JP2013049424A - 空気入りタイヤ - Google Patents

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Abstract

【課題】熱可塑性樹脂又は熱可塑性エラストマー組成物からなるインナーライナーを有する空気入りタイヤにおいて、パンク修理などの際にインナーライナーの損傷を防止するようにした空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】 トレッド部1にタイヤ周方向の主溝9が配置されたタイヤであって、タイヤ内面に熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂中にエラストマーをブレンドした熱可塑性エラストマー組成物で形成された熱可塑性樹脂フィルム層(11)を設け、熱可塑性樹脂フィルム層(11)の内面に保護ゴム層12を積層し、保護ゴム層12の前記主溝9に対応する領域の厚さを、主溝9以外のトレッド部1に対応する部分の厚さより大きくしたことを特徴とする。
【選択図】図

Description

本発明は、空気入りタイヤに関し、さらに詳しくは、熱可塑性樹脂又は熱可塑性エラストマー組成物からなるインナーライナーを有する空気入りタイヤにおいて、インナーライナーの損傷を防止するようにした空気入りタイヤ、特に重荷重用空気入りタイヤに関する。
一般に、チューブレスの空気入りタイヤは、タイヤ内面のインナーライナーに他のゴムに比べて空気透過防止性に優れたブチル系ゴムを使用している。しかし、ブチル系ゴムは比重が大きいためタイヤを重くする一因になっている。このため、タイヤ軽量化の手法の一つとして、このインナーライナーにブチル系ゴムよりも軽く、しかも空気透過性が1/3〜1/10も低い熱可塑性樹脂又は熱可塑性エラストマー組成物からなる熱可塑性樹脂フィルムを使用するようにした提案がある(例えば、特許文献1参照)。
しかし、熱可塑性樹脂又は熱可塑性エラストマー組成物は、ゴムに比べて弾性率が著しく大きいため、極めて薄いフィルムにして使用しないと屈曲に対する耐久性を維持することができない。また、このように極薄にしても、空気透過防止性がブチル系ゴムよりも優れているため空気透過防止層として十分に機能させることができる。
しかしながら、熱可塑性樹脂フィルムからなるインナーライナーは弾性率が高く、かつ極薄であるため、リム組み作業等の際に、工具などがインナーライナーに接触すると簡単に損傷することがあり、空気透過防止性能へ与える影響は極めて大きい。特に、タイヤが釘踏みなどでパンクした場合、パンク修理のためトレッド部はインナーライナーをバフ処理するため損傷を受けやすく、耐久性に問題があった。
特開平08−258506号公報
本発明の目的は、熱可塑性樹脂又は熱可塑性エラストマー組成物からなるインナーライナーを有する空気入りタイヤにおいて、パンク修理などの際に生じやすいインナーライナーの損傷を防止するようにした空気入りタイヤを提供することにある。
上記目的を達成する本発明の空気入りタイヤは、トレッド部にタイヤ周方向の主溝が配置されたタイヤであって、タイヤ内面に熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂中にエラストマーをブレンドした熱可塑性エラストマー組成物で形成された熱可塑性樹脂フィルム層を設け、該熱可塑性樹脂フィルム層の内面に保護ゴム層を積層し、前記保護ゴム層の前記主溝に対応する領域の厚さを、主溝以外のトレッド部に対応する部分の厚さより大きくしたことを特徴とする。
前記熱可塑性樹脂フィルム層は、ショルダー部からバットレス部に対応する領域、サイドウォール部に対応する領域、ビード部に対応する領域から選ばれる少なくとも1つの領域の厚さをトレッド部のセンター領域に対応する部分の厚さより大きくする。
前記熱可塑性樹脂フィルム層の厚さは0.03〜0.5mmであり、前記保護ゴム層の厚さは0.2〜2.0mm、かつ前記トレッド部に対応する部分の厚さを0.5mm以上にするとよい。前記保護ゴム層を他の残りの領域の保護ゴム層よりも厚くする領域は、少なくとも前記トレッド部に設けた最外側の主溝に対応する位置からタイヤ幅方向内側の範囲にし、かつこの範囲の保護ゴム層の厚さを0.5〜2.0mmにするとよい。また、前記保護ゴム層はブチル系ゴムから形成するとよい。
本発明の空気入りタイヤは、トレッド部にタイヤ周方向の主溝が配置されたタイヤであって、熱可塑性樹脂又は熱可塑性エラストマー組成物からなる熱可塑性樹脂フィルムで構成したインナーライナーの内面に保護ゴム層を積層すると共に、前記保護ゴム層の前記主溝に対応する領域の厚さを、主溝以外のトレッド部に対応する部分の厚さより大きくしたので、パンク修理作業などにおいてトレッド部の内面をバフしたり、工具類が接触しても保護ゴム層の損傷を防止することができる。
本発明の空気入りタイヤが参照する実施形態を例示するタイヤ子午線方向半断面図である。 本発明の空気入りタイヤが参照する他の実施形態を例示するタイヤ子午線方向半断面図である。 本発明の空気入りタイヤが参照する他の実施形態を例示するタイヤ子午線方向半断面図である。 本発明の空気入りタイヤの実施形態を例示するタイヤ子午線方向半断面図である。 本発明の空気入りタイヤが参照する他の実施形態を例示するタイヤ子午線方向半断面図である。
図1は、本発明の空気入りタイヤが参照する実施形態の一例を示すタイヤ子午線方向の半断面図である。
図1に示す重荷重用空気入りタイヤにおいて、1はトレッド部、2はショルダー部、3はサイドウォール部、4はビード部、5はカーカス層、10はバットレス部である。カーカス層5は、ビード部4に埋設された左右一対のビードコア6間に装架され、その両端部をそれぞれビードコア6の廻りにタイヤ内側から外側に折り返すようにしている。トレッド部1には、カーカス層5の外側に、4層からなるベルト層7がタイヤ1周にわたって配置されている。トレッド部1には、ベルト層7の外側にトレッドゴムを配置し、タイヤ全幅で3本の主溝9がタイヤ周方向に延長するように形成されている。カーカス層5の内側には、空気透過防止用のインナーライナー11が内貼りされ、さらに、その内側に、保護ゴム層12が積層して配置されている。インナーライナー11は、熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂中にエラストマーをブレンドした熱可塑性エラストマー組成物で形成された極薄の熱可塑性樹脂フィルム層で構成されている。熱可塑性樹脂フィルム層の厚さは好ましくは0.03〜0.5mm、より好ましくは0.075〜0.30mmであるのに対して、保護ゴム層の厚さは好ましくは0.2〜2.0mm、より好ましくは0.5〜1.5mmであるとよい。上述のようにインナーライナー11の内側に保護ゴム層12が積層されていることにより、極薄の熱可塑性樹脂フィルム層の損傷を防止するようになっている。
本発明の空気入りタイヤは、保護ゴム層の厚さを変化させるようにする。保護ゴム層12はトレッド部1に対応する部分の厚さを好ましくは0.5mm以上、より好ましくは1.0〜1.5mmにすると共に、他の残りの領域における保護ゴム層12の厚さよりも厚くするとよい。トレッド部1の保護ゴム層12の厚さを0.5mm以上で、他の残りの領域の保護ゴム層よりも厚くにすることにより、パンク修理作業においてタイヤ内面をバフ処理した場合でもインナーライナーを損傷させないようにすることができる。また、保護ゴム層12のトレッド部1の厚さを大きくし、その他の部分の厚さを小さくすることにより、タイヤ重量の増加を抑制することができる。保護ゴム層12を厚くする領域は、少なくともトレッド部に設けた最外側の主溝に対応する位置からタイヤ幅方向内側の範囲にするとよい。その他の部分とは、トレッド部1を除いた部分であり、バットレス部10、サイドウォール部3、ビード部4に対応する各領域をいう。保護ゴム層の厚さを部分的に厚くする方法は、特に限定されるものではなく、保護ゴム層を複数枚積層してもよいし、部分的に厚くなるように押出成形してもよい。
本発明の空気入りタイヤにインナーライナーとして設ける熱可塑性樹脂又は熱可塑性エラストマー組成物からなる熱可塑性樹脂フィルム層は、全域が略均一な厚さであってもよいが、空気漏れが起こりやすい領域に応じて、タイヤ子午線方向断面で変化させるようにしてもよい。このように空気漏れが起こりやすい領域に応じて厚さを調整することにより、空気漏れに伴う周辺のゴム部材の酸化劣化の抑制が可能になりタイヤ耐久性を向上することができる。
このように、熱可塑性樹脂フィルム層の厚さを変化させて厚肉にする領域としては、ショルダー部2からバットレス部10、サイドウォール部3、ビード部4及びトレッド部1の主溝9下に対応する領域から選ばれる少なくとも1つにするとよい。サイドウォール部3及びトレッド部1の主溝9下は、ゴム部材の厚さが薄いため、空気透過量が多くなりやすい。また、ショルダー部2からバットレス部10の領域及びビード部4は、空気漏れが起きると周辺のゴム部材の酸化劣化により構成部材のタイヤ耐久性が低下しやすい。従って、これら領域の熱可塑性樹脂フィルム層を厚肉にすることにより、空気透過防止性を向上すると共に、ゴム部材の酸化劣化を抑制することにより耐久性を向上することができる。熱可塑性樹脂フィルム層の厚さを部分的に大きくする方法は、特に限定されるものではなく、例えば、熱可塑性樹脂フィルム層を複数枚積層して形成するなどの方法を好ましく挙げることができる。
また、本明細書において、熱可塑性樹脂フィルム層のトレッド部のセンター領域に対応する部分の厚さとは、主溝以外のトレッド部に対応する部分の厚さをいう。主溝以外のトレッド部のセンター領域は、トレッドゴム、ベルト層のコートゴムなどを含めた全体のゴム部材の厚さが大きいため、他の領域よりも空気透過防止性が良好なためである。
熱可塑性樹脂フィルム層を厚肉にする領域における厚さをGaとし、トレッド部のセンター領域に対応する部分の厚さをGbとするとき、両者の比Ga/Gbは、好ましくは1.05〜1.30とし、より好ましくは1.10〜1.25にするとよい。厚さの比Ga/Gbが、1.05より小さいと、空気透過防止性を十分に向上させることができず、また、酸化劣化を防止し耐久性を向上する効果が十分に得られない。また、比Ga/Gbが、1.30より大きいとタイヤ重量が増加する。なお、厚さGaは、厚肉領域における最大厚さとし、厚さGbは、主溝9以外のトレッド部に対応する部分の最大厚さとする。
図2は、熱可塑性樹脂フィルム層の厚さを変化させるようにした本発明が参照する実施形態の他の一例を示すタイヤ半断面図である。
図2において、熱可塑性樹脂フィルム層により構成されたインナーライナー11のショルダー部2からバットレス部10に対応する領域w1の厚さが、トレッド部のセンター領域に対応する部分w0の厚さより大きくなるようにする。領域w1は、ベルト層7のうち最大幅のものの端末7eからインナーライナーに垂線を引き、その交点を中心として、タイヤ子午線方向断面の内側に沿ってインナーペリフェリーの5〜10%の範囲内にあるとよい。領域w1の幅が、インナーペリフェリーの5%未満であると空気透過防止性を向上させ酸化劣化を防止してタイヤ耐久性を向上する効果が十分に得られない。また、10%を超えるとタイヤ重量が増加する。なお、本明細書において、インナーペリフェリーとは、タイヤ子午線方向断面において、一方のビードトゥから他方のビードトゥまでのタイヤ内周面に沿う長さとする。
このようにショルダー部からバットレス部の熱可塑性樹脂フィルム層を厚肉にすることは、特に、空気圧が450kPa以上の空気入りタイヤに有効であり、トラック・バスなどの重荷重用タイヤに適用することが好ましい。
図3は、同じく熱可塑性樹脂フィルム層の厚さを変化させるようにした本発明が参照する実施形態の他の例を示すタイヤ半断面図である。
図3において、熱可塑性樹脂フィルム層から構成されたインナーライナー11のサイドウォール部に対応する領域w2の厚さが、トレッド部のセンター領域に対応する部分w0の厚さより大きくなるようにする。領域w2は、カーカスラインの最大幅の点Pからインナーライナーに垂線を引き、その交点を中心として、タイヤ子午線方向断面の内側に沿うインナーペリフェリーの3〜8%の範囲内にするとよい。領域w2の幅が、インナーペリフェリーの3%未満であると空気透過防止性を向上する効果が十分に得られない。また、8%を超えるとタイヤ重量が増加する。
このようにサイドウォール部の熱可塑性樹脂フィルム層を厚肉にすることは、特に、乗用車用空気入りタイヤに適用することが好ましい。
図4は、保護ゴム層の厚さを変化させるようにした本発明の実施形態の例を示すタイヤ半断面図である。
図4において、保護ゴム層12のトレッド部1の主溝9に対応する領域w3の厚さが、主溝9以外のトレッド部1に対応する領域w0の厚さより大きくなるようにする。このとき、保護ゴム層12は、ブチル系ゴムにより構成するとよい。領域w3の幅は、主溝9の開口幅以上の幅広にするとよく、より好ましくは開口幅より0.01〜3.0mm幅広にするとよい。領域w3の幅が、主溝開口幅未満であると、主溝の溝下領域の部分を十分に覆うことができず空気透過防止性を向上効果が不十分になる。また、開口幅より3.0mmを超えて幅広になると、タイヤ重量が増大する。なお、主溝開口幅は、トレッド面における主溝開口部の両側エッジ間のタイヤ幅方向の距離であり、主溝のエッジ部が面取りされている場合には、主溝両側の溝壁のそれぞれの延長線とトレッド表面の延長線との交点間のタイヤ幅方向の距離とする。
図5は、熱可塑性樹脂フィルム層の厚さを変化させるようにした本発明が参照する実施形態のさらに他の例を示すタイヤ半断面図である。
図5において、重荷重用空気入りタイヤは、ビード部4にチェーファー8を配置しており、熱可塑性樹脂フィルム層から構成されたインナーライナー11のビード部に対応する領域w4の厚さが、トレッド部のセンター領域に対応する部分w0の厚さより大きくなるようにする。重荷重用空気入りタイヤのビード部では、カーカス層5を伝わり空気漏れが起こり周辺のゴム部材が酸化劣化を受けやすく、特に、カーカス層5の巻き上げ端末5eからの空気漏れによりチェーファー8などが酸化劣化しやすいため、チェーファーセパレーションなどの故障の原因になる。このため、領域w4の熱可塑性樹脂フィルム層の厚さを大きくすることにより、空気透過防止性の向上により酸化劣化を防止し、耐久性を向上する。
ビード部に対応する領域w4は、カーカス層の巻き上げ端末5eからインナーライナーに垂線を引き、その交点を中心として、タイヤ子午線方向断面の内側に沿うインナーペリフェリーの3〜10%の範囲内にするとよい。領域w4が、インナーペリフェリーの3%未満であると酸化劣化を防止して耐久性を向上する効果が十分に得られない。また、10%を超えるとタイヤ重量が増加する。
本発明において、保護ゴム層は、空気入りタイヤに使用されるゴムであればいずれも使用可能である。好ましくはジエン系ゴムがよい。ジエン系ゴムとしては、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、エポキシ化天然ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR、高シスBR及び低シスBR)、ニトリルゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴムを例示することができる。なかでも、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴムなどのブチル系ゴムが好ましい。ブチル系ゴムの空気透過係数は4.5〜5.5×10-9cc・cm/cm2・sec・cmHgであり、トレッドゴム等に使用される一般のゴムに比べて空気透過係数が小さく、インナーライナーに積層することにより空気透過防止性能をいっそう向上することができる。
本発明において、熱可塑性樹脂フィルム層を形成する熱可塑性樹脂又は熱可塑性エラストマー組成物は、空気透過係数が15〜30×10-12cc・cm/cm2・sec・cmHgであり、トレッドゴム等に使用される一般のゴムに比べて空気透過係数が著しく極小であることが特徴である。
また、熱可塑性樹脂又は熱可塑性エラストマー組成物のヤング率は、特に限定されるものではなく、好ましくは1〜500MPa、より好ましくは50〜500MPaにするとよい。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミド系樹脂〔例えば、ナイロン6(N6)、ナイロン66(N66)、ナイロン46(N46)、ナイロン11(N11)、ナイロン12(N12)、ナイロン610(N610)、ナイロン612(N612)、ナイロン6/66共重合体(N6/66)、ナイロン6/66/610共重合体(N6/66/610)、ナイロンMXD6(MXD6)、ナイロン6T、ナイロン6/6T共重合体、ナイロン66/PP共重合体、ナイロン66/PPS共重合体〕及びそれらのN−アルコキシアルキル化物、例えば、ナイロン6のメトキシメチル化物、ナイロン6/610共重合体のメトキシメチル化物、ナイロン612のメトキシメチル化物、ポリエステル系樹脂〔例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンイソフタレート(PEI)、PET/PEI共重合体、ポリアリレート(PAR)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、液晶ポリエステル、ポリオキシアルキレンジイミドジ酸/ポリブチレンテレフタレート共重合体などの芳香族ポリエステル〕、ポリニトリル系樹脂〔例えば、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメタクリロニトリル、アクリロニトリル/スチレン共重合体(AS)、(メタ)アクリロニトリル/スチレン共重合体、(メタ)アクリロニトリル/スチレン/ブタジエン共重合体〕、ポリメタクリレート系樹脂〔例えば、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリメタクリル酸エチル〕、ポリビニル系樹脂〔例えば、酢酸ビニル、ポリビニルアルコール(PVA)、ビニルアルコール/エチレン共重合体(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン(PDVC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、塩化ビニル/塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニリデン/メチルアクリレート共重合体、塩化ビニリデン/アクリロニトリル共重合体(ETFE)〕、セルロース系樹脂〔例えば、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース〕、フッ素系樹脂〔例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリクロルフルオロエチレン(PCTFE)、テトラフロロエチレン/エチレン共重合体〕、イミド系樹脂〔例えば、芳香族ポリイミド(PI)〕等を好ましく用いることができる。
また、本発明で使用する熱可塑性エラストマー組成物は、上述した熱可塑性樹脂とエラストマーとをブレンドして構成することができる。
熱可塑性エラストマー組成物を構成するエラストマーとしては、例えば、ジエン系ゴム及びその水添物〔例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、エポキシ化天然ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR、高シスBR及び低シスBR)、ニトリルゴム(NBR)、水素化NBR、水素化SBR〕、オレフィン系ゴム〔例えば、エチレンプロピレンゴム(EPDM、EPM)、マレイン酸変性エチレンプロピレンゴム(M−EPM)、ブチルゴム(IIR)、イソブチレンと芳香族ビニル又はジエン系モノマー共重合体、アクリルゴム(ACM)、アイオノマー〕、含ハロゲンゴム〔例えば、Br−IIR、CI−IIR、イソブチレンパラメチルスチレン共重合体の臭素化物(Br−IPMS)、クロロプレンゴム(CR)、ヒドリンゴム(CHR)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)、塩素化ポリエチレンゴム(CM)、マレイン酸変性塩素化ポリエチレンゴム(M−CM)〕、シリコンゴム〔例えば、メチルビニルシリコンゴム、ジメチルシリコンゴム、メチルフェニルビニルシリコンゴム〕、含イオウゴム〔例えば、ポリスルフィドゴム〕、フッ素ゴム〔例えば、ビニリデンフルオライド系ゴム、含フッ素ビニルエーテル系ゴム、テトラフルオロエチレン−プロピレン系ゴム、含フッ素シリコン系ゴム、含フッ素ホスファゼン系ゴム〕、熱可塑性エラストマー〔例えば、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、エステル系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ボリアミド系エラストマー〕等を好ましく使用することができる。
熱可塑性エラストマー組成物において、特定の熱可塑性樹脂とエラストマーとの組成比は、特に限定されるものではなく、熱可塑性樹脂のマトリクス中にエラストマーが不連続相として分散した構造をとるように適宜決めればよいが、好ましい範囲は重量比90/10〜30/70である。熱可塑性エラストマー組成物は、熱可塑性樹脂が連続相(マトリックス)を形成し、エラストマーが分散相(ドメイン)となる形態をとることにより、インナーライナーに十分な柔軟性と剛性を併せもつことができると共に、エラストマーの多少によらず、成形に際し、熱可塑性樹脂と同等の成形加工性を得ることができる。
前記した特定の熱可塑性樹脂とエラストマーとの相溶性が異なる場合は、第3成分として適当な相溶化剤を用いて両者を相溶化させることができる。相溶化剤としては、熱可塑性樹脂及びエラストマーの両方又は片方の構造を有する共重合体、或いは熱可塑性樹脂又はエラストマーと反応可能なエポキシ基、カルボニル基、ハロゲン基、アミノ基、オキサゾリン基、水酸基等を有した共重合体の構造をとるものとすることができる。これらは混合される熱可塑性樹脂とエラストマーの種類によって選定すればよい。このような相溶化剤の配合量には特に限定はないが、好ましくは、ポリマー成分(熱可塑性樹脂とエラストマーとの合計)100重量部に対して、0.5〜10重量部がよい。
本発明において、熱可塑性樹脂又は熱可塑性エラストマー組成物は、一般にポリマー組成物に配合される充填剤(炭酸カルシウム、酸化チタン、アルミナ等)、カーボンブラック、ホワイトカーボン等の補強剤、軟化剤、可塑剤、加工助剤、顔料、染料、老化防止剤等をインナーライナーとしての必要特性を損なわない限り任意に配合することができる。
以下、実施例によって本発明をさらに説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
図1のタイヤ構造でタイヤサイズ275/80R22.5の空気入りタイヤであって、インナーライナーを熱可塑性樹脂フィルム層で構成し、その内側に保護ゴム層を積層するにあたり、熱可塑性樹脂フィルム層をナイロン6/66共重合体(N6/66)にイソブチレンパラメチルスチレン共重合体の臭素化物(Br−IPMS)をブレンドした熱可塑性エラストマー組成物(空気透過係率が0.98×10-12cc・cm/cm2・sec・cmHg)で形成し、保護ゴム層をブチルゴム(空気透過係率が5.5×10-12cc・cm/cm2・sec・cmHg)で形成することを共通条件とし、保護ゴム層のトレッド部及び他の残りの領域に対応する部分の厚さ並びに熱可塑性樹脂フィルム層の主溝以外のトレッド部(主溝以外のトレッド部のセンター領域)、主溝領域、ショルダー部からバットレス部、サイドウォール部、ビード部に対応する領域の厚さをそれぞれ表1に示すように変化させて、10種類の空気入りタイヤ(実施例1、参考例1〜6、比較例1〜3)を製作した。
得られた10種類の空気入りタイヤ(実施例1、参考例1〜6、比較例1〜3)について、タイヤ重量を測定しその逆数を比較例1のタイヤを100とする指数で表わし表1に示した。この指数が、大きい程タイヤが軽いことを意味する。また、各空気入りタイヤの空気透過防止性能、タイヤ耐久性及びビード耐久性をそれぞれ以下の試験方法により測定した。比較例2は、トレッド部の保護ゴム層の厚さが小さくパンク修理作業のバフ作業は困難である。
空気透過防止性能
得られたタイヤをリム(22.5×7.50)に装着し、初期圧力900kPa、室温21℃、無負荷条件にて3ヶ月間静置する間、4日毎に内圧を測定した。初期圧力P0(kPa)、測定圧力Pt(kPa)、経過時間t(日)として、下記式(1)により回帰係数αを算出した。
Pt/P0=exp(−αt) (1)
得られた回帰係数αから、t=30(日)として、下記の式(2)により1ヶ月当たりの圧力低下率β(%/月)を算出した。
β=(1−exp(−αt))×100 (2)
得られたβの値を比較例1の値を100とする指数にして、表1に空気透過防止性能として示した。この指数が小さいほど、空気透過防止性能が優れていることを意味する。
タイヤ耐久性
得られたタイヤをリム(22.5×7.50)に装着し、JIS D4230に準拠する室内ドラム試験機(ドラム径1707mm)にかけて、酸素濃度60%に調製した空気を充填して空気圧をJATMA規定空気圧900kPaにし、JATMA規定負荷能力の150%を負荷し、速度81km/hの条件で、タイヤ故障を起こすまでの走行距離を測定した。得られた走行距離を比較例1の値を100とする指数にして、表1に示した。この指数が大きいほど、タイヤ耐久性が優れていることを意味する。
ビード耐久性
上記のタイヤ耐久性試験を行なった後、故障が発生した空気入りタイヤを解体し、ビード部のチェーファーセパレーションの発生数を目視評価した。得られた結果を、比較例1の結果の逆数を100とする指数として表1に示した。この指数が大きいほど、ビード耐久性が優れていることを意味する。
Figure 2013049424
1 トレッド部
2 ショルダー部
3 サイドウォール部
4 ビード部
9 主溝
10 バットレス部
11 インナーライナー
12 保護ゴム層

Claims (7)

  1. トレッド部にタイヤ周方向の主溝が配置されたタイヤであって、タイヤ内面に熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂中にエラストマーをブレンドした熱可塑性エラストマー組成物で形成された熱可塑性樹脂フィルム層を設け、該熱可塑性樹脂フィルム層の内面に保護ゴム層を積層し、前記保護ゴム層の前記主溝に対応する領域の厚さを、主溝以外のトレッド部に対応する部分の厚さより大きくした空気入りタイヤ。
  2. 前記熱可塑性樹脂フィルム層のショルダー部からバットレス部に対応する領域の厚さを、トレッド部のセンター領域に対応する部分の厚さより大きくした請求項1に記載の空気入りタイヤ。
  3. 前記熱可塑性樹脂フィルム層のサイドウォール部に対応する領域の厚さを、トレッド部のセンター領域に対応する部分の厚さより大きくした請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
  4. 前記熱可塑性樹脂フィルム層のビード部に対応する領域の厚さを、トレッド部のセンター領域に対応する部分の厚さより大きくした請求項1,2又は3に記載の空気入りタイヤ。
  5. 前記熱可塑性樹脂フィルム層の厚さが0.03〜0.5mmであり、前記保護ゴム層の厚さが0.2〜2.0mmであると共に、前記保護ゴム層の前記トレッド部に対応する部分の厚さが0.5mm以上である請求項1〜のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
  6. 前記保護ゴム層を他の残りの領域の保護ゴム層よりも厚くする領域を、少なくとも前記トレッド部に設けた最外側の主溝に対応する位置からタイヤ幅方向内側の範囲にし、かつこの範囲の保護ゴム層の厚さを0.5〜2.0mmにした請求項に記載の空気入りタイヤ。
  7. 前記保護ゴム層がブチル系ゴムからなる請求項1〜のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
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