JP2013043959A - ポリ乳酸樹脂組成物、および成形体 - Google Patents

ポリ乳酸樹脂組成物、および成形体 Download PDF

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Abstract

【課題】ポリ乳酸の含有割合が高くても耐熱性および難燃性に優れ、機械的特性が維持されたポリ乳酸樹脂組成物を提供する。
【解決手段】本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、ポリ乳酸樹脂(A)100質量部に対して、ホスファゼン化合物(B)およびリン酸メラミン類(C)を合計で5〜25質量部含有し、かつホスファゼン化合物(B)とリン酸メラミン類(C)の含有比率が、質量比で、(ホスファゼン化合物)/(リン酸メラミン類)=90/10〜50/50であることを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、ポリ乳酸樹脂組成物、およびそれを成形してなる成形体に関する。
近年、環境保全の見地から生分解性ポリエステル樹脂が注目されている。生分解性ポリエステル樹脂の中でも、ポリ乳酸樹脂、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートなどは、大量生産可能なためコストが安く、有用性も高いものである。
なかでも、ポリ乳酸樹脂は既にトウモロコシやサツマイモ等の植物を原料として製造可能となっており、使用後に焼却されても、これらの植物の生育時に吸収した二酸化炭素を考慮すると、炭素の収支として中立であることから、特に、地球環境への負荷の低い樹脂とされている。
しかしながら、ポリ乳酸樹脂は、それ自体燃焼しやすく、さらに耐熱性に劣るという性質を有する。そのため、これを単体で電気製品等の筺体などの、難燃性や耐熱性が必要とされる用途に利用する場合には、安全上の問題があった。また、ポリ乳酸樹脂は、結晶化速度が遅いため、成形サイクルが長いという問題もあった。
すでに、特許文献1には、ポリ乳酸樹脂に有機充填剤および難燃剤を添加し、金型温度90℃で射出成形することにより、耐熱性に優れた成形体が得られることが記載されている。具体的には、UL94燃焼試験においてV−2からV−0の難燃性、および荷重たわみ温度(0.45MPa)が100℃前後であるという耐熱性を有する成形体が得られることが開示されている。この方法では、有機充填剤として古紙粉末を20%以上添加することで、耐熱性を向上させている。しかしながら、この特許文献1に開示された成形体においては、混錬や成形の際の溶融時の熱により変色することは免れず、色調の調整が難しいものである。さらに、この成形体においては、V−0という優れた難燃性を満たし、かつ、接炎後の残炎時間を短いものとすることについては考慮されていない。なお、電気製品等の筺体として利用する場合には、残炎時間が長いと、引火の恐れなどの安全上の問題がある。
特許文献2には、ポリ乳酸樹脂に対し、表面処理がほどこされた水酸化物を添加することで、難燃性、および耐熱性を有する成形体が得られることが開示されている。しかしながら、特許文献2に開示された成形体においては、多量の水酸化物を配合することが必要であるため、軽量性が求められる分野においては用途が限定されてしまう場合がある。また、この成形体において、得られる難燃性はV−2であり、さらに得られる耐熱性は50℃以上の荷重たわみ温度(1.8MPa)であるため、難燃性や耐熱性が必要とされる用途への使用に際してはまだ不十分なレベルである。
特許文献3には、ポリ乳酸樹脂に対し、ホウ酸塩を添加した樹脂組成物が開示されている。具体的には、ホウ酸ナトリウムを含浸させた繊維とポリ乳酸樹脂とを含有する樹脂組成物が開示されている。この樹脂組成物における難燃性レベルはV−1であり、また耐熱性レベルは、100℃以下の荷重たわみ温度であり、つまり、難燃性および耐熱性が不十分である。
特開2005−23260号公報 特開2005−139441号公報 特開2007−231034号公報
本発明は、前記の問題点を解決しようとするものであり、耐熱性および難燃性に優れ、機械的特性が維持されたポリ乳酸樹脂組成物を提供することを目的とする。
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ポリ乳酸樹脂、ファゼン化合物およびポリリン酸メラミン類が特定の割合で含有されたポリ乳酸樹脂組成物は、前記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち本発明の要旨は、下記の通りである。
(1)ポリ乳酸樹脂(A)100質量部に対して、ホスファゼン化合物(B)およびリン酸メラミン類(C)を合計で5〜25質量部含有し、かつホスファゼン化合物(B)とリン酸メラミン類(C)の含有比率が、質量比で、(ホスファゼン化合物)/(リン酸メラミン類)=90/10〜50/50であることを特徴とするポリ乳酸樹脂組成物。
(2)ホスファゼン化合物(B)が式(1)で表される環状ホスファゼン化合物、および/または式(2)で表される鎖状ホスファゼン化合物であることを特徴とする(1)のポリ乳酸樹脂組成物。
Figure 2013043959
Figure 2013043959
式中、X、X、X、Xは、水素、水酸基、アミノ基、アルコキシ基、フェニル基、アミノ基、アリル基のいずれかを表す。また、nは3〜10の整数を表す。
また、式中、Yは、−N=P(OC、または−N=P(O)OCを表し、Zは−P(OC、または、−P(O)(OCを表す。
(3)ポリ乳酸樹脂(A)中のD体含有量が1.0モル%以下であるか、または99.0モル%以上であることを特徴とする(1)または(2)のポリ乳酸樹脂組成物。
(4)ポリ乳酸樹脂(A)100質量部に対して、さらに、有機系結晶核剤(D)として有機アミド化合物、有機ヒドラジド化合物、カルボン酸エステル系化合物、有機スルホン酸塩および有機ホスホン酸塩のうち少なくとも1種を、合計で0.1〜5質量部含むことを特徴とする(1)〜(3)のいずれかのポリ乳酸樹脂組成物。
(5)(1)〜(4)のポリ乳酸樹脂組成物を成形してなる成形体。
本発明によれば、ホスファゼン化合物およびリン酸メラミン類が特定の割合で含有されているため、ポリ乳酸樹脂に難燃性と耐熱性を付与することができ、難燃性および耐熱性に優れ、機械的特性が維持されたポリ乳酸樹脂組成物を提供することができる。さらに、ポリ乳酸樹脂として、D体含有量が特定の範囲であるポリ乳酸樹脂を用いた場合には、結晶性に優れることにより、成形性が向上され、耐熱性にもより優れたポリ乳酸樹脂組成物とすることができる。また、有機系結晶核剤を用いることでも結晶性を向上させることができる。本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、電気製品の筐体などの難燃性や耐熱性が必要とされる用途に好適に用いることが可能であり、低環境負荷材料であるポリ乳酸樹脂の使用範囲を大きく広げることができ、産業上の利用価値はきわめて高い。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のポリ乳酸樹脂組成物(本明細書においては、単に「樹脂組成物」と称する場合がある)は、ポリ乳酸樹脂(A)100質量部に対し、ホスファゼン化合物(B)およびリン酸メラミン類(C)を合計で5〜25質量部含有し、かつホスファゼン化合物(B)とリン酸メラミン類(C)の含有比率が、質量比で、(ホスファゼン化合物)/(リン酸メラミン類)=90/10〜50/50である。
まず、ポリ乳酸樹脂(A)について説明する。
ポリ乳酸樹脂(A)とは、ポリ(L乳酸)、ポリ(D乳酸)、これらの混合物または共重合体のことをいう。
ポリ乳酸樹脂は脂肪族ポリエステルの中では耐熱性が高いものである。さらに耐熱性を向上させるために、ポリ乳酸樹脂(A)のD体含有量は、1.0モル%以下であるか、または99.0モル%以上であることが好ましい。中でも、D体含有量が0.1〜0.6モル%であるか、または99.4〜99.9モル%であることが好ましい。
ポリ乳酸樹脂(A)のD体含有量とは、ポリ乳酸樹脂(A)を構成する総乳酸単位のうち、D乳酸単位が占める割合(モル%)をいうものである。したがって、例えば、D体含有量が1.0モル%のポリ乳酸樹脂の場合、このポリ乳酸樹脂においては、D乳酸単位が占める割合が1.0モル%であり、L乳酸単位が占める割合が99.0モル%である。
本発明において、ポリ乳酸樹脂(A)のD体含有量は、以下の方法により算出されるものである。つまり、ポリ乳酸樹脂(A)を分解して得られるL乳酸とD乳酸を全てメチルエステル化し、L乳酸のメチルエステルとD乳酸のメチルエステルとをガスクロマトグラフィー分析機で分析する方法により算出される。
D体含有量が上記の範囲を満足するポリ乳酸樹脂(A)は、結晶性に優れることにより、結晶化速度も向上する。そのため、本発明の樹脂組成物を成形加工する際には、成形サイクルが短くなり成形性に優れるものとなる。そして、耐熱性に優れた成形体を得ることが可能となる。
さらに、D体含有量が上記の範囲を満足するポリ乳酸樹脂(A)を用いた場合は、ホスファゼン化合物(B)およびポリリン酸メラミン類(C)を特定の割合で含有させることによる、難燃性の向上効果が特に顕著に発現する。その理由は、D体含有量が上記の範囲を満足するポリ乳酸樹脂(A)は結晶性に優れるため、成形体を得る際に、ホスファゼン化合物(B)およびポリリン酸メラミン類(C)の働きが活性化され、難燃性を付与するという効果がより向上するためではないかと推測される。
ポリ乳酸樹脂(A)は公知の溶融重合法で、あるいは、さらに固相重合法を併用して製造される。また、上記のような特定のD体含有量を満足するポリ乳酸樹脂(A)としては、市販のものを用いてもよいし、乳酸の環状2量体であるラクチドのうち、D体含有量が十分に低いL−ラクチド、または、L体含有量が十分に低いD−ラクチドを原料に用い、公知の溶融重合法で、あるいは、さらに固相重合法を併用して製造したものを用いてもよい。
また、ポリ乳酸樹脂(A)の190℃、荷重21.2Nにおけるメルトフローレート(MFR)は、0.1〜50g/10分であることが好ましく、より好ましくは0.2〜20g/10分であり、最適には0.5〜10g/10分である。MFRが50g/10分を超えると、溶融粘度が低すぎて成形体としたときの機械的特性や耐熱性に劣る場合がある。また、MFRが0.1g/10分未満であると、成形加工時の負荷が高くなるため、操業性が低下する場合がある。なお、上記のMFRは、JIS K 7210(試験条件D)による値である。
ポリ乳酸樹脂(A)のMFRを上記範囲に制御する方法としては、MFRが大きすぎる場合には、少量の鎖延長剤、例えばジイソシアネート化合物、ビスオキサゾリン化合物、エポキシ化合物、酸無水物等を用いて樹脂の分子量を増大させる方法が挙げられる。逆に、MFRが小さすぎる場合は、より大きなMFRを有するポリエステル樹脂や低分子量化合物と混合する方法が挙げられる。
ポリ乳酸樹脂(A)には、主たる構成成分である乳酸成分以外のモノマーが共重合されていてもよい。共重合可能なモノマーとしては、例えば、酸成分として、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、メチルテレフタル酸、4,4´−ビフェニルジカルボン酸、2,2´−ビフェニルジカルボン酸、4,4´−ビフェニルエーテルジカルボン酸、4,4−ジフェニルメタンジカルボン酸、4,4´−ジフェニルスルフォンジカルボン酸、4,4´−ジフェニルイソプロピリデンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸;アジピン酸、セバシン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アゼライン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、アイコサン二酸、水添ダイマー酸などの飽和脂肪族ジカルボン酸;フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸、ダイマー酸等の不飽和脂肪族ジカルボン酸およびこれらの無水物;1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、2,5−ノルボルネンジカルボン酸、テトラヒドロフタル酸などの脂環式ジカルボン酸などが挙げられる。
共重合可能なモノマーとしては、例えば、ジオール成分として、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオールなどの脂肪族ジオール;1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール等の脂環式ジオール、ビスフェノールAやビスフェノールSなどのビスフェノール類またはそれらのエチレンオキサイド付加体;ハイドロキノン、レゾルシノールなどの芳香族ジオールなどが挙げられる。
さらには、共重合可能なモノマーとして、p−ヒドロキシ安息香酸、p−(2−ヒドロキシエトキシ)安息香酸、6−ヒドロキシカプロン酸、3−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ吉草酸などのヒドロキシカルボン酸;δ−バレロラクトン、γ−ブチロラクトン、ε−カプロラクトンなどのラクトン化合物などが挙げられる。
そして、本発明におけるポリ乳酸樹脂(A)は、アセトン処理が施されており、残存ラクチド量が700ppm以下であることが好ましい。ポリ乳酸樹脂(A)としてアセトン処理が施されており、残存ラクチド量が700ppm以下であるものを用いることにより、本発明の樹脂組成物はさらに結晶性能が向上し、耐熱性、成形性がより向上したものとなる。
アセトン処理とは、ポリ乳酸樹脂をアセトンで洗浄し、未反応ラクチドを抽出することである。アセトンでの洗浄方法としては、以下のような方法が好ましい。ポリ乳酸樹脂とアセトンとの質量比が、(ポリ乳酸):(アセトン)=1:1〜1:3となるように両者を混合し、この混合物に対して、攪拌翼などによって30分以上の攪拌を行う。なお、攪拌時の温度は、0℃〜60℃の範囲が好ましく、中でも10℃〜40℃、より好ましくは20℃〜30℃である。攪拌温度が60℃を超える場合、アセトンの沸点を超えているため、アセトンの揮発が大きくなる。攪拌温度が0℃未満の場合、アセトンの冷却を行わなければならないため、コスト的に不利となる。
攪拌翼の攪拌速度は、50〜1000rpmが好ましく、中でも100〜500rpmが好ましく、より好ましくは150〜300rpmである。1000rpmを超える場合、攪拌速度が速すぎ、樹脂同士が激しくぶつかることによってダストの発生が多くなる。10rpm未満の場合、アセトン中に抽出されるラクチド量が少なくなり、処理時間が長時間となる。
一般には、ポリ乳酸樹脂中の未反応ラクチドを抽出するためには、メタノール等の他の溶媒も使用できる。しかしながら、本発明においては、アセトンを溶媒として使用することにより、未反応ラクチドを抽出すると同時に、ポリ乳酸樹脂の結晶化速度を向上させることも可能となる。
アセトンは比較的安価な溶媒でありコスト的に有利であり、また、ラクチドだけでなく、ポリ乳酸樹脂中の低分子オリゴマーの抽出も可能である。また、処理後の残渣から乳酸が検出されず、抽出物が分解して乳酸になることがなく安定であるため、ラクチドの再利用などを考えた場合にはコスト的に有利となる。これらのことにより、上記したようなポリ乳酸樹脂の結晶化速度の向上効果が生じるものと推定される。
アセトンに代えて、メタノールなどの他の溶媒を用いた場合、残渣から乳酸が多く検出される。このため、樹脂中に乳酸が残存した場合などは、加工や保存中に分子量低下などの問題が生じることがあり、そして、このようなポリ乳酸樹脂では結晶化速度は向上していない。
また、ポリ乳酸樹脂中の未反応ラクチドを除去する方法として、一軸押出し機、二軸押出し機などでラクチド除去を行う方法も一般的である。しかしながら、これらの方法でラクチド除去を行った場合も低分子オリゴマーがポリ乳酸樹脂中に残存しており、得られるポリ乳酸樹脂は結晶化速度が向上したものとはならない。
本発明におけるポリ乳酸樹脂(A)は、上記のようなアセトン処理が施されることにより、樹脂中の残存ラクチド量が700ppm以下とされていることが好ましく、中でも500ppm以下であることがより好ましい。残存ラクチド量が700ppmを超える場合、結晶化速度の向上効果が小さくなる場合があり、また、溶融加工時に分子量低下や着色が生じることもある。
ポリ乳酸樹脂(A)の残存ラクチド量は、以下のようにして測定、算出される。まず、試料0.1gに、塩化メチレン9ml、内部標準液1ml(2,6−ジメチル−γ−ピロンの5000ppm溶液)を加え、ポリマーを溶解させる。ポリマー溶解液にシクロヘキサン40mlを添加し、ポリマーを析出させる。HPLC用ディスクフィルター(孔径0.45μm)で濾過後、Agilent Technologies社製7890A GCSystemでGC測定し、ラクチド含有量を算出する。
なお、ポリ乳酸樹脂(A)とホスファゼン化合物(B)およびリン酸メラミン類(C)を含有する樹脂組成物において、ポリ乳酸樹脂(A)の残存ラクチド量を測定する際にも上記と同様に測定、算出できる。このときは、樹脂組成物を試料として用いる。
そして、本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、ポリ乳酸樹脂(A)に、難燃剤であるホスファゼン化合物(B)およびポリリン酸メラミン類(C)が特定の比率を満足する量含有されていることにより、それぞれが発現する異なる難燃効果が生じ、特異的に優れた難燃性が付与され、かつ耐熱性も付与されるものである。
ポリ乳酸樹脂は、他の樹脂と比較すると、燃焼時にドリップしやすく、炭化層が形成されにくいという性質を有する。しかしながら、本発明においては、ポリ乳酸樹脂に対してホスファゼン化合物とリン酸メラミン類を併用することによって、ホスファゼン化合物とリン酸メラミン類をそれぞれ単独で樹脂組成物に含有させる場合よりも、少ない含有量で優れた難燃性を付与することができる。
このような効果が奏される明確なメカニズムは不明であるが、以下のような理由によるものであると推測される。つまり、一般的には炭化形成の促進剤として配合するホスファゼン化合物が、本発明の樹脂組成物には、燃焼時に発生する酸素ラジカル、または、水素ラジカルなどを捕捉することにより、気相での消火効果をもたらすからであると推測される。さらに、リン酸メラミン類は、燃焼時の際にメラミンに含まれる不活性ガスの窒素によって酸素濃度を希釈し、また、リン酸により炭化層を形成し、断熱効果や酸素遮断効果をもたらすからであると推測される。
なお、ホスファゼン化合物(B)およびリン酸メラミン類(C)をそれぞれ単独で用いた場合には、十分な難燃性を付与することができない。仮に、ホスファゼン化合物(B)およびリン酸メラミン類(C)をそれぞれ単独で用い、ポリ乳酸樹脂(A)に対するこれらの含有量を、本発明にて規定された含有量よりも増大させた場合は、難燃性はある程度向上するが、機械的特性や耐熱性に劣るものとなってしまう。
ホスファゼン化合物(B)およびリン酸メラミン類(C)の含有量は、ポリ乳酸樹脂(A)100質量部に対し、合計で5〜25質量部であることが必要であり、10〜20質量部であることがより好ましい。ホスファゼン化合物(B)およびリン酸メラミン類(C)の含有量が5質量部未満であると、難燃性や耐熱性を付与することができない。一方、25質量部を超えると、難燃性の効果が飽和してしまい、それ以上の効果は見いだせない。また、耐熱性や成形サイクルも低下してしまうという問題がある。
さらに、ホスファゼン化合物(B)およびリン酸メラミン類(C)の含有比率は、質量比で、[ホスファゼン化合物(B)]/[リン酸メラミン類(C)]=90/10〜50/50であることが必要であり、中でも85/15〜70/30であることが好ましい。ホスファゼン化合物(B)およびリン酸メラミン類(C)の含有比率を上記範囲内とした場合にのみ、難燃性に加えて耐熱性も付与することが可能となる。このメカニズムは明確ではないが、ホスファゼン化合物(B)とリン酸メラミン類(C)とを特定割合で配合すると、ポリ乳酸樹脂(A)の結晶化が促進され、さらには、ホスファゼン化合物(B)とリン酸メラミン類(C)が無機充填材としても良好に作用することにより、樹脂組成物の耐熱性が向上するもの推察される。
本発明においては、分子中にリン原子と窒素原子とを含有するホスファゼン化合物(B)を用いるものであるが、中でも難燃性の観点から、式(1)で表される鎖状ホスファゼン化合物、および/または式(2)で表される環状ホスファゼン化合物が好ましい。
Figure 2013043959
Figure 2013043959
なお、式中、X、X、X、Xは、水素、水酸基、アミノ基、アルコキシ基、フェニル基、アミノ基、アリル基のいずれかを表す。また、nは3〜10の整数を表す。また、式中Yは、−N=P(OC、または−N=P(O)OCを表し、Zは−P(OC、または、−P(O)(OCを表す。
ホスファゼン化合物(B)は、市販品を好適に使用することができ、具体的には、「SPR−100」、「SA−100」、「SPB−100」、「SPB−100L」(以上、大塚化学社製)、「FP−100」、「FP−110」(以上、伏見製薬所社製)が挙げられる。
ホスファゼン化合物(B)の含有割合は、ポリ乳酸樹脂100質量部に対し、2.5〜22.5質量部であることが好ましく、中でも5〜18質量部がより好ましい。含有割合が2.5質量部未満であると、難燃性を付与することが困難となる。一方、22.5質量部を超えると難燃性を付与することはできても、耐熱性、耐久性および成形性が低下する傾向がある。
また、リン酸メラミン類(C)としては、レーザー回折法による平均粒径が10μm以下のものを用いることが好ましい。平均粒径の測定には、レーザー回折式粒度分布測定装置(シンパテック社製)を用いることができる。この平均粒径が10μmを超えると、機械的強度や難燃性を発現させることが困難となる場合がある。
本発明に使用するリン酸メラミン類(C)は、メラミンの縮合物、またはメラミンとリン酸との反応生成物、またはメラミンの縮合物とリン酸との反応生成物、あるいは上記の物質の混合物であることが好ましい。メラミンの縮合物の例は、メレム、メラム、もしくはメロン、または縮合度がより大きいものであるこれらの化合物、並びにこれらの混合物などが挙げられる。
リン酸メラミン類(C)は市販品を好適に使用することができ、その具体例としては、「Melapur200/70」(ポリリン酸メラミン)(チバ・スペシャリティーケミカル社製、平均粒径8μm)、PHOSMEL−200(ポリリン酸メラミン・メラム・メレム)(日産化学工業社製、平均粒径7μm)、アピノンMPP−A(ポリリン酸メラミン)(三和ケミカル社製、平均粒径4μm)などが挙げられる。
リン酸メラミン類(C)の含有割合は、ポリ乳酸樹脂100質量部に対し、0.5〜12.5質量部であることが好ましく、中でも2〜8質量部がより好ましい。0.5質量部未満であると、難燃性を付与することが困難となる。一方、12.5質量部を超えると、難燃性を付与することはできても、機械的強度や耐熱性が低下する傾向がある。
本発明のポリ乳酸樹脂組成物においては、上記の各成分に加えて、ポリ乳酸の結晶化促進効果、成形サイクル向上の点から、さらに有機系結晶核剤(D)を含有することが好ましい。有機系結晶核剤以外の結晶核剤のみを用いた場合は、結晶化促進効果が不十分となり、成形サイクルが長くなってしまう場合がある。
有機系結晶核剤(D)は、成形性や耐熱性の観点から、有機アミド化合物、有機ヒドラジド化合物、カルボン酸エステル系化合物、有機スルホン酸塩、有機ホスホン酸塩である必要がある。
上記のような有機系結晶核剤(D)は市販を好適に使用することができる。具体的には、伊藤製油社製の「A-S-A T-530SF」、日産化学社製の「エコプロモートNP」、竹本油脂社製の「LAK-403」や「LAK-301」などが挙げられる。これらを単独で、あるいは、2種以上を併用して含有することができる。特に、結晶化促進効果の観点から、エコプロモートNPやLAK-403が好ましい。
有機系結晶核剤(D)の含有割合は、ポリ乳酸樹脂100質量部に対して、0.1〜5質量部が好ましく、0.5〜2質量部がより好ましい。含有割合が0.1質量部未満であると、結晶化促進効果に乏しくなる場合がある。一方、5質量部を超えると、結晶化促進効果が飽和し、経済的に不利であるだけでなく、生分解後の残渣分が増大する場合があるため、環境面でも好ましくない。
また、本発明の樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、ポリ乳酸樹脂(A)以外の他の樹脂成分を含有していてもよい。また、本発明の樹脂組成物を使用する際には、本発明の樹脂組成物と他の樹脂成分とを配合して使用することもできる。
このような他の樹脂成分としては、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂、ポリ(アクリル酸)、ポリ(アクリル酸エステル)、ポリ(メタクリル酸)、ポリ(メタクリル酸エステル)、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、およびそれらの共重合体等の非脂肪族ポリエステル樹脂が挙げられる。
さらに、本発明のポリ乳酸樹脂組成物には、その特性を損なわない限りにおいて、顔料、熱安定剤、酸化防止剤、無機充填材、植物繊維、強化繊維、耐候剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤、耐衝撃改良剤、可塑剤、反応性を有する化合物等の添加剤を添加することができる。
顔料としては、チタン、カーボンブラックなどを挙げることができる。
熱安定剤や酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール類、ヒンダードアミン、イオウ化合物、銅化合物、アルカリ金属のハロゲン化物などが例示される。
無機充填材としては、例えば、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、ワラストナイト、アルミナ、マグネシア、珪酸カルシウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カルシウム、アルミノ珪酸ナトリウム、珪酸マグネシウム、ガラスバルーン、カーボンブラック、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、ゼオライト、ハイドロタルサイト、金属繊維、金属ウィスカー、セラミックウィスカー、チタン酸カリウム、窒化ホウ素、グラファイト、炭素繊維、層状珪酸塩などが例示される。層状珪酸塩を配合することにより、樹脂組成物のガスバリア性を向上させることができる。
植物繊維としては、例えば、ケナフ繊維、竹繊維、ジュート繊維、その他のセルロース系繊維などが例示される。
強化繊維としては、例えば、アラミド繊維、ポリアリレート繊維、液晶ポリマー繊維などの有機強化繊維などが挙げられる。
耐候剤としては、ベンゾトリアゾール、ベンズオキサジノンなどが挙げられる。
滑剤としては、各種カルボン酸系化合物を用いることができ、なかでも、各種脂肪酸金属塩、特に、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムなどが好ましい。
離型剤としては、各種カルボン酸系化合物、中でも、各種脂肪酸エステル、各種脂肪酸アミドなどが好適に用いられる。
耐衝撃改良剤としては、特に限定されず、コアシェル型構造を有する(メタ)アクリル酸エステル系耐衝撃剤など、種々のものを用いることができる。
耐衝撃改良剤の含有割合は、耐衝撃性、成形性および耐熱性の観点から、ポリ乳酸樹脂100質量部に対して、1〜30質量部であることが好ましい。
上記の添加剤のうち、可塑剤は、ポリ乳酸樹脂に対して柔軟性を付与させる目的で含有されるものである。可塑剤の具体例としては、グリセリンジアセトモノラウレート、グリセリンジアセトモノカプレート、ポリグリセリン酢酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、中鎖脂肪酸トリセライド、ジメチルアジペート、ジブチルアジペート、トリエチレングリコールジアセテート、アセチルリシノール酸メチル、アセチルトリブチルクエン酸、ポリエチレングリコール、ジブチルジグリコールサクシネート、ビス(ブチルジグリコール)アジペート、ビス(メチルジグリコール)アジペート、アジピン酸エステルなどが挙げられる。
可塑剤の含有割合は、耐熱性、難燃性および柔軟性の観点から、ポリ乳酸樹脂100質量部に対して、0.05〜20質量部であることが好ましい。
反応性を有する化合物としては、例えば、カルボジイミド化合物であることが好ましい。カルボジイミド化合物を含有することによって耐湿熱性が向上し、溶融混練による相溶性もより良好になり、機械物性も向上する。
カルボジイミド化合物としては、種々のものを用いることができ、分子中に1個以上のカルボジイミド基を有するものであれば特に限定されない。カルボジイミド化合物としては、例えば、脂肪族モノカルボジイミド、脂肪族ポリカルボジイミド、脂環族モノカルボジイミド、脂環族ポリカルボジイミド、芳香族モノカルボジイミド、芳香族ポリカルボジイミドなどが挙げられる。さらに、分子内に各種複素環、あるいは、各種官能基を持つものであっても構わない。
カルボジイミド化合物の含有割合は、耐湿熱性、耐熱性およびコストの観点から、ポリ乳酸樹脂100質量部に対して、0.1〜5質量部であることが好ましい。
本発明のポリ乳酸樹脂組成物を製造する方法は、特に制限されず、各成分が均一に分散されている状態になればよい。例えば、タンブラーやヘンシェルミキサーを用いて、均一にドライブレンドした後、溶融混練押出して、冷却・カッティング・乾燥工程に付してペレット化すればよい。溶融混練に際しては、単軸押出機、二軸押出機、ロール混練機、ブラベンダー等の一般的な混練機を使用することができる。
ポリ乳酸樹脂(A)、ホスファゼン化合物(B)、リン酸メラミン類(C)および必要に応じてその他の添加剤を混合する手段は、特に限定されないが、例えば、一軸あるいは二軸の押出機を用いて溶融混練する方法を挙げることができる。混練状態を良くする意味で、二軸の押出機を用いることが好ましい。混練温度は{[ポリ乳酸樹脂(A)の融点]+5}℃〜{[ポリ乳酸樹脂(A)の融点]+100}℃であることが好ましい。この範囲より低温であると混練や反応が不十分となり、一方、この範囲より高温であると樹脂の分解や着色が起きる場合がある。また、混練時間は、20秒〜30分が好ましい。この時間より短いと混練や反応が不十分となり、一方、この時間より長いと樹脂の分解や着色が起きる場合がある。
本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、射出成形、ブロー成形、押出成形、インフレーション成形、インジェクションブロー成形、発泡シート成形、および、シート加工後の真空成形、圧空成形、真空圧空成形等の成形方法により、各種成形体とすることができる。すなわち、射出成形してなる成形体、あるいは、押出成形してなるフィルム、シート、およびこれらのフィルムやシートを加工してなる成形体、あるいはブロー成形してなる中空体、および、この中空体から加工してなる成形体などとすることができる。上記のなかでも、とりわけ、射出成形法を採用することが好ましく、一般的な射出成形法のほか、ガス射出成形、射出プレス成形等も採用できる。
本発明のポリ乳酸樹脂組成物に適した射出成形条件の一例を挙げれば、シリンダ温度を樹脂組成物の融点または流動開始温度以上、例えば、170〜250℃とすることが好ましく、170〜230℃とすることがより好ましい。また、金型温度は(樹脂組成物の融点−40)℃以下とすることが適当である。成形温度が上記のシリンダ温度や金型温度の範囲より低すぎると、成形品にショートが発生するなどして操業性が不安定になったり、過負荷に陥りやすくなったりする場合がある。逆に、成形温度が上記のシリンダ温度や金型温度の範囲を超えて高すぎると、樹脂組成物が分解し、得られる成形体の強度が低下したり、着色したりする等の問題が発生しやすく、ともに好ましくない場合がある。
本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、成形の際に結晶化を促進させることにより、耐熱性をさらに高めることができる。結晶化を促進させる方法としては、例えば、射出成形時に金型内で結晶化を促進させる方法があり、その場合には、樹脂組成物のガラス転移温度以上、(樹脂組成物の融点−40)℃以下に保たれた金型内で、一定時間成形体を保持した後、金型より取り出す方法が好適である。また、このような方法をとらずに金型から取り出された成形体であっても、該成形体を、樹脂組成物のガラス転移温度以上、(樹脂組成物の融点−40)℃以下で熱処理することにより、結晶化を促進することができる。
本発明のポリ乳酸樹脂組成物を用いた成形体の具体例としては、パソコン筐体部品および筐体、携帯電話筐体部品および筐体、その他OA機器筐体部品、コネクター類等の電化製品用樹脂部品;バンパー、インストルメントパネル、コンソールボックス、ガーニッシュ、ドアトリム、天井、フロア、エンジン周りのパネル等の自動車用樹脂部品をはじめ、コンテナーや栽培容器等の農業資材や農業機械用樹脂部品;浮きや水産加工品容器等の水産業務用樹脂部品;皿、コップ、スプーン等の食器や食品容器;注射器や点滴容器等の医療用樹脂部品;ドレーン材、フェンス、収納箱、工事用配電盤等の住宅・土木・建築材用樹脂部品;花壇用レンガ、植木鉢等の緑化材用樹脂部品;クーラーボックス、団扇、玩具等のレジャー・雑貨用樹脂部品;ボールペン、定規、クリップ等の文具用樹脂部品等が挙げられる。
本発明の成形体は、耐熱性および難燃性が必要とされる部品等において、特に好適に使用できる。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。
実施例および比較例で得られた樹脂組成物の評価に用いた測定法は次の通りである。
(1)ポリ乳酸樹脂(A)のD体含有量
得られた樹脂組成物より取り出したポリ乳酸樹脂を0.3g秤量し、1N−水酸化カリウム/メタノール溶液6mLに加え、65℃にて充分撹拌した。次いで、硫酸450μLを加えて、65℃にて撹拌し、ポリ乳酸を分解させ、サンプルとして5mLを計り取った。このサンプルに純水3mL、および、塩化メチレン13mLを混合して振り混ぜた。静置分離後、下部の有機層を約1.5mL採取し、孔径0.45μmのHPLC用ディスクフィルターでろ過後、HP−6890SeriesGCsystem(HewletPackard社製)を用いてガスクロマトグラフィー測定した。乳酸メチルエステルの全ピーク面積に占めるD乳酸メチルエステルのピーク面積の割合(%)を算出し、これをポリ乳酸樹脂のD体含有量(モル%)とした。
(2)ポリ乳酸樹脂(A)のMFR
JIS K 7210(試験条件D)に従い、190℃、荷重21.1Nで測定した。
(3)曲げ強度
得られた樹脂組成物のペレットを70℃で24時間真空乾燥したのち、射出成形機(東芝機械社製、「IS−80G型」)を用いて、金型表面温度を105℃に調整しながら、ISO準拠の試験片を作製した。
得られた試験片を用い、ISO178に従って測定した。曲げ強度は65MPa以上であることが好ましい。
(4)曲げ弾性率
(3)と同様にして得られた試験片を用い、ISO178に従って測定した。曲げ弾性率は3.0GPa以上であることが好ましい。
(5)耐熱性
(3)と同様にして得られた試験片を用い、ISO75−1に従って、荷重0.45MPaで荷重たわみ温度(DTUL)を測定した。荷重たわみ温度は80℃以上であることが好ましい。
(6)難燃性
(3)に記載した試験片の作製方法と同様の条件で、厚み1/16インチ(約1.6mm)の試験片を作製した。この試験片を用い、UL94(米国におけるUnder Writers Laboratories Inc.で定められた規格)の方法に従って測定した。難燃性はV−1あるいはV−0であることが好ましく、このため、V−1あるいはV−0とならなかったものは難燃性に劣るものと判断し、「×」とした。
(7)成形性(成形サイクル)
得られた樹脂組成物のペレットを用い、射出成形機(東芝機械社製、「IS−80G」)でISOダンベル型試験片を作製した。具体的には、成形温度190℃で溶融し、金型温度95℃の金型に溶融樹脂を充填した。成形サイクルは、樹脂組成物が金型内に射出(充填、保圧)、冷却された後、成形体が金型に固着、または、抵抗なく取り出すことができ、突き出しピンによる変形がなく、良好に離型できるまでの所要時間(秒)とした。成形サイクルは60秒以下であることが好ましい。
(8)耐久性(曲げ強度保持率)
(3)で得られた試験片を2本用意し、1本は上記(3)と同様の方法で曲げ強度を測定した(未処理の曲げ強度とする)。もう1本を60℃、95%RHの恒温恒湿条件にて300時間保存処理を行った後、上記(3)と同様の方法で曲げ強度を測定した(処理後の曲げ強度とする)。そして、以下の式により、曲げ強度保持率を算出した。
曲げ強度保持率(%)=〔(処理後の曲げ強度)/(未処理の曲げ強度)〕×100
曲げ強度保持率に基づき、以下の基準で評価した。
◎:曲げ強度保持率が90%以上である。
○:曲げ強度保持率が80%以上90%未満である。
△:曲げ強度保持率が80%未満である。
また、実施例および比較例に用いた各種原料は次の通りである。
(1)ポリ乳酸樹脂(A)
・PLA−1
Nature Works社製、商品名「Nature Works 3001D」(MFR:10g/10分、融点:168℃、D体含有率1.4モル%)
・PLA−2
トヨタ自動車社製 S−12 (MFR=8g/10分、融点:178℃、D体含有量=0.1モル% 残存ラクチド量=1100ppm。)
・PLA−3
PLA−2に以下のようにアセトン処理を施し、PLA−3を得た。
PLA−2とアセトンの質量比が1:2になるよう計測し、PLA−2にアセトンを加え、室温条件下で1時間、150rpmで攪拌した。その後、ろ過して70℃×24時間真空乾燥(Yamato Vacuum dry DP61を使用)することでアセトンの除去を行い、ポリ乳酸(PLA−3)を得た。得られたPLA−3の残存ラクチド量は400ppmであった。
(2)ホスファゼン化合物(B)
・伏見製薬社製、商品名「ラビトルFP−110」(融点110℃)(以下、「FP−110」と称する)
なお、FP−110は、式(1)で表される環状ホスファゼン化合物である。そして、式(1)中、XおよびXがフェニル基を示し、n=3であるものを主成分とするものである。
(3)リン酸メラミン類(C)
・チバ・スペシャリティーケミカル社製、商品名「Melapur200/70」(平均粒径:8μm)(以下、「Melapur」と称する)
・日産化学社製品、商品名「Phosmel−200」(平均粒径7μm)(以下、「Phosmel」と称する)
・三和ケミカル社製、商品名「アピノンMPP−B」(平均粒径:12μm)(以下、「MPP」と称する)
(4)ホスファゼン化合物(B)およびリン酸メラミン類(C)以外の難燃剤
・水酸化アルミニウム
日本軽金属社製、商品名「B1403T」
(5)その他の添加剤
(有機系結晶核剤)
・日産化学社製、商品名「エコプロモート−NP」(フェニルホスホン酸亜鉛)(以下、「NP」と称する)
・竹本油脂社製 商品名「LAK−403」(スルホン酸バリウム塩)(以下、「LAK」と称する)
(無機系結晶核剤)
・日本タルク社製、商品名「MICRO ACE K−1」(平均粒子系7.4μm)(以下、「K−1」と称する)
(カルボジイミド化合物)
・松本油脂社製、商品名「EN−160」
(実施例1)
二軸押出機(東芝機械社製 「TEM37BS型」)を用い、ポリ乳酸樹脂(A)、ホスファゼン化合物(B)、リン酸メラミン類(C)およびその他の添加剤として、表1に示す種類のものを用い、表1に示す含有量となるようにドライブレンドして押出機に根元供給口から供給した。バレル温度190℃、スクリュー回転数200rpm、吐出量15kg/hの条件で、ベントを効かせながら溶融押出を実施した。押出機先端から吐出された溶融樹脂をストランド状に引き取り、冷却水を満たしたバットを通過させて冷却した後、ペレット状にカッティングして、樹脂組成物のペレットを得た。
(実施例2〜28、比較例1〜11)
ポリ乳酸樹脂(A)、ホスファゼン化合物(B)、リン酸メラミン類(C)、その他の添加剤、およびそれらの含有量を表1〜4に示したように変更し、実施例1と同様にして樹脂組成物のペレットを得た。実施例の評価結果を表1、表2および表3に、比較例の評価結果を表4に示す。
実施例1〜28、比較例1〜11で得られた樹脂組成物の組成、評価結果を表1〜表4に示す。
Figure 2013043959
Figure 2013043959
Figure 2013043959
Figure 2013043959
なお、表1〜表4において樹脂組成物の組成に関する数値の単位は質量部である。
表1、表2および表3から明らかなように、実施例1〜28で得られたポリ乳酸樹脂組成物は、ホスファゼン化合物(B)およびリン酸メラミン類(C)が特定の割合で含有されているため、耐熱性および難燃性に優れるものであった。
実施例9〜13で得られたポリ乳酸樹脂組成物は、D体含有量が少ないポリ乳酸樹脂(A)が用いられていたため、耐熱性および成形サイクルに優れたものとなった。
実施例14〜15で得られたポリ乳酸樹脂組成物は、アセトン処理によりラクチド残存量が低減されたポリ乳酸樹脂(A)が用いられていたため、耐熱性および成形性に特に優れる結果となった。
実施例23で得られたポリ乳酸樹脂組成物は、カルボジイミド化合物が用いられていなかったため、耐久性に劣るものであったが、その他の特性には優れており、十分に実用に耐えうるものであった。
実施例26で得られたポリ乳酸樹脂組成物は、有機系結晶核剤(D)の代わりに、無機系結晶核剤が用いられていたため、成形サイクル、難燃性に改善の余地を残すものであった。
実施例27で得られたポリ乳酸樹脂組成物は、有機系結晶核剤(D)の含有量が本発明の好ましい範囲より過少であったが、D体含有量が少ないポリ乳酸樹脂(A)が用いられていたため、成形サイクルの低下が抑制でき、十分に実用に耐えうるものであった。
実施例28で得られたポリ乳酸樹脂組成物は、有機系結晶核剤(D)の代わりに、無機系結晶核剤が用いられていたため、難燃性に改善の余地を残すものであった。ただし、D体含有量が少ないポリ乳酸樹脂(A)が用いられていたため、成形サイクルの低下は抑制できた。
一方、比較例1で得られたポリ乳酸樹脂組成物は、ホスファゼン化合物(B)の含有量が多かったため、ある程度の難燃性は付与されていたが、リン酸メラミン類(C)を使用しなかったため、耐熱性に劣る結果となった。
比較例2で得られたポリ乳酸樹脂組成物は、リン酸メラミン類(C)の含有量が多かったため、ある程度の難燃性は付与されていたが、ホスファゼン化合物(B)を使用しなかったため、耐熱性に劣る結果となった。
比較例3で得られたポリ乳酸樹脂組成物は、リン酸メラミン類(C)が用いられていなかったため、耐熱性と難燃性に劣る結果となった。
比較例4で得られたポリ乳酸樹脂組成物は、ホスファゼン化合物(B)を使用しなかったため、耐熱性と難燃性に劣る結果となった。
比較例5で得られたポリ乳酸樹脂組成物は、ホスファゼン化合物(B)とリン酸メラミン類(C)との含有量の合計が過少であったため、耐熱性と難燃性に劣る結果となった。
比較例6で得られたポリ乳酸樹脂組成物は、ホスファゼン化合物(B)とリン酸メラミン類(C)との含有量の合計が過多であったため、耐熱性および成形サイクルに劣る結果となった。
比較例7、8で得られたポリ乳酸樹脂組成物は、リン酸メラミン類(C)に対するホスファゼン化合物(B)の含有量が過少であったため、耐熱性と難燃性に劣る結果となった。
比較例9で得られたポリ乳酸樹脂組成物は、リン酸メラミン類(C)に対するホスファゼン化合物(B)の含有量が過多であったため、耐熱性と難燃性に劣る結果となった。
比較例10で得られたポリ乳酸樹脂組成物は、リン酸メラミン類(C)に代えて、難燃剤として水酸化アルミニウムが用いられたため、耐熱性と難燃性に劣るものとなった。
比較例11で得られたポリ乳酸樹脂組成物は、ホスファゼン化合物(B)に代えて、難燃剤として水酸化アルミニウムが用いられたため、耐熱性と難燃性に劣るものとなった。

Claims (5)

  1. ポリ乳酸樹脂(A)100質量部に対して、ホスファゼン化合物(B)およびリン酸メラミン類(C)を合計で5〜25質量部含有し、かつホスファゼン化合物(B)とリン酸メラミン類(C)の含有比率が、質量比で、(ホスファゼン化合物)/(リン酸メラミン類)=90/10〜50/50であることを特徴とするポリ乳酸樹脂組成物。
  2. ホスファゼン化合物(B)が式(1)で表される環状ホスファゼン化合物、および/または式(2)で表される鎖状ホスファゼン化合物であることを特徴とする請求項1に記載のポリ乳酸樹脂組成物。
    Figure 2013043959
    Figure 2013043959
    式中、X、X、X、Xは、水素、水酸基、アミノ基、アルコキシ基、フェニル基、アミノ基、アリル基のいずれかを表す。また、nは3〜10の整数を表す。
    また、式中、Yは、−N=P(OC、または−N=P(O)OCを表し、Zは−P(OC、または、−P(O)(OCを表す。
  3. ポリ乳酸樹脂(A)中のD体含有量が1.0モル%以下であるか、または99.0モル%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリ乳酸樹脂組成物。
  4. ポリ乳酸樹脂(A)100質量部に対して、さらに、有機系結晶核剤(D)として有機アミド化合物、有機ヒドラジド化合物、カルボン酸エステル系化合物、有機スルホン酸塩および有機ホスホン酸塩のうち少なくとも1種を、合計で0.1〜5質量部含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリ乳酸樹脂組成物。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載のポリ乳酸樹脂組成物を成形してなる成形体。
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