JP4088049B2 - 放電灯点灯装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、出力が可変である直流電源回路を備え、高圧放電灯を含む負荷回路に直流電源回路から電力を供給して高圧放電灯を点灯させるようにした放電灯点灯装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、プロジェクタや車両の前照灯などに用いる高輝度の点光源としてメタルハライドランプや超高圧水銀ランプのような高圧放電灯が普及してきている。この種の高圧放電灯を点灯させるための安定器としては、小型・軽量であることから電子回路式安定器を備えた放電灯点灯装置が広く用いられている。高圧放電灯を上述のような光源として用いる場合には光出力を一定に保つことが要求されるから、高圧放電灯の安定点灯状態では定電力を供給することが必要であって、多くの放電灯点灯装置においては、高圧放電灯への給電経路に、降圧型のチョッパ回路を直流電源回路として挿入し、チョッパ回路の出力を調節することによって高圧放電灯に供給する電力を一定に維持する構成が採用されている。
【0003】
ところで、高圧放電灯は始動直後であって電極や発光管の温度が十分に上昇していない期間には立ち消えしやすいものである。立ち消えを抑制するには投入する電流を大きくすればよいから、始動から安定点灯状態(定格点灯状態)に到達するまでは定格電流値よりも大きい定電流を高圧放電灯に供給することが考えられている。すなわち、図9に示すように、高圧放電灯を始動させてから(図9におけるピークは始動用の高圧パルスを印加した時点に対応する)安定点灯状態に移行するまでの始動期間Tsにおいてはランプ電流を放電維持に必要な電流値として規定した維持電流Iaに保つようにし、安定点灯状態である定常期間Ttに移行すれば定電力が供給されるようにするのである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上述のように、高圧放電灯が始動してから安定点灯状態に移行するまでの始動期間Tsに高圧放電灯に定電流を供給する技術では、始動期間Tsの初期であるグロー放電のように高圧放電灯のインピーダンスが大きい期間と、高圧放電灯が点灯(アーク放電に移行)した後のようにインピーダンスが比較的小さい期間とにおいて同じ電流が供給されることになる。つまり、安定点灯状態に近付いて電極や発光管の温度が上昇した状態でも始動直後と同じ電流が供給されるから、供給される電流が過剰になる可能性がある。この場合、高圧放電灯の電極が過熱されて電極を損耗し、高圧放電灯の寿命が短くなる可能性がある。
【0005】
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、高圧放電灯が安定点灯状態に到達するまでの間において供給される電流を適正化することによって、始動性を確保しながらも高圧放電灯の電極の損傷を抑制することができる放電灯点灯装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、スイッチング素子を備えた直流電源回路と、前記スイッチング素子のオンオフを制御することにより前記直流電源回路の出力を制御する制御回路と、高圧放電灯を含み前記直流電源回路により電力が供給される負荷回路とを備え、前記負荷回路が、前記直流電源回路の出力電圧を交番電圧に変換して前記高圧放電灯に印加する極性反転回路を備え、前記制御回路は、放電灯を始動させる高圧パルスを発生した後に、前記高圧放電灯が安定点灯状態に移行するまでの期間において前記直流電源回路の出力電流を始動直後よりも低減させる出力制御部と、前記制御回路は、回路動作の開始後において前記高圧放電灯の点灯開始を検出する点灯判別部とを備え、前記出力制御部では前記直流電源回路の出力電流の電流値を、回路動作の開始から前記極性反転回路が前記高圧放電灯に印加する電圧を反転させる周期の1周期より長く設定した不感期間の経過以降で前記点灯判別部により前記高圧放電灯の点灯開始が検出されるまでの第1期間と、点灯開始が検出された後に安定点灯状態に移行するまでの第2期間との2段階に分けて設定していることを特徴とする。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記第1期間における電流値を前記高圧放電灯の放電維持に要求される電流値で規定し、前記第2期間における電流値を安定点灯状態への移行に要求される電流値で規定していることを特徴とする。
【0008】
請求項3の発明は、請求項2の発明において、前記出力制御部が前記高圧放電灯の安定点灯状態においては前記直流電源回路の出力を定電力に保つように前記スイッチング素子を制御し、前記第2期間における電流値が前記高圧放電灯の安定点灯状態における前記直流電源回路の出力電圧の最小値に対応する電流値に設定され、前記第1期間における電流値が前記第2期間の電流値よりも高く設定されていることを特徴とする。
【0009】
請求項4の発明は、請求項2の発明において、前記出力制御部が前記高圧放電灯の安定点灯状態においては前記直流電源回路の出力を定電力に保つように前記スイッチング素子を制御し、前記第2期間における電流値が前記高圧放電灯の安定点灯状態における前記直流電源回路の出力電圧の最小値に対応する電流値より高く設定され、前記第1期間における電流値が前記第2期間の電流値よりも高く設定されていることを特徴とする。
【0010】
請求項5の発明は、請求項2ないし請求項4の発明において、前記点灯判別部では、前記高圧放電灯のランプ電圧が規定の点灯検知電圧以下になると前記高圧放電灯の点灯開始として検出することを特徴とする。
【0011】
請求項6の発明は、請求項2ないし請求項4の発明において、前記点灯判別部では、前記高圧放電灯のランプ電圧が規定の点灯検知電圧以下になり、かつランプ電圧が点灯検知電圧以下である状態が規定の検知期間継続すると前記高圧放電灯の点灯開始として検出することを特徴とする。
【0012】
請求項7の発明は、請求項2ないし請求項4の発明において、前記点灯判別部では、前記高圧放電灯のランプ電流の極性反転時におけるランプ電圧が規定の点灯検知電圧以下である状態を計数し、計数値が規定した判定値に達すると前記高圧放電灯の点灯開始として検出することを特徴とする。
【0013】
請求項8の発明は、請求項7の発明において、前記点灯判別部では、前記判定回数に達する前に前記高圧放電灯のランプ電流の極性反転時におけるランプ電圧が規定の点灯検知電圧を超えると計数値を破棄することを特徴とする。
【0014】
請求項9の発明は、請求項7または請求項8の発明において、前記点灯判別部では、前記高圧放電灯の点灯開始が検出された後にランプ電圧が規定の点灯検知電圧を超える状態の継続する期間が規定した判定時間に達すると、前記出力制御部に前記高圧放電灯を再始動させる指示を与えることを特徴とする。
【0015】
請求項10の発明は、請求項9の発明において、前記点灯判別部が前記出力制御部に再始動を指示する際には、前記判定回数よりも少ない再始動判定回数を設定し、再始動判定回数を前記判定回数として用いることを特徴とする。
【0018】
【発明の実施の形態】
実施の形態
本実施形態では、プロジェクタの光源に用いる高圧放電灯を点灯させるための放電灯点灯装置を例示し、高圧放電灯には点光源とみなせる程度に電極間距離の小さいメタルハライドランプあるいは超高圧水銀ランプを用いるものとする。
【0019】
図1に示すように、図示しない直流電源から直流電圧が入力される降圧型のチョッパ回路1を直流電源回路として備え、チョッパ回路1から出力される直流電圧を極性反転回路2により交番電圧に変換して高圧放電灯(以下、単に「放電灯」という)DLに印加する構成を有する。また、極性反転回路2と放電灯DLとの間には、放電灯DLの点灯のための高電圧を発生するイグナイタ3が挿入される。すなわち、チョッパ回路1は、極性反転回路2とイグナイタ3と放電灯DLとからなる負荷回路に電力を供給する。
【0020】
チョッパ回路1および極性反転回路2の動作は、制御回路4により制御される。制御回路4には、チョッパ回路1とは別に設けられチョッパ回路1と共通の直流電源から直流電圧が入力されるスイッチング電源である制御電源回路5から給電される。すなわち、チョッパ回路1と制御電源回路5との入力は共通であって、ローパスフィルタLFを介して図示しない直流電源に接続され、直流電源からたとえば370Vの直流電圧が入力される。ローパスフィルタLFはチョッパ回路1および制御電源回路5のスイッチング周波数以上の高周波を阻止する。
【0021】
直流電源としては、たとえば商用電源をダイオードブリッジからなる整流回路により整流し、昇圧型のチョッパ回路により昇圧するものを用いる。昇圧型のチョッパ回路は、商用電源からの入力電流に休止期間を生じさせないように設計することが可能であるから、昇圧型のチョッパ回路におけるスイッチング素子のスイッチング周波数を比較的高く設定し、スイッチング周波数以上の高周波を阻止するローパスフィルタを商用電源との間に挿入することによって、商用電源からの入力電流波形をほぼ滑らかに連続させた歪の少ない波形とすることができる。しかも、昇圧チョッパ回路は、入力電流の包絡線の波形を整流回路の出力電圧波形にほぼ比例させることができるから、商用電源からの入力電流の位相を入力電圧の位相にほぼ一致させて高い入力力率を得ることができる。要するに、昇圧型のチョッパ回路は、外部へのノイズの発生を少なくし、かつ高力率を得るための力率改善回路として用いられる。なお、直流電源には電池電源のような他の構成のものを用いることも可能である。
【0022】
チョッパ回路1のスイッチング素子Q1はMOSFETからなり、このスイッチング素子Q1を介して直流電源に接続されたインダクタL1を備える。つまり、直流電源の正極と極性反転回路2との間にスイッチング素子Q1とインダクタL1との直列回路が挿入される。スイッチング素子Q1とインダクタL1との接続点にはダイオードD1のカソードが接続され、ダイオードD1のアノードは直流電源の負極に接続される。さらに、インダクタL1とダイオードD1との直列回路にはコンデンサC1と電流検出用の抵抗Rsとの直列回路が並列に接続される。コンデンサC1の両端電圧は極性反転回路2に入力電圧として印加される。スイッチング素子Q1のゲート・ソースはパルストランスPT1の2次巻線に接続され、スイッチング素子Q1のオンオフはパルストランスPT1を介して制御回路4から与えられる制御信号によって制御される。スイッチング素子Q1のオンオフのスイッチング周波数は比較的高く設定される。
【0023】
この構成により、スイッチング素子Q1のオン期間にスイッチング素子Q1を通して直流電源からインダクタL1にエネルギが蓄積され、スイッチング素子Q1のオフ期間にはインダクタL1のエネルギがコンデンサC1とダイオードD1とを通る経路で放出され、コンデンサC1に電荷が蓄積される。言い換えると、ダイオードD1はスイッチング素子Q1のオン時にインダクタL1に蓄積されたエネルギをコンデンサC1を通る経路で回生させるために設けられている。このような動作によって、コンデンサC1の両端電圧は入力された直流電圧に対して降圧される。入力電圧に対する出力電圧の比(降圧比=出力電圧/入力電圧)はスイッチング素子Q1のオンオフのデューティ比により決まる。つまり、スイッチング素子Q1のオンオフのデューティ比を制御回路4で変化させることによりチョッパ回路1の出力電圧が可変になる。
【0024】
チョッパ回路1の出力電圧は、制御回路4に設けた判定部41を通して電力監視部42に入力され、チョッパ回路1の出力電流に相当する抵抗Rsの両端電圧は制御回路4に設けた電流監視部43に入力される。ここに、チョッパ回路1の出力電圧は放電灯DLのランプ電圧に代用され、チョッパ回路1の出力電流は放電灯DLのランプ電流に代用される。後述するように、判定部41はチョッパ回路1の出力電圧が放電灯DLのランプ電圧について設定した定電力制御範囲である期間には出力電圧に比例する電圧を電力監視部42に入力し、定電力制御範囲を逸脱する期間には電力監視部42に定電圧を入力するように構成されている。定電力制御範囲は、放電灯DLをほぼ定格で点灯させる電圧範囲として定格電圧に基づいて規定してある。上述のように、チョッパ回路1の出力電圧はランプ電圧を反映しているから、判定部41に出力電圧を入力する経路とは別にチョッパ回路1の出力電圧を取り出して制御回路4の点灯判別部44に入力し、点灯判別部44において放電灯DLの点灯状態を判別する。点灯判別部44において監視される放電灯DLの点灯状態は後述するように判定部41の動作に影響する。
【0025】
チョッパ回路1の出力電流は上述のように電流監視部43により監視され、電流監視部43で検出された電流値も電力監視部42に入力される。電力監視部42では入力された電流値と電圧値とを乗算することによってチョッパ回路1の出力電力を求め、この出力電力が一定値に保たれるように制御信号生成部46に指示を与えてスイッチング素子Q1のオンオフのデューティ比を制御する。つまり、チョッパ回路1から極性反転回路2に対して定電力を供給することになる。また、判定部41から定電圧が出力されている間には電力と電圧とが一定であるから、チョッパ回路1からは定電流が出力されることになる。
【0026】
極性反転回路2は、4個のスイッチング素子Q3〜Q6からなるブリッジ回路であって、スイッチング素子Q3,Q4が直列接続されてブリッジ回路の一方のアームを形成し、スイッチング素子Q5,Q6が直列接続されてブリッジ回路の他方のアームを形成している。スイッチング素子Q3〜Q6にはMOSFETを用いている。ブリッジ回路の各アームはそれぞれコンデンサC1に並列接続されており、各スイッチング素子Q3〜Q6はそれぞれ駆動回路DV3〜DV6を介して制御回路4の駆動信号生成部45に接続される。駆動信号生成部45では2値の駆動信号を生成する。この駆動信号により、スイッチング素子Q3,Q6の組とスイッチング素子Q4,Q5の組とのオンオフが交互に反転するように制御される。
【0027】
極性反転回路2の一方のアームを構成するスイッチング素子Q3,Q4の接続点と、他方のアームを構成するスイッチング素子Q5,Q6の接続点との間にはインダクタL2とコンデンサC2との直列回路が接続され、コンデンサC2の両端間にはイグナイタ3に設けた出力トランスT1の2次巻線と放電灯DLとの直列回路が並列に接続される。したがって、極性反転回路2の上述の動作によって、放電灯DLの両端に印加される電圧の極性は交互に反転し、放電灯DLに交番した矩形波電圧が印加されることになる。ここに、放電灯DLとして定格電圧の比較的低いものを用いることにより、スイッチング素子Q3〜Q6には低容量・低耐圧の小型のものを用いることが可能であり、高容量・高耐圧のものを用いる場合に比較するとオン抵抗が小さくなるから、発熱量を抑制することができる。言い換えると、入力した電力エネルギのうち光出力に利用されずに熱損失として無駄に消費されるエネルギの低減につながり、エネルギ利用効率がよく発熱量の比較的少ない放電灯点灯装置を提供することが可能になる。
【0028】
ところで、本実施形態において用いる放電灯DLは、点灯直後には水銀の蒸気圧が低いからランプ電圧は低い値になり、水銀蒸気圧の上昇に伴ってランプ電圧が上昇する。したがって、安定点灯状態(定格点灯状態)に短時間で到達させるには、投入する電流を大きくすればよいが、実際には放電灯DLの電極の損傷を抑制するには定格電流値に対してやや大きい程度(1.5倍程度)の電流値に制限する必要がある。そこで、安定点灯状態に移行するまでの間にはチョッパ回路1の出力電流を定電流とし、安定点灯状態に達した後には光出力を安定させるためにチョッパ回路1の出力電力を定電力とするように制御する。すなわち、チョッパ回路1の出力電力が定電力になるように制御する期間は、チョッパ回路1の出力電圧が放電灯DLの定格電圧に基づいて設定されている定電力制御範囲内である期間であって、チョッパ回路1の出力電圧が定電力制御範囲内である間には放電灯DLに定電力が供給されて放電灯DLが安定点灯状態で点灯する。なお、放電灯DLの安定点灯状態は点灯判別部44においてチョッパ回路1の出力電圧に基づいて判定する。
【0029】
ただし、本実施形態では、図2に示すように、放電灯DLの始動(アーク放電の開始)から安定点灯状態に移行するまでの始動期間Tsにおいて、イグナイタ3から高圧パルスPhを発生した後に放電灯DLの点灯状態を点灯判別部44で判別し、放電灯DLが点灯(アーク点灯に移行)していればチョッパ回路1の出力電流を始動直後よりも小さい定電流に変更する。点灯判別部44で放電灯DLの点灯状態を判別するのは、放電灯DLに高圧パルスPhを印加してから不感期間Txの経過以降であって、不感期間Txは極性反転回路2が放電灯DLに印加する電圧を反転させる周期の1周期よりは長い時間(たとえば、0.6秒)に設定されている。この時間は放電灯DLが始動してからアーク放電に移行するまでの時間程度に設定してある。図2では時刻t1以降において点灯判別部44で放電灯DLの点灯状態を判別しており、時刻t1で放電灯DLが点灯していると判断された状態を示している。点灯判別部44における放電灯DLの点灯状態の判別は、ランプ電圧(実施例では、チョッパ回路1の出力電圧)に基づいて行っており、図3に示すように、適宜の点灯検知電圧Vd(たとえば、220V)を設定し、回路動作の開始から不感期間Txが経過した時刻t1以降において、チョッパ回路1の出力電圧が点灯検知電圧Vd以下になると放電灯DLの点灯開始として検出する。ここで、チョッパ回路1の出力電圧は放電灯DLに印加する電圧の極性の反転時に検出する構成を採用している。なお、図3においてVbは、放電灯DLにおいて絶縁破壊が生じて放電が開始される電圧を示す。
【0030】
しかして、図2に示す例では、回路動作の開始から時刻t1までが第1期間、時刻t1以降で安定点灯状態が点灯判別部44で検出されるまでの期間が第2期間になる。第1期間においてはチョッパ回路1から出力する電流を高圧放電灯DLの放電維持に要求される維持電流Ia(たとえば、3.8A)に設定し、第2期間においてはチョッパ回路1から出力する電流を安定点灯状態への移行に要求される点灯電流Ib(たとえば、3.2A)に設定する。
【0031】
ここにおいて、点灯電流Ibは、放電灯DLの安定点灯状態(つまり、定電力に保っている期間)におけるチョッパ回路1の出力電圧の最小値に対応する電流値に設定すれば、定電流を供給している間においても電流値が安定点灯状態での最大電流値に制限されるから、放電灯DLに供給される電流が安定点灯状態と同程度になり、放電灯DLの電極の過熱を防止することができる。また、点灯電流Ibを安定点灯状態におけるチョッパ回路1の出力電圧の最小値に対応する電流値よりも大きく設定すれば、放電灯DLが点灯してから安定点灯状態に移行するまでの時間を比較的短くすることができる。
【0032】
上述の構成によって、回路動作の開始直後にはチョッパ回路1の出力電流を比較的大きくすることによって放電灯DLに大きな電力を供給することで始動性を確保し、しかも安定点灯状態に近付くとチョッパ回路1の出力電流を低減させることによって、放電灯DLに過剰な電流が流れるのを防止することができる。その結果、放電灯DLの電極の損耗を抑制することができる。しかも、チョッパ回路1から定電流を出力する期間(始動期間Ts)において、電流値を2段階に規定しているから制御が容易であり、さらに放電灯DLの点灯を確認するまでの時間を極性反転の1周期よりも長く設定しているから、比較的長い期間にわたって大きな電流を放電灯DLに供給することができ、放電灯DLの電極や発光管の温度上昇不足による立ち消えが生じにくくなる。
【0033】
参考例1
上述した実施の形態では、点灯判別部44において不感期間Txの経過後にチョッパ回路1の出力電圧が点灯検知電圧Vd以下であると放電灯DLが点灯していると判断していたが、放電灯DLが点灯したと判断した後に放電灯DLが立ち消えする場合もある。そこで、本例では、チョッパ回路1の出力電圧が点灯検知電圧Vd以下である状態が規定した検知期間継続すると放電灯DLが点灯開始であると判定するようにしてある。この構成によって、放電灯DLが立ち消えした場合には点灯と判定しないことになり、放電灯DLが点灯していることを確実に検出することができ、放電灯DLの電極の損耗を確実に抑制することができる。言い換えると、放電灯DLが点灯を開始した後に電極や発光管の温度上昇不足によって立ち消えしたような場合に、放電灯DLが点灯したと誤認することが防止される。
【0034】
ところで、上述した実施の形態のように、チョッパ回路1の出力電圧を検出するタイミングを放電灯DLに印加する電圧の極性が反転したときに設定すれば、チョッパ回路1の出力電圧が点灯検知電圧Vdになる状態が極性反転毎に連続して所定の判定回数生じたときに、チョッパ回路1の出力電圧が点灯検知電圧Vd以下である状態が検知期間継続したとみなすことができる。つまり、放電灯DLに印加する電圧の極性を反転させる構成を採用しながらも、放電灯DLの点灯判別を確実に行うことができる。また、この構成では判定回数を適宜に設定することによって、不感期間Txに相当する期間の後に放電灯DLの点灯と判別することになるから、不感期間Txを設定しなくてもよい。
【0035】
また、図4に示すように、点灯判別部44においてチョッパ回路1の出力電圧が点灯検知電圧Vd以下である状態が連続して判定回数に達する前に点灯検知電圧Vdを超えたときには、計数値を破棄(つまり、リセット)し、あらためて判定回数に達するまで計数する。図では判定回数に達するまでの時間をTyで表してある。
【0036】
ところで、放電灯DLへの印加電圧の極性反転毎にチョッパ回路1の出力電圧を監視しているときに、図5に示すように、チョッパ回路1の出力電圧が点灯検知電圧Vdを超える状態が比較的長時間に亘って継続することがある。このような状態は、放電灯DLの立ち消えにより生じると考えられるから、チョッパ回路1の出力電圧が点灯検知電圧Vdを超える状態が規定した判定時間Tz(たとえば、20m秒)に達すると、出力制御部(判定部44と電力監視部42と電流監視部43と制御信号生成部46とからなる)に指示を与えて放電灯DLを再始動させる。この構成によって、放電灯DLが点灯を開始した後に立ち消えしたような場合に再始動のための動作が行われることになり、放電灯DLを確実に始動させることができる。
【0037】
ここで、再始動の際には、放電灯DLの電極や発光管の温度がある程度上昇していると考えられるから、上述した判定回数よりも少ない再始動判定回数を設定しておき、再始動の指示後にはチョッパ回路1の出力電圧が点灯検知電圧Vd以下になる状態が再始動判定回数に達したときに放電灯DLが点灯したと判断する。このような構成を採用すれば、再始動した場合でも比較的短い時間で放電灯DLの点灯を確認することができる。つまり、再始動判定回数を設定しない場合に比較して、短い時間で電流値を低減させた状態に以降することになるから、放電灯DLの電極の損耗を抑制することが可能になる。他の構成および動作は実施の形態と同様である。
【0038】
参考例2
上述した構成例では、チョッパ回路1の出力電圧をランプ電圧に代用し、この出力電圧が点灯検知電圧Vdか否かを判定することによって、放電灯DLの点灯を検出する構成を採用していた。これに対して本例では、図6に示すように、制御回路4にタイマ部48を設け、回路動作の開始から放電灯DLが点灯すると予測される一定時間をタイマ部48で時限するとともに、タイマ部48での時限期間とタイマ部48での時限終了後から放電灯DLが安定点灯状態に移行するまでの間との2段階で、チョッパ回路1の出力電流を変化させる構成を採用している。つまり、チョッパ回路1の出力電流を定電流とする期間(始動期間)において、チョッパ回路1の出力電圧とは無関係にタイマ部48により時限した時間によって第1期間と第2期間との2段階に分けて電流値を設定しているのである。第1期間においては高圧放電灯DLを温めるように電流値が設定される。なお、図示例では回路動作の開始が外部から指示される構成としているが、通常は電源投入時を回路動作の開始とすればよい。各段階の電流値は実施の形態と同様に設定する。
【0039】
本例の構成によれば、図7に示すように、回路動作の開始から一定時間Tuが経過するまでの間に、チョッパ回路1の出力電圧が点灯判定電圧Vdを超えたとしても、タイマ部48の時限動作がリセットされることはなく、一定時間Tuの経過後に電流値を切り換える。したがって、実施の形態と同様に、始動性を確保しながらも高圧放電灯の電極の損耗を抑制することができる。しかも、放電灯DLの点灯を確認するための構成が不要であってオープン制御になるから構成が簡単である。他の構成および動作は実施の形態と同様である。
【0040】
なお、上述した各構成例では、始動期間におけるチョッパ回路1の出力電流の電流値を2段階に設定したが多段階に設定することも可能である。
【0041】
参考例3
本例は、参考例2と同様に回路動作の開始からタイマ部48によって一定時間Tv(図8参照)を時限するものであるが、チョッパ回路1の出力電流を定電流とするのではなく、一定時間Tvの間に電流値を徐々に低減させるようにしたものである。一定時間Tvは放電灯DLが安定点灯状態に達すると予測される時間よりやや短い程度に設定される。図8において電流値Icは安定点灯状態における電流値を示している。
【0042】
本例の構成によれば、放電灯DLが点灯するまでは比較的大きい電流を与えて始動性を高めることができ、点灯後には安定点灯状態に近付くにつれて電流値を徐々に低減させることによって、放電灯DLの電極および発光管の温度が低い期間には比較的大きい電流を流して温度の上昇速度を高め、電極および発光管の温度が上昇すれば電流を低減させて電極の損耗を抑制することができる。他の構成および動作は実施の形態と同様である。
【0043】
【発明の効果】
請求項1の発明の構成によれば、回路動作の開始直後には直流電源回路の出力電流を大きくするように制御することによって高圧放電灯に大きな電力を供給することで始動性を確保し、しかも安定点灯状態に近付くと直流電源回路の出力電流を低減させることによって、高圧放電灯に過剰な電流が流れないようにしているから、高圧放電灯の電極の損耗を抑制することができる。また、電流値を2段階に規定しているから制御が容易であり、さらに高圧放電灯の点灯開始が検出されるまでは比較的大きい電流を確保するから、高圧放電灯の電極や発光管の温度上昇不足による立ち消えが生じにくい。
【0044】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記第1期間における電流値を前記高圧放電灯の放電維持に要求される電流値で規定し、前記第2期間における電流値を安定点灯状態への移行に要求される電流値で規定しているものであり、電流値を2段階に規定し、高圧放電灯の点灯開始が検出されるまでは比較的大きい電流を供給し、点灯開始後には比較的小さい電流を供給するから、始動性を確保しながらも高圧放電灯の電極の損耗を抑制することができる。
【0045】
請求項3の発明は、請求項2の発明において、前記出力制御部が前記高圧放電灯の安定点灯状態においては前記直流電源回路の出力を定電力に保つように前記スイッチング素子を制御し、前記第2期間における電流値が前記高圧放電灯の安定点灯状態における前記直流電源回路の出力電圧の最小値に対応する電流値に設定され、前記第1期間における電流値が前記第2期間の電流値よりも高く設定されているものであり、第2期間における電流値が安定点灯状態での最大電流値に制限されるから、高圧放電灯に流れる電流が安定点灯状態と同程度になり、高圧放電灯の電極の過熱を防止することができる。
【0046】
請求項4の発明は、請求項2の発明において、前記出力制御部が前記高圧放電灯の安定点灯状態においては前記直流電源回路の出力を定電力に保つように前記スイッチング素子を制御し、前記第2期間における電流値が前記高圧放電灯の安定点灯状態における前記直流電源回路の出力電圧の最小値に対応する電流値より高く設定され、前記第1期間における電流値が前記第2期間の電流値よりも高く設定されているものであり、高圧放電灯の安定点灯状態における最大電流値よりも大きい電流を第2期間において高圧放電灯に流すから、高圧放電灯が点灯してから安定点灯状態に移行するまでの時間を比較的短くすることができる。ここに、プロジェクタ用に用いる高圧放電灯では、点灯後に安定点灯状態の最大電流値を供給すると約60秒で安定点灯状態に移行することが実験的に確認されており、第2期間において安定点灯状態の最大電流値よりも大きい電流を供給することによって、この時間をさらに短縮することが可能になる。
【0047】
請求項5の発明は、請求項2ないし請求項4の発明において、前記点灯判別部では、前記高圧放電灯のランプ電圧が規定の点灯検知電圧以下になると前記高圧放電灯の点灯開始として検出するので、高圧放電灯の動作状態に合わせて電流値を切り換えることができ、高圧放電灯の電極の損耗を確実に抑制することができる。
【0048】
請求項6の発明は、請求項2ないし請求項4の発明において、前記点灯判別部では、前記高圧放電灯のランプ電圧が規定の点灯検知電圧以下になり、かつランプ電圧が点灯検知電圧以下である状態が規定の検知期間継続すると前記高圧放電灯の点灯開始として検出するので、高圧放電灯が点灯していることを確実に検出することができ、高圧放電灯が点灯したことを確認してから電流値を切り換えることになり、高圧放電灯の電極の損耗を確実に抑制することができる。
【0049】
請求項7の発明は、請求項2ないし請求項4の発明において、前記点灯判別部では、前記高圧放電灯のランプ電流の極性反転時におけるランプ電圧が規定の点灯検知電圧以下である状態を計数し、計数値が規定した判定値に達すると前記高圧放電灯の点灯開始として検出するので、高圧放電灯に印加する電圧の極性が反転する構成を採用しながらも、放電灯が点灯したことを確実に検出することができ、高圧放電灯が点灯したことを確認してから電流値を切り換えることになり、高圧放電灯の電極の損耗を確実に抑制することができる。
【0050】
請求項8の発明は、請求項7の発明において、前記点灯判別部では、前記判定回数に達する前に前記高圧放電灯のランプ電流の極性反転時におけるランプ電圧が規定の点灯検知電圧を超えると計数値を破棄するので、高圧放電灯の点灯が開始した後に電極や発光管の温度上昇不足によって立ち消えしたような場合に、高圧放電灯が点灯したと誤認することが防止される。
【0051】
請求項9の発明は、請求項7または請求項8の発明において、前記点灯判別部では、前記高圧放電灯の点灯開始が検出された後にランプ電圧が規定の点灯検知電圧を超える状態の継続する期間が規定した判定時間に達すると、前記出力制御部に前記高圧放電灯を再始動させる指示を与えるので、高圧放電灯の点灯が開始した後に立ち消えしたような場合に再始動のための動作が行われるから、高圧放電灯を確実に始動させることができる。
【0052】
請求項10の発明は、請求項9の発明において、前記点灯判別部が前記出力制御部に再始動を指示する際には、前記判定回数よりも少ない再始動判定回数を設定し、再始動判定回数を前記判定回数として用いるので、高圧放電灯の点灯が開始された後に立ち消えした場合には、高圧放電灯の電極や発光管の温度が比較的高くなっているから、通常の判定回数よりも少ない再始動判定回数を設定して高圧放電灯の点灯の確認に要する時間を短縮し、電流値を低減させた第2期間に短時間で移行させることによって、高圧放電灯の電極の損耗を抑制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態を示す回路図である。
【図2】 同上の動作説明図である。
【図3】 同上の動作説明図である。
【図4】 同上の動作説明図である。
【図5】 参考例1の動作説明図である。
【図6】 参考例2を示す回路図である。
【図7】 同上の動作説明図である。
【図8】 参考例3の動作説明図である。
【図9】 従来構成の動作説明図である。
【符号の説明】
1 チョッパ回路
2 極性反転回路
3 イグナイタ
4 制御回路
41 判定部
42 電力監視部
43 電流監視部
44 点灯判別部
46 制御信号生成部
48 タイマ部
DL (高圧)放電灯
Q1 スイッチング素子

Claims (10)

  1. スイッチング素子を備えた直流電源回路と、前記スイッチング素子のオンオフを制御することにより前記直流電源回路の出力を制御する制御回路と、高圧放電灯を含み前記直流電源回路により電力が供給される負荷回路とを備え、前記負荷回路が、前記直流電源回路の出力電圧を交番電圧に変換して前記高圧放電灯に印加する極性反転回路を備え、前記制御回路は、放電灯を始動させる高圧パルスを発生した後に、前記高圧放電灯が安定点灯状態に移行するまでの期間において前記直流電源回路の出力電流を始動直後よりも低減させる出力制御部と、回路動作の開始後において前記高圧放電灯の点灯開始を検出する点灯判別部とを備え、前記出力制御部では前記直流電源回路の出力電流の電流値を、回路動作の開始から前記極性反転回路が前記高圧放電灯に印加する電圧を反転させる周期の1周期より長く設定した不感期間の経過以降で前記点灯判別部により前記高圧放電灯の点灯開始が検出されるまでの第1期間と、点灯開始が検出された後に安定点灯状態に移行するまでの第2期間との2段階に分けて設定していることを特徴とする放電灯点灯装置。
  2. 前記第1期間における電流値を前記高圧放電灯の放電維持に要求される電流値で規定し、前記第2期間における電流値を安定点灯状態への移行に要求される電流値で規定していることを特徴とする請求項1記載の放電灯点灯装置。
  3. 前記出力制御部が前記高圧放電灯の安定点灯状態においては前記直流電源回路の出力を定電力に保つように前記スイッチング素子を制御し、前記第2期間における電流値が前記高圧放電灯の安定点灯状態における前記直流電源回路の出力電圧の最小値に対応する電流値に設定され、前記第1期間における電流値が前記第2期間の電流値よりも高く設定されていることを特徴とする請求項2記載の放電灯点灯装置。
  4. 前記出力制御部が前記高圧放電灯の安定点灯状態においては前記直流電源回路の出力を定電力に保つように前記スイッチング素子を制御し、前記第2期間における電流値が前記高圧放電灯の安定点灯状態における前記直流電源回路の出力電圧の最小値に対応する電流値より高く設定され、前記第1期間における電流値が前記第2期間の電流値よりも高く設定されていることを特徴とする請求項2記載の放電灯点灯装置。
  5. 前記点灯判別部では、前記高圧放電灯のランプ電圧が規定の点灯検知電圧以下になると前記高圧放電灯の点灯開始として検出することを特徴とする請求項2ないし請求項4のいずれか1項に記載の放電灯点灯装置。
  6. 前記点灯判別部では、前記高圧放電灯のランプ電圧が規定の点灯検知電圧以下になり、かつランプ電圧が点灯検知電圧以下である状態が規定の検知期間継続すると前記高圧放電灯の点灯開始として検出することを特徴とする請求項2ないし請求項4のいずれか1項に記載の放電灯点灯装置。
  7. 前記点灯判別部では、前記高圧放電灯のランプ電流の極性反転時におけるランプ電圧が規定の点灯検知電圧以下である状態を計数し、計数値が規定した判定値に達すると前記高圧放電灯の点灯開始として検出することを特徴とする請求項2ないし請求項4のいずれか1項に記載の放電灯点灯装置。
  8. 前記点灯判別部では、前記判定回数に達する前に前記高圧放電灯のランプ電流の極性反転時におけるランプ電圧が規定の点灯検知電圧を超えると計数値を破棄することを特徴とする請求項7記載の放電灯点灯装置。
  9. 前記点灯判別部では、前記高圧放電灯の点灯開始が検出された後にランプ電圧が規定の点灯検知電圧を超える状態の継続する期間が規定した判定時間に達すると、前記出力制御部に前記高圧放電灯を再始動させる指示を与えることを特徴とする請求項7または請求項8記載の放電灯点灯装置。
  10. 前記点灯判別部が前記出力制御部に再始動を指示する際には、前記判定回数よりも少ない再始動判定回数を設定し、再始動判定回数を前記判定回数として用いることを特徴とする請求項9記載の放電灯点灯装置。
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