(実施の形態1)
以下、本発明に係る交通評価装置、該交通評価装置を実現するためのコンピュータプログラム及び前記交通評価装置による交通評価方法の実施の形態を示す図面に基づいて説明する。図1は本実施の形態に係る交通評価装置の一例である交通シミュレータにおける車両挙動の例を示す模式図である。交通シミュレータは、複数の模擬車両(以下、車両とも称する。)の模擬走行により交通評価指標を出力する。交通シミュレータは、入力データとして、例えば、車両の走行の起終点情報を含む交通量(例えば、OD交通量、OはOrigin、DはDestinationの意味である)、車両の走行速度、加速減速特性などの交通情報が所与として取り扱われている。OD交通量は、車両の起点(出発地)と終点(目的地)との間の交通量を求めたもので、例えば、市や町などの行政区域の単位毎に発生交通量と消滅交通量とを含む。OD交通量は、国又は自治体が定期的に実施する統計調査の結果得られた調査統計データなどが用いられる。
交通シミュレータは、予め車両の移動モデル、すなわち、車両の挙動を模した計算式を内包しており、上述の入力データを当該計算式に当てはめることにより、複数の車両を模擬的に走行させることにより、単独交差点、路線及び市街地などの道路網における渋滞長、旅行時間などの交通評価指標を出力する。この場合、道路網は、複数のリンク(例えば、交差点と交差点とを繋ぐ道路で上り及び下りの2つの方向を有する)とリンク同士が交差する点であるノード(例えば、交差点)などで構成される。図1では、道路網の一部として3つのノードと2つのリンクとを例示している。
図2は車両の起終点情報の一例を示す模式図である。交通シミュレータで交通評価指標を再現する場合、単独交差点または路線のように比較的単純な道路網では、車両の走行の起終点情報は、道路の両端点に設定される。しかし、市街地などの複数の路線が交差する比較的複雑な道路網では、シミュレーション区域Sの内外を出発地(起点)とする交通、目的地(終点)とする交通を再現するために、個々の車両に走行の起点(出発地)と終点(目的地)の情報を与える。
図2に示すように、道路網は、交差点に相当する複数のノードと、交差点同士を繋ぐ道路をリンクとして構成される。図2の例では、道路網の一部又は全部にシミュレーション区域Sを設定する。シミュレーション区域Sの外側には、起点終点A1、A2、…A12がある。また、シミュレーション区域Sの内側には、起点終点B1、B2、B3がある。なお、起点終点は一例であって、図2の例に限定されるものではない。図2に示すように、一例として、起点をA5とし終点をA6とする外々交通、起点をA5とし終点をB1とする外内交通、起点をB2とし終点をB3とする内々交通、起点をB2とし終点をA8とする内外交通などがある。OD交通量などに基づいて、個々の車両は、それぞれの起点と終点が与えられ、車両の移動モデルに従って、起点から終点までの走行経路等の車両の挙動を求めることができる。
図3はOD交通量の一例を示す説明図である。図3の例は、図2の起点終点A1、A5、A6、A10、A12とした場合の交通量が所与としている。なお、起点終点の例は一例であり、これに限定されるものではない。図3の例では、例えば、起点をA1とし終点をA5とする交通量が所定時間内に40台あることを示す。また、起点をA10とし終点をA5とする交通量が150台あることを示す。他も同様である。なお、図3に示す車両の台数は、単に模式的に示したものであり、値は例示であって限定されるものではない。
図4は所与のOD交通量に基づいた発生交通量及び消滅交通量の一例を示す模式図である。図4の例では、2つのリンク1、リンク2を例示している。交通シミュレータは、所与のOD交通量に基づいて、シミュレーション区域S内の各リンクでの発生交通量と消滅交通量とを算出する。図4に示すように、リンク1の上流で発生交通量が存在し、リンク1の下流で消滅交通量が存在する。なお、リンク1の途中で交通量の発生または消滅があってもよい。同様に、リンク2の上流で発生交通量が存在し、リンク1の下流で消滅交通量が存在する。なお、リンク1とリンク2とが交わる点(交差点)では、他のリンク(不図示)からの流入交通や流出交通が存在する。
そして、各リンクで算出された発生交通量及び消滅交通量を用いて交通評価指標としての推定渋滞長を算出(推定)する。本実施の形態に係る交通シミュレータ(交通評価装置)は、推定渋滞長と実測渋滞長との差分(推定誤差)をリンク単位で補正することにより、交通評価指標の再現性を向上させるものである。以下、本実施の形態の交通シミュレータについて説明する。なお、交通評価指標は、渋滞長に限定されるものではなく、旅行時間、交通量又は待ち行列長などでもよい。
図5は実施の形態1に係る交通評価装置の一例としての交通シミュレータ10の構成例を示すブロック図である。交通シミュレータ10は、車両の移動モデルを表す計算式に基づいて演算を行うシミュレータエンジン部11、所与のOD交通量に基づいて発生交通量及び消滅交通量を算出する交通量算出部12、交通量算出部12で算出された交通量に基づいて各リンクでの推定渋滞長を算出(推定)する推定渋滞長算出部13、推定渋滞長算出部13で算出された推定渋滞長と実測渋滞長との差分(推定誤差)に基づいて推定渋滞長を調整するために起点交通量及び終点交通量を生成する起点終点生成部14、上述の推定誤差に基づいて車両の補正台数を算出する補正台数算出部15、リンク下流の交差点で青信号の間に流出する流出台数を算出する流出台数算出部16、起点終点生成部14で生成した終点交通量又は起点交通量に対応させて当該リンクの下流側で交通量を発生又は消滅させる発生消滅部17、所定の情報を記憶する記憶部18、所要の交通状況をシミュレーションして交通状態量を評価するための評価条件を設定する評価条件設定部19、リンクに放出可能な車両台数である放出可能交通量を算出する放出可能交通量算出部20、起点交通量としてリンクに放出する車両に識別符号を付与する識別符号付与部21などを備える。
交通シミュレータ10には、入力データとして、例えば、車両の走行速度、加速減速特性、車両の走行の起点終点情報、交通量、実測渋滞長などのデータが与えられる。なお、図5には例示していないが、リンクが交差する各交差点の信号灯器の信号制御情報も入力データとして交通シミュレータ10に提供される。
交通シミュレータ10は、入力データを用いて、交通評価指標である各リンクの渋滞長(推定渋滞長)、車両の旅行時間、交通量、待ち行列台数(待ち行列長)などを出力する。なお、交通評価指標は、道路網を表す地図上で表示される。なお、交通評価指標に環境汚染物質(二酸化炭素など)の排出量(例えば、環境指標)を含めることもできる。渋滞長を再現性よく求めることができる場合、旅行時間や環境汚染物質の排出量も渋滞長に比例するので再現性よく求めることが可能となる。
交通量算出部12は、OD交通量(車両の走行の起終点情報を含む交通量)を用いて起点と終点との間の任意のリンクで発生する発生交通量及び任意のリンクで消滅する消滅交通量を算出する。
推定渋滞長算出部13は、交通量算出部12で算出した交通量に基づいて、任意のリンクでの車両の推定渋滞長を算出(推定)する。なお、推定渋滞長を求める場合、車両の走行速度、加速減速特性、当該リンク両端の交差点での信号現示、リンク長などのパラメータを記憶部18に記憶しておき、当該パラメータを使用することができる。
起点終点生成部14は、推定渋滞長などの交通評価指標を調整するために(すなわち、補正項として)、交通量算出部12で算出した任意のリンクでの発生交通量及び消滅交通量(ダミー車両でない車両に相当する)とは別に当該リンクで起点交通量又は終点交通量(ダミー車両とダミー車両でない車両とが混在する)を生成する。より具体的には、当該リンクでの車両の実測渋滞長と推定渋滞長算出部13で算出した推定渋滞長との差分である推定誤差がゼロ又は最小になる(推定誤差が後述のリンクの固有値に略一致する)ように起点交通量又は終点交通量を生成する。起点交通量又は終点交通量を生成することにより、推定渋滞長を補正して実測渋滞長に合わせる、すなわち、交通評価指標の再現性を向上させることができる。なお、本実施の形態で、ダミー車両とは、実測と交通シミュレータ10の推定とを合致させるために放出又は回収する便宜上の車両である。
図6は推定渋滞長の補正の一例を示す模式図である。図6に示すように、本実施の形態の交通シミュレータ10は、リンク単位であって所定の補正周期(例えば、5分など)の経過の都度、起点交通量(交通量の起点)としてダミー車両を放出し、又は終点交通量(交通量の終点)として正規の車両を回収することにより、推定渋滞長が実測渋滞長と一致するように推定渋滞長を補正する。
図6の例では、リンク1では実測渋滞長が推定渋滞長より長いので、実測渋滞長と推定渋滞長との差分(推定誤差)に相当する台数(補正台数)の車両をリンク1で放出する。すなわち、正規の車両に加えてダミー車両を走行させて渋滞長を長くする。
また、リンク2では実測渋滞長が推定渋滞長より短いので、実測渋滞長と推定渋滞長との差分(推定誤差)に相当する台数(補正台数)の車両をリンク2で回収する。すなわち、正規の車両の一部をシミュレーション対象外の抜け道を走行させることにより渋滞長を短くする。なお、補正台数の算出方法は後述する。
上述のように、交通評価指標(例えば、渋滞長、旅行時間)を調整するために、任意のリンクで算出した交通量とは別に当該リンクで起点交通量又は終点交通量を生成する。すなわち、実測値として得られたOD交通量から求めた任意のリンクでの発生交通量又は消滅交通量とは別に、当該リンク単位で起点交通量又は終点交通量を生成することにより、各リンク単位で渋滞長などの交通評価指標の再現性を向上させることができる。また、それぞれのリンクでの再現性を高めることができるので、道路網全体での再現性も向上させることができる。
また、算出した発生交通量及び消滅交通量に基づいて、任意のリンクでの車両の推定渋滞長を推定し、当該リンクでの車両の実測渋滞長及び推定渋滞長に基づいて、当該リンクで起点交通量又は終点交通量を生成する。これにより、各リンク単位で交通評価指標の実測値と推定値を合わせるように、起点交通量又は終点交通量を生成するので、各リンクで渋滞長などの交通評価指標の再現性を向上させることができる。
具体的には、実測渋滞長が推定渋滞長より長い場合、実測渋滞長と推定渋滞長との差分(推定誤差)に応じた車両台数の起点交通量を生成する。これにより、当該リンクで、算出された交通量により求めた渋滞長が実測値より短い場合でも、推定渋滞長の再現性を確保することができ、道路網の各リンクで同様の処理を行うことで、道路網の各リンクのみならず道路網全体としての交通評価指標の再現性を向上させることができる。
また、実測渋滞長が推定渋滞長より短い場合、推定渋滞長と実測渋滞長との差分(推定誤差)に応じた車両台数の終点交通量を生成する。これにより、当該リンクで、算出された交通量により求めた渋滞長が実測値より長い場合でも、推定渋滞長の再現性を確保することができ、道路網の各リンクで同様の処理を行うことで、道路網の各リンクのみならず道路網全体としての交通評価指標の再現性を向上させることができる。
発生消滅部17は、起点終点生成部14で任意のリンクで起点交通量を生成した場合、当該リンクの下流側で同等の交通量を消滅(再回収)させる。任意のリンクで起点交通量を生成した場合、すなわち、当該放出点から車両を放出した場合、当該リンクでの交通量が増加するので下流への流入交通量が増加し、下流リンクでの推定渋滞長と実測渋滞長との差異を生じる可能性がある。任意のリンクで起点交通量を生成した場合に、当該リンクの下流側で同等の交通量を消滅(再回収)させることにより、任意のリンクで起点交通量を生成したことにより生じる影響を当該リンクの下流側に与えることを防止することができる。
また、発生消滅部17は、起点終点生成部14で任意のリンクで終点交通量を生成した場合、当該リンクの下流側で同等の交通量を発生(再放出)させる。任意のリンクで終点交通量を生成した場合、すなわち、当該回収点で車両を回収した場合、当該リンクでの交通量が減少するので下流への流入交通量が減少し、下流リンクでの推定渋滞長と実測渋滞長との差異を生じる可能性がある。任意のリンクで終点交通量を生成した場合に、当該リンクの下流側で同等の交通量を発生(再放出)させることにより、任意のリンクで終点交通量を生成したことにより生じる影響を当該リンクの下流側に与えることを防止することができる。また、任意のリンクで終点交通量を生成した場合(車両を回収した場合)に、当該リンクの下流側で同等の交通量を発生(再放出)するときには、回収時に回収した車両の終点(本来の消滅地点)を記憶しておき、再放出の際に各車両に記憶しておいた終点を与えることもできる。なお、他の方法で終点を与えてもよい。
図7はリンクの下流側の交通状況に影響を与えないための再放出及び再回収の一例を示す模式図である。交通シミュレータ10では、渋滞長又は旅行時間などの交通評価指標を実測値と合わせるために、推定渋滞長などを補正した場合、そのままでは、その影響が下流のリンクに及ぶために、下流の渋滞長及び旅行時間などが変化する。例えば、上流リンクで推定渋滞長を実測渋滞長に合わせるため、起点交通量として車両が放出された場合、当該リンクからの流出交通量が増加するので下流への流入交通量が増加し、これが下流リンクの推定渋滞長に差異を生じさせる可能性がある。
そこで、本実施の形態では、図7に示すように、各リンクでの補正要因(起点交通量又は終点交通量の生成)を下流リンクに伝えないように、リンクに放出された車両はリンク下流の交差点出口で再回収し、また、リンク上で回収された車両はリンク下流の交差点出口で再放出する。これにより、補正による影響を下流リンクに与えることはない。
評価条件設定部19は、交通状態量を評価するための評価条件を設定する評価条件設定手段としての機能を有する。評価条件は、例えば、工事、事故又は災害などによる交通規制、道路の新設、交差点の改良などの交通環境変化、交通情報の提供、交通信号制御の調整などの交通対策を含む。
放出可能交通量算出部20は、リンクの放出可能な交通量を算出する放出可能交通量算出手段としての機能を有し、当該リンクに存在可能な車両台数と当該リンクに存在する車両台数との差分により算出する。リンクに存在可能な車両台数は、例えば、リンクの長さを平均車両間隔(例えば、8mなど)で除算して求めることができる。また、リンクに存在する車両台数は、例えば、当該周期において、リンク上で停止している車両の台数とすることができる。
上述の図5の例において、発生消滅部17は、必須の構成ではない。すなわち、交通量(車両)の再回収及び再放出は、必須ではなく省略することができる。再回収及び再放出を省略した場合には、放出または回収する補正台数による下流リンクへの影響は、下流リンクでの補正処理に委ねることができる。
任意のリンクで起点交通量を生成した場合(車両をリンクに放出した場合)に、当該リンクの下流交差点出口で交通量(車両)を再回収しない場合には、以下のような方法を用いることができる。
すなわち、起点交通量として車両をリンクに放出する場合、当該リンクに存在する1又は複数の車両の終点情報毎の割合に応じて、放出する車両に終点情報を割り当てる。当該リンクに存在(走行)する車両の終点情報の割合が、例えば、終点情報D1の車両がX1台、終点情報D2の車両がX2台、…、終点情報Dnの車両がXn台であるとすると、当該リンクに放出する車両(Y台)のうち、Y×X1/(X1+X2+…+Xn)台の車両に終点情報D1を割り当てる。また、同様に、放出する車両(Y台)のうち、Y×X2/(X1+X2+…+Xn)台の車両に終点情報D2を割り当てる。以下同様である。任意のリンクで起点交通量を生成した場合でも、いずれかのリンクの車両が突出して増加する事態、あるいは減少する事態を防止することができ、任意のリンクで起点交通量を生成したことにより生じる影響を当該リンクの下流側に与えることを防止することができる。
なお、当該リンクに存在(走行)する車両の終点情報の割合を求める場合、車両をリンクに放出する時点で当該リンクに存在する車両の終点情報を用いてもよく、あるいは車両をリンクに放出する時点から直近の所定時間(例えば、5分など)の間に当該リンクに存在する車両の終点情報を用いてもよい。
次に、補正台数の算出方法について説明する。補正台数算出部15は、実測渋滞長と推定渋滞長との差分(推定誤差)の絶対値に渋滞内の車両密度を積算し、積算値に当該リンクの固有値を加算又は減算して車両の補正台数を算出する。例えば、推定誤差が正である場合、すなわち、実測渋滞長が推定渋滞長より長い場合、リンクの固有値を積算値から減算し、推定誤差が負である場合、すなわち、実測渋滞長が推定渋滞長より短い場合、リンクの固有値を積算値に加算する。
推定渋滞長と実測渋滞長との差分の絶対値に渋滞内の車両密度を乗算することにより、推定渋滞長と実測渋滞長との差分である推定誤差に相当する車両の台数を求めることができる。リンクの固有値は、例えば、リンク(道路)上の許容範囲に相当する車両台数である。許容範囲は、例えば、車両感知器の設置密度(例えば、車両感知器の設置間隔が250mであれば、許容範囲は250m)であり、この場合、リンクの固有値は、車両感知器の設置密度に車両の走行密度を乗算した値とすることができる。すなわち、リンクの固有値は、当該リンクで車両を感知することができる範囲に相当する車両台数である。なお、固有値はゼロであってもよい。起点交通量として補正台数の車両を起点で放出し、又は終点交通量として補正台数の車両を終点で回収する。これにより、推定渋滞長と実測渋滞長との差分である推定誤差に相当する車両の台数を、各リンクで放出又は回収させることができる。
起点交通量として起点から車両を放出する場合、あるいは、終点交通量として終点で車両を回収する場合、放出及び回収する地点は、当該リンクの最上流、渋滞末尾地点、あるいはリンクの任意の点とすることができる。
また、車両の放出及び回収は、例えば、補正台数を10台とした場合、(1)補正台数10台を、補正周期(例えば、5分)の最後に一度で行う方法、(2)補正台数10台を補正周期(例えば、5分)の間を等間隔(例えば、30秒間隔)で一様に行う方法、(3)リンク下流の信号表示に同期させて(例えば、赤信号の時間帯)行う方法などがある。また、車両の放出の方法に限れば、(4)リンク上を走行する車両の挙動を妨げないように走行する車両の間隔が、例えば4秒以上ある場合に行う方法などがある。
交通シミュレータ10の構成によっては、上述の(1)の方式を採用することにより、確実に推定渋滞長を実測渋滞長に合わせることが可能となる。
また、交通シミュレータ10の構成によっては、上述の(3)の方法を採用すれば、すなわち、補正台数の車両を放出する場合、車両の放出点を含むリンクの下流交差点での信号現示に同期して車両を放出するようにすれば、補正台数の車両がリンクに渋滞として留まらないという事態を防止し、確実に推定渋滞長を実測渋滞長に合わせることが可能となる。
また、交通シミュレータ10の構成によっては、上述の(2)及び(4)の方法を採用して車両を任意のリンクで放出した場合、当該リンクの下流交差点において青信号で流れ出し、補正台数が渋滞として溜まらず推定渋滞長を実測渋滞長に合わせることができない場合がある。以下、青信号で流出する台数を算出し、流出台数を予め放出する台数に加算する方法について説明する。
流出台数算出部16は、補正台数の車両を放出する場合、車両の放出点を含むリンクの下流交差点の青信号で流出する流出台数を算出する。より具体的には、流出台数算出部16は、起点交通量又は終点交通量の生成周期である補正周期(例えば、5分)の間のリンクの下流交差点の青信号時間と、交通流率(例えば、飽和交通流率)との積算値及び放出する車両台数に基づいて流出台数を算出する。例えば、積算値が放出台数より大きい場合、積算値と放出台数との差を流出台数として算出する。
図8は青信号で流出する流出台数の算出例を示す模式図である。実測渋滞長と推定渋滞長との差分である推定誤差が正である場合(すなわち、起点交通量として車両を放出する場合)に、補正周期の間の青時間と飽和交通流率との積算値が放出台数より大きいときは、青信号での流出台数を、(補正周期の間の青時間と飽和交通流率との積算値−放出台数)により算出する。ここで、放出台数は、前回の補正周期のタイミングから今回の補正周期のタイミングまでの間に当該リンクから放出した車両の台数である。
補正周期の間の青時間と飽和交通流率との積算値が放出台数より小さいときは、青信号での流出台数をゼロとする。また、推定誤差が負である場合(すなわち、終点交通量として車両を回収する場合)には、青信号での流出台数をゼロとする。
青信号で流出する流出台数を放出台数に加算しておくことで、放出した車両がリンクの下流交差点の青信号で流出して補正台数の車両の一部又は全部が青信号で交差点に流出し、リンクに渋滞として留まらないために、推定渋滞長が実測渋滞長に合わなくなるという事態が生じたとしても、流出分の台数を補正台数に加味するので、車両の放出方法に拘わらず、確実に推定渋滞長を実測渋滞長に合わせることが可能となる。また、積算値が放出台数より大きい場合、積算値と放出台数との差を流出台数として算出することにより、青信号の時間帯に交差点から流出する台数を予め補正台数に加算しておくことができる。
識別符号付与部21は、起点終点生成部14で起点交通量としてリンクに車両(ダミー車両)を放出する場合、当該車両を識別する識別符号を付与する。発生消滅部17は、当該リンクの下流側で終点交通量として車両(ダミー車両)を回収する場合、識別符号が付与された車両を優先して回収する。任意のリンクで起点交通量として車両を放出した場合に、当該リンクの下流側(当該リンク及び当該リンクと異なるリンクを含む)で車両を回収するときに、放出した識別符号が付与された車両を優先的に回収することにより、任意のリンクで起点交通量を生成したことにより生じる影響を当該リンクの下流側に与えることを防止することができる。
発生消滅部17は、上述のように、起点終点生成部14で任意のリンクで起点交通量を生成した場合、当該リンクの下流側で同等の交通量を消滅(再回収)させる代わりに、次のように交通量を消滅(再回収)させても良い。すなわち、後述するように、起点交通量のうちの一部がダミー車両でない車両(ダミーリンクで待機している車両)となっている場合、すなわち、起点交通量にダミー車両とダミー車両でない車両とが混在する場合、上記リンクの下流側では起点交通量と同等の交通量を消滅させるのではなく、起点交通量のうちのダミー車両に相当する交通量のみを消滅させる。なお、識別符号の付与については、起点交通量としてダミー車両とダミー車両でない車両とが混在した状態で放出する場合には、起点交通量のすべてに識別符号を付与するのではなく、起点交通量からダミー車両でない車両を差し引いた「ダミー車両」に識別符号を付与することができる。
発生消滅部17は、上述のように、起点終点生成部14で任意のリンクで終点交通量を生成した場合、当該リンクの下流側で同等の交通量を発生(再放出)させる代わりに、次のように交通量を発生(再放出)させてもよい。発生消滅部17は、識別符号が付与された車両(ダミー車両)を優先して回収する場合、当該ダミー車両の再放出を禁止する禁止手段としての機能を有する。すなわち、ダミー車両を優先して回収した場合、回収したダミー車両は消滅させたままとする。ダミー車両は、実測とシミュレータでの推定とを合致させるために回収した便宜上の車両であるので、回収してそのまま消滅させたとしても問題がなく、不要な処理を省略することができる。なお、必ずしもダミー車両の識別符号を付与する必要はなく、仮に識別符号を付与しない場合でもダミー車両を回収した場合、当該ダミー車両の再放出を禁止することができる。また、ダミー車両でない車両を回収した場合には、再放出を禁止することなく、下流側で同等の交通量を発生させる。ダミー車両でない車両については、回収してそのまま消滅させた場合、本来の目的地へ到達する交通量が減少し、実際と合わなくなる可能性があるからである。
次に、本実施の形態の交通シミュレータ10の動作について説明する。図9及び図10は実施の形態1の交通シミュレータ10の評価条件設定前の処理手順を示すフローチャートである。図9及び図10に例示する処理は、渋滞長などを含む交通状態量を評価するための評価条件を設定する前の現状状態の再現性を向上させるためのものである。
交通シミュレータ10は、補正周期(例えば、5分)が経過したか否かを判定し(S11)、補正周期を経過した場合(ステップS11でYES)、すなわち、前回の補正のタイミングから5分経過した場合、推定渋滞長を算出し(S12)、推定誤差(実測渋滞長と推定渋滞長との差分)を算出(推定)する(S13)。
交通シミュレータ10は、推定誤差がゼロより大きいか否かを判定し(S14)、推定誤差がゼロより大きい場合(S14でYES)、(推定誤差−リンクの固有値)がゼロより大きいか否かを判定する(S15)。
リンクの固有値は、例えば、当該リンク(道路)に設置された車両感知器の設置密度に依存する許容範囲と、車両密度との乗算により求めることができる。車両感知器の設置密度が250mである場合、許容範囲は250mに設定することができる。車両感知器の設置密度(例えば、250m)内では車両が渋滞して停止していても実際上は計測することができない場合があり、車両感知器の設置密度を超えて車両が停止したときに渋滞していることを計測することが可能となるので、推定誤差からリンクの固有値を減算している。
(推定誤差−リンクの固有値)がゼロより大きい場合(S15でYES)、交通シミュレータ10は、補正台数を算出し(S16)、算出した補正台数の車両(ダミー車両)を起点交通量としてリンクに放出する(S17)。
交通シミュレータ10は、補正台数及び補正周期を記録する(S18)。例えば、補正周期(時刻)が9:10である場合に、あるリンク1の補正台数(放出台数)が10台である場合、リンク1の時刻9:10での放出台数は10台であることを記録する。
交通シミュレータ10は、リンクに放出した車両を当該リンク下流交差点で再回収する(S19)。交通シミュレータ10は、起点(出発地)から車両を発生し、終点(目的地)で車両を回収し(S20)、信号灯器の信号灯色を、例えば、0.1秒進め、車両の移動モデルに従って車両を走行させ(S21)、シミュレーション周期(例えば、0.1秒)を終了する。
(推定誤差−リンクの固有値)がゼロより大きくない場合(S15でNO)、交通シミュレータ10は、補正を行わずにステップS19以降の処理を行う。また、補正周期を経過していない場合(ステップS11でNO)、交通シミュレータ10は、補正を行わずにステップS19以降の処理を行う。
推定誤差がゼロより大きくない場合(S14でNO)、交通シミュレータ10は、推定誤差がゼロより小さいか否かを判定し(S22)、推定誤差がゼロより小さい場合(S22でYES)、(推定誤差+リンクの固有値)がゼロより小さいか否かを判定する(S23)。
(推定誤差+リンクの固有値)がゼロより小さい場合(S23でYES)、交通シミュレータ10は、補正台数を算出し(S24)、算出した補正台数の車両(正規の車両)を終点交通量としてリンクから回収する(S25)。
交通シミュレータ10は、補正台数及び補正周期を記録する(S26)。例えば、補正周期(時刻)が9:10である場合に、あるリンク1の補正台数(回収台数)が10台である場合、リンク1の時刻9:10での回収台数は10台であることを記録する。
交通シミュレータ10は、リンクから回収した車両を当該リンク下流交差点で再放出し(S27)、ステップS20以降の処理を続ける。推定誤差がゼロより小さくない場合(S22でNO)、交通シミュレータ10は、推定誤差がゼロであるとして、補正を行わずにステップS27以降の処理を行う。また、(推定誤差+リンクの固有値)がゼロより小さくない場合(S23でNO)、交通シミュレータ10は、補正を行わずにステップS20以降の処理を行う。
上述の図9及び図10で例示した処理は、シミュレーション周期(例えば、0.1秒)経過の都度繰り返し行われる。また、ステップS19、S27の処理を行わずに省略することもできる。この場合は、当該リンクの下流リンクで車両の放出又は回収を行う補正で調整する。当該リンクでの補正は、下流リンクに影響を与えるが、下流リンクでも補正処理が行なわれるので、推定渋滞長と実測渋滞長の差異を小さくすることができる。
交通シミュレータ10を用いる評価では、一般的に現状の交通評価指標と評価条件設定後の交通評価指標との相対比較が行なわれるが、図9及び図10に例示した処理手順で得られた回収の補正値及び放出の補正値は、評価条件設定後の評価においても全く同様に回収の補正値及び放出の補正値として使うことができる。
すなわち、評価条件設定部19で渋滞長を含む交通状態量を評価するための評価条件を設定する前に、起点終点生成部14は、当該リンクでの車両の実測渋滞長及び推定した推定渋滞長に基づいて、任意の周期毎に当該リンクで起点交通量又は終点交通量を生成する。任意のリンクの起点交通量は、当該リンクで放出する車両の台数(放出台数)に相当し、任意のリンクの終点交通量は、当該リンクで回収する車両の台数(回収台数)に相当する。任意の周期は、現状の交通評価指標を実測値に近づけるための補正項(補正値)を求める周期であり、例えば、10秒、50秒、1分、5分など、交通評価指標の内容に応じて適宜設定することができる。
起点終点生成部14は、生成した起点交通量又は終点交通量を周期毎に記憶部18に記録する。なお、起点交通量又は終点交通量の記録は、リンク毎に行う。そして、評価条件設定部19で評価条件を設定した後に、起点終点生成部14は、当該周期毎に、記録した起点交通量を当該リンクで放出し、記録した終点交通量を当該リンクで回収する。例えば、評価条件を設定する前に時刻9:00から5分毎の周期で、9:00、9:05、9:10、…のように起点交通量又は終点交通量を生成した場合、評価条件を設定後に当該周期、すなわち9:00、9:05、9:10、…のように5分周期で、評価条件設定前に生成した同じ時刻(周期)の起点交通量を放出し、評価条件設定前に生成した同じ時刻(周期)の終点交通量を回収して、交通評価指標を出力する。交通評価指標は、例えば、渋滞長、旅行時間、交通量、待ち行列長などである。
評価条件を設定した後に、同じ周期毎に、記録した起点交通量を同じリンクで放出し、記録した終点交通量を同じリンクで回収することにより、現状再現時において補正周期毎に記憶した補正項を同様の手段で交通シミュレータに反映させるので、現状再現時における交通量、渋滞長、旅行時間、二酸化炭素排出量など交通状況(交通評価指標)と、想定ケース(現状と交通条件が変化したケース)での交通状況とを相対的に比較することができ、評価条件設定前後において交通評価指標を比較することができる。
また、起点終点生成部14は、比較手段としての機能を有し、評価条件設定部19で評価条件を設定した後に、任意のリンクで終点交通量を任意の周期で回収する場合、回収する終点交通量と当該リンクでの交通量とを比較する。当該リンクでの交通量とは、終点交通量とは別に、実測値として得られたOD交通量から求めた当該リンクでの発生交通量又は消滅交通量に基づく交通量である。回収する終点交通量が当該リンクでの交通量よりも多い場合、当該リンクでの交通量を終点交通量として回収し、終点交通量と当該リンクでの交通量との差分交通量を現在の周期の次の周期の終点交通量に加算する。すなわち、差分交通量を次の周期に繰り越す。これにより、想定ケース計算時、すなわち評価条件設定後のシミュレーションにおいて、補正項をシミュレーション上の道路から回収することができない事態を防止することができる。
また、起点終点生成部14は、評価条件設定部19で評価条件を設定した後に、任意のリンクで起点交通量を任意の周期で放出する場合、放出する起点交通量と当該リンクに放出可能な交通量とを比較する。放出する起点交通量が当該リンクに放出可能な交通量よりも多い場合、当該放出可能な交通量を起点交通量として放出し、終点交通量と当該リンクに放出可能な交通量との差分交通量を現在の周期の次の周期の起点交通量に加算する。すなわち、差分交通量を次の周期に繰り越す。これにより、想定ケース計算時、すなわち評価条件設定後のシミュレーションにおいて、補正項をシミュレーション上の道路に放出することができない事態を防止することができる。
放出可能交通量算出部20は、リンクの放出可能な交通量を、当該リンクに存在可能な車両台数と当該リンクに存在する車両台数との差分により算出する。リンクに存在可能な車両台数は、例えば、リンクの長さを平均車両間隔(例えば、8mなど)で除算して求めることができる。また、リンクに存在する車両台数は、例えば、当該周期において、リンク上で停止している車両の台数とすることができる。これにより、交通状況が異なるリンクであっても、当該リンクの交通状況に合わせて補正項をシミュレーション上の道路に放出することができる。
図11及び図12は実施の形態1の交通シミュレータ10の評価条件設定後の処理手順を示すフローチャートである。図11及び図12に例示する処理は、渋滞長などを含む交通状態量を評価するための評価条件を設定した後の処理を示す。
交通シミュレータ10は、評価条件を設定し(S41)、補正周期(例えば、5分)が経過したか否かを判定し(S42)、補正周期を経過した場合(ステップS42でYES)、すなわち、前回の補正のタイミングから5分経過した場合、現在の周期と同じ周期の評価条件設定前の補正台数を取得する(S43)。
交通シミュレータ10は、補正台数が放出台数であるか回収台数であるかを判定し(S44)、放出台数である場合(S44で放出)、補正台数がリンク上の放出可能台数より大きいか否かを判定する(S45)。
補正台数がリンク上の放出可能台数より大きい場合(S45でYES)、交通シミュレータ10は、放出可能台数の車両をリンクに放出し(S46)、補正台数と放出可能台数との差分台数を次の周期の補正台数に加算する(S47)。
交通シミュレータ10は、リンクに放出した車両を当該リンク下流交差点で再回収する(S49)。交通シミュレータ10は、起点(出発地)から車両を発生し、終点(目的地)で車両を回収し(S50)、信号灯器の信号灯色を、例えば、0.1秒進め、車両の移動モデルに従って車両を走行させ(S51)、シミュレーション周期(例えば、0.1秒)を終了する。
補正台数がリンク上の放出可能台数より大きくない場合(S45でNO)、交通シミュレータ10は、補正台数の車両をリンクに放出し(S48)、ステップS49以降の処理を行う。また、補正周期を経過していない場合(ステップS42でNO)、交通シミュレータ10は、補正を行わずにステップS49以降の処理を行う。
補正台数が回収台数である場合(S44で回収)、交通シミュレータ10は、補正台数がリンク上の存在台数より大きいか否かを判定する(S52)。補正台数がリンク上の存在台数より大きい場合(S52でYES)、交通シミュレータ10は、リンク上に存在する台数の車両をリンクから回収し(S53)、補正台数とリンク上の存在台数との差分台数を次の周期の補正台数に加算する(S54)。
交通シミュレータ10は、リンクから回収した車両を当該リンク下流交差点で再放出し(S56)、ステップS50以降の処理を行う。補正台数がリンク上の存在台数より大きくない場合(S52でNO)、交通シミュレータ10は、補正台数の車両をリンクから回収し(S55)、ステップS56以降の処理を続ける。
上述の図11及び図12で例示した処理は、シミュレーション周期(例えば、0.1秒)経過の都度繰り返し行われる。また、ステップS49、S56の処理を行わずに省略することもできる。この場合は、当該リンクの下流リンクで車両の放出又は回収を行う補正で調整する。当該リンクでの補正は、下流リンクに影響を与えるが、下流リンクでも補正処理が行なわれるので、推定渋滞長と実測渋滞長の差異を小さくすることができる。
また、図9でステップS19を省略した場合には、図11のステップS49を省略し、図10でステップS27を省略した場合には、図12のステップS56を省略する。
上述の交通シミュレータ10は、CPU、RAMなどを備えた汎用コンピュータを用いて実現することもできる。すなわち、図9〜図12に示すような、各処理手順を定めたプログラムコードをコンピュータに備えられたRAMにロードし、プログラムコードをCPUで実行することにより、コンピュータ上で交通シミュレータ10を実現することができる。
上述の実施の形態において、起点交通量としてリンクに車両を放出する場合、当該車両を識別する識別符号を付与することもできる。そして、発生消滅部17により当該リンクの下流側で終点交通量として車両を回収する場合、識別符号が付与された車両を優先して回収する。任意のリンクで起点交通量として車両を放出した場合に、当該リンクの下流側(当該リンク及び当該リンクと異なるリンクを含む)で車両を回収するときに、放出した識別符号が付与された車両を優先的に回収することにより、任意のリンクで起点交通量を生成したことにより生じる影響を当該リンクの下流側に与えることを防止することができる。
上述のとおり、本実施の形態の交通シミュレータ10は、対象とする道路網の任意のリンク(道路)のみならず、道路網全体としても、交通評価指標の再現性を向上させることができる。また、交通評価指標の再現性が高まることにより、評価条件設定後の交通評価指標を正しく評価することが可能となる。
また、評価条件を設定した後に、同じ周期毎に、評価条件設定前に記録した起点交通量を同じリンクで放出し、評価条件設定前に記録した終点交通量を同じリンクで回収することにより、現状再現時において補正周期毎に記憶した補正項を同様の手段で交通シミュレータに反映させるので、現状再現時における交通量、渋滞長、旅行時間、二酸化炭素排出量など交通状況(交通評価指標)と、想定ケース(現状と交通条件が変化したケース)での交通状況とを相対的に比較することができ、評価条件設定前後において交通評価指標を比較することができる。
上述の実施の形態では、車両の走行の起終点情報を用いる構成であったが、これに限定されるもではない。例えば、任意のリンクでの発生交通量と消滅交通量を予め設定しておいて、設定した発生交通量と消滅交通量を用いることもできる。
(実施の形態2)
上述の実施の形態1では、各リンクで算出された発生交通量及び消滅交通量を用いて交通評価指標としての推定渋滞長を算出(推定)するものであったが、これに限定されるものではない。実施の形態2の交通シミュレータ(交通評価装置)は、推定交通量と実測交通量との差分に応じた車両の台数をリンク単位で放出し、又は回収することにより、交通評価指標の再現性を向上させるものである。
図13は所与のOD交通量に基づいた発生交通量及び消滅交通量の他の例を示す模式図である。図13の例では、2つのリンク1、リンク2を例示している。交通シミュレータは、所与のOD交通量に基づいて、シミュレーション区域S内の各リンクでの発生交通量と消滅交通量とを算出する。図13に示すように、リンク1の上流で発生交通量が存在し、リンク1の下流で消滅交通量が存在する。なお、リンク1の途中で交通量の発生または消滅があってもよい。同様に、リンク2の上流で発生交通量が存在し、リンク1の下流で消滅交通量が存在する。なお、リンク1とリンク2とが交わる点(交差点)では、他のリンク(不図示)からの流入交通や流出交通が存在する。
そして、各リンクで算出された発生交通量及び消滅交通量を用いて交通評価指標としての推定交通量を算出(推定)する。そして、推定渋滞長と実測渋滞長との差分に応じた車両の台数をリンク単位で補正(放出又は回収)することにより、交通評価指標の再現性を向上させるものである。
図14は実施の形態2に係る交通シミュレータ50の構成例を示すブロック図である。実施の形態1との相違点は、推定交通量算出部22、渋滞判定部23を備える点である。また、交通シミュレータ50は、任意のリンクの実測交通量を入力データとして取得する。なお、実施の形態1と同様の箇所は同一符号を付して説明を省略する。
推定交通量算出部22は、交通量算出部12で算出した交通量に基づいて、任意のリンクでの推定交通量を算出(推定)する。なお、推定交通量を求める場合、車両の走行速度、加速減速特性、当該リンク両端の交差点での信号現示、リンク長などのパラメータを記憶部18に記憶しておき、当該パラメータを使用することができる。
渋滞判定部23は、各リンクでの実測渋滞長及び推定渋滞長算出部13で推定した推定渋滞長が所定の渋滞閾値未満であるか否かを判定する判定手段としての機能を有する。すなわち、渋滞判定部23は、各リンクでの実測渋滞長及び推定した推定渋滞長が所定の渋滞閾値未満であるか否かを判定する。渋滞閾値は、各リンクに固有の固有値であり、例えば、車両感知器の設置間隔(例えば、200m、250mなど)である。
起点終点生成部14は、交通量算出部12で算出した各リンクでの発生交通量及び消滅交通量(ダミー車両でない車両に相当する)とは別に、交通評価指標を実測値に近づけるために各リンクで起点交通量又は終点交通量(ダミー車両とダミー車両でない車両とが混在する)を生成する。起点終点生成部14で生成する起点交通量はリンクに放出する車両の台数(補正台数)に相当し、終点交通量はリンクから回収する車両の台数(補正台数)に相当する。以下、補正台数を補正項とも称し、推定渋滞長を実測渋滞長に一致させるための補正項を渋滞長補正項(渋滞長補正)と称し、推定交通量を実測交通量に一致させるための補正項を交通量補正項(交通量補正)と称する。なお、本実施の形態で、ダミー車両とは、実測と交通シミュレータ50の推定とを合致させるために放出又は回収する便宜上の車両である。
図15は交通状況と補正項との関係を示す説明図である。図15に示すように、実施の形態2の交通シミュレータ50は、渋滞判定部23により、任意のリンクで推定渋滞及び実測渋滞の両者がないと判定された場合、当該リンクにおいて交通量補正を行う。また、交通シミュレータ50は、渋滞判定部23により、任意のリンクで推定渋滞及び実測渋滞のいずれか一方又は両者があると判定された場合、当該リンクにおいて渋滞長補正を行う。
渋滞長補正は、対象とするリンクで実測上、あるいはシミュレーション上のいずれか又は両方で渋滞ありと判定された場合に、実施の形態1(例えば、図6等)で説明したように、当該リンクでの車両の実測渋滞長と推定渋滞長算出部13で算出した推定渋滞長との差分である推定誤差がゼロ又は最小になる(推定誤差が後述のリンクの固有値に略一致する)ように起点交通量又は終点交通量を生成する。
次に、交通量補正について説明する。上述のとおり、交通量補正では、対象とするリンクで実測上、あるいはシミュレーション上の両方で渋滞なしと判定された場合に、当該リンクでの車両の実測交通量と推定交通量算出部22で算出した推定交通量との差がゼロ又は最小になるように起点交通量又は終点交通量を生成する。まず、渋滞長補正に代えて交通量補正を行う必要がある理由について説明する。
図16はリンクで実測される実測渋滞長の一例を示す模式図である。図16の例では、1つのリンクを例示している。図16Aは、リンクに対応する道路区間に車両感知器が設置されていない場合を示す。また、図16B及び図16Cは、リンクに対応する道路区間の地点Sに車両感知器が設置されている場合を示す。
図16Aのように、リンクに車両感知器が設置されていない場合には、当該リンクでの渋滞長の実測値を計測することができないため、渋滞の有無を判定することができない。従って、図16Aに示す場合では、結局は当該リンクに渋滞が発生していないと判定せざるを得ない。
図16Bのように、リンクの地点Sに車両感知器が設置されている場合であっても、車両の待ち行列の最後尾が地点Sよりも下流側にあるときには、車両感知器で渋滞を検出することができないので、渋滞の有無を判定することができない。従って、図16Bに示す場合では、結局は当該リンクに渋滞が発生していないと判定せざるを得ない。
一方、図16Cのように、車両の待ち行列の最後尾が地点Sを超えて上流側にあるときには、車両感知器で渋滞を検出することができるので、渋滞ありと判定することができ、渋滞長は、リンク下流の交差点から地点Sまでの距離に相当する値又は当該値を基にした補正渋滞長として実測することができる。すなわち、図16A、図16Bに示すように、実際の道路区間の中には、渋滞ありとは判断することができないので、渋滞なしと判断される場合があった。なお、上述の補正渋滞長とは、複数の車両感知器を設置している場合、隣接する車両感知器での車両検出結果に基づいて、隣接する車両感知器の間のどの位置まで渋滞しているかを求めることである。
図17はシミュレーションでの経路探索の一例を示す模式図である。図17に示すように、幹線道路R1は、幹線道路R2、R3と交差点C1、C5で交差している。また、幹線道路R4は、幹線道路R2、R3と交差点C2、C6で交差している。また、幹線道路R1とR4とを接続する接続道路R5が、交差点C3、C4で交差している。シミュレーション対象外の細街路R101は、幹線道路R2、接続道路R5、幹線道路R3とそれぞれ交差点C7、C8、C9で交差している。シミュレーション対象外の細街路R102は、幹線道路R2、接続道路R5とそれぞれ交差点C13、C10で交差している。また、シミュレーション対象外の細街路R103は、接続道路R5、幹線道路R3とそれぞれ交差点C11、C12で交差している。シミュレーション対象外の細街路R104は、幹線道路R4と交差点C4で交差している。
シミュレーションで経路選択処理を行う場合、幹線道路同士を接続する接続道路、あるいはシミュレーション対象外の細街路と交差する接続道路では、右左折回数が多くなる(例えば、右折又は左折の回数が増える都度、所定のコストが加算される)ので、経路として選択されにくくなる。
このため、図17において、実線で示す経路、すなわち、接続道路R5を経由する経路では、交差点C3又はC4での左折又は右折回数が加算され、コスト(旅行時間)が増加するため選択されず、代わりに図17の破線で示す経路が選択される。このため、接続道路R5では、シミュレーション上の交通量が実際の交通量よりも少なくなる傾向があり、シミュレーション上で渋滞が発生しないことになる。
上述の図16及び図17で説明したような場合、すなわちシミュレーション対象の道路区間で実際の渋滞とシミュレーション上での渋滞の両者が発生していない場合、現状の渋滞長と評価条件設定後の渋滞長とを比較することができず、交通シミュレータによる現状の交通評価指標を再現することができない。そこで、本実施の形態の交通シミュレータ10では、実際の渋滞とシミュレーション上での渋滞の両者が発生していない場合には、渋滞長補正に代えて交通量補正を行う。なお、評価条件は、例えば、工事、事故又は災害などによる交通規制、道路の新設、交差点の改良などの交通環境変化、交通情報の提供、交通信号制御の調整などの交通対策を含む。
図18は実施の形態2の交通シミュレータ50による交通量補正の一例を示す模式図である。図18に示すように、実施の形態2の交通シミュレータ50は、リンク単位であって所定の補正周期(例えば、5分など)の経過の都度、起点交通量(交通量の起点)としてダミー車両を放出し、又は終点交通量(交通量の終点)として正規の車両を回収することにより、推定交通量が実測交通量と一致するように推定交通量を補正する。
図18の例では、リンク1では実測交通量が推定交通量より多いので、実測交通量と推定交通量との差に相当する台数(補正台数)の車両をリンク1で放出する。すなわち、正規の車両に加えてダミー車両を走行させて交通量を多くする。
また、リンク2では実測交通量が推定交通量より少ないので、実測交通量と推定交通量との差に相当する台数(補正台数)の車両をリンク2で回収する。すなわち、正規の車両の一部をシミュレーション対象外の抜け道を走行させることにより交通量を少なくする。
図19はリンクの下流側の交通状況に影響を与えないための交通量補正時の再放出及び再回収の一例を示す模式図である。交通シミュレータ50では、推定交通量を実測値と合わせるために、推定交通量を補正した場合、そのままでは、その影響が下流のリンクに及ぶために、下流の交通量が変化する。例えば、上流リンクで推定交通量を実測交通量に合わせるため、起点交通量として車両が放出された場合、当該リンクからの流出交通量が増加するので下流への流入交通量が増加し、これが下流リンクの推定交通量に差異を生じさせる可能性がある。
そこで、実施の形態2では、図19に示すように、各リンクでの補正項(起点交通量又は終点交通量の生成)を下流リンクに伝えないように、リンクに放出された車両はリンク下流の交差点出口で再回収し、また、リンク上で回収された車両はリンク下流の交差点出口で再放出する。これにより、補正による影響を下流リンクに与えることはない。
上述のように、各リンク単位で交通量の実測値と推定値を合わせるように、起点交通量又は終点交通量を生成するので、交通量が少ない場合などの交通状況にかかわらず、各リンクで現状を正しく再現することができ、工事又は交通事故等による交通規制などの評価条件の変化による影響を反映した交通状況も正しく評価又は予測することが可能となる。
また、シミュレーション対象のリンクで実測渋滞長及び推定渋滞長が渋滞閾値未満であると判定された場合、当該リンクで起点交通量又は終点交通量を生成することにより、シミュレーション対象のリンクで実際の渋滞とシミュレーション上での渋滞の両者が発生していない場合でも、起点交通量又は終点交通量を生成することにより、シミュレーション対象の全リンクでの交通状況を実際の交通状況に近似させることができる。
また、実測交通量が推定交通量より多い場合、起点交通量として、実測交通量と推定交通量との差分に応じた台数の車両を放出することにより、当該リンクで、交通量の実測値が推定された交通量より多い場合でも、推定交通量の再現性を確保することができ、道路網の各リンクで同様の処理を行うことで、道路網の各リンクのみならず道路網全体としての交通評価指標の再現性を向上させることができる。
また、実測交通量が推定交通量より少ない場合、終点交通量として、推定交通量と実測交通量との差分に応じた台数の車両を回収することにより、当該リンクで、交通量の実測値が推定された交通量より少ない場合でも、推定交通量の再現性を確保することができ、道路網の各リンクで同様の処理を行うことで、道路網の各リンクのみならず道路網全体としての交通評価指標の再現性を向上させることができる。
識別符号付与部21は、起点終点生成部14で起点交通量としてリンクに車両(ダミー車両)を放出する場合、当該車両を識別する識別符号を付与する。発生消滅部17は、当該リンクの下流側で終点交通量として車両(ダミー車両)を回収する場合、識別符号が付与された車両を優先して回収する。任意のリンクで起点交通量として車両を放出した場合に、当該リンクの下流側(当該リンク及び当該リンクと異なるリンクを含む)で車両を回収するときに、放出した識別符号が付与された車両を優先的に回収することにより、任意のリンクで起点交通量を生成したことにより生じる影響を当該リンクの下流側に与えることを防止することができる。
発生消滅部17は、上述のように、起点終点生成部14で任意のリンクで終点交通量を生成した場合、当該リンクの下流側で同等の交通量を発生(再放出)させる代わりに、次のように交通量を発生(再放出)させてもよい。発生消滅部17は、識別符号が付与された車両(ダミー車両)を優先して回収する場合、当該ダミー車両の再放出を禁止する禁止手段としての機能を有する。すなわち、ダミー車両を優先して回収した場合、回収したダミー車両は消滅させたままとする。ダミー車両は、実測とシミュレータでの推定とを合致させるために回収した便宜上の車両であるので、回収してそのまま消滅させたとしても問題がなく、不要な処理を省略することができる。なお、必ずしもダミー車両の識別符号を付与する必要はなく、仮に識別符号を付与しない場合でもダミー車両を回収した場合、当該ダミー車両の再放出を禁止することができる。また、ダミー車両でない車両を回収した場合には、再放出を禁止することなく、下流側で同等の交通量を発生させる。ダミー車両でない車両については、回収してそのまま消滅させた場合、本来の目的地へ到達する交通量が減少し、実際と合わなくなる可能性があるからである。
上述の図14の例において、発生消滅部17は、必須の構成ではない。すなわち、交通量(車両)の再回収及び再放出は、必須ではなく省略することができる。再回収及び再放出を省略した場合には、放出または回収する補正台数による下流リンクへの影響は、下流リンクでの補正処理に委ねることができる。
任意のリンクで起点交通量を生成した場合(車両をリンクに放出した場合)に、当該リンクの下流交差点出口で交通量(車両)を再回収しない場合には、以下のような方法を用いることができる。
すなわち、起点交通量として車両をリンクに放出する場合、当該リンクに存在する1又は複数の車両の終点情報毎の割合に応じて、放出する車両に終点情報を割り当てる。当該リンクに存在(走行)する車両の終点情報の割合が、例えば、終点情報D1の車両がX1台、終点情報D2の車両がX2台、…、終点情報Dnの車両がXn台であるとすると、当該リンクに放出する車両(Y台)のうち、Y×X1/(X1+X2+…+Xn)台の車両に終点情報D1を割り当てる。また、同様に、放出する車両(Y台)のうち、Y×X2/(X1+X2+…+Xn)台の車両に終点情報D2を割り当てる。以下同様である。任意のリンクで起点交通量を生成した場合でも、いずれかのリンクの車両が突出して増加する事態、あるいは減少する事態を防止することができ、任意のリンクで起点交通量を生成したことにより生じる影響を当該リンクの下流側に与えることを防止することができる。
なお、当該リンクに存在(走行)する車両の終点情報の割合を求める場合、車両をリンクに放出する時点で当該リンクに存在する車両の終点情報を用いてもよく、あるいは車両をリンクに放出する時点から直近の所定時間(例えば、5分など)の間に当該リンクに存在する車両の終点情報を用いてもよい。
補正周期毎の推定交通量が推定することができる場合には、起点終点生成部14は、任意のリンクで起点交通量を放出する場合、当該リンクでの実測交通量と推定交通量との差分及び所定の交通量閾値の差に応じた台数の車両を放出する。交通量閾値は、例えば、シミュレータの構成に応じて適宜設定することができ、0でもよく、0以外の値でもよい。例えば、所定の交通量閾値を0とする場合に、当該リンクでの実測交通量と推定交通量との差分を実測交通量で除算した値が交通量差閾値(例えば、0.2)以上であるときは、実測交通量が推定交通量より大きければ実測交通量と推定交通量との差分に応じた車両を放出する。シミュレータの構成上、起点交通量だけでなく終点交通量も生成させる場合には、交通量差閾値は0.2など小さくすることができ、当該リンクでの実測交通量と推定交通量との差分に応じた台数の車両を放出する。また、シミュレータの構成上、起点交通量だけを生成し、終点交通量を生成しない場合には、実測交通量と推定交通量との差分に応じた台数の車両を放出したときに、車両を回収する処理が行われないので、放出する車両台数が過多となる事態も起こり得るので、この場合には、交通量差閾値を、例えば、0.8程度に大きくして当該リンクでの実測交通量と推定交通量との差分に応じた台数の車両を放出する。
また、所定の交通量閾値を0以外とする場合には、起点終点生成部14は、当該リンクでの実測交通量と推定交通量との差分から所定の交通量閾値(例えば、実際の交通量の20%程度の値)を減算した値が正であれば、当該値の台数の車両を放出する。シミュレータの構成上、起点交通量だけでなく終点交通量も生成させる場合には、交通量閾値は実際の交通量の20%程度の小さい値とすることができる。また、シミュレータの構成上、起点交通量だけを生成し、終点交通量を生成しない場合には、実測交通量と推定交通量との差分に応じた台数の車両を放出したときに、車両を回収する処理が行われないので、放出する車両台数が過多となる事態も起こり得るので、この場合には、交通量閾値を、実際の交通量の80%程度のように大きくして、当該リンクでの実測交通量と推定交通量との差分及び所定の交通量閾値の差に応じた台数の車両を放出する。リンクでの実測交通量と推定交通量との差分及び所定の交通量閾値の差に応じた台数の車両を放出することにより、実際の交通量とシミュレーション上の交通量(推定交通量)とを一致させることができる。
一方、補正周期毎の推定交通量が推定することができない場合には、起点終点生成部14は、任意のリンクで起点交通量を放出する場合、当該リンクでの実測交通量と当該リンクでの車両密度、車両速度及び所定時間の乗算値との差分から所定の交通量閾値を減算した値に応じた台数の車両を放出する。すなわち、推定交通量の代わりに車両密度、車両速度及び所定時間の乗算値を用いる。
車両密度は、当該リンクで渋滞区間が存在する場合、渋滞区間を除いた区間での車両密度である。また、車両密度は、任意の時点での値でもよく、任意の周期毎に起点交通量を放出する場合には、複数周期分の平均値でもよく、あるいは前回周期での車両密度と今回周期の車両密度との重み付け平均でもよい。
重み付け平均した車両密度は、例えば、{前回の車両密度×前回の非渋滞区間長×(1−k)+今回の非渋滞区間に存在する車両台数×k}/{前回の非渋滞区間長×(1−k)+今回の非渋滞区間長×k}により求めることができる。ここで、kは重み係数であり、例えば、0.2などである。
所定時間は、例えば、起点交通量を生成(放出)する処理の周期(補正周期)である。すなわち、所定時間の間の車両密度と車両速度との乗算により交通量を推定することができる。これにより、経路探索時に経路として選択されにくくなるリンクが存在する結果、当該リンクでの交通量が減少又は0になった場合でも、実際の交通量とシミュレーション上の交通量(推定交通量)とを一致させることができる。
次に、実施の形態2の交通シミュレータ50の動作について説明する。図20、図21、図22及び図23は実施の形態2の交通シミュレータ50の評価条件設定前の処理手順を示すフローチャートである。交通シミュレータ50は、補正周期(例えば、5分)が経過したか否かを判定し(S111)、補正周期を経過した場合(ステップS111でYES)、すなわち、前回の補正のタイミングから5分経過した場合、対象リンクの実測渋滞長を取得し(S112)、推定渋滞長を算出する(S113)。
交通シミュレータ50は、実測渋滞長が渋滞閾値未満であり、かつ推定渋滞長が渋滞閾値未満であるか否かを判定する(S114)。なお、交通シミュレータ50は、実測渋滞長を取得することができない場合には、実測渋滞長が渋滞閾値未満であると判定する。
実測渋滞長が渋滞閾値未満であり、かつ推定渋滞長が渋滞閾値未満である場合(S114でYES)、交通シミュレータ50は、交通量補正を行うべく、当該リンクの実測交通量を取得し(S115)、推定交通量を算出する(S116)。
交通シミュレータ50は、実測交通量から推定交通量を減算することにより、補正台数を算出し(S117)、補正台数の絶対値を実測交通量で除算した値が交通量閾値以上であるか否かを判定する(S118)。補正台数の絶対値を実測交通量で除算した値が交通量閾値(例えば、0.2)以上である場合(S118でYES)、交通シミュレータ50は、補正台数が0を超えるか(正であるか)否かを判定する(S119)。
補正台数が0を超える(正である)場合(S119でYES)、すなわち実測交通量が推定交通量よりも多い場合、交通シミュレータ50は、補正台数の車両を当該リンクに放出し(S120)、補正台数及び補正周期を記録する(S122)。補正台数が0を超えない(負である)場合(S119でNO)、すなわち実測交通量が推定交通量よりも少ない場合、交通シミュレータ50は、補正台数の車両を当該リンクから回収し(S121)、ステップS122の処理を行う。
交通シミュレータ50は、リンクに放出した車両を当該リンク下流交差点で再回収し(S123)、リンクから回収した車両を当該リンク下流交差点で再放出する(S124)。交通シミュレータ50は、起点(出発地)から車両を発生し、終点(目的地)で車両を回収し(S125)、信号灯器の信号灯色を、例えば、0.1秒進め、車両の移動モデルに従って車両を走行させ(S126)、シミュレーション周期(例えば、0.1秒)を終了する。
交通シミュレータ50は、補正台数の絶対値を実測交通量で除算した値が交通量閾値以上でない場合(S118でNO)、交通量補正を行わずにステップS123以降の処理を行う。また、補正周期を経過していない場合(ステップS111でNO)、交通シミュレータ50は、補正を行わずにステップS123以降の処理を行う。
実測渋滞長が渋滞閾値未満であり、かつ推定渋滞長が渋滞閾値未満でない場合(S114でNO)、すなわち、実測渋滞長が渋滞閾値以上であるか、あるいは推定渋滞長が渋滞閾値以上であるかのいずれかの条件を満たす場合、あるいは両者の条件を満たす場合、交通シミュレータ50は、推定誤差(実測渋滞長と推定渋滞長との差分)を算出(推定)する(S127)。
交通シミュレータ50は、推定誤差がゼロより大きいか否かを判定し(S128)、推定誤差がゼロより大きい場合(S128でYES)、(推定誤差−リンクの固有値)がゼロより大きいか否かを判定する(S129)。
(推定誤差−リンクの固有値)がゼロより大きい場合(S129でYES)、交通シミュレータ50は、補正台数を算出し(S130)、算出した補正台数の車両(ダミー車両)を起点交通量としてリンクに放出する(S131)。
交通シミュレータ50は、補正台数及び補正周期を記録し(S132)、ステップS123以降の処理を行う。
(推定誤差−リンクの固有値)がゼロより大きくない場合(S129でNO)、交通シミュレータ50は、補正を行わずにステップS123以降の処理を行う。推定誤差がゼロより大きくない場合(S128でNO)、交通シミュレータ50は、推定誤差がゼロより小さいか否かを判定し(S133)、推定誤差がゼロより小さい場合(S133でYES)、(推定誤差+リンクの固有値)がゼロより小さいか否かを判定する(S134)。
(推定誤差+リンクの固有値)がゼロより小さい場合(S134でYES)、交通シミュレータ50は、補正台数を算出し(S135)、算出した補正台数の車両(正規の車両)を終点交通量としてリンクから回収し(S136)、ステップS124以降の処理を行う。
推定誤差がゼロより小さくない場合(S133でNO)、交通シミュレータ50は、推定誤差がゼロであるとして、補正を行わずにステップS124以降の処理を行う。また、(推定誤差+リンクの固有値)がゼロより小さくない場合(S134でNO)、交通シミュレータ50は、補正を行わずにステップS124以降の処理を行う。
本実施の形態の交通シミュレータ50の1つの目的が、シミュレーション上の交通量が実際の交通量よりも少なくなる傾向を是正することにあるので、起点交通量だけを生成し、例えば、上述の図20乃至図23で例示した処理において、ステップS121の「リンクからの車両の回収」(終点交通量の生成)処理を省略することもできる。シミュレーションの補正周期によっては、リンクに存在する交通量が変動することで予想以上に増える場合もあり得るため、ステップS121の処理を省略する場合には、ステップS118における交通量閾値の値を若干大きめの値(例えば、0.8など)に設定することにより、推定交通量が少なくなり過ぎることを抑制することができる。なお、ステップS121の処理を省略する場合には、ステップS124の処理も省略する。
上述の図20乃至図23で例示した処理は、シミュレーション周期(例えば、0.1秒)経過の都度繰り返し行われる。また、ステップS123、S124の処理を行わずに省略することもできる。この場合は、当該リンクの下流リンクで車両の放出又は回収を行う補正で調整する。当該リンクでの補正は、下流リンクに影響を与えるが、下流リンクでも補正処理が行なわれるので、推定渋滞長と実測渋滞長の差異、あるいは推定交通量と実測交通量の差異を小さくすることができる。
交通シミュレータ50を用いる評価では、一般的に現状の交通評価指標と評価条件設定後の交通評価指標との相対比較が行なわれるが、図20乃至図23に例示した処理手順で得られた回収の補正値及び放出の補正値は、評価条件設定後の評価においても全く同様に回収の補正値及び放出の補正値として使うことができる。
すなわち、交通量補正の場合、評価条件設定部19で渋滞長を含む交通状態量を評価するための評価条件を設定する前に、起点終点生成部14は、当該リンクでの車両の実測交通量及び推定した推定交通量に基づいて、任意の周期毎に当該リンクで起点交通量又は終点交通量を生成する。任意のリンクの起点交通量は、当該リンクで放出する車両の台数(放出台数)に相当し、任意のリンクの終点交通量は、当該リンクで回収する車両の台数(回収台数)に相当する。任意の周期は、現状の交通評価指標を実測値に近づけるための補正項(補正値)を求める周期であり、例えば、10秒、50秒、1分、5分など、交通評価指標の内容に応じて適宜設定することができる。なお、渋滞長補正の場合については実施の形態1と同様である。
起点終点生成部14は、生成した起点交通量又は終点交通量を周期毎に記憶部18に記録する。なお、起点交通量又は終点交通量の記録は、リンク毎に行う。そして、評価条件設定部19で評価条件を設定した後に、起点終点生成部14は、当該周期毎に、記録した起点交通量を当該リンクで放出し、記録した終点交通量を当該リンクで回収する。例えば、評価条件を設定する前に時刻9:00から5分毎の周期で、9:00、9:05、9:10、…のように起点交通量又は終点交通量を生成した場合、評価条件を設定後に当該周期、すなわち9:00、9:05、9:10、…のように5分周期で、評価条件設定前に生成した同じ時刻(周期)の起点交通量を放出し、評価条件設定前に生成した同じ時刻(周期)の終点交通量を回収して、交通評価指標を出力する。交通評価指標は、例えば、渋滞長、旅行時間、交通量、待ち行列長などである。
評価条件を設定した後に、同じ周期毎に、記録した起点交通量を同じリンクで放出し、記録した終点交通量を同じリンクで回収することにより、現状再現時において補正周期毎に記憶した補正項を同様の手段で交通シミュレータに反映させるので、現状再現時における交通量、渋滞長、旅行時間、二酸化炭素排出量など交通状況(交通評価指標)と、想定ケース(現状と交通条件が変化したケース)での交通状況とを相対的に比較することができ、評価条件設定前後において交通評価指標を比較することができる。
実施の形態2の交通シミュレータ50による評価条件設定後の処理手順は、図11及び図12で例示した実施の形態1の交通シミュレータ10の評価条件設定後の処理手順と同様である。
図24及び図25は実施の形態2の交通シミュレータ50の評価条件設定後の処理手順を示すフローチャートである。図24及び図25に例示する処理は、交通量などを含む交通状態量を評価するための評価条件を設定した後の処理を示す。
交通シミュレータ50は、評価条件を設定し(S141)、補正周期(例えば、5分)が経過したか否かを判定し(S142)、補正周期を経過した場合(ステップS142でYES)、すなわち、前回の補正のタイミングから5分経過した場合、現在の周期と同じ周期の評価条件設定前の補正台数を取得する(S143)。
交通シミュレータ50は、補正台数が放出台数であるか回収台数であるかを判定し(S144)、放出台数である場合(S144で放出)、補正台数がリンク上の放出可能台数より大きいか否かを判定する(S145)。
補正台数がリンク上の放出可能台数より大きい場合(S145でYES)、交通シミュレータ50は、放出可能台数の車両をリンクに放出し(S146)、補正台数と放出可能台数との差分台数を次の周期の補正台数に加算する(S147)。
交通シミュレータ50は、リンクに放出した車両を当該リンク下流交差点で再回収する(S149)。交通シミュレータ50は、起点(出発地)から車両を発生し、終点(目的地)で車両を回収し(S150)、信号灯器の信号灯色を、例えば、0.1秒進め、車両の移動モデルに従って車両を走行させ(S151)、シミュレーション周期(例えば、0.1秒)を終了する。
補正台数がリンク上の放出可能台数より大きくない場合(S145でNO)、交通シミュレータ50は、補正台数の車両をリンクに放出し(S148)、ステップS149以降の処理を行う。また、補正周期を経過していない場合(ステップS142でNO)、交通シミュレータ50は、補正を行わずにステップS149以降の処理を行う。
補正台数が回収台数である場合(S144で回収)、交通シミュレータ50は、補正台数がリンク上の存在台数より大きいか否かを判定する(S152)。補正台数がリンク上の存在台数より大きい場合(S152でYES)、交通シミュレータ50は、リンク上に存在する台数の車両をリンクから回収し(S153)、補正台数とリンク上の存在台数との差分台数を次の周期の補正台数に加算する(S154)。
交通シミュレータ50は、リンクから回収した車両を当該リンク下流交差点で再放出し(S156)、ステップS150以降の処理を行う。補正台数がリンク上の存在台数より大きくない場合(S152でNO)、交通シミュレータ50は、補正台数の車両をリンクから回収し(S155)、ステップS156以降の処理を続ける。
上述の図24及び図25で例示した処理は、シミュレーション周期(例えば、0.1秒)経過の都度繰り返し行われる。また、ステップS149、S156の処理を行わずに省略することもできる。この場合は、当該リンクの下流リンクで車両の放出又は回収を行う補正で調整する。当該リンクでの補正は、下流リンクに影響を与えるが、下流リンクでも補正処理が行なわれるので、推定渋滞長と実測渋滞長の差異を小さくすることができる。
また、図21でステップS123を省略した場合には、図24のステップS149を省略し、図21でステップS124を省略した場合には、図25のステップS156を省略する。
上述の交通シミュレータ50は、CPU、RAMなどを備えた汎用コンピュータを用いて実現することもできる。すなわち、図20乃至図25に示すような、各処理手順を定めたプログラムコードをコンピュータに備えられたRAMにロードし、プログラムコードをCPUで実行することにより、コンピュータ上で交通シミュレータ50を実現することができる。
上述のように、実施の形態2においても、評価条件を設定した後に、同じ周期毎に、評価条件設定前に記録した起点交通量を同じリンクで放出し、評価条件設定前に記録した終点交通量を同じリンクで回収することにより、現状再現時において補正周期毎に記憶した補正項を同様の手段で交通シミュレータに反映させるので、現状再現時における交通量、渋滞長、旅行時間、二酸化炭素排出量など交通状況(交通評価指標)と、想定ケース(現状と交通条件が変化したケース)での交通状況とを相対的に比較することができ、評価条件設定前後において交通評価指標を比較することができる。
(実施の形態3)
上述の実施の形態では、交通状態量として渋滞長又は交通量を用いる構成であったが、これに限定されるものではなく、待ち行列長を交通状態量として用いることもできる。
図26は所与のOD交通量に基づいた発生交通量及び消滅交通量の一例を示す模式図である。図26の例では、2つのリンク1、リンク2を例示している。また、交差点を示すノードには、リンク1、2から見て流出方向が右折である右折方向リンクを例示している。交通シミュレータは、所与のOD交通量に基づいて、シミュレーション区域S内の各リンクでの発生交通量と消滅交通量とを算出する。図26に示すように、リンク1の上流で発生交通量が存在し、リンク1の下流で消滅交通量が存在する。なお、リンク1の途中で交通量の発生または消滅があってもよい。同様に、リンク2の上流で発生交通量が存在し、リンク1の下流で消滅交通量が存在する。なお、リンク1とリンク2とが交わる点(交差点)では、他のリンクからの流入交通や流出交通が存在する。
そして、各リンクで算出された発生交通量及び消滅交通量を用いて交通評価指標として渋滞長、旅行時間、交通量、待ち行列長などを出力する。実施の形態3に係る交通シミュレータ(交通評価装置)は、日本のように左側通行の道路を前提とし、任意のリンクでの右折待ち行列を推定し、当該リンク下流の交差点での信号灯色の状態(信号の切り替わり状態)に応じて、当該リンクから右折待ちの車両を回収することにより、交通評価指標の再現性を向上させるものである。なお、米国のように右側通行の道路では、任意のリンクでの左折待ち行列を推定し、当該リンク下流の交差点での信号灯色の状態(信号の切り替わり状態)に応じて、当該リンクから左折待ちの車両を回収すればよい。
図27は実施の形態3の交通シミュレータ60の構成例を示すブロック図である。実施の形態1、2との相違点は、待ち行列長算出部30、信号情報判定部31、車両回収部32、再放出部33を備える点である。なお、実施に携帯1、2と同様の箇所は同一符号を付して説明を省略する。なお、車両回収部32は、起点終点生成部14が生成する起点交通量及び終点交通量のうち、終点交通量を生成する機能に相当するものである。
交通シミュレータ60には、入力データとして、例えば、車両の走行速度、加速減速特性、車両の走行の起点終点情報、交通量、実測渋滞長、実測交通量、リンクが交差する各交差点の信号灯器の信号情報(信号制御情報)などのデータが与えられる。
交通シミュレータ60は、任意のリンクの下流側の交差点の信号情報を任意の周期毎に取得する。任意の周期は、現状の交通評価指標を実測値に近づけるための補正項(補正値)を求める周期であり、例えば、10秒、50秒、1分、5分など、交通評価指標の内容に応じて適宜設定することができる。なお、以下の説明では、補正周期を10秒とするが、これに限定されるものではない。
まず、交通シミュレータ60で解決する課題である右折車両又は左折車両の集中による直進車線の閉塞について説明する。図28は右折車両の集中による直進車線の閉塞を示す模式図である。図28に示すように、シミュレーション対象である幹線道路(例えば、都道府県道路)R1とR2とが交差点C3で交差している。また、シミュレーション対象外である市町村道路R101、R102が、それぞれ交差点C2、C1で幹線道路R1と交差している。なお、図28の道路構成は一例である。
実際に幹線道路R1を交差点C3の方向へ走行する車両は、交差点C1、あるいは交差点C2でそれぞれ市町村道路R101、R102の方へ右折することができるので、交差点C1、C2で右折する車両(交通量)がある程度は存在する。しかし、シミュレーション上では、市町村道路R101、R102は対象外であって存在しないものとみなされる。このため、実際には交差点C1、C2で右折する車両が、シミュレーション上では右折できないため、シミュレーション上では交差点C3で右折する(矢印Aで示す)ことになり、交差点C3で右折する車両が集中して、右折車両による直進車線の閉塞が生じることになる。
実施の形態3の交通シミュレータ60は、このような直進車線の閉塞を防止して、交通状況(交通評価指標)を正しく再現するものである。
待ち行列長算出部30は、交通量算出部12で算出した交通量に基づいて、任意の補正周期毎に、任意のリンクの下流交差点での対向直進車両と交錯する方向の待ち行列長を推定する待ち行列長推定手段としての機能を有する。対向直進車両と交錯する方向とは、例えば、日本のように左側通行では右折方向であり、米国のように右側通行では左折方向である。本実施の形態では、日本のように左側通行であるとして、対向直進車両と交錯する方向は右折方向であるとする。また、待ち行列長を求める場合、車両の走行速度、加速減速特性、当該リンク両端の交差点での信号現示、リンク長などのパラメータを記憶部18に記憶しておき、当該パラメータを使用することができる。
信号情報判定部31は、任意のリンク下流交差点の当該リンクに対する信号が、現在の周期で赤であり、かつ直近の周期で青である条件を充足するか否かを判定する判定手段としての機能を有する。信号情報判定部31は、当該リンクを交差点に向かって走行する車両に対する当該交差点での信号が、現在の周期で赤であり、かつ直近の周期で青である条件を充足するか否かを判定する。
現在の周期とは、補正項(車両回収部17での回収台数に相当)を求める際の現在の補正周期であり、直近の周期とは、現在の補正周期の1つ前の補正周期である。例えば、補正周期が10秒である場合、現在の周期を現時点とすると、直近の周期は、現時点から10秒前の時点となる。また、現在の周期で赤であり、かつ直近の周期で青である条件は、信号の切り替わりを判定するための条件であり、青信号(青矢)から赤信号へ切り替わったか否かを判定している。
当該条件を充足しない場合とは、例えば、補正周期を10秒としたときに、現時点から10秒前の時点と現時点とで、どちらも赤信号の場合、赤信号から青信号に切り替わった場合、どちらも青信号の場合などである。
また、当該条件を充足する場合とは、例えば、補正周期を10秒としたときに、現時点から10秒前の時点と現時点とで、青(青矢)信号から赤信号へ切り替わった場合である。
車両回収部32は、当該条件を充足しない場合には、推定した待ち行列長から所定長を減算した長さに相当する台数の車両を当該リンクから回収する。所定長は、交差点の位置(停止視の位置)からの長さであり、車両を回収する位置に相当する。すなわち、右折待ちの車両から所定長に相当する車両を差し引いた残りの車両をシミュレーション上右折車線から回収することで直進車線の閉塞を生じさせないようにする。
車両をリンクから回収することにより、シミュレーション上対象外の道路が存在する場合でも、直進車線の閉塞が生じることを防止して、交通評価指標を正しく再現することができる。また、交通環境などの評価条件を設定する前では、シミュレーション上信号制御が適切である状態を再現することができ、交通環境の変化などで評価条件を設定した後のシミュレーションでは、交通環境の変化を忠実に再現することが可能となる。
図29は右折専用車線を備える交差点付近の一例を示す模式図である。図29に示すように、交差点の停止線から地点S1までの間に長さL1の右折専用車線を設けてある。上述の所定長は、車両を回収する位置(地点)S2の停止線からの距離であり、所定長をL2とする。所定長L2は、例えば、右折専用車線(流出方向用の専用車線)の長さL1から補正周期(例えば、10秒)の間に右折専用車線に到達する車両台数の最大値に相当する長さを減算した長さにすることができる。すなわち、L1−L2が、補正周期(例えば、60秒)の間に右折専用車線に到達する車両台数の最大値に相当する長さである。
例えば、右折専用車線の長さL1を100m(平均車頭間隔8mで除算すると車両12台に相当する)、補正周期の10秒の間に右折専用車線に到達する右折車両の最大値を3台(長さ24mに相当する)とすると、所定長L2は、76m(100−24)で凡そ9台分の長さに相当する。
シミュレーションで現状の再現時(評価条件設定前)に、待ち行列長算出部15で算出した右折待ち車両が1サイクル(補正周期)当たり15台であったとする。なお、信号情報判定部16での判定結果は、前述の条件を充足しないとする。この場合には、右折専用車線の地点S2(停止線より所定長L2)より上流に停止している車両は回収されるので、右折待ち車両15台のうち、先頭の1台目から9台目までは、右折専用車線に停止し、10台目から15台目までの車両がリンクから回収される。
図29の(L1−L2)の区間は、補正周期の間に右折専用車線に到達する車両台数の最大値に相当する長さがあるので、補正周期の間において、右折専用車線から右折車両があふれ出す事態を防止することができ、右折車両による直線車線の閉塞を生じさせない。
図30はリンクから車両を回収する場合のダミー車線の一例を示す模式図である。図30に示すように、リンクと流出方向のリンクとを接続するダミーのリンク(暫定リンク)を備える。ダミーのリンクとは、交差点の信号灯色に関係なく車両を回収することができる仮想の車線である。ダミーのリンクを通じて車両を回収することにより、シミュレーション上の所望の交差点へ向かうリンクで車両を回収することができる。
車両回収部32は、信号情報判定部31での判定結果が前述の条件を充足する場合には、推定した待ち行列長に相当する台数の車両を回収する。当該条件を充足する場合とは、例えば、補正周期を10秒としたときに、現時点から10秒前の時点と現時点とで、青(青矢)信号から赤信号へ切り替わった場合である。
当該条件を充足する場合には、青信号から赤信号に切り替わる間に右折待ちの車両がすべて交差点から所望の流出方向へ走行したとして、シミュレーション上右折待ちのすべての車両を回収することで、右折のための青信号時間は適切(例えば、右折感応制御が適切)であるとする。すなわち、右折感応制御によって青時間を延長する代わりに、赤信号に切り替わった時点で右折待ち車両をすべて回収することにより、右折待ち車両を適切に捌くことを可能としている。
これにより、シミュレーション上対象外の道路が存在する場合でも、直進車線の閉塞が生じることを防止して、交通評価指標を正しく再現することができる。また、交通環境などの評価条件を設定する前では、シミュレーション上信号制御が適切である状態を再現することができ、交通環境の変化などで評価条件を設定した後のシミュレーションでは、交通環境の変化を忠実に再現することが可能となる。
なお、右折感応制御によって青時間を延長する代わりに、交通シミュレータ60に右折感応機能など右折車の交通量に応じて青時間を逐次調整する機能が組み込まれている場合には、信号の切り替わり時点(例えば、信号が青から赤に変化した時点)で、車両を全て回収する処理は必要ない。この場合には、信号情報判定部31は具備しなくてもよい。
また、仮に交通シミュレータ60に右折感応機能がある場合でも、シミュレータ上は右折可能な交差点に右折車が集中するので、信号が青から赤に変化した時点で、右折車を回収する方がよい。すなわち、原則としては、交通シミュレータ60に右折感応制御機能などが組み込まれていれば、右折車の回収は必要ない。ただし、シミュレータ上は右折可能な交差点に右折車が集中してしまうので、右折車の回収も併用するのが望ましい。
再放出部33は、任意のリンクから車両(右折待ち車両)を回収した場合、当該リンクの下流側で同等の車両を再放出する。任意のリンクで車両(右折車両)を回収した場合、当該リンクでの交通量が減少するので下流への流入交通量が減少し、下流リンクでの交通評価指標の推定値と実測値との差異を生じる可能性がある。任意のリンクで車両を回収した場合に、当該リンクの下流側で同等の車両を再放出することにより、リンクで車両を回収したことにより生じる影響を当該リンクの下流側に与えることを防止することができる。また、任意のリンクで車両を回収した場合に、当該リンクの下流側で同等の車両を再放出するときには、回収時に回収した車両の終点(本来の消滅地点)を記憶しておき、再放出の際に各車両に記憶しておいた終点を与えることもできる。なお、他の方法で終点を与えてもよい。
なお、車両回収部32で任意のリンクから車両(右折待ち車両)を回収した場合、再放出部33による、当該リンクの下流側で同等の車両の再放出をさせないようにすることもできる。
なお、再放出部33は、必須の構成ではない。すなわち、車両の再放出は、必須ではなく省略することができる。再放出を省略した場合には、車両を回収することによる下流リンクへの影響は、下流リンクでの補正処理に委ねることができる。
次に、本実施の形態の交通シミュレータ60の動作について説明する。図31は実施の形態3の交通シミュレータ60の現状再現時の処理手順を示すフローチャートである。現状再現時とは、交通環境などの評価条件を設定する前のシミュレーションである。交通シミュレータ60は、補正周期(例えば、10秒など)が経過したか否かを判定し(S211)、補正周期を経過した場合(S211でYES)、すなわち、前回の補正のタイミングから10秒経過した場合、信号情報を取得し(S212)、右折待ち行列長を算出する(S213)。
交通シミュレータ60は、現在の補正周期での信号が赤であり、かつ直近の補正周期での信号が青であるか否を判定し(S214)、当該条件を充足する場合(S214でYES)、右折車線上の全車両(右折車両)を回収し(S215)、後述のステップS217の処理を行う。
交通シミュレータ60は、前述の条件を充足しない場合(S214でNO)、右折車線上で停止線から閾値(所定長)以上(上流)の位置で停止している車両(右折車両)を回収する(S216)。
交通シミュレータ60は、回収台数を時刻とともに記憶部18に記録し(S217)、右折車線上から回収した車両をリンク下流交差点で右折方向に再放出する(S218)。交通シミュレータ60は、起点(出発地)から車両を発生し、終点(目的地)で車両を回収し(S219)、信号灯器の信号灯色を、例えば、0.1秒進め、車両の移動モデルに従って車両を走行させ(S220)、シミュレーション周期(例えば、0.1秒)を終了する。
補正周期を経過していない場合(S211でNO)、交通シミュレータ60は、ステップS218以降の処理を行う。
図32は実施の形態3の交通シミュレータ60の評価条件設定後の処理手順を示すフローチャートである。交通シミュレータ60は、評価条件を設定し(S231)、補正周期(例えば、10秒)が経過したか否かを判定し(S232)、補正周期を経過した場合(S232でYES)、すなわち、前回の補正のタイミングから10秒経過した場合、現在の周期と同じ周期の評価条件設定前の補正台数(回収台数)を取得する(S233)。
交通シミュレータ60は、補正台数がリンク上の存在台数より多いか(大きいか)否かを判定し(S234)、補正台数がリンク上の存在台数より多い場合(S234でYES)、リンク上に存在する台数の車両をリンクから回収し(S235)、補正台数とリンク上の存在台数との差分台数を次の補正周期の補正台数に加算する(S236)。
補正台数がリンク上の存在台数より多くない場合(S234でNO)、交通シミュレータ60は、補正台数の車両をリンクから回収する(S237)。交通シミュレータ60は、右折車線上から回収した車両をリンク下流交差点で右折方向に再放出する(S238)。
交通シミュレータ60は、起点(出発地)から車両を発生し、終点(目的地)で車両を回収し(S239)、信号灯器の信号灯色を、例えば、0.1秒進め、車両の移動モデルに従って車両を走行させ(S240)、シミュレーション周期(例えば、0.1秒)を終了する。補正周期を経過していない場合(S232でNO)、交通シミュレータ10は、ステップS238以降の処理を行う。
上述の図31及び図32で例示した処理は、シミュレーション周期(例えば、0.1秒)経過の都度繰り返し行われる。また、ステップS218の処理を行わずに省略することもできる。また、図31でステップS218を省略した場合には、図32のステップS238を省略する。
なお、評価条件設定前に、周期によっては、回収する車両がない場合もあり得る。この場合には、評価条件設定後に同じ周期での車両の回収は行わない。
上述の交通シミュレータ60は、CPU、RAMなどを備えた汎用コンピュータを用いて実現することもできる。すなわち、図31、図32に示すような、各処理手順を定めたプログラムコードをコンピュータに備えられたRAMにロードし、プログラムコードをCPUで実行することにより、コンピュータ上で交通シミュレータ60を実現することができる。
上述のとおり、本実施の形態の交通シミュレータ60は、シミュレーション対象外の道路が存在する場合であっても、交通評価指標の再現性を向上させることができる。交通評価指標の再現性が高まることにより、評価条件設定後の交通評価指標も正しく評価することが可能となる。
また、評価条件を設定した後に、同じ周期毎に、評価条件設定前に記録した補正台数(回収台数)を同じリンクで回収することにより、現状再現時において補正周期毎に記憶した補正項を同様の手段で交通シミュレータに反映させるので、現状再現時における交通量、渋滞長、旅行時間、二酸化炭素排出量など交通状況(交通評価指標)と、想定ケース(現状と交通条件が変化したケース)での交通状況とを相対的に比較することができ、評価条件設定前後において交通評価指標を比較することができる。
上述の実施の形態3では、日本のように左側通行であるとして、対向直進車両と交錯する方向は右折方向であるとし、右折車両の回収について説明したが、これに限定されるものではなく、米国のように右側通行の道路の場合には、対向直進車両と交錯する方向は左折方向であり、実施の形態3は左折車両に対しても同様に適用することができる。また、原則として、対向直進車両と交錯する方向に曲がる車両について車両を回収するが、それ以外の方向に曲がる車両についても、つまり、日本のように左側通行の道路において、右折車両と左折車両の両方について車両を回収してもよい。日本のように左側通行の道路において、左折待ち車両が増加した場合に当該左折待ち車両の後続の直進車両がスムーズに交差点を通過することができないことを抑制することができるからである。
上述の実施の形態1〜3では、OD交通量(OD表)に従って、交通量算出部12で算出した任意のリンクでの発生交通量及び消滅交通量は、ダミー車両でない車両に相当するものであり、補正項(起点交通量又は終点交通量)として放出又は回収される車両にはダミー車両又はダミー車両でない車両である。ダミー車両の放出又は回収の頻度、あるいは台数は、できるだけ少ない方が良いので、車両を回収する場合、あるいは車両を放出する場合に、以下のようにすることができる。
図33はリンク上の車両の一例を示す説明図である。図33に示すように、リンク1上には、例えば、ダミー車両でない車両(模様あり)が4台、ダミー車両(模様なし)が2台走行しているとする。リンク1、2には、それぞれ併設した形でダミーのリンクが存在する。
ダミーのリンク(ダミーリンクとも称する)は、各リンクに対して設けられた仮想のリンクであり、例えば、シミュレーション上で表現されていない細街路などの道路への車両の流入出を扱うために設けている。なお、ダミーリンクは、交通シミュレータの画面上で仮想のリンクとして表示されるものではなく、シミュレーション上、リンクから回収した車両(ダミー車両又はダミー車両でない車両)を待機させるスペースである。
シミュレーション上では、シミュレーション結果と実計測値との差分の車両をダミーリンクへ移動させること、すなわち、シミュレーション上で表現されていない道路であるダミーリンクへ移動させることで、シミュレーション結果と実計測値が一致するように補正する。
上述の実施の形態では、発生消滅部17は、識別符号が付与された車両(ダミー車両)を優先して回収する場合、当該ダミー車両の再放出を禁止する禁止手段としての機能を有し、ダミー車両を優先して回収した場合、回収したダミー車両は消滅させたままとすることもできる。以下、その具体例を説明する。
まず、車両を回収する一例を説明する。図34はダミー車両を優先的に回収する方法の一例を示す説明図である。図34の例は、図33に例示したリンク1上の車両から3台の車両を回収する場合に、ダミー車両を優先的に回収する例を示す。図33の例では、リンク1上に2台のダミー車両と4台のダミー車両でない車両が存在している。リンク1から3台の車両を回収する場合、ダミー車両を優先して、2台のダミー車両をすべて回収し、不足分である1台の回収車両をダミー車両でない車両から回収する。この場合、ダミー車両の抜き取った部分の車間が空くため、渋滞長などを正しく表現するために後続の車両を前に詰める。
図34に示すように、回収した車両のうち、ダミー車両でない車両は、リンク1の下流側(例えば、リンク2)へ再放出すべくリンク1に併設のダミーリンクへ移動させる。当該ダミー車両でない車両は、リンク1の下流側での再放出待ちとする。
また、図34に示すように、回収した車両のうち、ダミー車両は、リンク1に併設のダミーリンクへ移動せずに消滅させる。当該ダミー車両は再放出しない。
次に、車両を回収する他の例を説明する。図35は渋滞末尾の車両から回収する方法の一例を示す説明図である。図35の例は、図33に例示したリンク1上の車両から3台の車両を回収する場合に、渋滞末尾から車両を回収する例を示す。図33の例では、リンク1上に2台のダミー車両と4台のダミー車両でない車両が存在している。リンク1から3台の車両を回収する場合、渋滞末尾から、ダミー車両でない車両、ダミー車両、ダミー車両でない車両の3台を回収する。この場合には、結果として、ダミー車両でない車両を2台、ダミー車両を1台回収することになる。
車両を回収する場合に、回収した車両がダミー車両でない車両であるときは、ダミーリンクへ移動してリンク1の下流側での再放出待ちとする。図35の例では、2台のダミー車両でない車両をダミーリンクへ移動している。また、回収した車両がダミー車両であるときは、ダミーリンクへ移動せずに消滅させる。図35の例では、1台のダミー車両を再放出せずに消滅させる。渋滞末尾から車両を回収する場合には、車両を前に詰める処理が不要となる。
車両の回収方法は、渋滞末尾から回収する方法の他に、渋滞の先頭から回収する方法もある。例えば、車両を回収する際に、まずダミー車両を優先的に回収し、すべてのダミー車両を回収してもなお車両を回収する必要がある場合には、先頭の車両(ダミー車両でない車両)から回収する。先頭の車両から回収する場合には、後続の車両の前方に車間が空くため、後続の車両を前に詰める処理が必要となる。なお、渋滞末尾から車両を回収した場合、回収した車両がダミー車両でない車両のときは、ダミーリンクを通ってリンク上の車両よりも先にリンク下流に流出することになり、回収した車両による追い越し状態が発生するが、追い越し状態が許容できる場合には、渋滞末尾から回収することにより、車両を前に詰める処理が不要となる。
起点終点生成部14で生成した起点交通量(放出した車両)にダミー車両とダミー車両でない車両とが混在する場合の具体例について説明する。
車両を放出する場合、直近(前回)の補正周期までに車両をリンクから回収し、今回の補正周期で当該リンク下流交差点にて再放出しきれていない車両があるときは、当該車両を優先的にリンク上に放出する。すなわち、補正項で車両をリンクへ放出する場合、ダミーリンク上に車両が存在するときには、ダミーリンク上の車両をリンク(本線)に戻した上で、(放出すべき台数−ダミーリンクから戻した台数)をダミー車両として放出する。例えば、放出必要台数(リンク下流交差点での起点交通量)を10台とし、下流交差点で放出しきれていない車両(終点交通量に伴って下流交差点で再放出される車両のうちで、放出しきれていない車両)を7台とすると、7台をリンク上に戻し(放出)、3台をダミー車両として放出する。
補正周期(例えば、50秒など)の間に、再放出しきれない車両が残る場合がある理由は、下流交差点での再放出の際には、放出最大量(例えば、2500台/車線/時)を下回るように再放出させるためである。放出最大量は、正規リンクから流出する車両及びダミーリンクからの再放出車両の合計台数である。下流リンクに2500台以上の車両が流れ込むと下流の負荷が高くなるために、放出最大量を上限として設けている。
開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
第4発明に係る交通評価装置は、第1発明乃至第3発明のいずれか1つにおいて、前記評価条件設定手段で評価条件を設定した後に、前記放出回収手段により任意のリンクで補正出発交通量を任意の周期で放出する場合、放出する補正出発交通量と該リンクに放出可能な交通量とを比較する第2比較手段を備え、前記放出回収手段は、放出する補正出発交通量が前記リンクに放出可能な交通量よりも多い場合、該放出可能な交通量を補正出発交通量として放出し、放出した補正出発交通量と前記リンクに放出可能な交通量との差分交通量を前記周期の次の周期の補正出発交通量に加算するように構成してあることを特徴とする。
第3発明にあっては、評価条件を設定した後に、任意のリンクで終点交通量を任意の周期で回収する場合、回収する終点交通量と当該リンクでの交通量とを比較する。当該リンクでの交通量とは、模擬車両の模擬走行の結果得られた当該リンクでの交通量である。回収する終点交通量が当該リンクでの交通量よりも多い場合、当該リンクでの交通量を終点交通量として回収し、終点交通量と当該リンクでの交通量との差分交通量を現在の周期の次の周期の終点交通量に加算する。すなわち、差分交通量を次の周期に繰り越す。これにより、想定ケース計算時、すなわち評価条件設定後のシミュレーションにおいて、補正項をシミュレーション上の道路から回収することができない事態を防止することができる。
図6は推定渋滞長の補正の一例を示す模式図である。図6に示すように、本実施の形態の交通シミュレータ10は、リンク単位であって所定の補正周期(例えば、5分など)の経過の都度、起点交通量(交通量の起点)としてダミー車両又はダミー車両でない車両(正規の車両)を放出し、又は終点交通量(交通量の終点)としてダミー車両又は正規の車両を回収することにより、推定渋滞長が実測渋滞長と一致するように推定渋滞長を補正する。
また、起点終点生成部14は、評価条件設定部19で評価条件を設定した後に、任意のリンクで起点交通量を任意の周期で放出する場合、放出する起点交通量と当該リンクに放出可能な交通量とを比較する。放出する起点交通量が当該リンクに放出可能な交通量よりも多い場合、当該放出可能な交通量を起点交通量として放出し、放出した起点交通量と当該リンクに放出可能な交通量との差分交通量を現在の周期の次の周期の起点交通量に加算する。すなわち、差分交通量を次の周期に繰り越す。これにより、想定ケース計算時、すなわち評価条件設定後のシミュレーションにおいて、補正項をシミュレーション上の道路に放出することができない事態を防止することができる。
図18は実施の形態2の交通シミュレータ50による交通量補正の一例を示す模式図である。図18に示すように、実施の形態2の交通シミュレータ50は、リンク単位であって所定の補正周期(例えば、5分など)の経過の都度、起点交通量(交通量の起点)としてダミー車両又はダミー車両でない車両(正規の車両)を放出し、又は終点交通量(交通量の終点)としてダミー車両又は正規の車両を回収することにより、推定交通量が実測交通量と一致するように推定交通量を補正する。
図18の例では、リンク1では実測交通量が推定交通量より多いので、実測交通量と推定交通量との差に相当する台数(補正台数)の車両をリンク1で放出する。すなわち、正規の車両に加えてダミー車両又は正規の車両を走行させて交通量を多くする。
識別符号付与部21は、起点終点生成部14で起点交通量としてリンクに車両(ダミー車両)を放出する場合、当該車両を識別する識別符号を付与する。発生消滅部17は、当該リンクの下流側で終点交通量としてダミー車両又はダミー車両でない車両(正規の車両)を回収する場合、識別符号が付与された車両を優先して回収する。任意のリンクで起点交通量として車両を放出した場合に、当該リンクの下流側(当該リンク及び当該リンクと異なるリンクを含む)で車両を回収するときに、放出した識別符号が付与された車両を優先的に回収することにより、任意のリンクで起点交通量を生成したことにより生じる影響を当該リンクの下流側に与えることを防止することができる。
(推定誤差−リンクの固有値)がゼロより大きい場合(S129でYES)、交通シミュレータ50は、補正台数を算出し(S130)、算出した補正台数の車両(ダミー車両又は正規の車両)を起点交通量としてリンクに放出する(S131)。