JP2013041705A - 非水電解質二次電池用電極、およびその製造方法 - Google Patents

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栄子 神田
Keiichi Kurata
桂一 倉田
Masahiro Wada
正弘 和田
Masahiro Hagiwara
正弘 萩原
Osamu Sakatani
修 坂谷
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Abstract

【課題】 非水電解質二次電池における高温または低温でのサイクル特性試験後の劣化を抑制することを課題とする。
【解決手段】 三次元網目構造の金属骨格を有し、前記金属骨格間に空孔を有するアルミニウム多孔質焼結体を備え、前記アルミニウム多孔質焼結体の空孔内に、活物質と結合剤との混合体を含有させた後、カーボンナノファイバーを含有させたことを特徴とする、非水電解質二次電池用電極、およびこの非水電解質二次電池用電極を含む非水電解質二次電池である。
【選択図】 図1

Description

本発明は、特に、リチウムイオン二次電池やリチウムイオンポリマー二次電池に適したアルミニウム多孔質焼結体を用いた非水電解質二次電池用電極、これを用いた非水電解質二次電池、および非水電解質二次電池用電極の製造方法に関するものである。
近年、非水電解質二次電池、中でもリチウムイオン電池やリチウムイオンポリマー電池が、電気自動車、ハイブリッド型自動車等にも用いられるようになり、そのような用途拡大に伴って、高寿命化、すわなち、サイクル特性の向上が要求されている。
このサイクル特性の向上を目的として、(a)100nm未満の直径を有する微細な繊維状炭素、ならびに(b)100nm以上の直径を有する繊維状炭素および/または(c)非繊維状導電性炭素、を導電剤として含有するリチウムイオン電池用電極が、報告されている(特許文献1)。
上記リチウムイオン電池用電極は、導電剤が(a)直径が100nm未満の微細な繊維状炭素である場合に、繊維状炭素が凝集する傾向が大きくなるため(特許文献1の第0005段落)、(a)直径が100nm未満の微細な繊維状炭素と、(b)100nm以上の直径を有する繊維状炭素とを組み合わせ、(a)直径が100nm未満の微細な繊維状炭素を均一に分散させている(特許文献1の第0077段落)。
しかしながら、上記リチウムイオン電池用電極を使用したリチウムイオン電池は、高温および低温でのサイクル特性試験での劣化が早いという問題がある。
一方、アルミニウム多孔質焼結体と、前記アルミニウム多孔質焼結体の空孔内に活物質および結合剤を含む二次電池用電極であって、前記アルミニウム多孔質焼結体が、三次元網目構造の金属骨格を有し、前記金属骨格間に空孔を有し、かつ前記金属骨格にAl−Ti化合物が分散している非水電解質二次電池用電極が報告されている(特許文献2)。
しかしながら、上記非水電解質二次電池用電極を用いた非水電解質二次電池では、高温および低温でのサイクル特性に改良の余地があることがわかった。
特開2010―238575号公報 特開2010−272425号公報
本発明は、非水電解質二次電池における高温または低温でのサイクル特性試験後の劣化を抑制することを課題とする。本発明者らは、アルミニウム多孔質焼結体の空孔内に、活物質と結合剤の混合体を含有させた後、カーボンナノファイバーを含有させることにより、非水電解質二次電池における高温または低温でのサイクル特性を非常に高くすることができることを発見し、本発明に至った。
本発明は、以下に示す構成によって上記課題を解決した非水電解質二次電池用電極、およびその製造方法に関する。
〔1〕三次元網目構造の金属骨格を有し、前記金属骨格間に空孔を有するアルミニウム多孔質焼結体を備え、前記アルミニウム多孔質焼結体の空孔内に、活物質と結合剤との混合体を含有させた後、カーボンナノファイバーを含有させたことを特徴とする、非水電解質二次電池用電極。
〔2〕(A)三次元網目構造の金属骨格を有し、前記金属骨格間に空孔を有するアルミニウム多孔質焼結体の空孔内に、活物質と結合剤とを含有するスラリーを充填し、乾燥する工程、(B)さらに、アルミニウム多孔質焼結体の空孔内に、カーボンナノファイバーを含有する分散液を充填し、乾燥する工程、(C)アルミニウム多孔質焼結体を圧延する工程、を含むことを特徴とする、非水電解質二次電池用電極の製造方法。
〔3〕上記〔1〕記載の非水電解質二次電池用電極を含む、非水電解質二次電池。
本発明〔1〕によれば、高温および低温でのサイクル特性が良好な非水電解質二次電池を、提供することができる。
また、本発明〔2〕によれば、高温および低温でのサイクル特性が良好な非水電解質二次電池を製造可能な電極を、簡便に製造することができる。
本発明の非水電解質二次電池用電極の断面のイメージ図である。 実施例で作製したアルミニウム多孔質焼結体の走査電子顕微鏡写真である。 実施例で作製した試験セルの構成の模式図である。
以下、本発明を実施形態に基づいて具体的に説明する。なお%は特に示さない限り、また数値固有の場合を除いて質量基準の%である。
〔非水電解質二次電池用電極〕
本発明の非水電解質二次電池用電極(以下、電極という)は、三次元網目構造の金属骨格を有し、前記金属骨格間に空孔を有するアルミニウム多孔質焼結体を備え、前記アルミニウム多孔質焼結体の空孔内に、活物質と結合剤との混合体を含有させた後、カーボンナノファイバーを含有させたことを特徴とし、特に正極に適している。図1(C)に、本発明の非水電解質二次電池用電極の断面のイメージ図を示す。まず、図1(A)のように、アルミニウム多孔質焼結体1の空孔2内に、活物質と結合剤とを含有するスラリーを充填した後、乾燥し、混合体3を形成する。このとき、混合体3には、スラリーに含まれる有機溶媒の揮発により、クラック5や空孔(図示せず)が形成される。次に、図1(B)のように、混合体3のクラック5と空孔、およびアルミニウム多孔質焼結体の金属骨格と混合体の間に空間に、カーボンナノファイバーを含有させる。この後、アルミニウム多孔質焼結体1を圧延して、アルミニウム多孔質焼結体1の空孔2、および混合体2のクラック5と空孔を減少させ、図1(C)のような電極を製造することができる。
《アルミニウム多孔質焼結体》
アルミニウム多孔質焼結体は、カーボンナノファイバーとの相乗効果で活物質と良好な導電パスを形成する。図2に、実施例で作製したアルミニウム多孔質焼結体の走査電子顕微鏡写真を示す。図2からわかるように、アルミニウム多孔質焼結体は、三次元網目構造の金属骨格を有し、前記金属骨格間に空孔を有する。
アルミニウム多孔質焼結体の金属骨格は、所望のアルミニウム多孔質焼結体強度、空孔径および空孔率を得るために、金属骨格径(金属骨格を形成する各金属骨の最も細い部分の太さ)が5〜100μmであることが好ましい。また、この金属骨格は、孔径0.1〜3μmの骨格内空孔を有するものが好ましい。ここで、金属骨格径および骨格内空孔の空孔径は、骨格表面および骨格断面の走査電子顕微鏡写真により測定する。
また、骨格間空孔は、活物質、結合剤等を含ませやすくする観点、および電解質との良好な導電性確保の観点から、連通していることが好ましい。
骨格間空孔の空孔径は、所望量の活物質を充填させる観点から、20〜500μmであることが好ましい。なお、圧延後には、骨格間空孔の空孔径は、アルミニウム多孔質焼結体の長手方向が長い楕円形状となり、長手方向の空孔径は、30〜600μmであると好ましく、厚さ方向の空孔径は、10〜200μmであると好ましい。ここで、空孔径は、試料の表面および断面の走査電子顕微鏡写真により測定する。
アルミニウム多孔質焼結体の全体気孔率は、所望量の活物質を充填させる観点から、60〜99%であることが好ましく、80〜97%であると、より好ましい。なお、圧延後の空孔率は、10〜60%であると好ましく、15〜40%であると、より好ましい。ここで、気孔率は、アルミニウム多孔質焼結体の寸法、質量、および密度から算出する。
また、金属骨格は、平均の結晶粒径が、10〜100μmのアルミニウム結晶粒で形成されると好ましく、15〜60μmで形成されるとより好ましい。この結晶粒に起因する粒界段差によって形成される凹凸が存在することにより、アンカー効果が働いて、カーボンナノファイバー、活物質、および結合剤との密着性が優れ、折り曲げても活物質の保持に優れた高信頼性の非水電解質二次電池用電極が得られるが、その凹凸の数量および寸法はアルミニウム結晶粒径の影響を受け、アルミニウム結晶粒径が小さすぎると、凹凸の寸法が小さくなって十分なアンカー効果が発現しなくなる。他方、金属骨格のアルミニウム結晶粒の結晶粒径が、100μmより大きいと、活物質の保持性が低下し、かつアルミニウム多孔質焼結体の強度が低下してしまう。ここで、結晶粒径は、光学顕微鏡写真または走査型電子顕微鏡写真から線インターセプト法で測定する。なお、アルミニウム結晶粒は、個数で70%以上の結晶粒径が15〜60μmの範囲内にあることが、さらに好ましい。
アルミニウム多孔質焼結体は、金属骨格にAl−Ti化合物が分散していると、好ましい。金属骨格のAl−Ti化合物は、アルミニウム多孔質焼結体を製造するときに使用される焼結助剤に含まれるチタンに由来する。チタンは、アルミニウム多孔質焼結体を非加圧焼結で製造することを可能にし、Al−Ti化合物を形成することにより、アルミニウム多孔質焼結体を高強度、特に高引張り強度にする。
アルミニウム多孔質体が、アルミニウムとチタンの合計100質量部に対して、チタンを0.1〜20質量部含むことが好ましい。チタンが、0.1質量部未満では、焼結性の良好なアルミニウム多孔質焼結体が得られず、20質量部を超えると、焼結時に、アルミニウム混合原料粉末中で、チタンを含む焼結助剤粉末同士が接点を持つようになり、アルミニウムとチタンの反応熱を制御できなくなるとともに所望の多孔質焼結体が得られないようになる。ここで、アルミニウムとチタンの定量分析は、ICP法で行う。
アルミニウム多孔質焼結体の厚さは、非水電解質二次電池のエネルギー密度向上の観点から、圧延前で0.05〜5mmであると好ましく、0.1〜3mmであると、より好ましい。アルミニウム多孔質焼結体の厚さは、圧延後では0.03〜3mmであると好ましく、0.08〜2.5mmであると、より好ましい。
アルミニウム多孔質焼結体の幅は、一般的には、非水電解質二次電池の形状から決定されるが、複数個分の幅でアルミニウム多孔質焼結体を作製した後、活物質を含有し、圧延した後、スリット等により1個分の幅とすることもできる。
アルミニウム多孔質焼結体は、通常、シート状あるいはロール状で作製されるので、アルミニウム多孔質焼結体の長さは、通常、多数個分の長さで作製され、活物質を含有し、圧延した後、カット等により1個分の長さとされる。
また、アルミニウム多孔質焼結体は、空孔が直線長さ1cm当たりに20個以上形成されることにより、アルミニウム多孔質焼結体の全体気孔率が60〜99%であると、非水電解質二次電池用電極のエネルギー密度向上、または高出力化の観点から好ましく、リチウムイオン二次電池、リチウムイオンポリマー電池等の非水電解質二次電池の電極用集電体として好適に用いられる。
《正極活物質》
正極活物質としては、非水電解質二次電池用正極活物質として使用されるものが挙げられ、リチウムイオンを吸蔵・放出することができるものであれば、特に限定されるものではない。従来、一般的に用いられているものであればよく、具体的には、コバルト、ニッケル、マンガン、チタン、バナジウム、鉄のいずれか一種以上と、リチウムとを含む複合酸化物もしくは塩からなるものが好ましい。これにより、正極活物質が電解質に溶け出さず、大容量の電池とすることができる。
上記正極活物質として、より具体的には、LiCoO等のLi・Co系複合酸化物、LiNiO等のLi・Ni系複合酸化物、スピネルLiMn等のLi・Mn系複合酸化物、LiFeO等のLi・Fe系複合酸化物、LiFePO等の遷移金属とリチウムのリン酸化合物や硫酸化合物等が挙げられる。この他にも、V、MnO、TiS、MoS、MoO等の遷移金属酸化物や硫化物、PbO、AgO、NiOOH等も用いることができる。この活物質は、平均粒子径が2〜20μmの粉末であると、非水電解質二次電池の高出力化の観点から好ましい。ここで、平均粒子径は、レーザー回折法によって測定する。
《負極活物質》
負極活物質としては、負極電位が金属リチウムの電位(Li/Li)に対して300mV以上で、リチウムイオンを吸蔵・放出することができるものであれば、特に限定されるものではない。具体的には、LiTi12等のリチウムチタン含有複合酸化物、LiTiO、TiO等のチタン系酸化物、Li2.6Co0.4等のリチウムコバルト含有複合窒化物や、MSi、LSn(式中、MはSiを除く1種以上の金属元素を、LはSnを除く1種以上の金属元素を表し、MおよびLは、Cu、Mg、Fe、Co、Niが好ましく、xおよびyは1〜3である)等で表されるSiやSnの合金、硫化鉄などが挙げられる。これらの中で特に電圧平坦性、耐久性に優れていることから、リチウムチタン含有複合酸化物が好ましい。この活物質は、平均粒子径が2〜20μmの粉末であると、非水電解質二次電池の高出力化の観点から好ましい。
活物質は、アルミニウム多孔質焼結体100質量部に対して、50〜800質量部含むと、非水電解質二次電池のエネルギー密度向上の観点から好ましく、200〜60質量部含むとより好ましい。
《結合剤》
結合剤としては、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、SBR、ポリイミド等が挙げられるが、これらに限定されない。
結合剤は、アルミニウム多孔質焼結体100質量部に対して、1〜50質量部含むと、アルミニウム多孔質焼結体の空孔内に活物質を適切に保持し、活物質の欠落を防止する観点から好ましく、2〜30質量部含むとより好ましい。
《混合体》
混合体は、活物質と結合剤とを含有し、また、本発明の目的を損なわない範囲で、混合体は、導電助剤等を含有してもよい。導電助剤は、非水電解質二次電池の高出力化を可能とし、導電助剤としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、天然黒鉛、人造黒鉛等の非繊維状導電性炭素を挙げることができるが、これらに限定されない。なお、導電助剤の種類により、高温および低温でのサイクル特性が低下する場合があるので、特に注意が必要である。高温および低温でのサイクル特性が低下する導電助剤としては、平均繊維径が150nmで、比表面積が13m/gの昭和電工製気相法炭素繊維(商品名:VGCF(登録商標))が挙げられ、導電パスの保持性が悪いために高温および低温でのサイクル特性が低下するものと考えられる。
アルミニウム多孔質焼結体100質量部に対して、導電助剤を1〜50質量部含むと、非水電解質二次電池の高出力化、および活物質の欠落を防止する観点から好ましく、2〜30質量部含むとより好ましい。
なお、本発明においては、アルミニウム多孔質焼結体の空孔内に、混合体が含まれているが、集電体であるアルミニウム多孔質焼結体とセパレーター間にも、混合体が含まれ得る。本発明においては、非水電解質二次電池内の混合体:100質量部に対して、アルミニウム多孔質焼結体の空孔内に含まれる混合体が60〜99質量部であると、非水電解質二次電池の高エネルギー密度の向上、高出力化の観点から好ましい。
《カーボンナノファイバー》
カーボンナノファイバーは、平均繊維径が130nm以下の繊維状炭素であり、カーボンナノファイバーは、活物質の導電助剤として活物質とアルミニウム多孔質焼結体間の電子伝導性を向上させ、非水電解質二次電池の放電容量を高くすることができ、さらに、非水電解質二次電池の高温(例えば、80℃)や低温(例えば、−20℃)でのサイクル特性を向上させることができる。また、カーボンナノファイバー添加による電子伝導性向上に伴い、活物質の充放電反応や充放電電流のジュール熱等に起因して発する熱を、効率よくアルミニウム多孔質焼結体に逃がすことができ、非水電解質二次電池の発熱抑制効果を高くすることができる。このように、カーボンナノファイバーを用いることにより、サイクル寿命や安全性の高い非水電解質二次電池を得ることができる。なお、カーボンナノファイバーの少なくとも一部が、活物質の表面を被覆していると、活物質と良好な導電パスを形成することができるので、好ましい。本発明の電極は、アルミニウム多孔質焼結体の空孔内に、活物質と結合剤との混合体を含有させた後、カーボンナノファイバーを含有させることにより、混合体のクラックと空孔、およびアルミニウム多孔質焼結体の金属骨格と混合体の間に空間にカーボンナノファイバーを含有させることができ、活物質とアルミニウム多孔質焼結体間の電子伝導性を向上させることが可能となる。
カーボンナノファイバーは、平均繊維径が1〜100nmであり、かつアスペクト比が5以上であると、活物質表面を均一に被覆すると共に、活物質と相互に十分な接触点を形成することができるため、好ましく、平均繊維径が15〜80nmであり、かつアスペクト比が5〜40であると、より好ましい。カーボンナノファイバーの比表面積は、50〜400m/gであると充填性がよく、180〜280m/gであるとより好ましい。また、カーボンナノファイバーは、X線回折測定によるグラファイト層の[002]面の面間隔が0.35nm以下であると好ましい。面間隔が0.35nm以下であると、カーボンナノファイバーの結晶性が高いため、電気抵抗が小さく高導電の材料を得ることができる。カーボンナノファイバーの圧密体の体積抵抗率が1.0Ω・cm以下であると、良好な導電性を発揮することができる。
ここで、平均繊維径は、透過型電子顕微鏡写真(倍率10万倍)を観察して求めた質量平均粒子径である(n=50)。アスペクト比は、透過型電子顕微鏡写真(倍率10万倍)を観察して、(長軸平均粒子径/短軸平均粒子径)を計算して求める(n=50)。比表面積は、BET法により測定する。X線回折は、CuKα線により測定する。カーボンナノファイバーの圧密体の体積抵抗率は、三菱化学製ロレスタHP及びダイアインスツルメンツ製粉体測定ユニットを用いて、100kgf/cmで加圧し測定する。なお、上記カーボンナノファイバーは、一酸化炭素を主な原料ガスとした気相成長法によって製造されたカーボンナノファイバーを用いると、本発明の効果をより発揮することができる。一酸化炭素を主な原料ガスとした気相成長法によって製造されたカーボンナノファイバーは、トルエン着色透過率:95%以上のものが得られ、表面コート性の観点から好ましい。ここで、トルエン着色透過率が高いとは、カーボンナノファイバーの有機不純物の含有量が低いことであり、高温サイクル試験中に非水電解質にカーボンナノファイバーの有機不純物が溶け出すコンタミネーションを抑制する。ここで、トルエン着色透過率は、JIS K 6218により測定する。
カーボンナノファイバーは、アルミニウム多孔質焼結体100質量部に対して、1〜100質量部含むと、非水電解質二次電池の高出力化、および活物質の欠落を防止する観点から好ましく、7〜70質量部含むとより好ましい。
《電極を使用する電解質》
電極を使用するときの非水電解質としては、液状電解質(電解液)、固体電解質、高分子ゲル電解質のいずれであってもよい。非水電解質は、好ましい一例を以下に示すが、通常の二次電池で用いられるものであればよく、特に限定されない。
電解液としては、LiBOB(リチウムビスオキサイドボレート)、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiTaF、LiAlCl、Li10Cl10等の無機酸陰イオン塩、LiCFSO、Li(CFSON、Li(CSON等の有機酸陰イオン塩の中から選ばれる、少なくとも1種の電解質塩を含み、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)等の環状カーボネート類;ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート等の鎖状カーボネート類;テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジブトキシエタン等のエーテル類;γ−ブチロラクトン等のラクトン類;アセトニトリル等のニトリル類;プロピオン酸メチル等のエステル類;ジメチルホルムアミド等のアミド類;酢酸メチル、蟻酸メチルの中から選ばれる少なくとも1種以上を混合した、非プロトン性溶媒等の有機溶媒(可塑剤)を用いたもの等が使用できる。
固体電解質としては、イオン伝導性を有する高分子から構成されるものであれば特に限定されない。例えば、無機系の固体電解質であれば、チオリシコンやLiSiO−LiBOやLiX−LiO−M(X=I,Br,Cl;M=B,Si,P等、mおよびnは1〜5の数である)等のリチウムイオン導電性ガラス等が挙げられ、高分子系の固体電解質であれば、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、これらの共重合体等が挙げられる。ポリアルキレンオキシド系高分子は、上述した電解質塩をよく溶解し、また、架橋構造を形成することによって、優れた機械的強度が発現する。
高分子ゲル電解質としては、特に限定されないが、イオン伝導性を有する電解質用高分子に電解液を含んだもの、イオン伝導性を持たない電解質用高分子の骨格中に同様の電解液を保持させたもの等が挙げられる。
高分子ゲル電解質に含まれる電解液としては、上述したものと同様である。また、イオン伝導性を有する電解質用高分子としては、上述した固体電解質等が用いられる。
イオン伝導性を持たない電解質用高分子としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン(PVdF−HFP)共重合体、ポリビニルクロライド(PVC)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のゲル化ポリマーを形成するモノマーが使用できる。ただし、これらに限定されるわけではない。なお、PAN、PMMA等は、どちらかといえばイオン伝導性がほとんどない部類に入るものであるため、上記イオン伝導性を有する電解質用高分子とすることもできるが、ここでは高分子ゲル電解質に用いられるイオン伝導性を持たない電解質用高分子として例示した。
高分子ゲル電解質中の電解質用高分子(ホストポリマー)と電解液との比率(質量比)は、使用目的等に応じて決定すればよいが、2:98〜90:10の範囲である。これにより、電極の外周部からの電解質の染み出しについても、絶縁層や絶縁処理部を設けることで効果的にシールすることができる。
〔非水電解質二次電池用電極の製造方法〕
本発明の非水電解質二次電池用電極の製造方法は、(A)三次元網目構造の金属骨格を有し、前記金属骨格間に空孔を有するアルミニウム多孔質焼結体の空孔内に、活物質と結合剤とを含有するスラリーを充填し、乾燥する工程、(B)さらに、アルミニウム多孔質焼結体の空孔内に、カーボンナノファイバーを含有する分散液を充填し、乾燥する工程、(C)アルミニウム多孔質焼結体を圧延する工程、を含むことを特徴とする。
《アルミニウム多孔質焼結体の製造方法》
以下、アルミニウム多孔質焼結体の製造方法を、焼結助剤にチタンを使用する場合について詳細に説明する。
まず、アルミニウム粉末に、チタンおよび/または水素化チタンを混合して、アルミニウム混合原料粉末とするアルミニウム混合原料粉末を調製する(アルミニウム混合原料粉末調製工程)。このアルミニウム混合原料粉末に、水溶性樹脂結合剤と水と可塑剤とを混合して、粘性組成物を調製する(粘性組成物調製工程)。この粘性組成物に気泡を混合させた状態で乾燥させて、焼結前成形体とし(焼結前工程)、焼結前成形体を非酸化性雰囲気下、Tm−10(℃)≦加熱焼成温度(T)≦685(℃)で、加熱焼成する(焼結工程)。ここで、Tm(℃)は、アルミニウム混合原料粉末が溶解を開始する温度である。
アルミニウム混合原料粉末調製工程では、アルミニウム粉末として平均粒子径2〜200μmのものを用いる。ここで、平均粒子径が小さくなると、粘性組成物が所望の形状に成形可能な程度に粘性を有し、かつ焼結前成形体がハンドリング強度を有するようにするために、アルミニウム粉末に対して水溶性樹脂バインダーを多量に加えなければならなくなる。しかしながら、水溶性樹脂バインダーを多量に加えると、焼結前成形体を加熱焼成する際に、アルミニウム中に残存する炭素量が増加し、焼結反応が阻害されてしまう。他方、アルミニウム粉末の粒子径が大きすぎると、アルミニウム多孔質焼結体の強度が低下してしまう。したがって、アルミニウム粉末としては、上述のように平均粒子径2〜200μmの範囲内、好ましくは4〜100μm、より好ましくは4〜60μm、さらに好ましくは7〜40μmの範囲内のものが用いられる。ここで、平均粒子径は、レーザー回折法で測定される。
このアルミニウム粉末に、チタンを含む焼結助剤、具体的には、チタンおよび/または水素化チタンを混合する。これにより、アルミニウム粉末にチタンを混合して、焼結前成形体をTm−10(℃)≦加熱焼成温度T≦685(℃)で加熱焼成するときに、液滴の塊を生成させることのないアルミニウムの非加圧焼結が可能となる。また、水素化チタン(TiH)は、そのチタン含有量が47.88(チタンの分子量)/(47.88+1(水素の分子量)×2)で95質量%以上であり、470〜530℃にて脱水素化するため、上述の加熱焼成のときに熱分解してチタンとなる。よって、水素化チタンを混合した場合にも液滴の塊を生成させることのないアルミニウムの非加圧焼結が可能となる。なお、焼結助剤には、チタンや水素化チタン以外の焼結助剤粉末を用いてもよく、チタンを含む焼結助剤粉末を用いればよい。
チタンを含む焼結助剤は、アルミニウムとチタンの合計100質量部に対して、チタンを0.1〜20質量部含むことが好ましい。
ここで、チタンおよび/または水素化チタンの平均粒子径をr(μm)、チタンおよび/または水素化チタンの配合比をW(質量%)としたときに、1(μm)≦r≦30(μm)、0.1(質量%)≦W≦20(質量%)とし、かつ0.1≦W/r≦2であると、好ましい。すなわち、平均粒子径:4μmの水素化チタン粉の場合には、0.1≦W/4≦2であることから、配合比:Wは0.4〜8質量%が好ましい。また、平均粒子径:20μmのチタン粉の場合には、0.1≦W/20≦2の条件からは、配合比:Wは2〜40質量%となるが、配合比:Wは、0.1(質量%)≦W≦20(質量%)の条件を付加して、2〜20質量%が好ましい。
水素化チタンの平均粒子径は、0.1(μm)≦r≦30(μm)が好ましいが、より好ましくは4(μm)≦r≦20(μm)である。水素化チタンの平均粒径が、0.1μmより小さいと、自然発火する恐れがあり、30μmを超えると、焼結により生成されるAl−Ti化合物が被覆されたチタン粒子から、Al−Ti化合物相が剥離しやすくなり、焼結体に所望の強さが得られなくなるためである。
また、0.1(質量%)≦W≦20(質量%)が好ましいのは、焼結助剤粉末の配合比Wが20質量%を超えると、アルミニウム混合原料粉末中で焼結助剤粉末同士が接点を持つようになり、アルミニウムとチタンの反応熱を制御できなくなるとともに、所望の多孔質焼結体が得られないようになるからである。
次に、粘性組成物調製工程では、上記アルミニウム混合原料粉末に、水溶性樹脂バインダーとして、ポリビニルアルコール、メチルセルロースおよびエチルセルロースからなる群から選択される少なくとも一種を、可塑剤として、ポリエチレングリコール、グリセリンおよびフタル酸ジ−n−ブチルからなる群から選択される少なくとも一種を、それぞれ加えるとともに、蒸留水と、界面活性剤としてのアルキルベタインとを、それぞれ加える。
このように、水溶性バインダーとして、ポリビニルアルコール、メチルセルロースやエチルセルロースを用いると、その添加量が比較的少量で足りる。よって、水溶性樹脂結合剤の添加量は、アルミニウム混合原料粉末の質量100質量部に対して、0.5〜7質量部である。アルミニウム混合原料粉末の質量100質量部に対して、7質量部より多いと、加熱焼成する前の焼結前成形体に残留する炭素量の増加により焼結反応が阻害され、0.5質量部未満であると、焼結前成形体のハンドリング強度が確保されないためである。
また、アルキルベタインは、アルミニウム混合原料粉末の質量100質量部に対して、0.02〜3質量部が添加される。アルミニウム混合原料粉末の質量100質量部に対して、0.02質量部以上であると、後述の非水溶性炭化水素系有機溶剤の混合の際に気泡が効果的に生成され、3質量部以下であると、焼結前成形体に残存する炭素量の増加による焼結反応の阻害が防止される。
そして、これらを混練した後に、さらに炭素数5〜8非水溶性炭化水素系有機溶剤を混合することにより発泡させ、気泡の混合した粘性組成物を調整する。この炭素数5〜8非水溶性炭化水素系有機溶剤としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンおよびオクタンからなる群から選択される少なくとも一種が使用可能である。
次の焼結前工程では、帯状のポリエチレンシートの剥離剤塗布面に、粘性組成物を厚さ0.05mm〜5mmの厚さになるように、ドクターブレード法、スラリー押出し法またはスクリーン印刷法等で塗布した後、周囲の温度および湿度を一定時間管理して、気泡を整寸化した後、大気乾燥機にて温度70℃で乾燥させる。
そして、乾燥後の粘性組成物を、ポリエチレンシートから剥がし、所望の形状に切り出し、焼結前成形体が得られる。
次の焼結工程では、上記焼結前成形体を、アルミナセッターの上に載置して、露点が−20℃以下のアルゴン雰囲気中、520℃で1時間加熱保持する仮焼成を行う。これにより、焼結前成形体の水溶性樹脂結合剤成分、可塑剤成分、蒸留水およびアルキルベタインのバインダー溶液を揮発および/または分解させる脱バインダーが行われるとともに、焼結助剤粉末として水素化チタンを用いた場合には脱水素化がされる。
この後、仮焼成後の焼結前成形体を、Tm−10(℃)≦加熱焼成温度(T)≦685(℃)で加熱焼成することにより、アルミニウム多孔質焼結体が得られる。
ここで、焼結前成形体は、アルミニウムの融解温度であるTm(℃):660℃まで加熱されると、アルミニウムとチタンとの反応が開始するものと考えられるが、アルミニウムに不純物として微量に含まれるFeやSi等の共晶合金元素により融点が低下し、実際には、Tm−10(℃)での加熱により、アルミニウムとチタンとの反応が開始し、アルミニウム多孔質焼結体が形成される。具体的には、アルミニウムの融点が660℃であるのに対して、純アルミニウム粉として流通している純度98%〜99.7%程度のアトマイズ粉では650℃前後が溶解開始温度となる。他方、加熱焼成温度を685℃より高い温度で加熱保持すると、焼結体にアルミニウムの液滴状の塊が発生してしまう。
なお、焼結工程における加熱焼成は、アルミニウム粒子表面およびチタン粒子表面の酸化被膜の成長を抑制するため、非酸化性雰囲気下で行う必要がある。但し、加熱温度が400℃以下で30分間程度保持の条件であれば、空気中で加熱しても、アルミニウム粒子表面およびチタン粒子表面の酸化被膜はさほど成長しないので、例えば、焼結前成形体を、空気中で300℃〜400℃に10分間程度加熱保持して脱バインダーした後、アルゴン雰囲気中で所定の温度に加熱して焼成してもよい。
ここで、非酸化性雰囲気とは、不活性雰囲気または還元性雰囲気を含み、アルミニウム混合原料粉末を酸化させない雰囲気であることを意味する。また、上述の加熱焼成温度は、アルミニウム混合原料粉末の温度ではなく、すなわち、アルミニウム混合原料粉末の反応温度等を測定したものでなく、アルミニウム混合原料粉末の周囲の保持温度を意味するものである。
これにより得られたアルミニウム多孔質焼結体は、三次元網目構造の金属骨格を有し、金属骨格間に空孔を有している。
また、アルミニウム多孔質焼結体は、上記粘性組成物調製工程でのスラリー発泡時の気泡に由来する空孔と、焼結体であることに由来する金属骨格自体に形成される気孔との2種類の形態の異なる孔を有する。ここで、複合体は、主としてアルミニウム多孔質焼結体の骨格間の空孔に存在するが、金属骨格自体に形成される骨格内の空孔にも存在し得る。
《(A)工程》
上述のように、(A)工程では、三次元網目構造の金属骨格を有し、前記金属骨格間に空孔を有するアルミニウム多孔質焼結体の空孔内に、活物質と結合剤とを含有するスラリーを充填し、乾燥する。アルミニウム多孔質焼結体、活物質、結合剤は、上述のとおりである。
活物質と結合剤とを含むスラリー(以下、混合体スラリーという)は、例えば、以下のようにして得ることができる。まず、結合剤を有機溶媒に溶解、または均一に分散させ、この混合液と活物質粉末を混合し、混合体スラリーとする。あるいは、活物質と結合剤を均一に混合した後、有機溶媒を加えて、混合体スラリーとする。このとき、用いる装置は、プラネタリーミキサー、ボールミル、ヘンシェルミキサー等の当業者が通常使用するものでよい。ここで、有機溶媒は、次のアルミニウム多孔質焼結体を、スラリーに浸漬させる工程で、アルミニウム多孔質焼結体に混合体スラリーが容易に浸漬できる粘度、例えば10〜60Pa・s、となるように加えることが好ましい。
なお、混合体スラリーに導電助剤を添加させる場合、混合液への導電助剤を添加する順序は、混合液に活物質粉末を混合する前、後、活物質粉末の添加と同時、のいずれでもよい。
上記結合剤を溶解または分散させる有機溶媒としては、テトラヒドロフラン(THF)、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレン、N−メチルピロリドン(NMP)、アセトン、アセトニトリル、ジメチルカーボネート、酢酸エチル、酢酸ブチル等が使用できるが、乾燥により選択的にこの有機溶媒を除去するため、THF、アセトン等の沸点100℃以下の揮発性の有機溶媒、あるいは結合剤の溶解能力が高いNMPが好ましい。
次に、アルミニウム多孔質焼結体の空孔に、混合体スラリーを充填し、乾燥する。充填させる方法は、アルミニウム多孔質焼結体を混合体スラリーにディッピングする方法、アルミニウム多孔質焼結体の上部から混合体スラリーを注ぐ方法等が挙げられ、さらに、2本のロール間を通したり、へらでこすったりして表面に付着した余剰の混合体スラリーを内部に押し込むことによって、より効果的にアルミニウム多孔質焼結体の空孔に混合体を充填することができる。乾燥は、大気中で放置してもよく、乾燥機等を用いてもよい。乾燥後、アルミニウム多孔質焼結体と、混合体との質量比を測定し、混合体の質量比が低い場合には、再度、浸漬・乾燥を繰り返し、所望量とすることができる。他方、混合体の質量比が高い場合には、混合体スラリーの粘性を低くして、浸漬・乾燥をやり直し、所望量とすることができる。
《(B)工程》
次に(B)工程では、上記(A)工程により得られたアルミニウム多孔質焼結体の空孔内に活物質と結合剤の混合体が充填されたアルミニウム多孔質焼結体において、混合体のクラックと空孔、およびアルミニウム多孔質焼結体の金属骨格と混合体の間の空間に、カーボンナノファイバーを含有する分散液(以下、CNF分散液という)を充填し、乾燥する。ここで、(B)工程は、(A)工程の後に行う。
ここで、カーボンナノファイバーは、液中で分散剤を使用せずに良好な分散状態を得るため、表面を酸化処理して親水化したものを用いることが好ましい。また、親水化処理により、カーボンナノファイバーが水溶液中で良好に分散し、分散剤を必要としないので、分散剤の分解によるガス発生がなく、サイクル特性、特に高温でのサイクル特性に優れた電極を形成することができる。
一般に、炭素材料は疎水性を有し、水溶液中で分散し難いので、従来は分散剤を使用して炭素系導電材を分散させている。このため電極を形成する際に、必然的に分散剤が電極構造に取り込まれ、これが分解してガス発生の原因になっている。一方、表面を酸化処理して親水化したカーボンナノファイバーは、分散剤を必要とせずに水溶液中で良好な分散状態を維持することができる。
カーボンナノファイバーの酸化処理は、例えば、カーボンナノファイバーに硫酸等の硫黄含有強酸を添加し、硝酸等の酸化剤を加え、このスラリーを加熱下で攪拌した後、濾過し、残留する酸を洗浄して除去すればよい。この酸化処理によってカルボニル基やカルボキシル基あるいはニトロ基等の極性官能基が形成されるので親水化すると考えられる。また、この処理により、カーボンナノファイバーの製造に繊維金属等の触媒が用いられている場合には、触媒を減少させることもできる。
CNF分散液の溶媒としては極性溶媒が好ましく、例えばN-メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、水等を用いることができる。なお、CNF分散液には、上記結合剤を含有させてもよい。
CNF分散液は、カーボンナノファイバーの酸性懸濁液に酸化剤を添加し、酸化処理して、カーボンナノファイバーの表面を親水化した後に、カーボンナノファイバーを濾過分離して回収し、このカーボンナノファイバーを溶媒、水から選ばれた一つ以上の溶媒と混合して製造することができる。
アルミニウム多孔質焼結体の空孔に、CNF分散液を充填し、乾燥する方法は、混合体スラリーの場合と同様でよい。
《(C)工程》
次に、混合体とカーボンナノファイバーを含むアルミニウム多孔質焼結体を圧延し、非水電解質二次電池用電極を得る。(C)工程は、(A)工程の後に行っても、(B)工程の後に行っても良い。本発明のアルミニウム多孔質焼結体が金属骨格にAl−Ti化合物が分散している場合には、強度、特に引張り強度が高いので、アルミニウム多孔質焼結体を所望の厚さまで、圧延することができ、電極体の空隙率を減少させ、電極密度を高めることができる。ここで、電極厚さは、0.03〜3mmであると、好ましい。ここで、プレス等によってもアルミニウム多孔質焼結体の密度を高くすることができるが、生産性の観点から圧延が好ましい。
本発明の非水電解質二次電池用電極は、高温および低温でのサイクル特性が良好な非水電解質二次電池に、非常に有効に利用される。
以下、実施例により、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
〔アルミニウム多孔質焼結体の作製〕
アルミニウムシート多孔質焼結体を、市販の平均粒径:15μmのアルミニウム粉末(純度:99質量%以上)と平均粒径:10μmのチタン粉末(純度:99質量%以上)を95:5の質量比で乾式混合し、上記混合粉:100質量部に対し、結着剤としてポリビニルアルコール:1〜5質量部と、可塑剤としてグリセリン:1〜5質量部と、界面活性剤としてアルキルベンゼンスルホン酸塩:0.1〜3質量部と、発泡剤としてヘプタン:0.1〜5重量部とを加え、溶媒の水:80質量部とともに、合計500gにした後、混練することにより、スラリーを作製した。そのスラリーを、ドクターブレード法によりシート状に成形し、さらに乾燥することで溶媒を取り除き焼結前駆体を得た。これをアルゴンガスフロー環境下において400℃、20分の脱脂、その後650℃、1時間の焼成処理を施すことにより、アルミニウムシート多孔質焼結体を得た。得られたアルミニウムシート多孔質焼結体の厚みは1.0mm、空孔率は70%、平均空孔径は約10μmであった。
〔カーボンナノファイバーの作製〕
平均粒径:1μm以下のCoとMgOの混合粉末1g(混合重量比:Co/MgO=50/50)を触媒粒子として用意した。触媒粒子をN及びHを含む混合ガス雰囲気下で加熱して活性化させた。活性化させた触媒を合成基板上に載せ、N雰囲気中で熱処理炉内を650℃の温度に加熱し、COとHを含む混合ガス(混合容積比:CO/H=80/20)を原料ガスとして、この原料ガスを流量:1dm/分で熱処理炉内に供給しながら約10時間保持して、カーボンナノファイバーを合成した。カーボンナノファイバーの平均繊維径は、20nm、比表面積は200m/g、アスペクト比は10であった。また、カーボンナノファイバーのトルエン透過率は、96%であった。
〔カーボンナノファイバー分散液の作製〕
カーボンナノファイバー(CNF)を溶媒に分散し、CNF分散液を調整した。CNFを、硝酸(濃度:60%)と硫酸(濃度:95%以上)との混合液に、CNF:硝酸:硫酸=1重量部:5重量部:15重量部の割合で混合し、加熱して表面酸化処理を行った。得られた溶液を濾過し、数回水洗を行って残留する酸を洗い流した。その後、乾燥して粉末化し、その粉末をNMPに分散させてCNF分散液を得た。CNF固形分を1%に調整し、これをCNF分散液とした。
〔実施例1(正極)〕
平均粒径:10μmの活物質LiFeO(48質量%)、導電助剤としてケッチェンブラック(3質量%)、結着材としてPVdF(3質量%)、溶媒としてNMP(46質量%)を混練し、電極材ペースト:10gを調整した。
アルミニウム多孔質焼結体の空孔に電極材ペーストを充填した後、乾燥した。
圧延後のアルミニウム多孔質焼結体の空孔に、CNF分散液を塗布した後、乾燥、圧延し、厚さ:200μmの実施例1の正極を得た。
〔比較例1(正極)〕
CNF分散液を用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1の正極を作製した。
〔比較例2(正極)〕
上記CNF分散液において、CNFの代わりに、平均繊維径が150nmで、比表面積が13m/gの昭和電工製気相法炭素繊維(商品名:VGCF(登録商標))を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例2の正極を作製した。
〔参考例1(正極)〕
CNF分散液の代わりに、CNFと平均繊維径が150nmの昭和電工製気相法炭素繊維(商品名:VGCF(登録商標))をそれぞれ固形分比率1%としてNMP中に分散させた分散液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、参考例1の正極を作製した。
〔実施例2(負極)〕
活物質に、平均粒径が10μmのLiTi12を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2の負極を作製した。
〔比較例3(負極)〕
CNF分散液を用いなかったこと以外は、実施例2と同様にして、比較例3の負極を作製した。
〔実施例3(負極)〕
平均繊維径が10nm、比表面積が250m/g、アスペクト比が50のCNFを用いたこと以外は、実施例2と同様にして、実施例3の負極を作製した。このCNFのトルエン透過率は、98%であった。
〔試験セルの作製〕
充放電試験を行うため、非水電解質二次電池の試験セルを作製した。図3に、用いた試験セルの構成の模式図を示す。
負極11として、実施例2と3、比較例3の負極を、それぞれ幅:30mm、長さ:40mmに切断し、ニッケル製の負極集電タブ11aを溶接した。
次に、実施例1、比較例1と2、参考例1の正極を、幅:30mm、長さ:40mmに切断し、正極10とし、正極10のアルミニウム複合体のアルミニウム箔に、アルミニウム製の正極集電タブ10aを溶接した。また、セパレーター12として、ポリプロピレン微多孔膜(厚さ:20μm)のセパレーター12を幅:32mm、長さ:42mmに切断した。これらを、負極集電タブ11a、負極11、セパレーター12、正極10、正極集電タブ10aの順に重ねて、積層体を作製した。
上記積層体が収容可能な大きさに切断された、一対のアルミニウムラミネートフィルム13a、13bの3辺の溶着部13cをヒートシールし、外装体13とした。
不活性雰囲気中で、外装体13の開口部からに上記積層体を挿入し、外装体13内に積層体を収容するとともに、1M LiPF/EC+PC(1:1(体積比))の非水電解質を注液した後、この外装体13の開口部をヒートシールして密閉し、試験セルを作製した。表1に、作製した試験セルに使用した電極を示す。
〔試験セルの評価〕
試験セルを、充放電レート:0.5C(充電方式:CC−CV充電、放電方式:CC放電、1.2Vカットオフ)、充放電電圧:1.2〜3.0Vでの条件で、「充電→レスト:15分→放電→レスト:15分」を1サイクルとして、サイクル試験を行い、放電容量が、初期放電容量の50%となったところを寿命とした。高温寿命試験は80℃で、低温寿命試験は−20℃で行った。表1に、これらの結果を示す。
表1からわかるように、実施例1と2の電極を用いた試験セル1は、高温寿命、低温寿命ともに最も優れていた。次に、実施例1と3の電極を用いた試験セル3が、高温寿命と低温寿命に優れていた。これに対して、正極にVGCFを含む比較例2を用いた試験セル4は、負極に実施例2を用いたが、高温寿命と低温寿命が、試験セル1より劣った。負極にCNFを含まない比較例3を用いた試験セル2は、正極に実施例1を用いたが、高温寿命と低温寿命が、試験セル1と3より劣った。CNFを含まない比較例1と3を用いた試験セル5は、高温寿命が短く、低温では放電が確認できなかった。比較例2を用いた試験セル6、CNFと同質量%のVGCFを含む参考例1と、比較例3とを含む試験セル7も、高温寿命が短く、低温では放電が確認できなかった。
以上のように、本発明の非水電解質二次電池用電極により、高温および低温でのサイクル特性に優れた非水電解質二次電池を製造することができる。
1、11 アルミニウム多孔質焼結体
2 空孔
3 混合体
4、41 カーボンナノファーバーを含有する混合体
5 クラック
10 正極
10a 正極集電タブ
11 負極
11a 負極集電タブ
12 セパレーター
13 外装体
13a、13b アルミニウムラミネートフィルム
13c 溶着部

Claims (3)

  1. 三次元網目構造の金属骨格を有し、前記金属骨格間に空孔を有するアルミニウム多孔質焼結体を備え、前記アルミニウム多孔質焼結体の空孔内に、活物質と結合剤との混合体を含有させた後、カーボンナノファイバーを含有させたことを特徴とする、非水電解質二次電池用電極。
  2. (A)三次元網目構造の金属骨格を有し、前記金属骨格間に空孔を有するアルミニウム多孔質焼結体の空孔内に、活物質と結合剤とを含有するスラリーを充填し、乾燥する工程、(B)さらに、空孔内に活物質と結合剤の混合体が充填されたアルミニウム多孔質焼結体に、カーボンナノファイバーを含有する分散液を充填し、乾燥する工程、(C)アルミニウム多孔質焼結体を圧延する工程、を含むことを特徴とする、非水電解質二次電池用電極の製造方法。
  3. 請求項1記載の非水電解質二次電池用電極を含む、非水電解質二次電池。
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