JP2016109255A - 変速装置および変速制御方法 - Google Patents

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秀和 中島
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Abstract

【課題】シフトチェンジの際にギヤ鳴りが発生しないようにすること。
【解決手段】本発明の変速装置4では、制御装置Cは、クラッチCLを切断して行う所定の変速段から所定の変速段への変速の途中で、スリーブが変速後に係合しようとするギヤと、スリーブとの回転が同期するようにクラッチCLを一時的に接続させるクラッチ接続制御を行うものである。
【選択図】図1

Description

本発明は、変速装置および変速制御方法に関する。
車両の走行中に、車速や要求トルクなどに応じて自動的に機械式の変速機構が動作するAMT(Automated Manual Transmission)などと呼ばれる自動変速機(以下では、単に、変速機と称する。)がある。
このような変速機は、入力軸、カウンタシャフト、複数のドライブギヤ、メインシャフト、ドリブンギヤ、係合装置を有している。そして、エンジンの回転は、入力軸を介してカウンタシャフトに伝達され、その際にカウンタシャフトのドライブギヤも一体的に回転する。ドライブギヤはメインシャフトのドリブンギヤに係合するが、ドリブンギヤは嵌合しておらずメインシャフトに対して空転する。しかし、ドリブンギヤには他に外歯が設けられていて、そのドリブンギヤの外歯が係合装置のスリーブの内歯と係合すると駆動力が伝達される。
係合装置について詳述すると、この係合装置は、スリーブの他に、メインシャフトにスプライン嵌合するクラッチハブを有していて、そのクラッチハブの外歯はスリーブの内歯と係合している。
また、係合装置による係合動作がスムーズに行われるように、シンクロメッシュ機構を有することができる。シンクロメッシュ機構は、シンクロナイザリングとコーン部とからなり、シンクロナイザリングは、スリーブの内歯と係合する外歯を有している。
たとえば、クラッチを切断して1速から2速にギヤチェンジするときには、係合装置がそれまで係合していたドリブンギヤと、係合装置がこれから係合しようとするドリブンギヤとの間に回転速度の差が存在する。その回転速度の差を埋めるために、2速側のシンクロナイザリングがこれから係合しようとするドリブンギヤのうち円筒状のコーン部の外周に押し付けられる。すると、これらの間で摩擦力が向上することで、シンクロナイザリングの回転が追従し始め、それにより2速側のドリブンギヤの回転速度に、スリーブおよびカウンタシャフト側の回転系の回転を同調させることができる。このようにスリーブが係合する先のドリブンギヤの回転速度とスリーブの回転速度とを同期させるためにシンクロメッシュ機構を有することができる。なお、このような変速機を含めた構成について、特許文献1に開示されている。
特開2010−19297号公報(たとえば図12参照)
上述のように、変速機は、スリーブが係合する先のドリブンギヤの回転速度とスリーブの回転速度とを同期させるためのシンクロメッシュ機構を有するが、スリーブが係合する先のドリブンギヤとスリーブとで回転速度の差が大きいと、シンクロメッシュ機構による回転速度の同期が追従できず、スリーブが係合する先のドリブンギヤの歯先とスリーブの歯先とが接触するなどしてギヤ鳴りが発生することが稀にある。
たとえば5速から3速へシフトダウンする場合を例に挙げると、スリーブが係合しようとするドリブンギヤ(たとえば3速のドリブンギヤ)の回転速度が、それまで5速のドリブンギヤと係合していたスリーブの回転速度よりも遅いときには、ドリブンギヤとスリーブとの回転速度の差が大きい状態で、シンクロメッシュ機構が働くことになる。そのため、メインシャフトの回転を抑える方向に大きな力がかかり、メインシャフトに出力軸を介して接続されたプロペラシャフトに捩じれが発生することがある。プロペラシャフトの捩じれのエネルギが大きくなると、そのエネルギが揺り返すような状態でメインシャフトに戻され、それによってスリーブに不規則な回転変動を発生させる。
これにより、スリーブが係合する先のドリブンギヤ(たとえば3速のドリブンギヤ)の回転速度とスリーブの回転速度とが同期できず、ギヤ鳴りが発生することがある。なお、上記では一例として5速から3速にギヤチェンジする場合を挙げたが、このようなギヤ鳴りは、5速から3速にギヤチェンジする場合に限られるものではなく、ギヤチェンジの対象となる2つのドリブンギヤの間の回転速度の差が大きい場合に生じ得る。
このようなギヤ鳴りは、ドライバーに不快な印象を与え、好ましくない。
本発明は、このような背景の下に行われたものであって、シフトチェンジの際にギヤ鳴りが発生しないようにすることができる変速装置および変速制御方法を提供することを目的とする。
本発明の第1の観点は、変速装置である。本発明は、エンジンからの出力をクラッチおよび複数のギヤを介して多段階の変速段数に段階的に切り替えることが可能な変速装置であって、複数のギヤを備えるメインギヤボックスと、少なくともメインギヤボックスに内蔵されると共に、ギヤの側面側のギヤ歯部に係合可能なスリーブと、スリーブを移動させる切替装置と、エンジンの出力、切替装置の作動を制御する制御装置と、を備え、制御装置は、クラッチを切断して行う所定の変速段から所定の変速段への変速の途中で、スリーブが変速後に係合しようとするギヤと、スリーブとの回転が同期するようにクラッチを一時的に接続させるクラッチ接続制御を行うものである。
さらに、制御装置は、スリーブが変速後に係合しようとするギヤの回転速度と、スリーブの回転速度との差が、所定の範囲内に収まるように、クラッチ接続制御を行うことができる。
また、本発明の変速装置は、メインギヤボックスからの出力の回転速度を低速側と高速側の少なくとも2段階に切り替え可能なレンジを有し、制御装置は、レンジが低速側に切り替えられているときに、クラッチ接続制御を行うことができる。
このときに、制御装置は、変速段数において段数が低下するシフトダウンを行う場合に、クラッチ接続制御を行うことができる。
本発明の第二の観点は、変速制御方法である。本発明は、エンジンからの出力をクラッチおよび複数のギヤを介して多段階の変速段数に段階的に切り替えることが可能であり、複数のギヤを備えるメインギヤボックスと、少なくともメインギヤボックスに内蔵されると共に、ギヤの側面側のギヤ歯部に係合可能なスリーブと、スリーブを移動させる切替装置と、エンジンの出力、切替装置の作動を制御する制御装置と、を備える変速装置の制御装置が実行する変速制御方法において、クラッチを切断して行う所定の変速段から所定の変速段への変速の途中で、スリーブが変速後に係合しようとするギヤと、スリーブとの回転が同期するようにクラッチを一時的に接続させるクラッチ接続制御を行うステップを有するものである。
さらに、スリーブが変速後に係合しようとするギヤの回転速度と、スリーブの回転速度との差が、所定の範囲内に収まるように、クラッチ接続制御を行うステップを有することができる。
また、本発明の変速装置は、メインギヤボックスからの出力の回転速度を低速側と高速側の少なくとも2段階に切り替え可能なレンジを有し、レンジが低速側に切り替えられているときに、クラッチ接続制御を行うステップを有することができる。
このとき、変速段数において段数が低下するシフトダウンを行う場合に、クラッチ接続制御を行うステップを有することができる。
本発明によれば、シフトチェンジの際にギヤ鳴りが発生しないようにすることができる。
本発明の実施の形態に係る車両の要部構成図である。 図1の変速機の構成を示す図である。 図1の変速機の係合装置を説明するための図であり、ニュートラル状態を示す図である。 図1の変速機の係合装置を説明するための図であり、スリーブがシンクロリングに係合している状態を示す図である。 図1の変速機の係合装置を説明するための図であり、ギヤ入れが完了した状態を示す図である。 図2の変速機の変速段数とギヤの組合せの関係を示す図である。 図1の制御装置の動作を示すフローチャートである。 図7のフローチャートのステップS1の処理をステップS10,S11の処理に置き換えたフローチャートである。 図1の制御装置の制御によるクラッチストローク、シフト荷重、シフト変位、ギヤの回転速度、およびスリーブの回転速度の変化の状態を示す図である。 図3のスリーブのスリーブ歯部が2速のギヤ側のシンクロリングのシンクロ歯部と接触している状態を示す図である。 図3のスリーブが2速のギヤにギヤ入れ完了している状態を示す図である。 従来の制御によるクラッチストローク、シフト荷重、シフト変位、ギヤの回転速度、およびスリーブの回転速度の変化の状態を示す図である。
本発明の実施の形態に係る車両1の構成を図1を参照して説明する。なお、車両1としては、トラックやバスといった大型車両が好適であるが、車両1はそれには限られず、大型以外の種々の車両も対象であることは勿論である。
<車両1の全体構成について>
車両1は、駆動力を発生する駆動源としてのエンジン2を有し、そのエンジン2からの駆動力を、クラッチCL、変速装置4、プロペラシャフト8およびデファレンシャルギヤ9を経て駆動輪10に伝達させる。なお、駆動源としてのエンジン2は、ガソリン、軽油、CNG(Compressed Natural Gas)などを燃料とする内燃機関であるが、駆動源は、内燃機関の他に電気モータを組み合わせるものであってもよい。なお、変速装置4は、変速機5、切替装置SE、および制御装置Cを有する。制御装置Cは、エンジン2およびクラッチCLも制御する。
これらの構成要素のうち、クラッチCLは、エンジン2の出力と変速機5の入力とを接続したり遮断したりする部分である。クラッチCLは、フライホイールfと、このフライホイールfに対して対向するクラッチ板cとを有していて、クラッチ板cをフライホイールfに押圧したり離間させたりすることが可能に構成されている。フライホイールfは、エンジン2側のクランクシャフトの端部側に取り付けられ、一方で、クラッチ板cは変速機5側の入力軸15(図2参照)の端部に取り付けられている。このため、フライホイールfにクラッチ板cを押圧することによりエンジン2の動力を変速機5に伝達する。なお、クラッチCLにおけるクラッチ板cの駆動には、油圧機構等が用いられるが、その図示および説明は省略する。
<変速機5の構成について>
図2に示すように、変速機5は、メインギヤボックス3と、レンジ6と、スプリッタ7とを有している。以下、これらの詳細について説明する。
<メインギヤボックス3の構成について>
メインギヤボックス3は、係合するギヤの組合せを変更する部分であり、その変更によって、エンジン2からの駆動力について回転速度とトルクの変換を行う部分である。このメインギヤボックス3は、ドライブギヤとしてのギヤ22,24,26と、ドリブンギヤとしてのギヤ21,23,25と、リバースギヤ27と、メインシャフト30と、を有する。ギヤ22,24,26は、カウンタシャフト17に対して一体的に回転するように設けられている。一方、ギヤ21,23,25は、メインシャフト30に対して空転するように設けられている。
本実施の形態では、ギヤ21は、2速のドリブンギヤであり、ギヤ23は、1速のドリブンギヤであり、ギヤ25は、後退のドリブンギヤである。なお、ギヤ13とギヤ14は、スプリッタ7のLow側のギヤであるが、ギヤ14は、メインギヤボックス3のドライブギヤを兼ね、ギヤ13は、メインギヤボックス3の3速のドリブンギヤを兼ねる。
実際のシフトチェンジでは、1速のギヤ23は、1速、2速、7速、または8速に対応する。2速のギヤ21は、3速、4速、9速、または10速に対応する。また、3速のギヤ13は、5速、6速、11速、または12速に対応する。以後、両者の混在を防止するために、メインギヤボックス3の1速のギヤ23を駆動伝達等のために表現するときは、「メイン1速」と称呼し、同様に2速のギヤ21については「メイン2速」、3速のギヤ13については「メイン3速」と称呼する。
メインギヤボックス3は、スリーブ51(図3等参照)等を備える係合装置28と、同様の構成を備える係合装置29を有している。係合装置28は、ギヤ13またはギヤ21の側面にスリーブ51(図3参照)が係合することで、ギヤ13またはギヤ21がメインシャフト30と一体的に回転する。同様に、係合装置29も、ギヤ23またはギヤ25の側面にスリーブ(図示省略)が係合することで、ギヤ23またはギヤ25がメインシャフト30と一体的に回転する。このようなスリーブの係合により、カウンタシャフト17側からメインシャフト30へと駆動力が伝達される。
<レンジ6の構成について>
次に、レンジ6について説明する。遊星歯車の動力伝達経路を変更することで、高速側(以下ではHighと称する。)と低速側(以下ではLowと称する。)の2段階にギヤを切り替え可能となっていて、それにより、エンジン2のクランクシャフトからプロペラシャフト8に至るまでのシフト数(変速段数)をメインギヤボックス3の2倍の変速段数となるようにギヤ比がさらに細分化される。
このレンジ6は、図2に示すような遊星歯車60を有する。遊星歯車60は、外歯形状のサンギヤ61、外歯形状のピニオンギヤ62、内歯形状のリングギヤ63、キャリア64、スリーブ65、およびハウジング66を有する。遊星歯車60においては、スリーブ65がキャリア64の外歯64aと係合すると、リングギヤ63がキャリア64に固定された状態となる。このとき、リングギヤ63とキャリア64とが相対的に回転しない(互いにロックされた)状態となるので、サンギヤ61の回転速度がそのまま出力されるHigh状態となる。
それとは異なり、スリーブ65がハウジングの外歯66aと係合すると、リングギヤ63がスリーブ65を介してハウジング66に固定された状態となる。このとき、ピニオンギヤ62はサンギヤ61により自転させられつつ、リングギヤ63の内周歯と係合しているので、サンギヤ61の周囲を公転する。このときは、ピニオンギヤ62は歯数の多いリングギヤ63の内周歯に係合しながら公転するので、サンギヤ61の回転速度が減速されて出力されるLow状態となる。このように、スリーブ65の移動によりHighとLowのギヤ比の切り替えが可能である。なお、図2に示すレンジ6は、Low状態である。また、キャリア64のレンジ6の筐体から突出した部分(図2のレンジ6の右端部分)に、不図示の出力軸が接続され、出力軸には、プロペラシャフト8(図1参照)が接続される。
<スプリッタ7の構成について>
次に、スプリッタ7について説明する。図1に示すように、スプリッタ7は、変速機5のうちエンジン2側に設けられていて、レンジ6と同様にHighとLowの2段階にギヤを切り替え可能となっている。それにより、スプリッタ7でも、メインギヤボックス3の2倍の変速段数となるようにギヤ比がさらに細分化される。
図2に示すように、スプリッタ7は、4つのギヤ11,12,13,14を有しているが、ギヤ11,13は入力軸15に対して空転する状態で取り付けられていて、ギヤ12,14はカウンタシャフト17に対して一体的に取り付けられている。
また、スプリッタ7は、ギヤ11またはギヤ13の側面に係合するスリーブ(図2では不図示)を備える係合装置16を有する。なお、係合装置16の詳細については、後述する係合装置28の詳細説明と同様であるので、その説明は省略する。かかる係合装置16のスリーブがギヤ11の側面に係合すると、ギヤ11の回転は、そのギヤ11と係合するギヤ12を介してカウンタシャフト17に伝達される。また、スリーブがギヤ13の側面に係合すると、ギヤ13の回転は、そのギヤ13と係合するギヤ14を介してカウンタシャフト17に伝達される。このとき、ギヤ11とギヤ12の組合せは、ギヤ比の小さなHigh側であり、回転速度はLow側よりも大きいがトルクが小さくなる。逆に、ギヤ13とギヤ14の組合せは、ギヤ比の大きなLow側であり、回転速度はHigh側よりも小さいがトルクが大きくなる。なお、ギヤ13は、メインギヤボックス3における3速ギヤも兼ねている。
なお、レンジ6とスプリッタ7とを比較すると、スプリッタ7は、上述のように、HighとLowの間でギヤ比を切り替える部分であるが、HighとLowを切り替えたときのギヤ比の変化は、レンジ6よりも大幅に小さくなっている。
また、上述のように、変速機5のメインギヤボックス3は、スプリッタ7の出力を前進3段および後退1段に変速する。レンジ6は、上述のように、HighとLowの間でギヤ比を切り替える部分であり、スプリッタ7も同様である。そのため、スプリッタ7、メインギヤボックス3、およびレンジ6による変速を組み合わせることで、前進12段および後退2段の変速機5を構成することができる。このとき後退ではレンジ6のHighは必要がないため、後退については2段になる。
なお、変速機5のシフト数(変速段数)は、前進12段、後退2段に限られるものではない。たとえば、前進のシフト数(変速段数)は、3段以上であれば、適宜の段数としてもよい。また、後退のシフト数(変速段数)は、1段でもよく、3段以上でもよい。なお、変速機5においては、レンジ6およびスプリッタ7の存在は必須ではなく、シフト数(変速段数)に応じては、メインギヤボックス3のみが存在する構成としてもよく、メインギヤボックス3とレンジ6が存在する構成としてもよく、メインギヤボックス3とスプリッタ7とが存在する構成としてもよい。
<係合装置の構成について>
次に、係合装置16,28,29の構成について、図3を参照して説明する。なお、図3では、係合装置を代表して、係合装置28について説明しているが、他の係合装置16,29においても同様の構成となっている。
図3の左図に示すように、係合装置28は、クラッチハブ50、スリーブ51、およびシンクロリング52a,52bによって構成される。さらに、ギヤ13およびギヤ21のうち、互いに対向する側には、ギヤ歯部61,60が設けられていて、そのギヤ歯部61,60よりも互いに対向する側には、シンクロコーン53a,53bが設けられている。
クラッチハブ50は、メインシャフト30と一体的に設けられていて、その外周側にはスリーブ51の内周歯(スリーブ歯部55)と係合する外周歯を有している。スリーブ51は、上述のように内周歯を有するが、クラッチハブ50に対して軸方向(矢示A方向または矢示B方向)にスライド可能に設けられていて、しかもクラッチハブ50よりもスリーブ51は幅広に設けられている。なお、スリーブ51の軸方向に沿う移動を可能とするために、スリーブ51の外周側には溝状の部分が設けられていて、その溝状の部分には、スリーブ51を移動させるためのシフトフォーク56が嵌まり込む。
なお、図3に示すように、スリーブ歯部55のうちギヤ13と対向する側には、軸方向の先端側に向かうにつれて尖形となるような複数のドグ歯72aが設けられている。そのため、ドグ歯72aには、傾斜部72c,72dおよび先端部72eが設けられている。同様に、図示の向きは軸方向の反対方向になるが、スリーブ歯部55のうちギヤ21と対向する側にも複数のドグ歯72aが設けられていて、そのドグ歯72aには、傾斜部72c,72dおよび先端部72eが設けられている。
シフトフォーク56はリング状の形状を有する部品であり、変速の際は、不図示のアクチュエータに駆動され、スリーブ51と一体になって矢示A方向または矢示B方向に移動する。なお、図3のシフトフォーク56の位置はいわゆるニュートラル位置であり、3速のギヤ13および2速のギヤ21は共にメインシャフト30とは繋がっておらず、エンジン2の動力は、メインシャフト30には伝えられていない。
シンクロリング52a,52bは、リング状の形状を有する部品であり、変速の際は、その内周面がシンクロコーン53a,53bと面的に摺動することによって、3速のギヤ13もしくは2速のギヤ21とスリーブ51との間で回転速度の同期を行う。シンクロリング52a,52bは、ギヤ13,21毎に設けられていて、それぞれの外周側にシンクロ歯部54a,54bが設けられている。なお、シンクロ歯部54a,54bにも、上述したドグ歯72aと同様のドグ歯71aがそれぞれ設けられている。そして,ドグ歯71aには、傾斜部71c,71dと先端部71eが設けられている。
ギヤ歯部61,60は、スリーブ51の移動に伴って上述したスリーブ歯部55が係合する外周歯部である。このギヤ歯部61,60にも、それぞれドグ歯70aが設けられている。また、ドグ歯70aには、傾斜部70c,70dおよび先端部70eが設けられている。
シンクロコーン53a,53bは、シンクロリング52a,52bの一部が接触して摺動する円錐形状かつ筒状の部分である。このシンクロコーン53a,53bのそれぞれは、ギヤ13,21のそれぞれと一体的に形成されている。
次に、係合装置28の動作を図3〜図5を参照して説明する。まず、ニュートラル状態から3速のギヤ13にギヤ入れを行う場合を例に説明する。ここで、「ギヤ入れ」とは、たとえばメイン3速のギヤ13を例にとると、スリーブ51がメイン3速のギヤ13のギヤ歯部61に係合することで、メインシャフト30がメイン3速のギヤ13と一体的に回転し、エンジン2からの駆動力がメインシャフト30に伝達される状態にすることをいう。その逆に、「ギヤ抜き」とは、スリーブ51がいずれのギヤ歯部61,60とも係合せずに、ギヤ13,21がメインシャフト30に対して空転する状態にすることをいう。
図3はニュートラルの状態、図4はスリーブ51がシンクロリング52aに係合している状態、図5はギヤ入れが完了した状態を示している。また、各図とも、左図はメイン3速のギヤ13付近の詳細図、右図はギヤ歯部61、シンクロ歯部54a、スリーブ歯部55を示す詳細図である。
たとえばメイン3速にシフトチェンジする場合、クラッチCLを切断した後に、まず、図3に示す状態からシフトフォーク56が矢示A方向に移動することで、スリーブ51を矢示A方向に移動させ、図4に示すように、スリーブ51のスリーブ歯部55をシンクロリング52aのシンクロ歯部54aに接触させる。すると、シンクロリング52aは、メイン3速のギヤ13のシンクロコーン53aに押し付けられ、シンクロリング52aとシンクロコーン53aとが徐々に同じ回転速度で回転し始める。
シンクロリング52aとシンクロコーン53aが概ね同じ回転速度となる同期が終了すると、図5に示すようにスリーブ51は更に矢示A方向に移動し、スリーブ歯部55のドグ歯72aはシンクロ歯部54aのドグ歯71aおよびギヤ歯部61のドグ歯70aと係合する。それにより、ギヤ入れは完了し、カウンタシャフト17側の駆動力がギヤ14,13、係合装置28のスリーブ51を介してクラッチハブ50へと伝達される。すなわち、クラッチハブ50と一体的に設けられているメインシャフト30に駆動力が伝達される。なお、上述のように、カウンタシャフト17側の駆動力がギヤ14,13、係合装置28のスリーブ51、クラッチハブ50を介してメインシャフト30に伝達されるのは、スプリッタ7がHighのときである。スプリッタ7がLowのときには、係合装置16がギヤ13と係合し、入力軸15の駆動力が係合装置16、ギヤ13、係合装置28のスリーブ51、クラッチハブ50を介してメインシャフト30に伝達される。すなわち、スプリッタ7がLowのときには、入力軸15とメインシャフト30とは直結される。
なお、ギヤ抜き時は上記動作とは逆の動作を行う。すなわち、図5に示す状態からシフトフォーク56が矢示B方向に移動して、スリーブ歯部55のドグ歯72aをシンクロ歯部54aのドグ歯71aおよびギヤ歯部61のドグ歯70aから切り離し、図4に示す状態を経て図3に示すニュートラル位置までスリーブ51が移動する。
さらに係合装置16,29においても同様のギヤ入れおよびギヤ抜きが行える。
<制御装置Cおよび切替装置SEについて>
上述した変速機5の係合装置16,28,29の動作は、切替装置SEにより行われるが、この切替装置SEの作動は、制御装置Cによって制御される。切替装置SEとしては、エアシリンダや油圧シリンダのようなアクチュエータ、電気的なモータを用いることができる。かかる切替装置SEを用いて、シフトフォーク56(図3参照)を駆動することにより、自動的に変速段数の変更を行うことができる。なお、制御装置Cは、エンジン2の作動についても制御可能としている。
なお、実際には、エンジン2、変速機5、およびクラッチCLのいずれか、または全部に、それぞれ個別のECU(Electric Control Unit)が配置され、これらが互いにCAN(Control Area Network)通信を行いながら協働して制御を実施している場合があるが、ここでは1つの制御装置Cとして説明する。
<変速機5の全体的な動作について>
次に、変速機5の全体的な動作について説明する。図2に示すスプリッタ7の入力軸15は、クラッチCLが接続状態であるときにエンジン2のクランクシャフトと共に回転する。制御装置Cが、スプリッタ7の係合装置16がギヤ11に係合する状態を選択すると、スプリッタ7はHigh側に切り替えられた状態となり、その状態でギヤ12を介してカウンタシャフト17に駆動力が伝達される。一方、制御装置Cが、スプリッタ7の係合装置16がギヤ13に係合する状態を選択すると、スプリッタ7はLow側に切り替えられた状態となり、その状態でギヤ14を介してカウンタシャフト17に駆動力が伝達される。
カウンタシャフト17には、ギヤ12,14の他に、ギヤ22,24,26も設けられていて、これらはメイン2速のギヤ21、メイン1速のギヤ23、リバースギヤ27と、常時係合している。この状態で、制御装置Cが、係合装置28がメイン3速のギヤ13に係合する状態を選択すると、メイン3速のギヤ13の駆動力がメインシャフト30に伝達されるが、係合装置28がメイン2速のギヤ21に係合する状態を選択すると、メイン2速のギヤ21の駆動力がメインシャフト30に伝達される。同様にして、制御装置Cが、係合装置29がメイン1速のギヤ23に係合する状態を選択すると、メイン1速のギヤ23の駆動力がメインシャフト30に伝達され、係合装置29がギヤ25に係合する状態を選択すると、上述とは異なりメインシャフト30には逆回転の駆動力が伝達される。
また、制御装置Cが、レンジ6のスリーブ65がハウジングの外歯66aに係合する状態を選択すると、レンジ6はLow側に切り替えられた状態となり、その状態でピニオンギヤ62を介してキャリア64の軸部分に駆動力が伝達される。一方、制御装置Cが、スリーブ65が外歯64aに係合する状態を選択すると、レンジ6はHigh側に切り替えられた状態となり、その状態でギヤ62を介してキャリア64の軸部分に駆動力が伝達される。
ここで、変速機5の変速段数の一覧を図6に示す。先ず、レンジ6でLowが選択された場合について説明する。この状態で、たとえば、スプリッタ7でLow状態が選択され、メインギヤボックス3でリバースギヤ25が選択されると、変速段数はRL速となる。スプリッタ7でHigh状態が選択され、メインギヤボックス3でリバースギヤ25が選択されると、変速段数はR速となる。RL速は、R速に比べると、より低速かつ高トルクでの後退を行うことができる。
また、スプリッタ7でLow状態が選択され、メインギヤボックス3でメイン1速のギヤ23が選択されると、変速段数は1速となる。この状態から変速段数を2速に切り替えるためには、スプリッタ7をLow状態からHigh状態へと選択するのみで済む。以後、同様に、選択した組み合わせとして、スプリッタ7でLow状態、メインギヤボックス3でメイン2速のギヤ21が選択された場合には、変速段数が3速となり、その組み合わせでスプリッタ7のみをLow状態からHigh状態へと切り替えると、変速段数が4速となる。同様に、選択した組み合わせとして、スプリッタ7でLow状態、メインギヤボックス3でメイン3速のギヤ13が選択された場合には、変速段数が5速となり、その組み合わせでスプリッタ7のみをLow状態からHigh状態へと切り替えると、変速段数が6速となる。
なお、上記の組み合わせにおいては、レンジ6でLowが選択された場合について説明したが、レンジ6でHighが選択された場合には、上述の変速段数が1速〜6速に対応する組み合わせは、それぞれ7速〜12速に対応する。このようにして、変速機5は、前進12段および後退2段のトランスミッションを構成することができる。
ところで、現状の変速機5では、図6に示すレンジ6がLow状態であるときのシフトダウン時にギヤ鳴りが発生することがある。その理由は、レンジ6がHigh状態であれば、サンギヤ61に接続されるメインシャフト30の回転速度とプロペラシャフト8に接続されるキャリア64の回転速度の変速比は1:1である。これに対し、レンジ6がLow状態であれば、サンギヤ61に接続されるメインシャフト30の回転速度とプロペラシャフト8に接続されるキャリア64の回転速度の変速比はn(n>1):1である。たとえば、レンジ6がLow状態の場合、レンジ6がHigh状態と比較して、3倍等のような大きな捩じりトルクがプロペラシャフト8に作用する。
このため、上述したように、レンジ6がLow状態であると、レンジ6がHigh状態に比べ、プロペラシャフト8の捩じりトルクが大きくなり、プロペラシャフト8の捩じりによるエネルギが大きく蓄えられる状態となる。換言すれば、プロペラシャフト8が捩じられる場合、捩じりのない本来の回転位置に戻ろうとするエネルギが蓄えられた状態となる。
このとき、シフトダウンが行われ、たとえば変速段数が5速から3速となるように切り替えることを考える。その場合、変速段数が4速から3速へと切り替える場合と比較して、メイン3速のギヤ13からメイン2速のギヤ21との間での回転速度の差が大きい状態で、シンクロメッシュ機構28が働くことになるが、このとき、プロペラシャフト8には、その回転を抑える方向に大きな力が加わる。すると、プロペラシャフト8には大きな捩じれが発生し、捩じりのない本来の回転位置と捩じりによる実際の回転位置との間の差が大きくなる。
その状態で、シンクロコーン53bとシンクロリング52bの内周面の間の摩擦限界が到来する等すれば、プロペラシャフト8の捩じれのエネルギが急激に開放され、回転方向で揺り戻しを伴う不規則な回転位置の変動を生じさせる。このような回転位置の変動により、ギヤ21のギヤ歯部60の位置が、シンクロリング52bのシンクロ歯部54bに対してずれてしまうことがある。このような位置ずれが生じると、スリーブ51とギヤ歯部60(ギヤ21)では、回転の同期位置からずれてしまい、ギヤ鳴りが発生してしまう。
なお、上述のギヤ鳴りは、変速段数が、前進12速のうち5速から3速となるように切り替える場合に限って発生するものではない。たとえば、変速段数を6速から4速以下、5速から2速以下、4速から2速以下、3速から1速とする場合、あるいは、変速段数の変化が2段以上でなく、1段である場合にも、ギヤ鳴りが生じる場合がある。以下では、制御等の代表例として、変速段数を5速から3速に切り替える場合について説明するが、これ以外のギヤ鳴りが生じる変速段数に本発明を適用可能なことは勿論である。
上述のようなギヤ鳴りを抑えるために、制御装置Cは、クラッチCLを切断して行う所定の変速段から所定の変速段への変速の途中で、スリーブ51が変速後に係合しようとするギヤ21と、スリーブ51との回転が同期するようにクラッチCLを一時的に接続させるクラッチ接続制御を行う。この制御装置Cの動作を図7のフローチャートを参照して説明する。図7のフローチャートでは、上述した所定の変速段から所定の変速段への変速を5速から3速への変速の例で説明する。
図7のフローチャートにおいて、STARTの条件は、車両1のキースイッチ(不図示)がON状態であり、制御装置Cが稼働中であり、変速機5は、車両1の車速、エンジン2のトルクおよび回転速度、運転者の要求トルクなどから5速から3速への変速を行おうとしているという条件である。なお、図7のフローチャートの処理は、1周期分の処理であり、1周期分の処理が終了してもSTARTの条件が満たされていれば、処理は、再び開始される。また、図7のフローチャートでは、シフトチェンジのためのギヤ抜きが既に完了してニュートラルとなっている状態から説明するが、ステップS1の後に、ギヤ抜きが行われてもよい。なお、STARTの時点では、クラッチCLは切断状態である。
ステップS1:制御装置Cは、5速から3速への変速であるか否かを判定する。ステップS1において、5速から3速への変速であると判定されると、処理は、ステップS2に進む。一方、ステップS1において、5変から3速への変速ではないと判定されると、処理は、ステップS5に進む。
ステップS2:ステップS1においてYesと判断された後に、制御装置Cは、エンジン2を制御して、エンジン2の回転速度を上昇させる制御を実施する。このときは、クラッチCLは切断状態であり、エンジン2には負荷が接続されていない状態となっている。そのため、エンジン2の出力は容易に上昇させることが可能となっている。
ステップS3:ステップS2でエンジン2の回転速度が上昇した後に、クラッチCLを切断状態から一時的に接続状態へ遷移させる。このとき比較的短時間、クラッチCLを接続させるように制御する。かかる制御は、切り替えようとするギヤ間の回転合わせを行うための予備的なものである。このとき、クラッチCLは、いわゆる半クラッチ状態で接続される状態となってもよい。このイメージが、図8上図において、クラッチストローク80(長い破線)として示されている。図8上図では、基準点においては、クラッチCLが完全に接続された状態(完接状態)であり、その基準点から上側に離れるにつれてクラッチCLが切断されることを示している。なお、図8上図では、クラッチストローク80の2つの山の間の谷間が、このステップS3に該当する。
なお、ステップS3の後に、制御装置Cは、カウンタシャフト17の回転速度に関する情報と、メインシャフト30の回転速度に関する情報とから、シフトダウン前後におけるギヤ同士の回転速度が所定の回転速度差に収まっているか否かを判断するようにしてもよい。そして、この判断において、所定の回転速度差に収まっていないと判断されると、ステップS3におけるクラッチCLの接続状態を継続するようにしてもよい。なお、上述の回転速度に関する情報は、所定のセンサなどから取得することができる。
ステップS4:次に、制御装置Cは、再びクラッチCLを切り離す。すなわち、クラッチCLをステップS3の接続状態から切断状態へ遷移させる。これにより、再びギヤ入れが可能な待機状態となる。
ステップS5:制御装置Cは、ギヤ入れを実施するように、切替装置SEの作動を制御する。ステップS5において、ギヤ入れが実施されると、1周期分の処理は終了する(END)。
ここで、図7のフローチャートのステップS1における「所定の変速段から所定の変速段への変速」は、一例として5速から3速への例を示したが、その他の例で置き換えてもよい。たとえば、ギヤ鳴りが発生し易い例として上述したレンジ6がLow状態における2段以上のシフトダウンの例で置き換えると、ステップS1の処理を以下に示すステップS10,S11のように置き換えることができる。
ステップS10において、制御装置Cは、レンジ6がLow状態であるか否かを判定する。ステップS10において、レンジ6がLow状態であると判定されると、処理は、ステップS11に進む。一方、ステップS10において、レンジ6がLow状態ではない(すなわちHigh状態)と判定されると、処理は、ステップS5に進む。
ステップS11において、制御装置Cは、2段以上のシフトダウンであるか否かを判定する。ステップS11において、2段以上のシフトダウンであると判定されると、処理は、ステップS2に進む。一方、ステップS11において、2段以上のシフトダウンではないと判定されると、処理は、ステップS5に進む。
このように、プロペラシャフト8の捩じりトルクが大きくなる所定の段数以下のメインギヤボックス3に係るギヤ間でのシフトダウンに先立って、ニュートラル状態において、ギヤ21の回転速度と、係合装置28のスリーブ51の回転速度とを同期させる制御を実施する。たとえば、制御装置Cは、5速から3速にシフトダウンを行うときには、係合装置28のスリーブ51の回転速度と、シフトダウン対象であるギヤ21の回転速度とが同期するように、クラッチCLを完全に接続する前の段階で一時的にクラッチCLを接続させる状態にする。このとき、クラッチCLの接続状態を、いわゆる半クラッチ状態(緩いクラッチ接続状態)としてもよい。なお、メインギヤボックス3に係るギヤ間でのシフトダウンは、スプリッタ7に係るギヤ11,13間でのシフトダウンである6速から5速へのシフトダウンについては含まない。
このようにして、制御装置Cは、係合装置28のスリーブ51が変速後に係合しようとするギヤ21の回転速度と、スリーブ51の回転速度との差が、所定の範囲内に収まるように、クラッチ接続制御を行う。さらに、制御装置Cは、レンジ6がLowに切り替えられているときに、クラッチ接続制御を行う。なお、本実施例では、レンジ6がLowに切り替えられているときであって、変速段数の変化が2段以上のシフトダウンである場合に、クラッチ接続制御を行う例を示している。すなわち、所定の変速段数(ここでは6速)以下で、2速以上シフトダウンで変化させるときには、シフトダウン前後におけるギヤ21の回転速度が、後のクラッチCLの完接の際に同期し易くなるように、クラッチCLの完接の前に、一時的なクラッチCLの接続を行う。それにより、メインシャフト30(スリーブ51)と、ギヤ21との回転が同期される。
次に、本実施の形態の実験結果について、図9を参照して説明する。図9上図、下図は、本実施の形態の実験結果を示す図であり、横軸に時間の経過をとっている。また、図9の上図においては、縦軸は、クラッチストローク80(長い破線)の場合にはストローク量、シフト荷重81(短い破線)の場合には荷重、シフト変位82(一点鎖線)の場合にはシフト位置の変位を示している。また図9の下図においては、ギヤ21の回転速度83(一点鎖線)および係合装置28のスリーブ51の回転速度84(短い破線)の場合には回転速度を示している。
クラッチストローク80は、図1に示すクラッチCLのフライホイールfとクラッチ板cとの間の距離である。図9上図では、基準点を示す横線の位置でクラッチストローク80は完接状態であり、上方に向かうほど、フライホイールfとクラッチ板cとの距離が離れる。シフト荷重81は、図3に示すシフトフォーク56にかかる荷重である。基準点を示す横線よりも上方向のシフト荷重81は、たとえば、図3に示す矢示B方向の荷重であり、基準点を示す横線よりも下方向のシフト荷重81は、図3に示す矢示A方向の荷重である。
シフト変位82は、図3に示すシフトフォーク56の位置(以下では、単に、シフトフォーク位置と称する。)を示している。基準点は、シフトフォーク56がニュートラル位置に位置していることを示し、基準点よりも上方向のシフト変位82は、図3に示す矢示B方向へ移動したときの位置を示し、基準点を示す横線よりも下方向のシフト変位82は、図3に示す矢示A方向へ移動したときの位置を示す。
ギヤ21の回転速度83は、図9下図の上方に行くほど速くなる。係合装置28のスリーブ51の回転速度84は、メインシャフト30の回転速度でもあり、図9下図の上方に行くほど速くなる。
図9を参照すると、クラッチストローク80は、時刻t0では、フライホイールfとクラッチ板cとが密着している完接状態となっている。この時刻t0では、不図示のアクチュエータは、シフトフォーク56に対する駆動力(シフト荷重81)をいずれの方向にも発生させていない。また、時刻t0のシフト変位82では、変速段数が5速となっている。
続いて、時刻t1の手前でクラッチ板cのフライホイールfに対する移動を開始し、時刻t1で、クラッチストローク80は、フライホイールfとクラッチ板cとが最大限に離れる完断状態となる。また、シフトフォーク56は時刻t1で移動を開始し、時刻t2ではシフト変位82は、基準点を示す横軸よりも若干下方に位置しているが、このとき、図3に示すように、スリーブ51がギヤ13の側面およびギヤ21の側面から離れたニュートラル位置に対応している。
また、時刻t1の直後で、シフト荷重81は、図3の矢示B方向に発生し、それにより、図5に示すように、時刻t0で3速のギヤ13の側面(ギヤ歯部61)に係合していたスリーブ51が、図4に示すように、ギヤ13の側面から切り離される。なお、時刻t1では、ギヤ21の回転速度83と係合装置28のスリーブ51の回転速度84とは同期しておらず、シフトダウン先となるギヤ21の回転速度と係合装置28のスリーブ51の回転速度との間に大きな回転速度の差がある。
時刻t3〜時刻t5で、クラッチストローク80は、フライホイールfとクラッチ板cとが最大限離れている完断状態からフライホイールfとクラッチ板cとの間の距離が狭くなる方向へと遷移する。時刻t4では、フライホイールfとクラッチ板cが完接状態の前に緩く一時的に接触する状態になる。また、クラッチCLが緩く一時的に接触する状態になる直前に、制御装置Cによってエンジン2の出力制御を行うことで、時刻t4では、ギヤ21の回転速度83が上昇を開始する。さらに、時刻t5では、ギヤ21の回転速度83と係合装置28のスリーブ51の回転速度84とが、同期するかまたはそれに近い状態となる。
時刻t5で、ギヤ21の回転速度83と係合装置28のスリーブ51の回転速度84とがほぼ同期すると、変速段数で5速への切り替えを行うために、クラッチストローク80は、時刻t6で再び完断状態に遷移する。その後に、時刻t7で、シフト荷重81が図3の矢示B方向に発生し、時刻t7で3速の変速段数となるようなシフト変位82が発生する。これにより、スリーブ51のスリーブ歯部55は、図10に示すように、シンクロリング52bのシンクロ歯部54bに接触し、シンクロリング52bは、時刻t8で、ギヤ21のシンクロコーン53bと接触して摺動する。このため、時刻t8〜時刻t9では、ギヤ21の回転速度83と係合装置28のスリーブ51の回転速度84との間で、同期が一層図られる。
かかる同期が図られると、時刻t10〜時刻t11の間で、スリーブ51のスリーブ歯部55は、ギヤ21のギヤ歯部60に係合する。これにより、シフト変位82は、時刻t11で、図11に示すように、ギヤ入れ完了のシフトフォーク位置(変速段数が3速のシフトフォーク位置)になる。
このように、図9に示す時間T1の間でシフトダウンは完了し、この時間T1の中で時間T2がギヤ21のギヤ歯部60にスリーブ51のスリーブ歯部55が係合する時間となっている。
比較例として、図12に従来のシフトダウンの状況を示す。図12の時間T1aはシフトダウンに要する時間であり、図8の時間T1と同じ時間である。これに対し、図12の時間T2aはギヤ21のギヤ歯部60にスリーブ51のスリーブ歯部55が係合する時間となっている。この時間T2aは、図9の時間T2よりも長い時間であるが、図12の破線で囲んだ部分では、シフト変位82aが振動的に変動しており、そのシフト変位82aの振動的な変動がギヤ鳴りに対応している。また、図12の係合装置28のスリーブ51の回転速度84aにおいても、上述の時間T2a内で、捩じれ等による大きな回転変動が生じている。なお、図12においては、クラッチストローク80と同様のクラッチストローク80a、シフト荷重81と同様のシフト荷重81a、ギヤ21の回転速度83と同様のギヤ21の回転速度83aも示されている。
このように、本実施の形態の制御装置Cの制御によるシフトダウンによれば、係合装置28のスリーブ51は、ギヤ13のギヤ歯部61に係合していた状態からニュートラル位置を経てギヤ21のギヤ歯部60に係合する状態へと移行しても、ギヤ鳴りが発生するのを抑制することができる。
すなわち、図9上図に示すように、一度、係合装置28のスリーブ51とギヤ21との回転合わせのために、一時的にクラッチCLを接続し、ギヤ21の回転速度83と係合装置28のスリーブ51の回転速度84とが、同期するかまたはそれに近い状態となることで、ニュートラル位置からスリーブ51がギヤ21のギヤ歯部60に係合する状態へと容易に移行させることができ、それによってギヤ鳴りを抑えることができる。
(その他の実施の形態)
上述した実施の形態は、その要旨を逸脱しない限りにおいて、様々に変更が可能である。たとえば、制御装置Cは、情報処理装置が予めインストールされている所定のプログラムを実行することによって実現することができる。このような情報処理装置は、たとえば、不図示のメモリ、CPU(Central Processing Unit)、入出力ポートなどを有する。情報処理装置のCPUは、メモリなどから所定のプログラムとして制御プログラムを読み込んで実行する。これにより、情報処理装置には、制御装置Cの機能が実現される。なお、CPUの代わりにASIC(Application Specific Integrated Circuit)、マイクロプロセッサ(マイクロコンピュータ)、DSP(Digital Signal Processor)などを用いてもよい。
また、上述の所定のプログラムは、制御装置Cの出荷前に、情報処理装置のメモリなどに記憶されたものであっても、制御装置Cの出荷後に、情報処理装置のメモリなどに記憶されたものであってもよい。また、プログラムの一部が、制御装置Cの出荷後に、情報処理装置のメモリなどに記憶されたものであってもよい。制御装置Cの出荷後に、情報処理装置のメモリなどに記憶されるプログラムは、例えば、CD−ROMなどのコンピュータ読取可能な記録媒体に記憶されているものをインストールしたものであっても、インターネットなどの伝送媒体を介してダウンロードしたものをインストールしたものであってもよい。
また、上述の所定のプログラムは、情報処理装置によって直接実行可能なものだけでなく、ハードディスクなどにインストールすることによって実行可能となるものも含む。また、圧縮されたり、暗号化されたりしたものも含む。
このように、情報処理装置とプログラムによって制御装置Cを実現することにより、大量生産や仕様変更(または設計変更)に対して柔軟に対応可能となる。
なお、情報処理装置が実行するプログラムは、本明細書で説明する順序に沿って時系列に処理が行われるプログラムであってもよいし、並列に、あるいは呼び出しが行われたとき等の必要なタイミングで処理が行われるプログラムであってもよい。
1…車両、2…エンジン、3…メインギヤボックス、4…変速装置、5…変速機、6…レンジ、16、28,29…係合装置、51…スリーブ、C…制御装置、CL…クラッチ、SE…切替装置

Claims (8)

  1. エンジンからの出力をクラッチおよび複数のギヤを介して多段階の変速段数に段階的に切り替えることが可能な変速装置であって、
    複数のギヤを備えるメインギヤボックスと、
    少なくとも前記メインギヤボックスに内蔵されると共に、前記ギヤの側面側のギヤ歯部に係合可能なスリーブと、
    前記スリーブを移動させる切替装置と、
    前記エンジンの出力、前記切替装置の作動を制御する制御装置と、
    を備え、
    前記制御装置は、前記クラッチを切断して行う所定の変速段から所定の変速段への変速の途中で、前記スリーブが変速後に係合しようとする前記ギヤと、前記スリーブとの回転が同期するように前記クラッチを一時的に接続させるクラッチ接続制御を行う、
    ことを特徴とする変速装置。
  2. 請求項1記載の変速装置であって、
    前記制御装置は、前記スリーブが変速後に係合しようとする前記ギヤの回転速度と、前記スリーブの回転速度との差が、所定の範囲内に収まるように、前記クラッチ接続制御を行う、
    ことを特徴とする変速装置。
  3. 請求項1または2記載の変速装置であって、
    前記メインギヤボックスからの出力の回転速度を低速側と高速側の少なくとも2段階に切り替え可能なレンジを有し、
    前記制御装置は、前記レンジが低速側に切り替えられているときに、前記クラッチ接続制御を行う、
    ことを特徴とする変速装置。
  4. 請求項3記載の変速装置であって、
    前記制御装置は、前記変速段数において段数が低下するシフトダウンを行う場合に、前記クラッチ接続制御を行う、
    ことを特徴とする変速装置。
  5. エンジンからの出力をクラッチおよび複数のギヤを介して多段階の変速段数に段階的に切り替えることが可能であり、
    複数のギヤを備えるメインギヤボックスと、
    少なくとも前記メインギヤボックスに内蔵されると共に、前記ギヤの側面側のギヤ歯部に係合可能なスリーブと、
    前記スリーブを移動させる切替装置と、
    前記エンジンの出力、前記切替装置の作動を制御する制御装置と、
    を備える変速装置の前記制御装置が実行する変速制御方法において、
    前記クラッチを切断して行う所定の変速段から所定の変速段への変速の途中で、前記スリーブが変速後に係合しようとする前記ギヤと、前記スリーブとの回転が同期するように前記クラッチを一時的に接続させるクラッチ接続制御を行うステップを有する、
    ことを特徴とする変速制御方法。
  6. 請求項5記載の変速制御方法であって、
    前記スリーブが変速後に係合しようとする前記ギヤの回転速度と、前記スリーブの回転速度との差が、所定の範囲内に収まるように、前記クラッチ接続制御を行うステップを有する、
    ことを特徴とする変速制御方法。
  7. 請求項5または6記載の変速制御方法であって、
    前記変速装置は、メインギヤボックスからの出力の回転速度を低速側と高速側の少なくとも2段階に切り替え可能なレンジを有し、
    前記レンジが低速側に切り替えられているときに、前記クラッチ接続制御を行うステップを有する、
    ことを特徴とする変速制御方法。
  8. 請求項7記載の変速制御方法であって、
    前記変速段数において段数が低下するシフトダウンを行う場合に、前記クラッチ接続制御を行うステップを有する、
    ことを特徴とする変速制御方法。

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