図1は、この発明の実施例に係る車両の制御装置を全体的に示す概略図、図2は図1に示す変速機油圧供給機構の油圧回路図である。
図1において、符号10はエンジン(内燃機関)を示す。エンジン10は駆動輪12を備えた車両14に搭載される(車両14は駆動輪12などで部分的に示す)。
エンジン10の吸気系に配置されたスロットルバルブ(図示せず)は車両運転席床面に配置されるアクセルペダルとの機械的な接続が絶たれて電動モータなどのアクチュエータからなるDBW(Drive By Wire)機構16に接続され、DBW機構16で開閉される。
スロットルバルブで調量された吸気はインテークマニホルド(図示せず)を通って流れ、各気筒の吸気ポート付近でインジェクタ20から噴射された燃料と混合して混合気を形成し、吸気バルブ(図示せず)が開弁されたとき、当該気筒の燃焼室(図示せず)に流入する。燃焼室において混合気は点火されて燃焼し、ピストンを駆動してクランクシャフト22を回転させた後、排気となってエンジン10の外部に放出される。
クランクシャフト22の回転はトルクコンバータ24を介して自動変速機Tに入力される。自動変速機Tは無段変速機(Continuously Variable Transmission。以下「CVT」という)26を備える。
即ち、クランクシャフト22はトルクコンバータ24のポンプ・インペラ24aに接続される一方、それに対向配置されて流体(作動油)を収受するタービン・ランナ24bはメインシャフト(入力軸)MSに接続される。
CVT26はメインシャフトMS、より正確にはその外周側シャフトに配置されたドライブプーリ26aと、メインシャフトMSに平行なカウンタシャフト(出力軸)CS、より正確にはその外周側シャフトに配置されたドリブンプーリ26bと、その間に掛け回される無端可撓部材、例えば金属製のベルト26cからなる。
ドライブプーリ26aは、メインシャフトMSの外周側シャフトに相対回転不能で軸方向移動不能に配置された固定プーリ半体26a1と、メインシャフトMSの外周側シャフトに相対回転不能で固定プーリ半体26a1に対して軸方向に相対移動可能な可動プーリ半体26a2からなる。
ドリブンプーリ26bは、カウンタシャフトCSの外周側シャフトに相対回転不能で軸方向移動不能に配置された固定プーリ半体26b1と、カウンタシャフトCSに相対回転不能で固定プーリ半体26b1に対して軸方向に相対移動可能な可動プーリ半体26b2からなる。
自動変速機TにおいてCVT26は前後進切換機構28を介してエンジン10に接続される。前後進切換機構28は、車両14の前進方向への走行を可能にする前進クラッチ(摩擦係合要素)28aと、後進方向への走行を可能にする後進ブレーキクラッチ(摩擦係合要素)28bと、その間に配置されるプラネタリギヤ機構28cからなる。CVT26はエンジン10に前進クラッチ28aを介して接続される。
プラネタリギヤ機構28cにおいて、サンギヤ28c1はメインシャフトMSに固定されると共に、リングギヤ28c2は前進クラッチ28aを介してドライブプーリ26aの固定プーリ半体26a1に固定される。
サンギヤ28c1とリングギヤ28c2の間には、ピニオン28c3が配置される。ピニオン28c3は、キャリア28c4でサンギヤ28c1に連結される。キャリア28c4は、後進ブレーキクラッチ28bが作動させられると、それによって固定(ロック)される。
カウンタシャフトCSの回転はギヤを介してセカンダリシャフト(中間軸)SSから駆動輪12に伝えられる。即ち、カウンタシャフトCSの回転はギヤ30a,30bを介してセカンダリシャフトSSに伝えられ、その回転はギヤ30cを介してディファレンシャル32から左右の駆動輪(右側のみ示す)12に伝えられる。
駆動輪(前輪)12と従動輪(後輪。図示せず)の付近にはディスクブレーキ(制動装置)34が配置される。ディスクブレーキ34はキャリパ34aとディスク34bなどを備える。
車両運転席床面にはブレーキペダル36が配置される。ブレーキペダル36はマスタバック38とマスタシリンダ40を介して接続されるディスクブレーキ34に接続される。マスタシリンダ40は、ブレーキ液を貯留するリザーバ40aとリザーバ40aに貯留されるブレーキ液が充満される油室内を摺動自在なピストン(図示せず)を備える。
運転者がブレーキペダル36を踏み込むと、その踏み込み力はマスタバック38で増力されてマスタシリンダ40に伝えられる。マスタシリンダ40のピストンは増力された踏み込み力に相当する距離だけストロークする。ピストンのストロークによって生成された液圧(ブレーキ液の圧力)は駆動輪12のディスクブレーキ34に送られ、ディスクブレーキ34を動作させ、車両14を制動(減速)させる。
前後進切換機構28において前進クラッチ28aと後進ブレーキクラッチ28bの切換は、車両運転席に設けられたレンジセレクタ44を運転者が操作して例えばP,R,N,Dなどのレンジのいずれかを選択することで行われる。運転者のレンジセレクタ44の操作によるレンジ選択は変速機油圧供給機構46(後述)のマニュアルバルブに伝えられる。
レンジセレクタ44を介して例えばD,S,Lレンジが選択されると、それに応じてマニュアルバルブのスプールが移動し、後進ブレーキクラッチ28bのピストン室から作動油(油圧)が排出される一方、前進クラッチ28aのピストン室に油圧が供給されて前進クラッチ28aが締結される。
前進クラッチ28aが締結されると、全ギヤがメインシャフトMSと一体に回転し、ドライブプーリ26aはメインシャフトMSと同方向(前進方向)に駆動される。
Rレンジが選択されると、前進クラッチ28aのピストン室から作動油が排出される一方、後進ブレーキクラッチ28bのピストン室に油圧が供給されて後進ブレーキクラッチ28bが作動する。従ってキャリア28c4が固定されてリングギヤ28c2はサンギヤ28c1とは逆方向に駆動され、ドライブプーリ26aはメインシャフトMSとは逆方向(後進方向)に駆動される。
PあるいはNレンジが選択されると、両方のピストン室から作動油が排出されて前進クラッチ28aと後進ブレーキクラッチ28bが共に開放され、前後進切換装置28を介しての動力伝達が断たれ、エンジン10とCVT26のドライブプーリ26aとの間の動力伝達が遮断される。
図2は変速機油圧供給機構46の油圧回路図である。
図示の如く、変速機油圧供給機構46には油圧ポンプ(送油ポンプ)46aが設けられる。油圧ポンプ46aはギヤポンプからなり、エンジン(E)10によって駆動され、リザーバ46bに貯留された作動油を汲み上げてPH制御バルブ(PH REG VLV)46cに圧送する。
PH制御バルブ46cの出力(PH圧(ライン圧)。高圧制御油圧)は、一方では油路46dから第1、第2のレギュレータバルブ(DR REG VLV, DN REG VLV)46e,46fを介してCVT26のドライブプーリ26aの可動プーリ半体26a2のピストン室(DR)26a21とドリブンプーリ26bの可動プーリ半体26b2のピストン室(DN)26b21に接続されると共に、他方では油路46gを介してCRバルブ(CR VLV)46hに接続される。
CRバルブ46hはPH圧を減圧してCR圧(低圧制御油圧)を生成し、油路46iから第1、第2、第3の(電磁)リニアソレノイドバルブ46j,46k,46l(LS-DR, LS-DN, LS-CPC)に供給する。
第1、第2のリニアソレノイドバルブ46j,46kはそのソレノイドの励磁に応じて決定される出力圧を第1、第2のレギュレータバルブ46e,46fに作用させ、よって油路46dから送られるPH圧の作動油を可動プーリ半体26a2,26b2のピストン室26a21,26b21に供給し、それに応じてプーリ側圧を発生させる。
従って、可動プーリ半体26a2,26b2を軸方向に移動させるプーリ側圧が発生させられてドライブプーリ26aとドリブンプーリ26bのプーリ幅が変化し、ベルト26cの巻掛け半径が変化する。このように、プーリの側圧を調整することで、エンジン10の出力を駆動輪12に伝達するレシオ(変速比)を無段階に変化させることができる。
CRバルブ46hの出力(CR圧)は第3のリニアソレノイドバルブ46lのソレノイドの励磁に応じて調圧され、油路46mを介して前記したマニュアルバルブ(MAN VLV。符号46oで示す)に送られ、そこから前後進切換装置28の前進クラッチ28aのピストン室(FWD)28a1と後進ブレーキクラッチ28bのピストン室(RVS)28b1に接続される。
マニュアルバルブ46oは、前記した如く、運転者によって操作(選択)されたレンジセレクタ44の位置に応じて第3のリニアソレノイドバルブ46lで調圧された出力を前進クラッチ28aと後進ブレーキクラッチ28bのピストン室28a1,28b1のいずれかに接続する。
また、PH制御バルブ46cの出力は、油路46pを介してTCレギュレータバルブ(TC REG VLV)46qに送られ、TCレギュレータバルブ46qの出力はLCコントロールバルブ(LC CTL VLV)46rを介してLCシフトバルブ(LC SFT VLV)46sに接続される。
LCシフトバルブ46sの出力は一方ではトルクコンバータ24のロックアップクラッチ24cのピストン室24c1に接続されると共に、他方ではその背面側の室24c2に接続される。
LCシフトバルブ46sを介して作動油がピストン室24c1に供給される一方、背面側の室24c2から排出されると、ロックアップクラッチ24cが係合(オン)され、背面側の室24c2に供給される一方、ピストン室24c1から排出されると、解放(オフ)される。ロックアップクラッチ24cのスリップ量は、ピストン室24c1と背面側の室24c2に供給される作動油の量によって決定される。
CRバルブ46hの出力は油路46tを介してLCコントロールバルブ46rとLCシフトバルブ46sに接続されると共に、油路46tには第4のリニアソレノイドバルブ(LS-LC)46uが介挿される。ロックアップクラッチ24cのスリップ量は、第4のリニアソレノイドバルブ46uのソレノイドの励磁・非励磁によって調整(制御)される。
さらに、油圧ポンプ46aの下流でPH制御バルブ46cの上流に相当する位置には電動モータ46vに接続される電動油圧ポンプ(Electric Oil Pump。送油ポンプ)46wがチェックバルブ46xを介して接続される。電動油圧ポンプ46wは、油圧ポンプ46aと別に、自動変速機Tに油圧を供給可能な油圧供給手段として機能する。
電動油圧ポンプ46wも油圧ポンプ46aと同様にギヤポンプからなり、電動モータ46vで駆動され、リザーバ46bに貯留された作動油を汲み上げてPH制御バルブ(PH REG VLV)46cに圧送する。
尚、この明細書において自動変速機Tはトルクコンバータ24とCVT26と前後進切換機構28(より具体的にはその前進クラッチ28a(あるいは後進ブレーキクラッチ28b))からなる。
図1の説明に戻ると、エンジン10のカム軸(図示せず)付近などの適宜位置にはクランク角センサ50が設けられ、ピストンの所定クランク角度位置ごとにエンジン回転数NEを示す信号を出力する。吸気系においてスロットルバルブの下流の適宜位置には絶対圧センサ52が設けられ、吸気管内絶対圧(エンジン負荷)PBAに比例した信号を出力する。
DBW機構16のアクチュエータにはスロットル開度センサ54が設けられ、アクチュエータの回転量を通じてスロットルバルブの開度THに比例した信号を出力する。
また前記したアクセルペダル(符号56で示す)の付近にはアクセル開度センサ56aが設けられて運転者のアクセルペダル操作量に相当するアクセル開度APに比例する信号を出力すると共に、ブレーキペダル36の付近にはブレーキスイッチ36aが設けられて運転者のブレーキペダル36の操作に応じてオン信号を出力する。
さらに、エンジン10の冷却水通路(図示せず)の付近には水温センサ60が設けられ、エンジン冷却水温TW、換言すればエンジン10の温度に応じた出力を生じる。
上記したクランク角センサ50などの出力は、エンジンコントローラ66に送られる。エンジンコントローラ66はマイクロコンピュータを備え、それらセンサ出力に基づいて目標スロットル開度を決定してDBW機構16の動作を制御すると共に、燃料噴射量を決定してインジェクタ20を駆動する。
メインシャフトMSにはNTセンサ(回転数センサ)70が設けられ、タービン・ランナ24bの回転数、具体的にはメインシャフトMSの回転数NT、具体的には変速機入力軸回転数、より具体的には前進クラッチ28aの入力軸回転数を示すパルス信号を出力する。
CVT26のドライブプーリ26aの付近の適宜位置にはNDRセンサ(回転数センサ)72が設けられてドライブプーリ26aの回転数NDR、換言すれば前進クラッチ28aの出力軸回転数に応じたパルス信号を出力する。
ドリブンプーリ26bの付近の適宜位置にはNDNセンサ(回転数センサ)74が設けられてドリブンプーリ26bの回転数NDN(カウンタシャフトCSの回転数(変速機出力軸回転数))を示すパルス信号を出力すると共に、セカンダリシャフトSSのギヤ30bの付近にはVセンサ(回転数センサ)76が設けられてセカンダリシャフトSSの回転を通じて車速Vを示すパルス信号を出力する。
前記したレンジセレクタ44の付近にはレンジセレクタスイッチ44aが設けられ、運転者によって選択されたR,N,Dなどのレンジに応じた信号を出力する。
図2に示す如く、変速機油圧供給機構46においてCVT26のドリブンプーリ26bに通じる油路には油圧センサ82aが配置されてドリブンプーリ26bの可動プーリ半体26b2のピストン室26b21に供給される油圧に応じた信号を出力する。
また、前進クラッチ28aのピストン室28a1とマニュアルバルブ46oの間の油路には第2の油圧センサ82bが配置されて前進クラッチ28aのピストン室28a1に供給される油圧に応じた信号を出力すると共に、トルクコンバータ24のロックアップクラッチ24cに通じる油路には第3の油圧センサ82cが配置されてロックアップクラッチ24cのピストン室28c1に供給される油圧に応じた信号を出力する。
これら第1、第2、第3の油圧センサ82a,82b,82cを油圧センサ82と総称する。さらに、リザーバ46bには油温センサ84が配置されて油温(作動油ATFの温度TATF)に応じた信号を出力する。
図1の説明に戻ると、上記したNTセンサ70などの出力は、図示しないその他のセンサの出力も含め、シフトコントローラ90に送られる。シフトコントローラ90もマイクロコンピュータを備えると共に、エンジンコントローラ66と通信自在に構成される。
シフトコントローラ90は、それら検出値に基づき、変速機油圧供給機構46の第1から第4のリニアソレノイドバルブ46jなどを励磁・非励磁して前後進切換装置28とCVT26とトルクコンバータ24の動作を制御する。
さらにシフトコントローラ90は、それら検出値に基づき、変速機油圧供給機構46の電動モータ46vの通電量を決定し、駆動回路(図示せず)を介して電動モータ46vに通電して電動油圧ポンプ46wを駆動する。
また、エンジンコントローラ66は燃料噴射制御などに加え、車両14のアイドルストップ制御を実行する。
図3はこの実施例に係る装置の動作、具体的にはエンジンコントローラ66のアイドルストップ(IS)制御、より具体的にはアイドルストップの許可判定を示すフロー・チャートである。図示のプログラムは所定時間、例えば10msecごとに実行される。
以下説明すると、S10においてBRK ON、即ち、ブレーキペダル36が運転者によって操作されているか(踏まれているか)否かブレーキスイッチ36aの出力から判断し、否定されるときはS12に進み、IS(アイドルストップ)不許可、即ち、ISを禁止する。
一方、S10で肯定されるときはS14に進み、AP OFF、即ち、アクセルペダル56が操作されていないか(踏まれていないか)否かアクセル開度センサ56aの出力から判断し、否定されるときはS12に進む。
一方、S14で肯定されるときはS16に進み、車速Vが零か否かをVセンサ76の出力から判断し、否定されるときはS12に進む。
一方、S16で肯定されるときはS18に進み、CVT26のレシオ(変速比)がロー(Low)か否かをシフトコントローラ90に通信して得た情報から判断し、否定されるときはS12に進む。
S10からS18までがIS(アイドルストップ)の所定の許可条件に相当し、S10からS18で肯定されてISの所定の許可条件が全て成立したときはS20に進み、スリップ判定フラグF(後述)のビットが1にセットされているか否か判断する。
S20で肯定されたときはS12に進み、IS(アイドルストップ)不許可、即ち、ISを禁止する。一方、S20で否定されるときはS22に進み、IS(アイドルストップ)を許可する(アイドルストップを開始する)。
図4は、この実施例に係る装置の動作、具体的にはエンジンコントローラ66のアイドルストップ時のアイドルストップ終了(復帰)処理を示すフロー・チャートである。図示のプログラムも所定時間、例えば10msecごとに実行される。
以下説明すると、S100においてIS ENGスタート、即ち、IS(アイドルストップ)の既定の復帰条件が成立してISが終了され、エンジン10が再び始動されつつあるか否か判断する。
図5は図3、図4の処理を説明するタイム・チャートである。
この実施例は、図示の如く、時刻t1でIS(アイドルストップ)許可条件が成立してIS指令がなされた後、時刻t2でISの既定の復帰条件が成立されてIS停止が許可され、エンジン10の始動が要求されてエンジン10が再始動されつつある状況を前提とする。
尚、ISの既定の復帰条件とは、BRK OFF、即ち、ブレーキペダル36が運転者によって操作されていない(踏まれていない)ことと、AP ON、即ち、アクセルペダル56が操作されている(踏まれている)ことのうちのいずれかである。
図4の説明に戻ると、S100で否定されるときは以降の処理をスキップする一方、肯定されるときはS102に進み、変速機入力軸回転数(前進クラッチ28aの入力軸回転数)NTからドライブプーリ26aの回転数(前進クラッチ28aの出力軸回転数)NDRを減算した差回転が所定値SLIP1以上か、即ち、前進クラッチ28aの入出力回転数の差回転が所定値SLIP1以上、換言すれば前進クラッチ28aのスリップが所定値以上か否か判断する。
S102で肯定されるときはS104に進み、前記したスリップ判定フラグFのビットを1にセットする。
一方、S102で否定されるときはS106に進み、ドライブプーリ26aの回転数NDRからレシオ(変速比)とドリブンプーリ26bの回転数(変速機出力軸回転数)NDNの積を減算して得た差回転が所定値SLIP2以上か、即ち、CVT26の入出力回転数の差回転が所定値SLIP2以上か、換言すればCVT26のスリップが所定値以上か否か判断する。
S106で肯定されるときはS104に進み、スリップ判定フラグFのビットを1にセットする一方、否定されるときはS108に進み、スリップ判定フラグFのビットを0にリセットする。
上記でドライブプーリ26aの回転数は前進クラッチ28aを介して変速機入力軸回転数(前進クラッチ28aの入力軸回転数)NTと関連する一方、CVT26を介してドリブンプーリ26bの回転数(変速機出力軸回転数)NDNに関連することから、S102,S106の判断はCVT26(換言すれば自動変速機T)の入力軸と出力軸の差回転を検出して所定値(SLIP1,SLIP2)以上か否か判断することに相当する。
従って、スリップ判定フラグFのビットが1にセットされることは、CVT26(換言すれば自動変速機T)の入力軸と出力軸の差回転が所定値(SLIP1あるいはSLIP2)以上と判断されたことを意味する。
スリップ判定フラグFのビットは一旦1にセットされると、その現在(換言すれば同一)のドライビングサイクルの間は1にセットされ続けることから、結果として検出された差回転が所定値以上のとき、所定の許可条件が成立しても現在のドライビングサイクルの間はアイドルストップが禁止される。
ここで「ドライビングサイクル」は、車両14のエンジン10のイグニションスイッチが運転者によってオンされてからオフされる、より具体的には運転者が車両14に乗車してイグニションスイッチをオンしてエンジン10を始動し、目的地などに到着してイグニションスイッチがオフされてエンジン10を停止するまでの時間を意味する。
図6は、エンジンコントローラ66による図4の処理と平行してシフトコントローラ90によって実行される前進クラッチ28aへの油圧供給制御を示すフロー・チャートである。図示のプログラムも所定時間、例えば10msecごとに実行される。
以下説明すると、S200においてスリップ判定フラグFのビットが1にセットされているか、換言すれば既定の復帰条件が成立してエンジン10を再始動するとき、CVT26(換言すれば自動変速機T)の入力軸と出力軸の差回転が所定値(SLIP1あるいはSLIP2)以上と判断されているか否か判断し、否定されるときは以降の処理をスキップする。
一方、S200で肯定されるときはS202に進み、前進クラッチ28a(あるいは後進ブレーキクラッチ28b)が徐々に係合するように油圧供給を制御する。
即ち、CVT26の入力軸と出力軸の差回転が所定値(SLIP1あるいはSLIP2)未満と判断される場合、前進クラッチ28a(あるいは後進ブレーキクラッチ28b)の異常・磨耗などに起因するスリップあるいはCVT26のベルト26cのスリップしたと検知されることから、図5に示す如く、前進(FWD)クラッチ28aへの単位時間(例えば10msec)当たりの油圧供給量(通常時の油圧供給。同図に符号aで示す)よりも減少させた油圧供給量(同図に符号bで示す)とする。
このように前進クラッチ28a(あるいは後進ブレーキクラッチ28b)を係合させるとき、徐々に(緩慢に)油圧を供給して徐々に係合させることで、自動変速機Tを適切に保護することができると共に、乗員に与える発進ショックを緩和することができる。
また、検出された差回転が所定値以上のとき、所定の許可条件が成立しても既定の期間(現在のドライビングサイクルの間)はアイドルストップを禁止するように構成したので、上記した効果に加え、前進クラッチ28a(あるいは後進ブレーキクラッチ28b)に供給される単位時間当たりの油圧供給量を減少させることによる車両発進時の応答性の低下を抑制(あるいは一層効果的に抑制)することができる。
尚、図7に示す如く、電動油圧ポンプ46wに代え、油圧ポンプ46aの下流で前進クラッチ28a(あるいは後進ブレーキクラッチ28b)に接続される油路46i(あるいは46g)にアキュムレータ(蓄圧器)46yを設けても良い。その場合、アキュムレータ46yはシフトコントローラ90で開閉が制御される弁体46y1を介して油路46iに接続される。
シフトコントローラ90は所定の時点で弁体46y1を開弁して油圧ポンプ46aによって生成された油圧をアキュムレータ46yに蓄圧させた後に弁体46y1を閉弁させ、次いでアイドルストップが終了して車両が発進されるとき、弁体46y1を再度開弁して蓄圧させた油圧を油路46iに出力させるように構成される。
アキュムレータ46yは油圧ポンプ46aに接続され、油圧ポンプ46aで生成された油圧を蓄圧し、油圧ポンプ46aが動作しないとき、蓄圧された油圧を出力する。即ち、アキュムレータ46yも、電動油圧ポンプ46wと同様、油圧ポンプ46aと別に、自動変速機Tに油圧を供給可能な油圧供給手段として機能する。尚、アキュムレータ46yの構造はどのようなものでも良い。
上記した如く、この実施例にあっては、車両14に搭載されるエンジン10と、前記エンジン10で駆動される油圧ポンプ46aと、前記油圧ポンプ46aから供給される油圧で動作して入力軸(メインシャフトMS)から摩擦係合要素(前進クラッチ28a、後進ブレーキクラッチ28b)を介して入力される前記エンジン10の出力を変速して出力軸(カウンタシャフトCS)から駆動輪12に伝達する自動変速機Tと、所定の許可条件が成立したときに前記エンジン10のアイドルストップを実行すると共に(エンジンコントローラ66,S10,S14からS28,S22)、既定の復帰条件が成立したときに前記アイドルストップを終了する(エンジンコントローラ66,S100)車両の制御装置において、前記油圧ポンプと別に前記自動変速機Tに油圧を供給可能な油圧供給手段(電動油圧ポンプ46w、アキュムレータ46y)と、前記既定の復帰条件が成立して前記エンジン10を始動するとき、前記入力軸と出力軸の差回転、より具体的には変速機入力軸回転数(前進クラッチ28aの入力軸回転数)NTとドライブプーリ26aの回転数(前進クラッチ28aの出力軸回転数)NDRの差回転あるいはドライブプーリ26aの回転数NDRとドリブンプーリ26bの回転数(変速機出力軸回転数)NDN(とレシオの積)の差回転を検出する差回転検出手段(S102,S106)と、前記検出された差回転が所定値(SLIP1,SLIP2)以上のとき、前記油圧ポンプと前記油圧供給手段の少なくともいずれかから前記摩擦係合要素に供給される単位時間当たりの油圧供給量を、前記検出された差回転が前記所定値未満のときよりも減少させる制御手段(シフトコントローラ90,S200,S202)を備える如く構成したので、自動変速機Tの入力軸と出力軸の差回転を検出して所定値以上か否か判断することで、自動変速機Tの摩擦係合要素の異常・磨耗に起因するスリップあるいは自動変速機TがCVT26からなるときの機械的な部分の異常・磨耗に起因するベルト26cなどの無端可撓部材のスリップなどの検知が可能となり、そのような場合に摩擦係合要素を係合させるとき、徐々に係合させることが可能となることから、自動変速機を適切に保護することができると共に、乗員に与える発進ショックを緩和することができる。
また、前記検出された差回転が前記所定値以上のとき、前記所定の許可条件が成立しても既定の期間は前記アイドルストップを禁止するアイドルストップ禁止手段を備える如く構成したので、上記した効果に加え、上記した効果に加え、摩擦係合要素に供給される単位時間当たりの油圧供給量を減少させることによる車両発進時の応答性の低下を抑制することができる。
また、前記既定の期間が現在(換言すれば同一)のドライビングサイクルの間である如く構成したので、車両発進時の応答性の低下を一層効果的に抑制することができる。
尚、上記において自動変速機TとしてCVTを図示したが、それに限られるものではなく、有段変速機であっても良い。さらにCVTも無端可撓部材がベルトに限られるものではなく、チェーンであっても良い。