JP2013040234A - ブロック共重合体、その製造方法、それを含むゴム組成物、架橋ゴム組成物及び空気入りタイヤ - Google Patents

ブロック共重合体、その製造方法、それを含むゴム組成物、架橋ゴム組成物及び空気入りタイヤ Download PDF

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務 高嶋
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Abstract

【課題】タイヤ用のゴム材料として有用な架橋ゴム組成物を得るための原料として好適な、ブロック共重合体を提供すること。
【解決手段】平均重合度が4.0×10〜2.0×10であって生長末端を有するイソブチレン重合体に、式(1)で表されるビニルエーテル化合物をさらに重合させてなるブロック共重合体。
CH=CH−O−(X)―Y (1)
[式中、Xは2価の基を示し、Yは不飽和結合を有する置換又は未置換の脂環基を示し、nは0又は1を示す。]
【選択図】なし

Description

本発明は、ブロック共重合体及びその製造方法、ブロック共重合体を含有するゴム組成物、ゴム組成物を架橋してなる架橋ゴム組成物、並びに架橋ゴム組成物を含有する空気入りタイヤに関する。
従来からタイヤ用のゴム材料としては様々なものが知られている。例えば、タイヤのトレッド部に用いられるゴム材料として、特許文献1には、ジエン系原料ゴム、補強剤及び特定の酸無水物変性ポリブテンを特定の割合で含んでなるゴム組成物が開示されている。
また、特許文献2には、天然ゴム等のゴムに対して、カーボンブラック及び/又はシリカと、アルコキシシリル基を少なくとも一つ有するポリイソブチレン系の化合物とを特定の割合で配合してなるスタッドレスタイヤ用トレッドゴム組成物が開示されている。
また、特許文献3には、アルコキシシランと、カルボン酸、アミド、エステル、水酸基及びアミノ基の群より選ばれる少なくとも1種の水素結合可能な部位とを分子内に有し、かつイソブチレンをモノマーとして少なくとも1種有する重合体を含むゴム組成物が開示されている。
また、特許文献4には、常温及び酸素存在下において安定に存在するニトロキシドラジカル、ヒドラジルラジカル、アリロキシラジカル及びトリチルラジカルからなる群から選ばれた少なくとも1種のフリーラジカルを分子中に有し、イソブチレン繰り返し単位を含んでなる重合体を含むゴム組成物が開示されている。
また、特許文献5には、ジエン系化合物の単独重合体又は共重合体とポリブテンとのブロック共重合体を含むゴム組成物が開示されている。
また、特許文献6には、ポリブテンとポリブタジエンのブロック共重合体を含むゴム組成物が開示されている。
また、特許文献7には、ポリイソブチレン/p−メチルスチレン共重合体の臭素化物と二価の金属原子の酸化物及び窒素原子含有有機化合物とを予備混練し、次いで得られる予備混練物と他のゴム成分とを混練することによりえられるタイヤトレッド用ゴム組成物が開示されている。
また、特許文献8には、ルイス酸触媒を開始剤としたカチオン共重合により得られた重合体とゴム成分とを含有することを特徴とするゴム組成物が開示されており、上記重合体としては、イソブチレン単独重合体、又は、イソブチレンと芳香族ビニル化合物との共重合体が好ましい旨記載されている。
また、特許文献9には、ゴムエラストマー、トリブロックエラストマー及び補強剤を、特定の割合で含んでなるゴム組成物が開示されている。そして、上記トリブロックエラストマーとしては、末端ポリスチレンハードセグメントAと内部イソブテン系エラストマー・ソフトセグメントBより構成される、A−B−Aの一般配置を有する少なくとも1種のトリブロックエラストマーを用いることが記載されている。
また、特許文献10には、硫黄硬化性のゴムに対し、特定の構造を有するメルカプトポリブテニル誘導体又は特定の構造を有するアシルチオ−ポリブテニル誘導体を加えてなる加硫性ゴム組成物が開示されている。
さらに、特許文献11には、ポリイソブチレンの少なくとも一部のポリマー分子鎖中にジスルフィド結合を有することを特徴とする機能性ポリイソブチレンが記載されている。
特開平11−35735号公報 特開平11−91310号公報 特開2000−169523号公報 特開2000−143732号公報 特開平11−80364号公報 特開2001−131289号公報 特開平11−80433号公報 特開平11−315171号公報 特開2001−247722号公報 特開平10−251221号公報 特開2005−54016号公報
本発明は、タイヤ用のゴム材料として有用な架橋ゴム組成物、及び該架橋ゴム組成物を得るためのゴム組成物を提供することを目的とする。また本発明は、上記架橋ゴム組成物を得るための原料として好適なブロック共重合体、及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、平均重合度が4.0×10〜2.0×10であって生長末端を有するイソブチレン重合体に、式(1)で表されるビニルエーテル化合物をさらに重合させてなる、ブロック共重合体に関する。
CH=CH−O−(X)―Y (1)
[式中、Xは2価の基を示し、Yは不飽和結合を有する置換又は未置換の脂環基を示し、nは0又は1を示す。]
このようなブロック共重合体とオレフィン性二重結合を有するゴム成分とが架橋した構造を有する架橋ゴム組成物は、動的粘弾性試験における高温(例えば60℃)での損失係数(tanδ)が小さく、低温(例えば0℃)での損失係数(tanδ)が大きく、耐摩耗性に優れたものとなる。このため、上記ブロック共重合体を原料として得られた架橋ゴム組成物は、例えば空気入りタイヤのトレッド部に用いた場合に、優れた転がり抵抗特性、ブレーキ制動性(ウェットグリップ性)及び耐磨耗性を発現することができる。
また、上記ブロック共重合体を原料として得られた架橋ゴム組成物は、水蒸気バリア性及び酸素バリア性も良好である。そのため、上記架橋ゴム組成物は、例えば、空気入りタイヤのインナーライナー部にも好適に用いることができる。
以下、動的粘弾性試験における高温(例えば60℃)での損失係数(tanδ)が小さく、低温(例えば0℃)での損失係数(tanδ)が大きいことを、「動的粘弾特性に優れる」という。また、「動的粘弾特性に一層優れる」とは、高温での損失係数がより小さいこと及び/又は低温での損失係数がより大きいことをいう。
上記イソブチレン重合体は、重合開始剤及び触媒を用いたイソブチレンの重合反応により得られる重合体であることが好ましく、上記重合開始剤が、ハロゲン化アルキル及びハロゲン化アリールからなる群より選択される少なくとも一種を含むことが好ましい。ブロック共重合体が、このようなイソブチレン重合体から得られるものであると、架橋ゴム組成物としたときの動的粘弾特性及び耐磨耗性に一層優れる。
また、上記重合開始剤は、tert−ブチルクロライド、クミルクロライド及びトリメチルペンチルクロライドからなる群より選択される少なくとも一種を含むことがさらに好ましい。
また、上記イソブチレンの重合反応における反応温度は、−100〜30℃であるであることが好ましい。
上記ビニルエーテル化合物は、下記式(1−a)で表される化合物及び/又は下記式(1−b)で表される化合物を含むことが好ましい。ブロック共重合体が、このようなビニルエーテル化合物から得られるものであると、ゴム成分との架橋性に優れ、架橋ゴム組成物としたときの動的粘弾特性及び耐磨耗性に一層優れる。
Figure 2013040234

[式中、nは0又は1を示す。]
また、上記ビニルエーテル化合物は、下記式(1−c)で表される化合物及び/又は下記式(1−d)で表される化合物を含んでいてもよい。ブロック重合体が、このようなビニルエーテル化合物から得られるものである場合も、ゴム成分との架橋性に優れ、動的粘弾特性及び耐磨耗性に一層優れる架橋ゴム組成物が得られる。
Figure 2013040234

[式中、nは0又は1を示し、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はフェニル基を示し、R及びRは互いに結合して環を形成していてもよい。]
本発明はまた、上記ブロック共重合体と、オレフィン性二重結合を有するゴム成分と、を含有するゴム組成物に関する。
このようなゴム組成物によれば、ゴム成分とブロック共重合体とが架橋した構造を有する架橋ゴム組成物を容易に得ることができる。そして当該架橋ゴム組成物は、上記ブロック共重合体とゴム成分との架橋構造を有するものであるため、動的粘弾特性及び耐摩耗性に優れ、空気入りタイヤのトレッド部等に好適に用いることができる。
上記ゴム成分は、天然ゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、シリコーンゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、イソプレン−ブタジエンゴム、スチレン−イソプレン−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、ハロゲン化ブチルゴム、ハロゲン化イソプレンゴム、ハロゲン化イソブチレンコポリマー、クロロプレンゴム、ブチルゴム及びハロゲン化イソブチレン−p−メチルスチレンゴムからなる群より選ばれる少なくとも一種を含むことができる。このようなゴム成分を含有するゴム組成物においては、上記ブロック共重合体による動的粘弾特性及び耐磨耗性の向上効果が一層顕著に奏される。
上記ブロック共重合体の含有量は、上記ゴム成分100質量部に対して、0.5〜70質量部とすることができる。このようなゴム組成物によれば、動的粘弾特性、耐摩耗性、水蒸気バリア性及び酸素バリア性に一層優れる架橋ゴム組成物が得られる。
上記ゴム成分は、実質的にスチレン−ブタジエンゴムであってもよい。このようなゴム組成物から得られる架橋ゴム組成物は、動的粘弾特性及び耐磨耗性に一層優れており、空気入りタイヤのトレッド部に一層好適に用いることができる。なお、「実質的にスチレン−ブタジエンゴムである」とは、ゴム成分の全量基準で95質量%以上がスチレン−ブタジエンゴムであることを示す。
上記ゴム組成物は、架橋剤をさらに含有していてもよい。ゴム成分とブロック共重合体との架橋方法は特に制限されないが、ゴム組成物が架橋剤を含有していると、当該架橋剤により容易にゴム成分とブロック共重合体とを架橋することができる。
本発明はまた、上記ゴム組成物を用いて得られる架橋ゴム組成物であって、上記ゴム成分と上記ブロック共重合体とが架橋した構造を有する、架橋ゴム組成物に関する。
このような架橋ゴム組成物は、動的粘弾特性、耐摩耗性、水蒸気バリア性及び酸素バリア性に優れることから、タイヤ用のゴム材料として有用である。また、このような架橋ゴム組成物は、タイヤ用途のみならず、工業用ベルト、工業用ゴムホース等の工業用ゴム部材用途等としても好適に用いることができる。
本発明はまた、トレッド部に上記架橋ゴム組成物を含有する、空気入りタイヤに関する。このような空気入りタイヤは、上記架橋ゴム組成物が動的粘弾特性及び耐磨耗性に優れることから、転がり抵抗特性、ブレーキ制動性及び耐磨耗性に優れるタイヤとなる。
本発明はさらに、上記ブロック共重合体の製造方法であって、−100〜30℃に温度調整されたイソブチレン及び溶媒を含有する反応溶液に、重合開始剤及び触媒を添加して、上記イソブチレンの重合反応を行うイソブチレン重合工程と、上記イソブチレン重合工程を経た上記反応溶液に、式(1)で表されるビニルエーテル化合物を添加して、上記イソブチレンの重合体に式(1)で表されるビニルエーテル化合物をさらに重合させるビニルエーテル重合工程と、を備える、製造方法に関する。
このような製造方法によれば、動的粘弾特性及び耐磨耗性に優れる架橋ゴム組成物を得るための原料として好適なブロック共重合体を、容易に得ることができる。
本発明によれば、タイヤ用のゴム材料として有用な架橋ゴム組成物、及び該架橋ゴム組成物を得るためのゴム組成物が提供される。また本発明によれば、上記架橋ゴム組成物を得るための原料として好適なブロック共重合体、及びその製造方法が提供される。
近年、自動車分野においては、低燃費化や走行安定性といった課題に加え、湿潤路面、雪上、氷結路面等におけるブレーキ制動性が重要な課題となっている。そして、それに伴い、タイヤ用のゴム材料に対する要求は一段と厳しいものになっている。
タイヤ用、特にタイヤのトレッド部に用いるゴム材料に対する基本的な要求特性としては、以下のようなものが挙げられる。
(1)屈曲や伸長などの繰返し応力に対する耐破壊性及び耐摩耗性に優れること。
(2)転動抵抗が小さいこと(転がり抵抗特性が良好であること)。
(3)湿潤路面におけるブレーキ制動性(ウェットグリップ性)に優れること。
(2)に関して、ゴム材料の動的粘弾性試験により周波数10〜100Hz、60℃付近で測定される損失係数(tanδ)が小さいほど転動抵抗に優れることが知られている。一方、(3)に関しては、ゴム材料の動的粘弾性試験により周波数10〜100Hz、0℃付近で測定される損失係数(tanδ)が大きいほどブレーキ制動性に優れることが知られている。
これらの性能のうち、(2)と(3)は、いずれもゴム材料のヒステリシスロスに関する特性である。一般に、ヒステリシスロスを大きくすると、グリップ力は高くなり制動性能が向上するが、転動抵抗(転がり抵抗)も大きくなり燃費の増大をもたらす。このように、グリップ性能と転がり抵抗特性は相反する関係にあるため、(2)及び(3)の両特性を同時に満足することは難しい。実際、従来のゴム材料では、この両特性を同時に満足することが困難であり、仮に両特性が良好になったとしても耐摩耗性が低下する場合があった。
本発明者らは、特定のブロック共重合体を用いた場合に、動的粘弾特性及び耐磨耗性に特に優れる架橋ゴム組成物が得られ、当該架橋ゴム組成物をトレッド部に用いた場合に、良好な転がり抵抗特性とブレーキ制動性(ウェットグリップ性)とが両立され、且つ耐磨耗性にも優れるタイヤが得られることを見出した。
以下、本発明のブロック共重合体、ゴム組成物及び架橋ゴム組成物の好適な実施形態について説明する。
(ブロック共重合体)
本実施形態に係るブロック共重合体は、生長末端を有するイソブチレン重合体に、下記式(1)で表されるビニルエーテル化合物をさらに重合させて得られるものである。
CH=CH−O−(X)―Y (1)
式中、Xは2価の基を示し、Yは不飽和結合を有する置換又は未置換の脂環基を示し、nは0又は1を示す。
ここで、上記ブロック共重合体は、式(2)で表されるイソブチレン由来の構造単位と、式(3)で表されるビニルエーテル化合物由来の構造単位と、を有するものとなる。
Figure 2013040234
イソブチレン重合体は、生長末端を有し、当該生長末端からビニルエーテル化合物の重合反応が進行する。生長末端の構造は特に限定されず、ビニルエーテル化合物の重合反応が進行するだけの重合活性を有する構造であればよい。
イソブチレン重合体におけるイソブチレンの平均重合度は、4.0×10〜2.0×10である。イソブチレンの平均重合度を上記範囲とすることで、動的粘弾特性及び耐磨耗性に特に優れる架橋ゴム組成物を得ることができる。
また、イソブチレン重合体におけるイソブチレンの平均重合度は、5.0×10〜1.5×10であることが好ましく、6.0×10〜1.3×10であることがより好ましい。このようなイソブチレン重合体から得られたブロック共重合体によれば、動的粘弾特性及び耐磨耗性に一層優れる架橋ゴム組成物を得ることができる。
なお、イソブチレンの平均重合度は、イソブチレンを重合させる際に、重合開始剤とイソブチレンの使用量比、触媒とイソブチレンの使用量比、反応温度等を適宜変更することで、容易に調整することができる。また、重合系に徐々にイソブチレンを添加しつつ、適宜重合系からイソブチレン重合体を取り出してその平均重合度を観測することで、所望の平均重合度を有するイソブチレン重合体を得ることもできる。
イソブチレンの平均重合度は、ブロック共重合体のH−NMR測定結果及び重量平均分子量に基づいて算出される。具体的には、H−NMRスペクトルにおけるイソブチレン単位に由来するピークのピーク面積とビニルエーテル化合物に由来するピークのピーク面積との比から、ブロック共重合体におけるイソブチレン単位の含有比率を求める。また、ブロック共重合体のGPC測定を下記の条件で行い、重量平均分子量Mwを求める。そして、含有比率と重量平均分子量とを乗じてイソブチレン単位に由来する平均分子量を求め、それをイソブチレンの分子量(56.11g/mol)で除して、イソブチレンの平均重合度を求める。
<GPC測定条件>
測定対象をテトラヒドロフラン(キシダ化学社製)に溶解し、東ソー社製8020GPCシステムで、TSK−GEL SuperH1000、SuperH2000、SuperH3000、SuperH4000を直列につなぎ、溶出液としてテトラヒドロフランを用いてGPC測定を実施する。分子量の較正にはポリスチレンスタンダードを用いる。
またイソブチレンの平均重合度は、イソブチレン重合体をビニルエーテル化合物と反応させる前に取り出して重量平均分子量を求め、当該重量平均分子量をイソブチレンの分子量で除すことによって求めることもできる。このとき重量平均分子量Mwは、上記と同じ方法で測定される。
イソブチレン重合体は、例えば、重合開始剤及び触媒を用いたイソブチレンの重合反応により得ることができる。
重合開始剤としては、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アリール、ハロゲン化アシル等が挙げられる。これらのうち、重合開始剤は、ハロゲン化アルキル及びハロゲン化アリールからなる群より選択される少なくとも一種を含むことが好ましい。
重合開始剤としてのハロゲン化アルキルとしては、tert−ブチルクロライド、トリメチルペンチルクロライド等が挙げられる。また、重合開始剤としてのハロゲン化アリールとしては、クミルクロライド、p−ジクミルクロライド、m−ジクミルクロライド、1,3,5−トリクミルクロライド、1,3−ビス(1−クロロ−1−メチルエチル)−5−(tert−ブチル)ベンゼン等が挙げられる。
また、重合開始剤は、tert−ブチルクロライド、クミルクロライド及びトリメチルペンチルクロライドからなる群より選択される少なくとも一種を含むことがより好ましい。このような重合開始剤を用いることで、架橋ゴム組成物における動的粘弾特性の向上効果に一層優れるブロック共重合体が得られる。
上記触媒は、例えば、ハロゲン化ホウ素化合物、ハロゲン化チタン化合物、ハロゲン化スズ化合物、ハロゲン化アルミニウム化合物、ハロゲン化アンチモン化合物、ハロゲン化タングステン化合物、ハロゲン化モリブデン化合物、ハロゲン化タンタル化合物及び金属アルコキシドからなる群より選択することができる。
より具体的には、上記触媒としては、三塩化ホウ素、三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素等のハロゲン化ホウ素化合物;四塩化チタン、四臭化チタン、四ヨウ化チタン等のハロゲン化チタン化合物;四塩化スズ、四臭化スズ、四ヨウ化スズ等のハロゲン化スズ化合物;三塩化アルミニウム、アルキルジクロロアルミニウム、ジアルキルクロロアルミニウム等のハロゲン化アルミニウム化合物;五塩化アンチモン、五フッ化アンチモン等のハロゲン化アンチモン化合物;五塩化タングステン等のハロゲン化タングステン化合物;五塩化モリブデン等のハロゲン化モリブデン化合物;五塩化タンタル等のハロゲン化タンタル化合物;テトラアルコキシチタン等の金属アルコキシド;などが挙げられる。
これらのうち、上記触媒としては、ハロゲン化チタン化合物が好ましく、四塩化チタンがより好ましい。
イソブチレンの重合反応において、重合開始剤の使用量Cに対するイソブチレンの総量Cのモル比C/Cは、1〜500であることが好ましく、100〜300であることがより好ましい。
また、触媒の使用量Cに対するイソブチレンの総量Cのモル比C/Cは、1〜200であることが好ましく、50〜100であることがより好ましい。
また、重合開始剤の使用量Cに対する触媒の使用量Cのモル比C/Cは、1〜50であることが好ましく、1〜20であることがより好ましい。
イソブチレンの重合反応は、例えば、反応温度−100〜30℃で行うことができる。このような反応温度で重合反応を行うことで、分子量分布の狭いイソブチレン重合体が得られ、このようなイソブチレンから得られたブロック共重合体によれば、動的粘弾特性及び耐磨耗性に一層優れる架橋ゴム組成物が得られる。
イソブチレンの重合反応は、溶媒の存在下に行うことが好ましい。溶媒としては、例えば、ハロゲン化炭化水素、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素からなる群より選ばれる少なくとも一種を用いることができる。また、溶媒は、一種を単独で用いても、二種以上を混合して用いてもよい。
ハロゲン化炭化水素としては、クロロホルム、塩化メチレン、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、n−プロピルクロライド、n−ブチルクロライド、1−クロロプロパン、1−クロロ−2−メチルプロパン、1−クロロブタン、1−クロロ−2−メチルブタン、1−クロロ−3−メチルブタン、1−クロロ−2,2−ジメチルブタン、1−クロロ−3,3−ジメチルブタン、1−クロロ−2,3−ジメチルブタン、1−クロロペンタン、1−クロロ−2−メチルペンタン、1−クロロ−3−メチルペンタン、1−クロロ−4−メチルペンタン、1−クロロヘキサン、1−クロロ−2−メチルヘキサン、1−クロロ−3−メチルヘキサン、1−クロロ−4−メチルヘキサン、1−クロロ−5−メチルヘキサン、1−クロロヘプタン、1−クロロオクタン、2−クロロプロパン、2−クロロブタン、2−クロロペンタン、2−クロロヘキサン、2−クロロヘプタン、2−クロロオクタン、クロロベンゼン等が挙げられる。
脂肪族炭化水素としては、プロパン、ブタン、ペンタン、ネオペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンが好ましい。また、芳香族炭化水素としてはベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンが好ましい。
イソブチレンの重合反応は、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスの雰囲気下で行うことが好ましい。重合反応時の圧力については、溶媒の種類、重合温度等を考慮して、常圧、加圧等の任意の条件を採用することができる。また、重合系が均一になるように十分な攪拌条件下に重合を行うことが好ましい。
式(1)で表されるビニルエーテル化合物は、イソブチレン重合体の生長末端を開始点として重合される。
式(1)中、Xで表される2価の基は、同式中のエーテル酸素(O)とYとの連結基としての機能を担うものである。Xで示される2価の基としては、アルキレン基、アルキレンオキシ基又はアルキレンオキシアルキレン基が好ましい。また、nは0又は1を示す。ここでnが0とは、エーテル酸素(O)とYとが直接結合した構造を意味する。
式(1)中のYは、環内又は環外に不飽和結合を有する置換又は未置換の脂環基を示す。脂環基は、不飽和結合を有するものであれば、単環式、縮合多環式又は架橋多環式のいずれであってもよい。なお、ブロック共重合体は、その主鎖中に不飽和結合を実質的に有さないことが好ましいが、一方、側鎖においては、脂環基の環内の不飽和結合以外に、不飽和結合をさらに有していてもよい。なお、不飽和結合は、オレフィン性二重結合ということもできる。
環内に不飽和結合を有する脂環基としては、例えば、ノルボルネニル基、トリシクロデセニル基、テトラシクロデセニル基、テトラシクロドデセニル基、ペンタシクロペンタデセニル基等が挙げられ、単環式の脂環基としては、シクロへキセニル基、シクロオクテニル基、シクロドデセニル基等が挙げられる。これらは、炭素原子で形成される環構造を有し、該環中に炭素−炭素二重結合(オレフィン性二重結合)を有する脂環基である。本実施形態においては、このような脂環基うち、極性基を含まない、すなわち炭素原子と水素原子のみで構成される脂環基が好ましい。
脂環基の炭素数は、6〜15が好ましく、7〜10がより好ましい。脂環基の炭素数が6未満であると、環状の基の形成が困難となる傾向にあり、また、15を超えると原料自体の入手が困難となる傾向にある。
環内に不飽和結合を有する脂環基の好適な例としては、ジシクロペンタジエニル、メチルジシクロペンタジエニル、ジヒドロジシクロペンタジエニル(トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−8−エニルとも言う。)などのジシクロペンタジエニル系脂環基;
テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エニル、9−メチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エニル、9−エチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エニル、9−シクロヘキシルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エニル、9−シクロペンチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エニル、9−メチレンテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エニル、9−エチリデンテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エニル、9−ビニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エニル、9−プロペニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エニル、9−シクロヘキセニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エニル、9−シクロペンテニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エニル、9−フェニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エニルなどのテトラシクロドデセニル系脂環基;
2−ノルボルネニル、5−メチル−2−ノルボルネニル、5−エチル−2−ノルボルネニル、5−ブチル−2−ノルボルネニル、5−ヘキシル−2−ノルボルネニル、5−デシル−2−ノルボルネニル、5−シクロヘキシル−2−ノルボルネニル、5−シクロペンチル−2−ノルボルネニル、5−エチリデン−2−ノルボルネニル、5−ビニル−2−ノルボルネニル、5−プロペニル−2−ノルボルネニル、5−シクロヘキセニル−2−ノルボルネニル、5−シクロペンテニル−2−ノルボルネニル、5−フェニル−2−ノルボルネニル、テトラシクロ[9.2.1.02,10.03,8]テトラデカ−3,5,7,12−テトラエニル(1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロ−9H−フルオレニルとも言う。)、テトラシクロ[10.2.1.02,11.04,9]ペンタデカ−4,6,8,13−テトラエニル(1,4−メタノ−1,4,4a,9,9a,10−ヘキサヒドロアントラセニルとも言う。)などのノルボルネニル系脂環基;
ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカ−4,10−ジエニル、ペンタシクロ[9.2.1.14,7.02,10.03,8]ペンタデカ−5,12−ジエニル、ヘキサシクロ[6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14]ヘプタデカ−4−エニルなどの五環体以上の環状オレフィン系脂環基;等が挙げられる。
また、環外に不飽和結合を有する脂環基としては、例えば、シクロブタン骨格、シクロペンタン骨格、シクロヘキサン骨格、シクロヘプタン骨格、シクロオクタン骨格、ノルボルナン骨格、トリシクロデカン骨格、テトラシクロドデカン骨格等の環構造を有する基が挙げられる。ここで「環外に不飽和結合を有する」とは、不飽和結合を構成する2つの炭素原子のうち、少なくとも一方が、環構造を構成する炭素原子以外の炭素原子であることを意味する。
環外に不飽和結合を有する脂環基としては、例えば、ビニルシクロブタン、ビニルシクロペンタン、ビニルシクロヘキサン、ビニルシクロヘプタン、ビニルシクロオクタン、ビニルノルボルネン、エチリデンシクロブタン、ビニルトリシクロデカン、ビニルテトラシクロドデカン、エチリデンシクロヘキサン、エチリデンシクロオクタン、エチリデンノルボルネン、エチリデントリシクロデカン、エチリデンテトラシクロドデカン、イソプロピリデンシクロブタン、イソプロピリデンシクロペンタン、イソプロピリデンシクロヘキサン、イソプロピリデンシクロヘプタン、イソプロピリデンシクロオクタン、イソプロピリデンノルボルネン、イソプロピリデントリシクロデカン、イソプロピリデンテトラシクロドデカン、シクロペンチリデンシクロペンタン、シクロペンチリデンシクロヘキサン、シクロペンチリデンシクロヘプタン、シクロペンチリデンシクロオクタン、シクロペンチリデンノルボルネン、シクロペンチリデントリシクロデカン及びシクロペンチリデンテトラシクロドデカンからなる群より選ばれる環状化合物から、1個の水素原子を除いてなる基が挙げられる。
また、環外に不飽和結合を有する脂環基としては、下記式(4)で表される基が挙げられる。このような脂環基を有するブロック共重合体は、ゴム成分との架橋性に一層優れるため、当該ブロック共重合体によれば、より短時間で十分に架橋された架橋ゴム組成物を得ることができる。
Figure 2013040234
式中、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はフェニル基を示し、R及びRは互いに結合して環を形成していてもよい。
なお、「置換又は未置換」とは、上記脂環基が、置換基を有していてもよいことを示す。該置換基としては、アルキル基、シクロアルキル基、ビニル基、アリル基、アリール基等が挙げられる。なお、アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、ベンジル基等が挙げられる。
ビニルエーテル化合物は、下記式(1−a)で表される化合物及び/又は下記式(1−b)で表される化合物を含むことが好ましい。式中、nは0又は1を示す。
Figure 2013040234
このようなビニルエーテル化合物に由来する構造を有するブロック共重合体は、ゴム成分との架橋性に特に優れる。そして、このようなブロック共重合体によれば、動的粘弾特性及び耐磨耗性に一層優れる架橋ゴム組成物が得られる。
また、ビニルエーテル化合物は、下記式(1−c)で表される化合物及び/又は下記式(1−d)で表される化合物を含んでいてもよい。ブロック重合体が、このようなビニルエーテル化合物から得られるものである場合も、ゴム成分との架橋性に優れ、動的粘弾特性及び耐磨耗性に一層優れる架橋ゴム組成物が得られる。
Figure 2013040234
式中、nは0又は1を示し、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はフェニル基を示し、R及びRは互いに結合して環を形成していてもよい。
ビニルエーテル化合物をイソブチレン重合体に重合させる方法は、特に限定されないが、例えば、上記イソブチレンの重合反応を行った後の反応溶液中に、ビニルエーテル化合物を添加する方法が好適である。
ビニルエーテル化合物の平均重合度は、3〜500であることが好ましく、4〜400であることがより好ましく、5〜300であることがさらに好ましい。なお、ビニルエーテル化合物の平均重合度は、ブロック共重合体のH−NMR測定結果及び重量平均分子量に基づいて算出される。具体的には、H−NMRスペクトルにおけるイソブチレン単位に由来するピークのピーク面積とビニルエーテル化合物に由来するピークのピーク面積との比から、ブロック共重合体におけるビニルエーテル化合物単位の含有比率を求める。また、ブロック共重合体のGPC測定を下記の条件で行い、重量平均分子量Mwを求める。そして、含有比率と重量平均分子量とを乗じてビニルエーテル化合物単位に由来する平均分子量を求め、それをビニルエーテル化合物の分子量で除して、ビニルエーテル化合物の平均重合度を求める。
ブロック共重合体の重量平均分子量は、2.0×10〜1.0×10であることが好ましく、3.0×10〜8.0×10であることがより好ましい。ここで重量平均分子量は、上記測定条件でGPC測定を行って得られる値である。
ブロック共重合体は、イソブチレン単位及びビニルエーテル化合物単位以外の単量体単位を有していてもよい。例えば、イソブチレン重合体にビニルエーテル化合物を重合させた後、引き続き、ビニルエーテル化合物以外のモノマーを反応させてブロック共重合体を形成してもよい。
イソブチレン及びビニルエーテル化合物以外のモノマーとしては、例えば、芳香族ビニル化合物が挙げられる。また、芳香族ビニル化合物としては、例えばスチレンが挙げられる。
以下、ブロック共重合体の製造方法の好適な一態様を説明する。
本態様の製造方法は、イソブチレン及び溶媒を含有する反応溶液に、重合開始剤及び触媒を添加して、イソブチレンの重合反応を行うイソブチレン重合工程と、イソブチレン重合工程を経た反応溶液に、式(1)で表されるビニルエーテル化合物を添加して、イソブチレン重合体に式(1)で表されるビニルエーテル化合物をさらに重合させるビニルエーテル重合工程と、を備える。
イソブチレン重合工程で用いられる好適な溶媒、重合開始剤及び触媒は、上記で例示したとおりである。
イソブチレン重合工程において、反応溶液は−100〜30℃に温度調整されていることが好ましく、−70〜−10℃に温度調整されていることがより好ましい。
また、ビニルエーテル重合工程においても、反応溶液は−100〜30℃に温度調整されていることが好ましく、−70〜−10℃に温度調整されていることがより好ましい。
また、ビニルエーテル重合工程において、ビニルエーテル化合物は、溶媒で希釈し、−100〜30℃に温度調整された状態で反応溶液に添加されることが好ましい。
イソブチレン重合工程及びビニルエーテル重合工程は、いずれも窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスの雰囲気下で行うことが好ましい。また、両工程における反応圧力は、溶媒の種類、重合温度等を考慮して、常圧、加圧等の任意の条件を採用することができる。また、重合系が均一になるように十分な攪拌条件下に重合を行うことが好ましい。
(ゴム組成物)
本実施形態に係るゴム組成物は、上記ブロック共重合体と、オレフィン性二重結合を有するゴム成分と、を含有する。
このようなゴム組成物によれば、ゴム成分とブロック共重合体とが架橋した構造を有する架橋ゴム組成物を得ることができ、当該架橋ゴム組成物は、動的粘弾性試験における高温(例えば60℃)での損失係数(tanδ)が小さく、低温(例えば0℃)での損失係数(tanδ)が大きく、耐摩耗性にも優れるものとなる。
そして、このようなゴム組成物から得られる架橋ゴム組成物を空気入りタイヤのトレッド部に用いた場合には、従来相反する関係であった優れた転がり抵抗特性とブレーキ制動性(ウェットグリップ性)の両特性を備え、且つ優れた耐磨耗性を有する空気入りタイヤを得ることができる。
さらに上記架橋ゴム組成物は、水蒸気バリア性及び酸素バリア性も良好であるため、例えば空気入りタイヤのインナーライナー部にも好適に用いることができる。
本実施形態に係るゴム組成物により上記のような優れた効果を有する架橋ゴム組成物が得られる理由は、必ずしも明らかではないが、ゴム成分とブロック共重合体とが架橋することにより、ブロック共重合体が有するイソブチレン及びビニルエーテル化合物に由来する構造が、強固な化学結合でゴム成分に結合されるためと考えられる。
(ゴム成分)
ゴム成分は、オレフィン性二重結合を有するものであれば特に制限はなく、天然ゴム、合成ゴム及びこれらの混合物のいずれであっても良い。ゴム成分としては、架橋によってもゴム物性を維持するものが好ましい。また、ゴム成分としては、架橋により力学物性(機械物性)が増大するものが好ましい。
ゴム成分は、天然ゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、シリコーンゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、イソプレン−ブタジエンゴム、スチレン−イソプレン−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、ハロゲン化ブチルゴム、ハロゲン化イソプレンゴム、ハロゲン化イソブチレンコポリマー、クロロプレンゴム、ブチルゴム及びハロゲン化イソブチレン−p−メチルスチレンゴムからなる群より選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。このようなゴム成分を含有するゴム組成物においては、ブロック共重合体による動的粘弾特性及び耐磨耗性の向上効果が一層顕著に奏される。また、このようなゴム組成物から得られる架橋ゴム組成物は、水蒸気バリア性及び酸素バリア性にも一層優れる。
ゴム成分としては、入手が容易であるという観点からは、ブタジエン、イソプレン等のジエン系モノマーをモノマー単位として含むものが好適に用いられる。このようなゴム成分としては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、スチレン−イソプレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム等が挙げられる。これらは単独で用いても、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
ゴム成分がスチレン−ブタジエンゴムを含有すると、架橋ゴム組成物の動的粘弾特性及び耐磨耗性が一層向上する傾向にある。このとき、スチレン−ブタジエンゴムの含有量は、ゴム成分の全量基準で、90質量%以上とすることが好ましく、95質量%以上とすることがより好ましい。このようなゴム成分としては、スチレン−ブタジエンゴム単独、あるいは、スチレン−ブタジエンゴムに、天然ゴム、イソプレンゴム及びブタジエンゴムからなる群より選ばれる少なくとも1種を混合したものが好適に用いられる。そして、このようなゴム成分を含有するゴム組成物によれば、空気入りタイヤのトレッド部に用いるゴム材料として特に好適な架橋ゴム組成物が得られ、当該架橋ゴム組成物によれば、転がり抵抗特性、耐磨耗性及びブレーキ制動性に一層優れる空気入りタイヤが得られる。
また、ゴム成分がブチルゴム及びハロゲン化ブチルゴムから選ばれる少なくとも1種のブチルゴム系ゴム成分を含有すると、架橋ゴム組成物の水蒸気バリア性及び酸素バリア性が一層向上する。このとき、ブチルゴム系ゴム成分の含有量は、ゴム成分の全量基準で、10〜100質量%であることが好ましく、50〜100質量%であることがより好ましい。このようなゴム成分を含有するゴム組成物によれば、空気入りタイヤのインナーライナー部に用いるゴム材料として特に好適な架橋ゴム組成物が得られ、当該架橋ゴム組成物によれば、空気もれが十分に低減された空気入りタイヤが得られる。
ゴム成分の重量平均分子量は、共重合体の重量平均分子量よりも大きいことが好ましく、例えば5.0×10〜2.0×10の範囲内とすることができる。
ゴム組成物中のゴム成分の含有量は、ゴム組成物中の固形分全量基準で、20〜90質量%であることが好ましく、30〜80質量%であることがより好ましい。また、20〜80質量%とすることもでき、30〜70質量%とすることもできる。このようなゴム組成物によれば、上記架橋ゴム組成物が効率よく得られるとともに、得られた架橋ゴム組成物の耐磨耗性が一層優れたものとなる。
ゴム組成物中のブロック共重合体の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、0.5〜70質量部であることが好ましく、1〜60質量部であることがより好ましい。また、3〜30質量部とすることもできる。このようなゴム組成物によれば、動的粘弾特性、耐磨耗性、水蒸気バリア性及び酸素バリア性に一層優れる架橋ゴム組成物を得ることができる。
(その他の成分)
ゴム組成物は、ゴム工業の分野で使用される種々の補強剤、充填剤、ゴム伸展油、軟化剤等をさらに含有してもよい。
補強剤としては、カーボンブラック、シリカ等が挙げられる。
カーボンブラックは、耐磨耗性の向上、転がり抵抗特性の向上、紫外線による亀裂やひび割れの防止(紫外線劣化防止)等の効果が得られる観点から、補強剤として好適に用いられる。カーボンブラックの種類は特に限定されるものではなく、従来公知のカーボンブラック、例えば、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、グラファイト等のカーボンブラックを使用することができる。また、カーボンブラックの粒径、細孔容積、比表面積等の物理的特性についても特に限定されるものではなく、従来ゴム工業で使用されている各種のカーボンブラック、例えば、SAF、ISAF、HAF、FEF、GPF、SRF(いずれも、米国のASTM規格D−1765−82aで分類されたカーボンブラックの略称)等を適宜使用することができる。カーボンブラックを用いる場合、その配合量は、ゴム成分100質量部に対して、5〜80質量部であることが好ましく、10〜60質量部であることがより好ましい。また、30〜80質量部とすることもでき、40〜60質量部とすることもできる。このような配合量であると、本実施形態に係るゴム組成物及び架橋ゴム組成物において、補強剤としての効果を良好に得ることができる。
シリカとしては、従来よりゴム用補強剤として使用されているものを特に制限なく使用でき、例えば乾式法ホワイトカーボン、湿式法ホワイトカーボン、合成ケイ酸塩系ホワイトカーボン、コロイダルシリカ、沈降シリカなどが挙げられる。シリカの比表面積は特に制限はないが、通常、40〜600m/gの範囲、好ましくは70〜300m/gのものを用いることができ、一次粒子径は10〜1000nmのものを用いることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。シリカの使用量は、ゴム成分100質量部に対して0.1〜150質量部であることが好ましく、10〜100質量部であることがより好ましく、30〜100質量部であることがさらに好ましい。
また、シリカを配合させる目的で、ゴム組成物にシランカップリング剤を配合してもよい。シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシ−エトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−エチルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド、ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)ジスルフィドなどが挙げられる。これらは単独でも用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。シランカップリング剤の添加量は、所望するシリカの配合量によって適宜変更できるが、ゴム成分100質量部に対して、0.1〜20質量部であることが好ましい。
充填剤としては、クレー、タルク等の鉱物の粉末類、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウムなどの炭酸塩類、水酸化アルミニウムなどのアルミナ水和物などを用いることができる。
ゴム伸展油としては、従来から使用されているアロマ系オイル、ナフテン系オイル、パラフィン系オイルなどを用いることができる。ゴム伸展油の配合量は、ゴム成分100質量部に対して、0〜100質量部であることが好ましい。
軟化剤としては、リノール酸、オレイン酸、アビチエン酸を主とするトール油、パインタール、菜種油、綿実油、落花生油、ひまし油、パーム油、フアクチス等の植物系軟化剤、パラフィン系油、ナフテン系油、芳香族系油、ジブチルフタレート等のフタル酸誘導体、等が挙げられる。軟化剤の配合量は、ゴム成分100質量部に対して、0〜50質量部であることが好ましい。
ゴム組成物はまた、ゴム工業の分野で使用される種々の添加剤、例えば、老化防止剤、イオウ、架橋剤、加硫促進剤、加硫遅延剤、しゃっ解剤、プロセス油、可塑剤等の1種又は2種以上を、必要に応じて含有していてもよい。これらの添加剤の配合量は、ゴム成分100質量部に対して、0.1〜10質量部であることが好ましい。
ゴム組成物は、ゴム成分とブロック共重合体とを架橋することで架橋ゴム組成物が得られる。ここで架橋方法は特に制限されないが、架橋剤により架橋することが好ましい。
すなわち、ゴム組成物は、架橋剤をさらに含有することが好ましい。架橋剤としては、ゴムの架橋に通常用いられるものを特に制限なく使用することができ、ゴム成分及びブロック共重合体に応じて適宜選択することができる。架橋剤としては、例えば、硫黄、モルホリンジスルフィド、アルキルフェノールジスルフィド等の硫黄架橋剤;シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシイソブチレート、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジtert−ブチルパーオキサイド、1,3−ビス(tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン等の有機過酸化物架橋剤、等が挙げられる。これらの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、0.1〜5質量部であることが好ましく、0.5〜3質量部であることがより好ましく、1〜2質量部であることがさらに好ましい。
また、ゴム組成物は、必要に応じて、加硫促進剤や加硫助剤を含有していてもよい。加硫促進剤や加硫助剤としては特に限定されず、ゴム組成物が含有するゴム成分、ブロック共重合体、架橋剤に応じて、適宜選択して使用することができる。なお、「加硫」とは硫黄原子を少なくとも一つ介する架橋を示す。
加硫促進剤としては、例えば、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィドなどのチウラム系促進剤;2−メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジスルフィドなどのチアゾール系促進剤;N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミドなどのスルフェンアミド系促進剤;ジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジンなどのグアニジン系促進剤;n−ブチルアルデヒド−アニリン縮合品、ブチルアルデヒド−モノブチルアミン縮合品などのアルデヒド−アミン系促進剤;ヘキサメチレンテトラミンなどのアルデヒド−アンモニア系促進剤;チオカルバニリドなどのチオ尿素系促進剤、などが挙げられる。これらの加硫促進剤を配合する場合は、1種類を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。加硫促進剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して0.1〜10質量部であることが好ましい。
加硫助剤としては酸化亜鉛(亜鉛華)、酸化マグネシウムなどの金属酸化物;水酸化カルシウムなどの金属水酸化物;炭酸亜鉛、塩基性炭酸亜鉛などの金属炭酸塩;ステアリン酸、オレイン酸などの脂肪酸;ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムなどの脂肪族金属塩;ジn−ブチルアミン、ジシクロヘキシルアミンなどのアミン類;エチレンジメタクリレート、ジアリルフタレート、N,N−m−フェニレンジマレイミド、トリアリルイソシアヌレート、トリメチロールプロパントリメタクリレートなどが挙げられる。これらの加硫助剤を配合する場合は、1種類を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。加硫助剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、0.1〜10質量部であることが好ましい。
ゴム組成物は、一般にゴム組成物の製造方法として用いられる方法を適用することにより製造することができる。例えば、上述した各成分を、ブラベンダー、バンバリーミキサー、ロールミキサー等の混練機を用いて混合すること等により製造できる。
(架橋ゴム組成物)
本実施形態に係る架橋ゴム組成物は、ゴム成分とブロック共重合体とが架橋した構造を有する。このような架橋ゴム組成物は、動的粘弾特性、耐磨耗性、水蒸気バリア性及び酸素バリア性に優れる。そのため、本実施形態に係る架橋ゴム組成物は、タイヤ用ゴム材料として有用である。具体的には例えば、架橋ゴム組成物をタイヤのトレッド部に用いると、ブロック共重合体を配合しない場合と比較して、ブレーキ制動性(ウェットグリップ性)及び転がり抵抗特性が向上し、且つ耐磨耗性にも優れる。
架橋ゴム組成物は、上記ゴム組成物を用いて、通常ゴムの架橋方法として用いられる方法により製造することができる。例えば、上記ゴム組成物が架橋剤を含有する場合、ゴム組成物を加熱圧縮成形することにより、所望の形状に成形され、且つゴム成分とブロック共重合体とが架橋した構造を有する架橋ゴム組成物が得られる。
架橋ゴム組成物は、動的粘弾特性、耐磨耗性、水蒸気バリア性及び酸素バリア性に優れることから、これらの特性が要求される種々の用途に用いることができる。例えば、工業用ベルト、工業用ゴムホースなどの工業用ゴム部材用途として好適に使用することができる。また、ゴムベルト、ゴムホース、ゴムロール、もみすりロール、型加硫製品、防振ゴム、防げん材、エボナイト、ライニング、磁性ゴム、スポンジゴム、分出製品、押出製品、テープ製品、ゴム系接着剤、ゴムはきもの、ゴム引布、角糸ゴム、カットシート製品、消ゴム、医療用ゴム製品、電線、導電性ゴム、微孔ゴム隔離板、防毒マスク、水中運道具、ボーリングボール、おもちゃ、ボール類、ゴルフボール、ラテックス浸せき製品、ラテックスキャスト製品、ラテックスゴム糸、フォームラバー、ウレタンホーム、その他のラテックス製品、紙サイジング、カーペットバッキング、合成皮革、シーリング材、シート防水材(合成高分子ルーフィング)、塗膜防水材、ポリマーセメントモルタル(ラテックスセメントモルタル)、ゴムアスファルト、ラテックスペイント等の用途にも使用することができる。
また、本実施形態に係る架橋ゴム組成物は、タイヤ用途に特に好適に用いることができ、例えば、自動車タイヤ・チューブ、インナーライナー、ビードフィラー、プライ、ベルト、トレッドゴム、サイドゴム、各種封止材、シーラント、航空機用タイヤ・チューブ、自転車タイヤ・チューブ、ソリッドタイヤ、更正タイヤ等の用途に用いることができる。
具体例を挙げると、架橋ゴム組成物は、路面と接するトレッド部(及びトレッド部を含むキャップ部)を構成する材料として使用することができる。架橋ゴム組成物を用いてトレッド部が構成された空気入りタイヤは、ウェットグリップ性に優れるため、走行安定性及びブレーキ制動性に優れる。また、転がり抵抗特性に優れ、且つ転動抵抗が小さいため、低燃費化が実現できる。さらに、耐磨耗性に優れるため、長期の使用に耐えうるものとなる。
また、本実施形態に係る架橋ゴム組成物は、インナーライナー部を構成する材料として使用することができる。架橋ゴム組成物を用いてインナーライナー部が構成された空気入りタイヤは、空気もれを十分に低減することができるため、空気もれに起因する転がり抵抗特性の悪化を十分に防止することができる。
本実施形態に係る空気入りタイヤは、例えば、トレッド部が路面と接するキャップ部とその内側のベース部とからなる2層以上の構造を有し、キャップ部の一部又は全部が上記架橋ゴム組成物で構成されている。このような空気入りタイヤは、従来公知のゴム組成物を用いた空気入りタイヤの製造方法に従って、適宜製造することができる。
また、本実施形態に係る空気入りタイヤは、例えば、インナーライナー部の一部又は全部が上記架橋ゴム組成物で構成されている。このような空気入りタイヤは、従来公知のゴム組成物を用いた空気入りタイヤの製造方法に従って、適宜製造することができる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、本発明は、空気入りタイヤに使用されるゴム材料(例えば上記ゴム成分として例示されるゴム)に、ブロック共重合体を配合し架橋することによりウェットグリップ性(又は転がり抵抗特性)を向上させる方法、すなわち、ゴム材料とブロック共重合体とが架橋した構造を有する架橋ゴム材料を用いてトレッド部を構成する、ウェットグリップ性(又は転がり抵抗特性)を向上させる方法であってもよい。この場合、従来のゴム材料の改良方法では、ウェットグリップ性の向上に伴って転がり抵抗特性及び/又は耐磨耗性が低下していたところ、本発明の方法によれば、ゴム材料が元来有する転がり抵抗特性及び耐磨耗性を維持しつつ、ウェットグリップ性を向上させることができる。
また、本発明は、空気入りタイヤに使用されるゴム材料(例えば上記ゴム成分として例示されるゴム)に、ブロック共重合体を配合し架橋することにより水蒸気バリア性及び酸素バリア性を向上させる方法であってもよい。すなわち、ゴム材料とブロック共重合体とが架橋した構造を有する架橋ゴム材料を用いてインナーライナー部を構成する、タイヤの空気もれを改善する方法であってもよい。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。なお、実施例及び比較例において、GPC測定及びH−NMR測定は以下の条件で行った。
(GPC測定)
化合物をテトラヒドロフラン(キシダ化学社製)に溶解し、東ソー社製8020GPCシステムで、TSK−GEL SuperH1000、SuperH2000、SuperH3000、SuperH4000を直列につなぎ、溶出液としてテトラヒドロフランを用いてGPC測定を実施した。分子量の較正にはポリスチレンスタンダードを用いた。
H−NMR測定)
測定対象を重水素化クロロホルムに溶解し、Varian社製INOVA−600で測定した。化学シフトの較正には内標物質テトラメチルシランを用いた。なお、共重合体中のイソブチレン由来の構造単位の総量Aとトリシクロデセンビニルエーテル由来の構造単位の総量Bの比A/Bを算出する際には、イソブチレン由来の構造単位に帰属されるピークとして1.38〜1.52ppmに観測されるピークを選択し、トリシクロデセンビニルエーテル由来の構造単位に帰属されるピークとして5.66〜5.76ppm及び5.40〜5.50ppmに観測されるピークを選択し、各ピークのピーク面積を比較した。
(実施例1:ブロック共重合体A−1の製造)
500mLの4口フラスコに、セプタムキャップ、真空ラインを繋げた還流管、及び温度計を取り付け、スターラーバーを入れた。そして真空ライン(シュレンク管付き)を用いて、系内の脱気−窒素置換を2回繰り返し、常圧窒素雰囲気下とした。
次いで、溶媒(ヘキサン180mL+塩化メチレン120mL)及び重合開始剤のtert−ブチルクロライド0.123g(1.33mmol)を投入し、フラスコを−20℃の低温槽に浸漬させ、イソブチレン20.0g(357mmol)を添加した。系内の液温が−20℃になったことを確認した後、窒素雰囲気下のグローブボックス内で秤量した四塩化チタン1.30g(6.84mmol)を加え、攪拌し、イソブチレンの重合を開始した。時間経過とともに反応溶液の粘度上昇が目視で確認でき、重合が進行していることがわかった。重合開始から30分後、少量のイソブチレン重合体をサンプリングし、GPC分析を行ったところ、イソブチレン重合体の重量平均分子量(Mw)は56000であった。
その後、トリシクロデセンビニルエーテル(丸善石油化学(株)製)2.62g(14.9mmol)を溶媒(ヘキサン12mL+塩化メチレン8mL)とともに添加し、共重合反応を開始した。10分間攪拌後、10mLのメタノールを加えて反応を停止させた。反応溶液を500mLのトルエンに溶解させ、水にて2回洗浄し、得られた有機層を3.5Lのメタノールに添加して重合体を沈殿させた。この重合体を、60℃、1mmHgの真空乾燥機にて3時間乾燥させたところ、収量20.0gでブロック共重合体A−1が得られた。
ブロック共重合体A−1についてGPC測定を行ったところ、重量平均分子量(Mw)は58,000であった。また、H−NMR測定を行ったところ、ブロック共重合体中のイソブチレン由来の構造単位の総量Aとトリシクロデセンビニルエーテル由来の構造単位の総量Bの比A/Bは、モル比で96.6/3.4であった。重量平均分子量及び比A/Bから、イソブチレン(分子量56.11g/mol)の平均重合度aとトリシクロデセンビニルエーテル(分子量176.25g/mol)の平均重合度bとをそれぞれ算出したところ、aは999であり、bは11であった。
(実施例2:ブロック共重合体A−2の製造)
重合温度を−70℃にしたこと以外は、実施例1と同様の方法でブロック共重合体A−2を得た。なお、トリシクロデセンビニルエーテルの添加前にサンプリングされたイソブチレン重合体の重量平均分子量(Mw)は、700000であった。また、得られたブロック共重合体A−2の収量は18.0gであり、重量平均分子量(Mw)は750000であり、上記比A/Bはモル比で93.6/6.4であった。また、イソブチレンの平均重合度a及びトリシクロデセンビニルエーテルの平均重合度bを算出したところ、aは12511、bは272であった。
(実施例3:ブロック共重合体A−3の製造)
重合温度を−10℃にしたこと以外は、実施例1と同様の方法でブロック共重合体A−3を得た。なお、トリシクロデセンビニルエーテルの添加前にサンプリングされたイソブチレン重合体の重量平均分子量(Mw)は34000であった。また、得られたブロック共重合体A−3の収量は20.8gであり、重量平均分子量(Mw)は35000であり、上記比A/Bはモル比で97.5/2.5であった。また、イソブチレンの平均重合度a及びトリシクロデセンビニルエーテルの平均重合度bを算出したところ、aは608、bは5.0であった。
(比較例1:ブロック共重合体B−1)
重合温度を0℃にしたこと以外は、実施例1と同様の方法でブロック共重合物B−1を得た。なお、トリシクロデセンビニルエーテルの添加前にサンプリングされたイソブチレン重合体の重量平均分子量(Mw)は11000であった。また、得られたブロック共重合体B−1の収量は21.4gであり、重量平均分子量(Mw)は12000であり、上記比A/Bはモル比で96.5/3.5であった。また、イソブチレンの平均重合度a及びトリシクロデセンビニルエーテルの平均重合度bを算出したところ、aは206、bは2.4であった。
(比較例2:ランダム共重合体B−2)
500mLの3口フラスコにセプタムキャップ、真空ラインを繋げた還流管、温度管を取り付け、スターラーバーを入れ、真空ライン(シュレンク管付き)を用いて、系内の脱気−窒素置換を2回繰り返し、常圧窒素雰囲気下とした。そのフラスコ内に、脱水トルエン300mLを、シリンジを用いてセプタムキャップから注入した。次にシリンジを用いて、トリシクロデセンビニルエーテル(丸善石油化学(株)製)1.52g(8.64mmol)を注入し、フラスコを−20℃の低温槽に浸漬させ、系内の液温が−20℃になったことを確認した。その後、イソブチレン15.6g(279mmol)およびメタノール0.11mL(89.7mg)を反応系に移し、系内の液温が再び−20℃となったことを確認した。
次に、BFガスボンベより減圧弁を通してBFガスをバルブ付の耐圧ステンレス製容器に移送し0.190g(2.80mmol)測りとり、ステンレス製のキャニュラーを通じて、セプタムキャップから注入した。BFガス注入から1時間後、10mLのメタノールを加えて反応を停止させた。反応溶液を500mLのトルエンに溶解させ、水にて2回洗浄し、得られた有機層を3.5Lのメタノールに添加して、重合体を沈殿させた。この重合体を60℃、1mmHgの真空乾燥機にて3時間乾燥させたところ、収量14.1gでランダム共重合体B−2が得られた。ランダム共重合体の重量平均分子量(Mw)は37000であり、上記比A/Bは97.2/2.8であった。また、イソブチレンの平均重合度a及びトリシクロデセンビニルエーテルの平均重合度bを算出したところ、aは641、bは5.9であった。
(比較例3:ブロック共重合体B−3の製造)
tert−ブチルクロライドの使用量を0.050g(0.54mmol)、四塩化チタンの使用量を0.50g(2.63mmol)、トリシクロデセンビニルエーテルの使用量を0.63g(3.61mmol)、重合温度を−70℃としたこと以外は、実施例1と同様の方法でブロック共重合体B−3を得た。
なお、トリシクロデセンビニルエーテルの添加前にサンプリングされたイソブチレン重合体の重量平均分子量(Mw)は1170000であった。また、得られたブロック共重合体B−3の収量は16.5gであり、重量平均分子量(Mw)は1180000であり、上記比A/Bはモル比で99.5/0.5であった。また、イソブチレンの平均重合度a及びトリシクロデセンビニルエーテルの平均重合度bを算出したところ、aは20925、bは34であった。
Figure 2013040234
(実施例4)
スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(JSR SL552、JSR社製。以下、場合により「SBR」と表す。)に、実施例1で得られたブロック共重合体A−1、充填剤、シランカップリング剤、可塑剤、加硫剤、加硫促進剤、加硫助剤及び老化防止剤を、それぞれ表2に示す配合比(質量部)で配合して、混練した。なお、充填剤としてはシリカAQ(東ソー・シリカ社製)を、シランカップリング剤としてはSi69(デグサ社製、(EtO)Si−C−S−C−Si(OEt))を、可塑剤としてはプロセスオイル(NS−100、出光興産社製)を、加硫剤としては硫黄(川越化学社製)を、加硫助剤としては酸化亜鉛3号(ハクスイテック社製)及びステアリン酸(日本精化社製)を、加硫促進剤としてはスルフェンアミド系促進剤のノクセラーCZ(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、大内新興化学社製)及びグアニジン系促進剤のノクセラーD(1,3−ジフェニルグアニジン、大内新興化学社製)を、老化防止剤としては老化防止剤224(大内新興化学社製)を、それぞれ用いた。
この混練はロール機(6インチφ×16インチ)を用い、回転数30rpm、前後ロール回転比1:1.22の条件で行った。この混練で得られたゴム組成物を160℃×20分の加硫条件で圧縮成形し、架橋ゴム組成物からなる試験シートを作製した。この際の成形性は極めて良好であった。次いで、この試験シートを用いて、後述の方法により動的粘弾特性及び耐摩耗性を評価した。これらの結果を表3に示す。
(実施例5〜6)
ブロック共重合体A−1にかえて実施例2又は3で得られたブロック共重合体A−2又はA−3を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、架橋ゴム組成物からなる試験シートを作製した。この際、いずれの実施例でも成形性は極めて良好であった。次いで、この試験シートを用いて、後述の方法により動的粘弾特性及び耐磨耗性を評価した。結果を表3に示す。
(比較例4〜6)
ブロック共重合体A−1にかえて比較例1〜3で得られたブロック共重合体B−1、ランダム共重合体B−2又はブロック共重合体B−3を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、架橋ゴム組成物からなる試験シートを作製した。次いで、この試験シートを用いて、後述の方法により動的粘弾特性及び耐磨耗性を評価した。結果を表3に示す。
Figure 2013040234
(動的粘弾性の測定)
動的粘弾性の測定は、JIS K−7244−4(プラスチック−動的機械特性の試験方法−第4部:引張振動―非共振法)に準じて実施した。具体的には、実施例及び比較例で得られた各試験シートから、厚さ1mm×幅5mm×長さ40mmの試験片を1枚切り出して用い、周波数10Hz、歪み0.1%の条件で、測定温度−50〜100℃の範囲を2℃/分で昇温させながら、引張モードで測定した。用いた装置は動的粘弾性測定装置RSA−3(TA INSTRUMENTS製)である。
このとき、周波数は10Hzであるが、これはウェットグリップ性が、粘弾性の時間温度換算則を利用すると、10Hz−0℃におけるtanδ値と相関しているためであり、その数値が大きいほど、ウェットグリップ性が良好であることが知られている。また、転がり抵抗は、同様にして、10Hz−60℃におけるtanδ値と相関しており、その数値が小さいほど、転がり抵抗が良好であることが知られている。表3には、10Hz−0℃におけるtanδ値を「グリップ性」として、10Hz−60℃におけるtanδ値を「転がり抵抗」として、それぞれ記載した。
(耐摩耗性試験)
耐摩耗性試験は、JIS K−6264−2(加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−耐摩耗性の求め方−第2部試験方法)に準じて実施した。具体的にはアクロン摩耗試験機において、荷重27N、傾角15度の条件で、75rpmの回転速度で1000回転させた際の磨耗量(磨耗体積)(mm)を測定し、耐摩耗性を評価した。なお、試験は3回行い、これらの平均値を測定値とした。
Figure 2013040234
表3に示されるように、実施例4〜6では良好なグリップ性が得られ、転がり抵抗が小さく、耐磨耗性も良好であった。

Claims (13)

  1. 平均重合度が4.0×10〜2.0×10であって生長末端を有するイソブチレン重合体に、式(1)で表されるビニルエーテル化合物をさらに重合させてなる、ブロック共重合体。
    CH=CH−O−(X)―Y (1)
    [式中、Xは2価の基を示し、Yは不飽和結合を有する置換又は未置換の脂環基を示し、nは0又は1を示す。]
  2. 前記イソブチレン重合体が、重合開始剤及び触媒を用いたイソブチレンの重合反応により得られる重合体であり、
    前記重合開始剤が、ハロゲン化アルキル及びハロゲン化アリールからなる群より選択される少なくとも一種を含む、請求項1に記載のブロック共重合体。
  3. 前記重合開始剤が、tert−ブチルクロライド、クミルクロライド及びトリメチルペンチルクロライドからなる群より選択される少なくとも一種を含む、請求項2に記載のブロック共重合体。
  4. 前記イソブチレンの重合反応における反応温度が−100〜30℃である、請求項2又は3に記載のブロック共重合体。
  5. 前記ビニルエーテル化合物が、下記式(1−a)で表される化合物及び/又は下記式(1−b)で表される化合物を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載のブロック共重合体。
    Figure 2013040234

    [式中、nは0又は1を示す。]
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載のブロック共重合体と、オレフィン性二重結合を有するゴム成分と、を含有するゴム組成物。
  7. 前記ゴム成分が、天然ゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、シリコーンゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、イソプレン−ブタジエンゴム、スチレン−イソプレン−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、ハロゲン化ブチルゴム、ハロゲン化イソプレンゴム、ハロゲン化イソブチレンコポリマー、クロロプレンゴム、ブチルゴム及びハロゲン化イソブチレン−p−メチルスチレンゴムからなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、請求項6に記載のゴム組成物。
  8. 前記ブロック共重合体の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して、0.5〜70質量部である、請求項6又は7に記載のゴム組成物。
  9. 前記ゴム成分が、実質的にスチレン−ブタジエンゴムである、請求項6〜8のいずれか一項に記載のゴム組成物。
  10. 架橋剤をさらに含有する、請求項6〜9のいずれか一項に記載のゴム組成物。
  11. 請求項6〜10のいずれか一項に記載のゴム組成物を用いて得られる架橋ゴム組成物であって、前記ゴム成分と前記ブロック共重合体とが架橋した構造を有する、架橋ゴム組成物。
  12. トレッド部に請求項11に記載の架橋ゴム組成物を含有する、空気入りタイヤ。
  13. 請求項1〜5のいずれか一項に記載のブロック共重合体の製造方法であって、
    −100〜30℃に温度調整されたイソブチレン及び溶媒を含有する反応溶液に、重合開始剤及び触媒を添加して、前記イソブチレンの重合反応を行うイソブチレン重合工程と、
    前記イソブチレン重合工程を経た前記反応溶液に、式(1)で表されるビニルエーテル化合物を添加して、前記イソブチレンの重合体に式(1)で表されるビニルエーテル化合物をさらに重合させるビニルエーテル重合工程と、を備える、製造方法。
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