JP2013049981A - 堤体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】この堤体は、矢板1を連接して地盤に打設した二列の矢板壁2,2からなる二重矢板壁3と、二列の矢板壁2,2を連結するタイロッド4と、二列の矢板壁2,2の間に中詰めされる中詰め材としての高炉水砕スラグ5とを備えている。二重矢板壁3では、長期使用するにあたって、経年的に鋼材の腐食が進行して断面が減肉していく。一方、高炉水砕スラグ5の硬化が進行して強度が高くなっていく。これにより、鋼製の矢板壁2,2の腐食による耐力低下や孔食による中詰め砂の吸い出し・陥没を防止できる構造とすることができる。これにより、堤体の長期の耐用期間を確保できる。
【選択図】図1
Description
土堤は、安価な入手しやすい材料で構築できるが、堤体の安定性を保ちつつ高さを確保するためには堤体の幅も大きくする必要があり、堤防の構築に必要な用地が大きくなる。
また、堤体内の水の浸透流や基礎地盤の液状化によって堤体に破壊や沈下が生じたり、河川における洪水や海岸堤における津波などにより越流が生じた場合には洗掘や土砂の流出によって、堤体が脆性的に崩壊したりするなどの弱点を有している。
また、大地震が発生した場合に、重力式の堤体は、基礎地盤が液状化した際に沈下や傾斜を生じたり、津波が生じた際にその波力により流されたり、基礎地盤が洗掘・吸い出しを受けて不安定状態になったりという被害が生じる。
さらに、上述の鋼矢板や鋼管矢板などの鋼製壁による堤体と同様に、基礎地盤中に根入れする構造となるので堤体が流されにくく脆性的な破壊を生じにくいという特長も有する。
鉄鋼スラグは、鉄鋼製造プロセスで大量に発生する副産物であり、高炉で鉄鉱石を溶融・還元する際に発生する高炉スラグと、鉄を精錬する製鋼過程で発生する製鋼スラグに大別される。さらに、高炉スラグは、冷却方法によって徐冷スラグと水砕スラグに分かれる。このうち水砕スラグは、溶融スラグに加圧水を噴射するなど急激に冷却処理したガラス質で粒状の鉄鋼スラグである。
しかし、以下のようなことから、まだ現状では用途が限定され、広く一般に使用される状況にはない。
例えば、高炉水砕スラグは、経時的に硬化し、強度の変化、透水性の変化が生じるが、条件によって硬化速度や強度が異なり、同一現場内でも場所によって硬化の進行程度や発現強度にばらつきがあることなどから、安定的な材料としての物性評価が難しい。
また、鉄鋼スラグは、一般的な環境では危険有害性はないと考えられるが、鉄鋼スラグ中のマグネシウムやカルシウム成分が溶出することにより水を白濁させたり、雨水等の水が鉄鋼スラグに染み込んだ後に流出した場合に、流出した水がアルカリ性を示したりする虞がある。
当該二重矢板壁を構成する二列の前記矢板壁どうしを連結する連結材と、
前記二重矢板壁の前記矢板壁どうしの間に中詰めされている中詰め材としての鉄鋼スラグと備えていることを特徴とする。
例えば、現状では、良質の砂質土の入手が必ずしも容易でないという問題があるが、砂質土の代用として鉄鋼スラグを用いることで、この問題を解決することができる。
すなわち、鉄鋼スラグは、二重矢板壁に中詰めされることで、鉄鋼スラグの性質に即して有効利用されることになり、鉄鋼スラグに適した用途を提供できることになる。
上述のように二重矢板壁では、長期に渡って使用するにあたって、経年的に鋼材の腐食が進行して断面が減肉していく一方で、高炉水砕スラグの硬化が進行して強度が高くなっていれば、鋼製壁の腐食による堤体としての耐力の低下や孔食による中詰め砂の吸い出し・陥没を防止できる構造とすることができる。これにより堤体の長期の耐用期間を確保できる。
また、中詰め材としての高炉水砕スラグが、軽量でかつ内部摩擦角が大きいことから、二重矢板壁に作用する土圧の軽減や中詰め材として大きなせん断強度の発揮が期待でき、結果として二重矢板壁を構成する鋼製壁の断面を小さくすることができる。
また、基礎地盤が軟弱な場合に、中詰め材が軽量であることにより、中詰め材の沈下を抑制することができる。
また、高炉水砕スラグと、他のスラグ(高炉徐冷スラグや製鋼スラグ)を混合した場合も、混合比によっては、高炉水砕スラグによる上述のような効果を得ることができる。他のスラグの混合比は20%以下とすることが好ましく、その種類としては高炉徐冷スラグが好ましい。
さらに、液状化地盤(液状化層)内ではそれより上方の土の重みが水平圧として矢板壁に作用することから、軽量な高炉水砕スラグを用いておけば、液状化地盤内で矢板壁に作用する土圧強度を小さくすることもでき、さらにその効果を高めることが可能になる。
図1に示すように、本発明の第1実施形態の堤体は、例えば、鋼矢板、鋼管矢板等の矢板1を二列に連接した状態に地盤10に打設した二重矢板壁3と、二重矢板3を構成する二列の前記矢板壁2、2どうしを連結する連結材としてのタイロッド4と、二重矢板壁3により締め切られた部分に中詰めされた高炉水砕スラグ5とからなるものである。この堤体は、例えば、河川堤防、海岸堤防(防潮堤、防波堤)として用いられる。
本発明例においては、これら二列の矢板壁2,2は、互いに略平行に配置されている。また、これら矢板壁1間の間隔および地盤からの高さは、状況に応じて決定される。
二列の矢板壁2,2間には、中詰め材として高炉水砕スラグ5が投入され、必要に応じて締め固められる。
なお、高炉水砕スラグ5が上述のように軽いことから、地盤面の直ぐ下側が軟弱地盤で中詰め材の沈下の虞がある場合には、沈下の抑制にも効果を発揮する。
また、高炉水砕スラグ5に潜在硬化性があることにより、万が一、堤体を超える水位となって越流が生じても(波をかぶっても)、高炉水砕スラグ5が硬化していれば、洗掘や吸い出しを受けにくい状況になる。
また、二重矢板壁3を構成する鋼材(矢板1)は経年的に腐食が進行し、断面が減肉していくが、逆に高炉水砕スラグ5は硬化が進行して強度が高くなっていき、両者が互いの特性を補完できる関係になる。
高炉水砕スラグ5に対する、例えば、高炉スラグ微粉末やセメント、石灰などの添加により、硬化速度や強度を高めることができる。
図2に示すように、第2実施形態の堤体は、第1実施形態の堤体における矢板壁2,2の根入れ深さを変更し、かつ、中詰め材の上部を変更したものであって、その他の構造は、第1実施形態と同様になっている。
また、締め切られた二重矢板壁3内に高炉水砕スラグ5bを中詰めするに際して、高炉水砕スラグ5bの高さをタイロッド4より少しだけ下側としている。高炉水砕スラグ5bの上側には、硬化しない中詰め材として、土砂6が堤体上部の中詰め材として充填された状態になっている。
したがって、地震により周辺地盤に液状化が発生した後に、津波が襲来するような過酷な条件に対しても、鋼材(矢板1)の壁高と根入れ効果によって堤体は天端高さを維持できる。
図3に示すように、第3実施形態の堤体は、第1実施形態の堤体における矢板壁2,2の根入れ深さを変更し、かつ、中詰め材が充填される深さを深くしたものであり、その他の構造は、第1実施形態と同様になっている。
第3実施形態における堤体が設置される地盤は、第2実施形態と同様に液状化地盤10aになっており、矢板壁2,2の根入れ深さが、液状化地盤10aの下方の非液状化地盤10bまで根入れされている。
また、矢板壁2,2による二重締切り内の液状化地盤10bの一部を高炉水砕スラグ5cに置き換えることで、液状化の発生範囲を抑制することができる。
これにより、液状化地盤中で二重矢板壁3に作用する土圧の軽減を図ることができる。なお、地震時に液状化した液状化層内では、それより上方の土(中詰め材)の重みが水平圧として矢板壁2,2に作用するが、液状化範囲を抑制することにより矢板の発生応力や変位を小さくする効果が期待できることから、矢板1に必要な鋼材断面の軽減が可能であり、経済的な構造とすることができる。
図4に示すように、第4実施形態の堤体は、第1実施形態の堤体を土提に応用したものであり、土堤に応用した以外の構造は、第1実施形態と同様になっている。
第4実施形態においては、第1実施形態と同様の作用効果を土堤21に付与し、土堤21を補強することができる。
図5に示すように、第5実施形態の堤体は、第4実施形態の堤体における矢板壁2,2の根入れ深さを変更したものであり、その他の構造は、第4実施形態と同様になっている。
第5実施形態においては、第2実施形態と同様に、矢板壁2,2が液状化地盤10aより下の非液状化地盤10bまで根入れされている。
第5実施形態においては、既設の土堤21において、第2実施形態で矢板壁2,2を非液状化地盤まで根入れした場合と同様の作用効果を得ることができる。
図6に示すように、第6実施形態の堤体は、第5実施形態の堤体における中詰め材の状態を変更したものであり、その他の構造は、第5実施形態と同様になっている。
第6実施形態においては、二列の矢板壁2,2の間を掘削する際に、土堤21の略底部の深さではなく、それよりも深く掘削している。この際に、液状化地盤10aの一部が掘削される。すなわち、液状化地盤10aに至る深さまで土砂を掘削している。
また、第2実施形態の場合と同様に、二列の矢板壁2,2間に中詰めされる高炉水砕スラグ5dの高さ位置がタイロッド5より少しだけ低い位置となっている。中詰め材としての高炉水砕スラグ5dの上側には土砂6が投入されて締め固められる。この際にタイロッド4は土砂6に埋められた状態になる。前記土砂6は、二列の矢板壁2,2間の掘削された土砂を埋め戻したものである。
また、各矢板壁2,2は、必ずしも全体に渡って連結(継手が嵌合)されている必要はなく、隣り合う矢板どうしが継手で連結されていない箇所を設けておいてもよい。この非連結部からの未硬化の中詰めのスラグの流出を防止するために、非連結部では隣り合う矢板同士をラップさせるように打設したり、非連結部に隙間部がある場合には、この区間を塞ぐように近傍に別の矢板を平行して打設するなどしておけばよい。このように適当な間隔で継手の非連結部を設けることで地下水の流れ保持するような構造とすることも可能である。
なお、中詰め材としてのスラグが硬化した後には、非連結部からの流出はなくなり、構造的な弱所となる可能性のある鋼製壁の非連結部を補強する効果も得られ、堤体全体としての安定性が向上する。
図7に示すように、第7実施形態の堤体は、第2実施形態の堤体にマウンド状の土堤21を設けたものであり、その他の構造は、第2実施形態と同様になっている。
土堤21は、必ずしも第4〜第6実施形態のように、堤体3の上面側まで盛られる必要はない。土堤21により堤体3の突出部分が小さくなれば、堤体として構造的にも有利となる。すなわち、地上に突出している堤体の高さが低くなることにより、堤体に津波や洪水による外力が作用した際の堤体の耐力を向上させることができる。また、液状化が発生した場合、液状化地盤10aでは矢板壁に、それより上方の上載圧が水平圧として作用する。二重矢板締め切り内では液状化層より上方の天端までの中詰め材の重量が水平圧として作用し、矢板を外側へ押し拡げようとするが、これに対して二重矢板締め切り外側のマウンド状の土堤23,24の重量がカウンターウエイトとして作用し、矢板壁2の変形抑制に作用する。なお、図7では土堤21を略台形状に描写したが、突出部分の一部が隠れるように土堤21を形成すればよい。
また、第1実施形態から第3実施形態の堤体において、堤体の内側と外側の地盤面に高炉水砕スラグを敷き詰めるように配置してもよい。この場合にも上述と同様の効果が得られる。
2 矢板壁
3 二重矢板壁
4 タイロッド(連結材)
5 高炉水砕スラグ(スラグ、高炉スラグ)
6 土砂(硬化しない中詰め材)
10 地盤
10a 液状化地盤
10b 非液状化地盤
Claims (4)
- 鋼矢板または鋼管矢板等の矢板、または、前記矢板に他の矢板や鋼材を組み合わせてなる組合せ矢板を互いに連結している矢板壁を二重に設けた二重矢板壁と、
当該二重矢板壁を構成する二列の前記矢板壁どうしを連結する連結材と、
前記二重矢板壁の前記矢板壁どうしの間に中詰めされている中詰め材としての鉄鋼スラグと備えていることを特徴とする堤体。 - 中詰め材としての前記鉄鋼スラグは、高炉スラグ、高炉スラグのうちの高炉水砕スラグ、または、高炉水砕スラグと他のスラグとの混合物であることを特徴とする請求項1に記載の堤体。
- 前記二重矢板壁の下部が地震時に液状化する可能性が高い液状化地盤に打設される場合に、前記二重矢板壁は液状化地盤より下の液状化する可能性が低い非液状化地盤に根入れされていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の堤体。
- 中詰め材としての前記鉄鋼スラグは、前記連結材より下となる高さまで中詰めされ、その上に硬化しない中詰め材が中詰めされていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の堤体。
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