JP2013040143A - 肝機能障害予防改善剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】容易に調製でき、慣用されている物質を有効成分とする肝機能障害予防改善剤、肝機能障害予防改善用飲食品及び肝機能障害予防改善用飼料を提供する。
【解決手段】オゾン化オリーブ油等のオゾン化油脂を有効成分とする肝機能障害予防改善剤、肝機能障害予防改善用飲食品及び肝機能障害予防改善用飼料とする。上記肝機能障害予防・改善剤は、肝臓脂肪蓄積を抑制、すなわち肝臓へのトリグリセリドの蓄積を抑制し、脂質のうちトリグリセリドのみを選択的に血中へ放出させることができ、また、血中のPAI−1の濃度を低減ないし上昇抑制する効果を有する。
【選択図】なし

Description

本発明は、オゾン化油脂を含有する肝機能障害予防改善剤、肝機能障害予防改善用飲食品及び肝機能障害予防改善用飼料に関する。
近年、生活習慣に関係して発症する病態としてメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)が注目されている。メタボリックシンドロームは、内臓脂肪型肥満に加え、高血糖、高血圧、脂質異常(高中性脂肪血症、低HDLコレステロール血症)のうちいずれか2以上の危険因子を併せもつ状態をいい、脳梗塞、脳出血、虚血性心疾患、大動脈瘤等の動脈硬化性疾患の発症の危険性を増大させることから、その予防・改善が重要な課題となっている。メタボリックシンドロームの危険因子とされる高血糖、高血圧、脂質異常については、それぞれ独立に進行するものではなく、互いに相関した病気であるという認識が広まっており、脂肪蓄積による肥満が糖尿病等の合併症の一因であることが明らかになっている。最近の研究によると、過食、運動不足、生活習慣の多様化によるストレスが生体の防御反応に変調や破綻をもたらし、低レベルの炎症状態が長期化した慢性炎症が引き起こされることによって種々の病態が起こるとも指摘されており、不可逆的な臓器の機能不全を生じる慢性炎症が、メタボリックシンドローム、アテローム硬化等の動脈硬化性疾患、インスリン非依存性糖尿病、脂質異常、癌等の発症や進展の原因であるとして注目されている。また、肥満による内臓脂肪の蓄積によって脂肪組織で発生する炎症性変化についての報告もなされており、肥満に伴う合併症への影響が指摘されている。
脂肪細胞は、アディポサイトカインと呼ばれる種々の生理活性物質を分泌することにより恒常性維持、エネルギー代謝等の生体機能調節に関与していることが解明されてきており、アディポサイトカインには、動脈硬化を改善させるアディポネクチン、レプチンや、動脈硬化を促進させるTNFα、プラスミノーゲン活性化抑制因子(plasminogen activator inhibitor-1;PAI−1)、IL−6、MCP−1、アンジオポエチン様タンパク質2(Angptl2)、ヘパリン結合性上皮増殖因子様増殖因子(heparin binding-epidermal growth factor-like growth factor;HB−EGF)等が知られている。肥満の脂肪組織ではマクロファージ等の炎症細胞の浸潤を伴う慢性炎症が生じており、アディポサイトカインの分泌異常が起こり、インスリン抵抗性の改善に働くアディポネクチンの減少が認められる。このようなアディポサイトカインによる調節の破綻は、全身でのインスリン抵抗性を引き起こし、糖尿病等の合併症の発症の一因となっており、アディポサイトカインは、メタボリックシンドロームの病態形成に重要な役割を果たしていると考えられている。このような慢性炎症は、内臓脂肪特に肝脂肪の蓄積が生じている場合に深刻である。
肝機能障害あるいは生活習慣病・肥満の予防・治療に関しては、従来から、アルギン酸カリウムを有効成分とする肥満・脂肪肝予防改善剤、内臓脂肪・肝臓脂質蓄積抑制剤(特許文献1参照)、チャの花部又はその抽出物を有効成分とする体脂肪低減促進剤、脂質代謝促進剤、脂肪肝等の肝障害の予防・治療剤、摂食抑制剤(特許文献2参照)、醤油粕又はその抽出物を有効成分とするPPAR活性化剤、脂肪酸代謝活性化剤、体脂肪燃焼促進剤、肥満抑制剤、脂肪肝抑制剤、抗糖尿病剤(特許文献3参照)等の多数の技術が知られている。
脂肪酸は、生物のエネルギー源としてあるいは生理活性物質の生合成の材料として重要な物質であり、炭素数や二重結合の有無により様々な生理活性を示すことが知られているが、特に、脂肪酸を有効成分とする薬剤として、S2U型(Sは炭素数20から24の飽和脂肪酸残基で、Uは炭素数16以上の不飽和脂肪酸残基)のトリグリセリドを有効成分とする肝機能改善剤(特許文献4参照)、魚油を含有することを特徴とする肝臓トリグリセリド濃度低下剤(特許文献5参照)、プニカ酸またはそのエステルを有効成分とする体脂肪の蓄積に起因する疾患の治療剤(特許文献6参照)、5,11,14−エイコサトリエン酸を有効成分とする血中中性脂肪低下剤、肝臓中性脂肪合成抑制剤(特許文献7参照)、中鎖脂肪酸および/または中鎖脂肪酸を含むグリセリン脂肪酸エステルを有効成分とする体脂肪・皮下脂肪低減剤、糖尿病、高血圧、高脂血症、脂肪肝、痛風等の肥満由来疾患の予防および/または改善剤(特許文献8参照)等がある。
オレイン酸を多く含むオリーブ油等の油脂をオゾニド化して得られるオゾン化油脂は、欧州で古くから製造され、外傷等治療薬として利用されており、効率的、安定的に製造する多数の方法が開発され(特許文献9、10参照)その利用が進められている。また、オゾン化油脂は、近年までに抗菌作用、抗酸化作用、抗腫瘍作用、抗炎症作用等の多様な生理活性を示すことが明らかになっており、感染症、潰瘍、かさぶた、火傷や他の消化管の組織病変等の局所治療、にきび、スキンケア等の美容のためのオゾン化油脂をチオクト酸と組み合わせることにより作用を促進させて医薬、美容、飼料又は食品添加物に用いる技術(特許文献11参照)等が知られている。しかしながら、オゾン化油脂が、メタボリックシンドロームの病態に作用することや、肝機能障害の予防改善に有効であることは知られていない。
特開2011−021012号公報 特開2009−185004号公報 特開2009−242382号公報 特開2008−247791号公報 特開2008−184429号公報 特開2008−150307号公報 特開2006−232711号公報 国際公開第2004/022049号 米国特許第2857410号明細書 米国特許第5183911号明細書 米国特許出願公開第2005/0113441号明細書
本発明の課題は、容易に調製でき、慣用されている物質を有効成分とする肝機能障害予防改善剤、肝機能障害予防改善用飲食品及び肝機能障害予防改善用飼料を提供することにある。
本発明者らは、肥満モデルラットを用いて、オゾン化油投与/非投与グループを比較した結果、(i)体重や白色脂肪組織量については、両グループでほとんど違いが認められなかったが、(ii)肥満による肝臓機能障害に深く関わる因子である、肝臓脂肪量、アスパラギン酸アミノ基転移酵素(aspartate aminotransferase;AST)、アラニンアミノ基転移酵素(alanine aminotransferase;ALT)、及び血清プラスミノーゲン活性化抑制因子(plasminogen activator inhibitor-1;PAI−1)の血中濃度については、オゾン化油投与グループにおいて顕著な減少が認められたという新たな知見を見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、
(1)オゾン化油脂を有効成分として含有することを特徴とする肝機能障害予防改善剤や、
(2)血中のプラスミノーゲン活性化抑制因子(PAI−1)の濃度の上昇を抑制するために用いられる上記(1)に記載の肝機能障害予防改善剤や、
(3)オゾン化油脂が、オゾン化オリーブ油であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の肝機能障害予防改善剤や、
(4)オゾン化油脂を有効成分として含有し、肝機能障害予防改善作用がある旨の表示が付された肝機能障害予防改善用飲食品や、
(5)オゾン化油脂を有効成分として含有し、肝機能障害予防改善作用がある旨の表示が付された肝機能障害予防改善用飼料に関する。
上記本発明の肝機能障害予防改善剤は、肝臓脂肪蓄積を抑制、すなわち肝臓へのトリグリセリドの蓄積を抑制し、脂質のうちトリグリセリドのみを選択的に血中へ放出させることができ、また、血中のPAI−1の濃度を低減ないし上昇抑制する効果を有することから、本発明の別の態様として、オゾン化油脂を含有する肝臓脂肪蓄積抑制ないし低減剤、オゾン化油脂を含有する肝臓トリグリセリド蓄積抑制ないし低減剤、オゾン化油脂を含有する血中PAI−1濃度の低減ないし上昇抑制剤の他、オゾン化油脂を含有する肝臓脂肪蓄積抑制ないし低減用飲食品又は飼料等を挙げることができる。
本発明によれば、代謝異常により発生する肝機能障害を予防し、又はその症状を改善することができる。また、メタボリックシンドロームの病態形成、進行を抑制することができる。具体的には、肝臓へのトリグリセリドの蓄積を抑制し、脂質のうちトリグリセリドのみを選択的に血中へ放出させることができ、血中のPAI−1の濃度を低減ないし上昇抑制する効果が得られる。また、肝機能障害マーカーであるAST、ALTの血中濃度を低減させることができる。
被検ラットにおけるトリグリセリド濃度、血清タンパク質濃度と肝機能障害マーカーとの関係を単回帰分析した結果を示す図である。トリグリセリドとしては、肝臓トリグリセリド濃度(mg/g)、血清トリグリセリド濃度(mg/dL)。血清タンパク質としては、血清PAI−1濃度(ng/mL)、血清C反応性タンパク(CRP)濃度(pg/mL)、血清アディポネクチン濃度(μg/mL)、血清単球走化活性因子1(MCP−1)濃度(pg/mL)。肝機能障害マーカーとしては、アスパラギン酸アミノ基転移酵素(AST)活性(IU/L)を用いた。
本発明においてオゾン化油脂とは、不飽和脂肪酸を含む油脂にオゾンを導通して得られる物質であって、不飽和脂肪酸の二重結合がオゾニド化されて生成されるトリオキソランを含む油脂をいう。オゾン化油脂は、不飽和脂肪酸を含む液状の油脂を容器に収容し、オゾン/酸素混合気体を常温下、1〜5L/min程度の流速で油脂を攪拌しながら導通することにより調製することができる。原料となる油脂としては、不飽和脂肪酸であるオレイン酸、リノール酸、又はリノレイン酸を含む油脂であることが好ましく、特にオレイン酸を高い割合で含む常温で液体の油脂が好適に用いられる。このような油脂として、オリーブ油、菜種油、紅花油、ひまわり油等の植物油・食用油を挙げることができる。常温で液体の油脂を用いるとオゾン化油が得られ、オリーブ油を用いるとオゾン化オリーブ油が得られる。また、油脂としては不純物を留去したものを用いることが好ましく、油脂の溶媒として、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、シクロヘキサン、メタノール、酢酸エチル等を用いることができる。導通させるオゾン/酸素混合気体は、気体酸素の無声放電による方法、紫外線照射による方法、希硫酸を電気分解する方法等の公知の生成方法により調製することができる。
本発明の肝機能障害予防改善剤は、肝臓の機能障害の発症の予防や、機能障害の軽減、治癒等の症状の改善に用いられる。肝機能障害の原因としては、代謝異常、アルコール摂取、ウイルス感染、免疫異常、遺伝的要因等があるが、本発明は特に代謝異常により発生する肝機能障害の予防改善に用いられる。予防改善する肝機能障害としては、肝不全、黄疸、肝腫大、腹水の蓄積、門脈圧亢進、肝性脳症、胆汁うっ滞等の徴候や症状を伴う肝臓の障害を挙げることができ、具体的には、脂肪肝、肝硬変、急性肝炎、慢性肝炎等の疾患例示することができる。また、本発明の肝機能障害予防改善剤は、肝臓へのトリグリセリドの蓄積を抑制する作用を有することから、特に、肥満時における肝臓脂肪蓄積の抑制に有効であり、脂肪肝やメタボリックシンドロームの発症の予防・症状改善のために用いることができる。また、本発明の肝機能障害予防改善剤は、血中のPAI−1の濃度を低減ないし上昇抑制させるため又は血中AST若しくはALT濃度を低減させるために用いることができる。PAI−1は、炎症により肝臓、血管及び脂肪細胞から分泌され、血中PAI−1濃度の上昇は、メタボリックシンドロームにおいて亢進が認められるほか、血栓傾向及び血管病変の憎悪因子としても重要であり、肝炎あるいはがんの予防や治療に関係があるという報告もある。したがって、肝機能障害予防改善作用を有するオゾン化油脂は、血栓症・肝炎の予防改善、がんの成長・転移抑制のために用いることもできる。
本発明の肝機能障害予防改善剤は、投与経路に応じ、薬理・製剤学的に許容される剤型に製剤化することができる。投与経路は、全身投与、局所経路のいずれでもよいが経口投与により腸管を経由してオゾン化油脂を投与することが好ましい。剤型としては、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、液剤、シロップ剤、又はゼリー剤として経口投与用の製剤とし、体内組織・器官に直接投与する場合は注射剤としてもよい。肝機能障害予防改善剤は、賦形剤、結合剤、崩壊剤、分散剤、滑沢剤、コーティング剤、保存剤、着色剤、香味剤等の添加剤が使用されていてもよく、腸溶性あるいは徐放性の放出制御がなされていてもよい。
本発明の肝機能障害予防改善剤の投与方法は特に制限されず、経口投与、静脈内投与を症状に応じて選択することができるが、薬剤が腸管吸収を経る経口投与を用いることが好ましい。本発明の肝機能障害予防改善剤の投与量は、年齢、体重、性別、症状、薬剤への感受性等に応じて適宜決定される。通常、10〜1000mg/kg/dayの投与量の範囲で、好ましくは50〜500mg/kg/dayの投与量の範囲で、一日あたり単回あるいは複数回に分けて投与されるが、症状の改善の状況に応じて投与量を調節してよい。
肝機能障害予防改善作用を有するオゾン化油脂は、飲食品又は飼料に添加することにより、肝機能障害予防改善用飲食品又は肝機能障害予防改善用飲飼料とすることができる。また、本発明の肝機能障害予防改善用飲食品、肝機能障害予防改善用飲飼料は、肥満時における肝臓脂肪蓄積の抑制に有効であり、脂肪肝やメタボリックシンドロームの発症の予防・症状改善のために用いることができる。また、本発明の肝機能障害予防改善用飲食品、肝機能障害予防改善用飲飼料は、血中のPAI−1の濃度を低減ないし上昇抑制させるため又は血中AST若しくはALT濃度を低減させるために用いることができる。飲食品としては、バター、マーガリン、ショートニング、ラード等の食用油脂類、醤油、ソース、マヨネーズ、ドレッシング等の調味料、畜肉・魚肉・野菜・果実加工食品・惣菜類、乳製品、菓子・氷菓子類、酒類、乳飲料、果実飲料・茶飲料等の清涼飲料等の食品・飲料のいずれについても一般食品又は保健機能食品として用いることができ、飼料としてはペット、家畜、家禽、養殖魚等のいずれの給餌用途にも用いることができる。これらの飲食品又は飼料には、その製造工程又は流通過程において、肝機能障害予防改善作用がある旨の表示を付すことにより、肝機能障害予防改善作用を有さない一般の飲食品又は飼料と区別することができる。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
オゾン化油脂が有する肝機能及びメタボリックシンドロームの病態発症への生理作用を、肥満モデルラットを被検動物として動物実験により確認した。
被検動物としては、レプチン受容体の劣性変異遺伝子faのホモ接合体であるZucker(fa/fa)ラットと、野生型の優勢遺伝子ホモ接合体Zucker(+/+)ラットの5週齢の雄の個体を用いた。Zucker(fa/fa)ラットは、摂食・エネルギー代謝に関与するレプチンの受容体遺伝子の異常により、レプチンによる伝達経路が障害されており、過食、肥満、高脂血症、脂肪肝を呈するモデル動物である。5週齢雄Zucker(fa/fa)ラットと5週齢雄Zucker(+/+)ラットは、日本エスエルシー株式会社から購入した。
オゾン化油脂は、オリーブ油をオゾン化したオゾン化オリーブ油を食餌に添加、混合することにより被検動物に与えた。オゾン化オリーブ油は、120gのオリーブ油(和光純薬工業株式会社製)を3倍容のジクロロメタンに溶解し、0℃に冷却して攪拌しながら、オゾン発生器ED−OG−R6(エコデザイン株式会社製)に酸素ガスを5L/minで供給して発生させた4g/hのオゾンガスを2.5時間通気して調製した(オリーブ油の分子量を885.4、オリーブ油中のオレイン酸含有量を80%、分子内二重結合数を3として、オゾン化反応率は約64%であった)。得られたオゾニドの部分構造については、NMRにより確認した。オゾン化した後、含まれているジクロロメタンを真空乾燥によって除去してオゾン化オリーブ油試料とした。食餌は、米国立栄養研究所によるAIN−76げっ歯類標準飼料組成に準じ、表1に示す組成で調製した。Zucker(+/+)ラット及びZucker(fa/fa)ラットにそれぞれ給餌する対照食(Normal及びControl)としては、コーン油6.5%とオレイン酸を多く含むオリーブ油0.5%とを含む食餌を用い、Zucker(fa/fa)に給餌する実験食としては、低オゾン化油脂投与群(Low Ozone群;LO群)については、コーン油6.5%とオリーブ油0.45%とオゾン化オリーブ油0.05%とを含む食餌を用い、高オゾン化油脂投与群(High ozone群;HO群)については、コーン油6.5%とオゾン化オリーブ油0.5%とを含む食餌を用いた。
Figure 2013040143
肥満型のZucker(fa/fa)ラット及び野生型のZucker(+/+)ラットは、室温23±2℃、明期12時間(7〜19時)、暗期12時間(19〜翌7時)の光条件の動物室内で、食餌を19時〜翌9時の間給餌することによりそれぞれ飼育した。始めにZucker(fa/fa)ラット及びZucker(+/+)ラットをそれぞれ対照食を給餌して1週間予備飼育した後、Zucker(fa/fa)ラットについては、対照食投与群、低オゾン化油脂投与群、高オゾン化油脂投与群の3群に分けて各食餌を給餌して4週間同時飼育(pair feeding)し、Zucker(+/+)ラットについては、ポジティブコントロールとして対照食の給餌を4週間継続した。各ラットの体重及び摂食量は飼育期間中、毎日測定し、本飼育最終日に9時間絶食させた後の終体重を測定した。その結果を表2に示す。
終体重を測定した後、各ラットをジエチルエーテルにより麻酔し、腹部大動脈採血による屠殺を行って、血液、肝臓、脂肪組織を摘出した。摘出した肝臓及び脂肪組織については重量を測定した。その結果を表2に示す。血液については、静置した後、遠心分離(3000rpm,15分,4℃)を行うことにより血清を得た。ここで得られた被検ラットの肝臓、脂肪組織、血清を以下の測定試験に供した。
Figure 2013040143
各ラットの体重、摂食量、白色脂肪組織重量、肝臓重量を比較した結果、野生型ラットと比較して肥満型ラットの体重、摂食量、肝臓重量、白色脂肪組織重量が顕著に増加しており、摂食効率について有意差は認められなかった。また、終体重、摂食量、白色脂肪組織重量については、肥満型ラットの群間において差は見られなかったが、肝臓重量では、オゾン化油脂の摂食により、LO群で7%の低下傾向、HO群で19%の有意な低下が認められた。
[肝臓脂質濃度の測定]
得られた被検ラットの肝臓に含まれるトリグリセリド、コレステロール、リン脂質の各総量を測定するために、ラットから摘出した肝臓の総脂質成分をFolchらの方法(Folch J et al., J. Biol. Chem., 226, 497-509, 1957)により、以下の操作で抽出・濃縮して肝臓脂質抽出液を調製した。摘出した肝臓0.1gを7.5mLのメタノール、15mLのクロロホルムと共にホモジナイズし、その後37℃で30分加温し、クロロホルム・メタノール混合液(chloroform:methanol=2:1,v/v)を添加して25mLとした混合液を濾過した。続いて、濾液に蒸留水を約20%容加え、転倒混和し、一晩低温室(4℃)に静置した。静置後分離したクロロホルム層をアルゴンガス使用の下、エバポレーターを用いて減圧濃縮し、石油エーテルに再溶解して総量を25mLとした溶液を肝臓脂質抽出液とした。
[肝臓トリグリセリド濃度]
肝臓トリグリセリド濃度については、Fletcherらの方法(Fletcher MJ. Et al., Clin. Chim. Acta., 22, 393-397, 1968)により定量した。Zucker(fa/fa)ラットについては0.5mL、Zucker(+/+)ラットについては2mLの肝臓脂質抽出液を乾燥し、それぞれ5mLのクロロホルムと1.0gのシリカゲル(Mallinckrodt Baker社製)を添加し、シェイカーで5分間振とうした後、遠心分離(3000rpm、10分、10℃)を行った。その上清を1mL採取して乾燥した後、2mLのイソプロパノール・蒸留水混合液(isopropanol:HO=9:1,v/v)と0.6mLの5%KOH溶液(in isopropanol:HO=2:3)を加え攪拌した後、60〜70℃の水浴中で30分間加温して鹸化を行った。室温に戻した後、1mLの0.003molメタ過ヨウ素酸ナトリウムと0.5mLのアセチルアセトン溶液を加えて攪拌し、50℃の水浴中で30分間加温して発色させた。再び室温に戻した後、波長405nmにおける吸光度を測定した。その結果を表3に示す。
[肝臓コレステロール濃度]
肝臓コレステロール濃度については、コレステロールE−テストワコー(和光純薬工業株式会社製)を用いて、コレステロールオキシダーゼ・DAOS法(Allain C.C. et al., Clin. Chim. Acta., 20, 470-475, 1974)により測定した。1mLの肝臓脂質抽出液を乾燥し、10μLの10%トリトン(in isopropanol)を添加して攪拌し、続いて1.5mLの発色試薬を添加して攪拌した。その後、37℃で5分間加温し、1.5mLのクロロホルムを添加して、シェイカーで5分間振とうし、遠心分離(3000rpm,20分,10℃)を行い、その上清の波長600nmにおける吸光度を測定した。その結果を表3に示す。
[肝臓リン脂質]
肝臓リン脂質濃度については、Rouserらの方法(Fletcher MJ. et al., Clin. Chim. Acta., 22, 393-397, 1968)により定量した。0.5mLの肝臓脂質抽出液を乾燥し、1mLの70%過塩素酸を添加した後、溶液が無色になるまで180〜190℃で30〜60分間熱分解を行った。続いて、液温を室温に戻し、5mLの蒸留水と1mLの2.5%モリブデン酸アンモニウム溶液と1mLの10%アスコルビン酸水溶液とを添加して攪拌し、100℃の沸騰浴中で5分間加温して発色させた。再び室温に戻した後、波長820nmにおける吸光度を測定した。その結果を表3に示す。
Figure 2013040143
被検ラットの肝臓に含まれるトリグリセリド、コレステロール、リン脂質の総量を測定した結果、肝臓1g当たりでは、トリグリセリド濃度については、野生型と比較して肥満型において有意な増加が認められ、リン脂質濃度については、有意な低下が認められた。オゾン化油脂摂取により、トリグリセリド濃度についてはHO群で47%の有意な低下が、リン脂質濃度ではHO群で25%の有意な増加が認められた。肝臓全体では、トリグリセリド、コレステロール及びリン脂質濃度のいずれについても野生型に比べ肥満型において有意な蓄積が認められた。オゾン化油脂の摂食により、トリグリセリドの蓄積についてはHO群で57%の顕著な抑制を示した。
[血清脂質濃度及びグルコース濃度の測定]
得られた被検ラットの血清に含まれるトリグリセリド、コレステロール、リン脂質、遊離脂肪酸、グルコース濃度を測定した。
[血清トリグリセリド]
血清グリセリド濃度については、トリグリセライドE−テストワコー(和光純薬工業株式会社製)を用いて、GPO・DAOS法により、波長600nmにおける吸光度を測定して定量した。
[血清コレステロール]
血清コレステロール濃度については、コレステロールE−テストワコー(和光純薬工業株式会社製)を用いて、コレステロールオキシダーゼ・DAOS法により、波長600nmにおける吸光度を測定して定量した。その結果を表4に示す。
[血清リン脂質]
血清リン脂質濃度については、リン脂質C−テストワコー(和光純薬工業株式会社製)を用いて、コリンオキシダーゼ・DAOS法により、波長600nmにおける吸光度を測定して定量した。その結果を表4に示す。
[血清遊離脂肪酸]
血清遊離脂肪酸濃度については、NEFA C−テストワコー(和光純薬工業株式会社製)を用いて、ACS・ACOD法により、波長550nmにおける吸光度を測定して定量した。その結果を表4に示す。
[血清グルコース]
血清グルコース濃度については、グルコースCII−テストワコー(和光純薬工業株式会社製)を用いて、ムタローゼ・GOD法により、波長505nmにおける吸光度を測定して定量した。その結果を表4に示す。
Figure 2013040143
被検ラットの血清に含まれるトリグリセリド、コレステロール、リン脂質、遊離脂肪酸、グルコースを測定した結果、トリグリセリド濃度、コレステロール濃度、リン脂質濃度及び遊離脂肪酸濃度について、野生型と比較して肥満型において有意な増加が認められた。オゾン化油脂の摂食により、トリグリセリド濃度についてはHO群で顕著な上昇が、遊離脂肪酸濃度についてはLO群で13%の上昇傾向、HO群で32%の有意な上昇が、コレステロール濃度についてはLO群で14%の低下傾向、HO群で18%の有意な低下が認められた。グルコース濃度については、群間で差は認められなかった。
[血清タンパク濃度の測定]
得られた被検ラットの血清に含まれる血清プラスミノーゲン活性化抑制因子(PAI−1)、血清C反応性タンパク(C-reactive protein;CRP)、血清インスリン、血清アディポネクチン、血清単球走化活性因子1(monocyte chemoattractant protein-1;MCP−1)濃度を測定した。
[血清プラスミノーゲン活性化抑制因子(PAI−1)]
血清PAI−1濃度については、IMUCLONETMRat PAI-1 ELISA(American Diagnostica Inc.製)を用いてELISA法により測定した。その結果を表5に示す。
[血清C反応性タンパク(CRP)]
血清CRP濃度については、C-Reactive Protein ELISA Kit(Alpha Diagnostic International Inc.製)を用いてELISA法により測定した。その結果を表5に示す。
[血清インスリン]
血清インスリン濃度については、レビス インスリン−ラットT(株式会社シバヤギ製)を用いてELISA法により測定した。その結果を表5に示す。
[血清アディポネクチン]
血清アディポネクチン濃度については、マウス/ラットアディポネクチンELISAキット(大塚製薬株式会社製)を用いてELISA法により測定した。その結果を表5に示す。
[血清単球走化活性因子1(MCP−1)]
血清MCP−1濃度については、MCP-1 Rat ELISA Kit(Invitrogen製)を用いてELISA法により測定した。その結果を表5に示す。
Figure 2013040143
被検ラットの血清に含まれるPAI−1、CRP、インスリン、アディポネクチン、MCP−1濃度を測定した結果、PAI−1濃度については野生型と比較して肥満型において有意な増加が認められた。オゾン化油脂の摂食により、LO群で27%、HO群で38%の低下傾向を示した。CRP濃度、インスリン濃度及びアディポネクチン濃度については、群間に差は認められなかった。血清MCP−1濃度については、オゾン化油脂の摂食によりHO群で顕著な増加が認められた。
[肝機能障害指標酵素活性の測定]
得られた被検ラットの肝機能を、肝機能障害指標酵素としてアスパラギン酸アミノ基転移酵素(AST)活性及びアラニンアミノ基転移酵素(ALT)活性を測定することにより解析した。
[アスパラギン酸アミノ基転移酵素(AST)]
AST活性については、トランスアミナーゼCII−テストワコー(和光純薬工業株式会社製)を用いて、POP・TOOS法により、波長555nmにおける吸光度を測定して定量した。その結果を表6に示す。
[アラニンアミノ基転移酵素(ALT)]
ALT活性については、トランスアミナーゼCII−テストワコー(和光純薬工業株式会社製)を用いて、POP・TOOS法により、波長555nmにおける吸光度を測定して定量した。その結果を表6に示す。
Figure 2013040143
被検ラットのAST活性及びALT活性を測定した結果、AST活性及びALT活性の両方について、野生型と比較して肥満型で有意な増加が認められた。オゾン化油脂の摂食によりAST活性についてはLO群で6%の低下傾向、HO群で29%の有意な低下を示し、ALT活性についてはHO群で33%の低下傾向が認められた。
[肝臓トリグリセリド代謝関連酵素活性の測定]
得られた被検ラットの肝臓における肝臓トリグリセリド代謝関連酵素活性を測定した。肝臓トリグリセリド代謝関連酵素としては、脂肪酸合成酵素(Fatty Acid Synthase;FAS)、カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ(Carnitine Palmitoyltransferase;CPT)、ペルオキシソームβ酸化(Peroxisomal β-oxidation)関連酵素、ホスファチジン酸ホスホハイドロレース(Phosphatidate phosphohydrolase;PAP)を測定し、測定試料として、ラットから摘出した肝臓のホモジネートを以下の操作で調製した。摘出した肝臓2gを6倍容の0.25Mのスクロース(和光純薬株式会社製)と1mMのEDTA(片山化学工業株式会社製)を含む10mMトリス塩酸緩衝液(pH7.4)で氷冷下ホモジナイズした後、遠心分離(3000rpm,700×g,10分,4℃)を行った。続いて、その上清について遠心分離(12000rpm,10000×g,10分,4℃)を行い、ミトコンドリア画分を沈殿させた。さらにこの上清について遠心分離(40000rpm,125000×g,60分,4℃)を行い、上清の細胞質画分と沈殿したミクロソーム画分を得た。
[脂肪酸合成酵素(Fatty Acid Synthase;FAS)]
脂肪酸合成酵素活性については、Kelleyらの方法(Kelley DS et al., Biochem. J., 235, 87-90, 1986)で測定した。アセチルCoA(Sigma-Aldrich社製) 0.05mM、NADPH(オリエンタル酵母株式会社製) 0.3mM、EDTA(片山化学工業株式会社製) 0.2mMを含む100mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)に細胞質画分を添加し、30℃の下、波長340nmの吸光度を2分間計測することにより、ブランクでのNADPHの吸光度の減少を求めた。その後、最終濃度が0.2mMとなるようにマロニルCoA(Sigma-Aldrich社製)を添加して混和し、波長340nmの吸光度を3分間追跡して、次式に従い、マロニルCoA添加時に得られた反応時の吸光度の減少からブランクの吸光度の減少を差し引くことによりNADPHの減少速度を求め脂肪酸合成酵素活性を算出した。その結果を表7に示す。
脂肪酸合成酵素活性(nmol/min/mg protein)={(反応時の吸光度の減少−ブランクの吸光度の減少)/6220}×10×(反応液量mL/1000)×(1/測定時間min)×(1/タンパク質量mg)
なお、6220はNADPHのモル吸光係数である。
[カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ(Carnitine Palmitoyltransferase;CPT)]
カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ活性については、Markwellらの方法(Markwell MA, et al., J. Biol. Chem., 248, 10, 3426-3432, 1973)で測定した。パルミトイルCoA(フナコシ株式会社製) 0.0375mM、5,5´−ジチオビス(2−ニトロ安息香酸)(DTNB)(東京化成工業株式会社製) 0.25mM、EDTA(片山化学工業株式会社製) 1.25mM、トリトンX−100(和光純薬株式会社製) 0.1%を含む58mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)にミトコンドリア画分を添加し、27℃の下、波長412nmの吸光度を5分間計測することによりブランクでの還元型DTNBの増加を求めた。その後、最終濃度が1.25mMとなるようにL−カルニチン(Sigma-Aldrich社製)を添加して、総反応液量1mLでの波長412nmの吸光度を3分間追跡して、次式に従い、L−カルニチン添加時に得られた反応時の吸光度の増加からブランクの吸光度の増加を差し引くことにより、CoAの生成速度を求め、カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ活性を算出した。その結果を表7に示す。
カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ活性(nmol/min/mg protein)={(反応時の吸光度の増加−ブランクの吸光度の増加)/13600}×10×(反応液量mL/1000)×(1/タンパク質量mg)
なお、13600はCoAのモル吸光係数である。
[ペルオキシソームβ酸化(Peroxisomal β-oxidation)]
ペルオキシソームβ酸化活性については、Lazarowの方法(Lazarow PB, Methods Enzymol. Academic Press, New York, 72, 315-319, 1981)で測定した。NAD(オリエンタル酵母株式会社製)0.2mM、DTT(片山化学工業株式会社製) 1mM、牛血清アルブミン(Sigma-Aldrich社製) 75μg/mL、トリトンX−100(和光純薬株式会社製) 100μL、CoA(Sigma-Aldrich社製) 0.1mM、FAD(Sigma-Aldrich社製) 0.01mM、シアン化カリウム(片山化学工業株式会社製) 1mMを含む47mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)にミトコンドリア画分を添加し、37℃の下、波長340nmの吸光度を3分間計測することにより、ブランクでのNADHの吸光度の増加を求めた。その後、最終濃度が0.01mMとなるように1mMパルミトイルCoA(フナコシ株式会社製)を混合して、総反応液量1mLでの波長340nmの吸光度を5分間追跡して、次式に従い、パルミトイルCoA添加時に得られた反応時の吸光度の増加からブランクの吸光度の増加を差し引くことにより、NADHの生成速度を求め、ペルオキシソームβ酸化活性を算出した。その結果を表7に示す。
ペルオキシソームβ酸化活性(nmol/min/mg protein)={(反応時の吸光度の増加−ブランクの吸光度の増加)/6220}×10×(反応液量mL/1000)×(1/測定時間min)×(1/タンパク量mg)
なお、6220はNADHのモル吸光係数である。
[ホスファチジン酸ホスホハイドロレース(Phosphatidate phosphohydrolase;PAP)]
ホスファチジン酸ホスホハイドロレース活性については、Waltonらの方法(Walton, P. A. et al., Anal. Biochem., 151, 479-486, 1985)で測定した。0.9%塩化ナトリウムを用いて超音波処理により混合させたホスファチジルコリン(Sigma-Aldrich社製) 1.0mM、EDTA(片山化学工業株式会社製) 1.25mMを含む50mMトリス塩酸緩衝液(pH7.0)に最終濃度が3.25mMとなるよう塩化マグネシウム(和光純薬株式会社製)を添加した場合及び無添加の場合のそれぞれに対して、ミクロソーム画分を添加し、総容量を0.2mLとして、37℃で15分間インキュベートした。続いて、反応液に0.8mLの発色液(ラウリル硫酸ナトリウム(和光純薬株式会社製) 0.13%、アスコルビン酸 1.25%、モリブデン酸アンモニウム四水和物 0.32%を含む0.375M硫酸水溶液)を加え、45℃で20分間インキュベートすることにより反応生成物である無機リンを発色させ、波長820nmの吸光度を測定した。ホスファチジン酸(Sigma-Aldrich社製)とホスファチジルコリンが入っていない反応によりミクロソームからのリンの産生量を測定してブランクの無機リン量を求め、次式に従い、反応生成物である無機リン量を求めた。
無機リン産生量(μg)=反応によるリン産生量(ミクロソームからのリンの産生量+ホスファチジン酸とホスファチジルコリンからのリン産生量)
求めた無機リン産生量から次式に従いホスファチジン酸ホスホハイドロレース活性を算出した。その結果を表7に示す。
ホスファチジン酸ホスホハイドロレース活性(nmol/min/mg protein)=無機リン産生量×10×(1/30.97)×(1/15min)×(1/タンパク質mg)。
なお、リンの原子量を30.97とした。
Figure 2013040143
被検ラットの肝臓における肝臓トリグリセリド代謝関連酵素活性の測定の結果、脂肪酸合成酵素(FAS)、ペルオキシソームβ酸化活性、ホスファチジン酸ホスホハイドロレース活性については、野生型と比較して肥満型で有意な増加が認められた。オゾン化油脂の摂食による各酵素活性への影響は認められなかった。
[脂質排泄率の測定]
糞中脂質排泄率を池田らの方法(池田邦夫、「脂質の機能」、食品機能研究法、株式会社光琳、平成12年、P21−24)で測定した。各ラットの屠殺直前の2日間の糞を採取し、凍結乾燥した後粉砕した。0.25gを精秤し、7〜8mLあたり2滴程度の濃塩酸(和光純薬株式会社製)を滴下したヘプタン・ジエチルエーテル・精製エタノール混液(heptane:diethyl ether:purified ethanol=1:1:1、v/v)を4mL加え、1分間シェイカーで振とうし、3000rpmで10分間遠心分離した。上層を一定量回収し、ヘプタン・ジエチルエーテル・精製エタノール・脱イオン水混液(1:1:1:1、v/v、上層のみ)を4mL加え、1分間シェイカーで振とうし、3000rpmで10分間遠心分離した。続いてこの操作をもう一度繰り返し、上層を回収後、乾燥して重量を測定した。その結果を表8に示す。
Figure 2013040143
測定の結果、糞中脂質排泄率については、野生型と肥満型の群間で有意差は認められなかった。
[オゾン化油脂給餌による結果]
本発明のオゾン化油脂を摂食させることにより、被検ラットの肝臓重量が減少し、グリセリドの肝臓への蓄積が抑制された。オゾン化油脂摂食による脂肪酸合成・脂肪酸分解系酵素活性への影響は認められず、糞中脂質排泄率も変動が認められなかったのに対し、血清中のトリグリセリド濃度は上昇していたことから、オゾン化油脂がグリセリドを肝臓から血中に放出する作用を有していることが確認された。また、これとは逆に血中コレステロールは有意に低下しており、オゾン化油脂の作用はトリグリセリドのみに選択的であることが確認された。ラットの血清に含まれる炎症因子であるPAI−1、CRP、MCP−1濃度を測定した結果、摂食によりPAI−1、CRPは低下傾向を示し、MCP−1は上昇した。また、抗炎症因子であるアディポネクチンについては、血清濃度が減少した。これらの各測定結果については、単回帰分析、Tukey-Kramer法およびStudent’s t test(W.S. Gosset, Biometrika, vol. 6, no. 1, p1-25, 1908)によって検定を行い、危険率5%未満を有意差として分析した。単回帰分析の結果、トリグリセリドの肝臓への蓄積の抑制とCRP、MCP−1、アディポネクチン濃度との関連性は低く、トリグリセリドの肝臓への蓄積の抑制と正の相関を示すのは、PAI−1濃度のみであることがわかった(図1)。本発明のオゾン化油脂の肝機能障害予防改善作用が、血中のPAI−1濃度の抑制を介したものであることが確認された。

Claims (5)

  1. オゾン化油脂を有効成分として含有することを特徴とする肝機能障害予防改善剤。
  2. 血中のプラスミノーゲン活性化抑制因子(PAI−1)の濃度の上昇を抑制するために用いられる請求項1に記載の肝機能障害予防改善剤。
  3. オゾン化油脂が、オゾン化オリーブ油であることを特徴とする請求項1又は2に記載の肝機能障害予防改善剤。
  4. オゾン化油脂を有効成分として含有し、肝機能障害予防改善作用がある旨の表示が付された肝機能障害予防改善用飲食品。
  5. オゾン化油脂を有効成分として含有し、肝機能障害予防改善作用がある旨の表示が付された肝機能障害予防改善用飼料。
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