JP2013041240A - 液晶表示装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】画面の明るさ、及び画像の鮮明性を向上し、実用上十分な視野角補償効果を有するTNモード液晶表示装置の提供。
【解決手段】一対の基板と液晶層とを少なくとも有するTNモード液晶セル(10)、その両側に、視認側偏光子及びバックライト側偏光子(12,14)、並びに視認側偏光子及びバックライト側偏光子の少なくとも一方とTNモード液晶セルとの間に位相差フィルム(16,18)を少なくとも有する液晶表示装置であって、前記位相差フィルムの全ヘイズ値が1.0%以下で、内部ヘイズ値が0.50%以下であり、且つフィルム面内の軸バラツキが1.0°以下であり、前記TNモード液晶セルのDI値が0.000800以下である液晶表示装置である。
【選択図】図1

Description

本発明は、TNモード液晶表示装置に関し、特に、TNモードの特徴である開口率の高さに起因する画面の明るさ、及び画像の鮮やかさを両立したTNモード液晶表示装置に関する。
ワードプロセッサ、ノートパソコン、及びパソコン用モニターなどのOA機器、携帯端末、並びにテレビなどに用いられる液晶表示装置は、液晶セル、及び偏光板を含む。偏光板は、一般的には、偏光膜と、その両側に貼着された保護膜とからなり、例えば、ポリビニルアルコールフィルムからなる膜をヨウ素にて染色し、延伸して作製した偏光膜の両面に、セルローストリアセテートフィルム等の保護膜を積層して得られる。液晶セルは、一般的には、液晶材料、それを封入するための二枚の基板、及び液晶分子に電圧を加えるための電極層を有する。液晶セルは、液晶分子の配向状態の違いで、ON、OFF表示を行い、透過型、反射型及び半透過型のいずれにも適用できる。透過型液晶表示装置では、偏光板を液晶セルの両側に配置し、反射型液晶表示装置では、反射板、液晶セル、偏光板の順に配置する。
偏光板と液晶セルの間に一枚以上の光学補償シートを配置することが提案されている。光学補償シートは、画像着色の解消、視野角の拡大等を目的として用いられる。この光学補償シートとして、延伸複屈折ポリマーフィルムが従来から使用されていた。また、延伸複屈折フィルムからなる光学補償シートに代えて、透明支持体上に低分子あるいは高分子液晶性化合物から形成された光学異方性層を有する光学補償シートを使用することも提案されている。これらの光学補償シートを、偏光板の保護膜として機能させることも提案されている。
ところで、液晶表示装置としては、TN(Twisted Nematic)、IPS(In−Plane Switching)、OCB(Optically Compensatory Bend)、VA(Vertically Aligned)、ECB(Electrically Controlled Birefringence)、STN(Super Twisted Nematic)のような表示モードが種々提案されている。前記光学補償シートの光学的性質は、液晶セルの光学的性質、具体的には上記のような表示モードの違いに応じて決定される。
TNモードの光学補償の代表例としては、位相差の同じ延伸フィルムを、互いの光学軸を直交にして積層した、面内レターデーションを0nmに近づけたフィルム組を上下偏光板と液晶セルの間に各々配置する方法が挙げられる(例えば、特許文献1参照)。また、TNモードの光学補償の他の例としては、液晶組成物の配向を利用する方法が挙げられる(例えば、特許文献2及び3)。
ここで延伸フィルムを用いた光学補償シートは、液晶性化合物を用いた光学補償シートと比較して、現時点ではやや視野角特性に劣るものの、安価で光透過率に優れるという理由から、適用される液晶表示装置の目的や用途次第で、実用に耐え得る製品として提供することが可能である(例えば、特許文献4)。
特開平4-162018号公報 特開平6-214116号公報 特開平10-186356号公報 特開2009−037231号公報
しかし、例えば、上記特許文献1に開示の積層フィルムの光学特性によるTNモードLCDの補償では、視野角が不足し、また延伸フィルムを積層しているため、フィルム膜厚が増加してヘイズが高くなる傾向にある。また、延伸フィルムを積層することで、面内レターデーションを0に近づけるため、光学軸(面内遅相軸)のズレ及び軸バラツキが大きい場合には、実用上十分な程度の補償効果が得られていなかった。更に、パネル自身の偏光解消の効果が加わると、延伸フィルムを配置したTNモードLCDにおいては、TNモードLCDの特徴である画面の明るさ、画像の鮮明度を十分に発揮できていなかった。
本発明は、実用上十分な程度の視野角補償効果を有し、TNモードLCDの特徴である開口率の高さに起因する画面の明るさ、及び画像の鮮明度を向上したTNモード液晶表示装置を提供することを課題とする。
前記課題を解決するため、本発明の液晶表示装置は、光学補償フィルムとして低ヘイズで、軸精度の高い位相差フィルムを使用し、さらに偏光解消の効果が少ないTNモード液晶セルを使用することを特徴とする。即ち、前記課題を解決するための手段は以下の通りである。
[1] 一対の基板と液晶層とを少なくとも有するTNモード液晶セル、
その両側に、視認側偏光子及びバックライト側偏光子、並びに
視認側偏光子及びバックライト側偏光子の少なくとも一方とTNモード液晶セルとの間に位相差フィルムを少なくとも有する液晶表示装置であって、
前記位相差フィルムの全ヘイズ値が1.0%以下で、内部ヘイズ値が0.50%以下であり、且つフィルム面内の軸バラツキが1.0°以下であり、
前記TNモード液晶セルのDI値が0.000800以下である液晶表示装置。
[2] 前記位相差フィルムがセルロースエステルを含む[1]の液晶表示装置。
[3] 前記位相差フィルムが、nx>ny>nz、30nm≦Re(590)≦200nm、及び70nm≦Rth(590)≦400nmを満足する[1]又は[2]の液晶表示装置:但し、nx:面内の最大屈折率、ny:nxと垂直する方向の屈折率、nz:厚み方向の屈折率、Re(590):波長590nmの面内レターデーション(nm)、及びRth(590):波長590nmの厚み方向レターデーション(nm))である。[4] 前記位相差フィルムが、アセチル基と他のアシル基を有するセルロースアシレートを含む[1]〜[3]のいずれかの液晶表示装置。
[5] 前記位相差フィルムが、糖エステル、ポリエステルオリゴマー、フタル酸系エステル、アクリルオリゴマー、及び多価アルコールエステルから選択される少なくとも1種を含む[1]〜[4]のいずれかの液晶表示装置。
[6] 前記位相差フィルムの平均遅相軸方向と、TNモード液晶セルの一対の基板のうち前記位相差フィルムにより近い位置に配置された基板上の液晶分子配向方向とが、直交である[1]〜[5]のいずれかの液晶表示装置。
[7] 前記TNモード液晶セルと、前記視認側偏光子及びバックライト側偏光子との配置の関係がOモードである[1]〜[6]のいずれかの液晶表示装置。
[8] 前記液晶表示装置のバックライト光を集光する光学シートを前記TNモード液晶セルの背面側に有し、該光学シートから出射されたバックライト光の光量を測定したとき、該液晶表示装置の表示画面の法線に対して、前記TNモード液晶セルの面内位相差が最大となる方向に傾けられた出射角度50°〜85°の範囲の光量の平均値が、該法線方向の光量に対して12%以下である[1]〜[7]のいずれかの液晶表示装置。
[9] 前記光学シートが、凸部を液晶セル側へ向けたプリズムシートである[8]の液晶表示装置。
[10] 前記TNモード液晶セルの面内位相差が最大となる方向が、前記表示画面を視認する際に鉛直方向である[8]又は[9]の液晶表示装置。
本発明によれば、実用上十分な程度の視野角補償効果を有し、TNモードLCDの特徴である開口率の高さに起因する画面の明るさ、及び画像の鮮明度が向上したTNモード液晶表示装置を提供することができる。
本発明の液晶表示装置の一例の断面模式図である。 本発明の液晶表示装置の一例の模式図である。 液晶セルの背面側に有する光学シートとバックライトとの関係の断面模式図である。 光学シートにおける光路の一例を示す断面図である。 プリズムシートの製造装置の一例を示す概略図である。 支持体2の第二の表面4上にポジ型感光層8を形成したプリズムシートAの模式断面図である。 支持体2の第二の表面4上にポジ型感光層8を形成したプリズムシートAを露光した様子を示した模式断面図である。 図7の露光後、露光部を洗い流した様子を示した模式断面図である。 支持体2に白色反射シート10を配置した様子を示した模式断面図である。 白色反射シートを支持体2から剥離した様子を示した模式断面図である。 光度と出射角度の関係を各プリズムシートについて正面(0°)で測定した光度(cd)を基準に規格化したグラフである。
以下、本発明の実施の形態を挙げて詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
まず、本明細書で用いられる用語について説明する。
Re(λ)、Rth(λ)は、各々、波長λにおける面内のレターデーション、及び厚さ方向のレターデーションを表す。Re(λ)はKOBRA 21ADH、又はWR(王子計測機器(株)製)において、波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。測定波長λnmの選択にあたっては、波長選択フィルターをマニュアルで交換するか、または測定値をプログラム等で変換して測定することができる。測定されるフィルムが、1軸又は2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法によりRth(λ)が算出される。
Rth(λ)は、前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH、又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合には、フィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50°まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADH、又はWRが算出する。なお、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合には、フィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値、及び入力された膜厚値を基に、以下の式(A)、及び式(B)よりRthを算出することもできる。
Figure 2013041240
なお、上記のRe(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値を表す。また、上記式中、nxは、面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは、面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzは、nx及びnyに直交する方向の屈折率を表す。dは測定フィルムの厚みを示す。
測定されるフィルムが、1軸や2軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(optic axis)がないフィルムの場合には、以下の方法により、Rth(λ)は算出される。Rth(λ)は、前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH、又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として、フィルム法線方向に対して−50°から+50°まで10°ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。また、上記の測定において、平均屈折率の仮定値は、ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについては、アッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADH又はWRはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx、ny、nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。
本明細書において、「平行」、「直交」とは、厳密な角度±10゜未満の範囲内であることを意味する。この範囲は厳密な角度との誤差は、±5゜未満であることが好ましく、±2゜未満であることがより好ましい。また、「遅相軸」は、屈折率が最大となる方向を意味する。
なお、屈折率の測定波長は、特に断らない限り、可視光域のλ=590nmでの値であり、Re及びRthの測定波長については、特に断らない限り、590nmとする。
〈平均遅相軸方向、面内軸バラツキ〉
本明細書においては、自動複屈折測定装置(エトー商事株式会社製AD200S)を用いて、フィルムの遅相軸角度を測定する。ここで、遅相軸角度は、ロール状フィルムの場合、サンプルフィルムの遅相軸と、フィルム長手方向との角度をいうが、市販の偏光板やディスプレイに使用されているフィルムを測定する場合は、特定の基準となる方向(例えば、矩形状の任意の辺に平行な方向)を決定し、その方向を基準として遅相軸とのなす角度を遅相軸角度とする。
具体的には、フィルムに、AD200Sの測定スポット位置が異なり、かつ全幅に対して測定点が均等に配置されるよう、延伸方向にかけて中心を含む5箇所、さらに前記中心の1点を含む搬送方向にかけて3箇所、計7箇所の遅相軸角度の測定点を等間隔に設けた。それぞれの測定点を含むように、フィルムからサンプル(11cm×7cm)を切り出し、それぞれのサンプルについて遅相軸角度を測定する。前記した様に、市販の偏光板やディスプレイに使用されているフィルムを測定する場合は、特定の基準となる方向を決定し、その方向を基準として遅相軸とのなす角度を遅相軸角度とするので、測定点は得られたフィルム全体の中で均等に配置されるように7点を選択すればよい。
フィルム面内の軸バラツキは、上記通りに測定された遅相軸角度の最大値から遅相軸角度の最小値を減じた遅相軸ズレ量として算出する。
〈全ヘイズ、内部ヘイズ〉
以下の測定により、得られたフィルムの全ヘイズ(H)、内部ヘイズ(Hi)、表面ヘイズ(Hs)を測定した。
1)得られたフィルムの全ヘイズ(H)をJIS K−7136に従ってヘイズメーターNDH2000(日本電色工業(株))を用いて測定した。
2)得られたフィルム6枚の表面及び裏面に流動パラフィンを数滴添加して積層し、厚さ1mmのガラス板(ミクロスライドガラス品番S、MATAUNAMI製)を2枚用いて裏表より挟んで、完全に2枚のガラス板と得られたフィルム6枚を光学的に密着し、表面ヘイズを除去した状態でヘイズを測定し、別途測定したガラス板2枚の間に流動パラフィンのみを挟んで測定したヘイズを引いた値を算出し、この値をフィルム積層枚数で除してフィルム1枚辺りの内部ヘイズ(Hi)として算出した。
3)上記1)で測定した全ヘイズ(H)から上記2)で算出した内部ヘイズ(Hi)を引いた値をフィルムの表面ヘイズ(Hs)として算出した。
本発明は、一対の基板と液晶層とを少なくとも有するTNモード液晶セル、その両側に、視認側偏光子及びバックライト側偏光子、並びに視認側偏光子及びバックライト側偏光子の少なくとも一方とTNモード液晶セルとの間に位相差フィルムを少なくとも有する液晶表示装置であって、前記位相差フィルムの全ヘイズ値が1.0%以下で、内部ヘイズ値が0.50%以下であり、且つフィルム面内の軸バラツキが1.0°以下であり、前記TNモード液晶セルのDI値が0.000800以下である液晶表示装置、に関する。
本発明では、光学補償フィルムとして低ヘイズで、軸精度の高い位相差フィルムを使用し、さらに偏光解消の効果が少ないTNモード液晶セルを使用することで、実用上十分な視野角特性を達成するとともに、TNモードの特徴である開口率の高さに起因する画面の明るさ、及び画像の鮮やかさが両立したTNモード液晶表示装置を提供している。
本発明の液晶表示装置の一例の断面模式図を図1に示す。
図1に示す液晶表示装置1は、TNモード液晶セル10、その両側に、視認側偏光子12及びバックライト側偏光子14、並びに視認側偏光子12及びバックライト側偏光子14のそれぞれとTNモード液晶セル10との間に、位相差フィルム16及び18をそれぞれ有し、視認側偏光子12及びバックライト側偏光子14それぞれのさらに外側に、保護フィルム20及び22をそれぞれ有する。
位相差フィルム16及び18の全ヘイズ値は1.0%以下(好ましくは0.60%以下、より好ましくは0.30%以下、さらに好ましくは0.25%以下、最も好ましくは0.20%以下、理想的には0%)で、内部ヘイズ値は0.50%以下(好ましくは0.30%以下、より好ましくは0.10%以下、さらに好ましくは0.050%以下、最も好ましくは0.030%以下、理想的には0%)であり、且つフィルム面内の軸バラツキが1.0°以下(好ましくは0.5°以下、より好ましくは0.4°以下、さらに好ましくは0.3°以下、理想的には0°)である。
また、前記TNモード液晶セル10の後述する方法により算出されるDI値は、0.000800以下(好ましくは0.000750以下、より好ましくは0.00070以下、さらに好ましくは0.00065以下、最も好ましくは0.00060以下、理想的には0)である。
TNモード液晶表示装置には、一対の偏光子の配置として、EモードとOモードとがある。本発明の効果は、Eモード及びOモード配置のいずれでも得られるが、特にOモード配置において顕著になる。一方で、Eモード配置のほうが、色味の点では好ましい。図2にOモード配置の一例を示す。Oモード配置では、液晶セル10の一対の基板(不図示)の内面に施されたラビング方向10a及び10bのそれぞれと、より近くに配置される偏光子12及び14それぞれの透過軸12a及び14aとがそれぞれ直交である。
以下、本発明に用いられる種々の部材について説明する。
《位相差フィルム》
〈フィルムを形成するポリマー材料〉
本発明に使用する位相差フィルムを形成するポリマー材料としては、特に限定されないが、例えば、セルロースエステル、ポリカーボネート系ポリマー、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系ポリマー等を利用することができる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ノルボルネン等のシクロポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体の如きポリオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、又は前記ポリマーを混合したポリマー等から1種又は2種以上のポリマーを選択し、主成分として用いてポリマーフィルムを作製し利用することができる。また汎用されている市販品のポリマーフィルムを用いることもできる。
この中で、セルロースエステルを用いることが好ましく、偏光板加工適正、光学発現性、透明性、機械特性、耐久性、コスト等の観点から、アセチル基等のアシル基を有するセルロースアシレートを用いることが特に好ましい。
〈セルロースアシレート〉
前記位相差フィルムの材料としてセルロースアシレートを使用する場合、前記位相差フィルムは、1種又は2種以上のセルロースアシレートを主成分として含有する。ここで「主成分として含有する」とは、フィルムの材料として用いられているセルロースアシレートが1種である場合は、当該セルロースアシレートをいい、複数種である場合は、最も高い割合で含有されるセルロースアシレートをいう。
セルロースには、β−1,4結合しているグルコース単位当り、2位、3位及び6位に遊離の水酸基がある。セルロースアシレートは特に限定はされないが、セルロースアセテート、またはアセチル基と他のアシル基を有するセルロースアシレートを用いることが好ましい。
これらの3つの水酸基のうち平均で2.00〜2.80の水酸基の水素原子がアシル基に置換され、好ましい第一の態様の一例は、全てがアセチル基であることである。
また、好ましい第二の態様の一例は、3つの水酸基のうち平均で2.00〜2.80の水酸基の水素原子がアシル基に置換され、且つそのうち0.50〜1.50がプロピオニル基及び/又はブチリル基で置換されているセルロースアセテート・プロピオネート、セルロースアセテート・ブチレート、又はセルロースアセテート・プロピオネート・ブチレートを用いることである。
好ましい第二の態様としては、セルロースアセテート・プロピオネートを用いることが特に好ましい。
総アシル基置換度が2.00未満であると、無置換のヒドロキシ基が多く存在し、フィルムの湿度依存性が大きくなり、液晶表示装置の光学部材としての用途等、湿度に対する耐久性を必要とされる用途には適さなくなる。一方、総アシル基置換度が、2.80を超えてしまうと、Re及びRthの発現性が低下し、好ましくない。双方の観点では、好ましい第一の態様、第二の態様ともに総アシル基置換度は、2.20〜2.70であるのがより好ましく、2.40〜2.60であるのがさらに好ましい。なお、3層共流延法により製造する場合は、コア層のセルロースアシレートの総アシル基置換度が上記範囲であることが好ましい。
一方、第二の態様としてセルロースアシレートのプロピオニル基及び/又はブチリル基の置換度は、フィルムのRe及びRthの発現性に影響するとともに、フィルムの湿度依存性及び弾性率にも影響する。プロピオニル基及び/又はブチリル基の置換度を0.5〜1.5とすることで、これらの両立した好ましい特性を得ることができる。プロピオニル基及び/又はブチリル基置換度は0.60〜1.10がより好ましく、0.80〜1.00であるのがさらに好ましい。
なお、本明細書では、セルロースアシレートのアシル基置換度は、セルロースの構成単位質量当りの結合脂肪酸量を測定して算出することができる。測定方法は、「ASTM D817−91」に準じて実施する。
セルロースアシレート原料のセルロースとしては、綿花リンタや木材パルプ(広葉樹パルプ,針葉樹パルプ)などがあり、何れの原料セルロースから得られるセルロースアシレートでも使用でき、場合により混合して使用してもよい。これらの原料セルロースについての詳細な記載は、例えば、丸澤、宇田著、「プラスチック材料講座(17)繊維素系樹脂」日刊工業新聞社(1970年発行)や発明協会公開技報公技番号2001−1745号(7頁〜8頁)に記載のセルロースを用いることができ、前記セルロースアシレートフィルムに対しては特に限定されるものではない。
前記セルロースアシレートは、350〜800の質量平均重合度を有することが好ましく、370〜600の質量平均重合度を有することがさらに好ましい。また本発明に用いるセルロースアシレートは、60000〜230000の数平均分子量を有することが好ましく、70000〜230000の数平均分子量を有することがさらに好ましく、78000〜120000の数平均分子量を有することがよりさらに好ましい。
前記セルロースアシレートは、アシル化剤として酸無水物や酸塩化物を用いて合成できる。工業的に最も一般的な合成方法としては、以下の通りである。綿花リンタや木材パルプなどから得たセルロースをアセチル基並びにプロピオニル基及び/又はブチリル基に対応する有機酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸)又はそれらの酸無水物(無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸)を含む混合有機酸成分でエステル化し、目的のセルロースアシレートを合成することができる。
〈可塑剤〉
前記位相差フィルムは、可塑剤を含有していてもよい。前記位相差フィルムの主成分(例えばセルロースアシレート)との相溶性が良い可塑剤は、ブリードアウトが生じ難く、低ヘイズであり、更に含水率及び透湿度を低減させるので、高品質で高耐久性を有するフィルムを得るのに有効である。
前記位相差フィルムに使用可能な可塑剤としては特に限定しないが、リン酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、多価アルコールエステル系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤、グリコレート系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、脂肪酸エステル系可塑剤、カルボン酸エステル系可塑剤、ポリエステルオリゴマー系可塑剤、糖エステル系可塑剤、エチレン性不飽和モノマー共重合体系可塑剤などが挙げられる。
好ましくはリン酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル系化合物、多価アルコールエステル系可塑剤、ポリエステルオリゴマー系可塑剤、糖エステル系可塑剤、エチレン性不飽和モノマー共重合体系可塑剤であり、より好ましくは多価アルコール系可塑剤、ポリエステルオリゴマー系可塑剤、糖エステル系可塑剤、エチレン性不飽和モノマー共重合体系可塑剤であり、さらに好ましくは糖エステル系可塑剤である。
特にポリエステルオリゴマー系可塑剤、多価アルコールエステル系可塑剤、糖エステル系可塑剤、及びエチレン性不飽和モノマー共重合体系可塑剤はセルロースアシレートとの相溶性が高く、ブリードアウト低減、低ヘイズ及び低透湿度の効果が高く、また温湿度変化や経時による可塑剤の分解及びフィルムの変質や変形が生じ難いため、好ましい。
位相差フィルムとして二軸性フィルムを用いる態様では、中でも、可塑剤として、糖エステル系可塑剤、ポリエステルオリゴマー系可塑剤、及び多価アルコール系可塑剤は、光学発現性に優れるために特に好ましく、糖エステル系可塑剤はさらにセルロースアシレートと構造が近いために、非常に低ヘイズなフィルムの作製が可能となるため、最も好ましい。
本発明において、可塑剤は1種のみで用いてもよいし、2種以上を混合して使用することもできる。可塑剤を2種類以上混合して使用する場合、1種類のみを用いることよりも相溶性が良好となり、ブリードアウト低減、低ヘイズとなる可能性が高い。これは、セルロースアシレートフィルムとの1種の可塑剤との相溶性を、他の1種の可塑剤が相溶化剤的に働くことで改善させるからであると推定している。
可塑剤を2種類以上混合して使用する場合、少なくとも1種は糖エステル系可塑剤、またはポリエステルオリゴマー系可塑剤であることが好ましく、糖エステル系可塑剤であることがさらに好ましい。
前記位相差フィルムにおいて、可塑剤の含有量は、主成分ポリマー(例えばセルロースアシレート)に対して0.1〜50質量%であることが好ましく、1〜30質量%であることがより好ましく、5〜20質量%であることが更に好ましく、7〜15質量%であることが特に好ましい。
〈リン酸エステル系可塑剤〉
リン酸エステル系可塑剤としては特に限定されないが、トリフェニルホスフェート(TPP)、トリクレジルホスフェート(TCP)、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート(BDP)、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェートなどが挙げられる。
〈フタル酸エステル系可塑剤〉
フタル酸エステル系可塑剤としては特に限定されないが、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、メチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジベンジルフタレートなどが挙げられる。
〈グリコレート系可塑剤〉
グリコレート系可塑剤は特に限定されないが、アルキルフタリルアルキルグリコレート類が好ましく用いることができる。
アルキルフタリルアルキルグリコレート類としては、例えばメチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、エチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルメチルグリコレート、ブチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルオクチルグリコレート、エチルフタリルオクチルグリコレート、オクチルフタリルメチルグリコレート、オクチルフタリルエチルグリコレート等が挙げられる。
〈多価アルコールエステル系可塑剤〉
多価アルコールエステル系可塑剤は2価以上の脂肪族多価アルコールとモノカルボン酸のエステルよりなる可塑剤であり、分子内に芳香環又はシクロアルキル環を有することが好ましい。好ましくは2〜20価の脂肪族多価アルコールエステルである。
本発明に好ましく用いることのできる多価アルコールの例としては、例えば以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
アドニトール、アラビトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジブチレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ヘキサントリオール、ガラクチトール、マンニトール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ピナコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、キシリトール等を挙げることができる。
特に、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、キシリトールが好ましい。
多価アルコールエステルに用いられるモノカルボン酸としては、特に制限はなく、公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等を用いることができる。脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸を用いると透湿性、保留性を向上させる点で好ましい。
好ましいモノカルボン酸の例としては以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
脂肪族モノカルボン酸としては、炭素数1〜32の直鎖又は側鎖を有する脂肪酸を好ましく用いることができる。炭素数は1〜20であることが更に好ましく、1〜10であることが特に好ましい。酢酸を含有させるとセルロースエステルとの相溶性が増すため好ましく、酢酸と他のモノカルボン酸を混合して用いることも好ましい。
好ましい脂肪族モノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等の不飽和脂肪酸等を挙げることができる。
好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、又はそれらの誘導体を挙げることができる。
好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸等の安息香酸のベンゼン環にアルキル基、メトキシ基或いはエトキシ基などのアルコキシ基を1〜3個を導入したもの、ビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸等のベンゼン環を2個以上有する芳香族モノカルボン酸、又はそれらの誘導体を挙げることができる。特に安息香酸が好ましい。
多価アルコールエステルの分子量は特に制限はないが、300〜1500であることが好ましく、350〜750であることが更に好ましい。分子量がこの範囲であると、低揮散で、透湿性、セルロースエステルとの相溶性も良好であって好ましい。
多価アルコールエステルに用いられるカルボン酸は1種類でもよいし、2種以上の混合であってもよい。また、多価アルコール中のOH基は、全てエステル化されていてもよいし、一部がOH基のままのこっていてもよい。
以下に、多価アルコールエステルの具体的化合物を例示する。
Figure 2013041240
Figure 2013041240
Figure 2013041240
Figure 2013041240
〈ポリエステルオリゴマー系可塑剤〉
本発明におけるポリエステルオリゴマーは、ジオールとジカルボン酸とから、例えば、混合して得られる重縮合体である。
ポリエステルオリゴマーの数平均分子量は300〜3000であることが好ましい。
ポリエステルオリゴマーの数平均分子量はGPC(Gel Permeation Chromatography)を用いて通常の方法で測定することができる。
例えば、カラム(東ソー(株)製 TSKgel Super HZM−H、TSKgel Super HZ4000及びTSKgel Super HZ2000)の温度を40℃として、溶離液としてTHFを用い、流速を0.35ml/minとし、検出をRI、注入量を10μl、試料濃度を1g/lとし、また標準試料としてポリスチレンを用いて行うことができる。
ジカルボン酸としては、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。これらジカルボン酸は、ポリエステルオリゴマー中には、ジオール残基とのエステル結合するジカルボン酸残基として含まれる。
芳香族ジカルボン酸残基:
芳香族ジカルボン酸残基は、ジオールと芳香族ジカルボン酸を含むジカルボン酸とから得られた重縮合体に含まれる。
芳香族ジカルボン酸残基とはポリエステルオリゴマーの部分構造で、ポリエステルオリゴマーを形成している単量体の特徴を有する部分構造を表す。例えばジカルボン酸HOOC−R−COOHより形成されるジカルボン酸残基は−OC−R−COーである。
本発明に用いるポリエステルオリゴマーを構成する全ジカルボン酸残基中の芳香族ジカルボン酸残基比率は特に限定されないが、40mol%〜100mol%であることが好ましい。
芳香族ジカルボン酸残基比率を40mol%以上とすることで、十分な光学異方性を示すセルロースアシレートフィルムが得られる。
本発明に用いる芳香族ジカルボン酸は、例えば、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,8−ナフタレンジカルボン酸又は2,6−ナフタレンジカルボン酸等を挙げることができる。
ポリエステルオリゴマーには混合に用いた芳香族ジカルボン酸により芳香族ジカルボン酸残基が形成される。
芳香族ジカルボン酸は、平均炭素数が8.0〜12.0であることが好ましく、8.0〜10.0であることがより好ましく、8.0であることが更に好ましい。この範囲であれば、セルロースアシレートとの相溶性に優れ、セルロースアシレートフィルムの製膜時及び加熱延伸時においてもブリードアウトを生じにくいため好ましい。また、光学用途として光学補償フィルムに用いるに適した異方性を十分に発現し得るセルロースアシレートフィルムとすることができるため好ましい。
具体的には、芳香族ジカルボン酸は、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸の少なくとも1種を含むことが好ましく、より好ましくはフタル酸、テレフタル酸の少なくとも1種を含み、更に好ましくはテレフタル酸を含む。すなわち、ポリエステルオリゴマーの形成における混合に、芳香族ジカルボン酸としてテレフタル酸を用いることで、よりセルロースアシレートとの相溶性に優れ、セルロースアシレートフィルムの製膜時及び加熱延伸時においてもブリードアウトを生じにくいセルロースアシレートフィルムとすることができる。また、芳香族ジカルボン酸は1種でも、2種以上を用いてもよい。2種用いる場合は、フタル酸とテレフタル酸を用いることが好ましい。
脂肪族ジカルボン酸残基:
脂肪族ジカルボン酸残基は、ジオールと脂肪族ジカルボン酸を含むジカルボン酸とから得られた重縮合体に含まれる。
本明細書中では、脂肪族ジカルボン酸残基とはポリエステルオリゴマーの部分構造で、ポリエステルオリゴマーを形成している単量体の特徴を有する部分構造を表す。例えばジカルボン酸HOOC−R−COOHより形成されるジカルボン酸残基は−OC−R−CO−である。
本発明で好ましく用いられる脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸又は1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。
重縮合体には混合に用いた脂肪族ジカルボン酸より脂肪族ジカルボン酸残基が形成される。
脂肪族ジカルボン酸残基は、平均炭素数は特に限定されないが、4.0〜6.0であることが好ましく、4.0〜5.0であることがより好ましく、4.0〜4.8であることが更に好ましい。この範囲であれば、セルロースアシレートとの相溶性に優れ、セルロースアシレートフィルムの製膜時及び加熱延伸時においてもブリードアウトを生じにくいため好ましい。
具体的には、コハク酸残基を含むことが好ましく、2種用いる場合は、コハク酸残基とアジピン酸残基を含むことが好ましい。
すなわち、ポリエステルオリゴマーの形成における混合に、脂肪族ジカルボン酸は1種でも、2種以上を用いてもよく、2種用いる場合は、コハク酸とアジピン酸を用いることが好ましい。
コハク酸とアジピン酸の2種の脂肪族ジカルボン酸を用いることにより、ジオール残基の平均炭素数を少なくすることができ、セルロースアシレートとの相溶性の点で好ましい。
また、脂肪族ジカルボン酸残基の平均炭素数が4.0未満では合成が困難となるため、使用できない。
ジオール:
ジオール残基は、ジオールとジカルボン酸とから得られたポリエステルオリゴマーに含まれる。
本明細書中では、ジオール残基とはポリエステルオリゴマーの部分構造で、ポリエステルオリオゴマーを形成している単量体の特徴を有する部分構造を表す。例えばジオールHO−R−OHより形成されるジカルボン酸残基は−O−R−O−である。
ポリエステルオリゴマーを形成するジオールとしては芳香族ジオール及び脂肪族ジオールが挙げられ、特に限定はされないが、脂肪族ジオールが好ましい。
ポリエステルオリゴマーのジオールは特に限定はされないが、平均炭素数が2.0以上3.0以下の脂肪族ジオール残基を含むことが好ましい。脂肪族ジオール残基の平均炭素数が3.0より大きいとセルロースアシレートとの相溶性が低く、ブリードアウトが生じやすくなり、また、化合物の加熱減量が増大し、セルロースアシレートェブの乾燥時の工程汚染が原因と考えられる面状故障が発生する可能性が高まる。また、脂肪族ジオール残基の平均炭素数が2.0未満では合成が困難となるため、使用できない。
前記脂肪族ジオールとしては、アルキルジオール又は脂環式ジオール類を挙げることができ、例えばエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロ−ルペンタン)、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロールヘプタン)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−オクタデカンジオール、ジエチレングリコール等があり、これらはエチレングリコールとともに1種又は2種以上の混合物として使用されることが好ましい。
好ましい脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、及び1,3−プロパンジオールの少なくとも1種であり、特に好ましくはエチレングリコール、及び1,2−プロパンジオールの少なくとも1種である。2種用いる場合は、エチレングリコール、及び1,2−プロパンジオールを用いることが好ましい。
ポリエステルオリゴマーには混合に用いたジオールによりジオール残基が形成される。
封止:
前記ポリエステルオリゴマーの両末端は封止、未封止を問わないが、より好ましくは封止しているものである。
ポリエステルオリゴマーの両末端が未封止の場合、重縮合体はポリエステルポリオールであることが好ましい。
ポリエステルオリゴマーの両末端が封止されている場合、モノカルボン酸と反応させて封止することが好ましい。このとき、該重縮合体の両末端はモノカルボン酸残基となっている。
本明細書中では、モノカルボン酸残基とはポリエステルオリゴマーの部分構造で、ポリエステルオリゴマーを形成している単量体の特徴を有する部分構造を表す。例えばモノカルボン酸R−COOHより形成されるモノカルボン酸残基はR−CO−である。モノカルボン酸封止は芳香族モノカルボン酸、脂肪族カルボン酸のどちらを用いてもよい。モノカルボン酸は、例えば、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、安息香酸及びその誘導体等が好ましい。封止に用いるモノカルボン酸は2種以上を混合してもよい。
本発明に係るポリエステルオリゴマーの合成は、常法によりジオールとジカルボン酸とのポリエステル化反応又はエステル交換反応による熱溶融縮合法か、あるいはこれら酸の酸クロライドとグリコール類との界面縮合法のいずれかの方法によっても容易に合成し得るものである。また、本発明に係るポリエステルオリゴマーについては、村井孝一編者「可塑剤 その理論と応用」(株式会社幸書房、昭和48年3月1日初版第1版発行)に詳細な記載がある。また、特開平05−155809号、特開平05−155810号、特開平5−197073号、特開2006−259494号、特開平07−330670号、特開2006−342227号、特開2007−003679号各公報などに記載されている素材を利用することもできる。
本発明のポリエステルオリゴマーが含有する原料の脂肪族ジオール、ジカルボン酸エステル、又はジオールエステルのセルロースアシレートフィルム中の含有量は、1質量%未満が好ましく、0.5質量%未満がより好ましい。ジカルボン酸エステルとしては、フタル酸ジメチル、フタル酸ジ(ヒドロキシエチル)、テレフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジ(ヒドロキシエチル)、アジピン酸ジ(ヒドロキシエチル)、コハク酸ジ(ヒドロキシエチル)等が挙げられる。ジオールエステルとしては、エチレンジアセテート、プロピレンジアセテート等が挙げられる。
ポリエステルオリゴマーの水酸基価の測定は、日本工業規格 JIS K3342(廃止)に記載の無水酢酸法当を適用できる。ポリエステルオリゴマーがポリエステルポリオールである場合は、水酸基価が55以上220以下であることが好ましく、100以上140以下であることが更に好ましい。
以下に、本発明に利用可能なポリエステルオリゴマー系可塑剤の具体例を示すが、以下の具体例に限定されるものではない。
Figure 2013041240
〈糖エステル系可塑剤〉
糖エステル系可塑剤で好ましいものとしては、フラノース構造又はピラノース構造を1個以上12個以下有する化合物中の水酸基の少なくとも1つをエステル化したエステル化合物が挙げられる。
フラノース構造又はピラノース構造を1個以上12個以下有する化合物中の水酸基の少なくとも1つをエステル化したエステル化合物としては、
フラノース構造又はピラノース構造を1個有する化合物(化合物(A))中の水酸基の全てもしくは一部をエステル化したエステル化化合物;及び
フラノース構造又はピラノース構造の少なくとも1種を2個以上12個以下結合した化合物(化合物(B))中の水酸基の全てもしくは一部をエステル化したエステル化化合物;が挙げられる。
以下、化合物(A)のエステル化化合物、及び化合物(B)のエステル化化合物を総称して、糖エステル化合物とも称す。
また、前記エステル化化合物が単糖類(α−グルコース、β−フルクトース)の安息香酸エステル、若しくは下記一般式(5)で表される単糖類の−OR512、−OR515、−OR522、−OR525の任意の2つ以上が脱水縮合して生成したm5+n5=2〜12の多糖類の安息香酸エステルであることが好ましい。
Figure 2013041240
前記一般式中の安息香酸は更に置換基を有していてもよく、例えばアルキル基、アルケニル基、アルコキシル基、フェニル基が挙げられ、更にこれらのアルキル基、アルケニル基、フェニル基は置換基を有していてもよい。
好ましい化合物(A)及び化合物(B)の例としては、例えば以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
化合物(A)の例としては、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、キシロース、或いはアラビノースが挙げられる。
化合物(B)の例としては、ラクトース、スクロース、ニストース、1F−フラクトシルニストース、スタキオース、マルチトール、ラクチトール、ラクチュロース、セロビオース、マルトース、セロトリオース、マルトトリオース、ラフィノース或いはケストース挙げられる。このほか、ゲンチオビオース、ゲンチオトリオース、ゲンチオテトラオース、キシロトリオース、ガラクトシルスクロースなども挙げられる。
これらの化合物(A)及び化合物(B)の中で、特にフラノース構造とピラノース構造を両方有する化合物が好ましい。例としてはスクロース、ケストース、ニストース、1F−フラクトシルニストース、スタキオースなどが好ましく、更に好ましくは、スクロースである。また、化合物(B)において、フラノース構造若しくはピラノース構造の少なくとも1種を2個以上3個以下結合した化合物であることも、好ましい態様の1つである。
本発明における化合物(A)及び化合物(B)中の水酸基の全て若しくは一部をエステル化するのに用いられるモノカルボン酸としては、特に制限はなく、公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等を用いることができる。用いられるカルボン酸は1種類でもよいし、2種以上の混合であってもよい。
好ましい脂肪族モノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサンカルボン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、オクテン酸等の不飽和脂肪酸等を挙げることができる。
好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、又はそれらの誘導体を挙げることができる。
好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸等の安息香酸のベンゼン環にアルキル基、アルコキシ基を導入した芳香族モノカルボン酸、ケイ皮酸、ベンジル酸、ビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸等のベンゼン環を2個以上有する芳香族モノカルボン酸、又はそれらの誘導体を挙げることができ、より、具体的には、キシリル酸、ヘメリト酸、メシチレン酸、プレーニチル酸、γ−イソジュリル酸、ジュリル酸、メシト酸、α−イソジュリル酸、クミン酸、α−トルイル酸、ヒドロアトロパ酸、アトロパ酸、ヒドロケイ皮酸、サリチル酸、o−アニス酸、m−アニス酸、p−アニス酸、クレオソート酸、o−ホモサリチル酸、m−ホモサリチル酸、p−ホモサリチル酸、o−ピロカテク酸、β−レソルシル酸、バニリン酸、イソバニリン酸、ベラトルム酸、o−ベラトルム酸、没食子酸、アサロン酸、マンデル酸、ホモアニス酸、ホモバニリン酸、ホモベラトルム酸、o−ホモベラトルム酸、フタロン酸、p−クマル酸を挙げることができるが、特に安息香酸が好ましい。
上記化合物(A)及び化合物(B)をエステル化したエステル化化合物の中では、エステル化によりアセチル基が導入されたアセチル化化合物またはベンゾイル基が導入されたベンゾイル化化合物、またはアセチル基とベンジル基の両方が導入された化合物が好ましい。
上記化合物(A)及び化合物(B)のエステル化化合物に加えて、オリゴ糖のエステル化化合物を、フラノース構造若しくはピラノース構造の少なくとも1種を3〜12個結合した化合物として適用できる。
オリゴ糖は、澱粉、ショ糖等にアミラーゼ等の酵素を作用させて製造されるもので、本発明に適用できるオリゴ糖としては、例えば、マルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖が挙げられる。
(エチレン性不飽和モノマー共重合体系可塑剤)
エチレン性不飽和モノマー共重合体を構成するエチレン性不飽和モノマーは、特に限定はされないが、下記のものが好ましく用いられる。
例えば、メタクリル酸及びそのエステル誘導体(メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等)、アクリル酸及びそのエステル誘導体(アクリル酸メチル、アクリル酸エチルアクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸テトラヒドロフルフリル、アクリル酸2−エトキシエチル、アクリル酸ジエチレングリコールエトキシレート、アクリル酸3−メトキシブチル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチル等)、アルキルビニルエーテル(メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等)、アルキルビニルエステル(ギ酸ビニル、酢酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、ステアリン酸ビニル等)、スチレン誘導体(例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルナフタレンなど)、クロトン酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、メタクリルアミドなどの不飽和化合物等を挙げることができる。これらは1種単独で、又は2種以上混合して共重合させることができる。
これらエチレン性不飽和モノマーの内、アクリル酸エステル、又はメタクリル酸エステル(例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル)、アルキルビニルエステル(ギ酸ビニル、酢酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、ステアリン酸ビニル等)、スチレン誘導体(例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルナフタレンなど)が好ましく、メタクリル酸メチル及びアクリル酸メチルが更に好ましく、メタクリル酸メチルが特に好ましく、メタクリル酸メチルとアクリル酸のオリゴマーが特に好ましい。
本発明に用いられるエチレン性不飽和モノマーは、市販品として入手又は公知の文献を参照して合成することができる。
本発明に用いられるエチレン性不飽和モノマーの数平均分子量は特に限定されないが、300〜1100000が好ましく、より好ましくは800〜3000である。分子量が前記範囲の共重合体には、一般的にはオリゴマーに分類されるものも含まれる。
数平均分子量はGPC(Gel Permeation Chromatography)を用いて通常の方法で測定することができる。
例えば、カラム(東ソー(株)製 TSKgel Super HZM−H、TSKgel Super HZ4000及びTSKgel Super HZ2000)の温度を40℃として、溶離液としてTHFを用い、流速を0.35ml/minとし、検出をRI、注入量を10μl、試料濃度を1g/lとし、また標準試料としてポリスチレンを用いて行うことができる。
〈添加剤〉
前記位相差フィルムには、前記可塑剤以外の添加剤(例、レターデーション調節剤、波長分散調整剤、剥離促進剤、酸化防止剤、過酸化物分解剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、酸捕獲剤、アミン、紫外線吸収剤、赤外吸収剤など)の少なくとも1種を添加してもよい。劣化防止剤については、特開平3−199201号、同5−194789号、同5−271471号、同6−107854号の各公報に記載がある。劣化防止剤の添加量は、効果の発現及びフィルム表面への劣化防止剤のブリードアウト(滲み出し)の抑制の観点から、例えば溶液製膜法においては、製膜に用いる溶液(ドープ)の0.01〜1質量%であることが好ましく、0.01〜0.2質量%であることが更に好ましい。
特に好ましい劣化防止剤の例としては、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、トリベンジルアミン(TBA)を挙げることができる。
〈マット剤微粒子〉
前記位相差フィルムには、マット剤を添加してもよい。マット剤として使用される微粒子としては、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。微粒子はケイ素を含むものが濁度が低くなる点で好ましく、特に二酸化珪素が好ましい。二酸化珪素の微粒子は、1次平均粒子径が20nm以下であり、且つ見かけ比重が70g/リットル以上であるものがフィルムのヘイズを下げることができるため、好ましい。見かけ比重は90〜200g/リットル以上が好ましく、100〜200g/リットル以上がさらに好ましい。見かけ比重が大きい程、高濃度の分散液を作ることが可能になり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。
これらの微粒子は、通常、平均粒子径が0.1〜3.0μm程度の2次粒子を形成し、これらの微粒子はフィルム中では、1次粒子の凝集体として存在し、フィルム表面に0.1〜3.0μm程度の凹凸を形成させる。2次平均粒子径は0.2μm〜1.5μm程度が好ましく、0.4μm〜1.2μm程度がさらに好ましく、0.6μm〜1.1μm程度がさらに好ましい。1次、及び2次粒子径はフィルム中の粒子を走査型電子顕微鏡で観察し、粒子に外接する円の直径をもって粒径とした。また、場所を変えて粒子200個を観察し、その平均値をもって平均粒子径とした。
二酸化珪素の微粒子は、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)などの市販品を使用することができる。酸化ジルコニウムの微粒子は、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。
これらの中で、アエロジル200V及びアエロジルR972Vが1次平均粒子径が20nm以下で、且つ見かけ比重が70g/リットル以上である二酸化珪素の微粒子であり、光学フィルムの濁度を低く保ちながら、摩擦係数をさげる効果が大きいため特に好ましい。
2次平均粒子径の小さな粒子を有する位相差フィルム(たとえばセルロースアシレートフィルム)の製造方法には、微粒子の分散液を用いることができる。微粒子の分散液を調製する際にいくつかの手法が考えられる。例えば、溶剤と微粒子を撹拌混合した微粒子分散液をあらかじめ調製し、この微粒子分散液を別途用意した少量のセルロースアシレート等の主成分の溶液に加えて撹拌溶解し、さらにメインのドープ液と混合する方法がある。この方法は二酸化珪素微粒子の分散性がよく、二酸化珪素微粒子が更に再凝集し難い点で好ましい調製方法である。ほかにも、溶剤に少量のセルロースアシレート等の主成分を加え、撹拌溶解した後、これに微粒子を加えて分散機で分散を行い、これを微粒子添加液とし、この微粒子添加液をインラインミキサーでドープ液と十分混合する方法もある。いずれの方法を利用してもよいし、またこれらの方法に限定されるものでもない。二酸化珪素微粒子を溶剤などと混合して分散する際の二酸化珪素の濃度は、5〜30質量%程度が好ましく、10〜25質量%程度が更に好ましく、15〜20質量%程度がよりさらに好ましい。分散濃度が高い方が添加量に対する液濁度が低くなり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。最終的なセルロースアシレート等の主成分のドープ溶液中でのマット剤の添加量は1m2あたり0.01〜1.0gが好ましく、0.03〜0.3gが更に好ましく、0.08〜0.16gがより好ましい。
上記調製方法に使用される溶剤は、低級アルコール類としては、好ましくはメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等が挙げられる。低級アルコール以外の溶媒としては特に限定されないが、セルロースアシレートの製膜時に用いられる溶剤を用いることが好ましい。
〈位相差フィルムの製造方法〉
前記位相差フィルムとして用いられるセルロースアシレートフィルムは、溶液製膜法(ソルベントキャスト法)によって製膜されたフィルムであるのが好ましい。以下、具体例として、セルロースアシレートフィルムの製造方法について説明するが、本発明に用いられる位相差フィルムは、セルロースアシレートフィルムに限定されるものではない。
(ソルベントキャスト法)
ソルベントキャスト法では、セルロースアシレートを有機溶媒に溶解して調製されたドープを、金属等からなる支持体の表面にキャストして、乾燥して製膜し、その後、膜を支持体面から剥ぎ取り、所望により延伸処理することで製造される。
ソルベントキャスト法では、セルロースアシレートを有機溶媒に溶解した溶液(ドープ)を用いてフィルムを製造する。該ドープの調製に用いられる溶媒は、有機溶媒から選択することができる。有機溶媒は、炭素原子数が3〜12のエーテル、炭素原子数が3〜12のケトン、炭素原子数が3〜12のエステル、及び炭素原子数が1〜6のハロゲン化炭化水素から選ばれる溶媒を少なくとも含むことが好ましい。
エーテル、ケトン及びエステルは、環状構造を有していてもよい。エーテル、ケトン及びエステルの官能基(すなわち、−O−、−CO−及び−COO−)のいずれかを二つ以上有する化合物も、有機溶媒として用いることができる。有機溶媒は、アルコール性水酸基のような他の官能基を有していてもよい。二種類以上の官能基を有する有機溶媒の場合、その炭素原子数はいずれかの官能基を有する溶媒の上記した好ましい炭素原子数範囲内であることが好ましい。
炭素原子数が3〜12のエーテル類の例には、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、アニソール及びフェネトールが含まれる。
炭素原子数が3〜12のケトン類の例には、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン及びメチルシクロヘキサノンが含まれる。
炭素原子数が3〜12のエステル類の例には、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテート及びペンチルアセテートが含まれる。
二種類以上の官能基を有する有機溶媒の例には、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシエタノール及び2−ブトキシエタノールが含まれる。
ハロゲン化炭化水素の炭素原子数は、1又は2であることが好ましく、1であることが最も好ましい。ハロゲン化炭化水素のハロゲンは、塩素であることが好ましい。ハロゲン化炭化水素の水素原子が、ハロゲンに置換されている割合は、25〜75モル%であることが好ましく、30〜70モル%であることがより好ましく、35〜65モル%であることがさらに好ましく、40〜60モル%であることがよりさらに好ましい。メチレンクロリドが、代表的なハロゲン化炭化水素である。
二種類以上の有機溶媒を混合して用いてもよい。
0℃以上の温度(常温又は高温)で処理することからなる一般的な方法で、セルロースアシレート溶液を調製することができる。溶液の調製は、通常のソルベントキャスト法におけるドープの調製方法及び装置を用いて実施することができる。なお、一般的な方法の場合は、有機溶媒としてハロゲン化炭化水素(特にメチレンクロリド)を用いることが好ましい。
セルロースアシレートの量は、得られる溶液中に10〜40質量%含まれるように調整する。セルロースアシレートの量は、10〜30質量%であることがさらに好ましい。有機溶媒(主溶媒)中には、後述する任意の添加剤を添加しておいてもよい。
溶液は、常温(0〜40℃)でセルロースアシレートと有機溶媒とを攪拌することにより調製することができる。高濃度の溶液は、加圧及び加熱条件下で攪拌してもよい。具体的には、セルロースアセテートと有機溶媒とを加圧容器に入れて密閉し、加圧下で溶媒の常温における沸点以上、且つ溶媒が沸騰しない範囲の温度に加熱しながら攪拌する。
加熱温度は、通常は40℃以上であり、好ましくは60〜200℃であり、さらに好ましくは80〜110℃である。
各成分は予め粗混合してから容器に入れてもよい。また、順次容器に投入してもよい。容器は攪拌できるように構成されている必要がある。窒素ガス等の不活性気体を注入して容器を加圧することができる。また、加熱による溶媒の蒸気圧の上昇を利用してもよい。あるいは、容器を密閉後、各成分を圧力下で添加してもよい。
加熱する場合、容器の外部より加熱することが好ましい。例えば、ジャケットタイプの加熱装置を用いることができる。また、容器の外部にプレートヒーターを設け、配管して液体を循環させることにより容器全体を加熱することもできる。
容器内部に攪拌翼を設けて、これを用いて攪拌することが好ましい。攪拌翼は、容器の壁付近に達する長さのものが好ましい。攪拌翼の末端には、容器の壁の液膜を更新するため、掻取翼を設けることが好ましい。
容器には、圧力計、温度計等の計器類を設置してもよい。容器内で各成分を溶剤中に溶解する。調製したドープは冷却後容器から取り出すか、あるいは、取り出した後、熱交換器等を用いて冷却する。
冷却溶解法により、溶液を調製することもできる。冷却溶解法では、通常の溶解方法では溶解させることが困難な有機溶媒中にもセルロースアシレートを溶解させることができる。なお、通常の溶解方法でセルロースアシレートを溶解できる溶媒であっても、冷却溶解法によると迅速に均一な溶液が得られるとの効果がある。
冷却溶解法では最初に、室温で有機溶媒中にセルロースアシレートを撹拌しながら徐々に添加する。
セルロースアシレートの量は、この混合物中に10〜40質量%含まれるように調整することが好ましい。セルロースアシレートの量は、10〜30質量%であることがさらに好ましい。さらに、混合物中には後述する任意の添加剤を添加しておいてもよい。
次に、混合物を-100〜-10℃(好ましくは-80〜-10℃、さらに好ましくは-50〜-20℃、最も好ましくは-50〜-30℃)に冷却する。冷却は、例えば、ドライアイス・メタノール浴(-75℃)や冷却したジエチレングリコール溶液(-30〜-20℃)中で実施できる。冷却によりセルロースアシレートと有機溶媒の混合物は固化する。
冷却速度は、4℃/分以上であることが好ましく、8℃/分以上であることがさらに好ましく、12℃/分以上であることが最も好ましい。冷却速度は、速いほど好ましいが、10000℃/秒が理論的な上限であり、1000℃/秒が技術的な上限であり、そして100℃/秒が実用的な上限である。なお、冷却速度は、冷却を開始する時の温度と最終的な冷却温度との差を冷却を開始してから最終的な冷却温度に達するまでの時間で割った値である。
さらに、これを0〜200℃(好ましくは0〜150℃、さらに好ましくは0〜120℃、最も好ましくは0〜50℃)に加温すると、有機溶媒中にセルロースアシレートが溶解する。昇温は、室温中に放置するだけでもよく、温浴中で加温してもよい。
加温速度は、4℃/分以上であることが好ましく、8℃/分以上であることがさらに好ましく、12℃/分以上であることが最も好ましい。加温速度は、速いほど好ましいが、10000℃/秒が理論的な上限であり、1000℃/秒が技術的な上限であり、そして100℃/秒が実用的な上限である。なお、加温速度は、加温を開始する時の温度と最終的な加温温度との差を加温を開始してから最終的な加温温度に達するまでの時間で割った値である。
以上のようにして、均一な溶液が得られる。なお、溶解が不充分である場合は冷却、加温の操作を繰り返してもよい。溶解が充分であるかどうかは、目視により溶液の外観を観察するだけで判断することができる。
冷却溶解法においては、冷却時の結露による水分混入を避けるため、密閉容器を用いることが望ましい。また、冷却加温操作において、冷却時に加圧し、加温時に減圧すると、溶解時間を短縮することができる。加圧及び減圧を実施するためには、耐圧性容器を用いることが望ましい。
なお、セルロースアセテート(酢化度:60.9%、粘度平均重合度:299)を冷却溶解法によりメチルアセテート中に溶解した20質量%の溶液は、示差走査熱量計(DSC)による測定によると、33℃近傍にゾル状態とゲル状態との疑似相転移点が存在し、この温度以下では均一なゲル状態となる。従って、この溶液は疑似相転移温度以上、好ましくはゲル相転移温度プラス10℃程度の温度で保持する必要がある。ただし、この疑似相転移温度は、セルロースアセテートの酢化度、粘度平均重合度、溶液濃度や使用する有機溶媒により異なる。
調製したセルロースアシレート溶液(ドープ)から、ソルベントキャスト法によりセルロースアシレートフィルムを製造する。ドープには前記の可塑剤等の添加剤を添加することが好ましい。
ドープは、ドラム又はバンド上に流延し、溶媒を蒸発させてフィルムを形成する。流延前のドープは、固形分量が18〜35%となるように濃度を調整することが好ましい。ドラム又はバンドの表面は、鏡面状態に仕上げておくことが好ましい。ドープは、表面温度が10℃以下のドラム又はバンド上に流延することが好ましい。
ドープ(セルロースアシレート溶液)をバンド上に流延する場合、剥ぎ取り前乾燥の前半において10秒以上90秒以下、好ましくは15秒以上90秒以下の時間、実質的に無風で乾燥する工程を行う。また、ドラム上に流延する場合、剥ぎ取り前乾燥の前半において1秒以上10秒以下、好ましくは2秒以上5秒以下の時間、実質的に無風で乾燥する工程を行うことが好ましい。
本明細書において、「剥ぎ取り前乾燥」とはバンドもしくはドラム上にドープが塗布されてからフィルムとして剥ぎ取られるまでの乾燥を指すものとする。また、「前半」とはドープ塗布から剥ぎ取りまでに要する全時間の半分より前の工程を指すものとする。「実質的に無風」であるとは、バンド表面もしくはドラム表面から200mm以内の距離において0.5m/s以上の風速が検出されない(風速が0.5m/s未満である)ことである。
剥ぎ取り前乾燥の前半は、バンド上の場合通常30〜300秒程度の時間であるが、その内の10秒以上90秒以下、好ましくは15秒以上90秒以下の時間、無風で乾燥する。ドラム上の場合は通常5〜30秒程度の時間であるが、その内の1秒以上10秒以下、好ましくは2秒以上5秒以下の時間、無風で乾燥する。雰囲気温度は0℃〜180℃が好ましく、40℃〜150℃がさらに好ましい。無風で乾燥する操作は剥ぎ取り前乾燥の前半の任意の段階で行うことができるが、好ましくは流延直後から行うことが好ましい。無風で乾燥する時間が、バンド上の場合に10秒未満(ドラム上の場合に1秒未満)であると、添加剤がフィルム内に均一に分布することが難しく、90秒を超えると(ドラム上の場合10秒を超えると)乾燥不十分で剥ぎ取られることになり、フィルムの面状が悪化する。
剥ぎ取り前乾燥における無風で乾燥する以外の時間は、不活性ガスを送風することにより乾燥を行なうことができる。このときの風温は0℃〜180℃が好ましく、40℃〜150℃がさらに好ましい。
ソルベントキャスト法における乾燥方法については、米国特許2336310号、同2367603号、同2492078号、同2492977号、同2492978号、同2607704号、同2739069号、同2739070号、英国特許640731号、同736892号の各明細書、特公昭45−4554号、同49−5614号、特開昭60−176834号、同60−203430号、同62−115035号の各公報に記載がある。バンド又はドラム上での乾燥は空気、窒素などの不活性ガスを送風することにより行なうことができる。
得られたフィルムをドラム又はバンドから剥ぎ取り、さらに100〜160℃まで逐次温度を変えた高温風で乾燥して残留溶剤を蒸発させることもできる。以上の方法は、特公平5−17844号公報に記載がある。この方法によると、流延から剥ぎ取りまでの時間を短縮することが可能である。この方法を実施するためには、流延時のドラム又はバンドの表面温度においてドープがゲル化することが必要である。
調製したセルロースアシレート溶液(ドープ)を用いて二層以上の流延を行いフィルム化することもできる。この場合、ソルベントキャスト法によりセルロースアシレートフィルムを作製することが好ましい。ドープは、ドラム又はバンド上に流延し、溶媒を蒸発させてフィルムを形成する。流延前のドープは、固形分量が10〜40%の範囲となるように濃度を調整することが好ましい。ドラム又はバンドの表面は、鏡面状態に仕上げておくことが好ましい。
二層以上の複数のセルロースアシレート液を流延する場合、複数のセルロースアシレート溶液を流延することが可能で、支持体の進行方向に間隔をおいて設けられた複数の流延口からセルロースアシレートを含む溶液をそれぞれ流延させて積層させながらフィルムを作製してもよい。例えば、特開昭61−158414号、特開平1−122419号、及び、特開平11−198285号の各公報に記載の方法を用いることができる。また、2つの流延口からセルロースアシレート溶液を流延することによってもフィルム化することができる。例えば、特公昭60−27562号、特開昭61−94724号、特開昭61−947245号、特開昭61−104813号、特開昭61−158413号、及び、特開平6−134933号の各公報に記載の方法を用いることができる。また、特開昭56−162617号公報に記載の高粘度セルロースアシレート溶液の流れを低粘度のセルロースアシレート溶液で包み込み、その高、低粘度のセルロースアシレート溶液を同時に押し出すセルロースアシレートフィルムの流延方法を用いることもできる。
また、二個の流延口を用いて、第一の流延口により支持体に成形したフィルムを剥ぎ取り、支持体面に接していた側に第二の流延を行うことにより、フィルムを作製することもできる。例えば、特公昭44−20235号公報に記載の方法を挙げることができる。
流延するセルロースアシレート溶液は同一の溶液を用いてもよいし、異なるセルロースアシレート溶液を用いてもよい。複数のセルロースアシレート層に機能をもたせるために、その機能に応じたセルロースアシレート溶液を、それぞれの流延口から押し出せばよい。さらに本発明のセルロースアシレート溶液は、他の機能層(例えば、接着層、染料層、帯電防止層、アンチハレーション層、紫外線吸収層、偏光層など)と同時に流延することもできる。
従来の単層液では、必要なフィルムの厚さにするためには高濃度で高粘度のセルロースアシレート溶液を押し出すことが必要である。その場合セルロースアシレート溶液の安定性が悪くて固形物が発生し、ブツ故障となったり、平面性が不良となったりして問題となることが多かった。この問題の解決方法として、複数のセルロースアシレート溶液を流延口から流延することにより、高粘度の溶液を同時に支持体上に押し出すことができ、平面性も良化し優れた面状のフィルムが作製できるばかりでなく、濃厚なセルロースアシレート溶液を用いることで乾燥負荷の低減化が達成でき、フィルムの生産スピードを高めることができる。
とりわけ、3層以上の積層構造を有していることが、寸法安定性や環境湿熱変化に伴うカール量低減の観点から好ましい。また、全アシル置換度が2.20〜2.70のセルロースアシレート樹脂を含む低置換度層の両面に全アシル置換度が2.70を超えるセルロースアシレート樹脂を含む高置換度層を有する場合、所望の光学特性を実現させる工程における自由度向上の観点から好ましい。また、前記高置換度層に用いられるセルロースアシレートの総アシル置換度は、2.70を超え3.00以下であることが好ましく、2.75〜2.90であることが特に好ましい。
セルロースアシレートフィルムは、溶液製膜で製造する際に支持体と接する層(以下、スキンB層とも言う)が前記高置換度層であり、その他の層が前記低置換度層であることが溶液製膜時の支持体からの剥離性をさらに改善する観点から好ましい。なお、3層以上の積層構造を有している場合に限り、フィルム製膜時に支持体と接していない側の表面層のことをスキンA層とも言う。
特に、スキンB層/コア層/スキンA層の3層構造であることが好ましい。3層構造の場合、高置換度層/低置換度層/高置換度層という構成であっても低置換度層/高置換度層/低置換度層という構成であってもよいが、高置換度層/低置換度層/高置換度層の構成であることが、溶液製膜時の支持体からの剥離性を改善する観点および寸法安定性の観点から好ましい。
3層構造であるとき、両面の表面層に含まれるセルロースアシレートは同じアシル置換度のセルロースアシレートを用いることが、製造コスト、寸法安定性および環境湿熱変化に伴うカール量低減の観点から好ましい。
前記セルロースアシレートフィルムは、例えば、幅は0.5〜5mであり、より好ましくは0.7〜3mの形態として作製されてもよい。また、前記セルロースアシレートフィルムは、巻長300〜30000m、より好ましくは500〜10000m、さらに好ましくは1000〜7000mの形態として作製されてもよい。
〈延伸〉
前記位相差フィルムとして、上記方法で作製されたセルロースアシレートフィルムに、さらに延伸処理を施し、そのレターデーションを調整した延伸フィルムを用いてもよい。積極的に幅方向(製膜時の流延方向と直交する方向)に延伸する方法は、例えば、特開昭62−115035号、特開平4−152125号、特開平4−284211号、特開平4−298310号、及び特開平11−48271号の各公報などに記載されている。フィルムの延伸は、常温又は加熱条件下で実施する。加熱温度は、フィルムのガラス転移温度を挟む±20℃であることが好ましい。これは、ガラス転移温度より極端に低い温度で延伸すると、破断しやすくなり所望の光学特性を発現させることができない。また、ガラス転移温度より極端に高い温度で延伸すると、延伸により分子配向したものが熱固定される前に、延伸時の熱で緩和し配向を固定化することができず、光学特性の発現性が悪くなる。
さらに、延伸ゾーン(例えばテンターゾーン)において、フィルムを噛み込み、搬送し最大拡幅率を経た後に、通常緩和させるゾーンを設ける。これは軸ずれを低減するのに必要なゾーンである。通常の延伸ではこの最大拡幅率を経た後の緩和率ゾーンでは、テンターゾーンを通過させるまでの時間は1分より短く、フィルムの延伸は、搬送方向あるいは幅方向だけの一軸延伸でもよく同時あるいは逐次2軸延伸でもよいが、幅方向により多く延伸することが好ましい。幅方向、即ち製膜時の流延方向と直交する方向、に1.4倍〜2倍の倍率で延伸処理するのが好ましく、より好ましくは延伸倍率は1.4倍〜1.6倍であり、さらに好ましくは延伸倍率が1.4倍〜1.5倍である。
延伸処理は製膜工程の途中で行ってもよいし、製膜して巻き取った原反を延伸処理してもよい。前者の場合には残留溶剤量を含んだ状態で延伸を行ってもよく、残留溶剤量(残留溶剤量/(残留溶剤量+固形分量))が0.05〜50%で好ましく延伸することができる。残留溶剤量が0.05〜5%の状態で5〜80%延伸を行うことが特に好ましい。
また、前記位相差フィルムとして、上記方法で作製されたセルロースアシレートフィルムに二軸延伸処理を施した二軸延伸処理フィルムを用いてもよい。
二軸延伸には、同時二軸延伸法と逐次二軸延伸法があるが、連続製造の観点から逐次二軸延伸方法が好ましく、ドープを流延した後、バンドもしくはドラムよりフィルムを剥ぎ取り、幅方向(長手方法)に延伸した後、長手方向(幅方向)に延伸される。
これら流延から後乾燥までの工程は、空気雰囲気下でもよいし窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下でもよい。
また、上記した通り、幅方向、即ち流延方向と直交する方向、に延伸処理をしたフィルムは、その後、100℃以上に加熱された水蒸気を吹き付けられる工程を経て製造されるのが好ましい。この水蒸気の吹付け工程を経ることにより、製造されるセルロースアシレートフィルムの残留応力が緩和されて、寸度変化が小さくなるので好ましい。水蒸気の温度は100℃以上であれば特に制限はないが、フィルムの耐熱性などを考慮すると、水蒸気の温度は、200℃以下となるであろう。
前記方法により長尺状に作製したセルロースアシレートフィルムは、巻き取り機により巻き取って、ロール形態として、保管・搬送等してもよい。巻き取り機は一般的に使用されているものでよく、定テンション法、定トルク法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法などの巻き取り方法で巻き取ることができる。
〈面内軸バラツキ〉
本発明に使用する前記位相差フィルムは、面内の軸バラツキが1.0°以下であり、好ましくは0.5°以下、より好ましくは0.4°以下、さらに好ましくは0.3°以下である。理想的には0°である。この面内の軸バラツキが1.0°を超越してしまうと、(クロスニコル配置においても想定外の位相差が発生することにより黒表示時の光モレが増加するため、)好ましくない。
〈ヘイズ値〉
本発明に使用する前記位相差フィルムは、全ヘイズ値が1.0%以下であり、好ましくは0.60%以下、より好ましくは0.30%以下、さらに好ましくは0.25%以下、最も好ましくは0.20%以下である。理想的には0%である。全ヘイズ値が1.0%を超越すると、(フィルム表面及び内部での光の拡散が黒表示時の光モレの原因となるため、)好ましくない。また内部ヘイズ値は0.50%以下であり、好ましくは0.30%以下、より好ましくは0.10%以下、さらに好ましくは0.05%以下、最も好ましくは0.03%以下である。理想的には0%である。内部ヘイズ値が0.50%を超越すると、(フィルム内部での光の拡散が黒表示時の光モレの原因となるため、)好ましくない。
〈光学特性〉
本発明に使用する前記位相差フィルムの好ましい例は、位相差フィルムの3方向の屈折率において、面内最大方向をnx、nxと垂直方向の屈折率をny、厚み方向の屈折率をnzとした場合、nx>ny>nzを満足する位相差フィルムである。
また、前記位相差フィルムの面内レターデーションRe(=(nx−ny)×d;dはフィルムの膜厚を表す。)は、波長590nmにおいて30〜200nmが好ましく、より好ましくは30〜100nm、さらに好ましくは35〜80nm、特に好ましくは40〜60nmである。また、前記位相差フィルムの厚み方向レターデーションRth(={(nx+ny)/2−nz}×d;dはフィルムの膜厚を表す。)は、波長590nmにおいて、70〜400nmが好ましく、より好ましくは75nm〜200nm、さらに好ましくは80〜150nm、特に好ましくは90〜140nmである。
また、Rth/Re+0.5で定義されるNz値については、波長590nmにおいて、好ましくは1.0<Nz≦5.0、より好ましくは2.0≦Nz≦4.0、さらに好ましくは2.5≦Nz≦3.5の範囲である。
前記光学特性の値は光学補償するTNモード液晶セルの位相差を考慮して決定される値であり、Re、Rth、またはNzが上記の範囲であると、視野角が広がるため、正面方向から見た場合に視野に入る光量も増加し、画面が明るく感じられるため好ましい。
〈膜厚〉
前記位相差フィルムの膜厚は、特に限定されないが、10〜200μmであることが好ましい。薄型化の観点では、膜厚は薄いほどよいが、10μm未満であると、取り扱い性が損なわれる傾向がある。より好ましくは10〜80μm、さらに好ましくは10〜60μm、特に好ましくは10〜50μm、最も好ましくは10〜40μmである。
スキンB層/コア層/スキンA層の3層構造であって、順に高置換度層/低置換度層/高置換度層という好ましい態様においては、前記高置換度層の平均膜厚が0.1μm以上10μm未満の範囲が好ましく、0.5μm以上5μm未満の範囲がより好ましい。スキン層が0.1μm未満になると、剥離性が不十分となり、スジ状のムラ、フィルムの膜厚不均一あるいは光学特性不均一を招きやすい。
また、スキン層が10μm以上になると、全体の膜厚を薄形する上でコア層の厚みが制限されるため、コア層の光学発現性を有効に利用することが難しくなる。
〈表面処理〉
本発明に係わる位相差フィルムは、表面処理を施すことが好ましい。具体的方法としては、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、酸処理、アルカリ処理又は紫外線照射処理が挙げられる。また、特開平7−333433号公報に記載のように、下塗り層を設けることも好ましい。なお、フィルムの平面性を保持する観点から、これら処理において位相差フィルムの温度をTg(ガラス転移温度)以下とすることが好ましい。
前記位相差フィルムを、偏光板の透明保護膜として使用する場合、偏光子との接着性の観点から、酸処理又はアルカリ処理、すなわちセルロースアシレートに対するケン化処理を実施することが特に好ましい。表面エネルギーは55mN/m以上であることが好ましく、60mN/m以上75mN/m以下であることが更に好ましい。
以下、アルカリ鹸化処理を例に、具体的に説明する。
位相差フィルムのアルカリ鹸化処理は、フィルム表面をアルカリ溶液に浸漬した後、酸性溶液で中和し、水洗して乾燥するサイクルで行われることが好ましい。
アルカリ溶液としては、水酸化カリウム溶液、水酸化ナトリウム溶液が挙げられ、水酸化イオン濃度は0.1〜5.0モル/リットルの範囲にあることが好ましく、0.5〜2.0モル/リットルの範囲にあることがさらに好ましい。アルカリ溶液温度は、室温〜90℃の範囲にあることが好ましく、40〜70℃の範囲にあることがさらに好ましい。浸漬時間は上記のアルカリ溶液の濃度及び温度により最適な条件が適応されるが、1秒〜300秒の範囲にあることが好ましく、10秒〜180秒の範囲にあることがさらに好ましい。
固体の表面エネルギーは、「ぬれの基礎と応用」(リアライズ社1989.12.10発行)に記載のように接触角法、湿潤熱法、及び吸着法により求めることができる。本発明の位相差フィルムの場合、接触角法を用いることが好ましい。具体的には、表面エネルギーが既知である2種の溶液を位相差フィルムに滴下し、液滴の表面とフィルム表面との交点において、液滴に引いた接線とフィルム表面のなす角で、液滴を含む方の角を接触角と定義し、計算によりフィルムの表面エネルギーを算出できる。
《偏光板》
前記位相差フィルムは、偏光板の保護フィルムとして用いることができる。本発明に使用可能な偏光板の一例は、偏光膜とその両面を保護する二枚の偏光板保護フィルムからなり、前記位相差フィルムを少なくとも一方の偏光板保護フィルムとして有する。位相差フィルムは、液晶セルと偏光膜との間に配置される。前記位相差フィルムを偏光板保護フィルムとして用いる場合、前記位相差フィルムには前記表面処理(特開平6−94915号公報、同6−118232号公報にも記載)を施して親水化しておくことが好ましく、例えば、グロー放電処理、コロナ放電処理、又は、アルカリ鹸化処理などを施すことが好ましい。特に、前記表面処理としてはアルカリ鹸化処理が最も好ましく用いられる。
前記偏光膜としては、例えば、ポリビニルアルコールフィルムを沃素溶液中に浸漬して延伸したもの等を用いることができる。ポリビニルアルコールフィルムを沃素溶液中に浸漬して延伸した偏光膜を用いる場合、接着剤を用いて偏光膜に本発明の透明位相差フィルムの表面処理面を直接貼り合わせることができる。このように、本発明の位相差フィルムが偏光膜と直接貼合されていることが好ましい。前記接着剤としては、ポリビニルアルコール又はポリビニルアセタール(例えば、ポリビニルブチラール)の水溶液や、ビニル系ポリマー(例えば、ポリブチルアクリレート)のラテックスを用いることができる。特に好ましい接着剤は、完全鹸化ポリビニルアルコールの水溶液である。
一般に液晶表示装置は二枚の偏光板の間に液晶セルが設けられるため、4枚の偏光板保護フィルムを有する。前記位相差フィルムは、4枚の保護フィルムのうち、偏光膜と液晶層(液晶セル)の間に配置される保護フィルムとして用いることができる。勿論、偏光膜のさらに外側に配置される保護フィルムとして用いてもよい。また、前記偏光膜を挟んで該位相差フィルムの反対側に配置される保護フィルムには、透明ハードコート層、防眩層、反射防止層などを設けることができ、これらの層を有する保護フィルムは、液晶表示装置の表示側最表面の偏光板保護フィルムとして用いるのが好ましい。
偏光膜の透過軸と前記位相差フィルムの平均遅相軸とを平行にして貼り合わせてもよいし、偏光膜の透過軸と前記位相差フィルムの平均遅相軸とを直交にして貼り合わせてもよい。ポリビニルアルコール(PVA)系偏光膜等は、一般的にはMD方向に吸収軸を有し、TD方向に透過軸を有するので、製造適性の観点で、MD方向を一致させて、長尺状のPVA系偏光膜と、長尺状の前記位相差フィルムとを貼り合わせる場合は、前者の態様の偏光板を作製するためには、平均遅相軸がTD方向にある前記位相差フィルムを用い、後者の態様の偏光板を作製するためには、平均遅相軸がMD方向にある前記位相差フィルムを用いることが好ましい。偏光膜の透過軸と本発明の位相差フィルムの平均遅相軸を平行または垂直に配置することで、想定外の位相差を発生させること無く、優れた補償効果を得ることができる。
偏光膜の膜厚は、好ましくは5〜30μmであり、特に好ましくは10〜25μmである。
偏光膜の他方の表面(即ち液晶表示装置に組み込んだ際に、偏光膜の外側になる表面)に貼合する保護フィルムについては、なんら制限はない。種々のポリマーフィルム、例えば、セルロースアシレート、ポリカーボネート系ポリマー、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系ポリマー等を利用することができる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ノルボルネン等のシクロポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体の如きポリオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、又は前記ポリマーを混合したポリマー等から1種又は2種以上のポリマーを選択し、主成分として用いてポリマーフィルムを作製し保護フィルムとして利用することができる。また汎用されている市販品のポリマーフィルムを用いることもできる。
《液晶表示装置》
本発明の液晶表示装置は、TNモードである。TNモード用液晶セルについては、特に制限はなく、TNモードとして提案されている構成の液晶セルをいずれも用いることができる。本発明の液晶表示装置は、画面サイズが24インチ以下のパーソナルユース、特にノート型PC、タブレットPC、スマートフォンの表示装置として適する視野角特性を示す。具体的には、縦視野角特性に関しては、上方向のコントラスト比が10以上である極角が35°(より好ましくは45°)以上、且つ上方向極角30°の黒表示時カラーシフトΔCu’v’が0.04以下;並びに横視野角特性に関しては、左右方向のいずれも同様に拡大されていて、コントラスト比が10以上である極角が60°(より好ましくは70°)以上;を達成可能である。また、ノート型PCでは、薄型が主流であり、薄型TNモードの液晶セルのΔndは、一般的には、350〜450μmである。
本発明では、液晶セルの基板のラビング方向、すなわち基板上の液晶分子配向方向と偏光板の透過軸が平行となるEモードと、液晶セルの基板上のラビング方向、すなわち基板上の液晶分子配向方向と偏光板の透過軸が垂直となるOモード配置のどちらにも使用することができる。
前記位相差フィルムとして、二軸性フィルムを用いる場合、液晶セルの基板のラビング方向、即ち基板上の液晶分子配向方向と二軸フィルムの平均遅相軸は平行方向、直行方向のどちらでも良いが、直交方向であることが黒表示時のムラ、画像の鮮明性の観点でより好ましい。この理由としては、偏光子を通過した直線偏光に対する、フィルムの面内軸ズレと基板上の液晶分子の配向ムラが相まって想定外に発生する複屈折の効果が、フィルムの平均遅相軸と液晶分子配向方向が直交の場合は平行の場合よりも小さくなるからであると推測している。さらに詳しく述べると、一般に液晶分子は長軸方向の屈折率が短軸方向の屈折率よりも大きい複屈折性を有しており、さらに分子長軸方向に配向しているため、フィルムの遅相軸と液晶分子配向方向が直交であると、フィルムの面内軸バラツキと液晶分子の配向ムラに起因してそれぞれ発生する複屈折を互いに強め合う効果が、フィルムと液晶分子の屈折率が大きい方向が一致している平行の場合よりも小さくなるからであると推測している。
ここで、上記した通り、二軸性フィルムの平均遅相軸は、偏光膜の透過軸と平行となることが製造工程上好ましいが、このとき二軸性補償フィルムの平均遅相軸と液晶セルの基板のラビング方向、すなわち基板上の液晶分子配向方向が直交するのはOモード配置であり、Oモード配置のほうが、黒表示時のムラ画像の鮮明性の観点でより好ましい。
本発明では、DI値が0.000800以下のTNモード液晶セルを用いる。ここで、DI値とは、Depolarizing Indexの略で、黒表示時の液晶セルの偏光解消の度合いを表すものであって、当業者の間で使用されているパラメータである。DI値の詳細については、非特許文献Analysis of Light−Leakage Caused by Colour Filters for Improving
Contrast Ratio of LCD−TVs,Y Utsumi et al.,(Hitachi.)EuroDisp.(2005)301.に記載されている。ここで、上記文献中でのDI値は2枚の偏光板の間に液晶セルをセットし、2枚の偏光板をクロスニコル配置としたときと、パラニコル配置としたときの輝度より算出しているが、本発明ではより実際の液晶セル性能測定に適するよう、2枚の偏光板をクロスニコル配置、パラニコル配置とした後に、偏光板角度の微調整を行うことで、2枚の偏光板のなす角度が輝度の最も小さくなる場合の角度での値、輝度が最も大きくなる場合の角度での値を用いてDI値を算出するものとする。本発明でのDI値算出には、波長550nm、液晶セル正面方向における輝度の値を用いるものとする。
DI値の計算式を以下に示す。
(式1) DI=2/(1+Tmax/Tmin)
ここで、
Tmax:液晶セルが黒表示の状態で、上下偏光板をパラニコル配置とし、さらに偏光板角度の微調整を行うことで、輝度が最も大きい状態での輝度の値;
Tmin:液晶セルが黒表示の状態で、上下偏光板をクロスニコル配置とし、さらに偏光板角度の微調整を行うことで、輝度が最も小さい状態での輝度の値;
である。
実際の測定では、測定値より測定に用いた偏光板の寄与を差し引いた値を使用する。
本発明に使用されるTNモード液晶セルは、そのDI値が0.000800以下、好ましくは0.000750以下、より好ましくは0.00070以下、さらに好ましくは0.00065以下、最も好ましくは0.00060以下である。DI値が0.000800を超越してしまうと、黒表示時にパネル内で偏光解消され、本来偏光板を透過しない光が透過することで黒表示時の光モレの原因となり、さらに特に画像の鮮明性に悪影響を及ぼす為、好ましくない。
上記のような特性を有するフィルムとTNモード液晶セルを組み合わせることで、黒表示時の光モレ、画面の明るさ、画像の鮮明性が向上した表示性能が特に優れたTNモード液晶表示装置が得られる。
本発明の液晶表示装置は、バックライト光を集光する光学シート(凹凸部が形成された支持体)を用いることがより好ましく、液晶表示装置の黒表示時の光モレを軽減し、正面コントラストを向上することができる。
本発明の液晶表示装置は、バックライト光を集光する光学シートを前記TNモード液晶セルの背面側に有することが好ましく、さらに該光学シートから出射されたバックライト光の光量を測定したとき、該液晶表示装置の表示画面の法線に対して、前記TNモード液晶セルの面内位相差が最大となる方向に傾けられた出射角度が50°〜85°の範囲の光量の平均値が、該法線方向の光量に対して12%以下であることが好ましい。
前記光学シートはバックライト光を集光する目的で使用され、例えば図3に示すような、光源42(図示は直下型バックライトであるが、側面に光源があり、導光板を用いたバックライトでも同様)からの出射光は、光学シート(集光シート)41に入射し、入射光の一部は光学シート41で屈折透過して出射の角度が変わり正面方向に出射し、残りが反射して光源42の方向に戻される。光学シート41からの反射光は、光源42、拡散板43、拡散シート44などの表面で反射され、再び光学シート41に入射する。
このような構成とすることにより、元々の光源の出射光の角度分布は広く分散しており、正面の輝度は低くなる特性を有しているため、光学シート41によって光源からの光を正面方向の輝度が高くなるように指向特性を改善することができる。
図4は、上記のような光学シート41における光路を示す断面図である。図4に示すように、入射した光は、光学シート41を屈折透過する際に、正面方向に屈折する成分Aと、正面方向ではなく、正面から離れる方向に屈折する成分Bと、表面で反射する成分Cに分けられる。これらの光の成分のうち、前記成分Aは、正面方向即ち観察方向に出射されるものであり、実際に利用される光である。前記反射される成分Cは、拡散シートなどの表面で拡散反射して、光学シートに入射する角度を変え、一部は成分Aに変換され正面方向に出射する。この反射を繰り返すことにより、成分Cの多くは成分Aに変換され、出射面の正面方向の輝度を増加させる。
これに対して、図4のX部分を通過する光の成分Bは、液晶表示装置等の有効な視野角外に広角度で出射する光(以下、サイドローブ光と称する)であり、正面輝度の増加には寄与しない。
さらに、サイドローブ光は、画面の法線方向から極端にかけ離れた角度で液晶パネルに入射し、液晶セルの液晶分子、カラーフィルター、位相差フィルム等により正面に散乱された光成分は、黒表示輝度の著しい増加や、細線表示の鮮明性低下の原因となっていた。
本発明の液晶表示装置に好ましく用いられ、バックライト光を集光する光学シートは、サイドローブ光を少なくすることができ、黒表示の輝度上昇を防止し、さらに細線表示の鮮明性を向上させる効果を奏する。
該光学シートから出射されたバックライト光の光量を測定したとき、該液晶表示装置の表示画面の法線に対して、前記TNモード液晶セルの面内位相差が最大となる方向に傾けられた出射角度50°から85°の範囲の光量の平均値が、該法線方向の光量に対して12%以下であることが好ましく、8%以下であることがさらに好ましく、4%以下であることが特に好ましい。
また、上記光学シートを用いた場合に該光学シートから出射されたバックライト光の光量を測定したとき、該液晶表示装置の表示画面の法線方向(正面)の光量が半分となる出射角度(画面の法線から前記TNモード液晶セルの面内位相差が最大となる方向への角度)としては、50°未満であることが好ましく、45°以下であることがさらに好ましく、40°以下であることが特に好ましい。
視認者側から見てTNモード液晶セルの表示画面は、通常、横長画面の長辺を水平方向として、液晶セル内の液晶分子の配向方向を45°から135°にツイストし、前記TNモード液晶セルの面内位相差が最大となる方向が鉛直方向となるよう画面を配置するが、用途によっては逆に配置した液晶表示装置であってもよい。
前記TNモード液晶セルの面内位相差が最大となる方向に上記光学シートが集光し、且つその方向のサイドローブ光が少ない場合に顕著な効果を奏し、好ましいが、液晶セルの画素とのモアレを防止するためにプリズムの稜線を画素のブラックマトリックスに対して1〜20°の範囲で傾けてもよい。
《支持体》
前記光学シートを作製するための支持体は、集光性の凹凸部を形成するための第一の表面を有し、支持体の形状、構造、大きさ、厚み、材料等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記形状としては、例えば平板状、シート状などが挙げられ、前記構造としては、単層構造でも積層構造であってもよく、前記大きさとしては、前記光学シートの大きさ等に応じて適宜選択することができる。
前記支持体の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、0.005〜4.0mmが好ましい。ここで、前記支持体の厚みは、例えば、支持体を測定計で挟んで支持体の厚みを測定する膜厚計、光学的な干渉を利用して支持体の厚みを測定する非接触膜厚計等を使用することにより測定することができる。
前記支持体の材料としては、本質的に可視光吸収性がなく透明であり、ある程度の強度(剛性)を有するものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば無機材料及び有機材料のいずれをも好適に用いることができる。
前記剛性とは、具体的には、JIS P8125規格に記載されているテーバー剛度として測定可能な支持体の物性のことを表す。
前記無機材料としては、例えば、ガラス、石英、シリコン、などが挙げられる。
前記有機材料としては、例えば、トリアセチルセルロース等のアセテート系樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル系樹脂;ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリノルボルネン系樹脂、セルロース系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
<凹凸部>
前記凹凸部の凹凸形状の周期(ピッチ)としては、5〜150μmが好ましく、10〜100μmがより好ましい。前記凹凸形状の周期(ピッチ)が、150μmを超えると、ディスプレイ用に用いた場合、微小凹凸が視認されやすくなり、ギラツキ感が生じる場合がある。前記周期(ピッチ)が、5μm未満であると、規則的な周期で凹凸形状を配置することが困難となる。
前記凹凸形状の周期(ピッチ)の規則性としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記凹凸形状の周期(ピッチ)が一定値でない場合、その周期の変化は10倍以内が好ましく、4倍以内がより好ましい。前記周期変化が、10倍を超えると、正面方向の輝度上昇の効率が極端に低下することがある。
また、前記凹凸部の高さとしては、1〜100μmが好ましく、5〜50μmがより好ましい。前記凹凸部の高さが、1μm未満であると、高度の集光性を発現することが困難となることがあり、100μmを超えると、凹凸部の機械的な強度が低下し、掻き傷等の欠陥が発生しやすくなったり、凹凸が視認されやすくなりギラツキ感が生じることがある。
前記凹凸部が形成された支持体としては、具体的には、プリズムシート、波型のレンチキュラーシート、同形状のレンズ単位を縦・横配列したフライアイレンズシートなどが挙げられ、プリズムシートが好ましい。
前記プリズムシートとしては、長尺なプリズムレンズが支持体上に複数平行に配列されたものが代表的であり、該プリズムの断面形状としては(プリズムレンズの長手方向と直交する断面の形状)、三角形状の他、台形や平行四辺形であってもよく、平坦部があれば、山、谷の形状は丸みを帯びていてもよい。
また、三角錐状、四角錐状などのプリズムレンズが、支持体上に複数個、一定間隔又はランダムに2次元的に配置されたもの(以下、ピラミッドシートと称することがある)であってもよいし、支持体に、三角錐状、四角錐状などの凹部が、一定間隔又はランダムに2次元的に形成されたもの(以下、逆ピラミッドシートと称することがある)であってもよい。
<プリズムシート>
該プリズムの断面形状としては、三角形状が好ましく、とりわけ二等辺三角形状がより好ましく、凸部を液晶セル側へ向けたプリズムシートであることが導光板とのマッチングが容易であるため、汎用性が高く、好ましい。
該プリズムの断面形状の特徴として、三角形状の頂角が95〜130°が好ましく、100〜120°がより好ましい。前記頂角が95°未満であると、サイドローブ光の影響により、黒表示輝度の著しい増加や、細線表示の鮮明性低下の原因となりやすい。
一方、前記頂角が130°を超えると、集光効果が低下し、正面方向の輝度が低下することがある。
また、該プリズム断面形状の三角形状の頂角が95°未満であっても、プリズム部とは別に光学調整部を支持体に設けることにより、サイドローブ光を低減することができ、もう一つの好ましい態様である。
前記光学調整部は、前記支持体上の面内に所定の間隔をもって複数に配設され、特開2008−003515号公報、特開2008−176197号公報に記載された光学シートの光学調整部と同義であり、光反射性を有するもの、光拡散性を有するもの、屈折率差を利用するものがあり、特に光反射性を有する光学調整部であることが好ましい。
前記凹凸部(プリズム構造)の材料としては、特に制限はないが、正面輝度向上の観点から、屈折率の高いものが好ましい。このような樹脂としては、ベンゼン環やナフタレン環等の芳香環構造、Br及びCl等のハロゲン、硫黄の含有率が高い有機化合物が挙げられる。
前記樹脂を、UV硬化性樹脂として用いる場合は、上記のような構造を含有し、更に、(メタ)アクロイル基、ビニル基、エポキシ基等の反応性基含有化合物と、紫外線等の放射線照射にて該反応性基含有化合物を反応させうる、ラジカルやカチオン等の活性種を発生する化合物とを混合したものが挙げられる。特に硬化の速さからは、(メタ)アクロイル基、ビニル基等の不飽和基を含有する反応性基含有化合物(モノマー)と、光によりラジカルを発生する光ラジカル重合開始剤との組み合わせが好ましい。
前記反応性基含有化合物としては、(メタ)アクロイル基、ビニル基やエポキシ基などの反応性基含有化合物と、紫外線などの放射線照射にて該反応性基含有化合物を反応させうるラジカルやカチオン等の活性種を発生する化合物を含有するものが使用できる。
特に硬化の速さからは、(メタ)アクロイル基、ビニル基などの不飽和基を含有する反応性基含有化合物(モノマー)と、光によりラジカルを発生する光ラジカル重合開始剤の組み合わせが好ましい。中でも(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクロイル基含有化合物が好ましい。この(メタ)アクロイル基含有化合物としては(メタ)アクロイル基が1個あるいは2個以上含有した化合物を用いることができる。また、上記のアクロイル基、ビニル基などの不飽和基を含有する反応性基含有化合物(モノマー)は必要に応じて、単独で用いても、複数種を混合して用いてもよい。
反応性基含有化合物としては、例えば、(メタ)アクロイル基含有化合物、芳香環を有する単官能モノマー、(メタ)アクリロイル基を分子中に2つ有する不飽和モノマー、ビスフェノール骨格をもつ不飽和モノマー、3官能以上の(メタ)アクリレート不飽和モノマーなどが挙げられる。
このような、(メタ)アクロイル基含有化合物としては、例えば、(メタ)アクロイル基含有化合物を1個だけ含有する単官能モノマーとしてイソボルニル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、4−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、へキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートが挙げられる。
更に芳香環を有する単官能モノマーとして、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシ−2−メチルエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、3−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、4−フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、3−(2−フェニルフェニル)−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、エチレンオキシドを反応させたp−クミルフェノールの(メタ)アクリレート、2−ブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、4−ブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2,4−ジブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2,6−ジブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2,4,6−トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、2,4,6−トリブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
このような、芳香環を有する単官能モノマーの市販品としては、アロニックスM113、M110、M101、M102、M5700、TO−1317(以上、東亞合成(株)製)、ビスコート#192、#193、#220、3BM(以上、大阪有機化学工業(株)製)、NKエステルAMP−10G、AMP−20G(以上、新中村化学工業(株)製)、ライトアクリレートPO−A、P−200A、エポキシエステルM−600A、ライトエステルPO(以上、共栄社化学(株)製)、ニューフロンティアPHE、CEA、PHE−2、BR−30、BR−31、BR−31M、BR−32(以上、第一工業製薬(株)製)等が挙げられる。
また、(メタ)アクリロイル基を分子中に2つ有する不飽和モノマーとしては、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレートなどのアルキルジオールジアクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレートなどのポリアルキレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンメタノールジアクリレート等が挙げられる。
ビスフェノール骨格をもつ不飽和モノマーとしては、エチレンオキシド付加ビスフェノールA(メタ)アクリル酸エステル、エチレンオキシド付加テトラブロモビスフェノールA(メタ)アクリル酸エステル、プロピレンオキシド付加ビスフェノールA(メタ)アクリル酸エステル、プロピレンオキシド付加テトラブロモビスフェノールA(メタ)アクリル酸エステル、ビスフェノールAジグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸とのエポキシ開環反応で得られるビスフェノールAエポキシ(メタ)アクリレート、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸とのエポキシ開環反応で得られるテトラブロモビスフェノールAエポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFジグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸とのエポキシ開環反応で得られるビスフェノールFエポキシ(メタ)アクリレート、テトラブロモビスフェノールFジグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸とのエポキシ開環反応で得られるテトラブロモビスフェノールFエポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
このような構造を有する不飽和モノマーの市販品としては、ビスコート#700、#540(以上、大阪有機化学工業(株)製)、アロニックスM−208、M−210(以上、東亞合成(株)製)、NKエステルBPE−100、BPE−200、BPE−500、A−BPE−4(以上、新中村化学(株)製)、ライトエステルBP−4EA、BP−4PA、エポキシエステル3002M、3002A、3000M、3000A(以上、共栄社化学(株)製)、KAYARAD R−551、R−712(以上、日本化薬(株)製)、BPE−4、BPE−10、BR−42M(以上、第一工業製薬(株)製)、リポキシVR−77、VR−60、VR−90、SP−1506、SP−1506、SP−1507、SP−1509、SP−1563(以上、昭和高分子(株)製)、ネオポールV779、ネオポールV779MA(日本ユピカ(株)製)等が挙げられる。
更に、3官能以上の(メタ)アクリレート不飽和モノマーとしては、3価以上の多価アルコールの(メタ)アクリレート、例えばトリメチロールプロパンリト(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリオキシエチル(メタ)アクリレート、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート等が挙げられ、市販品としては、アロニックスM305、M309、M310、M315、M320、M350、M360、M408(以上、東亞合成(株)製、ビスコート#295、#300、#360、GPT、3PA、#400(以上、大阪有機化学工業(株)製)、NKエステルTMPT、A−TMPT、A−TMM−3、A−TMM−3L、A−TMMT(以上、新中村化学(株)製)、ライトアクリレートTMP−A、TMP−6EO−3A、PE−3A、PE−4A、DPE−6A(以上、共栄社化学(株)製、KAYARAD PET−30、GPO−303、TMPTA、TPA−320、DPHA、D−310、DPCA−20、DPCA−60(以上、日本化薬(株)製)等が挙げられる。
加えてウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを配合してもよい。ウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えばポリエチレングリコール、ポリテトラメチルグリコール等のポリエーテルポリオール;コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、テトラヒドロ(無水)フタル酸、ヘキサヒドロ(無水)フタル酸等の二塩基酸とエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等のジオールの反応によって得られるポリエステルポリオール;ポリε−カプロールクトン変性ポリオール;ポリメチルバレロールクトン変性ポリオール;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等のアルキルポリオール;エチレンオキシド付加ビスフェノールA、プロピレンオキシド付加ビスフェノールA等のビスフェノールA骨格アルキレンオキシド変性ポリオール;エチレンオキシド付加ビスフェノールF、プロピレンオキシド付加ビスフェノールF等のビスフェノールF骨格アルキレンオキシド変性ポリオール、又はそれらの混合物とトリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の有機ポリイソシアネートと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートから製造されるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー等が挙げられる。ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、本発明の硬化性組成物の粘度を適度に保つ上で好ましい。
これらウレタン(メタ)アクリレートの市販品のモノマーとしては、例えばアロニックスM120、M−150、M−156、M−215、M−220、M−225、M−240、M−245、M−270(以上、東亞合成(株)製)、AIB、TBA、LA、LTA、STA、ビスコート#155、IBXA、ビスコート#158、#190、#150、#320、HEA、HPA、ビスコート#2000、#2100、DMA、ビスコート#195、#230、#260、#215、#335HP、#310HP、#310HG、#312(以上、大阪有機化学工業(株)製)、ライトアクリレートIAA、L−A、S−A、BO−A、EC−A、MTG−A、DMP−A、THF−A、IB−XA、HOA、HOP−A、HOA−MPL、HOA−MPE、ライトアクリレート3EG−A、4EG−A、9EG−A、NP−A、1,6HX−A、DCP−A(以上、共栄社化学(株)製)、KAYARADTC−110S、HDDA、NPGDA、TPGDA、PEG400DA、MANDA、HX−220、HX−620(以上、日本化薬(株)製)、FA−511A、512A、513A(以上、日立化成(株)製)、VP(BASF製)、ACMO、DMAA、DMAPAA(以上、興人(株)製)等が挙げられる。
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、(a)ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート、(b)有機ポリイソシアネート及び(c)ポリオールの反応物として得られるものであるが、(a)ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートと(b)有機ポリイソシアネートを反応させた後、次いで(c)ポリオールを反応させた反応物であることが好ましい。
以上の不飽和モノマーは単独で用いてもよく、必要に応じて複数種を混合して用いてもよい。
光ラジカル重合開始剤としては、例えばアセトフェノン、アセトフェノンベンジルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、キサントン、フルオレノン、べンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4'−ジメトキシベンゾフェノン、4,4'−ジアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド、エチル−2,4,6−トリメチルベンゾイルエトキシフェニルォスフィンオキシドなどが挙げられる。
光ラジカル重合開始剤の市販品としては、例えばIrgacure114、369、651、500、119、907、714、2959、CGI1700、CGI1750、CGI11150、CG24−61、Darocurl116、1173(以上、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)、LucirinLR1728、1193X(以上BASF社製)、ユベクリルP36(UCB社製)、KIP150(ランベルティ社製)等が挙げられる。これらの中で、液状で溶解しやすく、高感度という観点からはLucirinLR1193Xが好ましい。
光ラジカル重合開始剤は全組成物中に、0.01〜10質量%、特に0.5〜7質量%配合されるのが好ましい。配合量の上限は組成物の硬化特性や硬化物の力学特性および光学特性、取り扱い等の点からこの範囲が好ましく、配合量の下限は、硬化速度の低下防止の点からこの範囲が好ましい。
前記組成物には更に光増感剤を配合することができ、当該光増感剤としては、例えばトリエチルアミン、ジエチルアミン、N−メチルジエタノールアミン、エタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル等が挙げられ、市販品としては、例えばユベクリルP102、103、104、105(以上、UCB社製)等が挙げられる。
更にまた、上記成分以外に必要に応じて各種添加剤として、例えば酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、シランカップリング剤、塗面改良剤、熱重合禁止剤、レベリング剤、界面活性剤、着色剤、保存安定剤、可塑剤、滑剤、溶媒、フィラー、老化防止剤、濡れ性改良剤、離型剤等を必要に応じて配合することができる。
ここで、酸化防止剤としては、例えばIrganox1010、1035、1076、1222(以上、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)、Antigen P、3C、FR、GA−10(住友化学工業(株)製)等が挙げられ、紫外線吸収剤としては、例えばTinuvin P、234、320、326、327、328、329、213(以上、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)、Seesorb102、103、110、501、202、712、704(以上、シプロ化成(株)製)等が挙げられ、光安定剤としては、例えばTinuvin 292、144、622LD(以上、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)、サノールLS770(三共(株)製)、Sumisorb TM−061(住友化学工業(株)製)等が挙げられ、シランカップリング剤としては、例えばγ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリメトキシシラン、市販品として、SH6062、6030(以上、東レ・ダウ コーニング・シリコーン(株)製)、KBE903、603、403(以上、信越化学工業(株)製)等が挙げられ、塗面改良剤としては、例えばジメチルシロキサンポリエーテル等のシリコーン添加剤や、非イオン性フルオロ界面活性剤が挙げられ、シリコーン添加剤の市販品としてはDC−57、DC−190(以上、ダウ コーニング社製)、SH−28PA、SH−29PA、SH−30PA、SH−190(以上、東レ・ダウ コーニング・シリコーン(株)製)、KF351、KF352、KF353、KF354(以上、信越化学工業(株)製)、L−700、L−7002、L−7500、FK−024−90(以上、日本ユニカー(株)製)、非イオン性フルオロ界面活性剤の市販品としてはFC−430、FC−171(以上 3M(株))、メガファックF−176、F−177、R−08(以上、大日本インキ(株)製)挙げられ、離型剤としてはプライサーフA208F(第一工業製薬(株)製)等が挙げられる。
前記組成物は、粘度調整のために有機溶剤を含有していてもよい。粘度調整のための有機溶剤としては、前記組成物と混合した時に、析出物や相分離、白濁などの不均一なく混合できるものであればよく、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エタノ−ル、プロパノ−ル、ブタノ−ル、2−メトキシエタノ−ル、シクロヘキサノ−ル、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、トルエンなどが挙げられ、必要に応じてこれらを複数種混合して用いてもよい。有機溶剤を添加した場合は、製品の製造工程中にて、有機溶剤を乾燥、蒸発する工程が必要になるが、蒸発残りの溶剤が大量に製品に残留した場合、製品の機械物性が劣化したり、製品として使用中に有機溶剤が蒸発、拡散し、悪臭や健康に悪影響を及ぼす懸念がある。このため、有機溶剤としては、高沸点のものは残留溶剤量が多くなり好ましくない。ただし、あまりに低沸点の場合は、激しく蒸発するため、面状が荒れたり、乾燥時の気化熱により組成物表面に結露水が付着して、この跡が面状欠陥になったり、蒸気濃度が高くなり引火等の危険が増す。従って、有機溶剤の沸点としては50℃以上から150℃以下が好ましく、更に好ましくは70℃から120℃の間である。素材の溶解性や、沸点の観点から有機溶剤としてはメチルエチルケトン(bp.79.6℃)、1−プロパノ−ル(bp.97.2℃)などが好ましい。
前記組成物に添加される有機溶剤の添加量は、溶剤の種類や、溶剤添加前の前記組成物の粘度にもよるが、十分に塗布性が改善されるためには、10質量%から40質量%の間であり、好ましくは15質量%から30質量%である。あまり少量だと粘度低減の効果や塗布量アップの効果が小さく塗布性が十分に改良されない。しかし多く希釈しすぎると、粘度が低すぎてシート状体の上で液が流動してムラが発生したり、シート状体の裏面に液が回るなどの問題が発生する。また、乾燥工程にて十分に乾燥しきれず、製品中に有機溶剤が多量に残留してしまい、製品機能の劣化や、製品使用中に揮発して悪臭を発生したり、健康への悪影響を及ぼす懸念が生じる。
前記組成物は、前記各成分を常法により混合して製造することができ、必要に応じて加熱溶解により製造できる。
このようにして調製される前記組成物の粘度は、通常10〜50,000mPa・s/25℃である。基材やエンボスロ−ルに樹脂液を供給する場合は、粘度が高すぎると、均一に組成物を供給するのが難しくなり、レンズを製造する際、塗布むらやうねり、気泡の混入が生じたりするため、目的とするレンズ厚を得るのが難しくなり、レンズとしての性能を十分に発揮できない。特に、ラインスピ−ドを高速化したときにその傾向が顕著になる。従ってこの場合は、液粘度が低い方が好ましく、10〜100mPa・sであり、更に好ましくは、10〜50mPa・sである。このような低い粘度は前記の有機溶剤を適当量添加することにより調整が可能である。また、塗布液の保温設定により、粘度を調整することも可能である。一方、溶剤蒸発後の粘度が低すぎるとエンボスロ−ルで型押しする際、レンズ厚のコントロールが難しく、一定厚の均一なレンズを形成できない場合があり、好ましい粘度は100〜3,000mPa・sである。有機溶剤を混合している場合は、前記組成物の供給からエンボスロ−ルで型押しするまでの工程間に、有機溶剤を加熱乾燥などにより蒸発させる工程を設けることにより、樹脂液供給時は低粘度で均一に液供給ができ、エンボスロ−ルで型押しする際は、有機溶剤を乾燥させより高粘度化させた前記組成物で均一に型押しすることが可能になる。
ここで、前記組成物を硬化させることにより、得られる硬化物は以下の物性を有するものであることが特に好ましい。第1に、その硬化物の25℃での屈折率が、1.55以上が好ましく、1.56以上がより好ましい。屈折率が1.55未満であると、本組成物を用いて光学シートを形成した場合、十分な正面輝度を確保することができない場合が生ずる。
第2に、その硬化物の軟化点は、40℃以上、特に50℃以上であるのが好ましい。軟化点が40℃未満の場合は耐熱性が十分でない場合がある。
更に、高屈折率な無機微粒子材料を含有させることにより高屈折化した材料も用いることができる。このような無機高屈折材料としてはSi(屈折率3.5)、TiO2(屈折率2.2〜2.7)、CeO2(屈折率2.2)、ZrO2(屈折率2.1)、In23(屈折率2.0)、La23(屈折率1.95)、SnO2(屈折率1.9)、Y23(屈折率1.82)、Sb25(屈折率2.09〜2.29)、などが挙げられる。
前記高屈折率な無機微粒子の粒子径は、小さい方が樹脂の透明性が高くなり好ましい。具体的には、100nm以下が好ましく、50nm以下がより好ましく、20nm以下が更に好ましい。
前記高屈折率な無機微粒子は、通常のUV硬化性樹脂に混合して使用することができる。このため、上記のような高屈折率のUV硬化性樹脂に混合することにより、より高屈折率なUV硬化性樹脂を得ることができる。
また、前記プリズムシートは、ポリカーボネートなどの熱可塑性のシートが溶融状態のうちに金属製の鋸歯状のプリズムシート原盤ロールを押し当てる方法、同じく熱可塑性の樹脂を片側に鋸歯状の形状をもった原盤の中に押し出し成型する方法などによっても作成することができる。
(光学シートの製造方法)
本発明の光学シートの製造方法は、感光層形成工程と、露光工程と、光学調整部形成工程とを少なくとも含む単位工程を複数回含み、必要に応じて、凹凸部形成工程、現像工程(液体現像工程)、第二の支持体形成工程などのその他の工程を含んでなる。
なお、本実施形態における光学シートの製造方法では、感光層形成工程、露光工程、及び光学調整部形成工程が、少なくともこの順で行われる単位工程を複数回行うため、例えば、第1の感光層形成工程、第1の露光工程、及び第1の光学調整部形成工程が行われた後に、前記支持体と略同じ光学特性を示す支持層を形成する支持層形成工程が行われ、該支持層に再び感光層を形成する第2の感光層形成工程、第2の露光工程、及び第2の光学調整部形成工程が行われることとなる。したがって、感光層、及び光学調整部は、前記支持体の厚さ方向において所定間隔をもって複数回形成されることとなる。
<凹凸部形成工程>
前記凹凸部形成工程は、支持体の少なくとも一方の表面(第一の表面)に、光を集光乃至散乱させる凹凸部を形成する工程である。市販のプリズムシート、レンチキュラーレンズシート、フライアイレンズシート、拡散シートなどを用いる場合は、該凹凸部形成工程を省くことができる。
前記凹凸部は、本発明の光学シートにおける支持体の第一の表面とは反対側に位置する面(後述する第四の表面)にも形成してもよい。
前記凹凸部の形成方法としては、特に制限はなく、従来公知の方法を用いることができ、例えば、支持体上に、光硬化性樹脂などを含む塗布液を塗布し、凹凸を形成した金型などに押し付けた状態で、露光し、前記光硬化性樹脂を硬化させた後、金型を外すことにより形成することができる。
また、前記凹凸部は、ポリカーボネートなどの熱可塑性のシートが溶融状態のうちに金属製の鋸歯状のプリズムシート原盤ロールを押し当てる方法、同じく熱可塑性の樹脂を片側に鋸歯状の形状をもった原盤の中に押し出し成型する方法などによっても形成することができる。
また、凹凸部が粒子などにより形成され、拡散性を有する場合は、前記拡散シートの説明で述べたような方法で凹凸部を形成することができる。
また、凹凸部が形成された支持体の製造方法としては、下記のようなプリズムシートの製造方法を用いてもよい。
前記支持体及び凹凸部の素材、その他の詳細は、前記光学シートの説明中で述べたとおりである。
−プリズムシートの製造方法−
前記プリズムシートの製造方法の一例について図面を参照して説明する。図5は、本発明が適用されるプリズムシートの製造装置80の構成を示す概念図である。このプリズムシートの製造装置80は、シート状体供給手段81と、塗布手段82と、乾燥手段89と、凹凸ロールであるエンボスロール83と、ニップロール84と、樹脂硬化手段85と、剥離ロール86と、保護フィルム供給手段87と、シート巻き取り手段88等とから構成される。
シート状体供給手段であるシート供給手段81は、シート状体であるシートWを送り出すもので、シートWが巻回された送り出しロール等より構成される。
シートWの幅としては、0.1〜3mが、シートWの長さとしては、1,000〜100,000mが、シートWの厚さとしては、1〜300μmのものがそれぞれ一般的に採用される。ただし、これ以外のサイズの適用も妨げられるものではない。
これらのシートWは、あらかじめコロナ放電、プラズマ処理、易接着処理、熱処理、除塵処理などを行っておいてもよい。シートWの表面粗さRaは、カットオフ値0.25mmにおいて、3〜10nmが好ましい。
また、シートWには、あらかじめ接着層等の下地層を設け乾燥硬化させたもの、裏面に他の機能層があらかじめ形成されたもの等を用いてもよい。同様に、シートWとして1層構成のもののみならず、2層以上の構成のものも採用できる。また、シートWは、光が透過できるような透明体、反透明体であることが好ましい。
塗布手段82は、シートWの表面に放射線硬化樹脂を塗布する装置であり、放射線硬化樹脂を供給する供給源82Aと、供給装置(ポンプ)82Bと、塗布ヘッド82Cと、塗布の際にシートWを巻き掛けて支持する支持ロール82Dと、放射線硬化樹脂供給源82Aを塗布ヘッド82Cに供給するための配管より構成される。なお、図5では、塗布ヘッドとして、エクストリュージョン型のダイコータの塗布ヘッドを用いている。
乾燥手段89は、例えば、図5に示すトンネル状の乾燥装置のように、シートWに塗布された塗布液を均一に乾燥させることができるものであれば、公知の各種方式のものが採用できる。例えば、ヒータによる輻射加熱方式のもの、熱風循環方式のもの、遠赤外線方式のもの、真空方式のもの等が採用できる。
エンボスロール83としては、シートWの表面に、ロール表面の凹凸を転写形成できる、凹凸パターンの精度、機械的強度、真円度等を有することが求められる。このようなエンボスロール83としては、金属製のロールが好ましい。
エンボスロール83の外周面には、規則的な微細凹凸パターンが形成されている。このような規則的な微細凹凸パターンは、製品としてのプリズムシート表面の微細凹凸パターンを反転した形状であることが求められる。
プリズムシートとしては、微細凹凸パターンが二次元配列された、例えばレンチキュラーレンズや、プリズムレンズ、微細凹凸パターンが三次元配列された、例えばフライアイレンズ、円錐、角錐等の微細な錐体をXY方向に敷きつめた平板レンズ等が対象となり、エンボスロール83の外周面の規則的な微細凹凸パターンをこれに対応させる。
エンボスロール83の外周面の規則的な微細凹凸パターンの形成方法としては、エンボスロール83の表面をダイヤモンドバイト(シングルポイント)で切削加工する方法、エンボスロール83の表面にフォトエッチング、電子線描画、レーザー加工等で直接凹凸を形成する方法が採用でき、また、薄い金属製の板状体の表面にフォトエッチング、電子線描画、レーザー加工、光造形法等で凹凸を形成し、この板状体をロールの周囲に巻き付け固定し、エンボスロール83とする方法が採用できる。その他、金属より加工しやすい素材の表面にフォトエッチング、電子線描画、レーザー加工、光造形法等で凹凸を形成し、この形状の反転型を電鋳等により形成して薄い金属製の板状体を形成し、この板状体をロールの周囲に巻き付け固定し、エンボスロール83とする方法も採用できる。特に反転型を電鋳等により形成する場合には、1つの原版(マザー)より複数の同一形状の板状体が得られるという特長がある。
エンボスロール83の表面には、離型処理を施すことが好ましい。このように、エンボスロール83の表面に離型処理を施すことにより、微細凹凸パターンの形状が良好に維持できる。離型処理としては、公知の各種方法、例えば、フッ素樹脂によるコーティング処理が採用できる。なお、エンボスロール83には駆動手段が設けられていることが好ましい。エンボスロール83は、図示の矢印のように、反時計方向(CCW)に回転する。
ニップロール84は、エンボスロール83と対になってシートWを押圧しながらロール成形加工するもので、所定の機械的強度、真円度等を有することが求められる。ニップロール84表面の縦弾性係数(ヤング率)は、小さ過ぎるとロール成形加工が不十分となり、大き過ぎるとゴミ等の異物の巻き込みに敏感に反応し欠点を生じやすいことより、適宜の値とすることが好ましい。なお、ニップロール84には駆動手段が設けられていることが好ましい。ニップロール84は、図示の矢印のように、時計方向(CW)に回転する。
エンボスロール83とニップロール84との間に所定の押圧力を付与するべく、エンボスロール83とニップロール84のいずれかに加圧手段を設けることが好ましい。同様に、エンボスロール83とニップロール84との隙間(クリアランス)や圧力を正確に制御できるような微調整手段を、エンボスロール83とニップロール84のいずれかに設けることが好ましい。
樹脂硬化手段85は、ニップロール84の下流側においてエンボスロール83に対向して設けられる放射線照射手段である。この樹脂硬化手段85は、放射線照射によってシートWを透過して樹脂層を硬化させるもので、樹脂の硬化特性に応じた放射線を照射でき、シートWの搬送速度に応じた量の放射線を照射できることが好ましい。樹脂硬化手段85として、例えば、シートWの幅と略同一長さの円柱状照射ランプが採用できる。また、この円柱状照射ランプを複数本平行に設けることもでき、この円柱状ランプの背面に反射板を設けることもできる。
剥離ロール86は、エンボスロール83と対になってエンボスロール83からシートWを剥離させるもので、所定の機械的強度、真円度等を有することが求められる。剥離箇所において、エンボスロール83の周面上に巻き掛けられたシートWを回転するエンボスロール83と剥離ロール86とで挟みながら、シートWをエンボスロール83から剥離させて剥離ロール86に巻き掛ける。この動作を確実にすべく、剥離ロール86には駆動手段が設けられていることが好ましい。剥離ロール86は、図示の矢印のように、時計方向(CW)に回転する。
なお、硬化により樹脂等の温度が上昇するような場合には、剥離時にシートWを冷却させて剥離を確実にすべく、剥離ロール86に冷却手段を設ける構成も採用できる。
なお、図示は省略したが、エンボスロール83の押圧箇所(9時の位置)から剥離箇所(3時の位置)までの間に複数のバックアップロールを対向して設け、この複数のバックアップロールとエンボスロール83とでシートWを押圧しながら硬化処理を行う構成も採用できる。
シート巻き取り手段88は、剥離後のシートWを収納するもので、シートWを巻き取る巻き取りロール等より構成される。このシート巻き取り手段88において、隣接して設けられる保護フィルム供給手段87より供給される保護フィルムHがシートWの表面に供給され、両フィルムが重なった状態で、シート巻き取り手段88に収納される。
プリズムシートの製造装置80において、塗布手段82とエンボスロール83との間、剥離ロール86とシート巻き取り手段88との間等に、シートWの搬送路を形成するガイドロール等を設けてもよく、その他、必要に応じてシートWの搬送中の弛みを吸収すべく、テンションロール等を設けることもできる。
以上により、プリズム形状の単位レンズが一軸方向に形成されたレンズ列が隣接して略全面に配列されたプリズムシートを作製することができる。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
〔実施例1〕
(フィルム1の作製)
<セルロースアシレート溶液1の調製>
セルロースアシレートおよび下記の組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、セルロースアシレート溶液1を調製した。
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セルロースアシレート溶液1の組成
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セルロースアシレートCE−1 100.0質量部
添加剤A−1 8.0質量部
添加剤A−2 2.0質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 400.0質量部
エタノール(第2溶媒) 40.0質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
<マット剤溶液1の調製>
下記の組成物を分散機に投入し、攪拌して各成分を溶解し、マット剤溶液1を調製した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
マット剤溶液1の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
平均粒子サイズ16nmのシリカ粒子(AEROSIL R972、 日本アエロジル(株)製) 1.6質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 78.9質量部
エタノール(第2溶媒) 8.8質量部
セルロースアシレート溶液1 0.3質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
上記マット剤溶液の1.0質量部を濾過後にセルロースアシレート溶液1を92.7質量部加えて、インラインミキサーを用いて混合し、バンド流延機を用いて流延し、直後に乾燥風温度30℃、乾燥風速度1.4m/sで残留溶媒含量40%まで乾燥し、フィルムを剥ぎ取った。乾燥風は有機溶剤濃度が1%以下の新鮮風とした。130℃の雰囲気温度で残留溶媒含量15%のフィルムをテンターを用いて延伸倍率1.30倍、延伸速度150%/分で横延伸したのち、130℃で30秒間保持した。その後、クリップを外して120℃で40分間乾燥させ、幅2000mmのフィルム1を製造した。作製されたフィルム1の残留溶媒量は0.1%であり、膜厚は50μmであった。
(フィルム2の作製)
セルロースアシレートの種類、添加剤の種類、添加剤投入量を表2の内容に変更したセルロースアシレート溶液2を使用し、マット剤溶液に加えるセルロースアシレート溶液をセルロースアシレート溶液2に変更した以外は、フィルム1と同様にしてフィルム2を作製した。
(フィルム3の作製)
<セルロースアシレート溶液3の調製>
セルロースアシレートおよび下記の組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、セルロースアシレート溶液3を調製した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
セルロースアシレート溶液3の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
セルロースアシレートCE−2 100.0質量部
添加剤A−4 7.8質量部
添加剤A−5 3.5質量部
UV−1 0.8質量部
UV−2 0.4質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 391.5質量部
メタノール(第2溶媒) 58.5質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
<マット剤溶液3の調製>
下記の組成物を分散機に投入し、攪拌して各成分を溶解し、マット剤溶液3を調製した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
マット剤溶液3の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
平均粒子サイズ16nmのシリカ粒子(AEROSIL R972、日本アエロジル(株)製)
2.0質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 76.3質量部
メタノール(第2溶媒) 11.4質量部
セルロースアシレート溶液3 0.3質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
上記マット剤溶液3の1.0質量部を濾過後にセルロースアシレート溶液3を92.7質量部加えて、インラインミキサーを用いて混合し、バンド流延機を用いて流延し、直後に乾燥風温度30℃、乾燥風速度1.4m/sで残留溶媒含量40%まで乾燥し、フィルムを剥ぎ取った。乾燥風は有機溶剤濃度が1%以下の新鮮風とした。その後、120℃で40分間乾燥させ、幅2000mmのフィルム3を製造した。作製されたフィルム3の残留溶媒量は0.1%であり、膜厚は40μmであった。
(フィルム4の作製)
セルロースアシレートの種類、添加剤の種類、添加剤投入量を表2の内容に変更し、マット剤溶液に加えるセルロースアシレート溶液をセルロースアシレート溶液4に変更し、上記マット剤溶液の3.0質量部を濾過後にセルロースアシレート溶液4を92.7質量部加えて、インラインミキサーを用いて混合し、完成膜厚を80μmとした以外は、フィルム1と同様にしてフィルム4を作製した。
(フィルム5の作製)
セルロースアシレートの種類、添加剤の種類、添加剤投入量を表2の内容に変更し、マット剤溶液に加えるセルロースアシレート溶液をセルロースアシレート溶液5に変更し、上記マット剤溶液の3.0質量部を濾過後にセルロースアシレート溶液5を92.7質量部加えて、インラインミキサーを用いて混合した以外は、フィルム1と同様にしてフィルム5を作製した。
得られたフィルムの面内位相差Re、厚さ方向位相差Rth、Nz値、軸バラツキ、全ヘイズ、内部ヘイズを本願に記載の方法で測定した。測定条件は25℃60%相対湿度で、フィルムをこの環境に十分な時間置いた後で測定を行った。結果を表2に記載する。
Figure 2013041240
CE-1:アセチル置換度1.6、プロピオニル置換度0.9、Mn=8万
CE-2:アセチル置換度2.85、Mn=6万6千
CE-3:アセチル置換度1.9、プロピオニル置換度0.7、Mn=8万
A-1:スクロースベンゾエート ベンゾエート置換度6
A-2:下記のポリエステルオリゴマー
Figure 2013041240
A-3:下記のアクリルオリゴマー
Figure 2013041240
ここで、MMAはメタクリル酸メチル、MAはアクリル酸メチルを表す。
A-4:トリフェニルホスフェート
A-5:ビフェニルジフェニルホスフェート
A-6:下記のフタル酸エステル
Figure 2013041240
UV-1:チヌビン326 チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)
UV-2:チヌビン328 チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)
(鹸化処理)
作製したフィルム1を、1.5規定の水酸化ナトリウム水溶液に、55℃で3分間浸漬した。室温の水洗浴槽中で洗浄し、30℃で0.1規定の硫酸を用いて中和した。再度、室温の水洗浴槽中で洗浄し、さらに100℃の温風で乾燥した。このようにして、フィルム1の表面をケン化した。
(偏光板の作製)
延伸したポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を吸着させて偏光膜を作製した。
次に、作製したフィルム1を、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて偏光膜の片側に貼り付けた。このとき、ポリビニルアルコールの長手方向とフィルム1の長手方向が一致するように貼り付け、フィルム1の遅相軸および偏光膜の透過軸が平行になるように配置した。次にフィルム3をフィルム1と同様にケン化処理し、フィルム3の遅相軸および偏光膜の透過軸が直交となるよう、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、上記偏光膜の反対側に貼り付けた。
この様にして、偏光板1を作製した。
フィルム1のかわりにフィルム2、4、5をそれぞれ用いた以外は偏光板1と同様にして偏光板2、4、5を作製した。
偏光子の両面にフィルム3を配置した偏光板3を作製した。ただし、フィルム3の遅相軸は長手方向に存在するため、フィルム3の遅相軸および偏光膜の透過軸は直交となるように配置した。
(液晶セルのDI値測定)
市販のTNモード液晶ディスプレイの液晶セルの両側の偏光板を剥がし、液晶セルのみの状態とした。次に片面のみ保護フィルムが貼合された片面偏光板を用意し、偏光子側をガラス板に添付し、液晶セルの上下に、液晶セルとガラス板付き片面偏光板が水平となるように設置した。カラス板付き片面偏光板は偏光度99.995%、消光度5.0×10‐5であった。片面偏光板の保護フィルムの位相差の影響を避けるため、サンプル側に偏光子面を配置した。一方の偏光板の外側に分光放射輝度計SR‐UL1R(トプコンテクノハウス社製)を液晶セルと垂直となるように設置し、他方の偏光板の外側には、拡散光源として、市販の液晶ディスプレイ用バックライトを設置した。
輝度計側の偏光板の偏光板角度調整として、自動回転ステージ(SGSP−60YAW シグマ光機社製)を用いた。まずは前記液晶セルに黒画像を表示する信号を入力した状態で、前記上下偏光板をクロスニコル配置とし、さらに偏光板角度の微調整を行うことで、輝度が最も小さい状態での輝度測定を行った。この値をT(c)minとする。次に前記液晶セルに黒画像を表示する信号を入力した状態で、前記上下偏光板をパラニコル配置とし、さらに偏光板角度の微調整を行うことで、輝度が最も大きい状態での輝度測定を行った。この値をT(c)maxとする。
また、ガラス板付き片面偏光板の間に液晶セルを挟まない状態で、ガラス板付き片面偏光板のみの状態でも同様に測定行った。このときの輝度の最小値をT(p)min、最大値をT(p)maxとする。
前記測定結果より、液晶セルのDI値を下記式に従って算出した。
Figure 2013041240
測定用の液晶セルを入手するために用いた市販のTNモード液晶ディスプレイを以下に記載する。
P−1:市販のTN−LCD BenQ(製) V2200ECO
P−2:市販のTN−LCD サムスン(製) LS−XL2370KF
P−3:市販のTN−LCD ACER(製) AL2216W
(液晶表示装置の作製)
市販のTNモード液晶ディスプレイP−1の液晶セルの両側側の偏光板を剥がし、粘着剤を介して、上記で作製した偏光板1をフィルム1が液晶セル側となるように貼り付けた。2枚の偏光板は透過軸が45°方向で、互いの透過軸が垂直となるように配置した。液晶セルの基板上の液晶分子配向方向と偏光板の透過軸の関係がEモードとなるよう、液晶表示装置(ディスプレイ)1を作製した。
液晶表示装置1と同様に、市販のTNモード液晶ディスプレイP−1のかわりにP−2、P−3を、また偏光板1のかわりに偏光板2〜4を用いること、液晶セルの基板上の液晶分子配向方向と偏光板の透過軸の関係をEモード又はOモードより選択することで、下記表に記載の液晶表示装置2〜8をそれぞれ作製した。ここで、ディスプレイP−1、P−2、P−4〜P−6、P−8は液晶セルの基板上の液晶分子配向方向と位相差フィルムの平均遅相軸が平行であり、ディスプレイP−3、P−7は液晶セルの基板上の液晶分子配向方向と位相差フィルムの平均遅相軸は直交している。
液晶表示装置の表示性能は、25℃60%に設定された暗所にて、下記項目について正面から目視評価を行った。
(黒表示時の光モレ)
A: 黒表示時の光モレは確認されない。
B: 一部分わずかに明るく感じられる部分が存在する。
C: わずかに全体が明るく感じられる。
D: 全体が明るく感じられる。
(暗所での白表示の明るさ)
A: 画面が非常に明るく感じられる。
B: 画面が明るく感じられる。
C: 画面がやや暗く感じられる。
D: 画面が暗く感じられる。
(細線の鮮明性)
白地に黒の細線表示(水平方向)を行った場合に
A: 黒の細線が明確に見える。
B: 細線は見えるが、一部は黒がグレイにシフトしている。
C: 画面全体に細線は見えるが、一部は判読しづらい。
D: 画面全体に細線が判読しづらい。
Figure 2013041240
〔実施例2〕
(フィルム6の作製)
<セルロースアシレート溶液6Cの調製>
セルロースアシレートおよび下記の組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、セルロースアシレート溶液6Cを調製した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
セルロースアシレート溶液6Cの組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
セルロースアシレートCE−4* 100.0質量部
ポリエステルオリゴマーA−7 10.0質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 403.0質量部
メタノール(第2溶媒) 60.2質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
*CE−4:アセチル置換度2.42、全置換度2.42
<セルロースアシレート溶液6Sの調製>
セルロースアシレートおよび下記の組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、セルロースアシレート溶液6Sを調製した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
セルロースアシレート溶液6Sの組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
セルロースアシレートCE−5* 100.0質量部
ポリエステルオリゴマーA−7* 5.0質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 403.0質量部
メタノール(第2溶媒) 60.2質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
*CE−5:アセチル置換度2.81、全置換度2.81
Figure 2013041240
<マット剤溶液6の調製>
下記の組成物を分散機に投入し、攪拌して各成分を溶解し、マット剤溶液6を調製した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
マット剤溶液6の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
平均粒子サイズ16nmのシリカ粒子
(AEROSIL R972、日本アエロジル(株)製) 2.0質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 72.4質量部
メタノール(第2溶媒) 10.8質量部
セルロースアシレート溶液6S 10.3質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
流延方法としては、ドープを金属製のバンド流涎機で外層(バンド層)用ドープ/コア層用ドープ/外層(エア層)用ドープの順に三層共流延を行い、乾燥させた後、剥ぎ取りドラムによりフィルムをバンドから剥ぎ取った。
コア層用ドープはセルロースアシレート溶液6C、外層用ドープは、セルロースアシレート溶液6Sの100質量部に対して、上記マット剤溶液6を1.35質量部を混合したものとした。
185℃の雰囲気温度で残留溶媒含量1%未満の上記フィルムを固定端一軸延伸で延伸倍率1.05倍のMD延伸を行った後、185℃の雰囲気温度で残留溶媒含量1%未満の上記フィルムをテンターゾーンで延伸倍率1.30倍のTD延伸を行った。その後、クリップを外して乾燥させ、幅2000mmのフィルム6を製造した。作製されたフィルム6の残留溶媒量は0.1%であり、膜厚は50μmであった。
得られたフィルムの面内位相差Re、厚さ方向位相差Rth、軸バラツキ、全ヘイズ、内部ヘイズを本願に記載の方法で測定した。測定条件は25℃60%相対湿度で、フィルムをこの環境に十分な時間置いた後で測定を行った。
結果を下記表7に記載する。
Figure 2013041240
(偏光板6の作製)
延伸したポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を吸着させて偏光膜を作製した。
次に、作製したフィルム6を、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて偏光膜の片側に貼り付けた。このとき、ポリビニルアルコールの長手方向とフィルム6の長手方向が一致するように貼り付け、フィルム6の遅相軸および偏光膜の透過軸が平行になるように配置した。
この様にして、偏光板6を作製した。
下記表に示すように、実施例1で用いたTNモード液晶ディスプレイについて上記の偏光板6に偏光板を貼り替えた。
さらにバックライトに用いるための下記のプリズムシートを作製した。
<凹凸部を形成した支持体の作製>
前記凹凸部を形成した支持体として、下記のようにしてプリズムシートを作製した。
〔プリズム層塗布液の調整〕
下記処方のプリズム層塗布液を調整した。
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、50℃に加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、塗布液を調製した。なお、硬化後のプリズム層の屈折率は1.59であった。前記プリズム層の屈折率は、同一の液を平坦な塗布膜として形成し、プリズムカプラー屈折率測定機(SPA4000 Sairon Technology Inc.)により測定した。
・エベクリル3700(ダイセルUBC(株)製) 2.55質量部
・NKエステルBPE−200(新中村化学(株)製) 0.85質量部
・アロニックスM−110(東亞合成(株)製) 0.85質量部
・ニューフロンティアBR−31(第一工業製薬(株)製) 4.25質量部
・メチルエチルケトン 2.89質量部
・ルシリンTPO−L(BASF(株)製) 0.17質量部
〔プリズムシートAの作製〕
両面に易接着処理を施した厚み25μmの透明PET製の支持体の第一の表面に、前記で調製したプリズム層塗布液を乾燥質量で14g/m2となるように塗布し、80℃で1分間乾燥させた後、該プリズム層を、断面形状が頂角90°の二等辺三角形であり、ピッチ(底辺の長さ)50μmのストライプ状にプリズム形状が彫刻された金属の型(金型)に押し当てた。この押し当て状態で、前記PET製支持体の第二の表面側から、高圧水銀灯により露光し、膜を硬化させ、金型から剥離し、プリズムシートA(凹凸部を形成した支持体)を得た。
<白色反射層用塗布液の調製>
下記処方で、光学調整部形成用の白色反射層用塗布液を調整した。
[ホワイト顔料分散母液の組成]
・ポリビニルブチラール(エスレックB BL−SH、積水化学工業(株)製)
2.7質量部
・ルチル型酸化チタン(JR805、テイカ(株)製、質量平均粒子径0.29μm)
35.0質量部
・分散助剤(ソルスパース20000、アビシア(株)製) 0.35質量部
・n−プロピルアルコール 62.0質量部
上記組成物を、アイガー社製モーターミルM50によりジルコニアビーズを用いて分散し、ホワイト顔料分散母液を調製した。
[白色反射層塗布液の組成]
・上記で調製されたホワイト顔料分散母液 1,200質量部
・ワックス系化合物
ステアリン酸アミド(ニュートロン2、日本精化(株)製) 5.7質量部
ベヘン酸アミド(ダイヤミッドBM、日本化成(株)製) 5.7質量部
ラウリン酸アミド(ダイヤミッドY、日本化成(株)製) 5.7質量部
パルミチン酸アミド(ダイヤミンドKP、日本化成(株)製) 5.7質量部
エルカ酸アミド(ダイヤミッドL−200、日本化成(株)製) 5.7質量部
オレイン酸アミド(ダイヤミッドO−200、日本化成(株)製) 5.7質量部
・ロジン(KE−311、荒川化学(株)製、成分:樹脂酸80〜97%;樹脂酸成分:アビエチン酸30〜40%、ネオアビエチン酸10〜20%、ジヒドロアビエチン酸14%、テトラヒドロアビエチン酸14%) 80.0質量部
・界面活性剤(メガファックF−780F、固形分30%、大日本インキ化学工業社製) 16.0質量部
・n−プロピルアルコール 1,600質量部
・メチルエチルケトン 580質量部
<白色反射シートの作製>
厚み25μmのPET製支持体上に、前記で調製した白色反射層塗布液を、乾燥膜厚が2μmになるように塗布し、100℃で2分間乾燥させ、白色反射シートを作製した。
<ポジ型感光層用塗布液の調製>
下記処方のポジ型感光層用塗布液を調製した。
・フェノールノボラック樹脂(住友デュレズ株式会社製、PR−50716、
融点:76℃) 2.5質量部
・フェノールノボラック樹脂(住友デュレズ株式会社製、PR−51600B、
融点:55℃) 3.5質量部
・1,2−ナフトキノン(2)ジアジド−4−スルフォン酸クミルフェノールエステル
2.0質量部
・メチルエチルケトン 40質量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 20質量部
・界面活性剤(大日本インキ株式会社製、メガファックF−176PF)
0.1質量部
<アルカリ現像液の調製>
下記組成のアルカリ現像液を調製した。
・炭酸ナトリウム 59質量部
・重炭酸ナトリウム 32質量部
・水 720質量部
・ブチルセロソルブ 1質量部
<集光性の光学シート:プリズムシートBの作製>
図6に示すように、前記で作製したプリズムシートA(凹凸部5を形成した支持体2)の平坦な第二の表面4側に、前記で調製したポジ型感光層用塗布液を、乾燥膜厚が0.5μmになるように塗布し、100℃で2分間乾燥させ、前記支持体2の第二の表面4上にポジ型感光層8を形成した。
次に、図7に示すように、前記支持体2の凹凸部5を形成した第一の表面3側から、平行光線照射機(マスクアライメント装置M−2L、ミカサ(株)製)を用いて、平坦な前記第二の表面4の法線方向に平行に紫外線照射し、前記ポジ型感光層を露光した。図7に符号6で示す部分が、光の不通過部(光束密度の低い部分)である。
次いで、前記で調製したアルカリ現像液を用いて、ポジ型感光層の露光部を洗い流し、図8に示すように、支持体2の第二の表面4であって光の不通過部6に、部分的にポジ型感光層8を有する支持体2を得た。
図9に示すように、上記部分的にポジ型感光層8を有する支持体2の、前記ポジ感光層8が形成された第二の表面4に、前記で作製した白色反射層9を設けた白色反射シート10を、粘着性を有する前記ポジ型感光層8に第二の表面4に白色反射層9が接触するように配置し、ラミネート装置にて熱ラミネート(速度:0.5m/min.加熱温度:80℃)した。その後、図10に示すように、白色反射シート10を支持体2から剥離することにより、前記ポジ型感光層8の形成部に12μm巾のストライプ状に、白色反射層9が転写された支持体2を得て、プリズムシートBを形成した。該白色反射層9が、サイドローブ防止部7であり、その光反射率は、70%であった。
〔プリズムシートCの作製〕
両面に易接着処理を施した厚み25μmの透明PET製の支持体の第一の表面に、前記で調製したプリズム層塗布液を乾燥質量で14g/m2となるように塗布し、80℃で1分間乾燥させた後、該プリズム層を、断面形状が頂角110°の二等辺三角形であり、ピッチ(底辺の長さ)50μmのストライプ状にプリズム形状が彫刻された金属の型(金型)に押し当てた。この押し当て状態で、前記PET製支持体の第二の表面側から、高圧水銀灯により露光し、膜を硬化させ、金型から剥離し、プリズムシートC(凹凸部を形成した支持体)を得た。
<プリズムシートの設置>
作製した頂角が90°であるプリズムシートA、頂角が90°であるプリズムシートであって、さらに部分的に光反射性を有するサイドローブ防止部7が複数形成された集光性の光学シートであるプリズムシートB、頂角が110°であるプリズムシートCを、それぞれ凸部を液晶セル側へ向けてバックライトに設置した。
<正面輝度の評価方法>
バックライト用の平面光源上に上記プリズムシートを設置し、輝度計(BM−7:トプコン(株))を設置し、光度の測定を行った。プリズムシートのないバックライト平面光源のみの正面輝度を1としたときの、光学シートを敷いた場合の正面輝度の倍率を用いて輝度評価を行った。
これは液晶表示装置の明るさに対応し、実施例1の評価「暗所での白表示の明るさ」に代えて評価基準を以下のように分類した。
A:1.4以上
B:1.2以上、1.4未満
C:1.0以上、1.2未満
<バックライト光の出射角度分布の測定>
上記プリズムシートを設置した液晶表示装置用バックライト光源について、輝度計(BM−7:トプコン(株))にて、光度の測定を行った。
正面を0°として、プリズムシートの集光方向に対して受光機を5°刻みで±85°走査し、プリズムシートから出射される光度の角度分布を測定し、出射角度50°から85°の範囲で測定した光量の平均値を求め、表9に記載した。
なお、光度と出射角度の関係を各プリズムシートについて正面(0°)で測定した光度(cd)を基準に規格化して図11に示す。
<液晶表示装置の作製>
液晶セル、偏光板、プリズムシートの組み合わせが表8、表9に記載した内容となるように液晶表示装置を組み立てた。
なお、液晶セルは市販品を使用しており、画面の長辺方向を水平方向、短辺方向を鉛直方向とするため、TNモード液晶セルの面内位相差が最大となる方向は鉛直方向となる。
各プリズムシートは、凸部を液晶セル側へ向けてあり、その集光方向は、表8、表9に記載するように鉛直方向、又は水平方向となるように配置した。
(正面コントラストの評価方法)
バックライトの正面輝度がディスプレイ間で一定でないため、性能評価を黒表示の光モレから正面コントラストへ変更した。
25℃、60%RHの環境下でコントラスト測定器(ELDIM社製、EZContrast)を用いて、正面コントラストを計測した。
評価基準を、比較例であるディスプレイ25の正面コントラスト値に対する相対比として以下の基準で評価した。
A:正面コントラスト相対比が1.2以上
B:正面コントラスト相対比が1.1以上、1.2未満
C:正面コントラスト相対比が1.0以上、1.1未満
D:正面コントラスト相対比が1.0未満
正面コントラスト、正面輝度、及び実施例1と同様に細線の鮮明性について評価結果を表9に示した。
Figure 2013041240
Figure 2013041240
上記表から、集光方向が鉛直方向であってプリズムシートB、Cを使用したディスプレイ22及び23の性能が特に優れていることがわかる。
1 本発明の液晶表示装置の一例
10 TNモード液晶セル
10a 視認側基板ラビング方向
10b バックライト側基板ラビング方向
12 視認側偏光膜
12a 視認側偏光膜透過軸方向
14 バックライト側偏光膜
14a バックライト側偏光膜透過軸方向
16 視認側位相差フィルム
16a 視認側位相差フィルム遅相軸平均方向
18 バックライト側位相差フィルム
18a バックライト側位相差フィルム遅相軸平均方向
20、22 保護フィルム
1 プリズムシート
2 支持体
3 第一の表面
4 第二の表面
5 凹凸部
6 不通過部
7 サイドローブ防止部
8 ポジ型感光層
9 白色反射層
80 プリズムシート製造装置
81 シート供給手段
82 塗布手段
83 エンボスロール
84 ニップロール
85 樹脂硬化手段
86 剥離ロール
87 保護フィルム供給手段
88 シート巻取り手段
89 乾燥手段
W 支持体

Claims (10)

  1. 一対の基板と液晶層とを少なくとも有するTNモード液晶セル、
    その両側に、視認側偏光子及びバックライト側偏光子、並びに
    視認側偏光子及びバックライト側偏光子の少なくとも一方とTNモード液晶セルとの間に位相差フィルムを少なくとも有する液晶表示装置であって、
    前記位相差フィルムの全ヘイズ値が1.0%以下で、内部ヘイズ値が0.50%以下であり、且つフィルム面内の軸バラツキが1.0°以下であり、
    前記TNモード液晶セルのDI値が0.000800以下である液晶表示装置。
  2. 前記位相差フィルムがセルロースエステルを含む請求項1に記載の液晶表示装置。
  3. 前記位相差フィルムが、nx>ny>nz、30nm≦Re(590)≦200nm、及び70nm≦Rth(590)≦400nmを満足する請求項1又は2に記載の液晶表示装置:但し、nx:面内の最大屈折率、ny:nxと垂直する方向の屈折率、nz:厚み方向の屈折率、Re(590):波長590nmの面内レターデーション(nm)、及びRth(590):波長590nmの厚み方向レターデーション(nm))である。
  4. 前記位相差フィルムが、アセチル基と他のアシル基を有するセルロースアシレートを含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
  5. 前記位相差フィルムが、糖エステル、ポリエステルオリゴマー、フタル酸系エステル、アクリルオリゴマー、及び多価アルコールエステルから選択される少なくとも1種を含む請求項1〜4のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
  6. 前記位相差フィルムの平均遅相軸方向と、TNモード液晶セルの一対の基板のうち前記位相差フィルムにより近い位置に配置された基板上の液晶分子配向方向とが、直交である請求項1〜5のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
  7. 前記TNモード液晶セルと、前記視認側偏光子及びバックライト側偏光子との配置の関係がOモードである請求項1〜6のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
  8. 前記液晶表示装置のバックライト光を集光する光学シートを前記TNモード液晶セルの背面側に有し、該光学シートから出射されたバックライト光の光量を測定したとき、該液晶表示装置の表示画面の法線に対して、前記TNモード液晶セルの面内位相差が最大となる方向に傾けられた出射角度50°〜85°の範囲の光量の平均値が、該法線方向の光量に対して12%以下である請求項1〜7のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
  9. 前記光学シートが、凸部を液晶セル側へ向けたプリズムシートである請求項8に記載の液晶表示装置。
  10. 前記TNモード液晶セルの面内位相差が最大となる方向が、前記表示画面を視認する際に鉛直方向である請求項8又は9に記載の液晶表示装置。
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