メタルハライドランプなどの高輝度放電灯は、その輝度の高さから車載用途にも用いられている。車載用途では、特に視認性の早期確保を実現するため、始動時に光束を急速に立ち上げる必要があり、放電灯の点灯直後に定格電力より過大な電力を放電灯に供給することで光束の立ち上がりを早めている放電灯点灯装置がある(例えば、特許文献1,2参照)。
図20に、従来の放電灯点灯装置1の回路構成図を示す。放電灯点灯装置1は、DC/DCコンバータ部2とインバータ部3とイグナイタ部4と制御部5とを主構成としており、直流電源E1を入力電源として放電灯Laに電力を供給することで放電灯Laを点灯させる。DC/DCコンバータ部2は、直流電源E1から印加される電源電圧Vinを昇降圧し、放電灯Laを点灯するのに必要な直流電圧V1を生成する。インバータ部3は、直流電圧V1を低周波の矩形波からなる交流電圧V2に変換する。イグナイタ部4は、放電灯Laを始動させる数10kVの高電圧を発生させる。制御部5は、DC/DCコンバータ部2の出力電圧(直流電圧V1)および出力電流(電流I1)を検出し、この検出結果から算出された出力電力が目標値となるようにDC/DCコンバータ部2を制御する。
以下に、放電灯点灯装置1の具体的な構成について説明する。
DC/DCコンバータ部2は、コンデンサC1,C2と、スイッチング素子Q1と、トランスTr1と、ダイオードD1と、スイッチング素子Q1とでフライバック型のDC/DCコンバータ回路を構成している。
直流電源E1の出力端間にスイッチS1を介してコンデンサC1が接続されており、スイッチS1がオンすると、コンデンサC1の両端間に直流電源E1から出力される直流の電源電圧Vinが印加される。コンデンサC1の両端間には、トランスTr1の一次巻線n11とnチャネルMOSFETからなるスイッチング素子Q1とが直列接続されている。また、トランスTr1の二次巻線n12の両端間にダイオードD1とコンデンサC2とが直列接続されている。そして、スイッチング制御部21がスイッチング素子Q1をオンすると、トランスTr1の一次巻線n11に電流が流れ、トランスTr1にエネルギーが蓄積される。そして、スイッチング素子Q1をオフすると、トランスTr1に蓄積されたエネルギーによって、二次巻線n12→コンデンサC2→ダイオードD1の経路で電流が流れコンデンサC2が充電される。そして、スイッチング素子Q1がオン・オフを繰り返すことで、コンデンサC2の両端間に直流電圧V1が生成される。
インバータ部3は、4つのnチャネルMOSFETからなるスイッチング素子Q2〜Q5でフルブリッジインバータ回路を構成している。DC/DCコンバータ部2の出力端間にスイッチング素子Q2,Q4からなる直列回路と、スイッチング素子Q3,Q5からなる直列回路が並列接続されており、スイッチング素子Q4,Q5が高圧側に接続され、スイッチング素子Q2,Q3が低圧側に接続されている。そして、インバータ部3は、スイッチング素子Q2,Q4の接続点と、スイッチング素子Q3,Q5の接続点とが出力端を構成している。
イグナイタ部4は、コンデンサCsと、トランスTr2と、スパークギャップSG1とで構成されている。コンデンサCsは、インバータ部3の出力端間に接続されている。このコンデンサCsと並列に、トランスTr2の一次巻線n21とスパークギャップSG1とからなる直列回路および、トランスTr2の二次巻線n22と放電灯Laとからなる直列回路が接続されている。
制御部5は、電力目標記憶部51と、最大電力制限部52と、電流目標演算部53と、誤差アンプ54とで構成されている。電力目標記憶部51は、放電灯Laに供給する出力電力目標値を記憶しており、この出力電力目標値を最大電力制限部52が取得する。そして最大電力制限部52は、取得した出力電力目標値を補正して電流目標演算部53に出力する。電流目標演算部53は、DC/DCコンバータ部2が出力する直流電圧V1を検出しており、補正後の出力電力目標値と直流電圧V2とから目標電流を算出し、誤差アンプ54に出力する。また、誤差アンプ54には、DC/DCコンバータ部2が出力する電流I1の検出結果が入力されており、目標電流と電流I1との差が生じなくなるように出力制御信号をDC/DCコンバータ部2に出力する。なお、抵抗R1を電流検出部として構成しており、電流I1の検出結果を誤差アンプ54に出力している。
次に、放電灯点灯装置1の動作について説明する。
スイッチS1がオンすると、直流電源E1からDC/DCコンバータ部2に電源電圧Vinが印加される。そして、DC/DCコンバータ部2は、スイッチング素子Q1をオン・オフすることで直流電圧V1を生成する。なお、DC/DCコンバータ部2は、制御部5から出力される出力制御信号に基づいてスイッチング素子Q1のオン時間や駆動周波数を変動することで、直流電圧V1を変動させる。
インバータ部3は、放電灯Laの始動前は、スイッチング素子Q2,Q5をオン状態に維持し、スイッチング素子Q3,Q4をオフ状態に維持する。放電灯Laの始動前は、放電灯Laが開放状態であるため、コンデンサC2の両端間に生成される直流電圧V1が上昇すると、コンデンサCsの両端電圧も上昇する。そして、直流電圧V1が上昇して所定電圧以上になると、スパークギャップSG1がブレークダウンし、トランスTr2の一次巻線n21に瞬時に電圧が印加される。それによって、トランスTr2の二次巻線n22には、一次巻線n21に印加される電圧の巻数比倍の高電圧(数10kV程度)が印加される。この高電圧により放電灯Laがブレークダウンする。その瞬間にDC/DCコンバータ部2からスイッチング素子Q2,Q5を介して電流が流れ、放電灯Laがアーク放電に移行して放電灯Laが始動する。
放電灯Laの始動後は、スイッチング素子Q2〜Q5を所定時間間隔で交番させることで交流電圧V2を生成し、放電灯Laに供給する。また、制御部5は、DC/DCコンバータ部2の出力電力が出力電力目標値と一致するように、DC/DCコンバータ部2のフィードバック制御を行う。それによって、放電灯Laの安定点灯を実現している。
また、放電灯点灯装置1は、放電灯Laの光束の立ち上がり性能を確保しつつ、光束のオーバーシュートやアンダーシュートを防ぐため、放電灯Laの温度上昇に応じて出力電力目標値を変動させている。電力目標記憶部51は、図21に示す目標電力カーブK1を記憶している。この目標電力カーブK1は、放電灯Laの始動後の時間に対する出力電力目標値を示している。目標電力カーブK1は、放電灯Laが始動した時間をt0とした場合、時間t0から時間t1までの期間TAの間は、放電灯Laの定格電力Ws0の倍以上の電力を出力電力目標値としている。以降、期間TAにおける出力電力目標値を最大電力目標値と称し、ここでは最大電力目標値に放電灯Laの許容最大電力値Wp0(70〜90W程度)が設定されている。放電灯Laの始動直後は、放電灯Laに大きな電力を供給することによって、放電灯Laの光束を急速に立ち上がらせる。なお、この期間TAは4秒間程度が望ましい。
そして、時間t1から時間t2までの期間TBの間は、放電灯Laの光束がオーバーシュートやアンダーシュートを起さないように、出力電力目標値を最大電力目標値Wp0から滑らかに低減して定常電力目標値に漸近させる。ここでは、定常電力目標値に放電灯Laの定格電力Ws0(35W)が設定されている。なお、この期間TBは約40〜50秒程度が望ましい。そして、時間t2以降の期間TCは、出力電力目標値を定常電力目標値Ws0に維持することで、放電灯Laを安定点灯させる。
なお、上述した制御は、放電灯Laが冷えた状態から始動(以降、初始動と称す)させる場合のみ行う。放電灯Laを短期間消灯した直後における放電灯Laの温度が高い状態で、初始動(コールドスタート)時の制御を行うと、期間TA,TBにおいて放電灯Laが過剰発光する。そこで、点灯していた放電灯Laを短期間消灯した直後の始動(以降、再始動と称す)を行う場合は、以下の制御を行う。
図22に示すように、放電灯Laの消灯時間に応じて、目標電力カーブK1における期間TA,TB中の時間ta,tbからスタートし、以降は目標電力カーブK1に沿って出力電力目標値を変動させる。それによって、再始動後に放電灯Laに供給される電力が抑えられ、再始動時の過剰発光を抑制している。
すなわち、図22に示すように、再点灯前の消灯時間が比較的長い場合、目標電力カーブK1の時間taにおける出力電力目標値Waから開始し、再点灯前の消灯時間が比較的短い場合、目標電力カーブK1の時間tb(>ta)における出力電力目標値Wb(<Wa)から開始する。それによって、再点灯前の消灯時間が短い、つまり、放電灯Laの温度が高いほど放電灯Laに供給される電力が抑制される。
なお、再始動時は、例えばコンデンサの充放電回路で構成されるタイマ回路を用いて、再始動時のコンデンサの両端電圧(充電電荷量)に応じて放電灯Laに供給する電力を決定する。
また、放電灯点灯装置1を車載用途等の高温環境下で使用し、放電灯点灯装置1の周囲温度が高い場合や電源電圧Vinが低下した場合は、回路損失および構成部品の熱ストレス増加による回路破壊を起すおそれがある。これを防止するために、電源電圧Vinおよび周囲温度Taを検出し、この検出結果に基づいて最大電力目標値を低減させる制御を行う(例えば、特許文献3参照)。
図20に示す放電灯点灯装置1は、電源電圧検出部6と温度検出部7とを備えている。電源電圧検出部6は、直流電源E1からDC/DCコンバータ部2に印加される電源電圧Vinを検出し、最大電力制限部52に出力している。また、温度検出部7は、放電灯点灯装置1の周囲温度Taを検出し、最大電力制限部52に出力している。なお、温度検出部7は、放電灯点灯装置1の温度を検出するように構成してもよい。
そして、最大電力制限部52は、電源電圧検出部6と温度検出部7との検出結果とに基づいて最大電力目標値を許容最大電力値Wp0から低減させる。
例えば、図23に示すように、周囲温度TaがTa0(常温)の場合における目標電力カーブをK1とし、周囲温度TaがTa0からTa1に上昇した場合における目標電力カーブをK1aとする。最大電力制限部52は、周囲温度TaがTa0からTa1に上昇した場合、最大電力目標値をWp0よりも低いWpcに補正し、時間tcまでWpcを維持する。そして、時間tc以降は、目標電力カーブK1に沿って出力電力目標値を変動させる。また、周囲温度TaがTa2(>Ta1)に上昇した場合における目標電力カーブをK1bとする。この場合、最大電力制限部52は、最大電力目標値をWp0よりも低いWpd(<Wpc)に補正し、時間tdまでWpdを維持する。そして、時間td以降は、目標電力カーブK1に沿って出力電力目標値を変動させる。
しかし、図23に示すように、周囲温度Taの上昇に応じて最大電力目標値のみを低減すると、低減後の最大電力目標値を維持する期間が長くなる(t1<tc<td)。最大電力目標値を維持する時間が長くなれば、回路損失や構成部品の熱ストレスは増加傾向になる。
そこで、最大電力目標値だけでなく、図24に示すように全ての期間TA〜TCにわたって出力電力目標値を目標電力カーブK1から低減した目標電力カーブK2を生成する。そして、目標電力カーブK2に沿って放電灯Laに供給する電力を決定する。なお、図24における目標電力カーブK2の最大電力目標値は、より厳しい周囲温度条件(例えば、車載用途であれば周囲温度Ta=105℃付近)において放電灯Laを正常に点灯始動可能な下限電力Wp1(50W程度)付近に設定される。さらに、目標電力カーブK2の定常電力目標値は、放電灯Laの定格電力Ws0より低いWs1(30W程度)に設定される。それによって、熱ストレスを抑制しつつ放電灯Laの初始動時の始動性能を確保することができる。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
(実施形態1)
本実施形態の放電灯点灯装置1の回路構成図を図1に示す。なお、図20に示した従来の放電灯点灯1と同様の構成には、同一符号を付して説明は省略する。なお、DC/DCコンバータ部2とインバータ部3とイグナイタ部4とが本願発明の駆動回路に相当し、制御部5が本願発明の制御回路に相当する。
本実施形態の放電灯点灯装置1の制御部5は、電力目標記憶部51と最大電力制限部52と電流目標演算部53と誤差アンプ54と下限電力制限部55と消灯時間計測部56とで構成されている。下限電力制限部55は、最大電力制限部52と電流目標演算部53との間に介挿されており、放電灯Laを始動させた直後に放電灯Laに供給する電力の出力電力目標値の下限値を設定している。消灯時間計測部56は、放電灯Laが消灯してから再点灯するまでの消灯時間を計測している。
電力目標記憶部51は、図2に示すように、放電灯Laを点灯始動させた後に、放電灯Laに供給する電力の目標値(出力電力目標値)の変動特性を示す目標電力カーブK1を記憶している。
目標電力カーブK1は、放電灯Laを点灯始動させた直後に供給する電力(最大電力)から、放電灯Laの安定点灯時に供給する電力(定常電力)に向かって、放電灯Laの点灯時間に応じて低減するように設定されている。目標電力カーブK1は、期間TAにおいて最大電力を維持し、期間TBにおいて放電灯Laの点灯時間に応じて最大電力から定常電力に向かって低減し、期間TCにおいて定常電力を維持するように出力電力目標値が変動している。なお、目標電力カーブK1において、最大電力の目標値(以降、最大電力目標値と称す)には放電灯Laの許容最大電力値であるWp0(70〜90W程度)が設定され、定常電力の目標値(以降、定常電力目標値)には放電灯Laの定格電力値であるWs0(35W)が設定されている。
また、消灯時間計測部56は、放電灯Laが消灯してから点灯するまでの消灯時間を計測しており、従来の放電灯点灯装置と同様に、この消灯時間に応じて出力電力目標値の変動を開始する点が変動する。例えば、図2において、放電灯Laの初始動または消灯時間が長い場合、時間t0から目標電力カーブK1に沿って出力電力目標値が変動する。しかし、放電灯Laの再始動で消灯時間が短い場合、時間taから目標電力カーブK1に沿って出力電力目標値が変動する。なお、この場合における最大電力目標値はWaとなる。
最大電力制限部52は、温度検出部7の検出値(周囲温度Ta)および電源電圧検出部6の検出値(電源電圧Vin)に基づいて、電力目標記憶部51から取得した出力電力目標値(目標電力カーブK1)を補正する。具体的には、目標電力カーブK1における最大電力目標値を補正した第1の目標値Wp1を生成する。以下に、第1の目標値Wp1の生成について説明する。
最大電力制限部52は、図3に示すように、温度検出部7の検出値(周囲温度Ta)を変数とする関数を用いて周囲温度Taに応じた最大電力目標値の低減量(以降、第1の低減量Wtと称す)を決定する。周囲温度Taが温度Tth1以下である場合、第1低減量Wtは0となる。また、周囲温度Taが温度Tth1を上回るにつれて第1の低減量Wtが増加し、温度Ta1に達すると第1の低減量WtはWt1となる。
また、最大電力制限部52は、図4に示すように、電源電圧検出部6の検出値(電源電圧Vin)を変数とする関数を用いて電源電圧Vinに応じた最大電力の低減量(以降、第2の低減量Wvと称す)を決定する。電源電圧Vinが電圧Vth1以上である場合、第2の低減量Wvは0となる。また、電源電圧Vinが電圧Vth1を下回るにつれて第2の低減量Wvが増加し、電圧Vin1に達すると第2の低減量WvはWv1となる。
電力目標記憶部51には最大電力目標値として放電灯Laの許容最大電力値Wp0が設定されており、最大電力制限部52は、下記式(1)に示すように、許容最大電力値Wp0から第1,第2の低減量Wt,Wvを差し引くことで第1の目標値Wp1を生成する。
Wp1=Wp0−Wt−Wv (1)
なお、上記演算例は放電灯Laの初始動で最大電力目標値が許容最大電力値Wp0の場合であって、再始動で、例えば最大電力目標値がWaの場合、第1の目標値Wp1はWaから第1,第2の低減量Wt,Wvを差し引いた値(Wp1=Wa−Wt−Wv)となる。
また、本実施形態の最大電力制限部52は、目標電力カーブK1の最大電力目標値だけでなく、定常電力目標値も上記同様に補正し、目標電力カーブK1における定常電力目標値であるWs0を低減させた第2の目標値Ws1を生成する。すなわち、本実施形態では、図2に示すように、全ての期間TA〜TCにわたって、目標電力カーブK1を周囲温度Ta,電源電圧Vinに基づいて補正し、第1の目標値Wp1を始点とし、第2の目標値Ws1を終点とする目標電力カーブK2を生成する。なお、図2における目標電力カーブK2は、周囲温度Taが温度Tth1を超えて放電灯点灯装置1の動作周囲温度の最大値まで上昇した場合における出力電力目標値の変動特性を示している。なお、目標電力カーブK2における最大電力目標値(第1の目標値Wp1)は、Wptmax(<Wp0)に設定され、定常電力目標値(第2の目標値Ws1)は、Wstmax(<Ws0)に設定されている。
そして、制御部5は、周囲温度Ta,電源電圧Vinに応じて目標電力カーブK1を低減した目標電力カーブK2に沿った電力が放電灯Laに供給されるように、フィードバック制御を行う。
なお、定格電力Ws0=35Wの放電灯La(高輝度放電灯)を点灯する車載用途の前照灯に放電灯点灯装置1を適用する場合、周囲温度Taは85〜105℃まで上昇する。放電灯Laの安定点灯始動および構成部品の熱ストレス等を考慮して、Wptmaxは45〜55W、Wstmaxは25〜35Wに設定される。
このように、全ての期間TA〜TCにわたって目標電力カーブK1を補正した目標電力カーブK2を用いて放電灯Laに供給する電力を決定するので、電源電圧Vinが低い場合や周囲温度Taが高い場合においても、回路部品の熱ストレスを抑制しつつ、放電灯Laの初始動時の始動性能を確保することができる。また、本実施形態の放電灯点灯装置1は、放電灯Laの再始動に関しては、放電灯Laの状態(再点灯前の消灯時間)に応じて、目標電力カーブK2の途中から出力電力目標値の変動を開始することで、放電灯Laの過剰発光を防いでいる。
また、本実施形態の放電灯点灯装置1は、下限電力制限部55を備えており、下限電力制限部55には下限電力カーブK3が設定されている(図2参照)。下限電力カーブK3とは、いかなる電源電圧Vin条件,周囲温度Ta条件、放電灯Laの状態(再点灯前の消灯時間)に関わらず、点灯始動時における放電灯Laへの投入電力はこれを下回らないように設定された目標電力カーブの下限値である。
下限電力カーブK3における最大電力目標値は、第1の閾値Wpminに設定されており、この第1の閾値Wpminは、少なくとも放電灯Laの再始動時において安定点灯始動が可能な下限の電力値に設定されている。すなわち、下限電力カーブK3は、いかなる電源電圧Vin条件,周囲温度Ta条件においても構成部品の熱ストレスによる回路破壊を防止可能な値に設定されており、第1の閾値Wpminは、放電灯Laの定格電力Ws0よりも大きい値で、かつ定格電力Ws0の1.2倍以下に設定するのが望ましい。
また、下限電力カーブK3における定常電力目標値(第2の閾値Wsmin)は、Wstmaxに設定されている。したがって、本実施形態では、周囲温度Taが放電灯点灯装置1の動作周囲温度の最大値である場合における目標電力カーブK2の定常目標電力値Wstmaxと同一の値に設定されている。したがって、図2に示すように、下限電力カーブK3は、時間t11を始点とする目標電力カーブK2と重なる。
そして、下限電力制限部55は、周囲温度Ta,電源電圧Vinに基づいて電力目標カーブK1を補正した電力目標カーブK2と、下限電力カーブK3とを比較し、放電灯Laに供給する電力の目標値を決定する。
例えば、再点灯前の消灯時間が長い場合や、周囲温度Taが低く、電源電圧Vinが高い場合は、図5に示すように、第1の目標値Wp1が第1の閾値Wpminよりも大きく、目標電力カーブK2が下限電力カーブK3を上回る。この場合、下限電力制限部55は目標電力カーブK2に沿った出力電力目標値を電流目標演算部53に出力する。そして、以降は、従来の放電灯点灯装置1と同様に、目標電力カーブK2に沿った出力電力が放電灯Laに供給されるように、DC/DCコンバータ部2のスイッチング素子Q1を駆動して放電灯Laへの投入電力を調整する。すなわち、目標電力カーブK2が下限電力カーブK3を上回る場合、最大電力値に第1の目標値Wp1が設定され、定常電力値に第2の目標値Ws1が設定される。
一方、再点灯前の消灯時間が短い場合や、周囲温度Taが高く、電源電圧Vinが低い場合は、図6に示すように、第1の目標値Wp1が第1の閾値Wpminよりも小さくなる。すなわち、目標電力カーブK2が下限電力カーブK3を下回る。この場合、下限電力制限部55は下限電力カーブK3に沿った出力電力目標値を電流目標演算部53に出力する。そして、上記同様に、下限電力カーブK3に沿った出力電力が放電灯Laに供給されるように、DC/DCコンバータ部2のスイッチング素子Q1を駆動して放電灯Laへの投入電力を調整する。すなわち、目標電力カーブK2が下限電力カーブK3を下回る場合、最大電力値に第1の閾値Wpminが設定され、定常電力値に第2の閾値Wsminが設定される。
このように、本実施形態では、放電灯Laの点灯始動時には少なくとも第1の閾値Wpmin以上の電力が供給されることとなる。それによって、電源電圧Vinが低い場合や周囲温度Taが高い場合においても、放電灯Laの始動性を確保することで放電灯Laの安定点灯始動が可能になると共に、放電灯Laの再始動時に熱ストレスによる回路破壊を防止することができる。
また、下限電力カーブK3は所定値のため、下限電力カーブK3の初期値である最大電力目標値(第1の閾値Wpmin)を初始動時の目標電力カーブK2における期間TA〜TBの途中の点にする必要はない(図2参照)。したがって、図7に示すように、下限電力カーブK3を、最大電力目標値(第1の閾値Wpmin)を所定期間T11維持するようなカーブに設定してもよい。この期間T11は、放電灯Laの点灯始動直後は特性が不安定であるため、点灯直後の電力変化による立ち消えや最大電力から定常電力へ電力を低減する際に発生するちらつきを防止するために設定される。
次に、放電灯点灯装置1を定格電力Ws0=35WのHIDランプ(放電灯La)を点灯する車載用途の前照灯に適用する場合について説明する。
近年、環境負荷軽減のために水銀フリータイプのHIDランプの採用が進んでおり、従来の水銀封入タイプのHIDランプと定格電力は同じ35Wだが、定格電圧が1/2,定格電流が2倍となっている。また、水銀は、期間TA,TBにおける光束立ち上がりへの寄与度が大きいため、水銀フリーHIDランプは、より大きな電力を投入しないと光束の立ち上がりが遅いという課題がある。したがって、放電灯Laの規格(推奨値)として水銀封入タイプのHIDランプの許容最大電力値Wp0が60〜70W程度に設定されているのに対し、水銀フリータイプのHIDランプの許容最大電力値Wp0は70〜90Wに設定されている。
なお、放電灯Laは点灯を長期間継続すると、電極の変形,磨耗の進行によって徐々にランプ電圧が上昇し、ランプ電圧が所定値以上(水銀フリータイプのHIDでは50〜70V程度、水銀封入タイプのHIDでは90〜110V程度)になると、点灯始動および点灯維持できない状態となる。すなわち、放電灯Laの寿命となる。また、ランプ電圧が上昇するほど、安定した放電を維持するのが難しくなり、極性反転時の休止期間が長くなることによるちらつきや、点灯始動時の不点,立ち消えを起しやすくなる。したがって、放電灯に投入する電力が増えるほど、電極の変形,磨耗が加速するため、放電灯Laへの投入電力は許容最大電力Wp0以下に制御する必要がある。本実施形態の放電灯点灯装置1は、いずれのHIDランプ(放電灯La)を点灯する装置にも適用可能であり、以上の理由により許容最大電力値Wp0はHIDランプの種類に応じて60〜90Wに設定される。
また、車載用途の前照灯では、とりわけ走行中における安全性の確保のため、前照灯用スイッチをオンしてから、瞬時に光束を立ち上げる必要がある。光束の立ち上がり性能に関する放電灯点灯装置1への要求性能として、点灯始動開始から4秒後時点での安定点灯時の照度に対する相対照度が所定以上であることが求められる。これに、制御回路のばらつき等を考慮し、放電灯La点灯始動時において最大電力を維持する時間は5秒程度に設定される。
下限電力カーブK3でランプを点灯するのは、電源電圧Vinが低くかつ周囲温度Taが高い状態である。したがって、下限電力カーブK3を用いて放電灯Laへの投入電力を決定する場合、電源電圧Vinが高いもしくは周囲温度Taが低い状態に比べ、放電灯Laへの投入電力が低くなるものの、光束を極力速やかに立ち上げるために最大電力(第1の閾値=Wpmin)を維持する時間を5秒程度に設定するのが望ましい。一方で、電源電圧Vinが低くかつ、周囲温度Taが高い状態では回路損失が増加する傾向にあり、最大電力(Wpmin)を長時間維持することで回路損失の増加による放電灯点灯装置1の破壊などが懸念される。また、電源電圧Vinが低くかつ、周囲温度Taが高い状態は長時間継続するものではなく特殊な状態であることから、光束の立ち上げ性能よりも回路破壊を防止することを優先するため、図7における期間T11の最大値は5秒以下に設定される。
次に、図8(a)〜(c)に示すように、車載用途の前照灯に用いられる高輝度放電灯を点灯する際、点灯直後に速やかに放電を安定させるために、電極温度を短期間で上昇させる電極過熱期間TEを設ける。直流電源E1が投入されると放電灯Laに供給される電圧(放電灯電圧)が上昇し、時間t0においてスパークギャップSG1がブレークダウンすることで放電灯Laが始動する(無負荷期間TD)。そして、図8(b)(c)に示すように、電極加熱期間TEは、所定の電力(放電灯電圧,放電灯電流)を放電灯Laに供給することで、放電灯Laの電極を加熱する。そして、光束立ち上げ期間TFにおいて、放電灯Laに供給する交流電圧を上昇することで光束を立ち上げ、安定点灯期間TG(期間TC)において、放電灯Laに所定の交流電力を供給することで放電灯Laを安定点灯させる。
電極加熱期間TEおよび、電極加熱期間TE中に放電灯Laに供給する放電灯電流の電流値は、放電灯Laの状態に応じて可変するが、放電灯Laの規格値(推奨値)として、半周期毎に電流時間積40〜70mAsのエネルギーが必要とされる。なお、初始動ほど高い点灯始動電流が必要なため、電極加熱期間TEにおける放電灯電流値が高く(時間が短く)設定され、再始動時の消灯時間が短いほど放電灯電流値が低く(時間が長く)設定される。また、本実施形態では、電源電圧Vinの低下、周囲温度Taの上昇によって放電灯Laへの投入電力を低減しているため、再始動も含めると電極加熱期間TEにおける放電灯電流の下限値は1.0〜1.3A程度に設定される。
ただし、この電極加熱期間TEは放電灯Laの放電が不安定で、急なインピーダンス等の変化により、短期間ではあるが放電灯電流が1.0Aを下回る場合がある。この場合、放電灯Laの立ち消えが発生する可能性が高いため、電流時間積を数〜数十ms程度増加することで電極温度を上昇させ、放電を安定させる制御を行う。したがって、電流時間積は最大で80〜90mAsとなり、放電灯電流の下限値が1.0A程度であるため、電極加熱期間TEは半周期で最大100ms(1周期で200ms)程度となる。さらに、放電灯Laの放電が不安定な電極過熱期間TEに放電灯Laへの投入電力を変化させると、ちらつきや立ち消え、消灯の要因になるため、この期間はランプ電力が一定となるように制御する必要がある。
以上より、本実施形態では、下限電力カーブK3における最大電力目標値(第1の閾値Wpmin)を維持する期間T11を200ms以上に設定している(図7参照)。
次に、第1の閾値Wpminについて説明する。
第1の閾値Wpminは、寿命末期の放電灯Laを含めて安定した点灯始動特性を得るために極力高い値に設定するのが望ましい。しかし、電源電圧Vinが低く、かつ周囲温度Taが高い状態では回路損失が増加する傾向にあり、第1の閾値Wpminを高い値に設定することで回路損失の増加による放電灯点灯装置1の破壊等が懸念されるため、極力低い値に設定する必要がある。
そこで、3000時間程度点灯させた寿命末期バルブに関して、図9に示すような電力カーブK4を用いて点灯確認(試験回数200回)を実施した。なお、図9に示す電力カーブK4は最大電力目標値(第1の閾値Wpmin)の維持時間がなく、すぐに出力電力目標値を低減させるカーブとした上で、放電灯Laが正常に点灯するのに必要な最大電力目標値(第1の閾値Wpmin)の値がどの程度かを確認した。
第1の閾値Wpminが30W程度の場合、放電灯Laが正常に点灯する確率は再点灯前の消灯時間によっても変化するが30〜65%であった。次に、第1の閾値Wpminが35〜40W程度の場合、放電灯Laの点灯確率は100%であった。
以上より、下限電力カーブK3は第1の閾値Wpminの維持時間(期間T11)があるため、第1の閾値Wpminを40Wに設定するのが望ましい。それによって、放電灯Laに投入する電力は少なくとも40Wよりも大きくなるため、放電灯Laの始動性能を確保し放電灯Laを安定して点灯始動することが可能である。よって、第1の閾値Wpminは放電灯Laの定格電力Ws0(35W)に対して1.2倍程度の値にするのが望ましい。
(実施形態2)
実施形態1では下限電力カーブK3は、放電灯Laの点灯始動開始(時間t0)から安定点灯(時間t2)に至るまでの期間TA〜TCに設定されている。しかし、本実施形態では図10に示すように、放電灯Laの点灯始動開始から安定点灯に至る直前までの期間TA,TBのみに設定することに特徴を有するものである。
放電灯点灯装置1の構成部品の発熱が最大となる期間TAおよび、放電灯Laの放電が不安定で立ち消えやちらつきが発生しやすい期間TA〜TBのみに下限電力カーブK3を設定する。それによって、安定点灯期間(期間TC)には放電灯Laへの投入電力を変更することができる。
実施形態1では、第1の目標値Wp1が第1の閾値Wpminよりも小さい場合、すなわち電力目標カーブK2が下限電力カーブK3を下回る場合、放電灯Laへの投入電力は安定点灯期間に至るまでの期間TA〜TCにわたって下限電力カーブK3に制限される。しかし、本実施形態では、下限電力カーブK3を期間TA,TBにのみ設定している。それによって、比較的回路損失の低い安定点灯期間TG(期間TC)において、直流電源E1の電源電流の低下により電源電圧Vinが上昇した場合や、放電灯点灯装置1の発熱量低下により周囲温度Taが低下した場合に定常電力を増加することが可能となる。それによって、放電灯Laをより安定点灯することができる。
さらに、電力目標カーブK1と下限電力カーブK3との比較期間を短くすることが可能であり、放電灯点灯装置1の制御応答速度を高め、制御回路を簡素化することができる。
また、下限電力カーブK3の設定期間は期間TBの終点(時間t2)まで設定する必要はなく、期間TB内における任意の時間までの設定でもよい。また、下限電力カーブK3に、最大電力目標値の維持時間(期間TA)が設定されていない場合でも同様である。
また、図11に示すように放電灯点灯装置1の回路損失が最大となる期間(期間TA)のみ下限電力カーブK3を設定してもよい。それによって、期間TBにおいても放電灯Laへの投入電力を増加し放電をより安定にすることができると共に、光束の立ち上げをより早めることができる。
また、図12に示すように、期間TA,TBにおいて所定期間が経過する毎に段階的に出力電力目標値を低減するように下限電力カーブK3を設定してもよい。それによって、上記同様の効果を得ることができる。さらに、目標電力カーブK2と下限電力カーブK3との比較をより容易にすることで放電灯点灯装置1の制御応答速度をさらに高めることができる。
(実施形態3)
実施形態1,2で示した下限電力カーブK3は、放電灯Laの状態(再点灯前の消灯時間)に関わらず、目標電力カーブK2と下限電力カーブK3とを比較し、放電灯Laへの投入電力を決定する制御を行っている。しかし、本実施形態では、再始動における再点灯前の消灯時間が所定時間以上の場合のみ目標電力カーブK2と下限電力カーブK3との比較を行う。
図13に示すように、再始動時には点灯前の消灯時間が長いほど点灯開始時に放電灯へ投入する電力は高くなる。なお、図13において、K2は初始動時の目標電力カーブであり、K2a,K2b,K2c,K2dは再始動時の目標電力カーブであり、K2a〜K2dの順に点灯前の消灯時間が短い。目標電力カーブK2dは、点灯前の消灯時間が短く、下限電力カーブK3を下回っている。図13に示すように、初始動時や消灯時間が比較的長い再始動時である目標電力カーブK2,K2a,K2b,K2cは、下限電力カーブK3を下回ることはない。
したがって、本実施形態では、消灯時間に応じて目標電力カーブK2と下限電力カーブK3との比較を行うか否かを決定し、消灯時間が所定時間以上の場合のみ目標電力カーブK2と下限電力カーブK3との比較を行う。
本実施形態の放電灯点灯装置1は、図14に示す消灯時間計測部56(タイマ回路)を用いて消灯時間toffを計測する。消灯時間計測部56は、抵抗R2,R3とスイッチS2とコンデンサC3とで構成されており、図示しない基準電圧生成部とグランドとの間に、抵抗R2とスイッチS2と抵抗R3とからなる直列回路が接続され、抵抗R3と並列にコンデンサC3が接続されている。スイッチS2は、放電灯Laが点灯中はオンしており、放電灯Laが消灯中はオフする。したがって、放電灯Laの点灯期間はコンデンサC3が充電され、基準電圧Vccを抵抗R2,R3で分圧した制御回路5用の電源電圧VTがコンデンサ電圧Vc3の最大値となる。そして、放電灯Laが消灯(スイッチS2がオフ)するとコンデンサ電圧Vc3が低減し、このコンデンサ電圧Vc3を検出することで、点灯前の消灯時間toffを計測することができる。なお、上記消灯時間計測部56の構成は、一例であって、コンデンサ電圧Vc3の最大値が基準電圧Vccとなるように構成してもよい。
図15に示すように、コンデンサ電圧Vc3は消灯時間toffが増加するにつれて低減し、消灯時間toff1におけるコンデンサ電圧Vc3は電圧Vc3thとなる。消灯時間がtoff1よりも短い場合、目標電力カーブK2が下限電力カーブK3を下回っている可能性があると判断する。したがって、本実施形態では、放電灯Laの点灯始動時にコンデンサ電圧Vc3を検出し、コンデンサ電圧Vc3が電圧Vc3thを上回っている場合、消灯時間toffがtoff1よりも短いと判断し、目標電力カーブK2と下限電力カーブK3とを比較する。また、コンデンサ電圧Vc3が電圧Vc3thを下回っている場合、消灯時間toffがtoff1よりも長いと判断し、目標電力カーブK2と下限電力カーブK3との比較を行わない。
なお、上記消灯時間計測部56は、従来の放電灯点灯装置1においても、再点灯時における目標電力カーブK2の始点を決定するために用いており、上記制御を行うために回路部品を追加する必要はない。
このように、本実施形態では、消灯時間toffを計測し、消灯時間toffが短く、目標電力カーブK2が下限電力カーブK3を下回る可能性がある場合にのみ、目標電力カーブK2と下限電力カーブK3との比較を行う。したがって、消灯時間toffが時間toff1より長い場合、目標電力カーブK2と下限電力カーブK3との比較を行わないので、放電灯点灯装置1の制御応答速度を高め、制御回路を簡素化できる。
(実施形態4)
放電灯点灯装置1を図1のように構成した場合、図16(a)〜(c)に示すように、放電灯Laが点灯始動後において、放電灯Laに最大電力を供給している時(期間TA)には直流電源E1の電源電流が高くなる。また、DC/DCコンバータ部2の入力段に設けられたコンデンサC1に印加されるコンデンサ電圧Vc1は、線路やスイッチS1のインピーダンスによる電圧降下によって、電源電圧Vinよりも低くなる。電源電流が大きいほど電圧降下が大きく、電源電圧Vinが低い場合や周囲温度Taが高い場合には回路損失が増加し、放電灯Laの点灯始動時にコンデンサ電圧Vc1はより低下する。
また、図16(a)〜(c)の破線に示すように、周囲温度Taが異常に上昇した場合や、電源電圧Vinが異常に低い場合、下限電力カーブK3に沿った電力を放電灯Laに供給すると以下の問題がある。放電灯Laに供給する最大電力を維持しようとすると、電源電流のさらなる増加によって電圧降下が増加し、回路損失が増加する結果、構成部品の発熱量が増大し、放電灯点灯装置1の破壊に至る場合がある。さらに、コンデンサ電圧Vc1が下限値Vminに達するおそれがある。
そこで、本実施形態では、放電灯点灯装置1を図17に示すように構成している。下限電力制限部55に電源電圧検出部6および温度検出部7の各検出値を出力する。そして、下限電力制限部55は、周囲温度Ta,電源電圧Vinに基づいて、下限電力カーブK3を低減させる。具体的には、周囲温度Taが温度Tth2以上に上昇した場合(図3参照)や、電源電圧Vinが電圧Vth2を下回る場合(図4参照)、下限電力制限部55は、下限電力カーブK3が電力目標カーブK2を下回るように低減させる。例えば、下限電力カーブK3が全ての期間TA〜TCにわたって、出力電力目標値が0となるように下限電力カーブK3を設定することで、下限電力カーブK3を無効化する。図18の破線は低減前の下限電力カーブK3を示しており、周囲温度Taが温度Tth2を上回る場合または、電源電圧Vinが電圧Vth2を下回る場合、低減前の下限電力カーブK3を下回る電力目標カーブK2を用いて放電灯Laに供給する電力を決定する。なお、温度Tth2は、放電灯点灯装置1の動作周囲温度の上限値であり、電圧Vth2は、放電灯Laの点灯始動動作を可能とする下限値である。
このように、本実施形態では、電源電圧Vinが電圧Vth2以下や、周囲温度Taが温度Tth2以上である場合、下限電力カーブK3を一時的に無効化し、第2の目標カーブK2を用いて放電灯Laに供給する電力を決定する。それによって、電源電圧Vinが異常に低下した場合や、周囲温度Taが異常に上昇した場合でも、回路損失を抑制し、放電灯点灯装置1の破壊を防止することができる。
なお、図17では、直流電源E1の代わりに交流電源E2とAC/DCコンバータ部9とで直流電源を構成している。なお、AC/DCコンバータ部9は、フィルタ回路と整流平滑回路とブーストコンバータとが組み合わされた周知の回路であるので、詳細な説明は省略する。また、DC/DCコンバータ2aは、昇圧チョッパ回路を構成しており、周知の回路であるので、詳細な説明は省略する。なお、直流電源およびDC/DCコンバータは上記構成に限定するものではなく、いかなる構成でも適用可能である。
なお、本実施形態では、下限電力制限部55が最大電力制限部52に下限電力カーブK3を出力し、最大電力制限部52が、目標電力カーブK2と下限電力カーブK3とを比較し、放電灯Laに供給する電力を決定するように構成している。
(実施形態5)
本実施形態の放電灯点灯装置1は、実施形態4と同一構成である(図17参照)。
本実施形態の放電灯点灯装置1は、電力目標カーブK2と下限電力カーブK3との比較を、周囲温度Taが温度Tth3以上かつ、電源電圧Vinが電圧Vth3以下の場合にのみ行う。なお、図3に示すように、温度Tt3は温度Tth1と温度Tth2との間の温度に設定され、図4に示すように、電圧Vth3は電圧Vth1と電圧Vth2との間の電圧に設定される。
実施形態1〜3では、周囲温度Taや電源電圧Vinに関わらず電力目標カーブK2と下限電力カーブK3との比較を行うが、上述したように、電力目標カーブK2が下限電力カーブK3を下回るのは、周囲温度Taが高く電源電圧Vinが低い場合のみである。
そこで、本実施形態では、電力目標カーブK2と下限電力カーブK3との比較が必要ない条件である周囲温度Taが温度Tth3より低くかつ、電源電圧Vinが電圧Vth3より高い場合は、電力目標カーブK2と下限電力カーブK3との比較を行わない。それによって、放電灯点灯装置1の制御応答速度を高め、制御回路を簡素化することができる。
また、実施形態3で説明したように、消灯時間toffが所定時間toff1より短い場合にのみ、電力目標カーブK2と下限電力カーブK3との比較を行う条件を合わせて行っても良い。それによって、放電灯点灯装置1の制御応答速度をさらに高めることができる。
(実施形態6)
本実施形態の前照灯10および車両11は、実施形態1〜3のうちいずれか1つの放電灯点灯装置1を備えている。
図19は、実施形態1〜5のうちいずれかの放電灯点灯装置1と、この放電灯点灯装置1によって点灯される放電灯Laとで構成される前照灯10および、この前照灯10を備える車両11の概略外観図である。Lowビームスイッチ電源12から車両11の左右両側に設けられた放電灯点灯装置1に電源が供給されると、放電灯点灯装置1から放電灯Laに電力が供給され、放電灯Laが点灯する。
近年、自動車内の居住空間の極力確保や、燃費の改善のための軽量化により、エンジンルームは小スペース化の傾向にある。したがって、エンジンルーム内の温度が高温になるのに加え、放電灯点灯装置1は発熱量の大きいエンジンのより近傍に配置されることとなり、より小型でかつ、より高温環境下でも放電灯Laを安定点灯可能な放電灯点灯装置1が求められている。
しかし、本実施形態の前照灯10および車両11は、実施形態1〜5のうちいずれかの放電灯点灯装置1を備えているので、高温環境下でも、放電灯Laの状態(点灯前の消灯時間)によらず放電灯Laの始動性能を確保しつつ、熱ストレスによる回路破壊を防止することができる。