以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。各図面を通じて同一もしくは同等の部位や構成要素には、同一もしくは同等の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、現実のものとは異なることに留意すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
また、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
図1は、本発明の実施の形態に係る印刷装置の概略構成図、図2は、図1に示す印刷装置の制御系の構成を示すブロック図である。以下の説明において、ユーザが位置する図1の紙面表方向を前方とする。また、図1に示すように、ユーザから見て、上下左右を上下左右方向とする。
図1において太線で示す経路が、印刷媒体である用紙が搬送される搬送経路である。搬送経路のうち、実線で示す経路が通常経路RC、一点鎖線で示す経路が反転経路RR、破線で示す経路が排紙経路RD、二点鎖線で示す経路が給紙経路RSである。以下の説明における上流、下流は、搬送経路における上流、下流を意味する。
図1、図2に示すように、本実施の形態に係る印刷装置1は、給紙部2と、印刷部3と、上面搬送部4と、排紙部5と、反転部6と、装置内温度センサ7と、メンテナンスユニット8と、制御部9と、各部を収納または保持する筐体10とを備える。
給紙部2は、印刷部3に給紙する。給紙部2は、搬送経路の最も上流側に設けられる。給紙部2は、外部給紙台11と、外部給紙ローラ12と、複数の内部給紙トレイ13と、複数の内部給紙ローラ14と、複数対の縦搬送ローラ15と、レジストローラ16と、トレイ室内温度センサ17とを備える。
外部給紙台11は、用紙が積載されるものである。外部給紙台11は、一部が筐体10の外部に露出して設置されている。
外部給紙ローラ12は、外部給紙台11から用紙を1枚ずつ取り出して給紙経路RSに沿ってレジストローラ16に向けて搬送する。外部給紙ローラ12は、外部給紙台11の上側に配置されている。
内部給紙トレイ13は、用紙が積載されるものである。内部給紙トレイ13は、筐体10内部を上下に仕切る隔壁21の下側の空間により形成されるトレイ室22の内部に配置されている。これにより、トレイ室22内に用紙が収納される。トレイ室22は、請求項の媒体収納室に相当する。隔壁21には、給紙経路RSを用紙が通過するための開口部が設けられている。
内部給紙ローラ14は、内部給紙トレイ13から用紙を1枚ずつ取り出して給紙経路RSへと送り出す。内部給紙ローラ14は、内部給紙トレイ13の上側に配置されている。
縦搬送ローラ15は、内部給紙トレイ13から取り出された用紙をレジストローラ16に向けて搬送する。縦搬送ローラ15は、給紙経路RSに沿って配置されている。
レジストローラ16は、外部給紙台11、内部給紙トレイ13、反転部6から搬送されてきた用紙を一旦止めた後、所定のタイミングで印刷部3へと送り出す。レジストローラ16は、給紙経路RSと反転経路RRとの合流地点の近傍の通常経路RC上に配置されている。
トレイ室内温度センサ17は、トレイ室22内に配置され、トレイ室22内の温度Tsを検出し、検出結果を制御部9へと出力する。トレイ室内温度センサ17は、請求項の媒体収納室内条件検出部を構成する。
また、給紙部2は、外部給紙ローラ12および最も下流側の縦搬送ローラ15を回転駆動させるモータと、内部給紙ローラ14および他の縦搬送ローラ15を回転駆動させるモータと、レジストローラ16を回転駆動させるモータ(いずれも図示せず)とを備える。
印刷部3は、用紙を搬送しつつ、用紙に印刷を行う。印刷部3は、給紙部2の下流側に配置されている。印刷部3は、ベルト搬送部31と、インクジェットヘッド32A〜32Dと、インク循環部33A〜33Dと、ヘッドカバー34と、ヘッド周辺温度センサ35と、昇降モータ36とを備える。
ベルト搬送部31は、レジストローラ16から搬送されてきた用紙をベルトに吸着保持して搬送する。ベルト搬送部31は、レジストローラ16の下流側で、インクジェットヘッド32A〜32Dの下方に配置されている。ベルト搬送部31は、上下方向に移動可能に構成されている。
インクジェットヘッド32A〜32Dは、ベルト搬送部31により搬送される用紙にインクを吐出して画像を印刷する。インクジェットヘッド32A〜32Dは、互いに異なる色(例えば、ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー)のインクを吐出する。インクジェットヘッド32A〜32Dは、用紙の搬送方向と略直交する方向(前後方向)に複数のノズルが配列されたラインタイプである。インクジェットヘッド32A〜32Dは、それぞれ複数のブロック(図示せず)から構成されている。インクジェットヘッド32A〜32Dは、ベルト搬送部31の上方に配置されている。インクジェットヘッド32A〜32Dは、インク温度センサ37A〜37Dを備える。
インク温度センサ37A〜37Dは、インクジェットヘッド32A〜32Dに供給されるインクの温度Tiを検出し、検出結果を制御部9へと出力する。
インク循環部33A〜33Dは、インクを循環させつつ、インクジェットヘッド32A〜32Dにインクを供給する。
なお、本実施の形態において、各インクジェットヘッド32A〜32D、各インク循環部33A〜33Dは、それぞれ同様の構成であるため、符号のアルファベットの添え字を適宜省略する。
図3は、インク循環部33の概略構成図である。インク循環部33は、上流タンク41と、下流タンク42と、インクボトル43と、ポンプ44と、インク温度調整部45と、配管46a〜46dとを備える。
上流タンク41は、インクジェットヘッド32に供給するインクを貯留する。上流タンク41は、インクジェットヘッド32の吐出面(下面)よりも高い位置(上方)に配置されている。この位置関係に基づく水頭差により、上流タンク41から配管46aを介してインクジェットヘッド32へとインクが供給される。
下流タンク42は、インクジェットヘッド32による吐出動作で消費されなかったインクを貯留する。下流タンク42は、インクジェットヘッド32の吐出面よりも低い位置(下方)に配置されている。この位置関係に基づく水頭差により、インクジェットヘッド32から配管46bを介して下流タンク42へとインクが流れる。また、下流タンク42は、インクボトル43から配管46dを介して供給されるインクを貯留する。
インクボトル43は、印刷装置1で印刷に用いるインクを保持している。インクボトル43は、配管46dを介して下流タンク42にインクを供給する。インクボトル43は、下流タンク42の上方に設けられている。
ポンプ44は、下流タンク42から上流タンク41へとインクを送る。ポンプ44は、配管46cの途中に設けられている。
インク温度調整部45は、循環されるインクの温度調整を行う。インク温度調整部45は、インクを温めるインク加温器51と、インクを冷却するインク冷却器52とを備える。インク冷却器52は、ヒートシンク53と、ヒートシンク53に送風して冷却効果を高める冷却ファン54とを備える。インク加温器51およびヒートシンク53は、配管46cの途中に設けられている。
配管46aは、上流タンク41とインクジェットヘッド32とを接続する。配管46bは、インクジェットヘッド32と下流タンク42とを接続する。配管46cは、上流タンク41と下流タンク42とを接続する。配管46dは、インクボトル43と下流タンク42とを接続する。
ヘッドカバー34は、インクジェットヘッド32A〜32Dを保持するとともに、インクジェットヘッド32A〜32Dの側方(前後左右)および上方を覆うものである。ヘッドカバー34は、筐体10内に固定されている。ヘッドカバー34は、後述するように、メンテナンス機構部71のインク受け部材87とともにインクジェットヘッド32A〜32Dを囲むヘッド加温室95(図8参照)を形成可能なものである。なお、インク循環部33の配管46a,46bは、ヘッド加温室95がほぼ密閉された空間となるように、例えば、ヘッドカバー34を貫通して設けられる。
ヘッド周辺温度センサ35は、インクジェットヘッド32の周辺の温度Thを検出し、検出結果を制御部9へと出力する。ヘッド周辺温度センサ35は、ヘッドカバー34内のインクジェットヘッド32の近傍に配置されている。
昇降モータ36は、ベルト搬送部31をインクジェットヘッド32およびヘッドカバー34に対して上下方向に移動させるものである。これにより、ベルト搬送部31が、図1に示す印刷位置、図4および図5に示す待機位置、および図6に示すクリーニング位置の間で移動可能となっている。待機位置は印刷位置の下方にあり、クリーニング位置は印刷位置と待機位置との間にある。クリーニング位置においては、図6に示すように、ベルト搬送部31とインクジェットヘッド32との間に後述するメンテナンス機構部71が配置される。
上面搬送部4は、ベルト搬送部31によって搬送されてきた用紙を右方向から左方向にUターンするように搬送する。上面搬送部4は、複数対の上面搬送ローラ55と、複数対の上面搬送ローラ55を回転駆動させる複数のモータ(図示せず)とを備える。
上面搬送ローラ55は、用紙をニップして搬送する。複数対の上面搬送ローラ55は、印刷部3と排紙部5との間の通常経路RCに沿って配置されている。1対の上面搬送ローラ55は、反転経路RRの上流部に配置されている。
排紙部5は、印刷済みの用紙を排紙して積載する。排紙部5は、切替部61と、排紙ローラ62と、排紙台63と、切替部61を駆動させるソレノイド(図示せず)と、排紙ローラ62を回転駆動させるモータ(図示せず)とを備える。
切替部61は、排紙経路RDと反転経路RRとの分岐点に配置され、用紙の搬送経路を排紙経路RDと反転経路RRとの間で切り替える。排紙ローラ62は、切替部61と排紙台63との間に配置され、上面搬送部4により搬送されてきた用紙を排紙経路RDに沿って搬送して排紙台63へと排出する。排紙台63は、排紙ローラ62により搬送されてきた用紙を積載する。
反転部6は、両面印刷の際に、片面印刷済みの用紙を印刷部3に再給紙するために、片面印刷済みの用紙を反転させてレジストローラ16へと搬送する。反転部6は、反転ローラ65と、スイッチバック部66と、再給紙ローラ67と、切替ゲート68と、反転ローラ65を回転駆動させるモータ(図示せず)と、再給紙ローラ67を回転駆動させるモータ(図示せず)とを備える。
反転ローラ65は、上面搬送部4により搬送されてきた用紙をスイッチバック部66に一時的に搬入した後に搬出して、再給紙ローラ67へと搬送する。反転ローラ65は、最も下流側の上面搬送ローラ55とスイッチバック部66の搬入口との間の反転経路RR上に配置されている。スイッチバック部66は、反転ローラ65が用紙を一時的に搬入するための空間であり、排紙台63の下部に形成されている。再給紙ローラ67は、反転ローラ65とレジストローラ16との間の反転経路RR上に配置され、反転ローラ65により搬送されてきた用紙をレジストローラ16へと搬送する。切替ゲート68は、上面搬送ローラ55によって搬送されてきた用紙を反転ローラ65へとガイドする。また、切替ゲート68は、反転ローラ65によってスイッチバック部66から搬出される用紙を再給紙ローラ67へとガイドする。
装置内温度センサ7は、印刷装置1内の温度Taを検出し、検出結果を制御部9へと出力する。装置内温度センサ7は、印刷装置1内の温度を代表的に検出できる位置に配置され、例えば、筐体10内の中央付近に配置される。装置内温度センサ7は、請求項の装置内温度検出部に相当する。
メンテナンスユニット8は、インクジェットヘッド32のクリーニングを行う。また、本実施の形態のメンテナンスユニット8は、インクジェットヘッド32およびトレイ室22を加温する機能を備えている。メンテナンスユニット8は、メンテナンス機構部71と、移動モータ72とを備える。
メンテナンス機構部71は、印刷時には、図1に示す退避位置に配置される。長期待機時には、メンテナンス機構部71は、図5に示す待機位置に配置される。クリーニング時には、メンテナンス機構部71は、図6に示すクリーニング位置に配置される。また、メンテナンス機構部71は、インクジェットヘッド32の加温時には、クリーニング位置に配置され、トレイ室22の加温時には、退避位置に配置される。クリーニング位置は、請求項の第1の位置に相当し、退避位置は、請求項の第2の位置に相当する。
図7は、メンテナンス機構部71の斜視図である。図7は、メンテナンス機構部71が待機位置またはクリーニング位置に配置されているときの図である。図2、図7に示すように、メンテナンス機構部71は、クリーニング部81と、加温部82とを備える。
クリーニング部81は、インクジェットヘッド32の吐出面(下面)に付着したインク等を除去してクリーニングする。クリーニング部81は、ワイパ部85と、ワイパ駆動部86と、インク受け部材87とを備える。
ワイパ部85は、クリーニング時において、インクジェットヘッド32の吐出面をワイプして、吐出面に付着したインク等を除去するものである。ワイパ部85は、複数のワイパ88と、ワイパ88が取り付けられる取付台89とを備える。
ワイパ88は、インクジェットヘッド32の吐出面を摺動することによってインク等を除去する。ワイパ88は、弾性変形可能なゴム等の材料で構成されている。ワイパ88は、インクジェットヘッド32を構成するブロックの配列に対応して、各インクジェットヘッド32に2枚ずつの合計8枚が設けられている。
ワイパ駆動部86は、クリーニング時にワイパ88がインクジェットヘッド32の吐出面を摺動するように、ワイパ部85を前後方向に移動させる。
インク受け部材87は、クリーニングによって除去されたインク等を受けるものである。インク受け部材87は、底板91と、底板91に略垂直に設けられ、底板91の周囲を囲む側壁92とからなる。底板91の下面は側壁92の下端よりも上側にあり、加温部82が設置可能な空間が形成されている。インク受け部材87は、図8に示すように、メンテナンス機構部71がクリーニング位置に配置されたときに、ヘッドカバー34とともにインクジェットヘッド32A〜32Dを囲むヘッド加温室95を形成可能なものである。
加温部82は、熱を発生し、ヘッド加温室95およびトレイ室22を加温するためのものである。加温部82は、インク受け部材87の底板91の下面に設置されている。
移動モータ72は、メンテナンス機構部71を図1および図4に示す退避位置と図5に示す待機位置との間で移動させるものである。メンテナンス機構部71の退避位置は、待機位置の右下側であって、トレイ室22内にある。隔壁21には、メンテナンス機構部71を退避位置と待機位置との間で移動可能とするための開口部が設けられている。メンテナンス機構部71の待機位置から図6に示すクリーニング位置への移動は、昇降モータ36によりベルト搬送部31とともに行われる。昇降モータ36および移動モータ72により、請求項の駆動部が構成される。
制御部9は、印刷装置1の各部の動作を制御するものである。制御部9は、CPU、RAM、ROM、ハードディスク等を備えて構成される。制御部9は、印刷部3のウォームアップ時において、メンテナンス機構部71をクリーニング位置に配置し、インクジェットヘッド32を加温するよう昇降モータ36、移動モータ72、および加温部82を制御する。
次に、印刷装置1の動作について説明する。
印刷装置1では、印刷開始時に印刷部3がインクを加温するウォームアップ時に、インク加温器51による加温動作に加えて、メンテナンスユニット8によるインクジェットヘッド32の加温動作を行う。図9は、ウォームアップ時のメンテナンスユニット8による加温動作を説明するためのフローチャートである。
図9のフローチャートの処理は、例えば、PC(パーソナルコンピュータ)から印刷装置1に印刷データが入力されることにより開始となる。
図9のステップS10において、制御部9は、インク温度センサ37A〜37Dの検出出力に基づき、すべてのインクジェットヘッド32A〜32Dでインク温度Tiが所定のインク温度閾値Tit以上であるか否かを判断する。インク温度閾値Titは、印刷装置1におけるインクの適正温度範囲の下限の温度であり、例えば、27℃である。
すべてのインクジェットヘッド32A〜32Dでインク温度Tiがインク温度閾値Tit以上であると判断した場合(ステップS10:YES)、制御部9は、インクの加温は不要と判断して、図9のフローチャートの処理を終了する。
インクジェットヘッド32A〜32Dのうちの少なくともいずれか1つで、インク温度Tiがインク温度閾値Tit未満であると判断した場合(ステップS10:NO)、ステップS20において、制御部9は、ベルト搬送部31およびメンテナンス機構部71をクリーニング位置に配置させる。印刷開始前の待機状態では、基本的に、ベルト搬送部31およびメンテナンス機構部71は、図5に示す待機位置に配置されている。この場合、制御部9は、昇降モータ36を駆動させて、ベルト搬送部31とともにメンテナンス機構部71を待機位置から図6に示すクリーニング位置へと移動させる。これにより、図8に示すように、ヘッド加温室95が形成される。
なお、この際、制御部9は、インク温度Tiがインク温度閾値Tit未満であるインクジェットヘッド32に対応するインク循環部33によるインクの加温も開始させる。具体的には、制御部9は、対象のインク循環部33のポンプ44およびインク加温器51を駆動させて、インクを循環させつつ加温させる。
次いで、ステップS30において、制御部9は、メンテナンス機構部71の加温部82をONにする。これにより、加温部82が放熱を開始し、ヘッド加温室95の加温によるインクジェットヘッド32の加温が開始される。
次いで、ステップS40において、制御部9は、インク温度センサ37A〜37Dの検出出力に基づき、すべてのインクジェットヘッド32A〜32Dでインク温度Tiがインク温度閾値Tit以上であるか否かを判断する。制御部9は、インクジェットヘッド32A〜32Dのうちの少なくともいずれか1つで、インク温度Tiがインク温度閾値Tit未満であると判断した場合(ステップS40:NO)、ステップS40の処理を繰り返す。
なお、制御部9は、インクジェットヘッド32においてインク温度Tiがインク温度閾値Tit以上となった場合、当該インクジェットヘッド32に対応するインク循環部33によるインクの加温を停止させる。
すべてのインクジェットヘッド32A〜32Dでインク温度Tiがインク温度閾値Tit以上であると判断した場合(ステップS40:YES)、ステップS50において、制御部9は、メンテナンス機構部71の加温部82をOFFにする。これにより、加温部82による放熱が停止される。
次いで、ステップS60において、制御部9は、メンテナンス機構部71を退避位置へと移動させる。具体的には、まず、制御部9は、昇降モータ36を駆動させて、ベルト搬送部31およびメンテナンス機構部71を図5に示す待機位置へと移動させる。その後、制御部9は、移動モータ72を駆動させて、図4に示すように、メンテナンス機構部71を退避位置へと移動させる。
そして、ステップS70において、制御部9は、昇降モータ36を駆動させて、ベルト搬送部31を図1に示す印刷位置へと移動させる。
以上によりウォームアップが終了する。その後、制御部9は、印刷動作を実行させる。印刷動作において、制御部9は、インク循環部33のポンプ44によりインクを循環させつつ、インクジェットヘッド32からインクを吐出させて印刷させる。印刷動作中は、制御部9は、インクの温度が適正温度範囲内を維持するよう、インク循環部33のインク温度調整部45にインク温度の調整を行わせる。
片面印刷の場合、給紙部2から給紙された用紙は、ベルト搬送部31により搬送されつつ、インクジェットヘッド32から吐出されるインクにより印刷される。印刷された用紙は、ベルト搬送部31から上面搬送部4へと送られ、上面搬送部4により搬送される。そして、用紙は、排紙部5の切替部61によって排紙ローラ62へと導かれ、排紙台63に排紙される。
両面印刷の場合、片面印刷の場合と同様に一方の面に印刷された用紙が、切替部61によって上面搬送部4から反転部6へと導かれる。反転部6では、用紙は、切替ゲート68により反転ローラ65へと導かれ、反転ローラ65によりスイッチバック部66へと搬入される。その後、用紙は、反転ローラ65によりスイッチバック部66から搬出されるとともに、切替ゲート68により再給紙ローラ67へと導かれる。次いで、用紙は、再給紙ローラ67によりレジストローラ16へと搬送され、レジストローラ16によりベルト搬送部31へと送り出される。ここで、用紙は、反転部6によって反転されているので、未印刷面(他方の面)がインクジェットヘッド32に向けられている。インクジェットヘッド32により用紙の他方の面に印刷された後、両面印刷済みの用紙は、上面搬送部4により搬送され、排紙部5において排紙台63に排紙される。
印刷動作中は、上記のような片面印刷または両面印刷が、指定された枚数分だけ繰り返される。
印刷動作中においては、制御部9は、印刷装置1内の温度Taに応じて、メンテナンスユニット8によるトレイ室22の加温動作を行う。トレイ室22の加温動作は、トレイ室22内を加温、除湿することで、内部給紙トレイ13に積載された用紙の吸湿による変形を防止するためのものである。印刷動作中は、図1に示すように、ベルト搬送部31は印刷位置に配置され、メンテナンス機構部71は退避位置に配置されている。
図10は、印刷動作時のメンテナンスユニット8による加温動作を説明するためのフローチャートである。
図10のステップS110において、制御部9は、装置内温度センサ7の検出出力に基づき、印刷装置1内の温度Taが所定の第1の装置内温度閾値Tat1以上であるか否かを判断する。第1の装置内温度閾値Tat1は、制御部9が、印刷装置1内が高温状態であるか否かを判断するための閾値であり、例えば、27℃である。
温度Taが第1の装置内温度閾値Tat1未満であると判断した場合(ステップS110:NO)、ステップS120において、制御部9は、印刷が終了したか否かを判断する。印刷が終了していないと判断した場合(ステップS120:NO)、制御部9は、ステップS110の処理に戻る。
印刷が終了したと判断した場合(ステップS120:YES)、ステップS130において、制御部9は、ベルト搬送部31およびメンテナンス機構部71を図5に示す待機位置へと移動させる。具体的には、まず、制御部9は、昇降モータ36を駆動させて、図4に示すように、ベルト搬送部31を待機位置へと移動させる。その後、制御部9は、移動モータ72を駆動させて、図5に示すように、メンテナンス機構部71を待機位置へと移動させる。
温度Taが第1の装置内温度閾値Tat1以上であると判断した場合(ステップS110:YES)、ステップS140において、制御部9は、トレイ室内温度センサ17の検出出力に基づき、トレイ室22内の温度Tsが所定のトレイ室内温度閾値Tst以上であるか否かを判断する。トレイ室内温度閾値Tstは、制御部9が、トレイ室22の加温を行うか否かを判断するための閾値であり、例えば、32℃である。温度Tsがトレイ室内温度閾値Tst以上であると判断した場合(ステップS140:YES)、制御部9は、ステップS120の処理に進む。
温度Tsがトレイ室内温度閾値Tst未満であると判断した場合(ステップS140:NO)、ステップS150において、制御部9は、メンテナンス機構部71の加温部82をONにする。これにより、加温部82が放熱を開始し、トレイ室22の加温が開始される。
次いで、ステップS160において、制御部9は、トレイ室内温度センサ17の検出出力に基づき、温度Tsがトレイ室内温度閾値Tst以上であるか否かを判断する。温度Tsがトレイ室内温度閾値Tst未満であると判断した場合(ステップS160:NO)、制御部9は、ステップS160の処理を繰り返す。
温度Tsがトレイ室内温度閾値Tst以上であると判断した場合(ステップS160:YES)、制御部9は、ステップS170において、制御部9は、メンテナンス機構部71の加温部82をOFFにする。これにより、加温部82による放熱が停止される。その後、制御部9は、ステップS120の処理に進む。
印刷動作が終了すると、印刷装置1は、待機状態となる。待機状態においては、ベルト搬送部31およびメンテナンス機構部71は、図5に示す待機位置に配置される。
待機状態の印刷装置1では、印刷装置1内の温度Taに応じて、メンテナンスユニット8によるインクジェットヘッド32またはトレイ室22の加温動作(温度調整)を行う。図11は、待機状態の印刷装置1におけるメンテナンスユニット8による加温動作を説明するためのフローチャートである。
図11のステップS210において、制御部9は、待機状態を終了するか否かを判断する。具体的には、制御部9は、PCから印刷装置1に印刷データが入力されること等により印刷ジョブが発生すると、待機状態を終了すると判断する。待機状態を終了すると判断した場合(ステップS210:YES)、制御部9は、前述したウォームアップの動作を開始して待機状態を終了させる。
待機状態を終了しないと判断した場合(ステップS210:NO)、ステップS220において、制御部9は、装置内温度センサ7の検出出力に基づき、印刷装置1内の温度Taが第1の装置内温度閾値Tat1以上であるか否かを判断する。
温度Taが第1の装置内温度閾値Tat1以上であると判断した場合(ステップS220:YES)、ステップS230において、制御部9は、トレイ室22の加温動作を実行する制御を行う。その後、制御部9は、ステップS210の処理に戻る。ステップS230におけるトレイ室22の加温動作については後述する。
温度Taが第1の装置内温度閾値Tat1未満であると判断した場合(ステップS220:NO)、ステップS240において、制御部9は、装置内温度センサ7の検出出力に基づき、温度Taが所定の第2の装置内温度閾値Tat2以上であるか否かを判断する。第2の装置内温度閾値Tat2は、制御部9が、印刷装置1内が低温状態であるか否かを判断するための閾値であり、例えば、10℃である。温度Taが第2の装置内温度閾値Tat2以上であると判断した場合(ステップS240:YES)、制御部9は、ステップS210の処理に戻る。
温度Taが第2の装置内温度閾値Tat2未満であると判断した場合(ステップS240:NO)、ステップS250において、制御部9は、インクジェットヘッド32の加温動作を実行する制御を行う。その後、制御部9は、ステップS210の処理に戻る。ステップS250におけるインクジェットヘッド32の加温動作については後述する。
なお、制御部9は、ステップS230におけるトレイ室22の加温動作中、およびステップS250におけるインクジェットヘッド32の加温動作中において、印刷ジョブが発生すると、その時点でウォームアップの動作へと移行させる。
次に、上述した図11のステップS230におけるトレイ室22の加温動作について、図12のフローチャートを参照して説明する。
図12のステップS310において、制御部9は、トレイ室内温度センサ17の検出出力に基づき、トレイ室22内の温度Tsが所定のトレイ室内温度閾値Tst以上であるか否かを判断する。温度Tsがトレイ室内温度閾値Tst以上であると判断した場合(ステップS310:YES)、制御部9は、トレイ室22の加温は不要と判断して、図12のフローチャートの処理を終了する。
温度Tsがトレイ室内温度閾値Tst未満であると判断した場合(ステップS310:NO)、ステップS320において、制御部9は、移動モータ72を駆動させて、図4に示すように、メンテナンス機構部71を退避位置へと移動させる。
その後のステップS330〜S350の処理は、前述した図10のステップS150〜S170の処理と同様である。
ステップS350の後、ステップS360において、制御部9は、移動モータ72を駆動させて、図5に示すように、メンテナンス機構部71を待機位置へと移動させる。以上により、トレイ室22の加温動作が終了する。
次に、上述した図11のステップS250におけるインクジェットヘッド32の加温動作について、図13のフローチャートを参照して説明する。
図13のステップS410において、制御部9は、昇降モータ36を駆動させて、ベルト搬送部31とともにメンテナンス機構部71を待機位置から図6に示すクリーニング位置へと移動させる。これにより、ヘッド加温室95が形成される。
次いで、ステップS420において、制御部9は、メンテナンス機構部71の加温部82をONにする。これにより、加温部82が放熱を開始し、ヘッド加温室95(インクジェットヘッド32)の加温が開始される。
次いで、ステップS430において、制御部9は、ヘッド周辺温度センサ35の検出出力に基づき、ヘッド加温室95内のインクジェットヘッド32の周辺の温度Thが、所定のヘッド周辺温度閾値Tht以上であるか否かを判断する。ヘッド周辺温度閾値Thtは、制御部9が、インクジェットヘッド32の周辺が低温状態であるか否かを判断するための閾値であり、例えば、15℃である。温度Thがヘッド周辺温度閾値Tht未満であると判断した場合(ステップS430:NO)、制御部9は、ステップS430の処理を繰り返す。
温度Thがヘッド周辺温度閾値Tht以上であると判断した場合(ステップS430:YES)、ステップS440において、制御部9は、メンテナンス機構部71の加温部82をOFFにする。これにより、加温部82による放熱が停止される。
次いで、ステップS450において、制御部9は、制御部9は、移動モータ72を駆動させて、図5に示すように、メンテナンス機構部71を待機位置へと移動させる。以上により、インクジェットヘッド32の加温動作が終了する。
以上説明したように、本実施の形態の印刷装置1では、メンテナンス機構部71が加温部82を有する。そして、制御部9は、印刷部3のウォームアップ時において、メンテナンス機構部71をクリーニング位置に配置させ、加温部82によりインクジェットヘッド32を加温させる。これにより、ウォームアップの時間を短縮できる。また、メンテナンス機構部71に加温部82を設けることで、装置の大型化は回避できる。このように、印刷装置1では、装置の大型化を回避しつつ、ウォームアップの時間を回避できる。
また、印刷装置1では、印刷部3がヘッドカバー34を有する。ヘッドカバー34は、メンテナンス機構部71のインク受け部材87とともに、加温部82により加温可能なヘッド加温室95を形成する。これにより、加温部82がインクジェットヘッド32を効率的に加温できる。
また、制御部9は、待機状態において、装置内温度センサ7により検出された印刷装置1内の温度Taに応じて、インクジェットヘッド32(ヘッド加温室95)またはトレイ室22内の加温動作を行うよう各部を制御する。また、制御部9は、印刷動作中においては、印刷装置1内が高温状態のとき、トレイ室22内の加温動作を行うよう各部を制御する。このように、印刷装置1では、動作状態および印刷装置1内の温度Taに応じて、インクジェットヘッド32(ヘッド加温室95)またはトレイ室22内の加温動作を行う。これにより、印刷装置1は、インクの温度を維持しつつ、内部給紙トレイ13上の用紙の吸湿による変形を抑制できる。
また、制御部9は、トレイ室22内の加温動作において、トレイ室内温度センサ17で検出された温度Tsに基づき、加温部82を制御する。これにより、内部給紙トレイ13上の用紙の吸湿による変形を効果的に抑制できる。
なお、トレイ室22内に、トレイ室内温度センサ17に加えて、トレイ室22内の湿度を検出する湿度センサを設けてもよい。この場合、制御部9は、トレイ室内温度センサ17で検出された温度Ts、および湿度センサにより検出された湿度の少なくともいずれか一方に基づき、加温部82を制御することができる。このようにしても、内部給紙トレイ13上の用紙の吸湿による変形を効果的に抑制できる。この場合、トレイ室内温度センサ17および湿度センサの少なくともいずれか一方により、請求項の媒体収納室内条件検出部が構成される。
本実施の形態では、インク循環型のインクジェット印刷装置について説明したが、インクを循環させないインクジェット印刷装置に対しても本発明は適用できる。
本発明は上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。