JP2013036583A - 変速機 - Google Patents

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Abstract

【課題】連続してダウン変速を行う際の加速の途切れ感の防止と変速速度向上とを適正に実現する変速機を提供すること。
【解決手段】いわゆるデュアルクラッチタイプの変速機において、2回以上ダウン変速が連続する場合に、最初のダウン変速(時間B〜時間F)ではクラッチを切断後、ブリッピングを行ってからクラッチを接合しているのに対し、2回目以降のダウン変速を開始する時(時間E)のように、その前のダウンシフトが完了していない場合にはクラッチを完全に切断しないことによって加速感の途切れを抑制している。
【選択図】図3

Description

本発明は、変速制御方法に特徴を持つ変速機に関し、特に2つのクラッチを有するデュアルクラッチの変速機に関する。
車両の変速機の1つに、2つのクラッチを有するいわゆるデュアルクラッチを用いた変速機(DCT)がある。DCTは、変速段を切り替える際に、トルク伝達が切れることなく速やかに変速動作を行うことができる等の特徴を有している。
ところで、DCTは、接続状態とされている一方のクラッチに対応する入力軸上の変速段で走行中、切断状態とされている他方のクラッチに対応する入力軸上の変速段を予め選択することにより変速要求に速やかに変速できるように変速制御されている。予め選択する変速段は、通常、現在の車両状態、例えば車速やアクセル開度等からシフトマップを用いて決定する(特許文献1)。
ここで、変速動作にはアップ変速とダウン変速とがある。ダウン変速時にはDCTに限らず変速機の入力軸について、その回転数の上昇に合わせてエンジンの回転数も上昇させる必要がある。エンジンの制御を行わない時にはクラッチの摩擦力に頼って回転数の上昇を行うことになる。この回転数の上昇を速やかに行おうとすると、クラッチを速やかに接続する必要が有り、そうすると変速ショックが大きくなって搭乗者に違和感を覚えさせたり、車両の安定性に影響を与えたりすることになる。そこで、速やかなダウン変速を行うための従来技術としてはいわゆるブリッピング(エンジンの空ぶかし)を行うことがある。ブリッピングによって、ダウンシフト後の変速機の入力軸の回転数に相当する回転数にまでエンジンの回転数を上昇させることで、クラッチを迅速に接続することが可能になって、速やかなダウン変速を滑らかに行うことが可能になる。
特開2007−292250号公報
しかしながら、クラッチを完全に遮断してブリッピングを行うことにより変速の動作は速くできるものの、ブリッピングを行っている間はエンジントルクが変速機に伝達されずに、加速感が途切れることになる。
例えば、アクセル開度を急激に大きくした場合などではダウン変速の指示が連続して発生することがある。その場合に、2つ目以降のダウン変速の指示が1つ前の変速を開始する前に行われるなど2つの変速指示が間髪を入れず速やかになされる場合には途中の変速段を飛ばして一気に2つのダウン変速を行うことも可能であるが、そうでない場合にはダウン変速が1つずつ行われることになる。このようなダウン変速時においてはブリッピングを行うことでダウン変速に要する時間を短縮することができるものの、加速の途切れが連続して発生し、搭乗者に違和感を覚えさせることもある。また、DCTにおいては、途中の変速段を飛ばして変速を行う場合であっても、予め接続されている途中の変速段に一旦変速した方が加速感の途切れが少なくなる場合がある。その場合にも連続してダウン変速を行う際にブリッピングを行うことで、前述した別種の違和感が生じることになる。
本発明は、上記課題に鑑みて完成したものであり、連続してダウン変速を行う際の加速の途切れ感の防止と変速速度向上とを適正に実現する変速機を提供することを解決すべき課題とする。
上記課題を解決する請求項1に記載の変速機の特徴は、動力源の回転軸に接続される接続状態と前記動力源から切断される切断状態とを切り替え可能である第1クラッチ及び第2クラッチと、
前記第1クラッチにより前記動力源に断続可能に接続される第1入力軸と、
前記第2クラッチにより前記動力源に断続可能に接続される第2入力軸と、
出力軸と、
前記第1入力軸と前記出力軸との間に設けられた変速段の組み合わせである第1歯車機構と前記複数の変速段のうちの1つを選択する第1歯車機構選択手段とを有する第1変速機構と、
前記第2入力軸と前記出力軸との間に設けられた変速段の組み合わせである第2歯車機構と前記複数の変速段のうちの1つを選択する第2歯車機構選択手段とを有する第2変速機構と、
前記第1クラッチ、前記第2クラッチ、前記第1歯車機構選択手段、及び前記第2歯車機構選択手段を制御する制御手段と、
を有する変速機であって、
前記制御手段は、
適正な変速段を選択しその変速段に対応する変速信号を出力する変速段選択手段と、
前記変速段選択手段から入力される変速信号に従い前記適正な変速段に向けて現在の変速段から変速動作を行う変速指示手段と、を有し、
前記変速指示手段は、
1つ前の変速動作が完了した後に、ダウン変速を行う変速信号が前記変速段選択手段から入力されたときには、そのダウン変速前に動力を伝達している側のクラッチのクラッチトルクを遮断した状態で、前記動力源の回転軸の回転数を、前記第1及び前記第2入力軸のうちの変速前に動力を伝達する側の入力軸の回転数超にするブリッピング部と、
1つ前の変速がダウン変速であって且つその変速動作に連続して、変速前後で異なる歯車機構がもつ変速段に向けたダウン変速を行う変速信号が前記変速段選択手段から入力されたときには、前記第1クラッチ及び前記第2クラッチのうち変速前に動力を伝達している側のクラッチである一方のクラッチにおけるクラッチトルクは他方のクラッチにおけるクラッチトルクが0超の値になるまでは前記動力源が出力するエンジントルクよりも小さく且つ0超の値とする掛替部とをもつことにある。
つまり、本発明の変速機では複数回のダウン変速が続けて行われる際に1つ前の変速動作が完了した後に変速信号が入力された場合に「ブリッピング部」が作動し、1つ前の変速がダウン変速で且つその変速動作に連続して変速信号が入力された場合に「掛替部」が作動することになる。
ここで、本明細書において「変速動作が完了する」とは変速後に駆動に用いられる変速段がある歯車機構に対応するクラッチのクラッチトルクの制御が終了(それ以上増加されない)することをいう。そして、「変速動作が完了した後」とは「変速動作が完了」してから所定時間以上経過したかどうかで判断する。この所定時間としては0以上、0超、0.1秒、0.2秒、0.3秒、0.4秒、0.5秒、0.6秒、0.7秒、0.8秒、0.9秒、1.0秒などの一定の時間が設定できる。「変速動作が完了」してから定められた所定時間が経過した後に変速信号が入力されれば「変速動作が完了した後」であると判断する。これとは反対に「1つ前の変速動作に連続している」とは「変速動作が完了」してからこの所定時間が経過するより前に次の変速信号が入力されることを意味する。つまり、「変速動作が完了」していない場合は「変速動作が連続」することになる。なお、この所定時間は一連の変速動作毎に設定することができる。つまり、最初に「ブリッピング部」が作動してから「掛替部」が作動し続ける限り所定時間は一定の値を採用し続ける。所定時間が短いほど「ブリッピング部」が作動しがたくなり加速感の途切れ防止効果が向上する。
また、変速段選択手段が選択する適正な変速段とは、車速、アクセル開度などの車両状態から何らかの方法により導出される変速段(つまり、その車両状態のときには、その選択された変速段にて走行することが望ましい場合)の他に、その車両状態のときに選択されるべき変速段に移行させるときの遷移の過程において一時的に選択する変速段(例えば、5速から3速への変速など変速段を飛ばす場合に、加速感の途切れなどを抑制する目的で間の4速に一時的に変速する場合など)であってもよい。
上記課題を解決する請求項2に記載の変速機の特徴は、請求項1において、前記掛替部は、前記他方のクラッチに対応する入力軸の回転数に前記動力源の回転軸の回転数が至ったときに前記一方のクラッチのクラッチトルクの漸減を開始することにある。
上記課題を解決する請求項3に記載の変速機の特徴は、前記掛替部は前記1つ前の変速が完了する前に次のダウン変速を行うときに作動することにある。
請求項1に記載の発明によると、前の変速が完了した後に行われるダウン変速については通常通りの変速動作(ブリッピング部)を行うことで速やかな変速動作が実現でき、前に行われるダウン変速が完了する前に次のダウン変速が開始される場合には、変速の切り替え前の変速段に対応するクラッチのクラッチトルクを変速の切り替え後の変速段に対応するクラッチのクラッチトルクが立ち上がるまでは完全に遮断しないようにしている(掛替部)ため、エンジントルクは僅かであっても常時出力軸側に伝達されるから、常に加速感が途切れることなくダウン変速を行うことが可能になる。
また、1つ前に行った変速動作が完了した後に開始した第1のダウン変速においてはクラッチを完全に遮断した上でブリッピングも行うことにより速やかに変速を行うことができる。その第1のダウン変速が完了する前に開始された第2のダウン変速においては現在駆動に用いているクラッチを完全に遮断せずに変速を行うため、変速には時間がかかるものの加速感の途切れは抑制できる。
請求項2に記載の発明によると、掛替部は、変速後に使用する入力軸である他方の入力軸の回転数に至った時に一方のクラッチのクラッチトルクを漸減させるようにしている。その後は他方のクラッチを介して動力源から出力されるエンジントルクを効率的に伝達させることができる。従って、ぎりぎりまで一方のクラッチを介してエンジントルクを伝達することが可能になり、加速感の途切れを抑制できる。
請求項3に記載の発明によると、掛替部が作動する条件をこのように設定することによりその他の場合における制御を適正に行うことができる。
本実施形態の変速機の構成を示す説明図である。 本実施形態の変速機の制御フローチャートである。 本実施形態の変速機の主な構成要素についてのタイムチャートである。
本発明の変速機について代表的な実施形態に基づき以下詳細に説明を行う。本実施形態に係る変速機は、車両に搭載される。なお、説明に用いる各図は概念図であり、各部の形状は必ずしも厳密なものではない場合がある。また、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。例えば、制御手段を除いた変速機の機械的な構成については、本明細書にて説明した以外のデュアルクラッチ機構をもつ変速機とすることができる。また、制御手段についても発明の思想が同様である限り、細かいロジックの相違は問題としない。
本発明の変速機1は、図1に示されるように、第1クラッチC1と、第2クラッチC2と、第1入力軸21と、第2入力軸22と、出力軸23と、第1変速機構3と、第2変速機構4と、制御手段5とを有する。
第1クラッチC1は、動力源としての内燃機関(エンジン、図示略)と後述する第1入力軸21との間に位置し、内燃機関の出力トルクを第1入力軸21側に伝達するかしないかの断続を行う装置である。内燃機関からの出力トルクが第1入力軸21に伝達される場合が接続状態で、内燃機関からの出力トルクが第1入力軸21に伝達されない場合が切断状態である。
第2クラッチC2は、内燃機関と後述する第2入力軸22との間に位置する。そして、内燃機関の出力トルクを第2入力軸22側に伝達するかしないかの断続を行う装置である。内燃機関からの出力トルクが第2入力軸22に伝達される場合が接続状態で、内燃機関からの出力トルクが第2入力軸22に伝達されない場合が切断状態である。
第1クラッチC1及び第2クラッチC2は、後述する制御部5からの信号により制御されるが、動力源とし電気式又は流体圧式のアクチュエータ7により駆動する。これらのクラッチC1及びC2はアクチュエータ7によりクラッチストロークを調整することでクラッチトルクが制御される。
第1入力軸21は、第1クラッチC1に連結して回転トルクを伝達する棒状の部材である。第2入力軸22は、第2クラッチC2に連結して回転トルクを伝達し、第1入力軸21と同軸で、第1入力軸21の外周側に位置する円筒状の部材である。
出力軸23は、第1及び第2入力軸21、22と平行に配置され、後述する第1及び第2変速機構3、4を経て伝達された出力トルクを車輪(図示略)側に出力する棒状の部材である。
第1変速機構3は、第1歯車機構31と第1歯車機構選択手段32とを有する。第1歯車機構31は、第1入力軸21と出力軸23との間に設けられた変速段1速、3速、5速、7速の組み合わせである。そして、各変速段と後述するスリーブ321との間に同期装置(図示略)を有する。各変速段は第1入力軸21の外周側を相対回転可能に保持される変速ギヤ311〜314と、第1入力軸21及び第2入力軸22に平行に配置されるカウンタ軸61にカウンタ軸61と一体回転可能に固定され変速ギヤ311〜314に対応するカウンタギヤ62とからなる。変速段1速が変速ギヤ311、変速段3速が変速ギヤ312、変速段5速が変速ギヤ313、及び変速段7速が変速ギヤ314である。
第1歯車機構選択手段32は、スリーブ321とフォーク322とフォークシャフト323とアクチュエータ324とを有する。スリーブ321は、円筒状の部材で第1入力軸21の外周側で第1入力軸21と一体回転可能に、2つの変速段の間に位置する。本実施形態1では、1速と7速との間に1つと、3速と5速との間に1つの計2つのスリーブ321が配置されている。スリーブ321は、どちらの変速段にも係合しない中立位置と変速段と係合する係合位置とを有し、中立位置と係合位置とを軸方向に移動する。フォーク322は、スリーブ321の外周側に位置し、スリーブ321が2つの変速段の間(中立位置と係合位置との間)を回転しながら移動することができるようにスリーブ321と係合している。フォークシャフト323は、フォーク322と一体的に係合している棒状の部材である。そして、フォークシャフト323は、フォーク322がスリーブ321を移動させるのと同時に移動可能にアクチュエータ324によって移動する。
第2変速機構4は、第2歯車機構41と第2歯車機構選択手段42とを有する。第2歯車機構41は、第2入力軸22と出力軸23との間に設けられた変速段2速、4速、6速、リバース(後退)の組み合わせである。そして、各変速段と後述するスリーブ421との間に同期装置(図示略)を有する。各変速段は第2入力軸22の外周側を相対回転可能に保持される変速ギヤ411〜414と、カウンタ軸61に一体回転可能に固定され変速ギヤ411〜414に対応するカウンタギヤ62とからなる。変速段2速が変速ギヤ411、変速段4速が変速ギヤ412、変速段6速が変速ギヤ413、及び変速段リバースが変速ギヤ414である。
リバースは、変速ギヤ414とカウンタギヤ62との間にあるアイドラギヤ63とにより実現される。アイドラギヤ63は、第1入力軸21、第2入力軸22、及びカウンタ軸61と平行で回転不能に固設されているアイドラギヤ軸64に、回転可能且つ軸方向に移動可能に保持されている。リバースが変速段として選択された場合に、変速ギヤ414とカウンタギヤ62との間であってそれぞれに噛合するようにアイドラギヤ63が軸方向に移動させられる。そうすると、第2入力軸22の回転がリバースの変速ギヤ414に伝達され、アイドラギヤ63が回転し、そしてカウンタギヤ62が回転しカウンタ軸61が回転する。
第2歯車機構選択手段42は、スリーブ421とフォーク422とフォークシャフト423とアクチュエータ424とを有する。スリーブ421は、円筒状の部材で第2入力軸22の外周側で第2入力軸22と一体回転可能に、2つの変速段の間に位置する。本実施形態1では、2速と4速との間に1つと、6速とリバースとの間に1つの計2つのスリーブ421が配置されている。スリーブ421は、どちらの変速段にも係合しない中立位置と変速段と係合する係合位置とを有し、中立位置と係合位置とを軸方向に移動する。フォーク422は、スリーブ421の外周側に位置し、スリーブ421が2つの変速段の間(中立位置と係合位置との間)を回転しながら移動することができるようにスリーブ421と係合している。フォークシャフト423は、フォーク422と一体的に係合している棒状の部材である。そして、フォークシャフト423は、フォーク422がスリーブ421を移動させるのと同時に移動可能にアクチュエータ424によって移動する。
第1歯車機構選択手段32及び第2歯車機構選択手段42は、後述する制御部5からの信号により制御され、アクチュエータ324及び424は、動力源として一般的な電気式、流体圧式、液圧シリンダ又は空圧シリンダなどによって駆動する。
制御手段5は、第1クラッチC1、第2クラッチC2、第1歯車機構選択手段32、第2歯車機構選択手段42を制御する。制御手段5は変速段選択手段と変速指示手段とをもつ。
変速段選択手段は車両の状態(車速、アクセルペダル(図略)の開度、ブレーキペダル(図略)の操作量、ハンドル(図略)の操作量、ナビゲーションシステムなどから取得できる道路情報などから任意に選択した情報を使用できる)に基づいて要求される、適正な変速段(要求変速段)を選択しその変速段に対応する変速信号を出力する手段である(シフトの制御)。変速信号は変速段を変える(変速を行う)ときにだけ出力するようにすることもできるし、常時変速信号を出力しておいて後述する変速指示手段において変速信号が指示する変速段が変化したときにのみ変速指示を行うようにすることもできる。適正な変速段の選択は予め作成しておいたシフトマップに従い行う方法のほか、何らかの計算式を用いてその都度算出しても良い。変速段選択手段は、現在選択すべき変速段を選択するほか、現在使用している歯車機構とは別の歯車機構において予め選択すべき変速段の選択も行うこともできる(プレシフトの制御)。プレシフトの制御において選択すべき変速段(プレシフト変速段)の選択も通常の変速段の選択と同様に予め用意したプレシフトマップを用いて選択したり、何らかの計算式などを用いて選択したりすることができる。また、5速から3速への変速を行うなど変速段を飛ばして変速を行う場合には予めプレシフトされている変速段(5速から3速への変速の場合には4速の変速段)に一旦変速してから改めてそれ以下の変速段(この場合には3速)に変速し直すことも考えられるため、そのような変速段の選択を行うこともある。
変速指示手段は変速段選択手段から入力される変速信号に基づき変速する変速段を選択する。変速機の変速は大きく分けてギヤ比が小さな変速段に変速するアップ変速とギヤ比が大きな変速段に変速するダウン変速との2種類がある。アップ変速は車速が上昇したり、アクセル開度が小さくなったときなどの状態変化に基づいて行われる変速であり、ダウン変速はアップ変速とは反対に車速が下がったりアクセル開度が大きくなったときなどの状態変化に基づいて行われる変速である。
変速指示手段はこの変速信号が示す変速段になるように第1及び/又は第2変速機構を動作させる手段である。プレシフトを行う変速段についても選択するように第1及び/又は第2変速機構を動作させる。
(変速動作)
変速段指示手段が変速を指示する概略を説明する。説明は、アップ変速(1速から2速など)、ダウン変速(4速から3速など)に分けて行う。具体的には第1歯車機構31がもつ変速段から第2歯車機構41がもつ変速段の場合について説明する。反対の場合には、第1と第2とが入れ替わるだけであるので説明は省略する。
・アップ変速
アップ変速を行う場合には第2歯車機構41について選択された目的の変速段が選択されていることを確認した後、第1クラッチC1を切断し、その後第2クラッチC2を接合する。第1クラッチC1の切断と第2クラッチC2の接合とは並行して行っても良い。並行して行うことにより加速感の途切れが低減できる。エンジントルクの大きさが小さくなるようにエンジンを制御することも望ましい。そうすることにより加速感の途切れを少なくした状態で速やかに第1入力軸21の回転数から第2入力軸22の回転数にエンジンの回転数を下げることができる。
・ダウン変速
ダウンシフトを行う場合には第2歯車機構41について選択された目的の変速段が選択されていることを確認した後、第1クラッチC1を切断し、その後第2クラッチC2を接合する。以下の(a)の制御は通常のダウン変速(直前の変速動作が完了した後(本実施例では所定時間として0秒が設定されている。以下同じ)に変速を開始した場合:ブリッピング部)におけるもの、(b)の制御は直前の変速動作がダウン変速であり且つその変速動作に連続して変速信号が入力されることで変速動作を開始する場合(掛替部)のものである。なお、ブリッピング部も掛替え部も作動しない場合も理論上ありうるが(例えば所定時間を1秒とし、1つ前の変速動作が完了する前に変速信号が入力されるときに掛替部が作動するとの設定がなされている場合に、変速動作が完了し且つ所定時間未満の時間しか経過していないような場合である)、その場合にはどのような制御を行うかは特に限定しない。例えばブリッピング部に類似する制御を行っても良いし、掛替部に類似する制御を行っても良いし、前述のアップシフト時の制御に類似する制御を行っても良い。
(a)第1クラッチを切断した後にエンジンの回転数を第2入力軸22の回転数以上に増加させることができる(ブリッピング)。その後、第2クラッチC2の接合を行うと速やかにクラッチの接合を完了することができる。
(b)第1クラッチC1の切断と第2クラッチC2の接合とは並行して行う。並行して行うことにより加速感の途切れが低減できる。特に、エンジンの回転数が第2入力軸22の回転にまで移行できるように充分な時間を掛けて第1クラッチC1に印加するクラッチトルクの大きさを漸減させることが望ましい。この場合の第1クラッチC1に加えるクラッチトルクの大きさはその時のエンジントルクよりも小さくすることによりエンジン回転数を漸増させることができる。特に、変速後の動力伝達を行う側のクラッチ(他方のクラッチ)に対応する入力軸の回転数にまで動力源の回転軸の回転数が至ったときに一方のクラッチのクラッチトルクの漸減を開始するで加速をより円滑に行うことができる。
・変速が2回以上連続して行われる場合
変速は通常変速段を1つずつ変化させるものであるが、アップ変速、ダウン変速ともに車両の状態変化の量が大きい場合(例えばアクセル開度を大きく変化させるような場合)には2つ以上の変化(例、1速から3速へ、5速から3速へ、など)を行うこともある。
そのような場合には間の変速段(例えば5速で動作中に3速を選択する場合における中間の変速段である4速)を選択せずに一気に目的の変速段(前述の場合において5速から3速へ直接変速する)に切り替えを行うこともある。また、一気に目的の変速段には変速せずに途中の3速を一時的に選択することもある。更に、車両の状態変化が一気に2つ以上の変速段を飛ばして切り替えるような大きさではなく、1つずつ変速を行うような指示が2つ以上続いて行われる場合がある。
そのような場合に前の変速動作が完了する前(第1クラッチC1の接合が完了する前)に次の変速動作の指示が生じた場合(特に一方の歯車機構がもつ変速段から他方の歯車機構がもつ変速段への変速動作が2回連続で行われる場合(第1のダウン変速に続いて第2のダウン変速を行う場合、第1のダウン変速はその前の変速が完了した後に選択されており、第2のダウン変速は第1のダウン変速が完了する前に選択されている)であって、両者共にダウン変速である場合)について図2及び3に基づいて説明を行う。具体的には5速、4速、そして3速の順にダウン変速を行う場合について説明を行う。他の変速段が関与するダウンシフトの場合であっても対応する変速段などが変わるだけであるので他の場合における説明は省略する。
まず、5速にて車両は動力を伝達している。第1クラッチC1が接合状態、第2クラッチC2が切断状態、そして第1歯車機構31のうちの5速のギヤ313が選択されている。第2歯車機構41については4速ギヤ412が選択されている。従って、エンジンから出力される動力は第1クラッチC1を介して第1入力軸21に伝達され、その後、5速ギヤ313、カウンタギヤ62を介して出力軸61に伝達されている(図3の領域A)。
・第1のダウン変速
アクセルの開度が一定値を超えたことに基づいて変速段選択手段は4速を選択する(図3の時間B)。変速段選択手段からの変速信号に基づいて変速指示手段は5速から4速への変速を開始する。この変速は上述の変速(a)のパターンで行う。変速指示手段はまず第1クラッチC1を切断する(図3の時間Bから時間C)。これは図2に示すステップS1の判定に従い行うものであり、今回の変速の開始が、前の変速動作と連続していないものであるからであり(ステップS1)、その後、ステップS2の第1クラッチC1の切断に移行する。
図3の時間Cにおいて切断が完了した後、第1歯車機構31については3速ギヤ312を選択しながら、並行してエンジンの回転数を第2入力軸22の回転数に到達するまで上昇(ブリッピング)する(ステップS3)。エンジンの回転数(図3において破線で示す)は第2入力軸22の回転数に点Xの時点で到達しその後、それより回転数が高い状態(点Y)に至る(ブリッピング)。その後、第2クラッチC2を接合させること(時間Dより時間F)によりエンジンの回転数は第2入力軸22の回転数に一致する(点Z:ステップS4)。
・第2のダウン変速
アクセル開度はこの変速動作中も継続して大きくなっており、時間Eにおいて変速段選択手段は3速を選択する。変速指示手段は3速への変速を開始する。この場合に第1のダウン変速は完了していない(変速動作は連続している)ため、上述の変速(b)のパターンで行う(ステップS1での判断)。
まず、第2クラッチC2を徐々に切断する(クラッチトルクを漸減する:時間G以降)。第2クラッチC2の切断は完全には行わず所定の大きさ(0<クラッチトルク<エンジントルク)にて一端保持する(時間Hから時間Jまで:ステップS5)。クラッチトルクの大きさはその時のエンジントルクよりも小さな値とすることによりエンジンの回転数を漸増することができる。クラッチトルクの大きさを保持するのはエンジンの回転数が第1入力軸21の回転数に一致するまでである(点Pから点Qに至るまで。時間Jにて点Qに至る。ステップS6)。その後、第2クラッチC2は完全に切断し(時間Jから時間K)、第1クラッチC1は接合を行う(時間Jから時間L:ステップS7)。なお、第1クラッチC1の接合の開始は第2クラッチの切断の開始(またはエンジン回転数と第1入力軸21の回転数との一致)のタイミングで行っているが、これはもっとも速く変速が完了するためのものであり、時間Jより遅いタイミングで第1クラッチC1の接合を開始しても良い。また、この場合における第1クラッチC1の接合は、エンジンの回転数と第1入力軸21の回転数とが一致しているため、速やかに行っても変速ショックなどの問題は生じ難い。
・ダウン変速が3回以上連続する場合
ダウン変速が3回以上連続して行われる場合には、それぞれのダウン変速について、その直前に行われたダウン変速が完了する前に変速動作が行われるかどうかでどのような制御を行うかが決定される。具体的には、直前のダウン変速が完了した後に変速動作を開始する場合には前述の(a)の制御を行い、直前のダウン変速が完了する前に変速動作を開始する場合には前述の(b)の制御を行う。
1:変速機、
21:第1入力軸、22:第2入力軸、23:出力軸、
3:第1変速機構、31:第1歯車機構、32:第1歯車機構選択手段、
311:1速(変速ギヤ)、312:3速(変速ギヤ)、313:5速(変速ギヤ)、314:7速(変速ギヤ)、321、421:スリーブ、322、422:フォーク、
323、423:フォークシャフト、324、424:アクチュエータ、
4:第2変速機構、41:第2歯車機構、42:第2歯車機構選択手段、
411:2速(変速ギヤ)、412:4速(変速ギヤ)、413:6速(変速ギヤ)、414:リバース(変速ギヤ)、
5,5B,5C,5D:制御手段、51:プレシフト時間予測手段、
52,53,54:変速段予測手段、521:車速算出手段、
522:アクセル開度算出手段、55:補正手段、
61、65、66:カウンタシャフト、62:カウンタギヤ、63:アイドラギヤ、
64:アイドラギヤ軸、
7:油圧システム、
C1:第1クラッチ、C2:第2クラッチ。

Claims (3)

  1. 動力源の回転軸に接続される接続状態と前記動力源から切断される切断状態とを切り替え可能である第1クラッチ及び第2クラッチと、
    前記第1クラッチにより前記動力源に断続可能に接続される第1入力軸と、
    前記第2クラッチにより前記動力源に断続可能に接続される第2入力軸と、
    出力軸と、
    前記第1入力軸と前記出力軸との間に設けられた変速段の組み合わせである第1歯車機構と前記複数の変速段のうちの1つを選択する第1歯車機構選択手段とを有する第1変速機構と、
    前記第2入力軸と前記出力軸との間に設けられた変速段の組み合わせである第2歯車機構と前記複数の変速段のうちの1つを選択する第2歯車機構選択手段とを有する第2変速機構と、
    前記第1クラッチ、前記第2クラッチ、前記第1歯車機構選択手段、及び前記第2歯車機構選択手段を制御する制御手段と、
    を有する変速機であって、
    前記制御手段は、
    適正な変速段を選択しその変速段に対応する変速信号を出力する変速段選択手段と、
    前記変速段選択手段から入力される変速信号に従い前記適正な変速段に向けて現在の変速段から変速動作を行う変速指示手段と、を有し、
    前記変速指示手段は、
    1つ前の変速動作が完了した後に、ダウン変速を行う変速信号が前記変速段選択手段から入力されたときには、そのダウン変速前に動力を伝達している側のクラッチのクラッチトルクを遮断した状態で、前記動力源の回転軸の回転数を、前記第1及び前記第2入力軸のうちの変速前に動力を伝達する側の入力軸の回転数超にするブリッピング部と、
    1つ前の変速がダウン変速であって且つその変速動作に連続して、変速前後で異なる歯車機構がもつ変速段に向けたダウン変速を行う変速信号が前記変速段選択手段から入力されたときには、前記第1クラッチ及び前記第2クラッチのうち変速前に動力を伝達している側のクラッチである一方のクラッチにおけるクラッチトルクは他方のクラッチにおけるクラッチトルクが0超の値になるまでは前記動力源が出力するエンジントルクよりも小さく且つ0超の値とする掛替部とをもつことを特徴とする変速機。
  2. 前記掛替部は、前記他方のクラッチに対応する入力軸の回転数に前記動力源の回転軸の回転数が至ったときに前記一方のクラッチのクラッチトルクの漸減を開始する請求項1に記載の変速機。
  3. 前記掛替部は前記1つ前の変速が完了する前に次のダウン変速を行うときに作動する請求項1又は2に記載の変速機。
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