本発明においては、キノロン系化合物として、次の式(1)で示されるキノロン系化合物が用いられる。
[式中、A1環は置換されていてもよく、1個または2個の炭素原子が窒素原子に置換された複素環であってもよい6員の芳香族環を示し、R1およびR2は同一または異なって、水素原子または置換されていてもよい炭化水素基を示す。また、R1はA1環の置換基とともに環を形成していてもよい。]
上記式(1)中、A1環で示される「置換されていてもよく、1個または2個の炭素原子が窒素原子に置換された複素環であってもよい6員の芳香族環」のうち、前記複素環である6員の芳香族環としては、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン等が挙げられ、前記複素環ではない6員の芳香族環としては、ベンゼンが挙げられる。これらの中でも、ベンゼン、ピリジン、ピリミジンが好ましく、ベンゼンまたはピリジンが特に好ましい。
A1環で示される「置換されていてもよく、1個または2個の炭素原子が窒素原子に置換された複素環であってもよい6員の芳香族環」の置換基としては、水酸基、ハロゲン原子、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよい炭化水素基、置換されていてもよいアミノ基、アルキレンジオキシ基等が挙げられる。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられるが、フッ素原子または塩素原子が好ましい。
「置換されていてもよいアルコキシ基」のアルコキシ基としては、炭素数1〜6のアルコキシ基が挙げられ、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、イソブトキシ、tert−ブトキシ等の炭素数1〜4のアルコキシ基が好ましい。「置換されていてもよいアルコキシ基」の置換基としては、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子;炭素数1〜4のアルコキシ基;フェニル、ナフチル等、炭素数1〜14のアリール基などが挙げられる。
「置換されていてもよい炭化水素基」の炭化水素基としては、炭素数1〜20の炭化水素基が好ましく、炭素数1〜14の炭化水素基がより好ましく、たとえば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基およびアラルキル基等が挙げられる。
アルキル基としては、たとえば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、1−メチルブチル、1−エチルプロピル、1,1−ジメチルプロピル、n−ヘキシル、イソヘキシル、1−エチル−1−メチルプロピル、2−エチルブチル、n−ヘプチル、イソヘプチル、2,2−ジメチルペンチル、n−オクチル、イソオクチル、1−メチルヘプチル、1−エチルヘキシル、1−プロピルペンチル、1,1−ジメチルヘキシル、1−エチル−1−メチルペンチル、1,1−ジエチルブチル、2−エチルヘキシル、ノニル、デシル等の炭素数1〜10のアルキル基、好ましくは炭素数1〜8のアルキル基が挙げられる。
アルケニル基としては、たとえば、エテニル(ビニル)、1−プロペニル、2−プロペニル(アリル)、イソプロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、2−メチル−1−プロペニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−ペンテニル、4−ペンテニル、1−へキセニル、2−へキセニル、3−へキセニル、4−へキセニル、5−へキセニル等の炭素数2〜6のアルケニル基が挙げられる。
アルキニル基としては、たとえば、エチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル、3−ブチニル、1−ペンチニル、2−ペンチニル、3−ペンチニル、4−ペンチニル、1−へキシニル、2−へキシニル、3−へキシニル、4−へキシニル、5−へキシニル等の炭素数2〜6のアルキニル基が挙げられる。
シクロアルキル基としては、たとえば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル等の炭素数3〜8のシクロアルキル基が挙げられる。
アリール基としては、たとえば、フェニル、ナフチル、アントラセニル、フェナントレニル等の炭素数6〜14のアリール基が挙げられる。
アラルキル基としては、たとえば、ベンジル、フェニルエチル、ナフチルメチル等の炭素数7〜14のアラルキル基が挙げられる。
上記の「置換されていてもよい炭化水素基」の置換基としては、水酸基;塩素、フッ素、臭素およびヨウ素のハロゲン原子;シアノ基;アミノ基;カルボキシル基;アセチル、プロパノイル、ブタノイル、ヘキサノイル等の炭素数1〜6のアシル基;メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ等の炭素数1〜4のアルコキシ基;フェノキシ、ナフチルオキシ等の炭素数6〜20、好ましくは炭素数6〜10のアリールオキシ基;ベンジルオキシ、フェニルエチルオキシ等の炭素数7〜14のアラルキルオキシ基;メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、ブチルチオ等の炭素数1〜4のアルキルチオ基;フェニルチオ等の炭素数6〜20のアリールチオ基等が挙げられる。上記炭化水素基は前記置換基を2個以上有していてもよく、当該置換基は同一または異なっていてもよい。
「置換されていてもよいアミノ基」のアミノ基には、ピロリジニル、ピペリジル、ピペラジニル、アザビシクロ[2.2.1]ヘプタニル、アザビシクロ[2.2.2]オクタニル、ジアザビシクロ[2.2.1]ヘプタニル、ジアザビシクロ[2.2.2]オクタニル、オクタヒドロピロロピリジニル、イソインドリニル、アザスピロ[2.4]ヘプタニル等の環状アミノ基も含まれる。「置換されていてもよいアミノ基」の置換基としては、水酸基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、アミノ基等が挙げられる。
「アルキレンジオキシ基」としては、炭素数1〜4程度のアルキレンを有するものが好ましく、メチレンジオキシ基またはエチレンジオキシ基がより好ましく、メチレンジオキシ基が特に好ましい。
A1環は、2〜4個の置換基により置換されていることが好ましい。また、前記置換基としては、ハロゲン原子;アミノ基により置換された炭素数3〜6のシクロアルキル基;ピロリジニル、ピペリジル、ピペラジニル、ジアザビシクロ[2.2.1]ヘプタニル、オクタヒドロピロロピリジニル、イソインドリニル、アザスピロ[2.4]ヘプタニル等の環状アミノ基;水酸基、アミノ基または炭素数1〜6のアルキル基により置換された前記環状アミノ基;炭素数1〜4のアルコキシ基;ハロゲン原子により置換された前記アルコキシ基などが好ましい。
また、A1環の置換基としては、炭素数1〜4のアルキレンジオキシ基も好ましいものとして挙げられる。かかるアルキレンジオキシ基としては、メチレンジオキシ基またはエチレンジオキシ基がより好ましく、メチレンジオキシ基が特に好ましい。
上記式(1)中、R1またはR2で示される「置換されていてもよい炭化水素基」としては、上記したA1環の「置換されていてもよい炭化水素基」と同様の基が挙げられる。また、R1で示される基は、A1環の8位の置換基とともに、環を形成するものであってもよい。かかる環としては、ヒドロピリジン環、ヒドロオキサジン環、ヒドロオキサジアジン環等が例示される。
本発明において、キノロン系化合物としては、式(2)で示される化合物および式(3)で示される化合物が好ましく用いられる。
[式中、R1およびR2は同一または異なって、水素原子または置換されていてもよい炭化水素基を示し、R3は水素原子、ハロゲン原子またはアミノ基、R4は水素原子またはハロゲン原子、R5は置換されていてもよい炭化水素基または置換されていてもよい環状アミノ基を示す。]
[式中、R1およびR2は同一または異なって、水素原子または置換されていてもよい炭化水素基を示し、R3は水素原子、ハロゲン原子またはアミノ基、R4は水素原子またはハロゲン原子、R5は置換されていてもよい炭化水素基または置換されていてもよい環状アミノ基、R6は水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよいアルコキシ基または置換されていてもよい炭化水素基を示す。また、R4はR5とともにアルキレンジオキシ基を形成していてもよく、R1はR6とともに環を形成していてもよい。]
上記式(2)で示される化合物は、ナフチリジン骨格を有する化合物である。また、上記式(3)で示される化合物には、キノリン骨格を有する化合物が含まれる。
上記式(2)および式(3)中、R1またはR2で示される基については、上記と同義である。R3またはR4で示されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。また、R5で示される「置換されていてもよい炭化水素基」および「置換されていてもよい環状アミノ基」についても、上記と同様である。なお、上記式(2)および式(3)中、R1で示される基としては、エチル等の炭素数1〜4のアルキル基;2−フルオロエチル等のハロゲン化された炭素数1〜4のアルキル基;シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル等の炭素数3〜6のシクロアルキル基;フルオロシクロプロピル等のハロゲン化された炭素数3〜6のシクロアルキル基;フルオロフェニル、ジフルオロフェニル等のハロゲン化されたアリール基が好ましい。R2で示される基としては水素原子が好ましく、R3で示される基としては、水素原子、フッ素原子、アミノ基が好ましく、R4で示される基としては、水素原子またはフッ素原子が好ましい。R5で示される基としては、アミノシクロプロピル基;水酸基、アミノ基またはメチル、エチル等の炭素数1〜4のアルキル基により置換されたピロジニル、ピペリジル、ピペラジニル、ジアザビシクロ[2.2.1]ヘプチル、オクタヒドロピロロピリジニル、イソインドリニル、アザスピロ[2.4]ヘプタニルが好ましい。
さらに、上記式(3)中、R6で示される「置換されていてもよいアルコキシ基」および「置換されていてもよい炭化水素基」についても、上記と同様である。上記式(3)中、R6で示される基としては、水素原子;フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;メチル等の炭素数1〜4のアルキル基;メトキシ等の炭素数1〜4のアルコキシ基;ジフルオロメトキシ等のハロゲン原子により置換された前記アルコキシ基が好ましい。また、上記式(3)において、R4はR5とともにアルキレンジオキシ基を形成していてもよく、該「アルキレンジオキシ基」については上記と同様である。さらにまた、上記式(3)において、R1で示される基はR6で示される基とともに環を形成していてもよく、かかる環としては、ヒドロピリジン環、ヒドロオキサジン環、ヒドロオキサジアジン環等が挙げられる。それゆえ、上記式(3)において、R1で示される基とR6で示される基とが環を形成してなるベンゾキノリジン骨格、ピリドベンゾオキサジン骨格またはピリドベンゾオキサジアジン骨格を有するものも、好ましい化合物として例示される。
本発明において好ましくは、キノロン系化合物として、上記式(2)で示される化合物および式(3)で示される化合物よりなる群から、1種または2種以上を選択して用いることができる。
本発明においてより好ましく用いられるキノロン系化合物としては、上記式(1)で示される化合物において、ナフチリジン骨格を有するエノキサシン、トスフロキサシン、キノリン骨格を有するオキソリニック酸、ノルフロキサシン、サラフロキサシン、ジフロキサシン、フレロキサシン、ロメフロキサシン、エンロフロキサシン、シプロフロキサシン、ガチフロキサシン、スパルフロキサシン、ダノフロキサシン、モキシフロキサシン、ガレノキサシン、シタフロキサシン、オルビフロキサシン、ベンゾキノリジン骨格を有するナディフロキサシン、ピリドベンゾオキサジン骨格を有するオフロキサシン、レボフロキサシン、パズフロキサシン、ピリドベンゾオキサジアジン骨格を有するマルボフロキサシン等が挙げられ、これらより1種または2種以上を選択して用いることができる。
本発明においては、キノロン系化合物は、製剤学的に可能な塩の形態で用いることもできる。当該塩としては、塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸等の無機酸との塩;ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、フタル酸、フマル酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等の有機酸との塩;ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属との塩;マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属との塩;アンモニウム塩;トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、tert−ブチルアミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N−ジベンジルエチレンジアミン等の有機アミンとの塩などが挙げられる。
本発明に用いるキノロン系化合物またはその塩は市販品を用いてもよく、あるいは自体公知の方法に従って製造したものを用いてもよいが、市販品を用いるのが便利である。
本発明の尿臭抑制剤において、尿中に存在する尿臭の原因物質産生能を有する微生物に対し、十分な抗菌活性を示して良好な尿臭抑制効果を得るためには、キノロン系化合物またはその塩の含有量は、剤形、適用対象あるいは使用環境等にもよるが、0.001重量%〜10重量%とするのが好ましく、0.01重量%〜5重量%とするのがより好ましい。
本発明の尿臭抑制剤では、上記キノロン系化合物またはその塩に加えて、工業用の抗菌・防黴剤として汎用される抗菌性化合物を用いることができる。かかる抗菌性化合物としては、イソチアゾリン系化合物、ベンゾイソチアゾリン系化合物、ハロアセチレン系化合物、ベンゾイミダゾール系化合物、テトラヒドロチオフェンジオキシド系化合物、およびこれらの塩が挙げられ、これらよりなる群から1種または2種以上の抗菌性化合物を選択して用いることができる。該抗菌性化合物を併用することにより、抗菌スペクトルの拡大、抗菌活性の向上が期待できる。
イソチアゾリン系化合物は、次の式(4)で示される。
[式中、R7は水素原子または置換されていてもよい炭化水素基を示し、R8およびR9は同一または異なって、それぞれ水素原子、ハロゲン原子または置換されていてもよい炭化水素基を示す。]
式(4)中、R7で示される「置換されていてもよい炭化水素基」としては、A1環の置換基について、上記した「置換されていてもよい炭化水素基」と同様のものが挙げられる。なお、前記置換基は同一または異なっていてもよく、1〜5個、好ましくは1〜3個が置換していてもよい。
R7で示される「置換されていてもよい炭化水素基」としては、無置換の炭化水素基が好ましく、その中でもアルキル基またはシクロアルキル基が好ましい。当該アルキル基としては、炭素数1〜8のアルキル基が好ましく、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル等の炭素数1〜4のアルキル基およびn−オクチル、イソオクチル、1−メチルヘプチル、1−エチルヘキシル、1−プロピルペンチル、1,1−ジメチルヘキシル、1−エチル−1−メチルペンチル、1,1−ジエチルブチル、2−エチルヘキシル等の炭素数8のアルキル基がより好ましく、メチル、エチル、n−ブチル、n−オクチルがさらに好ましい。シクロアルキル基としては、炭素数3〜8のシクロアルキル基が好ましく、シクロヘキシルがより好ましい。
本発明において、上記式(4)中、R7で示される基としては、炭素数1〜8のアルキル基または炭素数3〜8のシクロアルキル基が好ましく、炭素数1〜8のアルキル基がより好ましく、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル等の炭素数1〜4のアルキル基、およびn−オクチル、イソオクチル、1−メチルヘプチル、1−エチルヘキシル、1−プロピルペンチル、1,1−ジメチルヘキシル、1−エチル−1−メチルペンチル、1,1−ジエチルブチル、2−エチルヘキシル等の炭素数8のアルキル基がさらに好ましく、メチル、エチル、n−ブチル、n−オクチルが特に好ましい。
式(4)中、R8またはR9で示されるハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素の各原子が挙げられ、これらの中でも塩素原子が好ましい。
また、R8またはR9で示される「置換されていてもよい炭化水素基」は、A1環の置換基について上記した「置換されていてもよい炭化水素基」と同様であるが、無置換の炭化水素基が好ましく、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル等の炭素数1〜4のアルキル基が特に好ましい。
本発明において、上記式(4)中、R8およびR9で示される基としては、同一または異なって、それぞれ水素原子またはハロゲン原子が好ましく、水素原子または塩素原子がより好ましい。
本発明において用い得るイソチアゾリン系化合物の具体例としては、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−エチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−エチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、4−クロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、4,5−ジクロロ−2−シクロヘキシル−4−イソチアゾリン−3−オン等が挙げられる。これらのうち、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、4−クロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンおよび4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンが好ましく、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンおよび2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンが特に好ましい。
本発明において、イソチアゾリン系化合物としては、上記の化合物よりなる群から1種または2種以上を選択して用いることができる。
ベンゾイソチアゾリン系化合物は、次の式(5)で示される。
[式中、A2環は置換されていてもよいベンゼン環を示し、Yは水素原子または置換されていてもよい炭化水素基を示す。]
式(5)中、A2環で示される「置換されていてもよいベンゼン環」の置換基としては、水酸基;塩素、フッ素、臭素およびヨウ素のハロゲン原子;シアノ基;アミノ基;カルボキシル基;ブタノイル、オクタノイル、デカノイル等の炭素数1〜10のアシル基;メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ等の炭素数1〜4のアルコキシ基;フェノキシ、ナフチルオキシ等の炭素数6〜20、好ましくは炭素数6〜10のアリールオキシ基;ベンジルオキシ、フェニルエチルオキシ等の炭素数7〜14のアラルキルオキシ基;メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、ブチルチオ等の炭素数1〜4のアルキルチオ基;フェニルチオ等の炭素数6〜20のアリールチオ基等を挙げることができるが、ハロゲン原子およびメチル、エチル、プロピル、ブチル等の炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。これらの置換基は同一または異なっていてもよく、ベンゼン環に1〜4個、好ましくは1個または2個置換されていてもよい。なお、A2環で示される「置換されていてもよいベンゼン環」としては、無置換のベンゼン環が好ましい。
式(5)中、Yで示される「置換されていてもよい炭化水素基」としては、上記したA1環の置換基の一つとして示した「置換されていてもよい炭化水素基」と同様のものが挙げられるが、無置換の炭化水素基が好ましく、炭素数1〜8のアルキル基がより好ましく、炭素数1〜4のアルキル基(特にn−ブチル)が特に好ましい。
本発明において、式(5)中、Yで示される基としては、水素原子または炭素数1〜8のアルキル基が好ましく、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基(特にn−ブチル)が特に好ましい。
ベンゾイソチアゾリン系化合物の好適な具体例としては、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン、N−n−ブチル−1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン等が挙げられる。
本発明において、ベンゾイソチアゾリン系化合物としては、上記の化合物よりなる群から1種または2種以上を選択して用いることができる。
ベンゾイミダゾール系化合物は、次の式(6)で示される。
[式中、A3環は置換されていてもよいベンゼン環を示し、Zは−NHCOOR10(式中、R10は水素原子またはアルキル基を示す。)で示される基または置換されていてもよい5員または6員の含窒素複素環基を示す。]
上記式(6)中、A3環で示される「置換されていてもよいベンゼン環」に含まれ得る置換基としては、上記したA2環の置換基と同様のものを挙げることができるが、ハロゲン原子、およびメチル、エチル、プロピル、ブチル等炭素数1〜4のアルキル基が好ましいものとして挙げられる。これらの置換基は同一または異なって、A3環で示されるベンゼン環に1〜4個、好ましくは1個または2個含まれ得る。なお、A3環で示される置換されていてもよいベンゼン環としては、置換されていないベンゼン環が好ましい。
上記式(6)中、Zが示す−NHCOOR10で示される基において、R10で示されるアルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−へキシル、n−ヘプチルおよびn−オクチル等の炭素数1〜8のアルキル基が挙げられ、それらのうち、メチル、エチル、n−プロピル等の炭素数1〜3のアルキル基が特に好ましい。
また式(6)中、Zで示される置換されていてもよい5員または6員の含窒素複素環基としては、1〜4個の窒素原子を環構成原子として含有するか、あるいは1〜2個の窒素原子に加えて酸素原子および硫黄原子から選ばれた1個のヘテロ原子を環構成原子として含有する5員または6員環の単環式複素環基や、この5員または6員の含窒素複素環にベンゼン環または5員環が縮合した縮合複素環基が挙げられる。5員または6員の含窒素単環式複素環基としては、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル等のピリジル基;2−チアゾリル、4−チアゾリル、5−チアゾリル等のチアゾリル基;3−イソチアゾリル、4−イソチアゾリル、5−イソチアゾリル等のイソチアゾリル基;1−イミダゾリル、2−イミダゾリル、4−イミダゾリル、5−イミダゾリル等のイミダゾリル基;1−ピロリル、2−ピロリル、3−ピロリル等のピロリル基;2−ピロリニル、3−ピロリニル等のピロリニル基;フラザニル基;1−ピロリジニル、2−ピロリジニル、3−ピロリジニル等のピロリジニル基;2−イミダゾリジニル、4−イミダゾリジニル、5−イミダゾリジニル等のイミダゾリジニル基;1−ピラゾリジニル等のピラゾリジニル基;5−ピラゾリル等のピラゾリル基;2−オキサゾリル、4−オキサゾリル、5−オキサゾリル等のオキサゾリル基;3−イソオキサゾリル、4−イソオキサゾリル、5−イソオキサゾリル等のイソオキサゾリル基;1H−テトラゾリル、2H−テトラゾリル等のテトラゾリル基;2−ピリミジニル、4−ピリミジニル、5−ピリミジニル等のピリミジニル基;3−ピリダジニル、4−ピリダジニル等のピリダジニル基;2−ピラジニル、3−ピラジニル等のピラジニル基;1,2−チアジン−3−イル、1,2−チアジン−4−イル、1,3−チアジン−2−イル、1,3−チアジン−4−イル、1,4−チアジン−2−イル、1,4−チアジン−3−イル等のチアジニル基;1−ピペラジニル、2−ピペラジニル、3−ピペラジニル等のピペラジニル基;1,2,3−チアジアジン−4−イル、1,2,3−チアジアジン−5−イル、1,2,3−チアジアジン−6−イル、1,2,4−チアジアジン−3−イル、1,3,4−チアジアジン−2−イル等のチアジアジニル基;1,3,4−オキサジアゾール−2−イル、1,2,4−オキサジアゾール−3−イル、1,2,4−オキサジアゾール−5−イル、1,2,3−オキサジアゾール−4−イル、1,2,3−オキサジアゾール−5−イル等のオキサジアゾリル基;1,2,3−チアジアゾール−4−イル、1,2,3−チアジアゾール−5−イル等のチアジアゾリル基;1,2,3−トリアゾール−4−イル、1,2,4−トリアゾール−3−イル等のトリアゾリル基;2−チオモルホリニル、3−チオモルホリニル、4−チオモルホリニル、5−チオモルホリニル、6−チオモルホリニル等のチオモルホリニル基;2−モルホリニル、3−モルホリニル、4−モルホリニル、5−モルホリニル、6−モルホリニル等のモルホリニル基;2−オキソイミダジニル等のオキソイミダジニル基;1,2,4−トリアジン−3,5−ジオン−1−イル、1,2,4−トリアジン−3,5−ジオン−2−イル、1,2,4−トリアジン−3,5−ジオン−4−イル等のジオキソトリアジニル基;1−ピペリジル、2−ピペリジル、3−ピペリジル、4−ピペリジル等のピペリジル基等が挙げられる。上記縮合複素環基としては、2−キノリル、3−キノリル、4−キノリル等のキノリル基;3−イソキノリル、4−イソキノリル等のイソキノリル基;2−インドリル、3−インドリル等のインドリル基;1H−イソインドール−3−イル等のイソインドリル基;8−キノリジニル等のキノリジニル基;1H−プリン−6−イル、3H−プリン−6−イル等のプリニル基;3−シンノリニル、5−シンノリニル等のシンノリニル基;3−インダゾリル等のインダゾリル基;2−プテリジニル等のプテリジニル基;4−フタラジニル等のフタラジニル基;2−キナゾリニル、4−キナゾリニル等のキナゾリニル基;2−キノキサリニル、3−キノキサリニル等のキノキサリニル基;2−インドリジニル等のインドリジニル基;2H−1,3−ベンゾオキサジン−2−イル等のベンゾオキサジニル基;2−フェノチアジニル、3−フェノチアジニル等のフェノチアジニル基;2−フェナジニル、3−フェナジニル等のフェナジニル基;2−フェノキサジニル、3−フェノキサジニル、4−フェノキサジニル等のフェノキサジニル基等が挙げられる。上記複素環基のうち、5員含窒素複素環基が好ましく、特にチアゾリル基が好ましい。
上記複素環の置換基としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル等の炭素数1〜4のアルキル基;メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ等の炭素数1〜4のアルコキシ基;フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子;水酸基;アミノ基;ニトロ基;メルカプト基などが挙げられる。
Zで示される置換されていてもよい5または6員の含窒素複素環基としては、無置換の5または6員の含窒素複素環基が好ましく、無置換の5員の含窒素複素環基がより好ましく、チアゾリル基が特に好ましい。
本発明において、式(6)中、Zで示される基としては、−NHCOOR10(式中、R10は炭素数1〜8のアルキル基である。)で示される基または無置換の5員または6員の含窒素複素環基が好ましく、−NHCOOR10’(式中、R10’は炭素数1〜3のアルキル基である)で示される基または無置換の5員の含窒素複素環基がより好ましく、−NHCOOR10’(式中、R10’は炭素数1〜3のアルキル基である)で示される基またはチアゾリル基が特に好ましい。
ベンゾイミダゾール系化合物の好適な具体例としては、メチル 2−ベンゾイミダゾールカルバメート、エチル 2−ベンゾイミダゾールカルバメート、2−(4−チアゾリル)ベンゾイミダゾール等が挙げられる。
本発明において、ベンゾイミダゾール系化合物としては、上記の化合物よりなる群から1種または2種以上を選択して用いることができる。
ハロアセチレン系化合物は、次の式(7)で示される。
[式中、X1はハロゲン原子を示し、R11およびR12は同一または異なって、それぞれ水素原子または置換されていてもよい炭化水素基を示し、mは0または1の整数を示す。]
式(7)中、X1で示されるハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素の各原子が挙げられ、特にヨウ素原子が好ましい。
式(7)中、R11またはR12で示される「置換されていてもよい炭化水素基」としては、A1環の置換基の一つとして上記した「置換されていてもよい炭化水素基」と同様のものが挙げられる。中でも無置換の炭化水素基が好ましく、炭素数1〜10のアルキル基または炭素数3〜8のシクロアルキル基がより好ましく、炭素数1〜10のアルキル基がさらに好ましく、炭素数1〜4のアルキル基がさらにより好ましく、n−ブチルが特に好ましい。
また、R11およびR12の一方が置換されていてもよい炭化水素基であり、他方が水素原子であることが好ましく、R11およびR12の一方が炭素数1〜10のアルキル基であり、他方が水素原子であることがより好ましく、R11およびR12の一方が炭素数1〜4のアルキル基(特にn−ブチル)であり、他方が水素原子であることが特に好ましい。
式(7)中、mは0または1の整数を示し、mが0のとき、ハロアセチレン系化合物は酸アミド誘導体となり、mが1のときは、ハロアセチレン系化合物はカルバメート誘導体となる。これらのうち、mが1であるハロアセチレン系化合物のカルバメート誘導体が好ましい。
ハロアセチレン系化合物の具体例としては、mが0である場合のハロアセチレン系化合物の酸アミド誘導体として、3−クロロプロピオール酸アミド、N−メチル−3−クロロプロピオール酸アミド、N−エチル−3−クロロプロピオール酸アミド、N−プロピル−3−クロロプロピオール酸アミド、N−ブチル−3−クロロプロピオール酸アミド、N−ヘキシル−3−クロロプロピオール酸アミド、N−オクチル−3−クロロプロピオール酸アミド、N−シクロヘキシル−3−クロロプロピオール酸アミド等の(N−置換−)3−クロロプロピオール酸アミド;3−ブロモプロピオール酸アミド、N−メチル−3−ブロモプロピオール酸アミド、N−エチル−3−ブロモプロピオール酸アミド、N−プロピル−3−ブロモプロピオール酸アミド、N−ブチル−3−ブロモプロピオール酸アミド、N−ヘキシル−3−ブロモプロピオール酸アミド、N−オクチル−3−ブロモプロピオール酸アミド、N−シクロヘキシル−3−ブロモプロピオール酸アミド等の(N−置換−)3−ブロモプロピオール酸アミド;3−ヨードプロピオール酸アミド、N−メチル−3−ヨードプロピオール酸アミド、N−エチル−3−ヨードプロピオール酸アミド、N−プロピル−3−ヨードプロピオール酸アミド、N−ブチル−3−ヨードプロピオール酸アミド、N−ヘキシル−3−ヨードプロピオール酸アミド、N−オクチル−3−ヨードプロピオール酸アミド、N−シクロヘキシル−3−ヨードプロピオール酸アミド等の(N−置換−)3−ヨードプロピオール酸アミドなどが挙げられる。これらのうち、(N−置換−)3−ヨードプロピオール酸アミドが好ましく、N−ブチル−3−ヨードプロピオール酸アミドがより好ましい。
また、mが1である場合のハロアセチレン系化合物のカルバメート誘導体として、3−ヨード−2−プロピニル N−メチルカルバメート、3−ヨード−2−プロピニル N−エチルカルバメート、3−ヨード−2−プロピニル N−プロピルカルバメート、3−ヨード−2−プロピニル N−ブチルカルバメート、3−ヨード−2−プロピニル N−ヘキシルカルバメート、3−ヨード−2−プロピニル N−オクチルカルバメート、3−ヨード−2−プロピニル N−シクロヘキシルカルバメート等の3−ヨード−2−プロピニル N−アルキルカルバメートなどが挙げられ、中でも3−ヨード−2−プロピニル N−ブチルカルバメートが好ましい。
本発明において、ハロアセチレン系化合物としては、上記の化合物よりなる群から1種または2種以上を選択して用いることができる。
テトラヒドロチオフェンジオキシド系化合物は、次の式(8)で示される。
[式中、Y1、Y2、Y3およびY4は同一または異なって、それぞれ水素原子、ハロゲン原子または置換されていてもよい炭化水素基を示す。]
式(8)中、Y1、Y2、Y3またはY4で表されるハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素の各原子が挙げられ、特に塩素原子が好ましい。また、Y1、Y2、Y3またはY4で表される「置換されていてもよい炭化水素基」としては、A1環の置換基の一つとして上記した「置換されていてもよい炭化水素基」と同様のものが挙げられ、中でもメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル等の炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。
Y1、Y2、Y3およびY4としては、Y1、Y2、Y3およびY4のすべてがハロゲン原子であるか、Y1、Y2およびY3がハロゲン原子でかつY4が水素原子であるか、Y1およびY4がハロゲン原子でかつY2およびY3が水素原子であることが好ましく、Y1、Y2、Y3およびY4のすべてがハロゲン原子であることがより好ましく、Y1、Y2、Y3およびY4のすべてが塩素であることが特に好ましい。
テトラヒドロチオフェンジオキシド系化合物の具体例としては、3,3,4,4−テトラクロロテトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキシド、3,3,4,4−テトラブロモテトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキシド、3,4−ジクロロテトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキシド、3,3,4−トリクロロテトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキシド、3,3,4−トリブロモテトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキシド等が挙げられ、これらのうち、3,3,4,4−テトラクロロテトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキシドが特に好ましい。
本発明において、テトラヒドロチオフェンジオキシド系化合物としては、上記の化合物よりなる群から1種または2種以上を選択して用いることができる。
上記のイソチアゾリン系化合物、ベンゾイソチアゾリン系化合物、ベンゾイミダゾール系化合物、ハロアセチレン系化合物およびテトラヒドロチオフェンジオキシド系化合物は、塩基性化合物の場合は酸との塩として用いてもよく、また、酸性化合物の場合は塩基との塩として用いてもよい。
酸との塩としては、塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸等の無機酸との塩;ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、フタル酸、フマル酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等の有機酸との塩が挙げられる。
塩基との塩としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属との塩;マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属との塩;アンモニウム塩;トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、tert−ブチルアミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N−ジベンジルエチレンジアミン等の有機アミンとの塩などが挙げられる。
イソチアゾリン系化合物、ベンゾイソチアゾリン系化合物、ベンゾイミダゾール系化合物、ハロアセチレン系化合物、テトラヒドロチオフェンジオキシド系化合物およびこれらの塩は市販品を用いてもよく、あるいは公知技術に従って製造したものを用いてもよいが、市販品を用いるのが便利である。
上記の抗菌性化合物を併用する場合、本発明の尿臭抑制剤に、より広範な抗菌スペクトルと十分な抗菌活性を付与するためには、キノロン系化合物またはその塩に対し、上記イソチアゾリン系化合物等の抗菌性化合物は総量で、1:100〜100:1の重量比で用いることが好ましく、1:10〜10:1の重量比で用いることがより好ましい。また、キノロン系化合物またはその塩と、上記イソチアゾリン系化合物等の抗菌性化合物の含有量としては、剤形、適用対象あるいは使用環境等にもよるが、尿臭抑制剤全量に対し総量で0.1重量%〜100重量%とするのが好ましく、1重量%〜99重量%とするのがより好ましい。
本発明の尿臭抑制剤には、本発明の特徴を損なわない範囲で、キノロン系化合物またはその塩、および上記の抗菌性化合物の他に、さらに一般的に消毒剤として用いられる抗菌剤または殺菌剤成分を含有させることができる。かかる抗菌剤または殺菌剤成分としては、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム等の第4級アンモニウム塩類;塩酸アルキルジアミノエチルグリシン等の両性界面活性剤;グルコン酸クロルヘキシジン等のクロルヘキシジン塩類などが挙げられる。尿臭抑制剤におけるこれらの含有量は、剤形、適用対象あるいは使用環境等に応じて適宜設定し得るが、通常0.1重量%〜50重量%である。
また、本発明の尿臭抑制剤には、本発明の特徴を損なわない範囲で、活性炭、ゼオライト、シリカゲル、メソポーラスシリカ等の吸着剤、エチレンジアミン四酢酸またはその塩、ヒドロキサム酸、ジアミドリン酸フェニル、N−ブチルチオリン酸トリアミド等のウレアーゼ阻害剤、フェニルメチルスルホニルフルオリド、ロイペプチン等のプロテアーゼ阻害剤、ベスタチン等のペプチダーゼ阻害剤等の酵素阻害剤を含有させることができる。尿臭抑制剤におけるこれらの含有量は、剤形、適用対象、使用環境、あるいは阻害活性等に応じて、適宜設定し得るが、通常吸着剤については30重量%〜95重量%、酵素阻害剤については0.1重量%〜50重量%である。
本発明の尿臭抑制剤は、キノロン系化合物をそのまま、または粉砕して、単体の粉剤として提供することができるが、溶剤に溶解させ、または界面活性剤もしくは溶解助剤等を用いて懸濁もしくは分散させて、液剤または懸濁剤もしくは分散剤として、あるいは界面活性剤により乳化して乳剤としても提供することができる。その他、界面活性剤や固体担体を加えて、水和剤、フロアブル剤、粉剤、粒剤等としても提供することができる。
本発明において用い得る溶剤としては、水;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール等の低級アルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルカルビトール)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルカルビトール)、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、プロピレンカーボネート等のケトン類;ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチルエーテル等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、γ−ブチロラクトン、アジピン酸ジメチル、グルタル酸ジメチル、コハク酸ジメチル等のエステル類;ベンゼン、トルエン、キシレン、メチルナフタレン、ジメチルナフタレン、イソプロピルナフタレン、ジイソプロピルナフタレン、エチルビフェニル、ジエチルビフェニル、ソルベントナフサ等の芳香族系溶剤;四塩化炭素、クロロホルム、塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素系溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、N−メチルピロリドン等の極性有機溶剤などが挙げられる。これらの溶剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、これら溶剤の中では、水、低級アルコール類および多価アルコール類が好ましく用いられる。
本発明において用い得る界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチエンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール等の非イオン性界面活性剤;アルキル硫酸エステル塩、アルキル(アリール)スルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルリン酸エステル塩、リグニンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物等の陰イオン性界面活性剤などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
本発明において用い得る溶解助剤としては、カプリン酸、アジピン酸等のカルボン酸類;アジピン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジイソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル等のエステル類;オクチルドデカノール、オレイルアルコール等の高級アルコール類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等のアミン類などを挙げることができ、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
本発明において用い得る固体担体としては、カオリンクレー、アッタパルジャイトクレー、ベントナイト、モンモリロナイト、酸性白土、パイロフィライト、タルク、珪藻土、ゼオライト、シリカゲル、方解石、炭酸カルシウム、非晶質シリカ、ケイ酸カルシウム等の鉱物系担体;活性炭、木炭、備長炭等の炭素系多孔質担体;木質粉、トウモロコシ穂軸粉、クルミ殻粉、粉末セルロース、デンプン、デキストリン,大豆粕、おから、茶滓、コーヒー滓等の植物性担体;塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリメタアクリル酸メチル、ポリスチレン−無水マレイン酸共重合体等の合成高分子担体などを挙げることができ、これらの粉体または粒状物等を用いることができる。
本発明の尿臭抑制剤の調製は、5℃〜40℃にて行うことが好ましい。溶剤等への混合は、0.5時間〜5時間程度の処理により行うことが好ましい。界面活性剤、溶解助剤および固体担体は、尿臭抑制剤の全量に対して、それぞれ0.1重量%〜10重量%、0.1重量%〜30重量%、および30重量%〜95重量%程度配合することができる。
本発明に係る尿臭抑制剤には、ウレアーゼ産生能を有する微生物に対する抗菌活性、安定性、安全性等に影響を与えない範囲で、さらにpH調整剤、酸化防止剤、光安定化剤、消泡剤、着色剤、着香剤、増粘剤等、一般的に製剤化に際して用いられる添加剤を添加することができる。
本発明の尿臭抑制剤は、ウレアーゼ産生能を有し、アンモニアを生じる微生物に対して良好な抗菌活性を示す。前記のウレアーゼ産生能を有する微生物としては、プロテウス ミラビリス(Proteus mirabilis)、プロテウス バルガリス(Proteus vulgaris)等のプロテウス(Proteus)属細菌、モルガネラ モルガニイ(Morganella morganii)等のモルガネラ(Morganella)属細菌、クレブシエラ ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)、クレブシエラ オキシトカ(Klebsiella oxytoca)等のクレブシエラ(Klebsiella)属細菌、シトロバクター フレウンディー(Citrobacter freundii)の一部菌株、エンテロバクター クロアカエ(Enterobacter cloacae)の一部菌株、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)の一部菌株などのグラム陰性細菌;黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)等スタフィロコッカス(Staphylococcus)属細菌の一部菌株、ストレプトコッカス フェカリス(Streptococcus faecalis)の一部菌株、ジェオトガリコッカス ハロトレランス(Jeotgalicoccus halotolerans)等のジェオトガリコッカス(Jeotgalicoccus)属細菌などのグラム陽性細菌などが挙げられる。
また、上記微生物以外に、アンモニア以外の臭気成分の産生に関与する微生物、たとえば枯草菌(Bacillus subtilis)、大腸菌(Escherichia coli)、バクテロイデス(Bacteroides)属細菌、ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)等に対しても、良好な抗菌活性を有する。
本発明の尿臭抑制剤は、消臭スプレー等の消臭剤、ペット用シャンプー、石鹸等の洗浄剤などとして提供することができる。また、紙、繊維、不織布、吸水性ポリマー、プラスチック等に添加して、消臭性の紙おむつ、衣類等の繊維製品、マット、ペット用シート、ネコ砂等ペット用トイレなどの製品を提供することができる。
本発明の尿臭抑制剤の添加量は、適用対象や使用の態様等に応じて適宜選択すればよいが、キノロン系化合物等抗菌性成分の総量として、たとえば消臭剤として用いる場合には、製品1kgあたりに対し10mg〜10,000mg、好ましくは50mg〜2,000mg、洗浄剤として用いる場合には、製品1kgあたりに対し10mg〜10,000mg、好ましくは50mg〜2,000mg、紙おむつに用いる場合には、製品1kgあたりに対し1mg〜5,000mg、好ましくは10mg〜1,000mg、繊維製品に用いる場合には、製品1kgあたりに対し10mg〜10,000mg、好ましくは50mg〜2,000mg、ペット用シートに用いる場合には、製品1kgあたりに対し1mg〜5,000mg、好ましくは10mg〜1,000mg、ペット用トイレに用いる場合には、製品1kgあたりに対し10mg〜10,000mg、好ましくは50mg〜2,000mg程度となるように添加すればよい。
以下に本発明について実施例により詳細に説明する。なお、以下において、特に示さない限り、「%」は重量%を、「部」は重量部を表す。
[実施例1]
オキソリニック酸(純度98%、和光純薬工業株式会社製)を粉体状の尿臭抑制剤とした。
[実施例2]
ノルフロキサシン(純度100%、和光純薬工業株式会社製)を粉体状の尿臭抑制剤とした。
[実施例3]
オフロキサシン(純度99%、和光純薬工業株式会社製)を粉体状の尿臭抑制剤とした。
[実施例4]
ジフロキサシン(純度98%、和光純薬工業株式会社製)を粉体状の尿臭抑制剤とした。
[実施例5]
サラフロキサシン塩酸塩(純度95%、和光純薬工業株式会社製)を粉体状の尿臭抑制剤とした。
[実施例6]
イオン交換水50部に、ツイーン80(ポリオキシエチレン(20E.O.)ソルビタンモノオレエート)10部、およびオキソリニック酸(純度98%、和光純薬工業株式会社製)40部を添加し、室温で2時間混合して、懸濁液状の尿臭抑制剤を得た。
[実施例7]
イオン交換水85部に、ツイーン80(ポリオキシエチレン(20E.O.)ソルビタンモノオレエート)5部、およびオキソリニック酸(純度98%、和光純薬工業株式会社製)10部を添加し、室温で2時間混合して、懸濁液状の尿臭抑制剤を得た。
[実施例8]
イオン交換水85部に、ツイーン80(ポリオキシエチレン(20E.O.)ソルビタンモノオレエート)5部、およびノルフロキサシン(純度100%、和光純薬工業株式会社製)10部を添加し、室温で2時間混合して、懸濁液状の尿臭抑制剤を得た。
[実施例9]
イオン交換水94部に、オキソリニック酸(純度98%、和光純薬工業株式会社製)5部および水酸化ナトリウム1部を添加して、室温で1時間攪拌し、液状の尿臭抑制剤を得た。
[実施例10]
イオン交換水94部に、ノルフロキサシン(純度100%、和光純薬工業株式会社製)5部および水酸化ナトリウム1部を添加して、室温で1時間攪拌し、液状の尿臭抑制剤を得た。
[比較例1]
ゲンタマイシン硫酸塩(純度590μg/mg以上、和光純薬工業株式会社製)を粉体状の尿臭抑制剤とした。
[比較例2]
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩二水和物(EDTA、純度99%、和光純薬工業株式会社製)を粉体状の尿臭抑制剤とした。
上記実施例および比較例の各尿臭抑制剤について、尿臭発生抑制効果を以下の通り評価した。
すなわち、表1に示す処方に従って人工尿を調製し、実施例1〜5および比較例1、2の各尿臭抑制剤については、人工尿1Lに対して各尿臭抑制剤10mg、実施例6〜10の各尿臭抑制剤については、人工尿1Lに対して各尿臭抑制剤1gをそれぞれ混合した。尿臭抑制剤を含有する前記人工尿各5mLを、No.5C ろ紙(アドバンテック東洋株式会社製、直径90mm)に吸収させ、1Lのテドラーバッグ(ジーエル・サイエンス株式会社製)内に入れて密閉した。これを33℃の恒温槽に入れ、2、4、8日経過後に検知管を用いてアンモニア濃度を測定した。なお、対照として、人工尿に尿臭抑制剤を添加せずに同様に処理して、2、4、8日経過後のアンモニア濃度を測定した。結果は表2に示した。
なお、表1に示す人工尿の組成は、上記非特許文献3および特許文献1の記載を参考として定めた。
表2より明らかなように、対照では経時的に人工尿における微生物の増殖が進み、2日後においてアンモニア濃度は500ppmを超えていた。これに対し、実施例1〜9の各尿臭抑制剤を添加した場合には、アンモニアの発生は良好に抑制されていた。一方、代表的なアミノグリコシド系抗菌薬であるゲンタマイシン硫酸塩よりなる比較例1の尿臭抑制剤を添加した場合には、4日経過後にアンモニア濃度の上昇が見られ、8日経過後には、アンモニア濃度は100ppmに達していた。また、代表的なウレアーゼ阻害剤であるEDTAよりなる比較例2の尿臭抑制剤を添加した場合には、対照と比べて有意なアンモニア発生の抑制は認められなかった。
上記実施例および比較例の尿臭抑制剤の調製に用いた各キノロン系化合物、ゲンタマイシン硫酸塩およびEDTAについて、同時に抗菌活性の評価を行った。
すなわち、試験菌として、枯草菌(Bacillus subtilis IFO3513)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus IFO12732)、大腸菌(Escherichia coli IFO3972)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa IFO3080)およびセラチア菌(Serratia marcescens IFO3735)を用い、キノロン系化合物、EDTAおよびゲンタマイシンをそれぞれ添加したグルコースブイヨン寒天培地(pH6.0)に、ミクロプランタ(佐久間製作所製)を用いて接種用細菌懸濁液を接種し、33℃で18時間培養した。培養後、各菌の生育を観察し、最小発育阻止濃度(MIC)(μg/mL)を求め、表3に示した。
表3より、EDTAは試験した細菌類に対して有効な抗菌活性を示していないが、ゲンタマイシン硫酸塩については、キノロン系化合物と同様に有効な抗菌活性が認められた。すなわち、ゲンタマイシン硫酸塩は、尿中という特殊な環境下においては、その抗菌活性を十分に発揮することができず、ウレアーゼ産生能を有する微生物等、尿臭の原因物質産生能を有する微生物の生育を十分に抑制することができないため、尿臭発生に対する抑制効果が不十分であることが認められた。