。
予備培養の条件は、上記した培養条件と同様であるが、バクテリアの増殖を抑制し、単藻化された種苗を多量に得るために、培養液には、窒素が好ましくは20〜200μM、より好ましくは25〜50μMとなる量の窒素源が含まれていることが好ましく、またリンが好ましくは1〜20μM、より好ましくは2〜5μMとなる量のリン源が含まれていることが望ましい。また、このような培養液を糸状体種苗の湿質量に対し質量比で100〜1000倍、好ましくは200〜300倍程度用いることが好適である。さらに、培養温度は、20〜28℃、好ましくは23〜25℃、光量10〜120ppfd、好ましくは10〜60ppfd、光周期は、8L:16D〜24L:0D、好ましくは16L:8D〜24L:0Dの範囲とすることが好適である。また必要により、培養容器内に空気を0.5〜1.5L/分、好ましくは1.0〜1.2L/分程度導入し、通気による撹拌培養を行ってもよい。このような条件で、通常6〜60日、好ましくは36〜56日、より好ましくは37〜42日程度予備培養を行えばよい。
糸状体種苗の単藻化は、滅菌海水等で洗浄するとともに、微細藻が混在していない株を選択することによって行うことが可能である。例えば、糸状体種苗として胞嚢から伸長した糸(髄糸)を用いる場合、次のようにして予備培養と単藻化を行うことができる。すなわち、まず天然海域から採取したミル属緑藻類の成体をほぐすようにして胞嚢をばらばらにし、胞嚢から伸長した糸(髄糸)をピンセットでつまみ取り、約1mmにハサミで断片化する。これを滅菌海水で濯いで、1質量%寒天水溶液中に潜らせた後、ガラスシャーレに移す。次に、顕微鏡下100〜200倍率でガラスシャーレの底に沈んだ付着物がない断片化した糸(髄糸)をキャピラリーピペットで吸い上げ、ろ過滅菌海水を入れたホールスライドグラスのウェルに移し、ウェルで数回の吸い上げと放出を行い洗浄する。さらに、新しいキャピラリーピペットを取り付け、糸(髄糸)を次のウェルに移して洗浄する操作を3ウェル分繰り返す。これを滅菌海水に培養液(窒素25μM、リン2μM)2mlを入れたマルチセルに移動させ、水温25℃、光量20ppfd、光周期24L:0Dで約1ヶ月間塊状の糸状体になるまで成長させる。塊状の糸状体(湿質量0.1g w.w.)をピンセットでつまみ取り、培養液(窒素50μM、リン5μM)100mlを入れたフラスコに移し、4〜5日毎に培養液の交換を行いながら、水温28℃、光量80ppfd、光周期24L:0D、空気導入量0.5〜1.0L/分の条件で約7〜12日間培養する。培養後、顕微鏡下で微細藻の混在が確認されない糸状体を、単藻化されたミル属緑藻類の糸状体種苗として用いることができる。このようにしてある程度成長した単藻化された糸状体種苗を多量に調製することができ、これを上記条件で培養することによって、バクテリアの増殖を抑制しつつ、シフォナキサンチンおよび/またはシフォネイン高含有の糸状体を大量に得ることが可能となる。
以上のようにして得られたミル属緑藻類の培養糸状体を抽出工程に供する。培養糸状体をそのまま抽出原料としてもよいが、凍結乾燥等により水分を除去してから抽出操作に供してもよい。ミル属緑藻類の培養糸状体から、シフォナキサンチンおよび/またはシフォネインを抽出するために使用される溶媒は、シフォナキサンチンおよび/またはシフォネインを抽出することのできるものであれば特に制限されないが、例えば、メタノール、アセトン、クロロホルム等の有機溶媒およびアセトン/メタノール混液(7:2)、クロロホルム/メタノール混液(1:2)等のこれらの混液が好ましく用いられる。これらの有機溶媒は、ミル属緑藻類の培養糸状体(乾燥質量)に対して、1:1000〜1:10、好ましくは1:150〜1:50の質量比(培養糸状体:有機溶媒)で添加すれば良い。
上記溶媒を用いる抽出は常法により行うことができ、例えば、溶媒としてメタノールを用いる場合であれば、1℃〜10℃、好ましくは2℃〜5℃の温度で、1時間〜12時間、好ましくは3時間〜6時間抽出を行えば良い。
このようにして得られる抽出物から、シフォナキサンチンおよび/またはシフォネインを分離、取得するには、抽出物をそのまま、あるいは残渣を取り除いてからHPLC等に付し、これにより分離・精製を行えばよい。
以下に、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
製 造 例 1
ミル属緑藻体の糸状体の単藻化:
ミル属緑藻体の糸状体の単藻化はマイクロピペット洗浄法を用いた。まず単藻化に必要な道具の作製および準備を行なった。パスツールピペットの先を熱して引き伸ばし、先端を細く加工してキャピラリーピペットを作製した。顕微鏡下で先端の内径が数百マイクロメートルであることを確認し、キャピラリーピペットにエアーチューブを取り付け、キャピラリーピペットの先端を浸し、ろ過滅菌海水(0.45μmフィルターろ過)が毛細管現象で上昇するのを確かめた。
次に培養海水を調製した。オートクレーブ処理した海水に対してTSP27を0.05w/w%濃度で添加してろ過して培養海水とした。この培養海水をマルチセル(12ウェルのプラスチック容器)のウェルに2ml入れた。また、洗浄用のろ過滅菌海水をホールスライドグラスの3つのウェルに入れた。
沖縄近海(水深1m)で採取したナガミル(Codium cylindricum)、モツレミル(Codium intricatum)の成体をほぐすようにして胞嚢をばらばらにし、胞嚢から伸長した糸(髄糸)をピンセットでつまみ取り、約1mmにハサミで断片化した。これを滅菌海水で濯いで、寒天水溶液(1質量%)中に潜らせた糸(髄糸)をガラスシャーレに移した。顕微鏡下100〜200倍率でガラスシャーレの底に沈んだ付着物がない断片化した糸(髄糸)をキャピラリーピペットで吸い上げ、ホールスライドグラスのウェルに移した。ウェルで数回の吸い上げと放出を行い洗浄した。新しいキャピラリーピペットを取り付け、糸(髄糸)を次のウェルに移す洗浄操作を3ウェル分繰り返した後、マルチセルに移動した。水温25℃、光量20ppfd、光周期24L:0Dの条件で約1ヶ月間塊状の糸状体になるまで成長させた。塊状の糸状体(湿質量0.1g w.w.)をピンセットでつまみ取り、TSP27を0.01w/w%濃度で添加した培養海水100mlを入れたフラスコに移し、水温28℃、光量80ppfd、光周期24L:0D、空気導入量1.0L/分の条件で約10日間連続撹拌培養した。培養期間中は、4〜5日毎に培養海水の交換を行いながら、顕微鏡下で増体と微細藻混在の有無を確認し、微細藻類の混在が認められなかった糸状体を単藻化された糸状体種苗とした。
実 施 例 1
ミル属緑藻類の培養(1):
製造例1で得られた単藻化されたナガミルまたはモツレミルの糸状体種苗を、水温25℃、光量60ppfd、光周期12L:12D(Light:Dark)に設定したグロースチャンバー内で培養した。培養海水は、藻類培養液TSP27を0.05 w/w%添加した滅菌海水とした。1L容量のガラス瓶に培養海水900ml中を入れ、ナガミルまたはモツレミルの糸状体種苗を1g w.w.(湿質量)入れた(n=4)。培養瓶底部からガラス管を通して空気を2.3L/分で導入し、常時攪拌した。培養期間は1週間とした。培養後は培養糸状体を全回収し、湿質量を計測した。また培養糸状体を凍結乾燥し、乾燥質量を測定した。
また凍結乾燥後の培養糸状体100mgを15ml容量のファルコンチューブに入れ、抽出溶媒として0.3M酢酸アンモニウム含有メタノールを10ml添加し、ボルテックスで攪拌後、冷蔵庫で3時間抽出を行った。抽出後、遠心分離(4℃、15000rpm、10min)し、上清600μLをバイアル瓶に入れ、HPLC分析用のサンプルとした。下記条件によるHPLCで保持時間15.7min付近のピークからシフォナキサンチン(以下、「Sx」と略記することがある)を、保持時間21.2min付近のピークからシフォネイン(以下、「Sn」と略記することがある)を定量し、培養糸状体の乾燥質量に対する含有率を求めた。また培養糸状体の乾燥質量にシフォナキサンチンまたはシフォネイン含有率を乗じた値をシフォナキサンチンまたはシフォネイン生産量とした。結果を表1に示す。
(HPLC条件)
カラム:Inertsil
ODS-P(4×160mm)
移動相A:0.3M酢酸アンモニウムを含むメタノール(MeOH)/アセトニトリル(ACCN)/H2O=4.0/3.5/2.5の混合溶媒(v/v/v)に特級酢酸を0.3%(体積比)添加
移動相B:ACCN/酢酸エチル(EtAc)=3/7(v/v)の混合溶媒
流速:0.8ml/分
カラムオーブン温度:32℃
グラジェント条件(移動相B濃度):0%(0.0-5.0min)、0%→100%(5.0-25.0min)、100%(25.0-35.0min)、0%(35.0-45.0min,置換)
注入量:10μl
検出:437nm
Figure 2013051892
ナガミル、モツレミルとも培養によりシフォナキサンチン含有率、シフォネイン含有率が向上し、シフォナキサンチン含有率はナガミルでは約8倍、モツレミルでは約5倍に、シフォネイン含有率は、ナガミルでは約7倍、モツレミルでは約4倍となった。またモツレミルは、ナガミルと比較してシフォナキサンチン含有率、シフォネイン含有率、増体量のいずれも高かった。
実 施 例 2
ミル属緑藻類の培養(2):水温の検討
製造例1で得られた単藻化したモツレミルの糸状体種苗を、水温22、24、26、28、30、32、34、36℃の7試験区で、光量60ppfd、光周期12L:12D(Light:Dark)に設定したグロースチャンバー内で培養した。培養海水は、TSP27を0.05w/w%添加した滅菌海水とした。1L容量のガラス瓶に培養海水900mlを入れ、モツレミルの糸状体種苗を1g w.w.入れた(n=4)。培養瓶底部からガラス管を通して空気を2.3L/分で導入し、常時攪拌した。培養期間は1週間とした。培養後は培養糸状体を全回収し、凍結乾燥後、乾燥室量を測定した。また実施例1と同様にして、シフォナキサンチン(Sx)の抽出、分析を行い、Sx含有率およびSx生産量を求めた。なお培養前のモツレミルの糸状体種苗をControlとした。結果を図1に示す。
糸状体の生長量、Sx含有率は、水温28、30℃で最も高かった。また34℃以上では、糸状体は枯死した。水温はモツレミルの代謝に強い影響を与える主要因であると考えられる。本試験で用いた糸状体の生長適水温は、28、30℃付近にあり、生育限界水温は32〜34℃と考えられる。またSx含有率は22℃〜30℃で大差はないが、32℃では減少した。理由は断定できないが、高水温条件は色素合成に負の影響を与えていると思われる。Sx生産量は、28〜30℃で最大となり、最適な培養水温であると考えられる。
実 施 例 3
ミル属緑藻類の培養(3):光量の検討
製造例1で得られた単藻化したモツレミルの糸状体種苗を、光量20、60、120、300、500ppfdの5試験区で、水温30℃、光周期12L:12D(Light:Dark)に設定したグロースチャンバー内で培養した。培養海水は、TSP27を0.05w/w%添加した滅菌海水とした。1L容量のガラス瓶に培養海水900mlを入れ、モツレミルの糸状体種苗を1gw.w.入れた(n=4)。培養瓶底部からガラス管を通して空気を2.3L/分で導入し、常時攪拌した。培養期間は1週間とした。培養後は培養糸状体を全回収し、凍結乾燥後、乾燥質量を測定した。また実施例1と同様にして、シフォナキサンチン(Sx)の抽出、分析を行い、Sx含有率およびSx生産量を求めた。なお培養前のモツレミルの糸状体種苗をControlとした。結果を図2に示す。
糸状体の生長(増体)量について、60ppfd以上の光量では有意差は確認されず増体が確認された。このことから、60ppfd〜500ppfdの光量であれば、生長は律速されることはなく、効率よく生長させることができる。またSx含有率は、弱光量になるほど高くなる傾向があり、60ppfdで最大となることが確認された。以上のことから、60〜120ppfdでのSx生産量が最も多く、最適な光量条件であると考えられる。
実 施 例 4
ミル属緑藻類の培養(4):光周期の検討
製造例1で得られた単藻化したモツレミルの糸状体種苗を、光周期0L:24D、8L:16D、12L:12D、16L:8D、24L:0D(Light:Dark)の5試験区で、水温30℃、光量60ppfdに設定したグロースチャンバー内で培養した。培養海水は、TSP27を0.05w/w%添加した滅菌海水とした。1L容量のガラス瓶に培養海水900mlを入れ、モツレミルの糸状体種苗を1gw.w.入れた(n=4)。培養瓶底部からガラス管を通して空気を2.3L/分で導入し、常時攪拌した。培養期間は1週間とした。培養後は培養糸状体を全回収し、凍結乾燥後、乾燥質量を測定した。また実施例1と同様にして、シフォナキサンチン(Sx)の抽出、分析を行い、Sx含有率およびSx生産量を求めた。なお培養前のモツレミルの糸状体種苗をControlとした。結果を図3に示す。
糸状体の生長量は、日長が長くなるにつれて多くなる傾向が確認された。特に24L:0Dでの生長量が多く、生長に対しては最適培養条件であると考えられた。一方Sx含有率は、8L:16D〜16L:8Dで高く、0L:24D、24L:0Dで低い結果となったが、24L:0Dにおいて増体量は最大となった。以上の結果から、例えば培養開始から生育期は、24L:0Dの範囲とし、その後の収穫期では8L:16D〜16L:8Dと光周期を調節することにより、増体量を著しく増大させてから、Sx含有率を高めることができ、Sxの生産量を顕著に増加することが可能になると思われる。
実 施 例 5
ミル属緑藻類の培養(5):培養液の検討
製造例1で得られた単藻化したモツレミルの糸状体種苗を、水温30℃、光量60ppfd、光周期24L:0D(Light:Dark)に設定したグロースチャンバー内で培養した。TSP29を0.05 w/w%添加した滅菌海水を培養液とし、その後TSP29を追加しない試験区(1回添加)と、さらに培養2、4、6日目にTSP29を0.05w/w%追加添加する試験区(連続添加)を設定した。1L容量のガラス瓶に培養海水900ml中を入れ、ミル類の糸状体を1g w.w.入れた(n=4)。培養瓶底部からガラス管を通して空気を2.3L/分で導入し、常時攪拌した。培養期間は1週間とした。培養0、2、4、6、7日目に海水を30mlサンプリングした(栄養塩類分析用)。栄養塩類は、NH4-N、NO3-N、PO4-P濃度を計測した。結果を図4〜6に示す。培養後は糸状体を全回収し、凍結乾燥後、乾燥重量を測定した。また実施例1と同様にして、シフォナキサンチン(Sx)の抽出、分析を行い、Sx含有率およびSx生産量を求めた。結果を図7に示す。なお培養前のモツレミルの糸状体種苗をControlとした。
糸状体の生長量は、1回添加、連続添加で差はなかった。このことは、栄養塩の多少によって生長量は変わらない、もしくは生長に必要な栄養塩量は1回添加で十分に供給されていると考えられる。一方、Sx含有率は、1回添加よりも連続添加で1.5倍増加した。栄養塩を追加することでSx含有率を高められることが明らかとなった。また連続添加した栄養塩のうち、窒素源についてはNH4-Nが吸収されNO3-Nが蓄積するという現象が確認された。このことからNH4-Nを優先的に吸収していることが明らかとなった。NH4-Nのみを添加することで、効率よくシフォナキサンチンを生産できる可能性がある。
本発明によれば、抗腫瘍効果などを有するシフォナキサンチンや太陽電池の増感色素として利用され得るシフォネインを効率的かつ多量に生産することができる。したがって、医薬品や健康食品、電子材料等に用いられる素材の製造方法として極めて有用である。
以 上

Claims (8)

  1. ミル科ミル属に属する緑藻類の糸状体種苗を培養して得た培養糸状体を有機溶媒で抽出し、得られた有機溶媒抽出物からシフォナキサンチンおよび/またはシフォネインを分離することを特徴とするシフォナキサンチンおよび/またはシフォネインの製造方法。
  2. 培養が、水温20〜32℃で行われるものである請求項1記載のシフォナキサンチンおよび/またはシフォネインの製造方法。
  3. 培養が、光量20〜500ppfdの光照射条件下で行われるものである請求項1または2に記載のシフォナキサンチンおよび/またはシフォネインの製造方法。
  4. 培養が、光周期8L:16D〜24L:0Dの光照射条件下で行われるものである請求項1ないし3のいずれかの項記載のシフォナキサンチンおよび/またはシフォネインの製造方法。
  5. 培養が、窒素を100〜700μMおよびリンを2〜40μM含有する培養液中で行われるものである請求項1ないし4のいずれかの項記載のシフォナキサンチンおよび/またはシフォネインの製造方法。
  6. 窒素が、アンモニア態窒素である請求項5記載のシフォナキサンチンおよび/またはシフォネインの製造方法。
  7. 培養が、連続撹拌培養により行われるものである請求項1ないし6のいずれかの項記載のシフォナキサンチンおよび/またはシフォネインの製造方法。
  8. 撹拌が、通気による攪拌または機械撹拌である請求項7記載のシフォナキサンチンおよび/またはシフォネインの製造方法。
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