JP2013044016A - 金属複合超微粒子の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】金属複合超微粒子の製造において、無機金属塩と有機物との反応時に生じる発泡を抑制し、反応性を向上させて生産性よく効率的に金属複合超微粒子を製造することのできる金属複合超微粒子の製造方法を提供する。
【解決手段】無機金属塩と高級アルコールとを加熱して反応させることにより、金属複合超微粒子を製造する方法において、上記無機金属塩と高級アルコールとを反応させる際に、イオン液体を共存させることを特徴とする金属複合超微粒子の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、金属複合超微粒子の製造方法に関するものであり、更に詳しくは、生産性良く、高収率にて粒径分布の小さい金属複合超微粒子を得るための製造方法に関するものである。
半導体装置等の電子部品の小形化に伴い、例えば、平均粒径が100nm以下の金属複合超微粒子の電子部品への応用可能性が注目を集めている。上記金属複合超微粒子は、例えば、配線回路の形成材料や、導電性ペースト材料として、半導体装置等の電子部品に応用展開が検討されている。
一般的に金属複合超微粒子は、その粒径が小さくなるにしたがって、その塊となる金属材料とは異なる性質を呈することが知られており、これは、金属複合超微粒子の場合、1個の超微粒子に含まれる原子のうち表面に露出しているものの割合が、塊となる金属材料の場合に比べて遙かに大きくなるためであると考えられる。この金属複合超微粒子の代表的な性質の一つとして、焼結が生起する温度が、通常、工業的に用いられる粉体よりも著しく低い温度で焼結を開始できるといった低温焼結性があげられる。
このような金属複合超微粒子の製造方法としては、種々検討されており、例えば、無機金属塩と高級アルコール等の有機化合物とを、用いる有機化合物により異なるが100〜230℃の温度で加熱することによって、金属化合物が被覆した金属複合超微粒子を生成する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この方法によると、例えば、平均粒径7〜10nm程度の金属(銀)成分からなる金属核の周囲を、厚み1.5nm程度の有機物で被覆した金属複合超微粒子が製造されている。また、無機金属塩と高級アルコールとを70〜140℃の低温域で一定時間保持することにより、上記無機金属塩が分解して金属成分からなる中心部を生成し、無機金属塩の金属成分と有機物が反応して有機金属化合物を生成することなく、上記中心部の周囲を有機物が被覆された金属複合超微粒子の製造方法が提案されている(特許文献2参照)。
国際公開第01/70435号 特開2007−46167号公報
しかしながら、上記特許文献の方法は、無機金属塩と有機物との反応時に、発泡が生じて反応液面が泡立ってしまい、反応効率が低下したり、未反応の無機金属塩が残存するというような問題を有していた。そのため、生産性が低下したり、効率よく粒径分布の小さい均一粒子を得ることが難しかった。
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、金属複合超微粒子の製造において、無機金属塩と有機物との反応時に生じる発泡を抑制し、反応性を向上させて、生産性良く、また、収率良く金属複合超微粒子を製造することのできる金属複合超微粒子の製造方法の提供をその目的とする。
そこで、本発明者は、無機金属塩と高級アルコールとの反応時に発生する発泡を抑制して反応性の向上を図るための配合剤につき、種々研究を重ねた結果、イオン液体を用いることにより、反応液面に発生する発泡を効果的に抑制することが可能となり、反応性が向上して、結果、未反応の無機金属塩の残存が抑制され、生産性良く、高収率にて金属複合超微粒子を製造することが可能となることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、無機金属塩と高級アルコールとを加熱して反応させることにより、金属複合超微粒子を製造する方法において、上記無機金属塩と高級アルコールとを反応させる際に、イオン液体を共存させる金属複合超微粒子の製造方法をその要旨とする。
このように、本発明は、上記無機金属塩と高級アルコールとの反応の際に、イオン液体を共存させるというものである。このため、上記無機金属塩と高級アルコールとの反応の際に発生する発泡現象が抑制され、無機金属塩と高級アルコールの反応性が向上することとなり、その結果、金属複合超微粒子を、粒径分布の小さい均一粒子として、生産性良く高収率で得ることができる。通常、発泡抑制剤としての効果が知られていないイオン液体の存在により、このような効果が得られることが非常に驚くべきことである。
本発明の代表的な一例の金属複合超微粒子の製造工程を示す製造フローチャート図である。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、これらの内容に限定されるものではない。
以下、本発明について詳細に説明する。
また、本発明の金属複合超微粒子の製造工程の概要を、図1の製造フローチャート図に代表例として示す。
《金属複合超微粒子》
本発明は、無機金属塩と高級アルコールとを加熱反応させることにより、金属複合超微粒子を製造するものであるが、この金属複合超微粒子は、無機金属塩が反応分解して生じた金属を中心とし周囲に上記高級アルコール由来の有機残基により被覆された金属複合超微粒子である。
《無機金属塩》
本発明の原料となる無機金属塩としては、通常、銀、銅等の遷移金属や錫等の炭酸塩、塩酸塩、硝酸塩、硫酸塩等があげられる。具体的には、炭酸銀、塩酸銀、硝酸銀、硫酸銀炭酸銅、塩酸銅、硝酸銅、硫酸銅、炭酸錫、塩酸錫、硝酸錫、硫酸錫等があげられる。本発明においては、上記無機金属塩の中でも、非水系溶媒となじみやすいという点から、特に炭酸銀または炭酸銅が好ましい。
なお、上記無機金属塩は、通常、常温で固体紛状のものである。
《高級アルコール》
本発明において無機金属塩とともに用いられる高級アルコールとしては、通常、炭素数6〜22、好ましくは8〜18、更に好ましくは10〜16の脂肪族アルコールがあげられる。具体的には、ドデシルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、セトステアリルアルコール等があげられる。炭素数が少なすぎると安定な被覆層が得られがたくなる傾向があり、多すぎると金属含有率が低くなる傾向がある。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。これら高級アルコールの中でも、安定かつ高金属含有率になるという点から、好ましくはミリスチルアルコールが用いられる。これら高級アルコールは、通常、固体状のものである。
上記高級アルコールの使用割合は、上記無機金属塩100重量部に対して40〜500重量部、好ましくは50〜400重量部、特に好ましくは60〜300重量部である。上記高級アルコールの使用割合が少な過ぎると、無機金属塩との反応において無機金属塩が残存する傾向がみられ、金属複合超微粒子を高収率にて製造することが困難となる傾向がみられる。なお、上記高級アルコールの使用割合が多すぎると、未反応アルコールの除去が困難となる傾向がみられる。
《反応溶媒》
本発明の反応においては、上述のように通常、過剰量の高級アルコールを用い、これを溶媒を兼ねて反応を進行させることが好ましいが、必要に応じて、不活性な溶媒の存在下で反応を行ってもよい。例えば、その際に用いる溶媒としては、反応条件に近い沸点を持ち、非極性の溶媒であればよく、例えば、1,3,5−トリメチルベンゼン(メシチレン)、1,2,4−トリメチルベンゼン(プソイドクメン)、イソプロピルベンゼン(クメン)、ジエチレングリコールジベンゾエート、ジプロピレングリコールジベンゾエート等があげられる。
《イオン液体》
そして、本発明の金属複合超微粒子の製造方法においては、上記無機金属塩および高級アルコールとともに、反応系内にイオン液体を共存させることを特徴とする。
上記イオン液体は、融点が150℃以下でカチオン部とアニオン部からなるイオン性物質であって、反応系におけるガス発生を抑制する効果を奏する。そして、本発明においては、反応材料を考慮して、金属を含有していないイオン液体を用いることが好ましい。
上記イオン液体のカチオン部としては、例えば、イミダゾリウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、ピペリジニウムカチオン、第四級アンモニウムカチオン、ピリジニウムカチオン、第四級ホスホニウムカチオン等があげられる。中でも特に、イミダゾリウムカチオンであることが低粘度液体になりやすく、かつ、低級アルコールへの溶解性が高く、反応終了後の除去も容易である点で好ましい。
上記イミダゾリウムカチオンとしては、通常、アルキルイミダゾリウムカチオン、特にジアルキルイミダゾリウムカチオン、トリアルキルイミダゾリウムカチオンが好ましく、具体例として、例えば、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムイオン、1,3−ジメチルイミダゾリウムイオン、1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムイオン、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムイオン、1−メチル−3−ペンチルイミダゾリウムイオン、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムイオン、1−ヘプチル−3−メチルイミダゾリウムイオン、1−メチル−3−オクチルイミダゾリウムイオン、1−デシル−3−メチルイミダゾリウムイオン、1−ドデシル−3−メチルイミダゾリウムイオン、1−エチル−3−プロピルイミダゾリウムイオン、1−ブチル−3−エチルイミダゾリウムイオン等のジアルキルイミダゾリウムイオン;3−エチル−1,2−ジメチル−イミダゾリウムイオン、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムイオン、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムイオン、1,2−ジメチル−3−ヘキシルイミダゾリウムイオン、1,2−ジメチル−3−オクチルイミダゾリウムイオン、1−エチル−3,4−ジメチルイミダゾリウムイオン、1−イソプロピル−2,3−ジメチルイミダゾリウムイオン等のトリアルキルイミダゾリウムイオン等をあげることができる。
上記ピロリジニウムカチオンとしては、例えば、N,N−ジメチルピロリジニウムイオン、N−エチル−N−メチルピロリジニウムイオン、N−メチル−N−プロピルピロリジニウムイオン、N−ブチル−N−メチルピロリジニウムイオン、N−メチル−N−ペンチルピロリジニウムイオン、N−ヘキシル−N−メチルピロリジニウムイオン、N−メチル−N−オクチルピロリジニウムイオン、N−デシル−N−メチルピロリジニウムイオン、N−ドデシル−N−メチルピロリジニウムイオン、N−(2−メトキシエチル)−N−メチルピロリジニウムイオン、N−(2−エトキシエチル)−N−メチルピロリジニウムイオン、N−(2−プロポキシエチル)−N−メチルピロリジニウムイオン、N−(2−イソプロポキシエチル)−N−メチルピロリジニウムイオン等をあげることができる。
上記ピペリジニウムカチオンとしては、例えば、N,N−ジメチルピペリジニウムイオン、N−エチル−N−メチルピペリジニウムイオン、N−メチル−N−プロピルピペリジニウムイオン、N−ブチル−N−メチルピペリジニウムイオン、N−メチル−N−ペンチルピペリジニウムイオン、N−ヘキシル−N−メチルピペリジニウムイオン、N−メチル−N−オクチルピペリジニウムイオン、N−デシル−N−メチルピペリジニウムイオン、N−ドデシル−N−メチルピペリジニウムイオン、N−(2−メトキシエチル)−N−メチルピペリジニウムイオン、N−(2−メトキシエチル)−N−エチルピペリジニウムイオン、N−(2−エトキシエチル)−N−メチルピペリジニウムイオン、N−メチル−N−(2−メトキシフェニル)ピペリジニウムイオン、N−メチル−N−(4−メトキシフェニル)ピペリジニウムイオン、N−エチル−N−(2−メトキシフェニル)ピペリジニウムイオン、N−エチル−N−(4−メトキシフェニル)ピペリジニウムイオン等をあげることができる。
上記第四級アンモニウムカチオンとしては、例えば、N,N,N,N−テトラメチルアンモニウムイオン、N,N,N−トリメチルエチルアンモニウムイオン、N,N,N−トリメチルプロピルアンモニウムイオン、N,N,N−トリメチルブチルアンモニウムイオン、N,N,N−トリメチルペンチルアンモニウムイオン、N,N,N−トリメチルヘキシルアンモニウムイオン、N,N,N−トリメチルヘプチルアンモニウムイオン、N,N,N−トリメチルオクチルアンモニウムイオン、N,N,N−トリメチルデシルアンモニウムイオン、N,N,N−トリメチルドデシルアンモニウムイオン、N−エチル−N,N−ジメチルプロピルアンモニウムイオン、N−エチル−N,N−ジメチルブチルアンモニウムイオン、N−エチル−N,N−ジメチルヘキシルアンモニウムイオン、2−メトキシ−N,N,N−トリメチルエチルアンモニウムイオン、2−エトキシ−N,N,N−トリメチルエチルアンモニウムイオン、2−プロポキシ−N,N,N−トリメチルエチルアンモニウムイオン、N−(2−メトキシエチル)−N,N−ジメチルプロピルアンモニウムイオン、N−(2−メトキシエチル)−N,N−ジメチルブチルアンモニウムイオン等をあげることができる。
上記第四級ホスホニウムカチオンとしては、例えば、テトラメチルホスホニウム、テトラエチルホスホニウム、テトラブチルホスホニウム等の炭素数1〜16のアルキル基により置換された第四級ホスホニウムカチオン等があげられる。
上記ピリジニウムカチオンとしては、例えば、N−メチルピリジニウム、N−エチルピリジニウム、N−ブチルピリジニウム、N−プロピルピリジニウム等の炭素数1〜16のアルキル基により置換されたピリジニウムカチオン等があげられる。
一方、上記イオン液体のアニオン部としては、通常、PO(OC253 -、Cl-、Br-、I-、BF4 -、BF325 -、PF6 -、NO3 -、CF3CO2 -、CF3SO3 -、(CF3SO22-、(FSO22-、(CF3SO23-、(C25SO22-、AlCl4 -、Al2Cl7 -等があげられる。
上記イオン液体は、単独でもしくは2種以上併せて用いられる。中でも、反応原料を考慮して金属を含まないイオン液体を用いることが好ましい。さらには、低粘度液体という観点から、具体的には、ジアルキルイミダゾリウムカチオン、特には炭素数1〜6のアルキル基で置換されたジアルキルイミダゾリウムカチオンを有するイオン液体、中でも1−エチル−3−メチルイミダゾリウム・ジエチルリン酸(EMI・DEP)が特に好ましく用いられる。
上記イオン液体の配合量は、無機金属塩100重量部に対して2.5〜100重量部であることが好ましく、より好ましくは5〜50重量部、特に好ましくは10〜30重量部である。すなわち、上記イオン液体の配合量が少な過ぎると、充分な発泡抑制効果が得られ難く、逆にイオン液体の配合量が多すぎても効果に変わりはなく経済的でない。
本発明では、上記イオン液体を共存させることにより、反応系内の発泡が抑制され、粒径分布の小さい金属複合超微粒子を生産性良く効率的に得ることができる。
《他の添加剤》
本発明の金属複合超微粒子の製造方法においては、上記無機金属塩および高級アルコール、また上記イオン液体以外に、通常市販されている抑泡剤等を本発明の効果を阻害しない範囲内で適宜に配合することができる。
《反応》
本発明では、上述の無機金属塩と高級アルコールとを加熱反応させるが、通常、固体状である高級アルコールを加熱溶融し、これに紛状の無機金属塩を供給して反応を開始することが好ましい。そして、この加熱反応の際に、上記イオン液体を配合して、上記無機金属塩および高級アルコールとともに共存させる。
本発明における反応については、通常40〜200℃で20〜300分間程度の反応条件にて反応を行ってもよく、また、2段階以上の多段階にて反応を行ってもよいが、特には2段階にて反応を行うことが好ましい。上記2段階の反応条件としては、まず、40〜70℃、特には50〜65℃で、20〜120分間、特には25〜90分間、殊には30〜60分間、加熱反応を行い、次いで、130〜200℃、特には140〜180℃、殊には150〜170℃で、20〜300分間、特には30〜240分間、殊には30〜180分間、加熱反応を行うことが好ましい。
本発明での反応は、通常、撹拌槽タイプの反応器を使用し、撹拌下実施され、上記反応器は加熱装置(加熱ジャケット等)、特に還流凝縮器を備えたものを用いることが好ましい。また、反応器の材質としては、ガラスライニングのものや樹脂ライニングのものが適宜用いられる。
本発明においては、上述のように、2段階にて反応を行うことが好ましく、その前段反応においては、高級アルコール中に無機金属塩が分散し、上記無機金属塩が微細化され、後段反応においては、微細化された無機金属塩の微粒子と高級アルコールとの反応が高活性で進行する。この反応過程で無機金属塩の色調は、前段反応の進行により変化(銀の場合、茶褐色に変化)し、また、後段反応の進行により変化(銀の場合、青紫色に変化)する。
本発明の反応では、反応の進行により水および炭酸等が副生するので、これら揮発物を後段反応においては留去しながら、反応を進行させることが好ましい。
なお、本発明の反応の停止は、反応混合物を通常、80℃以下、好ましくは60℃以下に冷却することにより行うことができる。
《洗浄》
上記の反応によって、金属を中心とし周囲に高級アルコール由来の有機残基により被覆された金属複合超微粒子を含む反応混合物が得られるが、これを低級アルコールで洗浄することが好ましい。この低級アルコールとしては、通常、炭素数1〜3の脂肪族アルコールであり、中でもエタノールが好適である。
洗浄方法としては、通常、デカンテーション等の懸濁洗浄法が一般的である。
例えば、反応混合物に低級アルコールを添加し、撹拌混合した後、静置し、その後沈降した金属複合超微粒子を分離するデカンテーション操作を繰り返すことにより実施される。この際の低級アルコールの反応混合物への添加は、混合物温度が50℃以下、好ましくは40℃以下となった以降であれば任意の時点で添加しても差し支えない。
洗浄温度は、通常、20〜40℃であり、低級アルコールの使用量は、通常、金属複合超微粒子に対して1〜50重量倍である。また、洗浄回数は、目的とする純度の金属複合超微粒子となるまで繰り返し行われるが、通常、2〜10回である。
上記洗浄により精製された高純度の金属複合超微粒子が回収されるが、本発明の反応において共存させたイオン液体も前記洗浄処理によって除去される。
また、金属複合超微粒子の固液分離法としては、通常、濾過、遠心分離等の公知の手法で行うことができる。
《乾燥》
洗浄後の金属複合超微粒子は、通常、乾燥処理を行う。乾燥温度は、通常、20〜80℃程度で行われる。また、乾燥後の固形物は、凝集している場合でも、摩砕等により容易に粉末状とすることができる。
《金属複合超微粒子》
得られた金属複合超微粒子は、上記無機金属塩が反応分解して生じた金属を中心とし、その周囲に上記高級アルコール由来の有機残基により被覆された構成からなる超微粒子(ナノ粒子)である。
本発明の製造方法により得られる金属複合超微粒子の平均粒子径は、通常、1〜100nm、好ましくは5〜50nm、特に好ましくは7〜30nmである。上記金属複合超微粒子の平均粒子径は、例えば、つぎのようにして測定される。すなわち、測定対象となる金属複合超微粒子の母集団から任意の測定試料を取り出し、市販の透過型電子顕微鏡(TEM)を用い、一定面積あたりの粒子の粒子径をスケールバーを参考にして測定することができる。
また、上記で得られる金属複合超微粒子は、例えば、熱重量分析(TG)測定および赤外吸収分析(IR)測定を行なうことにより同定することができる。
本発明で製造された金属複合超微粒子は、粒径分布が小さく、そのため、これを用いて焼成する場合の焼成温度が低く、しかも、均一で良好な金属面を得ることができる。特に、無機金属塩として、炭酸塩を用いた場合でも充分な発泡抑制が期待され、良好な反応を進行させることができる。
以下、実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕
加熱装置、還流凝縮器及び2段翼撹拌機を備えた1リットル反応器(ガラス製反応器)に、まず、60℃に加温し溶融したミリスチルアルコール(和光純薬工業社製)200gを供給し、つぎに、紛状炭酸銀(鶯色)(日進化学社製)100g、さらに、イオン液体である1−エチル−3−メチルイミダゾリウム・ジエチルリン酸(EMI・DEP)(日本合成化学工業社製)20gを添加した。
上記内容物を60℃で40分間、500rpmの撹拌下、反応を行い、次いで、内容物を加温し、30分かけて200℃に昇温し、同温度で30分間保持して反応を継続した。なお、上記反応の進行に伴い、反応後期は還流状態となった。
上記の前段反応において、混合物の色調は茶褐色に変化し、また、後段反応においては、青紫色に変化した。
上記反応では、発泡が生じず反応液面の上昇が見られなかった。
その後、内温を80℃以下に冷却し、これにエタノール50mlを徐々に添加し(撹拌条件:500rpm)、さらに、冷却を継続し、内温を40℃以下とし、3リットルビーカーに移液した。1リットル反応器もエタノールで洗浄し、その洗浄液も3リットルビーカーに加えた。
洗浄処理は、エタノール1リットルを上記ビーカーに加え、ガラス棒で撹拌した後、25℃下にて静置した。6時間程静置すると、反応混合物は、黄色透明な上澄み液と濃灰色の沈降部に分離した。つぎに、デカンテーションにて上澄み液を可能な限り排出した後、新たにエタノール1リットルをビーカーに加え、ガラス棒で良く撹拌した後、静置した。3時間程静置すると、ほぼ無色透明な上澄み液と、やや青みがかった濃灰色の沈降部に分離した。つぎに、デカンテーションにて上澄み液を可能な限り排出した。
次いで、上記上澄み液を取り除いた残分である濃灰色の沈降部分(固形分)を、新たなエタノールを用いて、準備した桐山ロートに移し、吸引濾過を行なった。なお、この桐山ロートによる吸引濾過により、充分に濾過が進むと、ロート上に残った固体(青色のケーキ)に亀裂が生じた。
上記亀裂が生じた固体(青色のケーキ)が収縮し、スパチラを用いて割れるようになるまで乾燥し(約24時間)、さらに、ガラス棒にて粉砕できる程度になるまで乾燥を行った(約48時間)後、得られたケーキを粉砕し、粉末状とした。
<同定>
上記乾燥し粉砕することにより得られた金属複合超微粒子粉末に関して、下記の装置を用いて熱重量分析(TG)測定および赤外吸収分析(IR)測定を行なった。これら測定の結果、得られた金属複合超微粒子は、上記炭酸銀が反応分解して生じた銀を中心とした周囲に上記ミリスチルアルコール由来の有機残基(主にC1429COO−とC1327COO−)により被覆された金属複合超微粒子であることが確認された。なお、未反応炭酸銀由来のピークは検出されなかった。さらに、得られた金属複合超微粒子の平均粒子径について、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて測定した結果、8〜15nmであり、粒径分布の小さい超微粒子が得られたことが確認された。
《熱重量分析(TG)測定》
測定機器:Perkin Elmer社製、「Thermal Analysis TG−7」
《赤外吸収分析(IR)測定》
測定機器:Nicolet社製、「Avatar360」
《平均粒子径の測定》
測定機器:日立製作所社製、「透過型電子顕微鏡 H−7100FA型」
〔実施例2〕
実施例1において、イオン液体の配合量を2.5gに変えた。それ以外は、実施例1と同様にして、サンプルである金属複合超微粒子粉末を製造した。得られたサンプルについて、実施例1と同様にして同定、平均粒子径を測定した。なお、上記製造時、実施例1と同様、炭酸銀とミリスチルアルコールの反応の際には、発泡が生じず反応液面の上昇が見られなかった。
同定の結果、得られた金属複合超微粒子は、上記炭酸銀が反応分解して生じた銀を中心とした周囲に上記ミリスチルアルコール由来の有機残基(主にC1429COO−とC1327COO−)により被覆された金属複合超微粒子であることが確認された。なお、未反応炭酸銀由来のピークは検出されなかった。さらに、得られた金属複合超微粒子の平均粒子径について、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて測定した結果、8〜15nmであり、粒径分布の小さい超微粒子が得られたことが確認された。
〔実施例3〕
実施例1において、イオン液体の配合量を100gに変えた。それ以外は、実施例1と同様にして、サンプルである金属複合超微粒子粉末を製造した。得られたサンプルについて、実施例1と同様にして同定、平均粒子径を測定した。なお、上記製造時、実施例1と同様、炭酸銀とミリスチルアルコールの反応の際には、発泡が生じず反応液面の上昇が見られなかった。
同定の結果、得られた金属複合超微粒子は、上記炭酸銀が反応分解して生じた銀を中心とした周囲に上記ミリスチルアルコール由来の有機残基(主にC1429COO−とC1327COO−)により被覆された金属複合超微粒子であることが確認された。なお、未反応炭酸銀由来のピークは検出されなかった。さらに、得られた金属複合超微粒子の平均粒子径について、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて測定した結果、8〜15nmであり、粒径分布の小さい超微粒子が得られたことが確認された。
〔比較例1〕
実施例1において、イオン液体を配合しなかった。それ以外は、実施例1と同様にして、金属複合超微粒子粉末の製造を試みたが、激しい発泡が起こり、内圧が上がったため、途中で反応を停止した。
〔比較例2〕
実施例1において、イオン液体を配合せず、その他の各配合成分の量を1/5の量比にて仕込み反応を行った以外が同様に行った。その結果、発泡が生じたものの、1リットル反応器内にてかろうじて反応を行うことができた。得られたサンプルについて、実施例1と同様にして同定、平均粒子径を測定した。
同定の結果、得られた金属複合超微粒子は、上記炭酸銀が反応分解して生じた銀を中心とし周囲に上記ミリスチルアルコール由来の有機残基(主にC1429COO−とC1327COO−)により被覆された金属複合超微粒子であることが確認された。さらに、得られた金属複合超微粒子の粒子径は、8〜15nmとなり、同等の粒径分布のものとなった。ただし、かかる反応においては、反応スケールが小さいため、生産性よく、効率的に金属複合超微粒子を製造することが困難であった。
本発明の製造方法は、無機金属塩と高級アルコールとの反応時に生じる発泡を抑制し、反応性を向上させることができるため、浴比を大きくすることができ、粒径分布の小さい、均一粒子を生産性よく高収率で効率的に製造することができる方法であり、これにより得られる金属複合超微粒子は、焼成する場合の焼成温度を低くすることができる。そして、例えば、半導体装置等の電子部品の微細配線等の形成材料や、半導体装置等の電子部品の電極間を電気的に接合する際に使用される導通材料等に有用である。

Claims (7)

  1. 無機金属塩と高級アルコールとを加熱して反応させることにより、金属複合超微粒子を製造する方法において、上記無機金属塩と高級アルコールとを反応させる際に、イオン液体を共存させることを特徴とする金属複合超微粒子の製造方法。
  2. イオン液体が、金属元素を含まないイオン液体であることを特徴とする請求項1記載の金属複合超微粒子の製造方法。
  3. イオン液体の配合量が、無機金属塩100重量部に対して2.5〜100重量部であることを特徴とする請求項1または2記載の金属複合超微粒子の製造方法。
  4. 無機金属塩が、金属炭酸塩であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の金属複合超微粒子の製造方法。
  5. 高級アルコールが、炭素数6〜22のアルコールであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の金属複合超微粒子の製造方法。
  6. 高級アルコールの使用割合が、無機金属塩100重量部に対して40〜500重量部であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の金属複合超微粒子の製造方法。
  7. 生成した金属複合超微粒子が、金属を中心とし周囲に高級アルコール由来の有機残基により被覆されたものであり、平均粒子径が1〜100nmであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の金属複合超微粒子の製造方法。
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